説明

植付作業機

【課題】入力ケース、動力分配ケース、横送り軸、縦送りアームなどの伝動構成を、植付作業機の一側に集中的に配置し、他側のスペースを有効利用できるようにする。
【解決手段】横フレーム5の左右中間部上方に、走行機体1側から動力が入力される入力ケース12を配置すると共に、横フレーム5の外端部に、入力ケース12から伝動される動力を横送り動力と植付動力に分配する動力分配ケース24を配置し、分配した横送り動力を、動力分配ケース24に内装した横送り変速機構10を介して横送り軸11の外端部に出力する一方、動力分配ケース24から入力ケース12側に延出する横送り軸11の他端部に、縦送り機構14を作動させる縦送りアーム25を設け、さらに、縦送りアーム25よりも動力分配ケース24側に入力ケース12を配置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗用型田植機などの走行機体に連結される植付作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
乗用型田植機などの走行機体に連結される植付作業機としては、左右方向を向いて配置される横フレームと、横送り軸の回転に応じて左右方向に横送りされる苗載台と、左右方向に所定間隔を存して並列状に配置され、前端部が横フレームで支持される複数のプランタケースと、各プランタケースの後部に設けられ、苗載台上の苗を掻取って圃場に植付ける植付機構と、横フレームに対して並列状に配置され、各プランタケースに植付動力を伝動する植付伝動軸と、走行機体側から動力が入力される入力ケースとを備えるものが知られている。入力ケースは、通常、植付作業機と走行機体との間に設けられる伝動軸の折れ角を抑えるために、植付作業機の左右中央部に配置されており、ここから植付伝動軸や横送り軸に動力が伝動される(例えば、特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−169516号公報
【特許文献2】特開2006−136288号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に示される植付作業機では、入力ケースから植付伝動軸の中間部に動力を伝動すると共に、植付伝動軸の外端部から取り出した動力を、横送り変速ケース(横送り変速機構)を介して横送り軸に伝動しているので、横送り軸に至るまでに伝動系のガタが蓄積され、苗載台の横送り精度が低下する惧れがある。
【0005】
一方、特許文献2に示される植付作業機では、入力ケース内で植付動力と横送り動力を分配し、分配した横送り動力を、入力ケースに内装された横送り変速機構を介して横送り軸に伝動しているので、横送り伝動系におけるガタの蓄積を防止し、苗載台を精度良く横送りすることができる。しかしながら、左右中央部に配置される入力ケースに横送り変速機構を内装すると、植付作業機の外側に横送り変速機構が配置されたものに比べ、横送り変速機構のメンテナンス性が低下するだけでなく、入力ケースの大型化によって苗載台の裏面スペースが圧迫されるという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、請求項1の発明は、走行機体に連結される植付作業機であって、左右方向を向いて配置される横フレームと、横送り軸の回転に応じて左右方向に横送りされる苗載台と、苗載台上の苗を下方へ送る縦送り機構と、左右方向に所定間隔を存して並列状に配置され、前端部が横フレームで支持される複数のプランタケースと、各プランタケースの後部に設けられ、苗載台上の苗を掻取って圃場に植付ける植付機構と、横フレームに対して並列状に配置され、各プランタケースに植付動力を伝動する植付伝動軸と、を備え、横フレームの左右中間部上方に、走行機体側から動力が入力される入力ケースを配置すると共に、横フレームの外端部に、入力ケースから伝動される動力を横送り動力と植付動力に分配する動力分配ケースを配置し、分配した横送り動力を、動力分配ケースに内装した横送り変速機構を介して横送り軸の外端部に出力する一方、動力分配ケースから入力ケース側に延出する横送り軸の他端部に、縦送り機構を作動させる縦送りアームを設け、さらに、縦送りアームよりも動力分配ケース側に入力ケースを配置したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
請求項1の発明によれば、入力ケースを横フレームの左右中間部上方に配置して、植付作業機と走行機体との間に設けられる伝動軸の折れ角を抑えつつ、横フレームの外端部に配置した動力分配ケースに横送り変速機構を内装することにより、横送り変速機構の良好なメンテナンス性を確保すると共に、入力ケースの大型化を回避でき、さらには、植付伝動軸を経由することなく、横送り軸に動力を伝動して、ガタの蓄積による横送り精度の低下も防止することができる。しかも、入力ケース、動力分配ケース、横送り軸、縦送りアームなどの伝動構成が、植付作業機の一側に集中的に配置されるので、他側のスペースを有効利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】乗用型田植機の側面図である。
【図2】乗用型田植機の平面図である。
【図3】植付作業機を前方左上方から見た斜視図である。
【図4】植付作業機の要部を後方右上方から見た斜視図である。
【図5】植付作業機の要部を示す平面図である。
【図6】縦送りアームの配置を示す要部側面図である。
【図7】動力分配ケースの内部を示す斜視図である。
【図8】動力分配ケースの内部を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。図1及び図2において、1は乗用型田植機の走行機体であって、該走行機体1の後部には、昇降リンク機構2を介して植付作業機3が昇降自在に連結されている。走行機体1の後部には、植付PTO軸(図示せず)が突設されており、ここから出力される動力が、自在継手を備える屈曲自在な伝動軸4を介して植付作業機3に伝動されるようになっている。
【0010】
図1〜図8に示すように、植付作業機3は、横フレーム5、苗載台6、プランタケース7、植付機構8、植付伝動軸9、横送り変速機構10、横送り軸11、入力ケース12などを備えて構成されている。横フレーム5は、植付作業機3に左右方向を向いて配置される四角筒状のフレーム部材であって、左右中心位置から前方に突出するローリング軸13を介して、昇降リンク機構2の後端部にローリング自在に連結される。
【0011】
苗載台6は、前高後低状に傾斜した苗載面を有しており、横送り軸11の回転に応じて左右方向に横送りされる。苗載台6には、横送りの折り返し位置で苗載面上のマット苗を下方へ送る縦送り機構14が設けられている。縦送り機構14は、マット苗の下面に接触する縦送りベルト15や、縦送りレバー16の跳ね上げに応じて縦送りベルト15を下方へ送るベルト送り機構(図示せず)を備えて構成されている。
【0012】
プランタケース7は、左右方向に所定間隔を存して並列状に配置され、前端部が横フレーム5で一体的に支持される。植付機構8は、プランタケース7の後部に設けられ、苗載台6上の苗を掻取って圃場に植付ける。プランタケース7及び植付機構8の個数や配置は、植付作業機3の植付条数に応じて決定される。例えば、図2に示す6条植えの植付作業機3では、3つのプランタケース7を等間隔で並列状に配置すると共に、各プランタケース7の左右両側にそれぞれ植付機構8を設けている。
【0013】
植付伝動軸9は、横フレーム5の後方下方に並列状に配置され、各プランタケース7に植付動力を伝動する。本実施形態の植付伝動軸9は、プランタケース7の入力軸17と、隣接するプランタケース7の入力軸17同士を接続するジョイント軸18とで構成されるが、これらが一体化された長尺軸で構成してもよい。
【0014】
横送り変速機構10は、横送り軸11への動力伝動経路に介在される変速機構であって、横送り軸11の回転速度を変速することにより、苗載台6の横送り速度を変更することができる。横送り軸11は、外周部に無端状のラセン溝を有するスクリュー軸19と、該スクリュー軸19の回転に応じて軸上を左右往復移動する横送り体20とを備えており、横送り体20を苗載台6に連結することで、苗載台6の横送りが行われる。
【0015】
入力ケース12は、走行機体1側から伝動軸4を介して動力を入力するためのケース体であって、前後方向を向く入力軸21と、左右方向を向く出力軸22と、両軸21、22間を伝動するベベルギヤ機構22aとが組み込まれている。
【0016】
次に、本実施形態に係る植付作業機3の配置構成及び伝動構成について、図3〜図5を参照して説明する。
【0017】
本実施形態の植付作業機3においては、横フレーム5の左右中間部上方に、入力ケース12を配置すると共に、横フレーム5の外端部に、入力ケース12から伝動軸23を介して入力される動力を横送り動力と植付動力に分配する動力分配ケース24を配置し、ここで分配した横送り動力を、動力分配ケース24に内装した横送り変速機構10を介して横送り軸11の外端部に出力する一方、分配した植付動力を、植付伝動軸9の外端部に出力して、外端側のプランタケース7から一方向に伝動する構成としてある。
【0018】
このようにすると、入力ケース12を横フレーム5の左右中間部上方に配置して、植付作業機3と走行機体1との間に設けられる伝動軸4の折れ角を抑えつつ、横フレーム5の外端部に配置した動力分配ケース24に横送り変速機構10を内装することにより、横送り変速機構10の良好なメンテナンス性を確保すると共に、入力ケース12の大型化を回避でき、さらには、植付伝動軸9を経由することなく、横送り軸11に動力を伝動して、ガタの蓄積による横送り精度の低下も防止することができる。
【0019】
また、本実施形態の植付作業機3においては、横フレーム5の左右中間部上方に入力ケース12を配置すると共に、横フレーム5の外端部に動力分配ケース24を配置するにあたり、動力分配ケース24から入力ケース12側に横送り軸11を延出すると共に、横送り軸11の他端部に、縦送り機構14を作動させる縦送りアーム25を設け、さらに、縦送りアーム25よりも動力分配ケース24側に入力ケース12を配置している。このようにすると、入力ケース12、動力分配ケース24、横送り軸11、縦送りアーム25などの伝動構成を、植付作業機3の一側に集中的に配置できるので、他側のスペースを有効利用することができる。尚、縦送りアーム25は、横送り軸11と一体に常時回転しており、苗載台6が横送り折り返し位置に到達したとき、縦送りレバー16を跳ね上げることにより、縦送り機構14を作動させる。
【0020】
また、本実施形態の植付作業機3においては、エプロン26の位置調節にもとづいて苗の掻取量を調節する掻取量調節レバー27と、フロート28の位置調節にもとづいて苗の植付深さを調節する植付深さ調節レバー29とを設けるにあたり、植付作業機3の左右中心に対して、一方に入力ケース12及び動力分配ケース24を配置し、他方に掻取量調節レバー27及び植付深さ調節レバー29を配置している。このようにすると、植付作業機3の左右の重量バランスを可及的に均一にできると共に、ケース類との干渉を考慮することなく、両調節レバー27、29を容易に配置することができる。
【0021】
尚、エプロン26は、苗載台6に載置された苗の下端位置を規定する部材であり、掻取量調節軸30を介して連動連結される掻取量調節レバー27の操作に応じて上下することにより、植付機構8の苗掻取量を変更することができる。また、フロート28は、植付作業機3の対地高さを規定する部材であり、フロート軸31を介して連動連結される植付深さ調節レバー29の操作に応じて上下することにより、植付機構8の苗植付深さを変更することができる。
【0022】
また、本実施形態の植付作業機3においては、掻取量調節レバー27及び植付深さ調節レバー29を左右並列状に配置するにあたり、操作範囲の小さい植付深さ調節レバー29を走行機体1の後輪32寄りに配置すると共に、両調節レバー27、29のレバーガイド33を一体化している。このようにすると、両調節レバー27、29をコンパクトに配置できると共に、レバーガイド33の一体化によりコストダウンが図れる。
【0023】
次に、動力分配ケース24の構成について、図7及び図8を参照して説明する。
【0024】
動力分配ケース24には、入力ケース12から伝動軸23を介して動力が伝動される入力軸34と、植付動力を植付伝動軸9に出力する植付動力出力軸35と、横送り動力を横送り軸11に出力する横送り動力出力軸36と、入力軸34の動力を植付動力出力軸35に伝動するチェーン伝動機構37と、入力軸34の動力を変速して横送り動力出力軸36に伝動する横送り変速機構10とが組み込まれている。
【0025】
横送り変速機構10は、入力軸34にスライド自在に設けられる一対の変速ギヤ38、39と、これらの変速ギヤ38、39が選択的に噛合される変速ギヤ40、41と、変速ギヤ40、41及びギヤ42を一体的に備える変速軸43と、横送り動力出力軸36に一体的に設けられ、ギヤ42と噛合するギヤ36aと、変速ギヤ38、39を操作するシフタ44とを備えて構成されている。
【0026】
本実施形態では、動力分配ケース24の上部に、入力ケース12からの動力が伝動される入力軸34を配置する一方、動力分配ケース24の下部に、植付動力を植付伝動軸9に出力する植付動力出力軸35を配置し、入力軸34と植付動力出力軸35との間をチェーン伝動機構37を介して伝動すると共に、チェーン伝動機構37のチェーン軌跡内に、横送り変速機構10の変速軸43と、横送り動力を横送り軸11に出力する横送り動力出力軸36を配置している。
【0027】
このようにすると、横送り変速機構10が内装される動力分配ケース24を入力ケース12とは別に構成すると共に、動力分配ケース24の上下に入力軸34と植付動力出力軸35を配置し、両軸34、35間を伝動するチェーン軌跡内に、横送り変速機構10の変速軸43と横送り動力出力軸36を配置したので、動力分配ケース24をコンパクトに構成することができ、その結果、苗載台6の裏面スペースが圧迫されるという問題を解消できるだけでなく、横フレーム5と苗載台6を近づけて植付作業機3の小型化が図れる。また、上記のように構成された動力分配ケース24では、横送り変速機構10を内装する上段の容量が大きくなり、下段の容量が小さくなるので、動力分配ケース24に充填される潤滑油の量を減らすことができる。
【0028】
また、本実施形態では、動力分配ケース24を左右に分割される二つの割ケース45、46で構成するにあたり、ケース分解時に、蓋となる割ケース45を深く、軸が残る側の割ケース46を浅く形成する。このようにすると、ケース分解時に軸やギヤ列が露出し、メンテナンスが容易になる。
【0029】
叙述の如く構成された本実施形態によれば、走行機体1に連結される植付作業機3であって、左右方向を向いて配置される横フレーム5と、横送り軸11の回転に応じて左右方向に横送りされる苗載台6と、苗載台6上の苗を下方へ送る縦送り機構14と、左右方向に所定間隔を存して並列状に配置され、前端部が横フレーム5で支持される複数のプランタケース7と、各プランタケース7の後部に設けられ、苗載台6上の苗を掻取って圃場に植付ける植付機構8と、横フレーム5に対して並列状に配置され、各プランタケース7に植付動力を伝動する植付伝動軸9と、を備え、横フレーム5の左右中間部上方に、走行機体1側から動力が入力される入力ケース12を配置すると共に、横フレーム5の外端部に、入力ケース12から伝動される動力を横送り動力と植付動力に分配する動力分配ケース24を配置し、分配した横送り動力を、動力分配ケース24に内装した横送り変速機構10を介して横送り軸11の外端部に出力する一方、動力分配ケース24から入力ケース12側に延出する横送り軸11の他端部に、縦送り機構14を作動させる縦送りアーム25を設け、さらに、縦送りアーム25よりも動力分配ケース24側に入力ケース12を配置したので、入力ケース12を横フレーム5の左右中間部上方に配置して、植付作業機3と走行機体1との間に設けられる伝動軸4の折れ角を抑えつつ、横フレーム5の外端部に配置した動力分配ケース24に横送り変速機構10を内装することにより、横送り変速機構10の良好なメンテナンス性を確保すると共に、入力ケース12の大型化を回避でき、さらには、植付伝動軸9を経由することなく、横送り軸11に動力を伝動して、ガタの蓄積による横送り精度の低下も防止することができる。しかも、入力ケース12、動力分配ケース24、横送り軸11、縦送りアーム25などの伝動構成が、植付作業機3の一側に集中的に配置されるので、他側のスペースを有効利用することができる。
【符号の説明】
【0030】
1 走行機体
3 植付作業機
4 伝動軸
5 横フレーム
6 苗載台
7 プランタケース
8 植付機構
9 植付伝動軸
10 横送り変速機構
11 横送り軸
12 入力ケース
14 縦送り機構
24 動力分配ケース
25 縦送りアーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体に連結される植付作業機であって、
左右方向を向いて配置される横フレームと、
横送り軸の回転に応じて左右方向に横送りされる苗載台と、
苗載台上の苗を下方へ送る縦送り機構と、
左右方向に所定間隔を存して並列状に配置され、前端部が横フレームで支持される複数のプランタケースと、
各プランタケースの後部に設けられ、苗載台上の苗を掻取って圃場に植付ける植付機構と、
横フレームに対して並列状に配置され、各プランタケースに植付動力を伝動する植付伝動軸と、を備え、
横フレームの左右中間部上方に、走行機体側から動力が入力される入力ケースを配置すると共に、横フレームの外端部に、入力ケースから伝動される動力を横送り動力と植付動力に分配する動力分配ケースを配置し、分配した横送り動力を、動力分配ケースに内装した横送り変速機構を介して横送り軸の外端部に出力する一方、動力分配ケースから入力ケース側に延出する横送り軸の他端部に、縦送り機構を作動させる縦送りアームを設け、さらに、縦送りアームよりも動力分配ケース側に入力ケースを配置したことを特徴とする植付作業機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−183884(P2010−183884A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−31035(P2009−31035)
【出願日】平成21年2月13日(2009.2.13)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】