説明

桁落下防止構造およびこの構造における緩衝材の取り付け方法

【課題】 高速道路や橋梁等の脚と桁とよりなる構造において、地震等の衝撃荷重によっても桁が脚から外れて落下してしまうという問題がある。
【解決手段】 チェーンを構成する各リング同志が互いに接触しない状態にしてゴムや合成樹脂等の弾性体内に接着・埋設し、各リング同志の間にも弾性体が充填するようにした緩衝材に張力を与え、この緩衝材によって連続する桁相互間および脚上部と桁端部とをそれぞれ結ぶように接続したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、高速道路、橋梁等における脚と桁とよりなる構造体における桁の落下防止構造およびこの桁落下防止構造における緩衝材の取り付け方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来の桁落下防止構造を以下に図を用いて説明する。図9は要部説明図であり、図において、1は脚、2はこの脚1上に支承材3を介して設置した桁である。そこで、この脚1の上部と桁2の端部裏側の間にチェーン4を渡して桁の落下防止構造としてある。
【0003】このチェーン4は、桁2の温度伸縮等に対応させるためおよびチェーンの設置作業上の理由から2点間の直線距離よりもたるませた状態にして配置してある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】このような桁落下防止構造によると、チェーンは2点間の直線距離より長く設置してあるために、地震のような大きな振幅の振動が発生した場合には、弛緩しているチェーンが瞬時に緊張状態となって大きな衝撃力が発生し、チェーンの緩衝機能の不足のため、その衝撃力がチェーンの破断強度を上回ることとなり、最悪の場合にはチェーンが破断して桁が落下してしまうという問題がある。
【0005】
【課題を解決するための手段】そこで本発明は、チェーンを構成する各リング同志が互いに接触しない状態にしてゴムや合成樹脂等の弾性体内に接着・埋設し、各リング同志の間にも弾性体が充填するようにした緩衝材に張力を与え、この緩衝材によって連続する桁相互間および脚上部と桁端部とをそれぞれ結ぶように接続したことを特徴とする。
【0006】さらに、このような桁落下防止構造において、緩衝材の一端に接続時に引張具を連結し、この引張具によって接続時に緩衝材に張力を与えて接続することを特徴とするする。
【0007】
【発明の実施の形態】以下に本発明の実施の形態例を図面を用いて説明する。
第1の実施の形態図1は説明図、図2は緩衝体の説明断面図であり、図において、1は脚、2はこの脚1上に支承材3を介して設置した桁である。
【0008】5は緩衝材であり、図2に示す如く、チェーンを構成する各リング6同志が互いに接触しない状態にしてゴムや合成樹脂等の弾性体7内に接着・埋設し、各リング6同志の間にも弾性体7が充填するように構成されている。このように構成された緩衝材5は、脚1の上部と桁2の端部裏側にそれぞれボルト等によって取り付けた固定材8にその端部を回動可能に連結することによって配置される。
【0009】この緩衝材5の配置に際して、緩衝材5の脚1側もしくは桁2のどちらか一方側にレバーブロック等の引張具9を介在させる。さらに、脚1の上部と桁2の端部裏側間の距離が長い場合には緩衝材5の一端側もしくは両側にチェーンを介在させてもよい。このように緩衝材5を配置した後、引張具9を締めることによって緩衝材5に所定の引張力を付与し、この引張状態で脚1と桁2との間に設置されるものである。
【0010】第2の実施の形態図3は説明図であり、緩衝材5の一端を直接もしくはチェーンを介して、脚1の上部にボルト等によって取り付けた固定材8に回動可能に連結し、緩衝材5の他端にチェーン10を連結し、このチェーン10を桁2の端部裏側に取り付けた滑車11を介して脚1の上部にボルト等によって取り付けた固定材8にチェーンの途中を回して端部を固定材12に固定して配置される。さらに、この滑車11と固定材8との間のチェーン10にレバーブロック等の引張具9を介在させる。
【0011】このようにして緩衝材5を配置した後、引張具9を締めることによって緩衝材5に所定の引張力を付与し、この引張状態で脚1と桁2との間に設置されるものである。
第3の実施の形態図4は説明図であり、緩衝材5の一端を直接もしくはチェーンを介して、脚1の上部にボルト等によって取り付けた固定材8に回動可能に連結し、緩衝材5の他端に直接もくはチェーンを接続したときにはその端部に、桁2に設けた引張具13から出してあるワイヤー14を万力等の固定装置15を介して連結して配置した構造であり、引張具13によって緩衝材5に引張力を与えた状態で緩衝材5の端部もしくはチェーン端部を桁2にボルト等によって取り付けた固定材16に係止するものである。
【0012】これによって緩衝材5に所定の引張力が付与され、この引張状態で脚1と桁2との間に設置されるものである。
第4の実施の形態図5は説明図であり、緩衝材5を、脚1の上部と桁2の端部裏側の間に一方を固定状態、他方を移動可能な状態でそれぞれ端部を回動可能にして固着することによって配置される。
【0013】なお、2点間の距離が長い場合等には、上記の各実施の形態同様に図示する如く、緩衝材5にチェーンを接続して配置してもよい。まず、固定端(本実施の形態例では脚側とする。)は、ボルト等によって脚1に固定された固定材8に緩衝材5もしくはそれに連結したチェーンの端部を回動可能に連結する。
【0014】つぎに可動端(本実施の形態例では桁側とする。)は、図6に示すベースプレート17および図7に示す移動プレート18による移動可能な支持構造に連結する。つまり、所定間隔にボルト19を配置したベースプレート17を桁2に固定し、このベースプレート17のボルト19が嵌合し、しかも並べて配置したボルト19の間隔より長くした長孔20を有する移動プレート18を、この長孔20によって上記ベースプレート17のボルト19に嵌めて図8に示す如く両者を重ね、移動プレート18がベースプレート17に沿って移動するようにナット21によって支持する。
【0015】このようにした移動プレート18はさらに、緩衝材5を連結する接続具22を有すると共に端部に連結リング23が設けてあり、緩衝材5の端部を回動可能に連結する。図において、24は桁2に取り付けた引張具であり、例えばチルホールやレバーブロックであり、この引張具24から出してあるワイヤー25を上記移動プレート18の連結リング23にフック等の係止具26を介して係止連結する。
【0016】この引張具24には桁2にブラケット27等により支持された検力計28が接続してある。これは必ずしも必要なものではないが、接続することにより引張具24による引張力を容易に検査することができることになる。そこで、引張具24を操作することにより移動プレート18を矢印方向に移動させて緩衝材5に引張力を与える。
【0017】このときに予め、設置時の公差対応量と2点間の温度変化により距離の変動対応量等から必要な緩衝材5の伸び量を算定しておくことにより移動プレート18の移動量を設定することが可能である。こうして緩衝材5に予め引張力を付与した後、ベースプレート17のボルト19に嵌めたナット21を締めて移動プレート18を固定して設置が完了する。
【0018】なお、上記の各実施の形態で説明した緩衝材5の衝撃緩和機能を発揮する応力の上限値は実験によれば、チェーンの材質に関係なく概ねチェーンの断面応力でσc =400Kg/cm2であり、そのため引張装置19の最大もP=π・d2 ・σc/ 2(d:チェーンの直径cm)となり、実用的な施工が可能である。また、上記各実施の形態の構成において、連続する各桁2間にも緩衝材5を配置して互いに連結しておく。
【0019】このような桁落下防止構造は、常に許容力以内の張力が載荷され、しかも力学的な不連続点が存在しないことから、衝撃力が作用した場合でも安定した緩衝効果を発揮することが可能で、かつ緩衝材の弾性体の作用で移動した桁を復元する機能も発揮することができる。
【0020】
【発明の効果】以上詳細に説明した本発明によると、チェーンを構成する各リング同志が互いに接触しない状態にしてゴムや合成樹脂等の弾性体内に接着・埋設し、各リング同志の間にも弾性体が充填するようにした緩衝材に張力を与え、この緩衝材によって連続する桁相互間および脚上部と桁端部とをそれぞれ結ぶように接続したことにより、温度変化の伸縮等による脚と桁との2点間の距離の変動に対応することが可能な接続構造となる効果を有する。
【0021】また、地震等の衝撃荷重に対しての対応が可能となり、桁の落下を防止することができる効果を有する。さらに、緩衝材が弾性を有し、しかも張力が与えてあるために設置時の公差に対応することが容易であるという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施の形態例を示す説明図
【図2】緩衝体の説明断面図
【図3】第2実施の形態例を示す説明図
【図4】第3実施の形態例を示す説明図
【図5】第4実施の形態例を示す説明図
【図6】ベースプレートの説明図
【図7】移動プレートの説明図
【図8】ベースプレートと移動プレートの組み合わせ状態を示す説明図
【図9】従来例の説明図
【符号の説明】
1 脚
2 桁
3 支承材
5 緩衝材
6 リング
7 弾性体
9 引張具
13 引張具
17 ベースプレート
18 移動プレート
24 引張具

【特許請求の範囲】
【請求項1】 チェーンを構成する各リング同志が互いに接触しない状態にしてゴムや合成樹脂等の弾性体内に接着・埋設し、各リング同志の間にも弾性体が充填するようにした緩衝材に張力を与え、この緩衝材によって連続する桁相互間および脚上部と桁端部とをそれぞれ結ぶように接続したことを特徴とする桁落下防止構造。
【請求項2】 請求項1において、脚上部と桁端部間に緩衝材および引張具を配置したことを特徴とする桁落下防止構造。
【請求項3】 請求項1において、脚上部もしくは桁端部にベースプレートを取り付け、このベースプレートに移動プレートを移動可能に配置すると共に引張具に連結し、この移動プレートに緩衝材の一端を連結したことを特徴とする桁落下防止構造。
【請求項4】 請求項1の桁落下防止構造において、緩衝材に接続した引張具によって接続時に緩衝材に張力を与えることを特徴とする桁落下防止構造における緩衝材の取り付け方法。
【請求項5】 請求項3の桁落下防止構造において、移動プレートに接続した引張具によって緩衝材に張力を与えてから移動プレートをベースプレートに固定することを特徴とする桁落下防止構造における緩衝材の取り付け方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開平9−242018
【公開日】平成9年(1997)9月16日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平8−55947
【出願日】平成8年(1996)3月13日
【出願人】(000106955)シバタ工業株式会社 (81)
【出願人】(000107044)ショーボンド建設株式会社 (71)
【出願人】(390038830)昭和機械商事株式会社 (18)