説明

栽培ベンチ循環型栽培システムおよび栽培装置

【課題】栽培ベンチ循環方式の施設園芸農業として野菜や花卉類などの作物を高効率に水耕栽培等する栽培システム、および栽培装置を提供する。
【解決手段】栽培ベンチを、入り口ラインから出口ラインに向かって敷設した広軌レール上を、同栽培ベンチの短手方向を移動線と平行な向きにして数珠繋ぎ状態に前進させつつ作物の育成を行い、出口ラインにおいて栽培ベンチ上の作物の収穫を行い、空になった栽培ベンチは90度水平回転させて同栽培ベンチの長手方向を移動線と平行な向きにし、往路の栽培ベンチ列の下を潜れるように広軌レールの内側に背を低く敷設した狭軌レール上を前進させて入り口ラインへ戻すステップを含むことなどを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、栽培ベンチ循環方式の施設園芸農業として野菜や花卉類などの作物を高効率に水耕栽培等する栽培システム、および栽培装置の技術分野に属し、更に云えば、作物を収穫して空状態になった栽培ベンチは、往路の栽培ベンチ列の下を潜る形の復路を入り口ラインまで戻される上下2段型の立体型循環路を形成し、敷地の有効利用度を高めた栽培ベンチ循環型栽培システムおよび栽培装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来一般の栽培ベンチ循環型栽培システムは、図10に概念図を例示したように、入り口ラインAから出口ラインBに向かって一方向に移動する栽培ベンチ列Cを栽培室Dの敷地が許す限りに複数列形成し、出口ラインBに到達した栽培ベンチは、その位置で、又は隣接の処置室Eへ移動させて作物の収穫を行う。その後、栽培ベンチは90度の水平回転Fを行って、例えば播種の作業が容易なように長手方向を進行方向に向けた縦列の播種ラインKを形成して播種作業Gを行う。その後、栽培ベンチは再び90度の水平回転Fを行って、短手方向を進行方向に向けた横列の数珠繋ぎ状態による発芽ラインHを形成する。そして、発芽ラインHの先頭の栽培ベンチを順次入り口ラインAへ送り、出口ラインBに向かって一方向に移動させる栽培ベンチ列Cに加える循環動作を繰り返す。
【0003】
因みに、下記の特許文献1に開示された温室用栽培ベンチ構造は、正に上記図10で説明した通りの栽培ベンチ循環システム構造と認められる。
また、下記の特許文献2、3に記載された栽培装置は、いわゆる入り口ラインと出口ラインとに横送り手段を一連に設置して、一つの栽培室内で平面的に見て栽培ベンチの往路と復路が横並びに隣接する循環ラインを構成していることが特徴である。
【0004】
【特許文献1】実公平2−28688号公報
【特許文献2】特許第2955929号公報
【特許文献3】特許第3306543号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図10に例示し、また、特許文献1に開示された従来一般の栽培ベンチ循環型栽培システムは、栽培室Dとは別異の処理室Eを横並びに用意し、処理室Eに播種ラインKを形成して播種作業Gを行い、また、発芽ラインHを形成して発芽までの時間を稼いでいる。このように栽培室Dと処理室Eとを横並びに併設する必要があると、敷地の有効利用、高効率使用を妨げる結果となる。特に一般の農業用敷地は間口幅が狭く、奥行き方向に長い長方形の地形が多く、栽培室Dと処理室Eとを横並びに併設するには敷地の形状に限界があって適さないことが多い。
上記特許文献2、3のように、一つの栽培室内を平面的に見て横並びの配置で栽培ベンチが循環する往路と復路を連続させた構成も一案であるが、平面的に見ると、作物の育成に供する栽培ベンチの往路と、育成に供しない復路とが全く同じ長さで横並びに並行するから、作物の栽培効率が低い。もっとも、往路と復路を共に作物の育成に供せしめる実施も可能であるが、そうすると作物の播種、発芽作業と、収穫作業を共通の場所で行うことになり、各作業のスペース確保が難しいという問題もある。
【0006】
したがって、本発明の目的は、敷地の狭い間口幅を最も有効に活用することができ、付随する農作業に必要な作業のスペース確保も容易であり、奥行き方向の長さの有効利用に適する構成の栽培ベンチ循環型栽培システムおよび栽培装置を提供することにある。
本発明の究極の目的は、栽培ベンチの往路と復路とを上下2段の立体型循環構造とし、もって狭い間口幅でも、その全幅を作物の育成に供する栽培ベンチの往路列として可能なかぎり多数の列数を形成でき、また、奥行き方向の両端部に入り口ラインと出口ラインを設けて、入り口ラインに隣接する場所に作物の播種ラインや発芽ラインを形成し、出口ラインに隣接する場所に作物の収穫ラインを設けることが可能で、敷地の狭い間口幅を最も有効に活用することができ、しかも長い奥行き方向を有効利用することに最適な構成の栽培ベンチ循環型栽培システムおよび栽培装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した従来技術の課題を解決するための手段として、請求項1に記載した発明に係る栽培ベンチ循環型栽培システムは、
平面視が長方形で育成作物を積載した栽培ベンチ1を、入り口ラインAから出口ラインBに向かって敷設した広軌レール2上を、同栽培ベンチ1の短手方向を移動線と平行な向きにして数珠繋ぎ状態に前進させつつ作物の育成を行い、出口ラインBにおいて栽培ベンチ1上の作物の収穫を行い、空になった栽培ベンチ1は90度水平回転させて同栽培ベンチ1の長手方向を移動線と平行な向きにし、前記往路の栽培ベンチ列Cの下を潜れるように前記広軌レール2の内側に背を低く敷設した狭軌レール5上を前進させて入り口ラインAへ戻すステップと、
入り口ラインAに戻された栽培ベンチ1には、発芽させた育成作物を積載し、同栽培ベンチ1の短手方向を移動線と平行な向きにして、広軌レール2上を出口ラインBに向かって前進移動させるステップと、
前記の入り口ラインAおよび出口ラインBには、前記栽培ベンチ1が乗り込むことが可能で、少なくとも90度水平回転させる回転テーブル機構40を備え、その回転テーブル44を広軌レール2の高さ又は狭軌レール5の高さに垂直移動させる昇降機構41を備えた移載装置4を設置して栽培ベンチ1の移載を行うステップを含むことを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載した発明に係る栽培ベンチ循環型栽培装置は、
入り口ラインAから出口ラインBに向かって敷設された広軌レール2、及び前記広軌レール2上を移動する往路の栽培ベンチ1の下を、復路の栽培ベンチ1が潜って進むことが可能に背を低くして前記広軌レール2の内側に敷設された狭軌レール5と、
前記広軌レール2および狭軌レール5上を走行可能な配置と間隔で複数の車輪8を下面に備えた平面形状が長方形の栽培ベンチ1と、
前記入り口ラインAと出口ラインBに位置させ、入り口ラインAを出発する栽培ベンチ1および出口ラインBに到達した栽培ベンチ1が乗り込むことが可能で、入り口ラインAを出発する栽培ベンチ1はその短手方向が広軌レール2と平行な向きに、出口ラインBに到達した栽培ベンチ1はその長手方向が狭軌レール5と平行な向きに少なくとも90度水平回転させることが可能な回転テーブル機構40を備え、その回転テーブル44を背の高い広軌レール2又は背の低い狭軌レール5へ乗り移らせる高さに垂直移動させる昇降機構41を備える移載装置4とを含む構成であることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載した発明は、請求項2に記載した栽培ベンチ循環型栽培装置において、
栽培ベンチ下面の車輪8は、垂直軸12の下に水平に回転する支持具13が設置され、広軌レール2又は狭軌レール5の上に乗る2個の同形・同大のベアリングローラ80は左右対称なVの字形配置で前記支持具13に支持されてローラユニットとして構成されており、栽培ベンチ1の下面中央寄り位置に、長手方向には広軌レール2と同じ間隔L1、短手方向には狭軌レール5と同じ間隔L2の長方形の四隅相当位置に合計4個設置されていることを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載した発明は、請求項2に記載した栽培ベンチ循環型栽培装置において、
移載装置4の回転テーブル機構40は、その回転テーブル44の上面に、且つその回転中心の周りに、広軌レール2と同じ間隔L1で平行な2本の固定レール20、および狭軌レール5と同じ間隔L2で平行な2本の固定レール21がそれぞれ平面視を長方形の配置に設置されていると共に、前記長方形配置の固定レール20、21の四隅部分は、前記長方形の各頂点を中心として水平回転する垂直な回転軸22に各固定レール20、21と広軌レール2又は狭軌レール5との連絡を可能にする長さの繋ぎレール23を取り付けた回転レールとして構成され、また、前記の各回転軸22にはそれぞれ同径のホイール24が一体的に水平回転するように設置され、四隅位置の前記回転軸22に取り付けた各ホイール24と、回転テーブル44の回転中心位置に設置された同径で非回転の固定ホイール25とがそれぞれ無端の連動帯状体27で一連に連結されており、回転テーブル44の90度の水平回転時に、四隅の各回転レールも90度回転する構成とされていること、そして、前記回転テーブル機構40は前記昇降機構41の上に設置されていることを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載した発明は、請求項2又は4に記載した栽培ベンチ循環型栽培装置において、
移載装置4は、入り口ラインAおよび出口ラインBにそれぞれ各ラインと同方向に敷設された軌道15上を移動可能な走行機構42を備えていること、入り口ラインAと出口ラインBの間に敷設された広軌レール2と狭軌レール5の組みは、各ラインA又はBに沿って複数組みが、長手方向に隣接する栽培ベンチ1、1が相互に干渉を起こさない間隔L3をあけて敷設されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の栽培ベンチ循環型栽培システムおよび栽培装置は、栽培ベンチ1の往路と復路とを上下2段の立体型循環構造として共通化させたので、栽培ベンチ1の往路(および復路)の列は、敷地幅を最大限度有効に活用して多数列設置できる。したがって、間口幅が狭く、奥行き方向に長い形状の敷地Dの有効利用に最適である。しかも、作物栽培に不可欠の播種ラインKや発芽ラインHは、栽培ベンチ1の往路と復路の両端部に位置する入り口ラインAに隣接して設置し、他方の出口ラインBには収穫ラインJを隣接して設置することにより、細長い敷地Dの有効活用度を一層高めることが出来る。
【0013】
また、前記入り口ラインAと出口ラインBにそれぞれ、少なくとも1台の移載装置4を設置することにより、入り口ラインAから往路(広軌レール2)の作物育成ラインへ、栽培ベンチ1の短手方向を進行方向と平行な向き(横向き)にして送り込む作業、および出口ラインBに到達して収穫作業を終え空になった栽培ベンチ1は長手方向を進行方向と平行な向き(縦向き)にして復路(狭軌レール5)へ送り込む作業を、それぞれ栽培ベンチ1が大形大重量でも、必要な水平回転と垂直移動を加えて、たった1人の作業員でも、移載装置4の回転テーブル機構40および昇降機構41を操作、制御することで迅速に安全、確実に遂行することができ、作業能率の向上と、省人化、そして作業員を重労働から解放することができる。
【0014】
とりわけ、栽培ベンチ1は、その下面にレール2及び5上を走行する車輪8を合計4個設置しただけの簡易な構成であり、その車輪8は、垂直な回転軸12の下に水平に回転する支持具13を設置し、広軌レール2又は狭軌レール5の上に乗る2個の同形・同大のベアリングローラ80が左右対称なVの字形配置で前記支持具13に支持されたローラユニットとして構成されており、この車輪8を栽培ベンチ1の下面中央寄り位置に、長手方向には広軌レール2と同じ間隔Ll、短手方向には狭軌レール5と同じ間隔L2をあけた長方形の四隅相当位置に設置した構成であり、一方、移載装置4の回転テーブル機構40の回転テーブル44は、栽培ベンチ1の往路を形成する広軌レール2と同じ間隔L1で平行な2本の固定レール20を、および同復路を形成する狭軌レール5と同じ間隔L2で平行なそれぞれ2本の固定レール21を平面視を長方形の配置に設置されて成り、しかも前記長方形配置の固定レール20、21の四隅部分は、前記長方形の各頂点を中心に水平回転する垂直な回転軸22に各固定レール20、21と広軌レール2又は狭軌レール5との連絡を可能にする長さの繋ぎレール23を取り付けた回転可能なレールとして構成し、更に各回転軸22には同径のホイール24が一体的に水平回転するように設置され、前記回転軸22に取り付けた各ホイール24と、回転テーブル44の回転中心位置に設置された同径で非回転の固定ホイール25とをそれぞれ無端の連動帯状体27で一連に連結して、回転テーブル44の90度の水平回転時に四隅の各繋ぎレール23も等しく90度回転する構成としたから、栽培ベンチ1が回転テーブル44へ乗り入れると、栽培ベンチ1の車輪8は、各繋ぎレール23上に乗っかり、繋ぎレール23の回転と共に車輪8も回転し、栽培ベンチ1の短手方向、長手方向の90度の方向転換と同時に、栽培ベンチ1の車輪8も90度回転する。そして、前記の回転テーブル機構40は昇降機構41で垂直移動させる構成としたので、栽培ベンチ1が往路の広軌レール2から回転テーブル44の固定レール20又は21上へ乗り入れ、90度水平回転させた後に同栽培ベンチ1を復路の狭軌レール5上へ乗り出させる作業を、作業員はさして腕力を必要とすることなく、スムーズに軽快に遂行することができ、重労働から解放される。
【0015】
勿論、入り口ラインAおよび出口ラインBと同方向に軌道が敷設され、その上を移載装置4が走行機構42で移動自在な構成であると、栽培ベンチ1の往復路が多数列形成されていても、1台の移載装置4を用意することで全列の栽培ベンチ1の出入り動作に対応できて経済的な構成となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の栽培ベンチ循環型栽培システムは、平面視が長方形で育成作物を積載した栽培ベンチ1を、入り口ラインAから出口ラインBに向かって敷設した広軌レール2上を、同栽培ベンチ1の短手方向を移動線と平行な向き(横向き)にして数珠繋ぎ状態に前進させつつ作物の育成を行う。出口ラインBにおいて到達した栽培ベンチ1上の作物の収穫を行い、空になった栽培ベンチ1は90度水平回転させ、同栽培ベンチ1の長手方向を移動線と平行な向き(縦向き)にして、前記往路の栽培ベンチ列の下を潜れるように前記広軌レール2の内側に背を低く敷設した狭軌レール5上を前進させて入り口ラインAへ戻すステップと、
入り口ラインAに戻された栽培ベンチ1には、発芽させた育成作物を積載し、同栽培ベンチ1の短手方向を移動線と平行な向き(横向き)にして、再び広軌レール2上を出口ラインBに向かって前進移動させるステップと、
前記入り口ラインAおよび出口ラインBには、前記栽培ベンチ1が乗り込むことが可能で、少なくとも90度水平回転させる回転テーブル機構40を備え、更に前記回転テーブル44を広軌レール2の高さ又は狭軌レール5の高さに垂直移動させる昇降機構41を備えた移載装置4を設置して栽培ベンチ1の移載を行うステップを含む構成とする。
【0017】
本発明に係る栽培ベンチ循環型栽培装置は、入り口ラインAから出口ラインBに向かって敷設された広軌レール2、及び前記広軌レール2上を移動する往路の栽培ベンチ列Cの下を、復路の栽培ベンチ1が潜って進むことが可能に背を低くし前記広軌レール2の内側に敷設された狭軌レール5と、
前記広軌レール2および狭軌レール5上を走行可能な配置と間隔で複数の車輪8を下面に備えた平面形状が長方形の栽培ベンチ1と、
前記入り口ラインAと出口ラインBに位置させ、入り口ラインAを出発する栽培ベンチ1および出口ラインBに到達した栽培ベンチ1が乗り込むことが可能で、入り口ラインAを出発する栽培ベンチ1はその短手方向が広軌レール2と平行な向き(横向き)に、出口ラインBに到達した栽培ベンチ1はその長手方向を狭軌レール5と平行な向き(縦向き)に少なくとも90度水平回転させることが可能な回転テーブル機構40を備え、更にその回転テーブル44を支持して背の高い広軌レール2又は背の低い狭軌レール5へ乗り移らせる高さに垂直移動させる昇降機構41を備える移載装置4とを含む構成とする。
【実施例1】
【0018】
以下に、本発明の実施例1を図面に基づいて説明する。先ず図1は、請求項1に係る発明の栽培ベンチ循環型栽培システムを概念的に示している。
平面視が長方形で育成作物を積載した栽培ベンチ1は、入り口ラインAから出口ラインBに向かって敷設した広軌レール2上を、同栽培ベンチ1の短手方向を移動線と平行な向き(横向き)にして数珠繋ぎ状態に前進させ、その間に作物の育成を行う。出口ラインBに到達するまでの間に作物は収穫可能にまで成長するようにラインの進行が設計される。よって、出口ラインBに沿って作物の収穫に必要な設備、場所を用意した収穫ラインJを設ける。出口ラインBに到達した栽培ベンチ1は移載装置4で受け取り、栽培ベンチ1上の作物の収穫を行う。空になった栽培ベンチ1は、90度水平回転Fさせて同栽培ベンチ1の長手方向を移動線と平行な向き(縦向き)にし、前記往路の栽培ベンチ列Cの下を潜れるように前記広軌レール2の内側に背を低く敷設した(図2を参照)狭軌レール5(図1では見やすくするため、便宜上二種のレール2と5は分離して記載した。)の上を前進させて入り口ラインAへ戻す。つまり、栽培ベンチ1の往路列Cと復路列とは、上下2段の立体型の循環構造とされている。したがって、わざわざ返送ラインを独立して設けないので、省スペース化が図れるし、敷地面積一杯に育成するラインを設置できるので、栽培効率を上げられる。
【0019】
入り口ラインAに戻された栽培ベンチ1は、待ち受けた移載装置4で受け取り、90度水平回転Fさせて、入り口ラインAに隣接する場所に設けた播種ラインKへ縦向き列に進ませ、短手方向の狭い幅寸を利用して播種作業Gを行う。播種作業Gを終えた栽培ベンチ1は順次発芽ラインHへ進ませ、ここでは横向き列に進ませて、発芽のための養生時間を確保する。発芽ラインHで発芽を完了した栽培ベンチ1は、先頭のものから順に入り口ラインAへ進ませて移載装置4へ載せ、同栽培ベンチ1の短手方向を移動線と平行な向き(横向き)にして、再び広軌レール2上を出口ラインBに向かって前進移動させる。
【0020】
上記したように、入り口ラインAおよび出口ラインBには、栽培ベンチ1が乗り込むことが可能で、同栽培ベンチ1を少なくとも90度水平回転させる回転テーブル機構と、その回転テーブルを広軌レール2の高さ又は狭軌レール5の高さに垂直移動させる昇降機構とを備えた移載装置4を設置して、栽培ベンチ1の移載を行うステップが本発明の不可欠の事項である。
【実施例2】
【0021】
次に、更に具体的に、請求項2〜5に係る発明の栽培ベンチ循環型栽培装置の実施例を、図2〜図9に基づいて説明する。
先ず図2は、図1の入り口ラインAから出口ラインBに向かって敷設された広軌レール2上を横向きで移動する往路の栽培ベンチ1と、同往路の栽培ベンチ1の下を潜る形に縦向きに移動する復路の栽培ベンチ1との関係を示す。符号3は栽培ベンチ1の上に積載された作物の育苗箱(作物トレー)を示す。上下2段の立体型に循環する栽培ベンチ1、1が相互に干渉を起こす虞れのない程度に背が高い広軌レール2の内側に、背が低い狭軌レール5が、それぞれ平行に設置された構成である。広軌レール2の軌道幅をL1(本実施例の場合L1=1840mm)で表し、狭軌レール5の軌道幅をL2(本実施例の場合L2=1050mm)で表している。広軌レール2および狭軌レール5は、基礎6上に例えば樹脂被覆接着鋼管とこれを連結する各種の連結具とで構築した軌道フレーム7上に、やはり連結具を使用して固定し敷設されている。
【0022】
栽培ベンチ1は、図3に構造の詳細を示したとおり、一例として樹脂被覆接着鋼管を連結具により連結して、平面形状が例えば縦×横をおよそ1230mm×3500mmの大きさの長方形に形成されている。床面にエキスパンドメタル1aを張り、育苗箱3の載置が可能な構成とされている。この栽培ベンチ1の下面に、上記した広軌レール2および狭軌レール5の上を走行可能な配置と間隔で4個の車輪8が設置されている。
同車輪8の具体的な構造は、図4に示したように、栽培ベンチ1の床部を形成する2本を一組とする樹脂被覆接着鋼管9へ取り付けた継手10の金具11に下向きに垂直軸12が設けられており、同垂直軸12の下部に水平に回転する支持具13が設置されている。前記支持具13は、前記垂直軸12の中心線を対称軸とする左右対称形とされ、その車輪支持部に、上記の広軌レール2又は狭軌レール5の上に乗る2個の同形・同大のベアリングローラ80が左右対称なVの字形配置で支持されローラユニットとして構成されている。従ってこの車輪8は、2個の同形・同大のベアリングローラ80が広軌レール2又は狭軌レール5を挟み付けるように掴んで走行するので、レールが平面的に見て曲がっていても走行安定性が高いし、レール乗り継ぎ時の自由度が高く使い勝手が良い。
上記構成の車輪8は、図3に示したように、栽培ベンチ1の下面中央寄り位置に、長手方向には広軌レール2と同じ間隔L1、短手方向には狭軌レール5と同じ間隔L2の長方形における四隅相当位置に合計4個設置されている。
【0023】
次に、上記の入り口ラインAおよび出口ラインBに設備する移載装置4の構成を、図5と図6に基づいて説明する。
この移載装置4は、上記の入り口ラインAを出発する栽培ベンチ1および出口ラインBに到達した栽培ベンチ1が乗り込むことが可能で、しかも入り口ラインAを出発する栽培ベンチ1はその短手方向が広軌レール2と平行な向き(横向き)とし、出口ラインBに到達した栽培ベンチ1はその長手方向が狭軌レール5と平行な向き(縦向き)となるようにそれぞれ90度水平回転させることが可能な回転テーブル機構40を備えている。そして、前記回転テーブル機構40を支持して、その回転テーブル44を、例えば図2に示すように背が高い広軌レール2又は背が低い狭軌レール5の双方へ乗り移らせる高さに垂直移動させる昇降機構41を備えている。昇降機構41として図示した実施例は、パンタグラフ機構を採用しているが、勿論この限りではない。また、昇降機構41の駆動は、空圧シリンダや油圧シリンダ、或いは電動式のネジジャッキ機構などを採用した動力式、若しくは手動ジャッキによる手動式などで実施される。回転テーブル44の90度の回転位置および昇降機構41の高さの位置決めには、位置決めセンサーを採用して精度を高めることができる。
【0024】
移載装置4は更に、入り口ラインAおよび出口ラインBと同方向に敷設された軌道15上を軌道輪17で走行移動する走行機構42を備えている。即ち、走行機構42の架台上に昇降機構41が設備され、同昇降機構41の水平に平行移動して昇降する支持板45の上に平面視が円形リング状をなす回転台46が設置され、この回転台46に上記の回転テーブル44が水平に回転自在に設置されている。走行機構42は、手押し走行させる場合のほか、電動機などによる動力走行の方式で実施することもできる。走行機構42にも、水平移動の位置決めに位置決めセンサーを採用して精度を高めることができる。
【0025】
移載装置4の回転テーブル機構40について更に説明する。回転テーブル44の上面には、図6a、図6bに示したように、同回転テーブル44の回転中心の周りに、広軌レール2と同じ間隔L1で平行な2本の固定レール20、20と、および狭軌レール5と同じ間隔L2で平行な2本の固定レール21、21がそれぞれ、平面視を長方形の配置にしっかりと固定して設置されている。そして、前記長方形の配置とされた固定レール20と21の四隅部分は、前記長方形の各頂点の位置に水平に回転する垂直な回転軸22が設置され、この回転軸22に、各固定レール20、21と広軌レール2又は狭軌レール5との連絡(栽培ベンチ1の車輪8の出入り走行)を可能にする長さの繋ぎレール23を取り付け回転レールとして構成されている。また、前記の各回転軸22には、それぞれ同径のホイール24(本実施例ではスプロケットホイール)が一体的に回転するように設置され、これら四隅位置の前記回転軸22のホイール24と、回転テーブル44の中央部の回転中心の位置に設置された同径で非回転の固定ホイール25とが、それぞれ無端の連動帯状体27(本実施例ではチエン)で一連に連結され連動する構成とされている。
【0026】
上記回転テーブル44の上面中央部(テーブル回転中心の位置)に設置された固定ホイール25は、具体的には図5に示したように、昇降機構41の支持板45における回転テーブル44の回転中心の位置に垂直に立ち上げた固定軸26によって非回転状態に固定して設置されている。
したがって、回転テーブル44を、栽培ベンチ1の乗り入れ、又は乗り出しの必要に応じて90度水平回転させると、その回転に伴って連動帯状体27は非回転の固定ホイール25とのかみ合い運動又は摩擦力によって一定量走行移動され、ひいては四隅の各ホイール24を等しく90度回転させる。つまり、回転テーブル44の90度の水平回転の都度、繋ぎレール23で構成した回転レールも図6a又は図6bに示すように等しく90度の水平回転をして、固定レール20、20と広軌レール2又は狭軌レール5との間で車輪8の乗り継ぎが可能な条件が自動的に整えられるのである。因みに、回転テーブル44の水平回転は、電動機などを用いた動力式、又は作業者の腕力に頼る手動式のいずれかで実施される。
【0027】
図7には、入り口ラインA又は出口ラインBにおける往路の広軌レール2とその上を横向きの列で前進移動する栽培ベンチ1の列C、および復路の狭軌レール5とその上を縦向きに戻る栽培ベンチ1、そして、入り口ラインA又は出口ラインBに敷設された軌道15上を左右に移動して栽培ベンチ1を受け取り、90度水平回転させて送り出す移載装置4の相互関係を分かり易い形に示した。もとより入り口ラインAと出口ラインBの間に敷設された広軌レール2と狭軌レール5の組みは、図8に示したように、入り口ラインA又は出口ラインBの長手方向に沿って複数組みが、往路を横向きに移動する各列の栽培ベンチ1、1が相互に干渉を起こさないだけの間隔L3(通例L=100mm=図7)を列間に空けて隣接するように、敷地の間口幅を最大限度有効に活用して多数列設置して実施される。図9は広軌レール2とその上に乗った栽培ベンチ1および狭軌レール5の列と、移載装置4との関連する配置を示している。
【0028】
以上に本発明を図示した実施例に基づいて説明したが、勿論、本発明の範囲は実施例に限定されるものではない。本願発明の目的と要旨を逸脱しないで、当業者が必要に応じて行う設計変更や変形・応用の実施をも包含するものであることを念のため申し添える。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の栽培ベンチ循環型栽培システムを概念的に示した平面配置図である。
【図2】本発明の栽培ベンチ循環型栽培装置を構成する広軌レールと狭軌レールおよび栽培ベンチの関連を示した垂直面図である。
【図3】a〜cは栽培ベンチの平面図と正面図および側面図である。
【図4】a、bは栽培ベンチの車輪を示す正面図と側面図である。
【図5】移載装置の正面図である。
【図6】a、bは回転テーブルの90度水平回転の変化を示す平面図である。
【図7】栽培ベンチ循環型栽培装置の要部を少し具体的に示した平面図である。
【図8】栽培ベンチ循環型栽培装置における広軌レールと狭軌レールの並びを示した正面図である。
【図9】栽培ベンチ循環型栽培装置における広軌レールと狭軌レールの並び、そして栽培ベンチとの関係を示した正面図である。
【図10】従来一般の栽培ベンチ循環型栽培システムを概念的に示した平面配置図である。
【符号の説明】
【0030】
1 栽培ベンチ
A 入り口ライン
B 出口ライン
2 広軌レール
C 栽培ベンチ列
5 狭軌レール
4 移載装置
40 回転テーブル機構
44 回転テーブル
41 昇降機構
8 車輪
12 垂直軸
13 支持具
80 ベアリングローラ
20、21 固定レール
22 回転軸
23 繋ぎレール
24 ホイール
25 固定ホイール
27 連動帯状体
15 軌道
42 走行機構


【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面視が長方形で育成作物を積載した栽培ベンチを、入り口ラインから出口ラインに向かって敷設した広軌レール上を、同栽培ベンチの短手方向を移動線と平行な向きにして数珠繋ぎ状態に前進させつつ作物の育成を行い、出口ラインにおいて栽培ベンチ上の作物の収穫を行い、空になった栽培ベンチは90度水平回転させて同栽培ベンチの長手方向を移動線と平行な向きにし、前記往路の栽培ベンチ列の下を潜れるように前記広軌レールの内側に背を低く敷設した狭軌レール上を前進させて入り口ラインへ戻すステップと、
入り口ラインに戻された栽培ベンチには、発芽させた育成作物を積載し、同栽培ベンチの短手方向を移動線と平行な向きにして、広軌レール上を出口ラインに向かって前進移動させるステップと、
前記入り口ラインおよび出口ラインには、前記栽培ベンチが乗り込むことが可能で、少なくとも90度水平回転させる回転テーブル機構を備え、その回転テーブルを広軌レールの高さ又は狭軌レールの高さに垂直移動させる昇降機構を備えた移載装置を設置して栽培ベンチの移載を行うステップを含むことを特徴とする、栽培ベンチ循環型栽培システム。
【請求項2】
入り口ラインから出口ラインに向かって敷設された広軌レール、及び前記広軌レール上を移動する往路の栽培ベンチの下を、復路の栽培ベンチが潜って進むことが可能に背を低くして前記広軌レールの内側に敷設された狭軌レールと、
前記広軌レールおよび狭軌レール上を走行可能な配置と間隔で複数の車輪を下面に備えた平面形状が長方形の栽培ベンチと、
前記入り口ラインと出口ライン上に、入り口ラインを出発する栽培ベンチおよび出口ラインに到達した栽培ベンチが乗り込むことが可能で、入り口ラインを出発する栽培ベンチはその短手方向が広軌レールと平行な向きに、出口ラインに到達した栽培ベンチはその長手方向が狭軌レールと平行な向きに少なくとも90度水平回転させることが可能な回転テーブル機構を備え、更に前記の回転テーブルを支持して背の高い広軌レール又は背の低い狭軌レールへ栽培ベンチを乗り移らせる高さに垂直移動させる昇降機構を備える移載装置とを含む構成であることを特徴とする、栽培ベンチ循環型栽培装置。
【請求項3】
栽培ベンチ下面の車輪は、垂直軸の下に水平に回転する支持具が設置され、レールの上に乗る2個の同形・同大のベアリングローラは左右対称なVの字形配置で前記支持具に支持されてローラユニットとして構成されており、栽培ベンチの下面中央寄り位置に、長手方向には広軌レールと同じ間隔、短手方向には狭軌レールと同じ間隔の長方形の四隅相当位置に合計4個設置されていることを特徴とする、請求項2に記載した栽培ベンチ循環型栽培装置。
【請求項4】
移載装置の回転テーブル機構は、その回転テーブルの上面に、且つその回転中心の周りに、広軌レールと同じ間隔で平行な2本の固定レール、および狭軌レールと同じ間隔で平行な2本の固定レールがそれぞれ平面視を長方形の配置に設置されていると共に、前記長方形配置の固定レールの四隅部分は、前記長方形の各頂点を中心として水平回転する垂直な回転軸に各固定レールと広軌レール又は狭軌レールとの連絡を可能にする長さの繋ぎレールを取り付けた回転レールとして構成され、また、前記の各回転軸にはそれぞれ同径のホイールが一体的に水平回転するように設置され、四隅位置の前記回転軸に取り付けた各ホイールと、回転テーブルの回転中心位置に設置された同径で非回転の固定ホイールとがそれぞれ無端の連動帯状体で一連に連結されており、回転テーブルの90度の水平回転時に、四隅の各回転レールも90度回転する構成とされていること、そして、前記回転テーブル機構は昇降機構の上に設置されていることを特徴とする、請求項2に記載した栽培ベンチ循環型栽培装置。
【請求項5】
移載装置は、入り口ラインおよび出口ラインにそれぞれ各ラインと同方向に敷設された軌道上を移動可能な走行機構を備えていること、入り口ラインと出口ラインの間に敷設された広軌レールと狭軌レールの組みは、前記の各ラインに沿って複数組みが、広軌レール上で長手方向に隣接する栽培ベンチが相互に干渉を起こさない間隔をあけて敷設されていることを特徴とする、請求項2又は4に記載した栽培ベンチ循環型栽培装置。





















【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−252315(P2007−252315A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−82962(P2006−82962)
【出願日】平成18年3月24日(2006.3.24)
【出願人】(000245830)矢崎化工株式会社 (47)
【Fターム(参考)】