説明

根から切断された植物の延命方法及び装置

【課題】根を切断した植物を長期間生息させることができるようにする。
【解決手段】 養分水が供給される容体に、根から切断された植物の幹や枝の切断部分を受け入れる差し込み部を設ける。容体に充満する養分水の水圧を高め、差し込み部に差し込まれた前記幹や枝の切断部分に養分水の水圧をかける。この水圧により幹や枝の内部に養分水が押し込まれるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、根から切断された植物の延命方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
植物は根を地中深く伸ばし、広大な根の表面積から養分を含む水を吸収して生息している。植物は、葉から蒸発する水分の導管内の水圧変化で、養分を吸収している。幹あるいは枝を切断するとその機能を失い枯れてしまう。切断した部分を水にさして置くと、しばらくは生きているが長持ちはしないのが現状である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
水にさした幹あるいは枝を切断した植物が長持ちしない理由は、蒸発循環機能の損壊と植物の生命力の衰退が大きく影響しているものと考えられる。植物が蒸発循環機能だけで生息するならば、水に差した植物は枯れることがないはずであるが、枯れてしまう。これは、根の役割には水を吸収する機能の他に、水を植物の内部に押し込む力、言い換えれば水を内部に押し出す力が働いているものと考えることができる。このような考えに基づいて、養分水を加圧し、植物の幹の切断部分の内部に養分水を押し込む圧力を付与したところ、植物は枯れることなく、切断する前よりも力強く成長することが実験的に確認することができた。
本発明の主たる目的は、植物の幹や枝の切断部分に圧力給水をすることにより、植物を長く元気に生息させることである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するため本発明は、養分水が供給される容体に、根から切断された植物の幹や枝の切断部分を受け入れる差し込み部を設け、該容体に充満する養分水の水圧を高め、差し込み部に差し込まれた前記幹や枝の切断部分に養分水の水圧をかけ、この水圧により前記幹や枝の内部に養分水を押し込むようにしたものである。
また本発明は、吐出口から圧力を高めた空気を出力する空気加圧調整機構と、前記空気加圧調整機構と連結し、出口から高圧の水を吐出する吸水タンクと、差し込み部を有し、該差し込み部に差し込まれた植物の幹や枝の切断部分に前記吸水タンクから供給された高圧の水の水圧をかけ、幹や枝の内部に高圧水を押し込むようにした圧力給水接続機構とを備えたものである。
また本発明は、前記圧力給水接続機構を、前記給水タンクに接続する容体と、差し込み部を有し前記容体に取り付けられたゴム体とで構成し、前記差し込み部を略円錐形としたものである。
また本発明は、前記差し込み部の外周部に板状のリブを複数一体的に形成し、該リブの側面を前記容体の内壁面に圧接し、該圧接力によって前記差し込み部に前記容体を密閉する方向にゴム圧がかかるようにしたものである。
【発明の効果】
【0005】
本発明は、生花を長時間生息させることができる。また大きい幹でも生息が可能であり、コンクリートの床に大木の生花をデザインすることができる。また、土のいらない樹木の育成ができ、狭い空間での植物栽培が可能となる。また、土の重量問題を解決できるので、屋上緑化の重量の問題を解決することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下に本発明の実施の形態を添付した図面を参照して詳細に説明する。
図1は、植物延命装置の全体構成を示す説明図である。本装置は、空気加圧調整機構2と、給水タンク4と、圧力給水接続機構6を主たる構成要素としている。空気加圧調整機構2は、コントローラ(図示省略)により制御される空圧ポンプを内蔵し、その圧力空気吐出口が空気送圧管8を介して、給水タンク4の上部の連結部10に連結している。
【0007】
給水タンク4の内部には、タンク4内に配置された水12の除菌や浄化を行うための除菌・浄化材14が配置されている。給水タンク4の上部には、補給水口16が開閉バルブ18を有するパイプを介して連結し、補給水口16に連結する水道などの給水源から、補給水口16とバルブ18を経て、水が給水タンク4内に供給されるように構成されている。給水タンク4内には、水位警報器20の水位検出部が内置されている。
【0008】
給水タンク4内の水位が所定の水位に達すると、コントローラ(図示省略)は、バルブ18を開き、給水タンク4内の水が所定の水位を維持するように自動制御される。給水タンク4の底部には、内部の水を外部に排出するための出口20が設けられ、この出口20に水圧給水を行うための給水管22が連結している。給水管22の給水経路には、上流側から、順次、水溶性の固形肥料が入っている肥料用タンク24,逆流防止弁26、分岐管28,28が設けられている。
【0009】
任意の数設けられた分岐管28,28の分岐口には、それぞれ、給水バルブ30を備えた管を介して、圧力給水接続機構6,6が連結している。圧力給水接続機構6,6は、図2に示すように、外周部にナット用のねじが切られた筒状部32aと、漏斗状の底部32bから成る容体32の上部に、ゴム材からなるパッキン体34の上部34aが、固定ナット35により、取り付けられている。パッキン体34は、リング状のつば部34aと、円錐状に先細りに形成された差し込み部34bを有している。
【0010】
差し込み部34bの外周面には、軸方向に延びる複数の板状のリブ36が略等間隔で一体的に形成され、各リブ30の開放端側縁部36aは、容体32の内周面に圧着し、この圧着による圧力により、差し込み部34bに、該差し込み部34bが閉じる方向にゴム圧がかかるように構成されている。リブ36は、図4に示すように、横断面形状が互いに弓状にわん曲して形成され、このわん曲形状によって、パッキン体34を容体32の筒状容部32aに、その開口部から、軸方向に沿って圧入し易くしている。
【0011】
パッキン体34は、容体32内を密閉状態とし、内部に水が圧送されると水圧がかかるように構成されている。差し込み部34bの閉じた部分は、ゴムの弾力に抗して押し広げることができ、植物38の幹や枝を差し込むことができるようになっている。このとき、差し込み部34bは、差し込まれた幹や枝によって栓がされた状態となり、容体32内の高圧水が外部に漏れないようになっている。
【0012】
上記した構成において、コントローラの制御あるいは手操作により、開閉バルブ18を開き、給水タンク4内を所定の水位まで、水で満たしておく。一方、空気加圧調整機構2を駆動し、空気送圧管8を通じて、給水タンク4に空気を圧送し、給水タンク4内を外部の気圧よりも高い所定の高気圧に設定する。給水バルブ30を開くと、圧力給水接続機構6の容体32内に給水管22を通じて、給水タンク4内の水が養分水として供給される。尚、給水管22の端部22aは閉じている。
【0013】
容体32内は、密閉状態にあり、給水タンク4から供給される高圧水が充満し、容体32の内壁面やパッキン体34の、容体32の内部と接する壁面に、所定の高水圧がかかる。生花などの植物38の切断した幹を差し込み部34bのくぼみに差し込み、幹の下端を差し込み部34bの下方に突出させ、容体32の内部に位置させる。
【0014】
差し込み部34bに差し込まれた幹には、差し込み部34bがゴム圧により密着し、容体32内の密閉状態が保持される。そのため、植物38の幹には、容体32内の高水圧がかかり、この水圧により、植物38の幹に栄養分が溶けた養分水が押し込まれる。容体32内の水圧は植物の種類に応じて、0.1kg/平方センチメートル〜2kg/平方センチメートルが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本装置の全体説明図である。
【図2】本発明の要部の断面図である。
【図3】パッキン体の正面図である。
【図4】パッキン体の底面図である。
【符号の説明】
【0016】
2 空気加圧調整機構
4 給水タンク
6 圧力給水接続機構
8 空気送圧管
10 連結部
12 水
14 除菌・浄化材
16 補給水口
18 開閉バルブ
20 出口
22 給水管
24 肥料用タンク
26 逆流防止弁
28 分岐管
30 給水バルブ
32a 筒状容部
32b 底部
32 容体
34 パッキン体
34a つば部
34b 差し込み部
36 リブ
38 植物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
養分水が供給される容体に、根から切断された植物の幹や枝の切断部分を受け入れる差し込み部を設け、該容体に充満する養分水の水圧を高め、差し込み部に差し込まれた前記幹や枝の切断部分に養分水の水圧をかけ、この水圧により前記幹や枝の内部に養分水を押し込むようにしたことを特徴とする根から切断された植物の延命方法。
【請求項2】
吐出口から圧力を高めた空気を出力する空気加圧調整機構と、前記空気加圧調整機構と連結し、出口から高圧の水を吐出する吸水タンクと、差し込み部を有し、該差し込み部に差し込まれた植物の幹や枝の切断部分に前記吸水タンクから供給された高圧の水の水圧をかけ、幹や枝の内部に高圧水を押し込むようにした圧力給水接続機構とを備えたことを特徴とする根から切断された植物の延命装置。
【請求項3】
前記圧力給水接続機構を、前記給水タンクに接続する容体と、差し込み部を有し前記容体に取り付けられたゴム体とで構成し、前記差し込み部を略円錐形としたことを特徴とする請求項2に記載の根から切断された植物の延命装置。
【請求項4】
前記差し込み部の外周部に板状のリブを複数一体的に形成し、該リブの側面を前記容体の内壁面に圧接し、該圧接力によって前記差し込み部に前記容体を密閉する方向にゴム圧がかかるようにしたことを特徴とする請求項3に記載の根から切断された植物の延命装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2010−136659(P2010−136659A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−315148(P2008−315148)
【出願日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【出願人】(501183367)
【Fターム(参考)】