説明

椅子型マッサージ機

【課題】従来よりも高いリラックス効果を与えることが可能となる椅子型マッサージ機を提供する。
【解決手段】使用者が着座する座部1と、マッサージ動作を行う施療子7が設けられかつ座部1の後部側をリクライニング中心A1としてリクライニング可能である背凭れ部2と、リクライニング状態にある背凭れ部2を、座部1と共に、リクライニング中心A1と上下方向に異なる位置をロッキング中心A2として前後に揺り動かすロッキング機構部15とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、椅子型マッサージ機に関する。
【背景技術】
【0002】
座部と背凭れ部とを備え、背凭れ部内に施療子やエアセル等のマッサージ具が設けられた椅子型マッサージ機が知られている。このような椅子型マッサージ機では、背凭れ部が座部の後部側をリクライニング中心としてリクライニング可能である。そして、背凭れ部を後方へ倒したリクライニング状態とすることで使用者を寝かせた姿勢として、前記マッサージ具を動作させることによりマッサージを行う構成となっている。
【0003】
近年、前記マッサージ具によるマッサージの他に、特許文献1に開示されているような、リラックス効果を使用者に与えようとする椅子型マッサージ機がある。
このマッサージ機では、背凭れ部がリクライニング中心回りに回動可能であり、また、座部が上下に揺動可能として構成されている。そこで、座部を上下に往復揺動させると共に、背凭れ部をリクライニング中心回りに往復回動させることで、座部に着座している使用者の身体を揺すり、リラックス効果を与えようとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−41416号公報(図5、図6参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されている椅子型マッサージ機の場合、背凭れ部をリクライニング中心回りに往復回動させることにより、使用者の身体を揺することができるが、その揺する動作は、使用者の上半身を倒したり起こしたりする動作となる。
この動作は、座部が上下に動いているものの、単なる背凭れ部のリクライニング動作の繰り返しにすぎず、リラックス効果は弱いと考えられる。
【0006】
そこで、本発明は、従来よりも高いリラックス効果を与えることが可能となる椅子型マッサージ機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の椅子型マッサージ機は、使用者が着座する座部と、マッサージ動作を行うマッサージ具が設けられかつ前記座部の後部側をリクライニング中心としてリクライニング可能である背凭れ部と、リクライニング状態にある前記背凭れ部を、前記座部と共に、前記リクライニング中心と上下方向に異なる位置をロッキング中心として前後に揺り動かすロッキング機構部とを備えていることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、リクライニング状態にある背凭れ部を、座部と共に、リクライニング中心と上下方向に異なる位置をロッキング中心として前後に揺り動かすので、従来のような単なる背凭れ部のリクライニング動作の繰り返しとは異なり、座部及び背凭れ部の全体を前後に揺り動かすことで、使用者の身体を前後方向に揺することができる。
しかも、背凭れ部がリクライニング状態(後方に倒れた状態)にあるので、使用者の上半身を後方に倒して背凭れ部に凭れさせた姿勢で前後に揺することができる。この結果、使用者に与えるリラックス効果を、従来よりも高めることが可能となる。なお、前記ロッキング中心及びリクライニング中心は、左右方向の一つの直線上にある固定点に限らず、ある範囲内を移動する点であってもよく、この場合、当該中心は広がりを有する領域部となる。
【0009】
また、前記ロッキング機構部は、前記座部と前記背凭れ部とを所定の軌道で前後に往復揺り動かす中で、前後の軌道端部に近づくにつれて揺れ速度を徐々に遅くさせる速度変更部を有しているのが好ましい。このような揺れ速度の変化により、使用者により一層心地よい揺れを与えることが可能となる。
【0010】
そして、ロッキング機構部が、例えば背凭れ部と座部とを揺り動かす駆動源としてモータを有する場合、前記速度変更部を、前後の軌道端部に近づくにつれて前記モータの回転数を徐々に小さくするように制御装置がその回転数を制御する構成としてもよいが、前記速度変更部は、モータの一定回転によって一定速度で出力軸が回転する減速器と、前記出力軸の回転運動を前記座部と前記背凭れ部との前後方向の往復運動に変換すると共に当該往復運動の前後方向の移動速度成分を変化させるリンク部とを有している構成とすることができる。
【0011】
この場合、減速器の出力軸の回転速度が一定であっても、リンク部によって、出力軸の回転運動を座部と背凭れ部との前後方向の往復運動に変換すると共に当該往復運動の前後方向の移動速度成分を変化させる。すなわち、減速器とリンク部とを有する機械的な構成によって、前後の軌道端部に近づくにつれて揺れ速度を徐々に遅くさせることができる。
【0012】
このためには、椅子型マッサージ機は、床面に置く固定フレームと、前記背凭れ部及び前記座部を支持し、前記固定フレームに対して前後方向に往復移動する可動フレームとを更に備え、前記リンク部は、前記出力軸の回転によって回転する回転部材と、前記回転部材の回転中心に対して偏心して当該回転部材に取り付けられた偏心軸と、前記偏心軸に取り付けられ当該偏心軸の前記回転中心回りの運動を前記可動フレームの前後方向の往復運動に変換するクランク部材とを有している構成とすればよい。
【0013】
また、前記椅子型マッサージ機は、前記背凭れ部と前記座部とを前後に揺り動かす動作が妨げられると、当該背凭れ部と当該座部とを前後に揺り動かす駆動力が当該背凭れ部と当該座部とに伝達するのを解除する動力伝達解除部を更に備えているのが好ましい。
この場合、例えば背凭れ部と座部とを揺れ動かしている最中に、障害物と接触してその動作が妨げられると、揺り動かす駆動力を無理に背凭れ部と座部とに伝達させないで済む。このため、背凭れ部と座部側、及び、揺り動かすための駆動部側、の一方又は双方に大きな負荷が作用するのを防ぐことができ、故障を防止することができる。
【0014】
背凭れ部を座部と共に駆動部の駆動力によって例えば前方へ揺り動かした際、背凭れ部及び座部には、その上の使用者の体重さらにはその慣性力の影響で、さらに前方へ移動しようとする力が作用するが、この際、前記駆動部は、この力を受けながら駆動するので大きな負荷が作用する。
そこで、前記ロッキング機構部は、前記背凭れ部を前記座部と共に前後に揺り動かす駆動部を有し、前記背凭れ部を前記座部と共に前後に揺り動かす動作を妨げる方向に力を生じさせる反力部材を更に備えているのが好ましい。
この場合、前記反力部材により、揺り動かす動作を妨げる方向に力を生じさせることができるので、前記駆動部への負荷を低減させることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、使用者の身体を前後方向に揺することができ、しかも、背凭れ部がリクライニング状態にあるので、使用者の上半身を後方に倒して背凭れ部に凭れさせた姿勢で前後に揺り動かすことができる。この結果、使用者に与えるリラックス効果を高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の椅子型マッサージ機の構成を説明する側面図である。
【図2】リクライニング状態にある椅子型マッサージ機の側面図である。
【図3】脚載せ部をさらに上昇させた椅子型マッサージ機の側面図である。
【図4】ロッキング動作を説明する椅子型マッサージ機の側面図である。
【図5】ロッキング動作を説明する椅子型マッサージ機の側面図である。
【図6】ロッキング駆動部を上から見た説明図である。
【図7】反力部材の説明図である。
【図8】本発明の椅子型マッサージ機(第二実施形態)の側面図である。
【図9】リクライニング状態にある椅子型マッサージ機(第二実施形態)の側面図である。
【図10】本発明の椅子型マッサージ機(第三実施形態)の側面図である。
【図11】リクライニング状態にある椅子型マッサージ機(第三実施形態)の側面図である。
【図12】拘束部の機能を説明する説明図である。
【図13】本発明の椅子型マッサージ機(第四実施形態)の側面図である。
【図14】本発明の椅子型マッサージ機(第四実施形態)の側面図である。
【図15】本発明の椅子型マッサージ機(第四実施形態の変形例)の側面図である。
【図16】本発明の椅子型マッサージ機(第四実施形態の変形例)の側面図である。
【図17】本発明の椅子型マッサージ機(第五実施形態)の側面図である。
【図18】本発明の椅子型マッサージ機(第五実施形態)の側面図である。
【図19】リンク部の説明図である。
【図20】リンク部の説明図である。
【図21】リンク部を分解した図である。
【図22】リンク部を分解した図である。
【図23】リンク部の動作の説明図である。
【図24】リンク部の動作の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
〔第一実施形態〕
図1は、本発明の椅子型マッサージ機の構成を説明する側面図である。この椅子型マッサージ機は、床面に設置されるフレーム4と、このフレーム4に設けられかつ使用者(被施療者)が着座する座部1と、この座部1の後側に設けられかつ使用者が凭れる背凭れ部2と、座部1の前側に設けられかつ使用者が脚を載せる脚載せ部3とを備えている。
なお、本発明では、座部1に着座した使用者が見て、その前方が前であり、後方が後ろであり、この使用者を基準として各方向が定義される。
【0018】
フレーム4は、床面に設置される不動の固定フレーム10と、この固定フレーム10に対して前後方向に往復移動することができる可動フレーム11とを有している。固定フレーム10は、前後方向に延びている左右の足部10aを有している。可動フレーム11は、座部1が取り付けられている第一フレーム11aと、この第一フレーム11aと固定フレーム10とを連結するために上下方向に長い第二フレーム11bとを有している。第一フレーム11aは第二フレーム11bに固定され、両者は一体となって前後方向に往復移動する。可動フレーム11を移動可能とするための構成は、後に説明する。
【0019】
背凭れ部2は、可動フレーム11の後部にある左右水平方向の支軸50に回動可能として取り付けられており、可動フレーム11に対して支軸50の中心線回りに回動できる。すなわち、背凭れ部2は、座部1の後部側にある支点となる支軸50の中心をリクライニング中心A1として、リクライニング可能である。このため、背凭れ部2は、図1に示している上方へ延びている起立状態と、図2に示している後方へ倒れた状態(リクライニング状態)とのいずれかの状態、さらには、その中間位置にある状態(図示せず)となることができる。
【0020】
背凭れ部2内にはマッサージユニット5が設けられている。マッサージユニット5は、背凭れ部2の内部に設けられたガイドレール33に移動可能としてガイドされており、昇降機構34が動作することによって、ガイドレール33に沿って背凭れ部2の長手方向に移動することができる。
マッサージユニット5は、マッサージ動作を行うマッサージ具として使用者の腰部から背中及び肩部に当接可能な左右の施療子(揉み玉)7を有している。マッサージユニット5に搭載されたモータ、減速器及び回転軸を含む駆動部37が駆動することで、施療子7に揉みや叩き等の動作を行わせることができ、この施療子7の動作により、前記マッサージ動作が実現される。
【0021】
脚載せ部3は、可動フレーム11の前部にある左右水平方向の支軸51に回動可能として取り付けられていて、可動フレーム11に対して支軸51の中心線回りに回動できる。このため、脚載せ部3は、可動フレーム11の前端から下方に垂れ下がった姿勢となる図1の下位置状態と、フレーム4の前端から前方へ(傾斜して)延びた姿勢となる図2の上位置状態とのいずれか、さらには、その中間位置にある状態(図示せず)となることができる。
背凭れ部2と脚載せ部3との間には前後方向に長い連動部材31が設けられていて、図1のように、背凭れ部2が起立状態にあると脚載せ部3が下位置状態にあるが、図2のように、背凭れ部2がリクライニング状態になると、連動部材31によって、脚載せ部3が連動して上位置状態となる。
【0022】
また、脚載せ部3は、図3に示しているように、前記支軸51に回動可能として取り付けられた第一枠部3aと、この第一枠部3aに対して左右方向の中心線回りに回動可能として取り付けられている第二枠部3bと、第一枠部3aと第二枠部3bとの間に設けられた脚駆動部32とを有している。脚駆動部32は、エアの供給又は排出によって膨張又は収縮するエアセルからなり、フレーム4内に設けられたエアユニット(図示せず)からこのエアセルにエアが供給されると、図3に示しているように、エアセルが膨張して第二枠部3bを持ち上げ、当該第二枠部3bは前記上位置状態からさらに上昇することができる。この状態では、脚載せ部3は、使用者の脚を伸ばした状態として支持することが可能となる。
【0023】
可動フレーム11を前後方向に移動可能とさせるための構成について説明する。
図1と図2において、可動フレーム11(第二フレーム11b)は、固定フレーム10の前記足部10aの前後方向途中位置に設けられた左右水平方向の支軸52に回動可能として取り付けられている。このため、可動フレーム11は固定フレーム10に対して支軸52の中心線回りに回動できる。
すなわち、本実施形態では、この支軸52(この支軸52の中心線)がロッキング中心A2となり、可動フレーム11は、固定フレーム10に対してこのロッキング中心A2を支点として前後方向に往復回動することができる。そして、このロッキング中心A2はリクライニング中心A1と上下方向に関して位置が異なっている。
【0024】
そして、座部1は、クッション性のある座本体部1aを有し、この座本体部1aが可動フレーム11(第一フレーム11a)上に取り付けられている。さらにこの可動フレーム11(第一フレーム11a)の後部側に背凭れ部2の支点となる前記支軸50が設けられている。このため、可動フレーム11が、背凭れ部2及び座部1を支持している構成となる。
以上より、可動フレーム11は前後方向に往復回動可能となり、この結果、座部1及び背凭れ部2を前後方向に揺り動かすことが可能となる。
【0025】
そして、本発明の椅子型マッサージ機では、背凭れ部2をリクライニング状態(図2及び図4参照)とし、この状態に維持された背凭れ部2を、座部1と共に、前記ロッキング中心A2を支点として強制的に前後に揺り動かす機能を有している。この前後に揺り動かす動作がロッキング動作となる。
図4と図5は、ロッキング動作を説明する側面図である。図4が、背凭れ部2及び座部1を前に揺れ動かした前位置状態を示し、図5が、背凭れ部2及び座部1を後ろに揺れ動かした後位置状態を示している。このロッキング動作を行うために、椅子型マッサージ機はロッキング機構部15を備えている。
【0026】
本実施形態のロッキング機構部15は、可動フレーム11を固定フレーム10に対してロッキング中心A2を支点として強制的に往復回動させるロッキング駆動部16を有している。
可動フレーム11は、第二フレーム11bから前方へ延びている第三フレーム11cを更に有していて、この第三フレーム11cと固定フレーム10との間に、前記ロッキング駆動部16が設けられている。
【0027】
図6は、ロッキング駆動部16を上から見た説明図であり、一部を断面により示している。ロッキング駆動部16は、モータ17、モータ17の回転数を減速する減速器18、及び、この減速器18の出力軸18aの回転運動を可動フレーム11の(つまり、座部1と背凭れ部2との)ロッキング中心A2回りの前後方向の往復運動に変換するリンク部19とを有している。なお、モータ17の駆動力は、ベルト17aを介して減速器18に入力される。
本実施形態では(図5参照)、モータ17及び減速器18は前記第三フレーム11cに固定されていて、リンク部19が、減速器18の出力軸18aと固定フレーム10との間に介在し、出力軸18aの中心線が左右方向に向いている配置である。
なお、図示しないが、これとは反対に、モータ17及び減速器18が固定フレーム10に固定されていて、リンク部19が、減速器18の出力軸18aと第三フレーム11cとの間に介在した構成であってもよい。
【0028】
前記リンク部19は、出力軸18aと同軸に設けられ当該出力軸18aと一体回転可能である円板形状である回転板(回転部材)20と、この回転板20に取り付けられた偏心軸21と、この偏心軸21と固定フレーム10(足部10a)との間に設けられているクランク部材22とを有している。
回転板20は、出力軸18aがその中心線(回転中心C1)回りに回転すると、その回転力が伝達され当該中心線回りに回転する。偏心軸21は、回転板20の回転中心C1に対して偏心した軸線C2を中心として当該回転板20に取り付けられている。
そして、クランク部材22の一端部が偏心軸21に回転自在として取り付けられ、他端部が固定フレーム10に設けられた支軸53(図5参照)に回転自在として取り付けられている。
【0029】
このリンク部19の構成によれば、モータ17が一方向に連続回転することで、減速器18の出力軸18a及び回転板20が一方向に連続回転する。すると、この回転板20上にある偏心軸21が、回転中心C1回りの円運動を行い、この円運動は、クランク部材22によって、可動フレーム11の前後方向の往復運動(図4と図5)に変換される。すなわち、このリンク部19により往復クランク機構が構成されている。
【0030】
また、この第一実施形態では、図1と図2に示しているように、背凭れ部2のリクライニング駆動用の駆動装置35が設けられている。なお、この駆動装置35と、前記ロッキング駆動部16(図4参照)とは、左右方向に並んでフレーム4の中央領域に設けられている。
この駆動装置35は、モータとネジ棒とによる伸縮アクチュエータであり、その前端部が第三フレーム11cに取り付けられ、後端部が背凭れ部2のフレーム2aに取り付けられている。なお、駆動装置35は、エアの供給と排出とによって伸縮するエアアクチュエータであってもよい。
アクチュエータが伸張した状態で(図1)背凭れ部2は起立状態となり、短縮した状態で(図2)背凭れ部2はリクライニング状態となる。アクチュエータが短縮した状態に維持されることで、座部1に対する背凭れ部2のリクライニング角度が決定(拘束)された状態となる。
【0031】
また、椅子型マッサージ機には、使用者が操作するコントローラ(図示せず)が設置されている。このコントローラに設けられたロッキング動作の開始ボタンを使用者が選択すると、各部の動作を制御する制御装置6によって、背凭れ部2が起立状態にあれば駆動装置35が駆動してリクライニング状態(図2及び図4参照)とし、ロッキング駆動部16の動作が開始される。これにより、固定フレーム10に対して可動フレーム11を前後に往復回動させ、背凭れ部2、座部1及び脚載せ部3を共に、ロッキング中心A2を支点として前後に揺り動かすロッキング動作を実行させることができる。
【0032】
したがって、座部1に着座した使用者の身体(全身)を、前後方向に大きく揺らすことができる。すなわち、このロッキング動作の軌道(椅子型マッサージ機の中央部における軌道)は、上下方向の変位よりも前後方向の変位が十分に大きい。なお、図4において、リクライニング中心A1における軌道を太線で示している。
しかも、背凭れ部2がリクライニング状態にあるので、使用者の上半身を後方に倒し背凭れ部2に凭れさせた姿勢として前後に揺することができる。この結果、使用者に与えるリラックス効果を高めることが可能となる。
【0033】
さらに、背凭れ部2がリクライニング状態にあることから、使用者の上半身の一部が施療子7に載った状態となる。このため、前記制御装置6の動作制御によって、使用者の身体を前後に揺すりながら、施療子7にマッサージ動作を実行させることで、リラックス効果の他に、当該施療子7による施療効果も追加的に与えることができる。
【0034】
また、本実施形態では、ロッキング動作の軌道は、上に凸の円弧形状となる。このような軌道を有するロッキング動作によれば、リクライニング中心A1における軌道には頂部が存在することから、当該軌道の中には、前後方向へ移動させる範囲が多く含まれる。
さらに、図4において、このロッキング動作における例えばリクライニング中心A1における軌道は、上下方向の幅よりも前後方向の幅Wが長いのに加えて、当該軌道の前後方向幅Wの範囲内に、ロッキング中心A2が存在している。すなわち、これは、リクライニング中心A1とロッキング中心A2とが、上下方向の位置に関しては離れているが、前後方向の位置に関しては、近くに存在していることを意味している。
【0035】
このように、リクライニング中心A1とロッキング中心A2とが、前後方向の位置に関して近くに存在していることで、より効果的に使用者の身体を前後方向に揺することが可能となり、使用者に心地よさを与えることが可能となる。
すなわち、仮にロッキング中心がリクライニング中心に比べて極端に前に存在していると、そのロッキング中心回りに座部と背凭れ部とを往復回動させても、背凭れ部においては前後方向よりも上下方向に揺すられる成分が大きくなる。特に、頭部においては大きく上下動することとなる。また、逆に、ロッキング中心がリクライニング中心に比べて極端に後ろに存在していると、座部に着座している使用者は、座部から前方へずれ落ちそうな作用を受ける。
【0036】
これに対して、本実施形態のように、リクライニング中心A1とロッキング中心A2とが、前後方向の位置に関して近くに存在していることで、頭が上下方向に揺すられる成分が大きくなることを防ぎ、また、前方へずれ落ちそうになることを防止することができる。なお、リクライニング中心A1とロッキング中心A2とは、前後方向の位置に関して近くに存在していればよく、その範囲は、リクライニング中心A1における軌道を含めて、当該軌道の幅Wの二倍の長さを有する前後方向寸法の範囲内に、ロッキング中心A2が存在していればよい。
【0037】
また、本実施形態のロッキング機構部15によれば、図4と図5に示しているように、回転板20が半回転すると、ロッキング動作の内の前方への片道移動が行われ、次の半回転により、後方への片道移動が行われる。つまり、回転板20が一回転する毎に、ロッキング動作が一往復行われる。このように、回転板20、偏心軸21及びクランク部材22を有することで往復クランク機構が構成され、この構成により、回転板20が一方向に回転を継続することで、前後の往復移動が繰り返される。そして、回転板20上の偏心軸21が上部に到達すると、ロッキング動作の前方の軌道端部に到達し、偏心軸21が下部に到達すると、ロッキング動作の後方への軌道端部に到達する。
【0038】
そして、モータ17が一定速度で回転することにより、減速器18の出力軸18aも一定速度で回転するが、前記往復クランク機構により、偏心軸21が上部に存在している状態と、偏心軸21が下部に存在している状態とで、ロッキング動作中における前後方向の移動速度成分は遅くなる。
これは、一般的にも、往復クランク機構では、クランク部材の一端部にある偏心軸が回転中心回りに一定速度で偏心回転しても、その偏心軸の位置(位相)に応じて、クランク部材の他端部側の往復移動方向に関する移動速度は、連続的(正弦関数的)に変化するためであり、特に、偏心軸が上死点と下死点とにある位置で、移動速度は最小となるためである。
すなわち、本実施形態の場合、前記のとおり往復クランク機構を備えていることから、クランク部材22の一端側にある偏心軸21が回転中心(中心線C1)回りに一定速度で回転しても、偏心軸21の位置(位相)に応じて、クランク部材22の他端側にある支軸53に対する、偏心軸21のロッキング動作方向(往復移動方向)に関する相対移動速度は、連続的(正弦関数的)に変化する。そこで、可動フレーム11のロッキング動作位置に応じて、回転板20における偏心軸21の位置を設定すれば、偏心軸21が上部に存在している状態と、偏心軸21が下部に存在している状態とで、ロッキング動作中における前後方向の移動速度成分は遅くなるように構成することができる。具体的には、ロッキング中心A2回りの円弧軌道において、偏心軸21が上死点と下死点となる位置で、可動フレーム11がロッキング動作の軌道端部となるように設定すればよい。
以上より、本実施形態のリンク部19によれば、可動フレーム11がロッキング中心A2回りに往復運動する際の、当該往復運動の前後方向の移動速度成分を変化させる速度変更部8としての機能を備えることができる。
【0039】
この速度変更部8により、座部1等を所定の軌道で前後に往復揺り動かす中で、前後の軌道端部に近づくにつれて揺れ速度を徐々に遅くさせることができる。このため、前後それぞれの軌道端部で前後方向に移動する速度成分が大きくならず、この結果、慣性力によって座部1に対して使用者の身体が前又は後ろにずれるのを防止することができ、使用者により一層心地よい揺れを与えることが可能となる。
なお、ロッキング動作中における前後方向の移動速度を変化させるために、例えば前記制御装置6が、モータ17の回転速度を変速制御することも考えられるが、本実施形態では、このような制御は不要であり、モータ17を一定速度で回転させればよい。
【0040】
また、図2に示しているように、ロッキング動作の中で座部1等が軌道端部に近づくと特に、当該ロッキング動作を妨げる方向に大きな力を生じさせる反力部材36が設けられている。なお、軌道中央部では、ロッキング動作を妨げる方向に生じさせる反力部材36による力は、小さい又はゼロとなるように構成されている。
実施形態の反力部材36はバネ36aであり、固定フレーム10と可動フレーム11との間に設けられている。このバネ36aによれば、ロッキング動作を妨げる方向にバネ力を生じさせることで、モータ17及び減速器18への負荷を低減することができる。
【0041】
すなわち、座部1等が前方へ揺すられ、前方の軌道端部へと移動した前位置状態では(図2)、背凭れ部2及び座部1上の使用者の体重さらにはその慣性力の影響で、可動フレーム11には、図7(a)に示しているように、さらに前方へ回動しようとする力(矢印F1)が作用する。この後、モータ17及び減速器18は、この力に抗しながら可動フレーム11を、反対方向となる後方へ移動させるように駆動する必要があるので、モータ17及び減速器18には大きな負荷が作用する。
そこで、この状態では、バネ36aは自然状態から伸張した状態となる。すると、このバネ36aの復元力により、前記力(矢印F1)とは反対である可動フレーム11を後方へ戻す方向の力(モーメント)M1を、可動フレーム11に与える。このためモータ17及び減速器18への負荷を低減することができる。
【0042】
これとは反対(図5)に、座部1等が後方へ揺すられ、後方の軌道端部に移動した後位置状態では、可動フレーム11には、図7(b)に示しているように、さらに後方へ回動しようとする力(矢印F2)が作用する。この場合、前記と同様に、モータ17及び減速器18は、この力に抗しながら可動フレーム11を、反対方向となる前方へ移動させるように駆動する必要があるので、モータ17及び減速器18には大きな負荷が作用する。
そこで、この状態では、バネ36aは自然状態から伸張した状態となる。すると、このバネ36aの復元力により、今度は、前記力(矢印F2)とは反対である可動フレーム11を前方へ戻す方向の力(モーメント)M2を、可動フレーム11に与える。このため、モータ17及び減速器18への負荷を低減できる。
なお、後方の軌道端部と前方の軌道端部との中間の軌道中央部では、バネ36aの長手方向の延長線上に、すなわちバネ36aの弾性力(前記復元力)が作用する方向の延長線上にロッキング中心A2が存在する状態となるため、当該ロッキング中心A2回りのモーメントは生じず、ロッキング動作を妨げる方向に生じさせる力はゼロとなる。
【0043】
また、本実施形態では、通常運転時に、モータ17の駆動力がリンク部19を介して可動フレーム11に伝達され、座部1等を前後に揺り動かす構成であるが、異常時に、この動力伝達を解除する動力伝達解除部25(図6参照)を備えている。
すなわち、モータ17の駆動力は減速器18の出力軸18aに伝わるが、出力軸18aと回転板20との間は、所定の許容トルク以上が作用すると滑りが生じるように構成されている。
【0044】
この構成とするために、出力軸18aには、回転板20を表裏で挟む挟み部材26a,26bが設けられ、この挟み部材26a,26bは出力軸18aと必ず一体回転する。また、出力軸18aには、挟み部材26a,26bが回転板20を挟む力を付与する弾性部材(実施例では皿バネ)27が設けられている。これら挟み部材26a,26b及び弾性部材27が、前記動力伝達解除部25に含まれる。
そして、回転板20は出力軸18aに回転方向に固定されておらず、弾性部材27を用いた挟み部材26a,26bによる挟み力により、回転板20は出力軸18aと一体回転することができる。また、回転板20はクランク部材22を介して固定フレーム10に機械的に連結されている。
【0045】
したがって、出力軸18aと回転板20との間に、所定の許容トルク以上が作用すると、回転板20の側面20aと、挟み部材26a,26bの挟み面26c,26dとの間で滑りが生じ、動力伝達が解除される。
このように、所定の許容トルク以上のトルクが作用する場合は、例えば、背凭れ部2がその背面で障害物と接触し、当該背凭れ部2及び座部1を前後に揺り動かす動作が妨げられた場合である。
このように、座部1等を前後に揺り動かす動作が妨げられると、前記許容トルクが作用して回転板20と挟み部材26a,26bとの間で滑りが発生し、当該座部1等を前後に揺り動かすモータ17の駆動力が、可動フレーム11に全て伝達されず、当該座部1等が無理矢理に動かされることを防ぐことができる。
【0046】
この動力伝達解除部25によれば、座部1等を揺れ動かしている最中に、障害物と接触してその動作が妨げられると、揺り動かす駆動力を無理に座部1等に伝達させないで済むため、背凭れ部2と座部1と脚載せ部3側、及び、揺り動かすためのロッキング駆動部16側に大きな負荷が作用するのを防ぐことができ、椅子型マッサージ機の故障を防止することができる。
【0047】
〔第二実施形態〕
図8と図9は、本発明の椅子型マッサージ機の第二実施形態の構成を説明する側面図である。この第二実施形態は、前記第一実施形態(図1と図2)と比べてリクライニング駆動用の駆動装置35を備えていない点で異なるが、その他は同じである。そして、この第二実施形態では、前記駆動装置35がない代わりに、ダンパー28が設けられている。ダンパー28は、背凭れ部2のフレーム2aに固定された固定部材29と、可動フレーム11(第一フレーム11aに固定された部材)との間に取り付けられている。
【0048】
ダンパー28の機能は、図8に示しているように、その付勢力によって、背凭れ部2を起立状態に維持することができるが、座部1に着座した使用者が背凭れ部2に凭れると、図9に示しているように、当該背凭れ部2をリクライニング状態とさせることが可能である。そして、使用者が背凭れ部2に凭れる力を弱めると、その付勢力によって、リクライニング状態にある背凭れ部2を起立状態に復帰させることができる。
【0049】
そして、この第二実施形態においても、第一実施形態と同じロッキング機構部15によって、使用者が凭れることによりリクライニング状態となった背凭れ部2を、座部1及び脚載せ部3と共に、リクライニング中心A1と上下方向に異なる位置をロッキング中心A2として前後に揺り動かすことができる。
【0050】
〔第三実施形態〕
図10と図11とは、本発明の椅子型マッサージ機の第三実施形態の構成を説明する側面図である。この第三実施形態は、前記第二実施形態(図8と図9)と比べて、可動フレーム11に対する背凭れ部2の姿勢(状態)を拘束することができる拘束部41を更に備えている点で異なるが、その他は同じである。
【0051】
この拘束部41について説明する。背凭れ部2のフレーム2aには(第二実施形態と同じ)固定部材29が固定されており、この固定部材29には、さらに被係合部29aが設けられている。したがって、被係合部29aは背凭れ部2と一体となって、リクライニング中心A1回りに回動する。
また、椅子型マッサージ機には、図示していないが肘掛け部が設けられており、この肘掛け部に、拘束部41を操作するための操作部41aが設けられている。
【0052】
図12は拘束部41の機能を説明する説明図である。拘束部41は、前記被係合部29aに係合する係合部材30と、前記操作部41aと係合部材30とを連結し当該操作部41aの操作に連動して係合部材30を動かす連結部材41bとを有している。係合部材30は、可動フレーム11(第一フレーム11aに固定された部材)に軸54によって回動可能として取り付けられている。
被係合部材29aには、二つの凹部29a−1,29a−2が形成されていて、この凹部29a−1,29a−2のいずれか一方に、係合部材30が有する凸部30aが係合する。図12では、凹部29a−1,29a−2それぞれは板状の被係合部29aに形成された切り欠き部からなり、凸部30aは係合部材30に取り付けられたピンからなる。
【0053】
図12(a)に示しているように、凸部30aが一方の凹部29a−1に係合した状態では、被係合部29aは係合部材30に対して移動できず、この結果、背凭れ部2は可動フレーム11に対して回動できない。なお、この際、バネ38によって係合部材30は付勢され、係合状態が維持されている。このため、背凭れ部2は、使用者が凭れても、図10に示しているように起立状態に維持される。
【0054】
しかし、操作部41aが操作されると連結部材41bを介して係合部材30が、バネ38に抗して、軸54回りに回動し、凸部30aと前記凹部29a−1との係合が解ける。この状態では、被係合部29aは係合部材30に対して移動可能であり、背凭れ部2は、使用者が凭れると、図11に示しているようにリクライニング状態となることができる。背凭れ部2がリクライニング状態となると、被係合部材29aも回動していることから、凸部30aは他方の凹部29a−2に係合できる位置にある。
【0055】
そして、操作部41aの操作が解除され、図12(b)に示しているように、凸部30aと凹部29a−2とが係合した状態では、被係合部29aは係合部材30に対して移動できず、この結果、背凭れ部2は可動フレーム11に対して回動できない。このため、使用者が背凭れ部2から離れても、図11に示しているようにリクライニング状態が維持される。つまり、背凭れ部2は可動フレーム11に拘束された状態となる。
この状態から操作部41aを操作して、背凭れ部2の拘束を解除し、使用者が背凭れ部2に凭れる力を弱めると、前記ダンパー28によって、リクライニング状態にある背凭れ部2は、起立状態に復帰することができる。
【0056】
そして、この第三実施形態においても、第一実施形態と同じロッキング機構部15によって、リクライニング状態に維持された背凭れ部2を、座部1及び脚載せ部3と共に、リクライニング中心A1と上下方向に異なる位置をロッキング中心A2として前後に揺り動かすことができる。
【0057】
また、前記第二実施形態及び第三実施形態において、背凭れ部2が起立状態では(図8、図10)、前記固定部材29は、可動フレーム11(第一フレーム11a)の接触部11dから離れていて、背凭れ部2のリクライニング動作を妨げないが、背凭れ部2がリクライニング状態となると(図9,図11)、前記固定部材29は、可動フレーム11(第一フレーム11a)の接触部11dに下から接触し、これ以上の背凭れ部2のリクライニング動作を妨げることができる。このため、背凭れ部2がリクライニング状態にあると、背凭れ部2と座部1とは、それ以上の開き角度にならずに、一体となって、ロッキング中心A2回りに回動することができるようになる。
【0058】
〔第四実施形態〕
図13と図14は、本発明の椅子型マッサージ機の第四実施形態の構成を説明する側面図である。この椅子型マッサージ機は、前記各実施形態と同様に、使用者が着座する座部201と、マッサージ動作を行う施療子207が設けられた背凭れ部202と、使用者の脚を載せる脚載せ部203と、床面に置く固定フレーム210とを備えている。そして、背凭れ部202は、座部201の後部側の位置をリクライニング中心A11としてリクライニング可能な構成である。
さらに、この椅子型マッサージ機は、リクライニング中心A11と上下方向に異なる位置をロッキング中心A12として、背凭れ部202を座部201と共に、前後に揺り動かすロッキング機構部215を備えている。なお、本実施形態では、ロッキング中心A12は、側面視において、椅子型マッサージ機の範囲外に存在している仮想の位置である。図13は、背凭れ部202と座部201とを前に揺り動かした状態を示し、図14は、後ろに揺り動かした状態を示している。
【0059】
ロッキング機構部215は、前記固定フレーム210側に設けられた前後のガイド部材230,231と、このガイド部材230,231によってガイドされている可動フレーム235と、背凭れ部102と座部101とを前後に揺り動かす駆動源となるロッキング駆動部216とを有している。
可動フレーム235は、座部201のフレーム201aの左右それぞれに固定された板状の部材であり、前後にローラ236,237が取り付けられている。
【0060】
ガイド部材230,231は、ローラ236,237を誘導する溝や長孔からなるガイド部230a,231aを有しており、固定フレーム210に固定されている図示しない肘掛け部の固定側壁238に取り付けられている。
ガイド部材230,231は、椅子型マッサージ機の左右両側に設けられていて、可動フレーム235を介して座部201及び背凭れ部202を、ロッキング動作可能として左右の両側において支持している。
【0061】
前記ロッキング駆動部216は、前記第一、第二及び第三実施形態とほぼ同様の構成であり、モータ217、モータ217の回転数を減速する減速器218、及び、この減速器218の出力軸の回転運動を前記可動フレーム235の前後方向の往復運動に変換するリンク部219とを有している。モータ217が回転することで、リンク部219は、可動フレーム235を前後方向に往復動させる。
可動フレーム235には座部201のフレーム201aが固定されており、この座部201のフレーム201aに背凭れ部202のフレーム202aが支持されていることから、ローラ236,237がガイド部材230,231に沿って誘導されながら、可動フレーム235が前後方向に往復動すると、座部201及び背凭れ部202を前後にロッキング動作させることができる。
【0062】
なお、本実施形態は、背凭れ部202は、座部201に対して、座部201の後部側をリクライニング中心A11としてリクライニング可能な構成である。すなわち、背凭れ部202のフレーム202aは、座部201のフレーム201aに軸によって回動可能に取り付けられている。また、前記実施形態と同様に、連動部材239の他に、リクライニング用の駆動装置35(図2参照)が設けられていてもよく、又は、この駆動装置35の代わりにダンパー28(図9参照)が設けられていてもよい。
このため、前記各実施形態と同様に、リクライニング状態にある背凭れ部202を座部201と共に前後に揺り動かすロッキング動作が可能となる。
【0063】
図15と図16に示している椅子型マッサージ機は、図13と図14の実施形態の変形例であり、同様に、ロッキング機構部215として、ガイド部材230,231、可動フレーム235及びロッキング駆動部216を有しているが、ガイド部材230,231のガイド部230a,231aの形状が、図13と図14の実施形態と異なっている。
この変形例では、ガイド部230a,231aの形状を変更することで、ロッキング中心A12をリクライニング中心A11から離すことができ、大きな円弧に沿った軌道となるロッキング動作が可能となり、前後方向に大きく揺することができる。
【0064】
以上より、図13と図14に示した実施形態、及び、図15と図16に示した実施形態においても、ガイド部材230,231、可動フレーム235及びロッキング駆動部216を有するロッキング機構部215によれば、リクライニング状態にある背凭れ部202を、座部201と共に、リクライニング中心A11と上下方向に異なる位置をロッキング中心A12として前後に揺り動かすことができる。
なお、この第四実施形態においても、第一実施形態と同様の、速度変更部8(図4、図5)、動力伝達解除部25(図6)、反力部材36(図7)、及び、拘束部41(図12)を有することができる。
【0065】
〔第五実施形態〕
図17と図18は、本発明の椅子型マッサージ機の第五実施形態の構成を説明する側面図である。この椅子型マッサージ機は、前記各実施形態と同様に、使用者が着座する座部101と、マッサージ動作を行う施療子107が設けられた背凭れ部102と、使用者の脚を載せる脚載せ部103と、床面に置く固定フレーム110とを備えている。そして、背凭れ部102は、座部101の後部側の位置をリクライニング中心A11としてリクライニング可能な構成である。
さらに、この椅子型マッサージ機は、リクライニング中心A11と上下方向に異なる位置をロッキング中心A12として、背凭れ部102を座部101と共に、前後に揺り動かすロッキング機構部115を備えている。なお、本実施形態では、ロッキング中心A12は、側面視において、椅子型マッサージ機の範囲外に存在している仮想の位置である。図17は、背凭れ部102と座部101とを前に揺り動かした状態を示し、図18は、後ろに揺り動かした状態を示している。
【0066】
ロッキング機構部115は、前記固定フレーム110と座部101のフレーム101aとの間に設けられたリンク部119と、背凭れ部102と座部101とを前後に揺り動かす駆動源となるロッキング駆動部116とを有している。
リンク部119は、固定フレーム110の左右両側に設けられていて、ロッキング動作可能として座部101及び背凭れ部102を左右の両側において支持している。
【0067】
図17と図18に示しているロッキング駆動部116は、エアの供給又は排出によって膨張又は収縮するエアセル116aと、このエアセル116aにエアを供給するエアユニット(図示せず)とを有するエアアクチュエータである。前後にある対のエアセル116aが、前後方向に延びている駆動部材120を前後に進退移動させることで、後に説明するが、座部101等のロッキング動作が可能となる。
【0068】
エアセル116aは、前後方向に膨張して駆動部材120を前後方向に移動させることができる構成でありながら、膨張と共に自由に変形可能である。そして、対のエアセル116aは、左右方向の中心線回りに回動可能として椅子型マッサージ機に設けられている。
そして、このエアセル116aによって駆動される駆動部材120は、駆動方向以外の方向について変位可能な構成となる。すなわち、図19のリンク部119の説明図に示しているように、駆動部材120のガイド軸120aが、固定フレーム110のガイド部材110dによって駆動方向にガイドされ、駆動部材120は同方向に移動可能であるが、駆動部材120は、ガイド軸120aの中心線回りに揺動可能である。
【0069】
リンク部119は、エアセル116aの推力による往復直線運動を、座部101と背凭れ部102とのロッキング動作に変換する構成となっている。図19と図20は、リンク部119の説明図であり、図19が図17の状態にあるリンク部119を示し、図20が図18の状態にあるリンク部119を示している。また、図21と図22は、このリンク部119を分解した図である。
【0070】
図19において、リンク部119は、第一リンク部材121、第二リンク部材122、第三リンク部材123、第四リンク部材124及び第五リンク部材125を有している。図21において、第一リンク部材121の一端部が固定フレーム110の第一フレーム110bに軸(第七軸)140によって回動自在に連結され、他端部が第五リンク部材125の一部に軸(第八軸)141によって回動自在に連結されている。そして、第五リンク部材125に、座部101のフレーム101a(図17参照)が固定されている。この第五リンク部材125を前後に往復動させることで、座部101及びこの座部101にフレーム101aを介して支持された背凭れ部102が、前後に揺すられることになる。
【0071】
リンク部119をさらに説明する。図21において、第一リンク部材121の中間部に前記駆動部材120の先端部が第一軸131によって回動自在に連結され、この第一リンク部材121と第二リンク部材122とが第二軸132によって回動自在に連結されている。
図22において、前記第二リンク部材122と第三リンク部材123とが第三軸133によって回動自在に連結され、この第三リンク部材123の一端部と第四リンク部材124の一端部とが第四軸134によって回動自在に連結され、この第四リンク部材124の他端部は固定フレーム110の第二フレーム110cに第五軸135によって回動自在に連結されている。また、第三リンク部材123の他端部が第五リンク部材125の他部に第六軸136によって回動自在に連結されている。
【0072】
図23と図24は、リンク部119の動作の説明図であり、図23が図17の状態を示し、図24が図18の状態を示している。図23と図24は、駆動部材120と第五リンク部材125の一部を示しているが、他のリンク部材を省略している。さらに、図23と図24は、各リンク部材を連結している軸と、変位する軸についてはその軌道を示している。
【0073】
駆動部材120が後方へ移動して第一軸131が後方へ移動すると(矢印a)、第一リンク部材121における第二軸132及び第三軸133が後方へ移動する(矢印b及びc)。すると、第三リンク部材123における第四軸134は、第四リンク部材124によって移動が規制されながら、第三リンク部材123における第六軸136が後方へ移動し(矢印d)、当該第六軸136によって連結されている第五リンク部材125を後方へ変位させる。
この動作の際、第一リンク部材121は軸(第八軸)141によって第五リンク部材125を後方へ変位させている(矢印e)。第五リンク部材125が連結されているこの軸(第八軸)141と前記第六軸136とを比べると、前後方向の移動量が異なるため(矢印eと矢印d)、当該第五リンク部材125は、図24に示しているように、後方へ下傾するように後退する。
【0074】
そして、この動作と反対に、駆動部材120(第一軸131)を前方へ移動させると、第五リンク部材125を前方へ移動させることができる(図23の状態)。
このように、駆動部材120の前後往復駆動を繰り返し行うことで、第五リンク部材125を所定の軌道に沿って前後揺れ動かし、この結果、第五リンク部材125に固定された座部101、及び、この座部101にフレーム101aを介して連結されている背凭れ部102を前後に揺れ動かすことができる。
そして、前記リンク部119によれば、図23と図24の矢印d及び矢印eに示しているように、第五リンク部材125を前後方向に揺する距離を大きくすることが可能となり、快適な揺れを使用者に与えることができる。
【0075】
なお、本実施形態では、図17と図18において、背凭れ部102は、座部101に対して、座部101の後部側をリクライニング中心A11としてリクライニング可能な構成である。すなわち、背凭れ部102のフレーム102aは、座部101のフレーム101aに軸によって回動可能に取り付けられている。また、前記実施形態と同様に、連動部材139の他に、リクライニング用の駆動装置35(図2参照)が設けられていてもよく、又は、この駆動装置35の代わりにダンパー28(図9参照)が設けられていてもよい。
このため、前記各実施形態と同様に、リクライニング状態にある背凭れ部102を座部101と共に前後に揺り動かすロッキング動作が可能となる。
【0076】
以上より、この実施形態においても、リンク部119及びロッキング駆動部116を有するロッキング機構部115によれば、リクライニング状態にある背凭れ部102を、座部101と共に、リクライニング中心A11と上下方向に異なる位置をロッキング中心A12として前後に揺り動かすことができる。
【0077】
また、この第五の実施形態においても、第一実施形態と同様の、反力部材36(図7)、及び、拘束部41(図12)を有することができる。そして、ロッキング駆動部116は、弾性変形可能であるエアセル116aを有していることから、当該エアセル116aを動力伝達解除部として機能させることができる。すなわち、背凭れ部102と座部101とを前後に揺り動かす動作が妨げられると、エアセル116aが変形することにより、当該背凭れ部102と当該座部101とを前後に揺り動かす駆動力が当該背凭れ部102と当該座部101とに伝達するのを解除することが可能となる。
そして、エアセル116aを膨張させる速度を、制御装置6が制御することにより、前記速度変更部と同じ機能を備えさせることができる。
【0078】
以上前記各実施形態に係る椅子型マッサージ機によれば、背凭れ部を座部と共に、リクライニング中心と上下方向に異なる位置をロッキング中心として前後に揺り動かすことができるので、使用者の身体を前後方向に揺り動かすことができ、しかも、背凭れ部がリクライニング状態にあるので、使用者の上半身を後方に倒した姿勢で前後に揺り動かすことができる。この結果、使用者に与えるリラックス効果を従来よりも高めることが可能となる。
【0079】
なお、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
例えばロッキング駆動部及びリクライニング駆動用の駆動装置は、各実施形態において異なる構成を採用することができ、また、図示した以外の構成であってもよい。
また、前記各実施形態では、背凭れ部に設けたマッサージ具を施療子として説明したが、これ以外であってもよく、エアの供給又は排出によって膨張又は収縮するエアセルであってもよい。
【0080】
第四実施形態(図13等)及び第五実施形態(図17)に示した椅子型マッサージ機では、ロッキング中心A12が座部201の上方に存在しているが、ガイド部材の形状を変更することで、ロッキング中心は座部の下方にあってもよい。
そして、参考として説明する発明であるが、座部と背凭れ部とを一定の角度に固定した構成であってもよい。例えば、第五実施形態では、第五リンク部材125に背凭れ部102を固定してもよい。この場合、座部101と背凭れ部102とは、固定された状態で固定フレーム110に対してロッキング動作する。
【符号の説明】
【0081】
1,101,201 座部
2,102,202 背凭れ部
7,107,207 施療子(マッサージ具)
8 速度変更部
10,110,210 固定フレーム
11,235 可動フレーム
15,115,215 ロッキング機構部
16,116,216 ロッキング駆動部(駆動部)
17,217 モータ
18,218 減速器
18a 出力軸
19,119,219 リンク部
20 回転板(回転部材)
21 偏心軸
22 クランク部材
25 動力伝達解除部
36 反力部材
A1,A11 リクライニング中心
A2,A12 ロッキング中心
C1 中心線(回転中心)
C2 軸線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者が着座する座部と、
マッサージ動作を行うマッサージ具が設けられかつ前記座部の後部側をリクライニング中心としてリクライニング可能である背凭れ部と、
リクライニング状態にある前記背凭れ部を、前記座部と共に、前記リクライニング中心と上下方向に異なる位置をロッキング中心として前後に揺り動かすロッキング機構部と、
を備えていることを特徴とする椅子型マッサージ機。
【請求項2】
前記ロッキング機構部は、前記座部と前記背凭れ部とを所定の軌道で前後に往復揺り動かす中で、前後の軌道端部に近づくにつれて揺れ速度を徐々に遅くさせる速度変更部を有している請求項1に記載の椅子型マッサージ機。
【請求項3】
前記速度変更部は、モータの一定回転によって一定速度で出力軸が回転する減速器と、前記出力軸の回転運動を前記座部と前記背凭れ部との前後方向の往復運動に変換すると共に当該往復運動の前後方向の移動速度成分を変化させるリンク部と、を有している請求項2に記載の椅子型マッサージ機。
【請求項4】
床面に置く固定フレームと、
前記背凭れ部及び前記座部を支持し、前記固定フレームに対して前後方向に往復移動する可動フレームと、を更に備え、
前記リンク部は、前記出力軸の回転によって回転する回転部材と、前記回転部材の回転中心に対して偏心して当該回転部材に取り付けられた偏心軸と、前記偏心軸に取り付けられ当該偏心軸の前記回転中心回りの運動を前記可動フレームの前後方向の往復運動に変換するクランク部材と、を有している請求項3に記載の椅子型マッサージ機。
【請求項5】
前記背凭れ部と前記座部とを前後に揺り動かす動作が妨げられると、当該背凭れ部と当該座部とを前後に揺り動かす駆動力が当該背凭れ部と当該座部とに伝達するのを解除する動力伝達解除部を更に備えている請求項1〜4のいずれか一項に記載の椅子型マッサージ機。
【請求項6】
前記ロッキング機構部は、前記背凭れ部を前記座部と共に前後に揺り動かす駆動部を有し、
前記背凭れ部を前記座部と共に前後に揺り動かす動作を妨げる方向に力を生じさせる反力部材を更に備えている請求項1〜5のいずれか一項に記載の椅子型マッサージ機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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