椅子用クッションおよび同クッションを備える車椅子
【課題】着座姿勢や臀部形状の個人差にかかわらず、高い圧力や極端な圧力集中の発生を抑制可能とし、座り心地が良く、かつ長時間使用しても褥瘡発生が抑制可能な椅子用クッションおよび同クッションを備える車椅子を提供する。
【解決手段】反発性が小さい材料からなり臀部を支える緩衝部2と、臀部後方において少なくとも仙骨,尾骨および座骨結節部を除く両大殿筋部を支持する臀部支持部3aと、大腿支持部3bとを有し、かつ他の材料に比較して最も反発性が大きい材料からなる支持部3と、中央部に前記緩衝部2を嵌入する穴または溝4aを有し、前記支持部3より反発性が小さいか又は同等の材料からなり、少なくともその一部は前記支持部の下方にあってかつ実質的に座部全域にわたって配設され、座圧力を座部全域に分散する座圧力分散追従部4とを備える。
【解決手段】反発性が小さい材料からなり臀部を支える緩衝部2と、臀部後方において少なくとも仙骨,尾骨および座骨結節部を除く両大殿筋部を支持する臀部支持部3aと、大腿支持部3bとを有し、かつ他の材料に比較して最も反発性が大きい材料からなる支持部3と、中央部に前記緩衝部2を嵌入する穴または溝4aを有し、前記支持部3より反発性が小さいか又は同等の材料からなり、少なくともその一部は前記支持部の下方にあってかつ実質的に座部全域にわたって配設され、座圧力を座部全域に分散する座圧力分散追従部4とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、椅子や車椅子などの座部に用いるクッション、特にクッションにおける体圧分散構造、ならびに前記クッションを備える車椅子に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な椅子や座椅子さらには車椅子などの椅子に長い時間座っていると、臀部が痛くなったり、床ずれ、褥創などが生じたりすることから、座部には、クッション材を組み込むとともに、その構造を工夫して、そこに腰掛けたときの体圧を分散するようになっている(例えば、特許文献1〜7参照)。
【0003】
例えば、車椅子を対象として、その着座環境や椅子用クッションに対して要求される機能や要求項目をまとめると、以下のとおりである。車椅子にかかわらず、座る行為に対して、生体には、力学的ストレス(圧力)が加わり、その影響が発生する。後述する図10(a)は、車椅子に人が座った状態における体圧分布を示す。体圧分布は、左右二つの座骨結節を中心とした複数の等圧線状の分布を呈する。一般的に中心部分の圧力が高い部分は、生体に大きな変形を与え、皮膚・脂肪・筋肉等に力学的損傷を与えると同時に血管を圧迫し、血流を阻害することが問題となる。特に骨が生体表面に近い部分において、圧力による生体へのストレスが大きくなる問題が発生する。
【0004】
図15は、後述する本発明の説明に関わる、肢の骨と筋の説明図で、(a)は背面図、(b),(c)は側面図であって、(b)は骨のみを示す。図15において、a,b,c,d,e,fおよびgは、それぞれ、座骨結節,尾骨,仙骨,腸骨稜,寛骨,大転子および脊柱(一点鎖線で図示)である。また、A,B,CおよびDは、それぞれ、大殿筋,大腿二頭筋,半腱様筋および半膜様筋である。なお、大腿二頭筋,半腱様筋および半膜様筋の三つの筋群は、まとめてハムストリング筋ともいわれる。また、前記寛骨は、青春期のころまでは、腸骨・座骨・恥骨の3骨が区別され、互いに軟骨結合状態にあるが、成人では軟骨部が骨化して3骨は互いに癒合し、1個の寛骨となる。さらに、左右の寛骨,仙骨および尾骨で構成された骨格部を骨盤という。図16は、骨盤の背面図を示す。骨盤は、骨格中最も男女の性差がいちじるしい部分である。
【0005】
ところで、着座における前記問題発生に関わる生体表面に近い骨は、座骨結節・尾骨・仙骨であり、当該部位において褥瘡発生も認められている。
また、着座の際の身体の姿勢により、その圧力環境が大きく変化する。図17は、姿勢が良くない座り方の代表的な例を示す図である。図17(a)は、いわゆる前座りの着座状態を示し、骨盤が後傾する状態の座り方である。前座りは、特に高齢者に多く見られる座り方であり、この場合には、座骨結節に加え、尾骨・仙骨に高圧力部分が現れ、座骨結節の部分も前方に移動する。また、図17(b)は、骨盤が傾斜する座り方であり、この場合には、左右の一方側に圧力が集中する。さらに、図17(c)は、骨盤が回旋する座り方であり、この場合にも、圧力集中が発生する。上記のような着座姿勢のくずれによる圧力環境の変化が生じた場合においても、クッションは、姿勢(骨盤)を安定させ、臀部形状の変形を極力少なくし、圧力の上昇を少なくすることが要請される。なお、着座状態における臀部の3次元曲面形状は、前記骨盤の状態とこれに伴う大殿筋やハムストリング筋等の筋肉および脂肪により決まる。
【0006】
また、特に褥瘡発生の観点から考えると、クッションとしては、下記のような点についても考慮が必要となる。褥瘡発生の要因としては、皮膚への圧迫だけではなく他の要因がある。一般に褥瘡(床ずれ)を発生する要因として考えられている点は、圧力・ズレ・湿潤・骨突出・栄養とされ、その中で外的影響は、圧力・ズレ・湿潤の3つである。なお、ズレ力には、生体との摩擦が関係し、また、湿潤には、温度・湿度の増大が関係し、湿潤状態は、皮膚の強度の低下や菌の増大等による皮膚の損傷が生ずる要因となる。さらに、骨突出は、上述の圧力・ズレ力を増大する要因となると考えられ、前記骨突出部位は、前記図15における座骨結節a,尾骨b,仙骨c・および大転子fの4つの部位である。
【0007】
前記椅子用クッションの構成としては、上記のような要請に応える観点から、種々の構成が提案されている(前記特許文献1〜7参照)。まず、特許文献1は、その公報の記載を引用すれば、「椅子の座部やマットレスで臀部などを支える部分において、クッションの反発力を位置によって急変させずに体圧を分散させることによって、長時間利用しても身体が痛くならないクッション構造、それを座部に備えた車椅子やマットレスを提供すること」を目的としたクッション構造や、同クッション構造を適用した車椅子やマットレス等を開示している。
【0008】
図25は、特許文献1に図1として開示された車椅子の側面図であり、クッションは座部11として示される。図25の車椅子は、特許文献1の記載によれば、「略水平に構成された座部11、その両側で起立する肘掛け13、および座部11の後端部から斜め上方に起立する背凭れ部12を備える走行車体10と、肘掛け13の側方に位置する大径後輪51とから大略構成されている。大径後輪51のリムなどは、図示を省略してある。」なお、図1における他の部番と全体説明は省略する(詳細は、特許文献1参照)。
【0009】
次に、特許文献1に記載されたクッション構造について、同公報に開示された図23および図24に基づいて述べる。図23は、図25に示す車椅子の座部に用いた座クッションの斜視図であり、図24は、図23に示す座クッションの左半分の分解図である。上記座クッションは、下記の構成を備える。即ち、「小さな反発力をもって臀部を支える第1のクッション材74と、このクッション材よりも大きな反発力をもって大腿部の側を支える第2のクッション材75、およびその周囲で大きな反発力を有する第3および第4のクッション材76、77は、それらの接合部分において双方のクッション材が上下に重なり合うように斜めに接合されている。第1および第2のクッション材74、75は、その上層側に第1のクッション材74よりも大きな反発力をもつ薄い上層側クッション73を有し、下層側には第1のクッション材74よりも大きな反発力をもつ下層側クッション71を有している。」
【0010】
上記座クッションの構成によれば、「反発力の異なるクッション材が、上下に重なり合うように斜めに接合されているので、この部分で、クッションの反発力の急激な変化を少なくすることができる。それ故、体圧は、接合部分でも局部に集中しないので、長時間利用しても身体が痛くならない。また、クッションの面方向において反発力を最適な状態に連続的に変化させており、かかるクッション構造を備えた座部では、臀部全体をクッション材で支えるため、上体を安定に保持できる。」旨、記載されている。
【0011】
次に、特許文献2について述べる。図20は、特許文献2に開示された座位保持クッションの要部斜視図である。同公報の記載によれば、図20のクッションは、「底面51は、クッション性のある平板であって、底面中央部に座骨穴52、53と前部中程に土手状に隆起した股間壁54を設ける。そして、後部から両サイドにかけて馬蹄形の階段状になった殿部堤55を設けたもの」であり、上記構成により、「座位姿勢において、座骨の安定を可能にし大腿骨頭の内転と骨盤の後傾を低減させ脊柱R状を抑制することで、上体や腰椎にかかる負担と内臓の圧迫が軽減できる。」旨、記載している。
【0012】
また、特許文献2には、下記記載もある。即ち、「座位保持クッションは、合成ゴム、ウレタンゴム、ポリエチレン等樹脂系の発泡体の素材を用いて全体を一体成型したものである。」旨の記載、および「階段状になった殿部堤55は、殿部周辺の形状と座面の体圧分布とを参考に馬蹄形に成型し、クッションの反発力を増す目的で堤を階段状にしたものである。」旨の記載である。
【0013】
次に、特許文献3について述べる。特許文献3に開示されたクッション材は、同公報の記載によれば、「使用者の体重を集中的に受け止める着座部を一部に備えたクッション材において、前記着座部は第1のクッション体、第2のクッション体及び第3のクッション体を厚さ方向に順に積層して構成され、前記第1のクッション体は第2のクッション体よりも硬度は低く厚さは着座部における第2のクッション体の厚さよりも厚くされ、前記第3のクッション体は第2のクッション体よりも硬度は高く厚さは着座部における第2のクッション体の厚さよりも薄くされていることを特徴とするクッション材。」である。この構成により、「クッション材の全体の厚みを一定範囲内に抑えるという条件下で、使用者の体重の上下幅が大きくなっても、底上げ感及び底付き感のない心地よい使用感を与えることができる。また、第2のクッション体の幅方向に第1のクッションを着脱可能に保持する凹部を形成すれば、使用者の体形や好みに応じて第1のクッション体を交換することが簡単に行える。」旨、記載されている。
【0014】
次に、特許文献4について述べる。図21は、特許文献4に開示された座椅子上に設けたクッションシートを示す。図21において、81は腰掛け面、82は背当て面、83はクッションシート、84は褥瘡用空間部、85は背骨用空間部、87は座椅子である。図21のクッションシートは、同公報の記載によれば、「腰掛け面と該腰掛け面の後端に続く背当て面とよりなるクッションシートであって、前記腰掛け面の後端部中央に腰掛者の尾てい骨周辺,褥瘡部分をさけて当らないようにした空間部を設け、且つ前記背当て面の中央部縦全長に背骨部分をさけて当らないようにした空間部を設けたことを特徴とする褥瘡や脊柱側弯症の人のためのクッションシート。」であり、上記構成によれば、「褥瘡部分や曲がったり突出したりした背骨が当らないようにした各空間部を設けたので、腰掛者は座位やベッドでの上体起こし、車椅子や乗物による移動などを苦痛を伴うことなく長時間快適に過ごすことができるという効果を生ずる。」旨、記載されている。
【0015】
次に、特許文献5について述べる。図22は、特許文献5に開示されたシートクッションを示し、(a)図はその斜視図、(b)図はシートクッションと骨格との関係を示す図である。図22において、56はシート板、57は凹所、58はフィルムである。図22のシートクッションは、同公報の記載によれば、「弾力材料によって形成されたシート板56の後縁部に、着座状態において坐骨が収容される凹所57を設け、坐骨部分への体圧の集中を抑制し、体圧が平坦な臀部や大腿部に分散するので、臀部が痛くなりにくい。」旨、記載されている。
【0016】
次に、特許文献6について述べる。図18は、特許文献6に開示された褥創予防マットである。図18において、1aは直方体状のゲル体、2aはその表面全体を覆うカバー材で図ではその一部を切り欠いて示してあり、3aはカバー材のシール部である。図18の褥創予防マットは、同公報の記載によれば、「ゲル体中に封じ込まれた気泡によりゲル体全体の柔軟性が増加するため、同一の柔軟性にする場合にゲル体自体の架橋密度を大きくすることができ、その結果、ゲル体の分離を生じることがなくなり型くずれせず、良好な体圧分散効果を得ることができ、さらに比重がほぼ1又はそれ以上のゲル体の一部を気泡で置換することによりゲル体の重量が軽減され、マットの操作性もよくなるという効果が得られる」旨、記載されている。
【0017】
次に、特許文献7について述べる。図19は、特許文献7に開示された座部システムである。同公報の記載によれば、「図19の座部システム(2b)は、上面(8b)を備えたベース部材(6b)と、上面(8b)の上に置かれる流体パッド(7b)とを有する。上面(8b)は、転子を含むユーザの大腿骨と共に、ユーザの坐骨の粗面および尾骨に対応する領域(12b、14b、16b)を有するように輪郭付けられ且つ寸法取りされているのが好ましい。好ましい実施例での流体パッド(7b)は、単一品であり、且つ、流体を充填した少なくとも3つの個々別々のポーチ(1b、3b、5b)を有する。各ポーチは、その中に流体を収納するために且つ他の2つのポーチの中の流体との連通を阻止して隔離するためにシールを有する。パッド(7b)の各ポーチは、ベース部材(6b)の上面(8b)の上に、ユーザの坐骨の粗面および尾骨の下になるように夫々位置決めされる。これにより、ユーザの坐骨の粗面および尾骨は、それ自身の個々独立した流体ポーチで支えられる。」旨記載され、また、「かかる構成により、各ポーチの中の流体の量を適当に調整することによって、ユーザの坐骨の粗面及び尾骨の支持圧を、所望のように実質的に等しく又は異なるようにすることができる。」旨、記載されている。
【0018】
【特許文献1】特開平9−51918号公報
【特許文献2】特開平8−140784号公報
【特許文献3】特開2002−165676号公報
【特許文献4】実用新案登録第3092029号公報
【特許文献5】特開2003−394号公報
【特許文献6】実公平6−10980号公報
【特許文献7】特表2000−513591号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
ところで、前記特許文献1〜7に開示された従来のクッションの場合、椅子用クッションや車椅子に要請される課題の一部に応えることができる構成を備えてはいるものの、下記のような問題があった。個々の問題点を述べるに当たり、前述の椅子用クッションの課題について、その要点を整理すると、下記のとおりである。
【0020】
課題(1):高い圧力や極端な圧力集中を抑制する。特に、坐骨結節,仙骨,尾骨,大腿骨大転子部への圧力集中を抑制する。
課題(2):前座り等の着座姿勢にかかわらず、どんな着座姿勢でも、前記圧力集中を抑制できる。さらに好ましくは、前座りや傾いた座り等の良くない姿勢になるのを防止する機能を有するものとする。
課題(3):前記課題(1)(2)の改善は、個人差に基づく多種多様の臀部形状にかかわらず適合して、実現できる。
課題(4):さらに、上記機能実現に加えて、褥瘡発生を防止するために、通気性を良くし、温度・湿度の増大を抑制可能とする。
【0021】
前記課題に照らして、特許文献1〜7のクッションについて検討すると、個々の課題を個別に解決するもしくは部分的に解決する構成は認められるものの、前記(1)〜(3)の課題を総合的に解決する構成を備えるものはない。まず、特許文献1の場合には、反発力の異なるクッション材が、上下に重なり合うように斜めに接合されているので、高い圧力や極端な圧力集中を抑制する効果の点では、前記各種の特許文献の中では、最も好ましい構成を備えているといえる。しかしながら、特許文献1の構成の場合、前述のように、「大腿部の側を支える第2のクッション材75、およびその周囲で大きな反発力を有する第3および第4のクッション材76、77」は備えるものの、「臀部の背面部を支持する構成部材」が存在しないので、前記課題(2)や(3)の達成はできない。なお、この理由や後述する従来技術の問題点の詳細については、後述する本願発明の実施形態の説明の中で、従来技術と比較して詳述する。
【0022】
ところで、前記「臀部の背面部を支持する構成部材」に限定して従来技術をみた場合には、特許文献2に当該構成部材が開示されている。即ち、特許文献2においては、前述のように、「階段状になった殿部堤55は、殿部周辺の形状と座面の体圧分布とを参考に馬蹄形に成型し、クッションの反発力を増す目的で堤を階段状にしたものである。」旨の記載があり、一応、臀部の背面部を支持する構成部材が記載されている。しかしながら、特許文献2の前記馬蹄形殿部堤55は、前述の褥瘡発生の多い部位である仙骨や尾骨の圧迫を助長する構造である。また、特許文献2においては、特許文献1に記載のような反発力の異なるクッション材の組み合わせに関わる構成は存在しないので、全体として、圧力集中の問題が避けられない。
【0023】
なお、臀部の背面部を支持する構成に関わり、特許文献4には、「腰掛者の尾てい骨周辺,褥瘡部分をさけて当らないようにした空間部を設けた構成」が、さらに特許文献5には、「着座状態において坐骨が収容される凹所57を設けた構成」が開示されているが、これらの場合も、着座姿勢不良等により、局所的な圧力集中を伴う問題がある。
【0024】
残る特許文献3,6および7の各発明も、圧力集中を抑制することを目的とし、体圧分散効果や心地よい使用感をねらった発明であるが、いずれも、前記臀部の背面部を支持する構成の開示はなく、全体的に圧力集中の抑制に関して、十分な解決策が講じられた構成を有するものではない。
【0025】
この発明は、上記のような諸問題に鑑みてなされたもので、本発明の課題は、着座姿勢や臀部形状の個人差にかかわらず、高い圧力や極端な圧力集中の発生を抑制可能とし、座り心地が良く、かつ長時間使用しても褥瘡発生が抑制可能な椅子用クッションおよび同クッションを備える車椅子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0026】
上述の課題を解決するため、本発明は、椅子や車椅子などの座部に用いる椅子用クッションにおいて、反発性が小さい材料からなり臀部を支える緩衝部と、臀部後方において少なくとも仙骨,尾骨および座骨結節部を除く両大殿筋部を支持する臀部支持部と、大腿支持部とを有し、かつ他の材料に比較して最も反発性が大きい材料からなる支持部と、中央部に前記緩衝部を嵌入する穴または溝を有し、前記支持部より反発性が小さいか又は同等の材料からなり、少なくともその一部は前記支持部の下方にあってかつ実質的に座部全域にわたって配設され、座圧力を座部全域に分散する座圧力分散追従部と、を備えることを特徴とする(請求項1)。前記において、反発性が小さい材料とは、同一の応力(体圧)に対して歪(変形量)が大きい材料をいう。なお、一般的に、クッション材として使用される材料としては、初期弾性(硬度)が大きく、かつ変形中期における応力の上昇が少ない(反発性が小さい)材料が好ましい。また、発生応力のリバウンドを考えると、荷重時と除重時におけるエネルギー消費量の差(ヒステリシスロス)が小さく、反発弾性(レジリエンスまたはリバウンド)が小さい材料が好ましい。
【0027】
前記請求項1の発明によれば、反発性が異なる材料からなる緩衝部,支持部および座圧力分散追従部とから構成されるので、全体として、高い圧力や極端な圧力集中の発生が抑制できる。また、「臀部後方において少なくとも仙骨,尾骨および座骨結節部を除く両大殿筋部を支持する臀部支持部と、大腿支持部とを有し、かつ他の材料に比較して最も反発性が大きい材料からなる支持部」を設けた構成により、褥瘡発生の多い部位を避けて臀部の後方部を支持できるので、褥瘡発生の抑制と、的確な骨盤支持による圧力集中の抑制が可能となり、さらに、不良な着座姿勢が必然的に矯正され易くなる。また、臀部支持部の形状を骨盤の斜め後方から適切に支持するように設計することにより、着座姿勢や臀部形状の個人差にかかわらず、高い圧力や極端な圧力集中の発生をさらに抑制できる。なお、前記支持部において、臀部支持部は、他の支持部に比較して反発性が大きい材料であることが好ましいが、同等の反発性でもよい。特に、一体成型する場合には、同等の反発性とする方が製造容易化の観点から好ましい。また、座圧力分散追従部と支持部の反発性は同一でも差し支えない。
【0028】
前記請求項1の発明の実施態様としては、下記請求項2ないし5の発明が好ましいが、これらの実施態様の構成に限定されるものではない。また、前記請求項1の発明および前記請求項2ないし5の各実施態様の作用効果や、前記実施態様とは異なるその他の実施態様(その他のバリエーション)については、後に詳述する。
【0029】
まず、請求項1に記載の椅子用クッションにおいて、前記支持部は、前記座圧力分散追従部の外周部上部に設けられ、かつ、その中央部に少なくとも前記緩衝部を貫通可能な穴を備えることを特徴とする(請求項2)。また、前記請求項2に記載の椅子用クッションにおいて、前記支持部は、前記座圧力分散追従部の外周部上部に額縁状に設けられ、かつ前記臀部支持部を、臀部下方後方部に当接する額縁の一辺の両側に設けてなるものとすることを特徴とする(請求項3)。前記実施態様により、全体として、高い圧力や極端な圧力集中の発生が抑制でき、また褥瘡発生も抑制できる。なお、前記支持部は、額縁状とせずに、前記緩衝部を嵌める部分のみに緩衝部と同形状の穴を設けるようにしてもよい。
【0030】
さらに、前記請求項3に記載の椅子用クッションにおいて、前記額縁状の支持部は、前記臀部背面に当接する額縁の一辺と直交する2つの辺に、大腿骨における大転子当接防止用の切り欠き部を設けてなるものとすることを特徴とする(請求項4)。これにより、大転子部の圧力集中を回避できる。さらにまた、前記請求項1ないし4のいずれか1項に記載の椅子用クッションにおいて、前記緩衝部は、その座面の輪郭が、尾骨と両坐骨結節を結ぶ三角形の三辺を中心とする所定の等圧線に沿う波状の軌跡線を有し、全体として多角星形状を備えるものとすることを特徴とする(請求項5)。これにより、詳細は後述するが、緩衝部に作用した体圧を多角星形状部において支持部に徐々に分散すること(グラデーション)が可能となり、体圧分散効果の向上を図ることができる。
【0031】
なお、前述のような支持部の機能は備えないものの、体圧分散効果の向上を図ることを主眼とした場合には、下記請求項6の発明が好ましい。即ち、椅子や車椅子などの座部に用いる椅子用クッションにおいて、反発性が小さい材料からなり臀部を支える緩衝部と、前記緩衝部より反発性が大きい材料からなり、中央部に前記緩衝部を嵌入する穴または溝を有し、かつ実質的に座部全域にわたって配設され、座圧力を座部全域に分散する座圧力分散追従部とを備え、さらに、前記緩衝部は、その座面の輪郭が、尾骨と両坐骨結節を結ぶ三角形の三辺を中心とする所定の等圧線に沿う波状の軌跡線を有し、全体として多角星形状を備えるものとすることを特徴とする(請求項6)。
【0032】
また、前記請求項1ないし6のいずれか1項に記載の椅子用クッションにおいて、前記緩衝部と支持部,または緩衝部と座圧力分散追従部上方の座部全域にわたって配設され、前記緩衝部より反発性が大きいか又は同等の材料からなる着座部を備えるものとすることを特徴とする(請求項7)。これにより、座り心地を向上することができる。さらに、前記請求項1ないし5もしくは7のいずれか1項に記載の椅子用クッションにおいて、前記支持部は、その臀部支持部と大腿支持部とが、互いに独立して分割配置されてなることを特徴とする(請求項8)。これにより、部品点数は増大するものの、支持機能および体圧分散機能等の機能が明確になり、座り心地を向上することができる。
【0033】
また、前記請求項1ないし8のいずれか1項に記載の椅子用クッションにおいて、前記緩衝部,支持部,座圧力分散追従部または着座部の相互接触面間は、座圧力に対して各部相互が自由に動き得る接着状態、または無接着状態もしくは遊嵌状態とすることを特徴とする(請求項9)。これにより、体圧に伴う各部材の変形が、隣接する部材の体圧分散機能を阻害することがないので、各部材間を接着する場合に比較して、体圧分散機能の向上が図れる。
【0034】
さらに、前記請求項1ないし9のいずれか1項に記載の椅子用クッションにおいて、前記緩衝部,支持部,座圧力分散追従部または着座部の材料は、通気性を有するウレタンフォームとすることを特徴とする(請求項10)。これにより、褥瘡発生環境が改善され、褥瘡発生の抑制効果が向上する。
【0035】
さらにまた、前記請求項1ないし10のいずれか1項に記載の椅子用クッションにおいて、前記緩衝部,支持部,座圧力分散追従部または着座部は、これらの部材が総合的に内包される外包みを備えてなり、前記外包みの少なくとも座面の材料は、抗菌および撥水加工をしてなるものとすることを特徴とする(請求項11)。これにより、クッションの安全な使用と取り扱いの容易化を図ることができる。
【0036】
最後に、車椅子としては、前記請求項1ないし11のいずれか1項に記載の椅子用クッションを備えることを特徴とする(請求項12)。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、着座姿勢や臀部形状の個人差にかかわらず、高い圧力や極端な圧力集中の発生を抑制可能とし、座り心地が良く、また、長時間使用しても褥瘡発生が抑制可能な椅子用クッションおよび同クッションを備える車椅子を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
図面に基づき、本発明の実施形態について述べる。まず、図1および図2により、基本的な実施形態とその変形例について述べる。図1は、本発明の椅子用クッションを示し、(a)はその斜視図、(b)〜(f)は、(a)に示す椅子用クッションをA−A’で分割した左半分をみた図で、(b)はその背面図、(c)はその左側面図、(d)はその平面図、(e)はその右側面断面図、(f)はその正面図である。また、図2は、本発明の椅子用クッションの基本的な実施形態とその変形例に関する分解図を示し、(C),(D),(E)はそれぞれ異なる実施形態の分解図、(A),(B)は(C)の実施形態の機能を説明する便宜上の分解部分図である。
【0039】
図1、図2において、1は椅子用クッション、2は緩衝部、3は支持部、4は座圧力分散追従部、5は着座部を示す。また、3aは臀部支持部、3bは大腿支持部、3cは支持部における穴、3dは支持部における切り欠き部、4aは座圧力分散追従部における穴または溝を示す。
【0040】
図1および図2(C)の実施形態に示すように、本発明の椅子用クッション1は、反発性が小さい材料からなり臀部を支える緩衝部2と、臀部後方において少なくとも仙骨,尾骨および座骨結節部を除く両大殿筋部を支持する臀部支持部3aと、大腿支持部3bとを有し、かつ他の材料に比較して最も反発性が大きい材料からなる支持部3と、中央部に緩衝部2を嵌入する穴または溝4aを有し、支持部3より反発性が小さいか又は同等の材料からなり、少なくともその一部は支持部3の下方にあってかつ実質的に座部全域にわたって配設され、座圧力を座部全域に分散する座圧力分散追従部4とを備える。
【0041】
また、支持部3は、中央部に少なくとも緩衝部2を貫通可能な穴3cを備える。この穴3cは、緩衝部と同形状の穴でもよいが、図2に示す例においては、支持部3を額縁状とし、さらに、臀部支持部3aを額縁の一辺の両側に設け、この部分を臀部下方後方部に当接するように構成している。さらにまた、前記額縁の一辺と直交する2つの辺には、切り欠き部3dを設けて、大腿骨における大転子の当接を防止する構成としている。また、緩衝部2は、全体として多角星形状とし、後に詳述するように、座圧のグラデーションを図っている。なお、図2(A)および(B)は、それぞれ、支持部3と座圧力分散追従部4との組み合わせ、および前記請求項6に関わる緩衝部2と座圧力分散追従部4との組み合わせを示し、機能的には、(A)および(B)の組み合わせにより、図2(C)が構成されることを示す。
【0042】
次に、図2(D)および(E)の実施態様について述べる。図2(D)は、図2(C)の実施形態に着座部5を追加した実施形態である。緩衝部より反発性が大きいか又は同等の材料からなる着座部5を備えるものとすることにより、座り心地を向上することができる。また、図2(E)は、支持部3の臀部支持部3aと大腿支持部3bとを、互いに独立して分割配置した実施形態である。前記図2(C)ないし(E)の実施形態において、前記緩衝部2,支持部3,座圧力分散追従部4または着座部5の相互接触面間は接着せずに、体圧に伴う各部材の変形が、隣接する部材の体圧分散機能を阻害することがないようにしている。この場合、クッションの取り扱いの容易化を図るために、前記各部材を総合的に内包する図示しない外包みを設け、さらに、安全上の観点から、前記外包みの少なくとも座面の材料は、抗菌および撥水加工をしてなるものとする。また、褥瘡発生防止の観点から、前記緩衝部2,支持部3,座圧力分散追従部4または着座部5の材料は、通気性を有するウレタンフォームとすることが好ましい。
【0043】
なお、各部の材料に関しては、上記ウレタンフォーム以外の材料を含む使用可能な材料の詳細について、後述する実施例の項で、総括的に述べる。また、前記図2(C)ないし(E)の実施形態において、臀部支持部3aとしては、着座部5側に張り出す例のみを示したが、座圧力分散追従部4側にも張り出す構成としてもよい。この場合には、座圧力分散追従部4が座部全域にわたって配設されることはなく、前記臀部支持部3aの張り出し部分がカットされることもある。
【0044】
上記本発明によれば、着座姿勢や臀部形状の個人差にかかわらず、高い圧力や極端な圧力集中の発生を抑制可能とし、座り心地が良く、また、長時間使用しても褥瘡発生が抑制可能な椅子用クッションおよび同クッションを備える車椅子が得られる。これらの作用効果について、前記本発明の課題(1)〜(4)に関連づけて、以下に述べる。
【0045】
まず、課題(1)の圧力集中の抑制に関して述べる。図3は、反発弾性の異なる材料の組み合わせによる、圧力集中抑制の作用原理を説明する図である。図3においては、上中下段の3つの図を示すが、上段の図のような平板の場合には、変位に応じた圧力集中が起こることを示す。また、中段の図は、例えばモールドにより、臀部形状に沿った板を形成した場合を示すが、この場合には、臀部形状の個人差に基づき、圧力集中が発生する場合があることを示す。下段の図は、反発弾性の異なる材料を組み合わせ、臀部に相対的に反発性が小さい材料を用いることにより、座圧を分散させ、圧力集中が抑制できることを示す。前記図2(B)の構成、即ち、図2(B)において反発性が小さい材料からなる緩衝部2と、座圧力分散追従部4との組み合わせ構成は、図3の下段と同様の構成であり、図2(C)ないし(E)の本願の実施態様は、上記の座圧分散機能を有する。なお、反発性が異なる材料を組み合わせる技術に関しては、例えば前記特許文献1や3にも開示されている。
【0046】
次に、課題(2)に関わり、先行技術には開示のない本願発明の臀部支持部3aの作用効果に関して述べる。図4は、臀部支持部がない場合の座圧力の発生状態を示す図で、(a)は着座面の傾斜がない場合、(b)は着座面に傾斜がある場合を示す。着座姿勢において体幹の自重により、重心は後方へ移動することとなり、また着座面における支持圧力は、後方程大きくなる。また車椅子等の座面は、後方程低くなる傾斜を有しているため重心はさらに後方へ移動する。(b)図において、黒塗りの円で示す部分Gは、圧力が集中する領域を示し、生体にストレスを与える領域である。
【0047】
そこで、上記問題点を解消するため本願発明においては、図2で示すように、臀部後方において少なくとも仙骨,尾骨および座骨結節部を除く両大殿筋部を支持する臀部支持部3aを設ける。図5は、臀部支持部3aを設けた場合の支持力と重心の変化の状態を説明する図である。また、図6は、骨盤を臀部支持部3aで支持する状態の説明図で、(a)は骨盤の後傾斜を支える状態を説明する図、(b)は、臀部支持部3aを骨盤背面部分の左右両側に設け、骨盤を斜め後方から支持する状態を説明する図である。
【0048】
上記のような臀部支持部3aを設けることにより、褥瘡発生の多い部位を避けて臀部の後方部が支持可能となり、臀部形状の個人差にかかわらず、圧力集中の抑制と褥瘡発生の抑制が可能となる。さらに、臀部支持部3aは、不良な着座姿勢を矯正する効果もあり、着座姿勢にかかわらず圧力集中の抑制効果がある。ちなみに、図7は椅子に人が座った状態の体圧分布の比較図であり、(a)はクッションなしの場合、(b)は平板クッションを設けた場合、(c)は本願発明に係る前記臀部支持部3aを有するクッションを設けた場合を示す。(c)の場合、圧力集中が分散していることがわかる。
【0049】
次に、課題(3)に関わり、座圧力分散追従部4の上に支持部3を設けることの作用効果について、図8に基づいて述べる。図8は、上記構成による圧力集中抑制の作用原理を説明する図である。図8においては、(a)〜(d)の4つのケースを比較して説明するが、(a)は平板単一素材への着座の場合、(b)は支持体を中層枠形状に入れた場合(前記図2(D)に相応)、(c)はモールド単一素材の場合、(d)は支持体が追従層の上に位置する場合(前記図2(C)に相応)を示す。
【0050】
図8の各図の右側の欄に各ケースについて詳細に説明をしているが、要するに、(a)の平板単一素材の場合には、小さな変形部分での反発性が低いので、身体の動揺に対する支持性が劣るが、(b)の構成のように、変形の少ない部分に支持部(図の黒塗り部)を設けた場合には、反発力が高く支持性が向上し、かつ体圧分散が図れることを示す。また、図8(c)の場合には、モールド形状とは異なる臀部形状の場合、形状に合わない部分が片当り・底付きとなり、圧力集中が発生するが、(d)の構成のように、支持体(図の黒塗り部)の下部に反発弾性の低い材料を組み合わせた場合には、臀部形状に追従させることができ、体圧分散が図れることを示す。
【0051】
前記図2(C)においては、図8(d)の構成のように、支持部3と座圧力分散追従部4とを組み合わせている。なお、支持部3は臀部の前後を、着座圧力が比較的少ない部分で連結して額縁状に形成し、かつ臀部後方に、臀部支持部3aを備えるものとしている。また、前記図2(D)においては、図8(b)の構成のように、着座部5と座圧力分散追従部4との間に支持部3を組み合わせて、支持部3は、額縁状でかつ臀部支持部3aを備えるものとしている。前記図2(E)に関しても同様である。上記構成により、いずれも、好適な臀部支持と体圧分散を可能としている。
【0052】
また、図2(C)〜(E)の構成における支持部3は、大転子当接防止用の切り欠き部3dを備える。これにより、大転子への局部的圧迫が解消できる。図9は、大転子当接防止用の切り欠き部の効果に関わる着座体圧分布の比較図であり、(a)は切り欠き部無しの場合、(b)は切り欠き部有りの場合である。図9によれば、切り欠き部を設けることにより、圧力分散が図られていることがわかる。
【0053】
次に、各部材料を通気性がよいものとすることにより、課題(4)が達成できる。この点に関しては、実施例の項で詳述する。
【0054】
最後に、請求項5および請求項6に関わり、「緩衝部2の座面の輪郭が、尾骨と両坐骨結節を結ぶ三角形の三辺を中心とする所定の等圧線に沿う波状の軌跡線を有し、全体として多角星形状を備える」効果について述べる。
【0055】
着座した場合の臀部の体圧分布は、図10(a)に示すように、座骨結節を中心とした複数の等圧線を有する体圧分布となる。これに対し、前記のような反発性の異なる材料を組み合わせることにより、体圧分散が図れるが、その際、材料の境界において反発弾性が、断層的に急激に変化する。これにより、急激な力学特性の変化が生ずるので、局部的なストレスが発生し座り心地に影響する。
【0056】
図10(b)は図10(a)に基づき等圧線をスムースな形状にして圧力階層を年輪的に示した分布図である。等圧線の幅、分布面積、圧力値等は、臀部形状により異なる。前記力学特性の急変を緩和するためには、前記図10(b)の年輪が多い方が望ましく、これに合わせて、順次反発弾性が異なる材料を配置することが望ましいが、この場合には、製造コストが増大し、実用的ではない。また、前記特許文献1に記載されたクッションにおいては、反発弾性が異なる材料の境界面に傾斜を設けた構成が開示されているが、この構成の場合、材料の境界面の面積が増大するのでストレスを緩和する効果がある。しかしながら、境界面が直線状ではない場合には、製造上の問題も考慮すると傾斜面の増大には限界がある。
【0057】
そこで、図2の実施形態においては、緩衝部2の座面の輪郭を前記多角星形状を備えるものとしている。この多角星形状に関して、図11に基づき詳述する。図11(b)は着座時の体圧分布と、尾骨と両坐骨結節を結ぶ三角形Tとを重ねて示す図、図11(a)は前記三角形Tと、臀部の比較的圧力の高い部分を包含する所定の等圧線Pと、多角星形状との関係を示す図である。図11(b)に示すように、尾骨と両坐骨結節を結ぶ三角形Tを中軸として、複数の等圧線が形成されている。図11(a)に示す前記所定の等圧線Pは、着座姿勢が前ズレとなる場合を考慮して設定し、緩衝部2の座面の輪郭は、この等圧線Pに沿う波状の軌跡線を有し、全体として多角星形状を備えるものとして決定する。前記波の数は多い程、緩和面積が増大するが、あまり多いと製造が困難となる。効果と製造上のことを考慮すると、波の数は、5〜20個程度が好ましい。緩衝部2の前記多角星形状は、上記観点を総合的に考えてニーズに応じた設計を行えばよく、図示の形状及び寸法に限定されるものではなく、この技術思想の範囲内において、種々の変形があり得る。
【0058】
また、反発弾性が異なる材料の境界面を、前述のように前記多角星形状とはせずに、下記のような構成の緩衝手段を設けることによって、前記力学特性の急変を緩和することもできる。即ち、体積変形しない軟質材料のゲル体や流動体を異種フォーム境界面に組み合わせた緩衝手段である。前記ゲル体とは、特許文献6に記載のゲル体であり、例えば、高弾性体フォームと低弾性体フォームとの突き合わせ面に、両者にまたがって、前記ゲル体を断面半円状に設ける。この構成によれば、ゲルや流動体は、体積変形し難いため、フォームから伝わる変形による反発力の弱い方へ、大きく変形する。その結果、境界面付近の反発力を分散することができ、境界の急激な弾性特性の変化を緩和することができる。
【0059】
さらに、前記図2(D)の緩衝部2を、弾性が極端に低いゲル体に変更し、このゲル体の緩衝部2を着座部5に嵌めこむように構成し、かつ座圧力分散追従部4と緩衝部2との間には、ゲル体の変形を逃がすための隙間を設ける構成とすることもできる。この構成によれば、前記隙間に対してゲル体は柔軟に変形し、境界の急激な弾性特性の変化を緩和することができる。
【実施例】
【0060】
次に、本発明の実施例および性能評価を行った結果等について、各種比較例(市販品1〜3およびクッションなし)と共に、以下に述べる。図12は、実施例および各種比較例の形状,寸法,重量を含む構成等に関する緒言と、圧力分布,最大圧力,平均圧力等の計測結果、並びに後述する官能評価(座り心地評価)結果について示す。なお、図12の製品欄において、「なし」は、クッションがない場合を示す。また、実施例は、図2(D)の実施形態に関わる実施例を示し、市販品1,2,3は、それぞれ、特許文献7,1,6に相当する製品を示す。構成等に関する緒言は、主要な緒言のみを示す。
【0061】
ところで、図12の実施例における各部の材質とその物性や特性に関し、図13の右側の実施例の欄に示す。図13の左側の欄は、各部(着座部,緩衝部,支持部,座圧力分散追従部および図2には図示しない外包み)の使用可能な材料を広く示し、各材質とその物性や特性等を示す。
【0062】
車椅子クッションの性能を評価する指標としては、圧力の低減性,圧力集中の分散性,座り心地(感覚),温度や湿度の上昇低減性等が評価項目となる。上記圧力の低減性は、最大圧(坐骨結節部周囲等)及び平均圧力の測定により、圧力集中の分散性は最大圧や圧力分布図等の計測により判断できる。なお、圧力測定は、圧力分布測体装置による。また、座り心地(感覚)は被験者アンケートに基づく官能評価により判断した。さらに、温度や湿度の上昇低減性は被験者の坐骨結節部・臀裂部での温度・湿度の時間的経過の計測により判断できる。なお、温度に関しては、各製品の熱容量が異なるため、通気性以外の要因の影響が大きいので、ここでは、後述する湿度の時間的経過の計測結果により判断した。
【0063】
図12によれば、実施例は、比較例に比べて、平均圧力および最大圧力値が最も低位であり、また圧力分布測定結果からも体圧分散性が優れていることがわかる。さらに、アンケートに基づく官能評価(5点満点)の数値も最大であり、座り心地(感覚)も最も優れていることが判った。なお、官能評価については、以下に詳述する。
【0064】
座り心地の感覚(好き嫌い)は、個人・使用目的・環境によって変化する。そのため、車椅子クッションとして、車椅子上での個人が普段(無意識)に座る姿勢と理想座位での着座を行った時の臀部での片当り・沈み込み感・着座時の安定感を基準として、18名の健常者を対象とするアンケートにより評価した。
【0065】
官能試験(アンケート)は、5点満点とし、実施例の場合、4.7の最高点であった。市販品1の場合は、姿勢や被験者の体型から片当りを感じるため評価が低く、その評価点は3.1であった。また、市販品2の場合は、実施例と同じフォーム系の構成のため評価が高めであるが、深い沈みこみ感を感じる点が指摘され、評価点は3.7で次点の評価であった。市販品3のゲルを用いたクッションは、荷重分散性や冷たさのため、1.5の最低評価点となった。
【0066】
次に、湿度の測定結果について述べる。着座開始後の湿度の時間推移は、着座中における臀部・クッション間及びクッション内での、生体から放出される水分の残留に関係し、水分の放出性が悪いと、時間経過とともに湿度は大きくなる。生体が感じる湿度の影響を測定するために、坐骨結節部(圧力が高くなると生体からの発散度が高くなる)、臀裂(泌尿器官等により湿度変化の影響が高い)部分での測定が有効であり、小型センサーにより着座の圧力環境を変えない状態での測定を実施した。
【0067】
図14は、着座後の湿度の変化の一例を示す。図14において、縦軸は湿度(%RH)であり、横軸は着座開始後の時間(分)を示す。3個の湿度変化曲線の内、Aは実施例、Bは市販品1、Cは市販品2を示す。図14によれば、実施例Aの湿度の増大が最も低く、実施例Aは、褥瘡発生の抑制上、最も好適であることが判った。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の椅子用クッションの実施形態に関わる構成図。
【図2】本発明の椅子用クッションの実施形態とその変形例に関する分解図。
【図3】反発弾性の異なる材料の組み合わせによる、圧力集中抑制の作用原理を説明する図。
【図4】臀部支持部がない場合の座圧力の発生状態を示す図。
【図5】臀部支持部を設けた場合の支持力と重心の変化の状態を説明する図。
【図6】骨盤を臀部支持部で支持する状態の説明図。
【図7】椅子に人が座った状態の体圧分布の比較図。
【図8】座圧力分散追従部の上に支持部を設けることの作用効果を説明する図。
【図9】大転子当接防止用の切り欠き部の効果に関わる着座体圧分布の比較図。
【図10】着座した場合の臀部の体圧分布図。
【図11】緩衝部の座面の輪郭を多角星形状とすることに関する説明図。
【図12】本発明の実施例および比較例に関し性能評価を行った結果を示す図。
【図13】実施例を含む実施形態各部の材質とその物性や特性を示す図。
【図14】着座後の湿度の変化の一例を比較例と共に示す図。
【図15】肢の骨と筋の説明図。
【図16】骨盤を説明する背面図。
【図17】姿勢が良くない座り方の代表的な例を示す図。
【図18】特許文献6に開示された褥創予防マットの構成を示す斜視図。
【図19】特許文献7に開示された座部システムの斜視図。
【図20】特許文献2に開示された座位保持クッションの要部斜視図。
【図21】特許文献4に開示された座椅子上に設けたクッションシートの斜視図。
【図22】特許文献5に開示されたシートクッションの説明図。
【図23】特許文献1に開示された車椅子の座部に用いた座クッションの斜視図。
【図24】図23に示す座クッションの左半分の分解図。
【図25】特許文献1に開示された車椅子の側面図。
【符号の説明】
【0069】
1 椅子用クッション
2 緩衝部
3 支持部
3a 臀部支持部
3b 大腿支持部
3c 支持部における穴
3d 支持部における切り欠き部
4 座圧力分散追従部
4a 座圧力分散追従部における穴または溝
5 着座部
【技術分野】
【0001】
本発明は、椅子や車椅子などの座部に用いるクッション、特にクッションにおける体圧分散構造、ならびに前記クッションを備える車椅子に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な椅子や座椅子さらには車椅子などの椅子に長い時間座っていると、臀部が痛くなったり、床ずれ、褥創などが生じたりすることから、座部には、クッション材を組み込むとともに、その構造を工夫して、そこに腰掛けたときの体圧を分散するようになっている(例えば、特許文献1〜7参照)。
【0003】
例えば、車椅子を対象として、その着座環境や椅子用クッションに対して要求される機能や要求項目をまとめると、以下のとおりである。車椅子にかかわらず、座る行為に対して、生体には、力学的ストレス(圧力)が加わり、その影響が発生する。後述する図10(a)は、車椅子に人が座った状態における体圧分布を示す。体圧分布は、左右二つの座骨結節を中心とした複数の等圧線状の分布を呈する。一般的に中心部分の圧力が高い部分は、生体に大きな変形を与え、皮膚・脂肪・筋肉等に力学的損傷を与えると同時に血管を圧迫し、血流を阻害することが問題となる。特に骨が生体表面に近い部分において、圧力による生体へのストレスが大きくなる問題が発生する。
【0004】
図15は、後述する本発明の説明に関わる、肢の骨と筋の説明図で、(a)は背面図、(b),(c)は側面図であって、(b)は骨のみを示す。図15において、a,b,c,d,e,fおよびgは、それぞれ、座骨結節,尾骨,仙骨,腸骨稜,寛骨,大転子および脊柱(一点鎖線で図示)である。また、A,B,CおよびDは、それぞれ、大殿筋,大腿二頭筋,半腱様筋および半膜様筋である。なお、大腿二頭筋,半腱様筋および半膜様筋の三つの筋群は、まとめてハムストリング筋ともいわれる。また、前記寛骨は、青春期のころまでは、腸骨・座骨・恥骨の3骨が区別され、互いに軟骨結合状態にあるが、成人では軟骨部が骨化して3骨は互いに癒合し、1個の寛骨となる。さらに、左右の寛骨,仙骨および尾骨で構成された骨格部を骨盤という。図16は、骨盤の背面図を示す。骨盤は、骨格中最も男女の性差がいちじるしい部分である。
【0005】
ところで、着座における前記問題発生に関わる生体表面に近い骨は、座骨結節・尾骨・仙骨であり、当該部位において褥瘡発生も認められている。
また、着座の際の身体の姿勢により、その圧力環境が大きく変化する。図17は、姿勢が良くない座り方の代表的な例を示す図である。図17(a)は、いわゆる前座りの着座状態を示し、骨盤が後傾する状態の座り方である。前座りは、特に高齢者に多く見られる座り方であり、この場合には、座骨結節に加え、尾骨・仙骨に高圧力部分が現れ、座骨結節の部分も前方に移動する。また、図17(b)は、骨盤が傾斜する座り方であり、この場合には、左右の一方側に圧力が集中する。さらに、図17(c)は、骨盤が回旋する座り方であり、この場合にも、圧力集中が発生する。上記のような着座姿勢のくずれによる圧力環境の変化が生じた場合においても、クッションは、姿勢(骨盤)を安定させ、臀部形状の変形を極力少なくし、圧力の上昇を少なくすることが要請される。なお、着座状態における臀部の3次元曲面形状は、前記骨盤の状態とこれに伴う大殿筋やハムストリング筋等の筋肉および脂肪により決まる。
【0006】
また、特に褥瘡発生の観点から考えると、クッションとしては、下記のような点についても考慮が必要となる。褥瘡発生の要因としては、皮膚への圧迫だけではなく他の要因がある。一般に褥瘡(床ずれ)を発生する要因として考えられている点は、圧力・ズレ・湿潤・骨突出・栄養とされ、その中で外的影響は、圧力・ズレ・湿潤の3つである。なお、ズレ力には、生体との摩擦が関係し、また、湿潤には、温度・湿度の増大が関係し、湿潤状態は、皮膚の強度の低下や菌の増大等による皮膚の損傷が生ずる要因となる。さらに、骨突出は、上述の圧力・ズレ力を増大する要因となると考えられ、前記骨突出部位は、前記図15における座骨結節a,尾骨b,仙骨c・および大転子fの4つの部位である。
【0007】
前記椅子用クッションの構成としては、上記のような要請に応える観点から、種々の構成が提案されている(前記特許文献1〜7参照)。まず、特許文献1は、その公報の記載を引用すれば、「椅子の座部やマットレスで臀部などを支える部分において、クッションの反発力を位置によって急変させずに体圧を分散させることによって、長時間利用しても身体が痛くならないクッション構造、それを座部に備えた車椅子やマットレスを提供すること」を目的としたクッション構造や、同クッション構造を適用した車椅子やマットレス等を開示している。
【0008】
図25は、特許文献1に図1として開示された車椅子の側面図であり、クッションは座部11として示される。図25の車椅子は、特許文献1の記載によれば、「略水平に構成された座部11、その両側で起立する肘掛け13、および座部11の後端部から斜め上方に起立する背凭れ部12を備える走行車体10と、肘掛け13の側方に位置する大径後輪51とから大略構成されている。大径後輪51のリムなどは、図示を省略してある。」なお、図1における他の部番と全体説明は省略する(詳細は、特許文献1参照)。
【0009】
次に、特許文献1に記載されたクッション構造について、同公報に開示された図23および図24に基づいて述べる。図23は、図25に示す車椅子の座部に用いた座クッションの斜視図であり、図24は、図23に示す座クッションの左半分の分解図である。上記座クッションは、下記の構成を備える。即ち、「小さな反発力をもって臀部を支える第1のクッション材74と、このクッション材よりも大きな反発力をもって大腿部の側を支える第2のクッション材75、およびその周囲で大きな反発力を有する第3および第4のクッション材76、77は、それらの接合部分において双方のクッション材が上下に重なり合うように斜めに接合されている。第1および第2のクッション材74、75は、その上層側に第1のクッション材74よりも大きな反発力をもつ薄い上層側クッション73を有し、下層側には第1のクッション材74よりも大きな反発力をもつ下層側クッション71を有している。」
【0010】
上記座クッションの構成によれば、「反発力の異なるクッション材が、上下に重なり合うように斜めに接合されているので、この部分で、クッションの反発力の急激な変化を少なくすることができる。それ故、体圧は、接合部分でも局部に集中しないので、長時間利用しても身体が痛くならない。また、クッションの面方向において反発力を最適な状態に連続的に変化させており、かかるクッション構造を備えた座部では、臀部全体をクッション材で支えるため、上体を安定に保持できる。」旨、記載されている。
【0011】
次に、特許文献2について述べる。図20は、特許文献2に開示された座位保持クッションの要部斜視図である。同公報の記載によれば、図20のクッションは、「底面51は、クッション性のある平板であって、底面中央部に座骨穴52、53と前部中程に土手状に隆起した股間壁54を設ける。そして、後部から両サイドにかけて馬蹄形の階段状になった殿部堤55を設けたもの」であり、上記構成により、「座位姿勢において、座骨の安定を可能にし大腿骨頭の内転と骨盤の後傾を低減させ脊柱R状を抑制することで、上体や腰椎にかかる負担と内臓の圧迫が軽減できる。」旨、記載している。
【0012】
また、特許文献2には、下記記載もある。即ち、「座位保持クッションは、合成ゴム、ウレタンゴム、ポリエチレン等樹脂系の発泡体の素材を用いて全体を一体成型したものである。」旨の記載、および「階段状になった殿部堤55は、殿部周辺の形状と座面の体圧分布とを参考に馬蹄形に成型し、クッションの反発力を増す目的で堤を階段状にしたものである。」旨の記載である。
【0013】
次に、特許文献3について述べる。特許文献3に開示されたクッション材は、同公報の記載によれば、「使用者の体重を集中的に受け止める着座部を一部に備えたクッション材において、前記着座部は第1のクッション体、第2のクッション体及び第3のクッション体を厚さ方向に順に積層して構成され、前記第1のクッション体は第2のクッション体よりも硬度は低く厚さは着座部における第2のクッション体の厚さよりも厚くされ、前記第3のクッション体は第2のクッション体よりも硬度は高く厚さは着座部における第2のクッション体の厚さよりも薄くされていることを特徴とするクッション材。」である。この構成により、「クッション材の全体の厚みを一定範囲内に抑えるという条件下で、使用者の体重の上下幅が大きくなっても、底上げ感及び底付き感のない心地よい使用感を与えることができる。また、第2のクッション体の幅方向に第1のクッションを着脱可能に保持する凹部を形成すれば、使用者の体形や好みに応じて第1のクッション体を交換することが簡単に行える。」旨、記載されている。
【0014】
次に、特許文献4について述べる。図21は、特許文献4に開示された座椅子上に設けたクッションシートを示す。図21において、81は腰掛け面、82は背当て面、83はクッションシート、84は褥瘡用空間部、85は背骨用空間部、87は座椅子である。図21のクッションシートは、同公報の記載によれば、「腰掛け面と該腰掛け面の後端に続く背当て面とよりなるクッションシートであって、前記腰掛け面の後端部中央に腰掛者の尾てい骨周辺,褥瘡部分をさけて当らないようにした空間部を設け、且つ前記背当て面の中央部縦全長に背骨部分をさけて当らないようにした空間部を設けたことを特徴とする褥瘡や脊柱側弯症の人のためのクッションシート。」であり、上記構成によれば、「褥瘡部分や曲がったり突出したりした背骨が当らないようにした各空間部を設けたので、腰掛者は座位やベッドでの上体起こし、車椅子や乗物による移動などを苦痛を伴うことなく長時間快適に過ごすことができるという効果を生ずる。」旨、記載されている。
【0015】
次に、特許文献5について述べる。図22は、特許文献5に開示されたシートクッションを示し、(a)図はその斜視図、(b)図はシートクッションと骨格との関係を示す図である。図22において、56はシート板、57は凹所、58はフィルムである。図22のシートクッションは、同公報の記載によれば、「弾力材料によって形成されたシート板56の後縁部に、着座状態において坐骨が収容される凹所57を設け、坐骨部分への体圧の集中を抑制し、体圧が平坦な臀部や大腿部に分散するので、臀部が痛くなりにくい。」旨、記載されている。
【0016】
次に、特許文献6について述べる。図18は、特許文献6に開示された褥創予防マットである。図18において、1aは直方体状のゲル体、2aはその表面全体を覆うカバー材で図ではその一部を切り欠いて示してあり、3aはカバー材のシール部である。図18の褥創予防マットは、同公報の記載によれば、「ゲル体中に封じ込まれた気泡によりゲル体全体の柔軟性が増加するため、同一の柔軟性にする場合にゲル体自体の架橋密度を大きくすることができ、その結果、ゲル体の分離を生じることがなくなり型くずれせず、良好な体圧分散効果を得ることができ、さらに比重がほぼ1又はそれ以上のゲル体の一部を気泡で置換することによりゲル体の重量が軽減され、マットの操作性もよくなるという効果が得られる」旨、記載されている。
【0017】
次に、特許文献7について述べる。図19は、特許文献7に開示された座部システムである。同公報の記載によれば、「図19の座部システム(2b)は、上面(8b)を備えたベース部材(6b)と、上面(8b)の上に置かれる流体パッド(7b)とを有する。上面(8b)は、転子を含むユーザの大腿骨と共に、ユーザの坐骨の粗面および尾骨に対応する領域(12b、14b、16b)を有するように輪郭付けられ且つ寸法取りされているのが好ましい。好ましい実施例での流体パッド(7b)は、単一品であり、且つ、流体を充填した少なくとも3つの個々別々のポーチ(1b、3b、5b)を有する。各ポーチは、その中に流体を収納するために且つ他の2つのポーチの中の流体との連通を阻止して隔離するためにシールを有する。パッド(7b)の各ポーチは、ベース部材(6b)の上面(8b)の上に、ユーザの坐骨の粗面および尾骨の下になるように夫々位置決めされる。これにより、ユーザの坐骨の粗面および尾骨は、それ自身の個々独立した流体ポーチで支えられる。」旨記載され、また、「かかる構成により、各ポーチの中の流体の量を適当に調整することによって、ユーザの坐骨の粗面及び尾骨の支持圧を、所望のように実質的に等しく又は異なるようにすることができる。」旨、記載されている。
【0018】
【特許文献1】特開平9−51918号公報
【特許文献2】特開平8−140784号公報
【特許文献3】特開2002−165676号公報
【特許文献4】実用新案登録第3092029号公報
【特許文献5】特開2003−394号公報
【特許文献6】実公平6−10980号公報
【特許文献7】特表2000−513591号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
ところで、前記特許文献1〜7に開示された従来のクッションの場合、椅子用クッションや車椅子に要請される課題の一部に応えることができる構成を備えてはいるものの、下記のような問題があった。個々の問題点を述べるに当たり、前述の椅子用クッションの課題について、その要点を整理すると、下記のとおりである。
【0020】
課題(1):高い圧力や極端な圧力集中を抑制する。特に、坐骨結節,仙骨,尾骨,大腿骨大転子部への圧力集中を抑制する。
課題(2):前座り等の着座姿勢にかかわらず、どんな着座姿勢でも、前記圧力集中を抑制できる。さらに好ましくは、前座りや傾いた座り等の良くない姿勢になるのを防止する機能を有するものとする。
課題(3):前記課題(1)(2)の改善は、個人差に基づく多種多様の臀部形状にかかわらず適合して、実現できる。
課題(4):さらに、上記機能実現に加えて、褥瘡発生を防止するために、通気性を良くし、温度・湿度の増大を抑制可能とする。
【0021】
前記課題に照らして、特許文献1〜7のクッションについて検討すると、個々の課題を個別に解決するもしくは部分的に解決する構成は認められるものの、前記(1)〜(3)の課題を総合的に解決する構成を備えるものはない。まず、特許文献1の場合には、反発力の異なるクッション材が、上下に重なり合うように斜めに接合されているので、高い圧力や極端な圧力集中を抑制する効果の点では、前記各種の特許文献の中では、最も好ましい構成を備えているといえる。しかしながら、特許文献1の構成の場合、前述のように、「大腿部の側を支える第2のクッション材75、およびその周囲で大きな反発力を有する第3および第4のクッション材76、77」は備えるものの、「臀部の背面部を支持する構成部材」が存在しないので、前記課題(2)や(3)の達成はできない。なお、この理由や後述する従来技術の問題点の詳細については、後述する本願発明の実施形態の説明の中で、従来技術と比較して詳述する。
【0022】
ところで、前記「臀部の背面部を支持する構成部材」に限定して従来技術をみた場合には、特許文献2に当該構成部材が開示されている。即ち、特許文献2においては、前述のように、「階段状になった殿部堤55は、殿部周辺の形状と座面の体圧分布とを参考に馬蹄形に成型し、クッションの反発力を増す目的で堤を階段状にしたものである。」旨の記載があり、一応、臀部の背面部を支持する構成部材が記載されている。しかしながら、特許文献2の前記馬蹄形殿部堤55は、前述の褥瘡発生の多い部位である仙骨や尾骨の圧迫を助長する構造である。また、特許文献2においては、特許文献1に記載のような反発力の異なるクッション材の組み合わせに関わる構成は存在しないので、全体として、圧力集中の問題が避けられない。
【0023】
なお、臀部の背面部を支持する構成に関わり、特許文献4には、「腰掛者の尾てい骨周辺,褥瘡部分をさけて当らないようにした空間部を設けた構成」が、さらに特許文献5には、「着座状態において坐骨が収容される凹所57を設けた構成」が開示されているが、これらの場合も、着座姿勢不良等により、局所的な圧力集中を伴う問題がある。
【0024】
残る特許文献3,6および7の各発明も、圧力集中を抑制することを目的とし、体圧分散効果や心地よい使用感をねらった発明であるが、いずれも、前記臀部の背面部を支持する構成の開示はなく、全体的に圧力集中の抑制に関して、十分な解決策が講じられた構成を有するものではない。
【0025】
この発明は、上記のような諸問題に鑑みてなされたもので、本発明の課題は、着座姿勢や臀部形状の個人差にかかわらず、高い圧力や極端な圧力集中の発生を抑制可能とし、座り心地が良く、かつ長時間使用しても褥瘡発生が抑制可能な椅子用クッションおよび同クッションを備える車椅子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0026】
上述の課題を解決するため、本発明は、椅子や車椅子などの座部に用いる椅子用クッションにおいて、反発性が小さい材料からなり臀部を支える緩衝部と、臀部後方において少なくとも仙骨,尾骨および座骨結節部を除く両大殿筋部を支持する臀部支持部と、大腿支持部とを有し、かつ他の材料に比較して最も反発性が大きい材料からなる支持部と、中央部に前記緩衝部を嵌入する穴または溝を有し、前記支持部より反発性が小さいか又は同等の材料からなり、少なくともその一部は前記支持部の下方にあってかつ実質的に座部全域にわたって配設され、座圧力を座部全域に分散する座圧力分散追従部と、を備えることを特徴とする(請求項1)。前記において、反発性が小さい材料とは、同一の応力(体圧)に対して歪(変形量)が大きい材料をいう。なお、一般的に、クッション材として使用される材料としては、初期弾性(硬度)が大きく、かつ変形中期における応力の上昇が少ない(反発性が小さい)材料が好ましい。また、発生応力のリバウンドを考えると、荷重時と除重時におけるエネルギー消費量の差(ヒステリシスロス)が小さく、反発弾性(レジリエンスまたはリバウンド)が小さい材料が好ましい。
【0027】
前記請求項1の発明によれば、反発性が異なる材料からなる緩衝部,支持部および座圧力分散追従部とから構成されるので、全体として、高い圧力や極端な圧力集中の発生が抑制できる。また、「臀部後方において少なくとも仙骨,尾骨および座骨結節部を除く両大殿筋部を支持する臀部支持部と、大腿支持部とを有し、かつ他の材料に比較して最も反発性が大きい材料からなる支持部」を設けた構成により、褥瘡発生の多い部位を避けて臀部の後方部を支持できるので、褥瘡発生の抑制と、的確な骨盤支持による圧力集中の抑制が可能となり、さらに、不良な着座姿勢が必然的に矯正され易くなる。また、臀部支持部の形状を骨盤の斜め後方から適切に支持するように設計することにより、着座姿勢や臀部形状の個人差にかかわらず、高い圧力や極端な圧力集中の発生をさらに抑制できる。なお、前記支持部において、臀部支持部は、他の支持部に比較して反発性が大きい材料であることが好ましいが、同等の反発性でもよい。特に、一体成型する場合には、同等の反発性とする方が製造容易化の観点から好ましい。また、座圧力分散追従部と支持部の反発性は同一でも差し支えない。
【0028】
前記請求項1の発明の実施態様としては、下記請求項2ないし5の発明が好ましいが、これらの実施態様の構成に限定されるものではない。また、前記請求項1の発明および前記請求項2ないし5の各実施態様の作用効果や、前記実施態様とは異なるその他の実施態様(その他のバリエーション)については、後に詳述する。
【0029】
まず、請求項1に記載の椅子用クッションにおいて、前記支持部は、前記座圧力分散追従部の外周部上部に設けられ、かつ、その中央部に少なくとも前記緩衝部を貫通可能な穴を備えることを特徴とする(請求項2)。また、前記請求項2に記載の椅子用クッションにおいて、前記支持部は、前記座圧力分散追従部の外周部上部に額縁状に設けられ、かつ前記臀部支持部を、臀部下方後方部に当接する額縁の一辺の両側に設けてなるものとすることを特徴とする(請求項3)。前記実施態様により、全体として、高い圧力や極端な圧力集中の発生が抑制でき、また褥瘡発生も抑制できる。なお、前記支持部は、額縁状とせずに、前記緩衝部を嵌める部分のみに緩衝部と同形状の穴を設けるようにしてもよい。
【0030】
さらに、前記請求項3に記載の椅子用クッションにおいて、前記額縁状の支持部は、前記臀部背面に当接する額縁の一辺と直交する2つの辺に、大腿骨における大転子当接防止用の切り欠き部を設けてなるものとすることを特徴とする(請求項4)。これにより、大転子部の圧力集中を回避できる。さらにまた、前記請求項1ないし4のいずれか1項に記載の椅子用クッションにおいて、前記緩衝部は、その座面の輪郭が、尾骨と両坐骨結節を結ぶ三角形の三辺を中心とする所定の等圧線に沿う波状の軌跡線を有し、全体として多角星形状を備えるものとすることを特徴とする(請求項5)。これにより、詳細は後述するが、緩衝部に作用した体圧を多角星形状部において支持部に徐々に分散すること(グラデーション)が可能となり、体圧分散効果の向上を図ることができる。
【0031】
なお、前述のような支持部の機能は備えないものの、体圧分散効果の向上を図ることを主眼とした場合には、下記請求項6の発明が好ましい。即ち、椅子や車椅子などの座部に用いる椅子用クッションにおいて、反発性が小さい材料からなり臀部を支える緩衝部と、前記緩衝部より反発性が大きい材料からなり、中央部に前記緩衝部を嵌入する穴または溝を有し、かつ実質的に座部全域にわたって配設され、座圧力を座部全域に分散する座圧力分散追従部とを備え、さらに、前記緩衝部は、その座面の輪郭が、尾骨と両坐骨結節を結ぶ三角形の三辺を中心とする所定の等圧線に沿う波状の軌跡線を有し、全体として多角星形状を備えるものとすることを特徴とする(請求項6)。
【0032】
また、前記請求項1ないし6のいずれか1項に記載の椅子用クッションにおいて、前記緩衝部と支持部,または緩衝部と座圧力分散追従部上方の座部全域にわたって配設され、前記緩衝部より反発性が大きいか又は同等の材料からなる着座部を備えるものとすることを特徴とする(請求項7)。これにより、座り心地を向上することができる。さらに、前記請求項1ないし5もしくは7のいずれか1項に記載の椅子用クッションにおいて、前記支持部は、その臀部支持部と大腿支持部とが、互いに独立して分割配置されてなることを特徴とする(請求項8)。これにより、部品点数は増大するものの、支持機能および体圧分散機能等の機能が明確になり、座り心地を向上することができる。
【0033】
また、前記請求項1ないし8のいずれか1項に記載の椅子用クッションにおいて、前記緩衝部,支持部,座圧力分散追従部または着座部の相互接触面間は、座圧力に対して各部相互が自由に動き得る接着状態、または無接着状態もしくは遊嵌状態とすることを特徴とする(請求項9)。これにより、体圧に伴う各部材の変形が、隣接する部材の体圧分散機能を阻害することがないので、各部材間を接着する場合に比較して、体圧分散機能の向上が図れる。
【0034】
さらに、前記請求項1ないし9のいずれか1項に記載の椅子用クッションにおいて、前記緩衝部,支持部,座圧力分散追従部または着座部の材料は、通気性を有するウレタンフォームとすることを特徴とする(請求項10)。これにより、褥瘡発生環境が改善され、褥瘡発生の抑制効果が向上する。
【0035】
さらにまた、前記請求項1ないし10のいずれか1項に記載の椅子用クッションにおいて、前記緩衝部,支持部,座圧力分散追従部または着座部は、これらの部材が総合的に内包される外包みを備えてなり、前記外包みの少なくとも座面の材料は、抗菌および撥水加工をしてなるものとすることを特徴とする(請求項11)。これにより、クッションの安全な使用と取り扱いの容易化を図ることができる。
【0036】
最後に、車椅子としては、前記請求項1ないし11のいずれか1項に記載の椅子用クッションを備えることを特徴とする(請求項12)。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、着座姿勢や臀部形状の個人差にかかわらず、高い圧力や極端な圧力集中の発生を抑制可能とし、座り心地が良く、また、長時間使用しても褥瘡発生が抑制可能な椅子用クッションおよび同クッションを備える車椅子を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
図面に基づき、本発明の実施形態について述べる。まず、図1および図2により、基本的な実施形態とその変形例について述べる。図1は、本発明の椅子用クッションを示し、(a)はその斜視図、(b)〜(f)は、(a)に示す椅子用クッションをA−A’で分割した左半分をみた図で、(b)はその背面図、(c)はその左側面図、(d)はその平面図、(e)はその右側面断面図、(f)はその正面図である。また、図2は、本発明の椅子用クッションの基本的な実施形態とその変形例に関する分解図を示し、(C),(D),(E)はそれぞれ異なる実施形態の分解図、(A),(B)は(C)の実施形態の機能を説明する便宜上の分解部分図である。
【0039】
図1、図2において、1は椅子用クッション、2は緩衝部、3は支持部、4は座圧力分散追従部、5は着座部を示す。また、3aは臀部支持部、3bは大腿支持部、3cは支持部における穴、3dは支持部における切り欠き部、4aは座圧力分散追従部における穴または溝を示す。
【0040】
図1および図2(C)の実施形態に示すように、本発明の椅子用クッション1は、反発性が小さい材料からなり臀部を支える緩衝部2と、臀部後方において少なくとも仙骨,尾骨および座骨結節部を除く両大殿筋部を支持する臀部支持部3aと、大腿支持部3bとを有し、かつ他の材料に比較して最も反発性が大きい材料からなる支持部3と、中央部に緩衝部2を嵌入する穴または溝4aを有し、支持部3より反発性が小さいか又は同等の材料からなり、少なくともその一部は支持部3の下方にあってかつ実質的に座部全域にわたって配設され、座圧力を座部全域に分散する座圧力分散追従部4とを備える。
【0041】
また、支持部3は、中央部に少なくとも緩衝部2を貫通可能な穴3cを備える。この穴3cは、緩衝部と同形状の穴でもよいが、図2に示す例においては、支持部3を額縁状とし、さらに、臀部支持部3aを額縁の一辺の両側に設け、この部分を臀部下方後方部に当接するように構成している。さらにまた、前記額縁の一辺と直交する2つの辺には、切り欠き部3dを設けて、大腿骨における大転子の当接を防止する構成としている。また、緩衝部2は、全体として多角星形状とし、後に詳述するように、座圧のグラデーションを図っている。なお、図2(A)および(B)は、それぞれ、支持部3と座圧力分散追従部4との組み合わせ、および前記請求項6に関わる緩衝部2と座圧力分散追従部4との組み合わせを示し、機能的には、(A)および(B)の組み合わせにより、図2(C)が構成されることを示す。
【0042】
次に、図2(D)および(E)の実施態様について述べる。図2(D)は、図2(C)の実施形態に着座部5を追加した実施形態である。緩衝部より反発性が大きいか又は同等の材料からなる着座部5を備えるものとすることにより、座り心地を向上することができる。また、図2(E)は、支持部3の臀部支持部3aと大腿支持部3bとを、互いに独立して分割配置した実施形態である。前記図2(C)ないし(E)の実施形態において、前記緩衝部2,支持部3,座圧力分散追従部4または着座部5の相互接触面間は接着せずに、体圧に伴う各部材の変形が、隣接する部材の体圧分散機能を阻害することがないようにしている。この場合、クッションの取り扱いの容易化を図るために、前記各部材を総合的に内包する図示しない外包みを設け、さらに、安全上の観点から、前記外包みの少なくとも座面の材料は、抗菌および撥水加工をしてなるものとする。また、褥瘡発生防止の観点から、前記緩衝部2,支持部3,座圧力分散追従部4または着座部5の材料は、通気性を有するウレタンフォームとすることが好ましい。
【0043】
なお、各部の材料に関しては、上記ウレタンフォーム以外の材料を含む使用可能な材料の詳細について、後述する実施例の項で、総括的に述べる。また、前記図2(C)ないし(E)の実施形態において、臀部支持部3aとしては、着座部5側に張り出す例のみを示したが、座圧力分散追従部4側にも張り出す構成としてもよい。この場合には、座圧力分散追従部4が座部全域にわたって配設されることはなく、前記臀部支持部3aの張り出し部分がカットされることもある。
【0044】
上記本発明によれば、着座姿勢や臀部形状の個人差にかかわらず、高い圧力や極端な圧力集中の発生を抑制可能とし、座り心地が良く、また、長時間使用しても褥瘡発生が抑制可能な椅子用クッションおよび同クッションを備える車椅子が得られる。これらの作用効果について、前記本発明の課題(1)〜(4)に関連づけて、以下に述べる。
【0045】
まず、課題(1)の圧力集中の抑制に関して述べる。図3は、反発弾性の異なる材料の組み合わせによる、圧力集中抑制の作用原理を説明する図である。図3においては、上中下段の3つの図を示すが、上段の図のような平板の場合には、変位に応じた圧力集中が起こることを示す。また、中段の図は、例えばモールドにより、臀部形状に沿った板を形成した場合を示すが、この場合には、臀部形状の個人差に基づき、圧力集中が発生する場合があることを示す。下段の図は、反発弾性の異なる材料を組み合わせ、臀部に相対的に反発性が小さい材料を用いることにより、座圧を分散させ、圧力集中が抑制できることを示す。前記図2(B)の構成、即ち、図2(B)において反発性が小さい材料からなる緩衝部2と、座圧力分散追従部4との組み合わせ構成は、図3の下段と同様の構成であり、図2(C)ないし(E)の本願の実施態様は、上記の座圧分散機能を有する。なお、反発性が異なる材料を組み合わせる技術に関しては、例えば前記特許文献1や3にも開示されている。
【0046】
次に、課題(2)に関わり、先行技術には開示のない本願発明の臀部支持部3aの作用効果に関して述べる。図4は、臀部支持部がない場合の座圧力の発生状態を示す図で、(a)は着座面の傾斜がない場合、(b)は着座面に傾斜がある場合を示す。着座姿勢において体幹の自重により、重心は後方へ移動することとなり、また着座面における支持圧力は、後方程大きくなる。また車椅子等の座面は、後方程低くなる傾斜を有しているため重心はさらに後方へ移動する。(b)図において、黒塗りの円で示す部分Gは、圧力が集中する領域を示し、生体にストレスを与える領域である。
【0047】
そこで、上記問題点を解消するため本願発明においては、図2で示すように、臀部後方において少なくとも仙骨,尾骨および座骨結節部を除く両大殿筋部を支持する臀部支持部3aを設ける。図5は、臀部支持部3aを設けた場合の支持力と重心の変化の状態を説明する図である。また、図6は、骨盤を臀部支持部3aで支持する状態の説明図で、(a)は骨盤の後傾斜を支える状態を説明する図、(b)は、臀部支持部3aを骨盤背面部分の左右両側に設け、骨盤を斜め後方から支持する状態を説明する図である。
【0048】
上記のような臀部支持部3aを設けることにより、褥瘡発生の多い部位を避けて臀部の後方部が支持可能となり、臀部形状の個人差にかかわらず、圧力集中の抑制と褥瘡発生の抑制が可能となる。さらに、臀部支持部3aは、不良な着座姿勢を矯正する効果もあり、着座姿勢にかかわらず圧力集中の抑制効果がある。ちなみに、図7は椅子に人が座った状態の体圧分布の比較図であり、(a)はクッションなしの場合、(b)は平板クッションを設けた場合、(c)は本願発明に係る前記臀部支持部3aを有するクッションを設けた場合を示す。(c)の場合、圧力集中が分散していることがわかる。
【0049】
次に、課題(3)に関わり、座圧力分散追従部4の上に支持部3を設けることの作用効果について、図8に基づいて述べる。図8は、上記構成による圧力集中抑制の作用原理を説明する図である。図8においては、(a)〜(d)の4つのケースを比較して説明するが、(a)は平板単一素材への着座の場合、(b)は支持体を中層枠形状に入れた場合(前記図2(D)に相応)、(c)はモールド単一素材の場合、(d)は支持体が追従層の上に位置する場合(前記図2(C)に相応)を示す。
【0050】
図8の各図の右側の欄に各ケースについて詳細に説明をしているが、要するに、(a)の平板単一素材の場合には、小さな変形部分での反発性が低いので、身体の動揺に対する支持性が劣るが、(b)の構成のように、変形の少ない部分に支持部(図の黒塗り部)を設けた場合には、反発力が高く支持性が向上し、かつ体圧分散が図れることを示す。また、図8(c)の場合には、モールド形状とは異なる臀部形状の場合、形状に合わない部分が片当り・底付きとなり、圧力集中が発生するが、(d)の構成のように、支持体(図の黒塗り部)の下部に反発弾性の低い材料を組み合わせた場合には、臀部形状に追従させることができ、体圧分散が図れることを示す。
【0051】
前記図2(C)においては、図8(d)の構成のように、支持部3と座圧力分散追従部4とを組み合わせている。なお、支持部3は臀部の前後を、着座圧力が比較的少ない部分で連結して額縁状に形成し、かつ臀部後方に、臀部支持部3aを備えるものとしている。また、前記図2(D)においては、図8(b)の構成のように、着座部5と座圧力分散追従部4との間に支持部3を組み合わせて、支持部3は、額縁状でかつ臀部支持部3aを備えるものとしている。前記図2(E)に関しても同様である。上記構成により、いずれも、好適な臀部支持と体圧分散を可能としている。
【0052】
また、図2(C)〜(E)の構成における支持部3は、大転子当接防止用の切り欠き部3dを備える。これにより、大転子への局部的圧迫が解消できる。図9は、大転子当接防止用の切り欠き部の効果に関わる着座体圧分布の比較図であり、(a)は切り欠き部無しの場合、(b)は切り欠き部有りの場合である。図9によれば、切り欠き部を設けることにより、圧力分散が図られていることがわかる。
【0053】
次に、各部材料を通気性がよいものとすることにより、課題(4)が達成できる。この点に関しては、実施例の項で詳述する。
【0054】
最後に、請求項5および請求項6に関わり、「緩衝部2の座面の輪郭が、尾骨と両坐骨結節を結ぶ三角形の三辺を中心とする所定の等圧線に沿う波状の軌跡線を有し、全体として多角星形状を備える」効果について述べる。
【0055】
着座した場合の臀部の体圧分布は、図10(a)に示すように、座骨結節を中心とした複数の等圧線を有する体圧分布となる。これに対し、前記のような反発性の異なる材料を組み合わせることにより、体圧分散が図れるが、その際、材料の境界において反発弾性が、断層的に急激に変化する。これにより、急激な力学特性の変化が生ずるので、局部的なストレスが発生し座り心地に影響する。
【0056】
図10(b)は図10(a)に基づき等圧線をスムースな形状にして圧力階層を年輪的に示した分布図である。等圧線の幅、分布面積、圧力値等は、臀部形状により異なる。前記力学特性の急変を緩和するためには、前記図10(b)の年輪が多い方が望ましく、これに合わせて、順次反発弾性が異なる材料を配置することが望ましいが、この場合には、製造コストが増大し、実用的ではない。また、前記特許文献1に記載されたクッションにおいては、反発弾性が異なる材料の境界面に傾斜を設けた構成が開示されているが、この構成の場合、材料の境界面の面積が増大するのでストレスを緩和する効果がある。しかしながら、境界面が直線状ではない場合には、製造上の問題も考慮すると傾斜面の増大には限界がある。
【0057】
そこで、図2の実施形態においては、緩衝部2の座面の輪郭を前記多角星形状を備えるものとしている。この多角星形状に関して、図11に基づき詳述する。図11(b)は着座時の体圧分布と、尾骨と両坐骨結節を結ぶ三角形Tとを重ねて示す図、図11(a)は前記三角形Tと、臀部の比較的圧力の高い部分を包含する所定の等圧線Pと、多角星形状との関係を示す図である。図11(b)に示すように、尾骨と両坐骨結節を結ぶ三角形Tを中軸として、複数の等圧線が形成されている。図11(a)に示す前記所定の等圧線Pは、着座姿勢が前ズレとなる場合を考慮して設定し、緩衝部2の座面の輪郭は、この等圧線Pに沿う波状の軌跡線を有し、全体として多角星形状を備えるものとして決定する。前記波の数は多い程、緩和面積が増大するが、あまり多いと製造が困難となる。効果と製造上のことを考慮すると、波の数は、5〜20個程度が好ましい。緩衝部2の前記多角星形状は、上記観点を総合的に考えてニーズに応じた設計を行えばよく、図示の形状及び寸法に限定されるものではなく、この技術思想の範囲内において、種々の変形があり得る。
【0058】
また、反発弾性が異なる材料の境界面を、前述のように前記多角星形状とはせずに、下記のような構成の緩衝手段を設けることによって、前記力学特性の急変を緩和することもできる。即ち、体積変形しない軟質材料のゲル体や流動体を異種フォーム境界面に組み合わせた緩衝手段である。前記ゲル体とは、特許文献6に記載のゲル体であり、例えば、高弾性体フォームと低弾性体フォームとの突き合わせ面に、両者にまたがって、前記ゲル体を断面半円状に設ける。この構成によれば、ゲルや流動体は、体積変形し難いため、フォームから伝わる変形による反発力の弱い方へ、大きく変形する。その結果、境界面付近の反発力を分散することができ、境界の急激な弾性特性の変化を緩和することができる。
【0059】
さらに、前記図2(D)の緩衝部2を、弾性が極端に低いゲル体に変更し、このゲル体の緩衝部2を着座部5に嵌めこむように構成し、かつ座圧力分散追従部4と緩衝部2との間には、ゲル体の変形を逃がすための隙間を設ける構成とすることもできる。この構成によれば、前記隙間に対してゲル体は柔軟に変形し、境界の急激な弾性特性の変化を緩和することができる。
【実施例】
【0060】
次に、本発明の実施例および性能評価を行った結果等について、各種比較例(市販品1〜3およびクッションなし)と共に、以下に述べる。図12は、実施例および各種比較例の形状,寸法,重量を含む構成等に関する緒言と、圧力分布,最大圧力,平均圧力等の計測結果、並びに後述する官能評価(座り心地評価)結果について示す。なお、図12の製品欄において、「なし」は、クッションがない場合を示す。また、実施例は、図2(D)の実施形態に関わる実施例を示し、市販品1,2,3は、それぞれ、特許文献7,1,6に相当する製品を示す。構成等に関する緒言は、主要な緒言のみを示す。
【0061】
ところで、図12の実施例における各部の材質とその物性や特性に関し、図13の右側の実施例の欄に示す。図13の左側の欄は、各部(着座部,緩衝部,支持部,座圧力分散追従部および図2には図示しない外包み)の使用可能な材料を広く示し、各材質とその物性や特性等を示す。
【0062】
車椅子クッションの性能を評価する指標としては、圧力の低減性,圧力集中の分散性,座り心地(感覚),温度や湿度の上昇低減性等が評価項目となる。上記圧力の低減性は、最大圧(坐骨結節部周囲等)及び平均圧力の測定により、圧力集中の分散性は最大圧や圧力分布図等の計測により判断できる。なお、圧力測定は、圧力分布測体装置による。また、座り心地(感覚)は被験者アンケートに基づく官能評価により判断した。さらに、温度や湿度の上昇低減性は被験者の坐骨結節部・臀裂部での温度・湿度の時間的経過の計測により判断できる。なお、温度に関しては、各製品の熱容量が異なるため、通気性以外の要因の影響が大きいので、ここでは、後述する湿度の時間的経過の計測結果により判断した。
【0063】
図12によれば、実施例は、比較例に比べて、平均圧力および最大圧力値が最も低位であり、また圧力分布測定結果からも体圧分散性が優れていることがわかる。さらに、アンケートに基づく官能評価(5点満点)の数値も最大であり、座り心地(感覚)も最も優れていることが判った。なお、官能評価については、以下に詳述する。
【0064】
座り心地の感覚(好き嫌い)は、個人・使用目的・環境によって変化する。そのため、車椅子クッションとして、車椅子上での個人が普段(無意識)に座る姿勢と理想座位での着座を行った時の臀部での片当り・沈み込み感・着座時の安定感を基準として、18名の健常者を対象とするアンケートにより評価した。
【0065】
官能試験(アンケート)は、5点満点とし、実施例の場合、4.7の最高点であった。市販品1の場合は、姿勢や被験者の体型から片当りを感じるため評価が低く、その評価点は3.1であった。また、市販品2の場合は、実施例と同じフォーム系の構成のため評価が高めであるが、深い沈みこみ感を感じる点が指摘され、評価点は3.7で次点の評価であった。市販品3のゲルを用いたクッションは、荷重分散性や冷たさのため、1.5の最低評価点となった。
【0066】
次に、湿度の測定結果について述べる。着座開始後の湿度の時間推移は、着座中における臀部・クッション間及びクッション内での、生体から放出される水分の残留に関係し、水分の放出性が悪いと、時間経過とともに湿度は大きくなる。生体が感じる湿度の影響を測定するために、坐骨結節部(圧力が高くなると生体からの発散度が高くなる)、臀裂(泌尿器官等により湿度変化の影響が高い)部分での測定が有効であり、小型センサーにより着座の圧力環境を変えない状態での測定を実施した。
【0067】
図14は、着座後の湿度の変化の一例を示す。図14において、縦軸は湿度(%RH)であり、横軸は着座開始後の時間(分)を示す。3個の湿度変化曲線の内、Aは実施例、Bは市販品1、Cは市販品2を示す。図14によれば、実施例Aの湿度の増大が最も低く、実施例Aは、褥瘡発生の抑制上、最も好適であることが判った。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の椅子用クッションの実施形態に関わる構成図。
【図2】本発明の椅子用クッションの実施形態とその変形例に関する分解図。
【図3】反発弾性の異なる材料の組み合わせによる、圧力集中抑制の作用原理を説明する図。
【図4】臀部支持部がない場合の座圧力の発生状態を示す図。
【図5】臀部支持部を設けた場合の支持力と重心の変化の状態を説明する図。
【図6】骨盤を臀部支持部で支持する状態の説明図。
【図7】椅子に人が座った状態の体圧分布の比較図。
【図8】座圧力分散追従部の上に支持部を設けることの作用効果を説明する図。
【図9】大転子当接防止用の切り欠き部の効果に関わる着座体圧分布の比較図。
【図10】着座した場合の臀部の体圧分布図。
【図11】緩衝部の座面の輪郭を多角星形状とすることに関する説明図。
【図12】本発明の実施例および比較例に関し性能評価を行った結果を示す図。
【図13】実施例を含む実施形態各部の材質とその物性や特性を示す図。
【図14】着座後の湿度の変化の一例を比較例と共に示す図。
【図15】肢の骨と筋の説明図。
【図16】骨盤を説明する背面図。
【図17】姿勢が良くない座り方の代表的な例を示す図。
【図18】特許文献6に開示された褥創予防マットの構成を示す斜視図。
【図19】特許文献7に開示された座部システムの斜視図。
【図20】特許文献2に開示された座位保持クッションの要部斜視図。
【図21】特許文献4に開示された座椅子上に設けたクッションシートの斜視図。
【図22】特許文献5に開示されたシートクッションの説明図。
【図23】特許文献1に開示された車椅子の座部に用いた座クッションの斜視図。
【図24】図23に示す座クッションの左半分の分解図。
【図25】特許文献1に開示された車椅子の側面図。
【符号の説明】
【0069】
1 椅子用クッション
2 緩衝部
3 支持部
3a 臀部支持部
3b 大腿支持部
3c 支持部における穴
3d 支持部における切り欠き部
4 座圧力分散追従部
4a 座圧力分散追従部における穴または溝
5 着座部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
椅子や車椅子などの座部に用いる椅子用クッションにおいて、
反発性が小さい材料からなり臀部を支える緩衝部と、臀部後方において少なくとも仙骨,尾骨および座骨結節部を除く両大殿筋部を支持する臀部支持部と、大腿支持部とを有し、かつ他の材料に比較して最も反発性が大きい材料からなる支持部と、中央部に前記緩衝部を嵌入する穴または溝を有し、前記支持部より反発性が小さいか又は同等の材料からなり、少なくともその一部は前記支持部の下方にあってかつ実質的に座部全域にわたって配設され、座圧力を座部全域に分散する座圧力分散追従部と、を備えることを特徴とする椅子用クッション。
【請求項2】
前記支持部は、前記座圧力分散追従部の外周部上部に設けられ、かつ、その中央部に少なくとも前記緩衝部を貫通可能な穴を備えることを特徴とする請求項1に記載の椅子用クッション。
【請求項3】
前記支持部は、前記座圧力分散追従部の外周部上部に額縁状に設けられ、かつ前記臀部支持部を、臀部下方後方部に当接する額縁の一辺の両側に設けてなるものとすることを特徴とする請求項2に記載の椅子用クッション。
【請求項4】
前記額縁状の支持部は、前記臀部背面に当接する額縁の一辺と直交する2つの辺に、大腿骨における大転子当接防止用の切り欠き部を設けてなるものとすることを特徴とする請求項3に記載の椅子用クッション。
【請求項5】
前記緩衝部は、その座面の輪郭が、尾骨と両坐骨結節を結ぶ三角形の三辺を中心とする所定の等圧線に沿う波状の軌跡線を有し、全体として多角星形状を備えるものとすることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の椅子用クッション。
【請求項6】
椅子や車椅子などの座部に用いる椅子用クッションにおいて、
反発性が小さい材料からなり臀部を支える緩衝部と、前記緩衝部より反発性が大きい材料からなり、中央部に前記緩衝部を嵌入する穴または溝を有し、かつ実質的に座部全域にわたって配設され、座圧力を座部全域に分散する座圧力分散追従部とを備え、さらに、前記緩衝部は、その座面の輪郭が、尾骨と両坐骨結節を結ぶ三角形の三辺を中心とする所定の等圧線に沿う波状の軌跡線を有し、全体として多角星形状を備えるものとすることを特徴とする椅子用クッション。
【請求項7】
前記緩衝部と支持部,または緩衝部と座圧力分散追従部上方の座部全域にわたって配設され、前記緩衝部より反発性が大きいか又は同等の材料からなる着座部を備えることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の椅子用クッション。
【請求項8】
前記支持部は、その臀部支持部と大腿支持部とが、互いに独立して分割配置されてなることを特徴とする請求項1ないし5もしくは7のいずれか1項に記載の椅子用クッション。
【請求項9】
前記緩衝部,支持部,座圧力分散追従部または着座部の相互接触面間は、座圧力に対して各部相互が自由に動き得る接着状態、または無接着状態もしくは遊嵌状態とすることを特徴とする請求項1ないし8のいずれか1項に記載の椅子用クッション。
【請求項10】
前記緩衝部,支持部,座圧力分散追従部または着座部の材料は、通気性を有するウレタンフォームとすることを特徴とする請求項1ないし9のいずれか1項に記載の椅子用クッション。
【請求項11】
前記緩衝部,支持部,座圧力分散追従部または着座部は、これらの部材が総合的に内包される外包みを備えてなり、前記外包みの少なくとも座面の材料は、抗菌および撥水加工をしてなるものとすることを特徴とする請求項1ないし10のいずれか1項に記載の椅子用クッション。
【請求項12】
前記請求項1ないし11のいずれか1項に記載の椅子用クッションを備えることを特徴とする車椅子。
【請求項1】
椅子や車椅子などの座部に用いる椅子用クッションにおいて、
反発性が小さい材料からなり臀部を支える緩衝部と、臀部後方において少なくとも仙骨,尾骨および座骨結節部を除く両大殿筋部を支持する臀部支持部と、大腿支持部とを有し、かつ他の材料に比較して最も反発性が大きい材料からなる支持部と、中央部に前記緩衝部を嵌入する穴または溝を有し、前記支持部より反発性が小さいか又は同等の材料からなり、少なくともその一部は前記支持部の下方にあってかつ実質的に座部全域にわたって配設され、座圧力を座部全域に分散する座圧力分散追従部と、を備えることを特徴とする椅子用クッション。
【請求項2】
前記支持部は、前記座圧力分散追従部の外周部上部に設けられ、かつ、その中央部に少なくとも前記緩衝部を貫通可能な穴を備えることを特徴とする請求項1に記載の椅子用クッション。
【請求項3】
前記支持部は、前記座圧力分散追従部の外周部上部に額縁状に設けられ、かつ前記臀部支持部を、臀部下方後方部に当接する額縁の一辺の両側に設けてなるものとすることを特徴とする請求項2に記載の椅子用クッション。
【請求項4】
前記額縁状の支持部は、前記臀部背面に当接する額縁の一辺と直交する2つの辺に、大腿骨における大転子当接防止用の切り欠き部を設けてなるものとすることを特徴とする請求項3に記載の椅子用クッション。
【請求項5】
前記緩衝部は、その座面の輪郭が、尾骨と両坐骨結節を結ぶ三角形の三辺を中心とする所定の等圧線に沿う波状の軌跡線を有し、全体として多角星形状を備えるものとすることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の椅子用クッション。
【請求項6】
椅子や車椅子などの座部に用いる椅子用クッションにおいて、
反発性が小さい材料からなり臀部を支える緩衝部と、前記緩衝部より反発性が大きい材料からなり、中央部に前記緩衝部を嵌入する穴または溝を有し、かつ実質的に座部全域にわたって配設され、座圧力を座部全域に分散する座圧力分散追従部とを備え、さらに、前記緩衝部は、その座面の輪郭が、尾骨と両坐骨結節を結ぶ三角形の三辺を中心とする所定の等圧線に沿う波状の軌跡線を有し、全体として多角星形状を備えるものとすることを特徴とする椅子用クッション。
【請求項7】
前記緩衝部と支持部,または緩衝部と座圧力分散追従部上方の座部全域にわたって配設され、前記緩衝部より反発性が大きいか又は同等の材料からなる着座部を備えることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の椅子用クッション。
【請求項8】
前記支持部は、その臀部支持部と大腿支持部とが、互いに独立して分割配置されてなることを特徴とする請求項1ないし5もしくは7のいずれか1項に記載の椅子用クッション。
【請求項9】
前記緩衝部,支持部,座圧力分散追従部または着座部の相互接触面間は、座圧力に対して各部相互が自由に動き得る接着状態、または無接着状態もしくは遊嵌状態とすることを特徴とする請求項1ないし8のいずれか1項に記載の椅子用クッション。
【請求項10】
前記緩衝部,支持部,座圧力分散追従部または着座部の材料は、通気性を有するウレタンフォームとすることを特徴とする請求項1ないし9のいずれか1項に記載の椅子用クッション。
【請求項11】
前記緩衝部,支持部,座圧力分散追従部または着座部は、これらの部材が総合的に内包される外包みを備えてなり、前記外包みの少なくとも座面の材料は、抗菌および撥水加工をしてなるものとすることを特徴とする請求項1ないし10のいずれか1項に記載の椅子用クッション。
【請求項12】
前記請求項1ないし11のいずれか1項に記載の椅子用クッションを備えることを特徴とする車椅子。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【公開番号】特開2006−200(P2006−200A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−177091(P2004−177091)
【出願日】平成16年6月15日(2004.6.15)
【出願人】(000151380)アルケア株式会社 (88)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年6月15日(2004.6.15)
【出願人】(000151380)アルケア株式会社 (88)
【Fターム(参考)】
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