説明

植栽基盤用水分供給システム

【課題】ヒートアイランド対策としての有効なシステムを提供する。また、アスベストなどの断熱建材の低減を可能とする。
【解決手段】保水性に富み固形化された植生基盤3を敷設し、植栽するとともに、植生基盤に設置された温度計5および含水率計6による計測結果を基に水分供給制御演算装置9により基盤への水分供給量を決定し、基盤上部あるいは内部に設けられた配管7の散水孔やノズル8から水分を供給し、同基盤からの水分蒸発を促すシステムを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主としヒートアイランド対策を念頭においたものであり 植栽のために敷設した植生基盤並びに植栽された植物による建物あるいは大気環境の冷却技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
日本の都市の気温はここ100年間に中小都市で1℃大都市で2.5℃上昇しており、この上昇傾向は今後も継続すると予想されている。大都市での著しい高温化はヒートアイランド現象と呼ばれ都市部環境上の大きな問題となっている。植栽すなわち緑化は、太陽からの熱の地表あるいは建物への侵入を防ぎ、同時に植物から発散する水分の気化が冷却効果をもたらすため、ヒートアイランド現象の対策の有力な一手法と考えられている。都市部での舗装部分や建物などの植栽・緑化のためには、軽量かつ飛散しにくい土壌の提供が必要であり、ある程度固形化された板状の植生基盤が土壌として適している。
【0003】
さらに、アスベストが中皮腫の原因になることが明らかにされ、アスベストに代わる建築物の保温あるいは断熱方法が課題となっている。屋上に敷設された植生基盤および植栽による冷却効果が屋上の断熱材を低減アスベスト材の代替効果をもたらすことも期待される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
緑化による大気環境の冷却効果は次のように説明される。すなわち、植物が太陽光を反射すること、植物の成長過程においては太陽熱をエネルギーとして消費すること、さらに、主として葉の部分からの水分蒸発が気化熱を奪うこと。しかし、緑化による大気冷却効果を論じる時に、土壌そのものからの水分蒸発による気化熱消費の効果ついてはほとんど考慮されていない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、保水性に富み固形化された植生基盤を敷設し、植栽するとともに、植生基盤に設置された温度計および含水率計による計測結果を基に基盤への水分供給量を決定し、基盤上部あるいは内部に設けられた配管の散水孔やノズルから水分を供給し、同基盤からの水分蒸発を促すシステムを提供するものである。
【発明の効果】
【0006】
植生基盤からの水分の蒸発は、気化熱を奪い大気を冷却しヒートアイランド対策に資する。本発明を屋上など建物に適用した場合は、建物外壁の断熱および冷却効果を高めることができ、アスベストなどの断熱材の低減を可能とする。
【実施例1】
【0007】
図1は、その1実施例の模式図である。図1(a)に示すように、建物1の屋上2に植生基盤3が敷設されている。本実施例で示す植生基盤3は、杉の間伐材を粉砕後多くの空間を有する状態で板状に固めることにより保水効果を高めているが、粒上のものや繊維状のものなど保水効果があれば必ずしも植生基盤の種類は問わない。後述するように、植生基盤の敷設だけでも冷却効果や断熱効果が期待できるが、同基盤に、芝、あるいは草花や樹木などの植物4を植栽すれば、植物の成長によるエネルギー消費および植物からの水分蒸発が加わるのでその冷却効果は大きくなる。図1(b)は、図1(a)の植生基盤部を拡大したものである。植生基盤3の1箇所または数箇所に温度計5および含水率計6が設置されている。また、水分を供給するための配管7が植生基盤3の上側または内部に設けられている。配管には、図1(c)に示すように適当な間隔で散水孔またはノズル8が設けられており、図1(d)に示す演算装置9にて処理され温度変化や含水率変化に応じた水分の供給量が決定される。水分の供給量の決定は必ずしもコンピューターによる自動演算によるものでなくてもよく、人間が判断しても良い。決定された水分供給量に応じ自動的にあるいは人為的に配管に設けられた弁10の開閉などにより水量調整あるいは水圧調整が行われる。供給された水は、植生基盤3の上面あるいは内部に設けられた配管7の散水孔あるいはノズル8より植生基盤3に供給される。必要に応じ直接植物4にも散水する。
図2は、本発明の効果を示す。植生基盤に水分を与え同基盤より50cm上部で大気温度を測定した結果を、基盤の含水率11とその気化熱により冷却された大気の温度低下量12の関係で示している。これより、適切に水分を供給し水分の蒸発を促し続ければ大きな冷却効果となることがわかる。
【0008】
実施例では、屋上緑化について述べたが、屋上ばかりでなく地上でも堤防や道路側面の傾斜地でも植生基盤が敷設されるところなら有効に機能する。ヒートアイランド対策として極めて有効であるばかりでなく、一般的な温暖化対策としても充分機能する。
本発明を建物に適用する場合は、建物を直接冷却する効果が期待でき、特に夏季高温期では建物外壁の断熱材の削減が期待できる。したがって、有害物質であることが明らかとなったアスベスト断熱材の削減を可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】は本発明の1実施例を示した説明図である。
【図2】本発明の効果を示した図である。
【符号の説明】
【0010】
1 建物
2 屋上
3 植生基盤
4 植物
5 温度計
6 含水率計
7 配管
8 散水孔またはノズル
9 水分供給制御演算装置
10

11
含水率
12
大気の温度低下量



【特許請求の範囲】
【請求項1】
保水性に富み固形化された植生基盤と、温度計あるいは含水率計またはその両者と、供給水量制御演算システムと、散水用配管とで構成され事を特徴とする植栽基盤用水分供給システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−244323(P2007−244323A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−74474(P2006−74474)
【出願日】平成18年3月17日(2006.3.17)
【出願人】(303002930)財団法人青森県工業技術教育振興会 (17)