説明

栽培施設

【課題】天候や気温に左右されることなく効率的に植物を栽培することができ、コンテナ内の温度差に起因する生育不良が発生し難い栽培施設を提供する。
【解決手段】栽培施設10は、複数のコンテナ11,12,13,14,15,16,17を配列し、隣り合うコンテナ11〜17の間にそれぞれ連通部を設けて構築され、コンテナ12,13,14,15,16内に配列された複数の水耕栽培装置21と、水耕栽培装置21へ養分を含む水を供給する給水装置48と、各コンテナ11〜17内の温度及び湿度を調整する空調機20,33,38と、コンテナ12,13,14,15,16内へ炭酸ガスを供給するガスボンベ23と、コンテナ12,13,14,15,16内を照明する発光体と、を備え、コンテナ12,13,14,15,16内の空気を複数の水耕栽培装置21に向かって循環送風する送風手段が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自然環境から区画された領域内において野菜や茸類などの各種植物の栽培を行う施設に関する。
【背景技術】
【0002】
輸送用若しくは倉庫用のコンテナ内において野菜や菌類の栽培を行う技術については、従来、多くの提案が行われているが、本願発明に関連するものとして、特許文献1,2記載の栽培装置がある。これらの栽培装置は、コンテナ内の気温、湿度、炭酸ガス濃度、明るさなどの制御手段を備え、これらの制御手段を用いて、コンテナ内を植物生育に適した状況に保つことによって植物を栽培するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−242660号公報
【特許文献2】特開2003−180158号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1,2などに記載された従来の栽培装置においては、コンテナ内の温度を調節する手段として空調機が用いられているが、実際にはコンテナ内の温度を均等にコントロールすることは極めて困難である。特に、複数の栽培容器が棚状に配置された栽培装置の場合、コンテナ内の上方に位置する栽培容器付近と、下方に位置する栽培容器付近との間には温度差が生じることが多い。
【0005】
このため、従来の栽培装置においては、コンテナ内の温度差により、生育状態あるいは熟成状態のバラつきなどの生育不良が生じることがある。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、天候や気温に左右されることなく効率的に植物を栽培することができ、コンテナ内の温度差に起因する生育不良が発生し難い栽培施設を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の栽培施設は、複数のコンテナを配列し、隣り合う前記コンテナの間にそれぞれ連通部を設けて構築された栽培施設であって、前記コンテナ内に配列された複数の水耕栽培装置と、前記水耕栽培装置へ養分を含む水を供給する給水装置と、前記コンテナ内の温度及び湿度を調整する空調機と、前記コンテナ内へ炭酸ガスを供給する給気手段と、前記コンテナ内を照明する発光体と、を備え、前記コンテナ内の空気を複数の前記水耕栽培装置に向かって循環送風する送風手段を設けたことを特徴とする。ここで、コンテナとは、複数の柱材及び梁材を縦横に配列し、節点を接合して形成した直方体状の格子構造体の床面、天井面及び壁面に板材を装着して形成したものをいう。
【0008】
また、前記水耕栽培装置として、前記コンテナ内に配置された複数段の水槽と、前記水槽内の水に浮いた状態に保持された植栽用パレットと、を設けることが望ましい。
【0009】
さらに、前記コンテナの連通部の周囲に気密部材を介在させることが望ましい。
【0010】
一方、前記水耕栽培装置からの収穫物の集荷から荷造りまでを行う作業室を前記コンテナ内に設けることもできる。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、天候や気温に左右されることなく効率的に植物を栽培することができ、コンテナ内の温度差に起因する生育不良が発生し難い栽培施設を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態である栽培施設の概略構成を示す図である。
【図2】図1に示す栽培施設を構成するコンテナの水平断面図である。
【図3】図2に示すコンテナの垂直断面図である。
【図4】図3における矢線A方向から見た図である。
【図5】図1に示す栽培施設を構成する水耕栽培装置付近の部分斜視図である。
【図6】図5に示す水耕栽培装置の端部付近の垂直断面図である。
【図7】図6に示す水耕栽培装置の一部分解斜視図である。
【図8】図6に示す水耕栽培装置の一部省略斜視図である。
【図9】コンテナ同士の連通部付近の水平断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1〜図5に示すように、栽培施設10は、複数のコンテナ11,12,13,14,15,16,17を配列し、隣り合うコンテナ11〜17の間に連通部を設けて構築され、コンテナ12,13,14,15,16内に配列された複数の水耕栽培装置21と、水耕栽培装置21へ養分を含む水を供給する給水装置48と、各コンテナ11〜17内の温度及び湿度を調整する空調機20,33,38と、コンテナ12,13,14,15,16内へ炭酸ガスを供給する給気手段であるガスボンベ23と、コンテナ12,13,14,15,16内を照明する発光体49と、を備え、コンテナ12,13,14,15,16内の空気を複数の水耕栽培装置21に向かって循環送風する送風手段50が設けられている。
【0014】
コンテナ11には作業者が出入りするためのドア19が設けられ、その内部に手洗い器具37、エアシャワー室18などが配置されている。コンテナ11とコンテナ12との連通部にドア47が設けられ、コンテナ12内には、棚状に配列された複数の水耕栽培装置21及び空調機20などが配置されている。コンテナ12,13,14,15,16は略同じ構造であり、これらのコンテナ12〜16内にそれぞれ設けられた作業スペース12a〜16aを横断するようにローラコンベア44が配置されている。各コンテナ12〜16内には、脚立45やベルトコンベア46などの作業補助具が配置されている。コンテナ16とコンテナ17との連通部にはドア42が設けられ、コンテナ16内のドア42上方にはエアカーテン43が配置されている。
【0015】
コンテナ17は、その内部をドア35付きの隔壁34で区画して形成された作業室17aと、作業室17a以外の領域を隔壁51で区画して形成された発芽室31及び育苗室32と、を備えている。作業室17a側の外壁にはドア36及び窓40が設けられ、作業室17a内には、手洗い器具37、空調機38、作業台39及びローラコンベア41が配置されている。ドア42が開いたとき、ローラコンベア41は、ローラコンベア44に接続可能である。発芽室31及び育苗室32にはそれぞれ空調機33が配置されている。
【0016】
コンテナ12〜16内に配列された複数の水耕栽培装置21へ養分を含む水を供給する給水装置48は、液肥タンク25、供給ポンプ26、循環ポンプ27及び水タンク28を備えている。水タンク28内の水は循環ポンプ27によって給水経路30を経由して各水耕栽培装置21へ供給され、各水耕栽培装置21を上から下へ順次通過した後、復水経路22を経由して水タンク28内へ戻る。水タンク28内の水は、常時、フィルタ52及び浄水器29によって循環浄化されている。
【0017】
液肥タンク25内の液肥は供給ポンプ26によって復水経路22内へ送り込まれ、復水経路22内を流動する水に混入された状態で水タンク28内へ戻り、水タンク28内で均一混合されて養分を含んだ水となり、前述した循環ポンプ27によって複数の水耕栽培装置21へ供給される。なお、液肥タンク25内から水耕栽培装置21へ供給される液肥の濃度、供給量、供給時期などは、栽培される植物の種類や生育状況などに応じて設定された制御条件によって自動調整される。
【0018】
また、給気手段であるガスボンベ23は、コンテナ11〜17の外に配置され、ガスボンベ23内に貯留されている炭酸ガス(二酸化炭素)は、ガス配管24を経由してコンテナ12〜16内へ供給され、その供給時期及び供給量などは、コンテナ12〜16内の炭酸ガス濃度に応じて自動調整される。
【0019】
図2〜図5に示すように、コンテナ12〜16内には、それぞれの長手方向の通路54を挟んで複数段の棚板53が設けられ、それぞれの棚板53上に水耕栽培装置21が配置され、棚板53の下面(若しくは水耕栽培装置21の上方)に複数の発光体49が配列されている。発光体49は蛍光灯を使用しているが、これに限定しないので、LED発光体や面状発光体などを使用することもできる。
【0020】
水耕栽培装置21を保持する棚板53の背面側(通路54の反対側)には、各コンテナ12〜16内の空気をそれぞれの水耕栽培装置21に向かって循環送風する送風手段50が設けられている。送風手段50は、各コンテナ12〜16内の空気を吸い込むファン55と、ファン55によって吸い込んだ空気を棚板53上の水耕栽培装置21に向かって送り出す吹出口56付きのダクト57と、を備えている。
【0021】
図6,図7に示すように、水耕栽培装置21は、各棚板53上に配置された水槽58と、水槽58内の水Wに浮いた状態に保持された植栽用パレット59と、を備えている。植栽用パレット59には、下方に向かって縮径した複数の貫通孔59aが開設され、それぞれの貫通孔59aに植物Pが植えられている。植栽用パレット59は発泡合成樹脂で形成されているが、水Wに浮く材質であれば他の材料で形成することもできる。
【0022】
水槽58は、棚板53の周縁上方をリング状に包囲するように配置された複数段の囲繞部材60,61と、棚板53の端縁部に位置する囲繞部材60,61の内側に配置された本立て形状の補強部材62と、棚板53の上面及び囲繞部材60,61の内側に敷設された遮水シート63と、遮水シート63の周縁を囲繞部材60,61に係止する断面C字状の弾性係止部材64と、を備えている。図7に示すように、囲繞部材60,61は、棚板53の長手方向に沿って配置される直線管状のロッド部材60a,61aと、棚板53の端縁部付近においてロッド部材60a,61aの端部同士を連結する「かすがい」形状の連結部材60b,61bと、で形成されている。
【0023】
前述したように、栽培施設10は、コンテナ12〜16内の温度及び湿度を調整する空調機20と、コンテナ12〜16内へ炭酸ガスを供給するガスボンベ23と、コンテナ12〜16内に配列された複数の水耕栽培装置21へ養分を含む水を供給する給水装置48と、コンテナ12〜16内を照明する発光体49と、を備えているため、天候や気温に左右されることなく効率的に植物Pを栽培することができる。
【0024】
また、コンテナ12〜16内の空気を複数の水耕栽培装置21それぞれに向かって循環送風する送風手段50が設けられているため、コンテナ12〜16内の温度差に起因する生育不良が発生し難い。さらに、水耕栽培装置21の植栽用パレット59は、棚板53上の水槽58内の水Wに浮いた状態に保持されているため、水平方向の移動が極めて容易である。
【0025】
従って、図8に示すように、水槽58の先端部58a側に位置する植栽用パレット59の端部に取り付けられた把持具67に先端部68aを結び付けたロープ68を、植栽用パレット59下方の水W中に沈めた状態で水槽58の基端部58b側まで延設しておけば、基端部58b側に位置する植栽用パレット59を取り出す度にロープ68を引いて、次の植栽用パレット59を基端部58b側へ引き寄せることができる。このため、例えば、収穫時期などに作業者が水槽58の基端部58b側に居たままで植栽用パレット59を順次引き寄せながら収穫作業を行うことが可能であり、作業者の負担軽減及び作業効率の向上を図ることができる。
【0026】
また、収穫作業が終わり、植栽用パレット59が回収された後の水槽58内に新たな植栽用パレット59をセットする場合、前述と逆に、水槽58の基端部58b側に浮かべた植栽用パレット59を順次、先端部58a側へ押し出しながら作業を行うことができる。このため、植栽用パレット59のセット作業も作業者が水槽58の基端部58b側に居たままで実行可能であり、作業者の負担軽減及び作業効率の向上に有効である。
【0027】
一方、図9に示すように、隣り合うコンテナ同士、例えば、コンテナ12,13同士の間に設けられた連通部65の周囲には、断熱性及び弾力性を有する気密部材66が介在されているため、コンテナ12〜16内の温度、湿度、炭酸ガス濃度などを適切レベルに保持する上で有効である。
【0028】
また、図1に示すように、栽培施設10においては、コンテナ17内に作業室17aが設けられているため、天候に左右されることなく、水耕栽培装置21からの収穫物の集荷から荷造りまでを行うことができる。なお、栽培施設10は例示であり、本発明の栽培装置はこれに限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明の栽培施設は、天候や気温に左右されることなく、野菜や茸類などの各種植物を栽培する施設として広く利用することができる。
【符号の説明】
【0030】
10 栽培施設
11,12,13,14,15,16,17 コンテナ
12a,13a,14a,15a,16a 作業スペース
17a 作業室
18 エアシャワー室
18 ドア
20,38 空調機
21 水耕栽培装置
22 復水経路
23 ガスボンベ
24 ガス配管
25 液肥タンク
26 供給ポンプ
27 循環ポンプ
28 水タンク
29 浄水器
30 給水経路
31 発芽室
32 育苗室
33 空調機
34,51 隔壁
35,36,42,47 ドア
37 手洗い器具
39 作業台
40 窓
41,44 ローラコンベア
43 エアカーテン
45 脚立
46 ベルトコンベア
48 給水装置
49 発光体
50 送風手段
52 フィルタ
53 棚板
54 通路
55 ファン
56 吹出口
57 ダクト
58 水槽
58a,68a 先端部
58b 基端部
59 植栽用パレット
60,61 囲繞部材
60a,61b ロッド部材
60b,61b 連結部材
62 補強部材
63 遮水シート
64 弾性係止部材
65 連通部
66 気密部材
67 把持具
68 ロープ
P 植物
W 水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のコンテナを配列し、隣り合う前記コンテナの間にそれぞれ連通部を設けて構築された栽培施設であって、前記コンテナ内に配列された複数の水耕栽培装置と、前記水耕栽培装置へ養分を含む水を供給する給水装置と、前記コンテナ内の温度及び湿度を調整する空調機と、前記コンテナ内へ炭酸ガスを供給する給気手段と、前記コンテナ内を照明する発光体と、を備え、前記コンテナ内の空気を複数の前記水耕栽培装置に向かって循環送風する送風手段を設けたことを特徴とする栽培施設。
【請求項2】
前記水耕栽培装置として、前記コンテナ内に配置された複数段の水槽と、前記水槽内の水に浮いた状態に保持された植栽用パレットと、を設けたことを特徴とする請求項1記載の栽培施設。
【請求項3】
前記コンテナの連通部の周囲に気密部材を介在させたことを特徴とする請求項1または2記載の栽培施設。
【請求項4】
前記水耕栽培装置からの収穫物の集荷から荷造りまでを行う作業室を前記コンテナ内に設けたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の栽培施設。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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