説明

梱包体

【課題】搬送時にパターン付フィルムにおいて寸法変化が生ずることのない梱包体、及びこの梱包体の搬送方法を提供すること。
【解決手段】樹脂フィルム21上にパターン22が形成されてなるパターン付フィルム20を、梱包材30で密閉してなる梱包体10において、前記梱包材30は、温度40度、相対湿度90%における水蒸気透過度が1.0g/m2・24hr・MPa以下の防湿性能を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、梱包体に関し、詳しくは、パターン付フィルムに寸法変化が生ずることなく搬送可能な梱包体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶表示素子の薄型軽量化および耐衝撃性の向上等が目指されており、カラーフィルタ、TFTアレイ等を構成する基材として、従来使用されてきたある程度の厚さを有する基材、例えばガラス基材の代わりに、可撓性を有する薄厚の基材、例えば、枚葉状の樹脂フィルムや、連続する樹脂フィルムが巻芯に巻回されてなるロール状フィルムを用いる試みがなされている。これらの樹脂フィルムは、段ボール等の梱包材によって梱包された状態で搬送されるのが一般的である。
【0003】
このようなフィルム基材の搬送については、各種の提案がなされており、例えば、特許文献1には、搬送中のフィルムのキズやシワを防止するため粘着層と保護フィルムがラミネートされたロールフィルムについての開示がされている。また、特許文献2には、搬送中にカラーフィルタのキズが生ずることを防止することを目的として、積層した基板の間にクッションシートを挿入した輸送方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−157592号公報
【特許文献2】特許第4494056号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1、特許文献2に提案がされている方法で輸送等が行われた場合であっても、基板の材料として薄厚のフィルムなどを用いた場合は、搬送中に、枚葉状の樹脂フィルムにおいてはその端部、また、ロール状の樹脂フィルムにおいては、巻回方向と平行な端部及び巻回した際に最表面に位置する部分は、搬送中の水分の影響により形成時の寸法からのずれが生じることとなる。例えば、高温高湿の雰囲気で搬送された場合には水分を吸収して樹脂フィルムが伸び、一方、低温低湿の雰囲気で搬送された場合には、水分を放出し樹脂フィルムが縮むこととなる。
【0006】
そうすると、形成されたパターンも同様に寸法にずれが生じ、納入先等に搬送後、納入先にて高精細なパターニング加工や高精度な貼合ができない問題が生じうる。現在のところ、搬送時における寸法変化の問題を考慮した梱包体は存在していない。
【0007】
本発明はこのような状況に鑑みなされたものであり、パターン付フィルムを搬送するにあたり、搬送される環境にかかわらず、パターン付フィルムに寸法変化を生じさせることなく搬送可能な梱包体を提供することを主たる課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための本発明は、樹脂フィルム上にパターンが形成されてなるパターン付フィルムを、梱包材で密閉してなる梱包体において、前記梱包材は、温度40度、相対湿度90%における水蒸気透過度が1.0g/m2・24hr・MPa以下の防湿性能を有することを特徴とする。
【0009】
また、前記梱包材表面の一部又は全部が断熱材で覆われていてもよい。
【0010】
また、前記パターン付フィルムが、連続する樹脂フィルム上に所定のパターンが設けられ、これが巻芯に巻回されてなるパターン付ロール状フィルムであって、前記パターン付ロール状フィルムの巻芯の長さ方向両端部が、支持体によって支持されており、前記パターン付ロール状フィルムが梱包体内で浮いた状態で密閉されていてもよい。
【0011】
また、前記パターン付フィルムが、連続する樹脂フィルム上に所定のパターンが設けられ、これが巻芯に巻回されてなるパターン付ロール状フィルムであって、前記パターン付ロール状フィルムが、前記樹脂フィルム上に部分的に空隙部材を配置し、当該空隙部材と共に樹脂フィルムを巻回せしめたパターン付ロール状フィルムであってもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、搬送時にパターン付フィルムに寸法変化が生ずることがない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の梱包体の一例を示す断面図である。
【図2】本発明の梱包体の一例を示す断面図である。
【図3】(a)は、空隙部材が設けられたパターン付ロール状フィルムの一例を示す模式図であり、(b)はA−A線の概略断面図である。
【図4】空隙部材の配置例を示す概略平面図である。
【図5】空隙部材が配置された樹脂フィルムの他の一例を示す概略平面図である。
【図6】空隙部材が配置された樹脂フィルムの他の一例を示す概略平面図である。
【図7】空隙部材が配置された樹脂フィルムの他の一例を示す概略平面図である。
【図8】空隙部材の一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の梱包体の各構成について図1を用いて具体的に説明する。なお、図1は、本発明の一実施形態の梱包体10を示す概略断面図であり、枚葉状のパターン付フィルム20が複数枚積層されてなる積層体25が、梱包材30によって密閉されている。
【0015】
<<梱包体>>
本発明の梱包体は、樹脂フィルム21上にパターン22が形成されてなるパターン付フィルム20を、梱包材30で密閉してなる梱包体10において、梱包材30は、温度40度、相対湿度90%における水蒸気透過度が1.0g/m2・24hr・MPa以下の防湿性能を有することを特徴とするものである。
【0016】
<パターン付フィルム>
パターン付フィルム20は、樹脂フィルム21上にパターン22が形成されたものであればよく、パターン付フィルムについていかなる限定もされることはない。樹脂フィルムとしては、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、ポリイミド(PI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルイミド(PEI)、セルローストリアセテート(CTA)、環状ポリオレフィン(COP)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリサルフォン(PSF)、ポリアミドイミド(PAI)、ノルボルネン系樹脂、アリルエステル樹脂等の合成樹脂からなるフィルム等を挙げることができる。
【0017】
この樹脂フィルム21は、単一層からなる構成であっても良く、あるいは、複数の層が積層された構成を有するものであっても良い。基材自体の湿度変化による寸法変化量は少なく、取り扱いが容易となるからである。
【0018】
また、本発明に用いられる樹脂フィルム21の湿度膨張係数としては、2×10-5/%RH以下であることが好ましく、1×10-5/%RH以下であることがより好ましく、5×10-6/%RH以下であることがさらに好ましい。
【0019】
また、本発明に用いられる樹脂フィルム21の線膨張係数としては、2×10-5/℃以下であることが好ましく、1×10-5/℃以下であることがより好ましく、5×10-6/℃以下であることがさらに好ましい。前記湿度膨張係数と同様、温度変化による寸法変化量が少なく、取り扱いが容易だからである。
【0020】
樹脂フィルム上に形成されるパターンは任意のパターンであり、例えば、液晶表示装置用の画像表示素子に用いられる光学機能層や画像表示素子全体、より具体的には、カラーフィルタや各種配線パターン、さらにはハードコート層、アンチグレア層、アンチリフレクション層、偏光層などを挙げることができる。
【0021】
<梱包材>
上記で説明したパターン付フィルム20には、樹脂フィルム21が用いられていることから、このパターン付フィルム20を、例えば、40℃、90%RHの高温高湿雰囲気で搬送した場合には樹脂フィルムが水分を吸湿し樹脂フィルムの寸法が伸びることとなる。一方で、このパターン付フィルム20を、例えば、5℃、10%RHの低温低湿雰囲気で搬送した場合には樹脂フィルムから水分が放出され樹脂フィルムの寸法が縮むこととなる。そして、樹脂フィルムに寸法変化が生じた場合には、該樹脂フィルム上に形成されたパターンも、樹脂フィルムの寸法変化に追従して寸法に変化が生じる。
【0022】
そこで、本発明の梱包体10は、このパターン付フィルム21を、温度40度、相対湿度90%における水蒸気透過度が1.0g/m2・24hr・MPa以下の防湿性能を有する梱包材30によって密閉することで、搬送中の外部環境における水分の影響によってパターン付フィルムが寸法変化することを防止している。
【0023】
梱包材30としては、防湿性能である水蒸気透過度が上記範囲内のものを適宜選択して用いることができ、梱包材30の材質等について特に限定はない。例えば、本発明においては、梱包材30として、ガスバリア性フィルム等を使用することができる。ガスバリア性フィルムとしては、基材フィルムと無機酸化物層が積層されてなるもの等が挙げられる。以下、梱包材30の一例として、基材フィルムと無機酸化物層とが積層されてなる梱包材30について説明する。
【0024】
基材フィルムとしては、ポリ(メタ)アクリレート、ポリ(メタ)アリレート(PAR)、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルサルホン(PES)、ポリカーボネート(PC)、環状ポリオレフィン共重合体であるポリノルボルネン、環状ポリオレフィン樹脂、ポリシクロヘキセン、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリシロキサン系、エチレン−四フッ化エチレン共重合体(ETFE)、三フッ化塩化エチレン(PFA)、四フッ化エチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(FEP)、フッ化ビニリデン(PVDF)、フッ化ビニル(PVF)等のフッ素系樹脂等を挙げることができる。
【0025】
無機酸化物層としては、例えば、酸化アルミニウム、酸化硅素、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化ホウ素、酸化ハフニウム、酸化バリウム等の酸化物であり、特に、水蒸気透過度を容易に上記範囲内とすることができる生産性などを考慮すると、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化窒化珪素、酸化炭化珪素、二酸化珪素のいずれか好ましい。無機酸化物層の形成方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、PVD法、プラズマアシストCVD法やイオンビームアシストCVD法などを適用できるが、好ましくは生産性の点からPVD法やイオンプレーティング法である。これらの方法は、基材フィルムや無機酸化物の成膜材料の種類、成膜のし易さ、工程効率等を考慮して選択することができる。
【0026】
パターン付フィルム20を、梱包材30によって梱包する方法について特に限定はなく、例えば、開口部を有する袋状の梱包材30を用い、パターン付フィルムを梱包材内部に挿入後、開口部を閉じることで梱包することができる。
【0027】
また、本発明においては、梱包材30の表面の一部又は全部が、断熱材40によって覆われていることが好ましい。梱包材30の表面の一部又は全部を断熱材40で覆うことで、梱包体10内部の温度変化を抑制することができ、梱包体10内部の湿度が変化しないことからフィルムの含水率変化が生じず、結果的にパターン付フィルム20の寸法変化をさらに効果的に抑制することができる。
【0028】
断熱材40としては、高い断熱性を有する材料、例えば発泡ポリスチレン、発泡ウレタン、グラスウール、ポリエチレンテレフタレート、もしくはポリプロピレンを含むプラスチック製不織布等を挙げることができる。
【0029】
以上、本発明の梱包体10が、パターン付フィルム20を複数枚積層してなる積層体25を、梱包材30で梱包した例を中心に説明を行ったが、図2に示すように、パターン付フィルムが、ロール状のパターン付フィルムであってもよい。以下、パターン付フィルムが、ロール状のパターン付フィルム200である場合について説明する。以下、ロール状のパターン付フィルムをパターン付ロール状フィルムという。
【0030】
<<パターン付ロール状フィルム>>
【0031】
図2に示すように、パターン付ロール状フィルム200は、連続する樹脂フィルム202上に図示しないパターンが設けられ、これが巻芯201に巻回されてなる構成をとっている。樹脂フィルム及びパターンについては、上記で説明した通りであり、ここでの説明は省略する。
【0032】
連続する樹脂フィルムの厚さとしては、1μm〜1mmの範囲内であることが好ましく、10μm〜500μmの範囲内であることがより好ましく、50μm〜250μmの範囲内であることがさらに好ましい。樹脂フィルムの厚さが上記範囲よりも厚すぎると、フレキシブル性が損なわれ、ロール状フィルムの作製が困難になり、折れやすくなるからである。一方、上記範囲よりも薄すぎると、こしが無くなり、取り扱いが困難になるからである。
【0033】
本発明に用いられる樹脂フィルムの幅としては、特に限定されるものではないが、例えば、100mm〜1000mmの範囲内であることが好ましく、150mm〜600mmの範囲内であることがより好ましい。
【0034】
なお、本発明に用いられる連続する樹脂フィルムは、単一層からなる構成であっても良く、あるいは、複数の層が積層された構成を有するものであっても良い。
【0035】
また、図2に示すように、このパターン付ロール状フィルム200は、巻芯201の長さ方向の両端部が支持体210によって支持されており、パターン付ロール状フィルム200が梱包体内で浮いた状態で密閉されていることが好ましい。このような構成とすることで、パターン付ロール状フィルムの最表面に位置するフィルム部分にキズ等が生ずることを防止することができる。
【0036】
また、図3に示すように、パターン付ロール状フィルム200は、連続する樹脂フィルム202上に部分的に空隙部材205が配置され、当該空隙部材205と共に樹脂フィルム202を巻回してなるものであることが好ましい。図3においては、空隙部材205が樹脂フィルム202の両端の端部領域上にのみ配置され、パターン形成領域tには形成されていない例について示している。なお、パターン形成領域tについては後述するため、ここでの説明は省略する。また、樹脂フィルムの両端の端部領域についても後述するため、ここでの説明は省略する。また、図3(a)においてXで示される方向は、樹脂フィルムの長手方向を、Yで示される方向は樹脂フィルムの幅方向を示すものである。
【0037】
図3(b)に示すように、空隙部材205を部分的に配置することにより、パターン付ロール状フィルム200においては、上層の樹脂フィルムと下層の樹脂フィルムとの間に空間が形成され、かつ空隙部材は通気性および透湿性を有するものであることから、巻内であっても外気と接触することができるため、巻内の樹脂フィルムも巻外の樹脂フィルムと同程度に水分を取り込むことが可能となる。よって、巻内および巻外の含水率を均一化することが可能となる。
【0038】
ここで、空隙部材205の配置としては、上述したように、パターン付ロール状フィルムとした場合に、上層の樹脂フィルムと下層の樹脂フィルムとが密着しないように空隙部材205を樹脂フィルム202上に部分的に配置することが可能であれば特に限定されるものではない。例えば、図3に示すように、空隙部材を樹脂フィルムの両端の端部領域上に配置してもよい。
【0039】
図4は、空隙部材の配置例を示す概略平面図である。図4(a)に示すように、樹脂フィルムの長手方向Xに所定の間隔を空けて空隙部材を配置してもよいし、図4(b)に示すように、樹脂フィルムの幅方向Yに所定の間隔を空けて空隙部材を配置してもよいし、図4(c)に示すように、樹脂フィルムの幅方向Yに対して斜め方向(鋭角方向)に所定の間隔を空けて空隙部材を配置してもよい。
【0040】
空隙部材205の配置位置について特に限定はないが、パターンが形成される領域には空隙部材は配置されていないことが好ましい。この点を考慮すると、空隙部材の配置としては、上記空隙部材が、少なくとも樹脂フィルムの両端の端部領域上に配置されていることが好ましい。「樹脂フィルムの両端の端部領域」とは、樹脂フィルムの幅方向の両端に存在する領域である。具体的には、樹脂フィルムの端部領域とは、樹脂フィルムの幅方向の長さを1とした場合、樹脂フィルムの幅方向の端辺からの距離が0.2以下、なかでも0.1以下、特に0.05以下の領域を指すものである。
【0041】
図5〜図7は、いずれも空隙部材が配置された樹脂フィルム202の他の一例を示す概略平面図である。例えば、空隙部材205を樹脂フィルム202の両端の端部領域上のみに配置し、かつ、パターン形成領域tには配置されないように、空隙部材205を配置することができる。なお、図5においては、空隙部材205が樹脂フィルム202の両端の端部領域s上の全面に配置されている例について示している。また、図6(a)に示すように、樹脂フィルム202の端部領域s上の全面、および、樹脂フィルム202の長手方向Xの端辺(図6(a)では、一点破線で示す部分)を越えて空隙部材205を配置してもよいし、図6(b)に示すように、樹脂フィルム202の両端の端部領域sの一部に空隙部材205を配置してもよい。通常、空隙部材の位置決め精度等の問題を考慮し、図6(b)に示すように、樹脂フィルム202の両端の端部領域sの一部、より好ましくは端部領域sの中央部分に空隙部材205が配置される。
【0042】
また、図7に示すように、空隙部材205が樹脂フィルム202の両端の端部領域s上以外にもパターン形成領域tを囲むように空隙部材205を配置することができる。この場合は、図7(a)に示すように、空隙部材2がパターン形成領域tの周辺全てを囲むように配置されていてもよいし、図7(b)に示すように、空隙部材205がパターン形成領域tの周辺の一部を除いて囲むように配置されていてもよい。なお、図7(a)、(b)においては、空隙部材205が端部領域s上の全面に形成され、さらに図7(a)においてはパターン形成領域tを除いた全面に形成されている例について示しているが、これに限定されるものではなく、上記端部領域内、および端部領域以外でパターンが形成されない領域内であれば任意の領域に空隙部材を配置することが可能である。
【0043】
次に空隙部材について説明する。空隙部材205は、樹脂フィルム202上に部分的に配置されるものであり、樹脂フィルム202の巻内および巻外に含水率の差を生じさせない程度の通気性および透湿性を有するものである。このような空隙部材としては、可撓性を有し、パターン付ロール状フィルムの巻内および巻外に含水率の差を生じさせない程度の通気性および透湿性を有し、かつ、離型性が高いものであれば、特に限定されるものではなく、例えば、多孔質シート、不織布、ICチップ搬送用キャリアテープ、ワイプ、紙、ナイロンフィルム等が挙げられる。
【0044】
図8は空隙部材の一例を示す概略断面図である。空隙部材の断面形状としては、例えば、少なくとも一方の表面に凹凸が形成されている凹凸形状の空隙部材であってもよいし、複数の通気孔を有する多孔質形状の空隙部材であってもよいし、1枚の板状部材を加工してウェーブ状に成型された空隙部材であってもよい。なかでも、少なくとも一方の表面に凹凸が形成されている凹凸形状の空隙部材であることがより好ましい。当該断面形状を有する空隙部材は、通気性および透湿性に優れるものであり、また、樹脂フィルム上に配置しやすいからである。
【0045】
ここで、凹凸形状とは、例えば、凸部の高さが、0.01mm〜1.5mmの範囲内、凸部が潰れない程度で好ましくは、0.1mm〜0.5mmの範囲内、隣接する凸部同士の距離が0.01mm〜4.0mmの範囲内、好ましくは、0.1mm〜2.0mmの範囲内である。なお、上記凸部の高さ、および隣接する凸部同士の距離は、mmオーダーの測定の場合はノギスや顕微鏡を用いて測定され、μmオーダーの測定の場合は、触針式の表面粗さ計(ミカサ株式会社、品名ET4000L−S)を用いて測定される。なお、凸部の高さとは、図8に示す空隙部材205においてQで示されるものであり、隣接する凸部同士の距離とは図8に示す空隙部材205においてPで示される距離を指す。
【0046】
また、凸部の樹脂フィルムと接触する凸部の面の形状は、平面であっても曲面であってもよいが、平面であることが好ましい。樹脂フィルムに傷を生じにくい形状であるからである。空隙部材の通気度としては、パターン付ロール状フィルムに配置した揚合に巻内および巻外に含水率の差を生じさせない程度の通気度であれば特に限定されるものではないが、1.4cm3/cm2・sec以上であることが好ましい。通気度がこの数値より小さい場合は、空隙部材の通気性および透湿性が十分ではないことから、パターン付ロール状フィルムに用いた揚合に、巻内および巻外の含水率を均一にすることが困難となるおそれがあるからである。上記通気度は、JIS L1096 8.27.1 A法(フラジール形法)により測定される。
【0047】
また、空隙部材が平坦な部材である場合の表面粗さ(Ra)としては、1μm以上であることが好ましく、2μm以上であることがより好ましく、5μm以上であることがさらに好ましい。Raが上記範囲より小さいと、空隙部材が有する空隙が少なくなり、通気性および透湿性を高くすることができないからである。なお、本発明に用いられる空隙部材のRaは、通常、10μm以下である。なお、ここでの「表面粗さ(Ra)」は、「算術平均表面粗さ」であり、JIS−B0601に準拠して測定される。上述した空隙部材の形状、通気度、および表面粗さ(Ra)等を考慮すると、好ましい空隙部材としては、上述した具体例のなかでも、多孔質シート、ICチップ搬送用キャリアテープ、ワイプ、ナイロンフィルム等を挙げることができ、特に好ましい空隙部材としては、多孔質シート、ICチップ搬送用キャリアテープ等を挙げることができる。
【0048】
空隙部材の厚さとしては、20μm〜200μmの範囲内であることが好ましい。空隙部材の厚さが上記範囲よりも薄すぎると、樹脂フィルムを巻回したときに空隙がつぶれ易くなり、上記範囲よりも厚すぎると、樹脂フィルムの巻回ができなくなるためである。
【0049】
空隙部材の幅としては、パターン付ロール状フィルムの巻内および巻外の含水率が均一となるように空隙部材を樹脂フィルム上に部分的に配置することが可能な幅であれば特に限定されるものではなく、樹脂フィルムの幅、パターン形成領域の大きさ等により適宜選択されるものである。
【0050】
なお、空隙部材を少なくとも樹脂フィルムの両端の端部領域上に配置する場合は、上記空隙部材の幅としては、5mm〜60mmの範囲内、中でも5mm〜30mmの範囲内、特に5mm〜15mmの範囲内であることが好ましい。空隙部材の幅が上記範囲よりも広すぎると、樹脂フィルム上に配置した際に、はみ出た部分が無駄になり、上記範囲よりも狭すぎると、樹脂フィルムを支えることが困難となり、パターン付ロール状フィルムにおいて上層の樹脂フィルムと下層の樹脂フィルムとが密着して通気性が損なわれるからである。なお、上記の場合における空隙部材の幅は、図5および図7においてuで示される距離を指すものである。
【0051】
<<梱包体の搬送方法>>
次に、本発明の梱包体10を搬送する際の好ましい態様について説明する。上記で説明したように、本発明の梱包体10によれば、パターン付フィルムを搬送するにあたり、搬送される環境にかかわらず、パターン付フィルムに寸法変化を生じさせることなく搬送することができる。したがって、本発明の梱包体10の搬送される環境について特に限定されることはないが、本発明の梱包体10は、23±2℃、45±5%RHの雰囲気中で搬送されることが特に好ましい。
【0052】
本発明の梱包体10を、23±2℃、45±5%RHの雰囲気中で搬送することにより、搬送中における、温度、及び湿度を一定に保つことができる。これにより、上記で説明した本発明の梱包体10による作用効果との相乗効果によって、搬送中における樹脂フィルムの含水率を3%以内とすることができる。具体的には、樹脂フィルム100mmあたりの寸法変化を3.3μm以内とすることができ、極めて高いパターン精度を有するパターン付フィルムを提供することができる。
【0053】
23±2℃、45±5%RHの雰囲気中とする方法について特に限定はないが、エアコン等で上記雰囲気に空調管理がされた状態で搬送することができる。
【0054】
以上、本発明の梱包体について説明を行ったが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、各種の変更を加えてもよい。
【符号の説明】
【0055】
10 梱包体
20 パターン付フィルム
21 枚葉状の樹脂フィルム
22 パターン
30 梱包材
40 断熱材
200 パターン付ロール状フィルム
201 巻芯
202 連続する樹脂フィルム
205 空隙部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂フィルム上にパターンが形成されてなるパターン付フィルムを、梱包材で密閉してなる梱包体において、
前記梱包材は、温度40度、相対湿度90%における水蒸気透過度が1.0g/m2・24hr・MPa以下の防湿性能を有することを特徴とする梱包体。
【請求項2】
前記梱包材表面の一部又は全部が断熱材で覆われていることを特徴とする請求項1に記載の梱包体。
【請求項3】
前記パターン付フィルムが、連続する樹脂フィルム上に所定のパターンが設けられ、これが巻芯に巻回されてなるパターン付ロール状フィルムであって、
前記パターン付ロール状フィルムの巻芯の長さ方向両端部が、支持体によって支持されており、前記パターン付ロール状フィルムが梱包体内で浮いた状態で密閉されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の梱包体。
【請求項4】
前記パターン付フィルムが、連続する樹脂フィルム上に所定のパターンが設けられ、これが巻芯に巻回されてなるパターン付ロール状フィルムであって、
前記パターン付ロール状フィルムが、前記樹脂フィルム上に部分的に空隙部材を配置し、当該空隙部材と共に樹脂フィルムを巻回せしめたパターン付ロール状フィルムであることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の梱包体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−180102(P2012−180102A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−42726(P2011−42726)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】