説明

梱包用緩衝材

【課題】中空構造などとしておくことで外力を良好に吸収することができ、それでいて、転がりにくく取り扱いが容易な、梱包用緩衝材を提供する。
【解決手段】少なくとも一つの断面形状が正円ではない定幅図形からなる。このため、外周曲面に垂直な法線ベクトルは円筒や球体と同様に、すべて重心に集中するので、例えば、中空構造としておくことで外力を良好に吸収することができる。それでいて、円筒や球体のように転がりやすくないため、取り扱いが容易である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、精密機器の梱包などに利用される梱包用緩衝材に関する。
【背景技術】
【0002】
通信装置等の精密機器は落下時の加速度(以降、G値)に耐える梱包設計が常に求められており、梱包箱と緩衝材の設計の組合せ試験は必須である。例えば、弾性体である発泡体を円筒状に形成した梱包用緩衝材が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平07−003069号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一旦、評価が完了すれば中身の梱包用緩衝材はパルプモールドによる金型での量産が開始されるわけだが、評価完了から梱包用緩衝材のリリースまでの期間が長く通常、製品開発が完了した上でないと梱包設計に着手できないという課題を常に抱えたままである。
【0005】
従って、過去の類似製品の梱包箱を利用して量産初ロットの出荷に対応しつつ梱包用緩衝材の追加や接触位置の変更等により間に合わせる場合が多々発生するのが実情で非常に大きな工数がかかっていた。また、パルプモールドは一定の出荷数量がなければ金型投資による回収リスクがあるため、それ以外の緩衝設計も常に考慮に入れなければならない。
【0006】
なお、特許文献1の梱包用緩衝材は、単純な形状で汎用性がある。しかし、その外形が円筒形であるために転がりやすく、取り扱いが容易ではない。これを転がりにくくするために角柱状などに形成することも想定できるが、その場合は緩衝性能が低下することになる。
【0007】
本発明は上述のような課題に鑑みてなされたものであり、中空構造などとしておくことで外力を良好に吸収することができ、それでいて、転がりにくく取り扱いが容易であり、段ボール箱と製品サイズに適当な空隙があれば、特別な緩衝材を設計することなく、大きな緩衝効果が得られ、製品外形の外接サイズが同等であれば、形状がどのように違っていても空隙を充填することで段ボール箱を共用できる、梱包用緩衝材を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の梱包用緩衝材は、少なくとも一つの断面形状が正円ではない定幅図形からなる。
【0009】
なお、本発明で云う形状は、その形状を目標として物理的に形成した結果を意味しており、当然ながら幾何学的に完全な形状であることは要しない。また、定幅図形とは、差渡しの幅が常に一定となる図形である。つまり、転がした時に高さが変わらない図形である。ただし、重心の高さは変わってもいい。
【0010】
また、ルーローの多角形とは、定幅図形の一つであり、正多角形の各頂点を中心に、半径が、その正多角形の一辺となる円弧で結んだ形状である。曲線をもつので多角形ではない。ルーローの三角形は、辺数が最少のルーローの多角形であり、これを立体に適用することにより、ルーローの四面体が形成される。
【発明の効果】
【0011】
本発明の梱包用緩衝材は、少なくとも一つの断面形状が正円ではない定幅図形からなる。このため、外周曲面に垂直な法線ベクトルは円筒や球体と同様に、すべて重心に集中するので、例えば、中空構造としておくことで外力を良好に吸収することができる。それでいて、円筒や球体のように転がりやすくないため、取り扱いが容易である。さらに、段ボール箱と製品サイズに適当な空隙があれば、特別な緩衝材を設計することなく、大きな緩衝効果が得られるため、試作品や量産化の準備前の梱包落下衝撃に対する品質を保証することができる。また、製品外観が変更になり、量産対応の緩衝材であるパルプモールド設計品の一部が使えない場合、金型の改造までに本製品での代用が可能であり、出荷作業へのインパクトを軽減できる。しかも、製品外形の外接サイズが同等であれば、形状がどのように違っていても空隙を充填することで段ボール箱を共用できるため、梱包費用を大幅に削減できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態の梱包用緩衝材の外観を示す斜視図である。
【図2】梱包用緩衝材の外観を示し、(a)は正面図、(b)は平面図、である。
【図3】梱包用緩衝材の外観を示し、(a)は底面図、(b)は側面図、である。
【図4】梱包用緩衝材の内部構造を示す縦断側面図である。
【図5】梱包用緩衝材の正面形状と空孔との関係を示す模式図である。
【図6】本発明の実施例として段ボールのケースに梱包用緩衝材で製品を封入した状態を示す模式図である。
【図7】本発明の実施例として段ボールのケースに梱包用緩衝材で製品を封入した状態を示す模式図である。
【図8】一変形例の梱包用緩衝材の内部構造を示す縦断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施の一形態を図1ないし図5を参照して以下に説明する。本発明の梱包用緩衝材100は、図示するように、少なくとも一つの断面形状が正円ではない定幅図形からなる。図1および図2(a)に示すように、その断面形状である正面形状は、ルーローの多角形である、ルーローの三角形からなる。
【0014】
さらに、本実施の形態の梱包用緩衝材100は、図1および図2(a)および図4に示すように、中空に形成されており、図5に示すように、断面形状を形成する全部の頂点に内接する多角形である三角形に内接する円形の空孔110が形成されている。
【0015】
図5中の多角形である正三角形の破線は、外周のルーロー曲線と対比させるために記している。つまり、本実施の形態の梱包用緩衝材100では、断面形状であるルーローの三角形を形成する外面に多角形である三角形が内接し、この三角形に内接する円形の空孔110が形成されている。
【0016】
なお、本実施の形態の梱包用緩衝材100では、図4等に示すように、ルーローの三角形を形成する断面形状と直交する全部の断面形状が矩形である長方形に形成されている。本実施の形態の梱包用緩衝材100は、例えば、弾性体である発泡体で形成されている。
【0017】
上述のような構成において、本実施の形態の梱包用緩衝材100は、少なくとも一つの断面形状が正円ではない定幅図形からなる。このため、外周曲面に垂直な法線ベクトルは円筒や球体と同様に、すべて重心に集中する。
【0018】
そして、本実施の形態の梱包用緩衝材100は、中空構造に形成されているので、外力を良好に吸収することができる。それでいて、円筒や球体のように転がりやすくないため、取り扱いが容易である。
【0019】
さらに、段ボール箱と製品サイズに適当な空隙があれば、特別な緩衝材を設計することなく、大きな緩衝効果が得られるため、試作品や量産化の準備前の梱包落下衝撃に対する品質を保証することができる。
【0020】
また、製品外観が変更になり、量産対応の緩衝材であるパルプモールド設計品の一部が使えない場合、金型の改造までに本製品での代用が可能であり、出荷作業へのインパクトを軽減できる。
【0021】
しかも、製品外形の外接サイズが同等であれば、形状がどのように違っていても空隙を充填することで段ボール箱を共用できるため、梱包費用を大幅に削減できる。特に、本実施の形態の梱包用緩衝材100として、三種類などの複数のサイズを用意しておくことで、段ボール箱と製品に生じる空隙に埋めれば、出荷量に関係なく箱サイズを共通化することもできる。
【0022】
さらに、本実施の形態の梱包用緩衝材100では、図4等に示すように、ルーローの三角形の正面形状と直交する側面形状および平面形状が矩形である。このため、正面形状がルーローの三角形を形成するように押出成形した細長い発泡体(図示せず)を複数に分断するだけで、本実施の形態の梱包用緩衝材100を簡単に量産することができる。
【0023】
[実施例]
なお、本発明の梱包用緩衝材100の実施例を図6および図7を参照して詳細に説明する。図6は、段ボールのケース210とカバー220とに収められた製品230が本発明の梱包用緩衝材100を介して収納されている様子である。
【0024】
図7は製品230と外形は類似だが製品内部に空隙がある製品240が収められ、製品内部の空隙の変形を防ぐために、本発明の梱包用緩衝材100が埋められている様子を表している。
【0025】
なお、実験では梱包用緩衝材100の製造に最も安価な発泡押出材を使用して、大きさも三種類ほど用意した。すると、図6に示すように、図3の状態で本実施の形態の梱包用緩衝材100は、従来の梱包用緩衝材と同様に、緩衝設計のG値の規格を満足することが確認された。
【0026】
一方、従来の梱包用緩衝材では(図示せず)、図4のような状態では、緩衝設計のG値の規格を満足できず、製品の変形の恐れがあるために内部保護の緩衝材と外部の緩衝設計を追加しなければならなかった。
【0027】
しかし、本実施の形態の梱包用緩衝材100では、図4の状態で緩衝設計のG値の規格を満足することができ、製品の変形を防止するために内部保護の緩衝材や外部の緩衝設計を追加する必要がないことが確認された。
【0028】
なお、本発明は本実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で各種の変形を許容する。例えば、上記形態では梱包用緩衝材100の断面形状である正面形状がルーローの三角形からなることを例示した。しかし、これがルーローの多角形である、ルーローの五角形や七角形からなってもよい(図示せず)。
【0029】
また、上記形態ではルーローの三角形からなる断面形状と直交する断面形状である側面形状が矩形に形成されていることを例示した。しかし、図8に示すように、このような断面形状が三角形や台形(図示せず)などに形成されていてもよい。
【0030】
これらの場合も、前述のように正面形状がルーローの三角形を形成するように押出成形した細長い発泡体(図示せず)を複数に分断するだけで、簡単に量産することができる。
【0031】
さらに、梱包用緩衝材がルーローの四面体として形成されていてもよい(図示せず)。この場合、梱包用緩衝材を一個ずつ型成形することになるので量産性は低下することになるが、緩衝の方向性がないので、極めて良好な梱包用緩衝材となる。
【0032】
なお、当然ながら、上述した実施の形態および複数の変形例は、その内容が相反しない範囲で組み合わせることができる。また、上述した実施の形態および変形例では、各部の構造などを具体的に説明したが、その構造などは本願発明を満足する範囲で各種に変更することができる。
【符号の説明】
【0033】
100 梱包用緩衝材
110 空孔
210 ケース
220 カバー
230 製品
240 製品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つの断面形状が正円ではない定幅図形からなる梱包用緩衝材。
【請求項2】
前記断面形状がルーローの多角形からなる請求項1に記載の梱包用緩衝材。
【請求項3】
前記断面形状がルーローの三角形からなる請求項2に記載の梱包用緩衝材。
【請求項4】
中空に形成されている請求項1ないし3の何れか一項に記載の梱包用緩衝材。
【請求項5】
前記断面形状を形成する全部の頂点に内接する多角形に内接する円形の空孔が形成されている請求項4に記載の梱包用緩衝材。
【請求項6】
前記断面形状と直交する断面形状の少なくとも一つが矩形に形成されている請求項1ないし5の何れか一項に記載の梱包用緩衝材。
【請求項7】
前記断面形状と直交する断面形状の全部が矩形に形成されている請求項1ないし5の何れか一項に記載の梱包用緩衝材。
【請求項8】
前記断面形状と直交する断面形状の一つが三角形に形成されている請求項1ないし6の何れか一項に記載の梱包用緩衝材。
【請求項9】
ルーローの四面体として形成されている請求項1ないし5の何れか一項に記載の梱包用緩衝材。
【請求項10】
弾性体で形成されている請求項1ないし8の何れか一項に記載の梱包用緩衝材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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