説明

椅子

【課題】構造上、操作レバー等を配置することが容易であり、その操作位置も利用者が容易に確認できるようにした便利な椅子を提供する。
【解決手段】脚支柱3の中心部から漸次離れる方向に複数の座受フレーム41を延出させ、それらの座受フレーム41の先端部に座1の縁部の下面を支持させるとともに、座1の下方であって相隣接する座受フレーム41、41間に位置する部位を開放して、操作部を配置する機能調整空間A1〜A3として利用可能とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オフィスや家庭等において好適に利用される椅子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
脚支柱によって座を支持するタイプの椅子は、例えば特許文献1等に示されるように、脚支柱の上端にブロックやリンク等を用いた座受けを形成し、この座受けの直上に座を支持するようにしているのが通例である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−10085号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、このように座の下部にブロックやリンク等を用いた大きな座受けが位置していると、この座受けに操作レバー等を取り付ける際に適切な位置に配置場所を確保することが難しくなるという問題がある。また、この椅子は、シェルやフレームで座の下側の大部分を覆っており、離着席時に座で操作レバー等が完全に隠されているため、操作レバー等の位置の確認が困難であるという問題もある。
【0005】
本発明は、このような課題に着目してなされたものであって、構造上、操作レバー等を配置することが容易であり、その操作位置も利用者が容易に確認できるようにした便利な椅子を新たに提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、かかる目的を達成するために、次のような手段を講じたものである。
【0007】
すなわち、本発明の椅子は、脚支柱の中心部から漸次離れる方向に複数の座受フレームを延出させ、それらの座受フレームの先端部に座の縁部の下面を支持させるとともに、座の下方であって相隣接する座受フレーム間に位置する部位を開放して、操作部を配置する機能調整空間として利用可能としていることを特徴とする。
【0008】
このように構成すると、座を実質的に縁部で支持し、座の中心部の下方に密接に座受構造体を持ち込まなくてもよいため、機構部品が組み込み易く、しかも座受フレームの横断面を小さくできるので、脚支柱の周囲に十分な機能調整空間を確保し、脚支柱からその機能調整空間に操作部を持ち出すなどして、操作部に操作し易い環境を得ることができる。また、軽量化が図れ、座の中心を支持する場合に比べて偏荷重に強い構造ともなる。
【0009】
具体的な実施の態様としては、座受フレームは放射状に延びて座の隅部を支持し、少なくとも座の前下方及び左右の横下方を開放しているものが挙げられる。
【0010】
特に、座枠のコーナー部の下面を4本の座受フレームで支持しているものが適切である。
【0011】
一方、肘付きの椅子における本発明の他の構成としては、椅子本体を座受構造体に支持させるにあたり、座受構造体は脚支柱の中心部から座の四隅下面に向けて複数の座受フレームを延出させ、それらの座受フレームの先端部に座の下面を支持させたものとし、前2本の座受フレームのうち少なくとも何れか一方の延出端近傍に操作部を取り付けてその座受フレームの周囲を機能調整空間として利用可能としているものが挙げられる。
【0012】
このようにすると、座の左右の前下方に存する座受フレームを操作部の有効な取付場所として利用することができ、少し前かがみになるだけで肘掛けに邪魔されずに操作部を容易に操作することが可能となる。
【0013】
或いは、椅子本体を座受構造体に支持させるにあたり、肘は後端部が平面視内側に入り込んで背に接続されているとともに、座受構造体は脚支柱の中心部から座の四隅下面に向けて複数の座受フレームを延出させ、それらの座受フレームの先端部に座の下面を支持させたものとし、後2本の座受フレームのうち少なくとも何れか一方であって肘の後端の下方に位置する部位に操作部を取り付けてその座受フレームの周囲を機能調整空間として利用可能としているものが挙げられる。
【0014】
このようにすると、座の左右の後下方に存する座受フレームを操作部の有効な取付場所として利用することができ、着座姿勢で少し肩を落とすように体を傾ければ肘の後端部に邪魔されずに操作部を容易に操作することが可能となる。
【0015】
以上において、操作部の使い勝手を向上させるためには、座の少なくとも一部が透明ないし半透明であり、機能調整空間に配置した操作部の位置が上方から視認可能とされていることが望ましい。
【0016】
操作部のレイアウトを把握可能とするためには、座の少なくとも一部が透明ないし半透明であり、機能調整空間に配置した全ての操作部の位置が上方から視認可能とされているものが好適である。
【0017】
特に好ましくは、機能調整空間に配置された操作部の機能の概要をも上方から把握可能とされているものが利便性の高いものとなる。
【0018】
操作部に対する把握をより完全なものにするためには、座が座枠の内側に開口を有し、その開口を介して操作部を含めた機能調整空間の略全容が視認可能とされていることが望ましい。
【0019】
これらの構成は、少なくとも一部の操作部が、仮に座が不透明であるとした場合には下方から覗き込まなければ視認し得ない部位に設けてある場合に効果的である。
【0020】
機能調整空間が露骨に視認されることを防止するためには、座が座枠の内側にメッシュ地を張った半透明のものであることが好適である。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、以上説明した構成であるから、座の支持機能を適切に保った上で、座の下方に操作レバー等を配置するための機能調整空間を有効に確保することができ、その操作位置を確認できる構造も平易に取り入れることができるようにした便利な椅子を新たに提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態に係る椅子を示す斜視図。
【図2】同正面図。
【図3】同左側面図。
【図4】同縦断面図。
【図5】同実施形態の拡径基部の内部構造を示す斜視図。
【図6】同実施形態に係る椅子のメッシュ地を省略し脚支柱の上端カバーを外した状態の平面図。
【図7】同実施形態に係る椅子の底面図。
【図8】図4の分解図。
【図9】同実施形態に係る椅子本体の分解斜視図。
【図10】背枠の開口にメッシュ地が嵌め込まれている状態を示す断面図。
【図11】座枠の開口にメッシュ地が嵌め込まれている状態を示す断面図。
【図12】同実施形態に係る椅子の平面図。
【図13】本発明の他の実施形態を示す底面図。
【図14】同右側面図。
【図15】同縦断面図。
【図16】同左側面図。
【図17】同平面図。
【図18】本発明の変形例を示す図。
【図19】本発明の変形例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
【0024】
この実施形態の椅子は、図1〜図3に示すように、座1、背2及び肘掛け7からなる椅子本体Aを、脚体Bより立ち上げた座受構造体4に支持させてなるものである。
【0025】
具体的に説明すると、脚体Bは、等角位置から放射状に延び先端にキャスター5aを備えた5本の脚羽根5の中心部に脚支柱3を回転可能に支持させてなるもので、脚支柱3は支柱本体31の上端に拡径基部32を有し、支柱本体31から拡径基部32に亘る内部に図4に示すようなガススプリング式の昇降機構6を組み込んでいる。拡径基部32は、図4及び図5に示すように、カバー32aを取り除いた状態でお碗状の空洞32bが開口し、底壁32cには中心部付近から放射状に延びるリブ32dが立設してあり、リブ32dの上方には空洞32b内に手指を差し込める程度の内空が存在している。中心部には、突没動作によって昇降機構6をロック/ロック解除する作動部61が収容され、この作動部61を開閉させる位置に操作部たる操作レバー62が拡径基部32の一部に設けた切欠32xを通して放射方向に引き出されるとともに、支軸m回りに上下回動操作可能に枢着されている。前記カバー32aはこの操作レバー62と干渉しない状態で作動部61を含めて空洞32bを蓋封している。操作レバー62は引き上げることにより作動子61を没入させて昇降機構6をフリーにし、引き上げ操作を解除することにより突出して昇降機構6をロックするものである。
【0026】
そして、脚支柱3から上方に向けて、座受構造体4を構成する4本の座受フレーム41を立ち上げ、それらの座受構造体41の先端に座1を支持させている。座受フレーム41は、水平部41aと鉛直部41bを一体成形により連設したもので、水平部41aは基端が拡径基部32の側面に接続され、そこから側方に引き出されて脚支柱3の中心部より漸次離れる方向に徐々に上方に湾曲しつつ持ち出されており、平面視すれば図6に示すように脚支柱3から放射方向に延びている。座1への上載荷重は中心よりも後方に掛かり、これに対応して脚支柱3が位置づけられている関係上、脚支柱3から座1の四隅に延びる座受フレーム41のうち前2つの座受フレーム41(x)は後2つの座受フレーム41(y)よりも長く設定してある。鉛直部41bは、図4に示すように水平部41aに滑らかに連設されて、先端で座1の縁部、具体的には図7に示すように四隅における下面1a、1bを支持している。この鉛直部41bには、図8に示すように延出方向に沿って内部にねじ挿通部41cが設けられ、このねじ挿通部41cが水平部41aと鉛直部41bの交叉部において下方に開口している。座受フレーム41の横断面は、図2〜図4等に示すように、延出方向に沿った任意の位置で平均的な体格の大人がちょうど握り締められる程度の扁平な長円状をなしている。
【0027】
このように座受フレーム41が座1の四隅に向かって放射状に延びていることから、図7に示す座1の下方であって相隣接する座受フレーム41、41間に位置する部位、具体的には座1の前下方、左右の横下方及び後下方にそれぞれ位置する底面視略三角形状の領域A1、A2、A3がフレーム等の存しない開放空間となる。そして、本実施形態はこれらを操作部を配置する機能調整空間とし(以下、上記領域と同じ符号A1、A2、A3を用いる)、着座位置からみて右下方に位置する機能調整空間A2に前記操作レバー62を配置している。
【0028】
一方、椅子本体Aは、図1、図3及び図9等に示すように座1、背2及び肘掛け7からなり、背支桿を用いずに座受構造体4に支持されるもので、当該座1の下面には、前記各座受フレーム41の対応位置に図7及び図8に示すようにナット部材をインサートしてなるねじ締着部11が垂下させて設けてある。そして、座受フレーム41の上端に座1を載せ置き、座受フレーム41のねじ挿通部41cに下方から挿通したねじV1を座1に設けたねじ締着部11に締着することによって、座受フレーム41に座1を取り付けている。
【0029】
すなわち、この椅子は、座受構造体4を構成する各座受フレーム41の先端部同士を座枠12の各辺で略直線状に強固に連結する構造であり、座受フレーム41と座枠12によって立体的に閉じたフレーム構造をなしている。これによって、各座受フレーム41と座枠12を比較的細く形成しても、全体として強度を確保することができ、着座時の衝撃や体重によって各部が変形するようなこともない。
【0030】
図1及び図9等に示すように、座1は座枠12の内側の開口12aにメッシュ地13を張設して構成され、背2は背枠22の内側の開口22aにメッシュ地23を張設して構成されたもので、座枠12と背枠22の間を補強する位置に設けた縦リブを肘フレーム71として使用可能なまでに大きく迫り出させて肘掛け7とし、座枠12、背枠22及び当該肘フレーム71を三次元的に連なった状態で樹脂一体成形している。
【0031】
具体的には、図1及び図2に示すように、背枠22のうち最も前方に突出しているランバー対応部22aよりも上方に反り返っている有効支持部22bと座枠12とが略同幅に設定してあり、背枠22のランバー対応部22aよりも下方にいくにつれて奥まった部位に位置する臀部(でんぶ)対応部22cを下方に向けて徐々に括れさせ、背座境界部Xの幅を背枠22の有効支持部22b及び座枠12よりも幅狭に設定している。そして、背枠22から前側方に肘フレーム71の後端71aを持出し、座枠12から上側方に肘フレーム71の前端71bを持出して、これら肘フレーム71、座枠12及び背枠22によって形成される開口7aの周縁が二次元平面内に収まらず三次元的に湾曲しているように樹脂一体成形している。つまり、開口7aは図3の側面から見えるだけでなく、図2の正面からも見え、図6の平面や図7の底面からも見える。背座境界部Xは図8に示すように縦断面前向きU字状をなし、この縦断面が臀部に沿って平面視前向き凹状となるように緩やかに湾曲しながら三次元形状をなすように連続している。また、座1の前端には前垂れ部15が設けてある。この前垂れ部15は図4に示す縦断面視において概略逆L字状をなすように座1に連設されたもので、その縦断面が座1の前縁に沿って図7に示すように底面視前向き突状となるように緩やかに湾曲しながら三次元形状をなすように連続している。
【0032】
肘フレーム71の後端71aは、図1及び図2に示すように小口が背枠22の小口と連続するようにランバー対応部22aと略同じ高さ位置から引き出してあり、背2は平面視前向き凹状に湾曲していて、背枠22の小口が前側方を向いていることから、肘フレーム71の後端71aも背枠22から前側方に引き出された後に緩やかに湾曲しながら前方に迫り出す形態をなしている。また、当該肘フレーム71の前端71bは、小口が座枠12の小口と連続するように引き出してあり、座枠12は正面視においてわずかに上向き凹状をなしていて小口が水平よりやや上側方を向いていることから、肘フレーム71の前端71bも座枠12から水平よりやや上側方に引き出された後に緩やかに湾曲しながら上方に立ち上がる形態をなす。そして、背枠22から迫り出した部分と座枠12から立ち上がった部分が何れも肘フレーム71の前後方向に水平に延びる上端へと連続している。これらの肘フレーム71はリブとして見るときには座枠12に対しても背枠22に対しても縦リブとなる。そして、この肘フレーム71の上端に、水平部71cを滑らかに折り曲げて連設している。
【0033】
この椅子本体Aの成形時における母型の割り方向は、前後方向と上下方向の略中間となる45度の方向(図3における矢印Z参照)に設定されている。
【0034】
そして、図1及び図9に示すように、座枠12の内側及び背枠22の内側にそれぞれ存する開口12a、22aに、着座面を形成するための別部材であるメッシュ地13、23を枠材14、24を介して嵌め込んでいる。
【0035】
背枠22の開口縁には、図9及び図10に示すように、前面に枠材取付面122aを有し、背面に板状体が嵌る溝122bを有する枠材取付部122が設けてあり、この枠材取付部122の前面にメッシュ地23を巻き込んだ取付枠120を嵌め込み、背面から背枠22の枠材取付部122に挿通したねじV2を取付枠120に締着するとともに、そのねじV2を覆う位置に化粧枠121を嵌め込むようにしている。取付枠120には、メッシュ地23が荷重を受けて撓む方向に漸次開口幅を狭めながら湾曲する固定支持面120aが形成されている。
【0036】
また、座枠12の開口縁には、図9及び図11に示すように、上面に枠材取付面112aを有する枠材取付部112が設けてあり、この枠材取付部112の上面にメッシュ地13を巻き込んだ取付枠110を嵌め込み、下面から座枠12に挿通したねじV3を取付枠110に締着するようにしている。取付枠110には、メッシュ地13が荷重を受けて撓む方向に漸次開口幅を狭めながら湾曲する固定支持面110aを形成している。
【0037】
本実施形態は、以上のようにして図1に示す椅子の体をなしているものであり、図4及び図8に示す座受フレーム41の鉛直部41bと座枠12から垂下させたねじ締着部11とを加えた寸法dが少なくとも脚支柱3の上端と座1との間に立体的な空間Sを形成し、座1は上載荷重を受けて図4に破線で示すように撓むことにより前記空間S内に沈み込むことができる。この空間Sは同時に、少なくとも人が着座していない状態で作業者が手指を差し込み必要に応じ工具等を使ってカバー32aの着脱を行うことのできる大きさをなし、座受構造体4がこのような座受フレーム41からなるフレーム構造であることと相まって、前記空間Sに前後左右いずれの方向からでも手指をアクセスしてカバー32aを着脱し、内部の作動部61等のメンテナンスを行うことができるものである。
【0038】
また、この椅子は、座1の下方に位置する座受構造体4が、複数の座受フレーム41を有しその中心部に作動部61を配置したものであり、座1は座受フレーム41の上に載置されてねじV1のみによって座受フレーム41に固定されるだけであるため、必要であればねじV1を外して図8のように座受構造体4から座1を分離させ、更にカバー32aを外せば作動部61を表出させてメンテナンスを行うこともできる。或いは、座1は図7に示すように4点で各座受フレーム41にねじV1で固定されているため、1本のねじV1のみを残して他のねじV1を外せば、図4や図8に示すように各座受フレーム41の先端は略同一高さ位置にあってこの座受構造体4に対して座1を水平旋回させることも可能であり、これによっても作動部61を表出させることができる。この場合、座1は水平旋回した位置で座受構造体4の適宜の座受フレーム41に水平に担持されるため、手で担持せずとも作動部61等に対するメンテナンス作業を行うことが可能である。
【0039】
このような椅子を視覚的な観点から見ると、座枠12の内側に張設されたメッシュ地13が半透明の領域を形成し、その下方にブロック状の座受やシェル等を備えておらず、座面には図12に示すように座受構造体4を構成する座受フレーム41や脚羽根5が基部から放射状に延びている状態がシルエット状に視認される。
【0040】
このように、座枠12の内側が半透明な領域であると、図7の機能調整空間A1〜A3に操作部を配置した場合にその略全容が図12に示す上方から当該操作部の位置や数のみならず機能の概要とともに視認可能となる。この実施形態では、着座状態で右下方に位置する機能調整空間A2に昇降機構の操作レバー62を配置しているのみであるため、離着席時に操作レバー62が1箇所だけであること、それが上述したように着座状態で右下方に位置していること、操作レバー62が脚支柱31の上端から放射状に延出していてガススプリング式の昇降機構6の操作を行うものであること等は容易に推認される。また、図7に示す他の機能調整空間A1、A3に操作部があれば図12の上方からそれらも同時に視認できるため、操作部がいくつあるか、それがどの位置に存するか、どのような機能の操作部であるか、或いはその操作方法はどのようなものであるか等を、シルエットを通して容易に推認することが可能なものである。
【0041】
以上のように、本実施形態は、脚支柱3の中心部から漸次離れる方向に複数の座受フレーム41を延出させ、それらの座受フレーム41の先端部に座1の縁部の下面を支持させるとともに、座1の下方であって相隣接する座受フレーム41、41間に位置する部位を開放して、操作部を配置する機能調整空間A1〜A3として利用可能としたものである。
【0042】
すなわち、従来の椅子は、ブロック体状の座受けが座の下部に大きく位置しているため、この座受けに操作レバー等を取り付けるにしても、操作レバー等の配置場所が確保しづらいという問題があった。これに対し、本実施形態によると、座1を実質的に縁部で支持し、座1の中心部の下方に密接に座受構造体を持ち込まなくてもよいため、機能調整のための機構部品が組み込み易く、しかも座受フレーム41の横断面を小さくできるので、脚支柱3の周囲に十分な機能調整空間A1〜A3を確保して操作し易い環境を得ることができる。また、軽量化が図れ、座1の中心を支持する場合に比べて偏荷重に強い構造とすることもできる。
【0043】
特に、座受フレーム41は放射状に延びて座1の隅部1a、1a、1b、1bを支持し、少なくとも座1の前下方及び左右の横下方を開放しているため、操作部等を配置すべき機能調整空間A1〜A3に対して選択エリアが広がることになり、とりわけ座枠12の隅部下面を4本の座受フレーム41で支持していることにより、座1の安定支持構造を両立させつつ、機能調整空間A1〜A3の確保を実効あらしめることができる。
【0044】
また、座1のメッシュ地13部分が半透明であって、機能調整空間A1〜A3に配置される操作部の位置が上方から視認可能であり、従来のようにシェルやフレームで座の下側の大部分が覆われているものではないため、離着席時に座1の下方に操作レバー62等が完全に隠れて操作レバー62等の位置の確認が困難といった不具合がなく、操作レバー62等の位置を座1の上方からさりげなく利用者の視野に入れさせて、着座状態で手探りする不便さを解消することができる。
【0045】
特に、本実施形態では機能調整空間A1〜A3の何れに操作部を配置しても全てが視認可能であるところ、操作レバー62のみが上方から視認されるため、操作部が1箇所であり、それがどの位置にあるかを着座前に確実に把握することができる。
【0046】
この場合、機能調整空間A2に配置された操作レバー62は先端が脚支柱3の上端に位置しており、昇降機構6の操作レバー62であることは着座者に比較的容易に把握可能であるため、操作にまごつくこと等も有効に回避させることができる。
【0047】
とりわけ、この実施形態のものは座1が座枠12の内側に大きな開口12aを有し、その開口12aを介して操作レバー62を含めた機能調整空間A1〜A3の略全容が視認可能であり、他に操作部が存在しないことも確認できるし、操作方向などの推測も容易に行うことができるようになる。
【0048】
特に、座が座枠12の内側にメッシュ地を張った半透明のものであり、座1の下方がシルエット状に視認されることになるため、機能調整空間A1〜A3や操作レバー62等が露骨に視認されることも有効に防止することができる。
【0049】
なお、各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではない。
【0050】
例えば、図13〜図16に示すように、3本の座受フレーム41、41、141を脚支柱3からY字状に引き出しても、前下方及び左右の横下方に機能調整空間を有効に確保することができる。
【0051】
この椅子は、平面視(或いは底面視)斜め前方に放射状に延びる前2本の座受フレーム41(x)と、真っ直ぐ後方に放射状に延びて座枠12の後方における幅方向中央部の下面を支持する座受フレーム141とを具備し、この座受フレーム141がロッキングの反力機構を兼ねている。
【0052】
すなわち、この椅子の座1は、前方2隅の下面が前支軸pを介して前2本の座受フレーム41(x)に枢着されるとともに、後方下面が後支軸qを介して座受フレーム141に枢着されており、着座者が背2に凭れると、座1が前支軸p回りに回動して後方が沈み込む構造になっている。
【0053】
そして、これを受ける座受フレーム141は、ガススプリング141aと、このガススプリング141aの軸心回りに配置されて当該ガススプリング141aの圧縮動作に連動して圧縮されるロッキングバネ141bとを具備し、ガススプリング141aの一端は図15に示すように拡径基部32内に差し込まれてロッキングバネ141bとともにリテーナ141cに支持されている。ガススプリング141aの作動部140xはこのリテーナ141cを貫通した位置に配置され、通常時は操作レバー162の内方端に設けた押圧子162aが図15の位置から作動子140xを押圧し得る位置にまで回転して保持され、ガススプリング141aの開放状態を保っている。そして、操作レバー162を回転操作することにより、押圧子162aを図15のように作動子140xから遠ざけて、所要のロッキング位置に固定できるようになっている。勿論、この操作レバー162は前記実施形態の操作レバー62と同様、引き上げることにより作動子61を没入させて昇降機構6をフリーにし、引き上げ操作を解除することにより突出してその際の昇降位置にロックする役割を兼ねるものである。
【0054】
また、この椅子にはロッキングの反力調整機構が付帯させてある。図13及び図14に示す操作杆262は回転動作により反力調整を行うための操作部で、この操作杆262を回転操作して拡径基部32内に設けた図示しない楔部材を図15における紙面垂直方向にねじ送りし、これによりリテーナ141cをバネ141bの圧縮方向又は伸張方向に移動させて、反力を増大又は減少させ得るようにしている。
【0055】
このように、着座状態で座1の右下方に位置する機能調整空間A2に昇降機構6の調整及びロッキング固定/解除を兼ねる操作レバー162を有効に配置し、着座状態で座1の左下方に位置する機能調整空間A2にロッキング反力調整のための操作杆262を有効に配置することを可能ならしめているものである。
【0056】
この他、背2がランバーサポート調整機能を備える場合に座1の後下方の機能調整空間A3に操作部を配置したり、座1の前下方の機能調整空間A1に適宜の操作部を配置するなど、多様な利用の形態が可能となる。
【0057】
そして、これらの操作部の略全容が、図17に示すように座1に設けたメッシュ地13を介して視認されるため、操作部の位置や数、各々どのような態様で操作を行うものであるかなどを着座前に特に意識せずとも把握可能となり、椅子の使い勝手を有効に向上させることが可能となる。
【0058】
本実施形態はこのような視認機能を備えるため、座1が仮に不透明であるとした場合には下方から覗き込まなければ視認し得ないような部位に操作部が設けられても、上記と同様の作用効果を得ることができる。
【0059】
その他の構成も、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【0060】
例えば、上記実施形態では、椅子本体Aを座受構造体4に支持させるにあたり、肘掛け7の前端部7bが座1に接続され、その前端部7bよりも前方に座1の前縁が延出していることに鑑みて、座受構造体4は脚支柱31の中心部から座1の四隅下面に向けて複数の座受フレーム41を延出させ、それらの座受フレーム41の先端部に座1の下面を支持させたものであり、特に前2本の座受フレーム41(x)は肘掛け7の前端部7bよりも前方に位置することになるため、前2本の座受フレーム41(x)の一方或いは双方の延出端近傍に図18に示すように適宜の操作部K1を有効に取り付けることができる。そして、少し前かがみになるだけで肘掛け7に邪魔されずにその操作部K1を操作することができ、座1を通した上方からの視認性も確保され得るので、操作性も良好なものにすることが可能となる。
【0061】
或いは、上記実施形態では、肘掛け7は後端7aが平面視内側に入り込んで背2に接続されているとともに、座受構造体4は脚支柱31の中心部から座1の四隅下面に向けて複数の座受フレームを延出させ、それらの座受フレームの先端部に座の下面を支持させたものであるため、後2本の座受フレーム41(y)の一方或いは双方であって肘掛け7の後端7aの下方に位置する部位に図18に示すように適宜の操作部K2を有効に取り付けることができる。そして、着座姿勢で少し肩を落とすように体を左右に傾ければ肘掛け7の後端7aに邪魔されずにその操作部K2を操作することができ、座1を通した上方からの視認性も確保され得るので、操作性も良好なものにすることが可能となる。
【0062】
そして、これらの操作部K1、K2としては、図19(a)に例示するように、座受フレーム41の延出端近傍の壁面に開口410aを設け、この開口410aを介して座受フレーム41の内部から操作部たる上下首振り可能なレバー410bが操作可能に表出させてあるものや、同図(b)に示すように、座受フレーム41の周囲に操作部たる上下スライド可能なレバー411aが外嵌させてあるもの等が挙げられる。そして、これらのレバー410b、411aにワイヤー等を接続すれば、ガススプリング等を始めとして椅子に諸機能を与えるための各種部材を効果的に遠隔操作することが可能となる。
【0063】
さらに、メッシュ地に変えてアクリル等で透明ないし半透明の座面を構成しても、視覚的には上記と同様の効果が奏される。
【符号の説明】
【0064】
1…座
1a、1b…隅部
31…脚支柱
41…座受フレーム
62…操作部(操作レバー)
162…操作部(操作杆)
A1〜A3…機能調整空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脚支柱の中心部から漸次離れる方向に複数の座受フレームを延出させ、それらの座受フレームの先端部に座の縁部の下面を支持させるとともに、座の下方であって相隣接する座受フレーム間に位置する部位を開放して、操作部を配置する機能調整空間として利用可能としていることを特徴とする椅子。
【請求項2】
座受フレームは放射状に延びて座の隅部を支持し、少なくとも座の前下方及び左右の横下方を開放している請求項1記載の椅子。
【請求項3】
座枠のコーナー部の下面を4本の座受フレームで支持している請求項2記載の椅子。
【請求項4】
肘付きの椅子本体を座受構造体に支持させてなるものであって、座受構造体は脚支柱の中心部から座の四隅下面に向けて複数の座受フレームを延出させ、それらの座受フレームの先端部に座の下面を支持させたものであり、前2本の座受フレームのうち少なくとも何れか一方の延出端近傍に操作部を取り付けてその座受フレームの周囲を機能調整空間として利用可能としていることを特徴とする椅子。
【請求項5】
肘付きの椅子本体を座受構造体に支持させてなるものであって、肘掛けは後端部が平面視内側に入り込んで背に接続されているとともに、座受構造体は脚支柱の中心部から座の四隅下面に向けて複数の座受フレームを延出させ、それらの座受フレームの先端部に座の下面を支持させたものであり、後2本の座受フレームのうち少なくとも何れか一方であって肘の後端部の下方に位置する部位に操作部を取り付けてその座受フレームの周囲を機能調整空間として利用可能としていることを特徴とする椅子。
【請求項6】
座の少なくとも一部が透明ないし半透明であり、機能調整空間に配置した操作部の位置が上方から視認可能とされている請求項1〜5記載の椅子。
【請求項7】
座の少なくとも一部が透明ないし半透明であり、機能調整空間に配置した全ての操作部の位置が上方から視認可能とされている請求項1〜5記載の椅子。
【請求項8】
機能調整空間に配置された操作部の機能の概要をも上方から把握可能とされている請求項6又は7記載の椅子。
【請求項9】
座が座枠の内側に開口を有し、その開口を介して操作部を含めた機能調整空間の略全容が視認可能とされている請求項6〜8記載の椅子。
【請求項10】
少なくとも一部の操作部は、仮に座が不透明であるとした場合には下方から覗き込まなければ視認し得ない部位に設けてあり、この操作部が透明ないし半透明の座を介して視認可能とされている6〜8記載の椅子。
【請求項11】
座が座枠の内側にメッシュ地を張った半透明のものである請求項6〜10記載の椅子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2012−152589(P2012−152589A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−91355(P2012−91355)
【出願日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【分割の表示】特願2006−88780(P2006−88780)の分割
【原出願日】平成18年3月28日(2006.3.28)
【出願人】(000001351)コクヨ株式会社 (961)
【Fターム(参考)】