説明

梱包材およびこれを用いた梱包体

【課題】開梱時または梱包時において、被梱包物を受け材に沿って容易に導くことができる梱包材を提供する。
【解決手段】梱包材1は、複数のキャスタ64付き被梱包物60の底面61の中央を支持する中央支持材40と、被梱包物60および中央支持材40を少なくとも収容する収容筐体10と、を備えている。収容筐体10の側壁11Aの下部11bは、側壁11Aの上部11aを回動させることにより上部11aを地面に接触させて側壁11Aの内面11cが地面Fに対して傾斜するように、収容筐体10の底部12に枢支されている。側壁11Aの内面11cの上部11aから下部11bに沿った位置には、キャスタ64を支持する一対の受け材51,51が並置されている。一対の受け材51,51の間には、受け材51に沿ってキャスタ64が移動するように被梱包物60の底面61を案内するためのガイド材52が配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被梱包物を梱包する梱包材に係り、特に、キャスタ付きの被梱包物を開梱するのに好適な梱包材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、大型でかつ重量のある製品には、その搬送を容易に行うために、製品の底面にキャスタが取り付けられている。このような製品を被梱包物として梱包する際には、梱包材は、被梱包物(製品)の荷重がキャスタに直接的に作用しないように、被梱包物の底面の中央を支持する中央支持材を用いて、その底面を支持する構造となっている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
そして、被梱包物を梱包した梱包体をより簡単に開梱するためには、被梱包物の底面から、該底面に取り付けられたキャスタに、被梱包物の荷重をシフトさせて、キャスタの車輪を回転させながら被梱包物を移動させて、被梱包物を梱包材から取り出す。
【0004】
ここで、被梱包物の取り出す際には、梱包材の内部から地面まで、キャスタの車輪を一方向に転がす必要がある。このような作業を円滑に行うために、例えば、被梱包物を収容する収容筐体の側壁の内側には、キャスタを受けるための一対の受け材が配置されている(例えば、特許文献2または3参照)。
【0005】
このような技術によれば、収容筐体の側壁の内側に一対の受け材を設けることにより、側壁を地面に接触するように開いたときに、側壁の内面が傾斜面となる。この傾斜面に配置された一対の受け材が、キャスタを転がすための一対のスロープの役割を果たす。これにより、開梱時には、このスロープ(受け材)を利用してキャスタの車輪を地面まで転がして、梱包材から被梱包物を取り出すことができる。一方、再梱包時には、このスロープ(受け材)を利用してキャスタを梱包材の内部まで転がして、被梱包物をその内部に収容することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−96404号公報
【特許文献2】特開2004−35083号公報
【特許文献3】特開2006−96356号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献2および3に示す梱包材を用いた場合、梱包材から被梱包物を取り出す際(開梱時)に、キャスタを介して被梱包物の荷重を受け材に受けさせるように、被梱包物のキャスタを受け材に誘導しなければならない。
【0008】
一般的に、キャスタは、車輪と、車輪の中心を回転可能に支持する回転支持部と、車輪および支持部を回動可能に支持する回動支持部とから構成されているため、回動支持部によって車輪の向きは自在に変化する。したがって、被梱包物を移動させる際には、キャスタの車輪は所望の方向に向いているわけではなく、被梱包物のキャスタを一対の受け材に誘導することが簡単にはできないことがある。
【0009】
特に、特許文献1の如く、梱包時に被梱包物の底面の中央を支持する中央支持材を設けた場合、梱包状態では、キャスタは非接触状態であるため、キャスタの車輪の向きが所望の向きに向いていることはほとんどなく、受け材へのキャスタの誘導はさらに難しくなる。
【0010】
一方、被梱包物を梱包する際には、キャスタを受け材に誘導することは可能であるが、誘導後のキャスタの車輪を、受け材から脱輪することなく梱包材の内部に案内することは必ずしも容易であるとはいえない。
【0011】
本発明は、このような点を鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、開梱時または梱包時において、被梱包物を受け材に沿って容易に導くことができる梱包材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決すべく、本発明に係る梱包材は、底面に複数のキャスタが取り付けられた被梱包物の前記底面の中央を支持する中央支持材と、前記被梱包物および中央支持材を少なくとも収容する収容筐体と、を少なくとも備え、前記キャスタを非接触状態にして前記被梱包物を梱包状態とする梱包材であって、前記収容筐体の少なくとも1つの側壁の下部は、該側壁の上部を回動させることにより該上部を地面に接触させて前記側壁の内面が地面に対して傾斜するように、前記収容筐体の底部に枢支されており、前記側壁の内面のうち前記上部から前記下部に沿った位置には、前記側壁の上部が地面に接触した状態で、前記複数のキャスタを支持するための一対の受け材が並置されており、前記一対の受け材の間には、前記側壁の上部が地面に接触した状態で、該受け材に沿って前記キャスタが移動するように前記被梱包物の底面を案内するためのガイド材が配置されていることを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、被梱包物を梱包した状態において、被梱包物の底面の中央は中央支持材の支持面で支持されているので、キャスタの車輪は非接触状態である。そして、開梱時には、収容筐体の側壁が開くように、該側面の上部を外側下方に回動させることにより、側壁の上部を地面に接触させて側壁の内面を地面に対して傾斜させる。
【0014】
ここで、地面に対して側壁の内面が傾斜するように、例えば、収容筐体の底面外側にパレット等の基台が取り付けられていてもよく、収容筐体に収容した状態で、底面内部に基台が配置されていてもよい。さらには、前記側壁の内面が傾斜するように、開梱する前に、地面に対して高所の位置に予め梱包体を配置してもよい。
【0015】
そして、側壁の上部が地面に接触した状態(すなわち、側壁が収容筐体の外側に開いた状態)で、側壁の内面が傾斜面となり、この傾斜面に配置された一対の受け材が、キャスタを転がすための一対のスロープの役割を果たす。
【0016】
ここで、本発明では、収容筐体の内面に、被梱包物の底面を案内するためのガイド材を配置したので、被梱包物を取出し方向に移動したときに、被梱包物の底面は、中央支持材の支持面からスライドしてガイド材に案内される。これにより、開梱時に、被梱包物のキャスタが一対の受け材に移動するように、被梱包物を容易に誘導することができると共に、その後の移動中に、受け材からキャスタの車輪が脱輪することを防止することができる。
【0017】
一方、梱包時には、このガイド材により、受け材に沿ってキャスタが移動するように被梱包物の底面が案内されるので、被梱包物のキャスタの車輪が脱輪することなくキャスタを受け材に受けさせて、被梱包物を収容筐体の内部に移動させることができる。
【0018】
また、このようなガイド材は、被梱包物の底面を案内することにより、側壁の上部から下部に沿って配置された受け材に沿うように、キャスタを移動することができるのであれば、ガイド材は、被梱包物の底面と必ずしも接触したり、被梱包物の底面を支持したりする必要はない。しかしながら、より好ましい態様としては、前記ガイド材は、前記側壁の上部が地面に接触した状態で、少なくとも前記ガイド材の端部および前記中央支持材により、前記被梱包物の底面を支持するようになっている。
【0019】
この態様によれば、被梱包物を取出し方向に移動した際に、被梱包物の荷重を中央支持材からガイド材に円滑にシフトすることができる。これにより、被梱包物の重心が中央支持材ガイド材に移った際に生じる、被梱包物の荷重のシフトによる被梱包物への衝撃を抑えることができる。
【0020】
また、さらにより好ましい態様としては、前記受け材は、前記側壁の上部が地面に接触した状態で、前記ガイド材の端部および前記中央支持材により、前記被梱包物を支持した際に、前記キャスタに接触するようになっている。
【0021】
この態様によれば、被梱包物を取出し方向に移動した際に、被梱包物の荷重を中央支持材からガイド材と受け材に円滑にシフトすることができる。これにより、上述したように荷重シフトにより生じる被梱包物の衝撃の発生をより確実に抑えることができる。
【0022】
また、上述したガイド材は、被梱包物の底面を案内することができるように、一対の受け材の間に配置されているのであれば特にその位置は限定されるものではない。しかしながら、より好ましい態様としては、前記ガイド材の端部と、前記側壁の上部および下部の少なくとも一方とが、一致している。
【0023】
この態様によれば、前記ガイド材の端部と、前記側壁の上部および下部の少なくとも一方とを一致させることにより、開梱時において、ガイド材が側壁の補強材として作用する。より好ましい態様としては、ガイド材の両端が、側壁の上部および下部と一致している。これにより、ガイド材による側壁の補強効果をより高めることができる。
【0024】
また、ガイド材は、上述したように、開梱時および梱包時の作業を想定して設けられた部材であるが、このガイド材を被梱包物の梱包状態において利用してもよい。すなわち、好ましい態様としては、前記ガイド材は、前記梱包状態において、前記被梱包物の側面を保護するための緩衝材となっている。このように、ガイド材を緩衝材として用いることにより、梱包状態においてガイド材に対向した被梱包物の側面を保護することができる。
【0025】
また、梱包および開梱時において、中央支持材の表面と被梱包物の底面とが、容易にスライドすることができるのであれば、これらの関係は、特に限定されるものではない。しかしながら、より好ましい態様としては、前記中央支持材の支持面には、該支持面に対して前記被梱包物の底面をスライドさせるためのスライド材が配置されている。本発明によれば、このようなスライド材を用いることにより、梱包時および開梱時における、中央支持材に対する被梱包物の移動を円滑に行うことができる。
【0026】
さらに、このような被梱包物の底面をスライドさせるためのスライド材は、前記ガイド材の上面に配置されていてもよい。これにより、ガイド材の上面に対する被梱包物の底面の相対的な移動をより円滑に行うことができる。
【0027】
また、中央支持材は、被梱包物の開梱時に被梱包材と共に移動しなければ、特にその形状および構造は限定されるものではない。しかしながら、より好ましい態様としては、前記梱包材は、前記被梱包物の下部側面を覆うことにより該下部側面を包装するための包装材を備えており、前記中央支持材は、前記ガイド材が配置された側壁側への中央支持材の移動が制限されるように、前記包装材に係止されている。
【0028】
本発明によれば、包装材と、中央支持材とを、ガイド材が配置された側壁側への中央支持材の移動が制限されるように係止させることにより、開梱時において、中央支持材に対して被梱包物をスライドさせたときに、中央支持材が被梱包物とともに移動することを抑制することができる。
【0029】
このように、上述した梱包材を用いて、中央支持材で被梱包物の底面の中央を支持し、前記被梱包物および中央支持材を収容筐体で収容することにより、被梱包物を梱包した梱包体は、受け材およびガイド材を用いることにより、容易に開梱作業を行うことができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、開梱時または梱包時において、被梱包物を受け材に沿って容易に導き、受け材を用いた梱包および開梱をスムーズに行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施形態に係る梱包体を分解した状態を示す模式的斜視図。
【図2】第1実施形態に係る梱包材の模式図であり、(a)は、梱包時の梱包材の配置状態(被梱包物を含まない状態)における梱包材の水平方向に沿った断面図、(b)は、(a)のA−A線矢視断面図。
【図3】本発明の第1実施形態に係る梱包体の開梱作業を説明するための模式的側面図であり、(a)〜(f)は、第1〜第6までの一連の作業工程を説明するための図。
【図4】図1に示す実施形態の変形例を示した図であり、(a)は、梱包材のガイド材に係る第1の変形例、(b)は、梱包材のガイド材に係る第2の変形例を示した図。
【図5】図1に示す実施形態の別の変形例を示した図であり、(a)は、梱包材のガイド材に係る第1の変形例を示した図、(b)は、梱包材のガイド材に係る第2の変形例を示した図。
【図6】図6は、図1に示す実施形態の別の変形例を示した模式的断面図であり、(a)中央支持材と包装材の係止前の断面図、(b)は、中央支持材と包装材を係止させたときの断面図。
【図7】図1〜6に示す実施形態に係る梱包材の受け材の変形例を示した図であり、(a)は、取出し方向に沿った先端を傾斜させた受け材を示した図、(a)チャンネル状の受け材を示した図、(b)は、ガイド溝が形成された受け材を示した図。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下に、図面に基づき、本発明に係る本実施形態を説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る梱包体を分解した状態を示す模式的斜視図であり、図2は、第1実施形態に係る梱包材の模式図であり、(a)は、梱包時の梱包材の配置状態(被梱包物を含まない状態)における梱包材の水平方向に沿った断面図、(b)は、(a)のA−A線矢視断面図であり、具体的には、被梱包物を梱包した状態を説明するための鉛直方向の断面図である。
【0033】
図1に示すように、本実施形態に係る梱包材1は、製品である被梱包物60を梱包するものであり、被梱包物60の底面61の四隅には、4つキャスタ64が取り付けられている。梱包材1は、ダンボール等からなる下側の下部筐体(以下収容筐体という)10と、収容筐体10を上方から被梱包物60と共に覆うダンボール等からなる上部筐体15とを備えている。
【0034】
収容筐体10のさらに下方には、パレット等の基台50が配置されている。さらに、収容筐体10の4つの側壁11A〜11Dの下部11bは、側壁の上部11aを外側に倒して上部11aが回動するように、収容筐体10の底部12に枢支されている。この側壁11A〜11Dの上部11aの回動(側壁11A〜11Dの枢動)により、収容筐体10は開いた状態になる。
【0035】
側壁11A〜11Dと底部12との枢支構造は、側壁11A〜11Dと底部12とを含む形状のプレートをこれらの境界線に沿って折り曲げた一体構造であってもよく、これらを個別に作製して、粘着テープ等を介して枢動可能に連結してもよい。このような構造にすることにより、側壁11A〜11Dを収容筐体10に対して外側に開くように枢動させて、後述する緩衝材30のうち(下部)包装材32A,32B,32Bを収容筐体10から容易に取り除くことができる。なお、本実施形態の特徴点の1つである側壁11Aについての詳細は、以下の緩衝材30について説明した後に後述する。
【0036】
梱包材1は、緩衝材30をさらに備えている。緩衝材30は、収容筐体10および上部筐体15の内部に収容された被梱包物60を保護するための複数の部材からなる。具体的には、緩衝材30は、被梱包物60の上面および上部側面を覆うことによりこれを包装する上部包装材31,31と、被梱包物60の下部側面を覆うことによりこれを包装する下部包装材32A,32B,32B(以下、包装材という)と、被梱包物60の下部に配置される中央支持材40とから構成されている。また、下部包装材は、収容方向Q側に配置される包装材32Aと、取出し方向P側に配置される一対の包装材32B,32Bからなる。
【0037】
緩衝材30を構成するこれら部材の材質としては、熱可塑性樹脂の発泡成形体であることが好ましい。熱可塑性樹脂には、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂(例えばポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂)、ポリエステル系樹脂(例えば、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリブチレンテレフタレート系樹脂、ポリエチレンナフタレート系樹脂、またはポリ乳酸系樹脂)、またはポリカーボネート系樹脂などが挙げられ、単一の樹脂や複数の樹脂を複合したものを使用できる。
【0038】
中央支持材40は、上面に相当する支持面で被梱包物60の底面61の中央を支持する部材であり、収容筐体10の底部12の中央に配置されるものである。本実施形態では、中央支持材40は、底部12の表面に非接着で配置されているが、後述する開梱時の被梱包物60の移動に合わせて移動する場合には、接着されていてもよい。
【0039】
中央支持材40の支持面には、該支持面に対して、被梱包物60の底面61をスライドさせるための(底面61に対して滑り易くするための)、数ミリ程度の厚さを有したポリアセタール(POM)等からなる非発泡樹脂のボード(スライド材)43が貼り合わされている。具体的には、スライド材43の表面は、中央支持材40の支持面よりも摩擦係数が小さくなっている。
【0040】
各包装材32A,32Bは、被梱包物60の下部の側面と、キャスタ64が配置された底面61の周りを非接触で覆う部材である。図2(a)に示すように、包装材32Aには、中央支持材40の一部と係合するための係合凹部33が形成されており、さらに、係合凹部33を挟んだ両側には、回動可能にキャスタ64を収容するための収容孔35が形成されている。
【0041】
図2(a)に示すように、包装材32A,32Bと中央支持材40とを係合させたときに、包装材32A,32Bと中央支持材40により、キャスタ64が通過するための案内通路36が形成される。
【0042】
また、図2(b)に示すように、底部12から、包装材32A,32Bのうち係合凹部33および収容孔35を形成する部分までの内部の高さhは、底部12からスライド材43の表面までの高さ(スライド材を設けない場合には中央支持材40の支持面までの高さ)Hよりも低くなっている。これにより、中央支持材40と包装材32A,32Bを係合させたときに、中央支持材40と包装材32A,32Bの内部には、段差d1が形成される。
【0043】
さらに、包装材32A,32Bの側面のうち、取出し方向P(収容方向Q)に沿った方向の側面には、被梱包物60を覆った包装材32A,32Aを、被梱包物60から取り除くための側面凹部38が形成されている。
【0044】
上述した中央支持材40と包装材32A,32Aの内部との段差、および側面凹部38を設けることにより、被梱包物60を中央支持材40に載置した状態で、作業者は側面凹部38を利用して、包装材32A,32Bを容易に取り外すことができる。
【0045】
また、上述したスライド材43を含む中央支持材40は、支持面に被梱包物60を載置したときに、キャスタ64が収容筐体10の底部12に接触しない高さとなっている。これにより、被梱包物60の荷重を中央支持材40のみで受け、キャスタ64の車輪64aと収容筐体10の底部12との間には、上下方向に一定に隙間d2が形成され、梱包状態で、キャスタ64の車輪64aを非接触状態にすることができる。
【0046】
ここで、本実施形態の特徴部分である収容筐体10の側壁11Aについて以下に説明する。上述したように、収容筐体10は、被梱包物60、緩衝材30(包装材32A,32B,32B)等を収容するための部材である。図1に示すように、収容筐体10の側壁11Aは、被梱包物60を内部から取り出す際の取出し方向Pに位置する側壁であり、側壁11Aの上部11aから下部11bまでの長さは、他の側壁11B〜11Dのもの比べて、長くなっている。
【0047】
そして、上述したように、側壁11Aは底部12に枢支されている。より具体的には、収容筐体10の側壁11Aの下部11bは、側壁11Aの上部11aを下部11bに向って回動させることにより、上部11aを地面Fに接触させて、側壁11Aの内面11cが地面Fに対して傾斜するような長さとなっている。
【0048】
すなわち、側壁11Aの上部11aが地面Fに接触した状態で、傾斜した側壁11Aの内面11cは、収容筐体10に収容された被梱包物60に対して降坂面となっている。この接触状態において、地面Fに対する側壁11Aの内面11cの傾斜角度θは、梱包および開梱時において、被梱包物60に衝撃なくスムーズに搬送することができる程度の角度であることが望ましい。なお、この傾斜角度θは、側壁11Aの上部11aから下部11bまでの長さと、基台50の高さ(基台50を用いない場合には、地面Fから、梱包体を配置した箇所における収容筐体10の底部12までの高さ)を選定することにより決定される。
【0049】
さらに、側壁11Aの内面11cのうち側壁11Aの上部11aから下部11bに沿った位置には、側壁11Aの上部11aが地面Fに接触した状態で、キャスタ64,64を支持するための一対の板状の受け材51,51が並置されている。なお、梱包状態において、この受け材51,51を収容するために、各包装材32B,32Bの側面には収容溝37が形成されている。
【0050】
受け材51は、梱包および開梱時にキャスタ64を傷つけることなく、キャスタ64を介して、被梱包物60の荷重を受けることができる材質からなればよく、その材質としては、木材、樹脂材料などを挙げることができる。
【0051】
そして、一対の受け材51,51の間には、側壁11Aの上部11aが地面Fに接触した状態で、受け材51,51に沿ってキャスタ64が移動するように被梱包物60の底面61を案内するためのガイド材52が配置されている。より具体的には、ガイド材52の取出し方向P側の端部52pが、側壁11Aの上部11aに一致するように、ガイド材52は配置されている。
【0052】
ガイド材52は、被梱包物60の底面61を案内することができるのであれば、その材質は特に限定されるものではなく、本実施形態の場合には、緩衝材30と同じ材料からなる。これにより、図2(b)に示すように、被梱包物60を梱包した状態において、ガイド材52は、被梱包物60の側面63を保護するための緩衝材となる。
【0053】
さらに、ガイド材52の上面(被梱包物60と接触する表面)には、中央支持材40に配置したスライド材43と同様に、ガイド材52の上面に対して被梱包物60の底面61をスライドさせるための(底面61に対して滑り易くするための)スライド材53が貼り合わされている。スライド材53は、ポリアセタール(POM)等の非発泡樹脂のボードであり、スライド材53の表面は、ガイド材52の上面よりも摩擦係数が小さくなっている。
【0054】
なお、一対の受け材51,51と、ガイド材52とは、接着剤などにより、側壁11Aの内面11cに貼着されている。上述した中央支持材40、受け材51,51、ガイド材52の高さ(厚さ)の関係および配置関係については、以下の図3に示す梱包体の開梱作業を説明する際に、合わせて説明する。
【0055】
図3は、上述した本発明の第1実施形態に係る梱包体の開梱作業を説明するための模式的側面図であり、(a)〜(f)は、第1〜第6までの一連作業工程を説明するための図であり、以下に示すようにして、図2(b)に示す梱包状態から梱包体100の開梱作業を行う。
【0056】
図3(a)に示すように、第1の作業工程において、梱包体100(図2(b)参照)から、上部筐体15を上部包装材31,31共に上方に引き抜き、包装材32B,32Bを取り除く。
【0057】
次に、図3(b)に示すように、第2の作業工程において、収容筐体10の側壁11Aの上部11aを外側下方に倒すように(収容筐体10を開く(開放する)ように)、上部11aを回動させることにより、側壁11Aの上部11aを地面Fに接触させて側壁11Aの内面11cを地面に対して傾斜角度θで傾斜させる。そして、被梱包物60の重心が、受け材51,51およびガイド材52に移るまで、中央支持材40の支持面(正確には、スライド材43の表面)に対して、被梱包物60(の底面61)を取出し方向Pにスライドさせる。中央支持材40にはスライド材43が配置されているので、中央支持材40に対して被梱包物60を取出し方向Pに容易にスライドさせることができる。
【0058】
次に、図3(c)に示すように、第3の作業工程において、被梱包物60の重心が、受け材51,51およびガイド材52に移ったことを確認しながら、被梱包物60を受け材51に向って、ゆっくりと移動させる。
【0059】
このように、被梱包物60を取出し方向Pに移動したときに、被梱包物60の底面61は、中央支持材40からスライドして、ガイド材52に案内される。これにより、開梱時に、被梱包物60のキャスタ64が一対の受け材51,51に移動するように、被梱包物60を支障なく誘導することができる。
【0060】
このとき、中央支持材40とガイド材52の関係は、ガイド材52が、側壁11Aの上部11aが地面Fに接触した状態で、前記ガイド材52の収容方向Q側の端部52qと、中央支持材40とにより、被梱包物60の底面61を支持するような関係になっている。このような関係を満たすためには、中央支持材40とガイド材52の配置位置およびこれらの高さを調整することにより達成することができる。
【0061】
さらに、中央支持材40と受け材51と、ガイド材52との関係は、側壁11Aの上部11aが地面Fに接触した状態で、ガイド材52の端部52qと、中央支持材40とにより、被梱包物60を支持した際に、受け材51が被梱包物60のキャスタ64(正確には車輪)に接触するような関係になっている。このような関係を満たすためには、中央支持材40とガイド材52の配置位置およびこれらの高さに加え、受け材の厚み(高さ)を調整することにより達成することができる。
【0062】
このような関係を満たすことにより、被梱包物60を取出し方向Pに移動した際に、被梱包物60の重心を中央支持材40から受け材51およびガイド材52にスムーズにシフトすることができる。これにより、被梱包物60の重心が中央支持材40から受け材51およびガイド材52に移った際に生じる、被梱包物60への衝撃を抑えることができる。
【0063】
次に、図3(d)に示すように、第4の作業工程において、被梱包物60のキャスタ64,64が、受け材51,51に接触したことを確認しながら、被梱包物60を受け材51に沿って、ゆっくりと移動させる。
【0064】
続いて、図3(e)に示すように、第5の作業工程において、被梱包物60のすべてのキャスタ64,64が、受け材51,51に接触した状態で、被梱包物60を受け材51に沿って、ゆっくりと、さらに移動させる。このとき、受け材51とガイド材52,52の関係は、図3(c)において説明した関係を満たしつつ、受け材51とガイド材52,52に、被梱包物60の荷重が支持されるような関係となっている。
【0065】
ここで、ガイド材52の表面には、スライド材53が配置されているので、ガイド材52に対して被梱包物60を取出し方向Pに容易にスライドさせることができる。また、被梱包物60の底面61には、ガイド材52が接触しており、ガイド材52は、底面61を受け材51に沿った方向(取出し方向P)に被梱包物60を案内するので、被梱包物60の移動時に、キャスタ64が受け材51から脱輪することはない。
【0066】
また、ガイド材52の取出し方向P側の端部52pが、側壁11Aの上部11aに一致するように、ガイド材52は配置されているので、被梱包物60の荷重の一部をガイド材52が受けたとしても、ガイド材52の端部52pを介してその荷重を地面Fで支えることができる。
【0067】
そして、図3(f)に示すように、キャスタ64が地面Fに移動するまで、被梱包物60を取出し方向Pに沿って移動させる。このような一連の作業工程を経て、図2(b)に示す梱包体100の開梱を完了させる。
【0068】
ここでは、図3(a)〜(f)を用いた梱包体の開梱作業を示したが、被梱包物60の梱包作業は、この逆の手順を行えばよい。梱包時には、ガイド材52により、収容筐体10に向う被梱包物60の底面61が受け材51,51に沿った方向(収容方向Q)に案内されるので、被梱包物60のキャスタ64,64の車輪が脱輪することなくキャスタ64を受け材51に受けさせて、被梱包物60を収容筐体10の内部に移動させることができる。
【0069】
図4は、図1に示す実施形態の変形例を示した図であり、(a)は、梱包材のガイド材に係る第1の変形例、(b)は、梱包材のガイド材に係る第2の変形例を示した図である。図5は、図1に示す実施形態の別の変形例を示した図であり、(a)は、梱包材のガイド材に係る第1の変形例を示した図、(b)は、梱包材のガイド材に係る第2の変形例を示した図である。
【0070】
図4および図5に示す梱包材が、図1に示す梱包材と相違する点は、ガイド材の位置、大きさ、および形状であるので、以下にこの相違点を説明し、同じ機能を有する部材は、同じ符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0071】
図4(a)に示すように、第1の変形例では、ガイド材52Aは、ガイド材52Aの両端部52p,52qが、側壁11Aの上部11aおよび下部11bに一致するように、側壁11Aの内面11cに配置されている。このようなガイド材52Aを設けることにより、ガイド材52Aに作用する被梱包物60の荷重を、ガイド材52Aの両端部52p,52qを介して、基台50および地面Fで支えることができる。
【0072】
しかしながら、側壁11Aが、被梱包物60の荷重を受けるに充分な強度を有している場合には、被梱包物60の荷重を、側壁11Aの上部11aおよび下部11bを介して、基台50および地面Fで支えることができる。このような場合には、図4(b)に示すように、ガイド材52Bの両端部52p,52qが、側壁11Aの上部11aおよび下部11bのいずれにも、一致していなくてもよい。
【0073】
さらに、図5(a)に示すように、取出し方向Pに対して交差する方向(ここでは垂直方向)に、分割されたガイド材52Cを側壁11Aの内面11cに配置してもよく、図5(b)に示すように、取出し方向Pに沿って(ここでは平行方向)に、分割されたガイド材52Dを側壁11Aの内面11cに配置してもよい。
【0074】
図6は、図1に示す実施形態の別の変形例を示した模式的断面図であり、(a)中央支持材と包装材の係止前の断面図、(b)は、中央支持材と包装材を係止させたときの断面図である。図6に示す梱包材が、図1に示す梱包材と相違する点は、中央支持材と包装材の構造であるので、以下にこの相違点を説明し、その他の構成に関してはその詳細な説明を省略する。
【0075】
図6(a),(b)に示すように、本変形例において、中央支持材40Aは、取出し方向Pへの(ガイド材が配置された側壁側への)中央支持材40Aの移動が制限されるように、収容方向Q側の包装材32Cに係止されている。
【0076】
具体的には、中央支持材40Aの底面40aの一端側には、包装材32Cに係止するための係止部40bが形成されており、包装材32Cの内側の上面32aには、この係止凹部40bに係合するための係止部32bが形成されている。そして、この係止部40bに形成された凹部40cに、係止部32bの凹部32cを形成するためのエッジ部32dが係合すると共に、係止部32bに形成された凹部32cに、係止部40bの凹部40cを形成するためのエッジ部42dが係合する。
【0077】
このようにして、包装材32Cおよび中央支持材40Aを、取出し方向Pへの中央支持材40Aの移動が制限されるように係止させることにより、開梱時において、中央支持材40Aに対して被梱包物60をスライドしたときに、中央支持材40Aが被梱包物60と共に移動することを抑制することができる。
【0078】
図7は、図1〜6に示す実施形態に係る梱包材の受け材の変形例を示した図であり、(a)は、取出し方向に沿った先端を傾斜させた受け材を示した図、(a)チャンネル状の受け材を示した図、(b)は、ガイド溝が形成された受け材を示した図である。
【0079】
上述した実施形態に係る受け材51は、平板状の受け材であったが、図7(a)に示すように、受け材51Aは、取出し方向Pに沿った先端が傾斜面51aとなっている。このような傾斜面51aを設けることにより、梱包および開梱時において地面と受け材51Aとの間のキャスタ64の移動時に生じる被梱包物60への衝撃を抑制することができる。
【0080】
また、図7(b)に示すように、受け材51Bは、チャンネル状の受け材であり、取出し方向Pに沿って回転するキャスタを案内するためのリブ(ガイド)51bを、取出し方向Pに沿った表面51cの両側に形成してもよい。また、図7(c)に示すように、受け材51Cの表面に取出し方向Pに沿って回転するキャスタを案内するためのガイド溝(ガイド)51dを形成してもよい。
【0081】
このような受け材51B,51Cを用いることにより、ガイド材と共に、キャスタの車輪を取出し方向Pに沿って案内するので、キャスタの車輪の脱輪をより確実に防止し、容易かつ安全に被梱包物を移動させることができる。
【0082】
以上、本発明の実施の形態を図面を用いて詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計変更があっても、それらは本発明に含まれるものである。
【0083】
本実施形態では、梱包および開梱時には、ガイド材が、被梱包物の底面に接触していたが、ガイド材が被梱包物の底面を案内することができるのであれば、ガイド材が被梱包物の底面に接触していなくてもよい。また、ガイド材により被梱包物の底面を案内させるために、被梱包物の底面に案内用の取出し方向に沿って凹部を設けてもよい。
【0084】
また、本実施形態では、ガイド材は、ガイド材の端部と、中央支持材とにより、被梱包物の底面を支持するような関係になっていたが、中央支持材とガイド材との間において被梱包物の重心の移動が円滑に行うことができるのであれば、特にこのような関係を満たさなくてもよい。
【0085】
また、本実施形態では、中央支持材の支持面(上面)およびガイド材の上面に、スライド材を設けたが、これらの表面の上において被梱包物の底面を容易にスライドさせることができるのであれば、いずれか一方にスライド材を配置する、または、いずれにもスライド材を配置しなくてもよい。
【0086】
また、本実施形態では、収容筐体の底部の下に基台を配置したが、梱包および開梱作業時に、収容筐体の底面を地面よりも高い位置に配置し、側壁の内面を所定の傾斜角度で傾斜させることができるのであれば、基台は、梱包材の一部に含まれなくてもよい。
【符号の説明】
【0087】
1:梱包材、10:下部筐体(収容筐体)、11A〜11D:側壁、11a:上部、11b:下部、12:底部、15:上部筐体、30:緩衝材、31:上部包装材、32A,32B,32C:包装材(下部包装材)、32a:上面、32b:係止部、32c:凹部、32d:エッジ部、33:係合凹部、35収容孔、36:案内通路、37:収容溝、38:側面凹部、40,40A:中央支持材、40a:底面、40b:係止部、40c:凹部、42d:エッジ部、43:スライド材、50:基台、51,51A〜51C:受け材、51a:傾斜面、51b:リブ、51c:表面、51d:ガイド溝、52,52A〜52D:ガイド材、52p,52q:端部、53:スライド材、100:梱包体、F:地面、P:取出し方向、Q:収容方向、θ:傾斜角度、60:被梱包物、61:底面、63:側面、64:キャスタ、64a:車輪

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底面に複数のキャスタが取り付けられた被梱包物の前記底面の中央を支持する中央支持材と、前記被梱包物および中央支持材を少なくとも収容する収容筐体と、を少なくとも備え、前記キャスタを非接触状態にして前記被梱包物を梱包状態とする梱包材であって、
前記収容筐体の少なくとも1つの側壁の下部は、該側壁の上部を回動させることにより該上部を地面に接触させて前記側壁の内面が地面に対して傾斜するように、前記収容筐体の底部に枢支されており、
前記側壁の内面のうち前記上部から前記下部に沿った位置には、前記側壁の上部が地面に接触した状態で、前記複数のキャスタを支持するための一対の受け材が並置されており、
前記一対の受け材の間には、前記側壁の上部が地面に接触した状態で、該受け材に沿って前記キャスタが移動するように前記被梱包物の底面を案内するためのガイド材が配置されていることを特徴とする梱包材。
【請求項2】
前記ガイド材は、前記側壁の上部が地面に接触した状態で、少なくとも前記ガイド材の端部と、前記中央支持材とにより、前記被梱包物の底面を支持するようになっていることを特徴とする請求項1に記載の梱包材。
【請求項3】
前記受け材は、前記側壁の上部が地面に接触した状態で、前記ガイド材の端部と、前記中央支持材とにより、前記被梱包物の底面を支持した際に、前記キャスタに接触するようになっていることを特徴とする請求項2に記載の梱包材。
【請求項4】
前記ガイド材の端部と、前記側壁の上部および下部の少なくとも一方とが、一致していることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の梱包材。
【請求項5】
前記ガイド材は、前記梱包状態において、前記被梱包物の側面を保護するための緩衝材となっていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の梱包材。
【請求項6】
前記中央支持材の支持面には、該支持面に対して前記被梱包物の底面をスライドさせるためのスライド材が配置されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の梱包材。
【請求項7】
前記ガイド材の上面には、該上面に対して前記被梱包物の底面をスライドさせるためのスライド材が配置されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の梱包材。
【請求項8】
前記梱包材は、前記被梱包物の下部側面を覆うことにより該下部側面を包装するための包装材を備えており、前記中央支持材は、前記ガイド材が配置された側壁側への移動が制限されるように、前記包装材に係止されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の梱包材。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の梱包材により前記被梱包物を梱包した梱包体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−171640(P2012−171640A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−33960(P2011−33960)
【出願日】平成23年2月18日(2011.2.18)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】