説明

椅子式マッサージ機

【課題】1基の駆動源によって、背凭れ部、座部及び脚受け部のリクライニング及びフルフラットが可能な椅子式マッサージ機を提供する。
【解決手段】リクライニング機構40は、1基の駆動源42を具え、該駆動源は、第1リンク機構50を介して背凭れ部20及び座部30に連繋され、第2リンク機構44を介して、第1リンク機構50と脚受け部38が連繋され、駆動源を動作させることで、背凭れ部をリセット状態から中間状態を経て全倒状態まで揺動させるときに、背凭れ部がリセット状態から中間状態まで揺動する際には、座部前端が上昇するよう傾倒させ、背凭れ部が中間状態から全倒状態まで移動する際には、上昇した座部前端を下げるよう傾倒させる。背凭れ部20の全倒姿勢でフルフラットとなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、背凭れ部、座部及び脚受け部をリクライニング可能な椅子式マッサージ機に関するものであり、具体的には、1基の駆動源によって、被施療者のリラックスした姿勢を維持したまま、背凭れ部、座部及び脚受け部のリクライニングを行なうことができ且つ、背凭れ部、座部及び脚受け部が最もフラットに並んだフルフラットの状態から、脚受け部を下向きに畳むことのできる椅子式マッサージ機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
マッサージ手段を具えた背凭れ部及び座部をリクライニング可能とした椅子式マッサージ機が知られている。例えば、特許文献1では、背凭れ部及び座部に夫々独立した駆動源を具えたリクライニング機構を有し、背凭れ部及び座部を夫々独立してリクライニング可能としている。
背凭れ部及び座部に夫々独立した駆動源を配備すると、リクライニング機構が大型化、複雑化し、これに伴って、椅子式マッサージ機が大型化し、又、機構や制御が複雑化してコスト高を招く。
又、複数の駆動源を具えたリクライニング機構の場合、各駆動源の動作のバラツキや、駆動源に加わる負荷の違い等によって、背凭れ部と座部を同期して目標角度まで到達させることが難しく、一方が目標角度まで到達した後に、遅れて他方が目標角度に到達するような不自然な動きとなることがある。
【0003】
そこで出願人は、1つの駆動源と、背凭れ部と座部を連繋するリンク機構によって、背凭れ部と座部を連動して動作させることにより、上記問題を解決できる改良椅子式マッサージ機を提案した(特願2007−187887号)。
【0004】
【特許文献1】特開2003−289975号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記改良椅子式マッサージ機は、被施療者の脚部を受ける脚受け部が座部の前端に設けられているが、脚受け部を背凭れ部や座部と連動して角度を変えることはできなかった。
従って、通常は座部に対して略直角に下向き状態の脚受け部は、背持たれ部と座部が水平に近い状態においても、脚受け部は下向きとなり、仰向け姿勢の被施療者の脚を水平に支えることができず、被施療者は、全身を真直ぐに伸ばしてマッサージを受けることができない。
脚受け部を座部と同じ面内に設けた場合、マッサージ機への乗り込みに支障が生じ、又、マッサージの保管や梱包の際に、脚受け部の分だけ嵩張る。
座部に対して傾動可能に脚受け部を設けて該脚受け部に別個の駆動源を連繋すれば、背凭れ部、座部及び脚受け部の三者が略水平に揃った状態(以下、「フルフラット状態」)や、フルフラット状態から脚受け部を下向きに畳むことを動力駆動で行なうことができる。しかし、この場合、駆動源が1つ増えること及び制御の複雑化から、コスト高を招く。
【0006】
本発明の目的は、1基の駆動源によって、被施療者のリラックスした姿勢を維持したまま、背凭れ部と座部のリクライニングを行ない、更に脚受け部を、座部と背凭れ部の傾きに連動して、自動的に望ましい傾きに変位させることができる椅子式マッサージ機を提供することである。
【0007】
更に、本発明の目的は、少なくとも被施療者が腰掛ける座部と、被施療者の背中の当たる背凭れ部と、背凭れ部及び座部及びを傾動させるリクライニング機構を具えた椅子式マッサージ機において、座部の前部が最も高位置に達することを検出して、必要に応じて、その姿勢を保持可能とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の椅子式マッサージ機は、被施療者が腰掛ける座部と、被施療者の背中の当たる背凭れ部と、前記座部の前端部に座部の傾動面内で傾動可能に枢支され被施療者の脚部を受ける脚受け部と、背凭れ部、座部及び脚受け部を傾動させるリクライニング機構を具えた椅子式マッサージ機であって、
リクライニング機構は、1つの駆動源と、背凭れ部と座部を連繋する第1リンク機構と、該第1リンク機構と脚受け部を連繋する第2リンク機構を含み、
第1リンク機構は、駆動源を動作させることで、背凭れ部を起立状態から中間状態を経て全倒状態まで傾動させるときに、背凭れ部が起立状態から中間状態まで傾動する際には、座部をその前端が上昇するよう傾動させ、背凭れ部が中間状態から全倒状態まで傾動する際には、上昇した座部前端が下がるよう傾動させる機能を有し、
第2リンク機構は、前記座部前端が上昇し始めてから上昇端を経て下降するまでの間は、脚受け部の自由端を脚受け部の枢支側端に対して相対的に上昇させて、背凭れ部、座部に対して脚受け部をフラットな状態に近づける機能を有し、上記脚受け部のフラットな状態から、第2リンク機構を折り畳んで、該脚受け台を下向きに回転させて畳むことが可能である。
【0009】
請求項2の椅子式マッサージ機は、被施療者が腰掛ける座部と、被施療者の背中の当たる背凭れ部と、前記座部の前端部に座部の傾動面内で傾動可能に枢支され被施療者の脚部を受ける脚受け部と、背凭れ部、座部及び脚受け部を傾動させるリクライニング機構を具えた椅子式マッサージ機であって、
リクライニング機構は、1基の駆動源と、背凭れ部と座部を連繋する第1リンク機構と、該第1リンク機構と脚受け部を連繋する第2リンク機構を含み、
第1リンク機構は、ローラを具えた関節部を有し、該ローラはガイドレール上を移動可能であり、該ガイドレールは、背凭れ部及び座部の傾動に連繋して、背凭れ部を起立状態から中間状態を経て全倒状態まで傾動させるときに、背凭れ部が起立状態から中間状態まで傾動する際には、座部前端が上昇するよう傾動させ、背凭れ部が中間状態から全倒状態まで傾動する際には、上昇した座部前端を下げるように傾動させる機能を有し、
第2リンク機構は、前記座部前端が上昇し始めてから上昇端を経て下降するまでの間は、脚受け部の自由端を脚受け部の枢支側端に対して相対的に上昇させて、背凭れ部、座部に対して脚受け部をフラットな状態に近づける機能を有し、上記脚受け部のフラットな状態から、第2リンク機構を折り畳んで、該脚受け台を下向きに回転させて畳むことが可能である。
【0010】
請求項3の椅子式マッサージ機は、床面に載置するベース部上に、被施療者が腰掛ける座部と、被施療者の背中の当たる背凭れ部と、背凭れ部及び座部及びを傾動させるリクライニング機構を具えた椅子式マッサージ機であって、
リクライニング機構は、1つの駆動源と、背凭れ部と座部を連繋するリンク機構を有し、
リンク機構は、駆動源を動作させることで、背凭れ部を起立状態から中間状態を経て全倒状態まで傾動させるときに、背凭れ部が起立状態から中間状態まで傾動する際には、座部をその前端が上昇するよう傾動させ、背凭れ部が中間状態から全倒状態まで傾動する際には、上昇した座部前端が下がるよう傾動させる機能を有し、
ベース部上に、座部の前部が上限位置に達したことを検出する検出器がベース部上の定位置に設けられている。
【0011】
請求項4の椅子式マッサージ機は、床面に載置するベース部上に、被施療者が腰掛ける座部と、被施療者の背中の当たる背凭れ部と、背凭れ部及び座部を傾動させるリクライニング機構を具えた椅子式マッサージ機であって、
リクライニング機構は、1つの駆動源と、背凭れ部と座部を連繋するリンク機構を有し、
該リンク機構はローラを具えた関節部を有しており、該ローラは、ガイドレールに沿って移動可能であり、
該ガイドレールは、背凭れ部及び座部の傾動に連繋して、背凭れ部を起立状態から中間状態を経て全倒状態まで傾動させるときに、背凭れ部が起立状態から中間状態まで傾動する際には、座部前端が上昇するよう傾動させ、背凭れ部が中間状態から全倒状態まで傾動する際には、上昇した座部前端を下げるように傾動させる機能を有し、
ベース部上に、座部の前部が上限位置に達したことを検出する検出器がベース部上の定位置に設けられている。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の椅子式マッサージ機は、背凭れ部(20)が起立しているリセット状態では、脚受け部(38)が下向きに畳まれており、被施療者がマッサージ機に乗り込むのに、脚受け部(38)が邪魔にならない。
背凭れ部(20)の後傾と連動して、座部(30)の前端が持ち上がって、背凭れ部(20)と座部(30)の成す角度は、リセット状態における両者の角度と大きく変わることはない。このため、被施療者がリラックスした姿勢を維持したまま、背凭れ部及び座部のリクライニングを行なうことができる。
背凭れ部(20)、座部(30)及び脚受け部(38)の傾動を、1基の駆動源(42)でそれらを連動させて行なうから、制御も簡素でき、マッサージ機の製造コストを抑えることができる。
【0013】
背凭れ部(20)が全倒状態になったとき、座部(30)はリセット位置に復帰し、脚受け部(38)は座部(30)に対してフラットな状態に近づく様に変位して、背凭れ部(20)、座部(30)及び脚受け部(38)の三者でフルフラット状態となり、被施療者は、身体を真直ぐに伸ばした最もリラックスした姿勢でマッサージを受けることができ、マッサージ効果を高めることができる。
【0014】
マッサージ機のフルフラットの状態から、第2リンク機構を折り畳んで、脚受け部(38)を下向きに畳んで、嵩張りを小さくできるから、マッサージ機の梱包、運搬の際に有利である。
【0015】
請求項2の椅子式マッサージ機は、請求項1の椅子式マッサージ機と同様の効果を奏する。
【0016】
請求項3、4の椅子式マッサージ機は、背凭れ部(20)と座部(30)の成す角度が、リセット状態のまま、背凭れ部(20)が略中間位置まで傾き、座部(30)の前端が最も高くなった状態を検出できるから、この状態でマッサージ機の傾きを止めて、マッサージを受けることができる様に制御できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
〈実施例1〉
以下、本発明の椅子式マッサージ機(10)について、図面を参照しながら説明を行なう。
まず、椅子式マッサージ機(10)の全体構成の概略について説明する。図1に示すように、椅子式マッサージ機(10)は、床面に載置されるベース部(12)上の支柱(13)に、被施療者の腰掛ける座部(30)と、背中の当たる背凭れ部(20)を軸支(90)し、座部(30)の前端に、被施療者の脚部を受ける脚受け部(38)を枢支して構成され、後述するリクライニング機構(40)によって夫々連動して、床面に垂直な同一面内で傾動可能となっている。
【0018】
背凭れ部(20)は、背凭れ部フレーム(22)の外周にクッション(23)等を装着して構成され、被施療者の肩、背中、腰等をマッサージするマッサージ手段(24)が昇降ユニット(25)によって昇降可能に配備される。
座部(30)は、座部フレーム(32)の外周にクッション(33)等を装着して構成され、必要に応じて、内部にエアバッグ等のマッサージ手段(図示せず)が配備される。 脚部(38)は、軸支部(96)を中心に座部(30)に対して相対的に傾動可能である。
脚部(38)に足用マッサージユニット(図示せず)を搭載して、ふくらはぎ等のマッサージを可能とすることができる。
【0019】
リクライニング機構(40)は、第1リンク機構(50)、第2リンク機構(44)及び駆動源(42)を具える。本発明では、リクライニング機構(40)は、1基の駆動源(42)によって、両リンク機構(50)(44)を介して背凭れ部(20)、座部(30)及び脚受け部(38)の三者を連動して傾動させることを特徴としており、更に、背凭れ部(20)と座部(30)は、被施療者がリラックスした姿勢を維持しつつ、リクライニング可能となしている。
【0020】
ここで、被施療者がリラックスした姿勢とは、被施療者が座部(30)に腰掛けて、背凭れ部(20)に背中を当てた状態で、背凭れ部(20)を後傾させる際に、被施療者の身体に負担が掛からない、即ち、局部的に力が掛かったり無理な姿勢とならない状態を意味する。
背凭れ部(20)を後傾させる際に、座部(30)を傾動させることなく、単に背凭れ部(20)のみを傾動させると、背凭れ部(20)の後傾の際に、被施療者の腹筋や腰に無理な力が掛かり、マッサージ効果を減退させることがある。
【0021】
そこで、本発明では、被施療者がリラックスした状態を維持したまま、リクライニングを行なうことができるように、背凭れ部(20)と座部(30)は、背凭れ部(20)の後傾角度に応じて、以下の「リラックス角度」を保持するようにリクライニングする。
【0022】
まず、図1に示す如く、背凭れ部(20)のリセット状態(起立状態)では、座部(30)は、床面に対して座部(30)の前端が後端に比べて少し上向きになるように傾いている。又、脚受け部(38)は下向きに倒れている。これにより、被施療者は、座部(30)に深く腰掛けることができ、リラックスすることができる。このときの座部(30)と背凭れ部(20)の成す角度は、実施例では110°である。
【0023】
上記リセット状態から、背凭れ部(20)を後傾させるにつれて、座部(30)は、座部(30)の前端が上昇するように傾動する。これにより、被施療者は、特に腹筋に力を入れることなく、背凭れ部(20)の後傾に追従することができ、リラックス状態を維持できる。図2に示す如く、背凭れ部(20)の後傾角度が最大後傾角度の略中間に達したとき(以下「中間状態」)、座部(30)の前端が最も上昇して座部(30)が最も傾いた状態となる。このとき、凭れ部(20)と座部(30)の成す角度は約110°にほぼ維持されたまま、座部(30)は水平面に対し約30°に傾く。
上記の間、脚受け部(38)は座部(30)に対してフラットに近づく様に変位し、被施療者の脚部を徐々に持ち上げる。
【0024】
中間状態から背凭れ部(20)が更に後傾したときには、座部(30)は前端が下がるように傾動して、図3に示す如く、背凭れ部(20)が最大後傾角度に達したとき(以下「全倒状態」)には、座部(30)は、リセット状態と同様の角度に復帰することで、背凭れ部(20)と座部(30)がほぼフラットな状態になる。中間状態を過ぎた後では、被施療者の身体は、背中が背凭れ部(20)に十分密着しており、重心が背凭れ部(20)側に移動しているから、座部(30)の角度を床面とほぼ平行に近い位置まで戻しても、被施療者の身体に無理な力は作用せず、リラックスした状態を維持したまま、座部(30)と背凭れ部(20)をフラットな状態に移行できる。
このように、一連のリラックスした状態の角度を「リラックス角度」という。
又、上記の間、脚受け部(38)は更に座部(30)に対してフラットな状態に近づき、背凭れ部(20)の全倒状態で、背凭れ部(20)、座部(30)及び脚受け部(38)の三者が最もフラットな状態(フルフラット状態)となり、被施療者は、身体を完全に横に伸ばした状態となることができる。
【0025】
上記のように、背凭れ部(20)の傾倒角度に応じて、座部(30)及び脚受け部(38)の傾倒角度を調節することで、被施療者の身体に無理な力が作用せず、リラックスした姿勢を維持できるから、引き続いて行なわれるマッサージの効果を可及的に高めることができる。なお、背凭れ部(20)と座部(30)がフラットな状態から、リセット状態に戻る際には、上記とは逆の動作が行なわれ、同様に、被施療者はリラックスした姿勢を維持したまま、背凭れ部(20)、座部(30)及び脚受け部(38)を元の状態に戻すことができる。
【0026】
リクライニング機構(40)に用いられる駆動源(42)として、実施例では駆動源の全長を伸縮させて出力を得るアクチュエータを採用した。アクチュエータは、ベース部(12)の略中央から前方上向きに立設された固定フレーム(51)の上端部に一端が連繋されており、他端は、背凭れ部(20)の下端に連繋されている。
上記椅子式マッサージ機(10)において、アクチュエータを縮めると、背凭れ部(20)は、軸支部(90)を支点として下端が前方に引っ張られ、背凭れ部(20)自体は図2及び図3に示すように後傾する。
【0027】
第1リンク機構(50)は、ベース部(12)の略中央に枢支(91)された第1リンク片(53)、該第1リンク片(53)の自由端に近い位置と背凭れ部(20)の下端に夫々枢支(92)(93)されこれらを連繋する第2リンク片(55)、第1リンク片(53)の自由端と座部(30)の下面に突設されたブラケット(35)に夫々枢支(94)(95)され、これらを連繋する第3リンク片(57)から構成されている。
【0028】
本実施例では、背凭れ部(20)と座部(30)のリラックス角度を維持して傾動し、且つ、図1のリセット状態と、図3の背凭れ部(20)の全倒状態では、座部(30)の高さ及び傾きがほぼ同じになるようにしている。そのため、第1リンク片(53)と第3リンク片(57)が、図1と図3では左右対称となるような動きをする。その動きをさせるために、背凭れ部(20)に連動した第2リンク片(55)のストロークが定められる。駆動源(42)であるアクチュエータのストロークが十分に長い場合は、第2リンク片(55)の第1リンク片(53)との枢支軸(92)の位置を、第1リンク片(53)と第3リンク片(57)の連結軸(94)側へ近づけることができ、極端な場合、軸(92)(94)を共通化することができる。
又、第3リンク片(57)と座部(30)との連結軸(95)の位置を変えることで、座部(30)の前端の最高高さを調節できる(軸(90)へ近づくほど、高くすることが可能となる)。
【0029】
第2リンク機構(44)は、前記第1リンク機構(50)の第3リンク片(57)上に枢支したL型リンク(46)と、該L型リンク(46)と脚受け部(38)を枢軸(41)(43)を介して枢支連結するアームリンク(48)とによって構成される。
【0030】
図1の詳細図Aに示す如く、L型リンク(46)は略90°を成す第1、第2の2つの腕片(46a)(46b)からなり、第1腕片(46a)の先端が第3リンク片(57)の前記ブラケット(35)への枢支側寄りに枢支(99)され、第2腕片(46b)の先端がアームリンク(48)に枢支(41)されている。
L型リンク(46)の第2腕片(46b)は、第3リンク片(57)に係脱する第1、第2のストッパ(45)(47)を有し、該ストッパ(45)(47)によって、第3リンク片(57)上での傾動が規制されて、後記の如く動作する。
【0031】
上記リクライニング機構(40)において、駆動源(42)を作動させ、背凭れ部(20)が図1のリセット状態から後傾を開始すると、第1リンク機構(50)は、第2リンク片(55)が前方に押し出され、第1リンク片(53)は、ベース部(12)との枢支点(91)を中心に前方に傾き、第3リンク片(57)を前方に押し出す。その結果、座部(30)は、軸支部(90)を中心に前端が上昇するよう揺動する。
背凭れ部(20)が図2に示すように、リセット状態から中間状態(図1のリセット状態と図3の全倒状態との略中間の状態)まで後傾すると、第1リンク機構(50)は、第1リンク片(53)と第3リンク片(57)が直線状態となり、座部(30)前端の上昇が最大となる。
従って、駆動源(42)を更に作動させると、図2の中間状態から背凭れ部(20)が後傾し、第2リンク片(55)が前方に押し出され、第1リンク片(53)は、ベース部(12)との枢支点(91)を中心に更に前方に傾く。これにより、第3リンク片(57)は後傾し、上昇していた座部(30)の前端を下げる方向に引っ張り、図3に示すように、背凭れ部(20)と座部(30)は、フラットな状態まで移行する。
【0032】
上記第1リンク機構(50)と脚受け部(38)を連繋する第2リンク機構(44)のL型リンク(46)は、図1に示す、背凭れ部(20)のリセット状態から、図2の中間状態を経て、図3の全倒状態に至る間は、第1ストッパ(45)が第3リンク片(57)の下面に当たって時計方向の回転が阻止され、第1腕片(46a)は第3リンク片(57)と略平行状態で、第3リンク片(57)と一体に変位する。これによって、アームリンク(48)を介して脚受け部(38)を押し上げて、脚受け部(38)を座部(30)に対して相対的にフラットに近づけることができる。従って、背凭れ部(20)の全倒によって、フルフラット状態となる。
【0033】
図1の背凭れ部(20)のリセット状態では、詳細図Bに示す如く、第2腕片(46b)とアームリンク(48)の成す外側の角度α1は、180°を大きく越えているが、背凭れ部(20)の後傾と共に該角度α1は、図2の中間位置を経て徐々に小さくなり(詳細図C参照)、図3のフルフラット状態では詳細図Dに示す如く、該角度α1は180°よりも小さくなる。
図2や図3の状態で、第2リンク機構(44)に脚受け部(38)及び脚受け部(38)上の被施療者の脚部の荷重が作用するが、前記の如く、L型リンク(46)の時計方向の回転が阻止されているから、第2リンク機構(44)は、第3リンク片(57)と脚受け部(38)の間を突っ張って、脚受け部(38)の持ち上げられた状態を維持する。
【0034】
図3のフルフラット状態から、駆動源(42)であるアクチュエータの全長を伸ばす様に駆動すると、上記とは逆の動作が行なわれ、同様に、被施療者はリラックスした姿勢を維持したまま、図1のリセット状態に戻すことができる。
【0035】
図3のフルフラットの状態から、矢印Xで示す様に第2リンク機構(44)に座部(30)側へ押す外力を加えると、L型リンク(46)が枢支部(99)を中心に反時計方向に回転して、L型リンク(46)の第2腕片(46b)に設けた第2ストッパ(47)が前記第3リンク片(57)の先端に当たって止まる。この間のL型リンク(46)の反時計方向の回転によって、アームリンク(48)を介して脚受け部(38)が引っ張られ、脚受け部(38)だけを図4の如く、リセット状態に畳むことができる。
【0036】
本発明の椅子式マッサージ機は、上記のように駆動源(42)を作動させて、背凭れ部(20)を後傾させることにより、背凭れ部(20)と座部(30)のリラックス角度が維持された状態で、座部(30)も傾動するため、被施療者の身体に無理な力が作用することはない。
又、背凭れ部(20)がリセット状態のとき、脚受け部(38)は、下向きに畳まれているから、座部(30)の乗り込みに脚受け部(38)が邪魔になることはない。
背凭れ部(20)がリセット状態から全倒状態となる間に、脚受け部(38)も座部(30)に対してフラット状態に近づく様に変位して、背凭れ部(20)、座部(30)、脚受け部(38)の三者がフルフラット状態となるから、被施療者は、マッサージ機上で身体を真直ぐに伸ばした姿勢で、マッサージ手段により種々のマッサージを受けることができ、高いマッサージ効果を得ることができる。
【0037】
以上の説明では、駆動源(42)(アクチュエータ)は、背凭れ部(20)を傾動させているが、アクチュエータを第1リンク機構(50)の第1リンク片(53)とベース部(12)の間に設けて、アクチュエータで該第1リンク片(53)を軸(91)を中心に回動させてもよい。
要するに、駆動源(42)で直接に、背凭れ部(20)又は座部(30)を傾動しても、或いは、第1リンク機構(50)に駆動源(42)を連繋して間接的に背凭れ部(20)及び座部(30)を傾動させてもよい。
【0038】
図5は、背凭れ部(20)の後傾角度が中間状態で、座部(30)の前端が最も上昇して座部(30)が最も傾いた状態(以下、「座部の最上位置」)を示している。この状態を維持してマッサージを受けるには、座部(30)の最上位置を検出して駆動源(42)を停止する様に制御すればよい。
図5の状態に達したことは、図5のイ乃至チの何れか1つの角度を検出することによって、判別できる。
イはベース部(12)の下面と座部(30)の成す角度、ロは座部(30)の最上位置のときの背凭れ部(20)の成す角度、ハは座部(30)の最上位置のときの座部(30)と背凭れ部(20)の成す角度、ニは座部(30)の最上位置のときの第1リンク片(53)と第2リンク片(55)の成す角度、ホは座部(30)の最上位置のときの第1リンク片(53)と第3リンク片(57)の成す角度、ヘは座部(30)の最上位置のときのベース部(12)と第1リンク片(53)の成す角度、トは座部(30)の最上位置のときの第2リンク片(55)と背凭れ部(20)の成す角度、チは第3リンク片(57)と座部(30)の成す角度である。
【0039】
上記イの角度を測るには、図6に示す如く、ベース部(12)上に座部(30)が対応する角度になったことを検出するリミットスイッチ等の検出器(11)を配備すればよい。
ロからチの角度を測るには、背凭れ部(20)、座部(30)、或いは第1リンク機機構(50)のリンク片(53)(55)(57)が当該角度に対応する角度になることを検出するリミットスイッチ等の検出器(11)を配備すればよい。図7は、ニの角度を測る例を示しており、座部(30)が最上位のときの第2リンク片(11)の角度を測る検出器(11)の取り付け位置を示す。
又、図5、図8に示す如く、駆動源(42)であるアクチュエータの伸び長さリが、座部(30)の最上位置に対応する長さに達したことをリミットスイッチ等の検出器(11)で検出して、座部(30)の最上位置を検出することができる。
【0040】
〈実施例2〉
実施例1の第1リンク機構(50)の第1リンク片(53)に代えて、図9乃至図11に示す如く、ガイドレール(60)を具備することで、背凭れ部(20)と座部(30)について、上記と同様の動作を実現したものである。なお、説明を解り易くするために、駆動源(42)は図から省略し、さらに第2リンク機構(44)はなく、脚脚受け部(38)が背凭れ部(20)に連動して傾動しないものとした。又、クッション等も図示を省略している。
【0041】
実施例1における第2リンク片(55)及び第3リンク片(57)は、実施例2では、互いに枢軸(74)で連結されて屈曲可能な関節部(70)を構成し、該枢軸(74)にローラ(72)を具えている。ローラ(72)は、ベース部(12)に立設されたガイドレール(60)上を移動可能である。ローラ(72)及びガイドレール(60)は、ローラ(72)が脱線することなく移動できるように、一方を凹形状、即ち溝を刻設し、他方を該凹形状に嵌まる凸形状とすることが望ましい。
【0042】
第2リンク片(55)と第3リンク片(57)の長さは、ガイドレール(60)の位置や座部(30)の前端の高さなどによって適宜定めることができる。
関節部(70)に配備されたローラ(72)は、樹脂製とすることができる。
【0043】
ガイドレール(60)は、前記したリラックス角度を維持した状態で背凭れ部(20)と座部(30)とを傾動できるように、ローラ(72)と当接するガイド面(62)が屈曲形状を有している。
【0044】
図9の詳細図E等に示すように、ガイド面(62)は、リセット状態から中間状態まで移行する間は、座部(30)の前端が上昇する方向に傾動可能となるように、前方に向けて上向きに傾斜している。これにより、背凭れ部(20)をリセット状態から後傾させると、ローラ(72)が第2リンク片(55)に押されて、ガイド面(62)に沿って前方上向きに移動し、第3リンク片(57)が座部(30)の前方を押し上げる。
ガイド面(62)の屈曲形状を座部(30)と背凭れ部(20)の揺動中心である軸(90)を中心とする凹円弧形状(64)とすることで、背凭れ部(20)と座部(30)のリラックス角度を106°に維持したまま、座部(30)が水平面に対し約30°に傾くまで背凭れ部(20)と座部(30)を傾動させることができる。これは、背凭れ部(20)を好みの角度まで倒して読書する場合に適している。
【0045】
図10に示すように、背凭れ部(20)及び座部(30)が中間状態近傍まで達した位置で、ガイド面(62)は前記凹円弧形状(64)から凸円弧形状(65)に移行し、更に前方は、下向きに傾斜形状(66)としている。これにより、中間状態から更に背凭れ部(20)を後傾させることによって、前端が上昇していた座部(30)は、第3リンク片(57)が後ろ向きに傾くことで、下方に引っ張られ、図11に示すように、背凭れ部(20)と座部(30)をフラットな状態となるまで移行させることができる。
【0046】
上記の如く、ガイドレール(60)を用いることで、背凭れ部(20)と座部(30)とのリラックス角度を、被施療者がリラックスした姿勢を維持できるように調整することができる。なお、ガイド面(62)の形状は、本実施例に限定されるものではなく、所望するリラックス角度に応じて適宜変更することができる。
【0047】
上記第2実施例において、第3リンク片(57)に実施例1の第2リンク機構(44)を介して脚受け部(38)を連繋すれば、脚受け部(38)を第1実施例と同様にして背凭れ部(20)や座部(30)と連動して傾動させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、被施療者がリラックスした姿勢を維持したまま、1基の駆動源によって、背凭れ部と座部のリクライニングを行なうことができる椅子式マッサージ機として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】第1実施例の椅子式マッサージ機のリセット状態を示している。
【図2】同上の椅子式マッサージ機の中間状態を示している。
【図3】同上の椅子式マッサージ機のフルフラット状態を示している。
【図4】図3において、脚受け部を畳んだ状態を示している。
【図5】座部が最も傾斜した状態計測し得る箇所を示している。
【図6】座部の角度を計測する検出器の配置位置の一例を示している。
【図7】検出器の配置位置の他の例を示している。
【図8】検出器の配置位置の別の例を示している。
【図9】第2実施例の椅子式マッサージ機のリセット状態を示している。
【図10】同上の椅子式マッサージ機の中間状態を示している。
【図11】同上の椅子式マッサージ機のフルフラット状態を示している。
【符号の説明】
【0050】
(10) 椅子式マッサージ機
(20) 背凭れ部
(30) 座部
(38) 脚受け部
(40) リクライニング機構
(42) 駆動源
(44) 第2リンク機構
(46) L型リンク
(48) アームリンク
(50) 第1リンク機構
(53) 第1リンク片
(55) 第2リンク片
(57) 第3リンク片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被施療者が腰掛ける座部と、被施療者の背中の当たる背凭れ部と、前記座部の前端部に座部の傾動面内で傾動可能に枢支され被施療者の脚部を受ける脚受け部と、背凭れ部、座部及び脚受け部を傾動させるリクライニング機構を具えた椅子式マッサージ機であって、
リクライニング機構は、1つの駆動源と、背凭れ部と座部を連繋する第1リンク機構と、該第1リンク機構と脚受け部を連繋する第2リンク機構を含み、
第1リンク機構は、駆動源を動作させることで、背凭れ部を起立状態から中間状態を経て全倒状態まで傾動させるときに、背凭れ部が起立状態から中間状態まで傾動する際には、座部をその前端が上昇するよう傾動させ、背凭れ部が中間状態から全倒状態まで傾動する際には、上昇した座部前端が下がるよう傾動させる機能を有し、
第2リンク機構は、前記座部前端が上昇し始めてから上昇端を経て下降するまでの間は、脚受け部の自由端を脚受け部の枢支側端に対して相対的に上昇させて、背凭れ部、座部に対して脚受け部をフラットな状態に近づける機能を有し、上記脚受け部のフラットな状態から、第2リンク機構を折り畳んで、該脚受け台を下向きに回転させて畳むことが可能であることを特徴とする、椅子式マッサージ機。
【請求項2】
被施療者が腰掛ける座部と、被施療者の背中の当たる背凭れ部と、前記座部の前端部に座部の傾動面内で傾動可能に枢支され被施療者の脚部を受ける脚受け部と、背凭れ部、座部及び脚受け部を傾動させるリクライニング機構を具えた椅子式マッサージ機であって、
リクライニング機構は、1つの駆動源と、背凭れ部と座部を連繋する第1リンク機構と、該第1リンク機構と脚受け部を連繋する第2リンク機構を含み、
第1リンク機構は、ローラを具えた関節部を有し、該ローラはガイドレール上を移動可能であり、該ガイドレールは、背凭れ部及び座部の傾動に連繋して、背凭れ部を起立状態から中間状態を経て全倒状態まで傾動させるときに、背凭れ部が起立状態から中間状態まで傾動する際には、座部前端が上昇するよう傾動させ、背凭れ部が中間状態から全倒状態まで傾動する際には、上昇した座部前端を下げるように傾動させる機能を有し、
第2リンク機構は、前記座部前端が上昇し始めてから上昇端を経て下降するまでの間は、脚受け部の自由端を脚受け部の枢支側端に対して相対的に上昇させて、背凭れ部、座部に対して脚受け部をフラットな状態に近づける機能を有し、上記脚受け部のフラットな状態から、第2リンク機構を折り畳んで、該脚受け台を下向きに回転させて畳むことが可能であることを特徴とする、椅子式マッサージ機。
【請求項3】
床面に載置するベース部上に、被施療者が腰掛ける座部と、被施療者の背中の当たる背凭れ部と、背凭れ部及び座部を傾動させるリクライニング機構を具えた椅子式マッサージ機であって、
リクライニング機構は、1つの駆動源と、背凭れ部と座部を連繋するリンク機構を有し、
リンク機構は、駆動源を動作させることで、背凭れ部を起立状態から中間状態を経て全倒状態まで傾動させるときに、背凭れ部が起立状態から中間状態まで傾動する際には、座部をその前端が上昇するよう傾動させ、背凭れ部が中間状態から全倒状態まで傾動する際には、上昇した座部前端が下がるよう傾動させる機能を有し、
ベース部上に、座部の前部が上限位置に達したことを検出する検出器がベース部上の定位置に設けられている、椅子式マッサージ機。
【請求項4】
床面に載置するベース部上に、被施療者が腰掛ける座部と、被施療者の背中の当たる背凭れ部と、背凭れ部及び座部を傾動させるリクライニング機構を具えた椅子式マッサージ機であって、
リクライニング機構は、1つの駆動源と、背凭れ部と座部を連繋するリンク機構を有し、
該リンク機構はローラを具えた関節部を有しており、該ローラは、ガイドレールに沿って移動可能であり、
該ガイドレールは、背凭れ部及び座部の傾動に連繋して、背凭れ部を起立状態から中間状態を経て全倒状態まで傾動させるときに、背凭れ部が起立状態から中間状態まで傾動する際には、座部前端が上昇するよう傾動させ、背凭れ部が中間状態から全倒状態まで傾動する際には、上昇した座部前端を下げるように傾動させる機能を有し、
ベース部上に、座部の前部が上限位置に達したことを検出する検出器がベース部上の定位置に設けられている、椅子式マッサージ機。
【請求項5】
検出器は、座部の前部が上限位置に達したときの背凭れ部の傾きを検出するものである、請求項3又は4に記載の椅子式マッサージ機。
【請求項6】
検出器は、座部の前部が上限位置に達したときの座部の傾きを検出するものである、請求項3又は4に記載の椅子式マッサージ機。
【請求項7】
検出器は、座部の前部が上限位置に達するのに対応して、リンク機構を構成する複数のリンクの内、任意の1つのリンクの傾き又は変位量を検出するものである、請求項3又は4に記載の椅子式マッサージ機。
【請求項8】
駆動源は、全長を伸縮させることにより、リクライニング機構を動作させるものであり、検出器は、座部の前部が上限位置に達する長さに対応して駆動源が伸縮したことを検出する、請求項3又は4に記載の椅子式マッサージ機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−153744(P2009−153744A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−335818(P2007−335818)
【出願日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】