説明

植物のディスプレイ装置及びこれを用いた植物の陳列方法

【課題】新鮮なままの植物を長い間陳列しておくことが可能な植物のディスプレイ装置及び植物の陳列方法を提供する。
【解決手段】本発明の植物のディスプレイ装置は、植物を陳列するためのディスプレイ装置である。植物を水耕栽培するため液肥7を内部に収容する植物陳列用の槽部3と、前記槽部3に栽培された植物の成長を遅らせる成長抑制手段8とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物を陳列するためのディスプレイ装置及びこれを用いた植物の陳列方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、植物を陳列するためのディスプレイ装置が知られている(例えば特許文献1参照)。この植物のディスプレイ装置は、畑等から収穫された野菜や果物等の植物が陳列される。通常、陳列される植物は、収穫時に根が切断されており、根が切り離されて無くなった状態で陳列される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第3148717号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、根が切り離された状態の植物は、水分の吸収ができない上に、蒸散作用により水分を放出するため、萎れやすく、直ぐに新鮮さを失ってしまう。このため従来のディスプレイ装置では、新鮮な野菜を提供することが難しいという問題があった。
【0005】
しかも根が切り離された植物は、陳列する時間が長くなるに従って、ますます萎れてしまう。すなわち、根が切断された植物は傷みが早いため、廃棄しなければならない場合が多いという問題もあった。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、新鮮なままの植物を長い間陳列しておくことが可能な植物のディスプレイ装置及び植物の陳列方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の植物のディスプレイ装置は、植物を陳列するためのディスプレイ装置であって、前記植物を水耕栽培するため液肥7を内部に収容する植物陳列用の槽部3と、前記槽部3に栽培された植物の成長を遅らせる成長抑制手段8とを備えていることを特徴とする。
【0008】
このように本発明のディスプレイ装置は、植物を水耕栽培したまま陳列することで、生きたままの植物をディスプレイすることができ、消費者等に新鮮な植物を提供することができる。しかも本発明のディスプレイ装置は、成長抑制手段8を備えているため、鮮度が高い状態のまま長い間陳列しておくことができ、植物が傷むのを遅らせることができる。
【0009】
またこの植物のディスプレイ装置において、前記植物陳列用の槽部3が、食に供される植物を水耕栽培するものであることが好ましい。
【0010】
このように本発明のディスプレイ装置は、食に供される植物を陳列することができ、すなわち、食に供される植物を、食べるのに適した状態を保ったまま、長期間陳列しておくことができる。
【0011】
またこの植物のディスプレイ装置において、前記成長抑制手段8が、一定以下の照度の光を前記植物に照射して当該植物の成長を抑制する発光部5を備えたものであることが好ましい。
【0012】
このように本発明のディスプレイ装置は、発光部5から照射される光により成長抑制を行なうものであるため、例えば液肥7に成長抑制剤を入れたものに比べて、より自然に近い植物を陳列することができる。
【0013】
またこの植物のディスプレイ装置において、前記成長抑制手段8が、前記植物への照射光の照度を変更する照度可変手段51を有していることが好ましい。
【0014】
このように本発明のディスプレイ装置は、植物の照射光の照度を変更することができるため、植物の成長抑制の度合いを調整することができる。
【0015】
また本発明の植物の陳列方法は、上記ディスプレイ装置を用いた植物の陳列方法であって、予め育成しておいた植物を前記植物陳列用の槽部3に栽培し、前記成長抑制手段8により、前記植物陳列用の槽部3に栽培された植物の成長を遅らせながら当該植物を陳列しておくことを特徴とする。
【0016】
本発明の植物の陳列方法によれば、植物を栽培した状態で陳列しておくことができる上に植物の成長速度を抑制することができるので、生きたままの状態で且つ長い間、植物をみずみずしい状態で陳列しておくことができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の植物のディスプレイ装置及びこれを用いた植物の陳列方法によれば、新鮮なままの植物をみずみずしい状態で長い間陳列しておくことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施形態1のディスプレイ装置の斜視図である。
【図2】実施形態1のディスプレイ装置の正面図である。
【図3】実施形態1のディスプレイ装置の正面断面図である。
【図4】実施形態1のディスプレイ装置の側断面図である。
【図5】実施形態2のディスプレイ装置であり(a)は正面図であり(b)は側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について添付図面に基づいて説明する。
【0020】
実施形態1のディスプレイ装置は、図1に示される装置であり、植物を陳列するための陳列棚により構成されている。このディスプレイ装置は、例えば、八百屋・果物屋等のショップ,レストラン,デパート,スーパーマーケット,ホテル・旅館の厨房等に設置される。ディスプレイ装置には、野菜や果物等の食に供される植物(以下、食用植物という)や生花等の植物が、根の付いた状態で陳列される。
【0021】
ディスプレイ装置は、図2に示されるように、内部が複数の棚板11,12,13により仕切られた装置本体1と、棚板11,12上に載置され且つ内部に液肥7を収容する槽部3と、この槽部3内の液肥7を循環させるための液循環装置4とを備えている。またディスプレイ装置は、槽部3に栽培された植物に光照射を行なう発光部5と、装置本体1内の温度管理を行なう空調装置6とをさらに備えている。
【0022】
装置本体1は、図2に示されるように、各角部に配設された4本の支柱10と、この支柱10の外側を覆って外郭を形成する外郭体23と、天板部19とからなる枠体20により主体が構成されている。装置本体1は、水平に配置された第1の棚板11と、第1の棚板11の下方に設けられ且つ水平に配置された第2の棚板12と、この第2の棚板12の下方に設けられ且つ水平に配置された第3の棚板13とを備え、これら棚板11,12,13が、枠体20にボルトを介して固設されている。装置本体1は、第1の棚板11の上方に設けられた第1の収容部14と、第2の棚板12の上方で且つ第1の棚板11の下方に設けられた第2の収容部15と、第3の棚板13の上方で且つ第2の棚板12の下方に設けられた第3の収容部16とを備えている。
【0023】
装置本体1は、後面に背面板4が配設され且つ前面に透明な透過板17が配設されている(図4参照)。透過板17は、図1に示されるように、第1の収容部14と第2の収容部15とを開閉自在に閉塞し、且つ、収容部14,15ごとに独立して開閉することができるよう構成されている。なお第3の収容部16は、不透明の遮蔽板29により閉塞されており、内部が見えないようになっている。
【0024】
装置本体1は、図3に示されるように、空調装置6の吹き出し口62と第1の収容部14内及び第2の収容部15内の空間とを連通する通風路21を備えている。この通風路21は、枠体20に沿って設けられており、具体的には、偏平な中空箱形状の天板部19により構成された上ダクト部22と、一方の側方に位置する一対の支柱10間に配設され且つ偏平な中空箱形状に形成され、その内部が上ダクト部22内に連通した側ダクト部18とにより構成されている。
【0025】
上ダクト部22は、第1の天板191と、この第1の天板191の下方に離設された第2の天板192と、この第1の天板191と第2の天板192との間の四周を囲む第3の天板193とにより構成されており、すなわち第1の天板191と第2の天板192と第3の天板193とからなる天板部19により構成されている。第1の天板191は、その上面中央部に、空調装置6を設置するための空調設置部194が設けられており、この空調設置部194に、空調装置6の吹き出し口62に連通する流入口195が穿設されている。第2の天板192は、一方側の端部に上下方向に貫通する上接続口196が形成されている。
【0026】
側ダクト部18は、第1の側板181と、この第1の側板181よりも外側に離設された第2の側板182と、この第1の側板181と第2の側板182との間の四周を囲む第3の側板183とにより構成されている。第3の側板183の上面には上ダクト部22の上接続口196に接続される下接続口184が設けられている。第1の側板181は、第1の収容部14に向けて開口する第1の空気供給口24と、第2の収容部15に向けて開口する第2の空気供給口25とを有している。これら空気供給口24,25には、通風路21側から収容部14,15側に向けて空気を流通させる送風ファン26が設けられている。
【0027】
空調装置6から吹き出された空気は、流入口195を通過し、上ダクト部22,側ダクト部18を流通して、第1の空気供給口24及び第2の空気供給口25に至る。そしてその空気は、第1の空気供給口24から第1の収容部14内に流入すると共に、第2の空気供給口25から第2の収容部15内に流入する。その後、収容部14,15内の空気は、第1の空気供給口24及び第2の空気供給口25が設けられた側とは反対側の外郭体23の内面に沿って上昇し、空調装置6に流入する。
【0028】
装置本体1は、下部にキャスター部27を有している。装置本体1は、キャスター部27を介して、床や地面等の設置面上に載設される。本実施形態のキャスター部27は、枠体20を移動可能とさせる回転ローラ271と、この枠体20が移動不能となるよう固定可能なアジャスター部272とを備えたアジャスターフット付きキャスターによって構成されている。
【0029】
槽部3は、図1等に示されるように、植物を栽培した状態で陳列することができるよう構成されている。槽部3は、図3に示されるように、内部に水耕栽培用の液肥7を収容する容器31と、この容器31の開口を覆う栽培板32により構成されている。容器31は、左右方向に長く形成されており、長手方向の一方側の端部に一定の水位を保つためのオーバーフロー部33を有している。このオーバーフロー部33は、筒状に形成されており、その上開口34の端面が容器31内の液面と略同レベルとなる。オーバーフロー部33は、上開口34に連通する下開口35が、容器31の底面よりも下方に位置しており、上開口34から流入した液肥7が下開口35から流出するようになっている。なお本実施形態の容器31は、例えば、30mm〜50mm程度の深さに形成される。
【0030】
栽培板32は、容器31の上方開口を閉塞するようにして設置されている。本実施形態の栽培板32は、発泡スチロール等のプラスチック材により構成されている。栽培板32は、植物を栽培する部分となる上下に貫通する栽培孔36が複数箇所に穿設されている。本実施形態の栽培孔36は、左右方向に所定のピッチで穿設されている。
【0031】
液循環装置4は、液肥7が収容された溶液タンク41を備えており、この溶液タンク41と槽部3との間で液肥7を循環させる機能を有している。液循環装置4は、図3に示されるように、溶液タンク41と、この溶液タンク41と各槽部3とを連通接続する供給路42と、供給路42内に液肥7が流通するよう溶液タンク41から当該液肥7を送出する循環ポンプ43とを備えている。さらに液循環装置4は、槽部3のオーバーフロー部33の下開口35と溶液タンク41内とを連通接続する液戻し路44を備えている。供給路42は、容器31の長手方向において、オーバーフロー部33とは反対側の端部に配設される。供給路42は、その端部が液肥7の液面と離間するようにして設置されている。
【0032】
溶液タンク41は、装置本体1の第3の収容部16の第3の棚板13上に配置される。溶液タンク41は、内部に循環用の液肥7(培養液)が収容される。溶液タンク41は、内部に収容される液肥7のEC(電気伝導率;Electrical Conductivity)値を管理する管理装置(図示せず)が取り付けられている。EC値を管理することで、液肥7に含まれる塩類濃度を把握することができる。なお管理装置は備えていなくてもよく、例えばユーザーが適宜EC値を管理するものであってもよい。
【0033】
なお溶液タンク41については、徒長の発生を防ぐため、EC値を詳細に管理することがより好ましい。本実施形態の溶液タンク41のEC値は、例えば、通常は2.0〜2.5ms/cm程度に設定されるのが好ましい。また栄養過多である場合は、例えば0.3〜0.7ms/cm程度に設定される。なお、液肥7の濃度はこの範囲に限定されない。
【0034】
溶液タンク41内の液肥7は、循環ポンプ43により供給路42内を流通して第1の収容部14内の槽部3と第2の収容部15内の槽部3とにそれぞれ送られる。液肥7は、各槽部3に送られると各槽部3の液面を上昇させ、オーバーフロー部33から流出する。オーバーフロー部33から流出した液肥7は、下開口35から液戻し路44を介して溶液タンク41内に戻る。
【0035】
本実施形態のディスプレイ装置は、槽部3に水耕栽培された植物の成長の速度を遅らせるための成長抑制手段8を備えている。本実施形態の成長抑制手段8は、例えば、予め成熟期またはその直前まで育てておいた食用植物に対して成長の速度を抑制し、これにより食べるのに適した状態を長く維持させる。なおここで言う植物の成長抑制とは、太陽光のもとで栽培された植物よりも、成長の速度を遅くすることを言う。
【0036】
本実施形態の成長抑制手段8は、図2に示されるように、発光部5と調光器52とを備えている。また本実施形態の成長抑制手段8は空調装置6もさらに備えている。
【0037】
発光部5は、槽部3に水耕栽培された植物に一定以下の照度の光を照射することで当該植物の成長を抑制する機能を有する。発光部5は、第1の収容部14と第2の収容部15の上方に設けられており、具体的には、天板部19の裏側と、第1の棚板11の裏側とに取り付けられている。本実施形態の発光部5は各収容部14,15の長手方向の略全長に沿って配設されている。本実施形態の発光部5は、管球状の発光体により構成されており、具体的には、Hf蛍光灯により構成されている。発光部5は、図4に示されるように、長手方向とは直角な方向に2列となるよう並設されている。なお、照度が十分確保できれば、1列であってもよい。また3列以上の複数列となるよう並設されていてもよい。
【0038】
発光部5の上方には、発光部5から発せられた光を下方に反射するリフレクター53が設けられている。発光部5は、装置本体1に取り付けられた調光器52に電気的に接続されており、この調光器52によって、照射する光の照度が調節できるよう構成されている。本実施形態においては、この調光器52が照度可変手段51を構成する。
【0039】
発光部5は、その照度を、槽部3に栽培される植物の種類に応じて設定される。一般的に、植物の光飽和点の80%の照度が、植物の成長を促進するために適切な照度とされるが、本実施形態の発光部5は、その適切な照度よりも小さい照度に設定される。なおこの照度は、少なくとも光補償点以上の照度に設定される。具体的に発光部5は、例えばレタス(光飽和点:25000Lx 光補償点:1500〜2000Lx)に対して、2000Lx以上5000Lx以下の照度に保つことが好ましい。
【0040】
なお本実施形態の発光部5は蛍光灯により構成されているが、例えばLEDにより構成されていてもよく、特に限定されるものではない。指向性を有するLEDを用いる場合、光路の途中に光拡散部材を配設して光を拡散させ、広範囲に光照射を行なうようにしてもよい。
【0041】
調光器52は、発光部5に電気的に接続されており、発光部5から照射された光の照度を調節可能とする。調光器52は、図2に示されるように、装置本体1の外郭体23の前面部に取り付けられている。なお図2中の符号9は、発光部5の発光時間を設定するタイマーである。
【0042】
空調装置6は、植物が栽培された第1の収容部14と第2の収容部15との温度を調節したり管理したりする装置である。空調装置6は、その吹き出し口62が通風路21を介して各収容部14,15内に連通しており、例えば冷気を通風路21内に放出することで、各収容部14,15内を冷却する。本実施形態の空調装置6は、空調装置6の前面に設けられた操作部61を操作することで、吹き出し口62から吹き出す空気の温度を自在に変更できるよう構成されている。
【0043】
本実施形態の空調装置6は、植物を陳列する各収容部14,15内の温度を低温状態に保つことで、植物の成長の速度を抑制することができる。空調装置6は、各収容部14,15の温度を、例えば5℃以上23℃以下に保ち、好ましくは5℃以上10℃以下に保つことで、成長抑制効果を発揮することができる。なおここで言う成長抑制とは、常温で栽培された植物よりも、成長の速度を遅くすることを言う。
【0044】
このような構成のディスプレイ装置は、次のようにして使用される。
【0045】
予め育成工場等で、成熟するまで又はその直前まで食用植物を育成する。次いで、この予め育成しておいた食用植物を本実施形態のディスプレイ装置の植物陳列用の槽部3に栽培する。この状態で、成長抑制手段8としての発光部5から光照射を行い、栽培した食用植物に一定以下の照度の光を照射する。この状態で食用植物を陳列して販売のためのディスプレイを行なう。このとき、空調装置6の操作部61を操作して、第1の収容部14と第2の収容部15との温度を5℃以上10℃以下に保つようにすればより好ましい。
【0046】
このような構成のディスプレイ装置は、液肥7を収容する植物陳列用の槽部3を有しているため、植物を水耕栽培したまま陳列することができる。これにより、生きたままの植物をディスプレイすることができ、消費者等に新鮮な植物を提供することができる。しかも本実施形態のディスプレイ装置は、成長抑制手段8を備えているため、良い状態のまま長い間陳列しておくことができ、植物が傷むのを遅らせることができる。すなわち良い状態のまま長期間ディスプレイしておくことができ、消費者等に対し展示する期間を長くできて、収穫率を上げることができる。この結果、傷んで捨てなければならなくなる植物を大幅に減らすことができる。
【0047】
また本実施形態のディスプレイ装置は、食に供される植物を陳列することができるため、成熟期直前の状態で陳列すれば、食べるのに適した状態を長期間保ったまま、陳列しておくことができる。これにより、例えば食べるのに適した状態のレタスやイチゴを、収穫するのと同時に消費者等に提供でき、つまり新鮮な野菜等を消費者等に提供することができる。
【0048】
また本実施形態のディスプレイ装置は、発光部5から照射される光を用いて成長抑制を行なうものであるため、例えば液肥7に成長抑制剤等を入れて成長抑制を行なうものに比べて、より自然に近い安全な植物を陳列して、消費者等に提供することができる。
【0049】
また本実施形態のディスプレイ装置は、植物の照射光の照度を変更することができるため、植物の成長抑制の度合いを調整することができる。また、植物の種類に応じて、照度を変更することもできる。
【0050】
しかも本実施形態のディスプレイ装置は、水耕栽培により栽培した状態で植物を陳列するものであるため、周年栽培される植物の陳列にも適しているという利点もある。
【0051】
次に、実施形態2につき図5に基づいて説明する。なお、本実施形態は実施形態1と大部分において共通するため、同じ部分においては説明を省略し、主に異なる部分について説明する。
【0052】
実施形態2のディスプレイ装置は、実施形態1のディスプレイ装置と同様に、植物を陳列するための装置である。
【0053】
本実施形態のディスプレイ装置は、植物陳列用の槽部3が配設される陳列台100と、この陳列台100を内部に収容するディスプレイルーム101とを備えている。またディスプレイ装置は、槽部3に栽培された植物の成長を遅らせる成長抑制手段8をさらに備えている。
【0054】
ディスプレイルーム101は、その前側の側壁102に、消費者等が出入り可能な出入り口103が設けられており、この出入り口103に、開閉自在な扉104が設けられている。本実施形態のディスプレイルーム101は、前側の側壁102や扉104が、透明部材により構成されている。このディスプレイルーム101は、内部が陳列台100の収容空間105となっており、消費者等が出入り自在な大きさに構成されている。
【0055】
なお、このディスプレイルーム101は、建物の躯体により構成されていてもよいし、ユニット化されたユニットルームであってもよい。また、本実施形態のディスプレイルームは、一つの陳列台100を収容するものであるが、複数の陳列台100を収容するものであってもよい。
【0056】
陳列台100は、複数の支柱106に複数の棚板107を架設することで構成されている。陳列台100は、実施形態1のディスプレイ装置と同様の液循環装置4を備えている。陳列台100は、棚板107の下面に、実施形態1のディスプレイ装置と同様の発光部5が設けられている。
【0057】
発光部5は、実施形態1のディスプレイ装置と同様に、槽部3に水耕栽培された植物に一定以下の照度の光を照射することで当該植物の成長を抑制する機能を有している。本実施形態の発光部5は、蛍光灯により構成されているが、LEDにより構成されていてもよい。また発光部5には、実施形態1と同様、照度可変手段51としての調光器52が取り付けられている。
【0058】
槽部3は、植物を水耕栽培するためのものである。槽部3は、実施形態1のディスプレイ装置と同様の構成の槽部3が用いられている。
【0059】
本実施形態のディスプレイ装置は、空調装置108を備えている。この空調装置108は、ディスプレイルーム101に取り付けられており、陳列台100とは別体となっている。空調装置108は、ディスプレイルーム101の収容空間105内を冷却する。本実施形態の空調装置108は、収容空間105内の温度を低温状態に保つことで、植物の成長の速度を抑制することができる。空調装置108は、収容空間105内の温度を、例えば5℃以上23℃以下に保ち、好ましくは5℃以上10℃以下に保つことで、成長抑制効果を発揮することができる。
【0060】
本実施形態の成長抑制手段8は、発光部5と調光器52と空調装置108とにより構成されており、これらにより植物の成長を抑制することができる。
【0061】
本実施形態のディスプレイ装置は、実施形態1と同様、植物を水耕栽培したまま陳列することで、生きたままの植物をディスプレイすることができ、消費者等に新鮮な植物を提供することができる。しかも本実施形態のディスプレイ装置は、成長抑制手段8を備えているため、良い状態のまま長い間陳列しておくことができ、植物が傷むのを遅らせることができる。つまり、植物を栽培した状態で陳列しておくことができる上に植物の成長速度を抑制することができるので、生きたままの状態で且つ長い間、植物をみずみずしい状態で陳列しておくことができる。
【0062】
実施形態1,2のディスプレイ装置は、照度可変手段51が調光器52により構成されていたが、本発明の照度可変手段は、例えば、発光部の位置を上下方向に移動させる位置変更部により構成されていてもよい。この位置変更部は、発光部を上下方向に移動させて位置調整することで、発光部と栽培された植物との距離を調節し、これにより照度を調節する。
【0063】
実施形態1,2のディスプレイ装置は、陳列される植物として、水耕栽培が可能な植物であればよい。この植物としては、主に野菜であり、特にレタスやねぎやサラダ菜といった葉菜類が好ましい。またイチゴやトマト等のような果実をつける植物も適用可能である。
【0064】
なお実施形態1,2の成長抑制手段8は、発光部5と調光器52と空調装置6,108とを備えていたが、一定の照度以下の光を発する発光部5だけで構成されていてもよい。また成長抑制手段8は、発光部5を備えず、空調装置6,108だけで構成されたものであってもよい。すなわち本発明の成長抑制手段8は、実施形態1,2の態様に限定されない。
【0065】
また、本実施形態のディスプレイ装置は、いわゆる湛液型水耕方式(DFT;Deep Flow Technique)による水耕栽培を採用していたが、本発明のディスプレイ装置では、水耕栽培の方式は特に限定されない。水耕栽培の方式として、例えば、湛液型水耕方式の他、いわゆる薄膜水耕方式(NFT;Nutrient Film Technique)や,ロックウール・礫・砂・もみがら・軽石等を培養液に浸して水耕栽培を行なったものでもよい。
【0066】
以下、実施形態1,2のディスプレイ装置を用いて成長抑制を行った実施例につき説明する。
【0067】
(実施例)
本実施例は、植物としてコスレタスを使用し、液肥として大塚ハウス肥料1号及び2号(大塚化学(株)製)をおよそ3:2の割合で調合して生成した。このとき液肥のEC値は2.6ms/cm、PHは6.6〜7にて設定した。コスレタスを収容した収容部の温度は、約15℃に設定した。
【0068】
発光部から発せられる光の照度を5000Lxに設定し、上記液肥に水耕栽培されたコスレタスに光照射しながら、15日間陳列した。一方、比較例として、上記液肥に水耕栽培されたコスレタスに、10000Lxの照度の光を照射し、15日間陳列した。なお、陳列するコスレタスの初期の重量は、いずれも160gである。
【0069】
この結果、次のような値が得られた。
【0070】
5000Lxの光を照射しながら陳列したコスレタスは、15日間で160gから200gに成長した。一方、10000Lxの光を照射しながら陳列したコスレタスは、15日間で160gから310gに成長した。
【0071】
この結果から明らかなように、10000Lxの光を照射して陳列したコスレタスは、15日間で150g成長したのに対し、5000Lxの光を照射して陳列したコスレタスは15日間で40gの成長にとどまった。つまり、植物に照射する光の照度を小さくすることで、植物の成長を抑制できることが分かる。
【符号の説明】
【0072】
1 装置本体
20 枠体
21 通風路
26 送風ファン
27 キャスター部
3 槽部
31 容器
32 栽培板
4 液循環装置
41 溶液タンク
42 供給路
43 循環ポンプ
44 液戻し路
5 発光部
51 照度可変手段
52 調光器
6 空調装置
7 液肥
8 成長抑制手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物を陳列するためのディスプレイ装置であって、
前記植物を水耕栽培するため液肥を内部に収容する植物陳列用の槽部と、
前記槽部に栽培された植物の成長を遅らせる成長抑制手段と
を備えている
ことを特徴とする植物のディスプレイ装置。
【請求項2】
前記植物陳列用の槽部が、食に供される植物を水耕栽培するものである
ことを特徴とする請求項1記載の植物のディスプレイ装置。
【請求項3】
前記成長抑制手段が、一定以下の照度の光を前記植物に照射して当該植物の成長を抑制する発光部を備えたものである
請求項1又は請求項2のいずれかに記載の植物のディスプレイ装置。
【請求項4】
前記成長抑制手段が、前記植物への照射光の照度を変更する照度可変手段を有している
ことを特徴とする請求項3記載の植物のディスプレイ装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載のディスプレイ装置を用いた植物の陳列方法であって、
予め育成しておいた植物を前記植物陳列用の槽部に栽培し、
前記成長抑制手段により、前記植物陳列用の槽部に栽培された植物の成長を遅らせながら当該植物を陳列しておく
ことを特徴とする植物の陳列方法。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−231730(P2012−231730A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−102125(P2011−102125)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(594095936)藤澤建機株式会社 (2)
【Fターム(参考)】