説明

椅子型マッサージ機

【課題】椅子型マッサージ機において、構造が簡単で軽量化が可能なものとしつつ、フットレスト部の出退を簡単に行う。
【解決手段】本発明の椅子型マッサージ機1は、使用者Uが着座する座部2と、座部2に着座した使用者Uの下肢をマッサージする下肢マッサージ機構を内部に備えると共に、座部2の下部に収納された収納位置から座部2の前方に進出した使用位置まで移動可能とされたフットレスト部5と、記フットレスト部5を、収納位置から収納位置と使用位置との中間に設けられた中立位置まで自動的に移動させると共に中立位置から使用位置までは使用者Uのマニュアル操作により移動可能とする移動機構11と、を備えていることを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、椅子型マッサージ機に関する。
【背景技術】
【0002】
椅子型マッサージ機としては、座部に着座した使用者の下肢をマッサージする下肢用マッサージ機構をフットレスト部の内部に備えたものが周知である。
例えば、特許文献1の椅子型マッサージ機に備えられるフットレスト部(足揉み装置)は、下肢のマッサージを行わない場合は下肢を伸ばす上で邪魔にならないように、フットレスト部が座部の下部の収納室に収納できるようになっている。そして、下肢のマッサージを行う際に、座部の前方の使用位置にフットレスト部を引き出して、引き出されたフットレスト部に下肢を差し入れることでマッサージが行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−167155号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このようなフットレスト部の出退機構としては、電動アクチュエータ、スクリュ軸、ラック&ピニオン式などが用いられている。これらの機構は、いずれも使用者が自ら労力を払うことなく自動的にフットレスト部の出退を可能とするものであるが、構成部品の点数が多くなりやすく構造も複雑になり、また重量も嵩みやすい。当然、このような機構は利便性などの観点から好ましくない。
【0005】
本発明は、上記問題点に鑑みて為されたものであり、構造が簡単で軽量化が可能なものでありながら、フットレスト部の出退が簡単に行える椅子型マッサージ機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、本発明においては以下の技術的手段を講じた。
本発明の椅子型マッサージ機は、使用者が着座する座部と、前記座部に着座した使用者の下肢をマッサージする下肢用マッサージ機構を内部に備えると共に、前記座部の下部に収納された収納位置から当該座部の前方に進出した使用位置まで移動可能とされたフットレスト部と、前記フットレスト部を、前記収納位置から当該収納位置と使用位置との中間に設けられた中立位置まで自動的に移動させると共に前記中立位置から使用位置までは使用者のマニュアル操作により移動可能とする移動機構と、を備えていることを特徴とする。
【0007】
また、前記移動機構は、フットレスト部を使用位置から中立位置まで自動的に移動させるように構成されているのが好ましい。
さらに、前記移動機構は、前記フットレスト部を収納位置から中立位置へ移動させる方向に付勢する、及び/又は前記フットレスト部を使用位置から中立位置へ移動させる方向に付勢する付勢手段を備えているのが好ましい。
【0008】
さらにまた、前記付勢手段は、前記フットレスト部が収納位置に近づいて初めて付勢力が発現する、及び/又は前記フットレスト部が使用位置に近づいて初めて付勢力が発現する構成とされているのが好ましい。
なお、前記付勢手段の付勢力に抗して、前記フットレスト部を使用位置又は収納位置に位置固定するロック機構が設けられているのが好ましい。
【0009】
また、前記ロック機構によるフットレスト部の位置固定を解除するための解除手段が設けられているのが好ましい。
さらに、前記移動機構は、前記座部の下部に固定され、且つ前記フットレスト部を前後方向に揺動させる揺動軸部を回転自在に支持する軸支持部材と、前記揺動軸部に対して回動自在となるように嵌り込み、且つ前記フットレスト部が中立位置から収納位置に移動した際に座部の下部に係合する第1係合部と前記フットレスト部が中立位置から使用位置に
移動した際に座部の下部に係合する第2係合部とを備えた付勢調整部材と、前記揺動軸部と付勢調整部材とを連結すると共に当該揺動軸部の軸心回りに付勢力を発生させる付勢手段と、を有しており、前記ロック機構は、前記揺動軸部の軸心回りに当該揺動軸部と連動して揺動する係合突起と、前記係合突起が摺動自在に嵌り込む長孔状に形成された突起案内孔と、前記突起案内孔の長手方向の中途側に交差するように出退して前記係合突起の移動を規制可能とすることで、フットレスト部の揺動状態を収納位置または使用位置に固定する係合片と、を有しているのが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の椅子型マッサージ機によれば、構造が簡単で軽量化が可能なものでありながら、フットレスト部の出退が簡単に行えるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】フットレスト部が収納位置にある場合の椅子型マッサージ機の斜視図である。
【図3】フットレスト部が中立位置にある場合の椅子型マッサージ機の斜視図である。
【図2】フットレスト部が使用位置にある場合の椅子型マッサージ機の斜視図である。
【図4】フットレスト部が収納位置にある場合の椅子型マッサージ機の側面断面図である。
【図6】フットレスト部が中立位置にある場合の椅子型マッサージ機の側面断面図である。
【図5】フットレスト部が使用位置にある場合の椅子型マッサージ機の側面断面図である。
【図7】フットレスト部の移動機構の斜視図である(使用位置)。
【図8】フットレスト部の移動機構の斜視分解図である(使用位置)。
【図9】フットレスト部が収納位置にある場合の移動機構の拡大断面図であり、(a)は幅方向外側から見た図であって、(b)は幅方向内側から見た図である。
【図10】フットレスト部が中立位置にある場合の移動機構の拡大断面図であり、(a)は幅方向外側から見た図であって、(b)は幅方向内側から見た図である。
【図11】フットレスト部が使用位置にある場合の移動機構の拡大断面図であり、(a)は幅方向外側から見た図であって、(b)は幅方向内側から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の椅子型マッサージ機1を図面に基づき説明する。
本発明の椅子型マッサージ機1は、使用者Uが着座できるように椅子形状の外観を備えており、着座した使用者Uに対して内蔵されたマッサージ機構(下肢マッサージ機構)を用いて施療(下肢のマッサージ)を可能とするものである。
この椅子型マッサージ機1は、使用者Uが着座する座部2と、座部2に着座した使用者Uがもたれかかる背もたれ部3と、座部2に着座した使用者Uの両肘を支える肘かけ部4と、を有している。また、椅子型マッサージ機1にはフットレスト部5が設けられている。
【0013】
このフットレスト部5は、マッサージを行わない場合は座部2の下部に設けられた収納位置に収納されているが、マッサージを行う場合はこの収納位置から前方の使用位置に移動させることができるようになっている。そして、使用位置まで移動したフットレスト部5に下肢(膝からかかとを経てつま先に至る部位)を差し込むことで、内蔵された下肢マッサージ機構による下肢のマッサージが可能となる。
【0014】
まず、椅子型マッサージ機1を構成する座部2、背もたれ部3、肘かけ部4及びフットレスト部5について説明する。
なお、以降の説明において、図1の矢印で示される方向を椅子型マッサージ機1を説明する際の上方、下方、前方、後方、右方、左方と呼ぶ。これは椅子型マッサージ機1に着座した使用者Uから見た方向と一致する。また、左右方向を幅方向と表現することもある。
【0015】
図1〜図6に示すように、座部2は、水平方向(前後方向及び左右方向)に平らに広がる部材である。座部2の上部にはクッション材が設けられており、使用者Uが着座しやす
いようになっている。
座部2の下側には、座部2を床面Fなどに対して支持する支持フレーム6が設けられている。この支持フレーム6は、上下方向、左右方向、前後方向を向く角材(棒材)を格子状(櫓状)に組み合わせたものであり、床面Fから上方に離れた位置に座部2を保持できるようになっている。
【0016】
背もたれ部3は、座部2の後側に配備された部材である。この背もたれ部3は、使用者Uに面する側が座部2と同様にクッション材とされており、また内部には着座した人の肩、背中、及び/又は腰をマッサージするマッサージ機構(図示略)が内蔵されている。背もたれ部3の下端側は座部2の支持フレーム6に枢支されており、背もたれ部3はこの下端側の枢支点を中心として起立した姿勢と、後方に倒れ込んだ(リクライニングした)姿勢との間で姿勢変更が可能となっている。
【0017】
肘かけ部4は、座部2の左側に配備される左肘かけ部4Lと、座部2の右側に配備される右肘かけ部4Rとから構成されている。これらの肘かけ部4L、4Rは前後方向及び上下方向に沿って設けられた板状の部材であり、その上面は使用者Uが肘や腕を載せられるように前後方向に長い長方形の平坦面として形成されている。
これら左右の肘かけ部4の間であって、上述した座部2の下方の空間は、フットレスト部5を収納する収納室7となっている。
【0018】
図4〜図6に示すように、フットレスト部5は、使用者Uの下肢をマッサージする下肢マッサージ機構を内蔵するフットレスト本体8と、このフットレスト本体8を座部2に対して支持するアーム部材9と、座部2の下部に設けられた左右方向を向く軸(後述する揺動軸部10)回りにこのアーム部材9を揺動させることでフットレスト部5を移動させる移動機構11とを有している。
【0019】
フットレスト本体8は、上述した収納室7に収納可能な部材である。このフットレスト本体8の正面(図4の姿勢で上方を向く面であって、図6で右側を向く面)には、使用者Uの下肢を挿入可能な下肢挿入孔12が左右にそれぞれ1つずつ並んで形成されている。これらの下肢挿入孔12は、マッサージをする際に使用者Uが下肢を差し込みやすいように、図6の姿勢で前方と上方との2方向に向かって開口している。そして、フットレスト本体8の内部には、下肢挿入孔12に差し込まれた使用者Uの下肢をマッサージ可能な下肢マッサージ機構が内蔵されている。
【0020】
フットレスト本体8の背面(図4の姿勢で下方を向く面)の前端側には、床面Fに接触しつつ回転することでこのフットレスト本体8を移動させる車輪13が設けられている。またフットレスト本体8の背面の後端側には、アーム部材9が左右方向を向く枢支軸36回りに揺動自在に連結されている。
図7及び図8に示すように、アーム部材9は、前後方向に向けて且つ互いに平行に並べられた2本の棒材14と、これらの棒材14間を連結する3本の桟材15と、を組み合わせたはしご状の外観を備えている。2本の棒材14はいずれも長手方向の中途側が湾曲しており、また桟材15はそれぞれの棒材14の前端側、後端側、中途側の3箇所同士を左右方向に連結する構成となっている。すなわち、アーム部材9は、側面視C字型の形状を有している。
【0021】
アーム部材9の後端側(基端側)には左右方向を向く揺動軸部10が設けられている。この揺動軸部10の左端及び右端はアーム部材9から左右方向に突出していて、この揺動軸部10の突出した部分をそれぞれ回動自在に支持することでアーム部材9が座部2に対して自由に揺動できるようになっている。
それゆえ、図4に示す状態のアーム部材9を前方へ向けて揺動させると、まず、図4で示す状態にあるフットレスト本体8は、図5に示す状態へと遷移する。さらに、アーム部材9を前方へ向けて揺動させると、アーム部材9に連結されたフットレスト本体8の後端側が車輪13がある前端側に対して跳ね上がる方向に揺動しつつ、フットレスト本体8は前方に向かって移動し、図6の状態となる。
【0022】
なお、図4に示すように、フットレスト本体8が座部2の下方に形成された収納室7内に位置しており、フットレスト本体8の正面が上方を向き、底面が前方向き、底面と座面
の前縁が上面視で略一致する状態を、フットレスト部5(フットレスト本体8)が収納位置にあると呼ぶ。
また、図5に示すように、フットレスト本体8の略半分が収納室7から前外へ進出しており、フットレスト本体8の正面が上方を向き、底面が前方向く状態を、フットレスト部5(フットレスト本体8)が中立位置にあると呼ぶ。
【0023】
図6に示すように、フットレスト本体8が収納室7から出ていて、フットレスト本体8の正面が前方を向き、底面が下方を向く状態(立ち上がった状態)をフットレスト部5(フットレスト本体8)が使用位置にあると呼ぶ。
なお、本実施形態の場合、フットレスト本体8とアーム部材9の前端側とは直接枢支されておらず、フットレスト本体8の背面に設けられた前後スライド機構37を介して連結されている。この前後スライド機構37によりフットレスト本体8は、若干ながら前後スライド自在となっている。とはいえ、前後スライド機構37には弾性部材が内蔵されており、フットレスト本体8は常にアーム部材9の前端側へ付勢されるようになっている。
【0024】
ところで、アーム部材9の後端側であって、揺動軸部10の右方向に突出した部分には、揺動軸部10に回転駆動力を与えてこの揺動軸部10を正転方向または逆転方向に切り替え自在に回動させる移動機構11が設けられている。
また、アーム部材9の基端側の右側面には、外方に向かって突出する係合突起16が設けられている。この係合突起16の突端は、移動機構11に係合可能となっている。
【0025】
移動機構11は、アーム部材9を前後に揺動させることでフットレスト部5の位置や姿勢を上述したように変更するものである。具体的には、この移動機構11は、フットレスト部5を、収納位置からこの収納位置と使用位置との中間に設けられた中立位置まで自動的に移動させると共に中立位置から使用位置までは使用者Uのマニュアル操作により移動可能とする構成となっている。
【0026】
図8に示す如く、移動機構11は、右側から順番に、軸支持部材17、係合片18、軸支持部材17の蓋体19、付勢調整部材20、付勢部材21を組み合わせて構成されている。
次に、移動機構11を構成する各部材について詳しく説明する。
まず、軸支持部材17は、座部2の下面に垂下状に取り付けられた板状の部材であり、上述したアーム部材9の揺動軸部10と直交するように板面を幅方向の外側面と内側面とに向けて取り付けられている。
【0027】
軸支持部材17の上部には揺動軸部10を挿入可能な軸孔22が左右方向に貫通状に形成されており、この軸孔22に揺動軸部10の突出した部分(使用者Uから見て右側に突出した部分)を挿通することで揺動軸部10(アーム部材9)が座部2に対して回動自在となっている。
軸支持部材17の下部(軸孔22の下側)には、長尺且つ貫通状に形成された突起案内孔23が設けられており、この突起案内孔23には、アーム部材9に突設された係合突起16が摺動自在に嵌り込んでいる。具体的には、突起案内孔23は、軸孔22の中心を基準として円弧状に形成されており、軸孔22の中心から下方に離れた位置と軸孔22の中心から後方に離れた位置との2点間を結んでおり、この円弧状の軌跡に沿って係合突起16を案内できるようになっている。
【0028】
また、軸支持部材17の外側面には、アーム部材9の係合突起16に係合する係合片18を案内可能な案内溝24が形成されている。この案内溝24は、円弧状に形成される突起案内孔23の中途側と交差するように径方向に沿って形成されている。
詳しくは、軸孔22から径外方向に向かって伸びるように形成されており、軸孔22の中心を基準として円弧状に形成される突起案内孔23の中途側と略直交するようになっている。それゆえ、この案内溝24に沿って係合片18(詳細は後述)を径外側に移動させると、突起案内孔23のうち長手方向の中途側だけが係合片18で閉鎖され、係合片18を径内側に移動させると突起案内孔23の開口が長手方向全域に亘って開口するようになる。
【0029】
係合片18は、案内溝24内に嵌り込む幅及び厚みを有する板状の部材であり、案内溝
24の形成方向に(軸孔22を基準とする径方向に)沿って摺動可能となっている。この係合片18の径外側の端縁(先端)は突起案内孔23と同曲率の円弧状となっており、径内側の端縁(基端)には係合片18を径外側に向かって付勢するバネ部材25が設けられている。
【0030】
このバネ部材25により、係合片18は常に軸孔22から離れる方向(係外側)に付勢され、係合片18が突起案内孔23を横切ることで突起案内孔23の長手方向の中途側が閉鎖される。
さらに、係合片18の外表面(軸支持部材17とは反対面)には、この係合片18をバネ部材25の付勢方向とは反対方向に押し戻すリンク部材26と、このリンク部材26を動作させる操作ワイヤ27とが設けられている。
【0031】
リンク部材26は、長尺棒状の第1リンク部材28と、この第1リンク部材28の揺動に合わせて動作する長尺棒状の第2リンク部材29とを組み合わせたものである。
第1リンク部材28は、長手方向の一端側(基端側)が係合片18に左右方向を向く軸38回りに枢支されており、他端側(先端側)が操作ワイヤ27に連結されている。また、第2リンク部材29は、長手方向の一端側(基端側)が第1リンク部材28の中途側に左右方向を向く軸39回りに回動自在に連結されており、その先端が係合片18に左右方向回りに回動自在に連結されている。
【0032】
それゆえ、操作ワイヤ27を引くと、係合片18に枢支された基端側を中心として第1リンク部材28の先端側が左右方向を向く軸38回りに揺動する。そしてこの第1リンク部材28の揺動に連動して第2リンク部材29が軸38回りに揺動し、第1リンク部材28に連結されていない側の第2リンク部材29の先端が、案内溝24の径内側の端縁を径内方向へ押動する。それゆえ、このリンク部材26を用いることで、係合片18を案内溝24に沿って移動させることが可能となる。
【0033】
なお、上記した第1リンク部材28及び第2リンク部材29の構成は、梃子の作用を発動することになるため、操作ワイヤ27の操作に大きな力を要しない。
操作ワイヤ27は、一方の端が第1リンク部材28に連結され、もう一方の端が背もたれ部3の下側まで伸びている。そして、背もたれ部3の下側に伸びた操作ワイヤ27の端を引っ張ってリンク部材26を動作させると、係合片18はバネ部材25の付勢力に逆らって案内溝24の径外側から径内側に移動する。係合片18が案内溝24の径内側に位置しているときには、突起案内孔23が全開状態となり、係合突起16が突起案内孔23に沿って自由に移動できるようになるため、アーム部材9も自在に回転する。それゆえ、操作ワイヤ27を引くことで係合片18によるロックが外れてフットレスト部5の姿勢を自由に変更することが可能となる。
【0034】
しかし、操作ワイヤ27を元に戻す(緩める)と、バネ部材25の付勢力によって係合片18が案内溝24の径内側から径外側に移動する。係合片18が案内溝24の径外側に位置しているときには、突起案内孔23の中途側に係合片18が進出して突起案内孔23の開口の一部が閉鎖され、案内溝24に沿って係合突起16を移動することができなくなる。その結果、アーム部材9の揺動軸部10の回転が抑制されて、フットレスト部5の姿勢が固定状態となる。
【0035】
すなわち、上述した係合突起16と係合片18とはフットレスト部5の位置を固定する(フットレスト部5の位置や姿勢の変更を規制する)ロック機構となっており、また操作ワイヤ27及びリンク部材26はロック機構によるフットレスト部5の位置固定(姿勢固定)を解除するための解除手段を構成している。
なお、第1リンク部材28に連結されていない操作ワイヤ27の端(上述したもう一方の端)を、図1〜図3に示すように、肘かけ部4(乃至は背もたれ部3)と座部2との間から前方に引き出すと共に、輪状に結んでおけば操作ワイヤ27の端を引っ張る際に便利である。
【0036】
軸支持部材17の蓋体19は、案内溝24内に係合片18を収納したまま、軸支持部材17の外側面を被覆する部材である。この蓋体19には上述した案内溝24内に連通する位置に開口30が形成されており、この蓋体19の開口30を介して操作ワイヤ27を係
合片18まで差し入れられるようになっている。
この蓋体19から突出する揺動軸部10には、付勢部材21及び付勢調整部材20が取り付けられている。
【0037】
付勢調整部材20は、アーム部材9の揺動軸部10が予め定められた揺動状態(揺動角)に揺動したときに、付勢部材21で付勢力が発生するように付勢力の調整を行うものである。
詳しくは、図7、図8に示す如く、付勢調整部材20は、扇板状の部材(扇部31)と、この扇部31の要(扇中心に相当する部分)に設けられた円筒部32とを一体に組み合わせたような部材である。この円筒部32の中心にはこの円筒部32を左右方向に貫通する挿通孔33が形成されており、この挿通孔33に揺動軸部10を遊嵌状態で揺動自在に挿通することで、付勢調整部材20が軸支持部材17の蓋体19の外側に配備可能とされている。また、付勢調整部材20における扇部31は約120°の中心角を有する円弧形状の板材であり、扇部31の両端縁にはアーム部材9の揺動軸部10が予め定められた揺動状態(揺動角)に揺動したときに座部2の下面に接触する位置決め突起34が形成されている。この位置決め突起34は、扇の中心から径外側に向かって伸びる2つの端縁のそれぞれに1つずつ形成されている。
【0038】
一方、付勢部材21は、金属などを螺旋状に巻回して形成されたもの(つるまきバネ)である。この付勢部材21の一方の端は、付勢調整部材20から突出している揺動軸部10の端部に固定部材35を介して取り付けられている。付勢部材21の他方の端は、付勢調整部材20の外側面に嵌り込むようになっている。
次に、上述した移動機構11の作動態様、すなわちフットレスト部5の収納位置〜中立位置〜使用位置の動きを説明する。
【0039】
図9は、フットレスト部5が収納位置にある状態、言い換えればフットレスト部5が収納室7に収納されている状態における移動機構11を示したものである。
図9(a)に示すように、この収納位置においては、フットレスト部5の揺動軸部10は時計回り方向に大きく回動しているが、左側の位置決め突起34が座部2の下面に接触しているため付勢調整部材20は揺動軸部10に追随して回動することはできない。それゆえ、付勢調整部材20の時計回り方向への回動角度に比べてフットレスト部5の揺動軸部10の回動角度の方が大きくなり、両者の回動角度の差に相当する分だけ付勢部材21は捻られて付勢力が発生している。すなわち、図9(a)の左側の位置決め突起34が、フットレスト部5が中立位置から収納位置に移動した際に座部2の下部に係合する第1係合部となっている。
【0040】
一方、図9(b)に示すように、係合片18は案内溝24に沿って径外側に移動しており、突起案内孔23の開口の一部(中途側)が係合片18で閉鎖されているため、係合突起16は突起案内孔23の後端側の端部に位置したまま移動することがない。
それゆえ、図9(a)において、フットレスト部5が収納位置にあるときには、揺動軸部10にはこの揺動軸部10を反時計方向に回動させる方向(フットレスト部5を収納位置から中立位置へ移動させる方向)に付勢力が発生するものの、係合突起16が係合片18に係合しているためフットレスト部5が前方に揺動することはなく、付勢力に逆らってフットレスト部5を収納位置に保持しつづけることができる。すなわち、この係合片18と、係合片18に係合する係合突起16とが、付勢部材21(付勢手段)の付勢力に抗して、フットレスト部5を収納位置に位置固定するロック機構を構成している。
【0041】
図4に示すように、収納位置にあるフットレスト部5では、フットレスト本体8は、その背面が床面Fと向かい合わせになるように倒れ込んだ姿勢となっていて、この倒れ込んだ姿勢のまま収納室7に収納されている。そして、アーム部材9は座部2の下面からフットレスト本体8の後端側を回ってフットレスト本体8の下側まで伸びており、フットレスト本体8を収納する際に邪魔にならない位置に配置されている。
【0042】
上述した状況下において、操作ワイヤ27を引っ張ってリンク部材26を動作させると、係合片18が案内溝24に沿ってバネ部材25の付勢力に逆らって案内溝24の径外側から径内側に移動する。
そうすると、図9(a)において、係合突起16が突起案内孔23に沿って移動できるようになり、揺動軸部10が反時計方向に回動可能になる。このようにして付勢部材21に発生した付勢力により揺動軸部10が反時計方向に回動し、それに合わせてアーム部材9が収納位置から収納位置と使用位置との中間に設けられた中立位置まで「自動的」に移動する。やがて付勢部材21が付勢力を失うと左側の位置決め突起34が座部2の下面から離間して、図10に示すような中立位置にフットレスト部5が移動する。
【0043】
図10(a)に示すように、この中立位置においては、左右両側の位置決め突起34が座部2の下面から離間しており、付勢調整部材20は揺動軸部10に対して自由に回動可能となっているため、付勢部材21に付勢力が発生することがない。また、図10(b)に示すように、係合片18は案内溝24の径内側に移動しており、係合片18により突起案内孔23が閉鎖されることもない。それゆえ、係合突起16は突起案内孔23の後端側から前端側まで孔内をスムーズに移動することができる。
【0044】
また、図5に示すように、中立位置にあるフットレスト部5では、フットレスト本体8は、その背面が床面Fと向かい合わせの姿勢のまま収納室7の前方に移動している。そして、フットレスト本体8の正面(上面)に形成された下肢挿入孔12の開口の一部が上方に向かって開かれており、この開かれた開口から使用者Uのかかとやつま先を差し込むことが可能となっている。それゆえ、図示するように、下肢挿入孔12の開口縁に例えばかかとを引っかけるようにしてフットレスト本体8を前方に押せば(けり出せば)、フットレスト本体8が前方に「マニュアル操作」で揺動し、フットレスト部5を中立位置から使用位置に移動させることが可能となる。
【0045】
なお、上述したやり方では、かかとを引っかけてフットレスト部5を足で前方にけり出す操作を「マニュアル操作」としたが、フットレスト部5の移動は足でなくて、手で行っても良い。また、後述するようにフットレスト部5を中立位置から収納位置に移動させるときには、図5に示すように、例えば使用者Uのかかとをフットレスト本体8の後端面に引っかけて、フットレスト部5を収納室7に引き込むように中立位置から収納位置に移動させるが、このような足を用いた引き込み操作も「マニュアル操作」と呼ぶ。
【0046】
このようにフットレスト部5を使用位置側へマニュアル操作で移動させた際には、図11(a)の如く、付勢調整部材20が揺動軸部10と一体に反時計方向に回動し、やがて付勢調整部材20の右側の位置決め突起34が座部2の下面に接触するようになる。この状態からさらにフットレスト部5を前方に引き出し、揺動軸部10を反時計方向に回動させると、付勢調整部材20の回動が規制されたまま揺動軸部10だけが回動するため、付勢部材21には揺動軸部10を時計方向に回動させる方向に付勢力が発生する。この付勢力に抗して揺動軸部10を反時計方向に回動させると、フットレスト部5の位置が中立位置から使用位置に変化する。
【0047】
図11(a)に示すように、この使用位置においては、フットレスト部5の揺動軸部10は反時計回り方向に大きく回動しているが、右側の位置決め突起34が座部2の下面に接触しているため付勢調整部材20は揺動軸部10に追随して回動することはできない。それゆえ、付勢調整部材20の反時計回り方向への回動角度に比べてフットレスト部5の揺動軸部10の回動角度の方が大きくなり、両者の回動角度の差に相当する分だけ捻られ、付勢部材21には図9(a)のときとは反対方向に付勢力が発生する。すなわち、図11(a)における右側の位置決め突起34が、フットレスト部5が中立位置から使用位置に移動した際に座部2の下部に係合する第2係合部となっている。
【0048】
一方、図11(b)に示すように、係合片18は案内溝24に沿って径外側に移動しており、突起案内孔23の開口の一部(中途側)が係合片18で閉鎖されているため、係合突起16は突起案内孔23の前端側の端部に位置したまま移動することがない。それ故、フットレストは使用位置から他の位置へ遷移することはない。
それゆえ、フットレスト部5が使用位置にあるときにも、揺動軸部10にはこの揺動軸部10を時計方向に回動させる方向(フットレスト部5を使用位置から中立位置へ移動させる方向)に付勢力が発生するものの、係合突起16が係合片18に係合しているためフットレスト部5が後方に揺動することはなく、付勢力に逆らってフットレスト部5を使用
位置に保持しつづけることができる。すなわち、この係合片18と、係合片18に係合する係合突起16とが、付勢部材21(付勢手段)の付勢力に抗して、フットレスト部5を使用位置に位置固定するロック機構を構成している。
【0049】
図6に示すように、使用位置にあるフットレスト部5では、フットレスト本体8は、収納室7の前方まで引き出されており、その背面を後方(使用者U側)に向けた起立した姿勢となっている。そして、アーム部材9の中間部はほぼ水平方向を向くまで揺動して、フットレスト本体8が倒れ込まないように支持している。
上述した移動機構11の動作は、収納位置にあるフットレスト部5を使用位置に移動させる場合のものであったが、使用位置にあるフットレスト部5を収納位置に移動させる場合は、上述したものと逆の手順を行えば、フットレスト部5を使用位置から中立位置まで自動的に移動させることができる。また、中立位置から収納位置までは使用者Uのマニュアル操作により移動させることができる。
【0050】
具体的には、フットレストが使用位置で位置固定状態にある場合に、操作ワイヤを引くと係合突起16による係合が外れて揺動軸部10が自由に回動できる状態となり、付勢部材21(付勢手段)の付勢力によってアーム部材9が前方から後方に向かって回動して、フットレスト部5が中立位置に自動的に移動する。この中立位置において、フットレスト本体8を足(例えばかかと)で後方に押し込む(マニュアル操作する)と、フットレスト本体8が収納室7内に移動してフットレスト部5が収納位置に移動する。この収納位置では、付勢部材21による付勢力は作用するものの、フットレスト部5を収納位置から引き出す際と同様にロック機構が作用しているため、フットレスト部5は収納位置に移動したままの状態で保持される。
【0051】
なお、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。特に、今回開示された実施形態において、明示的に開示されていない事項、例えば、運転条件や操業条件、各種パラメータ、構成物の寸法、重量、体積などは、当業者が通常実施する範囲を逸脱するものではなく、通常の当業者であれば、容易に想定することが可能な値を採用している。
【0052】
例えば、本実施形態では、係合突起16及び移動機構11が揺動軸部10の右方向に設けられた例を挙げたが、係合突起16及び移動機構11は、揺動軸部10の左側に設けられていても良い。
【符号の説明】
【0053】
1 椅子型マッサージ機
2 座部
3 背もたれ部
4 肘かけ部
4L左肘かけ部
4R右肘かけ部
5 フットレスト部
6 支持フレーム
7 収納室
8 フットレスト本体
9 アーム部材
10 揺動軸部
11 移動機構
12 下肢挿入孔
13 車輪
14 棒材
15 桟材
16 係合突起
17 軸支持部材
18 係合片
19 (軸支持部材の)蓋体
20 付勢調整部材
21 付勢部材
22 軸孔
23 突起案内孔
24 案内溝
25 バネ部材
26 リンク部材
27 操作ワイヤ
28 第1リンク部材
29 第2リンク部材
30 開口
31 (付勢調整部材の)扇部
32 (付勢調整部材の)円筒部
33 挿通孔
34 位置決め突起
35 固定部材
36 枢支軸
37 前後スライド機構
38 軸
39 軸
F 床面
U 使用者

【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者が着座する座部と、
前記座部に着座した使用者の下肢をマッサージする下肢マッサージ機構を内部に備えると共に、前記座部の下部に収納された収納位置から当該座部の前方に進出した使用位置まで移動可能とされたフットレスト部と、
前記フットレスト部を、前記収納位置から当該収納位置と使用位置との中間に設けられた中立位置まで自動的に移動させると共に、前記中立位置から使用位置までは使用者のマニュアル操作により移動可能とする移動機構と、
を備えていることをを特徴とする椅子型マッサージ機。
【請求項2】
前記移動機構は、フットレスト部を使用位置から中立位置まで自動的に移動させるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の椅子型マッサージ機。
【請求項3】
前記移動機構は、前記フットレスト部を収納位置から中立位置へ移動させる方向に付勢する及び/又は前記フットレスト部を使用位置から中立位置へ移動させる方向に付勢する付勢手段を備えていることを特徴とする請求項2に記載の椅子型マッサージ機。
【請求項4】
前記付勢手段は、前記フットレスト部が収納位置に近づいて初めて付勢力が発現する及び/又は前記フットレスト部が使用位置に近づいて初めて付勢力が発現する構成とされていることを特徴とする請求項3に記載の椅子型マッサージ機。
【請求項5】
前記付勢手段の付勢力に抗して、前記フットレスト部を使用位置又は収納位置に位置固定するロック機構が設けられていることを特徴とする請求項3または4に記載の椅子型マッサージ機。
【請求項6】
前記ロック機構によるフットレスト部の位置固定を解除するための解除手段が設けられていることを特徴とする請求項5に記載の椅子型マッサージ機。
【請求項7】
前記移動機構は、
前記座部の下部に固定され、且つ前記フットレスト部を前後方向に揺動させる揺動軸部を回転自在に支持する軸支持部材と、
前記揺動軸部に対して回動自在となるように嵌り込み、且つ前記フットレスト部が中立位置から収納位置に移動した際に座部の下部に係合する第1係合部と前記フットレスト部が中立位置から使用位置に移動した際に座部の下部に係合する第2係合部とを備えた付勢調整部材と、
前記揺動軸部と付勢調整部材とを連結すると共に当該揺動軸部の軸心回りに付勢力を発生させる付勢手段と、を有しており、
前記ロック機構は、
前記揺動軸部の軸心回りに当該揺動軸部と連動して揺動する係合突起と、
前記係合突起が摺動自在に嵌り込む長孔状に形成された突起案内孔と、
前記突起案内孔の長手方向の中途側に交差するように出退して前記係合突起の移動を規制可能とすることで、フットレスト部の揺動状態を収納位置または使用位置に固定する係合片と、を有している
ことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の椅子型マッサージ機。

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2012−157449(P2012−157449A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−18059(P2011−18059)
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【出願人】(592009214)大東電機工業株式会社 (106)
【Fターム(参考)】