説明

植木鉢用泥はね防止具

【課題】 水遣り時の泥はねを防止する植木鉢用泥はね防止具の低コスト化を達成する。
【解決手段】 泥はね防止具10は、帯状のシート部材11を有しており、シート部材11の上縁12には複数の係合溝13a〜13fが形成される一方、シート部材11の下縁14近傍には排水孔15,17が形成される。このシート部材11を植木鉢P1に取り付けるため、シート部材11の一端側に形成される係合溝13aと、他端側に形成される係合溝13fとを重ね合わせ、シート部材11を環状状態に変形させる。そして、シート部材11の係合溝13a〜13fに留め具20を取り付けることにより、シート部材11を環状状態に保持する。留め具20の先端はシート部材11の下縁14から突き出ており、留め具20の先端を植木鉢P1内の土壌Sに刺し込むことにより、植木鉢P1に対してシート部材11が固定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植木鉢に取り付けて使用され、水遣り時の泥はねを防止する植木鉢用泥はね防止具に関する。
【背景技術】
【0002】
植木鉢に草木等を植え込むようにした鉢植えにあっては、土壌に水分を与えるとともに土壌中の空気を入れ替えるため、定期的に水遣りを行うことが必要となっている。この水遣りを行う際に、鉢植えにかけられた水が泥となって土壌表面から飛び散ってしまうことも多く、植木鉢の周囲を汚してしまうことがある。特に、マンション等のベランダに置かれた鉢植えにあっては、コンクリート床に泥を飛散させてしまうため、見栄えが悪いだけでなく清掃も困難となっていた。
【0003】
そこで、植木鉢に蓋をするように開口部を覆うことにより、水や土壌の飛び散りを防止するようにした植木鉢カバーが提案されている(たとえば、特許文献1参照)。この植木鉢カバーは円盤状に形成されており、その外周部には植木鉢に嵌合する環状の嵌合溝が形成される一方、中心部には草木が案内される通孔が形成されている。
【特許文献1】実開昭58−26842号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載される植木鉢カバーにあっては、植木鉢カバーに形成される嵌合溝の形状と、装着する植木鉢の形状とを一致させる必要があるため、極めて汎用性が低いものとなっており、植木鉢カバーの低コスト化を達成することは困難であった。また、立体的な形状を有する植木鉢カバーであるため、成型する際の金型が必要であり、製造コストの削減も困難であった。
【0005】
しかも、水遣り時には、植木鉢カバーの中心部に形成される通孔から、植木鉢内の土壌に対して局部的に水が供給されるため、植木鉢の土壌全体に新鮮な空気を導入することが困難であり、植物の育成を阻害してしまうおそれもある。
【0006】
本発明の目的は、水遣り時の泥はねを防止する植木鉢用泥はね防止具の低コスト化を達成することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の植木鉢用泥はね防止具は、植木鉢の内壁に沿って取り付けられ、水遣り時の泥はねを防止する植木鉢用泥はね防止具であって、両端部が重ねられる環状状態で使用され、上縁に複数の係合溝が形成される帯状のシート部材を有し、前記シート部材を前記植木鉢に取り付ける際には、前記係合溝のいずれかを相互に重ね合わせるように前記シート部材を環状状態とし、重なり合う前記係合溝に留め具を係合させて前記シート部材の環状状態を保持することを特徴とする。
【0008】
本発明の植木鉢用泥はね防止具は、前記シート部材の下縁近傍に排水孔を形成することを特徴とする。
【0009】
本発明の植木鉢用泥はね防止具は、前記シート部材の下縁近傍に凸部を形成し、前記植木鉢の内壁との間に隙間を形成することを特徴とする。
【0010】
本発明の植木鉢用泥はね防止具は、前記シート部材を前記植木鉢に取り付ける際には、前記シート部材の下縁から突出する前記留め具の先端を前記植木鉢内の土壌に刺すことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、帯状のシート部材を環状状態に変形させて植木鉢に取り付けることにより、水遣り時の泥はねを防止するようにしたので、植木鉢用泥はね防止具の低コスト化を達成することができる。つまり、両端部の重ね合わせ寸法を変更することにより、植木鉢用泥はね防止具の径寸法を変更することができるため、様々な大きさの植木鉢に対応させることができ、植木鉢用泥はね防止具の汎用性を高めて低コスト化を達成することができる。また、シート部材は簡易な構造を有するため、製造コストを引き下げることも可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0013】
図1は本発明の一実施の形態である植木鉢用泥はね防止具10(以下、泥はね防止具という)を形成するシート部材11を示す平面図である。図1に示すように、泥はね防止具10は薄板状に形成されるシート部材11を備えており、このシート部材11は弓形に湾曲する帯状に形成されている。また、シート部材11の上縁12には複数の係合溝13a〜13fが所定間隔を空けて形成されており、図示する場合には、ほぼ等間隔に略U字形状の係合溝13a〜13fが形成されている。さらに、シート部材11の下縁14近傍には、下縁14に沿って排水孔15と凸部16とが交互に形成されており、凸部16に隣接して上縁12側には排水孔17が形成されている。
【0014】
このようなシート部材11は、シート状の樹脂材料を抜き加工することによって形成されており、樹脂材料としてはPET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂が用いられている。なお、シート部材11を形成する際の材料としてはPET樹脂に限られることはなく、耐水性を有する材料であれば、他の材料を用いてシート部材11を形成するようにしても良い。
【0015】
続いて、シート部材11を植木鉢P1に取り付ける際の手順について説明する。ここで、図2(A)はシート部材11の植木鉢P1に対する取付過程を示す分解斜視図であり、図2(B)はシート部材11の植木鉢P1に対する取付状態を示す斜視図である。また、図3はシート部材11の使用状態を示す斜視図である。なお、図2(A)および(B)においては、鉢植えの植物を省略して図示している。
【0016】
図2(A)に示すように、シート部材11を植木鉢P1に取り付ける際には、両端部を重ね合わせるようにシート部材11をテーパ状の環状状態に変形させる。このとき、シート部材11の一端側に形成される係合溝13aと、シート部材11の他端側に形成される係合溝13fとは、相互に重なり合うようになっている。そして、環状状態となったシート部材11には、複数の留め具20がシート部材11の上縁12側から各係合溝13a〜13fに係合することになる。
【0017】
シート部材11に取り付けられる留め具20は、図2(A)に示すように、円盤状の基部21と、この基部21から下方に延びる一対の足部22とを有しており、一対の足部22によってシート部材11が挟まれるようになっている。そして、各係合溝13a〜13fに係合する留め具20のうち、重なり合う係合溝13a,13fに係合する留め具20により、シート部材11の両端部が保持されるため、シート部材11の環状状態が保持されるようになっている。
【0018】
次いで、図2(B)に示すように、環状状態に保持されたシート部材11は、植木鉢P1の内壁に沿って取り付けられ、土壌Sの上に載せられた状態となる。また、シート部材11に対して取り付けられる留め具20は、その足部22の先端がシート部材11の下縁14から突き出ており、突出する足部22の先端が植木鉢P1内の土壌Sに刺し込まれるようになっている。つまり、図2(B)に示すように、環状状態となったシート部材11は、植木鉢P1内の土壌Sに対して固定された状態となり、水がかけられたり風が吹いたりした場合であっても、シート部材11が植木鉢P1から容易に外れてしまうことはない。
【0019】
続いて、植木鉢P1に取り付けられたシート部材11による泥はね防止作用について説明する。図4はシート部材11が取り付けられた植木鉢P1を示す概略断面図であり、図示する矢印A〜Dは水遣りを行った際の水の移動経路を示している。図4に示すように、土壌Sに水分を与えるとともに土壌S中の空気を入れ替えるため、矢印Aで示すように植木鉢P1の上方から水を供給すると、矢印Bで示すように供給された水の大部分は土壌Sに浸透する一方、矢印Cで示すように供給された水の一部は泥となって土壌表面から飛び散ることになる。
【0020】
このように、土壌表面から泥が飛び散る場合であっても、植木鉢P1には環状状態となったシート部材11が取り付けられるため、飛び散る泥をシート部材11によって遮断することができ、植木鉢P1の周囲に泥を撒き散らしてしまうことがない。つまり、泥によって植木鉢P1の周囲を汚してしまうことがなく、清掃の手間を省くことができるとともに、鉢植えの見栄えを良好に保つことが可能となる。
【0021】
また、シート部材11を備える植木鉢P1に対して、土壌Sの吸水量を超えて多量の水が供給された場合には、植木鉢P1内に多量の水が溜められてしまうおそれがあるが、シート部材11の下縁14近傍には排水孔15,17が形成されており、矢印Dで示すように、排水孔15,17を介して余分な水が排出されることになる。つまり、植木鉢P1に対してシート部材11を取り付けた場合であっても、図4に破線で示すように、植木鉢P1の上端を超えて水が溜められてしまうことはなく、鉢植えの植物に対する過剰な水分供給を回避することが可能となる。
【0022】
また、図3および図4に示すように、図示する場合には、植木鉢P1の上端よりも上方に排水孔17が位置しているが、この排水孔17が植木鉢P1の内壁に対面していたとしても、シート部材11の下縁14近傍には凸部16が形成されており、シート部材11と植木鉢P1との間に所定の隙間が形成されるため、シート部材11の排水孔15,17が植木鉢P1によって塞がれてしまうことはなく、余分な水を確実に排出することが可能となる。なお、排水孔15,17を介して排出される水は、植木鉢P1内に溜まった水の上澄み部分であるため、植木鉢P1の周囲を泥で汚してしまうことはない。
【0023】
さらに、環状状態となるシート部材11によって形成される泥はね防止具10は、両端部の重ね合わせ寸法を変更することにより、様々な寸法の植木鉢P1に対応させることが可能となっている。ここで、図5(A)および(B)は環状状態のシート部材11を示す斜視図であり、図5(A)は重ね合わせ寸法を小さく採ったシート部材11を示し、図5(B)は重ね合わせ寸法を大きく採ったシート部材11を示している。図5(A)および(B)に示すように、両端部の重ね合わせ寸法を大きく採る程、環状状態となるシート部材11の径寸法を縮小することができるため、重ね合わせ寸法を調整することにより、1つのシート部材11を様々な大きさの植木鉢に対応させることが可能となる。
【0024】
このように、図示する泥はね防止具10は、極めて汎用性が高い泥はね防止具となっており、様々な寸法や形状の植木鉢に取り付けることが可能となる。したがって、様々な寸法のシート部材を取り揃える必要がないため、泥はね防止具10の低コスト化を達成することができる。しかも、シート部材11は平面的な構造を備えるため、シート部材11を形成する際に複雑な形状の金型が要求されることはなく、製造コストを引き下げることも可能となる。
【0025】
図6は本発明の他の実施の形態である植木鉢用泥はね防止具30(以下、泥はね防止具という)を形成するシート部材31を示す平面図であり、図7は植木鉢P2に対するシート部材31の取付状態を示す斜視図である。なお、図1および図2に示すシート部材11の各部位と同様の部位については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0026】
図6に示すように、泥はね防止具30を形成するシート部材31は、真っ直ぐに伸びる帯状に形成されている。そして、図1および図2に示すシート部材11と同様に、シート部材31の上縁12には複数の係合溝32がほぼ等間隔で形成される一方、シート部材31の下縁14には排水孔15,17や凸部16が形成されている。このように、略長方形状に形成されるシート部材31にあっては、環状状態に変形させる際に四角形等の角形に形成することが可能であり、図7に示すように、角形の植木鉢P2に取り付けることが容易となる。また、略長方形状のシート部材31にあっても、図5に示すシート部材11と同様に、両端部の重ね合わせ寸法を調整することによって、様々な寸法の植木鉢に対応させることが可能となる。
【0027】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。たとえば、図示する場合にあっては、弓形に形成されるシート部材11を丸形の植木鉢P1に取り付けるようにする一方、略長方形状に形成されるシート部材31を角形の植木鉢P2に取り付けるようにしているが、これらの組合せに限られることはなく、シート部材11を角形の植木鉢P2に取り付けるようにしても良く、シート部材31を丸形の植木鉢P1に取り付けるようにしても良い。
【0028】
また、シート部材11,31を植木鉢P1,P2に取り付ける際に、留め具20を用いるようにしているが、図示する形状の留め具20に限られることはなく、所定寸法に切断された針金等をヘアピン状に折り曲げることにより、この針金を留め具として用いて、シート部材11,31を植木鉢P1,P2に取り付けるようにしても良い。さらに、図示する場合には、全ての係合溝13a〜13f,32に対して、留め具20が装着されるようになっているが、これに限られることはなく、留め具20の数を削減しても良い。
【0029】
なお、前述の説明では、泥はね防止具10,30を装着することにより、植木鉢P1,P2の周囲に向けて飛散する泥を遮断しているが、泥はね防止具10,30の機能としては、これだけに限られることはなく、泥はね防止具10,30を装着することによって、植木鉢に植え込まれた草木等の広がりを抑えることもでき、鉢植えの見栄えを良好に保つことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の一実施の形態である植木鉢用泥はね防止具を形成するシート部材を示す平面図である。
【図2】(A)はシート部材の植木鉢に対する取付過程を示す分解斜視図であり、(B)はシート部材の植木鉢に対する取付状態を示す斜視図である。
【図3】シート部材の使用状態を示す斜視図である。
【図4】シート部材が取り付けられた植木鉢を示す概略断面図である。
【図5】(A)および(B)は環状状態のシート部材を示す斜視図である。
【図6】本発明の他の実施の形態である植木鉢用泥はね防止具を形成するシート部材を示す平面図である。
【図7】植木鉢に対するシート部材の取付状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0031】
10 泥はね防止具(植木鉢用泥はね防止具)
11 シート部材
12 上縁
13a〜13f 係合溝
14 下縁
15 排水孔
16 凸部
17 排水孔
20 留め具
21 基部
22 足部
30 泥はね防止具(植木鉢用泥はね防止具)
31 シート部材
32 係合溝
P1,P2 植木鉢
S 土壌

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植木鉢の内壁に沿って取り付けられ、水遣り時の泥はねを防止する植木鉢用泥はね防止具であって、
両端部が重ねられる環状状態で使用され、上縁に複数の係合溝が形成される帯状のシート部材を有し、
前記シート部材を前記植木鉢に取り付ける際には、前記係合溝のいずれかを相互に重ね合わせるように前記シート部材を環状状態とし、重なり合う前記係合溝に留め具を係合させて前記シート部材の環状状態を保持することを特徴とする植木鉢用泥はね防止具。
【請求項2】
請求項1記載の植木鉢用泥はね防止具において、前記シート部材の下縁近傍に排水孔を形成することを特徴とする植木鉢用泥はね防止具。
【請求項3】
請求項1または2記載の植木鉢用泥はね防止具において、前記シート部材の下縁近傍に凸部を形成し、前記植木鉢の内壁との間に隙間を形成することを特徴とする植木鉢用泥はね防止具。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の植木鉢用泥はね防止具において、前記シート部材を前記植木鉢に取り付ける際には、前記シート部材の下縁から突出する前記留め具の先端を前記植木鉢内の土壌に刺すことを特徴とする植木鉢用泥はね防止具。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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