説明

植栽用プランター

【課題】 コスト高を招来することなく緑化を行うことができ、又使い終わった後は容易に廃棄できるようにした植栽用プランターを提供する。
【解決手段】 不透水性のフィルムを用いて形成され、底面が開口されたボックス形状をなし、上面に種子を蒔き又は植物を植えるための穴10A又はスリット10Bが形成されたカバー10と、カバーの底面開口周縁に固着され、透水性を有する不織布又は織布を用いて形成された底板11と、カバーと底板とで構成される空間に収容され、複数の多孔質の合成スポンジ片で構成され、合成スポンジの孔には炭粉が担持され、炭粉の孔には肥料が含浸されている人工培土12と、人工培土のスポンジ片の間に、植物の根が成長するスペースを与える複数の樹皮粉13と、複数の多孔質の合成スポンジの小片で構成され、樹皮粉を保持するホルダー小片14とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は植栽用プランターに関し、特にコスト高を招来することなく緑化を行うことができ、又使い終わった後は容易に廃棄できるようにしたプランターに関する。
【背景技術】
【0002】
最近、地球温暖化の原因となるCO2を削減し、あるいは生活空間に潤いを与えるなどの観点から、緑化が注目されている。通常、緑化を行う場合、地面に培土を敷きつめ、あるいはプランターに培土を入れ、種子を蒔いて発芽させ、あるいは植物を植え、水や肥料を与えて植物を生育するという方法が行われるが、ビルディングの屋上やマンションのベランダなどで緑化を行おうとすると、培土の運搬などが難しく、作業が煩雑になる。
【0003】
ビルディングの屋上やマンションのベランダではプランターを並べ、プランターに培土を入れ、種子を蒔いて発芽させ、あるいは植物を植え、水や肥料を与えて植物を生育することも行われているが、使い終わった培土を廃棄するのに適当な場所がなく、培土が邪魔になる。
【0004】
これに対し、炭化物を担持させたセルローススポンジで培土ブロックを形成し、この培土ブロックに穴をあけて種苗を投入して育成し、あるいは上述の培土ブロックを用いて植栽用ポットを製造し、ポットの穴に植物を植える方法が提案されている(特許文献1)。また、炭化物を担持させたセルローススポンジで培土ブロックを構成し、この培土ブロックに切込みを入れ、切込みに種子を有する柱状の生分解プラスチックをセットし、種子を発芽させる方法が提案されている(特許文献2)。
【0005】
特許文献1、2記載の方法では培土ブロックを適切な大きさに製造できるので、容易に運搬することができ、作業が煩雑になることもなく、培土ブロックが生分解性を有するので、廃棄に苦労することがない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−211741号公報
【特許文献2】特開2002−262660号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1、2記載の方法では天然パルプを主原料とした特殊なスポンジを使用する必要があって、コスト高になり、大量には採用し難いという問題があった。
【0008】
本発明はかかる問題点に鑑み、コスト高を招来することなく緑化を行うことができ、又使い終わった後は容易に廃棄できるようにした植栽用プランターを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで、本発明に係る植栽用プランターは、植物を育成するのに適した植栽プランターであって、不透水性のフィルムを用いて形成され、底面が開口されかつ上面が封鎖されたボックス形状をなし、上面に種子を蒔き又は植物を植えるための穴又はスリットが形成されたカバーと、該カバーの底面開口周縁に固着され、透水性を有する不織布又は織布を用いて形成された底板と、上記カバーと底板とで構成される空間に収容され、複数の多孔質の合成スポンジ片で構成され、該合成スポンジの孔には炭粉が担持され、該炭粉の孔には肥料を含浸されている人工培土と、該人工培土のスポンジ片の間に、植物の根が成長するスペースを与える複数の樹皮粉と、複数の多孔質の合成スポンジの小片で構成され、上記樹皮粉に混合されて上記樹皮粉を保持するホルダー小片とを備えたことを特徴とする。
【0010】
本発明の1つの特徴は炭粉を担持する複数の合成スポンジ片で人工培土を構成するようにした点にある。これにより、高価なセルローススポンジを用いる必要がなく、安価な合成スポンジで培土を製造できる。
【0011】
また、不透水性のフィルム製のカバーと不織布製又は織布製の底板で人工培土を収容するようにしたので、プランターが重くなることはなく、容易に運搬できる。
【0012】
さらに、植栽用プランターを合成スポンジ、樹皮粉、不織布又は織布、フィルムを使用して製造し、培土を使用していないので、家庭ごみとして廃棄することができる。
【0013】
また、合成スポンジの孔に、肥料を含浸させた炭粉を担持させるようにしたので、人工培土内に多量の水が流れ込んでも肥料が徐々に流れ出し、急激に流れてしまうことはなく、適量の肥料を植物に長期間にわたって安定して与えることができる。
【0014】
ここで、カバーを不透水性としたのは、多量の雨水がカバー内にしみ込むと人工培土の炭粉や肥料が流れてしまうからである。また、樹皮粉を使用するようにしたのは、複数の合成スポンジ片で人工培土を構成すると、植物の根は合成スポンジ片の内部に向かって成長することができず、隣接する合成スポンジ片の間の隙間は植物の根には大きすぎて植物の根が成長することができないからである。
【0015】
カバーは不透水性のフィルムで形成されていればよいが、カバー内部に雑草の種子がまぎれ込んだときに雑草が成長しにくいように不透水性・遮光性のフィルムを用いて形成されるのがよい。カバーのフィルムにはポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエステルフィルム、ナイロンフィルムなどを使用することができる。遮光性を付与する場合には遮光材料をコーティングすればよい。例えば、市販の包装用フィルムを使用することができる。
【0016】
また、ホルダー小片の孔には肥料を含浸させた炭粉を担持させるのがよい。
【0017】
人工培土のスポンジ片の平均外径は10mm以上25mm未満の範囲内の寸法がよく、ホルダー小片の平均外径は2mm以上10mm未満の範囲内の寸法とするのがよい。
【0018】
また、不織布製又は織布製の底板にはこれを補強するためにプラスチック製のフレームを設けるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る植栽用プランターの好ましい実施形態を示す概略斜視図である。
【図2】上記実施形態における人工培土、樹皮粉及びホルダー小片を示す概略斜視図である。
【図3】上記実施形態における植物の根の成長例を示す図である。
【図4】第2の実施形態を示す図である。
【図5】第3の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を図面に示す具体例に基づいて詳細に説明する。図1ないし図3は本発明に係る植栽用プランターの好ましい実施形態を示す図である。図において、植栽用プランターはカバー10を備え、カバー10は不透水性・遮光性のポリプロピレンフィルムを用いて製造されている。このカバー10は底面が開口されかつ上面が封鎖されたボックス形状をなし、上面には種子を蒔き又は植物を植えるための複数本のスリット10Bが形成されている。なお、カバー10のスリット10Bはテープ10Cなどによって封鎖しておくのがよい。
【0021】
カバー10の底面開口周縁には底板11が固着され、底板11は透水性を有する不織布を用いて製造されている。
【0022】
このカバー10と底板11とで構成される空間には人工培土12が収容されている。この人工培土12は平均外径が10mm以上25mm未満の範囲内の寸法の複数の多孔質の合成スポンジ片12Aによって構成され、合成スポンジ片12Aの孔には肥料を含浸した炭粉が担持されている。
【0023】
また、人工培土12のスポンジ片12Aの間には複数の杉の樹皮粉13とホルダー小片14が混合して収容され、樹皮粉13は植物20の根が成長するスペースを与えるようになっている。
【0024】
また、ホルダー小片14は平均外径が2mm以上10mm未満の範囲内の寸法の複数の多孔質の合成スポンジの小片で構成され、ホルダー小片14の孔には肥料を含浸した炭粉が担持され、又ホルダー小片14は樹皮粉13が沈降するのを阻止して樹皮粉13を保持するようになっている。
【0025】
植栽用プランターを使用する場合、プランターをベランダなどの適切な箇所に置き、スリット10Bのテープ10Cを剥がし、スリット10Bに植物20の種子を蒔き、適当な水分を与える。
【0026】
人工培土12には肥料が含浸され、樹皮粉13によって植物20の根20Aが成長するスペースを与えられているので、植物20は人工培土12のスポンジ片12Aの間の根20を成長させ、植物20も大きく成長することができる。
【0027】
また、人工培土12は合成スポンジ片12Aによって構成されているので、最初に適量の水分を与えると、人工培土12が保水し、何度も水を与える必要がない。
【0028】
さらに、肥料を炭孔の孔に含浸させているので、肥料が急激に流れだすことはなく、適量の肥料を長期にわたって安定して植物20に与えることができる。
【0029】
図4は第2の実施形態を示す。本例ではカバー10にスリット10Bに代え、穴10Aを形成している。なお、この穴10Aも使用前にはテープ10Cなどによって封鎖しておくのがよい。
【0030】
図5は第3の実施形態を示す。本例では不織布製の底板11をプラスチック製の格子状フレーム15に抱きつかせ、底板11を補強するようにしている。
【符号の説明】
【0031】
10 カバー
10A 穴
10B スリット
11 底板
12 人工培土
12A 合成スポンジ片
13 樹皮粉
14 ホルダー小片
20 植物
20A 根


【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物を育成するのに適した植栽プランターであって、
不透水性のフィルムを用いて形成され、底面が開口されかつ上面が封鎖されたボックス形状をなし、上面に種子を蒔き又は植物を植えるための穴10A又はスリット10Bが形成されたカバー10と、
該カバー10の底面開口周縁に固着され、透水性を有する不織布又は織布を用いて形成された底板11と、
上記カバー10と底板11とで構成される空間に収容され、複数の多孔質の合成スポンジ片で構成され、該合成スポンジ片の孔には炭粉が担持され、該炭粉の孔には肥料が含浸されている人工培土12と、
該人工培土12のスポンジ片の間に、植物の根が成長するスペースを与える複数の樹皮粉13と、
複数の多孔質の合成スポンジの小片で構成され、上記樹皮粉13に混合されて上記樹皮粉13を保持するホルダー小片14と、
を備えたことを特徴とする植栽用プランター。
【請求項2】
上記カバー10が不透水性・遮光性のフィルムを用いて形成されている請求項1記載の植栽用プランター。
【請求項3】
上記ホルダー小片14の孔には炭粉が担持され、該炭粉の孔には肥料が含浸されている請求項1記載の植栽用プランター。
【請求項4】
上記人工培土のスポンジ片の平均外径が10mm以上25mm未満の範囲内の寸法、上記ホルダー小片の平均外径が2mm以上10mm未満の範囲内の寸法である請求項1記載の植栽用プランター。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−157260(P2012−157260A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−17999(P2011−17999)
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【出願人】(511027208)
【Fターム(参考)】