説明

椅子式マッサージ機

【課題】被施療者の掌部や指部といった腕先部分から肩部にかけてのストレッチを施すことを可能とする椅子式マッサージ機を提供する。
【解決手段】被施療者が着座する座部1と、被施療者の背中を凭れ掛ける背凭れ部2と、座部1に対して背凭れ部2を起倒動作させる起倒動作部とを具備する椅子式マッサージ機において、被施療者の掌部から指部に至る腕先部分のみを座部1側に固定させた状態で背凭れ部2を倒してストレッチ動作を行わせるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、背凭れ部が起倒自在となっている椅子式マッサージ機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、被施療者の左右の腕を座部側にそれぞれ挟持固定させる左右一対の保持機構と、座部に対して背凭れ部を起倒動作させる起倒動作部とを具備し、保持機構により腕を固定させた状態のままで背凭れ部を倒すことにより、背凭れ部と共に上体を後方に倒す被施療者の自重で肩や腕を伸ばすストレッチ動作を行う椅子式マッサージ機が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
しかし上記従来の椅子式マッサージ機は、被施療者の前腕部全体を固定したうえで背凭れ部を倒していくことで、前腕部から肩部にかけてストレッチを施す仕組みであり、被施療者の指部や掌部といった腕先部分から肩部にかけてのストレッチを施すようなものは存在しなかった。
【特許文献1】特開2005−152260
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記問題点に鑑みて発明したものであって、被施療者の掌部や指部といった腕先部分から肩部にかけてのストレッチを施すことを可能とする椅子式マッサージ機を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために本発明を、被施療者が着座する座部と、被施療者の背中を凭れ掛ける背凭れ部と、座部に対して背凭れ部を起倒動作させる起倒動作部とを具備する椅子式マッサージ機において、被施療者の腕先部分を座部側に固定させる保持機構と、上記保持機構で被施療者の腕先部分を座部側に固定させた状態で背凭れ部を倒してストレッチ動作を行わせるよう上記保持機構及び起倒動作部を駆動制御する制御部とを具備したものとする。
【0006】
上記構成の椅子式マッサージ機とすることで、被施療者の腕先部分から肩にかけての腕全体にストレッチを施すことができ、高いストレッチ効果を得ることができる。加えて、保持機構としては腕先部分を固定できればよいので小型化可能であり、椅子式マッサージ機の機構の簡素化にも寄与するものである。
【0007】
また上記構成の椅子式マッサージ機にあっては、上記保持機構が、被施療者の掌部を座部側に固定させるものであることが好適である。このようにすることで、被施療者の掌部から肩にかけての腕全体にストレッチを施すことができ、高いストレッチ効果を得ることができる。加えて、保持機構としては掌部を固定できればよいので小型化可能であり、椅子式マッサージ機の機構の簡素化にも寄与するものである。
【0008】
また上記保持機構が、被施療者の指部を座部側に固定させるものであることも好適である。このようにすることで、被施療者の指部から肩にかけての腕全体にストレッチを施すことができ、高いストレッチ効果を得ることができる。加えて、保持機構としては指部を固定できればよいので小型化可能であり、椅子式マッサージ機の機構の簡素化にも寄与するものである。
【0009】
また、上記構成の椅子式マッサージ機にあっては、上記保持機構が、上方と下方のいずれか一方または両方に配したエアバッグから成り、上記エアバッグの膨張により上下方向に挟持固定するものであることが好適である。このように、人体の腕先部分を効率的に固定することのできる上下方向からの挟持固定とすることで、保持機構を簡素な仕組みで形成することが可能となる。加えて、上記エアバッグを複数備える等して該エアバッグの膨縮を適宜制御すれば、腕全体にストレッチを施すと同時に腕先部分のマッサージを施すことも可能である。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、被施療者の掌部や指部といった腕先部分から肩部にかけての腕全体のストレッチを施すことが可能になるといった効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を添付図面に示す実施形態に基づいて説明する。図1は本発明の実施形態における一例の椅子式マッサージ機の斜視図であり、図2は被施療者50が着座している状態の側面図である。
【0012】
本例の椅子式マッサージ機は、被施療者50が着座する座部1と、座部1に着座状態にある被施療者50が自身の背中を凭れ掛ける背凭れ部2と、同じく座部1に着座状態にある被施療者50が左右両腕の前腕部をそれぞれ置いておくために座部1側に一体に取付けてある左右一対の肘掛部3とを具備するものである。以下の文中においては、被施療者50が背中を凭れ掛ける方向を「後方」、その逆方向(即ち、被施療者50が正面を向く方向)を「前方」として述べる。
【0013】
背凭れ部2内には、被施療者50の背面側に対して揉みや叩き等の各種マッサージを行う背部施療機構(図示せず)を備えている。また座部1と背凭れ部2との間には、座部1に対して背凭れ部2を前後方向に起倒動作させてリクライニング角度を変更させるリクライニング機構として、起倒モータ4により電動で角度変更を行うリンク機構から成る起倒動作部5を備えている(図2参照)。
【0014】
左右の肘掛部3の上面にはそれぞれ、肘掛部3上に置いた被施療者50の一方の腕を上方から覆う腕カバー6が備えてあり、肘掛部3と腕カバー6とで形成される施療機構7内に片腕を挿入して位置させるようになっている。肘掛部3と腕カバー6とは、互いの前端部を前後方向に回動自在に連結させており、肘掛部3の上面に対して腕カバー6が閉じた位置と、肘掛部3の上面に対して腕カバー6が所定角度だけ開いた位置との間で開閉自在となっている。
【0015】
図3に示すように、左右一対の施療機構7にはそれぞれ、腕カバー6の下面に配設されて給排気により膨縮自在な上エアバッグ8と、肘掛部3の上面に配設されて給排気により膨縮自在な下エアバッグ9とが、対向箇所に備えてある。この上下エアバッグ8,9により、施療機構7内に挿入された指部から掌部に至る腕先部分が上下方向から包み込まれるように弾力的に挟持され、適宜のエアマッサージが施されるものである。
【0016】
上エアバッグ8と下エアバッグ9は、それぞれ専用の電磁弁(図示せず)を介して給気ポンプ(図示せず)に連通接続されている。腕にエアマッサージを施す際には、給気ポンプを駆動させて給気を行うとともに各電磁弁の開閉を選択することで、上エアバッグ8と下エアバッグ9のうち給気を行うものを選択して膨張させる。
【0017】
図4には制御構成図を示している。図示の如く、本例の椅子式マッサージ機が備える制御部14は、操作部15から入力される各種の指令に基づいて、左右の施療機構7の施療動作や、背凭れ部2の起倒動作を制御するものである。制御部14による施療機構7の制御は、左右それぞれの上下エアバッグ8,9に対応する電磁弁と給気ポンプとを駆動制御することによって行う。また制御部14による背凭れ部2の起倒動作の制御は、角度センサ(図示せず)により検知される現在のリクライニング角度から狙いのリクライニング角度にまで背凭れ部2が移動するように、起倒動作部5の起倒モータ4を駆動させることによって行う。
【0018】
上記構成から成る本例の椅子式マッサージ機に着座した被施療者50は、操作部15のボタン操作によって電源をオンにした後に背凭れ部2のリクライニング角度を所望角度に設定し、この状態で上述の背部施療機構や施療機構7による各種マッサージを施術させる。
【0019】
そして、操作部15のボタン操作によって制御部14にストレッチ開始を指令すると、腕先部分から肩部にかけてのストレッチ動作が後述の如く行われる。本例にあっては左右の腕先部分を片方ずつ引っ張ってストレッチするように設定してあるので、まず、右側又は左側の施療機構7の上下エアバッグ8,9を同時に膨張させることで、被施療者50が肘掛部3上に置いた片腕の前腕部分を上下方向から包み込むように挟持固定させる。なお、以下の文中にあっては、上記施療機構7を、ストレッチ動作において座部1側に被施療者50の腕先部分を挟持固定するための保持機構16と称して説明する。
【0020】
次に上記制御部14は、上下エアバッグ8,9の膨張開始時点から一定の待ち時間が経過した時点から、腕先部分のみを挟持固定させた状態を保ちながら起倒動作部5により背凭れ部2を後方へと一定速度で倒し始める。背凭れ部2が所定のリクライニング角度にまで倒れると、この位置で、制御部14は保持機構16により片腕を挟持固定させた状態を保ちながら背凭れ部2を数秒間停止させる。このとき、背凭れ部2と共に上体を後方に倒すこととなる被施療者50には、腕先部分から肩にかけて自重により引っ張られるストレッチが施されるものである。
【0021】
上記ストレッチ終了後は、上下エアバッグ8,9の排気を行うことで保持機構16による腕先部分の挟持固定を解除するとともに、この解除状態において背凭れ部2を所定のリクライニング角度にまで起こしていく。そして、次は他方の腕に対して同様の手順でストレッチ動作を行う。このストレッチ動作を左右交互に何度か繰り返すよう設けることも好適である。
【0022】
なお、本例にあっては腕先部分を上下方向から挟持固定する際に上下エアバッグ8,9が同時に膨張するように設定してあるが、上エアバッグ8又は下エアバッグ9のみが膨張するように設定してあっても構わない。
【0023】
次に、本発明の実施形態における他例の椅子式マッサージ機について図5〜図7に基づいて説明する。なお本例の基本的構成は上記した一例の構成と同様であることから、一例と同様の構成については同一符号を付して詳しい説明を省略し、一例とは相違する特徴的な構成についてのみ以下に詳述する。
【0024】
本例の椅子式マッサージ機においては、保持機構16において被施療者50の指部と掌部とが個別に挟持固定されるようになっている。図5に示すように、左右一対の保持機構16にはそれぞれ、腕カバー6の下面に配設されて給排気により膨縮自在な指上エアバッグ20及び掌上エアバッグ30と、肘掛部3の上面に配設されて給排気により膨縮自在な指下エアバッグ21及び掌下エアバッグ31とが備えてある。指上エアバッグ20と指下エアバッグ21は、保持機構16内において被施療者50の指部が挿入される位置にて上下の対向箇所に配されるものであり、掌上エアバッグ30と掌下エアバッグ31は、保持機構16内に挿入される被施療者50の指部が位置する部分にて上下の対向箇所に配されるものである。
【0025】
上記構成から成る本例の椅子式マッサージ機においては、操作部15のボタン操作によって制御部14にストレッチ開始を指令すると、まず右側又は左側の施療機構7に配してある指上下エアバッグ20,21及び掌上下エアバッグ30,31の都合四つを同時に膨張させることで、被施療者50が肘掛部3上に置いた片側の腕の指部を指上下エアバッグ20,21で上下方向に挟持させるとともに、掌部を掌上下エアバッグ30,31で上下方向に挟持させる。
【0026】
次に上記制御部14は、各エアバッグ20,21,30,31の膨張開始時点から一定の待ち時間が経過した時点から、指部及び掌部を挟持固定させた状態を保ちながら起倒動作部5により背凭れ部2を後方へと一定速度で倒し始める。背凭れ部2が所定のリクライニング角度にまで倒れると、この位置で、制御部14は保持機構16により片腕を挟持固定させた状態を保ちながら背凭れ部2を数秒間停止させる。このとき、背凭れ部2と共に上体を後方に倒すこととなる被施療者50には、指部及び掌部から肩にかけて自重により引っ張られるストレッチが施されるものである。
【0027】
なお上記保持機構16にあっては、各エアバッグ20,21,30,31の全てを同時に膨張させなくてもよい。少なくとも一つ膨張させることで腕先部分を上下方向に挟持固定させることが可能であり、膨張させるものを適宜選択することで異なった施療感を得ることができる。更に、腕先部分の挟持固定を保持しながらも各エアバッグ20,21,30,31のうち膨張するものの組み合わせを経時的に変更していけば、腕全体にストレッチを施すと同時に腕先部分に適宜のマッサージを施すことが可能である。
【0028】
図6(a)には指下エアバッグ21のみを配してこれを膨張させた変形例、図6(b)には掌下エアバッグ31のみを配してこれを膨張させた変形例、図6(c)には掌上下エアバッグ30,31のみを配してこれを膨張させた変形例を示しているが、図6(a)の場合には被施療者50は指部のみを固定してストレッチを施すことができ、図6(b)、(c)の場合には掌部のみを固定してストレッチを施すことができる。
【0029】
このように、一例の椅子式マッサージ機にあっては指部から掌部に至る腕先部分の全体を一対の上下エアバッグ8,9で挟持固定するようにし、他例の椅子式マッサージ機にあってはこの挟持部分を更に指部と掌部に分割して、指部を一対の指上下エアバッグ20,21で挟持固定するとともに掌部を一対の掌上下エアバッグ30,31で挟持固定するようにしているが、指部や掌部を一つ又は複数のエアバッグで上下に挟持固定できるものであれば他の構成であっても構わない。更に言えば保持機構16はエア式に限定されるわけではなく、モータを用いた他の機械式のものを用いても構わない。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施形態における一例の椅子式マッサージ機を示す斜視図である。
【図2】同上の椅子式マッサージ機のストレッチ動作の説明図であり、(a)はストレッチ前の状態、(b)はストレッチ中の状態を示している。
【図3】同上の椅子式マッサージ機の主要部を示す一部断面図である。
【図4】同上の椅子式マッサージ機の制御構成図である。
【図5】本発明の実施形態における他例の椅子式マッサージ機の保持機構の説明図である。
【図6】同上の保持機構の変形例を示す説明図であり、(a)は第一変形例、(b)は第二変形例、(c)は第三変形例を示している。
【符号の説明】
【0031】
1 座部
2 背凭れ部
5 起倒動作部
8 上エアバッグ
9 下エアバッグ
14 制御部
16 保持機構
20 指上エアバッグ
21 指下エアバッグ
30 掌上エアバッグ
31 掌下エアバッグ
50 被施療者

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被施療者が着座する座部と、被施療者の背中を凭れ掛ける背凭れ部と、座部に対して背凭れ部を起倒動作させる起倒動作部とを具備する椅子式マッサージ機において、被施療者の腕先部分を座部側に固定させる保持機構と、上記保持機構で被施療者の腕先部分を座部側に固定させた状態で背凭れ部を倒してストレッチ動作を行わせるよう上記保持機構及び起倒動作部を駆動制御する制御部とを具備することを特徴とする椅子式マッサージ機。
【請求項2】
上記保持機構が、被施療者の掌部を座部側に固定させるものであることを特徴とする請求項1に記載の椅子式マッサージ機。
【請求項3】
上記保持機構が、被施療者の指部を座部側に固定させるものであることを特徴とする請求項1に記載の椅子式マッサージ機。
【請求項4】
上記保持機構が、上方と下方のいずれか一方または両方に配したエアバッグから成り、上記エアバッグの膨張により上下方向に挟持固定するものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の椅子式マッサージ機。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−313129(P2007−313129A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−147391(P2006−147391)
【出願日】平成18年5月26日(2006.5.26)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】