説明

椅子制御用スイッチ装置

【課題】 刈り布で被施術者および椅子を覆った状態において、椅子の姿勢を変更を行うために前記スイッチを操作しようとしても、刈り布によってスイッチの位置が目視できないために刈り布を捲ってスイッチの位置を確認して操作を行わなければならずスイッチ操作がし難いといった問題があった。
【解決手段】 椅子に装備される少なくとも座部の昇降用スイッチや背凭れの伏倒用スイッチ内にLEDを内蔵した椅子制御用スイッチ装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、理美容椅子における肘掛けや背凭れ取付けられ、座部の昇降、背凭れの起伏を制御するためのスイッチ内に照明具を内蔵し、施術時において被施術者に刈り布を掛けてスイッチが目視できない状態であってもLEDを点灯することで、スイッチの位置を目視することができるようにした椅子制御用スイッチ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来における椅子制御用のスイッチの先行文献としては、例えば、特開平10−262770号公報に開示されている発明がある。この発明には理美容椅子の肘掛け側面に椅子の形状に模して配列された複数個のスイッチを取付け、該各スイッチと対応する部分に押圧子を設けた1つの被覆体で覆い、制御しようとするスイッチと対応する部分の被覆体を押圧することで、座部の昇降や背凭れの伏倒を制御するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−262770号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前記した先行文献にあっては、椅子の形状を模した配列でスイッチが配置されていることから、誤ってスイッチを操作することがないので施術者が希望する姿勢に椅子の制御をすることができるが、毛髪をカットするような場合には、カットした毛髪が被施術者や椅子の座部側に落ちないように刈り布と呼ばれる被施術者の身体を覆う厚みの薄い樹脂や布で覆って作業を行う。
【0005】
このように刈り布で被施術者と椅子を覆った状態において、椅子の姿勢変更を行うために前記スイッチを操作しようとしても、刈り布によってスイッチの位置が目視できないために刈り布を捲ってスイッチの位置を確認して操作を行わなければならずスイッチ操作がし難いといった問題があった。
【0006】
本発明は前記した問題点を解決せんとするもので、その目的とするところは、スイッチ内にLEDを内蔵して点灯した状態とすることで、刈り布が相当厚手でない限り刈り布を透してスイッチの位置を施術者が目視できるので、椅子の姿勢を変更する作業が容易に行える椅子制御用スイッチ装置を提供せんとするにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の椅子制御用スイッチ装置は前記した目的を達成せんとするもので、請求項1の手段は、椅子に装備される少なくとも座部の昇降用スイッチや背凭れの伏倒用スイッチ内にLEDを内蔵したことを特徴とする。
【0008】
請求項2の手段は、前記した請求項1において、前記スイッチ内のLEDを段階的あるいは無段階的に照度を変化させるようにしたことを特徴とする。
【0009】
請求項3の手段は、前記した請求項1または2において、前記刈り布によって覆われる部分に照度センサを設け、該照度センサが刈り布によって覆われたことを検出すると、常時は消灯状態の前記スイッチ内のLEDを点灯するようにしたことを特徴とする。
【0010】
請求項4の手段は、椅子に装備される少なくとも座部の昇降用スイッチや背凭れの伏倒用スイッチ内にLEDを内蔵し、かつ、前記刈り布によって覆われる部分に照度センサを設け、該照度センサが刈り布によって覆われた状態での輝度値を検出し、該検出した輝度値が高ければ暗い照度で、また、検出した輝度値が低ければ明るい照度で前スイッチ内のLEDを点灯するようにしたことを特徴とする。
【0011】
請求項5の手段は、椅子に装備される少なくとも座部の昇降用スイッチや背凭れの伏倒用スイッチ内にLEDを内蔵し、かつ、前記刈り布によって覆われる部分に照度センサを設け、該照度センサが刈り布によって覆われたこと前記照度センサが検出すると、予め設定した照度で前記スイッチ内のLEDを点灯するようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明は前記したように、請求項1にあっては、椅子に装備される少なくとも座部の昇降用スイッチや背凭れの伏倒用スイッチを制御するためのスイッチ内にLEDを内蔵したことにより、LEDよりの光を透過する刈り布であれば、刈り布の外部からスイッチの位置を目視することができるので、施術中に刈り布を捲らなくとも椅子の姿勢変化を正確に行うことができる。
【0013】
請求項2にあっては、LEDの照度を段階的あるいは無段階的に照度を変更できるようにしたので、刈り布の厚みに応じた照度でスイッチの存在位置を表示することができ、従って、理美容院で使用している刈り布の厚み(透過率)に合わせてLEDの照度を変化させて確実にスイッチの存在位置を表示することができる。
【0014】
請求項3にあっては、照度センサが刈り布によって覆われたことを検出すると、スイッチ内のLEDを自動的に点灯するようにしたので、刈り布によって被施術者や椅子が覆われない限りLEDは点灯しないことから省エネ化を図ることができる。
【0015】
請求項4にあっては、刈り布によって覆われる部分に照度センサを設け、該照度センサが刈り布によって覆われた状態での輝度値を検出し、該検出した輝度値が高ければ低い照度で、また、検出した輝度値が低ければ高い照度でLEDを自動的に点灯するようにしたので、外部から視認できる照度でLEDを点灯することから、確実にスイッチの存在位置が表示されて誤操作することなく姿勢制御を行うことが可能である。
【0016】
請求項5にあっては、照度センサが刈り布によって覆われたことを検出すると、予め使用されている刈り布の透過率に合ったLEDの輝度を施術者等が設定した照度でLEDが点灯することから、施術者が希望する照度でLEDが点灯され確実な姿勢制御を行うことができる等の効果を有するものである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る椅子制御用スイッチ装置の一実施例を示す椅子を後方斜めから見た斜視図である。
【図2】被施術者に刈り布を掛けた状態を後方斜めから見た斜視図である。
【図3】スイッチに内蔵されたLEDの点灯を制御するための回路ブロック図である。
【図4】図3の回路ブロック図の動作の一例を示すフローチャートである。
【図5】他の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る椅子制御用スイッチ装置の一実施例を図面と共に説明する。
図1,2において、1は理美容椅子にして、肘掛け11の側面に座部12の上昇用スイッチ11aと下降用スイッチ11bおよび上昇位置にある座部12を一度押すだけで最下降位置まで下降させるオートリターン11cが設けられている。また、背凭れ13の側面にも前記した肘掛け11のスイッチと同様な上昇用スイッチ13aと下降用スイッチ13bが設けられている。
【0019】
なお、前記上昇用スイッチ11aを操作すると座部12の上昇に連動して背凭れ13が伏倒し、また、下降用スイッチ11bを操作すると座部12の下降に連動して背凭れ13が起立する構造となっている。そして、以上の構成は公知の構造である。また、図示していないが、施術者が予め施術作業が行い易い座部12の高さ位置を設定しておいて、座部12が如何なる位置であっても操作することで設定した高さ位置まで座部を上昇させるためのプリセットスイッチを設けることもある。
【0020】
そして、前記した上昇用スイッチ11a,13a、下降用スイッチ11b,13bおよびオートリターン用スイッチ11c内にはLEDが内蔵されている。
【0021】
このような構成の椅子1にあっては、始業時に図示しない電源スイッチをオンにすると、各スイッチ11a〜11c,13a,13bに内蔵されたLEDが点灯するので、毛髪のカット作業において透明あるいは半透明の樹脂製刈り布や薄手布製の刈り布2を被施術者の肩から椅子1の肘掛け11の外側まで被せても(図2参照)、LEDが点灯しているので刈り布2を介してスイッチ11a〜11c,13a,13bの位置が目視でき、従って、各種の操作を刈り布の外部から行えるので、従来のように刈り布2を捲るような作業が不要となる。
【0022】
なお、図示のスイッチ11a,13aを座部の上昇とし、スイッチ11b,13bを座部の下降用とし、また、スイッチ11cをオートリターン用としが、スイッチの組み合わせとしては、スイッチ11aおよび11bをオートリターン用とし、スイッチ11cをプリセットスイッチとし、座部の昇降用スイッチを肘掛け11の所望位置(図示せず)に配置するなど、スイッチの種類の組み合わせは椅子によって異なるものである。
【0023】
前記した動作説明においてはLEDの照度が一定の場合について説明したが、刈り布2の透過率が大きいのにLEDの照度が高いと施術者にとって眩しかったり、また、刈り布2の透過率が小さいのにLEDの照度が低いとスイッチの位置が目視できない等の問題が生じる。
【0024】
そこで、理美容院で使用する刈り布2の透過率に応じてLEDの照度を段階的に切り換えるスイッチや、無段階的に変更可能なボリューム(何れも図示せず)を、前記肘掛け11あるいは背凭れ13の前記スイッチ11a〜11c,13a,13bが設けられた部分に設けることで、最適な照度でLEDを点灯させることが可能となる。なお、LEDの照度を変更する回路は周知であるので、ここでは記載を省略する。
【0025】
なお、前記した説明では常時LEDが点灯状態であるので、省エネ化を図ることができない。そこで、肘掛け11の側面に椅子1の近傍の輝度を検出する照度センサを取付ける。なお、照度センサ3は必ずしも肘掛け11に取付ける必要はなく、外乱光が入り込まない位置であって刈り布2が被施術者に掛けられたことを検出可能な位置であるならば、どの位置であっても良い。
【0026】
そして、前記照度センサ3で常時室内の輝度を検出し、刈り布2が被施術者に掛けられて輝度値が変化したことを検出する出力で、スイッチ内に内蔵されたLEDを点灯させることで、刈り布2が掛けられている時のみLEDを点灯させることで省エネ化を図ることが可能となる。
【0027】
前記した実施例はLEDの照度設定を人為的に行う場合について説明したが、刈り布2が掛けられた時にLEDを点灯する場合の実施例について図3の回路ブロックと共に説明する。
【0028】
4は図1,2には図示されていないが、例えば、3段階に切り換え可能なスイッチであり、各切り換え端子間に異なる抵抗値の抵抗器を接続し、LEDの輝度を小、中、大と切り換え可能なもの、あるいは、無段階に抵抗値を可変できるボリュームであり、LEDの照度を無段階的に調整可能な照度調整手段である。
【0029】
5はメモリを備えるCPUにして、入力側には前記照度センサ3および照度調整手段4が接続されている。また、CPU5の出力側にはLED駆動回路6を介して前記したスイッチ11a,11b,11c,13a,13b内に内蔵されたLED7が接続されている。
【0030】
次に、刈り布2によって覆われたことを照度センサが検出し、刈り布2の透過率によってLED7の照度を変更して点灯する動作を図4のフローチャートと共に説明する。
【0031】
照度センサ3は常に椅子1が設置されている周囲の輝度値を検出している。この状態において、CPU5は刈り布2が掛けられることによって照度センサ3の輝度値が変化したか否かを監視する(ステップS1)。この監視において、人体及び物体の影等、短時間の照度変化においては変化したとは判断しない。前述の短時間と称した時間を超えて輝度値が変化したと判断すると、変化した輝度値に対応するLED7を点灯するパルス幅変調(以下「PWM」と記載)電圧を、予めCPU5内のメモリに記憶されているテーブル(検出した輝度値が高ければ、点灯するLEDの照度が低くなるデューティサイクルとし、また、検出した輝度値が低ければLEDの照度が高くなるデューティサイクルとする複数段階に設定されたテーブル)から選択する(ステップS2)。
【0032】
前記ステップS2において選択されたデューティサイクルのPWM電圧をLED駆動回路6に出力する(ステップS3)。該LED駆動回路6は前記CPU5からのPWM電圧に応じた光量でLED7を点灯するので(ステップS4)、LED7は最適な照度で点灯されて刈り布2の外部より全てのスイッチの位置を目視することができることとなる。
【0033】
次に、刈り布2によって覆われたことを照度センサが検出し、予め施術者等が刈り布2の透過率に適した照度(施術者にとって視認し易い照度)でLEDを点灯する場合の動作を図5のフローチャートと共に説明する。
【0034】
先ず、施術者等が刈り布2の透過率に適したLED7の照度(PWM電圧のデューティサイクル)を予め設定するとCPU5内のメモリに記憶される(ステップS11)。一方、照度センサ3は常に椅子1が設置されている周囲の輝度を検出している。この状態において、CPU5は刈り布2が掛けられることによって照度センサ3の輝度値が変化したか否かを監視する(ステップS12)。この監視において、人体及び物体の影等、短時間の照度変化においては変化したとは判断しない。前述の短時間と称した時間を超えて輝度値が変化したと判断すると、前記CPU5内のメモリに記憶されている照度に対応するデューティサイクルのPWM電圧をLED駆動回路6に出力する(ステップS13)。
【0035】
該LED駆動回路6は前記CPU5からのPWM電圧に応じた光量でLED7を点灯するので(ステップS14)、LED7は予め設定された照度で点灯されるので、刈り布2の外部より全てのスイッチの位置を施術者が希望する照度でLED7が点灯され目視することが可能となる。
【0036】
前記した実施例において、スイッチの種類(座部の昇降用、オートリターン用およびプリセット用等)毎にLEDの発光色を変えることで、施術者が発光色を見て椅子の姿勢制御に応じたスイッチの選択を間違いなく行え、希望する姿勢に椅子を変更することができる。
【符号の説明】
【0037】
1 椅子
11 肘掛け
11a,11b,11c 肘掛けに設けられたスイッチ
13 背凭れ
13a,13b 背凭れに設けられたスイッチ
2 刈り布
3 照度センサ
4 照度調整手段
5 CPU
6 LED駆動回路
7 LED

【特許請求の範囲】
【請求項1】
椅子に装備される少なくとも座部の昇降用スイッチや背凭れの伏倒用スイッチ内にLEDを内蔵したことを特徴とする椅子制御用スイッチ装置。
【請求項2】
前記スイッチ内のLEDを段階的あるいは無段階的に輝度を変化させるようにしたことを特徴とする請求項1記載の椅子制御用スイッチ装置。
【請求項3】
前記刈り布によって覆われる部分に照度センサを設け、該照度センサが刈り布によって覆われたことを検出すると、常時は消灯状態の前記スイッチ内のLEDを点灯するようにしたことを特徴とする請求項1または2記載の椅子制御用スイッチ装置。
【請求項4】
椅子に装備される少なくとも座部の昇降用スイッチや背凭れの伏倒用スイッチ内にLEDを内蔵し、かつ、前記刈り布によって覆われる部分に照度センサを設け、該照度センサが刈り布によって覆われた状態での輝度値を検出し、該検出した輝度値が高ければ暗い照度で、また、検出した輝度値が低ければ明るい照度で前スイッチ内のLEDを点灯するようにしたことを特徴とする椅子制御用スイッチ装置。
【請求項5】
椅子に装備される少なくとも座部の昇降用スイッチや背凭れの伏倒用スイッチ内にLEDを内蔵し、かつ、前記刈り布によって覆われる部分に照度センサを設け、該照度センサが刈り布によって覆われたこと前記照度センサが検出すると、予め設定した照度で前記スイッチ内のLEDを点灯するようにしたことを特徴とする椅子制御用スイッチ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−179005(P2010−179005A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−26760(P2009−26760)
【出願日】平成21年2月6日(2009.2.6)
【出願人】(000108672)タカラベルモント株式会社 (113)
【Fターム(参考)】