説明

核酸送達の為のPEG−PEI共重合体

水溶性ポリエチレングリコール成分と、カチオン性ポリエチレンイミン成分と、分解可能ユニット成分とを有する水溶性の分解可能な架橋されたカチオン性ポリマーを含む、siRNA送達のための組成物が記載される。本発明の組成物は、siRNAを細胞(具体的には、ガン細胞)に送達するために使用することができる。本発明の組成物は固体表面(例えば、マルチウエルプレートなど)に適用することができ、その結果、siRNAの送達を固体表面において行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本出願は米国仮特許出願第60/972,686号(2007年9月14日出願)および米国仮特許出願第60/942,127号(2007年6月5日出願)の優先権を主張する。両出願は参照によって本明細書中に組み込まれる。
【0002】
(配列表)
本出願は電子的形式での配列表と一緒に出願されている。配列表は、NDTCO−068PR2−SequenceListing.TXTと題されるファイル(2007年9月14日作製、これはサイズが2Kbである)として提供される。配列表の電子的形式での情報はその全体が参照によって本明細書中に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
発明の分野
本明細書中に記載される様々な実施形態が、siRNAを細胞内に送達するための組成物および方法に関連する。より具体的には、本明細書中に記載される様々な実施形態が、siRNAを細胞内に送達するための水溶性の分解可能な架橋されたカチオン性ポリマーにより被覆されるプレートに関連する。
【0004】
(関連技術の記載)
数多くの技術が、プラスミドDNAによりコードされたsiRNAを細胞内に送達するために利用可能である。例えば、ポリ(L−リシン)(PLL)、ポリエチレンイミン(PEI)、キトサン、PAMAMデンドリマーおよびポリ(2−ジメチルアミノ)エチルメタクリラート(pDMAEMA)を含めて、様々なカチオン性ポリマーがこれまで、遺伝子キャリアとして使用されている。残念ながら、トランスフェクション効率は、PLLに関して典型的には不良であり、また、高分子量のPLLは、細胞に対する著しい毒性が示されている。一部の場合において、PEIは、効率的な遺伝子移入を、エンドソーム溶解(endosomolytic)剤または標的化剤を必要とすることなくもたらす(Boussif O.他、Proc Natl Acad Sci USA、1995(8月1日)、92(16)、7297〜301(非特許文献1)を参照のこと)。様々なポリアミドアミンデンドリマーが遺伝子送達システムとして研究されている(Eichman J.D.他、Pharm.Sci.Technol.Today、2000(7月)、3(7):232〜245(非特許文献2)を参照のこと)。残念ながら、良好なトランスフェクション効率をもたらすことが見出されている高分子量のPEIおよびデンドリマーはともに、細胞に対して毒性であることが報告されている。分解可能なカチオン性ポリマーとともに作製されるプラスミドDNAキャリアは、低下した細胞毒性とともに、プラスミドを哺乳動物細胞に移入することが報告されている(Lim Y.B.他、J.Am.Chem.Soc.、123(10)、2460〜2461、2001(非特許文献3)を参照のこと)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Boussif O.他、Proc Natl Acad Sci USA、1995(8月1日)、92(16)、7297〜301
【非特許文献2】Eichman J.D.他、Pharm.Sci.Technol.Today、2000(7月)、3(7):232〜245
【非特許文献3】Lim Y.B.他、J.Am.Chem.Soc.、123(10)、2460〜2461、2001
【発明の概要】
【0006】
本明細書中に記載される様々な実施形態が、siRNA送達のための組成物に関する。1つの実施形態において、siRNA送達のための組成物は、(a)繰り返し骨格のポリエチレングリコール(PEG)ユニットと、(b)繰り返し骨格のカチオン性ポリエチレンイミン(PEI)ユニットと、(c)側鎖脂質基を含む、繰り返し骨格の分解可能ユニットとを含むことができる水溶性の分解可能な架橋されたカチオン性ポリマーを含むことができる。
【0007】
本明細書中に記載される様々な実施形態が、本明細書中に記載される水溶性の分解可能な架橋されたカチオン性ポリマーを作製する方法に関する。いくつかの実施形態において、水溶性の分解可能な架橋されたカチオン性ポリマーを、繰り返しエチレンイミンユニットを含む第1の反応物を有機溶媒に溶解して、溶解または部分的に溶解されたポリマー反応物を形成すること;溶解または部分的に溶解されたポリマー反応物を分解可能なモノマー反応物と反応させて、分解可能な架橋されたポリマーを形成すること(ただし、分解可能なモノマー反応物が脂質基を含む);および、分解可能な架橋されたポリマーを第3の反応物と反応させること(ただし、第3の反応物が繰り返しポリエチレングリコールユニットを含む)によって合成することができる。
【0008】
本明細書中に記載される様々な実施形態が、下記の工程を含む、siRNAを細胞内に送達する方法に関する:本明細書中に記載されるようないずれかの水溶性の分解可能な架橋されたカチオン性ポリマーをsiRNAと一緒にして、混合物を形成する工程、および、1つまたは複数の細胞をそのような混合物と接触させる工程。より好ましくは、siRNAは19塩基対〜27塩基対を有する。好ましい実施形態において、細胞は哺乳動物細胞である。より好ましくは、哺乳動物細胞はガン細胞である。
【0009】
本明細書中に記載される様々な実施形態が、本明細書中に記載されるような水溶性の分解可能な架橋されたカチオン性ポリマーと複合体化される、リポタンパク質遺伝子セグメントのコード領域の少なくとも一部分に対応するsiRNAをその必要性のある個体に投与することを含むことができる、心臓血管疾患を処置するか、または、心臓血管疾患の危険性を低下させる方法に関連する。
【0010】
本明細書中に記載される様々な実施形態が、トランスフェクション剤を含む組成物が少なくとも部分的に付着する固体表面を含むことができる、真核生物細胞をsiRNAによりトランスフェクションするためのデバイスに関連し、この場合、トランスフェクション試薬が、水溶性の分解可能な架橋されたカチオン性ポリマー、カチオン性ポリマー、リポポリマー、PEG化されたカチオン性ポリマー、PEG化されたリポポリマー、カチオン性脂質、PEG化されたカチオン性脂質、および、カチオン性の分解可能なPEG化されたリポポリマーから選択される。
【0011】
本明細書中に記載される様々な実施形態が、siRNAが真核生物細胞の中に入ることができるかどうかを判定する方法に関連する。この方法は下記の工程の1つまたは複数を含むことができる:(a)本明細書中に記載されるデバイスを提供する工程、(b)siRNAを、siRNAがトランスフェクション試薬と相互作用するように前記デバイスに加える工程、(c)真核生物細胞を細胞内へのsiRNAの導入のための十分な密度および適切な条件で前記デバイスに播種する工程、および、(d)siRNAが細胞の中に入っているかどうかを検出する工程。
【0012】
本明細書中に記載される様々な実施形態が、下記の工程を含むことができる、siRNAを真核生物細胞に導入するための方法に関連する:(a)本明細書中に記載される水溶性の分解可能な架橋されたカチオン性ポリマーにより少なくとも部分的に被覆される固体表面を提供する工程、(b)真核生物細胞に導入されるためのsiRNAを細胞表面に加える工程、および、(c)細胞を真核生物細胞内へのsiRNAの導入のための十分な密度および適切な条件で前記固体表面に播種する工程。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】水溶性の分解可能な架橋されたカチオン性ポリマーの一部分を合成する方法を示す。
【図2】siRNAトランスフェクション後のHela細胞における緑色蛍光タンパク質のパーセント活性を示す。この実験で使用される水溶性の分解可能な架橋されたカチオン性ポリマーは下記の通りであった:ポリマー2(分解可能ユニット:PEI:PEG(12:1:2))、ポリマー3(分解可能ユニット:PEI:PEG(16:1:2))、ポリマー4(分解可能ユニット:PEI:PEG(17:1:2))、ポリマー5(分解可能ユニット:PEI:PEG(20:1:2))。コントロールは、PEI1200、Cytopure(商標)、Lipofectamine2000(商標)および分解可能ユニット:PEI(5:1)である(すべてがモル比である)。ポリマー対siRNAの比率が2:1である。
【図3】siRNAトランスフェクション後のB16F0細胞における緑色蛍光タンパク質のパーセント活性を示す。水溶性の分解可能な架橋されたカチオン性ポリマー、コントロールおよびポリマー/siRNA比率は、図2に対する説明文において述べらる通りである。
【図4】siRNAによるトランスフェクションの後におけるHela細胞についてのパーセント細胞生存率を示す。水溶性の分解可能な架橋されたカチオン性ポリマー、コントロールおよびポリマー/siRNA比率は、図2に対する説明文において述べらる通りである。
【図5】出発物質のポリエチレンイミン−1,200ダルトン(分岐型PEI−1.2K、陰性コントロール)、プラスミド送達試薬Cytopure(商標)(陰性コントロール)、Lipofectamine2000(商標)(L2K)およびポリマー1を使用する、Hela細胞の緑色蛍光(GFP)活性(%)をプロットする棒グラフを示す。ポリマー:siRNAの比率が5:1である。結果は、ポリマー1およびLipofectamine2000(商標)が、他の知られているプラスミド送達剤のCytopure(商標)よりも良好な、遺伝子発現を阻害するためのsiRNAの被覆送達をもたらすことを示す。ポリマー1は、分解可能ユニット:PEI:PEGの所定のモル比(5:1:2)を有する水溶性の分解可能な架橋されたカチオン性ポリマーである。
【図6】出発物質のポリエチレンイミン−1,200ダルトン(分岐型PEI−1.2K、陰性コントロール)、プラスミド送達試薬Cytopure(商標)(陰性コントロール)、Lipofectamine2000(商標)(L2K)およびポリマー1を使用する、Hela細胞の細胞生存率(%)をプロットする棒グラフを示す。ポリマー1は、分解可能ユニット:PEI:PEGの所定のモル比(5:1:2)を有する水溶性の分解可能な架橋されたカチオン性ポリマーである。ポリマー:siRNAの比率が5:1である。結果は、ポリマー1およびL2Kがこのアッセイにおいて細胞毒性を示さないことを示す。
【図7】出発物質のポリエチレンイミン−1,200ダルトン(分岐型PEI−1.2K、陰性コントロール)、プラスミド送達試薬Cytopure(商標)(陰性コントロール)、Lipofectamine2000(商標)(L2K)およびポリマー1を使用する、Hela細胞の緑色蛍光(GFP)活性(%)をプロットする棒グラフを示す。ポリマー1は、分解可能ユニット:PEI:PEGの所定のモル比(5:1:2)を有する水溶性の分解可能な架橋されたカチオン性ポリマーである。ポリマー:siRNAの比率が10:1である。結果は、ポリマー1およびL2Kが、プラスミド送達剤のCytopure(商標)と異なって、遺伝子発現を阻害するためのsiRNAの同等な被覆送達をもたらすことを示す。
【図8】出発物質のポリエチレンイミン−1,200ダルトン(分岐型PEI−1.2K、陰性コントロール)、プラスミド送達試薬Cytopure(商標)(陰性コントロール)、Lipofectamine2000(商標)(L2K)およびポリマー1を使用する、Hela細胞の細胞生存率(%)をプロットする棒グラフを示す。ポリマー1は、分解可能ユニット:PEI:PEGの所定のモル比(5:1:2)を有する水溶性の分解可能な架橋されたカチオン性ポリマーである。ポリマー:siRNAの比率が10:1である。結果は、ポリマー1およびL2Kがこのアッセイにおいて細胞毒性を示さないことを示す。
【図9】出発物質のポリエチレンイミン−1,200ダルトン(分岐型PEI−1.2K、陰性コントロール)、プラスミド送達試薬Cytopure(商標)(陰性コントロール)、Lipofectamine2000(商標)(L2K)およびポリマー1を使用する、B16F0細胞の緑色蛍光(GFP)活性(%)をプロットする棒グラフを示す。ポリマー1は、分解可能ユニット:PEI:PEGの所定のモル比(5:1:2)を有する水溶性の分解可能な架橋されたカチオン性ポリマーである。ポリマー:siRNAの比率が2.5:1である。結果は、ポリマー1およびL2Kが、プラスミド送達剤のCytopure(商標)よりも良好な、遺伝子発現を阻害するためのsiRNAの被覆送達をもたらすことを示す。
【図10】出発物質のポリエチレンイミン−1,200ダルトン(分岐型PEI−1.2K、陰性コントロール)、プラスミド送達試薬Cytopure(商標)(陰性コントロール)、Lipofectamine2000(商標)(L2K)およびポリマー1を使用する、B16F0細胞の細胞生存率(%)をプロットする棒グラフを示す。ポリマー1は、分解可能ユニット:PEI:PEGの所定のモル比(5:1:2)を有する水溶性の分解可能な架橋されたカチオン性ポリマーである。ポリマー:siRNAの比率が2.5:1である。結果は、ポリマー1およびL2Kがこのアッセイにおいて細胞毒性を示さないことを示す。
【図11】出発物質のポリエチレンイミン−1,200ダルトン(分岐型PEI−1.2K、陰性コントロール)、プラスミド送達試薬Cytopure(商標)(陰性コントロール)、Lipofectamine2000(商標)(L2K)およびポリマー1を使用する、B16F0細胞の緑色蛍光(GFP)活性(%)をプロットする棒グラフを示す。ポリマー1は、分解可能ユニット:PEI:PEGの所定のモル比(5:1:2)を有する水溶性の分解可能な架橋されたカチオン性ポリマーである。ポリマー:siRNAの比率が5:1である。結果は、ポリマー1およびL2Kが、プラスミド送達剤のCytopure(商標)よりも良好な、遺伝子発現を阻害するためのsiRNAの被覆送達をもたらすことを示す。
【図12】出発物質のポリエチレンイミン−1,200ダルトン(分岐型PEI−1.2K、陰性コントロール)、プラスミド送達試薬Cytopure(商標)(陰性コントロール)、Lipofectamine2000(商標)(L2K)およびポリマー1を使用する、B16F0細胞の細胞生存率(%)をプロットする棒グラフを示す。ポリマー1は、分解可能ユニット:PEI:PEGの所定のモル比(5:1:2)を有する水溶性の分解可能な架橋されたカチオン性ポリマーである。ポリマー:siRNAの比率が5:1である。結果は、ポリマー1およびL2Kがこのアッセイにおいて細胞毒性を示さないことを示す。
【図13】出発物質のポリエチレンイミン−1,200ダルトン(分岐型PEI−1.2K、陰性コントロール)、プラスミド送達試薬Cytopure(商標)(陰性コントロール)、Lipofectamine2000(商標)(L2K)およびポリマー1を使用する、B16F0細胞の緑色蛍光(GFP)活性(%)をプロットする棒グラフを示す。ポリマー1は、分解可能ユニット:PEI:PEGの所定のモル比(5:1:2)を有する水溶性の分解可能な架橋されたカチオン性ポリマーである。ポリマー:siRNAの比率が10:1である。結果は、ポリマー1およびL2Kが、プラスミド送達剤のCytopure(商標)よりも良好な、遺伝子発現を阻害するためのsiRNAの被覆送達をもたらすことを示す。
【図14】出発物質のポリエチレンイミン−1,200ダルトン(分岐型PEI−1.2K、陰性コントロール)、プラスミド送達試薬Cytopure(商標)(陰性コントロール)、Lipofectamine2000(商標)(L2K)およびポリマー1を使用する、B16F0細胞の細胞生存率(%)をプロットする棒グラフを示す。ポリマー1は、分解可能ユニット:PEI:PEGの所定のモル比(5:1:2)を有する水溶性の分解可能な架橋されたカチオン性ポリマーである。ポリマー:siRNAの比率が10:1である。結果は、ポリマー1がこのアッセイにおいて細胞毒性を示さないことを示す。
【図15】HepG2細胞培養におけるapo−B発現の阻害に対する、トランスフェクション剤ポリマー6/siApo−Bの複合体の増大する量を示す。ポリマー6は、分解可能ユニット:PEI:PEGのモル比が16.5:1:2である水溶性の分解可能な架橋されたカチオン性ポリマーである。コントロール処理には、単独でのポリマー6およびsiApo−B(5μg)が含まれた。
【図16】RiboGreen(商標)組み込みアッセイを使用する蛍光による、5%グルコースにおけるトランスフェクション剤/siRNAの複合体の安定性を示す。トランスフェクション剤はポリマー2であり、siRNAは抗Apo−Bであった。ポリマー2は、図2に対する説明文において記載される。
【図17】ポリマー6をトランスフェクション剤として使用する、抗Apo−Bによるヌードマウスにおけるapo−Bの発現の阻害を示す。ポリマー6は、分解可能ユニット:PEI:PEGのモル比が16.5:1:2である水溶性の分解可能な架橋されたカチオン性ポリマーである。コントロール処理には、PBS(A)、siApo−B(1mg/kg)(B)、ポリマー6(5mg/kg)(C)、および、5:1のモル比でのポリマーおよびランダムsiRNA(術後48時間での1mg/kgのsiApo−Bの投与)(F)が含まれた。処理には、術後48時間での1.0mg/kgの抗Apo−B siRNA(D)、および、術後2週間での2.5mg/kgの抗Apo−B siRNA(E)が含まれた。ポリマー対siRNAの比率が5/1であった。
【図18】ヌードマウスにおけるApo−Bの阻害のためのsiRNA(抗Apo−B)に対するトランスフェクション剤(ポリマー6)の比率を変化させることの影響を示す。ポリマー6は、分解可能ユニット:PEI:PEGのモル比が16.5:1:2である水溶性の分解可能な架橋されたカチオン性ポリマーである。コントロールはPBS(A)である。処理は、5:1(重量比)の比率でのポリマー6+siApo−B(B)、7.5:1(重量比)の比率でのポリマー6+siApo−B(C)、および、10:1(重量比)の比率でのポリマー6+siApo−B(D)である。すべての処理(B〜D)において、1mg/kgのsiApo−Bが投与された。
【図19】トランスフェクション剤ポリマー6:siRNA(抗Apo−B)の複合体をヌードマウスの尾静脈に注入した後におけるApo−BのmRNA発現の阻害の経時変化を示す。ポリマー6は、分解可能ユニット:PEI:PEGのモル比が16.5:1:2である水溶性の分解可能な架橋されたカチオン性ポリマーである。コントロールはPBS(A)である。処理は、術後48時間で測定された、1mg/kgのsiApo_Bで投与されるポリマー6+siApo−B(B)、術後1週間で測定された、2.5mg/kgのsiApo_Bで投与されるポリマー6+siApo−B(C)、および、術後2週間で測定された、2.5mg/kgのsiApo_Bで投与されるポリマー6+siApo−B(D)である。すべての処理(B〜D)において、ポリマー対siRNAの比率が5:1(重量比)であった。
【図20】トランスフェクション剤ポリマー6:siRNA(抗Apo−B)の複合体をC57BL/6マウスの尾静脈に注入した後におけるApo−BのmRNA発現の阻害の経時変化を示す。ポリマー6は、分解可能ユニット:PEI:PEGのモル比が16.5:1:2である水溶性の分解可能な架橋されたカチオン性ポリマーである。コントロールには、PBS(A)、および、siap−B(1mg/kg)が含まれる。処理には、ポリマー6+siapo−B(5/1、重量対重量比、1mg/kgのsiapo−B)−48時間(C)、ポリマー6+siapo−B(5/1、重量対重量比、1mg/kgのsiapo−B)−1週間(D)、ポリマー6+siapo−B(5/1、重量対重量比、1mg/kgのsiapo−B)−2週間(E)、ポリマー6+siapo−B(5/1、重量対重量比、1mg/kgのsiapo−B)−3週間(F)が含まれる。
【0014】
図面は、本明細書中に記載される特定の実施形態を例示するために意図され、本発明を限定するために意図されない。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書中に記載される様々な実施形態が、1つまたは複数の細胞へのsiRNAの送達に関する。siRNA送達を溶液において行うことができ、または、好ましくは、水溶液において行うことができ、または、より好ましくは、固体表面(例えば、トランスフェクションデバイスなど)において行うことができる。好ましい実施形態において、本明細書中に記載される方法は、水溶性の分解可能な架橋されたカチオン性ポリマーを、細胞内へのsiRNAの輸送において非常に効果的であるトランスフェクション剤として含む。
【0016】
本明細書中に記載される様々な実施形態が、ポリマーの骨格において、側鎖脂質基を含む1つまたは複数の分解可能ユニットと、1つまたは複数のカチオン性ポリエチレンイミン(PEI)ユニットと、1つまたは複数のポリエチレングリコール(PEG)ユニットとを含むことができる水溶性の分解可能な架橋されたカチオン性ポリマーに関連する。
【0017】
いくつかの実施形態において、繰り返し骨格のポリエチレングリコールユニットは約50ダルトン〜約5,000ダルトンの範囲での分子量を有することができる。1つの実施形態において、繰り返し骨格のポリエチレングリコールユニットは約400ダルトン〜約600ダルトンの範囲での分子量を有することができる。
【0018】
いくつかの実施形態において、繰り返し骨格のカチオン性ポリエチレンイミンユニットは約200ダルトン〜約25,000ダルトンの範囲での分子量を有することができる。1つの実施形態において、繰り返し骨格のカチオン性ポリエチレンイミンユニットは約600ダルトン〜約2,000ダルトンの範囲での分子量を有することができる。
【0019】
好ましい実施形態において、繰り返し骨格の分解可能ユニットは下記の式(I)の繰り返しユニットが可能である:
【化1】

【0020】
式(I)において、Aは非存在が可能であるか、または、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、ヘテロアルキニルおよび−(CHn1−D−(CHn2−からなる群から選択される場合により置換された置換基が可能であり、ただし、n1およびn2はそれぞれが独立して、0、または、1〜10の範囲における整数が可能であり、かつ、Dは、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリールおよびヘテロシクリルからなる群から選択される場合により置換された置換基が可能である;Aは非存在が可能であるか、あるいは、酸素原子または−N(R)が可能であり、ただし、RはHまたはC1〜6アルキルである;Rは、電子対、または、水素、または、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、ヘテロアルキニル、アリール、ヘテロアリールおよびヘテロシクリルからなる群から選択される場合により置換された置換基が可能であり、ただし、Rが水素であるか、または、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、ヘテロアルキニル、アリール、ヘテロアリールおよびヘテロシクリルからなる群から選択される場合により置換された置換基であるならば、Rが結合する窒素原子は、関連した正電荷を有する;および、Rは、C〜C50アルキル、C〜C50ヘテロアルキル、C〜C50アルケニル、C〜C50ヘテロアルケニル、C〜C50アルキニル、C〜C50ヘテロアルキニル、C〜C50アリール、C〜C50ヘテロアリール、−(CHp1−E−(CHp2−およびステロールからなる群から選択することができ、ただし、p1およびp2はそれぞれが独立して、0、または、1〜40の範囲における整数が可能であり、かつ、Eは、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリールおよびヘテロシクリルからなる群から選択される場合により置換された置換基が可能である。1つの実施形態において、Rは、C〜C30アルキル、C〜C30アルケニル、C〜C30アルキニルまたはステロールが可能である。好ましい実施形態において、Rは、C〜C24アルキル、C〜C24アルケニル、C〜C24アルキニルまたはステロールが可能である。理論によってとらわれることを望まないが、式(I)におけるエステル基により、改善された生分解性が水溶性の分解可能な架橋されたカチオン性ポリマーに与えられることが考えられる。
【0021】
いくつかの実施形態において、Rは脂質基が可能である。いくつかの実施形態において、Rは、オレイル、ラウリル、ミリスチル、パルミチル、マルガリル、ステアリル、アラキジル、ベヘニルおよびリグノセリルからなる群から選択することができる。1つの実施形態において、Rはオレイルが可能である。いくつかの実施形態において、Rはステロールが可能である。1つの実施形態において、ステロールはコレステリル成分が可能である。
【0022】
が式(I)において結合する窒素原子は、電子対、または、水素、または、それに結合するアルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、ヘテロアルキニル、アリール、ヘテロアリールおよびヘテロシクリルからなる群から選択される場合により置換された置換基を有することができる。当業者は、この窒素原子が電子対を有するとき、上記の式(I)の繰り返しユニットは低いpHにおいてカチオン性であり、また、Rが水素であるか、または、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、ヘテロアルキニル、アリール、ヘテロアリールおよびヘテロシクリルからなる群から選択される場合により置換された置換基であるとき、この窒素原子は、関連する正電荷を有することを理解する。
【0023】
1つの実施形態において、繰り返し骨格の分解可能ユニットは下記の構造を有することができる:
【化2】

【0024】
好ましい実施形態実施において、水溶性の分解可能な架橋されたカチオン性ポリマーは、水溶性の分解可能な架橋されたカチオン性ポリマーにおける繰り返しユニットの総モル数に基づいて約1モル%〜約95モル%の繰り返し骨格の分解可能ユニットを含む。より好ましくは、水溶性の分解可能な架橋されたカチオン性ポリマーは、水溶性の分解可能な架橋されたカチオン性ポリマーにおける繰り返しユニットの総モル数に基づいて約30モル%〜約90モル%の繰り返し骨格の分解可能ユニットを含む。さらにより好ましくは、水溶性の分解可能な架橋されたカチオン性ポリマーは、水溶性の分解可能な架橋されたカチオン性ポリマーにおける繰り返しユニットの総モル数に基づいて約50モル%〜約86モル%の繰り返し骨格の分解可能ユニットを含む。
【0025】
好ましい実施形態実施において、水溶性の分解可能な架橋されたカチオン性ポリマーは、水溶性の分解可能な架橋されたカチオン性ポリマーにおける繰り返しユニットの総モル数に基づいて約1モル%〜約35モル%の繰り返し骨格のカチオン性ポリエチレンイミンユニットを含む。より好ましくは、水溶性の分解可能な架橋されたカチオン性ポリマーは、水溶性の分解可能な架橋されたカチオン性ポリマーにおける繰り返しユニットの総モル数に基づいて約1モル%〜約20モル%の繰り返し骨格のカチオン性ポリエチレンイミンユニットを含む。さらにより好ましくは、水溶性の分解可能な架橋されたカチオン性ポリマーは、水溶性の分解可能な架橋されたカチオン性ポリマーにおける繰り返しユニットの総モル数に基づいて約5モル%〜約15モル%の繰り返し骨格のカチオン性ポリエチレンイミンユニットを含む。
【0026】
好ましい実施形態実施において、水溶性の分解可能な架橋されたカチオン性ポリマーは、水溶性の分解可能な架橋されたカチオン性ポリマーにおける繰り返しユニットの総モル数に基づいて約1モル%〜約80モル%の繰り返し骨格のポリエチレングリコールユニットを含む。さらにより好ましくは、水溶性の分解可能な架橋されたカチオン性ポリマーは、水溶性の分解可能な架橋されたカチオン性ポリマーにおける繰り返しユニットの総モル数に基づいて約1モル%〜約50モル%の繰り返し骨格のポリエチレングリコールユニットを含む。さらにより好ましくは、水溶性の分解可能な架橋されたカチオン性ポリマーは、水溶性の分解可能な架橋されたカチオン性ポリマーにおける繰り返しユニットの総モル数に基づいて約5モル%〜約30モル%の繰り返し骨格のポリエチレングリコールユニットを含む。なおさらにより好ましくは、水溶性の分解可能な架橋されたカチオン性ポリマーは、水溶性の分解可能な架橋されたカチオン性ポリマーにおける繰り返しユニットの総モル数に基づいて約8モル%〜約30モル%の繰り返し骨格のポリエチレングリコールユニットを含む。
【0027】
水溶性の分解可能な架橋されたカチオン性ポリマーの1つの例示的な一部分が下記に示される:
【化3】

【0028】
1つの実施形態において、水溶性の分解可能な架橋されたカチオン性ポリマーは、約1200ダルトンの分子量を有する、ポリマーの骨格における1つまたは複数の分岐型PEIユニットと、ポリマーの骨格における式(I)の1つまたは複数の分解可能ユニットと、約454ダルトンの分子量を有する、ポリマーの骨格における1つまたは複数のポリエチレングリコールユニットとを含むことができる。
【0029】
プラスミドDNAを細胞内に効果的に送達するポリマーは、siRNAを細胞内に必ずしも同様に効果的に送達することができない。それらの送達の非相関要因の1つは、それらの分子サイズにおける違いが関係する:siRNAは典型的にはおよそ21塩基対(bp)〜23bpであり、これに対して、プラスミドDNAは約7,000bp〜9,000bpである。Kim他、J.Control Release、2007(印刷中)を参照のこと。大きい環状巨大分子(例えば、プラスミドDNAなど)を効率的に送達することができるキャリアは多分、短い線状フラグメント(例えば、siRNAなど)については全く適さないであろう。
【0030】
別途定義される場合を除き、本明細書中で使用されるすべての技術的用語および科学的用語は、当業者によって一般に理解されるのと同じを意味を有する。本明細書中で参照されるすべての特許、特許出願、公開された特許出願および他の刊行物は、参照によってその全体が組み込まれる。複数の定義が本明細書中の用語について存在する場合には、別途述べられない限り、この節における定義が優先する。
【0031】
本明細書中で使用される場合、「C〜C」(ただし、「m」および「n」は整数である)は、アルキル基、アルケニル基またはアルキニル基における炭素原子の数、あるいは、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、シクロアルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基またはヘテロアリシクリル基の環における炭素原子の数を示す。すなわち、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキルの環、シクロアルケニルの環、シクロアルキニルの環、アリールの環、ヘテロアリールの環、または、ヘテロアリシクリルの環が、「m」個から、「n」個を含めて、「n」個までの炭素原子を含有することができる。従って、例えば、「C〜Cアルキル」基は、1個から4個までの炭素を有するすべてのアルキル基、すなわち、CH−、CHCH−、CHCHCH−、(CHCH−、CHCHCHCH−、CHCHCH(CH)−および(CHC−を示す。「m」および「n」が、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、シクロアルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基またはヘテロアリシクリル基に関して何ら指定されないならば、これらの定義において記載される最も広い範囲が想定されるものとする。
【0032】
本明細書中で使用される場合、「アルキル」は、直鎖炭化水素鎖または分岐型炭化水素鎖の完全に飽和した(二重結合または三重結合が存在しない)炭化水素基を示す。アルキル基は1個〜50個の炭素原子を有することができる(数値範囲が本明細書中に現れるときは常に、数値範囲、例えば、「1〜50」などは、示された範囲におけるそれぞれの整数を示す;例えば、「1個〜50個の炭素原子」は、アルキル基が1個の炭素原子からなり得ること、2個の炭素原子からなり得ること、3個の炭素原子などからなり得ること、そして、50個の炭素原子を含めて、50個に至るまでの炭素原子からなり得ることを意味し、だが、この定義はまた、数値範囲が何ら指定されない「アルキル」の用語の存在を包含する)。アルキル基はまた、1個〜30個の炭素原子を有する中サイズのアルキルである場合がある。アルキル基はまた、場合により、1個〜5個の炭素原子を有する低級アルキルとすることができる。化合物のアルキル基は、「C〜Cアルキル基」または類似する指定として指定される場合がある。例としてのみではあるが、「C〜Cアルキル」は、1個〜4個の炭素原子がアルキル鎖に存在すること、すなわち、アルキル鎖が、メチル、エチル、プロピル、iso−プロピル、n−ブチル、iso−ブチル、sec−ブチルおよびt−ブチルからなる群から選択されることを示している。典型的なアルキル基には、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、第三級ブチル、ペンチルおよびヘキシルなどが含まれ、しかし、決してこれらに限定されない。
【0033】
アルキル基は置換または非置換であり得る。置換される場合、置換基は、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロアリシクリル、アラルキル、ヘテロアラルキル、(ヘテロアリシクリル)アルキル、ヒドロキシ、保護されたヒドロキシル、アルコキシ、アリールオキシ、アシル、エステル、メルカプト、シアノ、ハロゲン、カルボニル、チオカルボニル、O−カルバミル、N−カルバミル、O−チオカルバミル、N−チオカルバミル、C−アミド、N−アミド、S−スルホンアミド、N−スルホンアミド、C−カルボキシ、保護されたC−カルボキシ、O−カルボキシ、イソシアナト、チオシアナト、イソチオシアナト、ニトロ、シリル、スルフェニル、スルフィニル、スルホニル、ハロアルキル、ハロアルコキシ、トリハロメタンスルホニル、トリハロメタンスルホンアミドおよびアミノ(一置換アミノ基および二置換アミノ基、ならびに、これらの保護された誘導体を含む)から個々に、かつ、独立して選択される1つまたは複数の基である。
【0034】
本明細書中で使用される場合、「アルケニル」は、1つまたは複数の二重結合を直鎖炭化水素鎖または分岐型炭化水素鎖において含有するアルキル基を示す。アルケニル基は非置換または置換であり得る。置換される場合、置換基は、別途示されない限り、アルキル基の置換に関して上記で開示される同じ基から選択することができる。
【0035】
本明細書中で使用される場合、「アルキニル」は、1つまたは複数の三重結合を直鎖炭化水素鎖または分岐型炭化水素鎖において含有するアルキル基を示す。アルケニル基は非置換または置換であり得る。置換される場合、置換基は、別途示されない限り、アルキル基の置換に関して上記で開示される同じ基から選択することができる。
【0036】
「ヘテロアルキル」は、本明細書中で使用される場合、アルキル基の骨格における炭素原子の1つまたは複数がヘテロ原子(例えば、窒素、イオウおよび/または酸素など)によって置換されている本明細書中に記載されるようなアルキル基を示す。
【0037】
「ヘテロアルケニル」は、本明細書中で使用される場合、アルケニル基の骨格における炭素原子の1つまたは複数がヘテロ原子(例えば、窒素、イオウおよび/または酸素)によって置換されている本明細書中に記載されるようなアルケニル基を示す。
【0038】
「ヘテロアルキニル」は、本明細書中で使用される場合、アルキニル基の骨格における炭素原子の1つまたは複数がヘテロ原子(例えば、窒素、イオウおよび/または酸素など)によって置換されている本明細書中に記載されるようなアルキニル基を示す。
【0039】
本明細書中で使用される場合、「アリール」は、完全に非局在化したπ電子系を有する炭素環式の(すべてが炭素である)単環芳香族環系または多環芳香族環系を示す。アリール基の例には、ベンゼン、ナフタレンおよびアズレンが含まれるが、これらに限定されない。アリール基の環は5個〜50個の炭素原子を有することができる。アリール基は置換または非置換であり得る。置換される場合、置換基が別途示されない限り、水素原子が、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロアリシクリル、アラルキル、ヘテロアラルキル、(ヘテロアリシクリル)アルキル、ヒドロキシ、保護されたヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、アシル、エステル、メルカプト、シアノ、ハロゲン、カルボニル、チオカルボニル、O−カルバミル、N−カルバミル、O−チオカルバミル、N−チオカルバミル、C−アミド、N−アミド、S−スルホンアミド、N−スルホンアミド、C−カルボキシ、保護されたC−カルボキシ、O−カルボキシ、イソシアナト、チオシアナト、イソチオシアナト、ニトロ、シリル、スルフェニル、スルフィニル、スルホニル、ハロアルキル、ハロアルコキシ、トリハロメタンスルホニル、トリハロメタンスルホンアミドおよびアミノ(一置換アミノ基および二置換アミノ基、ならびに、これらの保護された誘導体を含む)から独立して選択される1つまたは複数の基である置換基によって置換される。
【0040】
本明細書中で使用される場合、「ヘテロアリール」は、1つまたは複数のヘテロ原子(すなわち、炭素以外の元素、これには、窒素、酸素およびイオウが含まれるが、これらに限定されない)を含有する単環芳香族環系または多環芳香族環系(完全に非局在化したπ電子系を有する環系)を示す。ヘテロアリール基の環は5個〜50個の原子を有することができる。ヘテロアリール基は置換または非置換であり得る。ヘテロアリール環の例には、フラン、フラザン、チオフェン、ベンゾチオフェン、フタラジン、ピロール、オキサゾール、ベンゾオキサゾール、1,2,3−オキサジアゾール、1,2,4−オキサジアゾール、チアゾール、1,2,3−チアジアゾール、1,2,4−チアジアゾール、ベンゾチアゾール、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、インドール、インダゾール、ピラゾール、ベンゾピラゾール、イソオキサゾール、ベンゾイソオキサゾール、イソチアゾール、トリアゾール、ベンゾトリアゾール、チアジアゾール、テトラゾール、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、プリン、プテリジン、キノリン、イソキノリン、キナゾリン、キノキサリン、シンノリンおよびトリアジンが含まれるが、これらに限定されない。ヘテロアリール基は置換または非置換であり得る。置換される場合、水素原子が、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロアリシクリル、アラルキル、ヘテロアラルキル、(ヘテロアリシクリル)アルキル、ヒドロキシ、保護されたヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、アシル、エステル、メルカプト、シアノ、ハロゲン、カルボニル、チオカルボニル、O−カルバミル、N−カルバミル、O−チオカルバミル、N−チオカルバミル、C−アミド、N−アミド、S−スルホンアミド、N−スルホンアミド、C−カルボキシ、保護されたC−カルボキシ、O−カルボキシ、イソシアナト、チオシアナト、イソチオシアナト、ニトロ、シリル、スルフェニル、スルフィニル、スルホニル、ハロアルキル、ハロアルコキシ、トリハロメタンスルホニル、トリハロメタンスルホンアミドおよびアミノ(一置換アミノ基および二置換アミノ基、ならびに、これらの保護された誘導体を含む)から独立して選択される1つまたは複数の基である置換基によって置換される。
【0041】
本明細書中で使用される場合、「シクロアルキル」は、完全に飽和した(二重結合が存在しない)単環炭化水素環系または多環炭化水素環系を示す。2つ以上の環から構成されるときには、これらの環は、縮合様式、架橋様式またはスピロ結合様式で連結され得る。シクロアルキル基はCからC10にまで及ぶことができ、他の実施形態では、シクロアルキル基はCからCにまで及ぶことができる。シクロアルキル基は非置換または置換であり得る。典型的なシクロアルキル基には、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチルおよびシクロヘキシルなどが含まれるが、決してこれらに限定されない。置換されるならば、別途示されない限り、置換基はアルキルであり得るか、または、アルキル基の置換に関して上記で示されるそのような置換基から選択することができる。
【0042】
本明細書中で使用される場合、「シクロアルケニル」は、1つまたは複数の二重結合を環において含有するシクロアルキル基を示し、だが、2つ以上が存在するならば、これらの二重結合は、環における完全に非局在化したπ電子系を形成することができない(そうでないならば、その基は、本明細書中で定義されるように「アリール」である)。2つ以上の環から構成されるときには、これらの環は、縮合様式、架橋様式またはスピロ結合様式で連結され得る。シクロアルキニル基は非置換または置換であり得る。置換される場合、別途示されない限り、置換基はアルキルであり得るか、または、アルキル基の置換に関して上記で開示される置換基から選択することができる。
【0043】
本明細書中で使用される場合、「シクロアルキニル」は、1つまたは複数の三重結合を環において含有するシクロアルキル基を示す。2つ以上の環から構成されるときには、これらの環は、縮合様式、架橋様式またはスピロ結合様式で連結され得る。シクロアルキニル基は非置換または置換であり得る。置換される場合、別途示されない限り、置換基はアルキルであり得るか、または、アルキル基の置換に関して上記で開示される置換基から選択することができる。
【0044】
本明細書中で使用される場合、「複素脂環式」または「ヘテロアリシクリル」は、炭素原子と、窒素、酸素およびイオウからなる群から選択される1個〜5個のヘテロ原子とからなる安定な3員環〜18員環を示す。「複素脂環式」または「ヘテロアリシクリル」は、縮合様式、架橋様式またはスピロ結合様式で連結され得る単環、二環、三環または四環の環系である場合がある;「複素脂環式」または「ヘテロアリシクリル」における窒素原子、炭素原子およびイオウ原子は場合により酸化されることがある;窒素は場合により四級化されることがある;環はまた、二重結合がすべての環にわたる完全に非局在化したπ電子系を形成しないならば、1つまたは複数の二重結合を含有することができる。ヘテロアリシクリル基は非置換または置換であり得る。置換される場合、置換基は、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロアリシクリル、アラルキル、ヘテロアラルキル、(ヘテロアリシクリル)アルキル、ヒドロキシ、保護されたヒドロキシル、アルコキシ、アリールオキシ、アシル、エステル、メルカプト、アルキチルチオ、アリールチオ、シアノ、ハロゲン、カルボニル、チオカルボニル、O−カルバミル、N−カルバミル、O−チオカルバミル、N−チオカルバミル、C−アミド、N−アミド、S−スルホンアミド、N−スルホンアミド、C−カルボキシ、保護されたC−カルボキシ、O−カルボキシ、イソシアナト、チオシアナト、イソチオシアナト、ニトロ、シリル、ハロアルキル、ハロアルコキシ、トリハロメタンスルホニル、トリハロメタンスルホンアミドおよびアミノ(一置換アミノ基および二置換アミノ基、ならびに、これらの保護された誘導体を含む)から独立して選択される1つまたは複数の基であり得る。そのような「複素脂環式」または「ヘテロアリシクリル」の例には、アゼピニル、アクリジニル、カルバゾリル、シンノリニル、1,3−ジオキシン、1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサン、1,2−ジオキソラニル、1,3−ジオキソラニル、1,4−ジオキソラニル、1,3−オキサチアン、1,4−オキサチイン、1,3−オキサチオラン、1,3−ジチオール、1,3−ジチオラン、1,4−オキサチアン、テトラヒドロ−1,4−チアジン、2H−1,2−オキサジン、マレイミド、スクシンイミド、バルビツール酸、チオバルビツール酸、ジオキソピペラジン、ヒダントイン、ジヒドロウラシル、トリオキサン、ヘキサヒドロ−1,3,5−トリアジン、イミダゾリニル、イミダゾリジン、イソオキサゾリン、イソオキサゾリジン、オキサゾリン、オキサゾリジン、オキサゾリジノン、チアゾリン、チアゾリジン、モルホリニル、オキシラニル、ピペリジニルN−オキシド、ピペリジニル、ピペラジニル、ピロリジニル、ピロリドン、ピロリジオン、4−ピペリドニル、ピラゾリン、ピラゾリジニル、2−オキソピロリジニル、テトラヒドロピラン、4H−ピラン、テトラヒドロチオピラン、チアモルホリニル、チアモルホリニルスルホキシド、チアモルホリニルスルホンおよびそれらのベンゾ縮合アナログ(例えば、ベンゾイミダゾリジノン、テトラヒドロキノリン、3,4−メチレンジオキシフェニル)が含まれるが、これらに限定されない。
【0045】
基が、「場合により置換された」として記載されるときは常に、そのような基は非置換であり得るか、あるいは、示された置換基の1つまたは複数により置換され得る。同様に、基が、「非置換または置換」であり、置換されるならば、として記載されるとき、置換基は、示された置換基の1つまたは複数から選択することができる。
【0046】
別途示される場合を除き、置換基が、「場合により置換された」または「置換された」と見なされるとき、置換基は、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロアリシクリル、アラルキル、ヘテロアラルキル、(ヘテロアリシクリル)アルキル、ヒドロキシ、保護されたヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、アシル、エステル、メルカプト、シアノ、ハロゲン、カルボニル、チオカルボニル、O−カルバミル、N−カルバミル、O−チオカルバミル、N−チオカルバミル、C−アミド、N−アミド、S−スルホンアミド、N−スルホンアミド、C−カルボキシ、保護されたC−カルボキシ、O−カルボキシ、イソシアナト、チオシアナト、イソチオシアナト、ニトロ、シリル、スルフェニル、スルフィニル、スルホニル、ハロアルキル、ハロアルコキシ、トリハロメタンスルホニル、トリハロメタンスルホンアミドおよびアミノ(一置換アミノ基および二置換アミノ基、ならびに、これらの保護された誘導体を含む)から個々に、かつ、独立して選択される1つまたは複数の基により置換され得る基であることが意味される。上記置換基の保護し得る誘導体を形成することができる様々な保護基が当業者には知られており、これらを様々な参考文献において見出すことができ、例えば、GreeneおよびWuts、Protective Groups in Organic Synthesis、第3版、John Wiley&Sons、New York、NY、1999(これは本明細書により参照によってその全体が組み込まれる)などにおいて見出すことができる。
【0047】
1つまたは複数のキラル中心を有する本明細書中に記載されるどの化合物においても、絶対的な立体化学が明示的に示されないならば、それぞれの中心は独立して、R−立体配置またはS−立体配置またはそれらの混合であり得ることが理解される。従って、本明細書中に提供される化合物はエナンチオマーにおいて純粋であり得るか、または、立体異性体の混合物であり得る。加えて、EまたはZとして定義することができる幾何異性体を生じさせる1つまたは複数の二重結合を有するどの化合物においても、それぞれの二重結合は独立して、EまたはZまたはそれらの混合であり得ることが理解される。同様に、互変異性形態もまた、含まれることが意図される。
【0048】
用語「脂質」は、本明細書中で使用される場合、脂肪および脂肪様化合物を示す。例示的な脂質には、脂肪酸およびステロールが含まれる。脂肪酸は長鎖のモノカルボン酸である。脂肪酸は飽和または不飽和であり得る。脂質は、本質的には水に不溶性であるとして、すなわち、水における溶解度が約0.01%(重量基準)未満であるとして特徴づけられる。本明細書中で使用される場合、用語「脂質基」は、別の基に直接に結合している脂質またはその一部分を示す。例えば、脂質基は、別の化合物(例えば、モノマー)に、脂肪酸における官能基(例えば、カルボン酸基など)と、モノマーにおける適切な官能基との間における化学反応によって結合させることができる。
【0049】
用語「架橋された」は、本明細書中で使用される場合、共有結合などの結合によって横方向に連結されているポリマー鎖を示す。本明細書中で使用される場合、用語「架橋された」は、様々な架橋度(例えば、わずかに架橋された、中程度に架橋された、および、非常に架橋されたなど)を包含することが意味される。
【0050】
本明細書中に記載される様々な実施形態が、本明細書中に記載される水溶性の分解可能な架橋されたカチオン性ポリマーの合成に関連する。Lynn他は、ジアクリラートをカチオン性化合物の間におけるリンカー分子として使用して、生分解可能なカチオン性ポリマーを合成する方法を記載している(Lynn他、J.Am.Chem.Soc.、2001、123、8155〜8156を参照のこと)(これは本明細書により参照によってその全体が組み込まれる)。いくつかの実施形態において、水溶性の分解可能な架橋されたカチオン性ポリマーを、繰り返しエチレンイミンユニットを含む第1の反応物を有機溶媒に溶解して、溶解または部分的に溶解されたポリマー反応物を形成すること、溶解または部分的に溶解されたポリマー反応物を分解可能なモノマー反応物と反応させて、分解可能な架橋されたポリマーを形成すること(ただし、分解可能なモノマー反応物が脂質基を含む)、および、分解可能な架橋されたポリマーを第3の反応物と反応させること(ただし、第3の反応物が繰り返しポリエチレングリコールユニットを含む)によって合成することができる。例えば、式(I)の繰り返し骨格の分解可能ユニットを含む水溶性の分解可能な架橋されたカチオン性ポリマーを、下記で示される1つの方法によって合成することができる。スキームAに示されるように、式(II)の化合物をPEIと反応させて、式(III)の1つまたは複数の成分を含む分解可能な架橋されたカチオン性ポリマーを形成することができる。
【化4】

【0051】
スキームにおいて、A、A、RおよびRは、式(I)に関して本明細書中に記載されるのと同じ意味を有する。
【0052】
スキームAに例示される反応は、PEIおよび式(II)の化合物を、好ましくは室温で数時間、撹拌とともに相互溶媒(例えば、エタノール、メタノールまたはジクロロメタンなど)において混合することによって行うことができる。得られるポリマーは、当業者に知られている様々な技術を使用して回収することができる。例えば、溶媒を、得られるポリマーを回収するために蒸発させることができる。本発明は理論によってとらわれないが、PEIと、式(II)の化合物との間における反応は、PEIの1つまたは複数のアミンと、式(II)の化合物の二重結合との間におけるMicheal反応を伴うことが考えられる(J.March、Advanced Organic Chemistry、第3版、711頁〜712頁(1985)を参照のこと)。スキームAに示される式(II)の化合物は、米国特許出願公開第2006/0258751号に記載されるような様式で調製することができる(これは、すべての図面を含めて、参照によって本明細書中に組み込まれる)。
【0053】
PEIは線状または分岐型が可能である。繰り返し骨格のPEIユニットは、下記の式(IV)、式(V)、式(VI)、式(VII)および/または式(VIII)の構造を有することができる。
【化5】

【0054】
様々な分子量のPEIを使用することができる。分岐型であるとき、繰り返し骨格のPEIユニットの分子量は好ましくは約200ダルトン〜25,000ダルトンの範囲にあり、より好ましくは400ダルトン〜5,000ダルトンの範囲にあり、さらにより好ましくは約600ダルトン〜2000ダルトンの範囲にある。線状であるとき、繰り返し骨格のPEIユニットの分子量は好ましくは約200ダルトン〜25,000ダルトンの範囲にある。1つの実施形態において、線状の繰り返し骨格のPEIユニットは分子量を約400ダルトン〜約1200ダルトンの範囲に有することができる。
【0055】
分解可能ユニット対PEIの様々なモル比を、水溶性の分解可能な架橋されたカチオン性ポリマーを作製するために使用することができる。いくつかの実施形態において、分解可能なモノマー反応物(例えば、式(II)の化合物)対PEIのモル比は、約0.1:1〜約50:1の範囲であることが可能である。1つの実施形態において、分解可能なモノマー反応物対PEIのモル比は、約1:1〜約30:1の範囲であることが可能である。いくつかの実施形態において、分解可能なモノマー反応物対PEIのモル比は、約5:1〜約25:1の範囲であることが可能である。
【0056】
その後、式(III)の成分を、水溶性の分解可能な架橋されたカチオン性ポリマーを形成するために、PEGまたはその誘導体(例えば、mPEG(メトキシポリ(エチレングリコール)など)と反応させることができる。いくつかの実施形態において、この反応は室温で行われる。反応生成物を、クロマトグラフィー技術を含むこの技術分野において知られているいずれかの手段によって単離することができる。1つの実施形態において、反応生成物を、沈殿化、その後での遠心分離によって取り出すことができる。
【0057】
様々な分子量のPEGおよびその誘導体を使用することができる。いくつかの実施形態において、繰り返し骨格のポリエチレングリコールユニットは約50ダルトン〜約5,000ダルトンの分子量を有することができる。1つの実施形態において、繰り返し骨格のポリエチレングリコールユニットは約400ダルトン〜約600ダルトンの分子量を有することができる。
【0058】
PEG対PEIのモル比もまた変化し得る。いくつかの実施形態において、PEG対PEIのモル比は、約0.1:1〜約12:1の範囲であることが可能である。いくつかの実施形態において、PEG対PEIのモル比は、約1:1〜約10:1の範囲であることが可能である。いくつかの実施形態において、PEG対PEIのモル比は、約1:1〜約4:1の範囲であることが可能である。
【0059】
が水素であるか、または、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、ヘテロアルキニル、アリール、ヘテロアリールおよびヘテロシクリルからなる群から選択される場合により置換された置換基であるとき、式(II)の化合物は、当業者に知られている様々な方法によって調製することができる。1つの方法が下記においてスキームBに示される。
【化6】

【0060】
スキームBにおいて、A、A、RおよびRは、本明細書中に記載されるのと同じであり、LGは好適な脱離基(例えば、ハロゲンなど)である。
【0061】
水溶性の分解可能な架橋されたカチオン性ポリマーの重量平均分子量は変化し得る。いくつかの実施形態において、重量平均分子量は約500ダルトン〜約1,000,000ダルトンの範囲であり得る。1つの実施形態において、重量平均分子量は約2、000ダルトン〜約200,000ダルトンの範囲であり得る。分子量は、当業者に知られている様々な方法によって求めることができ、例えば、PEG標準物を使用するサイズ排除クロマトグラフィーによって、または、アガロースゲル電気泳動によって求めることができる。
【0062】
本明細書中に記載される繰り返し骨格ユニット(例えば、式(I)、PEIおよびPEG)を含む広範囲の様々な水溶性の分解可能な架橋されたカチオン性ポリマーを、PEIの分子量および構造、ならびに、PEGの分子量および構造、式(II)の化合物におけるR基およびR基のサイズおよびタイプ、A基および/またはA基、ならびに/あるいは、PEIおよびPEGに対する式(II)の化合物のモル比を変化させることによって作製することができる。加えて、異なるジアクリラートおよびその誘導体の混合物、ならびに/または、異なるPEIの混合物、ならびに/または、異なるPEGの混合物を使用することができる。1つの実施形態において、水溶性の分解可能な架橋されたカチオン性ポリマーの合成に関して本明細書中に記載される方法は、本明細書中に示される式(Ia)の部分を含むポリマーを合成するために使用することができる。
【0063】
水溶性の分解可能な架橋されたカチオン性ポリマーは好ましくは生分解可能である。分解可能な機構の限定されない列挙には、加水分解、酵素切断、還元、光切断および/または超音波処理が含まれるが、これらに限定されない。本発明は理論によって限定されないが、細胞内における式(I)の分解可能ユニットの分解が、エステル連結の酵素による切断および/または加水分解によって進行することが考えられる。
【0064】
本明細書中に記載される様々な実施形態が、RNAを細胞内に送達するために、本明細書中に記載される水溶性の分解可能な架橋されたカチオン性ポリマーを使用する方法に関連する。好ましくは、RNAは短い干渉性RNA(siRNA)である。RNA、および、より具体的には、siRNAには、5塩基対〜50塩基対を有するRNA、好ましくは、10塩基対〜35塩基対を有するRNA、より好ましくは、19塩基対〜27塩基対を有するRNAが含まれる。RNAにはまた、混合型のRNA/DNA分子または混合型のタンパク質/RNA分子が含まれ得る。核酸の送達を水溶液中または固体支持体表面において行うことができる。
【0065】
好ましい実施形態が、従来のトランスフェクションアッセイと比較して、簡便で、便利で、かつ、効率的であるトランスフェクションデバイスおよびトランスフェクション方法に関する。トランスフェクションデバイスが、トランスフェクション試薬(例えば、水溶性の分解可能な架橋されたカチオン性ポリマーなど)を細胞培養デバイスの固体表面に付着させることによって本明細書中に記載される方法に従って作製される。この好ましい実施形態では、核酸をトランスフェクション試薬と事前に混合する必要がない。このことにより、従来のトランスフェクション手順によって要求される、時間のかかる重要な工程が除かれる。科学者は、10サンプルについての全トランスフェクションプロセスを完了するために、従来の方法によって要求される2時間〜5時間またはそれ以上と比較して、およそ40分を必要とするだけである。このことは、数百のサンプルが一度に試験される高処理能のトランスフェクションアッセイのためには特に好都合である。
【0066】
好ましい実施形態において、本明細書中に記載されるようなトランスフェクションデバイスを被覆するためのトランスフェクション剤には、水溶性の分解可能な架橋されたカチオン性ポリマー、カチオン性ポリマー、リポポリマー、カチオン性のPEG化されたポリマー、PEG化されたリポポリマー、カチオン性脂質およびPEG化されたカチオン性脂質が含まれるが、これらに限定されない。カチオン性ポリマーの例には、CytoPure(商標)(Qbiogene)、ポリ(リシン)およびポリ(アルギニン)が含まれるが、これらに限定されない。リポポリマー試薬の例には、jetPEI(商標)(Qbiogene)が含まれるが、これに限定されない。PEG化されたカチオン性ポリマーの例には、PEI−PEGコポリマー(Zhong他(2005)、Biomacromolecules、第6巻:3440〜3448、これは参照によって本明細書中に組み込まれる)、PEGによりグラフト化されたカチオン性ポリマー(米国特許第6,586,254号(これは参照によって本明細書中に組み込まれる)を参照のこと)、および、本明細書中に記載される水溶性の分解可能な架橋されたカチオン性ポリマーが含まれるが、これらに限定されない。カチオン性脂質試薬の例には、DOTAP(1,2−ジオレオイル−3−(トリメチアンモニウム)プロパン)、Lipofectamin(商標)(Invitrogen)およびsiPORT(商標)(Ambion)が含まれるが、これらに限定されない。PEG化されたカチオン性脂質の例には、PEG−脂質複合体(Martin−Herranz他(2004年、2月)、Biophysical Journal、第86巻:1160〜1168、これは参照によって本明細書中に組み込まれる)が含まれるが、これに限定されない。トランスフェクションデバイスを被覆することにおいて有用なさらなるカチオン性ポリマーが下記の表1に記載される。いくつかの実施形態において、トランスフェクション剤はカチオン性のPEG化されたポリマーである。1つの実施形態において、カチオン性のPEG化されたポリマーは、水溶性の分解可能な架橋されたカチオン性ポリマーが可能であり、例えば、本明細書中に記載される水溶性の分解可能な架橋されたカチオン性ポリマーなどが可能である。
【表1】

【0067】
様々な好ましい実施形態が、カチオン性のPEG化されたポリマーのトランスフェクション剤(例えば、本明細書中に記載される水溶性の分解可能な架橋されたカチオン性ポリマー)を、貯蔵することが非常に容易であり、かつ、siRNA/トランスフェクション試薬の混合工程を全く必要としないsiRNA送達のための簡便な方法を提供するトランスフェクションデバイスに被覆することに関する。本明細書中に記載されるトランスフェクション手順は短い時間(例えば、およそ40分)で終了することができ、また、本明細書中に記載されるトランスフェクション手順により、非常に多数のサンプルを一度にトランスフェクションすることができるトランスフェクションのための高処理能方法が提供される。
【0068】
本明細書中に記載される、遺伝子抑制のための方法およびデバイスの様々な実施形態では、上記で記載される従来のトランスフェクションアッセイにおいて遭遇する様々な共通する問題が克服される。カチオン性のPEG化されたポリマーのトランスフェクション試薬は、細胞培養デバイスの表面に簡単に被覆することができ、従って、容易に商品化および大量生産することができる。顧客、例えば、研究者は、核酸(例えば、目的とするsiRNAなど)をトランスフェクションの前に細胞培養デバイスの表面に直接に加えることのみが必要である。細胞が、その後、細胞培養デバイスの表面に播種され、培地を換えることなくインキュベーションされ、細胞が分析される。培地をトランスフェクション手順の期間中に換えることが不要である。本明細書中に記載される方法では、間違いの危険性が、関与する工程の数を減らすことによって劇的に減少し、従って、システムの一貫性および正確性が増大する。
【0069】
好ましい実施形態において、トランスフェクション試薬がスライドまたはマルチウエルプレートの表面に付着させられる。しかしながら、任意の形状の固体支持体または半固体支持体を使用することができ、これらには、プレート、フィルターおよびカラム充填材(例えば、任意の形状およびサイズのビーズ、繊維、ペレットなど)が含まれるが、これらに限定されない。
【0070】
siRNA含有混合物をその表面に付着させるために使用することができる任意の好適な表面を使用することができる。いくつかの実施形態において、様々な半固体の支持体、例えば、メンブラン(例えば、ニトロセルロース、メチルセルロース、PTFEまたはセルロースなど)、ならびに、ナイロンフィルターおよび紙の支持体などを使用することができる。
【0071】
支持体のための固体材料または半固体材料は、金属、非金属、ポリマーまたはプラスチック、エラストマー、あるいは、生物学的に得られる材料であり得る。好ましくは、金属は、金、ステンレススチール、アルミニウム、ニチノール、コバルトクロムまたはチタンである。好ましい非金属材料には、ガラス、シリコン、シリカまたはセラミックが含まれるが、これらに限定されない。
【0072】
好ましいプラスチックポリマー材料およびエラストマー材料には、ポリスチレン、ポリアセタール、ポリウレタン、ポリエステル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリメチルメタクリラート、ポリヒドロキシエチルメタクリラート、ポリビニルアルコール、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリエーテルケトン、ポリフェニレンオキシド、ポリ塩化ビニル、ポリカーボナート、ポリスルホン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン、ポリエーテルイミド、ポリフッ化ビニリデン、ならびに、これらのコポリマーおよび組合せが含まれるが、これらに限定されない。材料は、ポリシロキサン、フッ素化ポリシロキサン、エチレン−プロピレンゴム、フルオロエラストマーおよびこれらの組合せから選択することができる。材料は、ポリ酢酸、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン、ポリパラジオキサノン、ポリトリメチレンカーボナートおよびそれらのコポリマーから選択することができる。
【0073】
いくつかの実施形態において、生物学的に得られる材料、例えば、タンパク質、ゼラチン、寒天、コラーゲン、エラスチン、キチン、サンゴ、ヒアルロン酸、骨およびこれらの組合せなどを利用することができる。
【0074】
いくつかの実施形態において、固体支持体または半固体支持体は、組織(例えば、皮膚、内皮組織、骨、軟骨など)、または、鉱物(例えば、ヒドロキシルアパタイト、グラファイトなど)を含むことができる。
【0075】
好ましい実施形態によれば、表面は、スライド(ガラス製スライドまたはポリ−L−リシン被覆されたスライド)、または、マルチウエルプレートのウエルである場合がある。いくつかの実施形態において、固体表面または半固体表面は、埋め込み可能なデバイス(例えば、ステントなど)である場合がある。
【0076】
このようなデバイスを使用することによって、siRNAを表面に加え、トランスフェクション試薬がsiRNAとの複合体を形成することを可能にすることが必要であるにすぎない。この反応はおよそ30分で生じる。細胞が、その後、表面に播種され、siRNAを細胞内に導入するための好適な条件のもとでインキュベーションされる。これらの工程を手作業によって行うことができ、または、自動化されたシステムによって行うことができ、または、いくつかの工程が手作業により行われ、他の工程が自動化される組合せによって行うことができる。
【0077】
スライド、例えば、ポリ−L−リシン(例えば、Sigma,Inc.)により被覆されたガラス製スライドなどについては、トランスフェクション試薬が表面に固定され、乾燥され、その後、目的とする核酸(例えば、二本鎖siRNAなど)が導入される。スライドは、siRNA/トランスフェクション試薬の複合体をトランスフェクションデバイスの表面に形成させるために室温で30分間インキュベーションされる。siRNA/トランスフェクション試薬の複合体は、数百〜数千の核酸を同時に調べるために使用することができる高処理能マイクロアレイにおける使用のための媒体をもたらす。1つの代わりの実施形態において、トランスフェクション試薬または薬物送達試薬を、トランスフェクション試薬または薬物送達試薬のマイクロアレイを形成するために、別々の規定された領域においてトランスフェクションデバイスの表面に付着させることができる。この実施形態において、細胞内に導入されることになる分子(例えば、核酸など)が、トランスフェクション試薬または送達試薬と一緒にトランスフェクションデバイスの表面に塗布される。この方法は、トランスフェクション試薬または他の送達試薬を数千の化合物からスクリーニングすることにおいて使用することができる。そのようなスクリーニング方法の結果をコンピューター分析によって調べることができる。
【0078】
別の実施形態において、マルチウエルプレートの1つまたは複数のウエルをカチオン性のPEG化されたポリマーのトランスフェクション剤により被覆することができる。トランスフェクションおよび薬物スクリーニングにおいて一般に使用されるプレートは96ウエルプレートおよび384ウエルプレートである。カチオン性のPEG化されたポリマーのトランスフェクション剤をプレートの底に一様に適用することができる。数百の生体分子(例えば、siRNAなど)が、その後、例えば、マルチチャンネルピペットまたは自動化された装置によってウエルに加えられる。トランスフェクションの結果が、その後、マイクロプレートリーダーを使用することによって求められる。様々なマイクロプレートリーダーがほとんどの生物医学研究室では一般に使用されるので、これは、トランスフェクションされた細胞を分析する非常に便利な方法である。カチオン性のPEG化されたポリマーのトランスフェクション剤により被覆されたマルチウエルプレートは、薬物スクリーニングと同様に、遺伝子調節、遺伝子機能、分子治療およびシグナル伝達を研究するためにほとんどの研究室において広く使用することができる。同様にまた、異なる種類のカチオン性のPEG化されたポリマーのトランスフェクション剤がマルチウエルプレートの異なるウエルに被覆されるならば、プレートを、多くのカチオン性のPEG化されたポリマーのトランスフェクション剤を比較的効率的にスクリーニングするために使用することができる。最近では、1,536ウエルプレートおよび3,456ウエルプレートが開発されており、これらもまた、本明細書中に記載される方法に従って使用することができる。
【0079】
トランスフェクション試薬または送達試薬は、好ましくは、生体分子(例えば、核酸など、好ましくは、siRNA)を細胞に導入することができるカチオン性のPEG化されたポリマーのトランスフェクション剤である。好ましい実施形態では、分解可能なカチオン性のPEG化されたポリマーが使用され、例えば、本明細書中に記載される水溶性の分解可能な架橋されたカチオン性ポリマーなどが使用される。
【0080】
適切な条件のもとで、siRNAが、生体分子/送達試薬の複合体を形成するために、トランスフェクション試薬または送達試薬(例えば、水溶性の分解可能な架橋されたカチオン性ポリマーなど)により被覆されるトランスフェクションデバイスの中に加えられる。生体分子は、好ましくは、ウシ胎児血清および抗生物質を含まない細胞培養培地、例えば、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)に溶解される。トランスフェクション試薬または送達試薬がスライド表面に一様に付着させられるならば、生体分子をスライド上の異なった場所にスポットすることができる。あるいは、トランスフェクション試薬または送達試薬をスライド上の異なった場所にスポットしてもよく、siRNAを、トランスフェクションデバイスの表面全体を覆うように単に加えることができる。トランスフェクション試薬または送達試薬がマルチウエルプレートの底に付着させられるならば、siRNAが、マルチチャンネルピペット、自動化デバイスまたは他の方法によって、異なるウエルに単に加えられる。得られる生成物(トランスフェクション試薬または送達試薬と、siRNAとにより被覆されるトランスフェクションデバイス)が、siRNA/トランスフェクション試薬(または送達試薬)の複合体を形成するために、5分間〜3時間、好ましくは10分間〜90分間、より好ましくは20分間〜30分間、室温でインキュベーションされる。いくつかの場合には、例えば、異なる種類の生体分子がスライドの異なった場所にスポットされ、siRNA溶液が、トランスフェクション試薬との複合体を形成しているsiRNAを有する表面を生じさせるために除かれる。他の場合には、siRNA溶液が表面に保たれる。続いて、適切な培地および適切な密度における細胞が表面に播かれる。得られる生成物(siRNAと、播かれた細胞とを有する表面)が、播かれた細胞の中への生体分子の進入をもたらす条件のもとで維持される。
【0081】
本明細書中に記載される方法に従って使用される好適な細胞には、原核生物、酵母または高等真核生物細胞(植物細胞および動物細胞を含む)が含まれ、とりわけ、哺乳動物が含まれる。いくつかの実施形態において、細胞はガン細胞である。いくつかの好ましい実施形態において、ガンについてのモデルシステムである様々な細胞株が使用され、これらには、乳ガン(MCF−7細胞株、MDA−MB−438細胞株)、U87神経膠芽細胞腫細胞株、B16F0細胞(メラノーマ)HeLa細胞(子宮頸ガン)、A549細胞(肺ガン)、ならびに、ラットの腫瘍細胞株のGH3および9Lが含まれる。1つの非常に好ましい実施形態において、B16F0細胞(メラノーマ)またはHeLa細胞(子宮頸ガン)が試験系として使用される。好ましい実施形態において、siRNA送達剤が、処置方法としてガンに対するsiRNAの有効性を試験するために使用される。
【0082】
真核生物細胞、例えば、哺乳動物細胞(例えば、ヒト、サル、イヌ、ネコ、ウシまたはマウスの細胞)など、細菌細胞、昆虫細胞または植物細胞が、トランスフェクション試薬または送達試薬と、生体分子とにより被覆されるトランスフェクションデバイスに、真核生物の中への生体分子の導入/進入、および、生体分子と、細胞成分との相互作用のための十分な密度および適切な条件で播かれる。具体的な実施形態において、細胞を、造血細胞、ニューロン細胞、膵臓細胞、肝臓細胞、軟骨細胞、骨細胞または筋細胞から選択することができる。細胞は、完全に分化した細胞であるか、または、始原体/幹細胞である。
【0083】
好ましい実施形態において、真核生物細胞は、10%の熱不活化されたウシ胎児血清(FBS)をLグルタミンおよびペニシリン/ストレプトマイシン(pen/strep)とともに含有するダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)において成長させられる。いくつかの細胞は特別な栄養(例えば、増殖因子およびアミノ酸など)を必要とするので、ある種の細胞は特別な培地において培養されなければならないことが当業者によって理解される。細胞の最適な密度は細胞タイプおよび実験目的に依存する。例えば、70%〜80%のコンフルエントな細胞の集団が遺伝子のトランスフェクションのためには好ましく、しかし、オリゴヌクレオチド送達のためには、最適な条件は30%〜50%のコンフルエントな細胞である。1つの例示的な実施形態において、ウエルあたり5x10個の293細胞が96ウエルプレートに播種されたならば、細胞は、細胞播種後18時間〜24時間で、80%のコンフルエンシーに達する。HeLa705細胞については、ウエルあたりほんの1x10個の細胞が、96ウエルプレートにおいて、類似するコンフルエントな割合に達するために必要とされるにすぎない。
【0084】
細胞が、siRNA/送達試薬を含有する表面に播種された後、細胞は、その細胞タイプのための最適な条件(例えば、37℃、5%〜10%のCO)のもとでインキュベーションされる。培養時間は実験目的に依存する。典型的には、細胞は、遺伝子トランスフェクション実験については、細胞が標的遺伝子を発現するために24時間〜48時間インキュベーションされる。細胞におけるsiRNAの細胞内輸送の分析では、数分〜数時間のインキュベーションが要求されることがあり、細胞を、規定された時点で観測することができる。
【0085】
siRNA送達の結果を種々の方法によって分析することができる。遺伝子トランスフェクションおよびアンチセンス核酸送達の場合には、標的遺伝子の発現レベルをレポーター遺伝子によって検出することができ、例えば、緑色蛍光タンパク質(GFP)遺伝子、ルシフェラーゼ遺伝子またはβ−ガラクトシダーゼ遺伝子の発現などによって検出することができる。例えば、GFPのシグナルを顕微鏡下で直接に観測することができる;ルシフェラーゼの活性をルミノメーターによって検出することができる;β−ガラクトシダーゼにより触媒される青色生成物を顕微鏡下で観測することができ、または、マイクロプレートリーダーによって求めることができる。本発明の実施はこれらの例に限定されない。当業者は、これらのレポーターがどのように機能するかを熟知しており、また、これらのレポーターがどのように遺伝子送達システムに導入され得るかを熟知している。本明細書中に記載される方法によって送達される核酸およびその産物(タンパク質、ペプチドまたは他の生体分子)、ならびに、これらの生体分子によって調節される標的を様々な方法によって求めることができ、例えば、免疫蛍光または酵素免疫細胞化学、オートラジオグラフィー、あるいは、インサイチューハイブリダイゼーションを検出することなどによって求めることができる。免疫蛍光が、コードされたタンパク質の発現を検出するために使用されるならば、標的タンパク質と結合する蛍光標識された抗体が使用される(例えば、抗体がタンパク質に結合するための好適な条件のもとでスライドに加えられる)。タンパク質を含有する細胞が、その後、蛍光シグナルを検出することによって特定される。送達された分子により、遺伝子発現が調節され得るならば、標的遺伝子の発現レベルもまた、様々な方法によって求めることができ、例えば、オートラジオグラフィー、インサイチューハイブリダイゼーションおよびインサイチューPCRなどによって求めることができる。しかしながら、特定方法は、送達された生体分子、送達された生体分子の発現産物、発現産物によって調製される標的、および/または、生体分子の送達から生じる最終的な産物の性質に依存する。
【0086】
送達方法は、ポリマーを表面(例えば、ディッシュ、スライドまたはマルチウエルプレートなど)に塗布することを含むことができる。その後、細胞およびsiRNAを任意の順序で加え、細胞内へのsiRNAの送達のために効果的な期間にわたってインキュベーションすることができる。
【0087】
送達エンハンサー
いくつかの実施形態において、組成物は送達エンハンサーを含むことができる。細胞内へのRNAi生体分子またはsiRNA生体分子の輸送には3つの障壁が存在することが一般に認識されている。これらは、細胞膜、エンドソーム膜、および、キャリアからの生体分子の放出である。
【0088】
DNAおよびRNAの両方の場合において、核酸−キャリアの複合体は最初に細胞膜を通過しなければならない。これがエンドサイトーシスによって達成されるとき、その後、核酸−キャリアの複合体が内在化される。キャリアが、核酸カーゴととともに、ポケットの形成により細胞膜によって包まれ、続いて、ポケットがくびれて切れる。その結果が、核酸カーゴおよびキャリアを取り囲む大きい膜結合した構造体である細胞エンドソームである。核酸−キャリアの複合体は、その後、エンドソーム膜から細胞質に抜け出なければならず、また、細胞質における酵素分解を避けなければならない。核酸カーゴはキャリアから分離しなければならない。一般に、上記で記載された障壁の1つまたは複数を克服するために設計されるものはどれも、送達エンハンサーであると見なすことができる。
【0089】
一般に、送達エンハンサーは2つのカテゴリーに分けられる。これらはウイルスキャリアシステムおよび非ウイルスキャリアシステムである。ヒトウイルスは、上記で議論された核内への輸送に対する障壁を克服するための様々な進化させた様式を有するので、ウイルスまたはウイルス成分が細胞内への核酸の輸送において有用である。送達エンハンサーとして有用なウイルス成分の一例が赤血球凝集素ペプチド(HAペプチド)である。このウイルスペプチドは、細胞内への生体分子の輸送をエンドソーム破壊によって促進させる。エンドソームの酸性pHにおいて、このタンパク質は細胞質ゾル内への生体分子およびキャリアの放出を生じさせる。
【0090】
非ウイルス性の送達エンハンサーはポリマーに基づき得るか、または、脂質に基づき得るかのどちらかである。それらは一般には、核酸の負電荷をバランスさせるように作用するポリカチオンである。分岐鎖形態のポリカチオン、例えば、PEIデンドリマーおよびStarburstデンドリマーなどはエンドソーム放出を媒介することができる(Boussif他(1995)、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、第92巻:7297〜7301)。PEIは、pH6.9においてイオン化し得る末端アミンと、pH3.9においてイオン化し得る内部アミンとを有する非常に分岐したポリマーであり、この構成のために、小胞の膨潤、および、究極的には、エンドソーム捕捉からの放出を引き起こす、小胞のpHにおける変化を生じさせることができる。
【0091】
送達を高めるための別の手段が、リガンドをキャリア表面に設計することである。リガンドは、受容体を、カーゴ送達のために標的化されている細胞の表面に有しなければならない。その場合、細胞内への生体分子の送達が受容体認識によって開始される。リガンドがその特異的な細胞受容体に結合するとき、エンドサイトーシスが刺激される。生体分子の輸送を高めるために様々な細胞タイプとともに使用されているリガンドの例として、ガラクトース、トランスフェリン、糖タンパク質のアシアロオロソムコイド、アデノウイルス繊維、マラリアのスポロゾイト周囲タンパク質、上皮増殖因子、ヒトパピローマウイルスのカプシド、線維芽細胞増殖因子および葉酸がある。葉酸受容体の場合、結合したリガンドが、ポトサイトーシスと呼ばれるプロセスを介して内在化される(ポトサイトーシスでは、受容体がリガンドと結合し、周囲の膜が閉じて細胞表面から離れ、その後、内在化物が小胞の膜を通って細胞質の中に移動する)(Gottschalk他(1994)、Gene Ther、1:185〜191)。
【0092】
様々な作用因がエンドソーム破壊のために使用されている。上記で記載されたHAタンパク質のほかに、欠陥ウイルスの粒子もまた、エンドソーム溶解剤として使用されている(Cotten他(1992年、7月)、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、第89巻:6094頁〜6098頁)。非ウイルス性の作用因は両親媒であるか、または、脂質に基づくかのどちらかである。
【0093】
細胞の細胞質の中への生体分子(例えば、DNAなど)の放出を、エンドソーム破壊を媒介するか、または、分解を低下させるか、または、このプロセスを一度に迂回するかのどれかである作用因によって高めることができる。クロロキンは、エンドソームのpHを上昇させるので、エンドサイトーシスを受けた物の分解を、リソソームの加水分解酵素を阻害することによって低下させるために使用されている(Wagner他(1990)、Proc Natl Acad Sci USA、第87巻:3410〜3414)。分岐鎖のポリカチオン、例えば、PEIデンドリマーおよびスターバースト型デンドリマーなどもまた、上記で議論されるようなエンドソーム放出を促進させる。
【0094】
エンドソームでの分解を完全に迂回するために、様々な毒素(例えば、ジプテリア毒素およびシュードモナス菌体内毒素など)のサブユニットが、遺伝子/遺伝子キャリアの複合体に取り込むことができるキメラタンパク質の成分として利用されている(Uherek他(1998)、J.Biol.Chem.、第273巻:8835〜8841)。これらの成分は、エンドソーム膜を通過し、小胞体を通って戻る核酸のシャトル輸送を促進させる。
【0095】
使用方法
本明細書中に開示される1つの実施形態が、siRNAをガンの処置のために哺乳動物ガン細胞に送達するために、本明細書中に記載される水溶性の分解可能な架橋されたカチオン性ポリマーを使用することを含む、ガンを処置する方法に関連する。例示的なガンには、子宮頸ガン、メラノーマ、前立腺ガン、肺ガン、結腸直腸ガン、白血球、膵臓ガン、子宮内膜ガン、卵巣ガンまたは非ホジキンリンパ腫が含まれる。
【0096】
1つの実施形態において、siRNAが、疾患の処置として投与される。好ましい実施形態において、疾患状態において発現または過剰発現する遺伝子のコード領域の全体または一部に対応するsiRNAが、処置を必要としている患者に投与される。好ましい実施形態において、心臓血管疾患または糖尿病において上昇するタンパク質をコードする遺伝子の全体または一部に対応するsiRNAが、遺伝子産物のレベルを正常な範囲および/または健康な範囲にするか、あるいは、正常な範囲および/または健康な範囲により近づけるために、対象に投与される。1つの好ましい実施形態において、アポリポタンパク質B(Apo−B)に対するsiRNAが、本明細書中に記載されるトランスフェクション剤(例えば、本明細書中に記載される水溶性の分解可能な架橋されたカチオン性ポリマーなど)との複合体で投与される。アポリポタンパク質B(Apo−B)のコード領域に対応するsiRNAの投与は、心臓血管疾患、心筋梗塞および/または発作の危険性を低下させることができる。
【0097】
本明細書中で使用される場合、「対象」は、処置、観察または実験の対象体である動物を示す。「動物」には、冷血脊椎動物および温血脊椎動物、ならびに、非脊椎動物が含まれ、例えば、魚類、甲殻類、爬虫類、および、特に、哺乳動物などが含まれる。「哺乳動物」には、限定されないが、マウス、ラット、ウサギ、モルモット、イヌ、ネコ、ヒツジ、ヤギ、ウシ、ウマ、霊長類(例えば、小形サル、チンパンジーおよび大形サルなど)、および、特に、ヒトが含まれる。
【0098】
本明細書中で使用される場合、用語「処置する」、用語「処置」、用語「治療的」または用語「治療」は、疾患または状態の完全な治癒または消滅を必ずしも意味しない。疾患または状態の何らかの望ましくない徴候または症状を何らかの程度に緩和することはどれも、処置および/または治療であると見なすことができる。さらに、処置には、健康であることの患者の全般的な感覚、または、患者の外観を悪くし得る行為が含まれる場合がある。
【0099】
用語「治療効果的な量」は、示される生物学的応答または医学的応答を誘発する活性な化合物または医薬剤の量を示すために使用される。この応答は、組織、系、動物またはヒトにおいて生じさせることができ、処置されている疾患の症状の緩和を含む。
【0100】
本明細書中に開示される組成物および医薬組成物のための的確な配合、投与経路および投薬は、患者の状態を考慮して個々の医師によって選ぶことができる(例えば、Fingl他、1975、“The Pharmacological Basis of Therapeutics”、第1章(これは本明細書により参照によってその全体が組み込まれる)を参照のこと)。典型的には、患者に投与される組成物の用量範囲は、約0.5mg/kg患者体重〜1000mg/kg患者体重、または、1mg/kg患者体重〜500mg/kg患者体重、または、10mg/kg患者体重〜500mg/kg患者体重、または、50mg/kg患者体重〜100mg/kg患者体重であり得る。投薬は、患者によって必要とされるように、1日またはそれ以上の経過において与えられる単回投薬または2回以上の連続であり得る。ヒトへの投薬量が確立されていない場合、ヒトへの好適な投薬量を、動物における毒性研究および効力研究によって修正されるように、インビトロ研究またはインビボ研究から導かれるED50値またはID50値、あるいは、他の適切な値から推定することができる。
【0101】
的確な投薬量は薬物毎に基づいて決定されるが、ほとんどの場合において、投薬量に関するいくつかの一般化を行うことができる。成人患者についての1日の投薬様式は、例えば、遊離塩基として計算される場合、本明細書中に開示される医薬組成物のそれぞれの成分またはその医薬的に許容される塩の、それぞれの成分が0.1mg〜500mgの間である経口用量(好ましくは、1mg〜250mgの間、例えば、5mg〜200mg)、あるいは、それぞれの成分が0.01mg〜100mgの間である静脈内用量、皮下用量または筋肉内用量(好ましくは、0.1mg〜60mgの間、例えば、1mg〜40mg)とすることができ、この場合、組成物は1日あたり1回〜4回投与される。あるいは、本明細書中に開示される組成物は、連続静脈内注入によって、好ましくは1日あたり400mgまでのそれぞれの成分の用量で投与することができる。従って、それぞれの成分の経口投与による1日の総投薬量は典型的には1mg〜2000mgの範囲にあり、非経口経口投与による1日の総投薬量は典型的には0.1mg〜400mgの範囲にある。いくつかの実施形態において、化合物は連続治療の期間にわたって投与され、例えば、1週間またはそれ以上にわたって、あるいは、数ヶ月または数年にわたって投与される。
【0102】
投薬量および投薬間隔を、調節効果または最小有効濃度(MEC)を維持するために十分である、活性な成分の血漿中レベルを提供するために個々に調節することができる。MECはそれぞれの化合物について変化し、しかし、インビトロデータから見積もることができる。MECを達成するために必要な投薬量は、個々の特性および投与経路に依存する。しかしながら、様々なHPLCアッセイまたはバイオアッセイを、血漿中濃度を求めるために使用することができる。
【0103】
投薬間隔もまた、MEC値を使用して決定することができる。組成物は、MECを越える血漿中レベルを、時間の10%〜90%にわたって、好ましくは30%〜90%の間で、最も好ましくは50%〜90%の間で維持する治療方式を使用して投与されなければならない。
【0104】
投与される組成物の量は、当然のことではあるが、処置されている対象、対象の体重、苦痛の重篤度、投与様式および処方医師の判断に依存する。
【実施例】
【0105】
すべての化学薬品、メタノール、ジクロロメタン(DCM)、ポリエチレングリコールメチルエーテルアクリラート(PEG)および他の試薬をSigma−Aldrich化学会社から購入した。ポリエチレンイミンをPolyScience,Inc.から購入した。式(II)の分解可能なモノマー反応物を、米国特許出願第11/216,986号(米国特許出願公開第2006/0258751号)(これは参照によって本明細書中に組み込まれる)に報告される一般的手順に従って合成した。
【0106】
HeLaヒト子宮頸部腺ガン細胞およびB16F0マウス皮膚メラノーマ細胞をATCCから購入し、10%のFBSを含むDMEM培地で培養した。GFP発現の安定な細胞株を、GFP発現ベクターを細胞にトランスフェクションすることによって作製し、ヒグロマイシンB(HeLa−GFPについて)またはネオマイシン(B16F0−GFPについて)によって選抜した。
【0107】
(実施例1)
水溶性の分解可能な架橋されたカチオン性ポリマーの合成:
合成の概略図が図1に示される。PEI(30mg)をメタノール(3mL)に溶解した。DCM(ジクロロメタン)(6mL)における式(II)の分解可能なモノマー反応物(36mg)の溶液をPEI溶液に加えた。混合物を4時間撹拌した。DCM(2mL)におけるmPEG(23mg)の溶液を混合物に加えた。添加後、混合物をさらに4時間撹拌した。反応混合物を、ジエチルエーテルにおける2M塩酸を加えることによって反応停止させた。白色の沈殿物が形成され、これを遠心分離によって単離し、ジエチルエーテルにより洗浄した。水溶性の分解可能な架橋されたカチオン性ポリマー生成物(65mg、74%の収率)を高真空による乾燥の後で得た。生成物をH−NMRにより確認した。
【0108】
(実施例2)
水溶性の分解可能な架橋されたカチオン性ポリマーの合成:
合成の概略図が図1に示される。PEI(15mg)をメタノール(3mL)に溶解した。DCM(6mL)における式(II)の分解可能なモノマー反応物(71mg)の溶液をPEI溶液に加えた。混合物を4時間撹拌した。DCM(2mL)におけるmPEG(11mg)の溶液を混合物に加えた。添加後、混合物をさらに4時間撹拌した。反応混合物を、ジエチルエーテルにおける2M塩酸を加えることによって反応停止させた。白色の沈殿物が形成され、これを遠心分離によって単離し、ジエチルエーテルにより洗浄した。水溶性の分解可能な架橋されたカチオン性ポリマー生成物(65mg、74%の収率)を高真空による乾燥の後で得た。生成物をH−NMRにより確認した。
【0109】
(実施例3)
水溶性の分解可能な架橋されたカチオン性ポリマーの合成:ポリマー1
ジクロロメタン:メタノールの混合物(1:2、8mL)における分岐型PEI(MW=1200ダルトン、0.960g、0.80mmol)の溶液をジクロロメタン:メタノール(1:2、40mL)における式(II)の分解可能なモノマー反応物(1.91g、4.0mmol)の溶液に加えた。添加前に、式(II)の分解可能なモノマー反応物を含有するフラスコをジクロロメタン:メタノールにより洗浄した(1:2、0.5mLで4回)。添加が完了した後、反応混合物を室温で2時間撹拌した。
【化7】

【0110】
その後、ジクロロメタン:メタノール(1:2、3mL)におけるmPEG(MW=454ダルトン、0.726g、1.6mmol)の溶液を加えた。添加前に、mPEGを含有するフラスコをジクロロメタン:メタノールにより洗浄した(1:2、0.5mLで4回)。その後、反応混合物をさらに1時間撹拌した。
【化8】

【0111】
その後、反応液を、撹拌を行いながら、エーテルにおける2M塩酸の溶液(30mL)により反応停止させる前に氷水で10分間冷却した。懸濁物を8本の50mLの円錐型遠心分離チューブに入れ、さらなる冷却されたエーテル(−20℃)により希釈した。チューブにおける懸濁物を遠心分離した。液体を捨て、白色の固体生成物を2回、より多くのエーテルにより洗浄し、遠心分離した。生成物を真空下で乾燥して、3.97グラム(90%)を得た。生成物のポリマー1(分解可能な脂質ユニット:PEI:PEG(5:1:2))をH−NMRによって特徴づけた。
【0112】
(実施例4)
siRNAトランスフェクション:
緑色蛍光タンパク質(GFP)を発現する細胞を、トランスフェクションの1日前に、ウエルあたり1x10個の細胞の密度で96ウエルプレートに播種した。siRNA(1.0μg)の溶液を蒸留水に溶解し、OptiMEM(Invitrogen)により30μLに希釈した。これらの実験で使用されるsiRNAは抗GFPであった(CGAGAAGCGCGAUCACAUGUU(配列番号1))。選択された水溶性の分解可能な架橋されたカチオン性ポリマー[ポリマー2(分解可能ユニット:PEI:PEG(12:1:2))、ポリマー3(分解可能ユニット:PEI:PEG(16:1:2))、ポリマー4(分解可能ユニット:PEI:PEG(17:1:2))、ポリマー5(分解可能ユニット:PEI:PEG(20:1:2))]、および、コントロール[PEI1200、Cytopure(商標)、Lipofectamine2000(商標)、および、分解可能ユニット:PEI(5:1)、すべてがモル比である]を、送達試薬を適量のdHOに溶解することによって5mg/mlの濃度で調製した。実験期間中、実験において指定される化合物対siRNAの比率に従って、送達試薬溶液をさらに、30μlの最終的な体積にOptiMEMにより希釈した。希釈されたsiRNA溶液と、送達試薬溶液とを混合し、室温で15分間インキュベーションした。siRNAおよび送達試薬の混合物(15uL)を、事前に播種された細胞のそれぞれのウエルに加え、混合し、5%COとともに37℃のインキュベーターでインキュベーションした。48時間後、トランスフェクションおよび効率細胞生存率を評価した。
【0113】
(実施例5)
トランスフェクション効率の評価:
約48時間後、トランスフェクションを、GFPの発現を蛍光顕微鏡下で測定することによって評価した。GFPの吸光度をUV−visマイクロプレートリーダーにより485nm〜528nmにおいて検出した。HeLa細胞における緑色蛍光タンパク質のパーセント活性の結果が図2に示される。B16F0細胞における緑色蛍光タンパク質のパーセント活性の結果が図3に示される。これらの結果は、水溶性の分解可能な架橋されたカチオン性ポリマーが、コントロール[PEI1200、Cytopure(商標)、および、架橋された分解可能ユニット:PEI(5:1)]と比較して、より効果的に緑色蛍光タンパク質の発現を阻害する(または停止させる)ことを示す。
【0114】
(実施例6)
細胞生存率アッセイ:
3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロミド(MTT)の溶液を、250mgの固体MTTを50mLのDubecco PBSに溶解することによって調製し、4℃で貯蔵した。48時間のトランスフェクションの後、MTT溶液(5mg/mLの10μL)を細胞のそれぞれのウエルに加え、紫色結晶の成長が観測され得るまで37℃で2時間〜4時間インキュベーションした。その後、可溶化された溶液(100μL)を加え、37℃で一晩インキュベーションした。吸光度を、690nmでの吸光度を参照として、570nmの波長で検出した。細胞生存率アッセイの結果が図4に示される。
【0115】
(実施例7)
プレートの被覆:
PEI−1.2K、Cytopure(商標)、L2Kおよびポリマー1を別々にHOに溶解して、5mg/mLのストック溶液を作製した。種々の化合物を、30μLの最終的な体積において、0.625μg/ウエル、1.25μg/ウエル、2.50μg/ウエルおよび5.0μg/ウエルの量で96ウエルプレートに被覆し、真空乾燥機で一晩乾燥した。乾燥したプレートを使用までアルミニウムホイルで密封した。
【0116】
(実施例8)
トランスフェクション:
1.0μgのsiRNA(抗GFP)をOptiMEM(Invitrogen)により30μLに希釈し、被覆されたウエルに加え、室温で25分間インキュベーションした。その後、(GFPを発現する)細胞を100μLの培養培地において1.5x10個/ウエルで対応するウエルに播種し、5%COとともに37℃のインキュベーターでインキュベーションした。
【0117】
(実施例9)
検出:
48時間のトランスフェクションの後、GFPの発現を顕微鏡下で観測した。GFPの吸光度をUV−visマイクロプレートリーダーにより485nm〜528nmにおいて検出した。結果が、Hela細胞については5:1および10:1のポリマー:siRNAの比率で、B16F0細胞については2.5:1、5:1および10:1の比率で、図5、図7、図9、図11および図13において報告される。すべての場合において、ポリマー1を使用するトランスフェクションは、陽性コントロール(Lipofectamine(商標))と比較して、より良好(Hela細胞、5:1;B16F0、試験されたすべての比率)、または、同等(Hela細胞、10:1の比率)であった。
【0118】
(実施例10)
細胞生存率アッセイ:
48時間のトランスフェクションの後、3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロミド(MTT、PBSにおいて5mg/mL)溶液の10μLを細胞のそれぞれのウエルに加え、細胞を、紫色結晶の成長が観測され得るまで37℃で2時間〜4時間インキュベーションした。その後、100μLの可溶化溶液をそれぞれのウエルに加え、それぞれのウエルを37℃で一晩インキュベーションした。吸光度を、690nmでの吸光度を参照として、570nmの波長で検出した。結果が、Hela細胞については5:1および10:1のポリマー:siRNAの比率で、B16F0細胞については2.5:1、5:1および10:1の比率で、図6、図8、図10、図12および図14において報告される。両方の細胞タイプについてのすべての試験された比率において、ポリマー1は細胞毒性を示さなかった。
【0119】
(実施例11)
HepG2細胞におけるsiRNAによるアポリポタンパク質Bタンパク質の阻害
アポリポタンパク質B(Apo−B)は低密度リポタンパク質の主要なアポリポタンパク質であり、心臓疾患の危険性についてのマーカーである。Apo−B発現の阻害は心臓疾患の危険性を低下させ得る。
【0120】
ポリマー6を、実施例1〜実施例3に記載されるように合成した。ポリマー6は、分解可能ユニット:PEI:PEGのモル比が16.5:1:2である水溶性の分解可能な架橋されたカチオン性ポリマーである。分解可能ユニットおよびPEIは、実施例3に記載されるのと同じである。ポリマー6を図15および図17〜図20の実験におけるトランスフェクション剤として使用した。
【0121】
センス:5’−GUCAUCACACUGAAUACCAAUUU−3’(配列番号2)およびアンチセンス:5’−AUUGGUAUUCAGUGUGAUGACUU−3’(配列番号3)(抗Apo−B)の配列を有するsiRNA(抗Apo−B、これはDharmaconにおいて合成された)の1μg、2.5μgまたは5μgをOptiMEM(商標)(Invitrogen)により30μLに希釈し、上記の実施例4に記載されるようにトランスフェクション剤としてのPEG化ポリマー6と複合体化した。トランスフェクション剤:siRNAの比率が2:1であった。混合物を、100μLの培養培地においてウエルあたり1.5x10個でウエルに播種されたHepG2細胞を含有する96ウエルプレートに加え、5%COとともに37℃インキュベーターでインキュベーションした。コントロールの処置は、(1)siRNA非存在およびポリマー非存在(ブランク)、(2)抗Apo−Bのみ(siapoB単独:5μg)、および、(3)トランスフェクション剤単独(ポリマー6単独)であった。
【0122】
48時間のインキュベーションの後、mRNA発現を、Apo−BのmRNAについての下記のプライマーを用いる定量的RT−PCRによって求めた:フォワード:5’−TTTGCCCTCAACCTACCAAC−3’(配列番号4)、および、リバース:5’−TGCGATCTTGTTGGCTACTG−3’(配列番号5)。図15は、HepG2細胞培養におけるApo−BのmRNAの発現に対するsiRNAの影響を示す。発現が、ブランクに対して示される。予想されるように、siApo−B単独またはトランスフェクション剤(ポリマー6)単独のどちらも、HepG2細胞におけるApo−Bの発現に対する影響を何ら有していなかった。トランスフェクション剤/siRNAの複合体の量が増大するにつれて、HepG2細胞におけるApo−BのmRNAレベルの阻害が低下する。このことは、カチオン性のPEG化されたポリマーのトランスフェクション剤が、Apo−Bをインビトロで阻害するための哺乳動物細胞内への抗Apo−Bの送達において効果的であることを示す。
【0123】
(実施例12)
5%グルコースにおけるトランスフェクション剤/siRNAの複合体の安定性
図16は、RiboGreen(商標)(Invitrogen)に結合した後における蛍光によって明らかにされるようなトランスフェクション剤/siRNAの複合体の安定性を示す。結果は、トランスフェクション剤(ポリマー2)対siRNAの比率が増大するにつれて、蛍光が低下することを示す。
【0124】
(実施例13)
nu/nuマウスにおける抗siRNAの影響
複合体を、5:1の比率で、トランスフェクション剤のポリマー6と、上記の実施例11に記載されるように調製されるsiRNA(抗Apo−B)との間で形成させた。複合体をマウスの尾静脈に皮下注入した。結果が図17に示される。
【0125】
図17に示されるように、1.0mg/kgの抗Apo−B siRNAの術後48時間での投与、および、2.5mg/kgの抗Apo−B siRNAの術後2週間での投与はともに、nu/nuマウスにおけるApo−BのmRNAの発現を効果的に阻害した。
【0126】
別個の実験において、トランスフェクション剤(ポリマー6)対抗Apo−B siRNAの比率を5:1から10:1にまで変化させた。注入された量は1.0mg/kgで維持された。すべての比率により、Apo−BのmRNAの発現が阻害されたが、最も強い阻害が5:1および7.5:1の比率において観測された(図18)。
【0127】
カチオン性のPEG化されたポリマーをマウスに注入することの阻害効果が、2.5mg/kgの注入量により、図19に示されるように少なくとも2週間にわたって持続した。
【0128】
(実施例14)
C57BL/6マウスにおける抗siRNAの影響
図20は、トランスフェクション剤のポリマー6と複合体化された、1.0mg/kgの抗Apo−B siRNAの汎用マウス系統(C57BL/6)への注入を示す。注入された量が、実施例13のnu/nuマウスと比較して、1.0mg/kgに増大されたとき、Apo−BのmRNA発現のより強い阻害が観測された(図20)。阻害が2週間にわたって観測された。3週間で、Apo−B発現のレベルがコントロールのレベルに戻った(図20)。
【0129】
数多くの様々な改変が、本発明の精神から逸脱することなく行われ得ることが当業者によって理解される。従って、本発明の様々な形態は例示にすぎず、本発明の範囲を限定するために意図されないことが明らかに理解されなければならない。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)繰り返し骨格のポリエチレングリコール(PEG)ユニット、
(b)繰り返し骨格のカチオン性ポリエチレンイミン(PEI)ユニット、および
(c)側鎖脂質基を含む、繰り返し骨格の分解可能ユニット
を含む水溶性の分解可能な架橋されたカチオン性ポリマーを含む、siRNA送達のための組成物。
【請求項2】
前記繰り返し骨格のポリエチレングリコールユニットが約50ダルトン〜約5,000ダルトンの範囲での分子量を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記繰り返し骨格のポリエチレングリコールユニットが約400ダルトン〜約600ダルトンの範囲での分子量を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記繰り返し骨格のカチオン性ポリエチレンイミンユニットが約200ダルトン〜約25,000ダルトンの範囲での分子量を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記繰り返し骨格のカチオン性ポリエチレンイミンユニットが約600ダルトン〜約2,000ダルトンの範囲での分子量を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記繰り返し骨格の分解可能ユニットが、下記の式(I):
【化1】

(式中、
は非存在であるか、または、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、ヘテロアルキニルおよび−(CHn1−D−(CHn2−からなる群から選択される場合により置換された置換基であり、
ただし、n1およびn2はそれぞれが独立して、0、または、1〜10の範囲における整数であり、かつ
Dは、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリールおよびヘテロシクリルからなる群から選択される場合により置換された置換基である;
は非存在であるか、あるいは、酸素原子または−N(R)であり、ただし、RはHまたはC1〜6アルキルである;
は、電子対、または、水素、または、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、ヘテロアルキニル、アリール、ヘテロアリールおよびヘテロシクリルからなる群から選択される場合により置換された置換基であり、
ただし、Rが、水素、または、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、ヘテロアルキニル、アリール、ヘテロアリールおよびヘテロシクリルからなる群から選択される場合により置換された置換基であるならば、Rが結合する窒素原子は正電荷を有する;および
は、C〜C50アルキル、C〜C50ヘテロアルキル、C〜C50アルケニル、C〜C50ヘテロアルケニル、C〜C50アルキニル、C〜C50ヘテロアルキニル、C〜C50アリール、C〜C50ヘテロアリール、−(CHp1−E−(CHp2−およびステロールからなる群から選択され、
ただし、p1およびp2はそれぞれが独立して、0、または、1〜40の範囲における整数であり、かつ
Eは、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリールおよびヘテロシクリルからなる群から選択される場合により置換された置換基である)
の繰り返しユニットを有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
が、オレイル、ラウリル、ミリスチル、パルミチル、マルガリル、ステアリル、アラキジル、ベヘニル、リグノセリルおよびステロールからなる群から選択される、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
がオレイルである、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記繰り返し骨格の分解可能ユニットが、
【化2】

である、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記繰り返し骨格のPEIユニットが約1200ダルトンの分子量を有する、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記繰り返し骨格のPEIユニットが分岐型PEIユニットである、請求項9〜10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記繰り返し骨格のPEIユニットが約454ダルトンの分子量を有する、請求項9〜11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
前記水溶性の分解可能な架橋されたカチオン性ポリマーが、前記水溶性の分解可能な架橋されたカチオン性ポリマーにおける繰り返しユニットの総モル数に基づいて約1モル%〜約95モル%の前記繰り返し骨格の分解可能ユニットを含む、請求項1〜12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
前記水溶性の分解可能な架橋されたカチオン性ポリマーが、前記水溶性の分解可能な架橋されたカチオン性ポリマーにおける繰り返しユニットの総モル数に基づいて約30モル%〜約90モル%の前記繰り返し骨格の分解可能ユニットを含む、請求項1〜12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
前記水溶性の分解可能な架橋されたカチオン性ポリマーが、前記水溶性の分解可能な架橋されたカチオン性ポリマーにおける繰り返しユニットの総モル数に基づいて約50モル%〜約86モル%の前記繰り返し骨格の分解可能ユニットを含む、請求項1〜12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
前記水溶性の分解可能な架橋されたカチオン性ポリマーが、前記水溶性の分解可能な架橋されたカチオン性ポリマーにおける繰り返しユニットの総モル数に基づいて約1モル%〜約35モル%の前記繰り返し骨格のカチオン性ポリエチレンイミンユニットを含む、請求項1〜15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
前記水溶性の分解可能な架橋されたカチオン性ポリマーが、前記水溶性の分解可能な架橋されたカチオン性ポリマーにおける繰り返しユニットの総モル数に基づいて約1モル%〜約20モル%の前記繰り返し骨格のカチオン性ポリエチレンイミンユニットを含む、請求項1〜15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項18】
前記水溶性の分解可能な架橋されたカチオン性ポリマーが、前記水溶性の分解可能な架橋されたカチオン性ポリマーにおける繰り返しユニットの総モル数に基づいて約5モル%〜約15モル%の前記繰り返し骨格のカチオン性ポリエチレンイミンユニットを含む、請求項1〜15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項19】
前記水溶性の分解可能な架橋されたカチオン性ポリマーが、前記水溶性の分解可能な架橋されたカチオン性ポリマーにおける繰り返しユニットの総モル数に基づいて約1モル%〜約80モル%の前記繰り返し骨格のポリエチレングリコールユニットを含む、請求項1〜18のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項20】
前記水溶性の分解可能な架橋されたカチオン性ポリマーが、前記水溶性の分解可能な架橋されたカチオン性ポリマーにおける繰り返しユニットの総モル数に基づいて約1モル%〜約50モル%の前記繰り返し骨格のポリエチレングリコールユニットを含む、請求項1〜18のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項21】
前記水溶性の分解可能な架橋されたカチオン性ポリマーが、前記水溶性の分解可能な架橋されたカチオン性ポリマーにおける繰り返しユニットの総モル数に基づいて約5モル%〜約30モル%の前記繰り返し骨格のポリエチレングリコールユニットを含む、請求項1〜18のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項22】
前記水溶性の分解可能な架橋されたカチオン性ポリマーが、前記水溶性の分解可能な架橋されたカチオン性ポリマーにおける繰り返しユニットの総モル数に基づいて約8モル%〜約30モル%の前記繰り返し骨格のポリエチレングリコールユニットを含む、請求項1〜18のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項23】
請求項1に記載される水溶性の分解可能な架橋されたカチオン性ポリマーを作製する方法であって、
繰り返しエチレンイミンユニットを含む第1の反応物を有機溶媒に溶解して、溶解または部分的に溶解されたポリマー反応物を形成すること;
溶解または部分的に溶解されたポリマー反応物を分解可能なモノマー反応物と反応させて、分解可能な架橋されたポリマーを形成すること(ただし、分解可能なモノマー反応物が脂質基を含む);および
分解可能な架橋されたポリマーを第3の反応物と反応させること(ただし、第3の反応物が繰り返しポリエチレングリコールユニットを含む)
を含む、方法。
【請求項24】
前記第1の反応物がポリエチレンイミンである、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記分解可能なモノマー反応物が、下記の式(II):
【化3】

(式中、
は非存在であるか、または、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、ヘテロアルキニルおよび−(CHn1−D−(CHn2−からなる群から選択される場合により置換された置換基であり、
ただし、n1およびn2はそれぞれが独立して、0、または、1〜10の範囲における整数であり、かつ
Dは、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリールおよびヘテロシクリルからなる群から選択される場合により置換された置換基である;
は非存在であるか、あるいは、酸素原子または−N(R)であり、ただし、RはHまたはC1〜6アルキルである;
は、電子対、または、水素、または、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、ヘテロアルキニル、アリール、ヘテロアリールおよびヘテロシクリルからなる群から選択される場合により置換された置換基であり、
ただし、Rが、水素、または、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、ヘテロアルキニル、アリール、ヘテロアリールおよびヘテロシクリルからなる群から選択される場合により置換された置換基であるならば、Rが結合する窒素原子は正電荷を有する;および
は、C〜C50アルキル、C〜C50ヘテロアルキル、C〜C50アルケニル、C〜C50ヘテロアルケニル、C〜C50アルキニル、C〜C50ヘテロアルキニル、C〜C50アリール、C〜C50ヘテロアリール、−(CHp1−E−(CHp2−およびステロールからなる群から選択され、
ただし、p1およびp2はそれぞれが独立して、0、または、1〜40の範囲における整数であり、かつ
Eは、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリールおよびヘテロシクリルからなる群から選択される場合により置換された置換基である)
の化合物である、請求項23〜24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
が、オレイル、ラウリル、ミリスチル、パルミチル、マルガリル、ステアリル、アラキジル、ベヘニル、リグノセリルおよびステロールからなる群から選択される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
がオレイルである、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記第3の反応物がポリエチレングリコールまたはメトキシポリエチレングリコールである、請求項23〜27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
式(II)の前記化合物および前記PEIが約0.1:1〜約50:1の範囲におけるモル比でそれぞれ存在する、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
式(II)の前記化合物および前記PEIが約1:1〜約30:1の範囲におけるモル比でそれぞれ存在する、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
式(II)の前記化合物および前記PEIが約5:1〜約25:1の範囲におけるモル比でそれぞれ存在する、請求項28に記載の方法。
【請求項32】
前記PEGおよび前記PEIが約0.1:1〜約12:1の範囲におけるモル比でそれぞれ存在する、請求項28に記載の方法。
【請求項33】
前記PEGおよび前記PEIが約1:1〜約10:1の範囲におけるモル比でそれぞれ存在する、請求項28に記載の方法。
【請求項34】
前記PEGおよび前記PEIが約1:1〜約4:1の範囲におけるモル比でそれぞれ存在する、請求項28に記載の方法。
【請求項35】
短い干渉性RNA(siRNA)を細胞内に送達する方法であって、
請求項1〜22のいずれか一項に記載される水溶性の分解可能な架橋されたカチオン性ポリマーを前記siRNAと一緒にして、混合物を形成すること、および
1つまたは複数の細胞を前記混合物と接触させること
を含む、方法。
【請求項36】
前記siRNAが19塩基対〜27塩基対である、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記細胞が哺乳動物細胞である、請求項35〜36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記哺乳動物細胞がガン細胞である、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記siRNAが、リポタンパク質遺伝子セグメントのコード領域の少なくとも一部分に対応するsiRNAである、請求項37に記載の方法。
【請求項40】
前記リポタンパク質がアポリポタンパク質Bである、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
請求項1〜22のいずれか一項に記載される水溶性の分解可能な架橋されたカチオン性ポリマーと複合体化される、リポタンパク質遺伝子セグメントのコード領域の少なくとも一部分に対応するsiRNAの治療効果的な量をその必要性のある対象に投与することを含む、心臓血管疾患を処置するか、または、心臓血管疾患の危険性を低下させる方法。
【請求項42】
前記リポタンパク質がアポリポタンパク質Bである、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
トランスフェクション剤を含む組成物が少なくとも部分的に付着する固体表面を含む、真核生物細胞をsiRNAによりトランスフェクションするためのデバイスであって、前記トランスフェクション試薬が、水溶性の分解可能な架橋されたカチオン性ポリマー、カチオン性ポリマー、リポポリマー、PEG化されたカチオン性ポリマー、PEG化されたリポポリマー、カチオン性脂質、PEG化されたカチオン性脂質、および、カチオン性の分解可能なPEG化されたリポポリマーからなる群から選択される、デバイス。
【請求項44】
前記固体表面が、ディッシュの底、マルチウエルプレート、連続表面、ビーズ、繊維またはペレットである、請求項43に記載のデバイス。
【請求項45】
前記固体表面が、ポリスチレン樹脂、エポキシ樹脂、天然樹脂、ガラスまたは金属である、請求項43に記載のデバイス。
【請求項46】
前記トランスフェクション試薬が、前記試薬を手作業または自動化された機構により前記固体表面に一様に塗布することによって、あるいは、前記トランスフェクション試薬を手作業または自動化された機構により前記固体表面にスポットすることによって前記表面に付着させられる、請求項43に記載のデバイス。
【請求項47】
前記トランスフェクション剤が水溶性の分解可能な架橋されたカチオン性ポリマーである、請求項43に記載のデバイス。
【請求項48】
前記水溶性の分解可能な架橋されたカチオン性ポリマーが、
(a)繰り返し骨格のポリエチレングリコール(PEG)ユニット、
(b)繰り返し骨格のカチオン性ポリエチレンイミン(PEI)ユニット、および
(c)側鎖脂質基を含む、繰り返し骨格の分解可能ユニット
を含む、請求項47に記載のデバイス。
【請求項49】
前記水溶性の分解可能な架橋されたカチオン性ポリマーが、分子量が約1200ダルトンである繰り返し骨格のPEIユニットと、分子量が約454ダルトンである繰り返し骨格のPEGユニットと、
【化4】

である繰り返し骨格の分解可能ユニットとを含む、請求項48に記載のデバイス。
【請求項50】
前記水溶性の分解可能な架橋されたカチオン性ポリマーの分子量が約500ダルトン〜約1,000,000ダルトンの範囲にある、請求項48〜49のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項51】
前記水溶性の分解可能な架橋されたカチオン性ポリマーの分子量が約2000ダルトン〜約200,000ダルトンの範囲にある、請求項48〜49のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項52】
siRNAが真核生物細胞の中に入ることができるかどうかを判定する方法であって、
(a)請求項43に記載されるデバイスを提供すること、
(b)siRNAを、siRNAがトランスフェクション試薬と相互作用するように前記デバイスに加えること、
(c)真核生物細胞を細胞内へのsiRNAの導入のための十分な密度および適切な条件で前記デバイスに播種すること、および
(d)siRNAが細胞の中に入っているかどうかを検出すること
を含む、方法。
【請求項53】
前記真核生物細胞が哺乳動物細胞である、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記哺乳動物細胞が分裂細胞または非分裂細胞である、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記哺乳動物細胞が形質転換細胞または初代細胞である、請求項53に記載の方法。
【請求項56】
前記哺乳動物細胞が体細胞または幹細胞である、請求項53に記載の方法。
【請求項57】
前記真核生物細胞が植物細胞または昆虫細胞である、請求項52に記載の方法。
【請求項58】
siRNAを真核生物細胞に導入するための方法であって、
(a)請求項1〜22のいずれか一項に記載される水溶性の分解可能な架橋されたカチオン性ポリマーにより少なくとも部分的に被覆される固体表面を提供すること、
(b)真核生物細胞に導入されるためのsiRNAを細胞表面に加えること、および
(c)細胞を真核生物細胞内へのsiRNAの導入のための十分な密度および適切な条件で前記固体表面に播種すること
を含む、方法。
【請求項59】
前記固体表面が、フラスコ、ディッシュ、マルチウエルプレート、ガラススライドおよび埋め込みデバイスからなる群から選択される、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
前記水溶性の分解可能な架橋されたカチオン性ポリマーが、前記試薬を手作業または自動化された機構により前記固体表面に一様に塗布することによって、あるいは、前記トランスフェクション試薬を手作業または自動化された機構により前記固体表面にスポットすることによって前記表面に付着させられる、請求項58に記載の方法。
【請求項61】
前記真核生物細胞が哺乳動物細胞である、請求項58に記載の方法。
【請求項62】
前記哺乳動物細胞が分裂細胞または非分裂細胞である、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
前記哺乳動物細胞が形質転換細胞または初代細胞である、請求項61に記載の方法。
【請求項64】
前記哺乳動物細胞が体細胞または幹細胞である、請求項61に記載の方法。
【請求項65】
前記真核生物細胞が植物細胞または昆虫細胞である、請求項58に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公表番号】特表2010−530013(P2010−530013A)
【公表日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−511267(P2010−511267)
【出願日】平成20年6月2日(2008.6.2)
【国際出願番号】PCT/US2008/065564
【国際公開番号】WO2008/151150
【国際公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】