説明

核酸結合性物質の評価法

【課題】高感度・高精度・短期間に、核酸結合性物質と核酸との結合性を評価する方法を提供すること。
【解決手段】二重鎖部分を有する核酸と他の核酸との鎖交換反応を測定することを含む核酸結合性物質の評価法を見出した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、核酸結合性物質の核酸との結合性能を評価する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
核酸に結合する低分子化合物は、核酸複製や転写活性の阻害作用を有し、抗ガン剤や抗ウイルス剤などへ既に応用されている。その一例として、アクチノマイシンD、ジスタマイシン、シスプラチン等が挙げられる。また、Hoechst33258は、遺伝子診断や核酸診断用途における核酸検出試薬として極めて有用な核酸結合性化合物である。
様々な抗菌、抗ウィルス剤、又は、高感度核酸検出試薬を開発するには、より特定の塩基配列や特定の構造の核酸を認識して結合する低分子化合物や、核酸に対して低い結合定数の化合物が求められており、これを実現する為の評価方法・スクリーニング方法が必要とされている。
【0003】
核酸結合性物質と核酸の結合を評価する方法として、ゲルシフトアッセイ法、フットプリント法、熱分析法や蛍光基置換法等が挙げられる。
【0004】
ゲルシフトアッセイ法は、核酸結合性物質を放射標識した目的核酸に結合させてSDS−PAGEを行い、その分子量の変化を放射標識した核酸バンドの移動度の変化として検出する方法である。フットプリント法は、主に核酸結合性物質が結合する核酸配列を同定する方法で、物質と結合した核酸を分解酵素にて消化したあと電気泳動を行い、酵素にて消化されない配列領域が結合領域として同定される方法である。ゲルシフトアッセイ法およびフットプリント法ともに、主に核酸と核酸結合タンパクとの結合の評価に用いられており、一度に評価できるサンプルが限られ手間と時間を要する。これらの方法を利用してDNA結合分子を検出するためのアッセイ方法が、特許第3169610号に開示されている。テスト配列に隣接する領域にスクリーニング配列と呼ばれる配列を有する核酸と、このスクリーニング配列に結合するタンパク質とを用いる方法であって、化合物がテスト配列に結合して、スクリーニング配列に結合したタンパクの結合量の変化を測定する方法である。
【0005】
示差熱分析法(DTA法)は、試料と基準物質の温度を一定のプログラムに従って変化させながら、両物質間の温度差を温度の関数として測定する技術である。示差走査熱量測定法(DSC法)は、試料と基準物質の温度を一定のプログラムに従って変化させながら、両物質に対する熱流の入力差を温度の関数として測定する方法で、Lahら(Biochemistry, 39,9317−9326,(2000))やMaedaら(J.Mol.Biol.,215(2):321−9.(1990)らによって報告されている。これらは、数から数百μMの比較的高濃度の核酸を用いて評価を行うことが必要とされる。
【0006】
蛍光基置換法は、核酸結合性物質が核酸に結合した際に、核酸に予めインターカレートしていた化合物が解離する量を測定する方法である。ボーガーらによって、この方法をスクリーニング系に応用した方法が報告されている(J. Am. Chem. Soc. 123, 5878(2001))。この方法は、二重鎖のターゲット配列であるステム配列とループ配列とを有する単鎖核酸プローブを用い、ステム配列にインターカレートしたエチジウムブロミドが、核酸結合性物質の結合により解離し、その蛍光強度が変化する量を測定する方法である。この方法を用いると、ハイスループットにて核酸結合性物質をスクリーニングすることが可能であるが、検出感度が十分でなく、過剰の試薬を必要とする。
【0007】
その他に、物質の相互作用を測定する方法として表面プラズモン共鳴現象(SPR)を用いた方法が挙げられる。これはセンサー表面上に物質が結合すると、センサー表面上での偏光の屈折率が変化する原理を使用したもので、特に抗原・抗体反応、核酸と核酸結合性タンパクの相互作用の解析に良く用いられる。また一部タンパク質と低分子化合物との結合性の評価にも応用されているが、低分子だとセンサー表面に結合しても分子量の変化が少なく、検出感度が大きく低下する。
【0008】
DNA鎖の交換反応は、in vitroにおける組換え酵素を用いた相同組換えの反応過程にておこり、その中でも大腸菌RecAタンパクによる組換えがよく知られている(Mol.Gen.Genet.,155,77−85(1977).Pro.Natl.Acad.Scl.USA,74,5280−5284(1977);Pro.Natl.AcadSci.USA,77,2611−2615(1980)など)。その他類似構造を持ち同様の機能を有するタンパク質が原核生物、真核生物(Cell,69,457−470(1992)など)、ウイルス(Nucl.Acids Res.,13,7473−7481(1985))など広い範囲で見出されている。
【0009】
RecAタンパク質は、単鎖DNAに結合し複合体を形成し、この単鎖DNAと二重鎖DNAとの間における相同な塩基配列を探し出す。相同配列を見つけ出すと、単鎖DNAと二重鎖DNAとの複合体(三重鎖)形成を経て、DNAを放出する(Tanpakushitsu Kakusan Koso.44,631−642(1999))。このようにRecAは二重鎖の一方を交換したヘテロ二重鎖を形成して行くが、この過程には、RecAタンパクの他に、ATPおよびMg2+が補助因子として必要である。
【0010】
二重鎖DNAのDNA交換を加熱などの変性過程を行わずに人工的に達成した例としては、ペプチド核酸(PNA)があり(Nature Biotechnology,14.1700 1704(1996)、このPNAを用いた新しいDNAおよびゲノム解析法が種々報告されている。しかしながら、PNAは低イオン濃度下ではDNA鎖交換を促進するが、生理的イオン濃度条件下では、その性能が極めて低下する。また、天然型DNAやRNAと異なり、DNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼやリガーゼなどの基質とならない問題があり、PNAによるDNAやゲノム解析に制約をもたらしているのが現状である。
【0011】
RecAなどの組換え酵素が不要な鎖交換反応が、丸山らによって特開2001−78769号に開示されている。丸山らは、DNA二重鎖あるいは三重鎖の形成及び安定化を促進するくし型(comb-type)のコポリマー(特開平10−158196号、および、Bioconjugate Chem.,8,3−6(1997);Nucleic Acids Sym.Ser.No.39,133−134(1998);Bioconjugate Chem.,9,292−299(1998))が、相同ヌクレオチド配列の鎖交換反応を促進していることを見出した。このポリマー共存下では室温にて容易に鎖交換反応を促進し、極めて有用性の高い方法を見出すに至った。
【0012】
さらには、タンパクやポリマーが不要で鎖交換反応を促進する方法が、特表2004−511227号に開示されている。これは、核酸プローブの末端の数塩基対が部分的に単鎖である部分二重鎖プローブを用いる方法である。この部分二重鎖プローブと標的とする単鎖核酸分子とを反応させると、部分二重鎖プローブの単鎖配列と標的とする単鎖核酸配列とがハイブリダイズし、部分二重鎖プローブのもう一方の単鎖を遊離させ、自発的に鎖交換反応を起こす方法である。
【0013】
【非特許文献1】Biochemistry, 39, 9317−9326,(2000)
【非特許文献2】J.Mol.Biol.,215(2):321−9.(1990)
【非特許文献3】J. Am. Chem. Soc. 2001, 123, 5878
【非特許文献4】Mol.Gen.Genet.,155,77−85(1977)
【非特許文献5】Pro.Natl.Acad.Scl.USA,74,5280−5284(1977)
【非特許文献6】Pro.Natl.AcadSci.USA,77,2611−2615(1980)
【非特許文献7】Cell,69,457−470(1992)
【非特許文献8】Nucl.Acids Res.,13,7473−7481(1985)
【非特許文献9】Tanpakushitsu Kakusan Koso.44,631−642(1999)
【非特許文献10】Nature Biotechnology,14.1700 1704(1996)
【非特許文献11】Bioconjugate Chem.,8,3−6(1997)
【非特許文献12】Nucleic Acids Sym.Ser.No.39,133−134(1998)
【非特許文献13】Bioconjugate Chem.,9,292−299(1998))
【特許文献1】特許第3169610号
【特許文献2】特開2001−78769号
【特許文献3】特開平10−158196号
【特許文献4】特表2004−511227号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の課題は、高感度・高精度・短期間に、核酸結合性物質と核酸との結合性を評価する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく種々検討した結果、鎖交換反応を発展させて、核酸結合性物質を高感度・高精度・短期間に測定する方法を見出し、本発明を完成させるに至った。
【0016】
すなわち本発明は、以下の発明を包含する。
(1) 二重鎖部分を有する核酸と他の核酸との鎖交換反応を測定することを含む、核酸結合性物質の評価法。
【0017】
(2) (i)二重鎖部分を有する核酸と核酸結合性物質とを混合して結合させる工程;
(ii)他の核酸を添加する工程;及び
(iii)二重鎖部分を有する核酸を構成する核酸の少なくとも一部と、他の核酸を構成する核酸の少なくとも一部とが、鎖交換する速度または率を測定することによって、鎖交換反応を測定する工程:
を含む、(1)記載の方法。
【0018】
(3) (i)他の核酸と核酸結合性物質とを混合して結合させる工程;
(ii)二重鎖部分を有する核酸を添加する工程;及び
(iii)二重鎖部分を有する核酸を構成する核酸の少なくとも一部と、他の核酸を構成する核酸の少なくとも一部とが、鎖交換する速度または率を測定することによって、鎖交換反応を測定する工程:
を含む、(1)記載の方法。
【0019】
(4) 二重鎖部分を有する核酸の末端あるいは一部が単鎖である、(1)から(3)に記載の方法。
(5) 他の核酸が単鎖の核酸である、(1)から(3)に記載の方法。
(6) 二重鎖部分を有する核酸の末端が単鎖であり、他の核酸が単鎖の核酸である(1)から(3)に記載の方法。
(7) 二重鎖部分を有する核酸が蛍光標識した核酸であり、鎖交換反応を蛍光測定によって測定する、(1)から(6)の何れかに記載の方法。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、高感度・高精度・短期間に、核酸結合性物質と核酸との結合性を評価する方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明において核酸とは、DNA、RNAのいずれでもよく、核酸誘導体や修飾塩基の非天然型ヌクレオチドやPNA(Nature Biotechnolpgy,14.1700−1704(1996))と呼ばれる非天然型ヌクレオチド結合を含んでもよい。
また核酸は、限定しないかぎり単鎖核酸でも、二重鎖核酸、三重鎖核酸でもよい。
二重鎖核酸とは、相補的な塩基対、例えば、DNAでは、アデニン(A)とチミン(T)およびグアニン(G)とシトシン(C)、RNAでは、Aとウラシル(U)およびGとCとの対合により形成される高次構造体を意味する。DNA単鎖/DNA単鎖の二重鎖DNA、RNA単鎖/RNA単鎖の二重鎖RNAのほか、DNA単鎖/RNA単鎖のハイブリッド二重鎖核酸も挙げられる。また二重鎖部分を有する核酸として、単鎖核酸の自己分子内にて相補的な配列同士がアニーリングを起こして形成される二重鎖構造であってもよい。
【0022】
核酸結合性物質とは、核酸に結合性を有する物質であって、低分子化合物、タンパク質、糖、核酸、核酸誘導体、高分子ポリマー、金属イオンなどが挙げられるがこれらに限定されない。
【0023】
鎖交換反応とは、例えば、二重鎖DNAあるいはRNAの特定部位のヌクレオチド配列が、該配列に相同の単鎖DNAあるいはRNAのヌクレオチド配列により入れ替わり再構成される場合を意味する。
【0024】
鎖交換反応は、二重鎖DNAあるいはRNAが熱変性しないような温度下で行うことができ、ATPやMg2+などの補助因子を必要とすることなく行うことができる。上記温度は、生物細胞等に悪影響が生じない生理的に許容できる温度、例えば、約5℃〜約40℃であることが好ましい。
【0025】
化合物と二重鎖プローブを混合してから鎖交換反応を行うと、二重鎖核酸に結合する化合物の結合を評価することができる。逆に、先に化合物と鎖交換用単鎖オリゴヌクレオチドとを混合して鎖交換反応を行うと、単鎖核酸に対する化合物の結合を評価することができる。さらには、二重鎖プローブ、または、鎖交換反応用単鎖オリゴヌクレオチドの一方に高次構造を有する核酸を使用すれば、その高次構造に特異的に結合する化合物の結合性を評価することが出来る。
【0026】
核酸は、溶液の状態でもよく、ELISAプレートや磁気ビーズのような固相表面上に固定化された状態でもよく、例えば、部分二重鎖プローブを96穴や384穴プレート上に固定化し、化合物を添加後に相補的単鎖を添加して鎖交換反応を行い、部分二重鎖プローブの蛍光強度の変化を測定するハイスループット評価系を構築することが出来る。
【0027】
鎖交換反応過程を測定する方法として、核酸をFITCやTAMRA等にて蛍光標識すする方法がよく用いられる。例えば、二重鎖部分を有する核酸の各々の鎖の片方の末端(3’末端又は5’末端)をFITCやTAMRA等の蛍光基で蛍光標識しておき、他方の末端(5’末端又は3’末端)をDABCYLなどの消光基で標識しておき、両者をアニーリングさせて二重鎖DNAを調製すると、調製された二重鎖DNAの末端の蛍光標識は、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)により消光した状態とすることができる。このような二重鎖DNAに対して、他の核酸を混合して鎖交換反応を行うと、鎖交換反応の進行に伴って、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)による消光状態が解消されて、蛍光が発生するようになる。この蛍光強度の変化を計測することにより、鎖交換反応過程を測定することができる。
【0028】
あるいは複数の蛍光物質を組み合わせて、FRET法にて蛍光強度の変化を計測する方法も可能である。
【0029】
また、SPR法にて分子量の変化を測定する方法も挙げられるが、これらに限定されない。
【0030】
例えばエチジウムブロミドを用いた蛍光基置換法では、インターカレートするエチジウムブロミドの僅かな変化量を測定する必要があり、検出感度が低下する。しかし本発明の方法に従えば、部分二重鎖プローブでのFRETを測定する場合、得られるシグナルがON/OFFであるため、低濃度の化合物の結合をより高感度に検出する事が可能となる。
【実施例】
【0031】
以下に発明を実施する形態について例を示すが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0032】
[実施例1] 核酸結合性低分子化合物存在下での鎖交換反応
二重鎖DNAに結合する低分子化合物2種、Distamycin (以下Dst)とHoechst33258(以下Hoechst)とは、シグマ−アルドリッチ社より購入した。これらはATリッチな二重鎖DNAの副溝に沿って結合することが知られている。これら化合物が結合する二重鎖DNAを調製するため、AT塩基対の5回繰り返し配列(A5配列)と、これをスクランブル配列(SCR配列)とした二種類の部分二重鎖プローブを設計し(表1)、各オリゴヌクレオチドの合成を(株)ファスマック社に依頼した。それぞれ、5’末端を消光基DABCYL、3’末端を蛍光基TAMRAで二重ラベルしており、これら相補的なオリゴヌクレオチドを適当な条件下でアニーリングさせ二重鎖DNAを調製する。調製された二重鎖DNAの末端の蛍光標識は、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)により消光した状態とする。A5およびSCRの二重鎖プローブを10mMリン酸緩衝液(NaCl 150mM, pH7.2)中に終濃度12nMで調製し、各化合物を120nM添加して室温で30分間インキュベートした。その後、二重鎖に対して5倍量の相補的単鎖オリゴヌクレオチドA5−tまたはSCR−tを添加して蛍光強度変化を日本分光FP6500にて測定した。
【0033】
その結果を図1に示す。核酸結合性化合物が部分二重鎖プローブに結合した場合に、鎖交換反応が著しく阻害されていることが示されている。化合物が存在しない場合、時間とともに蛍光強度が増大し、鎖交換反応が進んでいることがわかる。各化合物120nMの存在下において、A5プローブにおいて、顕著な鎖交換反応の抑制がみられた。一方、SCR配列では、化合物による顕著な反応阻害は見られなかった。つまり、DstとHoechstの両化合物は、ATの繰り返し二重鎖配列に選択的に結合し、鎖交換反応を阻害したことが示される。したがって、化合物の配列依存的な相互作用を本アッセイ法で検出可能である。
【0034】
【表1】

【0035】
[実施例2]鎖交換反応阻害における低分子化合物の濃度依存性
実施例1と同様にして行った。A5およびSCRの二重鎖プローブを10mMリン酸緩衝液(NaCl 150mM, pH7.2)中に終濃度12nMで調製し、0〜120nM濃度の各化合物を添加して室温で30分間インキュベートした。その後、二重鎖プローブに対して5倍量の相補的単鎖オリゴヌクレオチドA5−tまたはSCR−tを添加して蛍光強度の変化を日本分光FP6500にて測定した。その結果を図2に示す。
【0036】
A5プローブに各化合物を添加すると、ともに濃度依存的な反応速度の低下が見られた。一方で、SCRプローブでは反応速度の低下が観察されなかった。Bogerらの報告(非特許文献3)によれば、ATの5回繰り返し配列に対するDst, Hoechstの結合定数はそれぞれ17×106 -1, 72×106 -1であり、Hoechst存在下における鎖交換反応速度低下が観察された濃度条件にほぼ一致する。しかしDst存在下では、報告された結合定数よりも低濃度条件下で反応速度低下が観察されており、より高感度にDstと二重鎖の結合を観測できている可能性が示唆された。
【0037】
[実施例3]低分子化合物が二重鎖DNAの安定性に与える影響
各低分子化合物の添加濃度を変化させ、それに伴う二重鎖DNAの融解温度曲線変化を評価した。融解温度の測定は島津製作所製の紫外可視分光高度計UV−1650PCにて行った。その結果を、図3に示す。
【0038】
A5配列に対してDst, Hoechstをそれぞれ添加した結果、濃度依存的な融解温度の上昇が観察されたが、SCR配列については優位な融解温度変化が観察されなかった。
【0039】
各低分子化合物の二重鎖の安定性に与える影響、つまり融解温度の変化は、実施例2で示した鎖交換反応の速度の変化よりも小さい。つまり、核酸結合性物質と核酸との相互作用の解析が、極めて高感度にて可能であることが示唆された。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、高感度・高精度・短期間に、核酸結合性物質と核酸との結合性を評価する方法を提供することができる。この方法を応用すれば、ある特定の核酸配列やある高次構造を有する核酸に特異的に結合する核酸結合性物質をスクリーニングすることが出来る。また一方で、様々な配列を含む核酸群との結合性を評価することで、核酸結合性物質が結合する核酸の配列や高次構造を特定することが可能となる。更には、核酸の転写因子や転写調節因子等の酵素と核酸との結合をモニターすることによって、転写因子の転写活性阻害剤などのをスクリーニングすることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】図1は、核酸結合性化合物存在下における鎖交換反応を示す図で、(a)はA5プローブによる鎖交換反応、(b)はSCRプローブによる鎖交換反応を示す図である。
【図2】図2は、核酸結合性化合物が鎖交換反応に及ぼす阻害活性の濃度依存性を示す図である。
【図3】図3は、核酸結合性化合物存在下で鎖交換反応を行い、二重鎖プローブの融解温度の変化を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二重鎖部分を有する核酸と他の核酸との鎖交換反応を測定することを含む、核酸結合性物質の評価法。
【請求項2】
(i)二重鎖部分を有する核酸と核酸結合性物質とを混合して結合させる工程;
(ii)他の核酸を添加する工程;及び
(iii)二重鎖部分を有する核酸を構成する核酸の少なくとも一部と、他の核酸を構成する核酸の少なくとも一部とが、鎖交換する速度または率を測定することによって、鎖交換反応を測定する工程:
を含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
(i)他の核酸と核酸結合性物質とを混合して結合させる工程;
(ii)二重鎖部分を有する核酸を添加する工程;及び
(iii)二重鎖部分を有する核酸を構成する核酸の少なくとも一部と、他の核酸を構成する核酸の少なくとも一部とが、鎖交換する速度または率を測定することによって、鎖交換反応を測定する工程:
を含む、請求項1記載の方法。
【請求項4】
二重鎖部分を有する核酸の末端あるいは一部が単鎖である、請求項1から3に記載の方法。
【請求項5】
他の核酸が単鎖の核酸である、請求項1から3に記載の方法。
【請求項6】
二重鎖部分を有する核酸の末端が単鎖であり、他の核酸が単鎖の核酸である請求項1から3に記載の方法。
【請求項7】
二重鎖部分を有する核酸が蛍光標識した核酸であり、鎖交換反応を蛍光測定によって測定する、請求項1から6の何れかに記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−54642(P2008−54642A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−238752(P2006−238752)
【出願日】平成18年9月4日(2006.9.4)
【出願人】(506299320)
【出願人】(000000033)旭化成株式会社 (901)
【Fターム(参考)】