説明

椅子用床ずれ防止クッション

【課題】長期間の着座による床ずれを防止しながらも移乗時の不安定さを解消することの
できる椅子用床ずれ防止クッションの提供。
【解決手段】椅子Cの座面に載置して用いる椅子用床ずれ防止クッションにおいて、体圧
分散性を有する第1の領域11と、この第1の領域11を囲繞するとともに、当該第1の
領域11よりも硬質とした第2の領域12と、を有するクッション本体10を具備するこ
とを特徴とする椅子用床ずれ防止クッション1とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、椅子用床ずれ防止クッションに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車椅子生活などを余儀なくされている者は、着座姿勢が長時間に及ぶことから、
臀部に所謂床ずれを引き起こすことが多く、これを防止するためのクッションが種々提案
されている。例えば、臀部を支持するクッションとして、複数のエアセルを備え、エア給排気により
このエアセルを膨縮させることにより、長時間の着座による床ずれを防止することのでき
るクッションが知られている(例えば、特許文献1、2を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−261817号公報
【特許文献2】特開2007−167558号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、これら従来のクッションは、複数のエアセルがクッション全体に配列されてい
るため、例えば、これらを車椅子の座面に載置した場合、ベッドなどからこの車椅子に移
乗する際、クッションの側端部が撓んで状態が不安定になるため移乗し辛かった。
【0005】
特に、車椅子使用者は、移乗の際にトランスファーボードを利用する場合が多く、クッ
ションの側端までエアセルがあると、架け渡したトランスファーボードの端部がエアセル
内に沈み込むためトランスファーボードが安定しないばかりでなく、トランスファーボー
ドの端部によりエアセルが破損してしまう可能性もあった。
【0006】
そこで、本発明は、床ずれを防止しながらも移乗時の不安定さを解消することのできる
椅子用床ずれ防止クッションを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)上記課題を解決するため、本発明は、椅子の座面に載置して用いる椅子用床ずれ
防止クッションにおいて、体圧分散性を有する第1の領域と、この第1の領域を囲繞する
とともに、当該第1の領域よりも硬質とした第2の領域と、を有するクッション本体を具
備することを特徴とする椅子用床ずれ防止クッションとした。
【0008】
(2)また、本発明は、上記(1)に記載の発明において、前記第1の領域を、給排気
自在とした複数のエアセルを配置して形成する一方、前記第2の領域を発泡材により形成
したことを特徴とする。
【0009】
(3)また、本発明は、上記(2)に記載の発明において、前記第2の領域は、前記発
泡材により形成した枠体であり、この枠体で前記エアセルの端部に形成された鍔部を挟持
した状態で、前記第1の領域を囲繞したことを特徴とする。
【0010】
(4)また、本発明は、上記(1)〜(3)の何れかに記載の発明において、前記第1
の領域内に、押圧力に度合差をつけた領域を区画形成したことを特徴とする。
【0011】
(5)また、本発明は、上記(1)〜(4)の何れかに記載の発明において、前記第1
の領域内に、着座者の大腿部に対する刺激力に度合差をつけた領域を形成したことを特徴
とする。
【0012】
(6)また、本発明は、上記(1)〜(5)の何れかに記載の発明において、前記第2
の領域における着座者の大腿部に対応する位置に凹部を形成したことを特徴とする。
【0013】
(7)また、本発明は、上記(1)〜(6)の何れかに記載のクッション本体の下側に
ベースクッションを、上側にはカバークッションを重合配設し、前記カバークッションを
、前記ベースクッションよりも低反発材料で形成したことを特徴とする。
【0014】
(8)また、本発明は、上記(3)に記載の発明において、前記エアセルの給排気動作
を制御する制御ユニットと、前記クッション本体を覆うクッションカバーとを具備し、前
記クッションカバーは、少なくとも前記枠体の周側面を覆う部分に前記制御ユニットを収
納する収納部を有することを特徴とする。
【0015】
(9)また、本発明は、上記(8)に記載の発明において、前記収納部は、着座者前方
側の周側面に配置したことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本実施形態に係る椅子用床ずれクッションの使用状態を示す説明図である。
【図2】同クッションの分解斜視図である。
【図3】同クッションにおける第1の領域の模式的説明図である。
【図4】同クッションにおけるエアセルの制御ブロック図である。
【図5】同クッションにおけるエアセルの給気・排気タイミングの説明図である。
【図6】同クッションにおける第1の領域の模式的説明図である。
【図7】図6のA−A線における断面図である。
【図8】図6のB−B線における断面図である。
【図9】サイドクッションとベースクッションの変形例を示す説明図である。
【図10】エアセルの変形例を示す説明図である。
【図11】同クッションにおけるベースクッションの変形例を示す説明図である。
【図12】第2実施形態に係る椅子用床ずれ防止クッションの分解斜視図である。
【図13】同クッションにおけるクッションカバーの着座者前方側の側面図である。
【図14】同クッションにおける収納部のバリエーションを示す図である。
【図15】同クッションにおけるセルユニットの給排パイプの形状を説明するための図である。
【図16】同クッションの変形例である。
【図17】同クッションの変形例である。
【図18】第3実施形態に係る椅子用床ずれ防止クッションの使用状態図である。
【図19】同クッションの分解斜視図である。
【図20】同クッションの背面斜視図である。
【図21】同クッションのおける保持部の変形例である。
【図22】同クッションにおける保持部の変形例である。
【図23】同クッションの変形例である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明によれば、クッション本体は、体圧分散性を有する第1の領域を囲繞する第2の
領域を有し、さらに、当該第2の領域を第1の領域よりも硬質としたため、着座者の床ず
れを防止しながらも移乗時の不安定さを解消することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
〔第1実施形態について〕
まず、本発明にかかる椅子用床ずれ防止クッションの第1実施形態について説明する。
【0019】
本実施形態に係る椅子用床ずれ防止クッションは、椅子の座面に載置して用いられるも
のであり、体圧分散性を有する第1の領域と、この第1の領域を囲繞するとともに、当該
第1の領域よりも硬質とした第2の領域と、を有するクッション本体を具備するものであ
る。
【0020】
第1の領域は、合成樹脂など比較的軟質の素材で形成され、着座者の臀部や大腿部など
に局部的に大きくかかる加重を分散させる性能、所謂体圧分散性を有している。この第1
の領域によって、本実施形態に係る椅子用床ずれ防止クッションは、長期間着座した状態
の着座者の床ずれを防止することを可能としている。
【0021】
そして、本実施形態に係る椅子用床ずれ防止クッションは、第1の領域よりも硬質な素
材で形成された第2の領域を有しており、この第2の領域は、第1の領域を囲繞するよう
に配設されている。かかる構成とすることにより、例えば、当該クッションを車椅子の座
面に載置した場合において、着座者がトランスファーボードを利用して、例えばベッド等
から車椅子へ移乗する場合、トランスファーボードの端部を当該第2の領域に安定して設
置することができるため、従来のクッションの課題であった移乗のしづらさを解消するこ
とが可能となる。
【0022】
また、本実施形態に係る椅子用床ずれ防止クッションは、体圧分散性を有する第1の領
域を、給排気自在とした複数のエアセルを配置して形成する一方、第2の領域を発泡材に
より形成している。
【0023】
すなわち、第1の領域は、配置された複数のエアセルがそれぞれ給排気によって膨縮す
るため、着座者の身体の特定箇所に集中してかかる荷重をより分散させ、当該着座者の床
ずれを有効に防止することができる。また、第2の領域を発泡材により形成することによ
り、クッションとしての使い心地の良さを維持しつつも移乗のし辛さを解消することがで
きる。
【0024】
また、本実施形態に係る椅子用床ずれ防止クッションにおける第2の領域は、発泡材に
より形成した枠体としている。この枠体でエアセルの端部に形成された鍔部を挟持した状
態で、第1の領域を囲繞することとしている。なお、発泡材としては、発泡ウレタンなど
が好適な材料となる。
【0025】
すなわち、枠状に形成された第2の領域により第1の領域の鍔部を挟持する構成とする
ことによって、使用者の臀部や大腿部を受ける第1の領域を狭めることなく、クッション
本体をコンパクト化することができ、例えば、座面の広さに限りがある車椅子などに載置
した場合に、体圧分散性を有する第1の領域の有効面積を可及的に広くとることができる
。さらに、前記構成によって第1の領域と第2の領域との一体性が高まり、クッション本
体としての使い心地の良さや使い勝手の良さを向上させることができる。
【0026】
また、本実施形態に係る椅子用床ずれ防止クッションは、第1の領域内に、押圧力に度
合差をつけた領域を区画形成している。
【0027】
すなわち、従来のクッションは、単に体圧分散を図っただけのものが多く、車椅子上で
の生活が主となる者には、さらなる改善点が残されていた。そこで、本実施形態では、例
えば、第1の領域における、臀部や大腿部など体重が集中してかかる部位に位置する部分
を特定の領域として区画形成し、当該特定の領域における身体への部位への押圧力(クッ
ションからの反力)の度合いを他の領域における押圧力よりも小さくすることにより、例
えば、着座者の坐骨周辺など、特定箇所に集中してかかる押圧力をより小さくし、第1の
領域における体圧分散性をより向上させることができるようにしている。
【0028】
さらに、本実施形態に係る椅子用床ずれ防止クッションは、第1の領域内に、着座者の
大腿部に対する刺激力に度合差をつけた領域を形成している。
【0029】
すなわち、例えば、第1の領域において、着座者の大腿部に対応する位置に小さな突起
を設けることにより、当該大腿部を刺激しマッサージ効果を得ることができる。また、第
1の領域を給排気自在とした複数のエアセルで形成した場合、当該大腿部に対応する位置
にあるエアセルの給排気タイミングを、他のエアセルの給排気タイミングよりも速くする
ことにより、当該大腿部を刺激し血流促進効果を促すことができる。
【0030】
また、本実施形態に係る椅子用床ずれ防止クッションは、第2の領域における着座者の
大腿部に対応する位置に凹部が形成されており、これにより、第1の領域が有する体圧分
散性能をより効果的に発揮させることができる。
【0031】
また、本実施形態に係る椅子用床ずれ防止クッションは、クッション本体の下側にベー
スクッションを、上側にはカバークッションを重合配設し、カバークッションを、ベース
クッションよりも低反発材料で形成している。
【0032】
かかる構成とすることにより、例えば、折り畳み式の車椅子のように、着座者の体重に
よって座面が大きく沈んでしまうような椅子に同クッションを適用した場合であっても、
ベースクッションによってクッション全体の形状を適度に維持することができ、さらに、
カバークッションをベースクッションよりも低反発材料で形成することにより、座り心地
の良さを維持することができる。
【0033】
以下、本実施形態に係る椅子用床ずれ防止クッションについて、図面を参照しながらよ
り具体的に説明する。図1は本実施形態に係る椅子用床ずれクッションの使用状態を示す
説明図であり、図2は同クッションの分解斜視図である。なお、ここでは、一例として、
椅子用床ずれ防止クッションを車椅子の座面に載置した場合について説明するが、本発明
は、これに限定するものではなく、オフィスチェアや折り畳み式の椅子など各種の椅子に
ついて適用することができる。
【0034】
図1に示すように、本実施形態に係る椅子用床ずれ防止クッション(以下、単に「クッ
ション1」とする。)は、車椅子Cの座面に載置して使用するものであり、汚れ防止のた
めクッションカバー2により被覆されている。なお、クッションカバー2は、洗濯可能な
透湿性素材を用いるとよい。
【0035】
クッション1は、第1の領域としてのセルユニット11と第2の領域としてのサイドク
ッション12とを有するクッション本体10を備え、さらに、このクッション本体10の
下側にベースクッション20を、上側にはカバークッション30を重合配設して形成され
ている。すなわち、クッション1は、カバークッション30、サイドクッション12、ベ
ースクッション20を外装として、セルユニット11を内蔵した状態となっている。
【0036】
図2に示すように、ベースクッション20は、クッション1の土台となる部材であり、
発泡ウレタンなどの発泡材のうち、高密度のものを用いて形成されている。また、このベ
ースクッション20は、セルユニット11の略下半分を収納可能とするため、同セルユニ
ット11の下面の形状に沿った段部89、90が形成されている。
【0037】
また、この段部89、90の底面部分における、着座者の臀部、特に坐骨を中心とした
箇所及び左右の大腿部に位置する箇所には、それぞれ切欠部81、82、83が形成され
ている。このように、臀部や大腿部など着座者にとって自己の体重が集中的にかかる部位
に対応する位置に切欠部81、82、83を設けることにより、臀部や大腿部かかる押圧
力を軽減させることができる。また、これら切欠部81、82、83は、ベースクッショ
ン20を矩形状に切欠しただけの簡易な構成のものであり、低コストでの製造が可能であ
る。
【0038】
なお、切欠部81、82、83は、必ずしもベースクッション20を切欠して形成され
るものである必要はなく、例えば、所定の深さを有する凹部であってもよい。かかる構成
とすることにより、ベースクッション20の強度が高まり、クッション1全体の安定性を
向上させることができる。ここで、所定の深さとしては、着座者が着座した状態でセルユ
ニット11の下面が当該凹部と接触しない程度の深さであることが望ましい。
【0039】
また、ベースクッション20には、後述するセルユニット11の給排気を行うための各
種部材(給排気装置など)を収納するスペースとしての切欠部84が同ベースクッション
20の後部左側に設けられている。
【0040】
カバークッション30は、板状部材であり、ベースクッション20に用いられる発泡材
よりも密度が小さく低反発の発泡材で形成されており、着座者の身体に馴染み易く、セル
ユニット11の体圧分散性を極力阻害しないようにしている。
【0041】
また、上記のように、クッション1は、カバークッション30を、ベースクッション2
0よりも低反発材料で形成したため、例えば、折り畳み式の車椅子のように、着座者の体
重によって座面が大きく沈んでしまうような椅子に同クッション1を適用した場合であっ
ても、ベースクッション20によってクッション1全体の形状を適度に維持することがで
きるとともに、カバークッション30によって座り心地の良さを維持することができる。
【0042】
クッション本体10は、体圧分散性を有するセルユニット11と同セルユニット11よ
りも硬質なサイドクッション12とを有している。
【0043】
セルユニット11は、合成樹脂からなる部材であり、矩形箱型のエアセル100を複数
配置して形成される。このエアセル100は、その内部に空気を給排自在に構成されてお
り、さらに、本実施形態においては、複数のエアセル100を、空気の給排が交互のタイ
ミングで行われる二系統に区分して、第1の系統に属するエアセル101と第2の系統に
属するエアセル102とが隣設するように配置している。このように、セルユニット11
は、空気の給排によってエアセル101及びエアセル102を交互のタイミングで膨縮さ
せることにより、体圧分散効果を得ることができる。かかる点については、後述する。
【0044】
また、セルユニット11には、エアセル100を複数配置してなる領域の端部に鍔部1
20が形成されており、この鍔部120上には、さらに、各エアセル100に空気を給排
するための給排パイプ130、140が形成されている。
【0045】
サイドクッション12は、セルユニット11よりも硬質な発泡ウレタンなどの発泡材に
より形成された枠体であり、当該セルユニット11を囲繞するように構成されている。
【0046】
また、このサイドクッション12の底部には、段部76が設けられている。
【0047】
また、このサイドクッション12における、着座者の両大腿部に対応する位置には、そ
れぞれ凹部71,72が形成されており、これにより、当該部位に集中的にかかる負荷を
小さくし、床ずれを防止することが可能となっている。また、同サイドクッション12の
後部左側には、後述するセルユニット11の給排気を行うための各種部材を収納するスペ
ースとしての切欠部73が設けられている。
【0048】
クッション1は、このように形成された各部材を、下からベースクッション20、セル
ユニット11、サイドクッション12、カバークッション30の順に積層することにより
形成される。
【0049】
そして、各部材を積層した際、クッション1は、ベースクッション20における上端部
88及び段部89からなる領域と、サイドクッション12の下端部75及び段部76とか
らなる領域とによって、セルユニット11の鍔部120が挟持される構成としている。
【0050】
次に、セルユニット11におけるエアセル100の給排気の仕組みについて、図3〜5
を用いて具体的に説明する。図3はセルユニット11の模式的説明図であり、図4はクッ
ション1におけるエアセル100の制御ブロック図であり、図5はエアセルの給気・排気
タイミングの説明図である。
【0051】
図3に示すように、セルユニット11は、複数のエアセル100を空気の給排が交互の
タイミングで行われる第1のエアセル101と第2のエアセル102に区分し、しかも、
第1のエアセル101と第2のエアセル102とを隣接するように配置している。また、
図中、130は、第1のエアセル101へ空気を給排する第1給排パイプ、140は、第
2のエアセル102へ空気を給排する第2給排パイプであり、両給排パイプ130、14
0は給排気装置5に連通連結している。また、第1、第2給排パイプ130,140は、
それぞれ連通管131、141を介して各エアセル101、102と連通している。なお
、図中、137、147は、排気バルブであり、手動でエアセル100の排気を行う際に
用いられる。このように、セルユニット11は、各給排パイプ130,140の給排気装
置5及び排気バルブ137,147との連結部分を、全てセルユニット11の後方左側の
一箇所に集中させており、かかる構成とすることにより、クッション1全体としての見栄
えの良さを保つとともに、使い勝手の良さを向上させることができる。
【0052】
給排気装置5は、内蔵したポンプにより各エアセル100へ空気を給排する装置である
。この給排気装置5は、予め設定された所定時間ごとに空気の送気流路を切り替えるよう
に制御されており、ポンプに連通する空気の送気流路が閉じられた場合は、逆に大気開放
されるように構成されている。
【0053】
上記構成により、給排気装置5を駆動すると、第1のエアセル101と第2のエアセル
102とには、交互に空気が充填されることとなる。このように、各エアセル101、1
02は、空気が充填されていない場合は、着座者の体重によって萎み、空気が充填された
場合は、膨張するという変化を繰り返すことにより、体圧分散効果を発揮して、床ずれを
防止することが可能となる。
【0054】
しかも、第1のエアセル101と第2のエアセル102とは、隣設するように配設され
ており、着座者の身体を保持する部分の入れ替わりも近接したところでなされるため、着
座者に体圧の変化を意識させることがなく、使い心地の良さを維持することができる。
【0055】
ここで、給排気装置5の構成について、図4及び図5を用いて説明する。
【0056】
図4中、Pは各エアセル100に給気するためのポンプであり、同ポンプPは、第1給
気用電磁弁61、第2給気用電磁弁62及び第1給排パイプ130、第2給排パイプ14
0を介して、それぞれ第1のエアセル101及び第2のエアセル102と連通連結してい
る。
【0057】
また、第1給排パイプ130の中途部には第1圧力センサS1が、第2給排パイプ14
0の中途部には第2圧力センサS2が設けられている。さらに、第1給気用電磁弁61と
第1圧力センサS1との間には第1排気用電磁弁63が、第2給気用電磁弁62と第2圧
力センサS2との間には第2排気用電磁弁64が設けられている。
【0058】
これら各電磁弁61〜64、圧力センサS1,S2及びポンプPは、制御部7により制
御される。
【0059】
すなわち、圧力センサS1、S2からのセンシング信号に基づいて、ポンプPの駆動・
駆動停止、及び各電磁弁61〜64の開閉動作をタイミングを計りながら実行することに
より、第1のエアセル101と第2のエアセル102とに空気を交互に給排するようにし
ている。
【0060】
また、図中、Vは家庭用電源(交流100V)であり、ポンプPに給電するとともに、
トランスTを介して制御部7に接続している。
【0061】
ここで、上記制御部7は、刺激モードと、体圧分散モードとを備えており、図5に示す
ように刺激モードと体圧分散モードが交互に行なわれる。
【0062】
すなわち、制御部7は、実線で示すように、先ず第1のエアセル101に対して給気を
行い、膨張状態を所定秒(5秒程度)維持させた後、所定時間だけ排気を行う。
【0063】
さらに、制御部7は、第1のエアセル101の排気と同時に第2のエアセル102の給
気を開始し、当該第2のエアセル102の膨張状態を所定秒(5秒程度)維持させた後、
所定時間だけ排気を行う。この一連の動作を刺激モードとする。
【0064】
また、上記各エアセル101、102はいずれも全ての空気が排気されるのではなく、
いずれのエアセル101、102にも一部の空気は残したままの状態で所定秒(20秒程
度)維持される。この状態を体圧分散モードとする。なお、一部の空気を維持するには排
気時間で規定しても良いが、圧力センサS1、S2により所定の圧力を維持するように制
御してもよい。
【0065】
給排気装置5は、以上のようにして刺激モード及び体圧分散モードを交互に行う。クッ
ション1は、このように交互に異なるモードを規則的に実行することにより、一層の床ず
れ防止効果を発揮することができる。
【0066】
また、制御部7は、上記刺激モード及び体圧分散モードのほかに、セルユニット11に
設けられた全てのエアセル100を給気により膨張させ、かかる膨張状態を維持する高圧
静止モードを備えている。この高圧静止モードは、着座者が移乗を行う際に用いられるも
のであり、全てのエアセル100が膨張して高圧状態が維持されるため、より安定した移
乗が可能となる。
【0067】
さらに、かかる高圧静止モード中においては、エアセル100のみでなく給排パイプ1
30、140の膨張状態が維持されるため、トランスファーボード等を用いての移乗もよ
り安定して行うことができる。かかる点については、後述する。
【0068】
また、セルユニット11には、押圧力に度合差をつけた領域が区画形成されている。以
下、かかる構成について、図6〜9を用いてより詳細に説明する。図6はセルユニット1
1の模式的説明図であり、図7は図6のA−A線における断面図であり、図8は図6のB
−B線における断面図であり、図9はエアセル100の変形例を示す説明図である。
【0069】
図6に示すように、セルユニット11には、着座者の身体の部位に対する押圧力が他の
エアセル100と比較して小さいエアセル100による領域150、151、152(図
中、灰色で着色された領域)が区画形成されている。これらの領域は、それぞれ着座者の
臀部、右大腿部、左大腿部に対応する位置に設けられており、これらの部位に集中的にか
かる荷重を分散させることができる。
【0070】
本実施形態では、当該領域にあるエアセル100の高さを、他のエアセル100の高さ
よりも低く形成することにより、押圧力の度合差をつけることとしている。
【0071】
すなわち、図7に示すように、着座者の臀部に対応する領域150(以下、「臀部支持
領域150」とする。)に属するエアセル100は、その他のエアセル100と比較して
若干低く形成されている。また、図8に示すように、着座者の右大腿部に対応する領域1
51(以下、「右大腿部支持領域151」とする。)及び着座者の左大腿部に対応する領
域152(以下、「左大腿部支持領域152」とする。)に属するエアセル100も、臀
部支持領域150に属するエアセル100と同様に、その他のエアセル100と比較して
若干低く形成されている。かかる構成とすることにより、臀部支持領域150、右大腿部
支持領域151、左大腿部支持領域152に属するエアセル100による押圧力をその他
のエアセル100による押圧力よりも小さくすることができ、したがって、着座者の体重
が集中的にかかる臀部及び大腿部への押圧力をより小さくし、セルユニット11における
体圧分散性をより向上させて床ずれを防ぐことができる。なお、臀部支持領域150に属
するエアセル100は、上側のセル51と下側のセル52とを異なる高さに形成したが、
下側のセル52を上側のセル51と同じ高さに形成してもよい。
【0072】
さらに、ベースクッション20には、着座者の臀部及び大腿部に対応する位置に切欠部
81、82、83が設けられている。すなわち、臀部支持領域150、右大腿部支持領域
151、左大腿部支持領域152に属するエアセル100は、ベースクッション20から
の反発力を受けることがなく、さらに、着座者の体重によってクッション1が撓んだ際に
切欠部81、82、83により形成された空間内に沈み込むため、着座者の臀部及び大腿
部への押圧力をさらに小さくすることができる。
【0073】
しかも、各領域150、151、152にあるエアセル100以外のエアセル100(
すなわち、各領域150、151、152の周囲にあるエアセル100)は、ベースクッ
ション20の段部90により支持されているため、着座者の体重がかかった際に、ベース
クッション20からの反発力によって当該体重を確実に受けることができる。また、セル
ユニット11全体が過剰に撓むことを防止することもできる。
【0074】
ところで、図7に示すように、クッション1は、ベースクッション20の上端部88及
び段部89からなる領域と、サイドクッション12の下端部75及び段部76とからなる
領域とによって、セルユニット11の鍔部120を挟持する構成としている。ここで、ベ
ースクッション20の段部89及びサイドクッション12の段部76により形成される空
間は、セルユニット11の鍔部120に設けられた給排パイプ130、140の収納スペ
ースとなっている。
【0075】
このように、セルユニット11の鍔部120をサイドクッション12及びベースクッシ
ョン20で挟持する構成とすることにより、セルユニット11のうちエアセル100によ
り形成される領域を狭めることなく、クッション本体10をコンパクト化することができ
、例えば、座面の広さに限りがある車椅子などに載置した場合に、体圧分散性を有する第
1の領域の有効面積を可及的に広くとることができる。さらに、前記構成によってセルユ
ニット11とサイドクッション12との一体性が高まり、クッション本体10としての使
い心地の良さや使い勝手の良さを向上させることができる。
【0076】
ここで、給排パイプ130、140は、上述した高圧静止モード中において、同パイプ
130、140内に空気が充填され膨張すると、サイドクッション12の段部76とベー
スクッション20の段部89とに当接するよう構成されている。かかる構成とすることに
より、上方から荷重がかかった際にも、カバークッション30やサイドクッション12の
段部76が給排パイプ130、140によって支持されるため、例えば、着座者がトラン
スファーボード等を用いて移乗する際、当該トランスファーボード等の荷重によってクッ
ション1の端部が変形し難くなり、着座者は安定して移乗を行うことができる。
【0077】
なお、本実施形態では、上述のように、セルユニット11の鍔部120をサイドクッシ
ョン12及びベースクッション20で挟持する構成とすることとしたが、図9に示すよう
に、サイドクッション12のみで挟持することとしてもよい。
【0078】
すなわち、図9に示すように、サイドクッション12’を断面視略コの字状の枠体に形
成し、このコの字内部にセルユニット11の鍔部120を挿入することにより、同鍔部1
20がサイドクッション12’により挟持された状態とする。また、ベースクッション2
0’は、ベースクッション20と同素材でできた板状部材に、着座者の臀部及び両大腿部
に対応する切欠部81、82、83を設けた形状とする。かかる構成とすることにより、
サイドクッション12’及びベースクッション20’の形状を簡素化することができ、ク
ッション1をより低コストで製造可能となる。
【0079】
なお、本実施形態では、セルユニット11の上部にカバークッション30を配設するこ
とで、臀部支持領域150に属するエアセル100にかかる着座者の体重をより自然に他
のエアセル100へ伝えることができる。
【0080】
なお、本実施形態では、エアセル100の高さを異ならせることにより臀部や大腿部へ
の押圧力に度合差をつけることとしたが、これに代えて、例えば、各領域150、151
、152に属するエアセル100の材質をその他のエアセル100よりも軟質のものとし
たり、各領域150、151、152に属するエアセル100の厚みをその他のエアセル
100の厚さよりも薄くしたりすることにより当該押圧力に度合差をつけることとしても
よく、或いは、連通管131、141の配置を変更するなどして、各領域150、151
、152に属するエアセル100の給排気を他のエアセル100とは別系統で行うように
したうえで、各領域150、151、152に属するエアセル100への給気量を他のエ
アセル100への給気量よりも少なくなるよう給排気装置5を用いて制御することにより
、押圧力に度合差をつけることとしてもよい。
【0081】
また、右大腿部支持領域151及び左大腿部支持領域152には、着座者の大腿部に対
する刺激力に度合差をつけた領域を形成することもできる。
【0082】
すなわち、右大腿部支持領域151及び左大腿部支持領域152に属するエアセル10
0の給排気を他のエアセル100とは別系統で行うようにし、右大腿部支持領域151及
び左大腿部支持領域152に属するエアセル100の給排気を他のエアセル100の給排
気よりも速いタイミングで行うように給排気装置5を制御する。かかる構成とすることに
より、右大腿部支持領域151及び左大腿部支持領域152に属するエアセル100が大
腿部を集中的に刺激し、血流促進のマッサージ効果を得ることができる。
【0083】
また、図10に示すように、右大腿部支持領域151及び左大腿部支持領域152に属
するエアセル100の上側のセル51の上部に突起55を設けてもよい。かかる構成とす
ることにより、当該突起55が大腿部を刺激し、つぼ押し効果による血流促進を促すこと
ができる。
【0084】
また、本実施形態では、ベースクッション20に切欠部81、82、83を設けること
により、臀部及び大腿部に集中的にかかる荷重を分散させることとしたが、これに代えて
、着座者の臀部から大腿部にかけての形状に応じた凹部を設けてもよい。
【0085】
すなわち、図11に示すように、ベースクッション20の底部には、着座者の臀部に対
応する位置に、臀部の形状に沿った形状を有する凹部85が形成されている。すなわち、
この凹部85の底部は、着座者の坐骨部分を中心として湾曲上に形成されており、また、
当該凹部85の側面は、臀部の側面に沿って傾斜している。また、同様に、着座者の大腿
部に対応する位置には、大腿部の形状に沿った形状を有する凹部86、87が形成されて
いる。そして、凹部86、87は、着座者の身体に沿って形成された隆起部を介して凹部
85と連続している。かかる構成とすることにより、着座者の身体との一体性が増し、使
い心地及び体圧分散効果を向上させることができる。なお、これら凹部85、86、87
は、それぞれ底面部分を刳り貫いた切欠部であってもよい。かかる構成とすることにより
、材料費を削減することができる。
【0086】
また、本実施形態においては、臀部支持領域150、右大腿部支持領域151及び左大
腿部支持領域152にあるエアセル100の高さを、他のエアセル100の高さよりも低
く形成することにより押圧力に度合差をつけることとしたが、セルユニット11に上記の
ような押圧力に度合差をつけた領域を区画形成しなくとも、ベースクッション20に設け
られた切欠部81、82、83により、押圧力に度合差をつけることは可能である。
【0087】
このように、セルユニット11に、押圧力に度合差をつけた領域を区画形成せず、ベー
スクッション20の切欠部81、82、83のみによって押圧力に度合差をつける構成と
することにより、例えば、大人用や子供用或いは女性用など、年齢や性別によって押圧力
に度合差をつけた領域の大きさが異なるクッション1を製造する際に、ベースクッション
20の切欠部81、82、83の大きさのみを変更すればよいので、製造コストの削減に
資することができる。また、これら切欠部81、82、83は、ベースクッション20を
単に切欠しただけの簡易な構成であるため、設計上の自由度も向上させることができる。
【0088】
〔第2実施形態について〕
ところで、上記実施形態で説明した椅子用床ずれ防止クッション1には、エアセルの給
排気動作のオン・オフやエアセルの膨縮度合いの調節などを着座者の手元で行うために、
クッション1とコード等を介して接続されるリモコン装置を設けることもできる。
【0089】
しかしながら、このようなリモコン装置を設けた場合、着座者が当該リモコン装置の置
き場に困る場合がある。特に、クッション1を車椅子に適用した場合、当該車椅子にリモ
コン装置等の小物を収納するようなスペースがない場合も多く、かかる場合、着座者は、
リモコン装置を常に持ち続けるか、或いは、自分の膝の上等に置いておかなければならず
不便である。しかも、着座者が椅子に座ったり椅子から離れたりする際にコードが邪魔に
なるおそれもあり、見た目にも問題がある。
【0090】
そこで、本発明の第2実施形態にかかる椅子用床ずれ防止クッションでは、クッション
カバーにリモコン装置の収納部を設けることにより、上記のような課題を解決することと
した。
【0091】
すなわち、第2実施形態にかかる椅子用床ずれ防止クッションは、エアセルの給排気動
作を制御する制御ユニットと、クッション本体を覆うクッションカバーとを具備し、クッ
ションカバーは、少なくとも枠体に形成された第2の領域の周側面を覆う部分に制御ユニ
ットを収納する収納部を有する構成とした。
【0092】
ここで、制御ユニットとは、着座者がエアセルの給排気動作を操作するためのリモコン
装置であり、この制御ユニットをポンプ、制御部、電磁弁等を内蔵した給排気装置と所定
長さのコードを介して接続することによって、着座者がエアセルの操作を手元で行うこと
ができる構成としている。
【0093】
そして、本実施形態にかかる椅子用床ずれ防止クッションは、かかる制御ユニットを収
納するための収納部をクッションカバーに配設することにより、着座者が制御ユニットを
使用しない場合でも、当該制御ユニットの置き場に困らないようにしている。
【0094】
しかも、収納部は、クッションカバーにおける、第2の領域(枠体)を含むクッション
本体等の周側面に対応する位置に設けられているため、着座者は、制御ユニットの取り出
しや収納をより容易に行うことができる。
【0095】
特に、本実施形態にかかる椅子用床ずれ防止クッションにおいて、収納部は、クッショ
ンカバーにおける、第2の領域の着座者前方側の周側面に対応する位置に配置されている

【0096】
すなわち、通常、椅子用床ずれ防止クッションの着座者前方側の周側面と着座者のふく
らはぎ部との間には、ある程度の隙間ができるものであり、かかる位置に収納部を配設す
ることにより、無駄なスペースを有効利用することができる。
【0097】
また、先の実施形態において、給排気装置は、着座者の後方側に、しかもクッション本
体とは別体に配設されていたが、本実施形態では、クッション本体の着座者前方側に配設
され、しかも、クッション本体等とともにクッションカバーに収容される構成としている
。したがって、制御ユニットを収納部から取り出さずに操作を行う場合でも、制御ユニッ
トが硬質な素材で形成された第2の領域や給排気装置と当接するため、制御ユニットが安
定し、操作を容易に行うことができる。
【0098】
以下に、本実施形態に係る椅子用床ずれ防止クッションについて、図面を参照しながら
より具体的に説明する。図12は、第2実施形態にかかる椅子用床ずれ防止クッションの
分解斜視図であり、図13は、第2実施形態にかかるクッションカバーの着座者前方側の
側面図である。図14は、第2実施形態にかかる収納部のバリエーションを示す図であり
、図15は、第2実施形態にかかるセルユニットの給排パイプの形状を説明するための図
であり、図16及び図17は、第2実施形態にかかる椅子用床ずれ防止クッションの変形
例を示す図である。
【0099】
図12に示すように、本実施形態にかかる椅子用床ずれ防止クッション3(以下、単に
「クッション3」とする。)は、クッション本体210と、ベースクッション220と、
カバークッション230と、底シート240と、給排気装置250と、これらを覆うクッ
ションカバー260と、制御ユニットとしてのリモコン装置270と、により構成される

【0100】
すなわち、本実施形態にかかるクッション3は、第1実施形態にかかるクッション1と
は、主に、リモコン装置270を備えた点、下側サイドクッション213及び底シート2
40を新たに設けた点、そして、クッションカバー260に収納部261を設けた点等に
おいて異なるものである。
【0101】
クッション本体210は、体圧分散性を有するセルユニット211と、同セルユニット
211よりも硬質なサイドクッションとして、上側サイドクッション212及び下側サイ
ドクッション213とにより構成される。
【0102】
セルユニット211は、第1実施形態にかかるセルユニット11と同様の機能を果たす
ものであるが、排気バルブ137、147に連通する給排パイプを有していない点、及び
、所定の連通管にオリフィスを形成した点において第1実施形態にかかるセルユニット1
1と異なっている。かかる点については、後述する。
【0103】
上側サイドクッション212及び下側サイドクッション213は、第1実施形態にかか
るサイドクッション12と同素材で形成された枠体であり、セルユニット211を囲繞す
るように構成されている。
【0104】
ここで、上側サイドクッション212の底面部の一部には切欠部215が形成されると
ともに、下側サイドクッション213の上端部214の一部には段部218が形成されて
おり、この切欠部215と段部218とにより、セルユニット211と給排気装置250
とを連結する給排パイプ251,251を収容する空間が形成されるようにしている。
【0105】
また、ベースクッション220は、セルユニット211の土台となる板状部材であり、
第1実施形態にかかるベースクッション20と同素材で形成される。すなわち、ベースク
ッション220は、カバークッション230に用いられる発泡材よりも密度が高く高反発
の発泡材で形成される。
【0106】
なお、上側サイドクッション212、下側サイドクッション213、ベースクッション
220は、同素材で形成することができる。また、カバークッション230は、第1実施
形態にかかるクッション1の有するカバークッション30と同一のものを使用することが
できる。
【0107】
底シート240は、クッション3全体の土台となる板状部材であり、柔軟かつ剛性のあ
る素材で形成されている。かかる構成とすることにより、セルユニット211によるクッ
ション3下方への圧力がこの底シートにより吸収され、クッション3全体としての安定性
を高めるとともに、クッション3を載置した椅子への追従性を高めることが可能となる。
【0108】
そして、クッション3は、このように形成された各部材が、下から底シート240、ベ
ースクッション220、下側サイドクッション213、セルユニット211、上側サイド
クッション212、カバークッション230の順に重合配設されており、また、カバーク
ッション230、上側サイドクッション212、下側サイドクッション213、ベースク
ッション220を外装として、セルユニット211が内蔵された状態となっている。
【0109】
また、各部材を積層した際、クッション3は、下側サイドクッション213における上
端部214からなる領域と、上側サイドクッション212の下端部216及び段部217
とからなる領域とによって、セルユニット211の鍔部280が挟持される構成としてい
る。
【0110】
給排気装置250は、ポンプ、制御部、電磁弁等を矩形状のケースに内蔵して構成され
るものであり、セルユニット211と給排パイプ251,251を介して接続されるとと
もに、コード271を介してリモコン装置270と接続されている。
【0111】
ここで、本実施形態において、この給排気装置250は、クッションカバー260内に
収容することとしている。
【0112】
すなわち、クッション3は、底シート240と、ベースクッション220と、下側サイ
ドクッション213と、セルユニット211と、上側サイドクッション212とを重ねて
載置した際に、ベースクッション220の一部に形成された矩形状の切欠部221と下側
サイドクッション213に形成された開放部219とによって所定の空間が形成されるよ
うに構成されており、この空間内に給排気装置250を収容することにより、当該給排気
装置250を各クッションやセルユニット211等と一体的にクッションカバー260内
に収容することが可能となる。
【0113】
なお、本実施形態にかかるクッション3では、給排気装置250が収納される側を着座
者の前方側とする。
【0114】
また、給排気装置250の内部構成は、第1実施形態における給排気装置50の内部構
成と同様のものであるため、その説明を省略する。
【0115】
リモコン装置270は、着座者の操作に応じて、セルユニット211に設けられたエア
セルの給排気動作を制御するものであり、着座者が自分の手元でセルユニット211の操
作ができるように、給排気装置250と所定の長さのコード271を介して接続されてい
る。
【0116】
また、リモコン装置270には、給排気装置250のON・OFF動作を行うための電
源ボタン272及び、セルユニット211の給排気動作の程度を決定するための選択ボタ
ン273が設けられており、各ボタンに応じた指示がコード271を介して給排気装置2
50に内蔵された制御部へと伝達されるように構成されている。
【0117】
なお、このリモコン装置270は、給排気装置250の電源(例えば、リチウム電池に
より構成される。)を内蔵しており、この電源から得られた電力は、コード271を介し
て給排気装置250へ供給することとなる。
【0118】
クッションカバー260は、重合配設したクッション本体210、ベースクッション2
20、カバークッション230、底シート240、給排気装置250を収容可能な矩形状
のカバーであり、防水性、通気性に優れた素材で形成されている。
【0119】
そして、当該クッションカバー260の周側面、すなわち、クッションカバー260内
にクッション本体210、ベースクッション220、カバークッション230、底シート
240、給排気装置250を収容した状態における、これらの周側面を覆う部分に、リモ
コン装置270を収納するための収納部261が設けられている。
【0120】
この収納部261は、図13に示すように、クッションカバー260と同素材で形成さ
れた帯状部材の両端を、それぞれクッションカバー260の上端縁及びクッションカバー
260に形成されたファスナーガード263の下端縁に縫い付けて形成されるものであり
、この帯状部材とクッションカバー260との間に形成された略筒状の空間にリモコン装
置270を挿通して収納可能としている。
【0121】
ここで、ファスナーガード263は、クッションカバー260の略全周に亘って設けら
れたファスナー262を隠蔽するための部材であり、クッションカバー260と同素材で
形成されており、その一端をファスナー262の取り付け位置よりも上方でクッションカ
バー260に縫い付けられることでクッションカバー260と一体に形成されている。
【0122】
かかる構成とすることにより、クッションカバー260内にクッション本体210等を
収容する際、或いは、同カバー260からクッション本体210等を取り出す際に、ファ
スナーガード263をファスナー262が露出するまでめくり上げることで、収納部26
1を形成する帯状部材もファスナーガード263とともにめくり上がるため、収納部26
1が邪魔になることがなく、これらの動作をスムーズかつ容易に行うことが可能となる。
【0123】
このように、本実施形態にかかるクッション3は、リモコン装置270を収納する収納
部261を備えた構成としたため、着座者がリモコン装置270を使用しない時でも、当
該リモコン装置270の置き場に困ることがない。
【0124】
また、クッション3の周側面には、上側サイドクッション212や下側サイドクッショ
ン213などの比較的硬質な素材で形成された部材が配設されているため、リモコン装置
270を、収納部261に収納した状態で操作するような場合であっても、これら硬質な
部材が、着座者がリモコン操作を行う際に生じる押圧力に対する抵抗となり、当該リモコ
ン装置270の操作をより安定して行うことが可能となる。
【0125】
ところで、収納部を、例えば上部に開口を有するポケット型とすると、リモコン装置2
70を収納部へ収納したり収納部から取り出したりする際に、着座者自身の足が邪魔にな
るため、足の位置をずらしたり足を上げたりしなければならないおそれがある。しかしな
がら、車椅子の使用者など足が不自由な人の場合は、かかる動作が困難である場合が多い
。そのため、本実施形態にかかるクッション3では、収納部261を、両端が開口した筒
状としており、リモコン装置270を横方向からスライドさせるようにして、当該開口か
ら収納部261内部へ挿入するようにしている。
【0126】
このように、リモコン装置270を横方向から収納部261内へ挿入して収納する構成
とすることにより、収納部を上部に開口を有するポケット型とした場合のように、リモコ
ン装置270を収納部へ収納したり収納部から取り出したりする際に、着座者自身の足が
邪魔になることがなく、よりスムーズな収納及び取り出しが可能となる。
【0127】
また、図13(a)に示すように、収納部261は、リモコン装置270の全長よりも
長くなるように形成されており、リモコン装置270が収納部261からはみ出ることな
く確実に収納できるようにしている。
【0128】
また、リモコン装置270は、図13(b)に示すように、リモコン装置270を挿入
した開口とは反対側の開口からリモコン装置270を引き出して使用することもできる。
この際、リモコン装置270と給排気装置250とを接続するコード271の長さは、当
該リモコン装置270を引き出した際に、電源ボタン272及び選択ボタン273は収納
部261から露出するが、リモコン装置270とコード271との接続部274は露出し
ない程度の長さ、望ましくは、リモコン装置270の重心位置が収納部261から外部に
露出しない長さとしている。
【0129】
かかる構成とすることにより、リモコン装置270を収納部261から引き出して使用
する際に、当該リモコン装置270が収納部261から落下するおそれがない。
【0130】
また、図12に示すように、収納部261は、クッションカバー260における、クッ
ション本体210等の周側面のうち、着座者前方側の周側面に対応する位置に配置されて
いる。
【0131】
すなわち、通常、クッション3の着座者前方側の周側面と着座者のふくらはぎとの間に
は、ある程度の隙間ができるものであり、かかる位置に収納部261を配設することによ
り、無駄なスペースを有効利用することができる。
【0132】
しかも、上述したように、クッションカバー260内に収容された各部材のうち、クッ
ション3の着座者前方側の周側面に対応する位置には、給排気装置250が配設されてい
るため、リモコン装置270を収納部261に収納した状態で操作するような場合、この
給排気装置250が、上側サイドクッション212や下側サイドクッション213などの
硬質な部材とともに、着座者がリモコン操作を行う際に生じる押圧力に対する抵抗となり
、当該リモコン装置270の操作をより一層安定して行うことが可能となる。
【0133】
ここで、本実施形態において、収納部261は、クッションカバー260と同素材で形
成されるものとしたが、必ずしもこれに限ったものではなく、種々の素材、形状で形成す
ることができる。
【0134】
例えば、図14(a)に示すように、収納部261を形成する帯状部材の一部を透明ビ
ニールなどの透明部材で形成することもできる。
【0135】
具体的には、帯状部材のうち、収納部261にリモコン装置270を収納した際に、当
該リモコン装置270の電源ボタン272及び選択ボタン273が外部から視認できるよ
うな範囲を透明部材で形成することとする。
【0136】
かかる構成とすることにより、リモコン装置270を収納部261から引き出さずとも
電源ボタン272や選択ボタン273を視認しながら当該リモコン装置270の操作を行
うことが可能となる。
【0137】
なお、収納部261の全てを透明部材で形成することとしてもよい。
【0138】
また、図14(b)に示すように、収納部261を形成する帯状部材をメッシュ素材2
65で構成してもよく、かかる構成とすることにより、上記と同様、リモコン装置270
を収納部261から引き出さずとも電源ボタン272や選択ボタン273を視認しながら
当該リモコン装置270の操作を行うことが可能となる。しかも、電源ボタン272や選
択ボタン273に直接触れることができるため、これらボタン272、273をより確実
に押下することができる。
【0139】
また、図14(c)に示すように、収納部261を形成する帯状部材に、収納部261
にリモコン装置270を収納したときに電源ボタン272及び選択ボタン273が位置す
る場所にそれぞれ切欠部266、267を設けた構成としてもよい。
【0140】
かかる構成とすることにより、上記と同様、リモコン装置270を収納部261から引
き出さずとも電源ボタン272や選択ボタン273を視認しながら当該リモコン装置27
0の操作を行うことが可能となる。しかも、電源ボタン272や選択ボタン273に直接
触れることができるため、これらボタン272、273をより確実に押下することができ
る。
【0141】
さらに、各切欠部266,267の周辺にそれぞれ肉厚部268,269を形成するこ
とにより、着座者手探りで電源ボタン272や選択ボタン273を操作しようとした場合
、これらボタン272,273の場所を容易に特定することができる。そのうえ、この肉
厚部268,269により、電源ボタン272や選択ボタン273の誤操作を防止するこ
ともできる。
【0142】
ところで、本実施形態にかかる椅子用床ずれ防止クッション3は、セルユニット211
における、エアセル同士を連結する連結管の構造にも特徴を有している。
【0143】
すなわち、図15に示すように、セルユニットに設けられた複数の連結管283のうち
、セルユニット211の中央に位置するエアセル284a〜284iに直接連結する連結
管283には、減圧用のオリフィスが形成されている。
【0144】
かかる構成とすることにより、着座者の体重が最もかかり易い位置にあるエアセル28
4a〜284h内の空気が他のエアセルと比較して抜け難くなるため、セルユニット21
1による体圧分散性能をより効果的に発揮させることができる。
【0145】
なお、図中、281,282は、給排パイプである。
【0146】
ところで、車椅子利用者にとって、大腿部全周を覆っての圧マッサージは危険が伴うも
のである。すなわち、車椅子利用者は、足の感覚がない場合や鈍感な場合が多いため、大
腿部全周を覆っての圧マッサージにより血流が止まっていることや無理な付加がかかって
いることに気付かず、重大な事故に繋がるおそれがある。
【0147】
そこで、本実施形態にかかる椅子用床ずれ防止クッションを、一方向からのみの圧マッ
サージを行うクッションとしてもよい。
【0148】
かかる場合、図16(a),(b)に示すように、板状に形成したベースクッション5
30上面に、着座者の左大腿部6Lを支持する左側エアセル510及び着座者の右大腿部
6Rを支持する右側エアセル520よりなるセルユニット540を一体的に設けて構成さ
れるクッション500とする。
【0149】
このクッション500において、セルユニット540は、連結管550及び給排パイプ
560を介して給排気装置(図示せず)と連結している。また、左側エアセル510と右
側エアセル520とは、連結管550近傍で連通しており、給排気装置から供給される空
気は、給排パイプ560及び連結管550を介して各エアセル510、520にそれぞれ
送られることとなる。
【0150】
かかる構成とすることにより、クッション500は、図16(b)に示すように、図示
しない給排気装置から各エアセル510,520に空気が供給されることにより、着座者
の大腿部6L、6Rに、上方へ向けての一方向の圧力を与えることができる。
【0151】
また、必ずしも着座者の大腿部に与える圧力は、一方向でなくてもよく、図17に示す
ように、二方向としてもよい。
【0152】
かかる場合、クッション600は、図17(a),(b)に示すように、板状に形成し
たベースクッション530の上面に、着座者の左大腿部6Lを支持する左側セルユニット
610及び着座者の右大腿部6Rを支持する右側セルユニット620を有する構成とする

【0153】
左側セルユニット610は、図16におけるクッション500と同様の構成であり、板
状に形成したベースクッション611上面に、左側エアセル612及び右側エアセル61
3を一体的に設けて構成される。
【0154】
また、右側セルユニット620も、図16におけるクッション500と同様の構成であ
り、板状に形成したベースクッション621上面に、左側エアセル622及び右側エアセ
ル623を一体的に設けて構成される。なお、図中、614、624は連通管、615、
625は、給排パイプである。
【0155】
かかる構成とすることにより、クッション600は、図17(b)に示すように、図示
しない給排気装置から各セルユニット610,620に空気が供給されると、着座者の大
腿部6L、6Rに、それぞれ左側エアセル612,622からの圧力と右側エアセル61
3,623からの圧力とによる二方向の圧力を与えることができる。
【0156】
このように、一方向或いは二方向のみからの圧マッサージとすることにより、上記のよ
うな危険性を回避することができる。
【0157】
なお、このクッション500、600に収納部を設けることにより、本実施形態と同様
の効果を得ることもできる。
【0158】
〔第3実施形態について〕
以下、本発明にかかる椅子用床ずれ防止クッションの第3実施形態について説明する。
【0159】
先に説明した第2実施形態では、クッションカバー260の周側面に収納部261を設
け、当該収納部261にリモコン装置270を収納することとしたが、第3実施形態にか
かる椅子用床ずれ防止クッションでは、この収納部261に代えて、クッション本体の周
側面から垂下する保持部を設けて、当該保持部によりリモコン装置や給排気装置を保持す
る構成としている。
【0160】
すなわち、本実施形態にかかる椅子用床ずれ防止クッションは、エア給排気により膨縮
するエアセルを有するクッション本体と、クッション本体の給排気を実行する機能部ユニ
ットと、を具備し、クッションカバーは、クッション本体の周側面に対応する位置から機
能部ユニットを吊下状態で保持する保持部を有する構成とした。
【0161】
このように、保持部を具備することにより、機能部ユニットの置き場に困ることがない
。また、着座者が椅子に座ったり椅子から離れたりする際に機能部ユニットが邪魔になる
こともなく、見た目もよくすることができる。
【0162】
しかも、この保持部は、クッション本体の周側面から機能部ユニットを吊下状態で保持
する構成としており、この保持部で機能部ユニットを保持することにより、当該機能部ユ
ニットの自重によってクッションカバーが引っ張られて、当該クッションカバーにシワや
ヨレがない状態とすることができる。
【0163】
このように、クッションカバーにシワやヨレのない状態とすることにより、クッション
全体の見栄えを良くすることができるばかりでなく、エアセルとクッションカバーとが均
一に重なるため、エアセルを着座者の臀部や大腿部により確実に当接させることができ、
当該エアセルによる体圧分散性能をより効果的に発揮させることができる。
【0164】
また、保持部は、クッションカバーにおける、クッション本体の着座者前方側の周側面
に対応する位置に設けられている。
【0165】
すなわち、上述したように、通常、クッション本体の着座者前方側の周側面と着座者の
ふくらはぎ部との間には、所定の隙間ができるものであり、かかる位置に保持部を配設す
ることによって、この無駄なスペースを有効利用することができるとともに、機能部ユニ
ットを着座者の邪魔にならない場所で保持しておくことができる。
【0166】
また、保持部は、クッション本体の周側面の上端縁に連接されることとしたため、保持
部がクッションカバーと段差なく連続的に取り付けられた状態となり、椅子用床ずれ防止
クッション全体としての外観や座り心地を損ねることがない。しかも、クッションカバー
のシワやヨレをより確実に取ることができる。
【0167】
さらに、保持部は、着座者前方側の周側面の全幅に亘って設けられることとしたため、
保持部の強度を十分に保つことができ、大きな力がかかった際に保持部が破損するといっ
た事態を防止することができる。また、全幅に亘って引っ張ることができるため、クッシ
ョンカバーのシワやヨレをより均一に取ることができる。
【0168】
また、保持部は、機能部ユニットを収納するためのユニット収納部を有しており、この
ユニット収納部は、着座者後方側に開口部を有する構成としている。
【0169】
かかる構成とすることにより、ユニット収納部内に収納された機能部ユニットが外部か
ら視認困難となるため、椅子用床ずれ防止クッション全体としての外観を損なうことがな
い。
【0170】
また、クッション本体は、上記各実施形態と同様、エアセルからなる第1の領域と、発
泡材により形成した枠体からなる第2の領域とで構成され、枠体でエアセルの端部に形成
された鍔部を挟持した状態で、エアセルを囲繞している。
【0171】
かかる構成とすることにより、第1の領域に配置された複数のエアセルがそれぞれ給排
気によって膨縮するため、着座者の身体の特定箇所に集中してかかる荷重をより分散させ
、当該着座者の床ずれを有効に防止することができる。
【0172】
また、枠状に形成された第2の領域により第1の領域の鍔部を挟持する構成とすること
によって、着座者の臀部や大腿部を受ける第1の領域を狭めることなく、クッション本体
をコンパクト化することができ、例えば、座面の広さに限りがある自動車の座席などに載
置した場合に、体圧分散性を有する第1の領域の有効面積を可及的に広くとることができ
る。さらに、前記構成によって第1の領域と第2の領域との一体性が高まり、クッション
本体としての使い心地の良さや使い勝手の良さを向上させることができる。
【0173】
なお、保持部は、クッションカバーから着脱自在に構成としてもよく、かかる構成とす
ることにより、保持部をクッションカバーから着脱自在とすることができる。したがって
、例えば、椅子用床ずれ防止クッションをエアセルによる給排気動作を行わずに単にクッ
ションとして使用する場合、すなわち、機能部ユニットが不必要な場合、保持部を取り外
すことにより、当該椅子用床ずれ防止クッションをより快適に使用することが可能となる

【0174】
以下、本実施形態に係る椅子用床ずれ防止クッションについて、図面を参照しながらよ
り具体的に説明する。図18は、第3実施形態にかかる椅子用床ずれ防止クッションの使
用状態図であり、図19は、第3実施形態にかかる椅子用床ずれ防止クッションの分解斜
視図であり、図20は、第3実施形態にかかる椅子用床ずれ防止クッションの背面斜視図
であり、図21及び図22は、第3実施形態にかかる保持部の変形例であり、図23は、
第3実施形態にかかる椅子用床ずれ防止クッションの変形例である。
【0175】
なお、ここでは、一例として、椅子用床ずれ防止クッションを自動車の座席に載置した
場合について説明するが、本発明は、これに限定するものではない。
【0176】
図18に示すように、本実施形態に係る椅子用床ずれ防止クッション4(以下、単に「
クッション4」とする。)は、自動車の座席C’の座面に載置して使用するものであり、
クッションカバー300の内部に、エア給排気により膨縮するエアセルを有するクッショ
ン本体310と、このクッション本体310の上部に載置されるカバークッション320
と、同クッション本体310の下部に載置される底シート400とを収容しており、さら
に、クッション本体310の給排気を実行する機能部ユニット330と、クッション本体
310の周側面から機能部ユニット330を吊下状態で保持する保持部340とを具備し
て構成される。
【0177】
クッションカバー300は、防水性、通気性に優れた素材で形成された略矩形状のカバ
ーである。
【0178】
また、本実施形態において、機能部ユニット330は、ポンプ、制御部、電磁弁等を内
蔵する給排気装置350と、着座者がエアセルの給排気動作を操作するためのリモコン装
置360とにより構成されるものであり、このリモコン装置360を給排気装置350と
所定長さのコード361を介して接続することによって、着座者がエアセルの操作を手元
で行うことができる構成としている。
【0179】
なお、図中、351,352は、それぞれ給排気装置に内蔵されたポンプからの空気を
エアセルに供給するための給排パイプ、362は、給排気装置350のON・OFF動作
を行うための電源ボタン、363は、給排気動作の程度を決定するための選択ボタンであ
る。
【0180】
保持部340は、クッションカバー300と同素材で形成された扁平状の部材であり、
上端部の幅員がクッションカバー300の幅員と同一に形成され、当該上端部をクッショ
ンカバー300の周側面の上端縁に取り付けることによって、当該クッションカバー30
0と一体化されている。この際、当該保持部340の下端は、クッションカバー300か
ら垂下した状態となっている。なお、保持部は、必ずしもクッションカバー300から垂
下した状態である必要はない。
【0181】
そして、この保持部340には、下端部に機能部ユニット330としての給排気装置3
50やリモコン装置360を収納するユニット収納部341が形成されており、このユニ
ット収納部341内に給排気装置350及びリモコン装置360を収納することにより、
これらを吊下状態で出し入れ自在に保持可能としている。
【0182】
かかる構成とすることにより、着座者が給排気装置350やリモコン装置360の置き
場に困ることがなく、必要に応じて容易に取り出すこともできる。
【0183】
さらに、クッション4は、このユニット収納部341に給排気装置350やリモコン装
置360を収納してこれらを吊下状態で保持した状態とすることにより、当該給排気装置
350やリモコン装置360の自重によってクッションカバー300が引っ張られて、当
該クッションカバー300にシワやヨレがない状態とすることができる。
【0184】
したがって、クッション4全体の見栄えを良くすることができるばかりでなく、クッシ
ョンカバー300に収容されたエアセルとクッションカバー300とが均一に重なるため
、クッション本体310に設けられたエアセルを着座者の臀部や大腿部により確実に当接
させることが可能となる。
【0185】
また、保持部340は、クッションカバー300における、クッション本体310の着
座者前方側の周側面に対応する位置に設けられている。
【0186】
すなわち、上述したように、通常、クッション4の着座者前方側の周側面と着座者のふ
くらはぎ部との間には、所定の隙間ができるものであり、かかる位置に保持部を配設する
ことによって、この無駄なスペースを有効利用することができるとともに、機能部ユニッ
ト330を着座者の邪魔にならない場所で保持しておくことができる。
【0187】
また、保持部340は、クッション本体310の周側面の上端縁に連接されることとし
たため、保持部340がクッションカバー300と段差なく連続的に取り付けられた状態
となり、クッション4全体としての外観や座り心地を損ねることがない。しかも、クッシ
ョンカバー300のシワやヨレをより確実に取ることができる。
【0188】
さらに、保持部340は、着座者前方側の周側面の全幅に亘って設けられている。かか
る構成とすることにより、保持部340の強度を十分に保つことができ、大きな力がかか
った際に保持部が破損するといった事態を防止することができる。しかも、クッションカ
バー300のシワやヨレをより均一に取ることができる。
【0189】
次に、クッションカバー300の内部に収容されたクッション本体310、カバークッ
ション320、底シート400の構成について、図19を用いて説明する。
【0190】
図19に示すように、クッション本体310は、体圧分散性を有するセルユニット37
0と、同セルユニット370よりも硬質なサイドクッション380とにより構成される。
セルユニット370は、第2実施形態にかかるセルユニット211と同様の構成を有する
ものであり、第1の系統に属するエアセル371と第2の系統に属するエアセル372と
が隣設するように配置している。
【0191】
サイドクッション380は、第1実施形態にかかるサイドクッション12と同素材で形
成された枠体であり、セルユニット370を囲繞するように構成されている。なお、図中
、381は、セルユニット370と給排気装置350とを連結する給排パイプ351,3
51の収容空間を形成するための切欠部である。
【0192】
カバークッション320は、第1実施形態にかかるクッション1の有するカバークッシ
ョン30と同一のものを使用することができる。
【0193】
底シート400は、クッション4全体の土台となる板状部材であり、柔軟かつ剛性のあ
る素材で形成されている。かかる構成とすることにより、セルユニット370によるクッ
ション4下方への圧力がこの底シートにより吸収され、クッション4全体としての安定性
を高めるとともに、クッション4を載置した椅子への追従性を高めることが可能となる。
【0194】
そして、クッション4は、底シート400、カバークッション320及びサイドクッシ
ョン380を外装として、セルユニット370が内蔵された状態となるように重合配設さ
れる。
【0195】
このように、クッションカバー300内に硬質なサイドクッション380を収容するこ
とにより、ユニット収納部341内に収納された給排気装置350やリモコン装置360
の自重によってクッションカバー300が引っ張られる際、当該自重によりクッションカ
バー300が撓みにくくなるため、当該クッションカバー300のシワやヨレをより効果
的に取ることができる。
【0196】
しかも、このサイドクッション380は、枠体状に形成されているため、クッション4
の周側面の上端縁の断面形状がほぼ直角となってエッジがキワ立ち、吊下げ力が良好に作
用し、さらに、上端縁の形状を直線状とすることで、より吊下げ力を作用させることがで
きる。
【0197】
また、給排気装置350は、ポンプ、制御部、電磁弁等を矩形状のケースに内蔵して構
成されるものであり、セルユニット370と給排パイプ351,352を介して接続され
るとともに、コード361を介してリモコン装置360と接続されている。
【0198】
リモコン装置360は、着座者の操作に応じて、セルユニット370に設けられたエア
セル371の給排気動作を制御するものであり、着座者が自分の手元でセルユニット37
0の操作ができるように、給排気装置350と所定の長さのコード361を介して接続さ
れている。
【0199】
また、リモコン装置360には、給排気装置350のON・OFF動作を行うための電
源ボタン362及び、セルユニット370の給排気動作の程度を決定するための選択ボタ
ン363が設けられており、各ボタンに応じた指示がコード361を介して給排気装置3
50に内蔵された制御部へと伝達されるように構成されている。
【0200】
なお、このリモコン装置360は、給排気装置350の電源(例えば、リチウム電池に
より構成される。)を内蔵しており、この電源から得られた電力は、コード361を介し
て給排気装置350へ供給することとなる。なお、リモコン装置360は、必ずしも電源
を内蔵した構成とする必要はなく、自動車に設けられたシガーポケットから所定のケーブ
ルを介してクッション4へ電力が供給されるようにしてもよい。
【0201】
また、本実施形態において、このリモコン装置360の全長は、給排気装置350の全
長よりも短いものとする。
【0202】
次に、保持部340に設けられたユニット収納部341のより具体的な構成について、
図20を用いて説明する。
【0203】
図20(a)に示すように、ユニット収納部341は、保持部340の下端部に形成さ
れたポケット状の部材であり、給排気装置350及びリモコン装置360を収納可能な開
口部を着座後方側に有している。
【0204】
かかる構成とすることにより、ユニット収納部341内に収納された機能部ユニット3
30が外部から視認困難となるため、クッション4全体としての外観を損なうことがない

【0205】
また、このユニット収納部341には、着座者後方側の表面に面ファスナー342が設
けられるとともに、ユニット収納部341の上端縁には、その一端を取り付けられた略帯
状のカバー体343を設け、当該カバー体における、ユニット収納部341に対向する面
に面ファスナー344が設けられている。
【0206】
そして、保持部340は、これら面ファスナー342,344同士を当接させて付着さ
せることにより、図20(b)に示すように、ユニット収納部341の開口部が一部閉鎖
されるように構成されている。
【0207】
かかる構成とすることにより、例えば、クッション4を載置した座席C’を有する車が
砂利道を通るなどしてユニット収納部341が大きく揺れた場合であっても、ユニット収
納部341内に収納した給排気装置350及びリモコン装置360が当該ユニット収納部
341から飛び出たりするおそれがなく、保持部340を着座者前方側に設けた場合であ
っても運転に支障を来すことがない。
【0208】
なお、図中、301は、クッションカバー300内に収容したクッション本体310や
カバークッション320を出し入れする際に開閉して用いるファスナーであり、このファ
スナー301をわずかに開放させて形成された間隙から給排パイプ351,352をクッ
ションカバー300内部に挿通させることとしている。
【0209】
また、ユニット収納部341は、その幅員を保持部340の下端に向かうにつれて漸次
均等に狭めた構造としている。具体的には、ユニット収納部341の開口部の幅員は、保
持部340の上端と同幅員(すなわち、クッションカバー300と同幅員)とするととも
に、ユニット収納部341の底部の幅員(すなわち、保持部340の下端の幅員)は、給
排気装置350の全長と同等としている。
【0210】
このように、ユニット収納部341を先細り形状とすることにより、給排気装置350
やリモコン装置360をユニット収納部341内に収納する際は、広い開口によりこれら
給排気装置350やリモコン装置360を収納し易いとともに、収納した後はこれらがユ
ニット収納部341内でがたつくのを防止することができる。
【0211】
しかも、ユニット収納部341の幅員を下端に向かって均等に狭めることにより、給排
気装置350やリモコン装置360が、正面視において保持部340の略中央に位置した
状態となるため、カバーのシワやヨレをより均一に取ることができる。
【0212】
ここで、ユニット収納部341を含めた保持部340の全体的な形状としては、例えば
、クッションカバー300の周側面の上端縁から下方に向かって漸次その幅員を狭めた逆
台形状とすることもできるが、かかる形状とした場合、クッションカバー300の周側面
の上端縁の両端には、保持部340の形状に沿った方向の力がかかるため、クッションカ
バー300の周側面の上端縁にかかる力が均一にならず、当該クッションカバー300の
シワやヨレを取り除く効果を阻害するおそれがある。
【0213】
そこで、本実施形態では、ユニット収納部341を含めた保持部340の全体的な形状
を、保持部340の上端縁からユニット収納部341の開口部までの幅員を同一とした、
所謂ホームベース状としている。
【0214】
このように、保持部340の幅員を当該保持部340の上端縁から狭めるのではなく、
当該保持部340の上端縁よりも下方位置から狭めることにより、クッションカバー30
0の周側面の上端縁にかかる力の差を可及的に無くすことができ、当該クッションカバー
300のシワやヨレをより効果的に取ることができる。
【0215】
しかも、保持部40の上端縁の幅員とユニット収納部41の開口部の幅員とを同一とす
ることにより、当該ユニット収納部41の開口部をより広く形成でき、給排気装置50や
リモコン装置60の出し入れをさらに容易に行うことができるばかりでなく、給排パイプ
51,52が外部からより視認されにくくすることができ、クッション1全体としての外
観をより良よくすることができる。
【0216】
また、この時、ホームベース状の保持部340において、この保持部340の上端縁か
らユニット収納部341の開口部までのストレート部の長さをクッション4の厚み以上と
し、クッション4の厚み以上の位置に開口部を設けることが好ましい。これは、保持部3
40の上端から先細りとした逆台形状とすると、ユニット収納部341の開口部をクッシ
ョンカバー300の周側面の上端部に設けた場合は、機能部ユニット330の出し入れを
吊下状態で行いにくく、クッション4を一度裏返しにしないと行いにくいものであり、ま
た、ユニット収納部341の開口部を先細りの中途に設けた場合は、開口部が狭くなって
しまい、機能部ユニット330の収納が行いにくい。これに対して、保持部340を上記
構成とすれば、ユニット収納部341の開口部は、クッション4の幅員と同一の広い開口
となっているため、機能部ユニット330を収納し易く、保持部340の下端は機能部ユ
ニット330と同等の幅員となっているため、機能部ユニット330がユニット収納部3
41内でがたつくことを防ぐことができる。
【0217】
ここで、保持部340はクッションカバー300から着脱自在に構成してもよい。かか
る場合、図21(a)に示すように、クッションカバー300と保持部340とを線ファ
スナー302で連結することとすればよい。
【0218】
すなわち、クッションカバー300の着座者前方側の周側面の上端縁と保持部340の
上端縁とにそれぞれ務歯列303、345を設けるとともに、これら務歯列303、30
4を噛合させるスライダー304を設けた構成とする。
【0219】
かかる構成とすることにより、例えば、クッション4をセルユニット370による給排
気動作を行わずに単にクッションとして使用する場合、すなわち、給排気装置350やリ
モコン装置360が不必要な場合、スライダー304を務歯列303、345に沿って所
定方向に移動させてこれら務歯列303、345の噛合状態を解除することにより、保持
部340をクッションカバー300から取り外すことができるため、着座者は、クッショ
ン4をより快適に使用することができる。
【0220】
なお、本実施形態において、保持部340は、クッションカバー300と同素材で形成
されるものとしたが、必ずしもこれに限ったものではなく、種々の素材、形状で形成する
ことができる。
【0221】
例えば、保持部340の一部を透明ビニールなどの透明部材で形成することもできる。
【0222】
具体的には、保持部340のうち、ユニット収納部341にリモコン装置360を収納
した際に、当該リモコン装置360の電源ボタン362及び選択ボタン363が外部から
視認できるような範囲を透明部材で形成することとする。
【0223】
かかる構成とすることにより、リモコン装置360をユニット収納部341から取り出
さずとも電源ボタン362や選択ボタン363を視認しながら当該リモコン装置360の
操作を行うことが可能となる。
【0224】
なお、ユニット収納部341の全てを透明部材で形成することとしてもよい。
【0225】
また、保持部340をメッシュ素材で構成してもよく、かかる構成とすることにより、
上記と同様、リモコン装置360をユニット収納部341から取り出さずとも電源ボタン
362や選択ボタン363を視認しながら当該リモコン装置360の操作を行うことが可
能となる。しかも、電源ボタン362や選択ボタン363に直接触れることができるため
、これらボタン362、363をより確実に押下することができる。
【0226】
また、保持部340における、ユニット収納部341内にリモコン装置360を収納し
たときに電源ボタン362及び選択ボタン363が位置する場所にそれぞれ切欠部を設け
た構成としてもよい。
【0227】
かかる構成とすることにより、上記と同様、リモコン装置360をユニット収納部34
1から取り出さずとも電源ボタン362や選択ボタン363を視認しながら当該リモコン
装置360の操作を行うことが可能となる。しかも、電源ボタン362や選択ボタン36
3に直接触れることができるため、これらボタン362、363をより確実に押下するこ
とができる。
【0228】
さらに、各切欠部の周辺を肉厚とすることにより、着座者手探りで電源ボタン362や
選択ボタン363を操作しようとした場合、これらボタン362,363の場所を容易に
特定することができる。そのうえ、かかる構成とすることにより、電源ボタン362や選
択ボタン363の誤操作を防止することもできる。
【0229】
なお、本実施形態において、保持部340は、着座者後方側に開口を有するユニット収
納部341を有し、このユニット収納部341に機能部ユニット330を収納して保持す
る構成としたが、必ずしもこれに限ったものではない。
【0230】
例えば、保持部を、両端部が開放した筒型形状としてもよい。
【0231】
かかる場合、保持部346は、図22に示すように、縦長の帯状部材347を折り畳み
、その両端同士を当接させた状態で当該両端をクッションカバー300の周側面の上端縁
に取り付けることにより形成される。
【0232】
これにより、この保持部346には筒状の空間が形成されるため、この空間をユニット
収納部348として利用することが可能となる。
【0233】
かかる構成とすることにより、保持部及びユニット収納部をより簡素な部材で形成する
ことができ、本実施形態にかかる椅子用床ずれ防止クッションをより安価に製造すること
が可能となる。
【0234】
また、この保持部346は、座席C’の左右方向に開口部を有しているため、着座者後
方側に開口部を有する保持部340と比べてより簡単に機能部ユニット330の出し入れ
を行うことができる。
【0235】
また、クッション4を、セルユニットによる体圧分散効果を大腿部周辺のみに与える構
成とすることにより、クッション4をより安価に製造することもできる。
【0236】
かかる場合、クッション4は、図23に示すように、クッションカバー300内部に収
容されたセルユニット390が大腿部周辺のみに設けられた構成とすればよい。
【0237】
この際、セルユニット390に設けられるエアセルの高さは、着座者の大腿部から臀部
に向かって順次低くなるように構成されている。すなわち、図23に示すように、着座者
前方側に配置されたエアセル391よりも着座者後方側に配置されたエアセル392の方
が高さが低く、さらに、このエアセル392よりも着座者後方側に配置されたエアセル3
93の方が高さが低くなるように構成されている。
【0238】
かかる構成とすることにより、セルユニット390が配設された部分と配設されていな
い部分との間に生じる段差を可及的に無くすことができるため、着座者の座り心地を損ね
ることがない。
【0239】
なお、クッションカバー300は、サイドクッションやカバークッションは、セルユニ
ット390の形状に合わせて、その大きさや形状を変更するものとする。
【0240】
また、本実施形態にかかる椅子用床ずれ防止クッション4は、自動車の座席C’に載置
して用いることを想定しており、全体的な厚さがある程度薄くなるように、クッションカ
バー300内に収容する部材は、セルユニット370、サイドクッション380、カバー
クッション320、底シート400のみとしたが、別途、下側サイドクッションやベース
クッション等を設けてもよい。
【0241】
また、本実施形態では、機能部ユニット330として、給排気装置350とリモコン装
置360とを備えた構成としたが、これら給排気装置350及びリモコン装置360を一
体に形成したものを用いてもよい。
【0242】
また、本実施形態にかかる椅子用床ずれ防止クッション4は、給排気装置に内蔵された
電磁弁の構造にも特徴を有するものである。
【0243】
すなわち、これまでの電磁弁は、いわゆる常閉型の減圧用電磁弁であり、ソレノイドの
磁力により弁体を開閉作動させるプランジャがスプリングの付勢力によってポンプからの
圧力に抗する方向に付勢された状態としていたが、かかる構成とした場合、着座者がクッ
ション4に着座すると、プランジャをスプリングの付勢力に抗して移動させるための電磁
気力よりもエアセルからの圧力とスプリングによる付勢力との合力が勝ってしまい、電磁
弁が正常に作動しないおそれがあった。
【0244】
そこで、本実施形態では、排気用電磁弁の構造を、スプリングによってプランジャがエ
アセルからの圧力に抗する方向に付勢された状態とすることにより、かかる事態を防止す
ることとした。
【0245】
かかる構成とすることにより、クッション4に大柄の着座者が座り、エアセルに予想以
上の圧力がかかったとしても、スプリングによる付勢力がエアセルからの圧力と抗する方
向に働くため、電磁気力が不足するといった事態が生じるおそれがない。
【0246】
また、上記のような構成とすることにより、電磁弁に安全弁としての機能を持たせるこ
とも可能となる。
【0247】
すなわち、例えば、スプリングによる付勢力が10kPaである場合において、エアセ
ルからの圧力が8kPaであった場合は、スプリングによる付勢力が勝っているため弁が
開くことはない。また、クッション4上に着座者が着座してエアセルからの圧力が20k
Paに増加した場合は、プランジャがスプリングの付勢力に抗して移動して弁が開放状態
となるため、エアセルに予期せぬ大きな圧力がかかり破裂するといった事態を防止するこ
とができる。
【0248】
上述してきた実施形態により、以下の椅子用床ずれ防止クッションが実現できる。
【0249】
椅子(例えば車椅子C)の座面に載置して用いる椅子用床ずれ防止クッションにおいて
、体圧分散性を有する第1の領域(例えば、セルユニット11)と、この第1の領域を囲
繞するとともに、当該第1の領域よりも硬質とした第2の領域(例えば、サイドクッショ
ン12)と、を有するクッション本体(10)を具備する椅子用床ずれ防止クッション(
1)。
【0250】
第1の領域(例えば、セルユニット11)を、給排気自在とした複数のエアセル(10
0)を配置して形成する一方、第2の領域(例えば、サイドクッション12)を発泡材に
より形成した椅子用床ずれ防止クッション(1)。
【0251】
第2の領域(例えば、サイドクッション12)は、発泡材により形成した枠体であり、
この枠体でエアセル(100)の端部に形成された鍔部(120)を挟持した状態で、第
1の領域(例えば、セルユニット11)を囲繞した椅子用床ずれ防止クッション(1)。
【0252】
第1の領域(例えば、セルユニット11)内に、押圧力に度合差をつけた領域(例えば
、領域150、151、152)を区画形成した椅子用床ずれ防止クッション(1)。
【0253】
第1の領域(例えば、セルユニット11)内に、着座者の大腿部に対する刺激力に度合
差をつけた領域(例えば、領域151、152)を形成した椅子用床ずれ防止クッション
(1)。
【0254】
第2の領域(例えば、サイドクッション12)における着座者の大腿部に対応する位置
に凹部(71,72)を形成した椅子用床ずれ防止クッション(1)。
【0255】
クッション本体(10)の下側にベースクッション(20)を、上側にはカバークッシ
ョン(30)を重合配設し、カバークッション(30)を、ベースクッション(20)よ
りも低反発材料で形成した椅子用床ずれ防止クッション(1)。
【0256】
エアセル(284)の給排気動作を制御する制御ユニット(例えば、リモコン装置27
0)と、クッション本体(210)を覆うクッションカバー(260)とを具備し、クッ
ションカバー(260)は、少なくとも枠体(例えば、上側サイドクッション212)の
周側面を覆う部分に制御ユニットを収納する収納部(261)を有する椅子用床ずれ防止
クッション(3)。
【0257】
収納部(261)は、着座者前方側の周側面に配置した椅子用床ずれ防止クッション(
3)。
【0258】
以上、本発明の実施の形態のうちのいくつかを図面に基づいて詳細に説明したが、これ
らは例示であり、当業者の知識に基づいて種々の変形、改良を施した他の形態で本発明を
実施することが可能である。
【符号の説明】
【0259】
C、C’ 椅子
1、3、4 椅子用床ずれ防止クッション
2、260、300 クッションカバー
10、210、310 クッション本体
11 第1の領域
12 第2の領域
20、220 ベースクッション
30、230、320 カバークッション
100、211、370 エアセル
120、280 鍔部
261 収納部
250、350 給排気装置
270、370 リモコン装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
椅子の座面に載置して用いる椅子用床ずれ防止クッションにおいて、
体圧分散性を有する第1の領域と、
この第1の領域を囲繞するとともに、当該第1の領域よりも硬質とした第2の領域と、
を有するクッション本体を具備することを特徴とする椅子用床ずれ防止クッション。
【請求項2】
前記第1の領域を、給排気自在とした複数のエアセルを配置して形成する一方、前記第
2の領域を発泡材により形成したことを特徴とする請求項1記載の椅子用床ずれ防止クッ
ション。
【請求項3】
前記第2の領域は、前記発泡材により形成した枠体であり、この枠体で前記エアセルの
端部に形成された鍔部を挟持した状態で、前記第1の領域を囲繞したことを特徴とする請
求項2に記載の椅子用床ずれ防止クッション。
【請求項4】
前記第1の領域内に、押圧力に度合差をつけた領域を区画形成したことを特徴とする請
求項1〜3のいずれか1項に記載の椅子用床ずれ防止クッション。
【請求項5】
前記第1の領域内に、着座者の大腿部に対する刺激力に度合差をつけた領域を形成した
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の椅子用床ずれ防止クッション。
【請求項6】
前記第2の領域における着座者の大腿部に対応する位置に凹部を形成したことを特徴と
する請求項1〜5のいずれか1項に記載の椅子用床ずれ防止クッション。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のクッション本体の下側にベースクッションを、上
側にはカバークッションを重合配設し、前記カバークッションを、前記ベースクッション
よりも低反発材料で形成したことを特徴とする椅子用床ずれ防止クッション。
【請求項8】
前記エアセルの給排気動作を制御する制御ユニットと、
前記クッション本体を覆うクッションカバーとを具備し、
前記クッションカバーは、
少なくとも前記枠体の周側面を覆う部分に前記制御ユニットを収納する収納部を有する
ことを特徴とする請求項3に記載の椅子用床ずれ防止クッション。
【請求項9】
前記収納部は、着座者前方側の周側面に配置したことを特徴とする請求項8に記載の椅
子用床ずれ防止クッション。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図3】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−31710(P2013−31710A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−247302(P2012−247302)
【出願日】平成24年11月9日(2012.11.9)
【分割の表示】特願2008−115442(P2008−115442)の分割
【原出願日】平成20年4月25日(2008.4.25)
【出願人】(000005810)日立マクセル株式会社 (2,366)
【Fターム(参考)】