椅子
【課題】オプション部材を背に適切に取り付けるための新たな構造を備えた椅子等の提供。
【解決手段】背を構成する背枠に張材5yが張られる張材取付部57を設けた椅子において、オプション取付部58を背枠における張材取付部57の後部隣接位置に形成して背枠自体を前後の領域で使い分けられるようにすることにより、このオプション取付部58を利用して張材5yと干渉することなくヘッドレスト81等のオプション部材8を容易に脱着可能に取付可能とする。
【解決手段】背を構成する背枠に張材5yが張られる張材取付部57を設けた椅子において、オプション取付部58を背枠における張材取付部57の後部隣接位置に形成して背枠自体を前後の領域で使い分けられるようにすることにより、このオプション取付部58を利用して張材5yと干渉することなくヘッドレスト81等のオプション部材8を容易に脱着可能に取付可能とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オフィス等で使用される椅子に係り、特に背にオプション部材を適切に取り付け得るようにした椅子及び背に関するものである。
【背景技術】
【0002】
背を構成する背枠に張材が取り付けられる状態で、背にヘッドレスト等のオプション部材を取り付ける場合、張材に一部被るようにして背枠にオプション部材を取り付けるか、あるいは特許文献1等に示すように、背枠からオプション取付用のフレームを分岐させて後方に持ち出し、そのフレームにオプション部材を取り付けるようにしているのが通例である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−110004号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前者の構成では張材が傷んだり使用感が損なわれる恐れがあり、また、これを避けるべく案出された特許文献1の構成では、背枠の後ろに別異のフレームが突出して存在するので、スマートさに欠け、ヘッドレストを取り付けていないときにもフレームは同じ状態で存在するという無駄がある。
【0005】
本発明は、このような課題に着目してなされたものであって、オプション部材を背に適切に取り付けるための新たな構造を備えた椅子等を新たに提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、かかる目的を達成するために、次のような手段を講じたものである。
【0007】
すなわち、本発明の椅子は、背を構成する背枠に張材取付部を設けたものにおいて、その張材取付部が設けられて張材が張られる背枠と同じ周回枠の少なくとも一部にオプション取付部を形成し、このオプション取付部を利用してオプション部材を、張材との干渉を避けて取り付け得るようにしたことを特徴とする。
【0008】
このように構成すると、背枠に張材のみならずオプション部材をも取り付けることができ、その際にオプション取付部やオプション部材が張材と干渉しないようにしているので、張材が傷む恐れがなく、背枠の後ろに別異のフレームを設けること等も不要にして無駄のないスマートな背の外観を確保することができる。また、オプション部材を取り付けない場合には、周回枠からなる通常の背が存在するだけであるから、特殊なフレーム等が常設される場合の不具合も有効に解消することができる。
【0009】
位置関係としては、オプション取付部を背枠における張材取付部の後部隣接位置に形成しておくことや、張材取付部を背枠の周回方向に沿って形成し、オプション取付部もこれと平行をなして形成しておくこと等が望ましい。
【0010】
張材の取付状態を良好にし、オプション部材の取付位置や種類にも選択の幅をもたせるためには、張材取付部及びオプション取付部を背枠の周回方向に沿って少なくとも上枠部及び左右の側枠部の略全域に亘って設けておくことが好ましい。
【0011】
意匠的効果の高いオプション取付部の態様としては、その少なくとも一部が背枠の外周に沿って延びる溝状をなしているものが有効である。
【0012】
オプション取付部における具体的な取付構造としては、オプション部材で背枠を抱くようにして当該オプション部材を背枠に取り付けるようにしているものが挙げられる。
【0013】
特にこの場合、張材との干渉を避けるための具体的構造としては、背枠の内周側の前面には張材取付部に張材を取り付けた状態で張材との間に張材の撓みしろとなる隙間を形成する部位が存在し、オプション取付部の少なくとも一部は背枠の外周側に形成した溝であって、オプション部材を外周の溝から内周の隙間に臨む部位に跨って取り付けるようにしているものが好適である。
【0014】
或いは、背枠の外周側及びそこから背面側ないし内周側へ変位した2箇所にオプション取付部を構成する溝をそれぞれ形成し、オプション部材を両溝に跨って取り付けるようにしているものも挙げられる。
【0015】
取付構造を極力悟られないようにするためには、溝が、正面及び背面から視認されない状態で設けてあることが望ましい。
【0016】
背枠の所定位置へのオプション部材の位置決めを、背枠の表面に突起や穴等の位置決め構造を表出させることなく有効に実現し、これによりオプション部材を取り付けない状態での背の外観の毀損を防ぐためには、溝の内部に、オプション部材を凹凸構造の下に係り合わせて溝方向の位置決めをなす位置決め部を設けておくことが望ましい。
【0017】
張材等を避けてオプション部材に背枠を抱かせるための具体的な構造としては、オプション部材が、背枠を抱き込む一対の対向部を有し、それらの対向部で背枠を挟持し得るように構成することが効果的である。
【0018】
その場合の取付状態をより確実ならしめるためには、対向部間には、開口縁よりも内方が幅広となる凹部が形成され、この凹部を経過的に広げて背枠を受容した後、凹部を狭める方向に締め付け力を付与するようにしておくのがよい。
【0019】
上述した溝の内部を利用する態様以外に、背枠の所定位置へのオプション部材の位置決めを背の外観を毀損せずに行い得るようにするためには、背枠が周回方向に沿ってその断面形状を所定領域において変形させてあり、オプション部材の凹部も所定取付位置における背枠の断面形状に対応させて変形させておくことが望ましい。
【0020】
オプション取付部における上記以外の具体的な取付構造としては、オプション部材の一部を背枠で抱くようにして当該オプション部材を背枠に取り付けるようにしているものが挙げられる。
【0021】
特に、オプション取付部は、開口縁よりも内方が幅広となる溝状のものであり、その溝の内周においてオプション部材を抱くようにしているものが好適である。
【0022】
背枠の一部に張材取付部を設けた背において、その背枠上、張材取付部と干渉しない部位にオプション取付部を形成し、これら両取付部を通じて張材及びオプション部材を共通の背枠に取り付け得るように背を構成すれば、この背を従来の背に代えて用いることで本発明の椅子を有効に構成することが可能となる。
【発明の効果】
【0023】
本発明は、以上説明した構成であるから、背枠自体にオプション取付部を背枠取付部とともに適切に具現することで、張材を傷めず、また張材との干渉を避けるために見栄えの悪いオプション取付構造となることを有効に解消した新規有用な椅子を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施形態に係る椅子を示す側面図。
【図2】同背面図。
【図3】同後方斜視図。
【図4】同実施形態の機構部分を示す斜視図。
【図5】図4の分解図。
【図6】同実施形態の背支桿を内側から見た斜視図。
【図7】同実施形態の背支桿を外側から見た斜視図。
【図8】同背支桿の要部断面図。
【図9】同背支桿に対する開口部の開口方向を説明する図。
【図10】同実施形態の背支桿取付部を示す部分拡大斜視図。
【図11】同実施形態に係る背枠の溝構造をヘッドレスト部分において示す部分拡大斜視図。
【図12】図11に対応した断面図。
【図13】同実施形態における張材の背下辺部への取付構造を示す図。
【図14】オプション部材を取り付けた状態の椅子の背面図。
【図15】同要部拡大図。
【図16】本発明の変形例を示す図。
【図17】本発明の変形例を示す図。
【図18】本発明の変形例を示す図。
【図19】本発明の変形例を示す図。
【図20】本発明の変形例を示す図。
【図21】本発明の変形例を示す図。
【図22】本発明の変形例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
【0026】
この実施形態の椅子は、図1〜図5に示すように、脚羽根11に支柱12を介して基部2を回転可能に取り付けてなる椅子本体に対し、その両側部に背支桿3を回転可能に取り付けるとともに、基部2及び背支桿3に、座4及び背5をシンクロチルト可能に関連づけている。
【0027】
基部2は、支柱12に回転可能に取り付けた支持基部21と、この支持基部21上に配置した座取付部22とからなるもので、支持基部21には基底部から側方に突出させた支軸61を介して背支桿3の基端3aが回転可能に取り付けてある。座取付部22は前部を長孔21a及びピン22aからなるスライド機構を介して前記支持基部21の先端に接続され、後部を一対の背支桿3の間に架設した支軸62に軸受部22bを介して回転し得るように接続されている。そして、座取付部22に座4を取り付け、背支桿3の延出端3bに背5を取り付けた状態で、背支桿3を支軸61回りに後傾させることにより、図1に矢印で示すように、座取付部22の後部が支軸62によって後下方へ移動させられ、座取付部22の前部がピン22aの長孔21a内におけるスライド動作によって後方へ移動させられて、背5の後傾動作と座4の後下方への沈み込み動作とが連動するシンクロチルト動作が引き起こされるようにしている。なお、この基部2それ自体には、背5をロックするロック機構は組み込まれていない。
【0028】
このような構成において、本実施形態は、背支桿3をコンパクトでスマートな形態にしつつ、この背支桿3に背5を直付け可能にするとともに、その背5に直接ヘッドレスト等のオプション部材を取り付け得るようにしている。
【0029】
背支桿3は、本実施形態ではアルミダイキャスト製のもので、図6〜図8に示すように少なくとも本体部3cがほぼ全域に亘って断面略コ字状をなし、そのうち図6に現われる内向きコ字状の部位に内側開口部3d、3fが、また図7に現われる外向きコ字状の部位に外側開口部3eが、それぞれ一体的に形成されている。
【0030】
本体部3cは、内壁31、外壁32、上壁33及び底壁34からなる略直方体状のもので、それらの壁面は背支桿3の長手方向に沿って直線状に延びており、後部の延出端3b側に第1の内側開口部3dを、その基端側隣接位置に外側開口部3eを、さらにその基端側隣接位置に第2の内側開口部3fをそれぞれ形成している。第1の内側開口部3dは、背支桿取付部として機能するもので、図8(a)、(b)に示すように外壁32、上壁33、底壁34及び隔壁35によって区画された横断面内向きコ字状をなし、内側及び延出端側に向けて開口している。外側開口部3eは、肘取付部として機能するもので、図8(a)、(c)に示すように内壁31、上壁33、底壁34及び一対の隔壁35,36によって区画された横断面外向きコ字状をなし、外側に向けて開口している。第2の内側開口部3fは、図8(a)、(d)に示すように外壁32、上壁33、底壁34及び一対の隔壁36,37によって区画された横断面内向きコ字状をなし、内側に向けて開口している。この第2の内側開口部3fは、更にその内側が縦隔壁f1及び横隔壁f2によって4つの小開口部に区画されているが、これは肉厚を均一にするための肉盗みである。
【0031】
すなわち、第1の内側開口部3dの内方には背支桿3の外壁32が奥部立壁として存在し、外側開口部3eの内方には背支桿3の内壁31が奥部立壁として存在しており、それらの奥部立壁にそれぞれ背支桿3や肘6を取り付けるためのねじ穴3d1、3e1を設けている。
【0032】
そして、例えば図7に示す第1の外側開口部3eでは、一対の隔壁35,36の上部間及び下部間がそれぞれ背支桿3の上壁33及び底壁34により接続されて内周が全て周回状に閉じた状態となり、図6に示す第2の内側開口部3fでは、縦隔壁f1及び横隔壁f2を無視して考えるならば一対の隔壁36、37の上部間及び下部間がそれぞれ背支桿3の上壁33及び底壁34により接続されて内周が全て周回状に閉じた状態となる。勿論、この内側開口部3f内を細分する各小開口部においても内周は全て閉じた状態となる。これらの構造は開口部の強度を確保する上で有効となるものである。第1の内側開口部3eは後述する背5の突出部54を差し込む必要があるため内周が後端側へ開口したものとなっているが、このように後端側へ開口しても背5の突出部54を差し込んだ状態で内部が密実に充填されるため強度的な支障はない。
【0033】
一方、図8の各図に現われるように、内側開口部3d、3fの内周は漸次外側に向かって開口を小さくするテーパ形状をなし、外側開口部3eの内周は漸次内側に向かって開口を小さくするテーパ形状をなしていて、これらの内周のテーパ形状は、背支桿3の外壁32と内壁31のほぼ中央を通る位置にパーティングラインを設定して構成される金型(図示省略)の抜きテーパを兼ねている。
【0034】
なお、この背支桿3には、図5〜図7に示すように、基端3a近傍の上壁33に支軸61を挿し通す軸受部71が、また延出端3b近傍の上壁33に支軸62を挿し通す軸受部72が、それぞれ成型により隆起部を設けかつ樹脂製のブッシュを装着することによって構成されている。基端3a側に位置する軸穴73には、背5の回動範囲を規制する回動規制ピン63(図1及び図5参照)が支持基部21から突出して差し込まれる。
【0035】
以上において、背支桿3の本体部3cの内壁31、外壁32、上壁33、底壁34、隔壁35〜37は勿論のこと、基端部3aの軸穴73や軸受部71,72を構成する穴の周囲を含めて、背支桿3のほぼ全域が等厚な成形体であり、軸穴73や軸受部71,72を構成する穴も内側開口部と見れば、これらの内側開口部を含めてほぼ全ての領域において横断面がコ字形をなす。
【0036】
このようにしてなる一対の背支桿3は、図4及び図9等に示すように、その間隔が基端部3aから延出端部3bに向けて拡開した状態で基部2に取り付けられるが、各開口部3d、3e、3fの開口方向は背幅方向(換言すれば支軸61,62の方向)と平行をなすように設定してある。このため、背支桿3を基準に見れば、図9に示すように、例えば開口部3dに対して肘6を差し込む方向(すなわち開口部3dの開口方向)は背支桿3の長手方向と直交する方向に対して一定の角度をなすものとなっている。
【0037】
このようにしてなる背支桿3は、図1に示すように、その延出端3bを座面よりも高くならない範囲で座4の後方に延出させてある。
【0038】
そして、上記のように基部2の左右両側部に振り分けた一対の背支桿3の延出端3bに、図1、図4及び図5に示すごとく背5を直付けするようにしている。
【0039】
背5は、図1〜図3に示すように樹脂一体成型により構成されて、上枠部51、下枠部52及び左右の側枠部53からなる単一周回枠状の背枠5xと、この背枠5xの内側に張り設けた張材5yとからなるもので、側枠部53は側面視において上下方向ほぼ中間位置が最も前方に突出する概略くの字状をなし、上枠部51及び下枠部52は図4、図5及び図10等に示すように平断面が前方に向かって凹となる湾曲形状をなしている。そして、背5の下部に位置する前記下枠部52の前面側における左右2箇所に、背支桿接続部54を一体的に形成している。
【0040】
背支桿接続部54は、下枠部52の前面より前方に向けて突起54aを一体的に設け、この突起54aを背支桿3の延出端3bに開口する第1の内側開口部3dにテーパ嵌合させて、突起54aの一部に設けた貫通孔54bに内側からボルトを差し込んで背支桿3のめねじ部3d1(図8参照)に締着するようにしたものであり、嵌合状態で突起54aに設けた段部54a1を背支桿3の延出端3bの端面3b1に突き当てるようにしている。背支桿3は図1の如く後方に向かって側面視ほぼ直線状に延びているため、本実施形態においてはほぼ最短距離でその延出端3bに背5が取り付けられる。背支桿3の幅方向の位置づけは、図2に示すように座4の下方であって側縁よりも内方に入り込んだ部位であり、前後方向の位置づけは、図1に示すように基端3aが座4の前後方向のほぼ中央、支柱12の僅か前方部位である。
【0041】
一方、この椅子は、通常なら基部2内に構成される背のロック機構を基部2外に持ち出して、図1、図4等に示すようにガススプリング機構7という形で基部2と背5の間に配置するようにしており、そのために図4及び図10等に示すようにロック機構取付部55を背5の下辺部に位置する下枠部52の幅方向中央部に設けている。
【0042】
このロック機構取付部55を形成するにあたり、背5の下枠部52の平断面が前方に向けて凹状に湾曲している点に着目し、この背5を側面視した場合にその凹み内に収まり前方に突出しない状態で上下一対の横リブ56a、56bを設けている。これらの横リブ56a、56bは、両端が下枠部52に沿って延びて前述した背支桿接続部54を構成する左右一対の突出部54aに接続されている。そして、これらの横リブ56a、56bの間にロック機構取付部55を形成している。
【0043】
ロック機構取付部55は、樹脂一体成型により、図10に示すように横リブ56a、56bに支持させた状態で一対の縦リブ55aを背幅方向に対向させて設け、これらの縦リブ55aに軸55bを挿し通す軸受部たる軸穴55cを形成したもので、この縦リブ55aも下枠部52の平断面が前方に向けて凹状に湾曲している事との関係で、側面視した場合にその凹み内に収まるように構成している。
【0044】
そして、ガススプリング機構7の一端7aを図1、図3、図4、図10等に示すように基部2の後部に設けた支軸64に回転可能に支持させ、他端7bに形成した軸穴71をロック機構取付部55を構成する左右の縦リブ55aの間に差し込んでそれらの縦リブ55aに形成した軸穴55cに合致させ、その状態で側方から軸55bを差し込んでこれらに挿し通すことにより、基部2と背5の間にガススプリング機構7を取り付けている。
【0045】
すなわち、背支桿3が背5とともに支軸61回りに回転すると、支軸61よりも後方の支軸64に一端7aを取り付けられたガススプリング機構7は、その他端7bが取り付けられた背5のロック機構取付部55が次第に支軸64に近づくことにより圧縮され、所要の圧縮位置で再びロックすることにより、背座を適宜のシンクロチルト状態に保持するようにしている。ロック状態を解除すれば、図1の姿勢への復帰力を発現するものとなる。
【0046】
さらに、前述した背5には、図11及び図12に示すように、張材取付部57及びオプション取付部58が一体的に構成してある。
【0047】
具体的には、背枠5xの上枠部51及び左右の側枠部53の外周には、背枠5xの周回方向に沿って略全域に亘り2本の溝57a、58aが並行に形成してあり、前方に位置する溝57aをそれ自体で張材取付部57として機能させるとともに、後方に位置する溝58aにヘッドレスト81等のオプション部材8を取り付けるためのオプション取付部58の役割を担わせるようにしている。
【0048】
すなわち、この実施形態ではメッシュ地5y1の周囲に板状の取付片5y2を一体的に形成した張材5yを用意し、この張材5yの取付片5y2を上枠部51及び左右の側枠部53の溝57aにそれぞれ差し込むとともに、張材5yの下端を適宜の構造、例えば図13に示すように背5の下枠部52に設けたフック爪52aに引っ掛けて固定する等の構造により固定して、当該張材5yを背5の前部に取り付けるようにしている。この状態では、図1に示すように背枠5xの側面等において前方の溝57aは張材5yで閉止され、後方の溝58aがスリット状に周回した状態となる。
【0049】
そしてこのとき、図12における背枠5xの横断面に現われるように、背枠5xの内周側の前面5x1には張材5yとの間に張材5yの撓みしろとなる隙間Sを形成する部位が存在しており、この部位を含む背枠5xの内周側と、前述した背枠5xの外周側に形成した溝58aとによって、本発明のオプション取付部58を構成している。
【0050】
そして、オプション部材8として例えばヘッドレスト81を、本体取付部81a及びこの本体取付部81aに対してねじ81bにより脱着される挟持片81cから構成して、これらの間に背枠5xの上枠部51を抱き込む形状の一対の対向部81d、81eを形成し、その対向部81d、81e間に、開口縁よりも内方が幅広となる凹部81fを形成するようにしている。そして、挟持片81cを離脱させた状態でこの凹部81fとなる部位に背枠5xの上枠部51を受容した後、挟持片81cを嵌め込んでねじ81bを用いて凹部81fを狭める方向に締め付け力を付与することにより、それらの対向部81d、81eで背枠5xの上枠部51を挟持して、ヘッドレスト81を背枠5xを抱かせた状態に取り付けるようにしている。このようにして、ヘッドレスト81は上枠部51の外周側の溝57aから上枠部51の内周側の隙間Sに臨む部位に跨って取り付けられる。なお、この状態において、挟持片81cの前面5x1は、背枠5xの上枠部51の前面に滑らかに連続しており、張材5yが撓んだ際の張材受け面として機能し得るようにしている。
【0051】
因みに、図14はこの状態を背面から見たものであり、同図においては、このヘッドレスト81との干渉を避けて、他のオプション部材8としてハンガー82も同時に取り付けている。
【0052】
このハンガー82は、図15に示すように、門型のハンガー本体82aと、このハンガー本体の2本の脚82a1の下端にねじにより脱着される挟持片82bとからなるもので、挟持片82bの取付構造は上記ヘッドレスト81におけると同様、溝58aを利用しつつ対向片間に上枠部51を挟み込んで締め付けるものである。脚82a1はヘッドレスト81の本体取付部81aの両側に位置づけられる。このハンガー82は図12に想像線で示すように背5の最も後方に位置する背枠5xの上枠部51に取り付けられるため、この位置に衣服を掛けると、く字型に屈曲する背の背面側に空いている空間に衣服を位置づけることができる。なお、図14における符合83で示すものは、他のオプション部材8として示したランバーサポートであり、背枠5xの側枠部53の内周に上記に準じた溝59を設けその溝59に両端83aを挿し通すなどすれば、このような部材の取付も可能であることを示している。
【0053】
このように、本実施形態は、背5を構成する背枠5xの一部に張材取付部57を設けた椅子において、その張材取付部57が設けられて張材5yが張られる背枠5xと同じ周回枠の少なくとも一部にオプション取付部58を形成し、このオプション取付部58を利用してヘッドレスト81等のオプション部材8を、張材5yとの干渉を避けて取り付け得るようにしたものである。
【0054】
このように構成すると、背枠5xに張材5yのみならずヘッドレスト81やハンガー82等のオプション部材5も取り付けることができ、その際にオプション取付部58やオプション部材が張材取付部57や張材5yと干渉しないようにしているので、張材5yが傷む恐れがないばかりか、背枠5xの後ろに別異のフレームを設けることも不要にして、無駄のないスマートな背5の外観を確保しつつオプション部材8の取付を実現することができる。また、オプション部材5を取り付けない場合は、張材5yが張られる周回枠のみからなる背5が存在するだけであるから、特殊なフレーム等が意味なく常設されるような不具合も有効に解消することが可能となる。
【0055】
具体的には、オプション取付部58を背枠5xにおける張材取付部57の後部隣接位置に形成して、背枠5x自体を前後の領域で使い分けるようにしているので、取付部57,58同士を明確に区画しつつ、共通の背枠5xへの張材5y及びオプション部材8の併設構造を実現することができる。
【0056】
また、張材取付部57を背枠5xの周回方向に沿って形成し、オプション取付部58もこれと平行をなして形成しているので、背枠5xの何れの位置においてもオプション取付部58を張材取付部57から遊離して目立つことがないように密接に位置づけて、背枠5xのスマートな外観を担保することができる。
【0057】
特に、張材取付部57及びオプション取付部58が背枠5xの周回方向に沿って少なくとも上枠部51及び左右の縦枠部53の略全域に亘って設けているので、背枠5xの広い範囲に亘って張材5yを取り付けることにより取付状態を安定させることができ、また、オプション部材8の取付位置や取り付けるべきオプション部材5の種類に自由度をもたせることができる。すなわち、図示例ではヘッドレスト81やハンガー82を上枠部51に取り付けたが、図14に示すように側枠部53の内周側に溝83などのオプション取付部を設定してランバーサポートを高さ位置変更可能に取り付けるような態様等も容易に可能となる。
【0058】
特に、オプション取付部58の少なくとも一部は背枠5xの外周に沿って延びる溝58aとしているので、張材5yを取り付けた状態で背枠5xの外周にスリット状(目地状)に溝58aが走り、背枠5xに細身でスマートな印象を与えるような意匠的効果をもたらすことができる。
【0059】
また、オプション取付部58の具体的な取付構造として、ヘッドレスト81等のオプション部材8で背枠5xを抱くようにして当該オプション部材8を背枠5xに取り付けるようにしているので、背枠5xにしっかりと取り付けることができ、またオプション部材8で背枠5xを挟むように取り付ければよいので、脱着も簡単な操作によって行うことができる。
【0060】
本実施形態においては、背枠5xの内周側の前面には張材取付部57に張材5yを取り付けた状態で張材5yとの間に張材5yの撓みしろとなる隙間Sを形成する部位が存在する点に着目し、オプション取付部58の少なくとも一部を背枠5xの外周側に形成した溝58aとして、ヘッドレスト81等のオプション部材8を外周の溝58aから内周の隙間Sに臨む部位に跨って取り付けるようにしているので、外周に溝58aを形成するだけでオプション取付構造を有効に実現することができる。
【0061】
とりわけ、本実施形態の溝57a、58aは、正面及び背面から視認されない状態で設けてあるので、張材5yがどのようにして取り付けられているか、あるいはヘッドレスト81等のオプション部材8がどこにどの様にして取り付けられているか等が容易に知覚されない状態でこれらの取り付けを実現することができ、一見何の変哲もない背5でありながら高い機能を発揮し得るものとなる。
【0062】
さらに上記ヘッドレスト81の取り付けにおいて、背枠5xを抱き込む一対の対向部81d、81eを有し、それらの対向部81d,81eで背枠5xを挟持し得るようにしているので、張材5yを避けた取付構造として有効であり、かつ背枠5xへの取付状態を確実ならしめることができる。
【0063】
この場合、対向部81d,81e間には、開口縁よりも内方が幅広となる凹部81fが形成され、この凹部81fを経過的に広げて背枠5xを受容した後、凹部81fを狭める方向に締め付け力を付与するようにしているので、一旦締め付ければオプション部材5の脱落を確実に防ぐことができ、取付状態に確実性を期することが可能となる。特に、凹部81fを背枠5xの横断面とともに異形な形をしているので、取付状態はより安定したものとなる。
【0064】
勿論、本実施形態の特徴は背5にあることから、上記の背5を既存の椅子の背に代替使用するだけで、本発明の椅子を有効に構成することが可能となる。
【0065】
なお、各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【0066】
例えば、図16のように、同じ溝157を使っても張材5yとオプション部材8とで干渉しなければ(つまり阻害し合わなければ)、張材取付部及びオプション取付部としての溝157を共用することもできる。勿論、図17に示す溝257のように、内部を階段状に設ける等して張地取付部として機能する部分とオプション取付部として機能する部分の住み分けを図ってもよい。
【0067】
また、図18に示すように、背枠5xの外周側及び内周側へ変位した2箇所にオプション取付部を構成する溝358a、358bをそれぞれ形成し、オプション部材8を両溝358a、358bに跨って取り付けるようにしても構わない。溝は、必ずしも背枠の内周側に設ける必要はなく、外周側から変位していれば例えば図19の溝358cように背面側に設けることもできる。勿論、図14のように内周側のみに溝59を設けて張材5yと干渉させずにオプション部材を取り付ける態様もあり得る。
【0068】
また、図20(a)に示すように、溝458の内部に凹凸関連部458yを設け、対するオプション部材8側にこれと凹凸で係り合う凹凸関連部8yを設けて、これらの凹凸関連部458y、8yを溝458内で係り合わせることにより、溝458の周回方向に沿ってオプション部材8の位置決めをなすように構成することも有効である。このようにすると、背枠5xの所定位置へのオプション部材8の位置決めを、背枠5xの表面に突起や穴等の位置決めのための構造を表出させずに行うことができるので、オプション部材8を取り付けない状態での背5の外観を有効に向上させることができる。図では溝458側の凹凸関連部458yが凹、オプション部材8側の凹凸関連部8yが凸をなしているが、凹凸関係は逆でもよい。また、図では背枠5x側の凹凸関連部458yが溝458内の立面に設けてあるが、底面に設ける態様や立面から底面に亘る部位に設ける態様等も勿論可能であり、オプション部材8側の凹凸関連部8yもこれに対応させて設けておけばよい。同図(b)はその一例を示すもので、溝458の底面に上に凸となる断面三角形状の凹凸関連部458y2を設けるとともに、対するオプション部材8側に三角形状に切り欠いた凹凸関連部8y2を設けたものであり、オプション部材8を溝458に嵌め込むに伴ってこれら凹凸関連部458y2、8y2によりオプション部材8を背枠5xの所定位置へ誘導しつつ位置決めする効果が奏される。
【0069】
さらに、図21のように背枠105xの断面形状を周回方向に沿って所定領域において変形させ、オプション部材108の凹部108aも所定取付位置における背枠105xの断面形状に対応させて変形させれば、オプション部材108が本来の取付位置に配置されて初めて背枠105xに適合することになるので、上記と同様に、背枠105xの所定位置へのオプション部材108の位置決めを背枠105xに突起や穴等の位置決め構造を表出させずに行うことができ、オプション部材108を取り付けない状態での背5の外観の毀損を有効に回避することが可能となる。
【0070】
さらにまた、図22のように、オプション部材208の一部を背枠205xで抱くようにして当該オプション部材208を背枠205xに取り付ける態様も可能である。これによると、背枠205xの中にオプション部材208の一部が入り込んで取り付けられるので、取付部分を隠蔽して見栄えの向上に資することができる。
【0071】
図示例のオプション取付部458は、開口縁よりも内方が幅広となる溝状のものであり、その溝の内周においてオプション部材208の基端拡開部208xを抱くように取り付け可能としたものであり、この基端拡開部208xは開口縁から挿入して回転させ、適宜の戻り止めを施す等の手法によって、開口縁の内壁に容易に密着させることができる。
【符号の説明】
【0072】
5…背
5x…背枠
51…上枠部
53…側枠部
57…張地取付部
58…オプション取付部
【技術分野】
【0001】
本発明は、オフィス等で使用される椅子に係り、特に背にオプション部材を適切に取り付け得るようにした椅子及び背に関するものである。
【背景技術】
【0002】
背を構成する背枠に張材が取り付けられる状態で、背にヘッドレスト等のオプション部材を取り付ける場合、張材に一部被るようにして背枠にオプション部材を取り付けるか、あるいは特許文献1等に示すように、背枠からオプション取付用のフレームを分岐させて後方に持ち出し、そのフレームにオプション部材を取り付けるようにしているのが通例である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−110004号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前者の構成では張材が傷んだり使用感が損なわれる恐れがあり、また、これを避けるべく案出された特許文献1の構成では、背枠の後ろに別異のフレームが突出して存在するので、スマートさに欠け、ヘッドレストを取り付けていないときにもフレームは同じ状態で存在するという無駄がある。
【0005】
本発明は、このような課題に着目してなされたものであって、オプション部材を背に適切に取り付けるための新たな構造を備えた椅子等を新たに提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、かかる目的を達成するために、次のような手段を講じたものである。
【0007】
すなわち、本発明の椅子は、背を構成する背枠に張材取付部を設けたものにおいて、その張材取付部が設けられて張材が張られる背枠と同じ周回枠の少なくとも一部にオプション取付部を形成し、このオプション取付部を利用してオプション部材を、張材との干渉を避けて取り付け得るようにしたことを特徴とする。
【0008】
このように構成すると、背枠に張材のみならずオプション部材をも取り付けることができ、その際にオプション取付部やオプション部材が張材と干渉しないようにしているので、張材が傷む恐れがなく、背枠の後ろに別異のフレームを設けること等も不要にして無駄のないスマートな背の外観を確保することができる。また、オプション部材を取り付けない場合には、周回枠からなる通常の背が存在するだけであるから、特殊なフレーム等が常設される場合の不具合も有効に解消することができる。
【0009】
位置関係としては、オプション取付部を背枠における張材取付部の後部隣接位置に形成しておくことや、張材取付部を背枠の周回方向に沿って形成し、オプション取付部もこれと平行をなして形成しておくこと等が望ましい。
【0010】
張材の取付状態を良好にし、オプション部材の取付位置や種類にも選択の幅をもたせるためには、張材取付部及びオプション取付部を背枠の周回方向に沿って少なくとも上枠部及び左右の側枠部の略全域に亘って設けておくことが好ましい。
【0011】
意匠的効果の高いオプション取付部の態様としては、その少なくとも一部が背枠の外周に沿って延びる溝状をなしているものが有効である。
【0012】
オプション取付部における具体的な取付構造としては、オプション部材で背枠を抱くようにして当該オプション部材を背枠に取り付けるようにしているものが挙げられる。
【0013】
特にこの場合、張材との干渉を避けるための具体的構造としては、背枠の内周側の前面には張材取付部に張材を取り付けた状態で張材との間に張材の撓みしろとなる隙間を形成する部位が存在し、オプション取付部の少なくとも一部は背枠の外周側に形成した溝であって、オプション部材を外周の溝から内周の隙間に臨む部位に跨って取り付けるようにしているものが好適である。
【0014】
或いは、背枠の外周側及びそこから背面側ないし内周側へ変位した2箇所にオプション取付部を構成する溝をそれぞれ形成し、オプション部材を両溝に跨って取り付けるようにしているものも挙げられる。
【0015】
取付構造を極力悟られないようにするためには、溝が、正面及び背面から視認されない状態で設けてあることが望ましい。
【0016】
背枠の所定位置へのオプション部材の位置決めを、背枠の表面に突起や穴等の位置決め構造を表出させることなく有効に実現し、これによりオプション部材を取り付けない状態での背の外観の毀損を防ぐためには、溝の内部に、オプション部材を凹凸構造の下に係り合わせて溝方向の位置決めをなす位置決め部を設けておくことが望ましい。
【0017】
張材等を避けてオプション部材に背枠を抱かせるための具体的な構造としては、オプション部材が、背枠を抱き込む一対の対向部を有し、それらの対向部で背枠を挟持し得るように構成することが効果的である。
【0018】
その場合の取付状態をより確実ならしめるためには、対向部間には、開口縁よりも内方が幅広となる凹部が形成され、この凹部を経過的に広げて背枠を受容した後、凹部を狭める方向に締め付け力を付与するようにしておくのがよい。
【0019】
上述した溝の内部を利用する態様以外に、背枠の所定位置へのオプション部材の位置決めを背の外観を毀損せずに行い得るようにするためには、背枠が周回方向に沿ってその断面形状を所定領域において変形させてあり、オプション部材の凹部も所定取付位置における背枠の断面形状に対応させて変形させておくことが望ましい。
【0020】
オプション取付部における上記以外の具体的な取付構造としては、オプション部材の一部を背枠で抱くようにして当該オプション部材を背枠に取り付けるようにしているものが挙げられる。
【0021】
特に、オプション取付部は、開口縁よりも内方が幅広となる溝状のものであり、その溝の内周においてオプション部材を抱くようにしているものが好適である。
【0022】
背枠の一部に張材取付部を設けた背において、その背枠上、張材取付部と干渉しない部位にオプション取付部を形成し、これら両取付部を通じて張材及びオプション部材を共通の背枠に取り付け得るように背を構成すれば、この背を従来の背に代えて用いることで本発明の椅子を有効に構成することが可能となる。
【発明の効果】
【0023】
本発明は、以上説明した構成であるから、背枠自体にオプション取付部を背枠取付部とともに適切に具現することで、張材を傷めず、また張材との干渉を避けるために見栄えの悪いオプション取付構造となることを有効に解消した新規有用な椅子を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施形態に係る椅子を示す側面図。
【図2】同背面図。
【図3】同後方斜視図。
【図4】同実施形態の機構部分を示す斜視図。
【図5】図4の分解図。
【図6】同実施形態の背支桿を内側から見た斜視図。
【図7】同実施形態の背支桿を外側から見た斜視図。
【図8】同背支桿の要部断面図。
【図9】同背支桿に対する開口部の開口方向を説明する図。
【図10】同実施形態の背支桿取付部を示す部分拡大斜視図。
【図11】同実施形態に係る背枠の溝構造をヘッドレスト部分において示す部分拡大斜視図。
【図12】図11に対応した断面図。
【図13】同実施形態における張材の背下辺部への取付構造を示す図。
【図14】オプション部材を取り付けた状態の椅子の背面図。
【図15】同要部拡大図。
【図16】本発明の変形例を示す図。
【図17】本発明の変形例を示す図。
【図18】本発明の変形例を示す図。
【図19】本発明の変形例を示す図。
【図20】本発明の変形例を示す図。
【図21】本発明の変形例を示す図。
【図22】本発明の変形例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
【0026】
この実施形態の椅子は、図1〜図5に示すように、脚羽根11に支柱12を介して基部2を回転可能に取り付けてなる椅子本体に対し、その両側部に背支桿3を回転可能に取り付けるとともに、基部2及び背支桿3に、座4及び背5をシンクロチルト可能に関連づけている。
【0027】
基部2は、支柱12に回転可能に取り付けた支持基部21と、この支持基部21上に配置した座取付部22とからなるもので、支持基部21には基底部から側方に突出させた支軸61を介して背支桿3の基端3aが回転可能に取り付けてある。座取付部22は前部を長孔21a及びピン22aからなるスライド機構を介して前記支持基部21の先端に接続され、後部を一対の背支桿3の間に架設した支軸62に軸受部22bを介して回転し得るように接続されている。そして、座取付部22に座4を取り付け、背支桿3の延出端3bに背5を取り付けた状態で、背支桿3を支軸61回りに後傾させることにより、図1に矢印で示すように、座取付部22の後部が支軸62によって後下方へ移動させられ、座取付部22の前部がピン22aの長孔21a内におけるスライド動作によって後方へ移動させられて、背5の後傾動作と座4の後下方への沈み込み動作とが連動するシンクロチルト動作が引き起こされるようにしている。なお、この基部2それ自体には、背5をロックするロック機構は組み込まれていない。
【0028】
このような構成において、本実施形態は、背支桿3をコンパクトでスマートな形態にしつつ、この背支桿3に背5を直付け可能にするとともに、その背5に直接ヘッドレスト等のオプション部材を取り付け得るようにしている。
【0029】
背支桿3は、本実施形態ではアルミダイキャスト製のもので、図6〜図8に示すように少なくとも本体部3cがほぼ全域に亘って断面略コ字状をなし、そのうち図6に現われる内向きコ字状の部位に内側開口部3d、3fが、また図7に現われる外向きコ字状の部位に外側開口部3eが、それぞれ一体的に形成されている。
【0030】
本体部3cは、内壁31、外壁32、上壁33及び底壁34からなる略直方体状のもので、それらの壁面は背支桿3の長手方向に沿って直線状に延びており、後部の延出端3b側に第1の内側開口部3dを、その基端側隣接位置に外側開口部3eを、さらにその基端側隣接位置に第2の内側開口部3fをそれぞれ形成している。第1の内側開口部3dは、背支桿取付部として機能するもので、図8(a)、(b)に示すように外壁32、上壁33、底壁34及び隔壁35によって区画された横断面内向きコ字状をなし、内側及び延出端側に向けて開口している。外側開口部3eは、肘取付部として機能するもので、図8(a)、(c)に示すように内壁31、上壁33、底壁34及び一対の隔壁35,36によって区画された横断面外向きコ字状をなし、外側に向けて開口している。第2の内側開口部3fは、図8(a)、(d)に示すように外壁32、上壁33、底壁34及び一対の隔壁36,37によって区画された横断面内向きコ字状をなし、内側に向けて開口している。この第2の内側開口部3fは、更にその内側が縦隔壁f1及び横隔壁f2によって4つの小開口部に区画されているが、これは肉厚を均一にするための肉盗みである。
【0031】
すなわち、第1の内側開口部3dの内方には背支桿3の外壁32が奥部立壁として存在し、外側開口部3eの内方には背支桿3の内壁31が奥部立壁として存在しており、それらの奥部立壁にそれぞれ背支桿3や肘6を取り付けるためのねじ穴3d1、3e1を設けている。
【0032】
そして、例えば図7に示す第1の外側開口部3eでは、一対の隔壁35,36の上部間及び下部間がそれぞれ背支桿3の上壁33及び底壁34により接続されて内周が全て周回状に閉じた状態となり、図6に示す第2の内側開口部3fでは、縦隔壁f1及び横隔壁f2を無視して考えるならば一対の隔壁36、37の上部間及び下部間がそれぞれ背支桿3の上壁33及び底壁34により接続されて内周が全て周回状に閉じた状態となる。勿論、この内側開口部3f内を細分する各小開口部においても内周は全て閉じた状態となる。これらの構造は開口部の強度を確保する上で有効となるものである。第1の内側開口部3eは後述する背5の突出部54を差し込む必要があるため内周が後端側へ開口したものとなっているが、このように後端側へ開口しても背5の突出部54を差し込んだ状態で内部が密実に充填されるため強度的な支障はない。
【0033】
一方、図8の各図に現われるように、内側開口部3d、3fの内周は漸次外側に向かって開口を小さくするテーパ形状をなし、外側開口部3eの内周は漸次内側に向かって開口を小さくするテーパ形状をなしていて、これらの内周のテーパ形状は、背支桿3の外壁32と内壁31のほぼ中央を通る位置にパーティングラインを設定して構成される金型(図示省略)の抜きテーパを兼ねている。
【0034】
なお、この背支桿3には、図5〜図7に示すように、基端3a近傍の上壁33に支軸61を挿し通す軸受部71が、また延出端3b近傍の上壁33に支軸62を挿し通す軸受部72が、それぞれ成型により隆起部を設けかつ樹脂製のブッシュを装着することによって構成されている。基端3a側に位置する軸穴73には、背5の回動範囲を規制する回動規制ピン63(図1及び図5参照)が支持基部21から突出して差し込まれる。
【0035】
以上において、背支桿3の本体部3cの内壁31、外壁32、上壁33、底壁34、隔壁35〜37は勿論のこと、基端部3aの軸穴73や軸受部71,72を構成する穴の周囲を含めて、背支桿3のほぼ全域が等厚な成形体であり、軸穴73や軸受部71,72を構成する穴も内側開口部と見れば、これらの内側開口部を含めてほぼ全ての領域において横断面がコ字形をなす。
【0036】
このようにしてなる一対の背支桿3は、図4及び図9等に示すように、その間隔が基端部3aから延出端部3bに向けて拡開した状態で基部2に取り付けられるが、各開口部3d、3e、3fの開口方向は背幅方向(換言すれば支軸61,62の方向)と平行をなすように設定してある。このため、背支桿3を基準に見れば、図9に示すように、例えば開口部3dに対して肘6を差し込む方向(すなわち開口部3dの開口方向)は背支桿3の長手方向と直交する方向に対して一定の角度をなすものとなっている。
【0037】
このようにしてなる背支桿3は、図1に示すように、その延出端3bを座面よりも高くならない範囲で座4の後方に延出させてある。
【0038】
そして、上記のように基部2の左右両側部に振り分けた一対の背支桿3の延出端3bに、図1、図4及び図5に示すごとく背5を直付けするようにしている。
【0039】
背5は、図1〜図3に示すように樹脂一体成型により構成されて、上枠部51、下枠部52及び左右の側枠部53からなる単一周回枠状の背枠5xと、この背枠5xの内側に張り設けた張材5yとからなるもので、側枠部53は側面視において上下方向ほぼ中間位置が最も前方に突出する概略くの字状をなし、上枠部51及び下枠部52は図4、図5及び図10等に示すように平断面が前方に向かって凹となる湾曲形状をなしている。そして、背5の下部に位置する前記下枠部52の前面側における左右2箇所に、背支桿接続部54を一体的に形成している。
【0040】
背支桿接続部54は、下枠部52の前面より前方に向けて突起54aを一体的に設け、この突起54aを背支桿3の延出端3bに開口する第1の内側開口部3dにテーパ嵌合させて、突起54aの一部に設けた貫通孔54bに内側からボルトを差し込んで背支桿3のめねじ部3d1(図8参照)に締着するようにしたものであり、嵌合状態で突起54aに設けた段部54a1を背支桿3の延出端3bの端面3b1に突き当てるようにしている。背支桿3は図1の如く後方に向かって側面視ほぼ直線状に延びているため、本実施形態においてはほぼ最短距離でその延出端3bに背5が取り付けられる。背支桿3の幅方向の位置づけは、図2に示すように座4の下方であって側縁よりも内方に入り込んだ部位であり、前後方向の位置づけは、図1に示すように基端3aが座4の前後方向のほぼ中央、支柱12の僅か前方部位である。
【0041】
一方、この椅子は、通常なら基部2内に構成される背のロック機構を基部2外に持ち出して、図1、図4等に示すようにガススプリング機構7という形で基部2と背5の間に配置するようにしており、そのために図4及び図10等に示すようにロック機構取付部55を背5の下辺部に位置する下枠部52の幅方向中央部に設けている。
【0042】
このロック機構取付部55を形成するにあたり、背5の下枠部52の平断面が前方に向けて凹状に湾曲している点に着目し、この背5を側面視した場合にその凹み内に収まり前方に突出しない状態で上下一対の横リブ56a、56bを設けている。これらの横リブ56a、56bは、両端が下枠部52に沿って延びて前述した背支桿接続部54を構成する左右一対の突出部54aに接続されている。そして、これらの横リブ56a、56bの間にロック機構取付部55を形成している。
【0043】
ロック機構取付部55は、樹脂一体成型により、図10に示すように横リブ56a、56bに支持させた状態で一対の縦リブ55aを背幅方向に対向させて設け、これらの縦リブ55aに軸55bを挿し通す軸受部たる軸穴55cを形成したもので、この縦リブ55aも下枠部52の平断面が前方に向けて凹状に湾曲している事との関係で、側面視した場合にその凹み内に収まるように構成している。
【0044】
そして、ガススプリング機構7の一端7aを図1、図3、図4、図10等に示すように基部2の後部に設けた支軸64に回転可能に支持させ、他端7bに形成した軸穴71をロック機構取付部55を構成する左右の縦リブ55aの間に差し込んでそれらの縦リブ55aに形成した軸穴55cに合致させ、その状態で側方から軸55bを差し込んでこれらに挿し通すことにより、基部2と背5の間にガススプリング機構7を取り付けている。
【0045】
すなわち、背支桿3が背5とともに支軸61回りに回転すると、支軸61よりも後方の支軸64に一端7aを取り付けられたガススプリング機構7は、その他端7bが取り付けられた背5のロック機構取付部55が次第に支軸64に近づくことにより圧縮され、所要の圧縮位置で再びロックすることにより、背座を適宜のシンクロチルト状態に保持するようにしている。ロック状態を解除すれば、図1の姿勢への復帰力を発現するものとなる。
【0046】
さらに、前述した背5には、図11及び図12に示すように、張材取付部57及びオプション取付部58が一体的に構成してある。
【0047】
具体的には、背枠5xの上枠部51及び左右の側枠部53の外周には、背枠5xの周回方向に沿って略全域に亘り2本の溝57a、58aが並行に形成してあり、前方に位置する溝57aをそれ自体で張材取付部57として機能させるとともに、後方に位置する溝58aにヘッドレスト81等のオプション部材8を取り付けるためのオプション取付部58の役割を担わせるようにしている。
【0048】
すなわち、この実施形態ではメッシュ地5y1の周囲に板状の取付片5y2を一体的に形成した張材5yを用意し、この張材5yの取付片5y2を上枠部51及び左右の側枠部53の溝57aにそれぞれ差し込むとともに、張材5yの下端を適宜の構造、例えば図13に示すように背5の下枠部52に設けたフック爪52aに引っ掛けて固定する等の構造により固定して、当該張材5yを背5の前部に取り付けるようにしている。この状態では、図1に示すように背枠5xの側面等において前方の溝57aは張材5yで閉止され、後方の溝58aがスリット状に周回した状態となる。
【0049】
そしてこのとき、図12における背枠5xの横断面に現われるように、背枠5xの内周側の前面5x1には張材5yとの間に張材5yの撓みしろとなる隙間Sを形成する部位が存在しており、この部位を含む背枠5xの内周側と、前述した背枠5xの外周側に形成した溝58aとによって、本発明のオプション取付部58を構成している。
【0050】
そして、オプション部材8として例えばヘッドレスト81を、本体取付部81a及びこの本体取付部81aに対してねじ81bにより脱着される挟持片81cから構成して、これらの間に背枠5xの上枠部51を抱き込む形状の一対の対向部81d、81eを形成し、その対向部81d、81e間に、開口縁よりも内方が幅広となる凹部81fを形成するようにしている。そして、挟持片81cを離脱させた状態でこの凹部81fとなる部位に背枠5xの上枠部51を受容した後、挟持片81cを嵌め込んでねじ81bを用いて凹部81fを狭める方向に締め付け力を付与することにより、それらの対向部81d、81eで背枠5xの上枠部51を挟持して、ヘッドレスト81を背枠5xを抱かせた状態に取り付けるようにしている。このようにして、ヘッドレスト81は上枠部51の外周側の溝57aから上枠部51の内周側の隙間Sに臨む部位に跨って取り付けられる。なお、この状態において、挟持片81cの前面5x1は、背枠5xの上枠部51の前面に滑らかに連続しており、張材5yが撓んだ際の張材受け面として機能し得るようにしている。
【0051】
因みに、図14はこの状態を背面から見たものであり、同図においては、このヘッドレスト81との干渉を避けて、他のオプション部材8としてハンガー82も同時に取り付けている。
【0052】
このハンガー82は、図15に示すように、門型のハンガー本体82aと、このハンガー本体の2本の脚82a1の下端にねじにより脱着される挟持片82bとからなるもので、挟持片82bの取付構造は上記ヘッドレスト81におけると同様、溝58aを利用しつつ対向片間に上枠部51を挟み込んで締め付けるものである。脚82a1はヘッドレスト81の本体取付部81aの両側に位置づけられる。このハンガー82は図12に想像線で示すように背5の最も後方に位置する背枠5xの上枠部51に取り付けられるため、この位置に衣服を掛けると、く字型に屈曲する背の背面側に空いている空間に衣服を位置づけることができる。なお、図14における符合83で示すものは、他のオプション部材8として示したランバーサポートであり、背枠5xの側枠部53の内周に上記に準じた溝59を設けその溝59に両端83aを挿し通すなどすれば、このような部材の取付も可能であることを示している。
【0053】
このように、本実施形態は、背5を構成する背枠5xの一部に張材取付部57を設けた椅子において、その張材取付部57が設けられて張材5yが張られる背枠5xと同じ周回枠の少なくとも一部にオプション取付部58を形成し、このオプション取付部58を利用してヘッドレスト81等のオプション部材8を、張材5yとの干渉を避けて取り付け得るようにしたものである。
【0054】
このように構成すると、背枠5xに張材5yのみならずヘッドレスト81やハンガー82等のオプション部材5も取り付けることができ、その際にオプション取付部58やオプション部材が張材取付部57や張材5yと干渉しないようにしているので、張材5yが傷む恐れがないばかりか、背枠5xの後ろに別異のフレームを設けることも不要にして、無駄のないスマートな背5の外観を確保しつつオプション部材8の取付を実現することができる。また、オプション部材5を取り付けない場合は、張材5yが張られる周回枠のみからなる背5が存在するだけであるから、特殊なフレーム等が意味なく常設されるような不具合も有効に解消することが可能となる。
【0055】
具体的には、オプション取付部58を背枠5xにおける張材取付部57の後部隣接位置に形成して、背枠5x自体を前後の領域で使い分けるようにしているので、取付部57,58同士を明確に区画しつつ、共通の背枠5xへの張材5y及びオプション部材8の併設構造を実現することができる。
【0056】
また、張材取付部57を背枠5xの周回方向に沿って形成し、オプション取付部58もこれと平行をなして形成しているので、背枠5xの何れの位置においてもオプション取付部58を張材取付部57から遊離して目立つことがないように密接に位置づけて、背枠5xのスマートな外観を担保することができる。
【0057】
特に、張材取付部57及びオプション取付部58が背枠5xの周回方向に沿って少なくとも上枠部51及び左右の縦枠部53の略全域に亘って設けているので、背枠5xの広い範囲に亘って張材5yを取り付けることにより取付状態を安定させることができ、また、オプション部材8の取付位置や取り付けるべきオプション部材5の種類に自由度をもたせることができる。すなわち、図示例ではヘッドレスト81やハンガー82を上枠部51に取り付けたが、図14に示すように側枠部53の内周側に溝83などのオプション取付部を設定してランバーサポートを高さ位置変更可能に取り付けるような態様等も容易に可能となる。
【0058】
特に、オプション取付部58の少なくとも一部は背枠5xの外周に沿って延びる溝58aとしているので、張材5yを取り付けた状態で背枠5xの外周にスリット状(目地状)に溝58aが走り、背枠5xに細身でスマートな印象を与えるような意匠的効果をもたらすことができる。
【0059】
また、オプション取付部58の具体的な取付構造として、ヘッドレスト81等のオプション部材8で背枠5xを抱くようにして当該オプション部材8を背枠5xに取り付けるようにしているので、背枠5xにしっかりと取り付けることができ、またオプション部材8で背枠5xを挟むように取り付ければよいので、脱着も簡単な操作によって行うことができる。
【0060】
本実施形態においては、背枠5xの内周側の前面には張材取付部57に張材5yを取り付けた状態で張材5yとの間に張材5yの撓みしろとなる隙間Sを形成する部位が存在する点に着目し、オプション取付部58の少なくとも一部を背枠5xの外周側に形成した溝58aとして、ヘッドレスト81等のオプション部材8を外周の溝58aから内周の隙間Sに臨む部位に跨って取り付けるようにしているので、外周に溝58aを形成するだけでオプション取付構造を有効に実現することができる。
【0061】
とりわけ、本実施形態の溝57a、58aは、正面及び背面から視認されない状態で設けてあるので、張材5yがどのようにして取り付けられているか、あるいはヘッドレスト81等のオプション部材8がどこにどの様にして取り付けられているか等が容易に知覚されない状態でこれらの取り付けを実現することができ、一見何の変哲もない背5でありながら高い機能を発揮し得るものとなる。
【0062】
さらに上記ヘッドレスト81の取り付けにおいて、背枠5xを抱き込む一対の対向部81d、81eを有し、それらの対向部81d,81eで背枠5xを挟持し得るようにしているので、張材5yを避けた取付構造として有効であり、かつ背枠5xへの取付状態を確実ならしめることができる。
【0063】
この場合、対向部81d,81e間には、開口縁よりも内方が幅広となる凹部81fが形成され、この凹部81fを経過的に広げて背枠5xを受容した後、凹部81fを狭める方向に締め付け力を付与するようにしているので、一旦締め付ければオプション部材5の脱落を確実に防ぐことができ、取付状態に確実性を期することが可能となる。特に、凹部81fを背枠5xの横断面とともに異形な形をしているので、取付状態はより安定したものとなる。
【0064】
勿論、本実施形態の特徴は背5にあることから、上記の背5を既存の椅子の背に代替使用するだけで、本発明の椅子を有効に構成することが可能となる。
【0065】
なお、各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【0066】
例えば、図16のように、同じ溝157を使っても張材5yとオプション部材8とで干渉しなければ(つまり阻害し合わなければ)、張材取付部及びオプション取付部としての溝157を共用することもできる。勿論、図17に示す溝257のように、内部を階段状に設ける等して張地取付部として機能する部分とオプション取付部として機能する部分の住み分けを図ってもよい。
【0067】
また、図18に示すように、背枠5xの外周側及び内周側へ変位した2箇所にオプション取付部を構成する溝358a、358bをそれぞれ形成し、オプション部材8を両溝358a、358bに跨って取り付けるようにしても構わない。溝は、必ずしも背枠の内周側に設ける必要はなく、外周側から変位していれば例えば図19の溝358cように背面側に設けることもできる。勿論、図14のように内周側のみに溝59を設けて張材5yと干渉させずにオプション部材を取り付ける態様もあり得る。
【0068】
また、図20(a)に示すように、溝458の内部に凹凸関連部458yを設け、対するオプション部材8側にこれと凹凸で係り合う凹凸関連部8yを設けて、これらの凹凸関連部458y、8yを溝458内で係り合わせることにより、溝458の周回方向に沿ってオプション部材8の位置決めをなすように構成することも有効である。このようにすると、背枠5xの所定位置へのオプション部材8の位置決めを、背枠5xの表面に突起や穴等の位置決めのための構造を表出させずに行うことができるので、オプション部材8を取り付けない状態での背5の外観を有効に向上させることができる。図では溝458側の凹凸関連部458yが凹、オプション部材8側の凹凸関連部8yが凸をなしているが、凹凸関係は逆でもよい。また、図では背枠5x側の凹凸関連部458yが溝458内の立面に設けてあるが、底面に設ける態様や立面から底面に亘る部位に設ける態様等も勿論可能であり、オプション部材8側の凹凸関連部8yもこれに対応させて設けておけばよい。同図(b)はその一例を示すもので、溝458の底面に上に凸となる断面三角形状の凹凸関連部458y2を設けるとともに、対するオプション部材8側に三角形状に切り欠いた凹凸関連部8y2を設けたものであり、オプション部材8を溝458に嵌め込むに伴ってこれら凹凸関連部458y2、8y2によりオプション部材8を背枠5xの所定位置へ誘導しつつ位置決めする効果が奏される。
【0069】
さらに、図21のように背枠105xの断面形状を周回方向に沿って所定領域において変形させ、オプション部材108の凹部108aも所定取付位置における背枠105xの断面形状に対応させて変形させれば、オプション部材108が本来の取付位置に配置されて初めて背枠105xに適合することになるので、上記と同様に、背枠105xの所定位置へのオプション部材108の位置決めを背枠105xに突起や穴等の位置決め構造を表出させずに行うことができ、オプション部材108を取り付けない状態での背5の外観の毀損を有効に回避することが可能となる。
【0070】
さらにまた、図22のように、オプション部材208の一部を背枠205xで抱くようにして当該オプション部材208を背枠205xに取り付ける態様も可能である。これによると、背枠205xの中にオプション部材208の一部が入り込んで取り付けられるので、取付部分を隠蔽して見栄えの向上に資することができる。
【0071】
図示例のオプション取付部458は、開口縁よりも内方が幅広となる溝状のものであり、その溝の内周においてオプション部材208の基端拡開部208xを抱くように取り付け可能としたものであり、この基端拡開部208xは開口縁から挿入して回転させ、適宜の戻り止めを施す等の手法によって、開口縁の内壁に容易に密着させることができる。
【符号の説明】
【0072】
5…背
5x…背枠
51…上枠部
53…側枠部
57…張地取付部
58…オプション取付部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
背を構成する背枠に張材取付部を設けたものにおいて、その張材取付部が設けられて張材が張られる背枠と同じ周回枠の少なくとも一部にオプション取付部を形成し、このオプション取付部を利用してオプション部材を、張材との干渉を避けて取り付け得るようにしたことを特徴とする椅子。
【請求項2】
オプション取付部を背枠における張材取付部の後部隣接位置に形成している請求項1記載の椅子。
【請求項3】
張材取付部は背枠の周回方向に沿って形成され、オプション取付部もこれと平行をなして形成されている請求項1又は2記載の椅子。
【請求項4】
張材取付部及びオプション取付部が背枠の周回方向に沿って少なくとも上枠部及び左右の側枠部の略全域に亘って設けてある請求項1〜3記載の椅子。
【請求項5】
オプション取付部の少なくとも一部は背枠の外周に沿って延びる溝状のものである請求項1〜4記載の椅子。
【請求項6】
オプション取付部において、オプション部材で背枠を抱くようにして当該オプション部材を背枠に取り付けるようにしている請求項1〜5記載の椅子。
【請求項7】
背枠の内周側の前面には張材取付部に張材を取り付けた状態で張材との間に張材の撓みしろとなる隙間を形成する部位が存在し、オプション取付部の少なくとも一部は背枠の外周側に形成した溝であって、オプション部材を外周の溝から内周の隙間に臨む部位に跨って取り付けるようにしている請求項6記載の椅子。
【請求項8】
背枠の外周側及びそこから背面側ないし内周側へ変位した2箇所にオプション取付部を構成する溝をそれぞれ形成し、オプション部材を両溝に跨って取り付けるようにしている請求項6記載の椅子。
【請求項9】
溝が、正面及び背面から視認されない状態で設けてある請求項7又は8記載の椅子。
【請求項10】
溝の内部に、オプション部材を凹凸構造の下に係り合わせて溝方向の位置決めをなす位置決め部を設けている請求項6〜9記載の椅子。
【請求項11】
オプション部材が、背枠を抱き込む一対の対向部を有し、それらの対向部で背枠を挟持し得るようにしている請求項6〜10記載の椅子。
【請求項12】
対向部間には、開口縁よりも内方が幅広となる凹部が形成され、この凹部を経過的に広げて背枠を受容した後、凹部を狭める方向に締め付け力を付与するようにしている請求項11記載の椅子。
【請求項13】
背枠が周回方向に沿ってその断面形状を所定領域において変形させてあり、オプション部材の凹部も所定取付位置における背枠の断面形状に対応させて変形させている請求項12記載の椅子。
【請求項14】
オプション取付部において、オプション部材の一部を背枠で抱くようにして当該オプション部材を背枠に取り付けるようにしている請求項1〜5記載の椅子。
【請求項15】
オプション取付部は、開口縁よりも内方が幅広となる溝状のものであり、その溝の内周においてオプション部材を抱くようにしている請求項14記載の椅子。
【請求項16】
請求項1〜15記載の椅子を構成すべく、背の背枠を構成する背枠の一部に張材取付部を設けたものであって、その背枠上、張材取付部と干渉しない部位にオプション取付部を形成し、これら両取付部を通じて張材及びオプション部材を共通の背枠に取り付け得るようにしたことを特徴とする背。
【請求項1】
背を構成する背枠に張材取付部を設けたものにおいて、その張材取付部が設けられて張材が張られる背枠と同じ周回枠の少なくとも一部にオプション取付部を形成し、このオプション取付部を利用してオプション部材を、張材との干渉を避けて取り付け得るようにしたことを特徴とする椅子。
【請求項2】
オプション取付部を背枠における張材取付部の後部隣接位置に形成している請求項1記載の椅子。
【請求項3】
張材取付部は背枠の周回方向に沿って形成され、オプション取付部もこれと平行をなして形成されている請求項1又は2記載の椅子。
【請求項4】
張材取付部及びオプション取付部が背枠の周回方向に沿って少なくとも上枠部及び左右の側枠部の略全域に亘って設けてある請求項1〜3記載の椅子。
【請求項5】
オプション取付部の少なくとも一部は背枠の外周に沿って延びる溝状のものである請求項1〜4記載の椅子。
【請求項6】
オプション取付部において、オプション部材で背枠を抱くようにして当該オプション部材を背枠に取り付けるようにしている請求項1〜5記載の椅子。
【請求項7】
背枠の内周側の前面には張材取付部に張材を取り付けた状態で張材との間に張材の撓みしろとなる隙間を形成する部位が存在し、オプション取付部の少なくとも一部は背枠の外周側に形成した溝であって、オプション部材を外周の溝から内周の隙間に臨む部位に跨って取り付けるようにしている請求項6記載の椅子。
【請求項8】
背枠の外周側及びそこから背面側ないし内周側へ変位した2箇所にオプション取付部を構成する溝をそれぞれ形成し、オプション部材を両溝に跨って取り付けるようにしている請求項6記載の椅子。
【請求項9】
溝が、正面及び背面から視認されない状態で設けてある請求項7又は8記載の椅子。
【請求項10】
溝の内部に、オプション部材を凹凸構造の下に係り合わせて溝方向の位置決めをなす位置決め部を設けている請求項6〜9記載の椅子。
【請求項11】
オプション部材が、背枠を抱き込む一対の対向部を有し、それらの対向部で背枠を挟持し得るようにしている請求項6〜10記載の椅子。
【請求項12】
対向部間には、開口縁よりも内方が幅広となる凹部が形成され、この凹部を経過的に広げて背枠を受容した後、凹部を狭める方向に締め付け力を付与するようにしている請求項11記載の椅子。
【請求項13】
背枠が周回方向に沿ってその断面形状を所定領域において変形させてあり、オプション部材の凹部も所定取付位置における背枠の断面形状に対応させて変形させている請求項12記載の椅子。
【請求項14】
オプション取付部において、オプション部材の一部を背枠で抱くようにして当該オプション部材を背枠に取り付けるようにしている請求項1〜5記載の椅子。
【請求項15】
オプション取付部は、開口縁よりも内方が幅広となる溝状のものであり、その溝の内周においてオプション部材を抱くようにしている請求項14記載の椅子。
【請求項16】
請求項1〜15記載の椅子を構成すべく、背の背枠を構成する背枠の一部に張材取付部を設けたものであって、その背枠上、張材取付部と干渉しない部位にオプション取付部を形成し、これら両取付部を通じて張材及びオプション部材を共通の背枠に取り付け得るようにしたことを特徴とする背。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【公開番号】特開2012−152569(P2012−152569A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−86980(P2012−86980)
【出願日】平成24年4月6日(2012.4.6)
【分割の表示】特願2006−288006(P2006−288006)の分割
【原出願日】平成18年10月23日(2006.10.23)
【出願人】(000001351)コクヨ株式会社 (961)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年4月6日(2012.4.6)
【分割の表示】特願2006−288006(P2006−288006)の分割
【原出願日】平成18年10月23日(2006.10.23)
【出願人】(000001351)コクヨ株式会社 (961)
【Fターム(参考)】
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