説明

梱包用バンド留め具

【課題】 梱包用バンド留め具において、構造単純にし、バンドの挿通係止作業性を向上し、バンドの結束強度を高くし、使用高さを小さくすること。
【解決手段】 梱包用バンド留め具10であって、枠体10Aの中央部に設けられる通し孔11と、枠体10Aの一側部に設けられる第1の係止孔12Aと、枠体10Aの他側部に設けられる第2の係止孔12Bを、枠体10Aに並列配置し、枠体10Aの第1の係止孔12Aと通し孔11とに挟まれる部分を第1の巻掛部13Aとし、枠体10Aの第2の係止孔12Bと通し孔11とに挟まれる部分を第2の巻掛部13Bとするもの。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は梱包用バンド留め具に関する。
【背景技術】
【0002】
紙バンド等を用いて梱包物を結束するためのバンド留め具として、特許文献1に記載のものがある。この留め具は、合成樹脂製留め具の四辺形枠体に左右の長孔、中間部の長孔、右側の大きい孔、該枠体から右側の大きい孔の側傍に張り出されて片持ち支持されるI字形ストッパを有する。使用方法は、バンドの一端を中間部の長孔に通し、その先端を左側の長孔に通して締め付けておく。次いで、このバンドを梱包物に巻き付けてその他端を右側の大きい孔にループ状に差し込み、そのループ状空間内にI字形ストッパをその基部から折り曲げて差し込み、該他端を引っ張ってI字形ストッパに巻掛け係止し、梱包物の締め付け結束を完了する。
【特許文献1】意匠登録1090277
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1に記載のバンド留め具には以下の問題点がある。
(1)留め具が四辺形枠体の外に張り出されて片持ち支持されるI字形ストッパを有し、構造複雑になる。また、留め具は、このI字形ストッパをその基部から折り曲げて使用するものであり、強度的に紙製にすることも困難がある。
【0004】
(2)バンドの他端を留め具に係止する作業が、該他端を右側の大きい孔にループ状に差し込み、そのループ状を維持しながら、そのループ状空間内にI字形ストッパをその基部から折り曲げて差し込み、該他端を引っ張ってI字形ストッパに巻掛け係止するものになる。バンドの係止作業性が非常に悪い。
【0005】
(3)梱包物の締め付け結束によりバンドに作用する結束張力は、バンドが巻掛け係止されるI字形ストッパにより担持される。ところが、I字形ストッパは枠体に片持ち支持されるに過ぎず、バンドに作用する結束張力の担持能力は低く、留め具が同一材料からなるときに保証できるバンドの結束強度は低い。
【0006】
(4)留め具は梱包物の結束を完了したとき、梱包物の上面に配置される。このとき、留め具の梱包物の上面に対する最大高さは、枠体の板厚に、該枠体の上に折り曲げられたI字形ストッパの板厚を加えた高さになる。留め具の使用高さが徒らに大きくなる。
【0007】
本発明の課題は、梱包用バンド留め具において、構造単純にし、バンドの挿通係止作業性を向上し、バンドの結束強度を高くし、使用高さを小さくすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明は、枠体の中央部に設けられる通し孔と、枠体の一側部に設けられる第1の係止孔と、枠体の他側部に設けられる第2の係止孔を、枠体に並列配置し、枠体の第1の係止孔と通し孔とに挟まれる部分を第1の巻掛部とし、枠体の第2の係止孔と通し孔とに挟まれる部分を第2の巻掛部とする梱包用バンド留め具であって、バンドの両端のそれぞれが枠体の下面側から通し孔に挿通されて上面側に繰り出し可能にされ、バンドの通し孔から繰り出されて第1の巻掛部に巻掛られた一端が枠体の上面側から第1の係止孔に挿通されて下面側に繰り出し可能にされ、バンドの通し孔から繰り出されて第2の巻掛部に巻掛られた他端が枠体の上面側から第2の係止孔に挿通されて下面側に繰り出し可能にされるようにしたものである。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1の発明において更に、前記通し孔がバンドの両端挿通用として共用される唯1個の通し孔からなるようにしたものである。
【0010】
請求項3の発明は、請求項1又は2の発明において更に、前記枠体が厚紙からなるようにしたものである。
【発明の効果】
【0011】
(請求項1)
(a)留め具が枠体の内部に通し孔と第1の係止孔と第2の係止孔を孔加工するだけの単純な構造からなる。留め具は枠体だけからなるものであり、強度的に紙製とすることも容易である。
【0012】
(b)バンドの一端を枠体の通し孔と第1の係止孔に順に挿通して留め具に係止し、バンドの他端を枠体の通し孔と第2の係止孔に順に挿通して留め具に係止するだけで、梱包物の締め付け結束を完了できる。バンドの係止作業性は非常に簡便である。
【0013】
(c)梱包物の締め付け結束によりバンドの一端に作用する結束張力は、バンドの一端が巻掛け係止される第1の巻掛部により担持される。バンドの他端に作用する結束張力は、バンドの他端が巻掛け係止される第2の巻掛部により担持される。第1の巻掛部と第2の巻掛部は枠体に両持ち支持されるものであり、バンドに作用する結束張力の担持能力は高く、留め具が保証できるバンドの結束強度は高い。
【0014】
(d)留め具は梱包物の結束を完了したとき、梱包物の上面に配置される。このとき、留め具の梱包物の上面に対する最大高さは、枠体の板厚だけである。留め具の使用高さを小さくし、梱包物をコンパクトに結束できる。
【0015】
(請求項2)
(e)留め具の通し孔は、バンドの一端挿通用の第1の挿し孔と他端挿通用の第2の挿し孔の2個の通し孔からなるものとすることもできるが、バンドの両端挿通用として共用される唯1個の通し孔からなるものにすることにより、留め具の構造を一層単純化できる。
【0016】
(請求項3)
(f)留め具が単純な構造になるから、前述(a)の如くに紙製とすることができる。留め具の枠体を厚紙からなるものとすることにより、留め具を再資源化できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1は留め具を示す模式図、図2は留め具によるバンドの締め付け結束方法を示す模式図、図3は留め具によるバンドの結束解除方法を示す模式図、図4は留め具によるバンドの締め付け結束方法の変形例を示す模式図、図5は留め具の変形例を示す模式図、図6は留め具の変形例を示す模式図である。
【実施例】
【0018】
図1に示す梱包用バンド留め具10は、合紙等の厚紙からなる矩形状の枠体10Aの中央部に設けられる長孔状の通し孔11と、枠体10Aの一側に設けられる長孔状の第1の係止孔12Aと、枠体10Aの他側に設けられる長孔状の第2の係止孔12Bを、互いに平行な3列をなすように枠体10Aに並列配置している。そして、留め具10は、枠体10Aの通し孔11と第1の係止孔12Aとに挟まれる部分を四角断面棒状の第1の巻掛部13Aとし、枠体10Aの通し孔11と第2の係止孔12Bとに挟まれる部分を四角断面棒状の第2の巻掛部13Bとする。留め具10は、厚紙素材をポンチとダイスにより打抜くプレス加工により、枠体10Aの外郭を打抜き、同時に通し孔11と係止孔12A、12Bを打抜いて製作できる。
【0019】
留め具10は、図2に示す如く、梱包物Pに巻き付けた平帯状の紙バンド1の両端1A、1Bのそれぞれが枠体10Aの下面側から通し孔11に挿通されて上面側に繰り出し可能とされ、バンド1の通し孔11から繰り出されて第1の巻掛部13Aに巻掛られた一端1Aが枠体10Aの上面側から第1の係止孔12Aに挿通されて下面側に繰り出し可能にされ、バンド1の通し孔11から繰り出されて第2の巻掛部13Bに巻掛られた他端1Bが枠体10Aの上面側から第2の係止孔12Bに挿通されて下面側に繰り出し可能にされる。このとき、留め具10は、バンド1の両端1A、1Bの挿通用として共用される唯1個の通し孔11を枠体10Aに備える。
【0020】
従って、留め具10の使用手順は以下の如くになる(図2)。
(1)梱包物Pに巻き付けられるバンド1の一端1Aを枠体10Aの下面側から通し孔11に挿通して上面側に繰り出し、この一端1Aを第1の巻掛部13Aに巻掛け、更に枠体10Aの上面側から第1の係止孔12Aに挿通して下面側に繰り出しておく(図2(A))。
【0021】
(2)上述(1)のバンド1を梱包物Pに巻き付けてその他端1Bを枠体10Aの下面側から通し孔11に挿通して上面側に繰り出し、この他端1Bを第2の巻掛部13Bに巻掛け、更に枠体10Aの上面側から第2の係止孔12Bに挿通して下面側に繰り出す(図2(B))。
【0022】
(3)上述(2)のバンド1の他端1B(一端1Aでも可)を引っ張り、この他端1Bを枠体10Aの通し孔11、第2の巻掛部13B、第2の係止孔12Bから一層繰り出し、バンド1を張力Tで梱包物Pに引き締める。このとき、留め具10の枠体10Aはバンド1の両端1A、1Bを梱包物Pの上面との間に挟んで梱包物Pの上面に引き寄せ配置される。これにより、バンド1の通し孔11に挿通された一端1Aは、張力Tで第1の巻掛部13Aの上下面側角エッジa、bに強く押し当て係止されて巻掛けられ、かつ第1の係止孔12Aの下面側角エッジcに押し当て係止されて巻掛けられ、第1の巻掛部13Aにゆるみなく巻掛け係止保持される(図2(C)、(D))。また、バンド1の通し孔11に挿通された他端1Bも、張力Tで第2の巻掛部13Bの上下面側角エッジa、bに強く押し当て係止されて巻掛けられ、かつ第2の係止孔12Bの下面側角エッジcに押し当て係止されて巻掛けられ、第2の巻掛部13Bにゆるみなく巻掛け係止保持され、結果としてバンド1による梱包物Pの締め付け結束を強固に完了する(図2(C)、(D))。
【0023】
梱包物Pに締め付けたバンド1の結束を解除するときには、図3に示す如く、留め具10を梱包物Pの上面に対して斜めに傾け、或いは上方に持ち上げることにより、バンド1の一端1Aと第1の巻掛部13Aの上下面側角エッジa、b、第1の係止孔12Aの下面側角エッジcとの押し当て係止状態を解き、かつバンド1の他端1Bと第2の巻掛部13Bの上下面側角エッジa、b、第2の係止孔12Bの下面側角エッジcとの押し当て係止状態を解く。これにより、バンド1の両端1A、1Bは第1の巻掛部13A、第2の巻掛部13Bとの図3(A)に示す巻掛け係止状態を解かれ、バンド1は図3(B)に示す如くにたるんで梱包物Pに対する締め付けを解除できる。
【0024】
尚、上述(3)の後、上述(1)で第1の係止孔12Aから繰り出してあるバンド1の一端1Aを、図4に示す如く、枠体10Aの上面側に巻掛けて枠体10Aの上面側から第2の係止孔12Bに挿通して下面側に繰り出しても良い。これによれば、バンド1による梱包物Pの締め付け結束を一層強固に完了できる。
【0025】
バンド1の帯幅を例えば15mm、帯厚を例えば0.8mmとするとき、留め具10の諸元は例えば以下の通りとする。枠体10Aの横長さ(各孔11、12A、12Bの並列方向を横とし、各孔11、12A、12Bの長手方向を縦とする)41mm、縦長さ28mm、孔11、12A、12Bの孔長さ16mm(長孔のストレート部11mm、両側アール部各2.5mm)、孔11、12A、12Bの孔幅5mm、巻掛部13A、13Bの幅8mm。
【0026】
図1の留め具10は、通し孔11と係止孔12A、12Bの孔幅を互いに同一にした。但し、図5に示す如く、通し孔11の孔幅を係止孔12A、12Bの孔幅より広幅にしても良く、例えば通し孔11の孔幅8mm、係止孔12A、12Bの孔幅5mmとすることができる。
【0027】
図6の留め具10は、枠体10Aの中央部に設ける通し孔11を、バンド1の一端1A挿通用の第1の通し孔11Aと、他端1B挿通用の第2の通し孔11Bの2個からなるものにした(図6(A))。この留め具10にあっては、図6(B)に示す如く、バンド1の一端1Aが枠体10Aの下面側から第1の通し孔11Aに挿通されて上面側に繰り出し可能にされ、バンド1の通し孔11Aから繰り出されて第1の巻掛部13Aに巻掛られた一端1Aが枠体10Aの上面側から第1の係止孔12Aに挿通されて下面側に繰り出し可能にされる。また、バンド1の他端1Bが枠体10Aの下面側から第2の通し孔11Bに挿通されて上面側に繰り出し可能にされ、バンド1の通し孔11Bから繰り出されて第2の巻掛部13Bに巻掛けられた他端1Bが枠体10Aの上面側から第2の係止孔12Bに挿通されて下面側に繰り出し可能にされる。
【0028】
留め具10によれば以下の作用効果を奏する。
(a)留め具10が枠体10Aの内部に通し孔11と第1の係止孔12Aと第2の係止孔12Bを孔加工するだけの単純な構造からなる。留め具10は枠体10Aだけからなるものであり、強度的に紙製とすることも容易である。
【0029】
(b)バンド1の一端1Aを枠体10Aの通し孔11と第1の係止孔12Aに順に挿通して留め具10に係止し、バンド1の他端1Bを枠体10Aの通し孔11と第2の係止孔12Bに順に挿通して留め具10に係止するだけで、梱包物Pの締め付け結束を完了できる。バンド1の係止作業性は非常に簡便である。
【0030】
(c)梱包物Pの締め付け結束によりバンド1の一端1Aに作用する結束張力Tは、バンド1の一端1Aが巻掛け係止される第1の巻掛部13Aにより担持される。バンド1の他端1Bに作用する結束張力Tは、バンド1の他端1Bが巻掛け係止される第2の巻掛部13Bにより担持される。第1の巻掛部13Aと第2の巻掛部13Bは枠体10Aに両持ち支持されるものであり、バンド1に作用する結束張力Tの担持能力は高く、留め具10が保証できるバンド1の結束強度は高い。
【0031】
(d)留め具10は梱包物Pの結束を完了したとき、梱包物Pの上面に配置される。このとき、留め具10の梱包物Pの上面に対する最大高さは、枠体10Aの板厚だけである。留め具10の使用高さを小さくし、梱包物Pをコンパクトに結束できる。
【0032】
(e)留め具10の通し孔11は、バンド1の一端1A挿通用の第1の通し孔11Aと他端1B挿通用の第2の通し孔11Bの2個の通し孔11A、11Bからなるものとすることもできるが、バンド1の両端挿通用として共用される唯1個の通し孔11からなるものにすることにより、留め具10の構造を一層単純化できる。
【0033】
(f)留め具10が単純な構造になるから、前述(a)の如くに紙製とすることができる。留め具10の枠体10Aを厚紙からなるものとすることにより、留め具10を再資源化できる。
【0034】
以上、本発明の実施例を図面により詳述したが、本発明の具体的な構成はこの実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。例えば、本発明の留め具は紙製に限らず、合成樹脂等からなるものでも良い。バンドも紙製に限らず、合成樹脂等からなるものでも良い。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】図1は留め具を示す模式図である。
【図2】図2は留め具によるバンドの締め付け結束方法を示す模式図である。
【図3】図3は留め具によるバンドの結束解除方法を示す模式図である。
【図4】図4は留め具によるバンドの締め付け結束方法の変形例を示す模式図である。
【図5】図5は留め具の変形例を示す模式図である。
【図6】図6は留め具の変形例を示す模式図である。
【符号の説明】
【0036】
1 バンド
1A 一端
1B 他端
10 留め具
10A 枠体
11、11A、11B 通し孔
12A 第1の係止孔
12B 第2の係止孔
13A 第1の巻掛部
13B 第2の巻掛部
P 梱包物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
枠体の中央部に設けられる通し孔と、枠体の一側部に設けられる第1の係止孔と、枠体の他側部に設けられる第2の係止孔を、枠体に並列配置し、
枠体の第1の係止孔と通し孔とに挟まれる部分を第1の巻掛部とし、枠体の第2の係止孔と通し孔とに挟まれる部分を第2の巻掛部とする梱包用バンド留め具であって、
バンドの両端のそれぞれが枠体の下面側から通し孔に挿通されて上面側に繰り出し可能にされ、
バンドの通し孔から繰り出されて第1の巻掛部に巻掛られた一端が枠体の上面側から第1の係止孔に挿通されて下面側に繰り出し可能にされ、
バンドの通し孔から繰り出されて第2の巻掛部に巻掛られた他端が枠体の上面側から第2の係止孔に挿通されて下面側に繰り出し可能にされる梱包用バンド留め具。
【請求項2】
前記通し孔がバンドの両端挿通用として共用される唯1個の通し孔からなる請求項1に記載の梱包用バンド留め具。
【請求項3】
前記枠体が厚紙からなる請求項1又は2に記載の梱包用バンド留め具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−126530(P2009−126530A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−301012(P2007−301012)
【出願日】平成19年11月20日(2007.11.20)
【出願人】(599092424)秋山工業株式会社 (2)
【Fターム(参考)】