説明

栽培装置、栽培方法および栽培物の生産方法

【課題】栽培室内の温度管理に必要なエネルギー消費を抑える。
【解決手段】ハウス栽培で用いられるハウスHに設置された栽培装置が、温度管理が行われる温度管理領域3に並べて配置され、それぞれ栽培物を収容する複数のバケット2を備える。そして、栽培装置は、複数のバケット2の間隔が拡大または縮小するように各バケット2を移動させる。また、栽培装置は、バケット2の間隔が拡大される場合に温度管理領域3を拡大し、バケット2の間隔が縮小される場合に温度管理領域3を縮小する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、栽培装置、栽培方法および栽培物の生産方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、メロンやトマトなどの栽培では、ビニールやアクリル、或いはガラスなどで覆われたハウス内で栽培物を育てるハウス栽培が広く行われている。このハウス栽培では、ハウス内の温度が栽培に適した温度となるように、常時、温度管理が行われる。例えば、年間を通じてメロンを栽培する場合には、夜間であっても気温が16℃以下にならないようにハウス内が加温される。また、例えば、気温が高い時期には、高い品質のメロンを育てることを目的として、気温が30℃以上にならないようにハウス内の空気が加冷される。
【0003】
また、ハウス栽培では、一般的に、バケットなどの栽培容器を用いた床上げ栽培が行われる。ここでいう床上げ栽培とは、栽培物の根に対する酸素の供給が良好となるように、地面から離して設置された栽培容器を用いて栽培物を育てる方法である。ハウス栽培では、多数の栽培容器が用いられ、各栽培容器がハウス内に並べて配置される。
【0004】
ここで、ハウス内において、各栽培容器は、栽培物の苗が最も成長した状態でも最低限必要な日照を受けることができるように、例えば、メロンの場合は1m〜1.5m程度の間隔を開けて配置される。なお、通常、各栽培容器はハウス内で固定的に設置されるが、ハウス内の敷地を有効利用することを目的として、複数の栽培容器を移動可能に設置する方法も提案されている(例えば、特許文献1〜3を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公平4−79615号公報
【特許文献2】特開平9−56259号公報
【特許文献3】特開2001−78577号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した従来のハウス栽培では、ハウス内の温度管理に必要なエネルギー消費が大きいという課題があった。
【0007】
具体的には、前述したように、従来のハウス栽培では、栽培物の苗への日照を考慮して、複数の栽培容器が所定の間隔を空けて配置される。したがって、間隔を空けずに各栽培容器を配置した場合と比べて、より大きなハウスが必要となる。なお、栽培容器を移動可能に設置した場合でも、日照を考慮すると、少なくとも日中は栽培容器の間を所定の間隔に拡げておく必要があるので、やはり大きなハウスが必要となる。このように、従来のハウス栽培では、日照を考慮して大きなハウスが用いられることから、ハウス内を加温または加冷するために必要なエネルギー消費が大きくなる。
【0008】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、栽培室内の温度管理に必要なエネルギー消費を抑えることが可能な栽培装置、栽培方法および栽培物の生産方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項1記載の本発明は、温度管理が行われる温度管理領域に並べて配置され、それぞれ栽培物を収容する複数の栽培容器と、前記複数の栽培容器の間隔が拡大または縮小するように各栽培容器を移動させる栽培容器移動手段と、前記栽培容器移動手段によって前記栽培容器の間隔が拡大される場合に前記温度管理領域を拡大し、前記栽培容器移動手段によって前記栽培容器の間隔が縮小される場合に前記温度管理領域を縮小する温度管理領域変更手段とを備えたことを特徴とする。
【0010】
また、請求項7記載の本発明は、温度管理が行われる温度管理領域に並べて配置され、それぞれ栽培物を収容する複数の栽培容器の間隔が拡大または縮小するように各栽培容器を移動させるステップと、前記栽培容器の間隔が拡大される場合に前記温度管理領域を拡大し、前記栽培容器の間隔が縮小される場合に前記温度管理領域を縮小するステップと、前記温度管理領域内で移動される栽培容器を用いて前記栽培物を栽培するステップとを含んだことを特徴とする。
【0011】
また、請求項8記載の本発明は、温度管理が行われる温度管理領域に並べて配置され、それぞれ栽培物を収容する複数の栽培容器の間隔が拡大または縮小するように各栽培容器を移動させるステップと、前記栽培容器の間隔が拡大される場合に前記温度管理領域を拡大し、前記栽培容器の間隔が縮小される場合に前記温度管理領域を縮小するステップと、前記温度管理領域内で移動される栽培容器を用いて前記栽培物を生産するステップとを含んだことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1、7または8記載の本発明によれば、栽培室内の温度管理に必要なエネルギー消費を抑えることが可能になるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、本実施例に係る栽培装置の概要を説明するための図である。
【図2】図2は、本実施例に係る栽培装置の全体構成を示す斜視図である。
【図3】図3は、栽培装置が有する遮蔽カーテン移動機構を説明するための図である。
【図4】図4は、栽培装置が有するバケットの構成を示す図である。
【図5】図5は、栽培装置におけるバケットとレールとの位置関係を示す図である。
【図6】図6は、栽培装置が有するバケット移動機構の構成を示す図である。
【図7】図7は、バケット移動機構によるバケットの移動を説明するための図である。
【図8】図8は、バケット間の最小ピッチを示す図である。
【図9】図9は、バケット間の最大ピッチを示す図である。
【図10】図10は、栽培装置が有する空調設備を説明するための図(1)である。
【図11】図11は、栽培装置が有する空調設備を説明するための図(2)である。
【図12】図12は、分配管に設けられた噴出口を示す図である。
【図13】図13は、栽培装置が有するハウス制御装置の構成を示す機能ブロック図である。
【図14】図14は、本実施例に係る栽培装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【図15】図15は、手動制御を行う場合の栽培装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【図16】図16は、栽培物の成長に応じて最小ピッチを変更する場合に用いられるモデルの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明に係る栽培装置、栽培方法および栽培物の生産方法の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下では、ハウス栽培で用いられるハウスに本発明を適用した場合について説明するが、この実施例により本発明が限定されるものではない。
【実施例】
【0015】
まず、本実施例に係る栽培装置の概要について説明する。図1は、本実施例に係る栽培装置の概要を説明するための図である。図1の(a)に示すように、本実施例に係る栽培装置は、メロンやトマトなどのハウス栽培で用いられるハウスHに設置される。このハウスHは、例えば、ビニール製やポリエチレン製のフィルムによって形成される。
【0016】
本実施例に係る栽培装置は、遮蔽カーテン1と複数のバケット2とを有する。遮蔽カーテン1は、ハウスH内の領域をハウスHの長手方向に分割することで、温度管理領域3および一般領域4を形成する。ここで、温度管理領域3は、栽培物の育成に適した温度となるように、空調設備によって常に温度管理が行われる。バケット2は、温度管理領域3に並べて配置され、それぞれ栽培物を収容する。
【0017】
このような構成のもと、栽培装置は、複数のバケット2の間隔が拡大するように各バケット2を移動させる。例えば、栽培装置は、夜が明けた際に、図1の(b)に示すように、バケット2の間隔が拡大するように、温度管理領域3から一般領域4に向かう方向へ各バケット2を移動させる。これにより、バケット2に収容された栽培物それぞれに日照が当たるようになる。
【0018】
また、栽培装置は、バケット2の間隔が拡大される場合に、温度管理領域3を拡大する。具体的には、栽培装置は、図1の(b)に示すように、複数のバケット2が移動される方向に遮蔽カーテン1を移動することで、温度管理領域3を拡大する。これにより、バケット2の間隔を十分に拡げることができる。
【0019】
一方、栽培装置は、複数のバケット2の間隔が縮小するように各バケット2を移動させる。例えば、栽培装置は、夜間にハウス内の温度が16℃以下となった場合に、図1の(a)に示すように、バケット2の間隔が縮小するように、一般領域4から温度管理領域3に向かう方向へ各バケット2を移動させる。
【0020】
また、栽培装置は、バケット2の間隔が縮小される場合に、温度管理領域3を縮小する。例えば、栽培装置は、図1の(a)に示すように、複数のバケット2が移動される方向に遮蔽カーテン1を移動することで、温度管理領域3の大きさを縮小する。これにより、温度管理領域3内を効率よく加温することができるようになる。
【0021】
そして、栽培装置は、温度管理領域3内で移動されるバケット2を用いて、栽培物を栽培および生産する。
【0022】
このように、本実施例に係る栽培装置は、温度管理が行われる温度管理領域3に並べて配置され、それぞれ栽培物を収容する複数のバケット2の間隔が拡大または縮小するように各バケット2を移動させる。また、栽培装置は、バケット2の間隔が拡大される場合に温度管理領域3を拡大し、バケット2の間隔が縮小される場合に温度管理領域3を縮小する。例えば、本実施例に係る栽培装置は、日照量が多い時間帯にはバケット2の間隔を広げておき、夜間などの気温が下がる時間帯には、バケット2の間隔を狭めるとともに、ハウスH内の温度管理領域3の大きさを縮小する。
【0023】
すなわち、本実施例に係る栽培装置は、ハウスH内の温度調整が必要となった場合に、温度調整が必要な領域の体積を小さくすることで、効率よく温度管理を行うことができるようにしている。したがって、本実施例に係る栽培装置によれば、ハウスH内の温度管理に必要なエネルギー消費を抑えることが可能になる。さらに、エネルギー消費を抑えることによって、ハウス栽培にかかるランニングコストを抑えることが可能になる。また、空調機による冷暖房で発生するCOの排出を低減することができるので、地球環境の保護に貢献することが可能になる。
【0024】
次に、本実施例に係る栽培装置の詳細構成について説明する。図2は、本実施例に係る栽培装置の全体構成を示す斜視図である。図2に示すように、本実施例に係る栽培装置100は、遮蔽カーテン1と、複数のバケット2と、ハウス制御装置50とを有する。
【0025】
遮蔽カーテン1は、ハウスH内の領域をハウスHの長手方向に分割することで、温度管理領域3および一般領域4を形成する。この遮蔽カーテン1は、例えば、断熱性の二重シートで作製される。また、遮蔽カーテン1は、ハウスHの長手方向に沿って移動可能に設けられている。ここで、温度管理領域3内には、温度調整を行うための空調設備によって空気が送り込まれる。そのため、遮蔽カーテン1は、ハウスHの壁との間に空気を流出させるための隙間ができるように設けられる。なお、遮蔽カーテン1を移動するための遮蔽カーテン移動機構については、後に具体的に説明する。
【0026】
バケット2は、ハウスH内に形成された温度管理領域3に並べて配置され、それぞれ栽培物を収容する。また、バケット2は、それぞれ、ハウスH内の床面に敷設された3本のレール5によって、ハウスHの長手方向へ移動可能に支持されている。なお、バケット2の構造およびバケット2を移動するためのバケット移動機構については、後に具体的に説明する。
【0027】
ハウス制御装置50は、栽培装置100の全体制御を行う。このハウス制御装置50は、操作者から各種の指示を受け付け、受け付けた指示に応じて、遮蔽カーテン1およびバケット2の移動や温度管理領域3の温度管理を制御する。なお、ハウス制御装置50の構成については、後に具体的に説明する。
【0028】
また、図2では図示を省略しているが、栽培装置100は、温度管理領域3の温度を調整するための空調設備も有する。この空調設備については、後に具体的に説明する。
【0029】
次に、栽培装置100が有する遮蔽カーテン移動機構について説明する。図3は、栽培装置100が有する遮蔽カーテン移動機構を説明するための図である。図3に示すように、遮蔽カーテン1は、ハウスHの天井面にハウスHの長手方向に沿って取り付けられたガイド部6から垂れ下がるように設けられており、ガイド部6に沿って矢印方向へ移動可能となっている。なお、図3では1つのガイド部6のみを示しているが、ハウスHの天井面には、複数のガイド部6が取り付けられており、遮蔽カーテン1は、各ガイド部6から垂れ下がるように設けられている。
【0030】
ここで、遮蔽カーテン1の上端部の所定位置には、ハウスH内に張設されたロープ7が取り付けられている。このロープ7は、ハウスH内に設けられた3つの滑車8およびモータ9によって、ハウスHの天井面にガイド部6の左端付近で折り返すよう設けられている。
【0031】
このロープ7は、モータ9を正転または逆転させることで、矢印aの方向に周回移動する。そして、ロープ7の周回移動にともなって、遮蔽カーテン1が矢印bで示すようにハウスHの長手方向に往復移動する。すなわち、モータ9を正転または逆転させてロープ7を周回移動させることで、遮蔽カーテン1をハウスHの長手方向に往復移動させることができる。
【0032】
具体的には、本実施例では、遮蔽カーテン1は、後述するハウス制御装置50による制御のもと、温度管理領域3が最も縮小される位置である最小領域位置と、温度管理領域3が最も拡大される位置である最大領域位置との間を往復移動する。なお、ここでいう「最小領域位置」とは、図3に実線で示した遮蔽カーテン1の位置であり、バケット2の間隔が縮小しきった状態で、ハウスH内の空間をバケット2が配置されている領域とバケット2が配置されていない領域とに分割する位置である。また、「最大領域位置」とは、図3に破線で示した遮蔽カーテン1の位置であり、ハウスH内の空間をレール5が配置されている領域とレール5が配置されていない領域とに分割する位置である。
【0033】
なお、図3では1本のロープ7のみを示しているが、ハウスH内には複数のロープ7が設けられている。好ましくは、遮蔽カーテン1の頂部および該頂部から両側へ下る辺に沿って所定距離だけ離間した位置の計3箇所に設けられる。その際に、モータ9の回転軸を図3の紙面に垂直な方へ延在させれば、1つのモータ9で3箇所のロープ7を共通に周回移動させることができ都合が良い。なお、ハウスH内上部に設けた各々単独の滑車8に代え、図3の紙面に垂直な方向へ延在して設けた1本の棒体に回転プーリーを設けた構成としても良い。この場合、3箇所における各ロープ7の往復張架を支持するためには1本の棒体に6個のプーリーを設けるだけでよく、各々単独の滑車8を個別にハウス上部へ取り付けるのに比較して容易に構成することができる。これにより、遮蔽カーテン1は、ハウスHの長手方向に対して垂直な状態を保ちながら、ハウスH内をスムーズに往復移動することができる。
【0034】
また、図3では図示を省略しているが、栽培装置100は、遮蔽カーテン1の位置を検出するための位置検出手段を備えている。この位置検出手段は、遮蔽カーテン1の位置を検出すると、検出した位置を示す位置情報を記憶し、カーテン位置検出部は、遮蔽カーテン1が移動されると、移動後の位置を示すように位置情報を更新する。
【0035】
例えば、遮蔽カーテン1の位置検出手段は、モータ9の回転量に基づいて、基準となる位置からの遮蔽カーテン1の移動量を算出し、算出した移動量を位置情報として記憶する。なお、遮蔽カーテン1に関する位置情報の用途については後に説明する。
【0036】
また、図3に示すように、ハウスHにおける温度管理領域3には温度センサー10および日照センサー11がそれぞれ取り付けられている。温度センサー10は、温度管理領域3の温度を検出するもので、バケット2上端から約1mの高さに位置するように例えば天井から吊るすなどして取り付けるのが好ましい。また、日照センサー11は、温度管理領域3における日照の有無を検出するもので、図示のように天井面に取り付ける。なお、これら温度センサー10および日照センサー11の用途については後に説明する。
【0037】
次に、栽培装置100が有するバケット2の構造について説明する。図4は、栽培装置100が有するバケット2の構成を示す図である。図4に示すように、バケット2は、U字溝状に形成された栽培容器であり、容器内に栽培用の培土が充填される。
【0038】
ここで、バケット2の容器壁内には、空気を流通させる通気孔2aが形成されている。また、バケット2の端部には、通気孔2aに空気を送入するための送気孔2bと、送気孔2bから送入された空気を排出するための排気孔2cとが形成されている。さらに、バケット2の容器外側の表面は、断熱材2dで覆われている。
【0039】
そして、例えば、夏場には、送気孔2bから冷却された空気を送入することで、バケット2内の培土を冷やすことができる。これにより、夏場にバケット2内の培土の温度が上昇することで栽培物の根が損傷することを防ぐことができる。また、例えば、冬場には、加熱された空気を送気孔2bから送入することで、バケット2内の培土を温めることができる。これにより、冬場にバケット2内の培土の温度が低下することで栽培物の発育が悪くなることを防ぐことができる。さらに、バケット2の容器外側の表面が断熱材2dで覆われているので、バケット2内の温度を安定させることができる。
【0040】
上記実施形態では、図4に示す通りバケットはU字溝状に形成された箱ものとして説明したが、より通気性を高めるためにこのバケットの側壁部を井桁状に形成し、この井桁状側壁部全体に行き渡るように金網を張り、この金網の表面に微細なメッシュの布を貼り付けることで形成しても良い。これによって、バケット側壁部の井桁、金網および微細なメッシュの布によって通気性がきわめて良好となるので、加温や加冷の効果をより高めることができる。
【0041】
次に、栽培装置100が有するバケット移動機構について説明する。図5は、栽培装置100におけるバケット2とレール5との位置関係を示す図である。図5に示すように、バケット2は、ハウスH内の床面に敷設された3本のレール5によって、ハウスHの長手方向(図5に示す矢印の方向)へ移動可能に支持されている。具体的には、バケット2の両端および中央の下部が、それぞれレール5によって移動可能に支持されている。
【0042】
図6は、栽培装置100が有するバケット移動機構の構成を示す図である。図6は、バケット2の一端の下部および当該一端の下部を支持するレール5を示している。また、図7は、バケット移動機構によるバケット2の移動を説明するための図である。
【0043】
図6に示すように、レール5は、ハウスHの床面Fに固定されたプレート5aの上に角パイプ5bを敷設することで形成されている。また、角パイプ5bには、角パイプ5bの一側面から突出するラック5cが設けられている。このラック5cは、角パイプ5bの一側面に沿って、角パイプ5bの一方の端部から他方の端部まで伸びており、その伸びた方向に並ぶように複数の歯が形成されている。
【0044】
一方、バケット2の下部には、ホルダー2eおよび減速機付きモータ2fが取り付けられている。ここで、ホルダー2eには、バケット2の下面から突出するように設けられており、突端部にベアリング2gが取り付けられている。また、ベアリング2gには、戸車2hが回転自在に挿嵌されている。そして、戸車2hの両端には、戸車2hの中心軸から外側に向かう方向に広がるつば2iが形成されている。
【0045】
また、減速機付きモータ2fには、歯車2jが連結されている。減速機付きモータ2fは正転方向および逆転方向に回転駆動することが可能であり、減速機付きモータ2fがいずれかの方向に回転駆動すると、歯車2jも同じ方向に回転する。
【0046】
ここで、図6に示すように、バケット2は、戸車2hの凹部が角パイプ5bの上部に嵌合し、かつ、減速機付きモータ2fに連結された歯車2jがラック5cに形成された歯と噛合するように、レール5の上に置かれている。そして、この状態で減速機付きモータ2fを正転または逆転させることで、図7に矢印で示すように、レール5に沿ってバケット2を往復移動させることができる。
【0047】
なお、図6では1つの戸車2hのみを示したが、図7に示すように、バケット2の一端の下部には、バケット2の短手方向に沿ってそれぞれ2つの戸車2hが設けられる。また、バケット2の他端および中央の下部にもそれぞれ同様に2つの戸車2hが設けられる。すなわち、1本のバケット2に対して合計で6つの戸車2hが設けられる。
【0048】
また、図6および7には1本のバケット2のみを示したが、栽培装置100が有する複数のバケット2は、それぞれ同様のバケット移動機構を備えている。そして、各バケット2を同時に同じ方向へ移動させることで、所定の範囲内で各バケット2の間隔を拡大させたり、縮小させたりすることができる。
【0049】
具体的には、本実施例では、バケット2は、後述するハウス制御装置50による制御のもと、バケット2の間隔があらかじめ決められた最小ピッチとなる位置から、あらかじめ決められた最大ピッチとなる位置まで移動する。
【0050】
図8は、バケット2間の最小ピッチを示す図である。また、図9は、バケット2間の最大ピッチを示す図である。ここでいう「最小ピッチ」とは、図8に示すように、栽培物の苗が成長した状態でも、栽培物の葉がこすれ合わない間隔である(図8に示すPmin)。一方、「最大ピッチ」とは、図9に示すように、栽培物の苗が最も成長した状態でも、他の栽培物の影響を受けることなく最低限必要な日照を受けることができる間隔である(図9に示すPmax)。なお、この「最大ピッチ」は上記の通り日照を最低限考慮した間隔に限定されず、この間隔に対し作業者が通れる程度の作業スペースを加えた間隔としても構わない。
【0051】
なお、図6では図示を省略しているが、各バケット2は、それぞれ、自身の位置を検出するための位置検出手段を備えている。この位置検出手段は、バケット2の位置を検出すると、検出した位置を示す位置情報を記憶し、バケット2が移動されると、移動後の位置を示すように位置情報を更新する。
【0052】
例えば、バケット2の位置検出手段は、ラック5cに形成されている歯に対面するように設けられた対物センサーを用いて実現される。この場合、位置検出手段は、バケット2とともにラック5cに沿って移動しながらラック5cの歯の凸部を検出し、検出した凸部の数をカウントして位置情報として記憶する。なお、バケット2に関する位置情報の用途については後に説明する。
【0053】
次に、栽培装置100が有する空調設備について説明する。図10および11は、栽培装置100が有する空調設備を説明するための図である。図10の(b)に示すように、栽培装置100は、空調設備として、空調機12と、配管13と、複数の分配管14とを有する。
【0054】
空調機12は、配管13および分配管14を介して、所定の温度に調整された空気をハウスH内に形成された温度管理領域3へ送る。この空調機12は、所定の温度に加熱された暖気を送る暖房モード、所定の温度に冷却された冷気を送る冷房モード、常温の空気を送る送風モードの3つのモードで駆動することができる。
【0055】
配管13は、空調機12と分配管14との間に設けられ、空調機12から送られる空気を分配管14へ供給する。この配管13は、空調機12から伸びてハウスHの手前から地中に入り、地中を通って分配管14に達するように設けられている。また、配管13は、断熱処理が施されている。
【0056】
分配管14は、それぞれ、ハウスHの床下にある地中にハウスHの長手方向に沿って埋設されており、空調機12から送られる空気AをハウスHの床下から噴出させる。ここで、図10の(b)に示すように、各分配管14は、温度管理領域3が縮小しきった状態で温度管理領域3の下側に位置する範囲に埋設されている。さらに、各分配管14は、図11に示すように、ハウスHの床下にある地中に均等に並べて埋設されており、それぞれの管に断熱処理が施されている。
【0057】
そして、各分配管14には、管の上部に複数の噴出口が設けられている。図12は、分配管14に設けられた噴出口を示す図である。図12に示すように、噴出口Dは、分配管14の上部に等間隔であって且つ最小ピッチのバケット2配列の間に位置するよう設けられており、それぞれ、空調機12から送られる空気Aを噴出させる。このように、噴出口Dの位置を最小ピッチ位置にあるバケット2の間とする事で、噴出された加温若しくは加冷、或いは送風に係る空気Aの上方への流れがバケット2によって阻害される事がなく、ハウスHの上方まで効率よく空気Aを行き渡らせる事ができる。
【0058】
このように、各分配管14は、ハウスHの床下に均等に並べて配置され、それぞれ、管の上部に等間隔に設けられた複数の噴出口Dから空気Aを噴出させるので、温度管理領域3内を均等に加温または加冷することができる。また、各分配管14は、温度管理領域3の下側に位置する範囲に埋設されているので、図10の(a)および(b)に示すように、温度管理領域3が縮小された場合に、温度管理領域3のみを集中的に加温または加冷することができるので、効率の良い温度管理を可能とする。
【0059】
また、空調機12から送られる空気は地中を通って各分配管14に配送されるので、外気の温度による影響を受けにくい。さらに、配管13および分配管14は、いずれも断熱処理が施されているので、暖気の熱が地中に逃げにくく、かつ、地中の熱が冷気に伝わりにくい。したがって、上述した空調設備によれば、空調機12から送られる空気の温度が安定するので、温度管理領域3内をさらに効率よく加温または加冷することができる。
【0060】
次に、栽培装置100が有するハウス制御装置50の構成について説明する。図13は、栽培装置100が有するハウス制御装置50の構成を示す機能ブロック図である。図13に示すように、ハウス制御装置50は、指示受付部51、温度検出部52、日照検出部53、バケット位置検出部54、カーテン位置検出部55および制御部56を有する。
【0061】
指示受付部51は、操作者から各種の指示を受け付ける。この指示受付部51は、例えば、ボタンやレバー、タッチパネルなどを用いて実現される。具体的には、指示受付部51は、遮蔽カーテン1およびバケット2の移動ならびに温度管理領域3の温度管理を自動的に制御する自動制御の開始指示を操作者から受け付ける。そして、自動制御の開始指示を受け付けた場合には、指示受付部51は、制御部56に対して自動制御を行うことを指示する。
【0062】
温度検出部52は、温度センサー10を介して温度管理領域3内の温度を検出する。日照検出部53は、日照センサー11を介して温度管理領域3内の日照を検出する。バケット位置検出部54は、各バケット2が有する位置検出手段から位置情報を取得することで、各バケット2の位置をそれぞれ検出する。カーテン位置検出部55は、遮蔽カーテン1の位置検出手段から位置情報を取得することで、遮蔽カーテン1の位置を検出する。
【0063】
制御部56は、遮蔽カーテン1およびバケット2の移動や温度管理領域3の温度管理を制御する。この制御部56は、バケット移動制御部56aと、カーテン移動制御部56bと、空調制御部56cとを有する。
【0064】
バケット移動制御部56aは、バケット2の間隔が拡大または縮小するように各バケット2を移動させる。具体的には、バケット移動制御部56aは、指示受付部51から自動制御を行うよう指示された場合には、温度検出部52によって検出された温度、日照検出部53によって検出された日照、バケット位置検出部54によって検出された各バケット2の位置、および、カーテン位置検出部55によって検出された遮蔽カーテン1の位置に基づいて、バケット2の間隔が拡大または縮小するように各バケット2を移動させる。
【0065】
ここで、バケット移動制御部56aは、バケット2の間隔を拡大する際には、バケット位置検出部54によって検出された各バケット2の位置に基づいて、各バケット2の間隔を最大ピッチまで拡大するために必要な移動量をバケット2ごとに算出する。また、バケット移動制御部56aは、バケット2の間隔を縮小する際には、バケット位置検出部54によって検出された各バケット2の位置に基づいて、各バケット2の間隔を最小ピッチまで縮小するために必要な移動量をバケット2ごとに算出する。そして、バケット移動制御部56aは、算出した移動量だけ各バケット2が移動するように、各バケット2の減速機付きモータ2fを駆動する。
【0066】
また、バケット移動制御部56aは、バケット2の間隔を拡大する際には、カーテン移動制御部56bに対して、温度管理領域3を拡大する拡大制御を行うことを指示する。また、バケット移動制御部56aは、バケット2の間隔を縮小する際には、カーテン移動制御部56bに対して、温度管理領域3を縮小するカーテン縮小制御を行うことを指示する。
【0067】
また、バケット移動制御部56aは、バケット2の間隔を拡大または縮小する際には、温度検出部52によって検出された温度、および、日照検出部53によって検出された日照に基づいて、空調制御部56cに対して加温制御、加冷制御または送風制御のいずれかを行うことを指示する。
【0068】
カーテン移動制御部56bは、バケット2の間隔が拡大される場合に温度管理領域3を拡大し、バケット2の間隔が縮小される場合に温度管理領域3を縮小する。
【0069】
具体的には、カーテン移動制御部56bは、指示受付部51またはバケット移動制御部56aから拡大制御をおこなうよう指示された場合には、バケット2が移動される方向に遮蔽カーテン1を移動させることで温度管理領域3を拡大する。また、カーテン移動制御部56bは、指示受付部51またはバケット移動制御部56aから縮小制御をおこなうよう指示された場合には、バケット2が移動される方向に遮蔽カーテン1を移動させることで温度管理領域3を縮小する。
【0070】
ここで、カーテン移動制御部56bは、温度管理領域3を拡大する際には、カーテン位置検出部55によって検出された遮蔽カーテン1の位置に基づいて、前述した最大領域位置まで遮蔽カーテン1を移動するために必要な移動量を算出する。また、カーテン移動制御部56bは、温度管理領域3を縮小する際には、カーテン位置検出部55によって検出された遮蔽カーテン1の位置に基づいて、前述した最小領域位置まで遮蔽カーテン1を移動するために必要な移動量を算出する。そして、カーテン移動制御部56bは、算出した移動量だけ遮蔽カーテン1が移動するようにモータ9を駆動する。
【0071】
空調制御部56cは、空調機12のモードを設定することで、温度管理領域3の温度管理を制御する。具体的には、空調制御部56cは、バケット移動制御部56aから加温制御をおこなうよう指示された場合には、空調機12を暖房モードに設定することで温度管理領域3を加温する。また、空調制御部56cは、バケット移動制御部56aから加冷制御をおこなうよう指示された場合には、空調機12を冷房モードに設定することで温度管理領域3内を加冷する。また、空調制御部56cは、バケット移動制御部56aから送風制御をおこなうよう指示された場合には、空調機12を送風モードに設定することで温度管理領域3内を送風する。
【0072】
次に、本実施例に係る栽培装置100の動作について説明する。図14は、本実施例に係る栽培装置100の動作を説明するためのフローチャートである。図14に示すように、ハウス制御装置50の指示受付部51が、自動制御を開始する指示を操作者から受け付けた場合に(ステップS101,Yes)、以下に示す処理を開始する。
【0073】
まず、温度検出部52が、温度管理領域3内の温度を検出し(ステップS102)、日照検出部53が、温度管理領域3内の日照を検出する(ステップS103)。また、バケット位置検出部54が、各バケット2の位置を検出し(ステップS104)、カーテン位置検出部55が、遮蔽カーテン1の位置を検出する(ステップS105)。
【0074】
続いて、バケット移動制御部56aが、温度検出部52によって検出された温度が16℃以下であるか否かを判定する(ステップS106)。ここで、16℃以下であった場合には(ステップS106,Yes)、バケット移動制御部56aは、バケット2の間隔が拡大されているか否かを判定する(ステップS107)。
【0075】
そして、バケット2の間隔が拡大されていた場合には(ステップS107,Yes)、バケット移動制御部56aは、バケット2の間隔が最小ピッチまで縮小するように各バケット2を移動させる(ステップS108)。また、カーテン移動制御部56bが、温度管理領域3の大きさが縮小するように遮蔽カーテン1を移動させる(ステップS109)。
【0076】
そして、バケット2の間隔および温度管理領域3の大きさがそれぞれ縮小した後に、空調制御部56cが、温度管理領域3内を加温する(ステップS110)。なお、空調制御部56cは、バケット2の間隔および温度管理領域3の縮小が開始した時点で、温度管理領域3内の加温を開始してもよい。
【0077】
一方、温度検出部52によって検出された温度が16℃を超えていた場合には(ステップS106,No)、バケット移動制御部56aは、温度検出部52によって検出された温度が30℃以下であるか否かを判定する(ステップS111)。ここで、30℃以下であった場合には(ステップS111,Yes)、バケット移動制御部56aは、日照検出部53によって日照が検出されたか否かを判定する(ステップS112)。
【0078】
そして、日照が検出された場合には(ステップS112,Yes)、バケット移動制御部56aは、バケット2の間隔が縮小されているか否かを判定する(ステップS113)。ここで、バケット2の間隔が縮小されていた場合には(ステップS113,Yes)、カーテン移動制御部56bが、温度管理領域3の大きさが拡大するように遮蔽カーテン1を移動させる(ステップS114)。また、バケット移動制御部56aが、バケット2の間隔が最大ピッチまで拡大するように各バケット2を移動させる(ステップS115)。
【0079】
そして、バケット2の間隔および温度管理領域3の大きさがそれぞれ拡大した後に、空調制御部56cが、温度管理領域3内を送風する(ステップS116)。なお、空調制御部56cは、バケット2の間隔および温度管理領域3の拡大が開始した時点で、温度管理領域3内の送風を開始してもよい。
【0080】
一方、温度検出部52によって検出された温度が30℃を超えていた場合には(ステップS111,No)、バケット移動制御部56aは、バケット2の間隔が拡大されているか否かを判定する(ステップS117)。ここで、バケット2の間隔が拡大されていた場合には(ステップS117,Yes)、バケット移動制御部56aは、バケット2の間隔が最小ピッチまで縮小するように各バケット2を移動させる(ステップS118)。また、カーテン移動制御部56bが、温度管理領域3の大きさが縮小するように遮蔽カーテン1を移動させる(ステップS119)。
【0081】
そして、バケット2の間隔および温度管理領域3の大きさがそれぞれ縮小した後に、空調制御部56cが、温度管理領域3内を加冷する(ステップS120)。なお、空調制御部56cは、バケット2の間隔および温度管理領域3の縮小が開始した時点で、温度管理領域3内の加冷を開始してもよい。
【0082】
そして、指示受付部51が、自動制御を終了する指示を操作者から受け付けた場合に(ステップS121,Yes)、上述した自動制御に関する処理を終了する。
【0083】
上述してきたように、本実施例では、バケット移動制御部56aが、複数のバケット2の間隔が拡大または縮小するように各バケット2を移動させる。また、カーテン移動制御部56bが、バケット2の間隔が拡大される場合に温度管理領域3を拡大し、バケット2の間隔が縮小される場合に温度管理領域3を縮小する。したがって、本実施例に係る栽培装置100によれば、ハウスH内の温度管理に必要なエネルギー消費を抑えることが可能になる。さらに、エネルギー消費を抑えることによって、ハウス栽培にかかるランニングコストを抑えることが可能になる。また、空調機による冷暖房で発生するCOの排出を低減することができるので、地球環境の保護に貢献することが可能になる。
【0084】
また、本実施例では、遮蔽カーテン1が、栽培物の栽培に用いられるハウスH内の領域を分割することで温度管理領域3を形成する。そして、カーテン移動機構が、複数のバケット2が移動される方向に遮蔽カーテン1を移動させることで温度管理領域3を拡大または縮小する。したがって、本実施例によれば、ハウス栽培で一般的に利用されているハウスHに遮蔽カーテン1を設けることで、ハウスH内の温度管理に必要なエネルギー消費を容易に抑えることが可能になる。
【0085】
また、本実施例では、温度検出部52が、温度センサー10を介して温度管理領域3内の温度を検出する。そして、バケット移動制御部56aが、温度検出部52によって検出された温度が所定の閾値以下となった場合に、バケット2の間隔が縮小するように各バケット2を移動させる。したがって、本実施例によれば、温度管理領域3内の温度に応じて、温度管理領域3の大きさを自動的に拡大または縮小することができるので、エネルギー消費を抑えつつ最適な温度管理を実現することができる。
【0086】
また、本実施例では、日照検出部53が、日照センサー11を介して温度管理領域3内の日照を検出する。そして、バケット移動制御部56aが、温度検出部52によって検出された温度が所定の閾値を超え、かつ、日照検出部53によって日照が検出された場合に、バケット2の間隔が拡大するように各バケット2を移動させる。したがって、本実施例によれば、温度管理領域3内の日照の有無に応じて、バケット2の間隔を自動的に拡大または縮小することができるので、エネルギー消費を抑えつつ最適な日照状態を維持することができる。
【0087】
上記の通り、日照に加え温度も加味してバケット2の移動を管理する最適な実施形態を説明した。しかしながら、実際の生育では温度よりは日照による光合成の方が重要度は高いことを考慮し、温度の高低に関わらず日照があればバケット2の間隔を拡大させるようにしても良い。
【0088】
なお、上記実施例では、遮蔽カーテン1およびバケット2の移動と温度管理領域3の温度管理とをそれぞれ自動的に制御する場合について説明したが、これらの制御を操作者による手動で行なうようにしてもよい。
【0089】
その場合には、指示受付部51が、遮蔽カーテン1およびバケット2の移動と温度管理領域3の温度管理とをそれぞれ手動で制御する手動制御の開始指示を操作者から受け付ける。そして、手動制御の開始指示を受け付けた場合には、指示受付部51は、さらに、バケット2の間隔を拡大することを指示する拡大指示、または、バケット2の間隔を縮小することを指示する縮小指示を操作者から受け付ける。
【0090】
そして、拡大指示を受け付けた場合には、指示受付部51は、制御部56に対して、バケット2の間隔を拡大させる拡大制御を行うことを指示する。また、縮小指示を受け付けた場合には、指示受付部51は、制御部56に対して、バケット2の間隔を縮小させる縮小制御を行うことを指示する。
【0091】
さらに、指示受付部51は、温度管理領域3を加温することを指示する加温指示、温度管理領域3内を加冷することを指示する加冷指示、温度管理領域3を送風することを指示する送風指示も受け付ける。そして、加温指示を受け付けた場合には、指示受付部51は、制御部56に対して加温制御を行うことを指示する。また、加冷指示を受け付けた場合には、指示受付部51は、制御部56に対して加冷制御を行うことを指示する。また、送風指示を受け付けた場合には、指示受付部51は、制御部56に対して送風制御を行うことを指示する。
【0092】
そして、バケット移動制御部56aが、指示受付部51から拡大制御をおこなうよう指示された場合には、各バケット2の減速機付きモータ2fを駆動することで、バケット2の間隔が最大ピッチまで拡大するように各バケット2を移動させる。また、バケット移動制御部56aは、指示受付部51から縮小制御をおこなうよう指示された場合には、各バケット2の減速機付きモータ2fを駆動することで、バケット2の間隔が最小ピッチまで縮小するように各バケット2を移動させる。
【0093】
次に、手動制御を行う場合の栽培装置100の動作について説明する。図15は、手動制御を行う場合の栽培装置100の動作を説明するためのフローチャートである。図15に示すように、ハウス制御装置50の指示受付部51が、手動制御を開始する指示を操作者から受け付けた場合に(ステップS201,Yes)、以下に示す手動制御に関する処理を開始する。
【0094】
まず、指示受付部51が、バケット2の間隔を拡大することを指示する拡大指示、または、バケット2の間隔を縮小することを指示する縮小指示のいずれかを操作者から受け付ける。そして、指示受付部51によって拡大指示が受け付けられた場合には(ステップS202,Yes)、カーテン移動制御部56bが、温度管理領域3の大きさが拡大するように遮蔽カーテン1を移動させる(ステップS203)。また、バケット移動制御部56aが、バケット2の間隔が最大ピッチまで拡大するように各バケット2を移動させる(ステップS204)。
【0095】
一方、指示受付部51によって縮小指示が受け付けられた場合には(ステップS202,No、ステップS205,Yes)、バケット移動制御部56aは、バケット2の間隔が最小ピッチまで縮小するように各バケット2を移動させる(ステップS206)。また、カーテン移動制御部56bが、温度管理領域3の大きさが縮小するように遮蔽カーテン1を移動させる(ステップS207)。
【0096】
その後、指示受付部51は、温度管理領域3を加温することを指示する加温指示、温度管理領域3内を加冷することを指示する加冷指示、温度管理領域3を送風することを指示する送風指示のいずれかを操作者から受け付ける。
【0097】
ここで、加温指示が受け付けられた場合には(ステップS208,Yes)、空調制御部56cが、温度管理領域3内を加温する(ステップS209)。また、加冷指示が受け付けられた場合には(ステップS208,No、ステップS210,Yes)、空調制御部56cは、温度管理領域3内を加冷する(ステップS211)。また、送風指示が受け付けられた場合には(ステップS210,No、ステップS212,Yes)、空調制御部56cは、温度管理領域3内を送風する(ステップS213)。
【0098】
そして、指示受付部51が、手動制御を終了する指示を操作者から受け付けた場合に(ステップS214,Yes)、上述した手動制御に関する処理を終了する。なお、ここでは、指示受付部51が、バケット2の間隔および遮蔽カーテン1の移動に関する指示を受け付けた後に、温度管理領域3内の温度調整に関する指示を受け付ける場合について説明したが、指示を受ける順番は逆であってもよい。
【0099】
このように、指示受付部51が、バケット2の間隔を拡大することを指示する拡大指示またはバケット2の間隔を縮小することを指示する縮小指示を操作者から受け付ける。そして、バケット移動制御部56aが、指示受付部51によって拡大指示が受け付けられた場合に、バケット2の間隔が拡大するように各バケット2を移動させる。また、バケット移動制御部56aは、指示受付部51によって縮小指示が受け付けられた場合に、バケット2の間隔が縮小するように各バケット2を移動させる。これにより、操作者が任意のタイミングで、バケット2の間隔および温度管理領域3の大きさを変更したり、温度管理領域3内の温度を調整したりすることができるので、より柔軟にハウスH内の温度管理を行うことが可能になる。
【0100】
ところで、上記実施例では、最小ピッチを固定的に設定する場合について説明した。具体的には、最小ピッチは、栽培物の苗が成長した状態でも栽培物の葉がこすれ合わない間隔であることとした。しかしながら、通常、栽培物の葉がこすれ合わない間隔は栽培物の成長量に応じて変化する。例えば、成長の初期段階では、栽培物の葉がバケット2の容器内から外に出ることがないので、隣接するバケット2が接触するまで各バケット2の間隔を小さくしても、栽培物の葉がこすれ合うことはない。そのため、栽培物の苗が成長した状態に合わせて最小ピッチを決定した場合、成長の初期段階では、バケット2の間隔に余分な距離が含まれることになる。
【0101】
そこで、例えば、栽培物の成長度合いに応じて最小ピッチを変更するようにしてもよい。その場合には、例えば、栽培を開始してからの経過日数と最小ピッチとの関係を示すモデルをあらかじめ定義しておき、定義したモデルをハウス制御装置50の記憶部に記憶させておく。図16は、栽培物の成長に応じて最小ピッチを変更する場合に用いられるモデルの一例を示す図である。図16に示すように、例えば、栽培物の栽培を開始してから日数が経過するにしたがって、最小ピッチが少しずつ大きくなるようなモデルを定義しておく。
【0102】
そして、バケット移動制御部56aが、バケット2の間隔を縮小する際に、栽培装置100の記憶部に記憶されているモデルに基づいて最小ピッチを算出し、算出した最小ピッチとなるまでバケット2の間隔を縮小する。
【0103】
このように、栽培物の成長に応じて最小ピッチを変更することによって、栽培物が小さいうちはバケット2の間隔をより狭めることができる。したがって、温度管理領域3をより縮小することが可能になるので、温度管理領域3の温度調整をより効率よく行うことができるようになる。これにより、ハウスH内の温度管理に必要なエネルギー消費をさらに抑えることが可能になる。
【0104】
なお、栽培物の栽培を開始してからの経過日数と栽培物の成長との関係は季節によって変化する。例えば、夏に栽培する場合と春に栽培する場合とを比べると、夏に栽培する場合のほうが栽培物の成長が早い。そこで、例えば、上述したモデルを季節ごとに用意しておくようにしてもよい。その場合、バケット移動制御部56aは、日時を示す情報を取得して季節を特定し、特定した季節に対応するモデルを選択して最小ピッチを決定する。これにより、季節に応じて最適な温度管理を行うことが可能になる。
【0105】
また、上記実施例では、遮蔽カーテン1を用いて温度管理領域3を形成するとともに、遮蔽カーテン1を移動することで温度管理領域3の大きさを変更する場合について説明した。しかしながら、本発明はこれに限られるものではなく、例えば、ハウス全体が収縮する構成を有している場合には、ハウス全体を温度管理領域とするとともに、ハウス全体を収縮させることで温度管理領域の大きさを変更するようにしてもよい。
【0106】
また、上記実施例では、ハウス栽培で用いられるハウスに本発明を適用した場合について説明した。しかしながら、本発明はこれに限られるものではなく、例えば、ガラス製の温室を用いた温室栽培など、温度管理が行われる栽培室を用いた他の栽培方法にも同様に適用することが可能である。
【0107】
また、上記実施例の加温、加冷、送風に加え、例えばドライアイス利用による二酸化炭素の供給も行うよう制御に入れても良い。すなわち、台風や降雨などの天候不順の影響を抑止するためハウスの窓を長時間閉めた状態とされた場合、ハウス内は栽培物の光合成により酸素過多の状態となる。すると、葉における光合成に必要な二酸化炭素が不足し生育に影響するので、例えば日照前の朝方に分配管へドライアイスが気化して生じる二酸化炭素を供給し、噴出口からハウス内へ行き渡らせるようにする。この制御を行うにあたっては、ハウスを締め切った際など本機能を作用させたいと栽培者が意図したらONにするスイッチを設けておけば、あとは朝方の所定時間帯にタイマー制御で起動するといった単純な制御で事足りる。こうすることで、日照後の光合成が順調に行え、栽培物の生育への悪影響を抑制できる。
【0108】
また、上記実施例では、メロン栽培を例に説明したがこれに限定されない。トマトやいちご或いはレタスなど、栽培において加温、加冷といった同様なニーズがあるいかなる栽培物にも適用可能である。
【符号の説明】
【0109】
100 栽培装置
1 遮蔽カーテン
2 バケット
50 ハウス制御装置
51 指示受付部
52 温度検出部
53 日照検出部
54 バケット位置検出部
55 カーテン位置検出部
56 制御部
56a バケット移動制御部
56b カーテン移動制御部
56c 空調制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度管理が行われる温度管理領域に並べて配置され、それぞれ栽培物を収容する複数の栽培容器と、
前記複数の栽培容器の間隔が拡大または縮小するように各栽培容器を移動させる栽培容器移動手段と、
前記栽培容器移動手段によって前記栽培容器の間隔が拡大される場合に前記温度管理領域を拡大し、前記栽培容器移動手段によって前記栽培容器の間隔が縮小される場合に前記温度管理領域を縮小する温度管理領域変更手段と
を備えたことを特徴とする栽培装置。
【請求項2】
前記温度管理領域変更手段は、
前記栽培物の栽培に用いられる栽培室内の領域を分割することで前記温度管理領域を形成する隔壁と、
前記複数の栽培容器が移動される方向に前記隔壁を移動させることで前記温度管理領域を拡大または縮小する隔壁移動手段と
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の栽培装置。
【請求項3】
前記温度管理領域内の日照を検出する日照検出手段をさらに備え、
前記栽培容器移動手段は、前記日照検出手段によって日照が検出された場合に、前記栽培容器の間隔が拡大するように各栽培容器を移動させることを特徴とする請求項1または2に記載の栽培装置。
【請求項4】
前記温度管理領域内の温度を検出する温度検出手段をさらに備え、
前記栽培容器移動手段は、前記温度検出手段によって検出された温度が所定の閾値以下となった場合に、前記栽培容器の間隔が縮小するように各栽培容器を移動させることを特徴とする請求項1、2または3に記載の栽培装置。
【請求項5】
前記栽培容器の間隔を拡大することを指示する拡大指示または前記栽培容器の間隔を縮小することを指示する縮小指示を操作者から受け付ける指示受付手段をさらに備え、
前記栽培容器移動手段は、前記指示受付手段によって前記拡大指示が受け付けられた場合に、前記栽培容器の間隔が拡大するように各栽培容器を移動させ、前記指示受付手段によって前記縮小指示が受け付けられた場合に、前記栽培容器の間隔が縮小するように各栽培容器を移動させることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の栽培装置。
【請求項6】
前記栽培容器移動手段は、前記複数の栽培容器の間隔が縮小するように各栽培容器を移動させる際に、前記栽培物の成長度合いに応じて栽培容器間の最小間隔を設定し、各栽培容器の間隔が前記最小間隔となるように各栽培容器を移動させることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載の栽培装置。
【請求項7】
温度管理が行われる温度管理領域に並べて配置され、それぞれ栽培物を収容する複数の栽培容器の間隔が拡大または縮小するように各栽培容器を移動させるステップと、
前記栽培容器の間隔が拡大される場合に前記温度管理領域を拡大し、前記栽培容器の間隔が縮小される場合に前記温度管理領域を縮小するステップと、
前記温度管理領域内で移動される栽培容器を用いて前記栽培物を栽培するステップと
を含んだことを特徴とする栽培方法。
【請求項8】
温度管理が行われる温度管理領域に並べて配置され、それぞれ栽培物を収容する複数の栽培容器の間隔が拡大または縮小するように各栽培容器を移動させるステップと、
前記栽培容器の間隔が拡大される場合に前記温度管理領域を拡大し、前記栽培容器の間隔が縮小される場合に前記温度管理領域を縮小するステップと、
前記温度管理領域内で移動される栽培容器を用いて前記栽培物を生産するステップと
を含んだことを特徴とする栽培物の生産方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−55728(P2011−55728A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−206271(P2009−206271)
【出願日】平成21年9月7日(2009.9.7)
【特許番号】特許第4571222号(P4571222)
【特許公報発行日】平成22年10月27日(2010.10.27)
【出願人】(509228709)
【出願人】(596181763)
【Fターム(参考)】