案内羽根、及びこれを備えた空気調和機
【課題】気流が案内羽根により案内される際に発生する騒音を低減することができる案内羽根、及びこれを備えた空気調和機を提供する。
【解決手段】可動式のフラップ70は、気流の上流側に設けられる端部である前縁側端部70aと、気流の下流側に設けられる端部である後縁側端部70bとを備え、前縁側端部70aに、気流の方向に沿って延びる上面71を膨らませて形成された膨出部73が設けられて、室内機の空気吹出口に設けられる。膨出部73が設けられた前縁側端部70aには切り欠き部74が形成されて、この切り欠き部74における前縁側端部70aの翼厚が、膨出部73における前縁側端部70aの翼厚に比べて小さくなっている。
【解決手段】可動式のフラップ70は、気流の上流側に設けられる端部である前縁側端部70aと、気流の下流側に設けられる端部である後縁側端部70bとを備え、前縁側端部70aに、気流の方向に沿って延びる上面71を膨らませて形成された膨出部73が設けられて、室内機の空気吹出口に設けられる。膨出部73が設けられた前縁側端部70aには切り欠き部74が形成されて、この切り欠き部74における前縁側端部70aの翼厚が、膨出部73における前縁側端部70aの翼厚に比べて小さくなっている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、空気調和機の空気吹出口に設けられる可動式の案内羽根、及びこれを備えた空気調和機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
空気調和機である空気調和装置の室内機は、ケーシング内に熱交換器と送風機とを有しており、熱交換器を通過して温度が調整された空気(即ち、調和空気)が、送風機により室内機の外部である室内に送風される構成となっている。そして、一般的に、空気調和装置の室内機は、調和空気を室内の所望の方向へ向けて送風するために、空気吹出口に可動式の案内羽根を備えている。
【0003】
可動式の案内羽根は、電動モータ等により駆動されることによって、その取り付け角が変化するため、送風機から送風される調和空気の気流を所望の方向へ案内することができる。具体的には、可動式の案内羽根により、例えば、気流を水平方向へ案内することや、気流を下方へ案内することができる。
【0004】
また、案内羽根に流れる気流が剥離することを抑制するために、案内羽根の前縁側端部に、案内羽根の表面を膨らませて形成された膨出部を設けることが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1には、ベーンの上流側が膨らみ肉厚となることにより、流れの剥離を生じにくくすることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−96037号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、可動式の案内羽根は、案内羽根の取り付け角が変化することによって、一定の方向だけでなく、所望の方向に向けて気流を案内することができるが、上述の膨出部により騒音が発生するという問題があった。具体的には、例えば、下方へ気流を案内する場合には案内羽根の表面である上面を膨らませて膨出部が形成されるが、水平方向へ気流を案内するように案内羽根の取り付け角が変化すると、上面を膨らませて形成された膨出部が空気通路をふさぐ形になるため、膨出部に気流が衝突しやすく、騒音が発生するという問題があった。
【0007】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、気流が案内羽根により案内される際に発生する騒音を低減することができる案内羽根、及びこれを備えた空気調和機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、気流の上流側に設けられる端部である前縁側端部と、気流の下流側に設けられる端部である後縁側端部とを備え、前縁側端部に、気流の方向に沿って延びる表面を膨らませて形成された膨出部が設けられて、空気調和装置の空気吹出口に設けられる可動式の案内羽根であって、膨出部が設けられた前縁側端部には切り欠き部が形成されて、この切り欠き部における前縁側端部の翼厚が、膨出部における前縁側端部の翼厚に比べて小さくなっていることを特徴とする。
【0009】
同構成によれば、膨出部が設けられた前縁側端部には切り欠き部が形成されて、この切り欠き部における前縁側端部の翼厚が、膨出部における前縁側端部の翼厚に比べて小さくなっている。このため、気流の一部が、切り欠き部に流れて案内羽根の表面に沿った流れの気流となる。従って、膨出部における翼厚に比べて小さい翼厚を有する切り欠き部に気流が流入するため、膨出部と気流が衝突することを緩和することができ、気流が案内羽根により案内される際に発生する騒音を低減することができる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の案内羽根であって、気流の方向に沿った断面において、切り欠き部における翼厚が、前縁側端部から気流の下流側へ向かうにつれて徐々に大きくなっていることを特徴とする。
【0011】
同構成によれば、気流の方向に沿った断面において、切り欠き部における翼厚が、前縁側端部から気流の下流側へ向かうにつれて徐々に大きくなっているため、切り欠き部において前縁側端部から気流の下流側へ流れる気流を、なだらかな気流とすることができる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の案内羽根であって、切り欠き部における前縁側端部の前縁は、V字状であることを特徴とする。
同構成によれば、切り欠き部における前縁側端部の前縁は、V字状であるため、切り欠き部が、気流の下流側へ最も深く切り欠かれた最深部を有するように構成することができ、この最深部へ、気流を容易に導くことが可能となる。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の案内羽根であって、前縁がV字状に形成された切り欠き部は、気流の下流側へ最も深く切り欠かれた最深部を有しており、気流の方向に垂直な断面において、切り欠き部における翼厚が、最深部に向かうにつれて徐々に小さくなっていることを特徴とする。
【0014】
同構成によれば、気流の方向に垂直な断面において、切り欠き部における翼厚が、V字状の切り欠き部が有する最深部に向かうにつれて徐々に小さくなっているため、切り欠き部に流れる気流を、切り欠き部の最深部へ容易に導くことができ、さらに、最深部へ導かれる気流を、なだらかな気流とすることができる。
【0015】
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の案内羽根であって、表面として、上方に向けて設けられる上面及び下方に向けて設けられる下面を有し、膨出部は、前記上面を膨らませて形成されていることを特徴とする。
【0016】
同構成によれば、膨出部は、案内羽根の上面を膨らませて形成されている。このため、上方に向けて膨らんだ膨出部により、案内羽根に流れる気流が、案内羽根の上面から剥離することを抑制することができる。従って、気流が下方に向けて流れるように案内羽根が配設されたときに、気流が案内羽根の上面から剥離することを抑制して、下方へ流れる気流を遠くまで到達させることができる。
【0017】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の案内羽根であって、切り欠き部において、上面が窪んでいることを特徴とする。
同構成によれば、切り欠き部において、案内羽根の上面が窪んでいるため、切り欠き部における前縁側端部の翼厚を、膨出部における前縁側端部の翼厚に比べて小さくする場合に、案内羽根の下面を窪ませることが不要となる。従って、案内羽根の下面の面積を確保することができ、案内羽根の下面によって気流を下方へ容易に案内することができる。
【0018】
請求項7に記載の発明は、請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の案内羽根であって、表面として、互いに反対の方向に向けて設けられる第1の表面及び第2の表面を有し、膨出部は、第1の表面及び第2の表面のうちいずれか一方を膨らませて形成されており、切り欠き部において、第1の表面及び第2の表面のうちいずれか一方が窪んでいることを特徴とする。
【0019】
同構成によれば、膨出部は、第1の表面及び第2の表面のうちいずれか一方を膨らませて形成されているため、膨出部により、案内羽根に流れる気流が、案内羽根の第1の表面及び第2の表面のうちいずれか一方から剥離することを抑制することができる。そして、切り欠き部において、第1の表面及び第2の表面のうちいずれか一方の表面が窪んでいるため、切り欠き部における前縁側端部の翼厚を、膨出部における前縁側端部の翼厚に比べて小さくする場合に、案内羽根の他方の表面を窪ませることが不要となる。従って、案内羽根の他方の表面の面積を確保することができ、案内羽根の他方の表面によって気流を他方の表面が向く方向へ容易に案内することができる。
【0020】
請求項8に記載の発明は、請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の案内羽根であって、表面として、互いに反対の方向に向けて設けられる第1の表面及び第2の表面を有し、膨出部として、第1の表面を膨らませて形成された第1の膨出部と、第2の表面を膨らませて形成された第2の膨出部とが設けられていることを特徴とする。
【0021】
同構成によれば、膨出部として、第1の表面を膨らませて形成された第1の膨出部と、第2の表面を膨らませて形成された第2の膨出部とが設けられている。このため、第1の表面(例えば、上面)が膨らんだ第1の膨出部により、案内羽根に流れる気流が、案内羽根の第1の表面から剥離することを抑制することができる。また、第2の表面(例えば、下面)が膨らんだ第2の膨出部により、案内羽根に流れる気流が、案内羽根の第2の表面から剥離することを抑制することができる。従って、気流が第1の表面及び第2の表面の少なくとも一方の表面から剥離することを抑制して、可動式の案内羽根により気流の向きが変化する場合であっても、所望の方向へ流れる気流を遠くまで到達させることができる。
【0022】
請求項9に記載の発明は、請求項8に記載の案内羽根であって、切り欠き部において、第1の表面と第2の表面とが窪んでいることを特徴とする。
同構成によれば、切り欠き部において、互いに反対の方向に向けて設けられる第1の表面と第2の表面とが窪んでいる。このため、互いに反対の方向に向けて設けられる表面を膨らませた第1の膨出部と第2の膨出部とが設けられている場合に、案内羽根の第1の表面側の形状と、案内羽根の第2の表面側の形状とを同じように構成して、切り欠き部における前縁側端部の翼厚を、膨出部における前縁側端部の翼厚に比べて小さくすることができる。
【0023】
請求項10に記載の発明は、請求項1乃至請求項9のいずれか一項に記載の案内羽根であって、切り欠き部は、所定間隔を空けて前縁側端部に複数形成されていることを特徴とする。
【0024】
同構成によれば、切り欠き部は、所定間隔を空けて前縁側端部に複数形成されているため、複数の前縁側端部の間に形成される膨出部により、気流が案内羽根の表面から剥離することを抑制することができる。そして、複数の切り欠き部付近において、膨出部と気流が衝突することを緩和することができ、気流が案内羽根により案内される際に発生する騒音をより低減することができる。
【0025】
請求項11に記載の発明は、請求項1乃至請求項10のいずれか一項に記載の案内羽根を備えることを特徴とする。
同構成によれば、空気調和機は、請求項1乃至請求項10のいずれか一項に記載の案内羽根を備えているため、請求項1乃至請求項10のいずれか一項に記載の案内羽根と同様の効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、膨出部と気流が衝突することを緩和することができ、気流が案内羽根により案内される際に発生する騒音を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施形態に係る空気調和装置の室内機を説明するための斜視図であって、運転停止時における室内機の斜視図。
【図2】同実施形態に係る空気調和装置の室内機を説明するための斜視図であって、運転時における室内機の斜視図。
【図3】同実施形態に係る空気調和装置の室内機の内部構造を示す断面図であって、同室内機の内部構成を示す概略構成図。
【図4】同実施形態に係る風向調整装置を説明するための図。
【図5】(a)(b)同実施形態に係る風向調整装置を説明するための図であって、可動式の案内羽根を説明するための図。
【図6】同実施形態に係る案内羽根を示す側面図であって、気流の方向に垂直な方向から案内羽根を見た図。
【図7】同実施形態に係る案内羽根を示す斜視図。
【図8】同実施形態に係る案内羽根を示す図であって、気流の上流側から案内羽根を見た図。
【図9】同実施形態に係る案内羽根を示す平面図。
【図10】図9に示すS1−S1部分の断面を示す断面図。
【図11】図9に示すS2−S2部分の断面を示す断面図。
【図12】図9に示すS3−S3部分の断面を示す断面図。
【図13】図9に示すS4−S4部分の断面を示す断面図。
【図14】図9に示すS5−S5部分の断面を示す断面図。
【図15】本発明の実施形態に係る案内羽根の効果を説明するためのグラフ。
【図16】同実施形態に係る案内羽根の効果を説明するためのグラフ。
【図17】本発明の実施形態の変形例に係る案内羽根を示す側面図。
【図18】(a)(b)同変形例に係る可動式の案内羽根を説明するための図。
【図19】同変形例に係る案内羽根の断面図であって、気流の方向に沿った断面において切り欠き部を含む断面図。
【図20】同変形例に係る案内羽根の断面図であって、気流の方向に沿った断面において膨出部を含む断面図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の各実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1及び図2に示すように、本実施形態に係る空気調和装置の室内機1は、壁掛け型または床置き型の室内に設けられる空気調和機である。室内機1は、室内機1の筐体であるケーシング10と、ケーシング10の空気吸込口11を覆うように設けられる吸込側前面パネル21と、ケーシング10の空気吹出口12を覆うように設けられる吹出側前面パネル22とを備えている。
【0029】
本実施形態においては、室内機1は、送風機としての遠心ファン30(図2及び図3参照)を2つ備えており、図3中の一点鎖線で示す各遠心ファン30の回転中心に対応させて、2つの空気吸込口11がケーシング10に設けられている。また、各遠心ファン30の遠心方向の両側において、空気吸込口11と同じ方向に開口する2つの空気吹出口12がケーシング10に設けられており、空気吹出口12として両端空気吹出口12aと中央空気吹出口12bとが設けられている。従って、本実施形態の室内機1のケーシング10には、2つの空気吸込口11と3つの空気吹出口12とが設けられている。
【0030】
図2に示すように、室内機1は、図2中の矢印A1で示すように空気吸込口11から室内の空気を吸い込む。そして、室内機1は、吸い込んだ空気の温度をケーシング10内で調整し、温度が調整された空気である調和空気を、図2中の矢印A2で示すように空気吹出口12から室内へ吹き出す。
【0031】
空気吸込口11を覆うように設けられる吸込側前面パネル21は、図1に示すように、室内機1の運転停止時には空気吸込口11が露出しないように設けられる。そして、吸込側前面パネル21は、図2に示すように、室内機1の運転時には図示しない電動モータにより駆動されて、空気吸込口11が開口するように設けられる。
【0032】
また、吸込側前面パネル21には、空気吸込口11が開口するように吸込側前面パネル21を駆動するための板状の駆動部材21aが接続されている。駆動部材21aは上記の電動モータに接続されており、この駆動部材21aが図2中の矢印A3で示す方向に駆動することによって、吸込側前面パネル21が平行移動する構成となっている。また、本実施形態においては、板状の駆動部材21aは、ケーシング10外において空気を吸い込む空間と空気を吹き出す空間とを区切る隔壁として構成されている。
【0033】
吸込側前面パネル21と同様に、空気吹出口12を覆うように設けられる吹出側前面パネル22は、図1に示すように、室内機1の運転停止時には空気吹出口12が露出しないように設けられる。そして、吹出側前面パネル22は、図2に示すように、室内機1の運転時には図示しない電動モータにより駆動されて、空気吹出口12が開口するように設けられる。
【0034】
また、図3に示すように、室内機1は、ケーシング10内に、空気吸込口11から空気を吸い込んで空気吹出口12から空気を吹き出すための遠心ファン30と、遠心ファン30により送風される空気の温度を調整する熱交換器40と、過冷却熱交換器50と、空気吹出口12において設けられた風向調整装置60とを備えている。なお、図3は、ケーシング10を断面で示すことによって、室内機1の内部構成を示す図である。
【0035】
遠心ファン30は、羽根車(不図示)が回転することにより、その回転中心から遠心方向へ送風するターボファンである。遠心ファン30が、空気吸込口11から吸い込まれた空気を、遠心ファン30の遠心方向の両側へ送風することにより、空気吹出口12から空気が吹き出される。
【0036】
熱交換器40は、室内機1の暖房運転時に凝縮器として作用し、室内機1の冷房運転時に蒸発器として作用する機器であり、各遠心ファン30の遠心方向の両側に設けられている。熱交換器40を、遠心ファン30によって送風された空気が通過することにより、その空気の温度が調整される。熱交換器40を通過した空気である調和空気は、空気吹出口12に導かれる。
【0037】
過冷却熱交換器50は、室内機1の暖房運転時において熱交換器40で凝縮液化した液冷媒を過冷却するための熱交換器であって、熱交換器40に付設されている。なお、この過冷却熱交換器50は、必ずしも必要ではなく、省略して構成してもよい。
【0038】
図4及び図5に示すように、風向調整装置60は、駆動源である電動モータ61と、電動モータ61に接続された回転板62と、回転板62に接続されて鉛直方向に延びる連結板63と、連結板63に接続されたフラップ70とにより構成されている。
【0039】
回転板62にはピン62aが設けられており、連結板63にはピン62aと係合する係合溝63aが設けられている。従って、電動モータ61を用いてピン62aが設けられた回転板62を回転させることにより、連結板63が鉛直方向に変位する。また、鉛直方向に延びる連結板63には、複数のフラップ70と係合するために鉛直方向において所定間隔をあけて係合溝63bが形成されている。
【0040】
略平板状のフラップ70は、室内機1の空気吹出口12に設けられる可動式の案内羽根である。各フラップ70は、同フラップ70を駆動させるための回動部80が設けられており、フラップ70と回動部80とは一体的に形成されている。
【0041】
回動部80には、略平板状のフラップ70から突出して設けられている。回動部80の先端部81には、連結板63の係合溝63bと係合する係合ピン82が設けられている。そして、回動部80には、貫通孔83が形成されており、この貫通孔83には図示しない軸部材が挿通される。従って、連結板63が鉛直方向に変位することに伴い、回動部80の先端部81が鉛直方向に変位して、貫通孔83内の軸部材が支点となって、回動部80が回動する構成となっている。
【0042】
可動式のフラップ70は、回動部80が回動することによって、水平方向に対して、所望の取り付け角度で配設されるように構成されており、フラップ70により所望の方向に向けて気流を案内することができる。本実施形態においては、フラップ70は、図5(a)に示すように水平方向に向けて、または図5(b)に示すように斜め下方に向けて気流を案内するように配設される。
【0043】
次にフラップ70の具体的構成について説明する。
図6に示すように、フラップ70は、空気吹出口12での空気の流れる方向(即ち、気流の方向)において、気流の上流側に設けられる端部である前縁側端部70aと、気流の下流側に設けられる端部である後縁側端部70bとを備えている。そして、所定の厚みをもって形成されたフラップ70は、上方に向けて設けられる上面71と、下方に向けて設けられる下面72とを有している。上下(即ち、鉛直方向)に向けて設けられた上面71及び下面72は、鉛直方向に直交する水平方向に延びている。
【0044】
そして、フラップ70の前縁側端部70aには、気流の方向に沿って延びる表面である上面71及び下面72のうち、上面71を膨らませて形成された膨出部73が設けられている。このような膨出部73により、図5(b)に示すようにフラップ70が斜め下方に向けて気流を案内するように配設された場合には、上面71から気流が剥離することを抑制することができる。なお、本実施形態においては、下面72は膨らんで形成されておらず、平面として形成されており、上面71の膨出部73が設けられていない部分は、下面72と同様に平面として形成されている。
【0045】
ここで、本実施形態においては、図7及び図8に示すように、膨出部73が設けられた前縁側端部70aに切り欠き部74が形成されている。そして、図10及び図11に示すように、切り欠き部74における前縁側端部70aの翼厚T1が、膨出部73における前縁側端部70aの翼厚T2に比べて小さくなっていることに特徴がある。以下、フラップ70の特徴に係る構成を詳しく説明する。
【0046】
本実施形態においては、前縁側端部70aには、気流の方向に垂直な方向であるフラップ70の長手方向において、所定間隔をあけて切り欠き74aが形成されることにより、所定間隔をあけて複数の切り欠き部74が設けられている。従って、図9に示すように、フラップ70は、切り欠き部74に隣り合う一部として、切り欠き74aが形成されていない基本形状部75が設けられている。
【0047】
フラップ70を上方から見た図である図9に示すように、基本形状部75における前縁側端部70aの前縁70Aと、後縁側端部70bの後縁70Bとは、直線状に形成されている。これに対して、切り欠き部74における前縁側端部70aの前縁70Aは、V字状に形成されており、V字状の切り欠き74aが上方に向かうにつれて徐々に大きくなるように切り欠き部74が形成されている。即ち、切り欠き74aは、下面72側に比べて上面71側が大きい。なお、切り欠き部74において、フラップ70を上方及び下方のいずれから見ても前縁70AがV字状となるように、上面71及び下面72の前縁側端部70aが切り欠かれている。
【0048】
図9のS1−S1部分の断面図である図10に示すように、切り欠き部74における翼厚T1は、前縁側端部70aから気流の下流側へ向かうにつれて徐々に大きくなるように変化している。これに対して、図9のS2−S2部分の断面図である図11に示すように、基本形状部75における翼厚T2、即ち切り欠き74aが形成されていない膨出部73における翼厚T2は、膨出部73における上面71に沿って変化している。即ち、膨出部73における上面71は膨らんでいるが、切り欠き部74における上面71は、フラップ70が気流の上流側に向かうにつれて徐々に薄くなるように窪んでいる。なお、切り欠き部74に形成された切り欠き74aよりも気流の下流側においては、膨出部73と同様に上面71が膨らんで形成されている。
【0049】
図10及び図11に示すように、切り欠き部74における翼厚T1は膨出部73における翼厚T2に比べて薄くなっている。なお、図10及び図11は、気流の方向に沿った断面を示す断面図であって、図10中の矢印で示す翼厚T1と、図11中の矢印で示す翼厚T2は、図14に示すように気流の方向に垂直な同一の断面における翼厚である。
【0050】
また、前縁70AがV字状に形成された切り欠き部74は、気流の下流側へ最も深く切り欠かれた最深部76(図9参照)を有している。そして、図12乃至図14の各図に示すように、切り欠き部74における翼厚T1が、最深部76に向かうにつれて徐々に小さくなっている。なお、図12は、図9のS3−S3部分の断面図であり、図13は、図9のS4−S4部分の断面図である。また、図14は、図9のS5−S5部分の断面図であり、図12乃至図14の各図は、気流の方向に垂直な断面を示す断面図である。なお、切り欠き部74において下面72は切り欠かれているため、図12に示すように、気流の方向に垂直な断面において下面72は必ずしも連続しない。
【0051】
以上のように構成されたフラップ70が、図5(a)に示すように水平方向に向けて気流を案内するように配設された場合には、図10及び図12における矢印Fで示すように気流の一部が、切り欠き部74に流れてフラップ70の表面である上面71に沿った流れの気流となる。また、切り欠き部74付近の膨出部73に流れようとする気流を、切り欠き部74に引き寄せることができる。その結果、膨出部73と気流が衝突することを緩和して、図15及び図16に示すように、送風音を小さくすることができる。
【0052】
ここで、図15は、案内羽根が気流を案内する際に発生する送風音について、周波数解析を行った結果を示す図であり、周波数特性グラフである。図15のグラフにおいて、本実施形態のフラップ70により発生した送風音の周波数解析結果が実線で示され、切り欠き74aが形成されずに切り欠き部74が設けられていないフラップ(不図示)により発生した送風音の周波数解析結果が一点鎖線で示されている。図15に示すように、切り欠き部74が設けられている場合は、送風音が発生する周波数帯域の略全体に亘って送風音は小さくなり、また、ピーク周波数において送風音が小さくなることが判る。
【0053】
また、図16は、案内羽根が気流を案内する際に発生する送風音について、風量との関係を示す風量−音圧特性グラフである。図16のグラフにおいて、本実施形態のフラップ70により発生する送風音の音圧SPL(A)が実線で示され、切り欠き74aが形成されずに切り欠き部74が設けられていないフラップにより発生する送風音の音圧SPL(A)が一点鎖線で示されている。図16に示すように、切り欠き部74が設けられている場合は、幅広い風量域において送風音が小さくなり、大きな静音化を達成できることが判る。
【0054】
また、前縁側端部70aの切り欠き部74に流れる気流により縦渦(不図示)の発生を図ることができる。このような縦渦を発生させることにより、乱流混合が促進されて気流の剥離の抑制を図ることができる。
【0055】
本実施形態のフラップ70によれば、以下の効果を奏することができる。
(1)フラップ70は、気流の上流側に設けられる端部である前縁側端部70aと、気流の下流側に設けられる端部である後縁側端部70bとを備え、前縁側端部70aに、気流の方向に沿って延びる上面71を膨らませて形成された膨出部73が設けられて、室内機1の空気吹出口12に設けられる。そして、膨出部73が設けられた前縁側端部70aには切り欠き部74が形成されて、この切り欠き部74における前縁側端部70aの翼厚T1が、膨出部73における前縁側端部70aの翼厚T2に比べて小さくなっている。このため、気流の一部が、切り欠き部74に流れてフラップ70の表面である上面71に沿った流れの気流となる。従って、膨出部73における翼厚T2に比べて小さい翼厚T1を有する切り欠き部74に気流が流入するため、膨出部73と気流が衝突することを緩和することができ、気流がフラップ70により案内される際に発生する騒音を低減することができる。
【0056】
(2)図10で示す気流の方向に沿った断面において、切り欠き部74における翼厚T1が、前縁側端部70aから気流の下流側へ向かうにつれて徐々に大きくなっている。このため、切り欠き部74において前縁側端部70aから気流の下流側へ流れる気流を、なだらかな気流とすることができる。
【0057】
(3)図9で示すように、切り欠き部74における前縁側端部70aの前縁70Aは、V字状である。このため、切り欠き部74が、気流の下流側へ最も深く切り欠かれた最深部76を有するように構成することができ、この最深部76へ、気流を容易に導くことが可能となる。
【0058】
(4)前縁70AがV字状に形成された切り欠き部74は、気流の下流側へ最も深く切り欠かれた最深部76を有しており、図12乃至図14で示す気流の方向に垂直な断面において、切り欠き部74における翼厚T1が、最深部76に向かうにつれて徐々に小さくなっている。このため、切り欠き部74に流れる気流を、切り欠き部74の最深部76へ容易に導くことができ、さらに、最深部76へ導かれる気流を、なだらかな気流とすることができる。
【0059】
(5)フラップ70は、気流の方向に沿って延びる表面として、上方に向けて設けられる上面71及び下方に向けて設けられる下面72を有し、膨出部73は、上面71を膨らませて形成されている。このため、上方に向けて膨らんだ膨出部73により、フラップ70に流れる気流が、フラップ70の上面71から剥離することを抑制することができる。従って、気流が下方に向けて流れるようにフラップ70が配設されたときに、気流がフラップ70の上面71から剥離することを抑制して、下方へ流れる気流を遠くまで到達させることができる。その結果、床への気流の到達性を向上させることができる。
【0060】
(6)切り欠き部74において、上面71が窪んでいるため、切り欠き部74における前縁側端部70aの翼厚T1を、膨出部73における前縁側端部70aの翼厚T2に比べて小さくする場合に、フラップ70の下面72を窪ませることが不要となる。従って、フラップ70の下面72の面積を確保することができ、フラップ70の下面72によって気流を下方へ容易に案内することができる。
【0061】
(7)切り欠き部74は、所定間隔を空けて前縁側端部70aに複数形成されているため、複数の前縁側端部70aの間に形成される膨出部73である基本形状部75により、気流がフラップ70の表面から剥離することを抑制することができる。そして、複数の切り欠き部74付近において、膨出部73と気流が衝突することを緩和することができ、気流がフラップ70により案内される際に発生する騒音をより低減することができる。
【0062】
また、本実施形態の空気調和装置の室内機1は、上記(1)〜(7)の効果を得ることがフラップ70を備えている。このため、上記(1)〜(7)と同様の効果を得ることができる。
【0063】
なお、本発明は、上記各実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々の設計変更をすることが可能であり、それらを本発明の範囲から除外するものではない。例えば、上記実施形態を以下のように変更してもよい。
【0064】
・上記実施形態においては、フラップ70に回動部80が一体的に形成されていたが、電動モータ等により取り付け角を変化させるようにフラップ70を駆動することができるのであれば、フラップ70に回動部80が一体的に形成されていなくてもよい。
【0065】
・上記実施形態においては、気流の方向に沿って延びる表面は、上方に向けて設けられる上面71と下方に向けて設けられる下面72であったが、気流の方向に沿って延びる表面は、上下に向けて設けられるものに限られず、例えば、鉛直方向に延ばして水平方向に向けて設けられてもよい。即ち、案内羽根が、気流の方向に沿って延びる表面として、互いに反対の方向に向けて設けられる第1の表面及び第2の表面とを有し、第1の表面及び第2の表面が水平方向に向けて設けられていてもよい。このように構成されていても、膨出部が、第1の表面及び第2の表面のいずれか一方を膨らませて形成されていれば、膨出部により、案内羽根に流れる気流が、案内羽根の第1の表面及び第2の表面のうちいずれか一方から剥離することを抑制することができる。また、このような案内羽根の前縁側端部に切り欠き部が設けられている場合に、その切り欠き部において第1の表面及び第2の表面のうちいずれか一方が窪んでいれば、切り欠き部における前縁側端部の翼厚を、膨出部における前縁側端部の翼厚に比べて小さくする場合に、案内羽根の他方の表面を窪ませることが不要となる。従って、案内羽根の他方の表面の面積を確保することができ、案内羽根の他方の表面によって気流を他方の表面が向く方向へ容易に案内することができる。
【0066】
・上記実施形態においては、気流の方向に沿って延びる上面71及び下面72のうち上面71を膨らませて膨出部73が形成されていたが、さらに、下面72を膨らませて膨出部73を形成してもよい。また、このようにして案内羽根の両面に膨出部73が形成される場合においても、上述のごとく、気流の方向に沿って延びるとともに膨らんで形成された表面は、上下に向けて設けられるものに限られず、例えば、鉛直方向に延ばして水平方向に向けて設けられてもよい。
【0067】
例えば、図17に示すように、フラップ70が、気流の方向に沿って形成された表面として、矢印D1で示す方向に向けて設けられる第1の表面91と、矢印D2で示す方向に向けて設けられる第2の表面92とを有し、膨出部73として、第1の表面91を膨らませて形成された第1の膨出部93aと、第2の表面92を膨らませて形成された第2の膨出部93bとが設けられるように構成されていてもよい。
【0068】
このように第1の膨出部93a及び第2の膨出部93bが設けられていれば、図18(a)に示すように、前縁側端部70aに比べて後縁側端部70bが、矢印D2で示す方向に設けられた場合には、第1の表面91が膨らんだ第1の膨出部93aにより、矢印D3で示す方向に流れる気流が、フラップ70の第1の表面91から剥離することを抑制することができる。また、図18(b)に示すように、前縁側端部70aに比べて後縁側端部70bが、矢印D1で示す方向に設けられた場合には、第2の表面92が膨らんだ第2の膨出部93bにより、矢印D3で示す方向に流れる気流が、フラップ70の第2の表面92から剥離することを抑制することができる。従って、気流が第1の表面91及び第2の表面92の少なくとも一方の表面から剥離することを抑制して、可動式のフラップ70により気流の向きが変化する場合であっても、所望の方向へ流れる気流を遠くまで到達させることができる。具体的には、例えば、第1の表面91が、上方に向けて設けられる上面であって、第2の表面92が、下方に向けて設けられる下面であるときに、フラップ70が気流を下方へ案内するように設けられた場合には、気流が上面である第1の表面91から剥離することを抑制して、下方へ流れる気流を遠くまで到達させることができる。また、フラップ70が気流を上方へ案内するように設けられた場合には、気流が下面である第2の表面92から剥離することを抑制して、上方へ流れる気流を遠くまで到達させることができる。また、フラップ70が水平方向において気流の向きを変化させる場合には、所望の水平方向へ流れる気流を遠くまで到達させることができる。
【0069】
・そして、互いに反対の方向に向けて設けられる表面として第1の表面91及び第2の表面92を有している場合において、図19に示すように、前縁側端部70aに切り欠き部74が形成されていてもよい。このような構成であっても、図19及び図20に示すように、切り欠き部74における前縁側端部70aの翼厚T1が、膨出部73における前縁側端部70aの翼厚T2に比べて小さくなっていれば、上記(1)の効果を得ることができる。
【0070】
・また、互いに反対の方向に向けて設けられる表面として第1の表面91及び第2の表面92を有している場合に、図19に示すように、切り欠き部74において、第1の表面91と第2の表面92とが窪むように構成してもよい。切り欠き部74において、互いに反対の方向に向けて設けられる第1の表面91と第2の表面92とが窪んでいれば、互いに反対の方向に向けて設けられる表面を膨らませた第1の膨出部93aと第2の膨出部93bとが設けられている場合に、フラップ70の第1の表面91側の形状と、フラップ70の第2の表面92側の形状とを同じように構成して、切り欠き部74における前縁側端部70aの翼厚T1を、膨出部73における前縁側端部70aの翼厚T2に比べて小さくすることができる。
【符号の説明】
【0071】
1…室内機(空気調和機)、10…ケーシング、11…空気吸込口、12…空気吹出口、12a…両端空気吹出口、12b…中央空気吹出口、21…吸込側前面パネル、21a…駆動部材、22…吹出側前面パネル、30…遠心ファン、40…熱交換器、50…過冷却熱交換器、60…風向調整装置、61…電動モータ、62…回転板、62a…ピン、63…連結板、63a,63b…係合溝、70…フラップ(案内羽根)、70a…前縁側端部、70A…前縁、70b…後縁側端部、70B…後縁、71…上面(表面)、72…下面(表面)、73…膨出部、74…切り欠き部、74a…切り欠き、75…基本形状部、76…最深部、80…回動部、81…先端部、82…係合ピン、83…貫通孔、91…第1の表面、92…第2の表面、93a…第1の膨出部、93b…第2の膨出部。
【技術分野】
【0001】
本願発明は、空気調和機の空気吹出口に設けられる可動式の案内羽根、及びこれを備えた空気調和機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
空気調和機である空気調和装置の室内機は、ケーシング内に熱交換器と送風機とを有しており、熱交換器を通過して温度が調整された空気(即ち、調和空気)が、送風機により室内機の外部である室内に送風される構成となっている。そして、一般的に、空気調和装置の室内機は、調和空気を室内の所望の方向へ向けて送風するために、空気吹出口に可動式の案内羽根を備えている。
【0003】
可動式の案内羽根は、電動モータ等により駆動されることによって、その取り付け角が変化するため、送風機から送風される調和空気の気流を所望の方向へ案内することができる。具体的には、可動式の案内羽根により、例えば、気流を水平方向へ案内することや、気流を下方へ案内することができる。
【0004】
また、案内羽根に流れる気流が剥離することを抑制するために、案内羽根の前縁側端部に、案内羽根の表面を膨らませて形成された膨出部を設けることが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1には、ベーンの上流側が膨らみ肉厚となることにより、流れの剥離を生じにくくすることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−96037号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、可動式の案内羽根は、案内羽根の取り付け角が変化することによって、一定の方向だけでなく、所望の方向に向けて気流を案内することができるが、上述の膨出部により騒音が発生するという問題があった。具体的には、例えば、下方へ気流を案内する場合には案内羽根の表面である上面を膨らませて膨出部が形成されるが、水平方向へ気流を案内するように案内羽根の取り付け角が変化すると、上面を膨らませて形成された膨出部が空気通路をふさぐ形になるため、膨出部に気流が衝突しやすく、騒音が発生するという問題があった。
【0007】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、気流が案内羽根により案内される際に発生する騒音を低減することができる案内羽根、及びこれを備えた空気調和機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、気流の上流側に設けられる端部である前縁側端部と、気流の下流側に設けられる端部である後縁側端部とを備え、前縁側端部に、気流の方向に沿って延びる表面を膨らませて形成された膨出部が設けられて、空気調和装置の空気吹出口に設けられる可動式の案内羽根であって、膨出部が設けられた前縁側端部には切り欠き部が形成されて、この切り欠き部における前縁側端部の翼厚が、膨出部における前縁側端部の翼厚に比べて小さくなっていることを特徴とする。
【0009】
同構成によれば、膨出部が設けられた前縁側端部には切り欠き部が形成されて、この切り欠き部における前縁側端部の翼厚が、膨出部における前縁側端部の翼厚に比べて小さくなっている。このため、気流の一部が、切り欠き部に流れて案内羽根の表面に沿った流れの気流となる。従って、膨出部における翼厚に比べて小さい翼厚を有する切り欠き部に気流が流入するため、膨出部と気流が衝突することを緩和することができ、気流が案内羽根により案内される際に発生する騒音を低減することができる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の案内羽根であって、気流の方向に沿った断面において、切り欠き部における翼厚が、前縁側端部から気流の下流側へ向かうにつれて徐々に大きくなっていることを特徴とする。
【0011】
同構成によれば、気流の方向に沿った断面において、切り欠き部における翼厚が、前縁側端部から気流の下流側へ向かうにつれて徐々に大きくなっているため、切り欠き部において前縁側端部から気流の下流側へ流れる気流を、なだらかな気流とすることができる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の案内羽根であって、切り欠き部における前縁側端部の前縁は、V字状であることを特徴とする。
同構成によれば、切り欠き部における前縁側端部の前縁は、V字状であるため、切り欠き部が、気流の下流側へ最も深く切り欠かれた最深部を有するように構成することができ、この最深部へ、気流を容易に導くことが可能となる。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の案内羽根であって、前縁がV字状に形成された切り欠き部は、気流の下流側へ最も深く切り欠かれた最深部を有しており、気流の方向に垂直な断面において、切り欠き部における翼厚が、最深部に向かうにつれて徐々に小さくなっていることを特徴とする。
【0014】
同構成によれば、気流の方向に垂直な断面において、切り欠き部における翼厚が、V字状の切り欠き部が有する最深部に向かうにつれて徐々に小さくなっているため、切り欠き部に流れる気流を、切り欠き部の最深部へ容易に導くことができ、さらに、最深部へ導かれる気流を、なだらかな気流とすることができる。
【0015】
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の案内羽根であって、表面として、上方に向けて設けられる上面及び下方に向けて設けられる下面を有し、膨出部は、前記上面を膨らませて形成されていることを特徴とする。
【0016】
同構成によれば、膨出部は、案内羽根の上面を膨らませて形成されている。このため、上方に向けて膨らんだ膨出部により、案内羽根に流れる気流が、案内羽根の上面から剥離することを抑制することができる。従って、気流が下方に向けて流れるように案内羽根が配設されたときに、気流が案内羽根の上面から剥離することを抑制して、下方へ流れる気流を遠くまで到達させることができる。
【0017】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の案内羽根であって、切り欠き部において、上面が窪んでいることを特徴とする。
同構成によれば、切り欠き部において、案内羽根の上面が窪んでいるため、切り欠き部における前縁側端部の翼厚を、膨出部における前縁側端部の翼厚に比べて小さくする場合に、案内羽根の下面を窪ませることが不要となる。従って、案内羽根の下面の面積を確保することができ、案内羽根の下面によって気流を下方へ容易に案内することができる。
【0018】
請求項7に記載の発明は、請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の案内羽根であって、表面として、互いに反対の方向に向けて設けられる第1の表面及び第2の表面を有し、膨出部は、第1の表面及び第2の表面のうちいずれか一方を膨らませて形成されており、切り欠き部において、第1の表面及び第2の表面のうちいずれか一方が窪んでいることを特徴とする。
【0019】
同構成によれば、膨出部は、第1の表面及び第2の表面のうちいずれか一方を膨らませて形成されているため、膨出部により、案内羽根に流れる気流が、案内羽根の第1の表面及び第2の表面のうちいずれか一方から剥離することを抑制することができる。そして、切り欠き部において、第1の表面及び第2の表面のうちいずれか一方の表面が窪んでいるため、切り欠き部における前縁側端部の翼厚を、膨出部における前縁側端部の翼厚に比べて小さくする場合に、案内羽根の他方の表面を窪ませることが不要となる。従って、案内羽根の他方の表面の面積を確保することができ、案内羽根の他方の表面によって気流を他方の表面が向く方向へ容易に案内することができる。
【0020】
請求項8に記載の発明は、請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の案内羽根であって、表面として、互いに反対の方向に向けて設けられる第1の表面及び第2の表面を有し、膨出部として、第1の表面を膨らませて形成された第1の膨出部と、第2の表面を膨らませて形成された第2の膨出部とが設けられていることを特徴とする。
【0021】
同構成によれば、膨出部として、第1の表面を膨らませて形成された第1の膨出部と、第2の表面を膨らませて形成された第2の膨出部とが設けられている。このため、第1の表面(例えば、上面)が膨らんだ第1の膨出部により、案内羽根に流れる気流が、案内羽根の第1の表面から剥離することを抑制することができる。また、第2の表面(例えば、下面)が膨らんだ第2の膨出部により、案内羽根に流れる気流が、案内羽根の第2の表面から剥離することを抑制することができる。従って、気流が第1の表面及び第2の表面の少なくとも一方の表面から剥離することを抑制して、可動式の案内羽根により気流の向きが変化する場合であっても、所望の方向へ流れる気流を遠くまで到達させることができる。
【0022】
請求項9に記載の発明は、請求項8に記載の案内羽根であって、切り欠き部において、第1の表面と第2の表面とが窪んでいることを特徴とする。
同構成によれば、切り欠き部において、互いに反対の方向に向けて設けられる第1の表面と第2の表面とが窪んでいる。このため、互いに反対の方向に向けて設けられる表面を膨らませた第1の膨出部と第2の膨出部とが設けられている場合に、案内羽根の第1の表面側の形状と、案内羽根の第2の表面側の形状とを同じように構成して、切り欠き部における前縁側端部の翼厚を、膨出部における前縁側端部の翼厚に比べて小さくすることができる。
【0023】
請求項10に記載の発明は、請求項1乃至請求項9のいずれか一項に記載の案内羽根であって、切り欠き部は、所定間隔を空けて前縁側端部に複数形成されていることを特徴とする。
【0024】
同構成によれば、切り欠き部は、所定間隔を空けて前縁側端部に複数形成されているため、複数の前縁側端部の間に形成される膨出部により、気流が案内羽根の表面から剥離することを抑制することができる。そして、複数の切り欠き部付近において、膨出部と気流が衝突することを緩和することができ、気流が案内羽根により案内される際に発生する騒音をより低減することができる。
【0025】
請求項11に記載の発明は、請求項1乃至請求項10のいずれか一項に記載の案内羽根を備えることを特徴とする。
同構成によれば、空気調和機は、請求項1乃至請求項10のいずれか一項に記載の案内羽根を備えているため、請求項1乃至請求項10のいずれか一項に記載の案内羽根と同様の効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、膨出部と気流が衝突することを緩和することができ、気流が案内羽根により案内される際に発生する騒音を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施形態に係る空気調和装置の室内機を説明するための斜視図であって、運転停止時における室内機の斜視図。
【図2】同実施形態に係る空気調和装置の室内機を説明するための斜視図であって、運転時における室内機の斜視図。
【図3】同実施形態に係る空気調和装置の室内機の内部構造を示す断面図であって、同室内機の内部構成を示す概略構成図。
【図4】同実施形態に係る風向調整装置を説明するための図。
【図5】(a)(b)同実施形態に係る風向調整装置を説明するための図であって、可動式の案内羽根を説明するための図。
【図6】同実施形態に係る案内羽根を示す側面図であって、気流の方向に垂直な方向から案内羽根を見た図。
【図7】同実施形態に係る案内羽根を示す斜視図。
【図8】同実施形態に係る案内羽根を示す図であって、気流の上流側から案内羽根を見た図。
【図9】同実施形態に係る案内羽根を示す平面図。
【図10】図9に示すS1−S1部分の断面を示す断面図。
【図11】図9に示すS2−S2部分の断面を示す断面図。
【図12】図9に示すS3−S3部分の断面を示す断面図。
【図13】図9に示すS4−S4部分の断面を示す断面図。
【図14】図9に示すS5−S5部分の断面を示す断面図。
【図15】本発明の実施形態に係る案内羽根の効果を説明するためのグラフ。
【図16】同実施形態に係る案内羽根の効果を説明するためのグラフ。
【図17】本発明の実施形態の変形例に係る案内羽根を示す側面図。
【図18】(a)(b)同変形例に係る可動式の案内羽根を説明するための図。
【図19】同変形例に係る案内羽根の断面図であって、気流の方向に沿った断面において切り欠き部を含む断面図。
【図20】同変形例に係る案内羽根の断面図であって、気流の方向に沿った断面において膨出部を含む断面図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の各実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1及び図2に示すように、本実施形態に係る空気調和装置の室内機1は、壁掛け型または床置き型の室内に設けられる空気調和機である。室内機1は、室内機1の筐体であるケーシング10と、ケーシング10の空気吸込口11を覆うように設けられる吸込側前面パネル21と、ケーシング10の空気吹出口12を覆うように設けられる吹出側前面パネル22とを備えている。
【0029】
本実施形態においては、室内機1は、送風機としての遠心ファン30(図2及び図3参照)を2つ備えており、図3中の一点鎖線で示す各遠心ファン30の回転中心に対応させて、2つの空気吸込口11がケーシング10に設けられている。また、各遠心ファン30の遠心方向の両側において、空気吸込口11と同じ方向に開口する2つの空気吹出口12がケーシング10に設けられており、空気吹出口12として両端空気吹出口12aと中央空気吹出口12bとが設けられている。従って、本実施形態の室内機1のケーシング10には、2つの空気吸込口11と3つの空気吹出口12とが設けられている。
【0030】
図2に示すように、室内機1は、図2中の矢印A1で示すように空気吸込口11から室内の空気を吸い込む。そして、室内機1は、吸い込んだ空気の温度をケーシング10内で調整し、温度が調整された空気である調和空気を、図2中の矢印A2で示すように空気吹出口12から室内へ吹き出す。
【0031】
空気吸込口11を覆うように設けられる吸込側前面パネル21は、図1に示すように、室内機1の運転停止時には空気吸込口11が露出しないように設けられる。そして、吸込側前面パネル21は、図2に示すように、室内機1の運転時には図示しない電動モータにより駆動されて、空気吸込口11が開口するように設けられる。
【0032】
また、吸込側前面パネル21には、空気吸込口11が開口するように吸込側前面パネル21を駆動するための板状の駆動部材21aが接続されている。駆動部材21aは上記の電動モータに接続されており、この駆動部材21aが図2中の矢印A3で示す方向に駆動することによって、吸込側前面パネル21が平行移動する構成となっている。また、本実施形態においては、板状の駆動部材21aは、ケーシング10外において空気を吸い込む空間と空気を吹き出す空間とを区切る隔壁として構成されている。
【0033】
吸込側前面パネル21と同様に、空気吹出口12を覆うように設けられる吹出側前面パネル22は、図1に示すように、室内機1の運転停止時には空気吹出口12が露出しないように設けられる。そして、吹出側前面パネル22は、図2に示すように、室内機1の運転時には図示しない電動モータにより駆動されて、空気吹出口12が開口するように設けられる。
【0034】
また、図3に示すように、室内機1は、ケーシング10内に、空気吸込口11から空気を吸い込んで空気吹出口12から空気を吹き出すための遠心ファン30と、遠心ファン30により送風される空気の温度を調整する熱交換器40と、過冷却熱交換器50と、空気吹出口12において設けられた風向調整装置60とを備えている。なお、図3は、ケーシング10を断面で示すことによって、室内機1の内部構成を示す図である。
【0035】
遠心ファン30は、羽根車(不図示)が回転することにより、その回転中心から遠心方向へ送風するターボファンである。遠心ファン30が、空気吸込口11から吸い込まれた空気を、遠心ファン30の遠心方向の両側へ送風することにより、空気吹出口12から空気が吹き出される。
【0036】
熱交換器40は、室内機1の暖房運転時に凝縮器として作用し、室内機1の冷房運転時に蒸発器として作用する機器であり、各遠心ファン30の遠心方向の両側に設けられている。熱交換器40を、遠心ファン30によって送風された空気が通過することにより、その空気の温度が調整される。熱交換器40を通過した空気である調和空気は、空気吹出口12に導かれる。
【0037】
過冷却熱交換器50は、室内機1の暖房運転時において熱交換器40で凝縮液化した液冷媒を過冷却するための熱交換器であって、熱交換器40に付設されている。なお、この過冷却熱交換器50は、必ずしも必要ではなく、省略して構成してもよい。
【0038】
図4及び図5に示すように、風向調整装置60は、駆動源である電動モータ61と、電動モータ61に接続された回転板62と、回転板62に接続されて鉛直方向に延びる連結板63と、連結板63に接続されたフラップ70とにより構成されている。
【0039】
回転板62にはピン62aが設けられており、連結板63にはピン62aと係合する係合溝63aが設けられている。従って、電動モータ61を用いてピン62aが設けられた回転板62を回転させることにより、連結板63が鉛直方向に変位する。また、鉛直方向に延びる連結板63には、複数のフラップ70と係合するために鉛直方向において所定間隔をあけて係合溝63bが形成されている。
【0040】
略平板状のフラップ70は、室内機1の空気吹出口12に設けられる可動式の案内羽根である。各フラップ70は、同フラップ70を駆動させるための回動部80が設けられており、フラップ70と回動部80とは一体的に形成されている。
【0041】
回動部80には、略平板状のフラップ70から突出して設けられている。回動部80の先端部81には、連結板63の係合溝63bと係合する係合ピン82が設けられている。そして、回動部80には、貫通孔83が形成されており、この貫通孔83には図示しない軸部材が挿通される。従って、連結板63が鉛直方向に変位することに伴い、回動部80の先端部81が鉛直方向に変位して、貫通孔83内の軸部材が支点となって、回動部80が回動する構成となっている。
【0042】
可動式のフラップ70は、回動部80が回動することによって、水平方向に対して、所望の取り付け角度で配設されるように構成されており、フラップ70により所望の方向に向けて気流を案内することができる。本実施形態においては、フラップ70は、図5(a)に示すように水平方向に向けて、または図5(b)に示すように斜め下方に向けて気流を案内するように配設される。
【0043】
次にフラップ70の具体的構成について説明する。
図6に示すように、フラップ70は、空気吹出口12での空気の流れる方向(即ち、気流の方向)において、気流の上流側に設けられる端部である前縁側端部70aと、気流の下流側に設けられる端部である後縁側端部70bとを備えている。そして、所定の厚みをもって形成されたフラップ70は、上方に向けて設けられる上面71と、下方に向けて設けられる下面72とを有している。上下(即ち、鉛直方向)に向けて設けられた上面71及び下面72は、鉛直方向に直交する水平方向に延びている。
【0044】
そして、フラップ70の前縁側端部70aには、気流の方向に沿って延びる表面である上面71及び下面72のうち、上面71を膨らませて形成された膨出部73が設けられている。このような膨出部73により、図5(b)に示すようにフラップ70が斜め下方に向けて気流を案内するように配設された場合には、上面71から気流が剥離することを抑制することができる。なお、本実施形態においては、下面72は膨らんで形成されておらず、平面として形成されており、上面71の膨出部73が設けられていない部分は、下面72と同様に平面として形成されている。
【0045】
ここで、本実施形態においては、図7及び図8に示すように、膨出部73が設けられた前縁側端部70aに切り欠き部74が形成されている。そして、図10及び図11に示すように、切り欠き部74における前縁側端部70aの翼厚T1が、膨出部73における前縁側端部70aの翼厚T2に比べて小さくなっていることに特徴がある。以下、フラップ70の特徴に係る構成を詳しく説明する。
【0046】
本実施形態においては、前縁側端部70aには、気流の方向に垂直な方向であるフラップ70の長手方向において、所定間隔をあけて切り欠き74aが形成されることにより、所定間隔をあけて複数の切り欠き部74が設けられている。従って、図9に示すように、フラップ70は、切り欠き部74に隣り合う一部として、切り欠き74aが形成されていない基本形状部75が設けられている。
【0047】
フラップ70を上方から見た図である図9に示すように、基本形状部75における前縁側端部70aの前縁70Aと、後縁側端部70bの後縁70Bとは、直線状に形成されている。これに対して、切り欠き部74における前縁側端部70aの前縁70Aは、V字状に形成されており、V字状の切り欠き74aが上方に向かうにつれて徐々に大きくなるように切り欠き部74が形成されている。即ち、切り欠き74aは、下面72側に比べて上面71側が大きい。なお、切り欠き部74において、フラップ70を上方及び下方のいずれから見ても前縁70AがV字状となるように、上面71及び下面72の前縁側端部70aが切り欠かれている。
【0048】
図9のS1−S1部分の断面図である図10に示すように、切り欠き部74における翼厚T1は、前縁側端部70aから気流の下流側へ向かうにつれて徐々に大きくなるように変化している。これに対して、図9のS2−S2部分の断面図である図11に示すように、基本形状部75における翼厚T2、即ち切り欠き74aが形成されていない膨出部73における翼厚T2は、膨出部73における上面71に沿って変化している。即ち、膨出部73における上面71は膨らんでいるが、切り欠き部74における上面71は、フラップ70が気流の上流側に向かうにつれて徐々に薄くなるように窪んでいる。なお、切り欠き部74に形成された切り欠き74aよりも気流の下流側においては、膨出部73と同様に上面71が膨らんで形成されている。
【0049】
図10及び図11に示すように、切り欠き部74における翼厚T1は膨出部73における翼厚T2に比べて薄くなっている。なお、図10及び図11は、気流の方向に沿った断面を示す断面図であって、図10中の矢印で示す翼厚T1と、図11中の矢印で示す翼厚T2は、図14に示すように気流の方向に垂直な同一の断面における翼厚である。
【0050】
また、前縁70AがV字状に形成された切り欠き部74は、気流の下流側へ最も深く切り欠かれた最深部76(図9参照)を有している。そして、図12乃至図14の各図に示すように、切り欠き部74における翼厚T1が、最深部76に向かうにつれて徐々に小さくなっている。なお、図12は、図9のS3−S3部分の断面図であり、図13は、図9のS4−S4部分の断面図である。また、図14は、図9のS5−S5部分の断面図であり、図12乃至図14の各図は、気流の方向に垂直な断面を示す断面図である。なお、切り欠き部74において下面72は切り欠かれているため、図12に示すように、気流の方向に垂直な断面において下面72は必ずしも連続しない。
【0051】
以上のように構成されたフラップ70が、図5(a)に示すように水平方向に向けて気流を案内するように配設された場合には、図10及び図12における矢印Fで示すように気流の一部が、切り欠き部74に流れてフラップ70の表面である上面71に沿った流れの気流となる。また、切り欠き部74付近の膨出部73に流れようとする気流を、切り欠き部74に引き寄せることができる。その結果、膨出部73と気流が衝突することを緩和して、図15及び図16に示すように、送風音を小さくすることができる。
【0052】
ここで、図15は、案内羽根が気流を案内する際に発生する送風音について、周波数解析を行った結果を示す図であり、周波数特性グラフである。図15のグラフにおいて、本実施形態のフラップ70により発生した送風音の周波数解析結果が実線で示され、切り欠き74aが形成されずに切り欠き部74が設けられていないフラップ(不図示)により発生した送風音の周波数解析結果が一点鎖線で示されている。図15に示すように、切り欠き部74が設けられている場合は、送風音が発生する周波数帯域の略全体に亘って送風音は小さくなり、また、ピーク周波数において送風音が小さくなることが判る。
【0053】
また、図16は、案内羽根が気流を案内する際に発生する送風音について、風量との関係を示す風量−音圧特性グラフである。図16のグラフにおいて、本実施形態のフラップ70により発生する送風音の音圧SPL(A)が実線で示され、切り欠き74aが形成されずに切り欠き部74が設けられていないフラップにより発生する送風音の音圧SPL(A)が一点鎖線で示されている。図16に示すように、切り欠き部74が設けられている場合は、幅広い風量域において送風音が小さくなり、大きな静音化を達成できることが判る。
【0054】
また、前縁側端部70aの切り欠き部74に流れる気流により縦渦(不図示)の発生を図ることができる。このような縦渦を発生させることにより、乱流混合が促進されて気流の剥離の抑制を図ることができる。
【0055】
本実施形態のフラップ70によれば、以下の効果を奏することができる。
(1)フラップ70は、気流の上流側に設けられる端部である前縁側端部70aと、気流の下流側に設けられる端部である後縁側端部70bとを備え、前縁側端部70aに、気流の方向に沿って延びる上面71を膨らませて形成された膨出部73が設けられて、室内機1の空気吹出口12に設けられる。そして、膨出部73が設けられた前縁側端部70aには切り欠き部74が形成されて、この切り欠き部74における前縁側端部70aの翼厚T1が、膨出部73における前縁側端部70aの翼厚T2に比べて小さくなっている。このため、気流の一部が、切り欠き部74に流れてフラップ70の表面である上面71に沿った流れの気流となる。従って、膨出部73における翼厚T2に比べて小さい翼厚T1を有する切り欠き部74に気流が流入するため、膨出部73と気流が衝突することを緩和することができ、気流がフラップ70により案内される際に発生する騒音を低減することができる。
【0056】
(2)図10で示す気流の方向に沿った断面において、切り欠き部74における翼厚T1が、前縁側端部70aから気流の下流側へ向かうにつれて徐々に大きくなっている。このため、切り欠き部74において前縁側端部70aから気流の下流側へ流れる気流を、なだらかな気流とすることができる。
【0057】
(3)図9で示すように、切り欠き部74における前縁側端部70aの前縁70Aは、V字状である。このため、切り欠き部74が、気流の下流側へ最も深く切り欠かれた最深部76を有するように構成することができ、この最深部76へ、気流を容易に導くことが可能となる。
【0058】
(4)前縁70AがV字状に形成された切り欠き部74は、気流の下流側へ最も深く切り欠かれた最深部76を有しており、図12乃至図14で示す気流の方向に垂直な断面において、切り欠き部74における翼厚T1が、最深部76に向かうにつれて徐々に小さくなっている。このため、切り欠き部74に流れる気流を、切り欠き部74の最深部76へ容易に導くことができ、さらに、最深部76へ導かれる気流を、なだらかな気流とすることができる。
【0059】
(5)フラップ70は、気流の方向に沿って延びる表面として、上方に向けて設けられる上面71及び下方に向けて設けられる下面72を有し、膨出部73は、上面71を膨らませて形成されている。このため、上方に向けて膨らんだ膨出部73により、フラップ70に流れる気流が、フラップ70の上面71から剥離することを抑制することができる。従って、気流が下方に向けて流れるようにフラップ70が配設されたときに、気流がフラップ70の上面71から剥離することを抑制して、下方へ流れる気流を遠くまで到達させることができる。その結果、床への気流の到達性を向上させることができる。
【0060】
(6)切り欠き部74において、上面71が窪んでいるため、切り欠き部74における前縁側端部70aの翼厚T1を、膨出部73における前縁側端部70aの翼厚T2に比べて小さくする場合に、フラップ70の下面72を窪ませることが不要となる。従って、フラップ70の下面72の面積を確保することができ、フラップ70の下面72によって気流を下方へ容易に案内することができる。
【0061】
(7)切り欠き部74は、所定間隔を空けて前縁側端部70aに複数形成されているため、複数の前縁側端部70aの間に形成される膨出部73である基本形状部75により、気流がフラップ70の表面から剥離することを抑制することができる。そして、複数の切り欠き部74付近において、膨出部73と気流が衝突することを緩和することができ、気流がフラップ70により案内される際に発生する騒音をより低減することができる。
【0062】
また、本実施形態の空気調和装置の室内機1は、上記(1)〜(7)の効果を得ることがフラップ70を備えている。このため、上記(1)〜(7)と同様の効果を得ることができる。
【0063】
なお、本発明は、上記各実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々の設計変更をすることが可能であり、それらを本発明の範囲から除外するものではない。例えば、上記実施形態を以下のように変更してもよい。
【0064】
・上記実施形態においては、フラップ70に回動部80が一体的に形成されていたが、電動モータ等により取り付け角を変化させるようにフラップ70を駆動することができるのであれば、フラップ70に回動部80が一体的に形成されていなくてもよい。
【0065】
・上記実施形態においては、気流の方向に沿って延びる表面は、上方に向けて設けられる上面71と下方に向けて設けられる下面72であったが、気流の方向に沿って延びる表面は、上下に向けて設けられるものに限られず、例えば、鉛直方向に延ばして水平方向に向けて設けられてもよい。即ち、案内羽根が、気流の方向に沿って延びる表面として、互いに反対の方向に向けて設けられる第1の表面及び第2の表面とを有し、第1の表面及び第2の表面が水平方向に向けて設けられていてもよい。このように構成されていても、膨出部が、第1の表面及び第2の表面のいずれか一方を膨らませて形成されていれば、膨出部により、案内羽根に流れる気流が、案内羽根の第1の表面及び第2の表面のうちいずれか一方から剥離することを抑制することができる。また、このような案内羽根の前縁側端部に切り欠き部が設けられている場合に、その切り欠き部において第1の表面及び第2の表面のうちいずれか一方が窪んでいれば、切り欠き部における前縁側端部の翼厚を、膨出部における前縁側端部の翼厚に比べて小さくする場合に、案内羽根の他方の表面を窪ませることが不要となる。従って、案内羽根の他方の表面の面積を確保することができ、案内羽根の他方の表面によって気流を他方の表面が向く方向へ容易に案内することができる。
【0066】
・上記実施形態においては、気流の方向に沿って延びる上面71及び下面72のうち上面71を膨らませて膨出部73が形成されていたが、さらに、下面72を膨らませて膨出部73を形成してもよい。また、このようにして案内羽根の両面に膨出部73が形成される場合においても、上述のごとく、気流の方向に沿って延びるとともに膨らんで形成された表面は、上下に向けて設けられるものに限られず、例えば、鉛直方向に延ばして水平方向に向けて設けられてもよい。
【0067】
例えば、図17に示すように、フラップ70が、気流の方向に沿って形成された表面として、矢印D1で示す方向に向けて設けられる第1の表面91と、矢印D2で示す方向に向けて設けられる第2の表面92とを有し、膨出部73として、第1の表面91を膨らませて形成された第1の膨出部93aと、第2の表面92を膨らませて形成された第2の膨出部93bとが設けられるように構成されていてもよい。
【0068】
このように第1の膨出部93a及び第2の膨出部93bが設けられていれば、図18(a)に示すように、前縁側端部70aに比べて後縁側端部70bが、矢印D2で示す方向に設けられた場合には、第1の表面91が膨らんだ第1の膨出部93aにより、矢印D3で示す方向に流れる気流が、フラップ70の第1の表面91から剥離することを抑制することができる。また、図18(b)に示すように、前縁側端部70aに比べて後縁側端部70bが、矢印D1で示す方向に設けられた場合には、第2の表面92が膨らんだ第2の膨出部93bにより、矢印D3で示す方向に流れる気流が、フラップ70の第2の表面92から剥離することを抑制することができる。従って、気流が第1の表面91及び第2の表面92の少なくとも一方の表面から剥離することを抑制して、可動式のフラップ70により気流の向きが変化する場合であっても、所望の方向へ流れる気流を遠くまで到達させることができる。具体的には、例えば、第1の表面91が、上方に向けて設けられる上面であって、第2の表面92が、下方に向けて設けられる下面であるときに、フラップ70が気流を下方へ案内するように設けられた場合には、気流が上面である第1の表面91から剥離することを抑制して、下方へ流れる気流を遠くまで到達させることができる。また、フラップ70が気流を上方へ案内するように設けられた場合には、気流が下面である第2の表面92から剥離することを抑制して、上方へ流れる気流を遠くまで到達させることができる。また、フラップ70が水平方向において気流の向きを変化させる場合には、所望の水平方向へ流れる気流を遠くまで到達させることができる。
【0069】
・そして、互いに反対の方向に向けて設けられる表面として第1の表面91及び第2の表面92を有している場合において、図19に示すように、前縁側端部70aに切り欠き部74が形成されていてもよい。このような構成であっても、図19及び図20に示すように、切り欠き部74における前縁側端部70aの翼厚T1が、膨出部73における前縁側端部70aの翼厚T2に比べて小さくなっていれば、上記(1)の効果を得ることができる。
【0070】
・また、互いに反対の方向に向けて設けられる表面として第1の表面91及び第2の表面92を有している場合に、図19に示すように、切り欠き部74において、第1の表面91と第2の表面92とが窪むように構成してもよい。切り欠き部74において、互いに反対の方向に向けて設けられる第1の表面91と第2の表面92とが窪んでいれば、互いに反対の方向に向けて設けられる表面を膨らませた第1の膨出部93aと第2の膨出部93bとが設けられている場合に、フラップ70の第1の表面91側の形状と、フラップ70の第2の表面92側の形状とを同じように構成して、切り欠き部74における前縁側端部70aの翼厚T1を、膨出部73における前縁側端部70aの翼厚T2に比べて小さくすることができる。
【符号の説明】
【0071】
1…室内機(空気調和機)、10…ケーシング、11…空気吸込口、12…空気吹出口、12a…両端空気吹出口、12b…中央空気吹出口、21…吸込側前面パネル、21a…駆動部材、22…吹出側前面パネル、30…遠心ファン、40…熱交換器、50…過冷却熱交換器、60…風向調整装置、61…電動モータ、62…回転板、62a…ピン、63…連結板、63a,63b…係合溝、70…フラップ(案内羽根)、70a…前縁側端部、70A…前縁、70b…後縁側端部、70B…後縁、71…上面(表面)、72…下面(表面)、73…膨出部、74…切り欠き部、74a…切り欠き、75…基本形状部、76…最深部、80…回動部、81…先端部、82…係合ピン、83…貫通孔、91…第1の表面、92…第2の表面、93a…第1の膨出部、93b…第2の膨出部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
気流の上流側に設けられる端部である前縁側端部と、前記気流の下流側に設けられる端部である後縁側端部とを備え、前記前縁側端部に、前記気流の方向に沿って延びる表面を膨らませて形成された膨出部が設けられて、空気調和機の空気吹出口に設けられる可動式の案内羽根であって、
前記膨出部が設けられた前記前縁側端部には切り欠き部が形成されて、この切り欠き部における前記前縁側端部の翼厚が、前記膨出部における前記前縁側端部の翼厚に比べて小さくなっている
ことを特徴とする案内羽根。
【請求項2】
前記気流の方向に沿った断面において、前記切り欠き部における翼厚が、前記前縁側端部から前記気流の下流側へ向かうにつれて徐々に大きくなっていることを特徴とする請求項1に記載の案内羽根。
【請求項3】
前記切り欠き部における前記前縁側端部の前縁は、V字状であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の案内羽根。
【請求項4】
前記前縁がV字状に形成された前記切り欠き部は、前記気流の下流側へ最も深く切り欠かれた最深部を有しており、
前記気流の方向に垂直な断面において、前記切り欠き部における翼厚が、前記最深部に向かうにつれて徐々に小さくなっていることを特徴とする請求項3に記載の案内羽根。
【請求項5】
前記表面として、上方に向けて設けられる上面及び下方に向けて設けられる下面を有し、
前記膨出部は、前記上面を膨らませて形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の案内羽根。
【請求項6】
前記切り欠き部において、前記上面が窪んでいることを特徴とする請求項5に記載の案内羽根。
【請求項7】
前記表面として、互いに反対の方向に向けて設けられる第1の表面及び第2の表面を有し、
前記膨出部は、前記第1の表面及び前記第2の表面のうちいずれか一方を膨らませて形成されており、前記切り欠き部において、前記第1の表面及び前記第2の表面のうちいずれか一方が窪んでいることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の案内羽根。
【請求項8】
前記表面として、互いに反対の方向に向けて設けられる第1の表面及び第2の表面を有し、
前記膨出部として、前記第1の表面を膨らませて形成された第1の膨出部と、前記第2の表面を膨らませて形成された第2の膨出部とが設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の案内羽根。
【請求項9】
前記切り欠き部において、前記第1の表面と前記第2の表面とが窪んでいることを特徴とする請求項8に記載の案内羽根。
【請求項10】
前記切り欠き部は、所定間隔を空けて前記前縁側端部に複数形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項9のいずれか一項に記載の案内羽根。
【請求項11】
請求項1乃至請求項10のいずれか一項に記載の案内羽根を備えることを特徴とする空気調和機。
【請求項1】
気流の上流側に設けられる端部である前縁側端部と、前記気流の下流側に設けられる端部である後縁側端部とを備え、前記前縁側端部に、前記気流の方向に沿って延びる表面を膨らませて形成された膨出部が設けられて、空気調和機の空気吹出口に設けられる可動式の案内羽根であって、
前記膨出部が設けられた前記前縁側端部には切り欠き部が形成されて、この切り欠き部における前記前縁側端部の翼厚が、前記膨出部における前記前縁側端部の翼厚に比べて小さくなっている
ことを特徴とする案内羽根。
【請求項2】
前記気流の方向に沿った断面において、前記切り欠き部における翼厚が、前記前縁側端部から前記気流の下流側へ向かうにつれて徐々に大きくなっていることを特徴とする請求項1に記載の案内羽根。
【請求項3】
前記切り欠き部における前記前縁側端部の前縁は、V字状であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の案内羽根。
【請求項4】
前記前縁がV字状に形成された前記切り欠き部は、前記気流の下流側へ最も深く切り欠かれた最深部を有しており、
前記気流の方向に垂直な断面において、前記切り欠き部における翼厚が、前記最深部に向かうにつれて徐々に小さくなっていることを特徴とする請求項3に記載の案内羽根。
【請求項5】
前記表面として、上方に向けて設けられる上面及び下方に向けて設けられる下面を有し、
前記膨出部は、前記上面を膨らませて形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の案内羽根。
【請求項6】
前記切り欠き部において、前記上面が窪んでいることを特徴とする請求項5に記載の案内羽根。
【請求項7】
前記表面として、互いに反対の方向に向けて設けられる第1の表面及び第2の表面を有し、
前記膨出部は、前記第1の表面及び前記第2の表面のうちいずれか一方を膨らませて形成されており、前記切り欠き部において、前記第1の表面及び前記第2の表面のうちいずれか一方が窪んでいることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の案内羽根。
【請求項8】
前記表面として、互いに反対の方向に向けて設けられる第1の表面及び第2の表面を有し、
前記膨出部として、前記第1の表面を膨らませて形成された第1の膨出部と、前記第2の表面を膨らませて形成された第2の膨出部とが設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の案内羽根。
【請求項9】
前記切り欠き部において、前記第1の表面と前記第2の表面とが窪んでいることを特徴とする請求項8に記載の案内羽根。
【請求項10】
前記切り欠き部は、所定間隔を空けて前記前縁側端部に複数形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項9のいずれか一項に記載の案内羽根。
【請求項11】
請求項1乃至請求項10のいずれか一項に記載の案内羽根を備えることを特徴とする空気調和機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2010−286173(P2010−286173A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−140319(P2009−140319)
【出願日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】
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