説明

棚板構造

【課題】使用者の用途に応じて棚板を任意の角度に調整して固定できるとともに、棚の両側から操作できる棚板構造を提供する。
【解決手段】平行配置された2本のクランクシャフトと、前記クランクシャフトのクランクピン部に回動可能に支承された棚板と、前記棚板に配置され前記クランクピン部と棚板との間の回動を許可或いは禁止するロック手段とを備え、前記ロック手段を解除することにより、前記棚板を水平から垂直の間の任意の角度に設定し、前記ロック手段によって前記棚板を任意の角度に保持できるので、棚板に物を載せるだけでなく、見易い角度に固定して本やレシピを立て掛けて置いたり、垂直に固定して落下防止部材にキーやアクセサリー等を掛けることもできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、棚板の角度を任意に変更できるとともに、変更した角度に固定保持することのできる棚板構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、傾斜可能な棚板構造は、図書館や書店等において、新刊雑誌の表紙を見易く陳列できる表紙見せ棚として機能を有する棚構造が提案されている。
例えば、特許文献1に示すように左右の側板の対向する内面の前後部に設けられたほぼ等高の受け具に、扇形のブラケットを係着し、この左右のブラケット間に棚板を支持する棚装置であって、扇形ブラケットの要位置に設けた凹溝と、扇形ブラケットの後方円弧状部に設けた複数の外向き凹溝の何れか一個とに受け具をそれぞれ係着して、棚板の傾斜角度を変更できる棚構造が開示されております。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−172308号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に開示された従来の棚板構造は、棚の一側面方向からしか角度調整ができないとともに、一方向に傾けることしかできなかった。また、一定の角度調整を想定している為に、許容幅までの角度調整しかできないと云う欠点が存在した。
【0005】
この発明は、上記したような不都合を解消する為になされたもので、平行配置された2本のクランクシャフトのクランクピン部に回動可能に支承された棚板と、前記棚板に配置され前記クランクピン部と棚板との間の回動を許可或いは禁止するロック手段とを設け、使用者の用途に応じて棚板の角度調整を可能とするとともに、何れの方向にも傾斜させることができ、棚板の両側から操作することのできる棚板構造を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、以下のような内容である。
(1)平行配置された2本のクランクシャフトと、前記クランクシャフトのクランクピン部に回動可能に支承された棚板と、前記棚板に配置され前記クランクピン部と棚板との間の回動を許可或いは禁止するロック手段と、前記棚板の前後端近傍の少なくとも何れか一方に落下防止部材とを備え、前記ロック手段を解除することにより、前記棚板を水平から垂直の間の任意の角度に設定し、前記ロック手段によって前記棚板を任意の角度に保持できることを特徴とする。
(2)(1)に記載の棚板構造において、前記ロック手段は、前記2本のクランクシャフトの双方に作用し、前記双方のクランクピン部と棚板との間の回動を許可或いは禁止することを特徴とする。
(3)(1)または(2)に記載の棚板構造において、前記クランクシャフトは、複数のクランクピン部を備え、複数の棚板を支承することを特徴とする。
(4)(1)から(3)に記載の棚板構造において、前記ロック手段は、棚板の前後両側に操作部を備え、棚板の前後何れの側からでも操作可能であることを特徴とする。
(5)(1)から(4)に記載の棚板構造において、前記ロック手段は、棚板の裏側に操作部を備えたことを特徴とする。
(6)(1)から(5)に記載の棚板構造において、前記落下防止部材は、前記棚板に対してコ字状に形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、平行配置された2本のクランクシャフトと、前記クランクシャフトのクランクピン部に回動可能に支承された棚板と、前記棚板に配置され前記クランクピン部と棚板との間の回動を許可或いは禁止するロック手段と、前記棚板の前後端近傍の少なくとも何れか一方に落下防止部材とを備え、前記ロック手段を解除することにより、前記棚板を水平から垂直の間の任意の角度に設定し、前記ロック手段によって前記棚板を任意の角度に保持できるので、クランクシャフトを回動させることで、棚板を上下前後方向に平行移動できるとともに、その位置で固定することができる。また、棚板を傾けても落下防止部材により物品が落下する虞れがなく、種々の使用方法を実践することができる。
そして、前記ロック手段は、前記2本のクランクシャフトの双方に作用し、前記双方のクランクピン部と棚板との間の回動を許可或いは禁止するので、棚板の前後いずれの方向から操作しても用途に応じて任意の角度で固定することができる。
また、前記クランクシャフトは、複数のクランクピン部を備え、複数の棚板を支承するので、多数の棚板を備えた棚を構成するとともに、キッチン等に設置することにより、キッチンとリビングとの隔たりを無くして、グラデーションのように繋ぐことができる。
さらに、前記ロック手段は、棚板の前後両側に操作部を備え、棚板の前後何れの側からでも操作可能であるので、棚板の角度を変更する際の操作性を向上することができる。
また、前記ロック手段は、棚板の裏側に操作部を備えたので、棚板の表面に物を載置する場合に邪魔になることがないとともに、棚板の裏側に指を廻すことにより容易にロック手段を操作して棚板の角度を調整できる。
また、前記落下防止部材は、前記棚板に対してコ字状に形成されているので、棚板を傾斜させても載置物が落下するのを阻止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、この発明の一実施の形態を示す棚板構造の全体斜視図である。
【図2】図2は、同棚板構造において棚板を傾斜させた状態を示す全体斜視図である。
【図3】図3は、同棚板構造に使用されるロック手段の構造及び作動状態を示す説明図である。
【図4】図4は、ロック手段の構造を示す要部拡大説明図である。
【図5】図5は、同棚板構造の一部を切り欠いた側面図である。
【図6】図6は、図4の棚板を傾斜させた状態を示す側面図である。
【図7】図7は、図4の棚板を垂直にした状態を示す側面図である。
【図8】図8は、同棚板構造の使用態様の一例を示す説明図である。
【図9】図9は、同棚板構造の使用態様の一例を示す説明図である。
【図10】図10は、同棚板構造の使用態様の一例を示す説明図である。
【図11】図11は、同棚板構造の他の使用態様を示す説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明は、平行配置された2本のクランクシャフトと、このクランクシャフトのクランクピン部に回動可能に支承された棚板と、棚板に配置されクランクピン部と棚板との間の回動を許可或いは禁止するロック手段と、棚板の前後端近傍の少なくとも何れか一方に落下防止部材とを備え、ロック手段を解除することにより、棚板を水平から垂直の間の任意の角度に設定し、ロック手段によって棚板を任意の角度に保持できるので、使用者の用途に応じて棚板を任意の角度に調整して固定できるとともに、棚の両側から操作できる。
【実施例1】
【0010】
以下、一実施の形態を示す図面に基づいて本発明を詳細に説明する。図1はこの発明の一実施の形態を示す棚板構造の全体斜視図、図2は本発明の棚板構造において棚板を傾斜させた状態を示す全体斜視図である。ここで棚板構造10は、平行配置された2本のクランクシャフト11、12と、前記クランクシャフト11、12のクランクピン部11a、12aに回動可能に支承された棚板13と、前記棚板13に配置され前記クランクピン部11a、12aと棚板13との間の回動を許可或いは禁止するロック手段14と、前記棚板13の前後端近傍の少なくとも何れか一方に落下防止部材15とを備えている。
【0011】
また、クランクシャフト11、12は、平行に対向配置された側板16、16間にクランクジャーナル部11b、12bで回動自在に支承されている。クランクシャフト11、12は、クランクピン部11a、12a、クランクジャーナル部11b、12b、クランクアーム部11c,12cとから構成されており、各部はそれぞれ直角に折曲されている。
【0012】
ロック手段14は、棚板13の内部に配置されており、クランクピン部11a、12aと棚板13との間の回動を許可或いは禁止することができる。具体的には、図3に示すようにロック手段14は、クランクピン部11aに固定された固定ギア17と固定ギアと対向配置された移動ギア18と、移動ギア18を駆動するカム板19と、カム板19に連設されるとともに一部が棚板13の裏面から突出した操作片20と、左右のカム板19を連結するリンク機構21と、前記固定ギア17と移動ギア18とが噛み合う方向に付勢するバネ22から構成されている。
【0013】
図4は、ロック手段の構造を示す要部拡大説明図である。ここで、固定ギア17は、クランクピン部11aに歯合面17aを軸線方向内向き固定されている。移動ギア18は、歯合面18aを歯合面17aと対向クランクピン部11aに移動可能に配設されている。また、移動ギア18は、クランクピン部11aに移動可能に挿通された筒体23の先端に取り付けられるとともに、筒体23の後端にはピン24が立設されている。更に、ピン24は、カム板19にクランクピン部11aの軸線に対して斜めに形成されたカム孔25に挿通されている。カム孔25は、ハ字状にカム板19に形成されている。したがって、カム板19と連結された操作片20を矢印A方向に操作することにより、筒体23及び移動ギア18が矢印B方向に後退して、固定ギア17との歯合が解除される。棚板13の他端に設けられた固定ギア17、移動ギア18、筒体23、ピン24,カム孔25も対称に配設されており、操作片20を矢印A方向に操作することにより、筒体23及び移動ギア18が矢印B方向に後退して、固定ギア17との歯合が解除される。
【0014】
クランクピン部12aにも同様に固定ギア17、移動ギア18、筒体23、ピン24、カム孔25が配設されており、操作片20を操作することにより、筒体23及び移動ギア18が後退して、固定ギア17との歯合が解除される。また、クランクピン部11a側に配設されたカム板19とクランクピン部12a側に配設されたカム板19とは、リンク機構21によって連結されている。
【0015】
リンク機構21は、ほぼ棚板13の中央に回動可能に軸支された中央アーム26と、中央アーム26の両端に一端が連結され他端がカム板19に連結された連結アーム27と、中央アーム26に一端が連結され他端が棚板13の一部に連結されカム板19を介して固定ギア17と移動ギア18が歯合する方向に付勢するバネ22とから構成されている。したがって、何れか一方の操作片20を操作することにより、他方のカム板19を操作することができる。つまり、棚板13の前後何れか一方から操作しても、ロック手段14を解除することにより、棚板13を水平から垂直の間の任意の角度に設定し、ロック手段14をセットすることによって前記棚板を任意の角度に保持できる。
【0016】
棚板13の上面で前後端近傍に落下防止部材15が立設されている。また、落下防止部材15は、棚板13に対してコ字状に形成されている。つまり、落下防止部材15は、棒状部材が棚板の左右端近傍から立ち上がり、内側に湾曲した後、所定の高さで水平に延設されて構成されている。更に、落下防止部材15は、棚板13の上面で前後端近傍を隆起させて構成してもよい。
【0017】
以上の様に構成された棚板構造の動作について図5〜図7に従って説明する。先ず、棚板13の裏面に配設された操作片20を引くことにより、ロック手段14が解除されクランクシャフト11、12に対して自在に回動することができる。したがって、図2、6に示すように棚板13を傾斜させ、所望の角度で保持することができる。また、図7に示すように棚板13を垂直にして保持することもできる。
【0018】
図8〜図11は、クランクシャフト110、120が、複数のクランクピン部110a、120aを備え、複数の棚板13を支承して平行配置された側板16に取り付けられた例を示すものである。
このように構成された棚板構造10は、図8に示すように棚板13を水平状態のまま高さを変更して、ワイン瓶28、ワイングラス29、陶器30を段違状にデスプレイすることができる。また、図9に示すように棚板13を斜めにして雑誌31を飾ったり、レシピを置いてキッチンから見ることができる。更に、図10に示すように棚板13を略垂直にして落下防止部材15にアクセサリー32やキー33を掛けることができる。
【0019】
図11は、本発明の棚板構造の他の使用態様である、クランクシャフト110、120が、複数のクランクピン部110a、120aを備え、複数の棚板13を支承する場合の全体を示す説明図である。このような棚板構造をキッチンとリビングの間に設置することにより、棚の両側から操作ができ、隔たりを解消することができる。
【0020】
上記した実施の形態において、棚板のロック手段の解除機構を固定ギアと移動ギアを使用した例を示したが、これに限ることなく他のクラッチ機構を適用してもよい。
【0021】
また、本発明は上述の実施例に限定されることなく、特許請求の範囲の記載に基づいて種々の設計変更が可能である。
【符号の説明】
【0022】
10 棚板構造
11、110 クランクシャフト
11a クランクピン部
11b クランクジャーナル部
11c クランクアーム部
12、120 クランクシャフト
12a クランクピン部
12b クランクジャーナル部
12c クランクアーム部
13 棚板
14 ロック手段
15 落下防止部材
16 側板
17 固定ギア
17a 歯合面
18 移動ギア
18a 歯合面
19 カム板
20 操作片
21 リンク機構
22 バネ
23 筒体
24 ピン
25 カム孔
26 中央アーム
27 連結アーム
28 ワイン瓶
29 ワイングラス
30 陶器
31 雑誌
32 アクセサリー
33 キー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平行配置された2本のクランクシャフトと、
前記クランクシャフトのクランクピン部に回動可能に支承された棚板と、
前記棚板に配置され前記クランクピン部と棚板との間の回動を許可或いは禁止するロック手段と、
前記棚板の前後端近傍の少なくとも何れか一方に落下防止部材とを備え、
前記ロック手段を解除することにより、前記棚板を水平から垂直の間の任意の角度に設定し、
前記ロック手段によって前記棚板を任意の角度に保持できることを特徴とする棚板構造。
【請求項2】
前記ロック手段は、前記2本のクランクシャフトの双方に作用し、
前記双方のクランクピン部と棚板との間の回動を許可或いは禁止することを特徴とする請求項1に記載の棚板構造。
【請求項3】
前記クランクシャフトは、複数のクランクピン部を備え、
複数の棚板を支承することを特徴とする請求項1または2に記載の棚板構造。
【請求項4】
前記ロック手段は、棚板の前後両側に操作部を備え、棚板の前後何れの側からでも操作可能であることを特徴とする請求項1〜3の何れか1に記載の棚板構造。
【請求項5】
前記ロック手段は、棚板の裏側に操作部を備えたことを特徴とする請求項1〜4の何れか1に記載の棚板構造。
【請求項6】
前記落下防止部材は、前記棚板に対してコ字状に形成されていることを特徴とする請求項1〜5の何れか1に記載の棚板構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−183098(P2012−183098A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−46482(P2011−46482)
【出願日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【出願人】(501300104)学校法人 多摩美術大学 (25)
【出願人】(000135209)株式会社ニフコ (972)
【Fターム(参考)】