説明

植物におけるワクチン及びモノクローナル抗体治療薬の高レベル迅速生産のためのDNAレプリコン系

植物ウイルスベクターはタンパク質の迅速生産において大きな可能性を有しているが、単純ではない。ウイルス様粒子(VLP)ワクチン及びモノクローナル抗体(mAb)を含む、オリゴマータンパク質複合体の高収率かつ迅速な生産のためのジェミニウイルスベースの系が本明細書に記載される。特に、ベンサミアナタバコの葉における一時的発現のための2つの非競合レプリコンを含有する単一のベクターが記載される。これらのサブユニットタンパク質の機能的オリゴマー構造(VLP又は完全長mAb)への正確な集合も記載される。この系は、非競合ウイルスの必要性を解消することによって植物一時的発現技術を発展させ、それにより多重サブユニットタンパク質複合体を生産するこの技術の現実的な商業利用を増進する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概して、植物の遺伝子工学の分野に関する。特に、本発明は、対象となる産物を発現させる組み換えDNA技法を用いた植物の形質転換に関する。
【0002】
本願は2008年8月27日付で出願された米国仮出願第61/092,318号(その内容全体が参照により本明細書中に援用される)に対する優先権の利益を主張するものである。
【0003】
本発明は、米国立衛生研究所によって与えられた助成金番号5U01AI061253及びU19−AI−0663332の下で政府の支援を受けてなされた。政府は本発明において一定の権利を有する。
【背景技術】
【0004】
近年、医薬用タンパク質を作り出すためのトランスジェニック植物の使用に大きな関心が払われている。植物においてウイルス抗原及び細菌性抗原、並びにワクチン、並びに多様な形態の抗体を含む様々な化合物を発現させることに成功している(非特許文献1、非特許文献2、非特許文献3に概説される)。植物は、大量の産物を効率的かつ持続的に産生することができ、かつ、条件によってでは製造コストにおいてかなりの利点を有し得るため、タンパク質工場として魅力的である(非特許文献4、非特許文献5)。「分子農業」によって農業規模で治療用タンパク質薬剤を生産する可能性は非常に魅力的である。系の拡張性に加え、植物の大きな利点の1つは哺乳動物細胞と同様の細胞内膜系及び分泌経路を有することである(非特許文献6)。これにより、タンパク質は概して適切に翻訳後修飾され、効率的に構築される。これらのコスト及び規模による利点により、物製造医薬品(plant-made pharmaceuticals)(PMP)は、商業的な医薬品生産及び発展途上国向けの製品の製造の両方にとって非常に有望なものとされている。
【0005】
医薬用タンパク質は、一時的なウイルスベースの発現系を用いて(非特許文献7、非特許文献8)、又は安定に形質転換される植物を用いて(非特許文献9、非特許文献10、非特許文献11)生産されてきた。後者の戦略については、安定なトランスジェニック植物を作り出すための期間が長い(数ヶ月から数年)ことが、前臨床初期研究のためにタンパク質試料を得る上で懸念されている。また、高レベルのタンパク質蓄積を推進する強い調節要素の欠如、及び植物ゲノムにおける導入遺伝子組み込みのランダム性に関連する位置効果が、依然として安定なトランスジェニック技術にとっての課題となっている。対照的に、生産速度に重点を置いた一時的な系によって、前臨床試験において標的医薬用タンパク質の機能を試験するための初期研究材料を得る際の困難性が解決されている。例えば、「脱構築した(deconstructed)」タバコモザイクウイルス(TMV)ベースの三成分発現系(非特許文献12)によって、その後の免疫化及び抗原投与の研究のためのワクチン候補の迅速かつ高収率の生産が可能となる(非特許文献13、非特許文献14)。近年では、TMV及びジャガイモウイルスX(PVX)に由来する非競合ウイルスベクターを用いて、完全長モノクローナル抗体(mAb)を葉生体重1g当たり0.5mgのmAbという高いレベルで迅速に産生させることができることが報告されている(非特許文献15)。しかしながら、重鎖分子及び軽鎖分子の両方の同時発現に必要とされる合計で5つの構築物モジュール(1つのサブユニット当たり2つのモジュール+インテグラーゼ)(非特許文献15)の複雑により、この系の実際の商業利用にはさらなる課題があるだろう。さらに、多成分ウイルス様粒子(VLP)(非特許文献16、非特許文献17)又は分泌IgA抗体等の幾つかの重要な医薬用複合体の生産及び集合に必要とされる、同じ細胞における3つ以上の異なるサブユニットタンパク質の効率的な同時発現を可能にするためには、既存のTMV/PVX発現系に適合する第3又はそれ以上のウイルスを発見するという、依然として困難な課題が残っている。現時点では、3つ以上のサブユニットから構成されるヘテロオリゴマータンパク質の効率的な発現に利用可能な植物の一時的発現系は、未だ存在しない。したがって、最低限の数のベクターから構成されているが、それでも複数のサブユニットタンパク質の高レベルの発現を可能にする改良された一時的発現系を開発する必要がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Ma et al., 2005
【非特許文献2】Stoger et al., 2005
【非特許文献3】Ma et al., 2003
【非特許文献4】Hood et al., 2001
【非特許文献5】Giddings, 2001
【非特許文献6】Vitale and Pedrazzini, 2005
【非特許文献7】Canizares et al., 2005
【非特許文献8】Yusibov et al., 2006
【非特許文献9】Giddings et al., 2000
【非特許文献10】Floss et al., 2007
【非特許文献11】Twyman et al., 2005
【非特許文献12】Marillonnet et al., 2004
【非特許文献13】Santi et al., 2006
【非特許文献14】Huang et al., 2006
【非特許文献15】Giritch et al., 2006
【非特許文献16】Latham and Galarza, 2001
【非特許文献17】Pushko et al., 2005
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本開示は、非競合ウイルスを同定するという難題及び複数の発現モジュールの重感染の必要性を解消し、2.3kbより長い遺伝子をレプリコンに組み入れる可能性をもたらすことによって、当該技術分野における欠陥を克服し、それにより多重サブユニットタンパク質複合体を生産するこの技術の現実的な商業利用を促進するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
或る特定の態様では、本発明は、植物細胞において産物を産生させる方法であって、
プロモーター及び対象となる産物をコードする領域を含む第1の核酸セグメントを得ることであって、該対象となる産物をコードする領域のいずれかの側に、ジェミニウイルスゲノムの長い遺伝子間領域(LIR)の少なくとも一部が隣接する、第1の核酸セグメントを得ること、
プロモーター及びジェミニウイルスゲノムのRep/RepAタンパク質をコードする核酸を含む第2の核酸セグメントを得ること、
前記第1の核酸セグメント及び前記第2の核酸セグメントを植物細胞に導入すること、並びに
前記植物細胞又はその任意の世代の子孫において前記対象となる産物を産生させることを含む、方法を提供する。本明細書中で使用される場合、「ジェミニウイルスゲノムの長い遺伝子間領域(LIR)」とは、ジェミニウイルスRepタンパク質による切り出し及び複製を媒介することが可能なrep結合部位を含有する、長い遺伝子間領域(LIR)の領域を指す。幾つかの実施の形態では、前記第1の核酸セグメントはジェミニウイルスゲノムの短い遺伝子間領域(SIR)をさらに含み得る。本明細書中で使用される場合、「ジェミニウイルスゲノムの短い遺伝子間領域(SIR)」とは、相補鎖(マストレウイルスの短いIR(SIR))を指す。対象となる産物を含む前記核酸セグメントは、レプリコンに組み込まれることができる任意の長さであり得る。或る特定の実施の形態では、対象となる産物を含む前記核酸セグメントは0.1kb〜8kbであり得る。特定の実施の形態では、対象となる産物を含む前記核酸セグメントは2.0kb、2.5kb、3.0kb、3.5kb、4.0kb、4.5kb、5.0kb、5.5kb、6.0kb、6.5kb、7.0kb又は7.5kb超である。特定の実施の形態では、対象となる産物を含む前記核酸セグメントは2.87kbである。幾つかの実施の形態では、該方法は、前記対象となる産物を前記植物細胞又はその任意の世代の子孫から単離することをさらに含み得る。
【0009】
幾つかの実施の形態では、前記第1の核酸セグメント及び前記第2の核酸セグメントは、それぞれ第1及び第2のベクターに含まれる。かかる実施の形態では、前記第1及び第2のベクターを前記植物細胞に同時に又は別個に導入してもよい。他の実施の形態では、前記第1の核酸セグメント及び前記第2の核酸セグメントは、単一のベクターに含まれる。
【0010】
特定の実施の形態では、該方法は、第3の核酸セグメントを得ること、及び該第3の核酸セグメントを前記植物細胞にトランスフェクトすることをさらに含み得る。幾つかの実施の形態では、前記第3の核酸セグメントはプロモーター、ジェミニウイルスゲノムのLIRの少なくとも一部、及び対象となる産物をコードする領域を含む。特定の実施の形態では、前記第3の核酸セグメントは、プロモーター及び遺伝子サイレンシング阻害因子を含む。一つの実施の形態では、前記遺伝子サイレンシング阻害因子は、トマトブッシースタントウイルスに由来する遺伝子サイレンシング阻害因子P19である。該方法は、前記対象となる産物を前記植物細胞又はその任意の世代の子孫から単離することをさらに含み得る。
【0011】
幾つかの実施の形態では、前記第1の核酸セグメント、前記第2の核酸セグメント及び前記第3の核酸セグメントは、それぞれ第1、第2及び第3のベクターに含まれる。特定の実施の形態では、前記第1、第2及び第3のベクターを前記植物細胞に同時に又は別個に導入する。他の実施の形態では、前記第1の核酸セグメント、前記第2の核酸セグメント及び前記第3の核酸セグメントが、単一のベクターに含まれる。
【0012】
特定の実施の形態では、該方法は、
プロモーター及び対象となる産物をコードする領域を含む第3の核酸セグメントを得ることであって、該対象となる産物をコードする領域のいずれかの側に、ジェミニウイルスゲノムの長い遺伝子間領域(LIR)の少なくとも一部が隣接する、第3の核酸セグメントを得ること、
プロモーター及び遺伝子サイレンシング阻害因子を含む第4の核酸セグメントを得ること、並びに
前記第3及び第4の核酸セグメントを前記植物細胞にトランスフェクトすることをさらに含む。該方法は、前記対象となる産物を前記植物細胞又はその任意の世代の子孫から単離することをさらに含み得る。
【0013】
幾つかの実施の形態では、前記第1の核酸セグメント、前記第2の核酸セグメント、前記第3の核酸セグメント及び前記第4の核酸セグメントは、それぞれ第1、第2、第3及び第4のベクターに含まれる。かかる実施の形態では、前記第1、第2、第3及び第4のベクターを前記植物細胞に同時に又は別個に導入する。他の実施の形態では、前記第1の核酸セグメント、前記第2の核酸セグメント、前記第3の核酸セグメント及び前記第4の核酸セグメントは、単一のベクターに含まれる。
【0014】
前記対象となる産物が核酸、タンパク質、ポリペプチド又はペプチドであり得ることが考えられる。或る特定の実施の形態では、前記核酸はmRNAである。幾つかの実施の形態では、前記タンパク質、ポリペプチド又はペプチドが動物に導入された場合に免疫応答を惹起することが考えられる。
【0015】
前記対象となる産物が抗原であり得ることが特に考えられる。幾つかの実施の形態では、前記抗原は病原体又は病変細胞に由来するものである。或る特定の実施の形態では、前記抗原はウイルス抗原、細菌性抗原、真菌抗原又は癌細胞由来抗原である。特定の実施の形態では、前記抗原はB型肝炎コア抗原(HBc)又はノーウォークウイルスカプシドタンパク質(NVCP)である。幾つかの実施の形態では、前記抗原は動物に導入された場合に免疫応答を惹起する。前記免疫応答が病原体又は疾患を防ぐものであり得ることが考えられる。
【0016】
前記対象となる産物が抗体であり得ることがさらに考えられる。幾つかの実施の形態では、前記抗体はモノクローナル抗体である。特定の実施の形態では、前記モノクローナル抗体はエボラウイルスGP1を防ぐもの(6D8)である。
【0017】
幾つかの実施の形態では、該方法は、前記第1及び第2の核酸を、植物細胞又はその任意の世代の子孫に取り込ませることをさらに含む。さらなる実施の形態では、前記植物細胞又はその任意の世代の子孫は、前記第1及び第2の核酸によって安定に形質転換される。またさらなる実施の形態では、前記第1及び第2の核酸は、前記植物細胞又はその任意の世代の子孫中のプラスミドに含まれる。
【0018】
さらなる実施の形態では、本発明は、ベクター系であって、
プロモーター及び対象となる産物をコードする領域を含む第1の核酸セグメントであって、該対象となる産物をコードする領域のいずれかの側に、ジェミニウイルスゲノムの長い遺伝子間領域(LIR)の少なくとも一部が隣接する、第1の核酸セグメント、並びに
プロモーター及びジェミニウイルスゲノムのRep/RepAタンパク質をコードする核酸を含む第2の核酸セグメントを含む、ベクター系を提供する。
【0019】
またさらなる実施の形態では、本発明は、植物であって、
プロモーター及び対象となる産物をコードする領域を含む第1の核酸セグメントであって、該対象となる産物をコードする領域のいずれかの側に、ジェミニウイルスゲノムの長い遺伝子間領域(LIR)の少なくとも一部が隣接する、第1の核酸セグメント、並びに
プロモーター及びジェミニウイルスゲノムのRep/RepAタンパク質をコードする核酸を含む第2の核酸セグメントを含む、植物を提供する。
【0020】
本明細書中で論考される任意の実施の形態を本発明の任意の方法又は組成物に対して実施することができ、逆もまた同様であると考えられる。さらに、本発明の組成物を使用して本発明の方法を達成することができる。
【0021】
特許請求の範囲及び/又は明細書中での「a」又は「an」という語の使用は、「1つの」を意味し得るが、「1つ又は複数の」、「少なくとも1つの」及び「1つ又は2つ以上の」という意味とも一致する。
【0022】
特許請求の範囲及び/又は明細書中に見られる「1つ又は複数の」という表現は、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10つ又はそれ以上として定義される。
【0023】
本願全体を通して、「約」及び「およそ」という用語は、値がその値を決定するために利用される装置、方法に関する固有の誤差変動、又は被験体間に存在する変動を含むことを示している。非限定的な一つの実施の形態では、この用語は10%以内、好ましくは5%以内、より好ましくは1%以内、最も好ましくは0.5%以内であると定義される。
【0024】
本開示は選択肢のみと「及び/又は」とを指す定義を支持するものであるが、特許請求の範囲における「又は」という用語の使用は、選択肢のみを指すこと又は選択肢が相互に排他的であることが明示されている場合を除き、「及び/又は」を意味するように使用される。
【0025】
本明細書及び特許請求の範囲において使用される場合、「含む(comprising)」(並びに「含む(comprising)」の任意の形態、例えば「含む(comprise)」及び「含む(comprises)」等)、「有する(having)」(並びに「有する(having)」の任意の形態、例えば「有する(have)」及び「有する(has)」等)、「含む(including)」(並びに「含む(including)」の任意の形態、例えば「含む(includes)」及び「含む(include)」等)、又は「含有する(containing)」(並びに「含有する(containing)」の任意の形態、例えば「含有する(contains)」及び「含有する(contain)」等)という語は、包括的又は非限定的であり、列挙されていない付加的な要素又は方法工程を排除するものではない。
【0026】
本発明の他の目的、特徴及び利点は、以下の詳細な説明から明らかになる。しかしながら、この詳細な説明から、本発明の精神及び範囲内にある様々な変更形態及び修正形態が当業者に明らかになるため、詳細な説明及び具体的な実施例は本発明の具体的な実施形態を示しているが、例示目的でのみ与えられていることを理解すべきである。
【0027】
本発明は、これらの図面の1つ又は複数を、本明細書に提示された具体的な実施形態の詳細な説明と組み合わせて参照することによって、より良く理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本研究において使用されるベクターのT−DNA領域の概略図である。35S/TEV 5’、タバコエッチウイルス5’UTRを有するCaMV 35Sプロモーター;35S/TMV 5’、タバコモザイクウイルス5’ UTRを有するCaMV 35Sプロモーター;VSP 3’、ダイズvspB遺伝子3’エレメント;rbcS 3’、エンドウマメrbcS遺伝子3’エレメント;NPT II、カナマイシン耐性に関するnptII遺伝子をコードする発現カセット;LIR、BeYDVゲノムの長い遺伝子間領域;SIR、BeYDVゲノムの短い遺伝子間領域;C1/C2、複製開始タンパク質(Rep)及びRepAをコードするBeYDVのORF C1及びC2;ΔC1/C2、Repのみをコードするイントロン欠失C1及びC2;LB及びRB、T−DNA領域の左境界配列及び右境界配列。矢印はC1/C2遺伝子の転写の方向を示す。
【図2】植物の葉におけるGFP及び/又はDsRed発現の可視化を示す図である。ベンサミアナタバコ(N. benthamiana)の葉に、指定の発現ベクターを有する単一のアグロバクテリウム(Agrobacterium)株又は株の混合物を浸潤させた。浸潤させた葉を、浸潤後5日目(dpi)に、材料及び方法の項に記載される手持ち式UVランプを用いて検査した。
【図3A】植物の葉におけるHBcの一時的発現を示す図である。
【図3B】種々のベクターの組み合わせによるHBc発現の定量化を示す図である。
【図3C】浸潤させた葉に由来する植物DNAのサザンブロット法によって示されたレプリコン形成を示す図である。
【図3D】浸潤させた葉に由来する植物RNAのノーザンブロット分析を示す図である。
【図4】植物によって発現されたHBcの特性化を示す図である。(図4A)浸潤させたベンサミアナタバコの葉に由来するHBcのウエスタンブロット分析。タンパク質試料を12%SDS−PAGE上で泳動し(run)、PVDFメンブレンにブロットした。次いで、メンブレンをHBcのアミノ酸残基130〜140を認識するマウスモノクローナル抗HBcでプローブした。(図4B)ショ糖勾配分析。BYHBc/REP110/P19を浸潤させたベンサミアナタバコの葉からの抽出物及び大腸菌由来HBc(e−HBc)を、材料及び方法の項に記載されるように、10%から50%までのショ糖勾配上に重層し、遠心分離に供した。上から下に向かって10個の画分(各々0.5ml)を取り、HBc ELISAによってアッセイした。(図4C)ウサギポリクローナル抗HBcでプローブしたショ糖勾配画分のドットブロット。(図4D)及び(図4E)電子顕微鏡検査。部分的に精製したHBcを0.5%酢酸ウラニルでネガティブ染色し、透過電子顕微鏡検査によって可視化した。バー=50nm。
【図5】レプリコンベクターを用いたNVCPの一時的発現を示す図である。(図5A)種々のベクターの組み合わせによるNVCP発現の経時変化。報告したデータは、4つの独立して浸潤させた試料からの平均±標準偏差である。(図5B)NVCP発現についてのウエスタンブロット。レーン1、それぞれ昆虫由来のNVCP標準;レーン2、レーン3及びレーン4は、それぞれ非浸潤の、BYGFPを浸潤させた及びBYNVCPを浸潤させた葉の抽出物である。(図5C)ポリクローナルELISAアッセイによって分析された、昆虫由来の及び植物によって発現されたNVCPのショ糖勾配プロファイル。
【図6】GFP及びDsRedを発現する葉肉細胞プロトプラストの蛍光顕微鏡検査法を示す図である。(図6A)及び(図6B)BYGFP/REP110/P19又はBYDsRed/REP110/P19を別個に浸潤させた葉に由来するプロトプラストの混合物。(図6C)及び(図6D)BYGFP/BYDsRed/REP110/P19を浸潤させた葉に由来するプロトプラスト。(図6E)及び(図6F)BYGFPDsRed.Rを浸潤させた葉に由来するプロトプラスト。図6A、図6C及び図6EはGFPフィルターを用いて見たものであり、図6B、図6D及び図6FはDsRedフィルターを用いて見たものである。
【図7】エボラウイルスgp1に対する植物由来防御mAb(6D8)の特性化を示す図である。(図7A)6D8の発現。ベンサミアナタバコの葉に、軽鎖(pBY−L(6D8))又は重鎖(pBY−H(6D8))、REP110及びP19に対する別個のベクターを同時浸潤させるか、又は軽鎖、重鎖及びRepに対するレプリコンを有する単一のベクター(pBY−HL(6D8).R)を浸潤させた。葉に陰性対照としてmRNAサイレンシング阻害因子P19をコードする構築物も浸潤させた。タンパク質抽出物を、6D8 mAbの集合形態を検出するELISAで分析した(方法の項を参照されたい)。(図7B)還元条件下での植物由来6D8のウエスタンブロット分析。タンパク質試料を、変性及び還元条件下で4%から12%のSDS−PAGE勾配ゲル上で分離し、PVDFメンブレンにブロットした。メンブレンを、重鎖(図7B1)又は軽鎖(図7B2)を検出するために、ヤギ抗ヒトγ鎖抗体又はヤギ抗ヒトκ鎖抗体と共にインキュベートした。レーン1、非浸潤の葉を用いて抽出されたタンパク質試料;レーン2、参照標準としてのヒトIgG;レーン3、軽鎖(pBY−L(6D8))及び重鎖(pBY−H(6D8))に対する別個のレプリコンを同時浸潤させた葉から抽出されたタンパク質試料;レーン4、単一のベクターpBY−HL(6D8).Rを浸潤させた葉から抽出されたタンパク質。(図7C)非還元条件下でのウエスタンブロット分析。タンパク質試料を、非還元条件下で4%から12%までのSDS−PAGE勾配ゲル上で分離した。次いで、メンブレンをヤギ抗ヒトκ鎖特異的抗体と共にインキュベートした。レーン1、非浸潤の葉を用いて抽出されたタンパク質試料;レーン2、参照標準としてのヒトIgG;レーン3、軽鎖(pBY−L(6D8))及び重鎖(pBY−H(6D8))に対する別個のレプリコンを同時浸潤させた葉から抽出されたタンパク質試料。H、2つの重鎖及び2つの軽鎖を有する完全に集合したIgGヘテロ四量体。HL、集合した2つの重鎖及び1つの軽鎖を有するヘテロ三量体;HL、1つの軽鎖及び重鎖を有するヘテロ二量体;L、2つの軽鎖を有するホモ二量体。
【図8】単一のレプリコンベクターを用いたHBcの発現を示す図である。BYHBc/REP110/P19、BYHBc.R、又はBYHBc.R/P19を浸潤させたベンサミアナタバコの葉からの抽出物について、ポリクローナルELISAによってHBc発現を分析した。報告したデータは4つの独立して浸潤させた試料からの平均±標準偏差である。
【図9】2つのレプリコンの非競合的形成のサザンブロット分析を示す図である。指定のベクターの組み合わせを浸潤させた葉に由来する植物DNAを、XhoIで消化し、1%アガロースゲル上で泳動し(図9A)、メンブレンにブロットし、それぞれGFPプローブ(図9B)又はDsRedプローブ(図9C)を用いて検出した。GFP特異的プローブ又はDsRed特異的プローブの調製は、材料及び方法の項に記載されている。
【図10】単一のベクターによる2つの別個のレプリコンの形成を示す図である。指定の様々なベクターの組み合わせを浸潤させた葉に由来する植物DNAを、XhoIで消化し、1%アガロースゲル上で泳動し(図10A)、メンブレンにブロットし、それぞれGFPプローブ(図10B)又はDsRedプローブ(図10C)を用いて検出した。GFP特異的プローブ又はDsRed特異的プローブの調製は、材料及び方法の項に記載されている。
【図11】還元SDS−PAGEによって分析し、クマシーブルーで染色した葉中のpBYR−H2gpKDEL−K3発現産物を示す図である。レーン3、レーン4及びレーン5は、硫酸アンモニウム溶液(それぞれ0%〜35%、35%〜60%及び60%〜100%の飽和溶液)によって沈殿させた葉タンパク質を示す。35%〜60%の画分をプロテインGアフィニティークロマトグラフィーに供した:レーン6、通過画分(非結合);レーン7、レーン8、レーン9、レーン10は結合した材料の連続溶出物である。
【図12】還元SDS−PAGE及びウエスタンブロットによって分析した、プロテインGアフィニティー精製した葉抽出物を示す図である。染色、クマシーブルーで染色したタンパク質;抗γ、抗ヒトγ鎖でプローブしたウエスタンブロット;抗κ、抗ヒトκ鎖でプローブしたウエスタンブロット;抗6D8、抗GP1(6D8マウスモノクローナル抗体)でプローブしたウエスタンブロット。
【発明を実施するための形態】
【0029】
Arntzen et al. (2005)において論考されるように、植物における抗原の発現に対して、安定なトランスジェニック遺伝子発現及びウイルスベクターによる一時的発現という2つの優越した(dominate)戦略があった。本明細書中で提示したもののような一時的発現系は、初期特性化のための材料を提供する上で迅速な解決をもたらすが、安定なトランスジェニック植物は極めて大量の植物製造医薬品(PMP)生産が必要とされる場合の最も有望な拡張性を秘めている。安定な系及び一時的な系のいずれにおいても、mRNA蓄積がタンパク質発現における障害となっている。のみならず、安定なトランスジェニック技術による発現は、「位置効果」(mRNAレベルが染色体において導入遺伝子を挿入する位置に左右される)により、さらに複雑となる(Matzke and Matzke, 1998)。このため、高度に発現するトランスジェニック系統の発見には統計作業が必要となっており、数百又はさらには数千もの植物を、高レベルで発現する外れ値を特定するためにスクリーニングする必要がある。
【0030】
本発明は、ウイルスレプリコンベースのベクター一時的発現系、及び植物におけるVLPワクチン及びmAbを含む薬学的に重要なオリゴマータンパク質複合体の高収率迅速生産でのその利用を提供する。初めに、1つのレプリコンベクター、1つのRep/RepA供給ベクター及び1つのサイレンシング抑制ベクターから構成される三成分ベクター系が、極めて効率的なレプリコン形成及び高レベルの標的mRNA及びタンパク質の蓄積を可能にすることを実証した。次に、このレプリコン系が非競合的であり、2つのサブユニットタンパク質の同時発現を可能にすることを示した。より重要なことには、複数のレプリコンカセットを含有する単一のベクターを設計し、これは2つのオリゴマータンパク質分子の発現を誘導する上で三成分系と同じくらい効率的であることを見出した。このレプリコンベクターを用いると、2つのVLPワクチン抗原(B型肝炎コア抗原(HBc)及びノーウォークウイルスカプシドタンパク質(NVCP))と、エボラウイルスGP1に対する1つの防御mAb(6D8)(Wilson et al., 2000)との高レベルの発現及び正確な集合が、ベンサミアナタバコ(Nicotiana benthamiana)の葉の浸潤後4日〜7日(dpi)以内に得られた。したがって、この系は最も改良された植物一時的発現技術であり、非競合ウイルスを同定するという難題及び複数の発現モジュールの重感染の必要性を解消し、それにより多重サブユニットタンパク質複合体を生産するこの技術の現実的な商業利用を増進するものである。
【0031】
I.ジェミニウイルス
ジェミニウイルスは、環状二本鎖DNA中間体を経て複製される環状一本鎖(ss)DNAゲノムを有する植物DNAウイルスの大きく多様なファミリーである。Hanley-Bowdoin et al. (1999)、Lazarowitz (1992)、Timmermans et al. (1994)を参照されたい。
【0032】
特に、ジェミニウイルスは、グラム陽性菌のssDNAプラスミドによって用いられるものと類似のローリングサークル機構を介して複製する。複製に必要とされる唯一の外因性タンパク質は、ジェミニウイルスレプリカーゼ遺伝子によってコードされるウイルス複製開始(Rep)タンパク質である。この多機能タンパク質は、ウイルスの複製起点において見られる保存されたステムループ構造で、遺伝子間ループ配列中に見られる保存されたノナヌクレオチドモチーフ(TAATATTA↓C)内にニックを誘発することによって複製を開始する。ウイルスゲノムの転写は、初期の遺伝子間(IR)領域内での転写と双方向性である。Repはまた、植物細胞周期の制御に関わり、おそらくはDNA複製に関与する宿主遺伝子の調節にも関わる機能を有する(Palmer et al., 1997bによって概説される)。Repタンパク質はトランスに作用することができる、すなわちウイルスレプリコン自体によって発現される必要はなく、別の染色体外ウイルスレプリコンから、又はさらには核導入遺伝子から供給される場合もある(Hanley-Bowdoin et al., 1990)。ウイルス複製に関するシス要件は、ローリングサークル複製(マストレウイルスの長い遺伝子間領域(LIR)、又は他のジェミニウイルスの遺伝子間領域)及び相補鎖の合成(マストレウイルスの短いIR(SIR))の開始に不可欠な配列を含有するウイルス遺伝子間領域(regioin/s)(IR)である。
【0033】
ジェミニウイルスのRepタンパク質に固有のニッキング機能(Laufs et al., 1995a、Laufs et al., 1995b)は、LIRのタンデムリピートの間にクローニングした組み換えウイルスDNAの、染色体に組み込まれた部位からの複製放出を可能にする(Hayes et al., 1988、Grimsley et al., 1987、Kanevski et al., 1992)。次いで、DNAはエピソームとして核内で複製される。ジェミニウイルスレプリコンのこれらの特性から安定なトランスジェニックベクターの開発が可能となるが、この場合、ジェミニウイルスレプリコンのエピソーム複製性及び高コピー数によって導入遺伝子発現の位置効果が失われ、安定な形質転換植物における高い標的タンパク質発現レベルが保証される。以前の研究から、安定なトランスジェニックジャガイモにおいて誘導プロモーターによって誘導されたRepと同時発現させた、これまでのバージョンのインゲン黄化萎縮ウイルス由来ベクターが、mRNA発現において80倍の増大をもたらし、トランスジェニックタンパク質発現において10倍の増大をもたらしたことが実際に示された(Zhang and Mason, 2006)。この証拠によって、大規模PMP生産のための高発現の安定なトランスジェニックベクターを開発するために、現在の改良されたバージョンのレプリコンを用いる際の成功の可能性のさらなる根拠となりうる。一時的及び安定なトランスジェニック技術の両方における改良されたレプリコンベクターの利用はしたがって、医薬品候補の迅速な評価及び商業生産のための拡張可能なプラットフォームを可能にする。
【0034】
II.核酸
本発明は、プロモーター及び対象となる産物をコードする領域を含む第1の核酸セグメントであって、該対象となる産物をコードする領域のいずれかの側に、ジェミニウイルスゲノムの長い遺伝子間領域(LIR)の少なくとも一部が隣接する、第1の核酸セグメント、並びにプロモーター及びジェミニウイルスゲノムのRep/RepAタンパク質をコードする核酸を含む第2の核酸セグメントを含む1つ又は複数のベクターを含む植物発現ベクターに関する。ベクターはまた、上に記載されるものを含むが、それらに限定されない様々な付加的成分を含み得る。
【0035】
「核酸」という用語は当該技術分野において既知である。本願において使用される場合、「ポリヌクレオチド」という用語は、組み換え型であるか、又は全ゲノム核酸から単離された核酸分子を指す。「ポリヌクレオチド」という用語には、オリゴヌクレオチド(長さが100残基以下の核酸)、例えばプラスミド、コスミド、ファージ、ウイルス等を含む組み換えベクターが含まれる。或る特定の態様では、ポリヌクレオチドは、その天然の遺伝子又はタンパク質コード配列から実質的に単離された調節配列を含む。ポリヌクレオチドはRNA、DNA、それらの類似体又はそれらの組み合わせであり得る。
【0036】
あらゆるタイプの遺伝子を本発明のベクター系によって発現させることができる。この点で、「遺伝子」、「ポリヌクレオチド」又は「核酸」という用語は、タンパク質、ポリペプチド又はペプチド(正確な転写、翻訳後修飾又は局在化に必要とされる任意の配列を含む)をコードする核酸を指すために使用される。当業者によって理解されるように、この用語は、タンパク質、ポリペプチド、ドメイン、ペプチド、融合タンパク質及び変異体を発現するか、又は発現するのに適している可能性があるゲノム配列、発現カセット、cDNA配列及びより小さい人工核酸セグメントを包含する。ポリペプチドの全部又は一部をコードする核酸は、以下の長さのかかるポリペプチドの全部又は一部をコードする連続した核酸配列を含有し得る:10個、20個、30個、40個、50個、60個、70個、80個、90個、100個、110個、120個、130個、140個、150個、160個、170個、180個、190個、200個、210個、220個、230個、240個、250個、260個、270個、280個、290個、300個、310個、320個、330個、340個、350個、360個、370個、380個、390個、400個、410個、420個、430個、440個、441個、450個、460個、470個、480個、490個、500個、510個、520個、530個、540個、550個、560個、570個、580個、590個、600個、610個、620個、630個、640個、650個、660個、670個、680個、690個、700個、710個、720個、730個、740個、750個、760個、770個、780個、790個、800個、810個、820個、830個、840個、850個、860個、870個、880個、890個、900個、910個、920個、930個、940個、950個、960個、970個、980個、990個、1000個、1010個、1020個、1030個、1040個、1050個、1060個、1070個、1080個、1090個、1095個、1100個、1500個、2000個、2500個、3000個、3500個、4000個、4500個、5000個、5500個、6000個、6500個、7000個、7500個、8000個、9000個、10000個又はそれ以上の本発明のポリペプチドのヌクレオチド、ヌクレオシド又は塩基対。特定のポリペプチドが、わずかに異なる核酸配列を有するにもかかわらず、同じ又は実質的に同様のタンパク質をコードする、変異を含有する核酸によってコードされ得ることも考えられる。
【0037】
本発明において使用される核酸セグメントは、コード配列自体の長さに関わらず、プロモーター、ポリアデニル化シグナル、付加的な制限酵素部位、多重クローニング部位、他のコードセグメント等といった他の核酸配列と組み合わせて、それらの全体の長さが大幅に異なるようにしてもよい。したがって、ほとんど全ての長さの核酸断片を利用することができるが、全長は好ましくは作製の容易さ及び意図される組み換え核酸プロトコルにおける使用によって限定されることが考えられる。場合によっては、核酸配列は、例えばポリペプチドの精製、輸送、分泌、翻訳後修飾を可能にするため、又は標的化若しくは効力等の治療的有用性のために、付加的な異種コード配列を有するポリペプチド配列をコードし得る。上記で論考されるように、タグ又は他の異種ポリペプチドを、修飾ポリペプチドをコードする配列に付加してもよく、ここで「異種」とは修飾ポリペプチドとは同じでないポリペプチドを指す。
【0038】
本発明の核酸構築物が、任意の供給源からの完全長ポリペプチドをコードし得るか、又はコード領域の転写産物が切断バージョンを表すように切断バージョンのポリペプチドをコードし得ることが考えられる。切断転写産物は次に切断タンパク質に翻訳され得る。代替的には、核酸配列は、例えばポリペプチドの精製、輸送、分泌、翻訳後修飾を可能にするため、又は標的化若しくは効力等の治療的有用性のために、付加的な異種コード配列を有する完全長ポリペプチド配列をコードし得る。上記で論考されるように、タグ又は他の異種ポリペプチドを、修飾ポリペプチドをコードする配列に付加してもよく、ここで「異種」とは修飾ポリペプチドとは同じでないポリペプチドを指す。
【0039】
非限定的な例では、対象となる産物等の特定の遺伝子と同一又は相補的なヌクレオチドの連続ストレッチを含む1つ又は複数の核酸構築物を調製してもよい。核酸構築物は少なくとも20ヌクレオチド長、30ヌクレオチド長、40ヌクレオチド長、50ヌクレオチド長、60ヌクレオチド長、70ヌクレオチド長、80ヌクレオチド長、90ヌクレオチド長、100ヌクレオチド長、110ヌクレオチド長、120ヌクレオチド長、130ヌクレオチド長、140ヌクレオチド長、150ヌクレオチド長、160ヌクレオチド長、170ヌクレオチド長、180ヌクレオチド長、190ヌクレオチド長、200ヌクレオチド長、250ヌクレオチド長、300ヌクレオチド長、400ヌクレオチド長、500ヌクレオチド長、600ヌクレオチド長、700ヌクレオチド長、800ヌクレオチド長、900ヌクレオチド長、1000ヌクレオチド長、2000ヌクレオチド長、3000ヌクレオチド長、4000ヌクレオチド長、5000ヌクレオチド長、6000ヌクレオチド長、7000ヌクレオチド長、8000ヌクレオチド長、9000ヌクレオチド長、10000ヌクレオチド長、15000ヌクレオチド長、20000ヌクレオチド長、30000ヌクレオチド長、50000ヌクレオチド長、100000ヌクレオチド長、250000ヌクレオチド長、500000ヌクレオチド長、750000ヌクレオチド長〜少なくとも1000000ヌクレオチド長、並びに酵母人工染色体等の核酸構築物の出現が当業者に既知であると仮定すると、染色体サイズまでのより大きなサイズの構築物(中間の長さ及び中間の範囲の全てを含む)であり得る。「中間の長さ」及び「中間の範囲」は本明細書中で使用される場合、引用の値を含むか、又は引用の値の間の任意の長さ又は範囲(すなわち、かかる値を含み、かかる値の間の全ての整数)を意味することが容易に理解される。
【0040】
本発明において使用されるDNAセグメントは、生物学的に機能的な等価の修飾ポリペプチド及びペプチドを包含する。核酸配列及びこのようにしてコードされるタンパク質内に天然に生じることが知られる、かかる配列はコドンの冗長性及び機能的等価性の結果として生じる。代替的には、機能的に等価なタンパク質又はペプチドは、組み換えDNA技術を適用することによって作り出すことができるが、ここで、タンパク質構造における変化は、交換されるアミノ酸の特性の考察に基づいて操作することができる。例えばタンパク質の抗原性の向上を生じさせるため、タンパク質が与えられる被験体へのin vivoでのタンパク質の毒性効果を減少させるため、又はタンパク質を含む任意の治療の効力を増大させるために、人工的に設計される変化を、部位特異的突然変異誘発法の適用によって導入することができる。
【0041】
本発明が対象となる産物をコードするポリヌクレオチドの特定の核酸及びアミノ酸配列に限定されないことも理解されよう。したがって、組み換えベクター及び単離されたDNAセグメントは、対象となる産物自体のコード領域(基本コード領域中に選択された変化又は修飾を有するコード領域)を様々に含んでいても、又はより大きいポリペプチド(ただし対象となる産物のコード領域を含む)をコードしていても、又は変異体アミノ酸配列を有する、生物学的に機能的な等価のタンパク質若しくはペプチドをコードしていてもよい。
【0042】
必要に応じて、例えば対象となる産物のコード領域が、例えば精製目的又は免疫検出目的で所望の機能を有する他のタンパク質又はペプチドと同じ発現単位内で並んでいる、融合タンパク質及びペプチド(例えば、アフィニティークロマトグラフィー及び酵素標識コード領域のそれぞれによって精製することができるタンパク質)を調製してもよい。
【0043】
例えば約15アミノ酸長〜約50アミノ酸長、より好ましくは約15アミノ酸長〜約30アミノ酸長のペプチドといった比較的小さいペプチドをコードするDNAセグメント、及びさらに対象となる産物に対する完全長の公開配列に相当するタンパク質までの、より大きいポリペプチドも本発明の或る特定の実施形態に包含される。
【0044】
機能的核酸分子、例えばハイブリダイゼーションプローブ;増幅プライマー;siRNA、RNAi若しくはアンチセンス分子;リボザイム;又はRNAアプタマーをコードするDNAセグメントも本発明の或る特定の実施形態に包含される。特定の実施形態では、これらの機能的核酸分子は、対象となる産物のアミノ酸配列をコードする核酸配列の全部又は一部と同一又は相補的である。他の実施形態では、これらの機能的核酸分子は、対象となる産物の非コード領域の転写産物、又は対象となる産物のRNA若しくはタンパク質の効率的な発現に必要とされる核酸「制御配列」と同一又は相補的である。
【0045】
これらの定義は概して、一本鎖分子を指すが、具体的な実施形態では、その一本鎖分子に部分的、実質的又は完全に相補的なさらなる鎖も包含する。したがって、核酸は、分子を含む特定の配列の相補鎖又は「相補体」を含む二本鎖分子を包含し得る。特定の態様では、核酸はタンパク質若しくはポリペプチド、又はその一部をコードする。
【0046】
A.核酸ベクター
特定の実施形態では、本発明は、対象となる産物をコードするDNA配列を組み込んだ単離されたDNAセグメント及び組み換えベクターに関する。「組み換え型」という用語は、ポリペプチド又は具体的なポリペプチドの名称と共に使用され得るが、概して核酸分子から産生される、in vitroで操作されているか、又はかかる分子の複製産物であるポリペプチドを指す。
【0047】
「ベクター」という用語は、それを複製し、発現させることができる細胞へ導入するために異種核酸配列を挿入することができる担体核酸分子を指すために使用される。核酸配列は「異種」であってもよく、これは細胞又は核酸中の配列と相同であるが、それが通常は見られない宿主細胞又は核酸内の位置にある配列を含む、ベクターが導入される細胞又はベクターが取り込まれる核酸とは異なる状況下にあることを意味する。ベクターはDNA、RNA、プラスミド、コスミド、ウイルス(バクテリオファージ、動物ウイルス及び植物ウイルス)、並びに人工染色体(例えばYAC)を含む。当業者は、ベクターを標準的な組み換え技法(例えば、Sambrook et al., 2001、Ausubel et al., 1996(どちらも参照により本明細書中に援用される))によって構築するのに十分な能力を備えているだろう。かかる融合タンパク質をコードする有用なベクターは、pINベクター(Inouye et al., 1985)、ヒスチジンのストレッチをコードするベクター、及びその後の精製及び分離又は切断のためにグルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)可溶性融合タンパク質を作製するのに使用されるpGEXベクターを含む。
【0048】
「発現ベクター」という用語は、転写することが可能な遺伝子産物の少なくとも一部をコードする核酸配列を含有するベクターを指す。場合によっては、RNA分子はその後タンパク質、ポリペプチド又はペプチドに翻訳される。他の場合では、これらの配列は、例えばアンチセンス分子又はリボザイムの産生において翻訳されない。発現ベクターは様々な「制御配列」を含有し得るが、これは特定の宿主生物における操作可能に(operably)連結したコード配列の転写及び場合により翻訳に必要とされる核酸配列を指す。ベクター及び発現ベクターは、転写及び翻訳を支配する制御配列に加えて、その他の機能を果たし、以下に記載される核酸配列を含有してもよい。
【0049】
1.プロモーター及びエンハンサー
「プロモーター」とは、転写の開始及び速度を制御する核酸配列の領域である制御配列である。プロモーターは、調節タンパク質及び分子がRNAポリメラーゼ及び他の転写因子等と結合し得る遺伝要素を含有する場合もある。「動作可能に(operatively)位置する」、「動作可能に連結した」、「制御下で」及び「転写制御下で」という表現は、プロモーターが核酸配列に対して、その配列の転写開始及び/又は発現を制御する上で正確な機能的位置及び/又は方向にあることを意味する。プロモーターは、核酸配列の転写活性化に関与するシス作用調節配列を指す「エンハンサー」と併用されても、又は併用されなくてもよい。
【0050】
プロモーターは、コードセグメント及び/又はエキソンの上流に位置する5’非コード配列を単離することによって得ることができる、遺伝子又は配列に天然に付随するプロモーターであってもよい。かかるプロモーターは「内在性」と称することができる。同様に、エンハンサーは、その配列の下流又は上流に位置する核酸配列に天然に付随するものであってもよい。代替的には、コード核酸セグメントを、組み換え型又は異種プロモーター(これらはその自然な環境で通常は核酸配列に付随していないプロモーターを表す)の制御下に位置付けることによって、或る特定の利点が得られる。組み換え型又は異種エンハンサーとはまた、その自然な環境で通常は核酸配列に付随していないエンハンサーを指す。かかるプロモーター又はエンハンサーは、他の遺伝子のプロモーター又はエンハンサー、及び任意の他の原核細胞、ウイルス細胞又は真核細胞から単離されたプロモーター又はエンハンサー、及び「天然」でない、すなわち異なる転写調節領域の異なる要素、及び/又は発現を変化させる突然変異を含有するプロモーター又はエンハンサーを含み得る。プロモーター及びエンハンサーの核酸配列を合成的に生産することに加えて、配列は、本明細書中で開示される組成物に関連する、組み換えクローニング及び/又はPCR(商標)を含む核酸増幅技術を用いて生産することができる(米国特許第4,683,202号、米国特許第5,928,906号(各々参照により本明細書中に援用される)を参照されたい)。さらに、ミトコンドリア、葉緑体等の非核細胞小器官内の配列の転写及び/又は発現を誘導する制御配列も同様に利用することができると考えられる。
【0051】
当然ながら、発現のために選択される細胞型、細胞小器官及び生物において、DNAセグメントの発現を効率的に誘導するプロモーター及び/又はエンハンサーを利用することが重要であり得る。分子生物学の技術分野の当業者には、タンパク質発現のためのプロモーター、エンハンサー及び細胞型の組み合わせの使用が一般に知られており、例えばSambrook et al. (1989)(参照により本明細書中に援用される)を参照されたい。利用されるプロモーターは構成的、組織特異的、誘導性であり、及び/又は組み換えタンパク質及び/又はペプチドの大規模生産において有益であるように、導入されるDNAセグメントの高レベル発現を誘導するのに適切な条件下で有用であり得る。プロモーターは異種であっても、又は内在性であってもよい。
【0052】
組織特異的プロモーター又は要素の固有性(identity)、及びそれらの活性を特性化するアッセイは当業者に既知である。かかる領域の例としては、ヒトLIMK2遺伝子(Nomoto et al. 1999)、ソマトスタチン受容体2遺伝子(Kraus et al., 1998)、マウス精巣上体レチノイン酸結合遺伝子(Lareyre et al., 1999)、ヒトCD4(Zhao-Emonet et al., 1998)、マウスα2(XI)コラーゲン(Tsumaki, et al., 1998)、D1Aドーパミン受容体遺伝子(Lee, et al., 1997)、インスリン様成長因子II(Wu et al., 1997)、ヒト血小板内皮細胞接着分子−1(Almendro et al., 1996)及びSM22αプロモーターに関連する制御配列が挙げられる。
【0053】
開始シグナル及び内部リボソーム結合部位
特異的な開始シグナルもコード配列の効率的な翻訳に必要とされ得る。これらのシグナルはATG開始コドン又は隣接配列を含む。ATG開始コドンを含む外因性翻訳制御シグナルを提供する必要があり得る。当業者であれば、容易にこれを決定し、必要なシグナルを提供することが可能であるだろう。開始コドンは、挿入断片全体の翻訳を保証するために、所望のコード配列のリーディングフレームと「インフレーム」でなくてはならないことが知られている。外因性翻訳制御シグナル及び開始コドンは天然又は合成のいずれであってもよい。発現の効率は、適切な転写エンハンサー要素を組み入れることによって増進することができる。
【0054】
本発明の或る特定の実施形態では、内部リボソーム侵入部位(IRES)要素は、多重遺伝子又は多シストロン性メッセージを作り出すために使用される。IRES要素は、5’メチル化キャップ依存的翻訳のリボソーム走査モデルを回避し、内部部位で翻訳を開始することが可能である(Pelletier and Sonenberg, 1988)。ピコルナウイルス科の2つの成員(ポリオ及び脳心筋炎)に由来するIRES要素(Pelletier and Sonenberg, 1988)、並びに哺乳動物メッセージに由来するIRES(Macejak and Sarnow, 1991)が記載されている。IRES要素は、異種オープンリーディングフレームと連結させることができる。各々がIRESによって隔てられた複数のオープンリーディングフレームを、共に転写させ、多シストロン性メッセージを作り出すことができる。IRES要素によって、各々のオープンリーディングフレームは効率的な翻訳のためにリボソームにとって利用しやすいものとなる。複数の遺伝子を、単一のメッセージを転写する単一のプロモーター/エンハンサーを用いて効率的に発現させることができる(米国特許第5,925,565号及び同第5,935,819号(参照により本明細書中に援用される)を参照されたい)。
【0055】
2.多重クローニング部位
ベクターは複数の制限酵素部位を含有する核酸領域である多重クローニング部位(MCS)を含んでいてもよく、そのいずれもベクターを消化する標準的な組み換え技術と共に用いてもよい(Carbonelli et al., 1999、Levenson et al., 1998及びCocea, 1997(参照により本明細書中に援用される)を参照されたい)。「制限酵素での消化」とは、核酸分子中の特異的な位置でのみ機能する酵素による核酸分子の触媒的切断を指す。これらの制限酵素の多くが商業的に利用可能である。かかる酵素の使用は当業者に広く理解されている。しばしば、ベクターは、外因性配列をベクターにライゲートさせるために、MCS内で切断する制限酵素を用いて線形化又は断片化される。「ライゲーション」とは、互いに連続していても、又はしていなくてもよい2つの核酸断片間にホスホジエステル結合を形成するプロセスを指す。制限酵素及びライゲーション反応を含む技法が、組み換え技術の技術分野の当業者に既知である。
【0056】
3.スプライシング部位
転写された真核RNA分子の大部分は、イントロンを一次転写産物から除去するRNAスプライシングを受ける。ゲノム真核配列を含有するベクターは、タンパク質発現のための転写産物の正確なプロセシングを保証するため、ドナー及び/又はアクセプタスプライシング部位を必要とし得る(Chandler et al., 1997(参照により本明細書中に援用される)を参照されたい)。
【0057】
4.終結シグナル
本発明のベクター又は構築物は概して、少なくとも1つの終結シグナルを含む。「終結シグナル」又は「ターミネーター」は、RNAポリメラーゼによるRNA転写の特異的な終結に関与するDNA配列からなる。したがって、或る特定の実施形態では、RNA転写産物の産生を終了させる終結シグナルが考えられる。ターミネーターは、in vivoで望ましいメッセージレベルを達成するために必要とされ得る。
【0058】
真核系では、ターミネーター領域は、ポリアデニル化部位を露出させるように、新たな転写産物の部位特異的切断を可能とする特異的なDNA配列も含み得る。これは、特殊化した内在性ポリメラーゼに、約200個のA残基のストレッチ(ポリA)を転写産物の3’末端に付加するよう信号を送る。このポリAテールによって修飾されたRNA分子は、より安定であると考えられ、より効率的に翻訳される。したがって、真核生物を含む他の実施形態では、ターミネーターがRNAを切断するシグナルを含むのが好ましく、ターミネーターシグナルがメッセージのポリアデニル化を促進するのがより好ましい。ターミネーター及び/又はポリアデニル化部位要素は、メッセージレベルを増進する、及び/又はカセットから他の配列への読み過しを最小限に抑える働きをし得る。
【0059】
本発明に使用することが考えられるターミネーターとしては、本明細書中に記載されるか又は当業者に既知である転写の任意の既知のターミネーターが挙げられ、例えば遺伝子の終結配列(例えばウシ成長ホルモンターミネーター等)又はウイルス終結配列(例えばSV40ターミネーター等)が挙げられるが、これらに限定されない。或る特定の実施形態では、終結シグナルは、例えば配列切断(truncation)による転写可能な又は翻訳可能な配列の欠如であってもよい。
【0060】
5.ポリアデニル化シグナル
発現、特に真核生物の発現においては、転写産物の正確なポリアデニル化を達成するために、典型的にはポリアデニル化シグナルを組み入れる。ポリアデニル化シグナルの性質は本発明の実施の成功にはあまり重要でないと考えられ、及び/又はかかる配列のいずれも利用することができる。好ましい実施形態としては、好都合であり、及び/又は様々な植物標的細胞において十分に機能することが知られる、ダイズ栄養貯蔵タンパク質(vspB)ポリアデニル化シグナル及び/又はエンドウマメRuBPカルボキシラーゼ小サブユニット(rbcS)ポリアデニル化シグナルが挙げられる。ポリアデニル化は転写産物の安定性を増大させるか、又は細胞質輸送を促進し得る。
【0061】
6.複製起点
宿主細胞にベクターを伝播させるために、ベクターは複製が開始される特異的な核酸配列である1つ又は複数の複製起点部位(多くの場合、「ori」と称される)を含有してもよい。代替的には、宿主細胞が酵母である場合には自己複製配列(ARS)を利用することができる。
【0062】
7.選択可能及びスクリーニング可能なマーカー
本発明の或る特定の実施形態では、本発明の核酸構築物を含有する細胞は、マーカーを発現ベクターに組み入れることによってin vitro又はin vivoで同定することができる。かかるマーカーは、識別可能な変化を細胞に与え、発現ベクターを含有する細胞の容易な同定を可能にするものであり得る。概して、選択可能なマーカーとは選択を可能にする特性を与えるものである。ポジティブ選択可能なマーカーとはマーカーの存在によりその選択が可能となるものであり、ネガティブ選択可能なマーカーとはその存在によってその選択が妨げられるものである。ポジティブ選択可能なマーカーの一例は薬剤耐性マーカーである。
【0063】
通常、薬剤選択マーカーを組み入れることは、形質転換体のクローニング及び同定に役立ち、例えばネオマイシン、ピューロマイシン、ハイグロマイシン、DHFR、GPT、ゼオシン及びヒスチジノールに対する耐性を与える遺伝子が、有用な選択可能なマーカーである。条件の導入に基づいて形質転換体の区別を可能にする表現型を与えるマーカーに加えて、GFP等のスクリーニング可能なマーカーを含む他のタイプのマーカー(選択は比色分析に基づく)も考えられる。代替的には、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(tk)又はクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)等のスクリーニング可能な酵素を利用することができる。当業者であれば、免疫学的マーカーを、場合によりFACS分析と関連して利用する方法も知っているだろう。使用されるマーカーは、遺伝子産物をコードする核酸と同時に発現されることが可能な限り、重要ではないと考えられる。選択可能及びスクリーニング可能なマーカーのさらなる例は、当業者に既知である。
【0064】
B.宿主細胞
本発明のベクターは、対象となる産物を産生させるために宿主細胞において使用することができる。特に(The particular)、本発明のベクターは植物細胞であり得る。本明細書中で使用される場合、「細胞」、「細胞株」及び「細胞培養物」という用語は互換可能に使用され得る。これらの用語は全て、その後のあらゆる世代であるそれらの子孫も含む。全ての子孫が意図的又は偶発的な突然変異のために同一でない場合もあることが理解される。異種核酸配列を発現するという文脈内で、「宿主細胞」とは原核細胞又は真核細胞を指し、ベクターを複製し及び/又はベクターによってコードされる異種遺伝子を発現することが可能な、任意の形質転換可能な生物を含む。宿主細胞はベクターのレシピエントとして使用することができ、また使用されてきた。宿主細胞は、「トランスフェクト」又は「形質転換」(修飾タンパク質をコードするか又は機能的核酸をコードする配列等の外因性核酸を、宿主細胞に移入又は導入するプロセスを指す)されていてもよい。形質転換細胞は初代被験細胞及びその子孫を含む。
【0065】
宿主細胞は、所望の結果がベクターの複製であるか、又はベクターにコードされた核酸配列の一部若しくは全ての発現であるかに応じて、植物細胞、酵母細胞、昆虫細胞及び哺乳動物細胞を含む原核生物又は真核生物に由来し得る。多数の細胞株及び培養物が宿主細胞としての使用に利用可能であり、生きた培養物及び遺伝物質のアーカイブとして働く機関であるアメリカ培養細胞系統保存機関(ATCC)から得ることができる(www.atcc.org)。当業者は適切な宿主を、ベクター骨格及び所望の結果に基づいて決定することができる。例えば、プラスミド又はコスミドを多くのベクターの複製のために原核生物宿主細胞に導入することができる。ベクターの複製及び/又は発現のための宿主細胞として使用される細菌細胞には、DH5α、JM109及びKC8、並びにSURE(登録商標)Competent Cells及びSOLOPACK(商標)Gold Cells(STRATAGENE(登録商標),La Jolla,CA)といった多数の商業的に利用可能な細菌宿主が含まれる。代替的には、大腸菌LE392等の細菌細胞をファージウイルス用の宿主細胞として使用してもよい。適切な酵母細胞としては、サッカロマイセス・セレヴィシエ(Saccharomyces cerevisiae)、サッカロマイセス・ポンベ(Saccharomyces pombe)及びピキア・パストリス(Pichia pastoris)が挙げられる。
【0066】
ベクターの複製及び/又は発現のための真核宿主細胞の例としては、HeLa、NIH3T3、ジャーカット、293、Cos、CHO、Saos、Sf9及びPC12が挙げられる。様々な細胞型及び生物に由来する多くの宿主細胞が利用可能であり、当業者に既知である。同様に、ウイルスベクターは真核又は原核のいずれかの宿主細胞、特にベクターの複製又は発現を許容するものと併用してもよい。
【0067】
一部のベクターは、それが原核及び真核の両方の細胞において複製及び/又は発現されるのを可能にする制御配列を利用し得る。当業者は、上記の宿主細胞の全てをインキュベートして、それらを維持する条件、及びベクターの複製を可能にする条件をさらに理解するだろう。ベクターの大規模生産、並びにベクターによってコードされる核酸及びそれらの同族ポリペプチド、タンパク質又はペプチドの生産を可能にする技法及び条件も理解され、既知である。
【0068】
C.発現系
上記で論考される組成物の少なくとも一部又は全部を含む多数の発現系が存在する。原核生物及び/又は真核生物ベースの系を、核酸配列、又はその同族ポリペプチド、タンパク質及びペプチドを産生させる目的で本発明で用いるために利用することができる。かかる系の多くが商業的に広く入手可能である。
【0069】
昆虫細胞/バキュロウイルス系は、米国特許第5,871,986号、同第4,879,236号(どちらも参照により本明細書中に援用される)に記載されるような異種核酸セグメントの高レベルのタンパク質発現をもたらすことができ、例えばINVITROGEN(登録商標)からMAXBAC(登録商標)2.0、CLONTECH(登録商標)からBACPACK(商標)バキュロウイルス発現系という名で購入することができる。
【0070】
本発明の開示の発現系に加えて、発現系の他の例としては、合成エクジソン誘導性受容体を含む、STRATAGENE(登録商標)のCOMPLETE CONTROL(商標)誘導性哺乳動物発現系、又はそのpET発現系、大腸菌発現系が挙げられる。誘導性発現系の別の例は、INVITROGEN(登録商標)から入手可能な、完全長CMVプロモーターを用いる誘導性哺乳動物発現系である、T−REX(商標)(テトラサイクリン調節発現)系を保有するものがある。INVITROGEN(登録商標)は、メチロトローフ酵母ピキア・メタノリカ(Pichia methanolica)における組み換えタンパク質の高レベル生産のために設計したピキア・メタノリカ発現系と呼ばれる酵母発現系も提供している。当業者であれば、核酸配列又はその同族ポリペプチド、タンパク質若しくはペプチドを産生させるために、発現構築物等のベクターを発現させる方法を知っているだろう。
【0071】
1.ウイルスベクター
発現ベクターを細胞に導入することができる多数の方法がある。本発明の或る特定の実施形態では、発現ベクターはウイルス、又はウイルスゲノムに由来する人工ベクターを含む。受容体媒介性エンドサイトーシスを介して細胞に侵入する能力、宿主細胞ゲノムに組み込まれて、ウイルス遺伝子を安定かつ効率的に発現する能力を有するようなウイルスが、哺乳動物細胞への外来遺伝子の移入にとって魅力的な候補となる(Ridgeway, 1988、Nicolas and Rubinstein, 1988、Baichwal and Sugden, 1986、Temin, 1986)。遺伝子ベクターとして使用された最初のウイルスは、パポバウイルス(シミアンウイルス40、ウシ乳頭腫ウイルス及びポリオーマ)(Ridgeway, 1988、Baichwal and Sugden, 1986)、並びにアデノウイルス(Ridgeway, 1988、Baichwal and Sugden, 1986)を含むDNAウイルスであった。これらは、外来DNA配列に対する容量が比較的小さく、宿主範囲(host spectrum)が限られている。さらに、許容細胞におけるそれらの発癌能及び細胞変性効果は、安全性に対する懸念を引き起こしている。これらは8kbの外来遺伝物質までしか収容することができないが、様々な細胞株及び実験動物に容易に導入することができる(Nicolas and Rubinstein, 1988、Temin, 1986)。
【0072】
レトロウイルスは、感染細胞においてそれらのRNAを二本鎖DNAに変換する能力を特徴とする一本鎖RNAウイルスの群であり、これらもベクターとして使用することができる。他のウイルスベクターを本発明において発現構築物として利用してもよい。ベクターは、ワクシニアウイルス(Ridgeway, 1988、Baichwal and Sugden, 1986、Coupar et al., 1988)、アデノ随伴ウイルス(AAV)(Ridgeway, 1988、Baichwal and Sugden, 1986)に由来し得る。上記で論考される組成物の少なくとも一部又は全部を含む多数の発現系が存在する。原核生物及び/又は真核生物ベースの系を、核酸配列、又はその同族ポリペプチド、タンパク質及びペプチドを産生させる目的で本発明で用いるために利用することができる。かかる系の多くが商業的に広く入手可能である。
【0073】
昆虫細胞/バキュロウイルス系は、米国特許第5,871,986号、同第4,879,236号(どちらも参照により本明細書中に援用される)に記載されるような異種核酸セグメントの高レベルのタンパク質発現をもたらすことができ、例えばINVITROGEN(登録商標)からMAXBAC(登録商標)2.0、CLONTECH(登録商標)からBACPACK(商標)バキュロウイルス発現系という名で購入することができる。
【0074】
本発明の開示の発現系に加えて、発現系の他の例としては、合成エクジソン誘導性受容体を含む、STRATAGENE(登録商標)のCOMPLETE CONTROL(商標)誘導性哺乳動物発現系、又はそのpET発現系、大腸菌発現系が挙げられる。誘導性発現系の別の例は、INVITROGEN(登録商標)から入手可能な、完全長CMVプロモーターを用いる誘導性哺乳動物発現系である、T−REX(商標)(テトラサイクリン調節発現)系を保有するものがある。INVITROGEN(登録商標)は、メチロトローフ酵母ピキア・メタノリカにおける組み換えタンパク質の高レベル生産のために設計したピキア・メタノリカ発現系と呼ばれる酵母発現系も提供している。当業者であれば、核酸配列又はその同族ポリペプチド、タンパク質若しくはペプチドを産生させるために、発現構築物等のベクターを発現させる方法を知っているだろう。
【0075】
発現ベクターを細胞に導入することができる多数の方法がある。本発明の或る特定の実施形態では、発現ベクターはウイルス、又はウイルスゲノムに由来する人工ベクターを含む。受容体媒介性エンドサイトーシスを介して細胞に侵入する能力、宿主細胞ゲノムと一体化して、ウイルス遺伝子を安定かつ効率的に発現する能力を有するようなウイルスが、哺乳動物細胞への外来遺伝子の移入にとって魅力的な候補となっている(Ridgeway, 1988、Nicolas and Rubinstein, 1988、Baichwal and Sugden, 1986、Temin, 1986)。遺伝子ベクターとして使用された最初のウイルスは、パポバウイルス(シミアンウイルス40、ウシ乳頭腫ウイルス及びポリオーマ)(Ridgeway, 1988、Baichwal and Sugden, 1986)、並びにアデノウイルス(Ridgeway, 1988、Baichwal and Sugden, 1986)を含むDNAウイルスであった。これらは、外来DNA配列に対する容量が比較的小さく、宿主範囲が限られている。さらに、許容細胞におけるそれらの発癌能及び細胞変性効果は、安全性に対する懸念を引き起こしている。これらは8kbの外来遺伝物質までしか収容することができないが、様々な細胞株及び実験動物に容易に導入することができる(Nicolas and Rubinstein, 1988、Temin, 1986)。
【0076】
レトロウイルスは、感染細胞においてそれらのRNAを二本鎖DNAに変換する能力を特徴とする一本鎖RNAウイルスの群であり、これらもベクターとして使用することができる。他のウイルスベクターを本発明において発現構築物として利用してもよい。ワクシニアウイルス(Ridgeway, 1988、Baichwal and Sugden, 1986、Coupar et al., 1988)、アデノ随伴ウイルス(AAV)(Ridgeway, 1988、Baichwal and Sugden, 1986、Hermonat and Muzycska, 1984)及びヘルペスウイルス等のウイルスに由来するベクターを利用することができる。これらは様々な哺乳動物細胞に対して魅力的な幾つかの特徴を備えている(Friedmann, 1989、Ridgeway, 1988、Baichwal and Sugden, 1986、Coupar et al., 1988、Horwich et al., 1990)。
【0077】
D.遺伝子移入の方法
本発明の組成物の発現を達成するための核酸送達の好適な方法は、実質的に、本明細書中に記載されるか又は当業者に既知のように、核酸(例えば、ウイルスベクター及び非ウイルスベクターを含むDNA)を細胞小器官、細胞、組織又は生物体に導入することができる任意の方法を含むと考えられる。かかる方法としては、注入(米国特許第5,994,624号、同第5,981,274号、同第5,945,100号、同第5,780,448号、同第5,736,524号、同第5,702,932号、同第5,656,610号、同第5,589,466号及び同第5,580,859号(各々参照により本明細書中に援用される))、例えばマイクロインジェクション(Harland and Weintraub, 1985、米国特許第5,789,215号(参照により本明細書中に援用される));電気穿孔(米国特許第5,384,253号(参照により本明細書中に援用される));リン酸カルシウム沈殿(Graham and Van Der Eb, 1973、Chen and Okayama, 1987、Rippe et al., 1990);DEAE−デキストラン及びその後のポリエチレングリコールの使用(Gopal, 1985);直接音波負荷(direct sonic loading)(Fechheimer et al., 1987);リポソーム媒介トランスフェクション(Nicolau and Sene, 1982、Fraley et al., 1979、Nicolau et al., 1987、Wong et al., 1980、Kaneda et al., 1989、Kato et al., 1991);微粒子銃(PCT出願の国際公開第94/09699号及び同第95/06128号、米国特許第5,610,042号、同第5,322,783号、同第5,563,055号、同第5,550,318号、同第5,538,877号及び同第5,538,880号(各々参照により本明細書中に援用される));炭化ケイ素繊維との攪拌(Kaeppler et al., 1990、米国特許第5,302,523号及び同第5,464,765号(各々参照により本明細書中に援用される));アグロバクテリウム媒介形質転換(米国特許第5,591,616号及び同第5,563,055号(各々参照により本明細書中に援用される));プロトプラストのPEG媒介形質転換(Omirulleh et al., 1993、米国特許第4,684,611号及び同第4,952,500号(各々参照により本明細書中に援用される))又は乾燥/阻害媒介DNA取り込み(Potrykus et al., 1985)等によるDNAの直接送達が挙げられるが、これらに限定されない。これらのような技法を適用することによって、細胞小器官(複数可)、細胞(複数可)、組織(複数可)又は生物(複数可)を安定に又は一時的に形質転換することができる。
【0078】
E.核酸の調製
本発明の一態様は、単離された核酸セグメント、及び植物細胞において対象となる産物を産生させる際のそれらの使用に関する。或る特定の実施形態では、本発明は、本発明のタンパク質、ポリペプチド、ペプチドをコードする核酸に関する。核酸は、例えば化学合成、酵素的産生又は生物学的産生といった当業者に既知の任意の技法によって作製することができる。合成核酸(例えば合成オリゴヌクレオチド)の非限定的な例としては、欧州特許第266032号(参照により本明細書中に援用される)に記載されるようなリン酸トリエステル化学、亜リン酸エステル化学若しくはホスホラミダイト化学及び固相法を用いたin vitro化学合成によって、又はFroehler et al., 1986及び米国特許第5,705,629号(各々参照により本明細書中に援用される)によって記載されるようなデオキシヌクレオシドH−ホスホネート中間体を介して作製された核酸が挙げられる。本発明の方法では、1つ又は複数のオリゴヌクレオチドを使用することができる。オリゴヌクレオチド合成の様々な異なる機構が、例えば米国特許第4,659,774号、同第4,816,571号、同第5,141,813号、同第5,264,566号、同第4,959,463号、同第5,428,148号、同第5,554,744号、同第5,574,146号、同第5,602,244号(各々参照により本明細書中に援用される)に開示されている。
【0079】
酵素的に産生される核酸の非限定的な例としては、PCR(商標)(例えば、米国特許第4,683,202号及び米国特許第4,682,195号(各々参照により本明細書中に援用される)を参照されたい)等の増幅反応、又は米国特許第5,645,897号(参照により本明細書中に援用される)に記載のオリゴヌクレオチド合成において酵素によって産生されるものが挙げられる。生物学的に産生される核酸の非限定的な例としては、細菌中で複製される組み換えDNAベクター等の生細胞において産生される(すなわち、複製される)組み換え核酸が挙げられる(例えば、Sambrook et al. 2001(参照により本明細書中に援用される)を参照されたい)。
【0080】
F.核酸の精製
或る特定の態様では、本発明は単離された核酸である核酸に関する。本明細書中で使用される場合、「単離された核酸」という用語は、1つ又は複数の細胞の全ゲノム核酸及び転写核酸の大部分を含まぬように単離されているか、又はそれらを別の形で含まない核酸分子(例えばRNA分子又はDNA分子)を指す。或る特定の実施形態では、「単離された核酸」とは、細胞成分、又は例えば脂質若しくはタンパク質等の巨大分子、小さな生物学的分子等のin vitro反応成分の大部分を含まぬように単離されているか、又はそれらを別の形で含まない核酸を指す。
【0081】
核酸はポリアクリルアミドゲル、塩化セシウム遠心分離勾配、クロマトグラフィーカラムで、又は当業者に既知の任意の他の手段によって精製することができる(例えば、Sambrook et al., 2001(参照により本明細書中に援用される)を参照されたい)。一部の態様では、核酸は薬理学的に許容可能な核酸である。薬理学的に許容可能な組成物は当業者に既知であり、本明細書中に記載されている。
【0082】
G.核酸検出
1.ハイブリダイゼーション
7ヌクレオチド、8ヌクレオチド、9ヌクレオチド、10ヌクレオチド、11ヌクレオチド、12ヌクレオチド、13ヌクレオチド、14ヌクレオチド、15ヌクレオチド、16ヌクレオチド、17ヌクレオチド、18ヌクレオチド、19ヌクレオチド、20ヌクレオチド、21ヌクレオチド、22ヌクレオチド、23ヌクレオチド、24ヌクレオチド、25ヌクレオチド、50ヌクレオチド、60ヌクレオチド、70ヌクレオチド、80ヌクレオチド、90ヌクレオチド若しくは100ヌクレオチド、好ましくは17ヌクレオチド〜100ヌクレオチドの長さ、又は本発明の一部の態様では、最大1キロベース〜2キロベース又はそれ以上の長さのプローブ又はプライマーの使用によって、安定かつ選択的な二本鎖分子の形成が可能となる。得られるハイブリッド分子の安定性及び/又は選択性を増大させるには、長さ20塩基超の連続ストレッチを超える相補配列を有する分子が一般に好ましい。一般に、20ヌクレオチド〜30ヌクレオチド、又は所望に応じてさらに長い1つ又は複数の相補配列を有するハイブリダイゼーション用の核酸分子を設計するのが好まれる。かかる断片は、例えば、断片を化学的手段によって直接合成するか、又は選択された配列を組み換え産生のための組み換えベクターに導入することによって容易に調製することができる。
【0083】
したがって、本発明のヌクレオチド配列は、相補的なDNA及び/又はRNAのストレッチを有する二本鎖分子を選択的に形成するか、又は試料からのDNA若しくはRNAの増幅のためのプライマーを提供するために使用することができる。想定される用途に応じて、標的配列に対するプローブ又はプライマーの様々な程度の選択性を達成するために様々なハイブリダイゼーション条件を利用することが望まれる。
【0084】
高い選択性を必要とする用途については、典型的には、ハイブリッドを形成するために比較的高ストリンジェンシーの条件を利用することが望まれる。例えば、約50℃〜約70℃の温度で約0.02M〜約0.10MのNaClによってもたらされるような、比較的低塩及び/又は高温の条件が挙げられる。かかる高ストリンジェンシーの条件は、プローブ又はプライマーと鋳型又は標的鎖との間のミスマッチを、たとえあったとしてもわずかにしか許容せず、特異的な遺伝子を単離するか、又は特異的な多型を検出するのに特に好適である。概して、漸増量のホルムアミドを添加することによって、条件をよりストリンジェントに変更することができることを理解されよう。例えば、高度にストリンジェントな条件下では、フィルターに結合したDNAへのハイブリダイゼーションは、65℃で0.5M NaHPO、7%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、1mM EDTA中で、68℃で0.1×SSC/0.1%SDSで洗浄して行うことができる(Ausubel et al., 1989)。
【0085】
塩濃度を増加させ、及び/又は温度を低下させることによって、条件をより低ストリンジェントに変更することができる。例えば、中ストリンジェンシーの条件は、約37℃〜約55℃の温度で約0.1M〜0.25MのNaClによってもたらすことができ、低ストリンジェンシーの条件は、約20℃〜約55℃の範囲の温度で約0.15M〜約0.9Mの塩によってもたらすことができる。中程度にストリンジェントな条件のような低ストリンジェントな条件下では、洗浄は例えば42℃で0.2×SSC/0.1%SDS中で行うことができる(Ausubel et al., 1989)。ハイブリダイゼーション条件は所望の結果に応じて容易に操作することができる。
【0086】
他の実施形態では、ハイブリダイゼーションは例えば、およそ20℃〜約37℃の温度で50mM Tris−HCl(pH8.3)、75mM KCl、3mM MgCl、1.0mMジチオスレイトールの条件下で達成することができる。利用される他のハイブリダイゼーション条件は、およそ40℃〜約72℃の範囲の温度で、およそ10mM Tris−HCl(pH8.3)、50mM KCl、1.5mM MgClを含み得る。
【0087】
或る特定の実施形態では、本発明の規定の配列の核酸を、ハイブリダイゼーションを測定するための標識といった適切な手段と組み合わせて利用するのが有益である。検出することが可能な蛍光リガンド、放射性リガンド、酵素リガンド又はアビジン/ビオチン等の他のリガンドを含む、多様な適切な指標手段が当該技術分野で既知である。好ましい実施形態では、放射性試薬又は他の環境的に望ましくない試薬の代わりに、蛍光標識、又はウレアーゼ、アルカリホスファターゼ若しくはペルオキシダーゼ等の酵素タグを利用するのが望まれる場合がある。酵素タグの場合、相補的な核酸を含有する試料との特異的なハイブリダイゼーションを同定する目的で、可視的又は分光光度的に検出可能な検出手段を提供するために利用することができる比色指標基質が既知である。他の態様では、特定のヌクレアーゼ切断部位が存在する場合があり、特定のヌクレオチド配列の検出は、核酸切断の存在又は非存在によって決定することができる。
【0088】
概して、本明細書中に記載されるプローブ又はプライマーが、PCRと同様、発現又は対応する遺伝子の遺伝子型の検出のための溶液ハイブリダイゼーションにおける試薬として、並びに固相を利用する実施形態に有用であることが想定される。固相を含む実施形態では、試験DNA(又はRNA)を選択されたマトリクス又は表面に吸着させるか又は別の形で固定する。この固定した一本鎖核酸を次いで、所望の条件下での選択されたプローブとのハイブリダイゼーションに供する。選択される条件は特定の状況に依存する(例えばG+C含量、標的核酸のタイプ、核酸の供給源、ハイブリダイゼーションプローブのサイズ等に依存する)。対象となる特定の用途のためのハイブリダイゼーション条件の最適化は当業者に既知である。ハイブリダイズした分子を洗浄して、非特異的に結合したプローブ分子を除去した後、ハイブリダイゼーションを、結合した標識の量を測定することによって検出及び/又は定量化する。代表的な固相ハイブリダイゼーション方法は、米国特許第5,843,663号、同第5,900,481号及び同第5,919,626号に開示されている。本発明の実施に際して使用することができるハイブリダイゼーションの他の方法は、米国特許第5,849,481号、同第5,849,486号及び同第5,851,772号に開示されている。本明細書のこの節で特定されたこれら及び他の参照文献の関連部分は、参照により本明細書中に援用される。
【0089】
2.核酸の増幅
増幅の鋳型として使用される核酸は、細胞、組織又は他の試料から標準的な方法(Sambrook et al., 2001)に従って単離することができる。或る特定の実施形態では、分析は、鋳型核酸の実質的な精製を行って又は行わずに、全細胞又は組織ホモジネート又は生体液試料に対して行われる。核酸はゲノムDNA又は分画RNA又は全細胞RNAであり得る。RNAを使用する場合、最初にRNAを相補的なDNAに変換することが望ましい場合もある。
【0090】
「プライマー」という用語は、本明細書中で使用される場合、鋳型依存的プロセスにおいて新生核酸の合成を開始する(priming)ことが可能な任意の核酸を包含することが意図される。典型的には、プライマーは長さが10塩基対〜20塩基対及び/又は30塩基対のオリゴヌクレオチドであるが、より長い配列を利用してもよい。プライマーは二本鎖形態及び/又は一本鎖形態で提供することができるが、一本鎖形態が好ましい。
【0091】
SOD1遺伝子座、その変異体及び断片に対応する核酸に選択的にハイブリダイズするように設計したプライマー対を、選択的ハイブリダイゼーションを可能にする条件下で鋳型核酸と接触させる。所望の用途に応じて、プライマーに完全に相補的な配列へのハイブリダイゼーションしか可能でないような高ストリンジェンシーのハイブリダイゼーション条件を選択してもよい。他の実施形態では、ハイブリダイゼーションは、プライマー配列との1つ又は複数のミスマッチを含有する核酸の増幅を可能にするような低下したストリンジェンシー下で起こり得る。ハイブリダイズさせた後、鋳型−プライマー複合体を、鋳型依存的核酸合成を促進する1つ又は複数の酵素と接触させる。複数回の増幅(「サイクル」とも称される)を、十分な量の増幅産物が産生されるまで行う。
【0092】
増幅産物は、検出、分析又は定量化することができる。或る特定の用途では、検出は視覚的手段によって行うことができる。或る特定の用途では、検出は化学発光、取り込まれた放射標識若しくは蛍光標識の放射性シンチグラフィー、又はさらには電気及び/又は熱インパルスシグナルを用いたシステムによる産物の間接的同定を含み得る(Affymax technology; Bellus, 1994)。
【0093】
所与の鋳型試料中に存在するオリゴヌクレオチド配列を増幅するために、多数の鋳型依存的プロセスが利用可能である。最良の既知の増幅方法の1つは、米国特許第4,683,195号、同第4,683,202号及び同第4,800,159号並びにInnis et al., 1988に詳細に記載されている(各々その全体が参照により本明細書中に援用される)、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR(商標)と称される)である。
【0094】
別の増幅方法は、欧州特許出願公開第320308号(その全体が参照により本明細書中に援用される)に開示されるリガーゼ連鎖反応(「LCR」)である。米国特許第4,883,750号は、プローブ対を標的配列に結合させるためのLCRと同様の方法を記載している。米国特許第5,912,148号に開示される、PCR(商標)及びオリゴヌクレオチドリガーゼアッセイ(OLA)(下記にさらに詳細に記載される)に基づく方法も使用することができる。
【0095】
本発明の実施に際して使用することができる標的核酸配列の増幅のための代替的な方法は、米国特許第5,843,650号、同第5,846,709号、同第5,846,783号、同第5,849,546号、同第5,849,497号、同第5,849,547号、同第5,858,652号、同第5,866,366号、同第5,916,776号、同第5,922,574号、同第5,928,905号、同第5,928,906号、同第5,932,451号、同第5,935,825号、同第5,939,291号及び同第5,942,391号、英国特許出願公開第2202328号、並びにPCT出願のPCT/US89/01025号(各々その全体が参照により本明細書中に援用される)に開示されている。PCT出願のPCT/US87/00880号に記載されるQβレプリカーゼも、本発明において増幅方法として使用することができる。
【0096】
制限エンドヌクレアーゼ及びリガーゼを使用して、制限部位の一方の鎖中にヌクレオチド5’−[α−チオ]−トリホスフェートを含有する標的分子の増幅を達成する等温増幅方法も、本発明における核酸の増幅に有用であり得る(Walker et al., 1992)。米国特許第5,916,779号に開示される鎖置換増幅(SDA)は、複数回の鎖置換及び合成、すなわちニックトランスレーションを含む核酸の等温増幅を行う別の方法である。
【0097】
他の核酸増幅手順は、核酸配列ベースの増幅(NASBA)及び3SRを含む、転写ベースの増幅系(TAS)を含む(Kwoh et al., 1989、PCT出願の国際公開第88/10315号(それらの全体が参照により本明細書中に援用される))。欧州特許出願公開第329822号は、本発明に従って使用することができる、一本鎖RNA(「ssRNA」)、ssDNA及び二本鎖DNA(dsDNA)を繰返し合成することを含む核酸増幅プロセスを開示している。
【0098】
PCT出願の国際公開第89/06700号(その全体が参照により本明細書中に援用される)は、プロモーター領域/プライマー配列の標的一本鎖DNA(「ssDNA」)へのハイブリダイゼーション、その後の配列の多くのRNAコピーの転写に基づく核酸配列増幅スキームを開示している。このスキームは繰り返し型ではない、すなわち得られるRNA転写産物から新たな鋳型は産生されない。他の増幅方法としては、「RACE」及び「片側(one-sided)PCR」が挙げられる(Frohman, 1990、Ohara et al., 1989)。
【0099】
3.核酸の検出
任意の増幅に続いて、増幅産物を鋳型及び/又は過剰のプライマーから分離することが望ましい場合もある。一実施形態では、増幅産物は標準方法を用いたアガロース、アガロース−アクリルアミド又はポリアクリルアミドゲル電気泳動によって分離される(Sambrook et al., 2001)。分離した増幅産物をさらなる操作のためにゲルから切り取り、溶出させてもよい。低融点アガロースゲルを用いて、分離したバンドをゲルを加熱することによって取り出し、続いて核酸を抽出することができる。
【0100】
核酸の分離は、スピンカラム及び/又は当該技術分野で既知のクロマトグラフ法によっても達成することができる。吸着クロマトグラフィー、分配クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、分子篩クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、カラムクロマトグラフィー、ペーパークロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー及びガスクロマトグラフィー並びにHPLCを含む、本発明の実施に際して使用することができる多くの種類のクロマトグラフィーがある。
【0101】
或る特定の実施形態では、増幅産物を分離して又は分離せずに可視化する。典型的な可視化方法には、エチジウムブロマイドでのゲルの染色及び紫外線下でのバンドの可視化が含まれる。代替的には、増幅産物を放射標識した又は蛍光定量的に標識したヌクレオチドによって全体的に標識した場合、分離した増幅産物をX線フィルムに曝露するか、又は適切な励起(excitatory)スペクトル下で可視化することができる。
【0102】
一実施形態では、増幅産物の分離に続いて、標識した核酸プローブを増幅したマーカー配列と接触させる。プローブは発色団と複合体形成させるのが好ましいが、放射標識してもよい。別の実施形態では、プローブを、抗体又はビオチン、又は検出可能部分を保有する別の結合パートナー等の結合パートナーと複合体形成させる。
【0103】
特定の実施形態では、検出は標識プローブを用いたサザンブロット法及びハイブリダイゼーションによって行う。サザンブロット法に関する技法は当業者に既知である(Sambrook et al., 2001を参照されたい)。その一例は、自動電気泳動及び核酸の移入のための装置及び方法を開示している米国特許第5,279,721号(参照により本明細書中に援用される)に記載されている。装置は、ゲルの外部操作なしに電気泳動及びブロッティングを可能にし、本発明による方法の実行に理想的に適している。
【0104】
本発明の実施に際して使用することができる核酸検出の他の方法は、米国特許第5,840,873号、同第5,843,640号、同第5,843,651号、同第5,846,708号、同第5,846,717号、同第5,846,726号、同第5,846,729号、同第5,849,487号、同第5,853,990号、同第5,853,992号、同第5,853,993号、同第5,856,092、同第5,861,244号、同第5,863,732号、同第5,863,753号、同第5,866,331号、同第5,905,024号、同第5,910,407号、同第5,912,124号、同第5,912,145号、同第5,919,630号、同第5,925,517号、同第5,928,862号、同第5,928,869号、同第5,929,227号、同第5,932,413号及び同第5,935,791号(各々参照により本明細書中に援用される)に開示されている。
【0105】
III.タンパク質性組成物
対象となる産物が核酸、タンパク質、ポリペプチド又はペプチドであり得ることが考えられる。対象となる産物は抗原又は抗体を含み得るが、これらに限定されない。抗原の例としては、B型肝炎コア抗原(HBc)又はノーウォークウイルスカプシドタンパク質(NVCP)が挙げられるが、これらに限定されない。抗体の例としては、モノクローナル抗体が挙げられるが、これに限定されない。
【0106】
或る特定の実施形態では、対象となる産物はタンパク質、ポリペプチド又はペプチドである。本明細書中で使用される場合、「タンパク質」、「タンパク質性分子」、「タンパク質性組成物」、「タンパク質性化合物」、「タンパク質性鎖」又は「タンパク質性材料」とは概して、約200アミノ酸超のタンパク質、若しくは遺伝子から翻訳された完全長内在性配列;約100アミノ酸超のポリペプチド;及び/又は約3アミノ酸〜約100アミノ酸のペプチドを指すが、これらに限定されない。上記の「タンパク質性」の用語は全て、本明細書中で互換可能に使用することができる。
【0107】
本明細書中で使用される場合、「タンパク質」又は「ポリペプチド」とは、少なくとも10個のアミノ酸残基を含む分子を指す。幾つかの実施形態では、タンパク質又はポリペプチドの野生型バージョンが利用される。しかしながら、本発明の多くの実施形態では、免疫応答を生じさせるために修飾されたタンパク質又はポリペプチドが利用される。上記の用語は互換可能に使用することができる。「修飾されたタンパク質」又は「修飾されたポリペプチド」とは、その化学構造、特にそのアミノ酸配列が野生型タンパク質又はポリペプチドと比べて変化したタンパク質又はポリペプチドを指す。修飾されたタンパク質又はポリペプチドは1つの活性又は機能に関して変化していることがあるが、他の点では野生型の活性又は機能(免疫原性等)を保持していると特に考えられる。
【0108】
或る特定の実施形態では、タンパク質又はポリペプチドのサイズは、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、21個、22個、23個、24個、25個、26個、27個、28個、29個、30個、31個、32個、33個、34個、35個、36個、37個、38個、39個、40個、41個、42個、43個、44個、45個、46個、47個、48個、49個、50個、51個、52個、53個、54個、55個、56個、57個、58個、59個、60個、61個、62個、63個、64個、65個、66個、67個、68個、69個、70個、71個、72個、73個、74個、75個、76個、77個、78個、79個、80個、81個、82個、83個、84個、85個、86個、87個、88個、89個、90個、91個、92個、93個、94個、95個、96個、97個、98個、99個、100個、110個、120個、130個、140個、150個、160個、170個、180個、190個、200個、210個、220個、230個、240個、250個、275個、300個、325個、350個、375個、400個、425個、450個、475個、500個、525個、550個、575個、600個、625個、650個、675個、700個、725個、750個、775個、800個、825個、850個、875個、900個、925個、950個、975個、1000個、1100個、1200個、1300個、1400個、1500個、1750個、2000個、2250個、2500個又はそれ以上のアミノ分子、及びその中で導き出せる任意の範囲、又は本明細書中で記載若しくは参照される対応するアミノ配列の誘導体を含み得るが、これらに限定されない。ポリペプチドは切断によって突然変異させ、それらの対応する野生型形態より短くすることができると考えられるが、(例えば、標的化又は局在化させるため、免疫原性を増進するため、精製目的等で)特定の機能を有する異種タンパク質配列を融合又は複合体形成させることによって変化させてもよい。
【0109】
本明細書中で使用される場合、「アミノ分子」とは、当該技術分野で既知の任意のアミノ酸、アミノ酸誘導体又はアミノ酸模倣体を指す。或る特定の実施形態では、タンパク質性分子の残基は連続的であり、任意の非アミノ分子がアミノ分子残基の配列を中断することはない。他の実施形態では、配列は1つ又は複数の非アミノ分子部分を含み得る。特定の実施形態では、タンパク質性分子の残基の配列が1つ又は複数の非アミノ分子部分によって中断され得る。
【0110】
したがって、「タンパク質性組成物」という用語は、天然に合成されるタンパク質の20個の共通アミノ酸の少なくとも1つ、又は少なくとも1つの修飾若しくは異常アミノ酸を含むアミノ分子配列を包含する。
【0111】
タンパク質性組成物は、(i)標準的な分子生物学的技法によるタンパク質、ポリペプチド又はペプチドの発現、(ii)天然源からのタンパク質性化合物の単離又は(iii)タンパク質性材料の化学合成を含む、当業者に既知の任意の技法によって作製することができる。様々な遺伝子に関するヌクレオチド並びにタンパク質、ポリペプチド及びペプチドの配列は以前に開示されており、公認のコンピュータ化されたデータベース中に見ることができる。かかるデータベースの1つは、全米バイオテクノロジー情報センターのGenbank及びGenPeptデータベース(ncbi.nlm.nih.gov/のワールドワイドウェブ上)である。これらの遺伝子のコード領域は、本明細書中で開示されるか、又は当業者に既知の(know)技法を用いて増幅及び/又は発現させることができる。
【0112】
A.タンパク質精製
対象となるタンパク質を精製又は単離するのが望ましい場合がある。タンパク質精製法は当業者に既知である。これらの技法は、或るレベルで細胞環境をポリペプチド及び非ポリペプチド画分へと粗分画することを含む。ポリペプチドを他の細胞成分から分離した後、対象となるポリペプチドをクロマトグラフ法及び電気泳動法を用いてさらに精製し、部分的又は完全な精製(又は均質となるまでの精製)を達成することができる。精製されたペプチドの調製に特に適した分析法はイオン交換クロマトグラフィー、排除クロマトグラフィー;アフィニティークロマトグラフィー;ポリアクリルアミドゲル電気泳動;及び等電点電気泳動法である。ペプチドを精製する特に効率的な方法は、高速タンパク質液体クロマトグラフィー、又はさらにはHPLCである。
【0113】
「精製したタンパク質又はペプチド」という用語は、本明細書中で使用される場合、他の成分から単離可能な組成物を指すことが意図され、タンパク質又はペプチドはその天然に得られる状態と比べた任意の程度まで精製される。したがって、精製したタンパク質又はペプチドとは、それが天然に生じ得る環境から分離したタンパク質又はペプチドも指す。
【0114】
概して、「精製した」とは、分画に供して他の様々な成分を除去したタンパク質又はペプチド組成物を指し、この組成物はその生物学的活性を実質的に保持している。「実質的に精製した」という用語を使用する場合、この呼称は、タンパク質又はペプチドが組成物の主要成分を形成する、例えば組成物中のタンパク質の約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%又はそれ以上を構成する組成物を指す。
【0115】
タンパク質又はペプチドの精製の程度を定量化する様々な方法が、本開示に照らして当業者に既知である。これらの方法としては、例えば、活性画分の特異的活性を測定すること、又は画分中のポリペプチドの量をSDS/PAGE分析によって評価することが挙げられる。画分の純度を評価する好ましい方法は、画分の特異的活性を算出すること、それを初期抽出物の特異的活性と比較すること、及びそれにより、本明細書中で「〜倍の精製数(-fold purification number)」によって評価される純度を算出することである。活性の量を表すために使用される実際の単位は、当然ながら、選択される特定のアッセイ技法、及び発現されたタンパク質又はペプチドが検出可能な活性を示すか否かに依存する。
【0116】
タンパク質精製に使用するのに好適な様々な技法が当業者に既知である。これらとしては、例えば硫酸アンモニウム、PEG、抗体等による、又は熱変性による沈殿に続く遠心分離;イオン交換クロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー及びアフィニティークロマトグラフィー等のクロマトグラフィー工程;等電点電気泳動法;ゲル電気泳動;並びにこれらの組み合わせ及び他の技法が挙げられる。当該技術分野において一般に知られているように、様々な精製工程を行う順序を変更することができ、又は或る特定の工程を省くことができ、それでも実質的に精製されたタンパク質又はペプチドを調製する好適な方法が得られると考えられる。
【0117】
部分的な精製は、より少数の精製工程を組み合わせて用いることにより、又は同じ一般的精製スキームの異なる形態を利用することにより達成することができる。例えば、HPLC装置を利用して行う陽イオン交換カラムクロマトグラフィーは概して、低圧クロマトグラフィーシステムを利用する同じ技法の「〜倍の」精製をもたらすことを理解されよう。より低い相対精製度を示す方法は、タンパク質産物の総回収量、又は発現されたタンパク質の活性の維持において利点を有し得る。
【0118】
ポリペプチドの移動は、SDS/PAGEの条件の違いによって、場合によっては有意に変化し得ることが知られている(Capaldi et al., 1977)。したがって、異なる電気泳動条件下では、精製した又は部分的に精製した発現産物の見かけの分子量は変化し得ることが理解されよう。
【0119】
高速液体クロマトグラフィー(HPLC)は、並外れたピーク分解能での非常に迅速な分離を特徴とする。これは、適当な流速を維持するために非常に微細な粒子及び高い圧力を用いることによって達成される。分離はわずか数分間、又は最大でも1時間以内に達成され得る。さらに、粒子が小さく密集していることにより空隙容量がベッド容量のごく一部でしかないため、非常に少量の試料しか必要とされない。また、バンドが狭いことにより試料が非常にわずかにしか希釈されないため、試料の濃度をあまり大きくする必要はない。
【0120】
ゲルクロマトグラフィー又は分子篩クロマトグラフィーは、分子のサイズに基づく特別なタイプの分配クロマトグラフィーである。ゲルクロマトグラフィーの基礎となる理論は、小孔を含有する不活性物質の小さな粒子を用いて調製されるカラムによって、孔内又は孔の周囲を通過する際に、より小さい分子からより大きい分子がサイズに応じて分離されることである。粒子を作製する材料が分子を吸着しない限り、流速を決定する唯一の因子はサイズである。したがって、形状が比較的一定である限り、分子はサイズの減少と共にカラムから溶出される。ゲルクロマトグラフィーは、分離がpH、イオン強度、温度等の他の全ての因子に非依存的であるため、異なるサイズの分子の分離に関して卓越している。また、実質的に吸着がなく、ゾーンの拡大が少なく、溶出容量は単に分子量に関連している。
【0121】
アフィニティークロマトグラフィーは、単離される物質とそれが特異的に結合し得る分子との間の特異的親和性に依存するクロマトグラフ手順である。これは受容体−リガンド型の相互作用である。カラム材料は、結合パートナーの1つを不溶性マトリクスに共有結合させることによって合成される。カラム材料はそれにより溶液から物質を特異的に吸着することが可能である。溶出は条件を結合が起こらない条件に変化させる(例えばpH、イオン強度及び温度を変化させる)ことによって行われる。
【0122】
マトリクスは、それ自体が分子を任意の有意な程度まで吸着せず、広範な化学的安定性、物理的安定性及び熱安定性を有する物質でなくてはならない。リガンドは、その結合特性に影響を与えないように結合する必要がある。リガンドはまた、比較的強い結合をもたらすものでなくてはならない。また、物質を試料又はリガンドを破壊せずに溶出することが可能である必要がある。最も一般的な形態のアフィニティークロマトグラフィーの1つはイムノアフィニティークロマトグラフィーである。この方法は本発明に従って使用するのに好適である。この方法による抗体の生成は下記で論考される。
【0123】
B.タンパク質検出
対象となるタンパク質は、下記に記載のものが挙げられるが、それらに限定されない当業者に既知の任意の手段によって検出することができる。
【0124】
1.免疫検出法
論考されるように、一部の実施形態では、本発明は、対象となるタンパク質等の生物学的成分を結合、精製、除去、定量化する、及び/又は別の形で検出する免疫検出法に関する。本発明の免疫検出法は、治療に関連する対象となるタンパク質の抗原領域を同定するために使用することができる。
【0125】
免疫検出法としては、酵素免疫測定法(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、免疫放射定量測定法、蛍光免疫測定法、化学発光分析法、生物発光分析法及びウエスタンブロットが挙げられるが、幾つかの他の方法も当業者に既知である。様々な有用な免疫検出法の工程は、例えばDoolittle et al., 1999、Gulbis et al., 1993、De Jager et al., 1993及びNakamura et al., 1987(各々参照により本明細書中に援用される)等の科学文献に記載されている。
【0126】
概して、免疫結合法は、タンパク質、ポリペプチド及び/又はペプチドを含有する疑いがある試料を得ること、及び本発明に従って、場合によっては免疫複合体を形成させるのに効果的な条件下で、試料をモノクローナル又はポリクローナルの第1の抗体と接触させることを含む。
【0127】
これらの方法には、細胞小器官、細胞、組織又は生物の試料からタンパク質、ポリペプチド及び/又はペプチドを精製する方法が含まれる。これらの場合では、抗体によって抗原タンパク質、ポリペプチド及び/又はペプチド成分が試料から除去される。抗体は、カラムマトリクスの形態等の固体支持体に連結させるのが好ましく、タンパク質、ポリペプチド及び/又はペプチド抗原成分を含有する疑いがある試料を固定化抗体に加える。不要な成分をカラムから洗い流し、固定化抗体に免疫複合体形成した(immunocomplexed)抗原を溶出させる。
【0128】
免疫結合法には、試料中の抗原成分の量を検出及び定量化する方法、並びに結合過程において形成される任意の免疫複合体の検出及び定量化も含まれる。ここでは、抗原又は抗原ドメインを含有する疑いがある試料を得て、試料をその抗原又は抗原ドメインに対する抗体と接触させた後、特定の条件下で形成される免疫複合体の量を検出及び定量化する。
【0129】
抗原検出に関して、分析される生物学的試料は、抗原又は抗原ドメインを含有する疑いがある任意の試料、例えば組織切片若しくは組織標本、ホモジナイズした組織抽出物、細胞、細胞小器官、上記抗原含有組成物のいずれかの分離形態及び/又は精製形態、又はさらには血液及び/又は血清を含む、細胞若しくは組織と接触する任意の生体液等であり得る。
【0130】
効果的な条件下で、免疫複合体(一次免疫複合体)を形成させるのに十分な期間、選択された生物学的試料を抗体と接触させるとは一般に、単に抗体組成物を試料に添加し、混合物を抗体が存在する任意の抗原と免疫複合体を形成する、すなわち、結合するのに十分に長い期間インキュベートすることである。その後、組織切片、ELISAプレート、ドットブロット又はウエスタンブロット等の試料−抗体組成物を概して、洗浄して全ての非特異的に結合した抗体種を除去し、一次免疫複合体内に特異的に結合したこれらの抗体のみを検出する。
【0131】
概して、免疫複合体形成の検出は当該技術分野において既知であり、多数のアプローチを適用することによって達成することができる。これらの方法は概して、放射性タグ、蛍光タグ、生物学的タグ及び酵素的タグ等の標識又はマーカーの検出に基づく。かかる標識の使用に関する米国特許としては、米国特許第3,817,837号、同第3,850,752号、同第3,939,350号、同第3,996,345号、同第4,277,437号、同第4,275,149号及び同第4,366,241号(各々参照により本明細書中に援用される)が挙げられる。当然ながら、当該技術分野で既知のように、第2の抗体及び/又はビオチン/アビジンリガンド結合構成等の二次結合リガンドを使用することによってさらなる利点を見出すことができる。
【0132】
検出に利用される抗体は、それ自体が検出可能な標識に連結したものであってもよく、それにより単にこの標識を検出することによって、組成物中の一次免疫複合体の量を決定することが可能である。代替的には、一次免疫複合体内に結合される第1の抗体は、該抗体に対して結合親和性を有する、第2の結合リガンドを用いて検出することができる。これらの場合では、第2の結合リガンドを検出可能な標識に連結してもよい。第2の結合リガンドは多くの場合、それ自体が抗体であるため、「二次」抗体と称される場合がある。一次免疫複合体を、効果的な条件下で、二次免疫複合体を形成させるのに十分な期間、標識した二次結合リガンド又は抗体と接触させる。次いで、二次免疫複合体を概して洗浄し、全ての非特異的に結合した標識二次抗体又はリガンドを除去して、二次免疫複合体中の残りの標識を検出する。
【0133】
さらなる方法としては、2段階アプローチによる一次免疫複合体の検出が挙げられる。抗体に対して結合親和性を有する抗体等の第2の結合リガンドを用いて、上記のような二次免疫複合体を形成する。洗浄後、二次免疫複合体を、同様に効果的な条件下で、免疫複合体(三次免疫複合体)を形成させるのに十分な期間、第2の抗体に対して結合親和性を有する第3の結合リガンド又は抗体と接触させる。第3のリガンド又は抗体を検出可能な標識に連結させ、このようにして形成された三次免疫複合体を検出する。この系は所望される場合にシグナル増幅をもたらし得る。
【0134】
Charles Cantorによって設計された免疫検出の一方法では2つの異なる抗体が使用される。第1工程のビオチン化したモノクローナル抗体又はポリクローナル抗体を使用して、標的抗原(複数可)を検出し、次いで第2工程の抗体を使用して、抗体/抗原複合体に結合したビオチンを検出する。この方法では、試験する試料を初めに第1工程の抗体を含有する溶液中でインキュベートする。標的抗原が存在する場合、抗体の一部が抗原に結合して、ビオチン化抗体/抗原複合体を形成する。次いで、抗体/抗原複合体を、ストレプトアビジン(又はアビジン)、ビオチン化DNA及び/又は相補的ビオチン化DNAの一連の溶液中でインキュベートすることによって増幅し、各々の工程でさらなるビオチン部位を抗体/抗原複合体に付加する。増幅工程を好適なレベルの増幅が達成されるまで繰り返し、その時点で試料をビオチンに対する第2工程の抗体を含有する溶液中でインキュベートする。この第2工程の抗体を、例えば発色(chromogen)基質を用いた組織酵素学的手法(histoenzymology)によって抗体/抗原複合体の存在を検出するために使用することができる酵素で標識する。好適な増幅によって、肉眼で見える複合体が産生され得る。
【0135】
免疫検出の別の既知の方法は、イムノPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)の方法論を利用する。このPCR方法は、ビオチン化DNAとのインキュベーションまではCantorの方法と同様であるが、複数回のストレプトアビジンとビオチン化DNAとのインキュベーションを用いる代わりに、DNA/ビオチン/ストレプトアビジン/抗体複合体を、抗体を放出させる低pH又は高塩バッファーで洗い流す。次いで、得られる洗浄液を使用して、適切な対照と共に好適なプライマーを用いたPCR反応を行う。少なくとも理論上は、PCRの非常に大きな増幅能及び特異性を利用して、単一の抗原分子を検出することができる。
【0136】
a.ELISA
上記に詳述したように、イムノアッセイとは、その最も単純及び/又は直接的な意味で、結合アッセイである。好ましいイムノアッセイは、当該技術分野において既知の様々なタイプの酵素免疫測定法(ELISA)及び/又はラジオイムノアッセイ(RIA)が挙げられる。組織切片を用いた免疫組織化学的検出も特に有用である。しかしながら、検出はかかる技法に限定されず、及び/又はウエスタンブロット法、ドットブロット法、FACS分析等も使用することができることが容易に理解されよう。
【0137】
ELISAの一例では、ポリスチレンマイクロタイタープレート中のウェル等のようなタンパク質親和性を示す選択された表面に抗体を固定化する。次いで、臨床試料等の抗原を含有する疑いがある試験組成物をウェルに添加する。結合させた後及び/又は洗浄して非特異的に結合した免疫複合体を除去した後、結合した抗原を検出することができる。検出は概して、検出可能な標識に連結した別の抗体を添加することによって達成される。これは単純な「サンドイッチELISA」である。検出は第2の抗体を添加し、続いて第2の抗体に対して結合親和性を有する第3の抗体を添加することによって達成することもできる(第3の抗体は検出可能な標識に連結している)。
【0138】
ELISAの別の例では、抗原を含有する疑いがある試料をウェル表面に固定化し、及び/又は次いで抗体と接触させる。結合させた後及び/又は洗浄して非特異的に結合した免疫複合体を除去した後、結合した抗体を検出する。最初の抗体が検出可能な標識と連結している場合、免疫複合体は直接検出することができる。この場合も、免疫複合体は、第1の抗体に対して結合親和性を有する第2の抗体を用いて検出することができる(第2の抗体は検出可能な標識に連結している)。
【0139】
抗原を固定化する別のELISAでは、検出において抗体競合を用いる。このELISAでは、抗原に対する標識抗体をウェルに添加して、結合させ、及び/又はそれらの標識を用いて検出する。次いで、コーティングしたウェルでのインキュベーションの間に、試料を抗原に対する標識抗体と混合することによって、未知試料中の抗原の量を測定する。試料における抗原の存在は、ウェルに結合するのに利用可能な抗原に対する抗体の量を減少させるように作用し、したがって最終的なシグナルを減少させる。このことも未知試料中の抗原に対する抗体を検出するのに適切であるが、この場合、非標識抗体が抗原をコーティングしたウェルに結合し、同様に標識抗体に結合するのに利用可能な抗原の量を減少させる。
【0140】
利用する様式に関わらず、ELISAはコーティングすること、インキュベートすること及び結合させること、洗浄して非特異的に結合した種を除去すること、及び結合した免疫複合体を検出すること等のように共通した或る特定の特徴を有する。これらは下記に記載される。
【0141】
プレートを抗原又は抗体のいずれかでコーティングする際には、一般にプレートのウェルを抗原又は抗体の溶液と共に、一晩又は指定の時間にわたってインキュベートする。次いで、プレートのウェルを洗浄して、不完全に吸着した材料を除去する。次いで、ウェルの残り全ての利用可能な表面を、試験抗血清に対して抗原的に中性の非特異的なタンパク質で「コーティングする」。これらとしては、ウシ血清アルブミン(BSA)、カゼイン又は粉乳溶液が挙げられる。コーティングによって、固定化表面上の非特異的な吸着部位のブロッキングが可能となり、それにより表面への抗血清の非特異的な結合により生じるバックグラウンドが減少する。
【0142】
ELISAにおいて、直接的な手順よりも二次又は三次検出手段を使用する方が日常的であると思われる。したがって、タンパク質又は抗体をウェルに結合させ、バックグラウンドを減少させるために非反応性材料でコーティングし、洗浄して非結合材料を除去した後、固定化表面を試験される生物学的試料と、免疫複合体(抗原/抗体)を形成させるのに効果的な条件下で接触させる。免疫複合体の検出はこの場合、標識した二次結合リガンド若しくは抗体、又は標識した三次抗体若しくは第3の結合リガンドと結合した二次結合リガンド若しくは抗体を必要とする。
【0143】
「免疫複合体(抗原/抗体)を形成させるのに効果的な条件下で」とは、条件が好ましくは抗原及び/又は抗体をBSA、ウシγグロブリン(BGG)又はリン酸緩衝生理食塩水(PBS)/Tween等の溶液で希釈することを含むことを意味する。これらの添加される薬剤も、非特異的なバックグラウンドの減少を助ける傾向がある。
【0144】
また、「好適な」条件とは、インキュベーションを効果的な結合を可能にするのに十分な温度又は期間で行うことを意味する。インキュベーション工程は典型的には、好ましくはおよそ25℃〜27℃の温度で約1〜2時間から4時間程度であり、又は約4℃程度で一晩行ってもよい。
【0145】
ELISAにおける全てのインキュベーション工程の後、接触させた表面を洗浄して、複合体形成してない材料を除去する。洗浄手順の一例としては、PBS/Tween等の溶液又はホウ酸塩緩衝剤での洗浄が挙げられる。試験試料と最初に結合した材料との間の特異的な免疫複合体の形成、及び続く洗浄の後、さらに微量の免疫複合体の発生も測定することができる。
【0146】
検出手段を提供するために、第2又は第3の抗体は検出を可能にする結合した標識を有する。これは、適切な発色基質と共にインキュベートすると発色を生じる酵素であってもよい。したがって、例えば第1及び第2の免疫複合体をウレアーゼ、グルコースオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ又は水素ペルオキシダーゼ結合抗体と、さらなる免疫複合体形成の発生を促す期間及び条件下で(例えば、PBS−Tween等のPBS含有溶液中、室温で2時間のインキュベーション)接触させる又はインキュベートすることが望まれる。
【0147】
標識抗体とのインキュベーションの後、洗浄して非結合材料を除去した後、標識の量を、例えば、尿素、又はブロモクレゾールパープル、又は2,2’−アジノ−ジ−(3−エチル−ベンゾチアゾリン−6−スルホン酸)(ABTS)、又はH(ペルオキシダーゼを酵素標識とした場合)等の発色基質とのインキュベーションによって定量化する。定量化はその後、例えば可視スペクトル分光光度計を用いて、生じた色の程度を測定することによって達成される。
【0148】
b.免疫組織化学
本発明の抗体は、免疫組織化学(IHC)による研究のために作製した新たに凍結した及び/又はホルマリン固定したパラフィン包埋組織ブロックの両方と併用することもできる。例えば、免疫組織化学を利用して、対象となるタンパク質を特性化するか、又は細胞中の対象となるタンパク質の量を評価することができる。これらの粒子状標本から組織ブロックを作製する方法は、様々な予後因子の以前のIHC研究において首尾よく使用されており、及び/又は当業者に既知である(Brown et al., 1990、Abbondanzo et al., 1990、Allred et al., 1990)。
【0149】
免疫組織化学(すなわちIHC)とは、抗体が生物組織において抗原に特異的に結合する原理を利用して、組織切片の細胞におけるタンパク質を局所化するプロセスを指す。この名称は、手順において使用される抗体に関する「immuno」、及び組織を意味する「histo」という語根から付けられている。免疫組織化学的染色は、癌の診断及び治療において広く使用されている。特定の分子マーカーは特定の癌型に特異的である。
【0150】
抗体−抗原相互作用の可視化は多数の方法で達成することができる。最も一般的な例では、抗体を、発色反応を触媒することができるペルオキシダーゼ等の酵素と複合体形成させる。代替的には、抗体をFITC、ローダミン、Texas Red、Alexa Fluor又はDyLight Fluor等のフルオロフォアでタグ付けしてもよい。後者の方法は、高感度であり、複数のタンパク質間の相互作用を可視化するためにも使用することができる共焦点レーザー走査顕微鏡検査において非常に有用である。
【0151】
簡潔に述べると、凍結切片は、小さいプラスチックカプセルにおいて、50mgの凍結「粉砕」組織を室温でリン酸緩衝生理食塩水(PBS)に再水和させること、粒子を遠心分離によって沈殿させること、それらを粘性包埋媒質(OCT)に再懸濁させること、カプセルを反転し、及び/又は再度遠心分離によって沈殿させること、−70℃のイソペンタン中で急速凍結すること(snap-freezing)、プラスチックカプセルを切断し、及び/又は凍結した組織の円筒を取り出すこと、組織の円筒をクライオスタットのミクロトームチャックに固定すること、及び/又は25個〜50個の連続切片を切り出すことによって作製することができる。
【0152】
永久切片は、プラスチックマイクロチューブにおいて50mgの試料を再水和させること、沈殿させること、10%ホルマリンに4時間再懸濁して固定すること、洗浄すること/沈殿させること、2.5%温寒天に再懸濁すること、沈殿させること、氷水中で冷却して寒天を固めること、チューブから組織/寒天ブロックを取り出すこと、ブロックをパラフィンに浸潤及び/又は包埋すること、及び/又は最大50個の連続永久切片を切り出すことを含む、同様の方法によって作製することができる。
【0153】
組織における抗原の免疫組織化学的(immmunohistochemical)検出に使用される戦略は、直接的方法及び間接的方法の2つである。どちらの場合においても、通常はTriton X−100等の界面活性剤を用いることにより組織を処理して、膜を破壊する。
【0154】
直接的方法は一段階染色法であり、標識抗体(例えば、FITC結合抗血清)を、組織切片中で抗原と直接反応させることを含む。この技法は1つの抗体しか利用せず、したがって手順は単純かつ迅速である。しかしながら、直接的方法には、シグナル増幅がほとんどないことから感度に関連する問題が生じる可能性があり、間接的方法よりも一般的に使用されていない。
【0155】
間接的方法は、組織抗原と反応する非標識一次抗体(第1の層)、及び一次抗体と反応する標識二次抗体(第2の層)を含む。この方法は、一次抗体上の異なる抗原部位との複数の二次抗体反応を介したシグナル増幅のために、より高感度である。第2の層の抗体は蛍光色素又は酵素で標識することができる。
【0156】
一般的手順では、ビオチン化した二次抗体を、ストレプトアビジン−セイヨウワサビペルオキシダーゼと結合させる。これは3,3’−ジアミノベンジジン(DAB)と反応すると、DAB染色として知られるプロセスにおいて一次抗体及び二次抗体が結合した場所であればどこでも茶色の染色を生じる。この反応はニッケルを用いて増進させることができ、濃い紫色/灰色の染色を生じる。
【0157】
間接的方法は、そのより高い感度に加えて、比較的少ない数の標準結合(標識)二次抗体しか生じさせる必要がないという利点も有する。例えば、ウサギIgGに対して産生された標識二次抗体(「既製品」として購入することができる)は、ウサギにおいて産生されたいかなる一次抗体についても有用である。直接的方法では、対象となる抗原全てに対して特別に標識した抗体を作製する必要があり得る。
【0158】
c.タンパク質アレイ
タンパク質アレイ技術は、Pandey and Mann (2000)及びMacBeath and Schreiber (2000)(各々参照により本明細書中に具体的に援用される)で詳細に論考されている。
【0159】
これらのアレイは典型的には、スライドガラス上にスポットした、又は小さなウェル内に固定化した数千種の異なるタンパク質又は抗体を含有し、一度に多数のタンパク質の生化学的活性及び結合プロファイルを試験することを可能にする。かかるアレイとのタンパク質の相互作用を試験するために、標識したタンパク質をスライドガラス上に固定化した標的タンパク質の各々と共にインキュベートした後、多くのタンパク質のうちいずれに標識した分子が結合するかを決定する。或る特定の実施形態では、かかる技術を用いて、対象となるタンパク質等の試料中の多数のタンパク質を定量化することができる。
【0160】
タンパク質チップの基本構成には、分子のアレイが点在するガラス又はプラスチック表面を使用する等といったDNAチップとの幾つかの類似点がある。これらの分子は、タンパク質を捕捉するように設計されたDNA又は抗体であり得る。規定量のタンパク質を、タンパク質の幾らかの活性を保持したまま各々のスポット上に固定化する。蛍光マーカー又は他の検出方法によって、これらのタンパク質を捕捉したスポットが明らかになるため、タンパク質マイクロアレイはハイスループットプロテオミクス及び創薬において強力なツールとして使用されている。
【0161】
最も初期の最もよく知られているタンパク質チップは、Ciphergen Biosystems Inc.(Fremont,Calif)によるProteinChipである。ProteinChipは、表面増強レーザー脱離及びイオン化(SELDI)プロセスに基づく。既知のタンパク質は、チップ上での機能的アッセイを用いて分析される。例えば、チップ表面は、研究者がタンパク質−タンパク質相互作用研究、リガンド結合研究又はイムノアッセイを行うことを可能にする酵素、受容体タンパク質又は抗体を含有し得る。最先端のイオン光学技術及びレーザー光学技術を用いると、ProteinChip系によって1000Da未満の小ペプチドから300kDaのタンパク質までの範囲のタンパク質が検出され、飛行時間(TOF)に基づいて質量が算出される。
【0162】
ProteinChipバイオマーカー系は、バイオマーカーパターン認識分析を行うことを可能にする最初のタンパク質バイオチップベースの系である。この系によって、研究者は、様々な粗臨床試料(すなわち、レーザーキャプチャーマイクロダイセクションによって切り出した(laser capture microdissected)細胞、生検材料、組織、尿及び血清)からプロテオームを調査することによって重要な臨床上の問題に対処することが可能となる。この系は、疾患表現型を有する臨床試料からのタンパク質発現パターンを相互に関連付けるために、パターン認識に基づく統計学的分析法を自動化するバイオマーカーパターンソフトウェアも利用する。
【0163】
C.防御免疫
本発明の幾つかの実施形態では、対象となるタンパク質は被験体において免疫応答を惹起し得る。防御免疫とは、被験体が、免疫応答のある薬剤に関連する特定の疾患又は状態を発症するのを防止する特異的な免疫応答を開始する身体の能力を指す。免疫原として有効な量によって被験体に防御免疫を与えることが可能である。
【0164】
本明細書及びその後の特許請求の範囲において使用される場合、ポリペプチドという用語は、ペプチド結合を介してそれらの間で共有結合したアミノ酸のストレッチを指す。異なるポリペプチドは本発明による異なる機能性を有する。一態様によると、ポリペプチドはレシピエントにおいて能動免疫応答を誘導するように設計した免疫原に由来するが、本発明の別の態様によると、ポリペプチドは、例えば動物において能動免疫応答の誘発に続いて生じ、レシピエントにおいて受動免疫応答を誘導する働きをし得る抗体に由来する。しかしながら、どちらの場合においても、ポリペプチドは任意の考え得るコドン使用頻度に従ってポリヌクレオチドによってコードされる。
【0165】
本明細書中で使用される場合、「免疫応答」又はその同義の「免疫学的応答」という表現は、レシピエント患者において本発明のタンパク質、ペプチド又はポリペプチドに対して誘導される体液性応答(抗体媒介性)、細胞性応答(抗原特異的T細胞又はそれらの分泌産物によって媒介される)又は体液性応答及び細胞性応答の両方の発生を指す。かかる応答は免疫原の投与によって誘導される能動応答であっても、又は抗体、抗体を含有する材料若しくは感作T細胞の投与によって誘導される受動応答であってもよい。細胞性免疫応答は、クラスI又はクラスII MHC分子に関連したポリペプチドエピトープの提示によって誘発され、抗原特異的CD4(+)ヘルパーT細胞及び/又はCD8(+)細胞傷害性T細胞を活性化する。この応答は単球、マクロファージ、NK細胞、好塩基球、樹状細胞、星状細胞、小グリア細胞、好酸球又は先天性免疫の他の成分の活性化も伴い得る。
【0166】
本明細書中で使用される場合、「能動免疫」とは、抗原の投与によって被験体に対して与えられる任意の免疫を指す。
【0167】
本明細書中で使用される場合、「受動免疫」とは、被験体に抗原を投与することなく被験体に対して与えられる任意の免疫を指す。したがって、「受動免疫」には、免疫応答の細胞メディエーター又はタンパク質メディエーター(例えば、モノクローナル抗体及び/又はポリクローナル抗体)を含む活性化された免疫エフェクターの投与が含まれるが、これに限定されない。モノクローナル又はポリクローナル抗体組成物は、抗体によって認識される抗原を保有する生物による感染の予防又は治療のための受動免疫化に使用することができる。抗体組成物は、様々な生物に関連し得る様々な抗原に結合する抗体を含み得る。抗体成分はポリクローナル抗血清であり得る。或る特定の態様では、抗体(単数又は複数)は、抗原(複数可)でチャレンジした動物又は第2の被験体からアフィニティー精製される。代替的には、同じ、関連する、又は異なる微生物若しくは生物(ブドウ球菌が挙げられるが、これに限定されないグラム陽性細菌、グラム陰性細菌等)中に存在する抗原に対するモノクローナル抗体及び/又はポリクローナル抗体の混合物である抗体混合物を使用することができる。
【0168】
受動免疫は、既知の免疫反応性を有するドナー又は他の非患者源から得られた免疫グロブリン(Ig)及び/又は他の免疫因子を患者に投与することによって、患者又は被験体に与えられ得る。他の態様では、本発明の抗原組成物は、ブドウ球菌又は他の生物に指向性を有する抗体を含有する組成物からのチャレンジに応答して産生されるグロブリン(「高力価免疫グロブリン」)の供給源又はドナーとなる被験体に投与することができる。このようにして処理した被験体から血漿が提供され、そこから従来の血漿分画法によって高力価免疫グロブリンを得て、ブドウ球菌感染に対する耐性を与えるか、又はそれを治療するために別の被験体に投与する。本発明による高力価免疫グロブリンは、免疫低下個体に対して、侵襲的処置を受けている個体に対して、又はワクチン接種された個体が自身の抗体を産生する時間がない場合に特に有用である。受動免疫に関連する例示的な方法及び組成物に関しては、米国特許第6,936,258号、同第6,770,278号、同第6,756,361号、同第5,548,066号、同第5,512,282号、同第4,338,298号及び同第4,748,018号(各々その全体が参照により本明細書中に援用される)を参照されたい。
【0169】
本明細書及び添付の特許請求の範囲の目的上、「エピトープ」及び「抗原決定基」という用語は互換可能に使用され、B細胞及び/又はT細胞が応答又は認識する抗原上の部位を指す。B細胞エピトープは、連続アミノ酸又はタンパク質の三次折り畳みによって近接した不連続アミノ酸の両方から形成され得る。連続アミノ酸から形成されるエピトープは、典型的には変性溶媒に曝露された状態で保持されるが、三次折り畳みによって形成されるエピトープは、典型的には変性溶媒での処理の際に失われる。エピトープでは、典型的には少なくとも3個、より一般には少なくとも5個又は8個〜10個のアミノ酸が特有の空間的立体配座を形成する。エピトープの空間的立体配座を決定する方法としては、例えばX線結晶学及び二次元核磁気共鳴が挙げられる。例えばEpitope Mapping Protocols (1996)を参照されたい。同じエピトープを認識する抗体を、標的抗原への別の抗体の結合を遮断する或る抗体の能力を示す単純なイムノアッセイにおいて同定することができる。T細胞は、CD8細胞に対しては約9アミノ酸、又はCD4細胞に対しては約13〜15アミノ酸の連続したエピトープを認識する。エピトープを認識するT細胞は、エピトープに応答した感作T細胞によるH−チミジン取り込みによって決定される抗原依存的増殖を測定するin vitroアッセイ(Burke et al., 1994)、抗原依存的死滅(細胞傷害性Tリンパ球アッセイ、Tigges et al., 1996)又はサイトカイン分泌によって同定することができる。
【0170】
細胞媒介性免疫学的応答の存在は、増殖アッセイ(CD4(+)T細胞)又はCTL(細胞傷害性Tリンパ球)アッセイによって決定することができる。免疫原の予防効果又は治療効果に対する体液性応答及び細胞性応答の相対的寄与は、免疫化した同系動物からIgG及びT細胞を別個に単離すること、及び第2の被験体における予防効果又は治療効果を測定することによって識別することができる。
【0171】
本明細書及び特許請求の範囲において使用される場合、「抗体」又は「免疫グロブリン」という用語は互換可能に使用され、動物又はレシピエントの免疫応答の一部として機能する幾つかのクラスの構造上関連するタンパク質(IgG、IgD、IgE、IgA、IgM及び関連タンパク質を含む)のいずれかを指す。
【0172】
正常な生理学的条件下では、抗体は血漿及び他の体液中、並びに或る特定の細胞の膜中に見られ、B細胞と称されるタイプのリンパ球又はそれらの機能的等価物によって産生される。IgGクラスの抗体は、ジスルフィド結合によって共に連結した4つのポリペプチド鎖から構成される。無傷IgG分子のこの4つの鎖は、H鎖と称される2つの同一の重鎖及びL鎖と称される2つの同一の軽鎖である。
【0173】
ポリクローナル抗体を産生させるために、ウサギ又はヤギ等の宿主を、抗原又は抗原断片を一般にアジュバントと共に、必要に応じて担体に結合させて用いて免疫化する。抗原に対する抗体を続いて宿主の血清から回収する。ポリクローナル抗体は、抗原に対してアフィニティー精製して、単一特異性とすることができる。
【0174】
モノクローナル抗体を産生させるために、抗原による適切なドナー、一般にマウスの過免疫を行う。次いで、脾臓の抗体産生細胞の単離を行う。これらの細胞を、骨髄腫細胞等の不死細胞と融合させて、培養物中で維持することができ、必要とされるモノクローナル抗体を分泌する融合細胞雑種(ハイブリドーマ)を得る。次いで、細胞を大量に培養し、使用するモノクローナル抗体を培地から採取する。定義によれば、モノクローナル抗体は単一のエピトープに特異的である。モノクローナル抗体は多くの場合、この理由から同様の抗原に対して産生されたポリクローナル抗体よりも低い親和性定数を有する。
【0175】
モノクローナル抗体は、脾臓細胞又は脾臓に由来する細胞株の一次培養物を用いてex vivoでも産生させることができる。組み換え抗体(概して、Huston et al., 1991;Johnson et al., 1991;Mernaugh et al., 1995を参照されたい)を産生させるために、動物のBリンパ球を産生する抗体、又はハイブリドーマに由来するメッセンジャーRNAを逆転写して、相補的DNA(cDNA)を得る。抗体cDNA(完全長であっても又は部分長であってもよい)を増幅し、ファージ又はプラスミドにクローニングする。cDNAは、分離した又はリンカーによって結合した部分長の重鎖及び軽鎖cDNAであり得る。抗体又は抗体断片を好適な発現系を用いて発現させて、組み換え抗体を得る。抗体cDNAは、適切な発現ライブラリーをスクリーニングすることによっても得ることができる。
【0176】
抗体は、当該技術分野において既知であるように、固体支持基板に結合させても、又は検出可能部分と複合体形成させても、又は結合及び複合体形成の両方を行わせてもよい。蛍光部分又は酵素部分の複合体形成の一般的考察については、Johnstone et al. (1982)を参照されたい。固体支持基板への抗体の結合も当該技術分野において既知である(Harlow et al., 1988;Borrebaeck, 1992)。
【0177】
本明細書及び特許請求の範囲において使用される場合、「抗体の免疫学的部分」という表現は、抗体のFab断片、抗体のFv断片、抗体の重鎖、抗体の軽鎖、抗体の重鎖及び軽鎖の非結合混合物、抗体の重鎖及び軽鎖から構成されるヘテロ二量体、抗体の重鎖の触媒ドメイン、抗体の軽鎖の触媒ドメイン、抗体の軽鎖の可変断片、抗体の重鎖の可変断片、並びに抗体の一本鎖変異体(scFvとしても知られる)を含む。また、この用語は、異なる種に由来する融合遺伝子の発現産物であるキメラ免疫グロブリンを含み、これらのうち一の種はヒトであり得るが、この場合、キメラ免疫グロブリンはヒト化されたと呼ばれる。典型的には、抗体の免疫学的部分は、抗原への特異的な結合について、それが由来する無傷抗体と競合する。
【0178】
任意で、抗体又は好ましくは抗体の免疫学的部分を、他のタンパク質との融合タンパク質と化学的に複合体形成させるか、又は該融合タンパク質として発現させてもよい。本明細書及び添付の特許請求の範囲の目的上、かかる融合タンパク質の全てが抗体又は抗体の免疫学的部分の定義に含まれる。
【0179】
本明細書中で使用される場合、「免疫原性作用物質(immunogenic agent)」又は「免疫原」又は「抗原」という用語は互換可能に使用され、単独で、アジュバントと共に、又はディスプレイビヒクル(display vehicle)上に提示してレシピエントへ投与することにより、自身に対して免疫学的応答を誘導することが可能な分子を表す。
【実施例】
【0180】
IV.実施例
以下の実施例は、本発明の或る特定の非限定的な態様を実証するために含まれる。以下の実施例に開示される技法は、本発明の実施に際して十分に機能する、本発明者によって発見された技法を表すことが当業者には理解されよう。しかしながら、当業者には、本開示に照らして、開示される具体的な実施形態において多くの変更を加えても、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく類似又は同様の結果を得ることができることが理解されよう。
【0181】
実施例1
I.結果
レプリコンベクターとRep/RepA供給ベクターとの植物の葉へのアグロバクテリウム媒介性同時送達によって、効率的なレプリコン形成及び高レベルのタンパク質産生がもたらされる。
【0182】
陽子線照射された(bombarded)タバコNT−1細胞におけるインゲン黄化萎縮ウイルス(BeYDV)ベースのレプリコンの形成が、標的タンパク質の一時的発現の増大をもたらすことが以前に示されている(Mor et al., 2003)。拡張可能な高収率一時的発現系を開発するために、初めにレプリコンベクターの植物の葉へのアグロバクテリウム媒介性送達が、レプリコン形成及び標的タンパク質発現の増大をもたらし得るかについて試験した。ベンサミアナタバコの葉に、緑色蛍光タンパク質をコードするレプリコンベクターpBYGFP(図1)を含有するアグロバクテリウム培養物を浸潤させるか、又はpBYGFP及びRep供給ベクターの1つ(Rep及びRepAの両方をコードするpREP110、又はRepのみをコードするpREP111、図2)を含有する2つのアグロバクテリウム培養物の混合物を同時浸潤させた。浸潤後5日目(dpi)に、pBYGFP単独を浸潤させた葉の領域、又はpBYGFP及びpREP111を同時浸潤させた葉の領域(BYGFP/REP111と略される)から非常にかすかな緑色の蛍光が観察されたが、浸潤バッファーのみを浸潤させた対照からは緑色のシグナルは見られなかった(図2A)。対照的に、BYGFP/REP110での同時浸潤によって、浸潤させた領域全体に強力な緑色の蛍光がもたらされた(図2A)。
【0183】
同様に、ベンサミアナタバコの葉に、VLP形成タンパク質であるB型肝炎コア抗原(HBc)をコードする別のレプリコンベクターpBYHBc(図1)を単独で、又はpREP110若しくはpREP111と組み合わせて浸潤させた。HBc発現をドットブロット法(データは示さない)及びポリクローナルサンドイッチELISA(図3A)によって、7日間にわたってモニタリングした。BYHBc/REP110の組み合わせが、2dpi及び4dpiに、生体重1g当たり平均しておよそ0.18mgのHBcという最も高い発現を有していた。GFP研究による結果と一致して、BYHBc処理とBYHBc/REP111処理との間に有意な差は見られなかった。
【0184】
この増大がレプリコン形成に関連しているか否かを決定するために、浸潤させた葉から抽出したDNAを、0.8%アガロースゲルに溶解させた。全ての試料において植物の染色体DNAを表す高分子量のバンドが観察され、これを内部ローディング対照とした。BYHBc/REP110レーンにおいて約3.0kb及び約2.0Kbの2つのさらなるバンドが可視化されたが、BYHBcレーン又はBYHBc/REP111レーンにおいては可視化されなかった(図3B)。HBc特異的プローブを用いたサザンブロット法によって、約3.0kb及び約2.0Kbのバンドが実際にHBcレプリコンであることが確認された(図3B)。興味深いことに、植物DNAを消化すると、約3.0kbの1つの主要バンドしか生じず(図3C)、約3.0kb及び約2.0kbのバンドが、それぞれ線状形態及び環状形態のレプリコンを表すことが示唆された。総合すると、上記の結果から、BYHBc/REPに関してレプリコン増幅と標的タンパク質蓄積との間の強い相関が実証され、タンパク質収率の上昇が主にレプリコンのコピー数の高さによることが強く示唆される。
【0185】
A.遺伝子サイレンシング阻害因子P19は、標的特異的mRNA及びタンパク質の蓄積を増進した
トマトブッシースタントウイルスに由来する遺伝子サイレンシング阻害因子P19が、遺伝子サイレンシングの抑制によって標的タンパク質の蓄積を増進することが報告されている(Voinnet et al., 1998)。P19をレプリコン系に組み入れることによって、タンパク質蓄積をさらに高めることができる否かを試験するために、P19発現ベクター(図1)を、レプリコンの組み合わせ及びRep供給ベクターを同時浸潤させたが、BYGFP/REP110/P19が最も強力なGFP蛍光を生じることが見出された(図2B)。同様に、BYHBc/REP110/P19の組み合わせが、平均して0.8mg/gFWという最も高いHBc発現を生じた(図3A)。P19の同時送達は、アガロースゲル電気泳動及びサザンブロット法によって実証されるように、レプリコン形成に有意に影響を与えなかった(図3B及び図3C)。対照的に、ノーザンブロット分析から、HBc特異的mRNAの蓄積がP19の同時発現によって大幅に増大したことが示された(図3D)。これらの結果は、P19が実際に、おそらくは導入遺伝子の転写後サイレンシングを抑制することによって標的mRNA及びタンパク質の蓄積を増大させ得ることを示している。
【0186】
1.ノーウォークウイルスカプシドタンパク質(NVCP)の一時的発現及びVLP形成
VLPワクチンを生産する際のこの系の有効性を確認するために、レプリコン系を、別のVLP形成抗原であるNVCPの一時的発現についても試験した。図5Aに、種々のベクターの組み合わせによるNVCP発現の経時変化研究を示す。BYsNV/REP110/P19が、NVCPを約0.34mg/gFWというレベルで生じる最良の組み合わせであった。これらの結果はGFP及びHBcの知見と一致している。
【0187】
NVCPの完全性(integrity)を、ウエスタンブロット法によって検証した。図5Bに示されるように、植物由来NVCPは昆虫細胞由来NVCP標準と同様、約58KDaのバンドを示した。
【0188】
BYNVCP葉抽出物を、VLP集合を測定するためにショ糖勾配沈降に供した。図5Cに示されるように、精製昆虫細胞由来NVCPは、主にVLPとして画分#10、#11及び#12中に存在するが、植物由来NVCPは、これら3つのVLP画分において、また非VLP形態を示す上部画分において検出された。
【0189】
2.BeYDVレプリコン系は非競合的である
インフルエンザVLP等の幾つかのタイプのVLP(非特許文献16、非特許文献17)、及び2種以上のタンパク質成分を含有する治療薬(mAb等、下記を参照されたい)は、1つの細胞内での複数のタンパク質の同時発現を必要とする。異なるタンパク質をコードする2つのレプリコンが同時発現することができるか否かを試験するために、ベンサミアナタバコの葉にBYGFP及び/又はBYDsRedを浸潤させた。UV照射下で、BYGFP/REP110/P19及びBYDsRed/REP110/P19を浸潤させた領域は、それぞれ緑色及び赤色の蛍光を示したが、BYGFP/BYDsRedを同時浸潤させた領域の蛍光は、おそらくは緑色及び赤色の両方の蛍光の重なりのために黄色に見えた(図2C)。葉肉細胞プロトプラストを続いて浸潤させた領域から単離し、蛍光顕微鏡下で観察した。BYGFP又はBYDsRedを個別に発現したプロトプラストの2つの集団を混合した場合、蛍光プロトプラストの重なりは観察されなかった(図6A及び6B)。対照的に、BYGFP/BYDsRedの同時浸潤からの蛍光プロトプラストの大部分(>80%)が緑色及び赤色の両方の蛍光を示し(図6C及び6D)、同じ細胞におけるGFP及びDsRedの同時発現が示された。したがって、BeYDVレプリコン系は非競合的であり、これによりモノクローナルmAb等の多重サブユニットタンパク質の生産におけるその適用が可能となる(下記を参照されたい)。
【0190】
2つの異なるレプリコンの形成が同時発現によって影響されないか否かを決定するために、浸潤させた葉から抽出されたDNAをアガロースゲル及び続くサザンブロット法によって分析した。図9Aに示されるように、分離したバンドは非浸潤、BYGFP単独又はBYDsRed単独の試料については観察されなかった。対照的に、約3kbのバンドがBYGFP/REP110/P19、BYDsRed/REP110/P19及びBYGFP/BYDsRed/REP110/P19のレーンにおいて可視化され、DNAレプリコンの効率的な形成が示された。バンドのサイズ(約3kb)は、GFP遺伝子及びDsRed遺伝子が非常によく似た長さであることから、BYGFPレプリコン及びBYDsRedレプリコンの両方について予想された通りであった。レプリコンの固有性をさらに検証するために、GFPプローブ及びDsRedプローブの両方を用いたサザンブロット法を行った。予想された通り、BYGFP/REP110/P19レプリコンはGFPプローブのみと反応し、BYDsRed/REP110/P19はDsRedプローブのみと反応したが(図9B〜図9C)、BYGFP/BYDsRed/REP110/P19試料はGFPプローブ及びDsRedプローブの両方について陽性のシグナルを生じ、シグナル強度は対応する単一のレプリコンを示すものと同様であり(図9B〜図9C)、BYGFP及びBYDsRedレプリコンがほぼ等しく同時発現されたことが示唆された。総合すると、これらの結果から、BeYDVレプリコン系が非競合的であり、これによりmAb等の薬学的に重要な多重サブユニットタンパク質の生産におけるその適用が可能となることが実証される。
【0191】
3.エボラウイルスの糖タンパク質gp1に対する防御mAbの高収率一時的発現
非競合発現系の多用性を実証するために、エボラウイルス糖タンパク質gp1に対する防御mAb(6D8)を、それぞれ6D8の重鎖サブユニット及び軽鎖サブユニットをコードする2つのレプリコンベクター(pBY−H(6D8)及びpBY−L(6D8))(図1)をベンサミアナタバコの葉に同時浸潤することによって発現させた。結果から、6D8 mAbが感染後4日目〜6日目に、0.3mg/gFW〜0.5mg/gFWという発現レベルで迅速に産生されたことが示された(図7A)。mAb発現のレベルは、植物ベースの発現系を用いてこれまでに達成された最も高いレベルに相当する(非特許文献15)。ウエスタン分析によって、軽鎖及び重鎖の両方の存在が確認された(図7B、レーン3)。還元ゲル及び非還元ゲル上のバンドパターンを比較することによって、抗体が軽鎖又は重鎖において切り取られる(clipping)ことなく完全に集合したことが示された(図7C、レーン3)。完全に集合したヘテロ四量体の主要バンドに加えて、部分的に集合したヘテロ三量体、ヘテロ二量体等に相当する小(minor)バンドも、ウエスタンブロットでの非還元条件下で観察された(図7C、レーン3)。部分的に集合した分子に対する完全に集合した分子の比率は、ヒトIgG陽性対照の比率及びmagnICON系によって生産されたmAbの比率(非特許文献15)と同様であり、mAbの集合が現在の最良の植物一時的系と同じくらい効率的であることが示された。
【0192】
4.単一ベクターレプリコン系
収率を損なうことなく3ベクターレプリコン系を単純化する可能性を調べた。ウイルスLIRプロモーターの制御下にある天然C1/C2コード領域を含有するレプリコンベクターを、GFP(pBYGFP.R)及びHBc(pBYHBc.R)それぞれの発現のために構築した(図1)。5dpiに浸潤させた葉にUV照射することによって、BYGFP.R試料又はBYGFP.R/P19試料が、BYGFP/REP110/P19と同様であるが、BYGFP/REP110よりも高い強度で蛍光を示したことが明らかとなった(図2D)。また、BYHBc.R試料及びBYHBc.R/P19試料が、4dpi又は7dpiに、BYHBc/REP110/P19に匹敵するレベルでHBcを発現したことが見出された(図8)。BYHBc/REP110/P19試料は、7dpiに重度の壊死のために回収しなかった。これらの結果をまとめると、より単純な単一ベクターレプリコン系が、対象となるタンパク質の最終収率という観点で三成分系と同じくらい効率的であることが実証される。
【0193】
単一レプリコンベクターを用いて2つの標的タンパク質を発現させるために、pBYGFPDsRed.RをGFP及びDsRedの同時発現のために構築した(図1)。タンデム結合したレプリコンが独立して放出及び増幅され、両方のタンパク質の効率的な発現が生じることが仮定された。pBYGFPDsRed.Rを浸潤させた葉から調製したプロトプラストの検査によって、GFP蛍光及びDsRed蛍光の両方が蛍光プロトプラストの約95%において同時に検出されることが示された(図6E及び図6F)。したがって、単一レプリコンベクター系は、同じ細胞において複数の標的タンパク質の高レベルの同時発現を生じる。
【0194】
3ベクターレプリコン系が収率を損なうことなく単純化することができることが示されている(Huang et al. 2009)。天然REP発現カセット(ウイルスLIRプロモーターの制御下のC1/C2コード領域)を含有する単一ベクターレプリコン(図1中のBYGFP.R等)は、単一のタンパク質の発現について三ベクター系と同じくらい効率的である(Huang et al. 2009)。単一ベクターレプリコン系を複数のタンパク質を同時に発現させるのに使用することができるかを試験するため、pBYGFPDsRed.RをGFP及びDsRedの同時発現のために構築した(図1)。pBYGFPDsRed.Rを浸潤させた葉から調製したプロトプラストの検査によって、GFP蛍光及びDsRed蛍光の両方が蛍光プロトプラストの約95%において同時に検出されることが示され(図6E及び図6F)、同じ細胞内での両方の蛍光タンパク質の高効率の同時発現が示された。浸潤させた葉からのDNAの分析によって、BYGFPDsRed.R試料が異なるサイズのレプリコン(GFPプローブ又はDsRedプローブとも異なる形で反応した)を産生したことが明らかとなり(図10)、GFPレプリコン及びDsRedレプリコンの同時の存在が示される。BYGFPDsRed.R試料については、最も強いDsRedプローブ反応バンドは約3.5kbであり(図10)、これはBYGFP.Rレプリコンのサイズと同様であり、このバンドが2つのLIR内に35S/TEV 5’−DsRed−VSP 3’−SIR−C2/C1配列を含むDsRedレプリコンを表すことが示唆される(図1を参照されたい)。一方、一番上のGFPプローブ反応バンドは約2.6kbであり(図10)、これは2つの隣接LIR要素間の35S/TMV 5’−GFP−rbcS 3’−SIR領域から構成されるより小さいレプリコンについて予想される(図1を参照されたい)。これらの結果から、2つのタンデム結合したレプリコンが、独立して放出及び増幅されることができ、2つの異なる二本鎖DNAレプリコンの高レベルの増殖及び両方のタンパク質の効率的な発現をもたらすことが実証される。興味深いことに、BYGFPDsRed.Rレーンにおいて、約1.6kbのバンドがGFPプローブと反応し、わずかに高い約1.7kbのバンドはDsRedプローブとあまり強く反応せず(図10)、おそらくはそれぞれ対応するレプリコンの一本鎖DNA形態を表すことも観察された。それにもかかわらず、データは、単一レプリコンベクター系を複数の標的タンパク質の高レベルの同時発現に使用することが実現可能であることを示している。
【0195】
B.単一レプリコンベクターを用いた完全長IgGの同時発現及び集合
単一ベクターレプリコン系の有効性をさらに実証するために、C1/C2(Rep/RepA)、6D8 mAbの軽鎖及び重鎖のコード配列に対する3つの発現カセットを有するベクターを構築した(pBY−HL(6D8).R、図1)。ELISAによって、この単一ベクターpBY−HL(6D8).Rの浸潤による6D8の発現レベルが、4つの別個のベクターの同時浸潤によって生じたものに匹敵する(これよりわずかに高い)ことが示された(図7)。さらに、SDS−PAGE及びウエスタン分析によって、pBY−HL(6D8).Rによって産生されるmAbが、正しい軽鎖及び重鎖の成分を有し(図7B、レーン4)、同様に完全に集合する(データは示さない)ことが示される。これらのデータは、mAb及び他の多重サブユニットタンパク質医薬品を製造する際のこの単純な系の潜在的な広い用途をさらに示した。
【0196】
II.考察
A.単一ベクター、非競合レプリコン発現系の開発
単純な植物一時的発現系は、特に3つ以上の異なるサブユニットタンパク質の産生及び集合を必要とするような、重要な医薬品の迅速な高収率の生産に未だ利用可能ではない。そのため、この研究はかかる必要性に対処するよう設計されている。ジェミニウイルスの成員であるインゲン黄化萎縮ウイルス(BeYDV)の複製機構を利用し、最終的に一連の最適化手順によって単一ベクターレプリコンベースの高収率の一時的な発現系を開発した。
【0197】
ジェミニウイルスは感染細胞の核内で非常に高コピー数で複製する一本鎖環状DNAゲノムを有しているため、コピー数を増大させ、ウイルスレプリコンに連結する外来遺伝子の発現レベルを増進する遺伝子増幅戦略において非常に魅力的である(Palmer and Rybicki, 1998に概説されている)。Mor et al. (2003)は、タバコNT−1細胞へのインゲン黄化萎縮ウイルス(BeYDV)由来レプリコンベクター及びRep/RepA供給ベクターの陽子線照射(bombardment)による同時送達によって、レプリコン形成及び標的タンパク質の高度発現がもたらされたことを以前に示している。しかしながら、このプロセスは実際には拡張可能でない。本研究では、植物の葉へのレプリコンベクターのアグロバクテリウム媒介性送達によって、高コピー数のレプリコン形成がもたらされ(図3)、標的タンパク質の発現が劇的に増大したことが示された(図3A及び図5A)。実際、レプリコンDNAは、その存在をEtdBr染色によって可視化することができるほど豊富である(図3B及び図3C)。データはまた、より高いHBc収率が高コピー数のレプリコンと相関することを明らかに示している(図3)。
【0198】
PMPを高レベルで迅速に生産する際の三成分レプリコン系の有用性を示すために、初めに2つのワクチン抗原(HBc及びNVCP)を試験した。しかしながら、組み換えHBc及びNVCPは、以前にトランスジェニック植物において比較的低いレベルで発現されている(Tsuda et al., 1998、Mason et al., 1996)。例えば、トランスジェニック植物は、葉生体重1g当たり最大で24μgのHBcを発現した(Tsuda et al., 1998)。対照的に、レプリコン系は抗原を、感染後4日〜5日以内に、HBc及びNVCPのそれぞれに関して平均して0.8mg/gFW及び0.34mg/gFWのレベルで産生した。抗原蓄積の速度及びレベルは、最先端のmagnICON一時的発現系によってもたらされるものに匹敵する(非特許文献14)。ここに報告した結果の他に、この系は、Narita104ノロウイルスカプシドタンパク質及びヒト乳頭腫ウイルスL1カプシドタンパク質を含む、幾つかの他のワクチン抗原を発現させるためにも首尾よく使用されている(未発表のデータ)。総合すると、ジェミニウイルスレプリコン系を使用して、ワクチン抗原を将来の商業的開発に好適な高いレベルで生産することができることが確立された。
【0199】
最近まで、ヘテロオリゴマータンパク質を植物ウイルスベクターを用いて効率的に発現させることは、同じウイルス骨格上に構築したウイルスベクターの同時送達では常に、「競合レプリコン」の一般的なシナリオである、1つの細胞内での一方のベクターの早期の分離及びその後の選択的増幅が生じているために困難であった(非特許文献15;Dietrich and Maiss, 2003;Diveki et al., 2002;Hull and Plaskitt, 1970)。この問題は最近になって、非競合TMV及びPVXのそれぞれに由来する2つのベクターセットを利用することによって克服された(非特許文献15)。しかしながら、この系には、1つのタンパク質サブユニットにつき3つの構築モジュールの重感染が必要とされ(非特許文献15)、このことは3つ以上のヘテロサブユニットを有するヘテロオリゴマータンパク質(分泌IgA及びIgM等)が医薬用標的である場合に課題となり得る。今日現在、3つ以上のサブユニットを有する異種タンパク質の効率的な同時発現及び集合を可能にする植物一時的発現系の報告はない。
【0200】
ほぼ完全長のウイルスゲノムのin planta集合及び複製に依存する、伝統的な又は「脱構築した」ウイルス発現系とは異なり、BeYDV由来レプリコン系は、エピソームレプリコンの開始及び増幅にLIR領域及びRep/RepAの2つのウイルス要素しか必要としない(Mor et al, 2003)。したがって、この系を複数のタンパク質サブユニットの非競合同時発現に使用することができると推測された。実際、2つの蛍光タンパク質(GFP及びDsRed)をコードするレプリコンの同時浸潤によって、両方の蛍光が示され、80%を超える細胞が同じ細胞内で両方のタンパク質を同時発現し(図6)、BeYDVレプリコン系が非競合的であることが示された。
【0201】
モノクローナル抗体の市場は、およそ14億米ドルの規模であり、タンパク質治療薬市場全体の4分の1以上を占めると評価されており(2005年)、以来、医薬品業界で最も急成長している分野であった(Monoclonal antibodies 2007, Arrowhead publishers)。mAbの効率的な生産は、医薬用タンパク質生産のための発現系の商業的実現可能性を評価する上で標準ベンチマークとなっていた。したがって、レプリコン系の多用性を、エボラウイルスGP1に対する防御mAbを産生させることによってさらに実証した。結果から、レプリコン系が6D8 mAbを迅速に(4dpi)産生し得ることが示された(図7)。さらに、このmAbはその四量体構造まで正確に集合した(図7C)。本研究の素晴らしい結果の1つは、mAb発現レベルが植物ベースの発現系を用いてこれまで達成された最高のmAbレベルと同じ範囲にあることである(図7A)(非特許文献15)。6D8に加えて、完全な集合性(assembly)及び機能性を有する(未発表のデータ)6D8の2倍の大きさのmAb融合タンパク質も首尾よく発現された。高レベルの集合したmAb(及びmAb融合タンパク質)の迅速な生産の成功によって、PMPを生産する際の発現系の潜在的に広い用途が明らかに実証された。
【0202】
レプリコン系が非競合的であることを踏まえ、多重サブユニットタンパク質医薬品候補の実際の生産にとって実現可能であるように系を単純化することに焦点を切り替えた。具体的には、本発明者らは、多重サブユニットPMPを発現させるのに必要とされる多重ベクター系を、収率又は速度を損なう(comprising)ことなく単一ベクターに単純化することができるか否かを決定しようとした。初めにRep/RepA発現カセットをレプリコンベクターに組み込んだ。結果から、かかる単一ベクターのうち2つ(それぞれGFP又はHBcを発現する(図1)、pBYGFP.R及びpBYHBc.R)が、標的タンパク質の発現を誘導する際にそれらの三成分対応物と同じくらい効率的であることが示された(図2D及び図8)。第3の構築物では、Repに対する発現カセット、mAb軽鎖に対するレプリコン及びmAb重鎖に対するレプリコンを単一ベクターに組み合わせた(図1)。注目すべきことに、この単一ベクターpBY−HL(6D8).Rの感染によって、完全に集合したmAbが、4つの別個のベクターの重感染によってもたらされるものと同様のレベルで産生された(図7)。上記の3つの選択されたタンパク質標的による結果を総合すると、多成分レプリコン系を、標的PMPの最終収率を犠牲にすることなく、より単純な単一ベクター系に首尾よく単純化することができることが示される。さらに、単一レプリコンベクターによる完全に集合した四量体IgG(2つのヘテロオリゴマーサブユニット)の産生の成功から、4つものヘテロサブユニットの同時発現を、2つのレプリコンベクターを用いて、又は3つ以上のタンデム結合したレプリコンを有する単一ベクターを作り出すことによって容易に達成することができることが強く示唆される。知る限りでは、この技術はこれまでのところ、全ての植物一時的発現系の中で、かかる可能性を有する最初で唯一の発現系である。
【0203】
上記の系によるVLPワクチン及びmAbの発現レベルは、最良の植物一時的系のレベルに匹敵するが、いかなる意味においても完全に最適化されてはいない。この系には、未だ改善されていない遺伝的及び技術的要素が依然として多く存在する。例えば、抗サイレンシング要素P19を単純化した単一ベクター系に組み込むことができる。さらに、ジェミニウイルスベクターを脱構築して、magICON系におけるウイルス要素についてより良好な発現を達成することができる(非特許文献12)。他の文献が示唆するように、高レベルのオリゴマーPMPの蓄積によって要求される集合の増加に対処するために、シャペロンを発現カセットに組み入れてもよい(Nuttall et al., 2002)。
【0204】
B.VLP集合
多数のウイルス構造タンパク質が、ウイルス様粒子(VLP)と称される組織的なマクロ分子構造(本物のビリオンを形態学的に模倣するが、感染性ウイルスゲノムを欠く)へと自己集合することができる。VLPは非常に免疫原性が高く、ワクチン、特に弱毒化生ウイルス又は不活化ウイルスベースのワクチンのより安全な代替品として使用することができる(Garcea and Gissmann, 2004)。例えば、酵母産生HBsAg VLPは、史上初の組み換えサブユニットワクチンの構成要素である(McAleer et al., 1984)。この論文では、レプリコン系によって産生されるHBc及びNVCPがVLPに集合するか否かが検査されている。HBcに関しては、ショ糖勾配分析、ELISA、ドットブロット分析及び電子顕微鏡検査によって肯定的な結果が得られた(図4及び図5)。NVCP粗抽出物中のタンパク質の勾配分離を用いると、ショ糖勾配上に、集合したサブユニット(最上部画分、図5)及び集合したVLP(画分10〜画分12、図5)として部分的に割り当てられる2つのピークが検出された。後者のピークは、昆虫細胞において産生されるVLPと共移動する(co-migrated)(図5)。この「2ピーク」パターンは、マウスにおいて非常に免疫原が高かった(Santi et al., 2008)magnICON系によって産生されるNVCPについて観察されるものと同様である。したがって、このレプリコン系によって産生されるVLP形成抗原は、高次オリゴマーVLPへと効率的に集合することができると結論付けられた。
【0205】
C.トランスジェニック植物発現系におけるレプリコンベクターの適用
Arntzen et al., 2005において論考されるように、植物における抗原の発現に対して、安定なトランスジェニック遺伝子発現及びウイルスベクターによる一時的発現という2つの優越した戦略があった。本明細書中で提示したもののような一時的発現系は、初期特性化のための材料を提供する上で迅速な方法となるが、安定なトランスジェニック植物は極めて大量のPMP生産が必要とされる場合の最も有望な拡張性を秘めている。安定な系及び一時的な系の両方にとって、mRNA蓄積がタンパク質発現における障害となっている。しかしながら、安定なトランスジェニック技術は「位置効果」、すなわちmRNAレベルが染色体において導入遺伝子を挿入する位置に左右される(Matzke and Matzke, 1998)ためにさらに複雑である。このため、高度に発現するトランスジェニック系統の発見は統計作業となっており、数百又はさらには数千もの植物を、高レベルで発現する外れ値を特定するためにスクリーニングする必要がある。ジェミニウイルスのRepタンパク質に固有のニッキング機能(Laufs et al., 1995a、Laufs et al., 1995b)は、LIRのタンデムリピートの間にクローニングした組み換えウイルスDNAの、染色体に組み込まれた部位からの複製放出を可能にする(Hayes et al., 1988、Grimsley et al., 1987、Kanevski et al., 1992)。次いで、DNAはエピソームとして核内で複製される。ジェミニウイルスレプリコンのこれらの特性から安定なトランスジェニックベクターの開発が可能となるが、この場合、ジェミニウイルスレプリコンのエピソーム複製性及び高コピー数によって導入遺伝子発現の位置効果が失われ、安定な形質転換植物における高い標的タンパク質発現レベルが保証される。以前の研究から、安定なトランスジェニックジャガイモにおいて誘導プロモーターによって誘導されたRepと同時発現させた、これまでのバージョンのインゲン黄化萎縮ウイルス由来ベクターが、mRNA発現において80倍の増大をもたらし、トランスジェニックタンパク質発現において10倍の増大をもたらしたことが実際に示された(Zhang and Mason, 2006)。この証拠によって、大規模PMP生産のための高発現の安定なトランスジェニックベクターを開発するために、現在の改良されたバージョンのレプリコンを用いる際の成功の可能性がさらに支持される。一時的及び安定なトランスジェニック技術の両方における改良されたレプリコンベクターの利用はしたがって、医薬品候補の迅速な評価及び商業生産のための拡張可能なプラットフォームを可能にする。
【0206】
総合すると、本研究により、VLPワクチン及び多重サブユニット治療薬を含む広範囲のPMPに対して迅速な高レベルのPMP蓄積を達成することが可能である、ロバストなジェミニウイルスベースの発現系が開発された。mAb及び他のヘテロオリゴマー製剤の生産のために複数の発現カセット/レプリコンを送達する単純化した単一ベクターの能力は、その商業生産の実現可能性において他の系に優る重要な利点をもたらす。さらに、この系を、大規模PMP生産のための安定なトランスジェニック技術に適用することもできる。最適化され、商業的規模で実施されれば、この発現系は迅速に、効率的に、コスト効率よくかつ安全に医薬用タンパク質を生産する技術プラットフォームを提供する可能性を有する。
【0207】
実施例2−組み換え免疫複合体(RIC)の発現
本実施例は、2.87kbの遺伝子を発現して、130kDaのタンパク質:モノクローナル抗体6D8の重鎖をコードする遺伝子(実施例1、結果、4.単一ベクターレプリコン系)をエボラウイルス糖タンパク質GP1(H2gpKDEL)に融合させた修飾免疫グロブリンを産生する、タンデム二重ジェミニウイルスレプリコン系の使用を説明するものである。タバコモザイク(RNA)ウイルスベクターを用いた以前の研究では、高分子量タンパク質を産生するために発現及び翻訳することのできるRNA分子サイズの制限が示されている。例えば、マグニフェクション(magnifection)系は、最大で2.3kbの遺伝子又は最大で80kDaのタンパク質を発現することができる(Gleba et al., 2007)。さらに、本実施例では、同じT−DNAプラスミドに組み入れられる別個のジェミニウイルスレプリコンにおける重鎖融合H2gpKDEL及び軽鎖K3の同時発現を実証する。
【0208】
構築物pBYR−H2gpKDEL−K3は、実施例1(結果、4.単一ベクターレプリコン系)に記載されるpBY−HL(6D8).Rに類似しており、それに由来する。pBYR−H2gpKDEL−K3を構築するために、ヘキサペプチドSEKDELのC末端付加を有するエボラウイルス(Zaire株、Genbank AY354458)GP1をコードする1407bpの植物最適化遺伝子を、基本的に記載のように(Chargelegue et al., 2005)、ヒト化6D8 H2重鎖のC末端にリンカー(GS)を介して融合させた。この重鎖融合体(H2gpKDEL)を、pBY−HL(6D8).Rに6D8重鎖の代わりにライゲートさせて、二重レプリコン構築物pBYR−H2gpKDEL−K3を得た。このT−DNAプラスミドを、アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)LBA4404に電気穿孔し、プラスミド調製及び制限消化によって確認した。
【0209】
アグロバクテリウム培養物(O.D.600=0.25)を、P19構築物(実施例1)を有する等量のアグロバクテリウム(Agrobaceria)(O.D.600=0.25)と混合し、4週齢〜5週齢の全ベンサミアナタバコ植物の葉に減圧浸潤させた。葉を4日後に採取し、PBS(pH7.5)及びプロテアーゼ阻害剤錠剤(Sigma Chemicals)を含有する抽出バッファーを用いて実施例1に記載されるように抽出した。次いで、取り出した上清(10000×g)を硫酸アンモニウム分画に供し、35%〜60%画分にRICを得た。RIC画分を次いで、プロテインGアフィニティークロマトグラフィー(Pierce Protein Research Products)に商品パンフレットに記載されるように供した。
【0210】
還元SDS−PAGE分析による精製工程の結果を図11に示す。硫酸アンモニウム分画によって、RuBPカルボキシラーゼの大半が除去され、プロテインGアフィニティークロマトグラフィーによって、幾らかの明らかなタンパク質分解産物(レーン7、レーン8、レーン9)と共に高度に精製された重鎖及び軽鎖が得られた。
【0211】
還元SDS−PAGE及びウエスタンブロットによって分析した精製RICを図12に示す。抗ヒトγ鎖及び抗GP1(6D8エピトープ)用のプローブによって、130kDaにバンドが検出された(予想された完全長H2gpKDEL融合体)。また、抗γ鎖プローブによって、110kDa、55kDa及び50kDaに3つの他のバンドが検出された(完全長融合タンパク質のタンパク質分解(proteoltyic)産物を表すと考えられる)。κ鎖プローブによって、予想された25kDaのタンパク質が示された。したがって、二重レプリコンベクターpBYR−H2gpKDEL−K3を用いると重鎖融合体(H2gpKDEL)及び軽鎖の両方が発現し、蓄積した。この系を用いて発現させることのできるコード配列の長さに対する実際的な限界は、見出されていない。
【0212】
実施例3−方法
ベクター構成
35Sプロモーター/TEV 5’ UTRとVSPターミネーターとの間に天然BeYDV C1/C2遺伝子を含有するプラスミドpBY036は、以前に記載されている(Mor et al., 2003)。C1/C2発現カセットをXhoI/SacI消化によってpBY036から放出させ、pPS1(Huang and Mason, 2004)に同じ部位から挿入し、Rep及びRepAの両方の発現のためのバイナリーベクターpREP110を作製した(図1)。バイナリーベクターpREP111をRepのみの発現のためにpBY037(Mor et al., 2003)から同様に作製した。トマトブッシースタントウイルスに由来するP19遺伝子を、プライマーP19−Bam(5’−tcaaggatccatggaacgagctataca)(配列番号1)及びP19−Sac(5’−agaggagctcttactcgccttctttttc)(配列番号2)を用いて、pTBSV(H. Scholthof、テキサスA&M大学)から増幅し、NcoIびSacIで消化し、pPS1に挿入し、バイナリーベクターpPSP19を得た。
【0213】
レプリコンベクターを、骨格ベクターpBY023(Mor et al., 2003)をベースにして構築した。pBYsNV410(Zhang and Mason, 2006)中のNVCPレプリコンを、AscI及びFseIでの消化によって放出させ、pBY023に同じ部位でライゲートさせて、pBYNVCPを作製した。GFP遺伝子を、pICH7410(非特許文献12)(Icon Genetics)からプライマーP−GFP/NcoI.F(5’−GTCACCATGGTGAGCAAGGGCGAG)(配列番号3)及びP−GFP/SacI.R(5’−ATTAGAGCTCTTACTTGTACAGCTCGTC)(配列番号4)を用いて増幅し、NcoI及びSacIで消化し、pIBT210(Haq et al., 1995)に挿入して、pGFPi210を作製した。TEV 5’UTR−GFPを含有するXhoI−SacI断片を、pBYsNV110(Zhang et al., 2006)の同じ部位にライゲートさせて、pBYGFPを作製した。DsRed遺伝子を、プライマー5’−ATCGTCTAGAACCATGGTGCGCTCCTCCAAG(配列番号5)及び5’−ATTAGAGCTCCTACAGGAACAGGTGGTG(配列番号6)を用いてpDsRed1−1(Clontechカタログ番号6922−1)から増幅し、XbaI及びSacIで消化し、pIBT210にライゲートさせて、pIBT−DsRedを作製し、それからXhoI−SacI断片をpBYGFPに挿入し(substituted into)、pBYDsRedを作製した。B型肝炎コア抗原遺伝子(HBc)を、pICH−HBc(非特許文献14)からNcoI−SacIでの消化によって得て、pIBT210にライゲートさせた後、XhoI−SacIによってpBYGFPにサブクローニングし、pBYHBcを作製した。Rep遺伝子含有レプリコンを、pBY002(Mor et al., 2003)に由来するBeYDV C1/C2遺伝子の727bpのBamHI断片のpBYGFP及びpBYHBcへの挿入によって作製し、それぞれpBYGFP.R及びpBYHBc.Rを作製した。
【0214】
タンデム二重レプリコン構築物では、プライマー35S−Sda(5’−TGACCTGCAGgCATGGTGGAGCACGACA)(配列番号7)及びVSPHT(5’−TGAATAGTGCATATCAGCATACCTTA)(配列番号8)によるpBYDsRed及びpIBT210.3(Judge et al., 2004)における発現カセットの増幅によって得られた、単一のエンハンサー要素を有するCaMV 35Sプロモーターを使用した。pIBT210.3から増幅された断片中のプロモーター及びタバコモザイクウイルス(TMV)の5’−UTR、pBYGFPに由来するGFP遺伝子、及びエンドウマメリブロース1,5−二リン酸カルボキシラーゼ小サブユニット(rbcS)ターミネーター(Friedrichsen et al., 2000)を、pBY024(Mor et al., 2003)のPstI部位及びEcoRI部位に共にライゲートさせ、pBYGFP210.3を作製した。pBYGFP210.3をBamHIで消化し、クレノウ酵素で充填し(filling)、次いでAscIで消化することによって得られたGFPレプリコンを含有する断片を、AscIで消化し、クレノウ酵素で充填し、次いでSacIで消化した35S−Sda増幅pBYDsRedレプリコンと共に、AscI及びSacIで消化したベクターpBYHBc.Rにライゲートさせ、pBY−GFPDsRed.Rを作製した。
【0215】
マウスモノクローナル抗体6D8(Wilson et al., 2000)の重鎖(H2)及び軽鎖(K3)の遺伝子配列を、ヒト定常領域配列をγ鎖タイプ1及びκ鎖(Biovation,Edinburgh,Scotland)で置換することによってヒトに対して脱免疫化した(de-immunized)。得られる配列を使用して、植物コドン最適化遺伝子を設計し、商業的に合成した(Retrogen,San Diego,CA)。pCHF4−6D8−H2(Mapp Biopharmaceutical, Inc.)中のH2遺伝子を、プライマーH2−SEKDEL−Kpn(5’−GCGGTACCTTAAAGCTCATCCTTCTCTGATTTACCCGGAGACAAGGAGAG)(配列番号9)によるPCRによって、C末端「SEKDEL」ヘキサペプチドを付加するように末端処理して(end-tailored)、NcoI及びKpnIで消化し、pPS1に挿入し、p6D8−H2を作製し、それからTEV5’−UTR−H2−VSP3’を含有するXhoI−EcoRI断片をpBYGFPに挿入し、pBYH(6D8)を作製した。pCHF4−6D8−K3(Mapp Biopharmaceutical, Inc.)中のK3遺伝子をNcoI−KpnI断片として得て、35SプロモーターTMV5’及びrbcS3’エレメントとライゲートさせ、これを(thus)pBYGFPベクターに挿入して、pBY−L(6D8)を作製した。pBY−L(6D8)からのレプリコン(LIRからSIRまで)をpBYGFP.Rに挿入し、pBYK3Rを作製した。H2−SEKDEL断片を、pBY−H(6D8)からプライマーH2−Xba(5’−ACGATCTAGAACAATGGGATGGTCTTGCATC)(配列番号10)及びVSPHTを用いて増幅し、XbaI及びKpnIで消化し、ベクターpBY027(Mor et al., 2003)に挿入し、pBY−H2K210を作製した。次いで、pBY−H2K210からのレプリコンをpBYK3Rに挿入し、タンデム二重レプリコン構築物pBY−HL(6D8).Rを作製した。
【0216】
アグロインフィルトレーション手順
バイナリーベクターを、電気穿孔によりアグロバクテリウム・ツメファシエンスLBA4404に別個に導入した。得られた株をプラスミドの制限消化によって検証し、30℃で一晩増殖させ、温室栽培した6週齢〜8週齢のベンサミアナタバコ植物の葉の浸潤に使用した。簡潔に述べると、細菌を5000×gで5分間の遠心分離によって沈殿させた後、浸潤バッファー(10mM 2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸(MES)(pH5.5)及び10mM MgSO)に、600nmで所望の光学密度(OD)まで再懸濁した。得られた細菌懸濁液を単独で又は幾つかの株の混合物として、完全に展開した葉に針を有しないシリンジを用いて小さく穴をあけて注入した(Huang and Mason, 2004)。
【0217】
植物DNA抽出及びサザンブロット法
植物の葉から全DNAを記載のように(Zhang and Mason, 2006)抽出した。DNA(約3μg)を消化しないか、又はXhoIで消化し、0.8%アガロースゲルに溶解し、エチジウムブロマイドで染色し、ナイロンメンブレン(Zeta−probe,Bio-Rad,Hercules,CA)に転写した。次いで、メンブレンを、HBc遺伝子のそれぞれ5’末端(−TAGCCATGGACATTGACCCTT−)(配列番号11)及び3’末端(−TTAACATTGAGATTCCCT−)(配列番号12)に固定されたプライマーによるPCRによって、製造業者の使用説明書(Roche Applied Science,Indianapolis,IN)に従って合成したジゴキシゲニン(digoxygenin)(DIG)標識HBc特異的プローブとハイブリダイズさせた。
【0218】
植物RNA抽出及びノーザンブロット法
全RNAの単離及びRNAブロット分析を記載のように(Zhang and Mason, 2006)行った。HBcの転写産物を、DNAブロットに対して調製したDIG標識プローブを用いて検出した。
【0219】
タンパク質分析
HBc分析のために、ベンサミアナタバコの葉から全可溶性タンパク質を抽出し、以前に記載されるように(Huang et al., 2005)測定した。全HBcを、以前に記載されるように(非特許文献14)、わずかに変更を加えて(5000倍に希釈したマウスポリクローナル抗HBc[腹腔内注射した大腸菌由来組み換えHBc(ViroGen,Watertown,MA)]を検出に使用した)サンドイッチELISAによって定量化した。ドットブロット法、ウエスタンブロット法及びショ糖勾配沈降を以前に記載されるように(非特許文献14)行った。
【0220】
NVCP分析のために、全葉タンパク質をFastPrep装置を用いて氷冷酸抽出バッファー(25mMリン酸ナトリウムバッファー(pH5.75)、100mM NaCl、50mMアスコルビン酸ナトリウム及び10μg/mlのロイペプチン)で抽出し、取り出した上清を記載のように(Mason et al., 1996)ELISAによってNVCPについてアッセイした。ウエスタンブロット法を、ウサギ抗rNV血清でプローブする以外は以前に記載されるように(Mason et al., 1996)行った。NVCP抽出物のショ糖勾配沈降は、変更したプロトコル(Mason et al., 1996)に従った。簡潔に述べると、植物抽出物又は昆虫細胞由来NVCP標準を、変性リン酸バッファー(25mMリン酸ナトリウム(pH5.75)、100mM NaCl)中に溶解した5mlの10%から60%の線形のショ糖勾配上に重層した。BeckmanのSW55Tiローターにおいて4℃、45000rpmで3時間遠心分離した後、15個の画分(各々0.333ml)を取り、NVCP含量についてELISAによってアッセイした。
【0221】
6D8 mAb分析については、全葉タンパク質を、FastPrep装置(Bio101)を用いて抽出バッファー(25mMリン酸ナトリウム(pH6.6)、100mM NaCl、1mM EDTA、0.1%Triton X−100、10mg/mlのアスコルビン酸ナトリウム、10μg/mlのロイペプチン、0.3mg/mlのフッ化フェニルメチルスルホニル)で抽出した。精製した(clarified)全タンパク質抽出物を、以前に記載されるように(非特許文献15)、mAbの集合形態(軽鎖及び重鎖の両方を有する)を検出するように設計したELISAによって分析した。具体的には、プレートをγ重鎖に特異的なヤギ抗ヒトIgG(Southern Biotech)でコーティングした。植物タンパク質抽出物とのインキュベーション後、HRP結合抗ヒトκ鎖抗体(Southern Biotech)を検出抗体として使用した。上記のγ鎖及びκ鎖特異的抗体もウエスタンブロット分析に使用した。
【0222】
電子顕微鏡検査
HBcを以前に記載されるように(非特許文献14)浸潤させた葉から部分的に精製した。部分的に精製したHBcを0.5%酢酸ウラニル水溶液でのネガティブ染色に供し、透過電子顕微鏡検査をPhilipsのCM−12S顕微鏡を用いて行った。
【0223】
ベンサミアナタバコ葉肉細胞プロトプラストの単離
プロトプラストを、0.4Mマンニトール、8mM CaCl、0.4%セルラーゼ及び0.4%Macerozyme R−10を含有する溶液中での室温で10時間〜16時間のインキュベーションによって浸潤させた葉組織から放出させた。放出させたプロトプラストを孔径62μmのナイロンメッシュを通して濾過した。
【0224】
GFP及びDsRedの可視化
GFPを発現する葉を、B−100APランプ(UVP,Upland,CA)によって発生させたUV照射下で観察した。GFP及びDsRedを同時発現する葉を、UVGL−25ランプ(UVP,Upland,CA)の下で観察した。プロトプラストを、GFPフィルターセット(Chroma番号41028;励起フィルター、500/20nm;蛍光(emission)フィルター、535/30nm)及びDsRedフィルターセット(Chroma番号42005;励起フィルター、540/40nm;蛍光フィルター、600/50nm)を有するNikonの倒立顕微鏡で観察した。
【0225】
本明細書中で開示及びクレームされる組成物及び方法は全て、過度の実験なく、本開示に照らして作製及び実行することができる。本発明の組成物及び方法は、好ましい実施形態の観点から記載されているが、本発明の概念、精神及び範囲から逸脱することなく、組成物及び方法に対して、及び本明細書中に記載される方法の工程又は一連の工程において変更を加えることができることは当業者に明らかである。より具体的には、同じ又は同様の結果が達成されれば、化学的にかつ生理学的に関連する或る特定の薬剤が、本明細書中に記載される薬剤の代替となり得ることが明らかである。当業者に明らかな、かかる同様の代替物及び変更は全て、添付の特許請求の範囲によって規定される本発明の精神、範囲及び概念の内にあると見なされる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物細胞において産物を産生させる方法であって、
プロモーター及び対象となる産物をコードする領域を含む第1の核酸セグメントを得ることであって、該対象となる産物をコードする領域のいずれかの側に、ジェミニウイルスゲノムの長い遺伝子間領域(LIR)の少なくとも一部が隣接する、第1の核酸セグメントを得ること、
プロモーター及びジェミニウイルスゲノムのRep/RepAタンパク質をコードする核酸を含む第2の核酸セグメントを得ること、
前記第1の核酸セグメント及び前記第2の核酸セグメントを植物細胞に導入すること、並びに
前記植物細胞又はその任意の世代の子孫において前記対象となる産物を産生させることを含む、方法。
【請求項2】
前記第1の核酸セグメントがジェミニウイルスゲノムの短い遺伝子間領域(SIR)をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記タンパク質を前記植物細胞又はその任意の世代の子孫から単離することをさらに含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の核酸セグメント及び前記第2の核酸セグメントが、それぞれ第1及び第2のベクターに含まれる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記第1及び第2のベクターを前記植物細胞に同時に導入する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記第1及び第2のベクターを前記植物細胞に別個に導入する、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の核酸セグメント及び前記第2の核酸セグメントが、単一のベクターに含まれる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
第3の核酸セグメントを得ること、及び該第3の核酸セグメントを前記植物細胞にトランスフェクトすることをさらに含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記第3の核酸セグメントがプロモーター、ジェミニウイルスゲノムのLIRの少なくとも一部、及び対象となる産物をコードする領域を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記第3の核酸セグメントが、プロモーター及び遺伝子サイレンシング阻害因子を含む、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
前記遺伝子サイレンシング阻害因子が、トマトブッシースタントウイルスに由来する遺伝子サイレンシング阻害因子P19である、請求項10に記載の系。
【請求項12】
前記タンパク質を前記植物細胞又はその任意の世代の子孫から単離することをさらに含む、請求項8〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記第1の核酸セグメント、前記第2の核酸セグメント及び前記第3の核酸セグメントが、それぞれ第1、第2及び第3のベクターに含まれる、請求項8〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記第1、第2及び第3のベクターを前記植物細胞に同時に導入する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記第1、第2及び第3のベクターを前記植物細胞に別個に導入する、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記第1の核酸セグメント、前記第2の核酸セグメント及び前記第3の核酸セグメントが、単一のベクターに含まれる、請求項8〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
プロモーター及び対象となる産物をコードする領域を含む第3の核酸セグメントを得ることであって、該対象となる産物をコードする領域のいずれかの側に、ジェミニウイルスゲノムの長い遺伝子間領域(LIR)の少なくとも一部が隣接する、第3の核酸セグメントを得ること、
プロモーター及び遺伝子サイレンシング阻害因子を含む第4の核酸セグメントを得ること、並びに
前記第3及び第4の核酸セグメントを前記植物細胞にトランスフェクトすることをさらに含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記タンパク質を前記植物細胞又はその任意の世代の子孫から単離することをさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記第1の核酸セグメント、前記第2の核酸セグメント、前記第3の核酸セグメント及び前記第4の核酸セグメントが、それぞれ第1、第2、第3及び第4のベクターに含まれる、請求項17又は18に記載の方法。
【請求項20】
前記第1、第2、第3及び第4のベクターを前記植物細胞に同時に導入する、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記第1、第2、第3及び第4のベクターを前記植物細胞に別個に導入する、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記第1の核酸セグメント、前記第2の核酸セグメント、前記第3の核酸セグメント及び前記第4の核酸セグメントが、単一のベクターに含まれる、請求項17又は18に記載の方法。
【請求項23】
前記対象となる産物が核酸、タンパク質、ポリペプチド又はペプチドである、請求項1〜22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記対象となる産物が核酸である、請求項1〜23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記核酸がmRNAである、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記対象となる産物がタンパク質、ポリペプチド又はペプチドである、請求項1〜23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記対象となる産物が抗原である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記抗原が病原体又は病変細胞に由来するものである、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記抗原がウイルス抗原、細菌性抗原、真菌抗原又は癌細胞由来抗原である、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記抗原がB型肝炎コア抗原(HBc)又はノーウォークウイルスカプシドタンパク質(NVCP)である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記抗原が動物に導入された場合に免疫応答を惹起する、請求項27に記載の方法。
【請求項32】
前記免疫応答が病原体又は疾患を防ぐものである、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記タンパク質、ポリペプチド又はペプチドが動物に導入された場合に免疫応答を惹起する、請求項26に記載の方法。
【請求項34】
前記対象となる産物が抗体である、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記抗体がモノクローナル抗体である、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記モノクローナル抗体がエボラウイルスGP1を防ぐもの(6D8)である、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記第1及び第2の核酸が、前記植物細胞又はその任意の世代の子孫に取り込まれる、請求項1〜36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記植物細胞又はその任意の世代の子孫が、前記第1及び第2の核酸によって安定に形質転換される、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記第1及び第2の核酸が、前記植物細胞又はその任意の世代の子孫中のプラスミドに含まれる、請求項37に記載の方法。
【請求項40】
対象となる産物を含む前記核酸セグメントが0.1kb〜8kbである、請求項1〜39のいずれか一項に記載の系。
【請求項41】
対象となる産物を含む前記核酸セグメントが2.0kb〜8kbである、請求項1〜40のいずれか一項に記載の系。
【請求項42】
対象となる産物を含む前記核酸セグメントが2.87kb〜8kbである、請求項1〜41のいずれか一項に記載の系。
【請求項43】
ベクター系であって、
プロモーター及び対象となる産物をコードする領域を含む第1の核酸セグメントであって、該対象となる産物をコードする領域のいずれかの側に、ジェミニウイルスゲノムの長い遺伝子間領域(LIR)の少なくとも一部が隣接する、第1の核酸セグメント、並びに
プロモーター及びジェミニウイルスゲノムのRep/RepAタンパク質をコードする核酸を含む第2の核酸セグメントを含む、ベクター系。
【請求項44】
前記第1の核酸セグメントがジェミニウイルスゲノムの短い遺伝子間領域(SIR)をさらに含む、請求項43に記載の系。
【請求項45】
前記第1の核酸セグメント及び前記第2の核酸セグメントが、それぞれ第1及び第2のベクターに含まれる、請求項43又は44に記載の系。
【請求項46】
前記第1の核酸セグメント及び前記第2の核酸セグメントが、単一のベクターに含まれる、請求項43又は44に記載の系。
【請求項47】
第3の核酸セグメントをさらに含む、請求項43〜46のいずれか一項に記載の系。
【請求項48】
前記第3の核酸セグメントがプロモーター、ジェミニウイルスゲノムのLIRの少なくとも一部、及び対象となる産物をコードする領域を含む、請求項47に記載の系。
【請求項49】
前記第3の核酸セグメントがプロモーター及び遺伝子サイレンシング阻害因子を含む、請求項47又は48のいずれか一項に記載の系。
【請求項50】
前記遺伝子サイレンシング阻害因子が、トマトブッシースタントウイルスに由来する遺伝子サイレンシング阻害因子P19である、請求項49に記載の系。
【請求項51】
前記第1の核酸セグメント、前記第2の核酸セグメント及び前記第3の核酸セグメントが、それぞれ第1、第2及び第3のベクターに含まれる、請求項47〜50のいずれか一項に記載の系。
【請求項52】
前記第1の核酸セグメント、前記第2の核酸セグメント及び前記第3の核酸セグメントが、単一のベクターに含まれる、請求項43に記載の系。
【請求項53】
プロモーター及び対象となる産物をコードする領域を含む第3の核酸セグメントであって、該対象となる産物をコードする領域のいずれかの側に、ジェミニウイルスゲノムの長い遺伝子間領域(LIR)の少なくとも一部が隣接する、第3の核酸セグメント、並びに
プロモーター及び遺伝子サイレンシング阻害因子を含む第4の核酸セグメントをさらに含む、請求項43に記載の系。
【請求項54】
前記第1の核酸セグメント、前記第2の核酸セグメント、前記第3の核酸セグメント及び前記第4の核酸セグメントが、それぞれ第1、第2、第3及び第4のベクターに含まれる、請求項53に記載の系。
【請求項55】
前記第1の核酸セグメント、前記第2の核酸セグメント、前記第3の核酸セグメント及び前記第4の核酸セグメントが、単一のベクターに含まれる、請求項53に記載の系。
【請求項56】
前記対象となる産物が核酸、タンパク質、ポリペプチド又はペプチドである、請求項43〜55のいずれか一項に記載の系。
【請求項57】
前記対象となる産物が核酸である、請求項43〜56のいずれか一項に記載の系。
【請求項58】
前記核酸がmRNAである、請求項57に記載の系。
【請求項59】
前記対象となる産物がタンパク質、ポリペプチド又はペプチドである、請求項43〜56のいずれか一項に記載の系。
【請求項60】
前記対象となる産物が抗原である、請求項59に記載の系。
【請求項61】
前記抗原が病原体又は病変細胞に由来するものである、請求項60に記載の系。
【請求項62】
前記抗原がウイルス抗原、細菌性抗原、真菌抗原又は癌細胞由来抗原である、請求項61に記載の系。
【請求項63】
前記抗原がB型肝炎コア抗原(HBc)又はノーウォークウイルスカプシドタンパク質(NVCP)である、請求項62に記載の系。
【請求項64】
前記抗原が動物に導入された場合に免疫応答を惹起する、請求項60に記載の系。
【請求項65】
前記免疫応答が病原体又は疾患を防ぐものである、請求項64に記載の系。
【請求項66】
前記タンパク質、ポリペプチド又はペプチドが動物に導入された場合に免疫応答を惹起する、請求項59に記載の系。
【請求項67】
前記対象となる産物が抗体である、請求項66に記載の系。
【請求項68】
前記抗体がモノクローナル抗体である、請求項67に記載の系。
【請求項69】
前記モノクローナル抗体がエボラウイルスGP1を防ぐもの(6D8)である、請求項68に記載の系。
【請求項70】
対象となる産物を含む前記核酸セグメントが0.1kb〜8kbである、請求項43〜69のいずれか一項に記載の系。
【請求項71】
対象となる産物を含む前記核酸セグメントが2.0kb〜8kbである、請求項43〜70のいずれか一項に記載の系。
【請求項72】
対象となる産物を含む前記核酸セグメントが2.87kb〜8kbである、請求項43〜71のいずれか一項に記載の系。
【請求項73】
植物であって、
プロモーター及び対象となる産物をコードする領域を含む第1の核酸セグメントであって、該対象となる産物をコードする領域のいずれかの側に、ジェミニウイルスゲノムの長い遺伝子間領域(LIR)の少なくとも一部が隣接する、第1の核酸セグメント、並びに
プロモーター及びジェミニウイルスゲノムのRep/RepAタンパク質をコードする核酸を含む第2の核酸セグメントを含む、植物。
【請求項74】
前記第1の核酸セグメントがジェミニウイルスゲノムの短い遺伝子間領域(SIR)をさらに含む、請求項73に記載の植物。
【請求項75】
前記第1の核酸セグメント及び前記第2の核酸セグメントが、それぞれ第1及び第2のベクターに含まれる、請求項73又は74に記載の植物。
【請求項76】
前記第1の核酸セグメント及び前記第2の核酸セグメントが、単一のベクターに含まれる、請求項73又は74に記載の植物。
【請求項77】
第3の核酸セグメントをさらに含む、請求項73〜76のいずれか一項に記載の植物。
【請求項78】
前記第3の核酸セグメントがプロモーター、ジェミニウイルスゲノムのLIRの少なくとも一部、及び対象となる産物をコードする領域を含む、請求項77に記載の植物。
【請求項79】
前記第3の核酸セグメントがプロモーター及び遺伝子サイレンシング阻害因子を含む、請求項77又は78に記載の植物。
【請求項80】
前記遺伝子サイレンシング阻害因子が、トマトブッシースタントウイルスに由来する遺伝子サイレンシング阻害因子P19である、請求項79に記載の植物。
【請求項81】
前記第1の核酸セグメント、前記第2の核酸セグメント及び前記第3の核酸セグメントが、それぞれ第1、第2及び第3のベクターに含まれる、請求項73〜80のいずれか一項に記載の植物。
【請求項82】
前記第1の核酸セグメント、前記第2の核酸セグメント及び前記第3の核酸セグメントが、単一のベクターに含まれる、請求項73〜80のいずれか一項に記載の植物。
【請求項83】
プロモーター、ジェミニウイルスゲノムのLIRの少なくとも一部、及び対象となる産物をコードする領域を含む第3の核酸セグメント、並びに
プロモーター及び遺伝子サイレンシング阻害因子を含む第4の核酸セグメントをさらに含む、請求項73〜82のいずれか一項に記載の植物。
【請求項84】
前記第1の核酸セグメント、前記第2の核酸セグメント、前記第3の核酸セグメント及び前記第4の核酸セグメントが、それぞれ第1、第2、第3及び第4のベクターに含まれる、請求項83に記載の植物。
【請求項85】
前記第1の核酸セグメント、前記第2の核酸セグメント、前記第3の核酸セグメント及び前記第4の核酸セグメントが、単一のベクターに含まれる、請求項83に記載の植物。
【請求項86】
前記対象となる産物が核酸、タンパク質、ポリペプチド又はペプチドである、請求項73〜85のいずれか一項に記載の植物。
【請求項87】
前記対象となる産物が核酸である、請求項86に記載の植物。
【請求項88】
前記核酸がmRNAである、請求項87に記載の植物。
【請求項89】
前記対象となる産物がタンパク質、ポリペプチド又はペプチドである、請求項73〜86のいずれか一項に記載の植物。
【請求項90】
前記対象となる産物が抗原である、請求項89に記載の植物。
【請求項91】
前記抗原が病原体又は病変細胞に由来するものである、請求項90に記載の植物。
【請求項92】
前記抗原がウイルス抗原、細菌性抗原、真菌抗原又は癌細胞由来抗原である、請求項91に記載の植物。
【請求項93】
前記抗原がB型肝炎コア抗原(HBc)又はノーウォークウイルスカプシドタンパク質(NVCP)である、請求項92に記載の植物。
【請求項94】
前記抗原が動物に導入された場合に免疫応答を惹起する、請求項90に記載の植物。
【請求項95】
前記免疫応答が病原体又は疾患を防ぐものである、請求項94に記載の植物。
【請求項96】
前記タンパク質、ポリペプチド又はペプチドが動物に導入された場合に免疫応答を惹起する、請求項89に記載の植物。
【請求項97】
前記対象となる産物が抗体である、請求項96に記載の植物。
【請求項98】
前記抗体がモノクローナル抗体である、請求項97に記載の植物。
【請求項99】
前記モノクローナル抗体がエボラウイルスGP1を防ぐもの(6D8)である、請求項98に記載の植物。
【請求項100】
請求項1〜99のいずれか一項に記載の第1及び第2の核酸を含む、植物又はその任意の世代の子孫。
【請求項101】
前記第1及び第2の核酸によって安定に形質転換される、請求項100に記載の植物又は子孫。
【請求項102】
前記第1及び第2の核酸が、前記植物又はその任意の世代の子孫中のプラスミドに含まれる、請求項100又は101に記載の植物又は子孫。
【請求項103】
対象となる産物を含む前記核酸セグメントが0.1kb〜8kbである、請求項73〜102のいずれか一項に記載の植物。
【請求項104】
対象となる産物を含む前記核酸セグメントが2.0kb〜8kbである、請求項73〜103のいずれか一項に記載の植物。
【請求項105】
対象となる産物を含む前記核酸セグメントが2.87kb〜8kbである、請求項73〜104のいずれか一項に記載の植物。
【請求項106】
植物細胞において産物を産生させる方法であって、
プロモーター及び対象となる産物をコードする領域を含む第1の核酸セグメントを得ることであって、該対象となる産物をコードする領域のいずれかの側に、ジェミニウイルスゲノムの長い遺伝子間領域(LIR)の少なくとも一部が隣接する、第1の核酸セグメントを得ること、
プロモーター及びジェミニウイルスゲノムのRep/RepAタンパク質をコードする核酸を含む第2の核酸セグメントを得ること、
前記第1の核酸セグメント及び前記第2の核酸セグメントを植物細胞に導入すること、並びに
前記植物細胞又はその任意の世代の子孫において前記対象となる産物を産生させることを含む、方法。
【請求項107】
前記第1の核酸セグメントがジェミニウイルスゲノムの短い遺伝子間領域(SIR)をさらに含む、請求項106に記載の方法。
【請求項108】
前記タンパク質を前記植物細胞又はその任意の世代の子孫から単離することをさらに含む、請求項106に記載の方法。
【請求項109】
前記第1の核酸セグメント及び前記第2の核酸セグメントが、それぞれ第1及び第2のベクターに含まれる、請求項106に記載の方法。
【請求項110】
前記第1及び第2のベクターを前記植物細胞に同時に導入する、請求項109に記載の方法。
【請求項111】
前記第1及び第2のベクターを前記植物細胞に別個に導入する、請求項109に記載の方法。
【請求項112】
前記第1の核酸セグメント及び前記第2の核酸セグメントが、単一のベクターに含まれる、請求項106に記載の方法。
【請求項113】
第3の核酸セグメントを得ること、及び該第3の核酸セグメントを前記植物細胞にトランスフェクトすることをさらに含む、請求項106に記載の方法。
【請求項114】
前記第3の核酸セグメントがプロモーター、ジェミニウイルスゲノムのLIRの少なくとも一部、及び対象となる産物をコードする領域を含む、請求項113に記載の方法。
【請求項115】
前記第3の核酸セグメントが、プロモーター及び遺伝子サイレンシング阻害因子を含む、請求項113に記載の方法。
【請求項116】
前記遺伝子サイレンシング阻害因子が、トマトブッシースタントウイルスに由来する遺伝子サイレンシング阻害因子P19である、請求項115に記載の系。
【請求項117】
前記タンパク質を前記植物細胞又はその任意の世代の子孫から単離することをさらに含む、請求項113に記載の方法。
【請求項118】
前記第1の核酸セグメント、前記第2の核酸セグメント及び前記第3の核酸セグメントが、それぞれ第1、第2及び第3のベクターに含まれる、請求項113に記載の方法。
【請求項119】
前記第1、第2及び第3のベクターを前記植物細胞に同時に導入する、請求項118に記載の方法。
【請求項120】
前記第1、第2及び第3のベクターを前記植物細胞に別個に導入する、請求項118に記載の方法。
【請求項121】
前記第1の核酸セグメント、前記第2の核酸セグメント及び前記第3の核酸セグメントが、単一のベクターに含まれる、請求項106に記載の方法。
【請求項122】
プロモーター及び対象となる産物をコードする領域を含む第3の核酸セグメントを得ることであって、該対象となる産物をコードする領域のいずれかの側に、ジェミニウイルスゲノムの長い遺伝子間領域(LIR)の少なくとも一部が隣接する、第3の核酸セグメントを得ること、
プロモーター及び遺伝子サイレンシング阻害因子を含む第4の核酸セグメントを得ること、並びに
前記第3及び第4の核酸セグメントを前記植物細胞にトランスフェクトすることをさらに含む、請求項113に記載の方法。
【請求項123】
前記タンパク質を前記植物細胞又はその任意の世代の子孫から単離することをさらに含む、請求項122に記載の方法。
【請求項124】
前記第1の核酸セグメント、前記第2の核酸セグメント、前記第3の核酸セグメント及び前記第4の核酸セグメントが、それぞれ第1、第2、第3及び第4のベクターに含まれる、請求項122に記載の方法。
【請求項125】
前記第1、第2、第3及び第4のベクターを前記植物細胞に同時に導入する、請求項124に記載の方法。
【請求項126】
前記第1、第2、第3及び第4のベクターを前記植物細胞に別個に導入する、請求項124に記載の方法。
【請求項127】
前記第1の核酸セグメント、前記第2の核酸セグメント、前記第3の核酸セグメント及び前記第4の核酸セグメントが、単一のベクターに含まれる、請求項122に記載の方法。
【請求項128】
前記対象となる産物が核酸、タンパク質、ポリペプチド又はペプチドである、請求項106に記載の方法。
【請求項129】
前記対象となる産物が核酸である、請求項128に記載の方法。
【請求項130】
前記核酸がmRNAである、請求項129に記載の方法。
【請求項131】
前記対象となる産物がタンパク質、ポリペプチド又はペプチドである、請求項128に記載の方法。
【請求項132】
前記対象となる産物が抗原である、請求項131に記載の方法。
【請求項133】
前記抗原が病原体又は病変細胞に由来するものである、請求項132に記載の方法。
【請求項134】
前記抗原がウイルス抗原、細菌性抗原、真菌抗原又は癌細胞由来抗原である、請求項133に記載の方法。
【請求項135】
前記抗原がB型肝炎コア抗原(HBc)又はノーウォークウイルスカプシドタンパク質(NVCP)である、請求項134に記載の方法。
【請求項136】
前記抗原が動物に導入された場合に免疫応答を惹起する、請求項132に記載の方法。
【請求項137】
前記免疫応答が病原体又は疾患を防ぐものである、請求項136に記載の方法。
【請求項138】
前記タンパク質、ポリペプチド又はペプチドが動物に導入された場合に免疫応答を惹起する、請求項131に記載の方法。
【請求項139】
前記対象となる産物が抗体である、請求項138に記載の方法。
【請求項140】
前記抗体がモノクローナル抗体である、請求項139に記載の方法。
【請求項141】
前記モノクローナル抗体がエボラウイルスGP1を防ぐもの(6D8)である、請求項140に記載の方法。
【請求項142】
前記第1及び第2の核酸が、前記植物細胞又はその任意の世代の子孫に取り込まれる、請求項106に記載の方法。
【請求項143】
前記植物細胞又はその任意の世代の子孫が、前記第1及び第2の核酸によって安定に形質転換される、請求項142に記載の方法。
【請求項144】
前記第1及び第2の核酸が、前記植物細胞又はその任意の世代の子孫中のプラスミドに含まれる、請求項142に記載の方法。
【請求項145】
対象となる産物を含む前記核酸セグメントが0.1kb〜8kbである、請求項106に記載の方法。
【請求項146】
対象となる産物を含む前記核酸セグメントが2.0kb〜8kbである、請求項106に記載の方法。
【請求項147】
対象となる産物を含む前記核酸セグメントが2.87kb〜8kbである、請求項146に記載の方法。
【請求項148】
ベクター系であって、
プロモーター及び対象となる産物をコードする領域を含む第1の核酸セグメントであって、該対象となる産物をコードする領域のいずれかの側に、ジェミニウイルスゲノムの長い遺伝子間領域(LIR)の少なくとも一部が隣接する、第1の核酸セグメント、並びに
プロモーター及びジェミニウイルスゲノムのRep/RepAタンパク質をコードする核酸を含む第2の核酸セグメントを含む、ベクター系。
【請求項149】
前記第1の核酸セグメントがジェミニウイルスゲノムの短い遺伝子間領域(SIR)をさらに含む、請求項148に記載の系。
【請求項150】
前記第1の核酸セグメント及び前記第2の核酸セグメントが、それぞれ第1及び第2のベクターに含まれる、請求項148に記載の系。
【請求項151】
前記第1の核酸セグメント及び前記第2の核酸セグメントが、単一のベクターに含まれる、請求項148に記載の系。
【請求項152】
第3の核酸セグメントをさらに含む、請求項148に記載の系。
【請求項153】
前記第3の核酸セグメントがプロモーター、ジェミニウイルスゲノムのLIRの少なくとも一部、及び対象となる産物をコードする領域を含む、請求項152に記載の系。
【請求項154】
前記第3の核酸セグメントがプロモーター及び遺伝子サイレンシング阻害因子を含む、請求項152に記載の系。
【請求項155】
前記遺伝子サイレンシング阻害因子が、トマトブッシースタントウイルスに由来する遺伝子サイレンシング阻害因子P19である、請求項154に記載の系。
【請求項156】
前記第1の核酸セグメント、前記第2の核酸セグメント及び前記第3の核酸セグメントが、それぞれ第1、第2及び第3のベクターに含まれる、請求項152に記載の系。
【請求項157】
前記第1の核酸セグメント、前記第2の核酸セグメント及び前記第3の核酸セグメントが、単一のベクターに含まれる、請求項152に記載の系。
【請求項158】
プロモーター及び対象となる産物をコードする領域を含む第3の核酸セグメントであって、該対象となる産物をコードする領域のいずれかの側に、ジェミニウイルスゲノムの長い遺伝子間領域(LIR)の少なくとも一部が隣接する、第3の核酸セグメント、並びに
プロモーター及び遺伝子サイレンシング阻害因子を含む第4の核酸セグメントをさらに含む、請求項148に記載の系。
【請求項159】
前記第1の核酸セグメント、前記第2の核酸セグメント、前記第3の核酸セグメント及び前記第4の核酸セグメントが、それぞれ第1、第2、第3及び第4のベクターに含まれる、請求項158に記載の系。
【請求項160】
前記第1の核酸セグメント、前記第2の核酸セグメント、前記第3の核酸セグメント及び前記第4の核酸セグメントが、単一のベクターに含まれる、請求項158に記載の系。
【請求項161】
前記対象となる産物が核酸、タンパク質、ポリペプチド又はペプチドである、請求項148に記載の系。
【請求項162】
前記対象となる産物が核酸である、請求項161に記載の系。
【請求項163】
前記核酸がmRNAである、請求項162に記載の系。
【請求項164】
前記対象となる産物がタンパク質、ポリペプチド又はペプチドである、請求項161に記載の系。
【請求項165】
前記対象となる産物が抗原である、請求項164に記載の系。
【請求項166】
前記抗原が病原体又は病変細胞に由来するものである、請求項165に記載の系。
【請求項167】
前記抗原がウイルス抗原、細菌性抗原、真菌抗原又は癌細胞由来抗原である、請求項166に記載の系。
【請求項168】
前記抗原がB型肝炎コア抗原(HBc)又はノーウォークウイルスカプシドタンパク質(NVCP)である、請求項167に記載の系。
【請求項169】
前記抗原が動物に導入された場合に免疫応答を惹起する、請求項165に記載の系。
【請求項170】
前記免疫応答が病原体又は疾患を防ぐものである、請求項169に記載の系。
【請求項171】
前記タンパク質、ポリペプチド又はペプチドが動物に導入された場合に免疫応答を惹起する、請求項164に記載の系。
【請求項172】
前記対象となる産物が抗体である、請求項171に記載の系。
【請求項173】
前記抗体がモノクローナル抗体である、請求項172に記載の系。
【請求項174】
前記モノクローナル抗体がエボラウイルスGP1を防ぐもの(6D8)である、請求項173に記載の系。
【請求項175】
対象となる産物を含む前記核酸セグメントが0.1kb〜8kbである、請求項148に記載の方法。
【請求項176】
対象となる産物を含む前記核酸セグメントが2.0kb〜8kbである、請求項148に記載の方法。
【請求項177】
対象となる産物を含む前記核酸セグメントが2.87kb〜8kbである、請求項176に記載の方法。
【請求項178】
植物であって、
プロモーター及び対象となる産物をコードする領域を含む第1の核酸セグメントであって、該対象となる産物をコードする領域のいずれかの側に、ジェミニウイルスゲノムの長い遺伝子間領域(LIR)の少なくとも一部が隣接する、第1の核酸セグメント、並びに
プロモーター及びジェミニウイルスゲノムのRep/RepAタンパク質をコードする核酸を含む第2の核酸セグメントを含む、植物。
【請求項179】
前記第1の核酸セグメントがジェミニウイルスゲノムの短い遺伝子間領域(SIR)をさらに含む、請求項178に記載の植物。
【請求項180】
前記第1の核酸セグメント及び前記第2の核酸セグメントが、それぞれ第1及び第2のベクターに含まれる、請求項178に記載の植物。
【請求項181】
前記第1の核酸セグメント及び前記第2の核酸セグメントが、単一のベクターに含まれる、請求項178に記載の植物。
【請求項182】
第3の核酸セグメントをさらに含む、請求項178に記載の植物。
【請求項183】
前記第3の核酸セグメントがプロモーター、ジェミニウイルスゲノムのLIRの少なくとも一部、及び対象となる産物をコードする領域を含む、請求項182に記載の植物。
【請求項184】
前記第3の核酸セグメントがプロモーター及び遺伝子サイレンシング阻害因子を含む、請求項182に記載の植物。
【請求項185】
前記遺伝子サイレンシング阻害因子が、トマトブッシースタントウイルスに由来する遺伝子サイレンシング阻害因子P19である、請求項184に記載の植物。
【請求項186】
前記第1の核酸セグメント、前記第2の核酸セグメント及び前記第3の核酸セグメントが、それぞれ第1、第2及び第3のベクターに含まれる、請求項178に記載の植物。
【請求項187】
前記第1の核酸セグメント、前記第2の核酸セグメント及び前記第3の核酸セグメントが、単一のベクターに含まれる、請求項178に記載の植物。
【請求項188】
プロモーター、ジェミニウイルスゲノムのLIRの少なくとも一部、及び対象となる産物をコードする領域を含む第3の核酸セグメント、並びに
プロモーター及び遺伝子サイレンシング阻害因子を含む第4の核酸セグメントをさらに含む、請求項178に記載の植物。
【請求項189】
前記第1の核酸セグメント、前記第2の核酸セグメント、前記第3の核酸セグメント及び前記第4の核酸セグメントが、それぞれ第1、第2、第3及び第4のベクターに含まれる、請求項188に記載の植物。
【請求項190】
前記第1の核酸セグメント、前記第2の核酸セグメント、前記第3の核酸セグメント及び前記第4の核酸セグメントが、単一のベクターに含まれる、請求項188に記載の植物。
【請求項191】
前記対象となる産物が核酸、タンパク質、ポリペプチド又はペプチドである、請求項178に記載の植物。
【請求項192】
前記対象となる産物が核酸である、請求項191に記載の植物。
【請求項193】
前記核酸がmRNAである、請求項192に記載の植物。
【請求項194】
前記対象となる産物がタンパク質、ポリペプチド又はペプチドである、請求項191に記載の植物。
【請求項195】
前記対象となる産物が抗原である、請求項194に記載の植物。
【請求項196】
前記抗原が病原体又は病変細胞に由来するものである、請求項195に記載の植物。
【請求項197】
前記抗原がウイルス抗原、細菌性抗原、真菌抗原又は癌細胞由来抗原である、請求項196に記載の植物。
【請求項198】
前記抗原がB型肝炎コア抗原(HBc)又はノーウォークウイルスカプシドタンパク質(NVCP)である、請求項197に記載の植物。
【請求項199】
前記抗原が動物に導入された場合に免疫応答を惹起する、請求項195に記載の植物。
【請求項200】
前記免疫応答が病原体又は疾患を防ぐものである、請求項199に記載の植物。
【請求項201】
前記タンパク質、ポリペプチド又はペプチドが動物に導入された場合に免疫応答を惹起する、請求項194に記載の植物。
【請求項202】
前記対象となる産物が抗体である、請求項201に記載の植物。
【請求項203】
前記抗体がモノクローナル抗体である、請求項202に記載の植物。
【請求項204】
前記モノクローナル抗体がエボラウイルスGP1を防ぐもの(6D8)である、請求項203に記載の植物。
【請求項205】
請求項178に記載の第1及び第2の核酸を含む、植物又はその任意の世代の子孫。
【請求項206】
前記第1及び第2の核酸によって安定に形質転換される、請求項205に記載の植物又は子孫。
【請求項207】
前記第1及び第2の核酸が、前記植物又はその任意の世代の子孫中のプラスミドに含まれる、請求項205に記載の植物又は子孫。
【請求項208】
対象となる産物を含む前記核酸セグメントが8kb以下である、請求項178に記載の方法。
【請求項209】
対象となる産物を含む前記核酸セグメントが2.0kb〜8kbである、請求項178に記載の方法。
【請求項210】
対象となる産物を含む前記核酸セグメントが2.87kb〜8kbである、請求項209に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公表番号】特表2012−501182(P2012−501182A)
【公表日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−525208(P2011−525208)
【出願日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際出願番号】PCT/US2009/055237
【国際公開番号】WO2010/025285
【国際公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【出願人】(508259467)アリゾナ・ボード・オブ・リージェンツ・フォー・アンド・オン・ビハーフ・オブ・アリゾナ・ステイト・ユニバーシティ (3)
【氏名又は名称原語表記】ARIZONA BOARD OF REGENTS FOR AND ON BEHALF OF ARIZONA STATE UNIVERSITY
【Fターム(参考)】