説明

植物の塊茎形成を制御するための塊茎形成制御ベクター、塊茎形成が制御された植物の製造方法および植物

【課題】 植物への導入により、植物の塊茎形成を制御(促進または抑制)できる新たな塊茎形成制御ベクター、ならびに、それを用いて、塊茎形成が制御された植物を製造する方法を提供する。
【解決手段】 LKP2遺伝子を含むベクターを、植物に塊茎形成を促進するための塊茎形成促進ベクターとして使用する。他方、CONSTANS遺伝子とEARモチーフのDNA配列とを含むキメラ遺伝子を含むベクターを、植物に塊茎形成を抑制するための塊茎形成抑制ベクターとして使用する。前記両ベクターにおいて、各遺伝子は、発現プロモーターの制御下に挿入されていることが好ましい。前者のベクターを導入した植物は、塊茎形成が促進され、後者のベクターを導入した植物は、塊茎形成が抑制される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物の塊茎形成を制御するための塊茎形成制御ベクター、塊茎形成が制御された植物の製造方法、および、塊茎形成が制御された植物に関する。
【背景技術】
【0002】
ジャガイモは、バレイショ(Solanum tuberosum cv.MayQueen)の肥大した塊茎であり、例えば、食物資源として広く栽培されている。このように植物の塊茎を食物等の資源として利用する場合には、様々な要因に影響を受けることなく、植物が、塊茎を効率良く形成することが望まれる。他方、植物の塊茎以外の部位が資源として利用されることもある。このような場合、塊茎形成に植物の栄養源が使用されるのを防ぐため、反対に、塊茎を形成し難いことが望まれる。このため、植物の塊茎形成を目的に応じて制御できれば、効率良く目的とする植物資源を作出することが可能になると考えられる。
【0003】
自然界において、植物の塊茎形成は、日長に左右されており、例えば、バレイショの場合、短日条件では、塊茎形成が促進され、反対に、長日条件では、塊茎形成が阻害されることが報告されている(非特許文献1)。したがって、日長条件の調節や、栽培地域の選択により、塊茎形成の促進または塊茎形成の抑制を図ることは可能と考えられる。しかしながら、植物の栽培において、実際に、日長条件を制御したり、栽培地域を選択することは、手間がかかり、また、栽培地域も限定されることから、結果的に、効率の低下を招き、実用的ではない。
【0004】
そこで、塊茎形成が促進された植物または塊茎形成が抑制された植物を生産する方法の確立が望まれている。
【非特許文献1】Rodoriquez−Falcon et al. Seasonal control of tuberization in Potato:Conserved elements with the flowering response.Annu.Rev.Plant Biol.57,151−180(2006)
【非特許文献2】Schultz et al.,A role for LKP2 in the circadian clock of Arabidopsis.Plant Cell 13,2659−2670(2001).
【非特許文献3】Yasuhara et al.,“Identification of ASK and clock−associated proteins as molecular partners of LKP2(LOV kelch protein 2)in Arabidopsis.”J.Exp.Bot.55,2015−2027(2004).
【非特許文献4】Putterill et al.,“The CONSTANS gene of Arabidopsis promotes flowering and encodes a protein showing similarities to zinc finger transcription factors.”Cell 80,847−857(1995).
【非特許文献5】Takase et al.,“Overexpression of the chimeric gene of the floral regulator CONSTANS and the EAR motif repressor causes late flowering in Arabidopsis.”Plant Cell Rep.Epub ahead of print(2007)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、植物への導入により、植物の塊茎形成を制御(促進または抑制)できる新たな塊茎形成制御ベクター、塊茎形成が制御された植物の製造方法ならびに塊茎形成が制御された植物の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明のベクターは、植物の塊茎形成を制御するための塊茎形成制御ベクターであって、LKP2遺伝子、または、CONSTANS遺伝子とEARモチーフのDNA配列とを含むキメラ遺伝子が挿入されたことを特徴とする。
【0007】
本発明の製造方法は、塊茎形成が制御された植物の製造方法であって、植物に、本発明の塊茎形成制御ベクターを導入することを特徴とする。また、本発明の植物は、本発明の製造方法により得られる、塊茎形成が制御された植物である。
【発明の効果】
【0008】
本発明者らは、鋭意研究の結果、植物体において人為的にLKP2遺伝子を発現させることによって、塊茎形成が促進され、また、植物体において人為的にCONSTANS遺伝子とEARモチーフのDNA配列とを含むキメラ遺伝子を発現させることによって、塊茎形成を抑制できることを見出し、本発明に到った。
【0009】
LKP2遺伝子は、LOV kelch protein2(以下、「LKP2」という)の遺伝子である。LKP2は、(1)青色光受容部でありタンパク質−タンパク質間相互作用に関わるLOVドメインと、(2)ユビキチンプロテアソーム系を介したタンパク質分解に関与するSCF複合体の構成因子F−box motif、および、(3)ユビキチン化の基質タンパク質の認識領域と考えられているkelch repeat、という3つのドメインからなるタンパク質である。そして、LKP2遺伝子ならびにLKP2については、以下のことが報告されている(非特許文献2、非特許文献3)。まず、LKP2遺伝子をシロイヌナズナで過剰発現させると、開花遅延が生じ、概日リズム周期が消失することが報告されている(非特許文献2、非特許文献3)。また、LKP2遺伝子は、SCF複合体の構成因子ASKと相互作用することから、標的タンパク質の分解を通して概日時計の制御を行う可能性があることが報告されている(非特許文献3)。しかしながら、このようなLKP2遺伝子ならびにLKP2の機能が、植物の塊茎形成に関係していることは何ら報告されておらず、そのような示唆もされていない。このような技術常識の中、本発明者らは、鋭意研究の結果、メカニズムは不明であるが、植物中で人為的にLKP2遺伝子を発現させることで、塊茎形成を促進させ、例えば、植物体1個当たりの塊茎形成個数の増加を実現した。
【0010】
CONSTANS遺伝子は、CONSTANS(以下、「CO」という)の遺伝子(以下、「CO遺伝子」という)である。COは、転写制御因子であり、例えば、シロイヌナズナにおいて、転写活性化因子として長日の日照条件に特異的に反応して開花を促進することが報告されている(非特許文献4)。また、EARモチーフとは、ERF−assosiated amphiphilic repression motifであり、転写活性化因子の機能を抑制するという機能を有するポリペプチドであることが報告されている。そして、COのC末端側に12アミノ酸からなるEARモチーフを連結させるキメラ遺伝子を、長日植物シロイヌナズナで発現させると、長日条件下であっても、EARモチーフによりCONSTANSの機能が抑制され、花芽形成および開花が遅延することが報告されている(非特許文献5)。しかしながら、このようなCOの機能抑制が、植物の塊茎形成に関係していることは何ら報告されておらず、そのような示唆もされていない。このような技術常識の中、本発明者らは、鋭意研究の結果、メカニズムは不明であるが、植物中で人為的にCO遺伝子とEARモチーフのDNA配列とを含むキメラ遺伝子を発現させることで、塊茎形成を抑制し、例えば、植物体1個当たりの塊茎形成個数の減少を実現した。
【0011】
したがって、本発明によれば、LKP2遺伝子を含むベクターまたは前記キメラ遺伝子を含むベクターを使用することにより、塊茎形成が促進された植物と塊茎形成が抑制された植物のそれぞれを、目的に応じて作出することができる。これによって得られる本発明の植物は、例えば、使用した本発明のベクターの種類に応じて、塊茎形成が制御されるため、より効率良く目的とする植物資源を作出することができる。このため、本発明は、例えば、農業の分野等において極めて有用な技術といえる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の塊茎形成制御ベクターは、前述のように、LKP2遺伝子、または、CO遺伝子とEARモチーフのDNA配列とを含むキメラ遺伝子が挿入されたことを特徴とする。以下、本発明において、LKP2遺伝子を含む塊茎形成制御ベクターを「塊茎形成促進ベクター」といい、前記キメラ遺伝子を含む塊茎形成制御ベクターを「塊茎形成抑制ベクター」という。なお、本発明において、「機能的に配置」、「機能的に結合」とは、それが意図する機能を発揮しうる状態で配置または結合していることを意味する。また、本発明において、遺伝子の発現とは、例えば、遺伝子の転写および翻訳(タンパク質の合成)を含む。
【0013】
<塊茎形成促進ベクター>
本発明において、LKP2遺伝子は、例えば、ゲノムDNAの配列でもよいし、cDNA配列であってもよい。LKP2遺伝子としては、例えば、以下の(A)または(B)のDNAがあげられる。
(A)配列番号1に記載の塩基配列からなるDNA
(B)前記(A)において、1もしくは数個の塩基が欠失、置換または付加された塩基配列からなり、且つ、前記LKP2と同様の機能を有するタンパク質をコードするDNA
【0014】
前記(A)のDNAは、LKP2遺伝子のCDS(LKP2のアミノ酸配列をコードする、終止コドンを含む配列)である。前記(B)において、前記塩基数は制限されないが、例えば、50塩基に対して、1〜6個が好ましく、より好ましくは1〜5個、さらに好ましくは1〜4個、特に好ましくは1〜3個である。また、前記(B)のDNAは、LKP2と同様の機能を喪失しない範囲であれば、例えば、前記(A)のDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズするDNAであってもよいし、前記いずれかのDNAとの相同性が90%以上のDNAでもよい。ハイブリダイズのストリンジェントな条件とは、例えば、当該技術分野における標準の条件があげられるが、例えば、温度条件は、配列番号1で示された塩基配列のTm値の±5℃、好ましくは±2℃、より好ましくは±1℃である。条件の具体例として、5×SSC溶液、10×Denhardt溶液、100μg/mlサケ精子DNAおよび1%SDS中、65℃でのハイブリダイゼーション、0.2×SSCおよび1%SDS中、65℃、10分の洗浄(2回)があげられる。また、相同性は、例えば、90%以上であり、好ましくは95%以上、より好ましくは97.5%以上である。
【0015】
また、LKP2遺伝子は、例えば、配列番号2に示すLKP2のアミノ酸配列をコードする他の塩基配列からなるDNAであってもよい。
【0016】
なお、シロイヌナズナのLKP2遺伝子の塩基配列ならびにLKP2のアミノ酸配列は、例えば、NCBIアクセッションNo.AB038797にコードされている。本発明においてLKP2遺伝子は、LKP2と同様の機能を有するファミリータンパク質(例えば、ZTL)をコードする遺伝子であってもよい。
【0017】
本発明の塊茎形成促進ベクターは、植物に導入された際に、LKP2遺伝子を発現するものであればよく、LKP2遺伝子以外の構造は制限されない。本発明の塊茎形成促進ベクターとしては、例えば、さらに発現プロモーターを有し、前記発現プロモーターの制御下にLKP2遺伝子が挿入されていることが好ましい。この場合、塊茎形成促進ベクターは、目的の植物体に導入した際に、例えば、植物体の染色体に組み込まれてもよいし、植物体の染色体には組み込まれず、植物体において独立したエピソームとして存在してもよい。前者の場合、LKP2遺伝子は、発現プロモーターの制御下に位置する状態で、植物体のゲノムに組み込まれることが好ましい。また、塊茎形成促進ベクターは、植物体に導入され、組換えによって植物体の染色体に組み込まれることにより、LKP2遺伝子が発現プロモーターの制御下に配置するような構造であってもよい。この場合、前記発現プロモーターは、例えば、植物体の染色体が本来備えるプロモーターであってもよいし、予め、染色体に組み込んだ外来の発現ベクターであってもよい。
【0018】
前記発現プロモーターとしては、制限されないが、カリフラワーモザイクウィルス(CaMV)の35Sプロモーター(P35S)、マンノピン合成酵素遺伝子プロモーター、アクチン遺伝子プロモーター等があげられる。本発明の塊茎形成促進ベクターにおいて、LKP2遺伝子の位置は、例えば、発現プロモーターの制御下であればよく、通常、プロモーターの下流側(3’側)に機能的に配置される。
【0019】
本発明の塊茎形成促進ベクターは、種々のベクターにLKP2遺伝子が挿入されていればよく、前記ベクターの種類は、制限されず、例えば、後述するようなベクターの導入方法に応じて適宜決定できる。前記ベクターとしては、例えば、プラスミドベクター等があげられる。
【0020】
後述するようなアグロバクテリウムを介した形質転換(アグロバクテリウム法)を行う場合は、例えば、バイナリーベクターが好ましく、これにLKP2遺伝子を挿入すれば、本発明の塊茎形成促進ベクターとして使用できる。前記バイナリーベクターの種類は特に制限されないが、Tiプラスミドベクターや、T−DNAの右側境界配列(RB)と左側境界配列(LB)とを有するベクター等があげられる。このようなバイナリーベクターは、前記T−DNAのRBとLBとの間に目的のLKP2遺伝子を挿入すれば、植物に導入した際に、RBからLBの領域を植物の染色体に組み込むことができる。この場合、前述のようにRBとLBとの間には、さらに発現プロモーターが挿入され、この発現プロモーターの制御下にLKP2遺伝子が機能的に配置されていることが好ましい。LKP2遺伝子を挿入するバイナリーベクターとしては、例えば、pBE2113,pBIN19等が使用できる。また、例えば、プロトプラスト法(エレクトロポレーション法)やパーティクルガン法を行う場合には、従来これらの方法に使用されている各種プラスミドを使用することもできる。
【0021】
本発明の塊茎形成促進ベクターは、さらに、植物への導入の有無を確認できることから、選択マーカーをコードする配列(選択マーカー配列)を有することが好ましい。選択マーカー配列としては、特に制限されず、公知の薬剤耐性マーカー、蛍光タンパク質マーカー等のマーカーをコードする配列があげられる。前記薬剤耐性マーカーとしては、特に制限されず、例えば、カナマイシン耐性マーカー、ネオマイシン耐性マーカー、ゼオシン耐性マーカー、ピューロマイシン耐性マーカー、ハイグロマイシン耐性マーカー等があげられる。前記蛍光タンパク質マーカーとしては、例えば、GFP(Green Fluorescent Protein)、EGFP(変異型GFP:Enhanced GFP)等があげられる。これらの選択マーカー配列は、その配列にしたがってPCR等により合成してもよいし、前記選択マーカー配列を有する市販のベクターから調製することもできる。
【0022】
<塊茎形成抑制ベクター>
本発明において、前記キメラ遺伝子は、転写活性化因子であるCOをコードする塩基配列(CO遺伝子)と、転写抑制活性を有するEARモチーフ(以下、「Rep」ともいう)をコードするDNA配列(以下、「Rep配列」ともいう)とが機能的に結合したキメラ遺伝子である。前記キメラ遺伝子は、以下、「CO−Rep遺伝子」ともいう。前記CO遺伝子とRep配列との位置関係は、制限されず、COとRep(EARモチーフ)との融合タンパク質が産生され、EARモチーフの機能により、COの転写活性能が抑制できればよい。具体例としては、前記CO遺伝子の3’末端側にRep配列が機能的に配置されていることが好ましい。この場合、発現したCOのC末端側にリプレッサーが連結される。
【0023】
本発明において、CO遺伝子は、例えば、ゲノムDNAの配列でもよいし、cDNA配列であってもよく、また、合成した塩基配列であってもよい。
【0024】
本発明において、CO遺伝子としては、例えば、以下の(C)または(D)のDNAがあげられる。
(C)配列番号3に記載の塩基配列からなるDNA
(D)前記(C)において、1もしくは数個の塩基が欠失、置換または付加された塩基配列からなり、且つ、前記COと同様の機能を有するタンパク質をコードするDNA
【0025】
前記(C)のDNAは、CO遺伝子のCDS(COのアミノ酸配列をコードする、終止コドンを含む配列)である。前記(D)において、前記塩基数は制限されないが、例えば、50塩基に対して、1〜6個が好ましく、より好ましくは1〜5個、さらに好ましくは1〜4個、特に好ましくは1〜3個である。また、前記(D)のDNAは、COと同様の機能を喪失しない範囲であれば、例えば、前記(C)のDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズするDNAであってもよいし、前記いずれかのDNAとの相同性が90%以上のDNAでもよい。ハイブリダイズのストリンジェントな条件とは、例えば、当該技術分野における標準の条件があげられるが、例えば、温度条件は、配列番号3で示された塩基配列のTm値の±5℃、好ましくは±2℃、より好ましくは±1℃である。条件の具体例として、5×SSC溶液、10×Denhardt溶液、100μg/mlサケ精子DNAおよび1%SDS中、65℃でのハイブリダイゼーション、0.2×SSCおよび1%SDS中、65℃、10分の洗浄(2回)があげられる。また、相同性は、例えば、90%以上であり、好ましくは95%以上、より好ましくは97.5%以上である。CO−Rep遺伝子は、例えば、配列番号3における終止コドン(TGA)をGCA等に置換してもよい。
【0026】
また、CO遺伝子は、例えば、配列番号4に示すCOのアミノ酸配列をコードする他の塩基配列からなるDNAであってもよい。なお、シロイヌナズナのCO遺伝子ならびにCOの配列は、例えば、NCBIアクセッションNo.NM121589にコードされている。本発明においてCO遺伝子は、例えば、シロイヌナズナのCO遺伝子には制限されず、他の植物種由来のCO遺伝子でもよい。
【0027】
本発明において、Rep配列は、例えば、以下の(E)または(F)のDNAがあげられる。
(E)配列番号5に記載の塩基配列からなるDNA
(F)前記(E)において、1もしくは数個の塩基が欠失、置換または付加された塩基配列からなり、且つ、前記EARモチーフと同様の機能を有するポリペプチドをコードするDNA
【0028】
前記(E)のDNAは、EARモチーフのアミノ酸配列をコードする配列である。前記(F)において、前記塩基数は制限されないが、例えば、50塩基に対して、1〜6個が好ましく、より好ましくは1〜5個、さらに好ましくは1〜4個、特に好ましくは1〜3個である。また、前記(F)のDNAは、EARモチーフと同様の機能を喪失しない範囲であれば、例えば、前記(E)のDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズするDNAであってもよいし、前記いずれかのDNAとの相同性が90%以上のDNAでもよい。ハイブリダイズのストリンジェントな条件とは、例えば、当該技術分野における標準の条件があげられるが、例えば、温度条件は、配列番号5で示された塩基配列のTm値の±5℃、好ましくは±2℃、より好ましくは±1℃である。条件の具体例として、5×SSC溶液、10×Denhardt溶液、100μg/mlサケ精子DNAおよび1%SDS中、65℃でのハイブリダイゼーション、0.2×SSCおよび1%SDS中、65℃、10分の洗浄(2回)があげられる。また、相同性は、例えば、90%以上であり、好ましくは95%以上、より好ましくは97.5%以上である。
【0029】
また、Rep配列は、例えば、配列番号6に示すEARモチーフのアミノ酸配列(LDLDLELRLGFA)をコードする他の塩基配列からなるDNAであってもよい。
【0030】
CO遺伝子とRep配列とからなるキメラ遺伝子の一例を配列番号7に示す。この配列において、9−1180番目の領域が終止コドンをGCAに置換したCO遺伝子であり、1137−1172番目の領域がRep配列である。その他の部分(例えば、3’末端)は、ベクターへの連結が容易になることから、制限酵素部位(配列番号7においてはNotIサイト)等を有している。なお、この配列は一例であって、本発明を制限するものではない。
【0031】
本発明の塊茎形成促進ベクターは、植物に導入された際に、前記キメラ遺伝子を発現するものであればよく、前記キメラ遺伝子以外の構造は制限されない。本発明の塊茎形成抑制ベクターとしては、例えば、さらに発現プロモーターを有し、前記発現プロモーターの制御下に前記キメラ遺伝子が挿入されていることが好ましい。この場合、塊茎形成抑制ベクターは、目的の植物体に導入した際に、例えば、植物体の染色体に組み込まれてもよいし、植物体の染色体には組み込まれず、植物体において独立したエピソームとして存在してもよい。前者の場合、前記キメラ遺伝子は、発現プロモーターの制御下に位置する状態で、植物体のゲノムに組み込まれることが好ましい。また、塊茎形成抑制ベクターは、植物体に導入され、組換えによって植物体の染色体に組み込まれることにより、前記キメラ遺伝子が発現プロモーターの制御下に配置するような構造であってもよい。この場合、前記発現プロモーターは、例えば、植物体の染色体が本来備えるプロモーターであってもよいし、予め、染色体に組み込んだ外来の発現ベクターであってもよい。前記発現プロモーターとしては、前述のようなものがあげられる。前記キメラ遺伝子の位置は、例えば、発現プロモーターの制御下であればよく、通常、プロモーターの下流側(3’側)に機能的に配置される。
【0032】
本発明の塊茎形成抑制ベクターは、種々のベクターに前記キメラ遺伝子が挿入されていればよく、前記ベクターの種類は、制限されず、前述のようなものがあげられる。また、前述と同様に、アグロバクテリウム法を行う場合は、例えば、バイナリーベクターが好ましく、これに前記キメラ遺伝子を挿入すれば、本発明の塊茎形成抑制ベクターとして使用できる。前記バイナリーベクターは、前述と同様のものが使用でき、前記キメラ遺伝子の挿入も、前記LKP2遺伝子と同様である。
【0033】
本発明の塊茎形成抑制ベクターは、選択マーカー配列を有することが好ましく、前記選択マーカー配列としては、前述と同様のものがあげられる。
【0034】
<塊茎形成が制御された植物の製造方法>
本発明の製造方法は、塊茎形成が抑制された植物の製造方法であって、植物に、本発明の塊茎形成制御ベクターを導入することを特徴とする。本発明の製造方法によれば、本発明の塊茎形成促進ベクターを導入することにより、塊茎形成が促進され、例えば、植物体1個あたりの塊茎個数が増加した植物を得ることができる。他方、本発明の塊茎形成抑制ベクターを導入すれば、塊茎形成が抑制され、例えば、植物体1個あたりの塊茎個数が減少した植物を得ることができる。
【0035】
本発明の製造方法においては、本発明の塊茎形成制御ベクターを目的の植物に導入すればよく、例えば、ベクターの導入方法や条件等は制限されない。
【0036】
本発明の製造方法において、対象となる植物は、制限されない。具体例としては、ナス科の植物があげられ、前記ナス科の植物としては、例えば、バレイショがあげられる。
【0037】
本発明の塊茎形成制御ベクターの導入方法は、制限されず、植物の種類やベクターの種類等に応じて適宜決定でき、例えば、アグロバクテリウム法、プロトプラスト法(エレクトロポレーション法)、パーティクルガン法等があげられる。これらの導入方法は、従来公知の方法に従って行うことができる。
【0038】
アグロバクテリウム法を採用する場合、例えば、以下のようにして本発明の植物を生産できる。本発明の塊茎形成制御ベクターを、Vir領域を有するプラスミドを持つアグロバクテリウム(Agrobacterium tumefaciens)に導入する。そして、目的の植物体に前記アグロバクテリウムを感染させ、培地で培養を行う。この際、前述のように塊茎形成制御ベクターが選択マーカー配列を有していれば、例えば、薬剤等を含有する培地で培養することによって、本発明の塊茎形成制御ベクターが導入された形質転換体を容易に選択できる。このようにして得られた形質転換体は、LKP2遺伝子を導入した場合には、LKP2遺伝子の発現によって、塊茎形成が促進され、例えば、植物体1個あたりの塊茎個数が増加し、前記キメラ遺伝子を導入した場合には、前記キメラ遺伝子の発現によって、塊茎形成が抑制され、例えば、植物体1個あたりの塊茎個数が減少する。
【0039】
アグロバクテリウム法によりバレイショに本発明の塊茎形成制御ベクターを導入する際には、例えば、以下のようにして行うことができる。まず、バレイショのマイクロチューバー(小指の先ぐらいの大きさの塊茎)を準備する。これを、本発明の塊茎形成制御ベクターを導入したアグロバクテリウムとともに培養し、前記アグロバクテリウムを感染させる。そして、さらに培養することによりカルスを形成させ、例えば、薬剤等を含有する培地で培養し、前記カルスから再分化したシュートを選択すればよい。また、塊茎以外にも、例えば、葉の切片を用いる葉片培養においてアグロバクテリウムを感染させてもよい。
【0040】
このようにして得られる本発明の植物(形質転換体)は、導入された各遺伝子の発現によって、塊茎形成が促進または抑制される。なお、本発明において植物とは、例えば、植物体全体でも、葉、種子等の植物体の一部でもよく、また、プロトプラスト、カルス等の植物細胞であってもよい。
【0041】
[実施例]
つぎに、本発明の実施例について、比較例と併せて説明する。ただし、本発明は下記の実施例により制限されない。
【実施例1】
【0042】
バレイショ(Solanum tuberosum cv.MayQueen)に、LKP2遺伝子を有する塊茎形成促進ベクター(pBE2113/LKP2)を導入し、塊茎形成の状態を確認した。
【0043】
<塊茎形成促進ベクターpBE2113/LKP2の構築>
シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana(L.)Heynh.accession Columbia、以下同様)のcDNAから、下記プライマーセット1を用いたPCRによって、LKP2コード領域(CDS)を増幅させた。なお、下記プライマーセット1は、フォワードプライマー(配列番号8)が5’側にBamHIサイトを、リバースプライマー(配列番号9)が5’側にBamHIサイトを備える。この増幅物の概略を図1に示す。同図における数値は、増幅物における塩基の番号を示す。
(プライマーセット1)
フォワードプライマー 5’−GGATCCGTATGCAAAATCAAATGGAGTGGG−3’
リバースプライマー 5’−GGATCCGATCAAGTACTTGCAGTGGTAGAA−3’
【0044】
このPCR増幅物とバイナリーベクターpBE2113NotのBamHIサイトに挿入した。このようにして得られた組換え発現ベクターを、pBE2113/LKP2、または、35S:LKP2という。pBE2113Notの構成の一部の概略を図1に示す。同図に示すように、pBE2113Notは、カリフラワーモザイクウィルス(CaMV)35Sプロモーターを備える発現ベクターである。同図において、「E12」は、CaMVの35Sプロモーター上流領域E12配列(−419〜−90bpの2回繰り返し配列)であり、「P35S」は、CaMVの35Sプロモーターであり、「Ω」は、タバコモザイクウィルス(TMV)の5’非翻訳領域エンハンサーΩ領域であり、「NOS−T」は、ノパリン合成酵素遺伝子nos3’非翻訳領域終止シグナル(転写ターミネーター及びmRNAポリアデニル化シグナル)であり、「RB」は、アグロバクテリウムT−DNAの右側境界配列(Right Border:25bp)であり、「LB」は、前記T−DNAの左側境界配列(Left Border:25bp)である。pBE2113/LKP2は、前述のようにLKP2遺伝子の増幅物をpBE2113NotのBamHIサイトに挿入しているため、LKP2遺伝子の増幅物が、T−DNAのRBとLBとに挟まれた構造となる。
【0045】
この発現ベクターは、RBとLBとの間にプロモーターP35SとLKP2遺伝子とが挿入され、前記LKP2遺伝子は前記プロモーターの制御下に配置されている。したがって、従来公知の方法に従って、これらの発現ベクターを導入したアグロバクテリウムを植物体に感染させれば、RBからその下流に位置するLBまでの領域が、組換えにより植物体のゲノム中に組み込まれる。そして、組み込まれた発現プロモーターP35Sの制御下にあるLKP2遺伝子が過剰に発現することとなる。
【0046】
<形質転換体の作製>
作製したpBE2113/LKP2を、アグロバクテリウム法によりバレイショに導入した。特に示さない限り、アグロバクテリウム法は、インプランタインフィルトレーション法(Ishige, T, Ohshima, M, Ohashi, Y "Transformation of Japanese potato cultivars with the β-glucoronidase gene fused with the promoter of the pathogenesis-related 1a protein gene of tobacco." Plant Science 73, 167-174 (1991).)ならびに「日本生化学会編基礎生化学実験法第3巻タンパク質II機能・動態解析法」(東京化学同人、2001年、pp.116−125)に従って行った。形質転換体の作製工程の概略を図2に示す。
【0047】
バレイショの小さな塊茎(マイクロチューバー)に、pBE2113/LKP2を導入したアグロバクテリウムを感染させた。3〜4週間再分化培地で培養し、そして、再分化したカルスを、カナマイシン(100mg/L)とCefotaxime(300mg/L)とを含む再分化培地で育成し、遺伝子(pBE2113/LKP2のRBからLBの領域)が導入された形質転換体を仮選択した。
【0048】
さらに、前記仮選択を行った形質転換体について、RNAゲルブロットハイブリダイゼーションを行い、LKP2遺伝子が発現している株を選択した。まず、前記形質転換体から、RNeasy Plant Mini Kit(Qiagen社製)を用いて、mRNAを抽出した。抽出したmRNAを、1.85%ホルムアルデヒドを含有する1%アガロースゲルに供し、電気泳動を行った。電気泳動したRNAをナイロンメンブランにブロッティングし、digoxigenin−11−dUTP(DIG−dUTP)で標識化したRNAプローブと反応させてハイブリッドを形成させた。そして、試薬(商品名CDP star visualization kit;GE Healthcare社製)を用いて化学蛍光シグナルを発生させ、これを検出装置(商品名light capture system;ATTO社製)で検出した。この結果を、図3に示す。同図は、薬剤選択した形質転換体のRNAゲルブロッティングハイブリダイゼーションの結果を示す図である。同図において、上欄が、LKP2mRNAの結果であり、下欄は、泳動したRNA量を確認するためのコントロールの結果である。そして、同図の結果から、35、36、40、42、44、45、47、48の計8株の形質転換体を、遺伝子(pBE2113/LKP2のRBからLBの領域)が導入された植物体として選択した。
【0049】
各形質転換体(8株)のシュートを切り取り、2%ショ糖含有改変MS寒天培地(日本生化学編基礎生化学実験法第3巻タンパク質)に植え、長日条件(16時間明期/8時間暗記)で培養した。成長したバレイショを、15%ショ糖を含むMS寒天培地に移植し、暗所下で2ヶ月培養した。各形質転換体について、1株から得られた塊茎の形成個数を確認した。また、コントロールとして、LKP2遺伝子を挿入していないバイナリーベクターpBE2113を用いて、同様にしてバレイショの形質転換を行い、得られた形質転換体についても同様に塊茎の形成個数の確認を行った。これらの結果を、図4に示す。同図は、pBE2113/LKP2(35S:LKP2)を導入した形質転換体と、コントロールベクターpBE2113を導入した形質転換体における塊茎の形成個数の平均を示すグラフである(n=8)。同図において、バーは、標準誤差を示し、*は、t検定によるP値が0.05以下であることを示す。
【0050】
このようにLKP2遺伝子を過剰発現させた形質転換体は、形成される塊茎の個数がコントロール(100%)よりも約2倍程度多い結果となった。この結果から、LKP2遺伝子の発現により、塊茎の形成を促進できることがわかる。
【実施例2】
【0051】
バレイショ(Solanum tuberosum cv.MayQueen)に、CO-Rep遺伝子(前記キメラ遺伝子)を有する塊茎形成抑制ベクター(pBE2113/CO-Rep)を導入し、塊茎形成の状態を確認した。なお、特に示さない限りは、前記実施例1と同様にして操作を行った。
【0052】
<塊茎形成抑制ベクターpBE2113/CO-Repの構築>
特に示さない限りは、文献(Takase, T et al., "Overexpression of the chimericgene of the floral regulator CONSTANS and the EAR motif repressor causes late flowering in Arabidopsis." Plant Cell Rep. Epub ahead of print (2007))に従った。まず、5’末端にBamHIサイト、3’末端にBglIIサイトを備えるEARモチーフの二本鎖DNAを合成した。この二本鎖の順鎖の配列を下記配列番号10に示す。この二本鎖をBamHIとBglIIで処理し、pBE2113NotのBamHIサイトに挿入した。この組換えベクターを、pBE2113/Repという。
5’−GGATCCCTTGATCTTGATCTTGAACTTAGACTTGGATTTGCTTAGATCT−3’(配列番号10)
【0053】
つぎに、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana(L.)Heynh.accession Columbia、以下同様)のcDNAから、下記プライマーセット2を用いたPCRによって、COコード領域(CDS)を増幅させた。なお、下記プライマーセット2において、フォワードプライマー(配列番号11)およびリバースプライマー(配列番号12)は、共に、5’側にBamHIサイトを備え、リバースプライマーは、終止コドンTGAをGCAに置き換える配列とした。この増幅物の概略を図1に示す。同図における数値は、増幅物の長さを示す。
(プライマーセット2)
フォワードプライマー 5’−AGGATCCGTATGTTGAAACAAGAGAGTAAC−3’
リバースプライマー 5’−TGGATCCTGCGAATGAAGGAACAATCCCA−3’
【0054】
この増幅物をpCR4−TOPO(商品名、Invitrogen社製)にサブクローニングし、BamHIで処理した後、この断片を前述のpBE2113/RepのBamHIサイトにライゲーションした。このようにして得られた組換え発現ベクターを、pBE2113/CO−Rep、または、35S:CO−Repという。pBE2113/CO−Repは、前述のように、Co−Rep遺伝子の増幅物をpBE2113NotのBamHIサイトに挿入しているため、Co−Rep遺伝子の増幅物が、T−DNAのRBとLBとに挟まれた構造となる。
【0055】
この発現ベクターは、RBとLBとの間にプロモーターP35SとCO−Rep遺伝子とが挿入され、前遺伝子は前記プロモーターの制御下に配置されている。したがって、従来公知の方法に従って、これらの発現ベクターを導入したアグロバクテリウムを植物体に感染させれば、RBからその下流に位置するLBまでの領域が、組換えにより植物体のゲノム中に組み込まれる。そして、組み込まれた発現プロモーターP35Sの制御下にあるCO−Rep遺伝子(キメラ遺伝子)が過剰に発現することとなる。
【0056】
<形質転換体の作製>
作製したpBE2113/CO−Repを、前記実施例1と同様にしてアグロバクテリウム法によりバレイショに導入した。そして、同様にして、薬剤による仮選択を行い、続いて、RNAゲルブロットハイブリダイゼーションにより、CO−Rep遺伝子が発現している株を選択した。RNAゲルブロットハイブリダイゼーションの結果を、図5に示す。同図は、薬剤選択した形質転換体のRNAゲルブロッティングハイブリダイゼーションの結果を示す図である。同図において、上欄が、CO−RepmRNAの結果であり、下欄は、泳動したRNA量を確認するためのコントロールの結果である。そして、同図の結果から、計22株(7,8,10,11,15,16,17,18,26,28,31,35,37,54,56,57,58,59,63,71,73,74)の形質転換体を、遺伝子(pBE2113/CO−RepのRBからLBの領域)が導入された植物体として選択した。
【0057】
各形質転換体(22株)からシュートを切り取り、前記実施例1と同様に、培養を行い、各形質転換体について1株から得られた塊茎の形成個数を確認した。これらの結果を、図6に示す。同図は、pBE2113/CO−Rep(35S:Co−Rep)を導入した形質転換体(n=22)と、コントロールベクターpBE2113を導入した形質転換体(n=70)における塊茎の形成個数の平均を示すグラフである。同図において、バーは、標準誤差を示し、*は、t検定によるP値が0.05以下であることを示す。
【0058】
このようにCo−Rep遺伝子を過剰発現させた形質転換体は、形成される塊茎の個数がコントロール(100%)よりも約25%程度少ない結果となった。この結果から、Co−Rep遺伝子の発現により、塊茎の形成を抑制できることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明によれば、例えば、目的に応じて、LKP2遺伝子を含む塊茎形成促進ベクターまたは前記キメラ遺伝子(CO−Rep遺伝子)を含む塊茎形成抑制ベクターを植物に導入することにより、塊茎形成が促進または抑制された植物を作出できる。このようにして得られる植物は、例えば、植物体1個あたりの塊茎個数が増加し、または、植物体1個当たりの塊茎個数を減少することができる。したがって、本発明は、目的に応じて、植物の塊茎形成を制御でき、効率良く目的の植物資源を作出できることから、例えば、農業の分野において、極めて有用な技術といえる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】図1は、本発明の一実施例における塊茎形成制御ベクターの構築の一例を示す概略図である。
【図2】図2は、本発明の他の実施例において、形質転換体の作製の一例を示す概略図である。
【図3】図3は、本発明のさらにその他の実施例における、RNAゲルブロッティングハイブリダイゼーションの結果を示す図である。
【図4】図4は、本発明のさらにその他の実施例において、pBE2113/LKP2を導入した形質転換体の塊茎数を示すグラフである。
【図5】図5は、本発明のさらにその他の実施例における、RNAゲルブロッティングハイブリダイゼーションの結果を示す図である。
【図6】図6は、本発明のさらにその他の実施例において、pBE2113/Co−Repを導入した形質転換体の塊茎数を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物の塊茎形成を制御するための塊茎形成制御ベクターであって、
LKP2遺伝子、または、CONSTANS遺伝子とEARモチーフのDNA配列とを含むキメラ遺伝子が挿入されたことを特徴とする、塊茎形成制御ベクター。
【請求項2】
前記LKP2遺伝子を含み、植物の塊茎形成を促進する塊茎形成促進ベクターである、請求項1記載の塊茎形成制御ベクター。
【請求項3】
前記キメラ遺伝子を含み、植物の塊茎形成を抑制する塊茎形成抑制ベクターである、請求項1記載の塊茎形成制御ベクター。
【請求項4】
前記LKP2遺伝子または前記キメラ遺伝子が、発現プロモーターの制御下に挿入されている、請求項1から3のいずれか一項に記載の塊茎形成制御ベクター。
【請求項5】
前記塊茎形成制御ベクターが、プラスミドベクターである、請求項1または4記載の塊茎形成制御ベクター。
【請求項6】
前記塊茎形成制御ベクターが、Tiプラスミドベクターである、請求項1から5のいずれか一項に記載の塊茎形成制御ベクター。
【請求項7】
前記塊茎形成制御ベクターが、T−DNAの右側境界配列(RB)と左側境界配列(LB)との間に、前記LKP2遺伝子または前記キメラ遺伝子が挿入されたベクターである、請求項1から6のいずれか一項に記載の塊茎形成制御ベクター。
【請求項8】
前記塊茎形成制御ベクターが、アグロバクテリウム法に使用するベクターである、請求項1から7のいずれか一項に記載の塊茎形成制御ベクター。
【請求項9】
塊茎形成が制御された植物の製造方法であって、
植物に、請求項1から8のいずれか一項に記載の塊茎形成制御ベクターを導入することを特徴とする製造方法。
【請求項10】
前記塊茎形成制御ベクターが、前記LKP2遺伝子を含むベクターであり、塊茎形成が促進された植物の製造方法である、請求項9記載の製造方法。
【請求項11】
前記塊茎形成制御ベクターが、前記キメラ遺伝子を含むベクターであり、塊茎形成が抑制された植物の製造方法である、請求項9記載の製造方法。
【請求項12】
前記植物が、ナス科の植物である、請求項9から11のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項13】
前記ナス科の植物が、バレイショである、請求項12記載の製造方法。
【請求項14】
請求項9から13のいずれか一項に記載の製造方法により得られる植物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−212064(P2008−212064A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−54588(P2007−54588)
【出願日】平成19年3月5日(2007.3.5)
【出願人】(304028346)国立大学法人 香川大学 (285)
【出願人】(504150450)国立大学法人神戸大学 (421)
【Fターム(参考)】