棒状ワークの切断方法
【課題】棒状ワークをその先端から所定長さに切断する際に、送りローラのスリップ回転駆動によるスリップ痕がワークに形成される不具合を防止することができる棒状ワークの切断方法を提供する。
【解決手段】棒状ワークの切断方法は、送りローラ13により送られているワーク40の先端40aを、切断手段14のワーク切断位置Cから下流側にワーク切断長さL分離れた定位置Sよりも下流側にオーバーランさせるオーバーラン工程と、定位置Sよりも下流側にオーバーランされたワーク40の先端40aを押戻し部材21で定位置Sに押し戻す押戻し工程と、先端40aが定位置Sに押し戻されたワーク40を切断手段14により切断する切断工程と、を含む。
【解決手段】棒状ワークの切断方法は、送りローラ13により送られているワーク40の先端40aを、切断手段14のワーク切断位置Cから下流側にワーク切断長さL分離れた定位置Sよりも下流側にオーバーランさせるオーバーラン工程と、定位置Sよりも下流側にオーバーランされたワーク40の先端40aを押戻し部材21で定位置Sに押し戻す押戻し工程と、先端40aが定位置Sに押し戻されたワーク40を切断手段14により切断する切断工程と、を含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長尺な押出材などの棒状ワークの切断方法、棒状ワーク用切断装置及び押出後面設備に関する。なお本明細書及び特許請求の範囲において、「上流」及び「下流」とは、それぞれ送りローラのワーク送り方向における上流及び下流を意味する。
【背景技術】
【0002】
例えば、押出材を製造する押出設備は、一般に、押出機と押出後面設備を具備している。押出後面設備は、押出機から押し出された長尺な押出材をその先端から所定長さに切断する切断装置を具備している。この切断装置は、通常、切断効率を高めるため、複数の押出材を左右方向に並列状に配置させて一括して切断するように構成されている。
【0003】
このように切断装置により複数の押出材を切断する場合、これらの押出材の切断長さを定めるために、これらの押出材の先端位置を揃える必要がある。
【0004】
特開平9−174325号公報(特許文献1)は、左右方向に並列配置された複数の長尺材を切断装置に備えられた切断手段により一括して切断する際に、これらの長尺材の先端をストッパ部材に当接させることでこれらの長尺材の先端位置を揃える方法を開示している。この方法では、送りローラにより送られているこれらの長尺材の先端がストッパ部材に当接されると、長尺材の前進移動が規制され、これにより、長尺材の先端から切断手段のワーク切断位置までの切断長さが定められる。そしてこの状態のまま長尺材を切断手段により切断し、もって所定長さの切断品(製品)が得られる。
【0005】
ストッパ部材を用いた従来のこの種の切断装置の一例について、図8を参照して以下に説明する。
【0006】
図8において、110は従来の切断装置、140は長尺材(押出材を含む)等の棒状ワーク、114はワーク140を所定長さに定寸切断する切断機(切断手段)、121はストッパ部材、113は送りローラである。
【0007】
図8(a)は、ワーク140を送りローラ113によって切断機114からストッパ部材121に向かう方向Fに送っている状態を示す従来の切断装置110の概略側面図である。図8(b)は、ワーク140の先端140aをストッパ部材121に当接させた状態を示す同切断装置110の概略側面図である。
【0008】
図8(a)に示すように、ストッパ部材121は、切断機114によるワーク切断長さLを定めるため、切断手段114のワーク切断位置Cから下流側にワーク切断長さL分だけ離れた位置Sに予め配置されている。この位置Sを「定位置(定寸位置)」と呼ぶ。
【0009】
この切断装置110では、左右方向に並列状に配置された複数のワーク140は、送りローラ113により切断機114からストッパ部材121に向かって一括して送られる。そして、図8(b)に示すように、ワーク140の先端140aがストッパ部材121に当接すると、ワーク140の前進移動が規制されると同時にワーク140の切断長さLが定められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平9−174325号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従来では、このようにワーク140の先端140aをストッパ部材121に当接させる際には、ワーク140の先端140aをストッパ部材121に確実に当接させるため、又は/及び、全てのワーク140の先端140aをストッパ部材121に当接させるため、先頭のワーク140の先端140aがストッパ部材121に当接してから、ワーク切断長さLやワーク残存長さに無関係に一律に所定時間(例えば5秒間程度)送りローラ113を回転駆動させていた。この間は、ワーク140の先端140aがストッパ部材121に押し当てられた状態でワーク140の前進移動が規制されるとともに、各送りローラ113はワーク140に対して同じ位置でスリップ回転駆動している。その結果、図9に示すように、ワーク140における各送りローラ113のスリップ回転位置142に、他の部分よりも局部的に黒光りした光沢模様からなるスリップ痕142が送りローラ113の軸方向(即ちワーク140の幅方向)に延びて形成されることがあった。なお、このスリップ痕143は「スリップマーク」とも呼ばれている。
【0012】
ワーク140にスリップ痕143が形成されると、該ワーク140を切断して得られる切断片は外観不良となり、製品として用いることができない。この問題は、ワーク140の個数が複数である場合に限らず、1個である場合でも同様に発生する。
【0013】
本発明は、上述した技術背景に鑑みてなされたもので、その目的は、棒状ワークをその先端から所定長さに切断する際に、送りローラのスリップ回転駆動によるスリップ痕がワークに形成される不具合を防止することができる棒状ワークの切断方法、該切断方法に用いられる棒状ワーク用切断装置、及び、該切断装置を具備した押出後面設備を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は以下の手段を提供する。
【0015】
[1] 棒状ワークをその先端から所定長さに切断手段により切断する棒状ワークの切断方法であって、
送りローラにより送られている棒状ワークの先端を、切断手段のワーク切断位置から下流側にワーク切断長さ分離れた定位置よりも下流側にオーバーランさせるオーバーラン工程と、
前記定位置よりも下流側にオーバーランされたワークの先端を押戻し部材で前記定位置に押し戻す押戻し工程と、
先端が前記定位置に押し戻されたワークを前記切断手段により切断する切断工程と、
を含むことを特徴とする棒状ワークの切断方法。
【0016】
[2] 前記押戻し部材は、ワークの前進移動を規制するストッパ部材である前項1記載の棒状ワークの切断方法。
【0017】
[3] 前記押戻し工程では、前記送りローラをフリー回転させる前項1又は2記載の棒状ワークの切断方法。
【0018】
[4] 前記オーバーラン工程は、ワークの先端が前記定位置を下流側に超えたことをセンサにより検知する検知工程を含む前項1〜3のいずれかに記載の棒状ワークの切断方法。
【0019】
[5] 前記オーバーラン工程は、ワークの先端をオーバーランさせた後、ワークの先端が前記押戻し部材に当接するまでの間に、前記送りローラによるワークの送りを停止させる送り停止工程を含む前項1〜4のいずれかに記載の棒状ワークの切断方法。
【0020】
[6] ワークは、並列状に配置された複数の棒状ワークであり、
前記オーバーラン工程では、前記複数のワークの先端の全てを前記定位置よりも下流側にオーバーランさせる前項1〜5のいずれかに記載の棒状ワークの切断方法。
【0021】
[7] 棒状ワークをその先端から所定長さに切断する棒状ワーク用切断装置であって、
棒状ワークを所定長さに切断する切断手段と、
前記切断手段よりも下流側に配置された押戻し部材を備えた押戻し手段と、
前記切断手段から前記押戻し部材に向かう方向にワークを送る送りローラと、
を含み、
前記押戻し手段は、前記送りローラによって前記切断手段のワーク切断位置から下流側にワーク切断長さ分離れた定位置よりも下流側にオーバーランされたワークの先端を、前記押戻し部材で前記定位置に押し戻すものであることを特徴とする棒状ワーク用切断装置。
【0022】
[8] 前記押戻し部材は、ワークの前進移動を規制するストッパ部材である前項7記載の棒状ワーク用切断装置。
【0023】
[9] 前記送りローラは、その回転形態が駆動回転とフリー回転とに切換え可能なものである前項7又は8記載の棒状ワークの切断装置。
【0024】
[10] 前記切断装置は、更に、ワークの先端が前記定位置を下流側に超えたことを検知するセンサを含んでいる前項7〜9のいずれかに記載の棒状ワーク用切断装置。
【0025】
[11] 前記押戻し手段は、ワークの前進移動を規制するストップ位置とワークの前進移動を規制しない非ストップ位置とに前記押戻し部材を変更可能に配置させる変更手段と、前記ストップ位置に配置された前記押戻し部材をワーク送り方向とは反対方向に移動させる駆動手段と、を備えている前項7〜10のいずれかに記載の棒状ワーク用切断装置。
【0026】
[12] 前記変更手段は、ワーク送り方向と平行に移動可能に配置された基台と、前記基台に回転自在に軸支された回転杆と、を有するとともに、前記回転杆の回転動作によって、前記回転杆に設けられた前記押戻し部材が前記非ストップ位置から前記ストップ位置に変更されるように構成されており、
前記駆動手段は、前記基台をワーク送り方向と平行に移動させる基台駆動手段を有しており、
前記押戻し手段は、前記基台がワーク送り方向とは反対方向に移動するように前記基台駆動手段を駆動させることによって、前記ストップ位置に配置された前記押戻し部材をワークの先端に当接させてワークの先端を前記定位置に押し戻すように構成されている前項11記載の棒状ワーク用切断装置。
【0027】
[13] 押出機から押し出された押出材を棒状ワークとしてその先端から所定長さに切断する前項7〜12のいずれかに記載の棒状ワーク用切断装置を具備していることを特徴とする押出後面設備。
【発明の効果】
【0028】
本発明は以下の効果を奏する。
【0029】
[1]の発明によれば、押戻し工程では、定位置よりも下流側にオーバーランさせたワークの先端をストッパ部材で定位置に押し戻すことにより、ワークに対して送りローラを必ずしもスリップ回転駆動させなくてもワークの先端をストッパ部材に確実に当接させることができ、これにより、ワークにスリップ痕が形成される不具合を防止することができる。あるいは、ワークの先端がストッパ部材に当接した際に送りローラがワークに対してスリップ回転駆動していたとしても、ワークにおける送りローラのスリップ回転位置がワークの押戻し動作に伴ってワークの軸方向に連続的に移動するので、ワークにスリップ痕が形成される不具合を防止することができる。
【0030】
[2]の発明によれば、ワークの前進移動をストッパ部材で規制することができる。
【0031】
[3]の発明によれば、押戻し工程にて送りローラをフリー回転させることにより、ワークの先端を定位置に押し戻す際に、送りローラがワークの押戻し動作に従ってワークの押戻し方向に従動回転される。これにより、ワークの先端を定位置に容易に押し戻すことができるし、ワークが送りローラ上を摺接移動することによるワークの傷付きを確実に防止することができるし、送りローラの摩耗変形を抑制することができる。
【0032】
[4]の発明によれば、ワークの先端が定位置を下流側に超えたことを確実に検出することができる。
【0033】
[5]の発明によれば、ワークの先端をオーバーランさせた後、ワークの先端がストッパ部材に当接するまでの間に、送りローラによるワークの送りを停止することにより、ワークの先端がストッパ部材に当接した際には送りローラはワークに対してスリップ回転駆動していない。そのため、ワークにスリップ痕が形成される不具合を確実に防止することができる。
【0034】
[6]の発明によれば、複数のワークの先端の全てを定位置よりも下流側にオーバーランさせることにより、押戻し工程にて全てのワークの先端を一括して定位置に押し戻すことができ、その結果、切断工程にて複数のワークを一括して切断することができる。
【0035】
[7]〜[10]の発明によれば、それぞれ上記[1]〜[4]の発明に係る棒状ワークの切断方法に好適に用いることができる棒状ワーク用切断装置を提供できる。
【0036】
[11]及び[12]の発明によれば、ワークの先端を定位置に確実に押し戻すことができる押戻し手段を備えた切断装置を提供できる。
【0037】
[13]の発明によれば、送りローラのスリップ回転駆動によるスリップ痕が押出材に形成される不具合を防止できる押出後面設備を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る棒状ワーク用切断装置としての押出材用切断装置を具備した押出後面設備の概略平面図である。
【図2】図2は、ワークとしての押出材を定位置よりも下流側にオーバーランさせた状態で示す同切断装置の斜視図である。
【図3】図3は、押出材を切断する工程を順に示す同切断装置の概略平面図である。
【図4】図4は、同切断装置の第1構成例に係る押戻し手段を用いて押出材の先端を押し戻す工程を順に示す押戻し手段の概略側面図である。
【図5】図5は、同切断装置の第2構成例に係る押戻し手段を用いて押出材の先端を押し戻す工程を順に示す押戻し手段の概略側面図である。
【図6A】図6Aは、同切断装置の第3構成例に係る押戻し手段を説明するための押戻し手段の概略平面図であって、押出材をストッパ部材に向かって送っている状態を示す図である。
【図6B】図6Bは、図6Aの状態のときの同押戻し手段の概略側面図である。
【図6C】図6Cは、押出材の先端にストッパ部材を当接させた状態を示す同押戻し手段の概略平面図である。
【図6D】図6Dは、図6Cの状態のときの同押戻し手段の概略側面図である。
【図6E】図6Eは、押出材の先端を定位置に押し戻した状態を示す同押戻し手段の概略平面図である。
【図6F】図6Fは、図6Eの状態のときの同押戻し手段の概略側面図である。
【図7A】図7Aは、同切断装置の第4構成例に係る押戻し手段を説明するための押戻し手段の概略平面図であって、押出材をストッパ部材に向かって送っている状態を示す図である。
【図7B】図7Bは、図7Aの状態のときの同押戻し手段の概略側面図である。
【図7C】図7Cは、押出材の先端にストッパ部材を当接させた状態を示す同押戻し手段の概略平面図である。
【図7D】図7Dは、図7Cの状態のときの同押戻し手段の概略側面図である。
【図7E】図7Eは、押出材の先端を定位置に押し戻した状態を示す同押戻し手段の概略平面図である。
【図7F】図7Fは、図7Eの状態のときの同押戻し手段の概略側面図である。
【図8】図8は、従来の棒状ワーク用切断装置を用いてワークを切断する工程を順に示す切断装置の概略側面図である。
【図9】図9は、ワークの送りローラとの当接面(ワークの底面)にスリップ痕が形成された状態を示すワークの底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
次に、本発明の幾つかの実施形態について図面を参照して以下に説明する。
【0040】
図1において、1は、本発明の一実施形態に係る押出後面設備である。この押出後面設備1は、押出機2、イニシャルテーブル3、ランアウトテーブル4、クーリングテーブル5、ストレッチテーブル6、ストレージテーブル7、及び、本発明の一実施形態に係る棒状ワーク用切断装置10を具備している。切断装置10により切断される棒状ワークは、長尺な棒状アルミニウム(その合金を含む)押出材40である。以下では、棒状ワークを押出材40と記する。
【0041】
この押出後面設備1では、押出機2から押し出された長尺な押出材40は、イニシャルテーブル3及びランアウトテーブル4上を順次走行し、その後、移載装置(図示せず)によって、ランアウトテーブル4上からクーリングテーブル5、ストレッチテーブル6、ストレージテーブル7、及び、切断装置10のソーチャージテーブル11上へ順次移載される。
【0042】
クーリングテーブル5上では押出材40が冷却ファン等の冷却手段(図示せず)により冷却される。ストレッチテーブル6上では押出材40の曲がりがストレッチャー6a、6a(ヘッドストック及びテールストック)により引張矯正される。ストレージテーブル7上では複数の押出材40が整然と並列状に並べられる。そして、これらの押出材40がソーチャージテーブル11上に左右方向に並列状に載置される。
【0043】
押出機2から押し出された押出材40の長さは、例えば15〜60mの範囲内であり、押出材40の幅及び厚さ(高さ)は、それぞれ例えば5〜600mmの範囲内である。押出材40の横断面形状は、略山字状又は上向き略E字状である(図2参照)。ただし本発明では、押出材40の長さ、幅及び厚さはそれぞれ上記範囲内であることに限定されるものではないし、押出材40の断面形状も限定されない。
【0044】
切断装置10は、前記ソーチャージテーブル11、切断手段14、ソーゲージテーブル12、押戻し手段20、インスペクションテーブル17、センサ15、制御手段16などを含んでいる。
【0045】
切断手段14は、押出材40をその先端から所定長さに順次定寸に切断するものであり、例えば鋸刃(図示せず)を有する切断機から構成されている。
【0046】
図1において、Cは、切断手段14の押出材切断位置である。Lは、押出材40の先端40aからの押出材切断長さである。Sは、押出材切断位置Cから下流側に切断長さL分だけ離れた、予め定められた位置である。したがって、押出材40の先端40aがこの位置Sに配置しているときに押出材40を切断手段14により切断すれば、所望する切断長さLの切断片41が得られる。この位置Sを「定位置(定寸位置)」と呼ぶ。押出材切断長さLは、例えば1〜25mの範囲内である。切断片41は、サッシ材、車両材、ヒートシンク材、コンベアフレーム材などに用いられる押出材に用いられる。ただし本発明では、切断長さLは、切断片41の用途などに応じて設定されるものであり、上記範囲内であることに限定されるものではない。
【0047】
また、切断手段14の配置位置及び切断手段14の押出材切断位置Cは固定されている。
【0048】
図2に示すように、ソーチャージテーブル11は、切断手段14の入側に配置されており、互いに離間して配置されるとともに押出材40を切断手段14に送る複数の送りローラ11aを備えている。
【0049】
ソーゲージテーブル12は、切断手段14の出側に配置されており、互いに離間して配置されるとともに押出材40及びその切断片41を送る複数の送りローラ12aを備えている。
【0050】
押戻し手段20は、押戻し部材としてのストッパ部材21、変更手段22、駆動手段23などを備えている。なお図2では、変更手段22と駆動手段23はいずれも図示されていない。
【0051】
ストッパ部材21は、定位置Sよりも下流側にオーバーランされた押出材40の前進移動を規制するとともに、押出材40の先端40aを定位置Sに押し戻すためのものであり、平板状に形成されており、切断手段14よりも下流側に配置されている。このストッパ部材21は、変更手段22によって、押出材40の前進移動を規制するストップ位置と押出材40の前進移動を規制しない非ストップ位置とに変更可能に配置されるとともに、更に、駆動手段23によって、押出材送り方向Fとは反対方向Gに移動可能に構成されている。ストッパ部材21の表面(ストップ面)は、平坦状に形成されるとともに、押出材送り方向Fに対して垂直に配置されている。
【0052】
本実施形態では、ストップ位置は、押出材送り方向Fの前方の位置である。非ストップ位置は、押出材送り方向Fに対して逸れた位置であり、具体的に例示すると、押出材送り方向Fに対して上方に逸れた位置である。
【0053】
ソーチャージテーブル11の送りローラ11aと、ソーゲージテーブル12の送りローラ12aは、ともに、押出材40を切断手段14からストッパ部材21に向かう方向に送る役割を有している。さらに、これらの送りローラ11a、12aは、その回転形態が駆動回転とフリー回転とに切換え可能に構成されている。説明の便宜上、本明細書では、特に明記しない限り、送りローラ11aと送りローラ12aをまとめて「送りローラ13」を記する。
【0054】
送りローラ13上には、左右方向に並列配置された複数の押出材が水平に載置される。本実施形態では、押出材の個数は2つである。
【0055】
なお、押戻し手段20の具体的な構成については後述する。
【0056】
センサ15は、各押出材40の先端40aが定位置Sを下流側に超えたことを検知するものであり、各押出材40の先端40aが通過する定位置Sの上方に配置されており、詳述すると定位置Sの真上に配置されている。
【0057】
なお、図1及び3において、センサ15を定位置Sの真上に図示すると、定位置Sを示す一点鎖線とセンサ15とが重なるため、両者が重ならないようにするため、定位置Sよりも若干下流側にずれた位置にセンサ15を図示している。
【0058】
センサ15は、非接触式センサとして市販されている透過型光電センサや反射型光電センサ等である。
【0059】
制御手段16は、センサ15により検知された検知情報に基づいて、送りローラ13、押戻し手段20及び切断手段14の動作を制御するものであり、ROM、RAM、CPU等を有するコンピュータを備えている。コンピュータには所定の制御を行うプログラムが予めインストールされている。
【0060】
図1に示すように、インスペクションテーブル17上には、押出材40の切断片41について外観検査などの様々な検査をするために切断片41が載置される。
【0061】
次に、本実施形態の切断装置10を用いた押出材40の切断方法について、図3を参照して以下に説明する。
【0062】
図3において、図3(a)は、押出材40を送りローラ13によって切断手段14からストッパ部材21に向かう方向に送っている状態を示す切断装置10の概略側面図である。図3(b)は、押出材40の先端40aを定位置Sよりも下流側にオーバーランさせた状態を示す図である。図3(c)は、押出材40の先端40aをストッパ部材21で定位置Sに押し戻した状態を示す図である。図3(d)は、押出材40を切断手段14により切断した状態を示す図である。図3(e)は、ストッパ部材21を非ストップ位置に配置させるとともに押出材40の切断片41をストッパ部材21よりも下流側に送った状態を示す図である。
【0063】
まず、図3(a)に示すように、ソーチャージテーブル11上に左右方向に並列配置された複数(本実施形態では2つ)の押出材40を送りローラ13によって切断手段14からストッパ部材21に向かう方向に一括して送る。このとき、ストッパ部材21は、ストップ位置として、定位置Sよりも押出材送り方向Fの下流側(前方側)の位置に予め配置されている。また、ソーチャージテーブル11上に配置されたこれらの押出材40の先端位置は、互いに相対的に前後方向に僅かにずれている。押出材送り速度は例えば10〜60m/minの範囲内に設定される。
【0064】
送りローラ13によって送られている押出材40の先端40aは、切断手段14を通過してストッパ部材21に向かって進行する。この送り動作の途中でも、これらの押出材40の先端位置が互いに相対的に前後方向に少しずれる。
【0065】
そして、図3(b)に示すように、送りローラ13によって全ての押出材40の先端40aを定位置Sよりも下流側にオーバーランさせる(図2参照)。この工程を「オーバーラン工程」という。オーバーランの量は例えば10〜300mmの範囲内に設定される。このオーバーラン工程では、押出材40の先端40aが定位置Sを下流側に超えると、その情報がセンサ15により検知される。この工程を「検知工程」という。センサ15により検知された検知情報は、制御手段16に送信される。全ての押出材40の先端40aが定位置Sを超えたことをセンサ15が検知したら、すなわち全ての押出材40の先端40aが定位置Sよりも下流側にオーバーランしたら、その後、少なくとも1つの押出材40の先端40a(例:先頭の押出材40の先端40a)がストッパ部材21に当接するまでの間に、送りローラ13の回転駆動を停止させることで押出材40の送りを停止する。この工程を「送り停止工程」という。そして、送りローラ13の回転形態をフリー回転にする。
【0066】
次いで、図3(c)に示すように、ストッパ部材21を押出材送り方向Eとは反対方向Gに移動させることによって、これらの押出材40の先端40aにストッパ部材21を当接させてこれらの押出材40の先端40aをストッパ部材21で定位置Sに一括して押し戻す。この工程を「押戻し工程」という。ストッパ部材21の押戻し速度は、例えば5〜40m/minの範囲内に設定される。
【0067】
この押戻し工程において、これらの押出材40の先端40aにストッパ部材21が当接することにより、これらの押出材40の先端位置が一括して揃えられる。このとき、送りローラ13は、既にフリー回転に切り換えられているので、押出材40の押戻し移動に従って押出材40の押戻し方向に従動回転する。
【0068】
次いで、図3(d)に示すように、これらの押出材40を切断手段14により一括して切断する。この工程を「切断工程」という。
【0069】
次いで、図3(e)に示すように、ストッパ部材21を、非ストップ位置として、押出材送り方向Fに対して上方に逸れた位置に配置させる。そして、ソーゲージテーブル12の送りローラ12aによって押出材40の切断片41を一括してソーゲージテーブル12の下流側に送る。その後、図3(a)〜(e)の工程を繰り返す。なお、ソーゲージテーブル12の下流側に送られた切断片41は、ソーゲージテーブル12上からインスペクションテーブル17上に一括して移載される(図1参照)。
【0070】
これらの工程における送りローラ13の動作制御(例:送りローラ13の回転駆動の停止、送りローラ13のフリー回転への切換え)と、ストッパ部材21の動作制御と、切断手段14の動作制御などは、センサ15により検知された検知情報に基づいて制御手段16により行われる。
【0071】
而して、上述した押出材40の切断方法は次の利点がある。
【0072】
押戻し工程では、定位置Sよりも下流側にオーバーランさせた押出材40の先端40aをストッパ部材21で定位置に押し戻すことにより、押出材40に対して送りローラ13を必ずしもスリップ回転駆動させなくても押出材40の先端40aをストッパ部材21に確実に当接させることができ、これにより、押出材40にスリップ痕が形成される不具合を防止することができる。
【0073】
さらに、オーバーラン工程では、押出材40の先端40aをオーバーランさせた後、押出材40の先端40aがストッパ部材21に当接するまでの間に、送りローラ13による押出材40の送りを停止しているので、押出材40の先端がストッパ部材21に当接した際には送りローラ13は押出材40に対してスリップ回転駆動していない。そのため、押出材40にスリップ痕が形成される不具合を確実に防止することができる。
【0074】
さらに、押戻し工程では、送りローラ13の回転形態をフリー回転に切り換えているので、押出材40の先端40aを定位置Sに押し戻す際に、送りローラ13が押出材40の押戻し動作に従って押出材40の押戻し方向Gに従動回転される。これにより、押出材40の先端40aを定位置Sに容易に押し戻すことができるし、押出材40が送りローラ13上を摺接移動することによる押出材40の傷付きを確実に防止することができるし、送りローラ13の摩耗変形を防止することができる。
【0075】
さらに、オーバーラン工程では、押出材40の先端40aが定位置Sを下流側に超えたことをセンサ15により検知するので、押出材40の先端40aが定位置Sを下流側に超えたことを確実に検出することができる。
【0076】
さらに、オーバーラン工程では、全ての押出材40の先端40aを定位置Sよりも下流側にオーバーランさせているので、押戻し工程にて全て押出材40の先端40aを一括して定位置Sに押し戻すことができ、その結果、切断工程にて全ての押出材40を一括して切断することができる。
【0077】
ここで、上記実施形態では、押出材40の先端40aをオーバーランさせた後、押出材40の先端40aがストッパ部材21に当接するまでの間に、送りローラ13による押出材40の送りを停止させている。しかるに、本発明では、その他に、押出材40の先端40aをオーバーランさせた後、送りローラ13による押出材40の送りを停止させないで継続して送りローラ13によって押出材40を送ることにより、押出材40の先端40aをストッパ部材21に当接させても良い。この場合、押出材40の先端40aがストッパ部材21に当接した際に送りローラ13が押出材40に対してスリップ回転駆動することとなるが、押戻し工程にて押出材40における送りローラ13のスリップ回転位置が押出材40の押戻し動作に伴い押出材40の軸方向に連続的に移動するので、押出材40にスリップ痕が形成される不具合を防止することができる。さらに、押戻し工程において押出材40の先端40aをストッパ部材21に押し付けた状態で押出材40の先端40aを定位置Sに押し戻すことができ、これにより、押出材40の先端40aを確実に定位置Sに配置させることができる。
【0078】
さらに、本発明は、押戻し工程において、送りローラ13を回転停止状態に固定したり、押出材送り方向Fとは逆方向Gに送りローラ13をストッパ部材21の移動速度(即ち押出材40の先端40aの押戻し速度)よりも低速度で回転駆動させることを排除するものではない。これらの場合であっても、押出材40における送りローラ13のスリップ回転位置が押出材40の押戻し動作に伴い押出材40の軸方向に連続的に移動するので、押出材40にスリップ痕が形成される不具合を防止することができる。
【0079】
もとより、本実施形態では、押戻し部材としてストッパ部材21が用いられているので、押出材40の前進移動を確実に規制することができる。なお本発明では、押戻し部材は、定位置Sよりも下流側にオーバーランされた押出材(ワーク)40の先端40aを定位置Sに押し戻す作用を奏するものであれば良く、必ずしも押出材40の前進移動を規制する作用を奏するものであることを要しない。しかしながら、本実施形態のように押戻し部材として押出材40の前進移動を規制する作用を奏するストッパ部材21を用いることが望ましい。
【0080】
次に、本実施形態の切断装置10における幾つかの押戻し手段20の具体的な構成及び動作について、図4〜図7Eを参照して以下に示す。
【0081】
図4に示した第1構成例の押戻し手段、図5に示した第2構成例の押戻し手段、図6A〜6Fに示した第3構成例の押戻し手段、図7A〜7Fに示した第4構成例の押戻し手段は、いずれも、上述したようにストッパ部材21、変更手段22、駆動手段23等を備えている。
【0082】
変更手段22は、押出材40の前進移動を規制するストップ位置と押出材40の前進移動を規制しない非ストップ位置とにストッパ部材21を変更可能に配置させるものである。
【0083】
駆動手段は、ストップ位置に配置されたストッパ部材21を押出材送り方向Fとは反対方向Gに移動させるものである。
【0084】
<第1構成例>
図4に示した第1構成例の押戻し手段20を以下に説明する。
【0085】
図4において、図4(a)は、押出材40をストッパ部材21に向かう方向に送っている状態を示す押戻し手段20の概略側面図である。図4(b)は、押出材40の先端40aにストッパ部材21を当接させた状態を示す図である。図4(c)は、押出材40の先端40aをストッパ部材21で定位置Sに押し戻した状態を示す図である。
【0086】
この押戻し手段20の変更手段22は、梃子杆26と、前記駆動手段23としての流体圧シリンダ24とを有している。流体圧シリンダ24としては、油圧シリンダ、ガスシリンダ等が用いられる。
【0087】
梃子杆26は、その長さ方向の中間部を支点部26aとするものであり、支点部26aで揺動可能に支持されており、切断手段(図示せず)よりも下流側であって送りローラ13の上側に配置されている。梃子杆26の支点部26aには、押出材送り方向Fに対して直交し且つ水平な方向(即ち左右方向)に延びた水平回転軸26dが挿通されており、この水平回転軸26dに梃子杆26がその支点部26aで軸支されている。
【0088】
この梃子杆26は、その一端部及び他端部をそれぞれ力点部26b及び作用点部26cとするものである。梃子杆26の力点部26bの下側には流体圧シリンダ24が固定状態に配置されるとともに、梃子杆26の力点部26bに流体圧シリンダ24の伸縮ロッド24aの先端部が軸着されている。梃子杆26の作用点部26cにはストッパ部材21の基端部が固定状態に取り付けられている。ストッパ部材21は、流体圧シリンダ24の伸縮ロッド24aの伸長及び短縮動作によって、梃子杆26を介して非ストップ位置とストップ位置とに変更される。
【0089】
そして、変更手段22は、流体圧シリンダ24の伸縮ロッド24aを伸長動作させることによって、ストッパ部材21を非ストップ位置からストップ位置に変更させるとともに、伸縮ロッド24aを短縮動作させることによって、ストッパ部材21をストップ位置から非ストップ位置に変更させるように構成されている。
【0090】
押戻し手段20は、流体圧シリンダ24の伸縮ロッド24aを伸長動作させることによって非ストップ位置からストップ位置に変更配置されたストッパ部材21を、伸縮ロッド24aを更に伸長動作させることによって、押出材40の先端40aに当接させて押出材40の先端40aをストッパ部材21で定位置Sに押し戻すように構成されている。
【0091】
次に、第1構成例の押戻し手段20を用いた押戻し工程を以下に説明する。
【0092】
図4(a)に示すように、押出材40の先端40aが定位置Sから下流側にオーバーランしている状態のときに、流体圧シリンダ24の伸縮ロッド24aを伸長動作させる。これにより、図4(b)に示すように、ストッパ部材21が非ストップ位置からストップ位置に配置されるとともに押出材40の先端40aに当接する。引き続き流体圧シリンダ24の伸縮ロッド24aを更に伸長動作させる。これにより、図4(c)に示すように、ストッパ部材21で押出材40の先端40aを定位置Sに押し戻す。
【0093】
このように、第1構成例の押戻し手段20を用いて押戻し工程を行うことにより、押出材40の先端40aを定位置Sに確実に押し戻すことができる。
【0094】
なお本発明では、流体圧シリンダ24は、その他に、例えば、図4(a)の一点鎖線で示した位置、すなわち梃子杆26の力点部26bの上側に固定状態に配置されていても良い。この場合、変更手段22は、流体圧シリンダ24の伸縮ロッド24aを短縮動作させることによって、ストッパ部材21を非ストップ位置からストップ位置に変更させるとともに、伸縮ロッド24aを伸長動作させることによって、ストッパ部材21をストップ位置から非ストップ位置に変更されるように構成される。また、押戻し手段20は、流体圧シリンダ24の伸縮ロッド24aを短縮動作させることによって非ストップ位置からストップ位置に変更配置されたストッパ部材21を、伸縮ロッド24aを更に短縮動作させることによって、押出材40の先端40aに当接させて押出材40の先端40aを定位置Sに押し戻すように構成される。
【0095】
<第2構成例>
図5に示した第2構成例の押戻し手段20を以下に説明する。
【0096】
図5において、図5(a)は、押出材40をストッパ部材21に向かう方向に送っている状態を示す押戻し手段20の概略側面図である。図5(b)は、押出材40の先端40aにストッパ部材21を当接させた状態を示す図である。図5(c)は、押出材40の先端40aをストッパ部材21で定位置Sに押し戻した状態を示す図である。
【0097】
この押戻し手段20の変更手段22は、回転杆27と、前記駆動手段23としての流体圧シリンダ24とを有している。流体圧シリンダ24としては、油圧シリンダ、ガスシリンダ等が用いられる。
【0098】
回転杆27は、押出材送り方向Fに対して直交し且つ水平な方向(即ち左右方向)に延びた水平回転軸27aに、回転杆27の長さ方向中間部で回転自在に軸支されている。水平回転軸27aは、切断手段(図示せず)よりも下流側であって送りローラ13の上側に配置されている。
【0099】
回転杆27の先端部には流体圧シリンダ24が固定状態に取り付けられている。さらに、流体圧シリンダ24の伸縮ロッド24aの先端部にはストッパ部材21が固定状態に取り付けられている。
【0100】
変更手段22は、回転杆27の回転動作によって、ストッパ部材21を非ストップ位置からストップ位置に変更させるように構成されている。
【0101】
押戻し手段20は、ストッパ部材21がストップ位置に配置された状態で、流体圧シリンダ24の伸縮ロッド24aを伸長動作させることによって、ストッパ部材21を押出材40の先端40aに当接させて押出材40の先端40aをストッパ部材21で定位置Sに押し戻すように構成されている。
【0102】
次に、第2構成例の押戻し手段20を用いた押戻し工程を以下に説明する。
【0103】
図5(a)に示すように、押出材40の先端40aが定位置Sから下流側にオーバーランしている状態のときに、回転杆27を回転動作させる。これにより、図5(b)に示すように、ストッパ部材21が非ストップ位置からストップ位置に配置される。次いで、流体圧シリンダ24の伸縮ロッド24aを伸長動作させる。これにより、図5(c)に示すように、押出材40の先端40aにストッパ部材21を当接させてストッパ部材21で押出材40の先端40aを定位置Sに押し戻す。
【0104】
このように、第2構成例の押戻し手段20を用いて押戻し工程を行うことにより、押出材40の先端40aを定位置Sに確実に押し戻すことができる。
【0105】
<第3構成例>
図6A〜6Fに示した第3構成例の押戻し手段20を以下に説明する。
【0106】
この押戻し手段20の変更手段22は、回転杆28と、前記駆動手段23としての流体圧シリンダ24とを有している。流体圧シリンダ24としては、油圧シリンダ、ガスシリンダ等が用いられる。
【0107】
回転杆28は、押出材送り方向Fと平行に延びた平行回転軸28aに、回転杆28の一端部(基端部)で回転自在に軸支されている。平行回転軸28aは、切断手段(図示せず)よりも下流側であって送りローラ13の左右両側のうち片側に配置されている。
【0108】
回転杆28の先端部には流体圧シリンダ24が固定状態に取り付けられている。さらに、流体圧シリンダ24の伸縮ロッド24aの先端部にはストッパ部材21が固定状態に取り付けられている。
【0109】
変更手段22は、回転杆28の回転動作によって、ストッパ部材21を非ストップ位置からストップ位置に変更させるように構成されている。
【0110】
押戻し手段20は、ストッパ部材21がストップ位置に配置された状態で、流体圧シリンダ24の伸縮ロッド24aを伸長動作させることによって、ストッパ部材21を押出材40の先端40aに当接させて押出材40の先端40aを定位置Sに押し戻すように構成されている。
【0111】
次に、第3構成例の押戻し手段20を用いた押戻し工程を以下に説明する。
【0112】
図6A及び6Bに示すように、押出材40の先端40aが定位置Sから下流側にオーバーランしている状態のときに、回転杆28を回転動作させる。これにより、図6C及び6Dに示すように、ストッパ部材21が非ストップ位置からストップ位置に配置される。次いで、流体圧シリンダ24の伸縮ロッド24aを伸長動作させる。これにより、図6E及び6Fに示すように、押出材40の先端40aにストッパ部材21を当接させてストッパ部材21で押出材40の先端40aを定位置Sに押し戻す。
【0113】
このように、第3構成例の押戻し手段20を用いて押戻し工程を行うことにより、押出材40の先端40aを定位置Sに確実に押し戻すことができる。
【0114】
<第4構成例>
図7A〜7Fに示した第4構成例の押戻し手段20を以下に説明する。
【0115】
この押戻し手段20の変更手段22は、基台29と、回転杆30とを有している。
【0116】
基台29は、レール(図示せず)に沿って押出材送り方向Fと平行に移動可能に配置されている。基台29には、押出材送り方向Fと平行に延びた平行回転軸30aが設けられている。回転杆30は、平行回転軸30aに回転杆30の一端部(基端部)で回転自在に軸支されている。基台29及び平行回転軸30aは、切断手段(図示せず)よりも下流側であって送りローラ13の左右両側のうち片側に配置されている。回転杆30の先端部にはストッパ部材21が固定状態に取り付けられている。
【0117】
変更手段22は、回転杆30の回転動作によって、ストッパ部材21を非ストップ位置からストップ位置に変更させるように構成されている。
【0118】
駆動手段23は、基台29を押出材送り方向Fと平行に移動させる基台駆動手段25を有している。基台駆動手段25としては、例えば流体圧シリンダ(油圧シリンダ、ガスシリンダ等)が用いられる。
【0119】
押戻し手段20は、ストッパ部材21がストップ位置に配置された状態で、基台29が押出材送り方向Fとは反対方向Gに移動するように基台駆動手段25を駆動させることによって、ストッパ部材21を押出材40の先端40aに当接させて押出材40の先端40aをストッパ部材21で定位置Sに押し戻すように構成されている。
【0120】
次に、第4構成例の押戻し手段20を用いた押戻し工程を以下に説明する。
【0121】
図7A及び7Bに示すように、押出材40の先端40aが定位置Sから下流側にオーバーランしている状態のときに、回転杆30を回転動作させる。これにより、図7C及び7Dに示すように、ストッパ部材21が非ストップ位置からストップ位置に配置される。次いで、基台29が押出材送り方向Fとは反対方向Gに移動するように基台駆動手段25を駆動させる。これにより、図7E及び7Fに示すように、押出材40の先端40aにストッパ部材21を当接させてストッパ部材21で押出材40の先端40aを定位置Sに押し戻す。
【0122】
このように、第4構成例の押戻し手段20を用いて押戻し工程を行うことにより、押出材40の先端40aを定位置に確実に押し戻すことができる。
【0123】
以上で本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に示したものであることに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において様々に変更可能である。
【0124】
また、上記実施形態では、切断手段14により一括して切断されるワーク(押出材40)の個数は2つであるが、本発明は、2つに限定されるものではなく、その他に、例えば1つであっても良いし、3つ以上であっても良い。
【0125】
また本発明では、ワークは、上記実施形態で示したように押出材であっても良いし、その他の棒状部材であっても良い。さらに、ワークの材料は、上記実施形態で示したようにアルミニウム、鋼等の金属であっても良いし、プラスチックであっても良いし、その他の材料であっても良い。
【0126】
また本発明では、押戻し手段は、上記第1〜4構成例の押戻し手段20を複数組み合わせて構成されたものであっても良い。
【産業上の利用可能性】
【0127】
本発明は、長尺な押出材などの棒状ワークの切断方法、棒状ワーク用切断装置及び押出後面設備に利用可能である。
【符号の説明】
【0128】
1:押出後面設備
10:押出材用切断装置(棒状ワーク用切断装置)
13:送りローラ
14:切断手段
15:センサ
20:押戻し手段
21:ストッパ部材(押戻し部材)
22:変更手段
23:駆動手段
24:流体圧シリンダ
25;基台駆動手段
26:梃子杆
27:回転杆
28:回転杆
29:基台
30:回転杆
40:押出材(棒状ワーク)
C:切断手段の押出材切断位置(切断手段のワーク切断位置)
L:押出材切断長さ(ワーク切断長さ)
S:定位置
【技術分野】
【0001】
本発明は、長尺な押出材などの棒状ワークの切断方法、棒状ワーク用切断装置及び押出後面設備に関する。なお本明細書及び特許請求の範囲において、「上流」及び「下流」とは、それぞれ送りローラのワーク送り方向における上流及び下流を意味する。
【背景技術】
【0002】
例えば、押出材を製造する押出設備は、一般に、押出機と押出後面設備を具備している。押出後面設備は、押出機から押し出された長尺な押出材をその先端から所定長さに切断する切断装置を具備している。この切断装置は、通常、切断効率を高めるため、複数の押出材を左右方向に並列状に配置させて一括して切断するように構成されている。
【0003】
このように切断装置により複数の押出材を切断する場合、これらの押出材の切断長さを定めるために、これらの押出材の先端位置を揃える必要がある。
【0004】
特開平9−174325号公報(特許文献1)は、左右方向に並列配置された複数の長尺材を切断装置に備えられた切断手段により一括して切断する際に、これらの長尺材の先端をストッパ部材に当接させることでこれらの長尺材の先端位置を揃える方法を開示している。この方法では、送りローラにより送られているこれらの長尺材の先端がストッパ部材に当接されると、長尺材の前進移動が規制され、これにより、長尺材の先端から切断手段のワーク切断位置までの切断長さが定められる。そしてこの状態のまま長尺材を切断手段により切断し、もって所定長さの切断品(製品)が得られる。
【0005】
ストッパ部材を用いた従来のこの種の切断装置の一例について、図8を参照して以下に説明する。
【0006】
図8において、110は従来の切断装置、140は長尺材(押出材を含む)等の棒状ワーク、114はワーク140を所定長さに定寸切断する切断機(切断手段)、121はストッパ部材、113は送りローラである。
【0007】
図8(a)は、ワーク140を送りローラ113によって切断機114からストッパ部材121に向かう方向Fに送っている状態を示す従来の切断装置110の概略側面図である。図8(b)は、ワーク140の先端140aをストッパ部材121に当接させた状態を示す同切断装置110の概略側面図である。
【0008】
図8(a)に示すように、ストッパ部材121は、切断機114によるワーク切断長さLを定めるため、切断手段114のワーク切断位置Cから下流側にワーク切断長さL分だけ離れた位置Sに予め配置されている。この位置Sを「定位置(定寸位置)」と呼ぶ。
【0009】
この切断装置110では、左右方向に並列状に配置された複数のワーク140は、送りローラ113により切断機114からストッパ部材121に向かって一括して送られる。そして、図8(b)に示すように、ワーク140の先端140aがストッパ部材121に当接すると、ワーク140の前進移動が規制されると同時にワーク140の切断長さLが定められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平9−174325号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従来では、このようにワーク140の先端140aをストッパ部材121に当接させる際には、ワーク140の先端140aをストッパ部材121に確実に当接させるため、又は/及び、全てのワーク140の先端140aをストッパ部材121に当接させるため、先頭のワーク140の先端140aがストッパ部材121に当接してから、ワーク切断長さLやワーク残存長さに無関係に一律に所定時間(例えば5秒間程度)送りローラ113を回転駆動させていた。この間は、ワーク140の先端140aがストッパ部材121に押し当てられた状態でワーク140の前進移動が規制されるとともに、各送りローラ113はワーク140に対して同じ位置でスリップ回転駆動している。その結果、図9に示すように、ワーク140における各送りローラ113のスリップ回転位置142に、他の部分よりも局部的に黒光りした光沢模様からなるスリップ痕142が送りローラ113の軸方向(即ちワーク140の幅方向)に延びて形成されることがあった。なお、このスリップ痕143は「スリップマーク」とも呼ばれている。
【0012】
ワーク140にスリップ痕143が形成されると、該ワーク140を切断して得られる切断片は外観不良となり、製品として用いることができない。この問題は、ワーク140の個数が複数である場合に限らず、1個である場合でも同様に発生する。
【0013】
本発明は、上述した技術背景に鑑みてなされたもので、その目的は、棒状ワークをその先端から所定長さに切断する際に、送りローラのスリップ回転駆動によるスリップ痕がワークに形成される不具合を防止することができる棒状ワークの切断方法、該切断方法に用いられる棒状ワーク用切断装置、及び、該切断装置を具備した押出後面設備を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は以下の手段を提供する。
【0015】
[1] 棒状ワークをその先端から所定長さに切断手段により切断する棒状ワークの切断方法であって、
送りローラにより送られている棒状ワークの先端を、切断手段のワーク切断位置から下流側にワーク切断長さ分離れた定位置よりも下流側にオーバーランさせるオーバーラン工程と、
前記定位置よりも下流側にオーバーランされたワークの先端を押戻し部材で前記定位置に押し戻す押戻し工程と、
先端が前記定位置に押し戻されたワークを前記切断手段により切断する切断工程と、
を含むことを特徴とする棒状ワークの切断方法。
【0016】
[2] 前記押戻し部材は、ワークの前進移動を規制するストッパ部材である前項1記載の棒状ワークの切断方法。
【0017】
[3] 前記押戻し工程では、前記送りローラをフリー回転させる前項1又は2記載の棒状ワークの切断方法。
【0018】
[4] 前記オーバーラン工程は、ワークの先端が前記定位置を下流側に超えたことをセンサにより検知する検知工程を含む前項1〜3のいずれかに記載の棒状ワークの切断方法。
【0019】
[5] 前記オーバーラン工程は、ワークの先端をオーバーランさせた後、ワークの先端が前記押戻し部材に当接するまでの間に、前記送りローラによるワークの送りを停止させる送り停止工程を含む前項1〜4のいずれかに記載の棒状ワークの切断方法。
【0020】
[6] ワークは、並列状に配置された複数の棒状ワークであり、
前記オーバーラン工程では、前記複数のワークの先端の全てを前記定位置よりも下流側にオーバーランさせる前項1〜5のいずれかに記載の棒状ワークの切断方法。
【0021】
[7] 棒状ワークをその先端から所定長さに切断する棒状ワーク用切断装置であって、
棒状ワークを所定長さに切断する切断手段と、
前記切断手段よりも下流側に配置された押戻し部材を備えた押戻し手段と、
前記切断手段から前記押戻し部材に向かう方向にワークを送る送りローラと、
を含み、
前記押戻し手段は、前記送りローラによって前記切断手段のワーク切断位置から下流側にワーク切断長さ分離れた定位置よりも下流側にオーバーランされたワークの先端を、前記押戻し部材で前記定位置に押し戻すものであることを特徴とする棒状ワーク用切断装置。
【0022】
[8] 前記押戻し部材は、ワークの前進移動を規制するストッパ部材である前項7記載の棒状ワーク用切断装置。
【0023】
[9] 前記送りローラは、その回転形態が駆動回転とフリー回転とに切換え可能なものである前項7又は8記載の棒状ワークの切断装置。
【0024】
[10] 前記切断装置は、更に、ワークの先端が前記定位置を下流側に超えたことを検知するセンサを含んでいる前項7〜9のいずれかに記載の棒状ワーク用切断装置。
【0025】
[11] 前記押戻し手段は、ワークの前進移動を規制するストップ位置とワークの前進移動を規制しない非ストップ位置とに前記押戻し部材を変更可能に配置させる変更手段と、前記ストップ位置に配置された前記押戻し部材をワーク送り方向とは反対方向に移動させる駆動手段と、を備えている前項7〜10のいずれかに記載の棒状ワーク用切断装置。
【0026】
[12] 前記変更手段は、ワーク送り方向と平行に移動可能に配置された基台と、前記基台に回転自在に軸支された回転杆と、を有するとともに、前記回転杆の回転動作によって、前記回転杆に設けられた前記押戻し部材が前記非ストップ位置から前記ストップ位置に変更されるように構成されており、
前記駆動手段は、前記基台をワーク送り方向と平行に移動させる基台駆動手段を有しており、
前記押戻し手段は、前記基台がワーク送り方向とは反対方向に移動するように前記基台駆動手段を駆動させることによって、前記ストップ位置に配置された前記押戻し部材をワークの先端に当接させてワークの先端を前記定位置に押し戻すように構成されている前項11記載の棒状ワーク用切断装置。
【0027】
[13] 押出機から押し出された押出材を棒状ワークとしてその先端から所定長さに切断する前項7〜12のいずれかに記載の棒状ワーク用切断装置を具備していることを特徴とする押出後面設備。
【発明の効果】
【0028】
本発明は以下の効果を奏する。
【0029】
[1]の発明によれば、押戻し工程では、定位置よりも下流側にオーバーランさせたワークの先端をストッパ部材で定位置に押し戻すことにより、ワークに対して送りローラを必ずしもスリップ回転駆動させなくてもワークの先端をストッパ部材に確実に当接させることができ、これにより、ワークにスリップ痕が形成される不具合を防止することができる。あるいは、ワークの先端がストッパ部材に当接した際に送りローラがワークに対してスリップ回転駆動していたとしても、ワークにおける送りローラのスリップ回転位置がワークの押戻し動作に伴ってワークの軸方向に連続的に移動するので、ワークにスリップ痕が形成される不具合を防止することができる。
【0030】
[2]の発明によれば、ワークの前進移動をストッパ部材で規制することができる。
【0031】
[3]の発明によれば、押戻し工程にて送りローラをフリー回転させることにより、ワークの先端を定位置に押し戻す際に、送りローラがワークの押戻し動作に従ってワークの押戻し方向に従動回転される。これにより、ワークの先端を定位置に容易に押し戻すことができるし、ワークが送りローラ上を摺接移動することによるワークの傷付きを確実に防止することができるし、送りローラの摩耗変形を抑制することができる。
【0032】
[4]の発明によれば、ワークの先端が定位置を下流側に超えたことを確実に検出することができる。
【0033】
[5]の発明によれば、ワークの先端をオーバーランさせた後、ワークの先端がストッパ部材に当接するまでの間に、送りローラによるワークの送りを停止することにより、ワークの先端がストッパ部材に当接した際には送りローラはワークに対してスリップ回転駆動していない。そのため、ワークにスリップ痕が形成される不具合を確実に防止することができる。
【0034】
[6]の発明によれば、複数のワークの先端の全てを定位置よりも下流側にオーバーランさせることにより、押戻し工程にて全てのワークの先端を一括して定位置に押し戻すことができ、その結果、切断工程にて複数のワークを一括して切断することができる。
【0035】
[7]〜[10]の発明によれば、それぞれ上記[1]〜[4]の発明に係る棒状ワークの切断方法に好適に用いることができる棒状ワーク用切断装置を提供できる。
【0036】
[11]及び[12]の発明によれば、ワークの先端を定位置に確実に押し戻すことができる押戻し手段を備えた切断装置を提供できる。
【0037】
[13]の発明によれば、送りローラのスリップ回転駆動によるスリップ痕が押出材に形成される不具合を防止できる押出後面設備を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る棒状ワーク用切断装置としての押出材用切断装置を具備した押出後面設備の概略平面図である。
【図2】図2は、ワークとしての押出材を定位置よりも下流側にオーバーランさせた状態で示す同切断装置の斜視図である。
【図3】図3は、押出材を切断する工程を順に示す同切断装置の概略平面図である。
【図4】図4は、同切断装置の第1構成例に係る押戻し手段を用いて押出材の先端を押し戻す工程を順に示す押戻し手段の概略側面図である。
【図5】図5は、同切断装置の第2構成例に係る押戻し手段を用いて押出材の先端を押し戻す工程を順に示す押戻し手段の概略側面図である。
【図6A】図6Aは、同切断装置の第3構成例に係る押戻し手段を説明するための押戻し手段の概略平面図であって、押出材をストッパ部材に向かって送っている状態を示す図である。
【図6B】図6Bは、図6Aの状態のときの同押戻し手段の概略側面図である。
【図6C】図6Cは、押出材の先端にストッパ部材を当接させた状態を示す同押戻し手段の概略平面図である。
【図6D】図6Dは、図6Cの状態のときの同押戻し手段の概略側面図である。
【図6E】図6Eは、押出材の先端を定位置に押し戻した状態を示す同押戻し手段の概略平面図である。
【図6F】図6Fは、図6Eの状態のときの同押戻し手段の概略側面図である。
【図7A】図7Aは、同切断装置の第4構成例に係る押戻し手段を説明するための押戻し手段の概略平面図であって、押出材をストッパ部材に向かって送っている状態を示す図である。
【図7B】図7Bは、図7Aの状態のときの同押戻し手段の概略側面図である。
【図7C】図7Cは、押出材の先端にストッパ部材を当接させた状態を示す同押戻し手段の概略平面図である。
【図7D】図7Dは、図7Cの状態のときの同押戻し手段の概略側面図である。
【図7E】図7Eは、押出材の先端を定位置に押し戻した状態を示す同押戻し手段の概略平面図である。
【図7F】図7Fは、図7Eの状態のときの同押戻し手段の概略側面図である。
【図8】図8は、従来の棒状ワーク用切断装置を用いてワークを切断する工程を順に示す切断装置の概略側面図である。
【図9】図9は、ワークの送りローラとの当接面(ワークの底面)にスリップ痕が形成された状態を示すワークの底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
次に、本発明の幾つかの実施形態について図面を参照して以下に説明する。
【0040】
図1において、1は、本発明の一実施形態に係る押出後面設備である。この押出後面設備1は、押出機2、イニシャルテーブル3、ランアウトテーブル4、クーリングテーブル5、ストレッチテーブル6、ストレージテーブル7、及び、本発明の一実施形態に係る棒状ワーク用切断装置10を具備している。切断装置10により切断される棒状ワークは、長尺な棒状アルミニウム(その合金を含む)押出材40である。以下では、棒状ワークを押出材40と記する。
【0041】
この押出後面設備1では、押出機2から押し出された長尺な押出材40は、イニシャルテーブル3及びランアウトテーブル4上を順次走行し、その後、移載装置(図示せず)によって、ランアウトテーブル4上からクーリングテーブル5、ストレッチテーブル6、ストレージテーブル7、及び、切断装置10のソーチャージテーブル11上へ順次移載される。
【0042】
クーリングテーブル5上では押出材40が冷却ファン等の冷却手段(図示せず)により冷却される。ストレッチテーブル6上では押出材40の曲がりがストレッチャー6a、6a(ヘッドストック及びテールストック)により引張矯正される。ストレージテーブル7上では複数の押出材40が整然と並列状に並べられる。そして、これらの押出材40がソーチャージテーブル11上に左右方向に並列状に載置される。
【0043】
押出機2から押し出された押出材40の長さは、例えば15〜60mの範囲内であり、押出材40の幅及び厚さ(高さ)は、それぞれ例えば5〜600mmの範囲内である。押出材40の横断面形状は、略山字状又は上向き略E字状である(図2参照)。ただし本発明では、押出材40の長さ、幅及び厚さはそれぞれ上記範囲内であることに限定されるものではないし、押出材40の断面形状も限定されない。
【0044】
切断装置10は、前記ソーチャージテーブル11、切断手段14、ソーゲージテーブル12、押戻し手段20、インスペクションテーブル17、センサ15、制御手段16などを含んでいる。
【0045】
切断手段14は、押出材40をその先端から所定長さに順次定寸に切断するものであり、例えば鋸刃(図示せず)を有する切断機から構成されている。
【0046】
図1において、Cは、切断手段14の押出材切断位置である。Lは、押出材40の先端40aからの押出材切断長さである。Sは、押出材切断位置Cから下流側に切断長さL分だけ離れた、予め定められた位置である。したがって、押出材40の先端40aがこの位置Sに配置しているときに押出材40を切断手段14により切断すれば、所望する切断長さLの切断片41が得られる。この位置Sを「定位置(定寸位置)」と呼ぶ。押出材切断長さLは、例えば1〜25mの範囲内である。切断片41は、サッシ材、車両材、ヒートシンク材、コンベアフレーム材などに用いられる押出材に用いられる。ただし本発明では、切断長さLは、切断片41の用途などに応じて設定されるものであり、上記範囲内であることに限定されるものではない。
【0047】
また、切断手段14の配置位置及び切断手段14の押出材切断位置Cは固定されている。
【0048】
図2に示すように、ソーチャージテーブル11は、切断手段14の入側に配置されており、互いに離間して配置されるとともに押出材40を切断手段14に送る複数の送りローラ11aを備えている。
【0049】
ソーゲージテーブル12は、切断手段14の出側に配置されており、互いに離間して配置されるとともに押出材40及びその切断片41を送る複数の送りローラ12aを備えている。
【0050】
押戻し手段20は、押戻し部材としてのストッパ部材21、変更手段22、駆動手段23などを備えている。なお図2では、変更手段22と駆動手段23はいずれも図示されていない。
【0051】
ストッパ部材21は、定位置Sよりも下流側にオーバーランされた押出材40の前進移動を規制するとともに、押出材40の先端40aを定位置Sに押し戻すためのものであり、平板状に形成されており、切断手段14よりも下流側に配置されている。このストッパ部材21は、変更手段22によって、押出材40の前進移動を規制するストップ位置と押出材40の前進移動を規制しない非ストップ位置とに変更可能に配置されるとともに、更に、駆動手段23によって、押出材送り方向Fとは反対方向Gに移動可能に構成されている。ストッパ部材21の表面(ストップ面)は、平坦状に形成されるとともに、押出材送り方向Fに対して垂直に配置されている。
【0052】
本実施形態では、ストップ位置は、押出材送り方向Fの前方の位置である。非ストップ位置は、押出材送り方向Fに対して逸れた位置であり、具体的に例示すると、押出材送り方向Fに対して上方に逸れた位置である。
【0053】
ソーチャージテーブル11の送りローラ11aと、ソーゲージテーブル12の送りローラ12aは、ともに、押出材40を切断手段14からストッパ部材21に向かう方向に送る役割を有している。さらに、これらの送りローラ11a、12aは、その回転形態が駆動回転とフリー回転とに切換え可能に構成されている。説明の便宜上、本明細書では、特に明記しない限り、送りローラ11aと送りローラ12aをまとめて「送りローラ13」を記する。
【0054】
送りローラ13上には、左右方向に並列配置された複数の押出材が水平に載置される。本実施形態では、押出材の個数は2つである。
【0055】
なお、押戻し手段20の具体的な構成については後述する。
【0056】
センサ15は、各押出材40の先端40aが定位置Sを下流側に超えたことを検知するものであり、各押出材40の先端40aが通過する定位置Sの上方に配置されており、詳述すると定位置Sの真上に配置されている。
【0057】
なお、図1及び3において、センサ15を定位置Sの真上に図示すると、定位置Sを示す一点鎖線とセンサ15とが重なるため、両者が重ならないようにするため、定位置Sよりも若干下流側にずれた位置にセンサ15を図示している。
【0058】
センサ15は、非接触式センサとして市販されている透過型光電センサや反射型光電センサ等である。
【0059】
制御手段16は、センサ15により検知された検知情報に基づいて、送りローラ13、押戻し手段20及び切断手段14の動作を制御するものであり、ROM、RAM、CPU等を有するコンピュータを備えている。コンピュータには所定の制御を行うプログラムが予めインストールされている。
【0060】
図1に示すように、インスペクションテーブル17上には、押出材40の切断片41について外観検査などの様々な検査をするために切断片41が載置される。
【0061】
次に、本実施形態の切断装置10を用いた押出材40の切断方法について、図3を参照して以下に説明する。
【0062】
図3において、図3(a)は、押出材40を送りローラ13によって切断手段14からストッパ部材21に向かう方向に送っている状態を示す切断装置10の概略側面図である。図3(b)は、押出材40の先端40aを定位置Sよりも下流側にオーバーランさせた状態を示す図である。図3(c)は、押出材40の先端40aをストッパ部材21で定位置Sに押し戻した状態を示す図である。図3(d)は、押出材40を切断手段14により切断した状態を示す図である。図3(e)は、ストッパ部材21を非ストップ位置に配置させるとともに押出材40の切断片41をストッパ部材21よりも下流側に送った状態を示す図である。
【0063】
まず、図3(a)に示すように、ソーチャージテーブル11上に左右方向に並列配置された複数(本実施形態では2つ)の押出材40を送りローラ13によって切断手段14からストッパ部材21に向かう方向に一括して送る。このとき、ストッパ部材21は、ストップ位置として、定位置Sよりも押出材送り方向Fの下流側(前方側)の位置に予め配置されている。また、ソーチャージテーブル11上に配置されたこれらの押出材40の先端位置は、互いに相対的に前後方向に僅かにずれている。押出材送り速度は例えば10〜60m/minの範囲内に設定される。
【0064】
送りローラ13によって送られている押出材40の先端40aは、切断手段14を通過してストッパ部材21に向かって進行する。この送り動作の途中でも、これらの押出材40の先端位置が互いに相対的に前後方向に少しずれる。
【0065】
そして、図3(b)に示すように、送りローラ13によって全ての押出材40の先端40aを定位置Sよりも下流側にオーバーランさせる(図2参照)。この工程を「オーバーラン工程」という。オーバーランの量は例えば10〜300mmの範囲内に設定される。このオーバーラン工程では、押出材40の先端40aが定位置Sを下流側に超えると、その情報がセンサ15により検知される。この工程を「検知工程」という。センサ15により検知された検知情報は、制御手段16に送信される。全ての押出材40の先端40aが定位置Sを超えたことをセンサ15が検知したら、すなわち全ての押出材40の先端40aが定位置Sよりも下流側にオーバーランしたら、その後、少なくとも1つの押出材40の先端40a(例:先頭の押出材40の先端40a)がストッパ部材21に当接するまでの間に、送りローラ13の回転駆動を停止させることで押出材40の送りを停止する。この工程を「送り停止工程」という。そして、送りローラ13の回転形態をフリー回転にする。
【0066】
次いで、図3(c)に示すように、ストッパ部材21を押出材送り方向Eとは反対方向Gに移動させることによって、これらの押出材40の先端40aにストッパ部材21を当接させてこれらの押出材40の先端40aをストッパ部材21で定位置Sに一括して押し戻す。この工程を「押戻し工程」という。ストッパ部材21の押戻し速度は、例えば5〜40m/minの範囲内に設定される。
【0067】
この押戻し工程において、これらの押出材40の先端40aにストッパ部材21が当接することにより、これらの押出材40の先端位置が一括して揃えられる。このとき、送りローラ13は、既にフリー回転に切り換えられているので、押出材40の押戻し移動に従って押出材40の押戻し方向に従動回転する。
【0068】
次いで、図3(d)に示すように、これらの押出材40を切断手段14により一括して切断する。この工程を「切断工程」という。
【0069】
次いで、図3(e)に示すように、ストッパ部材21を、非ストップ位置として、押出材送り方向Fに対して上方に逸れた位置に配置させる。そして、ソーゲージテーブル12の送りローラ12aによって押出材40の切断片41を一括してソーゲージテーブル12の下流側に送る。その後、図3(a)〜(e)の工程を繰り返す。なお、ソーゲージテーブル12の下流側に送られた切断片41は、ソーゲージテーブル12上からインスペクションテーブル17上に一括して移載される(図1参照)。
【0070】
これらの工程における送りローラ13の動作制御(例:送りローラ13の回転駆動の停止、送りローラ13のフリー回転への切換え)と、ストッパ部材21の動作制御と、切断手段14の動作制御などは、センサ15により検知された検知情報に基づいて制御手段16により行われる。
【0071】
而して、上述した押出材40の切断方法は次の利点がある。
【0072】
押戻し工程では、定位置Sよりも下流側にオーバーランさせた押出材40の先端40aをストッパ部材21で定位置に押し戻すことにより、押出材40に対して送りローラ13を必ずしもスリップ回転駆動させなくても押出材40の先端40aをストッパ部材21に確実に当接させることができ、これにより、押出材40にスリップ痕が形成される不具合を防止することができる。
【0073】
さらに、オーバーラン工程では、押出材40の先端40aをオーバーランさせた後、押出材40の先端40aがストッパ部材21に当接するまでの間に、送りローラ13による押出材40の送りを停止しているので、押出材40の先端がストッパ部材21に当接した際には送りローラ13は押出材40に対してスリップ回転駆動していない。そのため、押出材40にスリップ痕が形成される不具合を確実に防止することができる。
【0074】
さらに、押戻し工程では、送りローラ13の回転形態をフリー回転に切り換えているので、押出材40の先端40aを定位置Sに押し戻す際に、送りローラ13が押出材40の押戻し動作に従って押出材40の押戻し方向Gに従動回転される。これにより、押出材40の先端40aを定位置Sに容易に押し戻すことができるし、押出材40が送りローラ13上を摺接移動することによる押出材40の傷付きを確実に防止することができるし、送りローラ13の摩耗変形を防止することができる。
【0075】
さらに、オーバーラン工程では、押出材40の先端40aが定位置Sを下流側に超えたことをセンサ15により検知するので、押出材40の先端40aが定位置Sを下流側に超えたことを確実に検出することができる。
【0076】
さらに、オーバーラン工程では、全ての押出材40の先端40aを定位置Sよりも下流側にオーバーランさせているので、押戻し工程にて全て押出材40の先端40aを一括して定位置Sに押し戻すことができ、その結果、切断工程にて全ての押出材40を一括して切断することができる。
【0077】
ここで、上記実施形態では、押出材40の先端40aをオーバーランさせた後、押出材40の先端40aがストッパ部材21に当接するまでの間に、送りローラ13による押出材40の送りを停止させている。しかるに、本発明では、その他に、押出材40の先端40aをオーバーランさせた後、送りローラ13による押出材40の送りを停止させないで継続して送りローラ13によって押出材40を送ることにより、押出材40の先端40aをストッパ部材21に当接させても良い。この場合、押出材40の先端40aがストッパ部材21に当接した際に送りローラ13が押出材40に対してスリップ回転駆動することとなるが、押戻し工程にて押出材40における送りローラ13のスリップ回転位置が押出材40の押戻し動作に伴い押出材40の軸方向に連続的に移動するので、押出材40にスリップ痕が形成される不具合を防止することができる。さらに、押戻し工程において押出材40の先端40aをストッパ部材21に押し付けた状態で押出材40の先端40aを定位置Sに押し戻すことができ、これにより、押出材40の先端40aを確実に定位置Sに配置させることができる。
【0078】
さらに、本発明は、押戻し工程において、送りローラ13を回転停止状態に固定したり、押出材送り方向Fとは逆方向Gに送りローラ13をストッパ部材21の移動速度(即ち押出材40の先端40aの押戻し速度)よりも低速度で回転駆動させることを排除するものではない。これらの場合であっても、押出材40における送りローラ13のスリップ回転位置が押出材40の押戻し動作に伴い押出材40の軸方向に連続的に移動するので、押出材40にスリップ痕が形成される不具合を防止することができる。
【0079】
もとより、本実施形態では、押戻し部材としてストッパ部材21が用いられているので、押出材40の前進移動を確実に規制することができる。なお本発明では、押戻し部材は、定位置Sよりも下流側にオーバーランされた押出材(ワーク)40の先端40aを定位置Sに押し戻す作用を奏するものであれば良く、必ずしも押出材40の前進移動を規制する作用を奏するものであることを要しない。しかしながら、本実施形態のように押戻し部材として押出材40の前進移動を規制する作用を奏するストッパ部材21を用いることが望ましい。
【0080】
次に、本実施形態の切断装置10における幾つかの押戻し手段20の具体的な構成及び動作について、図4〜図7Eを参照して以下に示す。
【0081】
図4に示した第1構成例の押戻し手段、図5に示した第2構成例の押戻し手段、図6A〜6Fに示した第3構成例の押戻し手段、図7A〜7Fに示した第4構成例の押戻し手段は、いずれも、上述したようにストッパ部材21、変更手段22、駆動手段23等を備えている。
【0082】
変更手段22は、押出材40の前進移動を規制するストップ位置と押出材40の前進移動を規制しない非ストップ位置とにストッパ部材21を変更可能に配置させるものである。
【0083】
駆動手段は、ストップ位置に配置されたストッパ部材21を押出材送り方向Fとは反対方向Gに移動させるものである。
【0084】
<第1構成例>
図4に示した第1構成例の押戻し手段20を以下に説明する。
【0085】
図4において、図4(a)は、押出材40をストッパ部材21に向かう方向に送っている状態を示す押戻し手段20の概略側面図である。図4(b)は、押出材40の先端40aにストッパ部材21を当接させた状態を示す図である。図4(c)は、押出材40の先端40aをストッパ部材21で定位置Sに押し戻した状態を示す図である。
【0086】
この押戻し手段20の変更手段22は、梃子杆26と、前記駆動手段23としての流体圧シリンダ24とを有している。流体圧シリンダ24としては、油圧シリンダ、ガスシリンダ等が用いられる。
【0087】
梃子杆26は、その長さ方向の中間部を支点部26aとするものであり、支点部26aで揺動可能に支持されており、切断手段(図示せず)よりも下流側であって送りローラ13の上側に配置されている。梃子杆26の支点部26aには、押出材送り方向Fに対して直交し且つ水平な方向(即ち左右方向)に延びた水平回転軸26dが挿通されており、この水平回転軸26dに梃子杆26がその支点部26aで軸支されている。
【0088】
この梃子杆26は、その一端部及び他端部をそれぞれ力点部26b及び作用点部26cとするものである。梃子杆26の力点部26bの下側には流体圧シリンダ24が固定状態に配置されるとともに、梃子杆26の力点部26bに流体圧シリンダ24の伸縮ロッド24aの先端部が軸着されている。梃子杆26の作用点部26cにはストッパ部材21の基端部が固定状態に取り付けられている。ストッパ部材21は、流体圧シリンダ24の伸縮ロッド24aの伸長及び短縮動作によって、梃子杆26を介して非ストップ位置とストップ位置とに変更される。
【0089】
そして、変更手段22は、流体圧シリンダ24の伸縮ロッド24aを伸長動作させることによって、ストッパ部材21を非ストップ位置からストップ位置に変更させるとともに、伸縮ロッド24aを短縮動作させることによって、ストッパ部材21をストップ位置から非ストップ位置に変更させるように構成されている。
【0090】
押戻し手段20は、流体圧シリンダ24の伸縮ロッド24aを伸長動作させることによって非ストップ位置からストップ位置に変更配置されたストッパ部材21を、伸縮ロッド24aを更に伸長動作させることによって、押出材40の先端40aに当接させて押出材40の先端40aをストッパ部材21で定位置Sに押し戻すように構成されている。
【0091】
次に、第1構成例の押戻し手段20を用いた押戻し工程を以下に説明する。
【0092】
図4(a)に示すように、押出材40の先端40aが定位置Sから下流側にオーバーランしている状態のときに、流体圧シリンダ24の伸縮ロッド24aを伸長動作させる。これにより、図4(b)に示すように、ストッパ部材21が非ストップ位置からストップ位置に配置されるとともに押出材40の先端40aに当接する。引き続き流体圧シリンダ24の伸縮ロッド24aを更に伸長動作させる。これにより、図4(c)に示すように、ストッパ部材21で押出材40の先端40aを定位置Sに押し戻す。
【0093】
このように、第1構成例の押戻し手段20を用いて押戻し工程を行うことにより、押出材40の先端40aを定位置Sに確実に押し戻すことができる。
【0094】
なお本発明では、流体圧シリンダ24は、その他に、例えば、図4(a)の一点鎖線で示した位置、すなわち梃子杆26の力点部26bの上側に固定状態に配置されていても良い。この場合、変更手段22は、流体圧シリンダ24の伸縮ロッド24aを短縮動作させることによって、ストッパ部材21を非ストップ位置からストップ位置に変更させるとともに、伸縮ロッド24aを伸長動作させることによって、ストッパ部材21をストップ位置から非ストップ位置に変更されるように構成される。また、押戻し手段20は、流体圧シリンダ24の伸縮ロッド24aを短縮動作させることによって非ストップ位置からストップ位置に変更配置されたストッパ部材21を、伸縮ロッド24aを更に短縮動作させることによって、押出材40の先端40aに当接させて押出材40の先端40aを定位置Sに押し戻すように構成される。
【0095】
<第2構成例>
図5に示した第2構成例の押戻し手段20を以下に説明する。
【0096】
図5において、図5(a)は、押出材40をストッパ部材21に向かう方向に送っている状態を示す押戻し手段20の概略側面図である。図5(b)は、押出材40の先端40aにストッパ部材21を当接させた状態を示す図である。図5(c)は、押出材40の先端40aをストッパ部材21で定位置Sに押し戻した状態を示す図である。
【0097】
この押戻し手段20の変更手段22は、回転杆27と、前記駆動手段23としての流体圧シリンダ24とを有している。流体圧シリンダ24としては、油圧シリンダ、ガスシリンダ等が用いられる。
【0098】
回転杆27は、押出材送り方向Fに対して直交し且つ水平な方向(即ち左右方向)に延びた水平回転軸27aに、回転杆27の長さ方向中間部で回転自在に軸支されている。水平回転軸27aは、切断手段(図示せず)よりも下流側であって送りローラ13の上側に配置されている。
【0099】
回転杆27の先端部には流体圧シリンダ24が固定状態に取り付けられている。さらに、流体圧シリンダ24の伸縮ロッド24aの先端部にはストッパ部材21が固定状態に取り付けられている。
【0100】
変更手段22は、回転杆27の回転動作によって、ストッパ部材21を非ストップ位置からストップ位置に変更させるように構成されている。
【0101】
押戻し手段20は、ストッパ部材21がストップ位置に配置された状態で、流体圧シリンダ24の伸縮ロッド24aを伸長動作させることによって、ストッパ部材21を押出材40の先端40aに当接させて押出材40の先端40aをストッパ部材21で定位置Sに押し戻すように構成されている。
【0102】
次に、第2構成例の押戻し手段20を用いた押戻し工程を以下に説明する。
【0103】
図5(a)に示すように、押出材40の先端40aが定位置Sから下流側にオーバーランしている状態のときに、回転杆27を回転動作させる。これにより、図5(b)に示すように、ストッパ部材21が非ストップ位置からストップ位置に配置される。次いで、流体圧シリンダ24の伸縮ロッド24aを伸長動作させる。これにより、図5(c)に示すように、押出材40の先端40aにストッパ部材21を当接させてストッパ部材21で押出材40の先端40aを定位置Sに押し戻す。
【0104】
このように、第2構成例の押戻し手段20を用いて押戻し工程を行うことにより、押出材40の先端40aを定位置Sに確実に押し戻すことができる。
【0105】
<第3構成例>
図6A〜6Fに示した第3構成例の押戻し手段20を以下に説明する。
【0106】
この押戻し手段20の変更手段22は、回転杆28と、前記駆動手段23としての流体圧シリンダ24とを有している。流体圧シリンダ24としては、油圧シリンダ、ガスシリンダ等が用いられる。
【0107】
回転杆28は、押出材送り方向Fと平行に延びた平行回転軸28aに、回転杆28の一端部(基端部)で回転自在に軸支されている。平行回転軸28aは、切断手段(図示せず)よりも下流側であって送りローラ13の左右両側のうち片側に配置されている。
【0108】
回転杆28の先端部には流体圧シリンダ24が固定状態に取り付けられている。さらに、流体圧シリンダ24の伸縮ロッド24aの先端部にはストッパ部材21が固定状態に取り付けられている。
【0109】
変更手段22は、回転杆28の回転動作によって、ストッパ部材21を非ストップ位置からストップ位置に変更させるように構成されている。
【0110】
押戻し手段20は、ストッパ部材21がストップ位置に配置された状態で、流体圧シリンダ24の伸縮ロッド24aを伸長動作させることによって、ストッパ部材21を押出材40の先端40aに当接させて押出材40の先端40aを定位置Sに押し戻すように構成されている。
【0111】
次に、第3構成例の押戻し手段20を用いた押戻し工程を以下に説明する。
【0112】
図6A及び6Bに示すように、押出材40の先端40aが定位置Sから下流側にオーバーランしている状態のときに、回転杆28を回転動作させる。これにより、図6C及び6Dに示すように、ストッパ部材21が非ストップ位置からストップ位置に配置される。次いで、流体圧シリンダ24の伸縮ロッド24aを伸長動作させる。これにより、図6E及び6Fに示すように、押出材40の先端40aにストッパ部材21を当接させてストッパ部材21で押出材40の先端40aを定位置Sに押し戻す。
【0113】
このように、第3構成例の押戻し手段20を用いて押戻し工程を行うことにより、押出材40の先端40aを定位置Sに確実に押し戻すことができる。
【0114】
<第4構成例>
図7A〜7Fに示した第4構成例の押戻し手段20を以下に説明する。
【0115】
この押戻し手段20の変更手段22は、基台29と、回転杆30とを有している。
【0116】
基台29は、レール(図示せず)に沿って押出材送り方向Fと平行に移動可能に配置されている。基台29には、押出材送り方向Fと平行に延びた平行回転軸30aが設けられている。回転杆30は、平行回転軸30aに回転杆30の一端部(基端部)で回転自在に軸支されている。基台29及び平行回転軸30aは、切断手段(図示せず)よりも下流側であって送りローラ13の左右両側のうち片側に配置されている。回転杆30の先端部にはストッパ部材21が固定状態に取り付けられている。
【0117】
変更手段22は、回転杆30の回転動作によって、ストッパ部材21を非ストップ位置からストップ位置に変更させるように構成されている。
【0118】
駆動手段23は、基台29を押出材送り方向Fと平行に移動させる基台駆動手段25を有している。基台駆動手段25としては、例えば流体圧シリンダ(油圧シリンダ、ガスシリンダ等)が用いられる。
【0119】
押戻し手段20は、ストッパ部材21がストップ位置に配置された状態で、基台29が押出材送り方向Fとは反対方向Gに移動するように基台駆動手段25を駆動させることによって、ストッパ部材21を押出材40の先端40aに当接させて押出材40の先端40aをストッパ部材21で定位置Sに押し戻すように構成されている。
【0120】
次に、第4構成例の押戻し手段20を用いた押戻し工程を以下に説明する。
【0121】
図7A及び7Bに示すように、押出材40の先端40aが定位置Sから下流側にオーバーランしている状態のときに、回転杆30を回転動作させる。これにより、図7C及び7Dに示すように、ストッパ部材21が非ストップ位置からストップ位置に配置される。次いで、基台29が押出材送り方向Fとは反対方向Gに移動するように基台駆動手段25を駆動させる。これにより、図7E及び7Fに示すように、押出材40の先端40aにストッパ部材21を当接させてストッパ部材21で押出材40の先端40aを定位置Sに押し戻す。
【0122】
このように、第4構成例の押戻し手段20を用いて押戻し工程を行うことにより、押出材40の先端40aを定位置に確実に押し戻すことができる。
【0123】
以上で本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に示したものであることに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において様々に変更可能である。
【0124】
また、上記実施形態では、切断手段14により一括して切断されるワーク(押出材40)の個数は2つであるが、本発明は、2つに限定されるものではなく、その他に、例えば1つであっても良いし、3つ以上であっても良い。
【0125】
また本発明では、ワークは、上記実施形態で示したように押出材であっても良いし、その他の棒状部材であっても良い。さらに、ワークの材料は、上記実施形態で示したようにアルミニウム、鋼等の金属であっても良いし、プラスチックであっても良いし、その他の材料であっても良い。
【0126】
また本発明では、押戻し手段は、上記第1〜4構成例の押戻し手段20を複数組み合わせて構成されたものであっても良い。
【産業上の利用可能性】
【0127】
本発明は、長尺な押出材などの棒状ワークの切断方法、棒状ワーク用切断装置及び押出後面設備に利用可能である。
【符号の説明】
【0128】
1:押出後面設備
10:押出材用切断装置(棒状ワーク用切断装置)
13:送りローラ
14:切断手段
15:センサ
20:押戻し手段
21:ストッパ部材(押戻し部材)
22:変更手段
23:駆動手段
24:流体圧シリンダ
25;基台駆動手段
26:梃子杆
27:回転杆
28:回転杆
29:基台
30:回転杆
40:押出材(棒状ワーク)
C:切断手段の押出材切断位置(切断手段のワーク切断位置)
L:押出材切断長さ(ワーク切断長さ)
S:定位置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
棒状ワークをその先端から所定長さに切断手段により切断する棒状ワークの切断方法であって、
送りローラにより送られている棒状ワークの先端を、切断手段のワーク切断位置から下流側にワーク切断長さ分離れた定位置よりも下流側にオーバーランさせるオーバーラン工程と、
前記定位置よりも下流側にオーバーランされたワークの先端を押戻し部材で前記定位置に押し戻す押戻し工程と、
先端が前記定位置に押し戻されたワークを前記切断手段により切断する切断工程と、
を含むことを特徴とする棒状ワークの切断方法。
【請求項2】
前記押戻し部材は、ワークの前進移動を規制するストッパ部材である請求項1記載の棒状ワークの切断方法。
【請求項3】
前記押戻し工程では、前記送りローラをフリー回転させる請求項1又は2記載の棒状ワークの切断方法。
【請求項4】
前記オーバーラン工程は、ワークの先端が前記定位置を下流側に超えたことをセンサにより検知する検知工程を含む請求項1〜3のいずれかに記載の棒状ワークの切断方法。
【請求項5】
前記オーバーラン工程は、ワークの先端をオーバーランさせた後、ワークの先端が前記押戻し部材に当接するまでの間に、前記送りローラによるワークの送りを停止させる送り停止工程を含む請求項1〜4のいずれかに記載の棒状ワークの切断方法。
【請求項6】
ワークは、並列状に配置された複数の棒状ワークであり、
前記オーバーラン工程では、前記複数のワークの先端の全てを前記定位置よりも下流側にオーバーランさせる請求項1〜5のいずれかに記載の棒状ワークの切断方法。
【請求項7】
棒状ワークをその先端から所定長さに切断する棒状ワーク用切断装置であって、
棒状ワークを所定長さに切断する切断手段と、
前記切断手段よりも下流側に配置された押戻し部材を備えた押戻し手段と、
前記切断手段から前記押戻し部材に向かう方向にワークを送る送りローラと、
を含み、
前記押戻し手段は、前記送りローラによって前記切断手段のワーク切断位置から下流側にワーク切断長さ分離れた定位置よりも下流側にオーバーランされたワークの先端を、前記押戻し部材で前記定位置に押し戻すものであることを特徴とする棒状ワーク用切断装置。
【請求項8】
前記押戻し部材は、ワークの前進移動を規制するストッパ部材である請求項7記載の棒状ワーク用切断装置。
【請求項9】
前記送りローラは、その回転形態が駆動回転とフリー回転とに切換え可能なものである請求項7又は8記載の棒状ワークの切断装置。
【請求項10】
前記切断装置は、更に、ワークの先端が前記定位置を下流側に超えたことを検知するセンサを含んでいる請求項7〜9のいずれかに記載の棒状ワーク用切断装置。
【請求項11】
前記押戻し手段は、ワークの前進移動を規制するストップ位置とワークの前進移動を規制しない非ストップ位置とに前記押戻し部材を変更可能に配置させる変更手段と、前記ストップ位置に配置された前記押戻し部材をワーク送り方向とは反対方向に移動させる駆動手段と、を備えている請求項7〜10のいずれかに記載の棒状ワーク用切断装置。
【請求項12】
前記変更手段は、ワーク送り方向と平行に移動可能に配置された基台と、前記基台に回転自在に軸支された回転杆と、を有するとともに、前記回転杆の回転動作によって、前記回転杆に設けられた前記押戻し部材が前記非ストップ位置から前記ストップ位置に変更されるように構成されており、
前記駆動手段は、前記基台をワーク送り方向と平行に移動させる基台駆動手段を有しており、
前記押戻し手段は、前記基台がワーク送り方向とは反対方向に移動するように前記基台駆動手段を駆動させることによって、前記ストップ位置に配置された前記押戻し部材をワークの先端に当接させてワークの先端を前記定位置に押し戻すように構成されている請求項11記載の棒状ワーク用切断装置。
【請求項13】
押出機から押し出された押出材を棒状ワークとしてその先端から所定長さに切断する請求項7〜12のいずれかに記載の棒状ワーク用切断装置を具備していることを特徴とする押出後面設備。
【請求項1】
棒状ワークをその先端から所定長さに切断手段により切断する棒状ワークの切断方法であって、
送りローラにより送られている棒状ワークの先端を、切断手段のワーク切断位置から下流側にワーク切断長さ分離れた定位置よりも下流側にオーバーランさせるオーバーラン工程と、
前記定位置よりも下流側にオーバーランされたワークの先端を押戻し部材で前記定位置に押し戻す押戻し工程と、
先端が前記定位置に押し戻されたワークを前記切断手段により切断する切断工程と、
を含むことを特徴とする棒状ワークの切断方法。
【請求項2】
前記押戻し部材は、ワークの前進移動を規制するストッパ部材である請求項1記載の棒状ワークの切断方法。
【請求項3】
前記押戻し工程では、前記送りローラをフリー回転させる請求項1又は2記載の棒状ワークの切断方法。
【請求項4】
前記オーバーラン工程は、ワークの先端が前記定位置を下流側に超えたことをセンサにより検知する検知工程を含む請求項1〜3のいずれかに記載の棒状ワークの切断方法。
【請求項5】
前記オーバーラン工程は、ワークの先端をオーバーランさせた後、ワークの先端が前記押戻し部材に当接するまでの間に、前記送りローラによるワークの送りを停止させる送り停止工程を含む請求項1〜4のいずれかに記載の棒状ワークの切断方法。
【請求項6】
ワークは、並列状に配置された複数の棒状ワークであり、
前記オーバーラン工程では、前記複数のワークの先端の全てを前記定位置よりも下流側にオーバーランさせる請求項1〜5のいずれかに記載の棒状ワークの切断方法。
【請求項7】
棒状ワークをその先端から所定長さに切断する棒状ワーク用切断装置であって、
棒状ワークを所定長さに切断する切断手段と、
前記切断手段よりも下流側に配置された押戻し部材を備えた押戻し手段と、
前記切断手段から前記押戻し部材に向かう方向にワークを送る送りローラと、
を含み、
前記押戻し手段は、前記送りローラによって前記切断手段のワーク切断位置から下流側にワーク切断長さ分離れた定位置よりも下流側にオーバーランされたワークの先端を、前記押戻し部材で前記定位置に押し戻すものであることを特徴とする棒状ワーク用切断装置。
【請求項8】
前記押戻し部材は、ワークの前進移動を規制するストッパ部材である請求項7記載の棒状ワーク用切断装置。
【請求項9】
前記送りローラは、その回転形態が駆動回転とフリー回転とに切換え可能なものである請求項7又は8記載の棒状ワークの切断装置。
【請求項10】
前記切断装置は、更に、ワークの先端が前記定位置を下流側に超えたことを検知するセンサを含んでいる請求項7〜9のいずれかに記載の棒状ワーク用切断装置。
【請求項11】
前記押戻し手段は、ワークの前進移動を規制するストップ位置とワークの前進移動を規制しない非ストップ位置とに前記押戻し部材を変更可能に配置させる変更手段と、前記ストップ位置に配置された前記押戻し部材をワーク送り方向とは反対方向に移動させる駆動手段と、を備えている請求項7〜10のいずれかに記載の棒状ワーク用切断装置。
【請求項12】
前記変更手段は、ワーク送り方向と平行に移動可能に配置された基台と、前記基台に回転自在に軸支された回転杆と、を有するとともに、前記回転杆の回転動作によって、前記回転杆に設けられた前記押戻し部材が前記非ストップ位置から前記ストップ位置に変更されるように構成されており、
前記駆動手段は、前記基台をワーク送り方向と平行に移動させる基台駆動手段を有しており、
前記押戻し手段は、前記基台がワーク送り方向とは反対方向に移動するように前記基台駆動手段を駆動させることによって、前記ストップ位置に配置された前記押戻し部材をワークの先端に当接させてワークの先端を前記定位置に押し戻すように構成されている請求項11記載の棒状ワーク用切断装置。
【請求項13】
押出機から押し出された押出材を棒状ワークとしてその先端から所定長さに切断する請求項7〜12のいずれかに記載の棒状ワーク用切断装置を具備していることを特徴とする押出後面設備。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図6E】
【図6F】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図7D】
【図7E】
【図7F】
【図8】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図6E】
【図6F】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図7D】
【図7E】
【図7F】
【図8】
【図9】
【公開番号】特開2011−88267(P2011−88267A)
【公開日】平成23年5月6日(2011.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−245732(P2009−245732)
【出願日】平成21年10月26日(2009.10.26)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年5月6日(2011.5.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年10月26日(2009.10.26)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】
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