説明

栽培漁業支援システム

【課題】 ホタテに代表される養殖業において、非熟練者でも熟練者と同じように漁業を行えるように支援する栽培漁業支援システムを提供することにある。
【解決手段】 操業管理装置で予め登録した操業計画データを元に操業が行われ、作業船の設置されている端末装置のGPSにより現在位置情報を取得する。現在位置情報を監視し、状況に適した指示を出すことにより、より正確な操業を行うことができる。さらに、操業管理装置は、操業後に作成される操業実績データを取りまとめることにより、資源の生育状況、各漁場での収穫状況の把握、収穫済みの場所を一括して管理することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばホタテの養殖業等の栽培漁業に好適な栽培漁業支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
水産資源を積極的に増やすために、漁業を狩猟の段階から資源の増殖によって安定的に持続生産する段階へ進展させようという視点から、魚介類の種苗生産・放流を中心とする栽培漁業が1979年から全国的に行われるようになり、沿岸漁業の中に栽培漁業が定着されるようになった。
【0003】
さらに、ホタテの養殖業では、「4輪採」という漁場を図16の概念図に示されるように、4つに分割する方法がとられる。4輪採は、養殖場aの1年目の領域bに種苗が放流され、2年目の領域cには、昨年放流した種苗が放流され、3年目の領域cには、一昨年放流した種苗が放流されている。そして、4年目の領域eに放流されたホタテを漁獲する。
【0004】
一方、近年の船舶はGPS(Global Positioning System)受信機が設置され、GPSにより、現在位置や現在速度等を把握することができるようになった。
【0005】
なお、船舶に設置されたGPSシステムによる船舶の監視については、いくつかの技術文献が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平11−175899号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のホタテの養殖業では、操業位置を漁船操業者の経験によって決定していたため、熟練者と非熟練者とでは、漁獲高に大きな差が存在すると同時に、翌年収穫する予定操業域内で誤って操業し、稚貝を収穫してしまうという問題があった。さらに、操業時に網を用いて収穫を行う場合、網を引く速度が適切でないため、漁獲物を破損してしまうという問題も存在していた。
【0007】
本発明は、上述の問題点に着目してなされたものであり、その目的とするところは、ホタテに代表される養殖業において、非熟練者でも熟練者と同じように漁業を行えるように支援する栽培漁業支援システムを提供することにある。
【0008】
この発明のさらに他の目的並びに作用効果については、明細書の以下の記述を参照することにより、当業者であれば容易に理解される筈である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明の栽培漁業支援システムは、管理局側に設置される操業管理装置と、各作業船のそれぞれに設置される端末装置とを有すると共に、それらの間には、両装置間でデータの受け渡しを行うためのデータ受け渡し手段が設けられている。
【0010】
操業管理装置には、画像表示部と、入力操作部と、記憶部と、情報処理部とが設けられている。
【0011】
記憶部には、操業実績データと操業計画データとが記憶されており、かつ操業計画データには、所定期間別操業区域をさらに作業船単位に細分してなる各区分領域毎の操業計画データが含まれており、さらに操業計画データには、各区分領域の位置や境界、各区分領域内の予定操業内容が含まれている。
【0012】
情報処理部には、入力操作部による所定操作に基づいて各区分領域毎の操業計画データを生成して記憶部に記憶する操業計画生成手段と、入力操作部による所定操作に基づいて操業計画データを各区分領域毎に記憶部から読み出してデータ受け渡し手段へと出力する操業計画出力手段と、入力操作部による所定操作に基づいて操業実績データをデータ受け渡し手段を介して端末装置側より受け取ると共に、この受け取った操業実績データに基づいて記憶部に記憶された操業実績データを更新する操業実績更新手段と、操業計画生成手段、操業計画出力手段、及び操業実績更新手段と連動して、画像表示器に所定の表示を行うための表示制御手段とが設けられている。
【0013】
端末装置には、画像表示部と、入力操作部と、記憶部と、情報処理部と、GPS受信機と、操業データ収集センサとが設けられている。
【0014】
記憶部には、データ受け渡し手段を介して端末装置側より受け取った操業計画データが記憶されている。
【0015】
情報処理部には、入力操作部による所定操作に基づいて、画像表示部の画面を介して、記憶部内の操業計画データにしたがった操業案内を行う操業案内手段と、操業案内手段による操業案内にしたがって行われた操業に際して操業実績データを生成して記憶部に記憶させる操業実績生成手段と、入力操作部による所定操作に基づいて、メモリから操業実績データを読み出して、データ受け渡し手段へと出力する操業実績データ出力手段とが設けられている。
【0016】
このような構成によれば、各船舶の操業位置情報を正確に把握することができ、さらに、資源の生育状況、各漁場での収穫状況が把握し、収穫済みの場所が一括して管理することができる。
【0017】
本発明システムの好ましい実施の形態にあっては、操業案内手段は、GPS受信機で取得された自船位置と操業予定区分領域の位置とを海図上にプロットした映像を画像表示器の画面上に映し出す手段を含んでいる。
【0018】
このような構成によれば、操業予定区分領域をまでの航路が画面上に案内されることにより、操業予定区分領域まで容易に到着することができる。
【0019】
本発明システムの好ましい実施の形態にあっては、操業案内手段は、船の目標航行速度とGPS受信機を介して取得された自船の実航行速度とを画面表示器の画面上に映し出す手段を含んでいる。
【0020】
このような構成によれば、自船の航行速度が画面上に案内されることにより、航行状況を容易に把握することができる。
【0021】
本発明システムの好ましい実施の形態にあっては、操業案内手段は、養殖を行うための稚貝の放流量を画面表示器の画面上に映し出す手段を含んでいる。
【0022】
このような構成によれば、該当する操業ポイントに適した稚貝の放流量が画面状に案内されることにより、放流状況を容易に把握することができる。
【0023】
本発明システムの好ましい実施の形態にあっては、操業案内手段は、GPS受信機で取得された自船位置と操業予定区分領域の位置とから、自船が操業予定区分領域に到着したと判断されるときに、到着した旨を画面表示器の画面上に映し出すまたは、案内音を出力する手段を含んでいる。
【0024】
このような構成によれば、自船の区域到着状況が画面上または音声で案内されることにより、自船の区域到着状況を容易に把握することができる。
【0025】
本発明システムの好ましい実施の形態にあっては、操業案内手段は、GPS受信機で取得された自船の速度が、操業計画データで指定した速度と異なるときに、速度が超過または不足した旨を画面表示器の画面上に映し出すまたは、警告音を出力する手段を含んでいる。
【0026】
このような構成によれば、自船の速度の超過または遅延状況が画面上または音声で案内されることにより、自船の速度状況を容易に把握することができる。
【0027】
本発明システムの好ましい実施の形態にあっては、操業案内手段は、GPS受信機で取得された自船の航路または自船位置が、操業計画データで指定した操業航路または操業区分領域から離脱したとき、離脱した旨を画面表示器の画面上に映し出すまたは、警告音を出力する手段を含んでいる。
【0028】
このような構成によれば、自船の位置離脱状況が画面上または音声で案内されることにより、自船の位置離脱状況を容易に把握することができる。
【0029】
本発明システムの好ましい実施の形態にあっては、操業実績生成手段は、操業を実施した作業舶情報と、作業船を操船した作業者情報と、操業を実施した日付と、操業の開始終了時間と、が含まれる操業実績データを作成する。
【0030】
このような構成によれば、操業実績が作成されることにより、各作業船−作業者毎の作業状況を容易に把握することができる。
【0031】
本発明システムの好ましい実施の形態にあっては、操業実績生成手段は、操業を実施したときの海上状態が含まれる操業実績データを作成する。
【0032】
このような構成によれば、海上状態が操業実績に含まれることにより、海上状態に適した操業を行うためのデータを収集することができる。
【0033】
本発明システムの好ましい実施の形態にあっては、操業実績生成手段は、操業を実施したときの操業領域の緯度・経度情報が含まれる操業実績データを作成する。
【0034】
このような構成によれば、操業を実施したときの操業領域の緯度・経度情報が操業実績に含まれることにより、作業船がどの領域を操業したかどうかを容易に把握することができる。
【0035】
本発明システムの好ましい実施の形態にあっては、操業実績生成手段は、操業を実施したときの作業船の操業航路が含まれる操業実績データを作成する。
【0036】
このような構成によれば、操業を実施したときの操業航路が操業実績に含まれることにより、作業船がどの領域を航行したかどうかを容易に把握することができる。
【0037】
本発明システムの好ましい実施の形態にあっては、操業実績生成手段は、操業を実施したときの作業船の操業速度が含まれる操業実績データを作成する。
【0038】
このような構成によれば、操業を実施したときの操業速度が操業実績に含まれることにより、作業船がどれくらいの速度で操業したかどうかを容易に把握することができる。
【0039】
本発明システムの好ましい実施の形態にあっては、操業実績生成手段は、操業領域内で放流した位置情報と稚貝の放流量とが含まれる操業実績データを作成する。
【0040】
このような構成によれば、稚貝の放流位置と放流量が操業実績に含まれることにより、操業領域の放流状況を容易に把握することができる。
【0041】
本発明システムの好ましい実施の形態にあっては、操業実績生成手段は、操業領域内で漁獲した位置情報と魚介類の漁獲量とが含まれる操業実績データを作成する。
【0042】
このような構成によれば、魚介類の漁獲位置と漁獲量が操業実績に含まれることにより、操業領域の漁獲状況を容易に把握することができる。
【0043】
本発明システムの好ましい実施の形態にあっては、操業実績生成手段は、上記端末装置の操業データ収集センサで測定された水質データと水深情報とが含まれる操業実績データを作成する。
【0044】
このような構成によれば、水質データや水深情報が操業実績に含まれることにより、操業領域の海水状況を容易に把握することができる。
【0045】
本発明システムの好ましい実施の形態にあっては、操業実績作成手段は、作業船の操業時に異常が発生したときの異常内容と、異常が発生した作業舶情報と、その作業船を操船した作業者情報と、異常が発生した日付と、異常が発生した操業場所と、が含まれる操業データを作成する。
【0046】
このような構成によれば、操業時の異常情報が操業実績に含まれることにより、作業船の異常状況を容易に把握することができる。
【0047】
本発明システムの好ましい実施の形態にあっては、データ受け渡し手段は、無線または記憶媒体を介して、操業管理装置と端末装置との間でデータの受け渡しが実行される。
【0048】
このような構成によれば、操業管理装置は、各作業船の端末装置で作成された最新のデータを取りまとめることができ、端末装置は、操業管理装置からの最新の操業データを所持することができる。
【発明の効果】
【0049】
本発明によれば、ホタテを代表とする養殖業において、各作業船の操業位置情報、成貝の生育状況や、各漁場での収穫状況を正確に把握することができる。また、各作業船の操業を支援することにより、非熟練者でも熟練者と同じように漁獲が行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0050】
以下に、この発明の好適な実施の一形態を添付図面を参照しながら詳細に説明する。
【0051】
本発明が適用されたホタテの養殖業に関する栽培漁業支援システムのシステム構成図が図1に示されている。同図に示されるように、栽培漁業支援システムは、管理局側に設置された操業管理装置100と、漁船11〜14にそれぞれ設置される作業船側端末装置111〜141とを含んでいる。
【0052】
操業管理装置100と、作業船側111〜141とのデータ受け渡しは、無線通信、携帯電話網、人工衛星140を経由する通信、フロッピー(登録商標)ディスクやメモリスティックなどの電子媒体130を用いたデータ授受、といった手段により行われる。
【0053】
操業管理装置の内部構成を示すブロック図が図2に示されている。同図に示されるように、この例の操業管理装置200は、制御部201と、印刷装置202と、通信制御部203と、表示部204と、記憶部205とを含んでいる。
【0054】
制御部201は、操業管理装置200の動作を統括する情報処理装置である。記憶部205に格納された放流管理処理または漁獲管理処理が実行されることにより、操業計画データならびに操業実績データの作成・更新の機能がソフトウェア的に実現される。
【0055】
印刷装置202は、制御部201で作成された操業計画データや操業実績データ、表示部204で映し出された画像データ等の印刷が行われる。
【0056】
通信制御部203は、作業船側端末装置と通信が行われる際に使用される装置である。通信制御部203は、無線ユニット、携帯電話ユニット、衛星通信ユニット等により構成される。この例では、無線ユニットを使用した通信制御部として、後に説明する。
【0057】
表示部204は、CRTや液晶が用いられ、制御部201で画像処理された画像データが映し出される。
【0058】
記憶部205は、所謂HDD等の記憶装置である。記憶部205のデータ領域には、後に説明する放流管理処理と漁獲管理処理とが含まれるプログラムと、操業計画データと、操業実績データと、が記憶される。
【0059】
作業船側端末装置の内部構成を示すブロック図が図3に示されている。同図に示されるように、この例の作業船側端末装置300は、制御部301と、GPS受信機302と、通信制御部303と、表示部304と、記憶部305と、センサ部306とを含んでいる。
【0060】
制御部301は、作業船側端末装置300の動作を統括する情報処理装置である。記憶部305に格納された放流実施処理または漁獲実績処理が実行されることにより、操業計画データならびに操業実績データの作成・更新の機能がソフトウェア的に実現される。
【0061】
GPS受信機302は、GPS(Global Positioning System)衛星からの距離を受信する装置である。この装置により、自船の現在位置や実航行速度などの情報を取得することができる。なお、GPS受信機の基本的な動作については、各種の文献により既に広く知られているため説明は省略する。
【0062】
通信制御部303は、管理局側操業管理装置と通信が行われる際に使用される装置である。通信制御部303は、無線ユニット、携帯電話ユニット、衛星通信ユニット等により構成される。この例では、無線ユニットを使用した通信制御部として、後に説明する。
【0063】
表示部304は、CRTや液晶が用いられ、制御部301で画像処理された画像データが映し出される。
【0064】
記憶部305は、所謂HDD等の記憶装置である。記憶部305のデータ領域には、後に説明する放流実績処理と漁獲実績処理とが含まれるプログラムと、操業計画データと、操業実績データと、が記憶される。
【0065】
センサ部306は、漁場の状態(水温、水深、プランクトン数など)の情報を収集するためのセンサである。
【0066】
次に、操業管理装置200の記憶部205並びに、作業船側端末装置300の記憶部305のメモリマップが図4に示されている。同図に示されるように、操業管理装置200の記憶部205のデータ記憶領域並びに、作業船側端末装置の記憶部305のデータ記憶領域には、操業計画データ領域PD1〜PDnと、操業実績データ領域RD1〜RDnとのn件分のメモリ上のデータ領域が割り振られる。
【0067】
さらに、図4の記憶部メモリマップの詳細が図5に示されている。同図(a)に示されるように、操業計画データは、作業船IDと、作業者IDと、実施予定日と、操業予定時刻と、基準となる緯度・経度と、速度と、放流予定量と、漁獲予定量とから構成され、データ領域PD1〜PDnに各データが格納される。また、同図(b)に示されるように、操業実績データは、作業船IDと、作業者IDと、実施日と、海上状態と、操業時刻と、水深と、水質と、基準となる緯度・経度と、操業経路と、速度と、放流量と、漁獲量と、異常内容とから構成され、データ領域RD1〜RDnに各データが格納される。
【0068】
次に本実施形態の栽培漁獲支援システムの動作を示すゼネラルフローチャートが図6に示されている。同図に示されるように、栽培漁獲支援システムは、操業前登録・放流管理処理(ステップ601)と、漁獲実施処理(ステップ602)とから構成される。
【0069】
操業前登録・放流管理処理(ステップ601)は、漁獲前に操業予定区域や、作業を行う作業船の操業などの操業計画を事前登録を行い、操業計画登録後、作業船の放流状況を監視する操業管理装置の放流管理処理と、登録された操業計画データに基づいて、稚貝の放流を行う作業船側端末装置の放流実施処理との2つから構成される。
【0070】
漁獲実施処理(ステップ602)は、操業前登録・放流管理処理(ステップ601)で登録された操業計画データ並びに操業実績データに基づいて、漁獲実施を管理する操業管理装置の漁獲管理処理と、登録した操業計画データに基づいてホタテの漁獲を行う作業船側端末装置の漁獲実施処理との2つから構成される。
【0071】
操業管理装置200の放流管理処理を示すフローチャートが図7に示されている。同図に示されるように、操業管理装置200では、操業を行う前に、各年度毎の放流域の登録が行われる(ステップ701)。
【0072】
各年度毎の放流域登録画面の表示例が図8に示されている。同図に示されるように、操業域登録画面800は、漁場表示欄801と、北緯入力欄802と、東経入力欄803と、登録ボタン804とを含んでいる。各年度のABCDで囲まれた操業域に該当する北緯入力欄802に北緯を、東経入力欄803に東経をそれぞれ入力し、登録ボタン804を押下することによって、該当年度の操業域が登録される。
【0073】
図7に戻り、各年度の放流域が登録されると(ステップ701)、各放流域の操業情報の登録が行われる(ステップ702)。
【0074】
作業船・操業日毎の操業位置登録画面の表示例が図9に示されている。同図に示されるように、作業船・操業日毎の操業位置登録画面900は、今年度の操業域表示欄901と、操業日入力欄905と、作業船選択欄906と、北緯入力欄907と、東経入力欄908と、目標航行速度入力欄909と、目標放流量入力欄910と、登録ボタン911を含んでいる。
【0075】
今年度の操業域表示欄901には、操業域登録画面800で登録された年度毎の操業域が表示される。操業済みの領域は、今年度の操業域表示欄901中に操業済み区域表示902として表示され、未操業の領域は、今年度の操業域表示欄901中に未操業区域表示904として表示される。操業日付入力欄で入力された日付の領域は、今年度の操業域表示欄901中に操業予定区域表示903として表示され、各領域毎に担当作業船名が表示される。作業船が操業を行う領域の登録は、作業船選択欄906で作業船名に対して、ABCDで囲まれた操業域に該当する北緯入力欄902に北緯を、東経入力欄903に東経を、目標航行速度入力欄909に目標航行速度を、目標放流量入力欄910に1分間当たりの放流量をそれぞれ入力し、登録ボタン911を押下することによって、各作業船の操業域が登録される。登録された各作業船の操業域は、操業計画データとして、記憶部205に格納される。
【0076】
各放流域の操業情報が登録されると(ステップ702)、該当日の作業船の操業計画データが作業船に送信され(ステップ703)、稚貝の放流作業が開始される。
【0077】
作業船が操業を開始すると、操業管理装置200は、操業中の端末装置300から作業船の操業情報の受信が行われる(ステップ704)。操業情報は作業船の速度や現在位置などである。受信した操業情報が予め登録された操業計画データの内容に従って、操業されているかどうかの監視が行われ(ステップ705)、操業計画データと異なった操業が行われている場合には(ステップ705NO)、操業計画データと実際の操業とが異なっている旨の警告が作業船側端末装置300へ送信される(ステップ706)。作業船に対する操業監視は、放流が完了するまで行われる(ステップ707NO)。
【0078】
作業船の放流作業が完了すると(ステップ707YES)、作業船側端末装置300で作成された操業実績データが受信され、記憶部205に格納された操業計画データと操業実績データの更新が行われ、操業実施日に該当する作業船の操業区域が「操業済み」として記憶される(ステップ708)。
【0079】
作業船側端末装置300による放流実施処理を示すフローチャートが図10に示されている。同図に示されるように、操業管理装置200で操業情報が登録されると、放流作業が開始可能となり、操業計画データの受信が行われる(ステップ1001)。受信された操業計画データは、記憶部305に格納される。
【0080】
作業船が放流作業を開始すると、GPS受信機302から現在の位置、船の速度が取得される(ステップ1002)。同時に、センサ部306では、漁場の状態(水温、水深、プランクトン数)などの情報が収集され、操業実績データが作成される。GPS受信機302やセンサ部306から取得した操業情報は、操業域までの航跡プロット画面や操業位置プロット画面を用いて表示部304に表示される。さらに、操業情報は、通信制御部303を介して、操業管理装置200へ送信される(ステップ1003)。
【0081】
操業域までの航跡プロット画面の表示例が図11に示されている。同図に示されるように、操業域の航跡プロット画面1100は、出港した漁港から操業予定区域までの作業船の航跡がプロット表示される。また、操業域の航跡プロット画面1100内には、漁場1101と、実際に操業を行う操業予定区域1102と、作業船が出港した漁港1103と、作業船の現在位置1104と、作業船の航跡1105とが表示される。作業船が操業予定区域に到着した場合には、操業域の航跡プロット画面1100上に到着案内が表示される。また、案内表示と同時に、音声案内がアナウンスされる。
【0082】
操業位置プロット画面の表示例が図12に示されている。同図に示されるように、操業位置プロット画面1200は、操業区域内の作業船の航跡がプロット表示される。また、操業位置プロット画面1200には、操業区域1201と、現在位置の北緯表示欄1202と、現在位置の東経表示欄1203と、作業船の速度表示欄1204と、現在位置の漁場・操業情報表示欄(水深、水質等の海上情報や、目的航行速度、放流量等の操業情報)1205と、作業船の現在位置1206と、作業船の航跡1207とが表示される。予め登録された操業計画データで示す緯度・経度に従って操業を行うと作業船の航跡1207が操業区域内に表示される。また、作業船の現在位置、速度や漁場情報が操業管理装置200へ送信されるため、作業船の操業状況が管理局側で監視することができる。
【0083】
監視中、図13で示されるように、作業船の操業位置1206が操業区域1201から離脱した場合、或いは操業計画データで示す緯度・経度が示す航行すべき操業コースから外れた場合や指定速度よりも速度超過や不足が発生した場合には、操業計画データで指定された操業情報から外れた旨を表示部205の画面上に映し出すまたは、警告音を出力することにより、作業船に警告をアナウンスすることができる。
【0084】
図10に戻って、操業中は、操業管理装置200から操作指示や警告が受信され(ステップ1004)、そのときの状況に応じた操業が行われる。
【0085】
放流作業が完了するまで、操業管理装置200と交信をしながら操業が行われる(ステップ1005NO)。放流作業が完了すると(ステップ1005YES)、操業実績データが作成され、通信制御部303を介して、操業管理装置200へ送信される(ステップ1006)。
【0086】
操業管理装置200による漁獲管理処理を示すフローチャートが図14に示されている。同図に示されるように、操業前登録・放流管理処理(ステップ601)の放流管理処理と放流実施処理とから作成・更新された操業計画データの取得が行われる(ステップ1401)。また、各漁業域の操業情報は、図9の作業船・操業日毎の操業位置登録画面900にて、登録が行われる。作業船の操業位置が決定されると、作業船側端末装置300へ操業計画データが送信される(ステップ1402)。
【0087】
作業船が漁獲作業を開始すると、操業管理装置200は、操業中の端末装置300から船の操業情報の受信が行われる(ステップ1403)。受信した操業情報が表示部204に表示される(ステップ1404)。放流管理処理と同様に、予め登録された操業計画データの内容に従って、操業されているかどうかの監視が行われ、操業計画データと実際の操業とが異なっている場合には、操業計画データと実際の操業とが異なっている旨の警告が作業船側端末装置300へ送信される。
【0088】
作業船に対する操業監視は、漁獲作業が完了するまで行われる(ステップ1405NO)。作業船の漁獲作業が完了すると(ステップ1405YES)、作業船側端末装置300で作成された操業実績データが受信される。記憶部205に格納された操業計画データと操業実績データの更新が行われ、操業実施日に該当する作業船の操業区域が「操業済み」として記憶される(ステップ1406)。
【0089】
作業船側端末装置300による漁獲実施処理を示すフローチャートが図15に示されている。同図に示されるように、操業管理装置200で操業情報が登録されると、漁獲作業が開始可能となり、操業計画データの受信が行われる(ステップ1501)。受信された操業計画データは、記憶部305に格納される。
【0090】
作業船が漁獲作業を開始すると、GPS受信機302から現在の位置、船の速度が取得される(ステップ1502)。同時に、センサ部306では、漁場の状態(水温、水深、プランクトン数)などの情報が収集され、操業実績データが作成される。GPS受信機302やセンサ部306から取得した操業情報は、操業域までの図11の航跡プロット画面1100や図12の操業位置プロット画面1200を用いて表示部304に表示される。さらに、操業情報は、通信制御部303を介して、操業管理装置200へ送信される(ステップ1503)。
【0091】
操業中は、放流処理と同様に、操業管理装置200から指示が受信され(ステップ1504)、そのときの状況に応じた操業が行われる。放流作業が完了するまで、操業管理装置200と交信をしながら操業が行われる(ステップ1505NO)。漁獲作業が完了すると(ステップ1505YES)、操業実績データが作成され、通信制御部303を介して、操業管理装置200へ送信される(ステップ1506)。
【0092】
このように、本実施形態によるホタテの養殖業に関する栽培漁業支援システムは、各船舶の操業位置情報をGPSから受信することにより、正確に把握することができる。さらに、正確な操業位置情報により、資源の生育状況、各漁場での収穫状況が把握でき、収穫済みの場所が一括して管理することができる。
【0093】
さらに、本発明の栽培漁業支援システムは、本実施形態のホタテの養殖業だけでなく、ホタテのように海中を移動し難いアワビ、サザエや海苔などの栽培漁業にも適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明によれば、ホタテを代表とする養殖業において、各作業船の操業位置情報、成貝の生育状況や、各漁場での収穫状況を正確に把握することができる。また、各作業船の操業を支援することにより、非熟練者でも熟練者と同じように漁獲が行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】本実施形態の栽培漁業支援システムのシステム全体図である。
【図2】本実施形態の操業管理装置の内部構成を示すブロック図である。
【図3】本実施形態の作業船側端末装置の内部構成を示すブロック図である。
【図4】記憶部のメモリの内容を示す説明図である。
【図5】記憶部のメモリの詳細を示す説明図である。
【図6】本実施形態の栽培漁業支援システムの動作を示すゼネラルフローチャートである。
【図7】操業管理装置による放流管理処理を示すフローチャートである。
【図8】年ごとの操業域登録画面の表示例を示す説明図である。
【図9】作業船・操業日毎の操業位置登録画面の表示例を示す説明図である。
【図10】作業船側端末装置による放流実施処理を示すフローチャートである。
【図11】操業域までの航跡プロット画面の表示例を示す説明図である。
【図12】操業位置プロット画面の表示例を示す説明図である。
【図13】操業位置離脱時の画面の表示例を示す説明図である。
【図14】操業管理装置による漁獲管理処理を示すフローチャートである。
【図15】作業船側端末装置による漁獲実施処理を示すフローチャートである。
【図16】従来の4輪採の概念図である。
【符号の説明】
【0096】
11 漁船
12 漁船
13 漁船
14 漁船
100 操業管理装置
111 作業船側端末装置
121 作業船側端末装置
130 人工衛星
131 作業船側端末装置
140 電子媒体
141 作業船側端末装置
200 操業管理装置
201 制御部
202 印刷装置
203 通信制御部
204 表示部
205 記憶部
300 作業船側端末装置
301 制御部
302 GPS受信機
303 通信制御部
304 表示部
305 記憶部
306 センサ部
800 操業域登録画面
801 漁場表示欄
802 北緯入力欄
803 東経入力欄
804 登録ボタン
900 作業船・操業日毎の操業位置登録画面
901 今年度の操業域表示欄901
902 操業済み区域表示
903 操業予定区域表示
904 未操業区域表示
905 操業日入力欄
906 作業船選択欄
907 北緯入力欄
908 東経入力欄
909 目標航行速度入力欄
910 目標放流量入力欄
911 登録ボタン
1100 操業域までの航跡プロット画面
1101 漁場
1102 操業予定区域
1103 漁港
1104 作業船の現在位置
1105 作業船の航跡
1200 操業位置プロット画面
1201 操業区域
1202 現在位置の北緯表示欄
1203 現在位置の東経表示欄
1204 作業船の速度表示欄
1205 現在位置の漁場情報表示欄
1206 作業船の現在位置
1207 作業船の航跡
a 養殖場
b 1年目の領域
c 2年目の領域
d 3年目の領域
e 4年目の領域
PD1 操業計画データのデータ領域
PD2 操業計画データのデータ領域
PDn 操業計画データのデータ領域
RD1 操業実績データのデータ領域
RD2 操業実績データのデータ領域
RDn 操業実績データのデータ領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管理局側に設置される操業管理装置と、各作業船のそれぞれに設置される端末装置とを有すると共に、それらの間には、両装置間でデータの受け渡しを行うためのデータ受け渡し手段が設けられており、
操業管理装置には、
画像表示部と、入力操作部と、記憶部と、情報処理部とが設けられ、
記憶部には、
操業実績データと操業計画データとが記憶されており、かつ操業計画データには、所定期間別操業区域をさらに作業船単位に細分してなる各区分領域毎の操業計画データが含まれており、さらに操業計画データには、各区分領域の位置や境界、各区分領域内の予定操業内容が含まれており、
情報処理部には、
入力操作部による所定操作に基づいて各区分領域毎の操業計画データを生成して記憶部に記憶する操業計画生成手段と、
入力操作部による所定操作に基づいて操業計画データを各区分領域毎に記憶部から読み出してデータ受け渡し手段へと出力する操業計画出力手段と、
入力操作部による所定操作に基づいて操業実績データをデータ受け渡し手段を介して端末装置側より受け取ると共に、この受け取った操業実績データに基づいて記憶部に記憶された操業実績データを更新する操業実績更新手段と、
操業計画生成手段、操業計画出力手段、及び操業実績更新手段と連動して、画像表示器に所定の表示を行うための表示制御手段とが設けられており、
端末装置には、
画像表示部と、入力操作部と、記憶部と、情報処理部と、GPS受信機と、操業データ収集センサとが設けられており、
記憶部には、データ受け渡し手段を介して端末装置側より受け取った操業計画データが記憶されており、
情報処理部には、
入力操作部による所定操作に基づいて、画像表示部の画面を介して、記憶部内の操業計画データにしたがった操業案内を行う操業案内手段と、
操業案内手段による操業案内にしたがって行われた操業に際して操業実績データを生成して記憶部に記憶させる操業実績生成手段と、
入力操作部による所定操作に基づいて、メモリから操業実績データを読み出して、データ受け渡し手段へと出力する操業実績データ出力手段とが設けられている、ことを特徴とする栽培漁業支援システム。
【請求項2】
操業案内手段は、GPS受信機で取得された自船位置と操業予定区分領域の位置とを海図上にプロットした映像を画像表示器の画面上に映し出すことにより、操業予定区分領域内の航路を案内する、ことを特徴とする請求項1に記載の栽培漁業支援システム。
【請求項3】
操業案内手段は、船の目標航行速度とGPS受信機を介して取得された自船の実航行速度とを画面表示器の画面上に映し出すことにより、操業予定区分領域内の航行速度を案内する、ことを特徴とする請求項1に記載の栽培漁業支援システム。
【請求項4】
操業案内手段は、養殖を行うための稚貝の放流量を画面表示器の画面上に映し出すことにより、操業予定領域内の放流量を案内する、ことを特徴とする請求項1に記載の栽培漁業支援システム。
【請求項5】
操業案内手段は、GPS受信機で取得された自船の速度が、操業計画データで指定した速度と異なるときに、速度が超過または不足した旨を画面表示器の画面上に映し出すまたは、警告音を出力することにより、速度超過や不足を警告する、ことを特徴とする請求項1に記載の栽培漁業支援システム。
【請求項6】
操業案内手段は、GPS受信機で取得された自船の航路または自船位置が、操業計画データで指定した操業航路または操業区分領域から離脱したとき、離脱した旨を画面表示器の画面上に映し出すまたは、警告音を出力することにより、航路や領域の離脱を警告する、ことを特徴とする請求項1に記載の栽培漁業支援システム。
【請求項7】
操業実績生成手段は、
操業を実施した作業舶情報と、
作業船を操船した作業者情報と、
操業を実施した日付と、
操業の開始終了時間と、が含まれる操業実績データを作成する、ことを特徴とする請求項1に記載の栽培漁業支援システム。
【請求項8】
操業実績生成手段は、操業を実施したときの操業領域の緯度・経度情報が含まれる操業実績データを作成する、ことを特徴とする請求項1に記載の栽培漁業支援システム。
【請求項9】
操業実績生成手段は、操業を実施したときの作業船の操業航路が含まれる操業実績データを作成する、ことを特徴とする請求項1に記載の栽培漁業支援システム。
【請求項10】
操業実績生成手段は、操業を実施したときの作業船の操業速度が含まれる操業実績データを作成する、ことを特徴とする請求項1に記載の栽培漁業支援システム。
【請求項11】
操業実績生成手段は、操業領域内で放流した位置情報と稚貝の放流量とが含まれる操業実績データを作成する、ことを特徴とする請求項1に記載の栽培漁業支援システム。
【請求項12】
操業実績生成手段は、操業領域内で漁獲した位置情報と魚介類の漁獲量とが含まれる操業実績データを作成する、ことを特徴とする請求項1に記載の栽培漁業支援システム。
【請求項13】
操業実績作成手段は、
作業船の操業時に異常が発生したときの異常内容と、
異常が発生した作業舶情報と、
その作業船を操船した作業者情報と、
異常が発生した日付と、
異常が発生した操業場所と、が含まれる操業実績データを作成する、ことを特徴とする請求項1記載の栽培漁業支援システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2006−320203(P2006−320203A)
【公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−143686(P2005−143686)
【出願日】平成17年5月17日(2005.5.17)
【出願人】(300021002)株式会社森機械製作所 (7)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】