説明

格子状構造物の溶接装置

【課題】人の手溶接による施工が不可能である溶接を自動溶接により可能とし、特に長尺で狭隘な格子の内側を、遠隔で自動制御により、確実かつ高精度で、しかも安全に自動隅肉溶接することができるようにする。
【解決手段】狭隘かつ長尺な格子状空間を形成した組立体を、前記格子状空間の内側にて隅肉溶接して格子状構造物とする溶接装置であって、前記組立体を外周側から支持するワーク支持装置と、このワーク支持装置に支持された前記組立体の格子状空間内にその長さ方向端部から挿入可能および同方向に沿って進退動作可能なマニプレータと、このこのマニプレータの挿入先端側に設けられた溶接トーチと、この溶接トーチおよび前記マニプレータを遠隔操作する遠隔操作装置とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は複数の板材を十字形に組立て、狭隘かつ長尺な格子状空間を形成した組立体を、格子状空間の内側にて隅肉溶接し、格子状構造物とする溶接装置に係り、特に人間が入り込むことができない狭隘な格子状空間をもつ格子状構造物の溶接を円滑かつ確実に行うことを可能とした溶接装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば原子力プラントにおいて、原子炉で使用済みとなった燃料は燃料キャスクに収納されて移送・保管される。燃料キャスクは、遮蔽材等により構成された外殻体としての円筒状のキャスク本体と、このキャスク本体の内部に収容されて複数の使用済み燃料を1本ずつ区画収納する長尺な燃料収納格子とを備えている。(例えば、特許文献1参照。)
従来ではバスケット格子が外筒であるキャスク本体内に収容され、各格子状空間にそれぞれ使用済み燃料1本ずつ収容する構成となっている。このような燃料収納用の格子状構造物は角パイプを束ねた構成とされ、溶接士の手作業等により溶接接続が行われていたが、近年では複数の板材を十字形に交差させて組立てる構成が採用されるようになっている。
【0003】
このように、格子状構造物複数の板材を十字形には十字状に交差させた板材を相互に溶接することにより構成されるが、格子間隙が狭隘であるため人間が入り込むことができず、溶接トーチを搭載したマニプレータを適用せざるを得ないものである。
【特許文献1】特開平11−304980号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したように、格子状の長尺で狭隘なヶ所の内側の溶接は人の手溶接では不可能である。長尺で狭隘な箇所の内側の溶接を施工するには、遠隔による自動溶接および狭隘な箇所に挿入できる溶接トーチとトーチ支持構造物が不可欠である。
【0005】
また、人の直接監視ができないため、遠隔による監視が必要であることと、溶接する姿勢を一定にするため適切な位置にワークを回転させる必要がある。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、人の手溶接による施工が不可能である溶接を自動溶接により可能とし、特に長尺で狭隘な格子の内側を、遠隔で自動制御により、確実かつ高精度で、しかも安全に自動隅肉溶接することができる溶接装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の目的を達成するために、本発明では、複数の板材を十字形に組立て、狭隘かつ長尺な格子状空間を形成した組立体を、前記格子状空間の内側にて隅肉溶接して格子状構造物とする溶接装置であって、前記組立体を外周側から支持するワーク支持装置と、このワーク支持装置に支持された前記組立体の格子状空間内にその長さ方向端部から挿入可能および同方向に沿って進退動作可能なマニプレータと、このマニプレータの挿入先端側に設けられた溶接トーチと、この溶接トーチおよび前記マニプレータを遠隔操作する遠隔操作装置とを備えたことを特徴とする格子状構造物の溶接装置を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、人の手溶接での施工が不可能である長尺で狭隘な格子の内部の隅肉溶接を遠隔で手動制御し、施工することができる。また、自動制御でも溶接することが可能であり、自動溶接中は人の関与が不必要となり、格子状構造物の製作コストを大幅に削減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明に係る格子状構造物の溶接装置の一実施形態について図面を参照して説明する。なお、本実施形態では格子状構造物として使用済み燃料キャスクのバスケット格子を適用した場合について説明する。
【0010】
図1は本実施形態による溶接装置1の全体構成を示す側面図である。この図1に示すように、溶接装置1は、ワークとしての格子状構造物となる組立体2を外周側から支持するワーク支持装置3と、このワーク支持装置3の両側位置に対向配置された1対の溶接機4(4a,4b)とを備え、これらの溶接機4a,4bは作業床5上に設置されている。
【0011】
ワーク支持装置3は基台6上にターニングローラ7および回転部8を設けたものであり、ワーク(組立体)2を水平軸心廻りに回転および停止可能に支持できる構成となっている。このワーク支持装置3は、作業床5上に固定配置されている。
【0012】
一方、ワーク支持装置3の両側に対向配置された1対の溶接機4(4a,4b)は、互いに同一構成のものであり、作業床5上に設けた支持レール9上に走行台車10を介して水平移動(y方向)できる縦長な支持スタンド11を備えている。この支持スタンド11には垂直方向(z方向)に昇降可能な昇降装置12が設けられ、この昇降装置12には枚プレータである溶接ヘッドアーム13が水平方向(x方向)に移動可能に取付けられている。溶接ヘッドアーム13の一端側(先端側)はワーク支持装置3側に向って突出し、この部分に溶接トーチ部Aが設けられている。溶接トーチ部Aは、ワーク支持装置3に支持されるワークである組立体2に対し、x方向に沿って進退動作できる構成となっている。
【0013】
図2は図1に示した溶接装置1を示す平面図である。この図2に示すように、ワーク支持装置3の近傍には、遠隔操作装置としての制御装置21および作業用架台22が配置されている。また、ワーク支持装置3を挟む1対の溶接機4(4a,4b)は、互いに平行な方向(y方向)に移動可能であり、溶接トーチ部Aをワーク支持装置3の回転軸心Oと直交する方向に移動可能となっている。図2に示すように、走行台車10はガイドレール22上に沿って移動することができる。
【0014】
図3は図1に示した溶接トーチAを拡大して示す平面図であり、図4は同側面図である。これらの図3および図4に示すように、溶接ヘッドアーム13には支持アーム14が連結されている。支持アーム14の基端部分には溶接トーチヘッド15が設けられ、溶接トーチヘッド15の先端部にはモータおよびギア等により構成された駆動部16が設けられている。
【0015】
駆動部16には、ブラケットを介してワイヤ供給部17が設けられ、ワイヤ供給部17には溶接ワイヤ18が装着されている。溶接ワイヤ18が臨む部位には溶接トーチ30が設けられている。溶接トーチ30は図3(側面図)に示すように下向き略垂直配置のものであり、垂直下向きに溶接を施す構成となっている。
【0016】
溶接トーチ30の先端側には倣いローラ31が設けられている。この倣いローラ31は水平軸32に支持されており、ローラ下縁が露出してワークに接して回転する構成となっている。
【0017】
倣いローラ31のさらに先端側には、溶接状態を監視するための1対のCCDカメラ33(33a,33b)が配置されている。これらのCCDカメラ33(33a,33b)は溶接方向前後位置から溶接部を監視できる配置で設けられている。
【0018】
さらに、CCDカメラ33の先端側に、タッチセンサ34と、ティーチングピン35とが設けられている。タッチセンサ34は図4に示すように、支持アーム14と直交する方向かつ水平方向に相対する状態で突出した針状のセンサであり、具体的には昆虫の触覚の如く構成され、両側に離反する方向に向って1対突出している。ティーチングピン35は垂直上向きに針状に突出した1本のピンである。
【0019】
図5は、図1に示したワークとしての格子状組立体2を長手方向端面から見た拡大図である。この図5に示すように、組立体2は複数の板材を十字形に組立てたものであり、狭隘かつ長尺な格子状空間40を形成している。この組立体2の格子状空間の内側にて隅肉溶接を施すことにより格子状構造物が構成されるものである。
【0020】
図5には、組立体の接作業初期状態における姿勢が示してある。すなわち、組立体2はワーク支持装置3により中心部を支点として水平軸心廻りに回動可能に支持されており、組立体の4つの角部c1、c2、c3、c4は回転により垂直上向きの頂部位置に順次に配置できる。そこで、上述の上向きのティーチングピン35は、組立体2を回転および停止させつつ、停止時に4つの角部c1、c2、c3、c4の頂部に接触させることにより、ワークの各角部の位置を順次に知ることができる。この機能は遠隔制御装置により実施される。これにより、溶接トーチ30を配置すべき位置設定が可能となる。
【0021】
図6には、隅肉溶接時における溶接トーチヘッド15の配置状態が示してある。この図6に示すように、倣いローラ31はワークである格子状の組立体2の一格子部の下隅角部2aに転接してワークの長さ方向に回転移動することができる。これにより溶接時の進行方向への移動が可能である。倣いローラ31が移動した後方部位において溶接ビード50が形成されることになる。
【0022】
また、図6にはタッチセンサ34も示してある。このタッチセンサ34は格子部の横方向で対向する横向き隅角部に向く設定とされている。このタッチセンサ34がワーク2の格子部に非接触である場合に溶接が設定位置で進行することになる。もし、タッチセンサ34がワーク2の格子部に接触した場合には、溶接位置不良と判断されて、溶接が停止される。
【0023】
図7には、溶接進行状況が拡大斜視図として示してある。上述したCCDカメラ33a,33bが溶融池60および溶接ビード50を溶接方向前後方向から監視する状態を示している。このように、溶接進行に伴って常時溶接状態を監視しつつ溶接作業を進行させることができる。具体的には、ワーク2である組立体の長さ方向中央位置に溶接トーチ(図示省略)の先端を配置し、この溶接トーチをワーク2の端部側に引き抜く方向(図7の右方向)に沿って溶接を実行する。これにより、溶接時の加熱はワーク中央位置から端部側に排出される状態となり、過熱防止が図れる。
【0024】
また、図8に示すように、本発明では1対の溶接ヘッドアーム13の溶接トーチにより、略同時溶接を行う。この場合、一方(図7の左側)の溶接トーチをワーク2の中央位置から開始するため、他方(図8の右側)の溶接トーチは若干ワーク2の中央からずれた位置から溶接が開始される。このようにして、1対の溶接トーチにより略同時に隅肉溶接を実行するものである。この時、図7に示したように、一方のCCDカメラ33aで溶融池60を、また他方のCCDカメラ33bで溶接ビード50を観察することができる。
【0025】
なお、溶接作用については、重力の関係から溶接ビード50が下向きとなる隅肉溶接を行うものであり、溶接トーチ30は常時、上下方向において一定姿勢を保持することになる。また、溶接は例えばワーク2の各格子部を単位とし、隣接する格子部に移行させて行うことができる。その場合には、ワーク支持装置3の回転動作と、支持スタンド11による溶接ヘッドアーム13の水平移動とにより順次に溶接作業を進行させることができる。
【0026】
図9には、溶接方法の手順を説明するフローチャートが示してある。スタートの後、上述のティーチングが行われる(S1)。このティーチングは、例えば図5に示した格子状ワーク2の4つの角部C1〜C4の最外側端部の隅部分を、回転とともにティーチングピン35により行う。
【0027】
次に、ティーチングにより遠隔操作装置としての制御装置21に位置情報が入力され、ワーク2が所定回転により溶接位置に位置決めされ、停止する(S2)。
【0028】
そこで、図8に示したように、一方のマニプレータである溶接ヘッドアーム13をワーク2に挿入して移動、溶接するとともに(S3)、他方のマニプレータもワーク2に挿入して移動、溶接する(S4)。各溶接が終了するごとに(S5)、(S6)、次の溶接のために格子状構造物であるワーク2を所定角度中心廻りに回動させる(S7)。
【0029】
以上の操作を繰返して、1つのワーク2の全隅角部を溶接した後に、溶接終了となり(S8)、図1および図2に示したように、ワーク支持装置3およびマニプレータを原点位置に復帰させ(S9)、1溶接工程の終了となる。
【0030】
以上のように本実施形態においては、種々の機能が得られる。すなわち、複数の板材を十字形に組立て、狭隘かつ長尺な格子状空間を形成した組立体2を、格子状空間の内側にて隅肉溶接して格子状構造物とすることができる。そして、組立体2を外周側から支持するワーク支持装置3と、このワーク支持装置3に支持された組立体2の格子状空間内にその長さ方向端部から挿入可能および同方向に沿って進退動作可能なマニプレータとしての溶接ヘッドアーム13と、このマニプレータの挿入先端側に設けられた溶接トーチ30と、この溶接トーチ30およびマニプレータを遠隔操作する遠隔操作装置21とを備えている。そして、ワーク支持装置3は、組立体2の格子状空間を水平方向に沿う配置で支持するとともに、水平軸心廻りに回動および停止可能に支持する回転支持機構としてのターニングローラ7および回転部8備えている。
【0031】
また、マニプレータは、支持スタンド11に溶接ヘッドアーム13を介して上下方向および横方向に移動可能に支持され、ワーク支持装置3に対して鉛直面上の任意座標位置で移動可能とされている。また、マニプレータは、水平面上で組立体2の格子状空間の長さ方向ほぼ中間位置から端部位置まで移動可能とされている。
【0032】
また、組立体2の格子状空間は長さ方向に貫通するものとされ、この格子状空間の両端開口部に対応して溶接トーチ30を有する1対のマニプレータがワーク支持装置3を挟む配置で進退動作可能に配設されている。
【0033】
遠隔操作装置21は、予め記憶させたプログラムに基づいて、ワーク支持装置3の回転および停止を行わせるワーク支持装置制御部と、マニプレータの移動および停止を行わせるマニプレータ制御部と、溶接トーチによる溶接開始および停止を行わせる溶接トーチ制御部とを備えている。
【0034】
溶接トーチ搭載のマニプレータの先端にはティーチングピン35が設置され、このティーチングピンは格子状構造物に複数箇所接触可能であり、この接触により認識される位置を記憶させたプログラムにより、溶接トーチ搭載マニプレータが格子状構造物の複数の格子内に干渉なく正確に挿入可能とされている。
【0035】
マニプレータは先端部に溶接ビード監視手段として、溶接による溶融部と溶接後の溶接ビードとを監視する2体の視覚センサ(CCDカメラ33)を備えている。
【0036】
マニプレータは先端部に溶接ガイド手段として、板材同士が組合う隅角部の位置に接触して組立体2の長さ方向に沿って転動する倣いローラ31を備えている。
【0037】
マニプレータは先端部に格子状空間内の溶接トーチ挿入方向と直交する方向における溶接位置確認手段として接触式センサであるタッチセンサ34を有し、この接触式センサが板材と接触した場合に遠隔操作装置のマニプレータ制御部からの出力信号によりマニプレータの移動および溶接が停止する設定とされている。
【0038】
溶接中の溶融池60、格子状構造物の形状および溶接トーチ形状は視覚センサにより感知され、情報が抽出され、これらの情報で溶接トーチおよび溶接ワイヤの位置が自動制御によりセンシングされるようになっている。
【0039】
そして、格子状構造物支持装置は、格子状構造物を長さ方向に沿う軸心まわりに回転可能なワーク支持装置3であり、マニプレータは、溶接装置を格子状構造物の格子状空間の長さ方向ほぼ中間位置まで挿入可能とされている。
【0040】
さらに、格子状構造物の十字に組合せた長尺で狭隘な角(V部)の隅肉溶接が人の手により施工できないことを可能にする。構造物の溶接部は適切な角度位置にワーク支持装置3で回転され、トーチ搭載のマニプレータと連動することで格子内を溶接することができる。
【0041】
ワーク支持装置3の内側に固定された格子状構造物の両端面の2方向から格子内に溶接トーチヘッドを挿入することができる。
【0042】
なお、具体例としては、トーチ搭載のマニプレータが、溶接ヘッドアーム(溶接トーチ付き)と走行台車10で構成されており、の溶接ヘッドアーム(溶接トーチ付き)は下端1380mmから上端mm4180までの距離2800mmを作動でき、その範囲の溶接施工することができる。
【0043】
本実施形態はワーク支持装置3の回転部とターニングローラとで構成され、回転部が左右のどの方向でも360°回転でき、任意の角度に停止できる。また格子状構造物をワーク支持装置3のセンター位置に固定できる。
【0044】
溶接ヘッドアーム(溶接トーチ付き)が格子状構造物8の格子内部中央まで挿入可能な作動範囲である設置状態から前後方向に例えば2500mmを移動でき、格子内部の内側から外側に向けて溶接が施工できる。
【0045】
溶接応力による変形を、格子内側から外側に向けて施工することにより、溶接応力による変形を格子内側から外側に開放し、格子状構造物の寸法精度を上げることができる。
【0046】
また、制御盤が備えられ、あらかじめ記憶させたプログラムによって、溶接トーチ搭載マニプレータとワーク支持装置3とを自動で作動させ、格子内の溶接が施工できる。
【0047】
溶接位置および溶接順序を記憶したプログラムに従い、ワーク支持装置3とトーチ搭載のマニプレータが人の関与無しで作動し、溶接を施工することが可能である。
【0048】
また、プログラムによる自動制御を必要としない場合には、手動による操作で溶接を施工できる構成とすることができる。格子状構造物を自動溶接している際に、異常が発生した場合には、予めプログラムした以外の装置の動作を人の操作により行うことができる。
【0049】
ティーチングピン35を格子構造物の数ヶ所に接触させることで、格子状構造物の格子位置を認識し、数ある格子内の口径が例えば152mmのワークに干渉することなく、正確に挿入することができる。格子状構造物の溶接位置精度の確保を目的として、格子状構造物の数ヶ所をティーチングピンを接触させることで、格子状構造物の寸法および位置を記憶し、トーチ搭載マニプレータが格子構造物に干渉することなく、作動することが可能である。
【0050】
さらに、本実施形態では、2体のCCDカメラを備え、溶接部(溶融部)と溶接後の溶接ビードをCCDカメラからの映像をモニターで監視することができる。これにより、長尺で狭隘な格子状構造物に格子内の溶接部(溶融部)監視と溶接後の溶接ビードの状況監視が同時に確認でき、異常時には装置を停止することができる。
【0051】
また、倣いローラ31により、格子状構造物8の十字角部(V部)を倣うことで、溶接トーチが倣いローラ31の軌跡を正確に追従し、自動溶接を施工することができる。本実施形態では、格子状構造物の十字部(V型)開先の両側に倣いローラ31が接触し、開先長さ方向に倣いローラ31が倣って走行することで、溶接ヘッドの位置も倣いローラ31の軌跡を走行し、溶接位置を正確に確保することができる。
【0052】
さらに、タッチセンサ34が、トーチ搭載マニプレータの溶接トーチヘッド最先端に装備されており、そのセンサが格子状構造物等いかなる物に接触しても、トーチ搭載マニプレータが作動を停止する機能を有している。これにより、万一溶接トーチヘッドが格子内を外れて挿入されようとする時には、そのセンサが格子端面に接触し、停止するのでトーチの損傷を防止することができる。
【0053】
溶接する格子状構造物の位置を記憶させるティーチング時と、格子内を溶接するための挿入時には、溶接トーチ搭載マニプレータが格子状構造物の格子端面に衝突し、損傷することを防止する。
【0054】
溶接センシングシステムの全体としては、溶接中の溶接ビード、溶融池、格子状構造物の形状、またはトーチ形状をCCDカメラ33の画像を視覚センサで感知する機能と、光レーザ等による情報を抽出し、溶接トーチとワイヤ位置調整を適切に自動で制御する機能とを備えている。
【0055】
溶接中の溶接部(溶融池)から、溶接トーチ30および溶接ワイヤ位置ずれを人の監視操作により修正しているが、その操作を映像の視覚センサと光レーザ等で感知し、自動センシングを行うことができる。
【0056】
このような構成において、本実施形態では下記の方法を実施することができる。
【0057】
すなわち、格子状構造物をその長手方向に沿う軸心まわりに回転可能に支持させるワーク回転支持工程と、このワーク支持工程において支持された格子状構造物の格子間隙内に開口端側から格子構造物の長さ方向およびこれと直交する方向に移動可能なマニプレータを挿入するマニプレータ挿入工程と、マニプレータに設けられた溶接トーチにより溶接を行う溶接工程とを行うことができる。
【0058】
また、ワーク支持装置3、マニプレータおよび溶接装置をそれぞれ遠隔操作する遠隔操作装置とを備え、遠隔操作装置は、ワーク支持装置3の停止状態下でマニプレータを格子組立長さ方向ほぼ中央位置に挿入する溶接開始位置設定手段、溶接トーチにより溶接を開始させ、格子構造物の開口端部側に移動させて1工程の溶接を行わせる溶接手段、および1工程の溶接終了ごとにワーク支持手段の回転と前記マニプレータの移動とを行わせて工程を繰返し全格子間隙における隅肉溶接を行わせる進行手段を備えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明に係る溶接装置の全体構成を示す側面図。
【図2】本発明に係る溶接装置の全体構成を示す平面図。
【図3】本発明に係る溶接装置の要部構成を示す拡大側面図。
【図4】本発明に係る溶接装置の要部構成を示す拡大平面図。
【図5】本発明に係る溶接装置の溶接用ワークを示す側面図。
【図6】本発明に係る溶接装置の溶接用ワークの拡大側面図。
【図7】本発明に係る溶接装置の作用を示す拡大斜視図。
【図8】本発明に係る溶接装置の溶接状態を示す説明図。
【図9】本発明に係る溶接装置の溶接用ワークの機能を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0060】
1 溶接装置
2 組立体
3 ワーク支持装置
4(4a,4b) 溶接機
5 作業床
6 基台
7 ターニングローラ
8 回転部
10 走行台車
11 支持スタンド
12 昇降装置
13 溶接ヘッドアーム(マニプレータ)
14 支持アーム
15 溶接トーチヘッド
16 駆動部
17 ワイヤ供給部
18 溶接ワイヤ
30 溶接トーチ
A 溶接トーチ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の板材を十字形に組立て、狭隘かつ長尺な格子状空間を形成した組立体を、前記格子状空間の内側にて隅肉溶接して格子状構造物とする溶接装置であって、前記組立体を外周側から支持するワーク支持装置と、このワーク支持装置に支持された前記組立体の格子状空間内にその長さ方向端部から挿入可能および同方向に沿って進退動作可能なマニプレータと、このマニプレータの挿入先端側に設けられた溶接トーチと、この溶接トーチおよび前記マニプレータを遠隔操作する遠隔操作装置とを備えたことを特徴とする格子状構造物の溶接装置。
【請求項2】
前記ワーク支持装置は、前記組立体の格子状空間を水平方向に沿う配置で支持するとともに、水平軸心廻りに回動および停止可能に支持する回転支持機構を備えている請求項1記載の格子状構造物の溶接装置。
【請求項3】
前記マニプレータは、支持スタンドに溶接ヘッドアームを介して上下方向および横方向に移動可能に支持され、前記ワーク支持装置に対して鉛直面上の任意座標位置で移動可能とされており、かつ水平面上で前記組立体の格子状空間の長さ方向ほぼ中間位置から端部位置まで移動可能とされている請求項1記載の格子状構造物の溶接装置。
【請求項4】
前記組立体の格子状空間は長さ方向に貫通するものとし、この格子状空間の両端開口部に対応して前記溶接トーチを有する1対のマニプレータが前記ワーク支持装置を挟む配置で進退動作可能に配設されている請求項3記載の格子状構造物の溶接装置。
【請求項5】
前記遠隔操作装置は、予め記憶させたプログラムに基づいて、前記ワーク支持装置の回転および停止を行わせるワーク支持装置制御部と、前記マニプレータの移動および停止を行わせるマニプレータ制御部と、前記溶接トーチによる溶接開始および停止を行わせる溶接トーチ制御部とを備えている請求項1記載の格子状構造物の溶接装置。
【請求項6】
前記溶接トーチ搭載のマニプレータの先端にティーチングピンが設置され、このティーチングピンが前記格子状構造物に複数箇所接触可能であり、この接触により認識される位置を記憶させた前記プログラムにより、前記溶接トーチ搭載マニプレータが前記格子状構造物の複数の格子内に干渉なく正確に挿入可能とされている請求項1記載の格子状構造物の溶接装置。
【請求項7】
前記マニプレータは先端部に溶接ビード監視手段として、溶接による溶融部と溶接後の溶接ビードとを監視する2体の視覚センサを備えている請求項1記載の格子状構造物の溶接装置。
【請求項8】
前記マニプレータは先端部に溶接ガイド手段として、前記板材同士が組合う隅角部の位置に接触して前記組立体の長さ方向に沿って転動する倣いローラを備えている請求項1記載の格子状構造物の溶接装置。
【請求項9】
前記マニプレータは先端部に前記格子状空間内の溶接トーチ挿入方向と直交する方向における溶接位置確認手段として接触式センサを有し、この接触式センサが前記板材と接触した場合に前記遠隔操作装置のマニプレータ制御部からの出力信号により前記マニプレータの移動および溶接が停止する設定とされている請求項4記載の格子状構造物の溶接装置。
【請求項10】
溶接中の溶融池、格子状構造物の形状および溶接トーチ形状を視覚センサにより感知して、情報が抽出され、これらの情報で溶接トーチおよび溶接ワイヤの位置が自動制御によりセンシングされる請求項1記載の格子状構造物の溶接装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate