説明

椅子

【課題】肘掛けを設ける椅子の組立作業の簡便化を図る。
【解決手段】着座者の背が凭り掛かる背凭れ面を形作る背凭れ部材205と、前面側に背凭れ部材205が配された状態でこの背凭れ部材205を支持する背支持アーム151と、背支持アーム151における着座者の腰部近傍の高さ位置から突出し、背凭れ部材205を避けるように外側方に張り出した後、背凭れ部材205よりも前方に延び出して着座者の腕を支える、背支持アーム151に一体成形された肘支持部287とを具備する椅子を構成した。これにより、背支持アーム151と肘支持部287とが一体の部材となり、背支持アーム151に肘支持部287を固着する作業工程が不要となって、従前に比して作業工数を削減することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オフィス等において使用される椅子に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の事務用(または、執務用)椅子には、肘掛けが付帯していることが少なくない。椅子に肘掛けを設ける場合、脚支柱の上端に配置された支持基部から上方に伸びる肘支柱を立ち上げ、その肘支柱に肘当てを支持させる態様や、支持基部に傾動可能に取り付けられる背支持アームに対して前後方向に伸びる肘支持部を固定し、その肘支持部に肘当てを支持させる態様をとることが多い。
【0003】
下記特許文献1に開示されている椅子は、後者の例である。この態様をとるものにおいては、背支持アーム(図中符号13)と肘支持部(図中符号5)とが別個の部材となっていることが専らである。それ故、椅子を組み立てるにあたって、背支持アームに肘支持部を固着する工程が必須となり、作業工数の面で不利であると言えた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−073872号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、肘掛けを設ける椅子の組立作業の簡便化を図ることを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明では、着座者の背が凭り掛かる背凭れ面を形作る背凭れ部材と、前面側に前記背凭れ部材が配された状態でこの背凭れ部材を支持する背支持アームと、前記背支持アームにおける着座者の腰部近傍の高さ位置から突出し、前記背凭れ部材を避けるように外側方に張り出した後背凭れ部材よりも前方に延び出して着座者の腕(または、肘)を支える、背支持アームに一体成形された肘支持部とを具備する椅子を構成した。すなわち、背支持アームと肘支持部とを一体の部材とすることにより、背支持アームに肘支持部を固着する作業工程が不要となる。
【0007】
前記背支持アームにおける、上下方向に伸張し前記肘支持部に連接する起立部の外側縁部が、上方に向かうほど外側方に拡がりながら肘支持部に連なっているならば、大きな力がかかる部位を広い範囲で支持でき、肘掛けの強度を担保することができる。
【0008】
前記背支持アームの起立部と前記肘支持部との連接部分が、平面視略円弧状の輪郭をなしているならば、当該連接部分が角張らない。
【0009】
前記肘支持部における底面の左右方向の中央部が下方に膨出しているならば、肘支持部の強度上必要な底壁の厚みを確保した上で、最も目に触れやすい外向側面の上下寸法を可及的に薄くすることができる。これにより、肘支持部が上下に薄い、軽快な視覚的印象を具現することが可能になる。
【0010】
左方の背支持アーム及び肘支持部と、右方の背支持アーム及び肘支持部とが、ともに単一の背凭れ部材に固着されていれば、背凭れ部材を介して左方の背支持アーム及び肘支持部と右方の背支持アーム及び肘支持部とが一体化し、構造の安定化につながる。
【0011】
前記肘支持部の後端側が前記背支持アームに支持されている片持ち形状であるならば、着座者の手元や太腿、膝の辺りに狭小な感じを与えずに済む。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、肘掛けを設ける椅子の組立作業の簡便化を図り得る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態を示す前方からの斜視図。
【図2】同実施形態の張地を分解して示す前方からの斜視図。
【図3】同実施形態の張地を一部省略して示す正面。
【図4】同実施形態の張地を分解して示す左側面図。
【図5】同実施形態の張地を一部省略して示す背面図。
【図6】同実施形態の脚を省略して示す後方からの斜視図。
【図7】同実施形態の全体を一部省略して示す分解斜視図。
【図8】同実施形態の支持基部及び背支持アームの要部を拡大して示す前方からの斜視図。
【図9】同実施形態の支持基部及び背支持アームの要部を拡大して示す分解斜視図。
【図10】同実施形態の支持基部を一部省略して分解して示す後方からの斜視図。
【図11】同実施形態の支持基部を分解して示す正面図。
【図12】同実施形態の支持基部及び座を示す左側面図。
【図13】同実施形態のロッキング機構を示す図12に相当する作用説明図。
【図14】同実施形態の座と座受を示す分解斜視図。
【図15】図5における要部を示したA−A線断面図。
【図16】図4における要部を示したB−B線断面図。
【図17】図16における要部を示したC−C線断面図。
【図18】同実施形態の背凭れ支持体と背支持部材との取付構造を示した斜視図。
【図19】同実施形態の背シェル及び背支持部材を分解して示す斜視図。
【図20】同実施形態の背シェルの正面図。
【図21】同実施形態の背支持部材の正面図。
【図22】図3における要部を示したD−D線断面図。
【図23】図3における要部を示したE−E線断面図。
【図24】図5におけるF−F線拡大断面図。
【図25】図21におけるG−G線断面図。
【図26】図3における要部を示したH−H線断面図。
【図27】図3における要部を一部省略して示したI−I線断面図。
【図28】同実施形態の着座者から見て右側の背支持アーム及び肘支持部を示す左側面図。
【図29】同実施形態の肘支持部及び肘当てを分解して示す斜視図。
【図30】同実施形態の肘当ての取付ベースを示す後方からの斜視図。
【図31】同実施形態の肘支持部及び肘当てを示す側断面図。
【図32】同実施形態の着座者から見て左側の肘支持部及び肘当てを示す正断面図。
【図33】同実施形態の肘支持部及び肘当ての前端部を示す背断面図。
【図34】同実施形態の可動の肘当てを示す斜視図。
【図35】同実施形態の可動の肘当ての可動機構の一例を示す平面図。
【図36】同実施形態の可動の肘当てを取り付けた椅子の側面図。
【図37】本発明の変形例の一に係る可動の肘当てを示す斜視図。
【図38】同変形例に係る可動の肘当てを取り付けた椅子の平面図。
【図39】本発明の変形例の一に係る可動の肘当てを示す斜視図。
【図40】同変形例に係る可動の肘当てを取り付けた椅子の平面図。
【図41】本発明の変形例の一に係る可動の肘当てを示す斜視図。
【図42】同変形例に係る可動の肘当てを取り付けた椅子の側面図。
【図43】本発明の変形例の一に係る可動の肘当て及び肘支持部を示す斜視図。
【図44】同変形例に係る可動の肘当て及び肘支持部を示す斜視図。
【図45】同変形例に係る可動の肘当て及び肘支持部を示す斜視図。
【図46】同変形例に係る可動の肘当て及び肘支持部を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態を、図1ないし図36を参照して説明する。
【0015】
この実施形態は本発明を事務用回転椅子に適用した場合のものである。
【0016】
この椅子は、図1ないし図7に示すように、脚1と、この脚1に支持された支持基部3と、この支持基部3上に配された座受5と、この座受5に支持された座7と、前記支持基部3に回動可能に支持された背凭れ支持体9と、この背凭れ支持体9に取付けた背凭れ11と、この背凭れ11の後傾動作に伴わせて前記座受5及び座7を上動及び傾動させるロッキング機構13と、前記背凭れ支持体9に設けられた肘掛け15とを具備してなる。
【0017】
《脚の構成》
脚1は、図1ないし図7に示すように、脚ベース17と、この脚ベース17の中心部に設けられた脚支柱19を備えてなる。
【0018】
脚ベース17は、図1ないし図5及び図7に示すように、中心部に設けたハブ21から複数本の脚羽根23を放射状に突出させて設けたもので、前記脚羽根23先端にキャスタ25をそれぞれ設けている。
【0019】
前記脚支柱19は、図1ないし図5、図7及び図14に示すように、ガススプリングタイプのもので上下方向に弾性的に伸縮し、所望の位置においてロックすることができるようにした通常のものである。すなわち、この脚支柱19は前記脚ベース17のハブ21に嵌着されたガススプリング本体27と、このガススプリング本体27の上端から突出させたロッド29とを備えたもので、前記ロッド29の上端にロック解除用の操作ボタン31が突出させてある。そして、このロッド29の上端部に支持基部3を装着している。前記ロック解除用操作ボタン31は、後述する肘掛け15に設けられた操作部たる昇降用の操作レバー295により操作される。
【0020】
《支持基部の構成》
支持基部3は、図7ないし図13に示すように、前記脚支柱19のロッド29に取付けられるメインフレーム33と、このメインフレーム33に取付けられた前リンク軸35及び支軸37を具備してなるものである。前リンク軸35は、前リンク39を介して前記座受5の前端部を支持するためのものである。支軸37は、前記背凭れ支持体9を支持するとともに後リンク41を介して座受5の略中間部を支持するためのものである。
【0021】
メインフレーム33は、図7ないし図13に示すように、前記脚支柱19におけるロッド29の上端部に嵌着されるボス部43と、このボス部43の上端側を囲う平面視半円弧状をなす後フレームメンバ45と、この後フレームメンバ45の左右の前端からそれぞれ前方に延出する一対の側フレームメンバ47と、これら側フレームメンバ47の前端部間を結合し前端に平坦な面を有する前フレームメンバ49とを備えたものである。これらボス部43、後フレームメンバ45、側フレームメンバ47、及び前フレームメンバ49は、アルミダイキャスト等により一体に成型されている。前フレームメンバ49の上面部には、前記前リンク軸35を支持する前の軸受部51が一体に設けられているとともに前記後フレームメンバ45と側フレームメンバ47との境界付近には前記支軸37を支持する後ろの軸受部53が一体に設けられている。なお、2つの軸受部51、53の軸心の床面からの高さが異なっており、前の軸受部51の方が後ろの軸受部53より高い位置に設定されている。
【0022】
そして、このメインフレーム33には、図12に示すように、背凭れ11を前方に付勢する傾動反力発生機構55が組み込まれている。
【0023】
傾動反力発生機構55は、図8ないし図13に示すように、基端部が前記支軸37に支持された左右対をなすトルク伝達用のブラケット57と、これら左右のトルク伝達用のブラケット57の先端部間に架設した可動軸59と、この可動軸59をメインフレーム33に設けたバネ受け61を足場として後方に弾性付勢するスプリング63とを具備してなる。また、符号64は、前記脚支柱19のロッド29に設けられたロック解除用の操作ボタン31を押圧するための昇降用ロック解除アームであり、図8ないし図10に示すように、符号297は、肘掛け15に設けた昇降用の操作レバー295の操作力を前記昇降用ロック解除アーム64に伝達するための昇降用のワイヤである。前記操作レバー295を操作することでワイヤ297を引くと、支軸37に外嵌された基端ボス部66が回動し、基端ボス部66を挟んでワイヤ297と反対側に一体に設けられたロック解除アーム64が下方に回動する。
【0024】
また、支持基部3は、図3ないし図6、図10及び図11に示すように、上カバー65と下カバー67とによって覆われている。
【0025】
上カバー65は、図10及び図11に示すように、支持基部3を上面側から覆うもので、支持基部3に係合するための下向きに突出した上係止爪69が設けられている。下カバー67は、支持基部3を下面側から覆うもので、支持基部3に係合するための上向きに突出した下係止爪71が設けられている。また、これら上カバー65と下カバー67とは、それら開口端縁73、75同士が突き合うように配されている。
【0026】
支持基部3のメインフレーム33の前側の外周面、換言すれば前フレームメンバ49の前端の平坦面には、図8、図10及び図11に示すように、前記上カバー65と下カバー67とを取付けるための上下共用取付部77とが設けられている。
【0027】
詳述すれば、前記支持基部3のメインフレーム33は、図8、図10及び図11に示すように、上カバー65の上係止爪69と下カバー67の下係止爪71とをそれぞれ係わり合わせるための上下共用取付部77を備えたものであり、前記上下共用取付部77が、前記上係止爪69が係わり合う係合端面79と、前記下係止爪71が係わり合う係合端面81と、前記上係止爪69の横ずれを係止する横ずれ防止用の係止端面83と、前記下係止爪71の横ずれを係止する横ずれ防止用の係止端面85とを備えている。
【0028】
前記上下共用取付部77は、図8、図10及び図11に示すように、メインフレーム33における前フレームメンバ49の前端の外周面87に設けられたもので、その前端の外周面87を長方形状に凹陥させたものである。この上下共用取付部77において、上辺が上カバー65の上係止爪69が係わり合う係合端面79であり、下辺が下カバー67の下係止爪71が係わり合う係合端面81である。また、上下共用取付部77において、左右両側辺が上カバー65及び下カバー67の上係止爪69及び下係止爪71に対する横ずれ防止用の係止端面83、85である。
【0029】
なお、メインフレーム33の外周における前後方向中間付近には、図8ないし図10、図12及び図13に示すように、上カバー65を取付けるための上専用取付部89と下カバー67を取付けるための下専用取付部91とが設けられている。上カバー65には上専用取付部89に係わり合う爪93が設けられ、下カバー67には下専用取付部91に係わり合う爪95が設けられている。
【0030】
また、メインフレーム33の外周における後端には、図10に示すように、上カバー65を取付けるための上専用取付部97と下カバー67を取付けるための下専用取付部99とが設けられている。上カバー65には上専用取付部97に係わり合う爪101が設けられ、下カバー67には下専用取付部99に係わり合う爪103が設けられている。換言すれば、メインフレーム33の後フレームメンバ45には、下専用取付部99である略水平な中央突条と、この下専用取付部99の両側に配置した一対の上専用取付部97である側突条とが設けられている。上専用取付部97は、前記下専用取付部99に対して高さを異ならせて配置されている。
【0031】
以上に加えて、上カバー65及び下カバー67の外周同士も突き合わせて嵌合するように、上下カバー65、67の開口端縁73、75には、回転軸の近傍部分を除いて溝、具体的には、上カバー65及び下カバー67の一方には嵌合凹部が外方に露出し、他方には嵌合凹部が内方に露出した互いに嵌合可能なL型溝が形成されている。これによって支持基部3の上下専用取付部89、91に係合するようにした上下カバー65、67の爪93、95を配するべく、支持基部3から一定間隔離れた位置を保ってカバーする構成をなしていても上下カバー65、67同士を確実に嵌合することができる。
【0032】
以上説明した支持基部3の前の軸受部51に前リンク軸35を介して左右の前リンク39を回動可能に取付けている。前リンク39の支持基部3への取付構造は次のようになっている。すなわち、前記支持基部3は、図8ないし図13に示すように、左右にそれぞれ前記前リンク軸35を支持する軸受部51と、軸方向に垂直な対向する一対の平面105とを備えたものであり、前記前リンク39は、椅子本来の機能を発揮し得る使用時回動範囲(U)では前記平面105間に位置し、前記前リンク39を支持基部3に対して挿脱し得る図示しない挿脱時回動範囲では前記平面105外に位置する平面対応部分107を備えたもので、支持基部3に前リンク軸35を介して前リンク39を回動可能に支持させている。
【0033】
換言すれば、前記支持基部3は、図8ないし図13に示すように、前リンク軸35を支持する前の軸受部51と、この軸受部51の軸方向に隣接する位置に前方及び上方に開口したリンクアーム収容部109とを備えている。リンクアーム収容部109は、前リンク軸35と直交する一対の平面105間に形成されたものである。前記前リンク39は、上端部に前連結軸111を保持する軸孔113を有するとともに基端部に前リンク軸35に外装されるボス部115を有しており、このボス部115の外周にリンクアーム117を備えている。このリンクアーム117は、前記リンクアーム収容部109に対応する平面対応部分107を有している。
【0034】
そして、前記使用時回動範囲(U)では、前記リンクアーム117の平面対応部分107が前記リンクアーム収容部109の対向する平面105間に位置する。そのため、左右の前リンク39が、前記前リンク軸35と前連結軸111とから外れることが禁止されている。一方、前記挿脱時回動範囲では、前記リンクアーム117の平面対応部分107が前記リンクアーム収容部109の対向する平面105外に位置する。そのため、左右の前リンク39が、前記前リンク軸35と前連結軸111とから外れ得るようになっている。組立状態においては、前リンク39が前記挿脱時回動範囲にまで回動できないように設定されている。組付け時には、前リンク39を後ろに寝かせて左右から、座受5の前リンク取付部121に通した前連結軸111と、メインフレーム33の前の軸受部51に通した前リンク軸35に嵌め込む。その状態で、前記前リンク39を前に倒してリンクアーム収容部109の対向する平面105間に前リンク39のリンクアーム117を嵌め込む。その後、座受5の略中間部に位置する後リンク取付部127に後連結軸123をそれぞれ嵌め込んで、左右から背支持アーム151を付けることにより、前述した組立状態となる。すなわち、ねじ等の抜け止め部品を用いることなしに、左右の前リンク39をメインフレーム33に取付けることができる。
【0035】
以上のようにしてなる支持基部3に、前リンク39及び後リンク41を介して座受5を支持させている。
【0036】
《座受の構成》
座受5は、図4ないし図6、図12、図13及び図15に示すように、アウターシェルと称し得る形態をなすもので、この実施形態においては合成樹脂により一体に成型されている。座受5の下面には、前連結軸111を介して前リンク39の回動端119を取付けるための前リンク取付部121と、後連結軸123を介して後リンク41の回動端125を取付けるための後リンク取付部127が設けられている。前記前リンク取付部121及び後リンク取付部127は、座受5に一体に設けられている。
【0037】
座受5の上面には、縦横にマス目状にリブ126が形成され、そのリブ126の一部平行な2つのものがそのまま座受5の下方に突出するように伸びて前リンク取付部121及び後リンク取付部127を構成している。前リンク取付部121及び後リンク取付部127の左右は、貫通孔を有した側壁128、130により塞がれている。これらの側壁128、130も前記リブ126の一部を下方に延長して形成してもよい。その他のリブ126はこれらのリブ126と複数箇所でつながるように形成され、座受5自体の強度だけでなく、前リンク取付部121、後リンク取付部127の強度にも寄与するように設計されている。すなわち、前記前リンク取付部121及び後リンク取付部127は、それぞれ前壁118、122と後壁120、124と左右の側壁128、130とを備えた中空体状のもので、前記前壁118、122、後壁120、124及び左右の側壁128、130の少なくとも1枚は、前記リブ126の一部を下方に延長することにより形成されている。
【0038】
《座の構成》
座7は、図7、図14及び図15に示すように、前記座受5の上面に取付けられたインナーシェル129と、このインナーシェル129の上に配設したクッション131と、このクッション131の外面に張設した張地133とを備えたものである。
【0039】
インナーシェル129は、図15に示すように、合成樹脂により一体に成型されたもので、図示しない爪等により、座受5に固定されている。このインナーシェル129は、前側に斜め下方になだらかに垂れ下がる前端垂れ下がり部分135を設けるとともに、前記中間部137と前記周縁部139との境界に中間部137が周縁部139よりも下方に膨出するような環状の段部141が形成されている。
【0040】
クッション131は、図14及び図15に示すように、発泡ウレタン等により作られたもので、前側に前記インナーシェル129の前端垂れ下がり部分135に沿うクッション垂れ下がり部分143を備えている。また座7の芯材であるクッション131の上面には一方向に並ぶ凹凸部、換言すれば、この実施形態では前後方向に並ぶ溝145を複数本設けている。
【0041】
張地133は、図1ないし図7、図14及び図15に示すように、クッション131及びインナーシェル129の周縁部139を覆う袋状のものである。張地133の外周縁147は筒状に縫製し、その内に紐148を通してある。張地133の縁147は、インナーシェル129の下面側に巻き込み、紐148を引っ張ることで、紐148とともにインナーシェル129の下面側に設けた段部141に掛け止める。これにより、張地133の縁147は、インナーシェル129の段部141の端面に沿って配される。さらに、インナーシェル129の段部141及び張地133の縁147は、前記座受5により下方から隠されるように覆われる。因みに、インナーシェル129の四隅において、張地133をインナーシェル129に対してタッカ止め、接着等により固着するようにしてもよい。特に、本実施形態のインナーシェル129の前側は垂れ下がっていることから、張地133の前側の隅角部をこのようにして固定することで確実な外れ止めになる。
【0042】
この張地133には、前記クッション131に形成された溝145に関連させて視覚的特徴部分が形成されている。この実施形態において視覚的特徴部分は、前記張地133にエンボス加工(例えば、張地133となる布や皮革等を、視覚的特徴部分に対応した凹凸模様を形成した押し型を以て強圧する。張地133が合成繊維製品である場合、型押しとともに加熱する。張地133がレーヨンや木綿等である場合、当該生地に樹脂加工を施してから型押しして加熱する)を施してなる線条149である。線条149は、張地133の上面から若干凹み、張地133の下面から下方に突出している。線条149は、この実施形態では前後方向に並ぶように複数本存在しており、張地133をクッション131に被せたときに平面視クッション131の溝145に上方から重なり合う位置に存在している。ただし、線条149が着座者やその他の者の視覚に認識されることが重要なのであり、クッション131の溝145と張地133の線条149とは、必ずしも平面視重なり合うとは限られない。
【0043】
クッション131の上面側に張られた張地133及びその視覚的特徴部分149と、クッション131との間には、凹凸部145による空隙が介在する。この凹凸部145が、着座面の通気性の確保に寄与し、座り心地の向上をもたらす。
【0044】
《背凭れ支持体の構成》
背凭れ支持体9は、図7ないし図9、図16及び図18、図26ないし図28に示すように、前記支持基部3から後上方に延出させた左右の背支持アーム151と、これら左右の背支持アーム151の上端部169同士を連結する上連結材153と、前記トルク伝達用のブラケット57の基端から一体に後上方に向けて延設され前記背支持アーム151の基端部内側面に添接する左右の背支持ブラケット155と、これら左右の背支持ブラケット155の後端を連結する下連結材157とを具備してなる。
【0045】
左右の背支持アーム151はそれぞれ、背凭れ部材たる背シェル(インナーシェル)205を前面側に有してこれを支持する。左右の背支持アーム151は、図1ないし図9、図13、図16ないし図18に示すように、それぞれ前記支持基部3に回動可能に支持された樹脂製のものであり、前後方向に延びる前後方向延出部159と、この前後方向延出部159の後端から連続して上方に伸びる起立部161とを備えたものである。図示例では、前後方向延出部159と起立部161とは、側面視略くの字状をなしている。
【0046】
各背支持アーム151は、側面視略L型で座7の下方で前後方向に延びる前向き部、詳述すれば、前後方向延出部159の前端部163が、左右方向に延びる軸である支軸37で支持基部3に前後回動可能に取り付けられている。前記前向き部の後部は、座7の後方から垂直方向よりもやや前傾上方向に延びている。つまり、前記起立部161は、背凭れ11の起立状態において、垂直方向よりもやや前傾上方向に延び、高さ方向腰部分が最も前方に突出した形状となっている。そして、前記起立部161は、背シェル205の左右両側縁背面部にぴったり合うように取り付けられる形状となっている。すなわち、本実施形態における椅子は、支持基部3から後上方に延出させた左右の背支持アーム151の前面に樹脂製の背シェル205を取り付けてなるものであって、前記背支持アーム151が、前記背シェル205における腰部及びその下側を直接支持してなる。なお、本実施形態において、前記背支持アーム151の上端部169は、着座者の腰部付近に位置するものとしている。
【0047】
また、各背支持アーム151は、その基端部、すなわち前記前後方向延出部159の前端部163に、前記支持基部3に設けられた支軸37の端部165に外側から嵌め合わせるための軸装部167を備えている。また、各背支持アーム151は、その先端部、すなわち前記起立部161の上端部169に、上連結材153を取付けるためのアーム突出部171を備えている。
【0048】
各背支持アーム151の軸装部167は、図3ないし図9及び図16、図26ないし図28に示すように、前記支軸37の端部165を嵌合させるべく内方にのみ開口させた軸穴173を備えている。具体的には、この軸穴173にブッシュ175を介して前記支軸37の端部165が相対回転可能に嵌合されるようになっている。ブッシュ175は、支軸37を装着する前に背支持ブラケット155の内側面側から貫装させたものであり、このブッシュ175の内周に前記支軸37が相対回転可能に嵌入される。ブッシュ175の鍔部177は、前記背支持ブラケット155とメインフレーム33との間に位置している。このブッシュ175の外周に前記軸装部167が外嵌されており、この軸装部167によって前記支軸37の端部165がカバーされるようになっている。前記軸穴173は開口端部側が大径となるテーパー状をなしており、前記支軸37は円柱状をなしている。ブッシュ175は、前記軸穴173の内周面と前記軸37の外周面との間を埋める形状をなしている。すなわち、ブッシュ175の外周面はテーパー状をなし、内周面は各部同一断面形状をなす円柱形状をなしている。
【0049】
なお、前記軸装部167の外周には、図3ないし図9、図16及び図17、図26ないし図28に示すように、前記後リンク41が一体に設けられている。また、この軸装部167の近傍における前記各背支持アーム151の内側面には、前記下連結材157の片半部179をカバーするカバー部材181がそれぞれ一体に突設されている。カバー部材181には、ねじ挿通孔183が設けられており、このねじ挿通孔183に挿通されたねじ187を前記下連結材157に設けられたねじ孔185に螺着することにより、左右の背支持アーム151が下連結材157に取付けられる。
【0050】
この状態では、左右の背支持アーム151が下連結材157を介して相互に結合されるので、軸装部167が支軸37から抜け出ることがなくなる。すなわち、後端を下連結材157により連結された左右の背支持ブラケット155を支軸37を介して支持基部3に支持させ、前記支軸37の前記背支持ブラケット155よりも外側に突出する両端部165に前記背支持ブラケット155と共に回動する左右の背支持アーム151を支持させているので、前記左右の背支持アーム151を前記背支持ブラケット155の左右外方から取付けることで、前記支軸37、背支持ブラケット155及び下連結材157をカバーすることができる。この実施形態においては、左右の背支持アーム151のカバー部材181の端部189同士が組立状態において密に突き合うようになっている。
【0051】
背支持アーム151のアーム突出部171は、図7及び図18、図18及び図28に示すように、上連結材153の端部を取付けるためのもので、ねじ挿通孔191とこのねじ挿通孔191に連続するねじ孔を有した図示しないナットとを備えている。
【0052】
上連結材153は、図7及び図18に示すように、チャネル状をなす金属製のもので、左右の背支持アーム151のアーム突出部171間に架設した上で、前記ナットに螺着されるねじ195により前記各背支持アーム151に取付けられる。すなわち、上連結材153は、後方に開口する形状をなし、前記アーム突出部171に前側から嵌め合わせて背支持アーム151の上端部169間に架設される。
【0053】
背支持ブラケット155は、図9、図12、図13、図16及び図17に示すように、金属製のもので、前記トルク伝達用ブラケット57と一体に作られており、前記支軸37を介してメインフレーム33に回動可能に支持されている。
【0054】
下連結材157は、図9、図16及び図17に示すように、金属製のもので、その両端部が、前記背支持ブラケット155の後端に溶接により剛結されている。この下連結材157は、背支持ブラケット155と協働して合成樹脂製の背支持アーム151の骨格的な機能を有している。また、左右から嵌め付けられる背支持アーム151が左右に離脱するのを防止するための土台としての機能も有している。さらに、下連結材157は、背凭れ11に作用する後傾方向の荷重を背支持アーム151を介して受け止め、その荷重を背支持ブラケット155を介して傾動反力発生機構55のトルク伝達用のブラケット57に伝える機能をも有している。
【0055】
以上のようにしてなる背凭れ支持体9に背凭れ11を支持させてなる。
【0056】
《背凭れの構成》
背凭れ11は、図1ないし図7に示すように、頂部201において略水平になるまで湾曲させてなりほぼ中間部に弾性変形助長用の開口部203を有した樹脂製の背シェル205と、この背シェル205の頂部201よりも後方に位置する先端縁207を支持する背支持部材209と、前記背シェル205の表面側に添設された張地206とを具備してなる。
【0057】
背シェル205は、着座者の背が凭り掛かる背凭れ面を形作る(なお、張地206の有無にかかわらず、背凭れ面が形成されるものとする)。背シェル205は、図2ないし図7、図19、図20、図22ないし図24、図26及び図27に示すように、背凭れ支持体9に支持された樹脂製のものである。詳述すれば、背シェル205の着座面は、いわゆる樹脂シェルでできており、高さ方向腰部分で、平面視左右方向両端縁が前方に突出する前向き凹形状をなしているとともに、縦方向側断面が前方に突出する前向き凸形状をなす3次元形状を有している。換言すれば、前記背シェル205は、前記背支持アーム151の上端部169近傍で平面視前向き凹形状であるとともに、前記背支持アーム151の上面を後方に覆いかぶさるように湾曲して後上方に伸びている。この背シェル205の下部領域229に位置する背シェル205の前記高さ方向腰部分には、着座者の腰をしっかりサポートするために、弾性変形を助長するようなスリットや切り欠き等を設けていない。
【0058】
背シェル205は、前記背支持アーム151の上端部169に対応する腰部より下方ではやや前傾しており、腰部で後方に湾曲し、腰部より上方ではやや後傾している。なお、前記背支持アーム151が背シェル205を直接支持するのは、背シェル205の腰部以下の部分、すなわち腰部及びその下側の部分である。そして、背シェル205の腰部以下の部分において、背支持アーム151は背シェル205の後部に位置し、背シェル205の背面を支持している。
【0059】
この背シェル205は、頂部201において略水平になるまで湾曲させてなりほぼ中間部に弾性変形助長用の開口部203を有したものである。すなわち、腰部から後上方に伸びている部分に、左右に並び上下方向に伸びる複数の開口部203を備えている。詳述すれば、背シェル205は、上部領域211に上下方向に伸びる複数の帯状部材213が左右に並び、それら帯状部材213間に前記開口部203が形成されている。また、背シェル205は、正面視において、着座者の腰部に対応する部分、すなわち腰部対応部分215が左右幅が広く、上に行くほど漸次幅狭となる形状をなしている。
【0060】
上部領域211は、図2ないし図7、図19、図20、図22、図24に示すように、着座者の背中を受ける前面部分217と、この前面部分217の上縁に連続して設けられ頂部201において略水平になるまで湾曲した上湾曲部分219と、この上湾曲部分219の後縁に連続して設けられ下方に湾曲して垂れ下がる背面部分221とを備えている。そして、背面部分221の先端縁207には、下方に開口する溝223が形成されている。
【0061】
この溝223は、図24に示すように、前記背支持部材209を嵌合させるための主嵌入部225と、この主嵌入部225に背支持部材209を嵌合させた状態で背支持部材209の背面側に開口する副嵌入部227とを備えたものである。すなわち、背シェル205の先端縁207に設けられた溝223は、主嵌入部225と副嵌入部227を連続的に形成した段付き溝状のものであり、この主嵌入部225に背支持部材209の後述する上取付部251を挿入すると、前記副嵌入部227のみが外方に開口して残ることとなる。この副嵌入部227は、後述する側縁溝235と連続しており、これら副嵌入部227及び側縁溝235を用いて張地206を取り付けることにより、背シェル205の前面から上部背面側に向かって張地206でカバーできるようになっている。なお、背面部分221の帯状部材213には、弾性変形調整用のリブ228が形成されている。
【0062】
また、背シェル205の下部領域229は、図2ないし図7、図19、図20及び図23、図26及び図27に示すように、左右両側が左右方向中間よりも前方に突出した凹型をなしている。この下部領域229には、前記帯状部材213に連続した突条231が形成されており、隣接する突条231間に前記開口部203に連続した薄肉部233が形成されている。背シェル205の下部領域229は、着座者の腰部に対応する部分215を側面視前方に隆起させており、平面視中央が凹むように湾曲させている。
【0063】
なお、背シェル205は、図1、図2、図4、図6、図19、図22及び図23、図26及び図27に示すように、左右両側縁にそれぞれ外方に開口した側縁溝235を有しており、これら側縁溝235と前記溝223における副嵌入部227とが連続している。また、前記背シェル205の下端には、前記側縁溝235に連続する下縁溝237が設けられている。
【0064】
この背シェル205は、図1ないし図6、図23、図26及び図27に示すように、その下部239が前記背支持アーム151の前面に取り付けられるとともに、その上部243が前記背支持部材209に支持される。背シェル205の下部239の取付けについて述べると、左右の背支持アーム151の起立部161の前面側には、上下に離間させて複数のナット孔204が形成されている。他方、背シェル205の下部239の左右両側部には、これらナット孔204に各々対応したビス挿通孔が設けられている。したがって、取付け用のビス241を前記ビス挿通孔に前方から挿し通した上、前記ナット孔204に螺合緊締することにより、背シェル205の下部239の左右両側部を左右の背支持アーム151の起立部161の前面に固定することができる。ビス241は、張地206を張り設けた際に、覆い隠される。
【0065】
背支持部材209は、図1、図2、図4ないし図7、図19、図21、図22、図24ないし図27に示すように、前記背シェル205の裏面に左右及び下方に開放された空間245を形成するように対面配置された板状のものであり、前記背凭れ支持体9に支持され前記背シェル205の前後方向へのたわみを制御するものである。換言すれば、着座者の体重を受ける背凭れ面から後方に離間して板状部材を配置し、この板状部材の上端縁を前記背凭れ面に接続している。そして、前記背凭れ面と板状部材との間に形成される空間を上から下まで左右方向に開放している。これにより、椅子の左右方向に空気が流れるため、通気性がよくなる。
【0066】
背支持部材209は、左右両側が左右方向中間よりも前方に突出した前方から見て凹型をなし前記背シェル205の上部領域211の前面部分217及び下部領域229の幅寸法よりも小さな幅寸法を有した支持部材本体247と、この支持部材本体247の下端に設けられ前記上連結材153に取付けられる下取付部249と、前記支持部材本体247の上端に設けられ前記溝223の主嵌入部225に嵌合する上取付部251と、この上取付部251、前記支持部材本体247及び下取付部249に亘って形成されたリブ253とを有している。なお、背支持部材の左右両端縁は、中間部より厚くなっており、ここが周辺補強材として機能分担している。
【0067】
支持部材本体247は、図4ないし図7、図18、図19、図21、図22、図24ないし図27に示すように、板状のもので、左右両側が左右方向中間よりも前方に突出した湾曲形状をなしており、上取付部251の下側に屈曲部255が形成されている。この屈曲部255は、該屈曲部255の上側が下側に対して前方に傾斜するような形状をなしている。換言すれば、この屈曲部255は、側面視くの字状に屈曲している。
【0068】
上取付部251は、図4ないし図7、図19、図21及び図24に示すように、前記主嵌入部225に密に嵌合し得る厚み寸法を有しているもので、嵌合状態においてねじ263を用いて背シェル205に取付けられる。すなわち、この上取付部251は、支持部材本体247の上端から上方に延出された板状のもので、その前面に前記リブ253の上端部が位置している。この上取付部251の前面において、隣接するリブ253間に板ナット257を配した上で、その上端部を溝223の主嵌入部225に嵌合させることによって、前記板ナット257を位置決め保持することができるようになっている。そして、この板ナット257のねじ孔259に背シェル205のねじ孔261を通して背面側から挿通させたねじ263を螺着することによって、この背支持部材209を前記背シェル205に取付けることができるようになっている。この状態では、前記板ナット257が、前記背シェル205及び前記背支持部材209によって隠されている。
【0069】
下取付部249は、図4ないし図7、図19、図21及び図25、図27に示すように、前記支持部材本体247の下端から下方に連続して延出する後壁265と、この後壁265の上端から前方に延出し前記中間に位置するリブ253を相互に連結する天壁267と、この天壁267の前縁から下方に垂下させた前壁269とを備えたもので、前記上連結材153に上側から嵌合し得るように下方に開放された形状をなしている。前記下取付部249の前壁269には、背支持部材209を前記上連結材153に取付けるためのねじ271を挿通させるためのねじ挿通孔273が形成されている。
【0070】
リブ253は、図7、図19、図21、図22、図24ないし図27に示すように、上下方向に亘って伸びるもので、背支持部材209の前面に複数枚設けられている。これらのリブ253は、上側に向かって漸次突出寸法が小さくなるような形状をなしている。また、これらのリブ253は、左右に略一定の間隔をあけて配されている。なお、左右両側に位置するリブ275は、支持部材本体247の下端においてとぎれており、下取付部249まで延出しておらず、この左右両側に位置するリブ275の下方には、前記天壁267及び前壁269は設けられていない。一方、中間に位置するリブ277は、下取付部249の前壁269の前面にまで延出している。なお、左右両側に位置するリブ275の突出寸法は、中間に位置するリブ277の突出寸法に比べて小さくなるように設定されている。また、背支持部材209の下方において、左右両側に位置するリブ275の厚み寸法は、中間に位置するリブ277の厚み寸法に比べて大きくしてある。具体的には、中間に位置するリブ277よりも上下方向の長さの短い左右両側に位置するリブ275は、下方において厚み寸法を約6ミリメートルとしており、一方中間に位置するリブ277は下方において厚み寸法を約4ミリメートルとしている。そのため、背支持部材209を背面側から見た際に、左右両側には縦方向に延びるフレームが存在するように見える。そして、前記背シェル205の前面に、背凭れ11の下辺縁部から上辺縁部まで至る張地206を設けている。
【0071】
張地206は、図1ないし図7、図22ないし図24、図26及び図27に示すように、通気性及び透光性を有した布材を主体に構成されたもので、背シェル205のほぼ全域を覆い隠し得る寸法を有したほぼ長方形状をなしており、端部279を背シェル205の外周縁に止着している。詳述すれば、前記張地206の下端部281を前記背シェル205の下縁溝237に押し込んで止着するとともに、左右両側の端部283を前記背シェル205の側縁溝235に押し込んで止着している。また、張地206の上部285を背シェル205の上湾曲部分219及び背面部分221の外面に被せ、その端部279を前記溝223の副嵌入部227に押し込んで止着している。具体的には、前記張地206の端部全周縁には、図示しない押し込み材が縫製されており、この押し込み材とともに前記張地206の端部279、下端部281、及び左右両側の端部283を、背シェル205の溝223の副嵌入部227、下縁溝237、及び側縁溝235にそれぞれ取付けるようにしている。なお、張地206を背シェル205に取付けた状態で、前記背シェル205と背支持部材209とを結合するねじ263の頭をカバーするようになっている。
【0072】
以上説明したような背凭れ11は、背面視において前記背シェル205の両側縁が、前記背支持部材209の両側縁よりも外側にはみ出した状態で視認可能となっている。また、斜め後方からの視線において、前記張地206の裏側が、背シェル205の開口部203を介して視認可能であり、斜め前方からの視線において、前記背支持部材209のリブ253が視認可能である。
【0073】
以上のようにしてなる背凭れ11と前記座7とをロッキング機構13により連動させるようにしている。
【0074】
《ロッキング機構の構成》
このロッキング機構13は、図4ないし図13に示すように、背凭れ11の後傾動作に伴わせて座7を傾動させつつ上動させるようにした体重感知式のものである。
【0075】
詳述すれば、このロッキング機構13は、図4ないし図13に示すように、前側に前リンク軸35を保持するとともに後側に支軸37を保持する支持基部3と、下端部を前記前リンク軸35を介して前記支持基部3に回動可能に支持させた前リンク39と、下端部を前記支軸37に支持された背支持アーム151の軸装部167に一体化させてなる後リンク41と、前リンク取付部121を前連結軸111を介して前記前リンク39の回動端119に連結するとともに後リンク取付部127を後連結軸123を介して後リンク41の回動端125に連結してなる座受5とを主体に構成されたものである。
【0076】
すなわち、このロッキング機構13は、図4ないし図13に示すように、座7を支持する座受5を同一方向に傾斜する前リンク39と後リンク41とによって支持基部3に支持させ、その支持基部3に支持された背支持アーム151の後傾動作に伴わせて、前記前リンク39及び後リンク41を起立方向に回動させて前記座受5を上方に持ち上げるように構成した体重感知式のものであり、前記背凭れ11の後傾時に、前記座7の前部を座7の後部に比べてより多く持ち上げるように構成されたものである。すなわち、通常の背凭れ及び座のシンクロロッキング機構では、背凭れの後傾動作に伴わせて座を下方側にのみ傾動させるものであるが、本実施形態に示すような体重感知式のロッキング機構13は、通常のロッキング機構とは異なり、図13に二点鎖線で示すように、背凭れ11の後傾動作に伴わせて座7を傾動させつつ着座者の荷重に抗して座7を持ち上げるように構成している。
【0077】
具体的に説明すれば、図13に示すように、前記背凭れ11を後傾させていない背起立時において、前リンク39の前傾度合いが後リンク41の前傾度合いよりも大きくなるように設定されている。換言すれば、前記背凭れ11を後傾させていない背起立時において、前リンク39における水平線に対する傾斜角度αが、後リンク41における水平線に対する傾斜角度βよりも小さく設定されている。また、前記前リンク39の支持基部3に対する回転中心を、前記後リンク41の支持基部3に対する回転中心よりも高い位置に設定している。換言すれば、前記前リンク軸35の軸心を前記支軸37の軸心よりも距離h分高い位置に設定している。前記前リンク39の有効長さ寸法、すなわち前記前リンク軸35と前記前連結軸111との軸心間距離L1と、前記後リンク41の有効長さ寸法、すなわち後リンク軸である前記支軸37と前記後連結軸123との軸心間距離L2とは略同じ距離に設定されている。また、前記背支持アーム151が、前記支持基部3における脚支柱19よりも前側の部位に枢支されている。換言すれば、前記背支持アーム151の軸装部167が、側面視において前記脚支柱19よりも前側に位置する支軸37に支持されている。
【0078】
前リンク39の前傾度合いを後リンク41の前傾度合いよりも大きくしている点は、後傾時に座7の前側を後側よりも相対的に大きく持ち上げることを目的としたもので、前リンク39と後リンク41との前傾度合いを相互に大きく異ならせることにより、後傾時の座7の前側の持ち上がりを大きく設定することが可能になる。つまり、前リンク39は座7の前部つまり座面7aの前部7a1を上方に持ち上げる動作が多く、後リンク41は座7を後方に移動させる動作が中心となる。これによって、座面7aは前部7a1を多く持ち上げながら座面7aの後部7a2は後方移動し、後傾する背凭れ11に追従するように後方に移動していくこととなる。その結果、座面7aを相対的に後傾させることで座7の後端部と背凭れ11の下端部との相対的な位置関係の変化が有効に抑えられたものとなっている。
【0079】
前リンク39と後リンク41の回転中心位置を上下方向に異ならせる点は、主に背起立時の座7の水平度合いを調整することを目的としたものであり、前述した前後リンク39、41の前傾度合い差と組み合わせることにより、背凭れ11起立時の座7の姿勢と背凭れ11後傾時の座7の姿勢を共に最適な状態に設定している。前リンク39の有効長さ寸法L1と後リンク41の有効長さ寸法L2とを略同寸法とすることにより、前記設定をより適切なものにすることができる。
【0080】
なお、一般に前記背支持アームが、前記支持基部における脚支柱よりも前側の部位に枢支されている椅子においては、背凭れ後傾時に背凭れが下方に沈みこむ傾向にあるため、背凭れ後傾時に座全体が平均的に上方に持ち上がるようにした通常の体重感知式ロッキング機構を採用した場合には大きな違和感、より具体的には、着座者の予想に反して、座の後側部分を含む座全体が上方に持ち上がる結果、着座者の腰部近傍に、背凭れの沈み込み動作とこの沈み込み動作と相反する座の持ち上がり動作とが同時に発生することによって与えられる違和感が発生するが、本実施形態の構成によればその違和感が緩和されるものとなる。すなわち、本実施形態のものは体重感知式ではあるが背凭れ11後傾時にも座7の後側が大きく持ち上がることがないので大きな違和感を与えにくいものとなる。
【0081】
また本実施形態では、この後リンク41は背支持アーム151の回動中心である支軸37を中心に、背支持アーム151及びトルク伝達用のブラケット57とともに一体的に回動するものとしている。これにより、背凭れ11の後傾動作に伴う座7の連動動作のみならず、後リンク41を介した支持基部3による座7の正確な位置決めを併せて実現している。さらに本実施形態では、背凭れ11の回動範囲を20度に設定しているとともに、背凭れ11を最大限後傾させた状態における座面7aのなす角度は、背凭れ11起立時に比べて4度後傾するように設定している。すなわち本実施形態では、主に後リンク41による背凭れ11後傾時の座受5の略中央部の持ち上げによって起こる座面7aの後部7a2が持ち上がる寸法γ2よりも、前リンク39による背凭れ11後傾時の座面7aの前部7a1が持ち上がる寸法γ1をより大きく設定する結果、背凭れ11の最大後傾時の座面7aの角度を背凭れ11起立時よりも4度後傾するようにしている。加えて本実施形態では、後リンク41を座受5の前後方向における略中央部に接続しているため、背凭れ11の後傾時前後リンク39、41共に座受5を持ち上げるような構成にしても、前リンク39が後リンク41よりも多く座受5を持ち上げるので、相対的に座受5の後端部は前端部よりも下がるように設定でき、座受5の前端部が上昇した際に座受5の後端部の高さ位置を、背凭れ11の起立時と後傾時で殆ど変わらないようにしている。
【0082】
《肘掛けの構成》
肘掛け15は、前記背凭れ支持体9の背支持アーム151における上端部前面から一体に前方に突出させた肘支持部287と、この肘支持部287の上に設けられる肘当て289、327とを具備してなる。
【0083】
背支持アーム151の起立部161の外側縁部162は、図5、図6等に示しているように、上方に向かうほど外側方に拡がりながら肘支持部287に連なっている。並びに、起立部161の前縁部162は、図4、図6、図28等に示しているように、上方に向かうほど前方に拡がりながら肘支持部287に連なっている。これらにより、着座者が肘掛け15に腕を置いた際に力がかかる部位が大きく拡張した形状となる。起立部161の外側縁部162が前縁部を兼ねているのは、起立部161の(後方及び外側方を向く)外周面が外側方に拡がりつつ徐々に前方に向かう曲面状をなしているからである。
【0084】
肘支持部287は、図3ないし図6、図18、図26ないし図28、図29及び図31、図32に示すように、背支持アーム151に一体成形されており、背支持アーム151の起立部161の上端部169と一体をなしつつ、内部空間が上方に開放した有底舟形をなしている。肘支持部287は、背支持アーム151における着座者の腰部近傍の高さ位置から突出し、同程度の高さ位置における背シェル205(及び、張地206)の外側縁部よりも外側方に張り出した後、背シェル205よりも前方に延び出している。この肘支持部287は、後端側が背支持アーム151に連接している一方で、前端側は他の部材に支持されていない。
【0085】
図27は、肘支持部287上に既に固定の肘当て289を装着している状態を表している。平面視において、肘当て289、327の後端部となるスペーサ305、333を除き、肘当て289、327の取付ベース299、329の輪郭線と、肘支持部287及び起立部161の上端部169の輪郭線とは略合致している。図27によれば、肘支持部287は、背支持アーム151の上端部169を起点とし、外側方に向けて弧(または、カーブ)を描くように延出しつつ、前方に進出している。背支持アーム151の起立部161と肘支持部287との連接部分では、平面視略円弧(真円弧または楕円弧)状の輪郭線286が描かれる。
【0086】
肘支持部287及び背支持アーム151の上端部169の上面は、前後方向に平面的に拡張している。肘支持部287及び背支持アーム151の上端部169の上面の外周縁は、当該上面の他の部位と比較して下方に落ち込んだ段部288となっている。図32に示しているように、肘支持部287における底面341の左右方向の中央部は、下方に膨出している。この底面341に対して交差する外側方を向いた外向側面343の下縁345、換言すれば底面341と外向側面343とが交わる交線(外向側面343が底面341から屈折しているその稜線)345の高さ位置は、底面341の最下縁よりも高い。同様に、この底面341に対して交差する内側方を向いた内向側面347の下縁349、換言すれば底面341と内向側面347とが交わる交線(内向側面347が底面341から屈折しているその稜線)349の高さ位置もまた、底面341の最下縁より高い。
【0087】
一方の肘支持部287、本実施形態では着座者から見て右側の肘支持部287の前端部位の底壁291には、貫通した窓293を形成しており、その窓293を介して下方に操作レバー295を突出させている。操作レバー295は、脚支柱のロック解除用の操作ボタン31を操作するためのものであり、着座者の手指によって操作される操作端部296を除いて肘支持部287の内部空間に収まっている。操作レバー295の回転軸309は左右方向に伸びており、その左右両端部がそれぞれ肘支持部287の内部空間に設けた軸受体311に軸支される。軸受体311は、肘支持部287の底壁291から起立し左右に対向して並立した板状体を主体とし、その上縁に側面視略半円状をなす軸受孔を切り欠いて形成してあるものである。操作レバー295の回転軸は、この軸受体311の上縁の軸受孔に係合する。
【0088】
操作レバー295と前記操作ボタン31との間は、ワイヤ297で接続している。操作レバー295に接続するワイヤ297の一端部は、操作レバー295の基端部とともに、肘支持部287の内部空間に収まっている。操作レバー295の操作端部296が上方に持ち上げられると、図31中二点鎖線で示しているようにワイヤ297が引っ張られる。このワイヤ297により、操作レバー295に加えられた操作力を操作ボタン31に伝達することで、操作ボタン31の操作、ひいては脚支柱のロック/ロック解除の切換えを行い得る。要するに、操作レバー295が操作されることで、椅子の背座昇降機能が操作される。
【0089】
操作レバー295の回転軸309、及びワイヤ297を内包するチューブ300の上方には、これら操作レバー295及びチューブ300が脱離するのを抑止するための押さえ板313を取り付ける。押さえ板313は、ビス315を用いて肘支持部287の底壁291に対し固定する。
【0090】
肘支持部287の内部空間は、前記背支持アーム151の起立部161に形成されたワイヤ案内空間298に連通している。ワイヤ案内空間298は、上下方向に延伸し、かつ、その一部または全部が前方に開口する。ワイヤ案内空間298の下端部は、前後方向延出部159の直上まで到達しており、背シェル205の下部239を起立部161に取付けた状態で背シェル205の下端よりも若干下方に位置して前方に開通している。そのため、操作レバー295に接続されたワイヤ297は、肘支持部287の内部空間からワイヤ案内空間298の下端部へと導き出され、そこから前後方向延出部159に沿って支持基部3へと到る。
【0091】
肘当て289、327は、前記肘支持部287に対して着脱可能である。これにより、共通の肘支持部287に取付可能な複数種類の肘当て289、327の中から任意のものを選んで使用することができる。肘当てには、固定タイプのもの289と、可動タイプのもの327とが存在する。
【0092】
図1ないし図5、図7及び図18、図19、図27、図29ないし図33に示す固定タイプの肘当て289は、着座者の腕が載せ置かれる肘当て本体301が、肘支持部287に対して変位不能である態様のものである。肘当て289は、肘支持部287に対して直接取付けられる取付ベース299と、この取付ベース299に支持される肘当て本体301とが一体的に設けられているものである。
【0093】
取付ベース299は、肘支持部287及び背支持アーム151の上端部169に蓋着される基体303と、この基体303の内方端から略水平に延出するスペーサ305とを具備してなる。基体303は、前側が係止機構により肘支持部287に掛け止めされるとともに、後側がビス307を用いて背支持アーム151の前面側に取付けられる。
【0094】
係止機構は、肘支持部287の前端部と、基体303の前側の下面との間に介在する。具体的には、肘支持部287の前端部に上向きに突出した繋留体317(肘支持部287に螺着されるボルトであることがある)を設け、基体303の前側の下面にこの繋留体317の上端部と係合する被掛止部319を設けて、これらを要素として係止機構としている。繋留体317の上端部は、ちょうどボルトの頭部の如く、外方に張り出している。被掛止部319は、図30及び図33に示すように、その側壁320が基体303の前側の下面から垂下し、その底壁321が略水平に屈曲した背面視逆Π字型の枡形をなしており、後方に開放している。底壁321の後縁は、繋留体317の上端部よりも下方の軸部分が収まるよう、平面視部分円弧状に切り欠いてある。
【0095】
基体303の外周部の上面は、前後方向に平面的に拡張している。その外周縁は、当該上面の他の部位と比較して上方に窪んだ段部304となっている。基体303の外周部よりもやや内側方に偏倚した箇所からは、下方に向けて凸片323が突出している。
【0096】
基体303の後側、肘支持部287と背支持アーム151の上端部169との境界領域にあたる部位には、下方に垂下し背支持アーム151に前方から当接する当たり部325を設けており、この当たり部325にビス挿通孔326を穿っている。
【0097】
スペーサ305は、リブ275の直下の天壁267が存在していない空隙を埋めるためのもので、背支持部材209の下取付部249の天壁267にほぼ連続する板状をなしている。
【0098】
肘当て287の取付ベース299を肘支持部287に取り付けるに際しては、肘支持部287と比較してやや前方にずらした状態で取付ベース299を肘支持部287の上に載せ、この取付ベース299を後方に変位させる。すると、取付ベース299の前側の下面にある被掛止部319が、肘支持部287の前端部に固設した繋留体317に前方から係合する。結果、図31及び図33に示しているように、繋留体317の上端部が被掛止部319の底壁320の直上に位置づけられるため、取付ベース299の前側が肘支持部287から浮き上がることが抑止される。しかる後に、ビス307を前方から当たり部325のビス挿通孔326に挿し通し、背支持アーム151に予め形成してあるナット孔308に螺合緊締する。
【0099】
取付ベース299を肘支持部287に取り付けたとき、取付ベース299の外周縁の段部304と、肘支持部287及び背支持アーム151の上端部169の外周縁の段部288とが嵌り合う。取付ベース299の凸片323は、肘支持部287の内部空間に差し入る。また、スペーサ305は、図18及び図27に示しているように、前記上連結材153の上面と、背支持部材209の左右両側に位置するリブ275の下端面との間に密に介設される。
【0100】
つまり、肘支持部287及び背支持アーム151の起立部161の上端部169が支持しているのは、肘当て287、327の取付ベース299、329の後端部を除いた部位である。取付ベース299、329の後端部であるスペーサ305、333は、仮に支持されるとしても、上連結材153によってである。スペーサ305、333を除く取付ベース299、329は、肘支持部287の上面及び起立部161の上端部169の上面に跨って載置かれる。
【0101】
尤も、(肘支持部287の後端部に連なる、肘支持部287の後端部と同程度の高さ位置にある)起立部161の上端部を、肘支持部287の一部と捉えても構わない。この場合、背支持アーム151の起立部161の直上に肘支持部287が載っているということになる。
【0102】
肘当て287の取付ベース299を肘支持部287から取り外す際には、上記と逆の手順をとればよい。すなわち、ビス307をナット孔308から外してビス挿通孔326から抜き取り、取付ベース299を前方に変位させて被掛止部319と繋留体317との係合を解除する。
【0103】
しかして、図34ないし図36に示す可動タイプの肘当て327は、着座者の腕が載せ置かれる肘当て本体331が、肘支持部287に対して前後方向にスライド可能である態様のものである。肘当て327は、肘支持部287に対して直接取付けられる取付ベース329と、この取付ベース329とは別体をなす肘当て本体331と、取付ベース329と肘当て本体331との間に介在する可動機構とを備え、これら取付ベース329、肘当て本体331及び可動機構を一体のユニットとして、肘支持部287に対し脱着できるようにしたものである。
【0104】
取付ベース329は、固定タイプの肘当て287の取付ベース299と少なくとも一部において共通の部材である。この取付ベース329の肘支持部287に対する取付構造もまた、固定タイプの肘当て287の取付ベース299のそれと少なくとも一部において共通している。取付ベース329の前側の下面には、取付ベース299と同様の図示しない被掛止部を設けている。そして、取付ベース329の後側、肘支持部287と背支持アーム151の上端部169との境界領域にあたる部位には、下方に垂下し背支持アーム151に前方から当接する当たり部335を設けてあり、この当たり部335にビス挿通孔336を穿っている。ビス挿通孔336には、ビス307が挿通されることは言うまでもない。内方端から略水平にスペーサ333が延出している点も、取付ベース299と同様である。
【0105】
可動機構は、肘当て本体331の取付ベース329に対する前後方向に沿った移動を案内するスライド案内(または、レール)構造や、肘当て本体331を前後方向の複数位置の何れかに選択的に節度停止させるための節度機構等を包含する。これらスライド案内構造や節度機構等自体は、既知の可動の肘掛けにおけるそれと同様に構成することが可能である(例えば、特開2010−063833号公報、特開2002−336079号公報等に記載されている機構を採用してよい)。スライド案内構造の一例としては、図35に示すように、肘当て本体331(の下向面、または肘当て本体331下に取り付けられる部材)と、取付ベース329(の上向面、または取付ベース329上に取り付けられる部材)とのうち一方の内側にスライド方向に延伸する長孔332を形成し、他方にこの長孔332内に挿入され当該長孔332に沿って摺動するスライダ(ピン、突起等)330を固設することが考えられる。これら長孔332及びスライダ330は、肘当て本体311をその可動範囲一杯まで変位させたとしても肘当て本体331の下面や取付ベース329の上面に現れない位置に配することが望ましい。さすれば、長孔332とスライダ330との間に手指を挟むおそれがない。また、節度機構は必須でない。
【0106】
可動タイプの肘当て327を肘支持部287上に取り付けた場合、図36に実線及び二点鎖線で示しているように、肘当て本体331を前後方向にスライド移動させ、着座者が望む任意の位置に配置することが可能である。
【0107】
本実施形態では、肘支持部287の上面に可動タイプの肘当て327が設けられた肘掛け15を有する椅子において、前記可動タイプの肘当て327を、前記肘支持部287に対して着脱可能に取り付けられる取付ベース329と、取付ベース329の上方に配される肘当て本体331と、取付ベース329と肘当て本体331との間に介在し肘当て本体331を取付ベース329に対し所定の軌跡に沿って相対的に移動可能とする可動機構とを備え、前記取付ベース329、前記肘当て本体331及び前記可動機構が前記肘支持部287に対して脱着されるものとした。これにより、共通の肘支持部287に対して可動タイプの肘当て327または固定タイプの肘当て289を選択して取り付けることが可能となる。
【0108】
前記肘支持部287の上面に設けられる肘当ての一種として、固定タイプの肘当て289が存在しており、前記固定タイプの肘当て289は、前記肘支持部287に対して着脱可能に取り付けられる取付ベース299と、取付ベース299の上方に配される肘当て本体301とを備え、前記取付ベース299及び前記肘当て本体301がユニット化されて、前記肘支持部287に対して脱着されることから、各種の肘当て327、289を一体のユニットとして脱着、交換を行い得る。可動タイプと固定タイプとを切り替える際に、肘支持部287や背支持アーム151を交換する必要がなくなり、簡便な上に、交換用の部材327、289も小型化するためコスト及び省資源の面で有利となる。
【0109】
前記肘支持部287の上面が前後方向に平面的に拡張しているため、可動タイプの肘当て327において、肘当て本体331のスライド移動と肘支持部287とが干渉しにくく、好ましい。
【0110】
前記肘支持部287が、背凭れ11を支持する背支持アーム151の上端部169の前面から前方に突出したものであるため、肘当て289、327にかかる荷重を頑健な背支持アーム151により支えることが可能であり、強度を担保できる。
【0111】
前記肘支持部287の内部には上方に開放した空間が存在しており、その内部空間に椅子の所定の機能(背座昇降機能)を操作するための操作部295及び当該操作部295に加えられる操作力を伝達するワイヤ297が配置されているため、操作部295及びワイヤ297を含めて肘掛け15の外形がコンパクトなものになる。椅子に固定されている肘支持部287内に操作機構の構成要素である操作部295、ワイヤ297を組み込み、その肘支持部287に対して肘当て327、289を脱着できるようにしているので、当該操作機構に影響を及ぼすことなく、肘当て327、289を交換でき、可動タイプと固定タイプとを切り替えることが可能である。換言すれば、使用する肘当てが可動タイプのもの327であったとしても、固定タイプのもの289であったとしても、同じように操作機構を操作して椅子の所定の機能を発揮させることができる。
【0112】
前記内部空間が、背凭れ11を支持する背支持アーム151に沿って上下方向に延伸するワイヤ案内空間298に連通しているため、このワイヤ案内空間298に前記ワイヤ297の中間部を配置して、ワイヤ297の終端部を座7付近へと導くことができる。
【0113】
本実施形態によれば、着座者の背が凭り掛かる背凭れ面を形作る背凭れ部材205と、前面側に前記背凭れ部材205が配された状態でこの背凭れ部材205を支持する背支持アーム151と、前記背支持アーム151における着座者の腰部近傍の高さ位置から突出し、前記背凭れ部材205を避けるように外側方に張り出した後、背凭れ部材205よりも前方に延び出して着座者の腕を支える、背支持アーム151に一体成形された肘支持部287とを具備する椅子を構成したため、背支持アーム151と肘支持部287とが一体の部材となり、背支持アーム151に肘支持部287を固着する作業工程が不要となって、従前に比して作業工数を削減することが可能となる。
【0114】
前記背支持アーム151における、上下方向に伸張し前記肘支持部287に連接する起立部161の外側縁部162が、上方に向かうほど外側方に拡がりながら肘支持部287に連なっているため、大きな力がかかる部位を広い範囲で支持でき、肘掛け15の強度を担保することができる。
【0115】
前記背支持アーム151の起立部161と前記肘支持部287との連接部分が、平面視略円弧状の輪郭286をなしているため、当該連接部分が角張らない。言うなれば、起立部161の外周面を含む肘掛け15の後部が角張らず、人や物に当たったとしても、人に痛みを与えたり物に傷をつけたりするおそれが小さい。
【0116】
前記肘支持部287における底面341の左右方向の中央部が下方に膨出しているため、肘支持部287の強度上必要な底壁291の厚みを確保することができる上、最も目に触れやすい外向側面343や内向側面347の上下寸法を可及的に薄くすることができる。これにより、肘支持部287が上下に薄い、軽快な視覚的印象を具現することが可能になる。
【0117】
左方の背支持アーム151及び肘支持部287と、右方の背支持アーム151及び肘支持部287とが、ともに単一の背凭れ部材205に固着されているため、背凭れ部材205を介して左方の背支持アーム151及び肘支持部287と右方の背支持アーム151及び肘支持部287とが一体化し、構造の安定化につながる。
【0118】
前記肘支持部287の後端側が前記背支持アーム151に支持されている片持ち形状であるため、着座者の手元や太腿、膝の辺りに狭小な感じを与えずに済む。
【0119】
背凭れ11の左右に一対の背支持アーム151を配し、各背支持アーム151における上下方向に伸長する部位(上記実施形態では、起立部161)に前後方向に伸長する肘掛け15を設けており、この肘掛け15の内部に空洞を形成している。すなわち、前後方向に延伸し着座者の腕(または、肘)を支える肘支持部287を背支持アーム151に一体に設けるとともに、肘支持部287に形成した内部空間を肘掛け15内部の空洞の少なくとも一部としている。これにより、背支持アーム151ほどの強度を必要としない肘掛け15またはその肘支持部287について、これを背支持アーム151と同じような外観、同程度の太さに成形した場合の材料使用量を削減することができ、また肘掛け15ひいては椅子の軽量化を図ることができる。加えて、肘掛け15内部の空洞に、椅子の所定の機能を操作するための操作部(上記実施形態では、操作レバー295)及び当該操作部295に加えられる操作力を伝達する伝達部材または機構(上記実施形態では、ワイヤ297及びチューブ300)を配置することも可能となる。
【0120】
肘掛け15の構成要素として、上方に開口した内部空間を包有する肘支持部287と、この肘支持部287の開口を上方から閉塞する蓋体となる部材(上記実施形態では、肘当て289、327またはその取付ベース299、329)とを有しており、前記肘支持部287の側に前記操作部295、伝達部材または伝達機構297、300を収めるようにしたため、操作部295の根元(上記実施形態では、回転中心軸309等)や、伝達部材または伝達機構297、300が外部から見えず、見栄えがよくなる。のみならず、これら部材295、297、300を組み付けるにあたり、肘支持部287に対して上方から作業することができるようになる。
【0121】
肘支持部287の内部空間は肘支持部287の前後寸法の略全域に亘っており、肘支持部287の開口を閉塞する蓋体299、329もまたその開口の略全域に亘っているため、操作部等295、297、300の組み込み作業がさらに簡便となる。
【0122】
肘支持部287の内部空間は背支持アーム151の上下方向に伸長する部位161にまで到達しており、その内部空間に連通する空洞(上記実施形態では、ワイヤ挿通空間298)を当該部位161に形成していることから、肘支持部287及び背支持アーム151の一層の軽量化に寄与する。
【0123】
操作部295に加えられる操作力を伝達する伝達部材または機構297、300を、背支持アーム151の前記部位161に形成した空洞298に挿入することにより、伝達部材または機構297、300を、肘支持部287の内部空間から当該部位161に沿って下方に導くことができる。従って、伝達部材または機構297、300を、椅子の所定の機能を具現する(操作部295によって操作される対象の)部材(上記実施形態では、ガススプリングのロッド29)の近くまで、徒に露出させることなく好適に隠蔽することが可能となる。
【0124】
蓋体(上記実施形態では、固定タイプの肘当て289)が肘掛け15の最上面(上記実施形態では、肘当て本体301の上面)を形成するものであり、この蓋体289が、肘支持部287から背支持アーム151の上端部169にまで至る大きさに拡張した単一の部材となっていることから、蓋体289の付け外しが簡単である。加えて、蓋体289を一体成形できるため、その製造コストを抑制でき、部品点数の削減にもつながる。
【0125】
なお、本発明は以上に詳述した実施形態に限られるものではない。例えば、背凭れ部材は、樹脂成形品の背シェル205には限定されない。背凭れ部材は、樹脂成形品または金属成形品の湾曲した薄板状の背板であってもよく、剛性を有する部材の前面側にウレタンスポンジ等のクッションを装着した(さらには、そのクッションを張地で被覆した)ものであってもよい。あるいは、剛性を有するフレームに張地を張り設け、その張地によって背凭れ面を形成するものであってもよい。
【0126】
上記実施形態では、着座者の腕が直接触れる肘当て289、327と、着座者の腕の荷重を支える肘支持部287とが別個の部材となっていたが、肘当てを肘支持部に一体成形することを妨げない。
【0127】
上記実施形態では、背支持アーム151の上端部169から肘支持部287を延出させていたが、背支持アームの上端が着座者の腰部付近の高さを上回って上方に延伸している場合には、背支持アームの(上端部ではない)中途部から肘支持部を延出させることになる。
【0128】
上記実施形態では、背凭れ部材205とこれを支持する背支持アーム151とが別個の部材となっていたが、背支持アームの前面側に背凭れ部材が固着している、または背凭れ部材の背面側に背支持アームが固着しているという条件を満たす限りにおいて、背支持アームと背凭れ部材とを一体成形することも当然に可能である。
【0129】
また、特に、可動タイプの肘当て327については、様々な態様のものを考えることができる。
【0130】
図37及び図38に示す可動タイプの肘当て327は、着座者の腕が載せ置かれる肘当て本体331が、肘支持部287に対して左右方向にスライド可能である態様のものである。肘当て327は、肘支持部287に対して直接取付けられる取付ベース329と、この取付ベース329とは別体をなす肘当て本体331と、取付ベース329と肘当て本体331との間に介在する図示しない可動機構(例えば、特開2010−063833号公報等に記載されている機構と同等とすることができる)とを備え、これら取付ベース329、肘当て本体331及び可動機構を一体のユニットとして、肘支持部287に対し脱着できるようにしたものである。
【0131】
可動機構は、肘当て本体331の取付ベース329に対する左右方向に沿った移動を案内するスライドレール構造や、肘当て本体331を左右方向の複数位置の何れかに選択的に節度停止させるための節度機構等を包含する。これらスライドレール構造や節度機構等は、既知の可動の肘掛けにおけるそれと同様に構成することが可能である。
【0132】
可動タイプの肘当て327を肘支持部287上に取り付けた場合、図38に実線及び二点鎖線で示しているように、肘当て本体331を左右方向にスライド移動させ、着座者が望む任意の位置に配置することが可能である。
【0133】
図39及び図40に示す可動タイプの肘当て327は、着座者の腕が載せ置かれる肘当て本体331が、肘支持部287に対して略水平に旋回可能である態様のものである。肘当て327は、肘支持部287に対して直接取付けられる取付ベース329と、この取付ベース329とは別体をなす肘当て本体331と、取付ベース329と肘当て本体331との間に介在する図示しない可動機構とを備え、これら取付ベース329、肘当て本体331及び可動機構を一体のユニットとして、肘支持部287に対し脱着できるようにしたものである。
【0134】
可動機構は、肘当て本体331の取付ベース329に対する水平旋回を許容するヒンジ構造や、肘当て本体331を水平回転軌道上の複数位置の何れかに選択的に節度停止させるための節度機構等を包含する。これらヒンジ構造や節度機構等は、既知の可動の肘掛けにおけるそれと同様に構成することが可能である。
【0135】
可動タイプの肘当て327を肘支持部287上に取り付けた場合、図40に実線及び二点鎖線で示しているように、肘当て本体331の前端側を内側方または外側方に旋回させ、着座者が望む任意の向きに配置することが可能である。
【0136】
図41及び図42に示す可動タイプの肘当て327は、着座者の腕が載せ置かれる肘当て本体331が、肘支持部287に対して略垂直に回動可能である態様のものである。肘当て327は、肘支持部287に対して直接取付けられる取付ベース329と、この取付ベース329とは別体をなす肘当て本体331と、取付ベース329と肘当て本体331との間に介在する図示しない可動機構とを備え、これら取付ベース329、肘当て本体331及び可動機構を一体のユニットとして、肘支持部287に対し脱着できるようにしたものである。
【0137】
可動機構は、肘当て本体331の取付ベース329に対する垂直回動を許容するヒンジ構造や、肘当て本体331を垂直回転軌道上の複数位置の何れかに選択的に節度停止させるための節度機構、または肘当て本体331を垂直回転軌道上の複数位置の何れかに選択的に固定するためのロック機構、等を包含する。これらヒンジ構造や節度機構、ロック機構等は、既知の可動の肘掛けにおけるそれと同様に構成することが可能である。
【0138】
可動タイプの肘当て327を肘支持部287上に取り付けた場合、図42に実線及び二点鎖線で示しているように、肘当て本体331の前端側を上下に回動させ、着座者が望む任意の傾斜角度に配置することが可能である。
【0139】
上記実施形態では、肘支持部287及び背支持アーム151の起立部161が側面視逆L字型をなしていたが、このような形状に限定されるものではない。肘支持部287の前端部を下方から支える支柱を別途設けることにより、肘支持部287、起立部161及び当該支柱が側面離逆Π字型をなすような構成をとることも可能である。あるいは、肘支柱が座の下方の左右両側から上方に立ち上がり、その上端部に前後方向に拡張した肘支持部を設け、その肘支柱の上に肘当て327、289を取り付けることとしてもよい。この場合、肘支柱及び肘支持部が側面視T字型の様相を呈する。
【0140】
操作部たる操作レバー295によって操作される機能は、背座昇降機能には限られない。操作レバー295は、背凭れ11のロッキング動作の禁止/解禁を切り替えるロック機能等の操作のためのものであってもよい。
【0141】
上記実施形態では、操作部295に接続しているワイヤ297(及び、チューブ300)を、肘支持部287の内部空間からワイヤ挿通空間298を通じて背シェル205の下縁よりも下方へと導き、座7方面(座受5下、支持基部3上)に引き込むようにしていたが、ワイヤ297の取り回しはこのようなものには限定されない。ワイヤ297を、背支持アーム151の内部を通すようにしても構わない。
【0142】
本発明に係る肘当ての構造を採用することにより、可動タイプと固定タイプとの間の切り替えが簡便になるだけでなく、肘当て本体の大きさや硬さ、素材、材質等の異なる肘当てへの交換も容易となる。
【0143】
加えて、図43ないし図46に示しているものは、肘当て本体331を所定の軌跡に沿ってスライド移動可能とした可動タイプの肘当て327、及びこれを支える肘支持部287の変形例である。図44は上部被覆材331yを取り外した状態を示し、図45は下部プレート331xを取り外した状態を示し、図46は取付ベース329を取り外した状態を示している。
【0144】
本変形例にあって、肘当て本体331は、例えば金属製の下部プレート331xと、下部プレート331xに嵌め付けられる例えば樹脂製の上部被覆材331yとに分かたれており、その下部プレート331xにスライド方向すなわち前後方向に延伸した長孔332を形成している。長孔332は複数、図示例では三本設けてある。各長孔332はそれぞれ、下部プレート331xを上下方向に貫通している。この下部プレート331xは、取付ベース329の表面上を摺動する。
【0145】
取付ベース329の表面には、上向きに突出するスライダ330を、長孔332と同数設けている。各スライダ330は、下部プレート331xの各長孔332内に挿入され、長孔332とともに肘当て本体331の移動を案内する可動機構を構成する。スライダ330は、内部が中空の筒状をなしている。スライダ330の内空は、そのまま下方に伸びて取付ベース329を上下方向に貫通している。取付ベース330の中央部位には、平面視前後方向に拡張した略方形状の貫通窓329xを穿ってある。さらに、貫通窓329xの前方に、角孔329y及び丸孔329zを穿ち設けている。
【0146】
取付ベース329を肘支持部287に取り付けるに際しては、取付ベース329の後側の当たり部335のビス挿通孔336にビス307を挿通し、このビス307を背支持アーム151の前面側のナット孔308に螺合緊締して固定する。なおかつ、取付ベース329の前側に穿った丸孔329zに繋留体となるボルト317を挿通した状態で、このボルト317を肘支持部287の前側に螺合緊締して固定する。取付ベース329を肘支持部287に取り付けたとき、押さえ板313の一部分が角孔329yの内に収まる。
【0147】
本変形例における肘支持部287の内部空間には、取付ベース329のスライダ330と平面視重なり合う位置にナット部287xを固設している。ナット部287xの内周には、雌ねじを切ってある。ナット部287xには、下部プレート331xの取付ベース329からの脱離を阻むためのビス331zを螺着する。ビス331zは、下部プレート331xの上方からスライダ330の内空に挿入され、その軸部がナット部287xの内周に螺合する。尤も、肘支持部287にナット部287xを設けることは必須ではなく、スライダ330の内周に雌ねじを切っておき、ビス331zをスライダ330に螺着するようにしても構わない。
【0148】
肘支持部287の内部空間の中央部位には、節度機構の要素となる節度子287yを配設している。節度子287yは、その上面を側面視略波形に成形したもので、ばね等により上方に弾性付勢されている。この節度子287yは、取付ベース329の貫通窓329xに収容され、貫通窓329x内で上下方向に突没動作し得る。肘当て本体331の下部プレート331xの下向面には予め、凹凸を前後方向に連続させたラック(歯竿)状の図示しない被係合部を形成してあり、当該被係合部の何れかの箇所に節度子287yが係合することを通じて、肘当て本体331を前後方向の複数位置の何れかに選択的に節度停止させる。
【0149】
本変形例における肘支持部287に対し、固定タイプの肘当て289を取り付けることも当然に可能であり、その場合の取付構造は上記実施形態に全く等しい。固定タイプの肘当て289を取り付ける場合にも、ナット部287xや節度子287yはそのまま残しておくことができる。
【0150】
その他各部の具体的構成は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0151】
本発明は、例えばオフィス等において使用される事務用椅子として利用することができる。
【符号の説明】
【0152】
151…背支持アーム
161…起立部
205…背凭れ部材
287…肘支持部
341…肘支持部の底面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
着座者の背が凭り掛かる背凭れ面を形作る背凭れ部材と、
前面側に前記背凭れ部材が配された状態でこの背凭れ部材を支持する背支持アームと、
前記背支持アームにおける着座者の腰部近傍の高さ位置から突出し、前記背凭れ部材を避けるように外側方に張り出した後背凭れ部材よりも前方に延び出して着座者の腕を支える、背支持アームに一体成形された肘支持部と
を具備することを特徴とする椅子。
【請求項2】
前記背支持アームにおける、上下方向に伸張し前記肘支持部に連接する起立部の外側縁部は、上方に向かうほど外側方に拡がりながら肘支持部に連なっている請求項1記載の椅子。
【請求項3】
前記背支持アームの起立部と前記肘支持部との連接部分が、平面視略円弧状の輪郭をなしている請求項2記載の椅子。
【請求項4】
前記肘支持部における底面の左右方向の中央部が下方に膨出している請求項1、2または3記載の椅子。
【請求項5】
左方の背支持アーム及び肘支持部と、右方の背支持アーム及び肘支持部とが、ともに単一の背凭れ部材に固着される請求項1、2、3または4記載の椅子。
【請求項6】
前記肘支持部の後端側が前記背支持アームに支持されている片持ち形状である請求項1、2、3または4記載の椅子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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