説明

棘突起間スペーサ

【課題】棘突起間スペーサを提供すること。
【解決手段】隣り合う両棘突起間に配置されて上棘突起を支承可能に設けられる第1の胴部と、前記第1の胴部から上方に伸びて上棘突起の一方の側面を支持可能に設けられる第1の上羽根部と、前記第1の胴部から下方に伸びて下棘突起の一方の側面を支持可能に設けられる第1の下羽根部と、前記第1の胴部から側面に伸びた嵌入部と、を有する第1の部材と、前記嵌入部が嵌まり込む嵌入孔を有する第2の胴部と、前記第2の胴部から上方に伸びて上棘突起の他方の側面を支持可能に設けられる第2の上羽根部と、前記第2の胴部から下方に伸びて下棘突起の他方の側面を支持可能に設けられる第2の下羽根部と、を有する第2の部材と、を備える棘突起間スペーサ。本発明に係る棘突起間スペーサは、脊柱管狭窄症の患者への施術に際して靱帯や骨が損傷する虞がなく、堅固である他、人体への適合性に優れている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は棘突起間スペーサに係り、さらに詳しくは、脊柱管狭窄症の患者の狭くなった棘突起間の間隔を広げて維持するための棘突起間スペーサに関する。
【背景技術】
【0002】
脊椎は、身体を支えて体のバランスを取る役割を果し、「脊柱」ともいわれるように、人体の柱となる屋台骨である。また、脊椎は、脳から四肢へとつながる脊椎神経、すなわち、脊髄を守るという重要な役割を果している。この脊椎には、脊柱管という脊髄が通る穴が中央を上下に貫いているが、この脊柱管が狭くなって神経が圧迫され、炎症や痛症を生じさせる疾患を脊柱管狭窄症という。
【0003】
この脊柱管狭窄症の患者の場合、手術的治療を通して脊髄への圧迫を取り除く必要がある。手術的治療療法には、椎弓根スクリュー固定術や、棘突起間の間隔を維持するための保形具を棘突起間に植え込むなど様々な方法があるが、本発明は、脊柱管狭窄症の患者の手術のために、狭くなった棘突起間の間隔を維持する保形具に関する。
【0004】
医療技術の発展につれて、脊柱管狭窄症の患者のための様々な手術療法が開発されており、これに伴い、棘突起間の間隔を維持するための保形具の開発にも目を見張るものがある。
【0005】
この種の保形具として、棘突起間に嵌まり込む羽根部及び略「コ」字状の胴体部を有する保形具(以下、「従来例1」と称する。)が提案されている(例えば、下記の特許文献1参照)。また、個人差がある棘突起の幅に応じて調節可能な保形具も提案されている(例えば、下記の特許文献2及び3参照)。以下、下記の特許文献2に開示されたものを「従来例2」と称し、 下記の特許文献3に開示されたものを「従来例3」と称する。
【0006】
しかしながら、これらの従来の技術は、脊椎骨の後方から前方に向かって嵌まり込むように講じられたものであるため、これらを嵌め込む施術を行う際に脊椎骨の後方を通る靱帯が切れてしまい折骨など致命傷を負わせる虞があるといった不都合がある。
【0007】
また、従来例2及び3の場合には、棘突起の最尾部は十分に支持しているとはいえ、棘突起間に嵌まり込む胴体部が棘突起の途中部を十分に支承していないため、既に退化して弱くなった棘突起が経時的に荷重を受け続けることになるという不都合があり、この不都合は、従来例1のように棘突起間に嵌まり込む胴体部の形状が略「コ」状を呈する場合にはあまり問題視されないものの、今度は略「コ」状の胴体部が脊椎に沿った神経を圧迫してしまうといった不都合がある。
【0008】
さらに、保形具によって既に施術済みの一対の棘突起と隣接する棘突起間に狭窄が起きて保形具の連続施術が求められる場合に、従来の技術によれば、その形状から、隣接する棘突起に再施術を行うことが困難になり、既存の保形具を抜去して他の手段(例えば、椎弓根スクリュー)を刺入することを考慮しなければならないという不都合もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】大韓民国実用新案登録第20−0382167号公告
【特許文献2】大韓民国特許公開第10−2005−0000425号公報
【特許文献3】大韓民国特許公開第10−2005−0119791号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、手術に際して靱帯や骨が損傷する虞がなく、堅固である他、人体への適合性に優れた棘突起間スペーサを提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために、本発明に係る棘突起間スペーサは、隣り合う両棘突起間に配置されて上棘突起を支承可能に設けられる第1の胴部と、前記第1の胴部から上方に伸びて上棘突起の一方の側面を支持可能に設けられる第1の上羽根部と、前記第1の胴部から下方に伸びて下棘突起の一方の側面を支持可能に設けられる第1の下羽根部と、前記第1の胴部から側面に伸びた嵌入部と、を有する第1の部材と、前記嵌入部が嵌まり込む嵌入孔を有する第2の胴部と、前記第2の胴部から上方に伸びて上棘突起の他方の側面を支持可能に設けられる第2の上羽根部と、前記第2の胴部から下方に伸びて下棘突起の他方の側面を支持可能に設けられる第2の下羽根部と、を有する第2の部材と、を備えることを特徴とする。
【0012】
本発明に係る棘突起間スペーサにおいて、前記第1の部材の前記嵌入部の先端には前記嵌入部より拡径された係止端が設けられ、前記第2の部材の前記嵌入孔には前記係止端が引っ掛かるための係止爪が設けられる。
【0013】
また、本発明に係る棘突起間スペーサにおいて、前記第2の部材には、前記第2の胴部の後面から前記嵌入孔まで貫通する第2の係合孔が設けられ、前記第1の部材の前記嵌入部には、第1の係合孔が前記第2の係合孔に対応するように設けられ、前記第2の部材の後面から前記第2の係合孔及び前記第1の係合孔に螺入する係合ねじがさらに設けられる。
【0014】
さらに、 本発明に係る棘突起間スペーサにおいて、前記第1の上羽根部は前記第1の下羽根部よりも短く、前記第2の上羽根部は前記第2の下羽根部よりも短い。
【0015】
さらに、本発明に係る棘突起間スペーサにおいて、前記第1の上羽根部の1点と、前記第1の上羽根部の1点と向かい合って並ぶ前記第2の上羽根部の1点との離間距離は、前記第1の上羽根部の1点の前記第1の胴部からの離間距離と同じ距離だけ前記第1の胴部から離間した前記第1の下羽根部の1点と、前記第1の下羽根部の1点と向かい合って並ぶ前記第2の下羽根部の1点との離間距離よりも長い。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、下記の効果が得られる。
【0017】
まず、第一に、本発明に係る棘突起間スペーサは側面接近方式によって施術可能であるため、脊椎骨の後方を通る靱帯が切れて折骨する虞がない。
【0018】
第二に、本発明に係る棘突起間スペーサは棘突起の側面に接近して棘突起間に嵌まり込むため、前記棘突起間スペーサが両分されている構造であるにも拘わらず、安定的な結合を達成することができ、さらに、二重結合によってなお一層の安定性が保証される。
【0019】
第三に、棘突起間に嵌まり込む胴部が棘突起の途中部を十分に支承するため、棘突起が荷重をあまり受けず、時間が経過しても再発がなく、安定的に棘突起間の間隔を維持する。
【0020】
第四に、胴部が人体への適合性に優れた形状を有するため、神経を圧する虞がない。
【0021】
第五に、上羽根および下羽根の長さが非対称であるため、隣り合う棘突起間に連続して本発明に係る棘突起間スペーサを植え込む施術を行っても相互干渉が発生しない。
【0022】
第六に、上下の空間が上下の棘突起の形状に合致するように形成され、このとき、特に、棘突起の形状に合わせて上空間が下空間よりも大きく形成されるため、棘突起に無理を与えることなく安定的に棘突起を支持する。
【0023】
最後に、本発明に係る棘突起間スペーサは、中央部に向かって湾曲した側面形状を有する弾力的な構造であるため、荷重によく耐えられ、しかも破損する虞がない。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】棘突起模型の写真である。
【図2】本発明に係る棘突起間スペーサを示す図である。
【図3】本発明に係る棘突起間スペーサの一構成要素である第1の部材を示す図である。
【図4】本発明に係る棘突起間スペーサの一構成要素である第2の部材を示す図である。
【図5】本発明に係る棘突起間スペーサの結合関係を示す図である。
【図6】本発明に係る棘突起間スペーサを図2における想像線VI−VIに沿って切り取った断面図である。
【図7】本発明に係る棘突起間スペーサを図2における想像線VII−VIIに沿って切り取った断面図である。
【図8】本発明に係る棘突起間スペーサが複数適用される場合を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面に基づき、本発明の好適な実施形態に係る棘突起間スペーサを詳述するが、周知の技術に関する説明を省く。
【0026】
図1は、棘突起の模型の写真であり、図2は、本発明に係る棘突起間スペーサを示す図であり、図3は、本発明に係る棘突起間スペーサの一構成要素である第1の部材を示す図であり、そして図4は、本発明に係る棘突起間スペーサの一構成要素である第2の部材を示す図である。
【0027】
図2から図4を参照すると、本発明に係る棘突起間スペーサ100は、第1の部材110と、第2の部材120と、に両分されており、第1の部材110および第2の部材120を結合するための係合ねじ130をさらに備えている。
【0028】
本発明に係る棘突起間スペーサ100は、脊柱管狭窄症の患者の狭くなった棘突起間に挿入されて棘突起間の間隔を維持する保形具であるが、上述したように第1の部材110と第2の部材120とに両分されていることにより、脊椎の後方に進入する必要がなく、側面に接近して棘突起間に挿入することができ、靱帯の損傷なしに施術可能である。
【0029】
第1の部材110は、第1の胴部111と、第1の上羽根部112と、第1の下羽根部113及び嵌入部114を備えている。
【0030】
第1の胴部111は、隣り合う上下の両棘突起間に配置されて上棘突起を支承し、上棘突起と下棘突起との間隔を維持する役割を果す。
【0031】
図1に示すように、棘突起の大まかな形状は、上側よりは下側の方が厚く(上狭下広形)、且つ、前方よりは後方の方が厚い(前狭後広形)。図中の上下前後の方向は人体を基準として想定したものであって、上下は脊椎の長手方向であり、前方が腹部を向く方向であり、後方が背中を向く方向である。
【0032】
第1の部材110における第1の胴部111は、上述した形状を有する上棘突起を下から支承するとともに、下棘突起を圧持する形状を有する。すなわち、第1の胴部111は第2の胴部121と一体をなすものであって、上下面は両方ともに丸みを帯び、且つ、後面が前面よりも深くて広く窪んだ形状を有する。これにより、上下の棘突起に刺激を与えることなく棘突起の形状をそのまま支持することができる。
【0033】
第1の上羽根部112は、第1の胴部111の一方から上方に伸び、第1の下羽根部113は、第1の胴部111の一方から下方に伸びる。
【0034】
第1の上羽根部112及び第1の下羽根部113は、隣り合う上下の棘突起間に配置された第1の胴部111と一体をなしてそれぞれ上方及び下方に所定の高さだけ伸びたものであり、それぞれ上下の棘突起が側面に離脱することを防ぐために上下の棘突起を支持する。第1の上羽根部112及び第1の下羽根部113の詳細については、後述する。
【0035】
次に、嵌入部114は、第1の胴部111から側面に伸びたものであり、第1の部材110と後述する第2の部材120とを結合する役割を果たす。
【0036】
すなわち、嵌入部114は、第1の胴部111の側面から突き出た、外周が円形を呈するものであって、これに対応するように形成された第2の部材120の嵌入孔121aに嵌合する。
【0037】
嵌入部114の先端には嵌入部114より拡径された係止端114aが傾設され、嵌入部114と係止端114aとの間には隙間Cが形成されて二又状に分岐する形状を呈する。これは、後述する嵌入孔121aよりも大径な係止端114aが嵌入孔121aに嵌合するために講じられた形状であり、係止端114a及び嵌入部114が縮まって嵌入孔121aに嵌入し、完全に嵌入した後に再び拡開されて後述する嵌入孔121aに設けられる係止爪121bに係止端114aが引っ掛かって抜脱しない。
【0038】
また、嵌入部114の二又状隙間Cには第1の係合孔114bが形成されている。第1の係合孔114bは、後述する第2の部材120における第2の係合孔121cに対応するように形成されて、後述する係合ねじ130が第2の部材120の後面から第2の係合孔121cを貫通し、第1の係合孔114bに嵌入する。
【0039】
次に、第2の部材120は、第2の胴部121と、第2の上羽根部122と、第2の下羽根部123と、を備えている。
【0040】
第2の胴部121は、隣り合う上下の両棘突起間に配置されて上棘突起を下から支承するとともに下棘突起を圧持する形状を有する。すなわち、第2の胴部121は前記第1の胴部111と対応する形状に設けられて第1の胴部111と一体をなし、上下面は両方ともに丸みを帯び、且つ、後面が前面よりも深くて広く窪んだ形状を有する。これにより、上下の棘突起に刺激を与えることなく棘突起の形状をそのまま支持することができる。
【0041】
さらに、第2の胴部121は、第1の部材110との結合のために、第1の部材110の嵌入部114が嵌合するための嵌入孔121aを有する。
【0042】
嵌入孔121aは、第1の部材110の嵌入部114に対応するように形成され、嵌入孔121aの先端には、嵌入部114の先端に形成された係止端114aが縮まって嵌入孔121aに嵌入した後に再び拡開されて抜脱しないように段付状の係止爪121bが形成されている。
【0043】
さらに、第2の胴部121には第1の部材110における第1の係合孔114bに対応するように第2の係合孔121cが形成されて、後述する係合ねじ130が第2の部材120の後面から第2の係合孔121cを貫通して第1の係合孔114bに嵌入するようになっている。
【0044】
第2の上羽根部122は、第2の胴部121の一方から上方に所定の高さだけ伸び、第2の下羽根部123は、第2の胴部121の一方から下方に所定の高さだけ伸びて、それぞれ上下の棘突起が側面に離脱することを防ぐために上下の棘突起を支持する。
【0045】
図5は、本発明に係る棘突起間スペーサが前記第1の部材110と、第2の部材120及び係合ねじ130によって結合される関係を示すものであり、図6は、本発明に係る棘突起間スペーサを図2における想像線VI−VIに沿って切り取った断面図である。
【0046】
本発明に係る棘突起間スペーサ100は、第1の部材110及び第2の部材120が嵌合され、係合ねじ130によりこれらの嵌合を一層強固にしている。
【0047】
まず、第1の部材110における第1の胴部111から伸びて突き出た嵌入部114が第2の部材120における第2の胴部121に形成された嵌入孔121aに嵌合する。すなわち、両分された第1の部材110および第2の部材120が靱帯の干渉なしに棘突起の側面から棘突起間に接近して嵌合可能となる。
【0048】
第1の部材110における嵌入部114の先端には係止端114aが嵌入部114より拡径されて形成されており、第2の部材120の直径は嵌入部114の直径に対応するように形成されるためそのまま嵌入することはできないが、嵌入部114に隙間Cが形成されているため嵌入可能となる。すなわち、嵌入部114の隙間Cによって嵌入部114が嵌入するときに嵌入部114は縮まった状態で嵌入孔121aに嵌入し、完全に嵌入したときに嵌入孔121aに段付き状に形成された係止爪121bによって隙間Cが再び拡開されて嵌入部114が拡開される。
【0049】
嵌入部114における係止端114aは嵌入孔121aより拡張されて段付き状に形成された係止爪121bによって後退し難くなって結合が行われる。
【0050】
また、2次的な結合のための係合ねじ130は、第1の係合部131と、第2の係合部132と、から構成される。このとき、第1の係合部131の直径が第2の係合部132の直径よりも小さく形成され、これに対応するように第1の部材110における第1の係合孔114bの直径が第2の部材120における第2の係合孔121cの直径よりも小さく形成されることが好ましく、第1の係合部131及び第2の係合部132の先端は円滑な嵌入のために傾設されることが好ましい。
【0051】
第2の係合部132にはねじ山が形成されて第2の係合孔121cに螺入することが好ましく、第1の部材110と第2の部材120とが結合された状態で係合ねじ130を締め付けると、第1の係合部131は第1の係合孔114bに徐々に螺入し、且つ、第2の係合部132は第2の係合孔121cに徐々に螺入する。
【0052】
ここで、第1の係合部131は第1の係合孔114bと対応する直径を有するが、第1の係合孔114bの直径は、嵌入部114が嵌入孔121aに嵌入した状態で隙間Cが縮まって一層狭くなった状態であるため、第1の係合部131が第1の係合孔114bを拡開させつつ嵌入が行われ、これにより、第1の係合孔114bがさらに拡張されて第1の係合部131が完全に嵌入され、嵌入部114も拡開されて嵌入孔121aに完全に当接して嵌入した状態となる。
【0053】
このようにして第1の部材110と第2の部材120とが結合された状態で、係合ねじ130を締め付けることにより、一層強固な結合が行われ、施術後に第1の部材110及び第2の部材120が抜脱することが防がれる。
【0054】
図7は、本発明に係る棘突起間スペーサを図2における想像線VII−VIIに沿って切り取った断面図である。以下、図7に基づき、本発明に係る棘突起間スペーサの特徴を詳述する。
【0055】
第1の部材110、第2の部材120及び係合ねじ130によって結合される本発明に係る棘突起間スペーサ100は、第1の上羽根部112は第1の下羽根部113よりも短く、第2の上羽根部122は前記第2の下羽根部123よりも短いという特徴を有する。
【0056】
すなわち、図7に示すように、第1の上羽根部112の長さh11は、第1の下羽根部113の長さh12よりも短く、第2の上羽根部122の長さh21は第2の下羽根部123の長さh22よりも短い。
【0057】
このような構成は棘突起の形状に起因するものであり、このような構成により、本発明に係る棘突起間スペーサを隣り合う棘突起間に連続してさらに植え込むことができる。
【0058】
図1に示すように、棘突起の大まかな形状は上狭下広形であり、上側が下側よりも尖っている。このため、これを考慮せずに、上羽根部112、122及び下羽根部113、123の長さを同じく設計した場合、隣り合う棘突起間に連続して棘突起間スペーサを施術することができなくなる。
【0059】
本発明に係る棘突起間スペーサ100は、棘突起間に連続して施術しても互いに干渉が発生することなく安全に施術することができ、上羽根部112、122及び下羽根部113、123の長さ及び形状が棘突起の長さ及び形状に対応するように形成されている。すなわち、図8から明らかなように、連続する2つの本発明に係る棘突起間スペーサ100によって形成された中央の空間Sに棘突起が安定的に支持される。
【0060】
さらに、本発明に係る棘突起間スペーサ100は、第1の上羽根部の1点と、第1の上羽根部の1点と向かい合って並ぶ第2の上羽根部の1点との離間距離が、前記第1の上羽根部の1点の前記第1の胴部からの離間距離と同じ距離だけ前記第1の胴部から離間した前記第1の下羽根部の1点と、前記第1の下羽根部の1点と向かい合って並ぶ前記第2の下羽根部の1点との離間距離よりも長いという特徴を有する。
【0061】
すなわち、図7に示すように、第1の上羽根部112における後面1点P11と、第1の上羽根部112の後面1点P11と向かい合って並ぶ第2の上羽根部122の後面1点P21との離間距離hが、第1の上羽根部112の後面1点P11の第1の胴部111からの離間距離dと同じ距離だけ第1の胴部111から離間した第1の下羽根部113の後面1点P12と、第1の下羽根部113の後面1点P12と向かい合って並ぶ第2の下羽根部123の後面1点P22との離間距離hよりも長い形状を有する。
【0062】
このような構成は、棘突起の形状に起因するものである。
【0063】
本発明に係る棘突起間スペーサ100において、上羽根部112、122は上棘突起を支承し、下羽根部113、123は下棘突起を支持するものであり、図1に示すように、棘突起の大まかな形状は上狭下広形であり、上側が下側よりも尖っている。
【0064】
このため、これを考慮せずに、上羽根部112、122間の幅と下羽根部113、123間の幅とを同幅に設計した場合、上下の棘突起を正常に支持することができなくなる。
【0065】
すなわち、図8に示すように、上羽根部112、122間の幅は下羽根部113、123間の幅よりも大きく形成されて、上羽根部112、122によって形成される上空間Hは比較的に浅くて緩やかな形状をしているのに対し、下羽根部113、123によって形成される下空間Lは比較的に深くて尖った形状をしている。これにより、上空間Hは上側にくる棘突起の下部形状に対応して支承可能であり、下空間Lは下側にくる棘突起の上部形状に対応して支持可能である。
【0066】
本発明に係る棘突起間スペーサは、上述した構成を有するため、棘突起を安定的に支持することができる。
【0067】
次に、本発明に係る棘突起間スペーサ100は、第1の下羽根部の1点と、前記第1の下羽根部の1点と向かい合って並ぶ前記第2の下羽根部の1点との離間距離が、下側に進むにつれて長くなるという特徴を有する。
【0068】
すなわち、図示の如く、下羽根部113、123間の距離は下側に進むにつれて長くなるように傾斜した形状を有するが、これも棘突起の形状に起因するものであり、図1に示すように、棘突起の大まかな形状が上狭下広形であり、上側が下側よりも尖っているためである。
【0069】
本発明に係る棘突起間スペーサがこのような構成を有することにより、棘突起を安定的に支持することが可能となる。
【0070】
さらに、図7に示すように、第1の部材110及び第2の部材120において、上羽根部112、122から下羽根部113、123へとつながる形状は、胴部111、121が僅かに湾曲した弓状を呈するが、このような形状によって本発明に係る棘突起間スペーサは荷重に強い特性を有する。
【0071】
本発明に係る棘突起間スペーサ100は、棘突起間の間隔が狭くなった患者の棘突起間に植え込まれて棘突起間の間隔を維持する器具であるが、患者の棘突起間の間隔は退化によって益々狭くなる傾向にある。このため、棘突起間に植え込まれた棘突起間スペーサは経時的に次第に大きな荷重を受けることになるが、本発明に係る棘突起間スペーサは、このように増大し続ける荷重に最大限に耐えるために、上記のように概ね弓状に形成されるのである。
【0072】
以上詳述したように、本発明に係る棘突起間スペーサは、人体への適合性に優れた構造により、棘突起間に植え込まれて人体に最も完全で且つ適合に作用可能である。
【0073】
また、本発明に係る棘突起間スペーサは、人体への適合性に優れた素材から製作されるが、好ましくは、チタン、プラスチック、金属などの材質が挙げられ、さらに好ましくは、Bio PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)などのバイオ素材が挙げられる。
【0074】
以上詳述したように、本発明に関する具体的な説明は図面に基づく実施形態によって行われたが、上述した実施形態は本発明の好適な例を挙げて説明しているものに過ぎず、本発明が上記の実施形態に限定されると解釈されてはならず、本発明の権利範囲は後述する特許請求の範囲及びその等価概念から理解されるべきである。
【符号の説明】
【0075】
100:棘突起間スペーサ
110:第1の部材
120:第2の部材
130:係合ねじ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
隣り合う両棘突起間に配置されて上棘突起を支承可能に設けられる第1の胴部と、前記第1の胴部から上方に伸びて上棘突起の一方の側面を支持可能に設けられる第1の上羽根部と、前記第1の胴部から下方に伸びて下棘突起の一方の側面を支持可能に設けられる第1の下羽根部と、前記第1の胴部から側面に伸びた嵌入部と、を有する第1の部材と、
前記嵌入部が嵌まり込む嵌入孔を有する第2の胴部と、前記第2の胴部から上方に伸びて上棘突起の他方の側面を支持可能に設けられる第2の上羽根部と、前記第2の胴部から下方に伸びて下棘突起の他方の側面を支持可能に設けられる第2の下羽根部と、を有する第2の部材と、
を備える棘突起間スペーサ。
【請求項2】
前記第1の部材の前記嵌入部の先端には前記嵌入部より拡径された係止端が設けられ、
前記第2の部材の前記嵌入孔には前記係止端が引っ掛かるための係止爪が設けられることを特徴とする請求項1に記載の棘突起間スペーサ。
【請求項3】
前記第2の部材には、前記第2の胴部の後面から前記嵌入孔まで貫通する第2の係合孔が設けられ、
前記第1の部材の前記嵌入部には、第1の係合孔が前記第2の係合孔に対応するように設けられ、
前記第2の部材の後面から前記第2の係合孔及び前記第1の係合孔に螺入する係合ねじをさらに備えることを特徴とする請求項2に記載の棘突起間スペーサ。
【請求項4】
前記第1の上羽根部は前記第1の下羽根部よりも短く、
前記第2の上羽根部は前記第2の下羽根部よりも短いことを特徴とする請求項1に記載の棘突起間スペーサ。
【請求項5】
前記第1の上羽根部の1点と、前記第1の上羽根部の1点と向かい合って並ぶ前記第2の上羽根部の1点との離間距離は、前記第1の上羽根部の1点の前記第1の胴部からの離間距離と同じ距離だけ前記第1の胴部から離間した前記第1の下羽根部の1点と、前記第1の下羽根部の1点と向かい合って並ぶ前記第2の下羽根部の1点との離間距離よりも長いことを特徴とする請求項1に記載の棘突起間スペーサ。
【請求項6】
前記第1の下羽根部の1点と、前記第1の下羽根部の1点と向かい合って並ぶ前記第2の下羽根部の1点との離間距離は、下側に進むにつれて長くなることを特徴とする請求項1に記載の棘突起間スペーサ。


【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2012−217826(P2012−217826A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−99128(P2011−99128)
【出願日】平成23年4月27日(2011.4.27)
【出願人】(511106008)
【氏名又は名称原語表記】Chang―Hwa, YOU
【住所又は居所原語表記】105―1402, Raemian Hyers Apartment, 1233bunji, Sanbon―dong, Gunpo―si, Gyeonggi―do 435―040, Republic of Korea
【Fターム(参考)】