説明

椅子における肘掛けフレーム取付構造

【課題】肘掛けフレーム取付部の外側端面に、肘掛けフレームの内側端面を、強固に、かつ安定的に取付ける。
【解決手段】肘掛けフレーム取付部18の外側端面に、少なくとも前後1対の凹部15を、肘掛けフレームの内向折曲部13aの内側端面に、凹部15と補形をなしてそれに嵌合可能な凸部19を、それぞれ設け、これら突部19に凹部15を嵌合した状態で、肘掛けフレーム取付部18と肘掛けフレームの内向折曲部13aとを、左右方向を向く連結ボルト21により固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、椅子における肘掛けフレームの取付構造、特に、肘掛けフレーム取付部の外側端面に、座体の側方より起立する肘掛けフレームの下端の内側端面を結合する取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
本願の出願人は、背凭れ支持杆の水平部に、肘掛けフレーム取付部を、外側方を向くように設け、この肘掛けフレーム取付部の外側端面と肘掛けフレームの内側端面との対向面に、互いに補形をなして嵌合し合う山形凸部と谷形凹部、並びに突部と係合孔を設け、それらを互いに嵌合した状態で、連結ボルトにより、肘掛けフレームの下端を肘掛けフレーム取付部に取付ける取付構造を案出し、先に特許出願している(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−49735号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記特許文献に記載されている肘掛けフレームの取付構造においては、肘掛けフレーム取付部と肘掛けフレームとの連結部は、前後寸法の比較的小さな杆状をなしており、しかも、山形凸部と谷形凹部は、上下方向に連続して互いに嵌合し合い、かつ稜線部において連結ボルトにより連結しているため、肘掛けフレームに作用する前後方向の回転モーメントによる曲げ荷重が、連結ボルトに直接加わるとともに、肘掛けフレームに加わる下向荷重及び肘掛けフレームを前後に倒そうとする荷重も、直接、連結ボルトやピン状の突部に加わり、長期の使用における肘掛けフレームの安定性や取付強度上の課題が残されていた。
【0004】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたもので、肘掛けフレーム取付部の外側端面に、肘掛けフレームの下端の内側端面を、連結ボルト等に直接負荷が加わるのを防止して、強固にかつ安定的に取付けうるようにした、椅子における肘掛けフレームの取付構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によると、上記課題は、次のようにして解決される。
(1)椅子本体の側部に設けた肘掛けフレーム取付部の外側端面に、上方を向く肘掛けフレームの下端部の内側端面を取付けるようにした椅子における肘掛けフレーム取付構造において、前記肘掛けフレーム取付部の外側端面と肘掛けフレームの内側端面とのいずれか一方に、少なくとも前後1対の突部を、かつ他方に、前記突部と補形をなして、それに嵌合可能な側方に開口する凹部を、それぞれ設け、これら突部に凹部を嵌合した状態で、肘掛けフレーム取付部と肘掛けフレームとを、左右方向を向く連結ボルトにより固定する。
【0006】
(2)上記(1)項において、凹部を、肘掛けフレームの内側端面側に設けたときは、下方にも開口し、肘掛フレーム取付部の外側端面に設けたときは、上方にも開口するものとする。
【0007】
(3)上記(1)または(2)項において、肘掛けフレーム取付部を、前後方向に長い直方体状とするとともに、肘掛けフレームの下端部を、前記直方体状とした肘掛けフレーム取付部の前後寸法と上下寸法にほぼ等しい前後幅と厚さに形成し、前記肘掛けフレーム取付部の外側端面の全面に、肘掛けフレームの内側端面を当接させて固定する。
【0008】
(4)上記(1)〜(3)項のいずれかにおいて、肘掛けフレーム取付部を、座体の後方において後傾しうるように、前下端が座体を支持する支基の側部に枢着された背凭れ支持杆における下部の前向腕部に設ける。
【0009】
(5)上記(1)〜(4)項のいずれかにおいて、突部と凹部とのいずれか一方に、連結ボルトの軸部が挿通する挿通孔を、かつ他方に、連結ボルトが螺合するめねじ孔を、それぞれ設ける。
【0010】
(6)上記(1)〜(5)項のいずれかにおいて、肘掛けフレームに、連結ボルトの軸部が挿通する挿通孔と、ボルトの頭部が挿入される外側方に開口する拡径孔を設ける。
【0011】
(7)上記(1)〜(6)項のいずれかにおいて、肘掛けフレームの上部を、側面視ほぼ菱形枠状をなすものとする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載の発明によれば、肘掛けフレームに加わる下向荷重や肘掛けフレームを前後方向に倒そうとする荷重及びその取付部に作用する前後方向の回転モーメントによる曲げ荷重は、前後の突部と凹部とにより受止され、従来のように、連結ボルトやめねじ孔に直接加わることがない。従って、肘掛けフレームは、長期に亘って強固に、かつ安定的に取付けられる。
【0013】
請求項2記載の発明によれば、肘掛けフレームを上方より下方に移動させるだけで、突部と凹部とを容易に嵌合させることができる。
【0014】
請求項3記載の発明によれば、肘掛けフレーム取付部の剛性が大となるとともに、肘掛けフレームの内側端面との接触面積も大きく、かつ前後方向の回転モーメントに対しての強度も向上するので、肘掛けフレームは、より強固に、かつ安定して取付けられ、特に、前後及び上下方向にぐらつく恐れはない。
【0015】
請求項4記載の発明によれば、肘掛けフレームの上下寸法を小としうるので、その取付部に作用する回転モーメントも小さくなり、安定性が高まる。
また、背凭れ支持杆の後傾と連動して、肘掛けフレームも後傾するので、肘当て感がよく、座り心地が向上する。
【0016】
請求項5記載の発明によれば、突部と凹部との嵌合部が、連結ボルトにより直接締付けられるので、それらの嵌合強度が大となる。
【0017】
請求項6記載の発明によれば、連結ボルトを、肘掛けフレームの外側方より挿入しても、ボルトの頭部は、肘掛けフレームの外側方に開口する拡径孔に挿入され、外部に露呈しないので、見栄えがよくなる。
【0018】
請求項7記載の発明によれば、肘掛けフレームの剛性が大となるとともに、側方から見たときの重厚感がなく、かつ体裁もよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を、図面に基づいて説明する。
図1は、本発明を適用したリクライニング椅子の正面図、図2は、同じく側面図で、この椅子は、キャスタ(1)付きの脚体(2)と、その中央より起立する脚柱(3)と、その上端に取付けられた、座体(4)を支持する支基(5)と、この支基(5)の左右両側部に前下端が枢着され、支基(5)内のリクライニング機構(図示略)により後傾しうるアルミニウム合金等よりなる背凭れ支持杆(6)と、この前面に取付けられた背凭れ(7)と、同じく、背凭れ支持杆(6)の下端部に、後記する連結ボルト(21)により取付けられた左右1対の肘掛け(8)(8)とを備えている。
【0020】
背凭れ支持杆(6)は、座体(4)の後方において起立するとともに、下端に斜め後ろ上方に傾斜する前向腕部(9a)が連設された左右1対の(一方のみ図示)側部支持杆(9)と、両側部支持杆(9)の上端同士を結合する上部支持杆(10)とからなり、全体形は前後面視ほぼ下向コ字状をなしている。
【0021】
座体(4)の前部は、左右1対の支持リンク(11)をもって、支基(5)の前部に枢着され、また座体(4)の後部は、左右の側部支持杆(9)の前向腕部(9a)の前端部に上向き突設された軸受片(12)に枢着され、背凭れ支持杆(6)の傾動と連動して、座体(4)も後下方に傾動させられるようになっている。
【0022】
肘掛け(8)は、図3〜図5にも示すように(左右対称につき、一方のみ図示する)、側面視概ね菱形の枠状をなし、下端に、前後方向に幅広かつ厚肉の正面視内向L字状の内向折曲部(13a)を有するアルミニウム合金等よりなる肘掛けフレーム(13)と、その上端面に取付けられた前後方向を向く肘当て(14)とからなり、座体(4)及び背凭れ(7)の外側方において起立するように、後記する連結ボルト(21)により背凭れ支持杆(6)に取付けられている。
【0023】
図4に示すように、肘掛けフレーム(13)における内向折曲部(13a)の内側端面には、上面が上向円弧状の曲面をなすとともに、内側面と下端が開口された側面視下向U字状の前後2個の凹部(15)(15)が形成されている。
【0024】
内向折曲部(13a)の下端部の外面には、後記する肘掛けフレーム(13)取付用の2本の連結ボルト(21)の頭部を挿入可能な外側方に開口する前後2個の拡径孔(16)(16)が、また、それらの奥部には、上記凹部(15)内に開口する、ボルトの軸部挿通用の左右方向を向く挿通孔(17)(17)が、拡径孔(16)と連通するようにして穿設されている。
【0025】
左右の側部支持杆(9)の前向腕部(9a)における軸受片(12)より後方の上面には、前後寸法と上下寸法が、上記折曲部(13a)の前後幅と厚さにほぼ等しい前後方向を向くほぼ直方体状の取付部(18)が、軸受片(12)と連続するように、かつ前向腕部(9a)の側面よりも若干外側方に突出させて一体的に上向突設されている。
【0026】
この取付部(18)の外側端面には、上記凹部(15)が上方より適正に嵌合されるように、それと補形をなす形状に形成された、側面視下向U字形の前後2個の突部(19)(19)が、一体的に突設されている。各突部(19)の上部には、左右方向を向くめねじ孔(20)(20)が、上記内向折曲部(13a)に設けた挿通孔(17)と同心的に整合するように設けられている。
【0027】
肘掛け(8)の肘掛けフレーム(13)を、背凭れ支持杆(6)における左右の側部支持杆(9)の取付部(18)に取付けるには、まず内向折曲部(13a)の内側端面に設けた前後の凹部(15)(15)を、取付部(18)の外側端面に突設した前後の突部(19)(19)に、上方より落とし込んで嵌合するか、側方より嵌合し、前後方向と上下方向の位置決めをした状態に保持する。
【0028】
ついで、内向折曲部(13a)の外側方より、2本の六角穴付き連結ボルト(21)(21)を、内向折曲部(13a)に設けた拡径孔(16)を介して、挿通孔(17)(17)に挿入し、かつ突部(19)に設けためねじ孔(20)に螺合させて締付ける。
【0029】
これにより、肘掛けフレーム(13)における内向折曲部(13a)の下端の内側端面は、取付部(18)の外側端面に強固に、かつ安定的に取付けられる。
すなわち、肘掛け(8)に加わる下向荷重、肘掛け(8)を前後方向に倒そうとする荷重、及び肘掛け(8)の取付部に作用する前後方向の回転モーメントによる曲げ荷重等は、凹部(15)と突部(19)とにより受止され、連結ボルト(21)やめねじ孔(20)には直接加わらないため、それによる連結強度が大となる。
【0030】
また、内向折曲部(13a)及び取付部(18)は、前後方向に比較的長く、かつ厚肉として互いの接触面積が大とされ、また、凹部(15)と突部(19)は、前後に離間して設けられているため、肘掛け(8)の取付部が前後及び上下方向にぐらつく恐れはなく、安定して取付けられる。
【0031】
なお、上記実施形態では、肘掛けフレーム(13)における内向折曲部(13a)側に凹部(15)を、背凭れ支持杆(6)の取付部(18)側に突部(19)を、それぞれ設けているが、これとは反対に、図6に示すように、取付部(18)側に、上端と外側面が開口し、かつめねじ孔(20)を有する凹部(15)を、肘掛けフレーム(13)における内向折曲部(13a)側に、凹部(15)と補形をなすとともに、挿通孔(17)を有する突部(19)を、それぞれ設け、挿通孔(17)に外側方より挿入した連結ボルト(21)を、めねじ孔(20)に螺合することにより、肘掛けフレーム(13)を取付部(18)に取付けるようにしてもよい。
【0032】
また、上記実施形態では、肘掛けフレーム(13)の取付部(18)を、椅子本体側である背凭れ支持杆(6)に設けているが、他の椅子本体側、例えば脚体(2)と実質的に一体をなす支基(5)の外側面や、座体(4)の外側面に設けることもある。
【0033】
さらに、上記実施形態では、連結ボルト(21)を肘掛けフレーム(13)側より挿入して、取付部(18)側に螺合しているが、その反対に、取付部(18)の内側方より挿入して、肘掛けフレーム(13)の内側面に螺合するようにしてもよい。
凹部(15)と突部(19)は、2個以上とすることもある。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明を適用した椅子の正面図である。
【図2】同じく、側面図である。
【図3】肘掛けフレーム取付前の状態を、斜め前側方より見た要部の斜視図である。
【図4】同じく、肘掛けフレーム取付前の状態を、斜め前内方より見た要部の斜視図である。
【図5】肘掛けフレーム取付後の要部の前方斜視図である。
【図6】凹部を取付部側に、突部を肘掛けフレーム側に設けた変形例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0035】
(1)キャスタ
(2)脚体
(3)脚柱
(4)座体
(5)支基
(6)背凭れ支持杆
(7)背凭れ
(8)肘掛け
(9)側部支持杆
(9a)前向腕部
(10)上部支持杆
(11)支持リンク
(12)軸受片
(13)肘掛けフレーム
(13a)内向折曲部
(14)肘当て
(15)凹部
(16)拡径孔
(17)挿通孔
(18)取付部(肘掛けフレーム取付部)
(19)突部
(20)めねじ孔
(21)連結ボルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
椅子本体の側部に設けた肘掛けフレーム取付部の外側端面に、上方を向く肘掛けフレームの下端部の内側端面を取付けるようにした椅子における肘掛けフレーム取付構造において、
前記肘掛けフレーム取付部の外側端面と肘掛けフレームの内側端面とのいずれか一方に、少なくとも前後1対の突部を、かつ他方に、前記突部と補形をなして、それに嵌合可能な側方に開口する凹部を、それぞれ設け、これら突部に凹部を嵌合した状態で、肘掛けフレーム取付部と肘掛けフレームとを、左右方向を向く連結ボルトにより固定したことを特徴とする椅子における肘掛けフレーム取付構造。
【請求項2】
凹部を、肘掛けフレームの内側端面側に設けたときは、下方にも開口し、肘掛フレーム取付部の外側端面に設けたときは、上方にも開口するものとした請求項1記載の椅子における肘掛けフレーム取付構造。
【請求項3】
肘掛けフレーム取付部を、前後方向に長い直方体状とするとともに、肘掛けフレームの下端部を、前記直方体状とした肘掛けフレーム取付部の前後寸法と上下寸法にほぼ等しい前後幅と厚さに形成し、前記肘掛けフレーム取付部の外側端面の全面に、肘掛けフレームの内側端面を当接させて固定した請求項1または2記載の椅子における肘掛けフレーム取付構造。
【請求項4】
肘掛けフレーム取付部を、座体の後方において後傾しうるように、前下端が座体を支持する支基の側部に枢着された背凭れ支持杆における下部の前向腕部に設けてなる請求項1〜3のいずれかに記載の椅子における肘掛けフレーム取付構造。
【請求項5】
突部と凹部とのいずれか一方に、連結ボルトの軸部が挿通する挿通孔を、かつ他方に、連結ボルトが螺合するめねじ孔を、それぞれ設けてなる請求項1〜4のいずれかに記載の椅子における肘掛けフレーム取付構造。
【請求項6】
肘掛けフレームに、連結ボルトの軸部が挿通する挿通孔とボルトの頭部が挿入される外側方に開口する拡径孔を設けてなる請求項1〜5のいずれかに記載の椅子における肘掛けフレーム取付構造。
【請求項7】
肘掛けフレームの上部を、側面視ほぼ菱形枠状をなすものとした請求項1〜6のいずれかに記載の椅子における肘掛けフレーム取付構造。。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−325696(P2007−325696A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−158126(P2006−158126)
【出願日】平成18年6月7日(2006.6.7)
【出願人】(000000561)株式会社岡村製作所 (1,415)
【Fターム(参考)】