説明

棒材切断機

【課題】円板状回転刃物の刃欠け及び寿命が短い、切断面が粗く、精度が悪い等の不具合を解消でき、安定した作業が可能な棒材切断機を提供すること。
【解決手段】クランプ装置2と切削用電動装置4との間に、クランプ装置2にクランプされた棒材に対して直交する方向に回転刃3を前進させる自動送り装置5を設ける。自動送り装置5は、前後方向に向けて配置されると共に、定位置で回転可能に支持された送りねじ軸25と、回転刃3と一体に回転する回転刃取付具11の回転を送りねじ軸25に動力伝達し、かつ回転数を一定の減速比で減速する減速機構26と、送りねじ軸25の回転に伴って前方に向けて移動自在に設けられたハーフナット27とを備える。ハーフナット27の前方への移動時に、ハーフナット27と一体に切削用電動装置4及び減速機構26が前方に移動される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄筋コンクリート工事等に用いられ、コンクリート補強に使用する棒鋼を切断するための棒材切断機に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄筋の切断は一般的には鉄筋カッタと称する油圧式のシャー切断が行われているが、この場合、鉄筋の端部に曲がりやつぶれ等の不具合を生じていた。鉄筋の端部が変形しガス圧接に適さない場合、グラインダがけをして鉄筋の端部を仕上げる等している。
【0003】
ところで、油圧式のシャー切断にて問題になるような鉄筋端部の曲がりやつぶれが生じない、円板状の回転刃によって棒材を切断する棒材切断装置が提案されている(例えば、特許文献1)。従来の手動式の棒材切断装置では、棒材把持部で被切断棒材に固定した後に、電動機のスイッチをオンして円板状回転刃を回転させ、回転刃を前進させるための可動部分のハンドルを手動で操作しながら棒材を切断していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−1143号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の手動式の棒材切断装置では、作業者が棒材切断装置の使い方に不慣れである場合、回転刃を棒材に衝突させてしまうことで刃欠けが起きたり、使い方の個人差や切断時における適正な回転刃の送り速度でない等によって刃物の寿命、耐久性に大きな差が生じていた。また、棒材の切断表面が粗悪になり、バリが早く発生していた。このために、頻繁に回転刃の修理や再研磨が必要となり、ランニングコストが高くなるという問題があった。
【0006】
従来の棒材切断装置は手動による回転刃の送りであるため、作業者の技能による差が生じ易く、熟練した作業者は上手に使用できるが、経験の浅い作業者は上述のように多くの不具合を発生させていた。
【0007】
本発明の目的は、従来の手動送りで発生していた円板状回転刃物の刃欠け及び寿命が短い、切断面が粗く、精度が悪い等の不具合を解消でき、安定した作業が可能な棒材切断機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る棒材切断機は、駆動源としてのモータの回転により、外周に刃先を有する円板状の回転刃を回転駆動させる切削用電動装置と、前記切削用電動装置の前方において被切断物としての棒材をクランプするクランプ装置と、を備えたものであって、上記課題を解決するために、前記切削用電動装置が前記クランプ装置に対して前後方向に移動自在に設けられ、前記クランプ装置と前記切削用電動装置との間に配設されると共に、前記クランプ装置にクランプされた棒材に対して直交する方向に前記回転刃を前進させる自動送り装置が設けられ、前記自動送り装置は、前後方向に向けて配置されると共に、定位置で回転可能に支持された送りねじ軸と、前記回転刃と一体に回転する回転刃取付具の回転を前記送りねじ軸に動力伝達し、かつ回転数を一定の減速比で減速する減速機構と、前記送りねじ軸に対して係合状態と係合解除状態とに移動可能であって、かつ前記係合状態において、前記送りねじ軸の回転に伴って前方に向けて移動自在に設けられたハーフナットと、を備え、前記ハーフナットの前方への移動時に、前記ハーフナットと一体に前記切削用電動装置及び前記減速機構が前方に移動される、ことを特徴とする。
【0009】
請求項2に係る棒材切断機は、請求項1に係る棒材切断機において、前記自動送り装置は、手動操作により、前記送りねじ軸に対して前記ハーフナットを前記係合状態と前記係合解除状態とに切り替え移動させるためのハンドル機構を備え、前記ハーフナットの前方への移動時に、前記ハーフナットと一体に前記ハンドル機構が前方に移動される、ことを特徴とするものである。
【0010】
請求項3に係る棒材切断機は、請求項1又は2に係る棒材切断機において、前記減速機構は、前記回転刃取付具の軸部周面に一体に設けられた歯形付プーリと、遊星歯車装置の入力軸に設けられた大プーリと、前記歯形付プーリの外周面と前記大プーリの外周面とに巻き掛けられたタイミングベルトと、前記遊星歯車装置の出力軸に設けられた駆動かさ歯車と、前記送りねじ軸の後部に形成されたスプライン部にスプライン係合されると共に、前記駆動かさ歯車と噛合された従動かさ歯車と、により構成されたことを特徴とするものである。
【0011】
請求項4に係る棒材切断機は、請求項3に係る棒材切断機において、前記送りねじ軸の前記スプライン部の外側には前記従動かさ歯車を前記駆動かさ歯車に向けて付勢する付勢バネが外挿されている、ことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る棒材切断機によれば、減速機構により、送りねじ軸が一定の減速比で回転し、送りねじ軸に係合したハーフナットが送りねじ軸の回転に伴って前方に向けて一定の速度で移動し、ハーフナットと一体に回転刃が前進して棒材を切断するので、作業者は回転刃の送り速度に気を使うことなく、作業者の技能の差によらず、一定の送り速度で棒材を切断でき、手動送りで発生していた円板状回転刃物の刃欠け及び寿命が短い、切断面が粗く、精度が悪い等の不具合を解消でき、安定した作業が可能となる。
【0013】
また、減速機構は、切削用電動装置における駆動源としてのモータの回転により回転駆動される回転刃と一体に回転する回転刃取付具の回転を送りねじ軸に動力伝達するので、切削用電動装置のモータを自動送り装置の動力源として共用することができ、別途の動力源を必要としない。
【0014】
請求項2に係る棒材切断機によれば、自動送り装置が、手動操作により、送りねじ軸に対してハーフナットを係合状態と係合解除状態とに切り替え移動させるためのハンドル機構を備えているので、手動操作によって、定位置で回転している送りねじ軸に対して、ハーフナットの前進をスタートあるいは前進を停止させることが可能であり、回転刃の回転速度に応じて回転刃の前進と前進ストップとを手動で切換操作できるので操作性がよい。
【0015】
請求項3に係る棒材切断機によれば、減速機構が送りねじ軸の後部に形成されたスプライン部にスプライン係合されると共に、駆動かさ歯車と噛合された従動かさ歯車を備えているので、送りねじ軸に回転動力を伝達しつつ減速機構をハーフナットと一体に前方に移動させることができる。
【0016】
請求項4に係る棒材切断機によれば、ハンドル機構により、送りねじ軸に対してハーフナットを係合解除状態に切り替え、この状態で、切削用電動機の部分を後方に引くと、送りねじ軸のスプライン部の外周に組み込まれた付勢バネの復帰力によって容易に元の原点位置に戻すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態に係る棒材切断機の平面図である。
【図2】図1に示す棒材切断機の正面図である。
【図3】図1に示す棒材切断機の側面図である。
【図4】図1に示す棒材切断機の底面図である。
【図5】図1のA−A矢視断面図である。
【図6】図1のB−B矢視断面図である。
【図7】係合解除状態のハンドル機構の断面図である。
【図8】係合状態のハンドル機構の断面図である。
【図9】ハーフナットの側面図である。
【図10】ハーフナットの底面図である。
【図11】ハンドル機構が係合状態時のカム板の正面図である。
【図12】ハンドル機構が係合解除状態時のカム板の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1は、本発明の実施形態に係る棒材切断機の平面図である。図2は図1に示す棒材切断機の正面図であり、図3は図1に示す棒材切断機の側面図であり、図4は図1に示す棒材切断機の底面図であり、図5は図1のA−A矢視断面図であり、図6は図1のB−B矢視断面図である。
【0019】
棒材切断機1は、概略として、被切断物としての棒材をクランプするクランプ装置2と、外周に刃先を有する円板状の回転切断工具としての回転刃3を回転駆動させる切削用電動装置4と、クランプ装置2と切削用電動装置4との間に配設されると共に、クランプされた棒材に対して直交する方向に切削用電動装置4を前進させる自動送り装置5とにより構成されている。図5に示すように、クランプ装置2の上方に自動送り装置5が配設され、自動送り装置5の上方に切削用電動装置4が配設されている。
【0020】
[切削用電動装置4]
切削用電動装置4の後部には、回転刃3を回転させるための駆動源としてのモータ6がそのモータ軸7を前方に向けて配設されている。また、切削用電動装置4の前部には、モータ軸7の軸線に対して直交する上下方向に向けて駆動軸8が回転自在に支持されている。モータ軸7の先端部にはかさ歯車9が一体に形成される一方、駆動軸8には大径のかさ歯車10が定位置で駆動軸8と一体に回転可能に設けられ、かさ歯車9にかさ歯車10が噛合されている。
【0021】
駆動軸8の下端には、駆動軸8と同心に、かつ駆動軸8と一体に回転可能に回転刃3を取りつけるための回転刃取付具11が取り付けられている。回転刃取付具11は、筒状の軸部の下端部に回転刃3を保持するための受けフランジ12が一体に形成され、受けフランジ12の下面に回転刃3がその回転面を水平方向に向けて配置され、さらに回転刃3の下面に抑えフランジ13が配置され、抑えフランジ13が受けフランジ12にねじ止めされ、回転刃3が受けフランジ12と抑えフランジ13との間に挟み込まれて保持されてる。
【0022】
なお、符号14はかさ歯車9及びかさ歯車10の上方を覆うカバーである。また、符号15は上部ケーシングであり、符号16は上部ケーシング15の下部に取り付けられた下部ケーシングである。
【0023】
[クランプ装置2]
クランプ装置2は、棒材60(図1、図3、図4参照)を回転刃3の前方にクランプするもので、締結解除位置(図4における実線)と締結位置(図4における2点鎖線)との間で回動可能に支持されたクランプレバー20と、クランプレバー20の回動動作を直線動作に変換して伝達するトグル機構21と、トグル機構21の動作により前後方向に移動可能とされた可動板22と、可動板22の後方に配置されると共に前面にV形の凹部23を有する固定板24とを備えている。棒材60は、例えば、コンクリート補強に使用する棒鋼である。
【0024】
クランプ装置2による棒材60のクランプは、被切断物としての棒材60を固定板24の凹部23に配置させ、クランプレバー20を締結位置に回動させると、トグル機構21を介して可動板22が後方に移動して固定板24に向けて接近し、可動板22と固定板24の凹部23との間に棒材60をクランプする。本発明においてクランプ装置2は棒材60を回転刃3の前方にクランプする機能を備えていればよく、その構成の細部については格別に限定されるものではない。
【0025】
[自動送り装置5]
図5に示すように、自動送り装置5は、前後方向に向けて配置されると共に、定位置で回転可能に支持された送りねじ軸25と、駆動軸8と一体に回転する回転刃取付具11の回転を送りねじ軸25に動力伝達し、かつ回転数を一定の減速比で減速する減速機構26と、送りねじ軸25に対して係合状態と係合解除状態とに移動可能であって、かつ係合状態において、送りねじ軸25の回転に伴って前方に向けて移動自在に設けられたハーフナット27と、図6に示すように、送りねじ軸25に対してハーフナット27を係合状態と係合解除状態とに切り替え移動させるためのハンドル機構28とを備えている。
【0026】
図5において、クランプ装置2の上面には支持ベース29が固定され、支持ベース29の前後方向の前端と後端寄りとには、支持板61、61がそれぞれ立設され、支持板61、61には、送りねじ軸25が前後方向に向けて配置されると共に、送りねじ軸25の前端部と中間部とが定位置で回転可能に支持されている。なお、クランプ装置2に対して、切削用電動装置4、上部ケーシング15及び下部ケーシング16が前後方向に移動自在に設けられている。
【0027】
送りねじ軸25の前部周面にはねじ山が台形をなしたねじ部40が形成されている。また、送りねじ軸25の中間部の軸支部分よりも後部は後方に延出されると共に、その周面には軸方向に沿ってスプライン部39(オススプライン)が形成されている。
【0028】
支持ベース29の上方には下部ケーシング16が配置され、下部ケーシング16の後部上面には遊星歯車装置30が配置され、遊星歯車装置30は、その入力軸(図示せず)と出力軸31とを、送りねじ軸25の軸線に対して直交する上下方向に向けて配設されている。
【0029】
[減速機構26]
回転刃取付具11の軸部周面には歯形付プーリ32が一体に設けられ、遊星歯車装置30の入力軸には歯形付プーリ32よりも大きい径の大プーリ33が一体に設けられ、歯形付プーリ32の外周面と大プーリ33の外周面とにはタイミングベルト34が巻き掛けられている。遊星歯車装置30の出力軸31は下部ケーシング16から下方に突出されており、出力軸31には小径の駆動かさ歯車35が固着されている。
【0030】
一方、送りねじ軸25の後部に形成されたスプライン部39には従動かさ歯車36がスプライン係合(メススプライン)され、出力軸31に設けられた駆動かさ歯車35と従動かさ歯車36とが噛合されている。また、送りねじ軸25のスプライン部39の外側には従動かさ歯車36を駆動かさ歯車35に向けて付勢する付勢バネ37が外挿されている。
【0031】
以上の説明から明らかなように、減速機構26は、歯形付プーリ32、タイミングベルト34、大プーリ33、遊星歯車装置30、駆動かさ歯車35、従動かさ歯車36により構成されている。また、自動送り装置5の動力源は、切削用電動装置4のモータ6を共用している。
【0032】
[ハンドル機構28]
図6に示すように、ハンドル機構28は、送りねじ軸25と直交する左右方向の一方(左方)に配設されている。図7は係合解除状態のハンドル機構28の断面図であり、図8は係合状態のハンドル機構28の断面図である。図7に示すように、下部ケーシング16の一方の側壁41には貫通孔42が設けられ、貫通孔42にはカム軸ホルダ43が嵌合され、カム軸ホルダ43の支軸孔44にはカム軸45が回動可能に挿通され、カム軸45の一端は下部ケーシング16の内方に配置され、カム軸45の他端は下部ケーシング16の外方の操作可能な位置に延出されている。カム軸45の他端部には切換ハンドル38が一体に設けられている。また、カム軸45の一端には円板形状のカム板46が軸と一体に形成され、カム板46はカム軸ホルダ43の一端部に形成された円形凹部47に収容されている。カム軸ホルダ43は、側壁41の外側に突出されたねじ部18に対してホルダ締付ナット17が締め込まれて側壁41に固定されている。
【0033】
カム板46の内側には上下一対のハーフナット27が配置されると共に、カム板46に対して上下方向に開閉移動可能に設けられている。図9はハーフナット27の側面図であり、図10はハーフナット27の底面図である。ハーフナット27は、送りねじ軸25のねじ部40と螺合する雌ねじ部48を備えたナット部49と、ナット部49を支持する支持板部50とを備え、支持板部50には穴51が設けられている。
【0034】
図7〜図8に示すように、上下一対のハーフナット27は、支持板部51をカム板46の前面に当接してそれぞれ配置され、上下のハーフナット27の支持板部50の穴51には摺動ピン52が嵌入され、上下の各摺動ピン52の先端部がカム板46の前面に設けられた上下のカム溝53、54に摺動可能に係合されている。
【0035】
図11はカム板46の正面図である(ハンドル機構28が係合状態時)。カム溝53、54は回転中心から径方向の上下に所定間隔を開けて水平方向に直線状に形成され、上部のカム溝53はカム板46の左側の周端から右側の周端に亘って形成され、下部のカム溝54は中央からカム板46の右側の周端に亘って形成されている。
【0036】
図7に示すように、上下一対のハーフナット27の内側には、押え板55が配置され、上下のハーフナット27のナット部49が押え板55に設けられた窓孔56を通して送りねじ軸25を臨む位置に突出されている。押え板55はカム軸ホルダ43にねじ止めされ、上下のハーフナット27の支持板部50が押え板55とカム軸ホルダ43との間に形成された上下方向の案内空間59に配置され、上下一対のハーフナット27がカム板46に対して上下方向のみ開閉移動可能とされている。
【0037】
ハーフナット27は、開状態の時に送りねじ軸25のねじ部40に対して係合解除状態となり(図7参照)、閉状態の時に送りねじ軸25のねじ部40に対して係合状態となる(図8参照)。以上の構成により、ハンドル機構28は、定位置で回転している送りねじ軸25に対して、ハーフナット27の前進をスタートあるいは前進を停止させることが可能となっている。
【0038】
以上の構成により、クランプ装置2に対して、切削用電動装置4、ハーフナット27、自動送り装置5の減速機構26及びハンドル機構28が前後方向に移動自在に設けられている。また、支持ベース29の上面の前方寄りには切断完了位置検出用のリミットスイッチ57が配設されている。なお、実施形態ではリミットスイッチ57はマイクロスイッチで構成されている。
【0039】
以上のように構成された棒材切断機1の作用について説明する。
[ハンドル機構28]
ハンドル機構28の作用について説明する。図12はカム板46の正面図である(ハンドル機構28が係合解除状態時)。ハンドル機構28を図8の係合状態から図7の係合解除状態とする場合には、閉位置にある切換ハンドル38を回動させて開位置とする。図8に示すようにハンドル機構28が係合状態にある場合には、上下のハーフナット27は最も接近しており、図11に示すように、カム板46のカム溝53、54は水平方向に向いており、カム溝53に係合している上側のハーフナット27の摺動ピン52aは、カム溝53の長手方向の中央に位置し、カム溝54に係合している下側のハーフナット27の摺動ピン52bは、カム溝54の長手方向の一端に位置している。
【0040】
閉位置にある切換ハンドル38を開位置に回動すると、カム板46は図11に示す姿勢から時計方向に略45度回転し、図12に示す姿勢となる。カム板46が図11に示す姿勢から時計方向に回動すると、摺動ピン52aはカム溝53に案内されて上方に移動し、摺動ピン52bはカム溝54に案内されて下方に移動し、図12に示す位置に各々移動する。開状態時は、ハーフナット27の雌ねじ部48は、送りねじ軸25のねじ部40に対して係合解除状態となる(図7参照)。
【0041】
逆に、開位置にある切換ハンドル38を閉位置に回動すると、カム板46は図12に示す姿勢から反時計方向に略45度回転し、図11に示す姿勢となる。カム板46が図12に示す姿勢から反時計方向に回動すると、摺動ピン52aはカム溝53に案内されて下方に移動し、摺動ピン52bはカム溝54に案内されて上方に移動し、図11に示す位置に各々移動する。閉状態時は、ハーフナット27の雌ねじ部48は、送りねじ軸25のねじ部40に対して係合状態となる(図8参照)。
【0042】
[自動送り装置5による棒材60の切削]
使用前には、ハンドル機構28の切換ハンドル38はニュートラルの状態(開位置)にしておく。切削用電動装置4の電源スイッチ58(図3参照)をオンすると、モータ6が作動してモータ軸7が回転し、モータ軸7の回転がモータ軸7に形成されたかさ歯車9と噛み合うかさ歯車10を通じて駆動軸8に伝達され、駆動軸8が回転する。駆動軸8が回転すると、駆動軸8と同軸上に一体に取り付けられた回転刃取付具11と、回転刃取付具11に保持された回転刃3が同じ回転速度で回転する。
【0043】
また、回転刃取付具11の回転は、減速機構26を通じて一定の減速比で減速されて送りねじ軸25に伝達され、送りねじ軸25に棒材60を切断するための適正な送り速度を与える。即ち、回転刃取付具11が回転すると、回転刃取付具11に設けられた歯形付プーリ32も同時に回転し、歯形付プーリ32の回転がタイミングベルト34を介して大プーリ33に伝達され、大プーリ33が回転する。大プーリ33は遊星歯車装置30の入力軸に取り付けられているため、遊星歯車装置30の出力軸31が回転し、出力軸31と一体に設けられた駆動かさ歯車35が回転する。さらに、駆動かさ歯車35の回転は、駆動かさ歯車35と噛み合う従動かさ歯車36を通じて送りねじ軸25に伝達され、送りねじ軸25が回転する。
【0044】
この状態で、ハンドル機構28の切換ハンドル38を回動操作し、ドライブ(閉位置)にすると、ハーフナット27が送りねじ軸25に向けて接近移動し、送りねじ軸25のねじ部40にハーフナット27の雌ねじ部48が係合し、送りねじ軸25の回転に伴って前進方向に推力がハーフナット27に与えられ、ハーフナット27が前方に移動する。
【0045】
ハーフナット27が前方に移動すると、これと同時に、ハンドル機構28、下部ケーシング16、上部ケーシング15、切削用電動装置4、減速機構26が前方に移動する。従って、回転刃3が前方に移動して棒材60を切断する。また、減速機構26の従動かさ歯車36は、送りねじ軸25のスプライン部39にスプライン係合されていることにより、送りねじ軸25と一体に回転しながら付勢バネ37の後端を前方に押しながら移動し、付勢バネの前端が中央の支持板61に当接すると、従動かさ歯車36が送りねじ軸25と一体に回転しながら付勢バネ37押し縮めつつ前方に移動する。
【0046】
回転刃3が前方に移動して棒材60の切断を完了すると、このときのハーフナット27を前進位置を切断完了位置としてリミットスイッチ57が検知し、リミットスイッチ57の検知信号によりモータ6の回転が停止する。モータ6が停止することにより、回転刃3の回転が停止すると共に自動送り装置5の前進もストップする。この状態で、電源スイッチ58をオフにする。
【0047】
次に、ハーフナット27、ハンドル機構28、下部ケーシング16、上部ケーシング15、切削用電動装置4(回転刃3を含む)、減速機構26を元の原点位置に戻す。ハンドル機構28の切換ハンドル38を回動して開位置にすると、ハーフナット27は上下に開いて送りねじ軸25のねじ部40との係合状態が解除される。ハーフナット27を開いた状態で切削用電動機4の部分を後方に引くと、送りねじ軸25のスプライン部39の外周に組み込まれ、押し縮められた状態の付勢バネ37の復帰力の助けによって容易に元の原点位置に戻すことができる。
【符号の説明】
【0048】
1 棒材切断機
2 クランプ装置
3 回転刃
4 切削用電動装置
5 自動送り装置
6 モータ
7 モータ軸
8 駆動軸
9 かさ歯車
10 かさ歯車
11 回転刃取付具
12 受けフランジ
13 抑えフランジ
14 カバー
15 上部ケーシング
16 下部ケーシング
17 ホルダ締付ナット
18 ねじ部
20 クランプレバー
21 トグル機構
22 可動板
23 凹部
24 固定板
25 送りねじ軸
26 減速機構
27 ハーフナット
28 ハンドル機構
29 支持ベース
30 遊星歯車装置
31 出力軸
32 歯形付プーリ
33 大プーリ
34 タイミングベルト
35 駆動かさ歯車
36 従動かさ歯車
37 付勢バネ
38 切換ハンドル
39 スプライン部
40 ねじ部
41 側壁
42 貫通孔
43 カム軸ホルダ
44 支軸孔
45 カム軸
46 カム板
47 円形凹部
48 雌ねじ部
49 ナット部
50 支持板部
51 穴
52 摺動ピン
53 カム溝
54 カム溝
55 押え板
56 窓孔
57 リミットスイッチ
58 電源スイッチ
59 案内空間
60 棒材
61 支持板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源としてのモータの回転により、外周に刃先を有する円板状の回転刃を回転駆動させる切削用電動装置と、
前記切削用電動装置の前方において被切断物としての棒材をクランプするクランプ装置と、を備えた棒材切断機において、

前記切削用電動装置が前記クランプ装置に対して前後方向に移動自在に設けられ、
前記クランプ装置と前記切削用電動装置との間に配設されると共に、前記クランプ装置にクランプされた棒材に対して直交する方向に前記回転刃を前進させる自動送り装置が設けられ、

前記自動送り装置は、
前後方向に向けて配置されると共に、定位置で回転可能に支持された送りねじ軸と、
前記回転刃と一体に回転する回転刃取付具の回転を前記送りねじ軸に動力伝達し、かつ回転数を一定の減速比で減速する減速機構と、
前記送りねじ軸に対して係合状態と係合解除状態とに移動可能であって、かつ前記係合状態において、前記送りねじ軸の回転に伴って前方に向けて移動自在に設けられたハーフナットと、を備え、
前記ハーフナットの前方への移動時に、前記ハーフナットと一体に前記切削用電動装置及び前記減速機構が前方に移動される、
ことを特徴とする棒材切断機。
【請求項2】
前記自動送り装置は、手動操作により、前記送りねじ軸に対して前記ハーフナットを前記係合状態と前記係合解除状態とに切り替え移動させるためのハンドル機構を備え、
前記ハーフナットの前方への移動時に、前記ハーフナットと一体に前記ハンドル機構が前方に移動される、
ことを特徴とする請求項1に記載の棒材切断機。
【請求項3】
前記減速機構は、
前記回転刃取付具の軸部周面に一体に設けられた歯形付プーリと、
遊星歯車装置の入力軸に設けられた大プーリと、
前記歯形付プーリの外周面と前記大プーリの外周面とに巻き掛けられたタイミングベルトと、
前記遊星歯車装置の出力軸に設けられた駆動かさ歯車と、
前記送りねじ軸の後部に形成されたスプライン部にスプライン係合されると共に、前記駆動かさ歯車と噛合された従動かさ歯車と、
により構成されたことを特徴とする請求項1又は2に記載の棒材切断機。
【請求項4】
前記送りねじ軸の前記スプライン部の外側には前記従動かさ歯車を前記駆動かさ歯車に向けて付勢する付勢バネが外挿されている、
ことを特徴とする請求項3に記載の棒材切断機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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