説明

植物の植栽による汚染土壌の浄化に用いられる疎水性有機汚染物質移動促進剤および該促進剤を用いた汚染土壌の浄化方法

【課題】ナフタレン、フェナントレン、ピレンなどの多環芳香属化合物(PAHs)や、ダイオキシン類、PCB(ポリ塩化ビフェニル)、DDTといった残留性有機汚染物質(POPs)など、種々の疎水性の有機汚染物質で汚染された土壌を、植物を植栽することにより浄化する際に、疎水性有機汚染物質の植物根圏への移動性を高める疎水性有機汚染物質移動促進剤および該促進剤を用いた土壌の植栽による浄化方法を提供する。
【解決手段】植栽による疎水性有機汚染物質で汚染された汚染土壌の浄化法において、疎水性有機汚染物質移動促進剤として、プリン化合物を必須成分としたものを用いる。プリン化合物がカフェインである上記疎水性有機汚染物質移動促進剤。カフェインをその成分として含有し、水と接触することにより水中に容易にカフェインを溶出する物質を必須成分とする上記疎水性有機汚染物質移動促進剤。これらの促進剤を汚染土壌に添加することにより、土壌に強く吸着した疎水性有機汚染物質が水へ移動しやすくなり、その結果、植物根圏へ移動し、浄化が促進される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物の植栽により疎水性有機汚染物質で汚染された汚染土壌を浄化する際に、該疎水性有機汚染物質の水への移動を促進させるために使用される促進剤および該促進剤を用いた植栽による汚染土壌等の浄化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多環芳香属化合物(PAHs)、ダイオキシン類、PCB(ポリ塩化ビフェニル)、DDTといった通称POPs(ポップス)と呼ばれる残留性有機汚染物質などの有機汚染物質による土壌の汚染が数多く報告され、その対策が世界的に重要な関心事になっている。
【0003】
多環芳香族炭化水素(PAHs)に関しては現在、我が国では環境規制がないが、オランダではPAHsに関する厳しい環境規制が設定されている。また、米国でも環境保全局(USEPA)がPAHs汚染の指標となる代表的な物質として、16種類のPAHsを指定している。今後わが国においても環境規制物質に指定されることは必須であると考えられる。
【0004】
PAHsは石油や石炭に含まれ、石油精製工場や石油製品工場、石炭ガス化工場、コールタールなどの石炭製品工場で発生し、主としてこれらの工場跡地などでみられる。また、タンカーの座礁より積荷の原油漏れ等によっても発生する。さらに、自動車排ガスや化石燃料などの不完全燃焼により、非意図的に発生する。
【0005】
工場跡地やタンカーの座礁によって起こる汚染の場合は、一般にPAHs単独というよりは、原油等の油汚染が主で、原油に含まれるPAHsが問題となる。したがって、この場合は油汚染土壌の浄化が求められ、油の成分である脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素と一緒に有害なPAHsも除去される必要がある。
【0006】
自動車排ガスや化石燃料などの不完全燃焼により、非意図的に発生するPAHsは、大気中や排ガスの粒子状物質に吸着するなどして、地上に降下し、土壌を汚染する。この場合は、PAHsは粒子状物質や土壌に吸着したかたちで存在し、PAHs自身が除去対象となる。この場合、工場跡地などの土壌汚染以上に、広範囲に汚染が拡散している場合がある。
【0007】
一方、環境中での残留性が高いPCB、DDT、ダイオキシン等のPOPs(残留性有機汚染物質)については、一部の国々の取組のみでは地球環境汚染の防止には不十分であるということで、国際的に協調してPOPsの廃絶、削減等を行う必要から、2001年5月、「残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約」が採択されている。POPsの中でアルドリン、クロルデン、ディルドリン、エンドリン、ヘプタクロル、ヘキサクロロベンゼン、マイレックス、トキサフェン、PCBは製造、使用が原則禁止され、DDTは原則制限されている。しかし、これまでに使用されたことによる土壌汚染、非意図的生成物質の排出による土壌汚染が顕在化している。
【0008】
ダイオキシン類化合物は、ポリ塩化ジペンゾパラジオキシン(PCDD)とポリ塩化ジベンゾフラン(PCDF)の総称で、化学物質の合成過程、廃棄物の焼却処理、あるいは有機塩素系化学製品の製造工程での副産物として、非意図的に生成する毒性物質である。PCDDには75種類、PCDFには135種類の同族体、異性体が存在する。これらダイオキシン類の毒性は、急性毒性、発癌性、催奇形性、免疫毒性などの多岐にわたっており、人体に対する悪影響が深刻な社会問題となっている。また、社会生活において、塩素を含むいわゆるビニールやプラスチック類の製品が氾濫しており、その焼却処理において、かつてダイオキシン類が大気中に放出されて周辺の土壌を汚染した。さらに、ごみ焼却場の焼却灰中にも多量のダイオキシン類が含まれており、焼却灰が処分される廃棄物最終処分場周辺の土壌汚染がある。現在、このようなダイオキシン類汚染地域の発生を防止すべく、多くの努力がなされているが、既存の汚染土壌に対する取扱い、さらには汚染土壌の浄化については、効果的手法はないのが実情である。
【0009】
ポリ塩化ビフェニル(以下、PCBという。)は、ビフェニルの塩素化物の総称であり、置換塩素数が1〜10の10種の同属体、209種の異性体が存在する。PCBは、物理的、化学的に安定であり、耐熱性及び電気絶縁性に優れているため、電気機器の絶縁油、熱媒体、潤滑油、複写紙のインキ原料など、工業用品に広く用いられてきた。しかし、PCBは、人体に有害であるばかりでなく、自然界での分解が困難な環境汚染物質であるため、生産が中止されている。しかし、PCBによる汚染が拡大し、河川の底質、汚泥や工場跡地などがPCBに汚染されていることが判明したために、PCBに汚染された底泥や工場跡地などの汚染土壌を無害化することが求められている。底泥や工場跡地などの汚染土壌に含まれているPCBは、量的に少ないため、安価に、かつ、効率的に除去することが難しい。また、PCBに汚染された汚染土壌をそのまま加熱分解することも可能であるが、その際、汚染土壌に含まれている水分、油分及びPCBなどが同時に分解することになるため、多くの副生成物が生じ、後処理が困難になるという問題がある。
【0010】
疎水性有機汚染物質によって汚染された土壌等の浄化方法は、一般に、(1)加熱処理法(揮発・脱離、熱分解法、溶融固化)、(2)化学分解法、(3)洗浄法、(4)吸着法、(5)バイオレメディエーション、(6)ファイトレメディエーションなどに大別される。
【0011】
(1)の加熱法には、土壌や底質を加熱し、有機汚染物質を脱離・揮発させるか、もしくは分解させる方法と、土壌や底質を溶融して固める方法などがある。加熱により土壌から揮発させた有機汚染物質は、そのまま大気に放出できず、最終的にはトラップして分解し、無害化する必要がある。また、直接熱分解させる方法や溶融固化する方法も併せて、加熱法は、処理コストが高いこと、装置が大掛かりになること、土壌性状が加熱により大幅に変化すること、などの理由からあまり採用されていない。
【0012】
(2)の過酸化水素や過マンガン酸カリウムなどの薬剤を用いる有機汚染物質の分解法は、残留薬品による2次汚染の可能性があるし、過剰の薬品添加量を必要とするなどの問題があり、広く採用されているわけではない。
【0013】
(3)の洗浄法には水溶液を中心に行う場合と有機溶媒で洗浄する場合がある。水溶液で洗浄する場合は、洗浄効果を高めるため、錯形成剤や界面活性剤などの助剤を併用することが多い。水溶液による洗浄法は、土壌や底質中の重金属を溶解させて浄化する方法として広く用いられている方法である。
しかし、ナフタレン、フェナントレン、ピレンなどの多環芳香属化合物(PAHs)、ダイオキシン類、PCB(ポリ塩化ビフェニル)、DDTといった通称POPs(ポップス)と呼ばれる残留性有機汚染物質などのような疎水性の有機汚染物質の浄化には有効な方法とは言えない。
このため、疎水性の有機汚染物質の移動性を高め、洗浄効率を高めるための薬剤(ここでは疎水性有機汚染物質移動促進剤という)が提案されている。例えば、特許文献1には、該促進剤としてシクロデキストリンを含んだ水溶液を用いた洗浄方法が、特許文献2には、疎水性有機汚染物質移動促進剤として界面活性剤とシクロデキストリンを含んだ水溶液を用いた洗浄方法、特許文献3にはシクロデキストリンや界面活性剤の代わりにDNAを利用する方法が開示されている(特許文献1〜3)。
【0014】
(4)の吸着法は、土壌等から遊離した汚染物質を、活性炭を始めとする吸着剤に吸着させて除去する方法であり、必ず(1)の加熱処理や(3)の洗浄など汚染物質を遊離させる前処理を必要とする。
【0015】
(5)のバイオレメディエーションは、微生物の働きで有機汚染物質を分解する方法で、汚染物質を分解する微生物を直接土壌に添加する方法と、微生物を直接加えるのではなく栄養塩や酸素を添加して土着微生物の活性を高めて浄化する方法がある。このほか、土壌や底質を洗浄した水を微生物により浄化する方法がある。バイオレメディエーションは、二次汚染の可能性が小さいこと、省エネルギーであること、低コストであること、広範囲の土壌に適用でき土壌そのものの性質を変えないなどの利点があることから、欧米を中心に一般的となってきている。
【0016】
しかし、バイオレメディエーションには、土壌浄化に要する期間が長いという欠点もある。その理由の一つとして、特定の汚染物質に対して分解能力を有している微生物の育成が進んでおらず、その濃度が極めて低いことがあげられる。また、微生物の濃度ばかりでなく、これらの微生物が十分に機能を発揮できる環境条件が整っていなければならない。バイオレメディエーションでは、多環芳香属化合物はベンゼンなどの単環芳香族化合物と比較すると、分解率が一般的に低い。これは、微生物の分解性だけでなく、多環芳香属化合物の土壌や底質への吸着性がベンゼンなどより強いため、微生物との接触が制限されることによる。すなわち、疎水性の汚染物質は、土壌に強く吸着しているため、微生物に取り込まれ難く、生物的分解が進みにくいことが原因として挙げられる。
そこで、前記した界面活性剤やシクロデキストリンを含んだ水溶液を散布して、疎水性有機汚染物質の移動性を向上させ、それによって生物分解性を高める特許が公開されている(特許文献4)。また、シクロデキストリンおよび/または界面活性剤の水溶液を添加した洗浄水で洗浄したあと、洗浄水を微生物で処理する方法が公開されている(特許文献2)。
【0017】
(6)のファイトレメディエーションとは植物を植栽すること(以下、植栽ともいう)による浄化で、バイオレメディエーションと同様に、省エネルギーで低コストであり、広範囲の土壌に適用できること、などの利点がある。ファイトレメディエーションもバイオレメディエーション同様、日本国内ではまだ研究段階で本格的に実施された例はないが、欧米では一般的な技術になってきている。
【0018】
植栽による浄化は、1)根からの吸収による植物体内への蓄積、2)根から吸収し葉から蒸散、3)根からの吸収による植物体内での分解・取り込み、4)根圏での微生物分解、などによって起こる。
この植栽による浄化は、重金属を特異的に吸収する植物(ハイパーアキュミュレター)が得られ、重金属汚染土壌の浄化に有効なことが示されている。また、トリクロロエチレンやパークロロエチレン等の有機塩素化合物を根から吸収し、葉から蒸散させて浄化する方法も示されている。油汚染土壌に対しても植物による浄化の有効性が示されている。この場合は、根圏での微生物による分解で浄化される。油汚染土壌を植物で浄化した際、葉中にPAHsが検出された。疎水性のPAHsが根から吸収されるとは考えづらく、これまでは根から吸収されたのではなく葉が大気中のPAHsを吸収したものと考えられてきた。しかし、最近ズッキーニの一部にPAHs等の疎水性有機汚染物質を吸収する植物があることが報告されている(非特許文献1)。
【0019】
バイオレメディエーションやファイトレメディエーションは、いずれも省エネルギーで低コストであり、広範囲の土壌に適用できるなどの利点がある。油汚染土壌の浄化法としてはバイオレメディエーションの方が一般的であるが、微生物だけで浄化するバイオレメディエーションに対し、微生物と植物の両方の働きが期待できるファイトレメディエーションの方が、浄化効果は大きいと推測される。事実、油汚染土壌の浄化において、植物の栽培区と非栽培区で比較すると、油分濃度は栽培区で大きく減少することが示された。さらにこれに対応し微生物活性と油資化細菌の数も栽培区の方が非栽培区にくらべ増加することが示されている(非特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】特開平07−946号公報
【特許文献2】特開2003−126838号公報
【特許文献3】特開2008−731号公報
【特許文献4】特開2005−262107号公報
【非特許文献】
【0021】
【非特許文献1】Zakia D. Parrish et.al. “Accumulation of weathered polycyclic aromatic hydrocarbons (PAHs) by plant and earthworm species”, Chemosphere, 64(4), 609-618(2006)
【非特許文献2】海見悦子 他、“油汚染土壌に対するファイトレメディエーションの試験施行”、第14回地下水・土壌汚染とその防止対策に関する研究集会、講演集、79−83(2008)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
上記したように、疎水性有機汚染物質は、水に溶け難く、しかも土壌に強く吸着しているため、根圏への移動が起こり難く、効率的な植物による浄化や根圏微生物による浄化が望めない。しかし、疎水性有機汚染物質の水への移動性を高めることができれば、これらによる浄化の効率を向上させることが可能になる。このような疎水性の有機汚染物質の移動性を高める物質として界面活性剤やシクロデキストリンが知られている。
【0023】
しかし、土壌や底質中の有機汚染物質の洗浄に、界面活性剤を含む水溶液を用いた場合、界面活性剤は微生物の阻害剤となる場合がある。このため、微生物分解性の良好な界面活性剤の利用に限定される。また、添加した界面活性剤が微生物や汚染物を吸着した土壌粒子の表面を覆うため、微生物と汚染物との接触を妨げるといった事態が発生し、結果として微生物分解性を低下させることもある。
【0024】
一方、シクロデキストリンは、D−グルコースが結合した環状構造をとり、種々の有機汚染物質と包接化合物を作ることができるが、シクロデキストリンの種類により包接できる汚染物質が限定されるなどの欠点がある。
【0025】
本発明は、たとえば、ナフタレン、フェナントレン、ピレンなどの多環芳香属化合物(PAHs)や、ダイオキシン類、PCB(ポリ塩化ビフェニル)、DDTといった残留性有機汚染物質(POPs)など、種々の疎水性有機汚染物質で汚染された汚染土壌の植栽による浄化法において、該疎水性有機汚染物質の水への移動性を高めるために有効に用いることができる、新規な疎水性有機汚染物質移動促進剤を提供するとともに、該促進剤を用いた植物による土壌の浄化方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0026】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、種々の疎水性の有機汚染物質を含む汚染土壌等にプリン化合物またはその誘導体の水溶液を混合すると、疎水性有機汚染物質の汚染土壌等中での移動性を高めることが可能になり、これによって、植栽による汚染土壌の浄化が促進されることを知見し、本発明を完成するに至った。
【0027】
すなわち、この出願によれば、以下の発明が提供される。
〈1〉植栽による、疎水性有機汚染物質で汚染された汚染土壌の浄化法において、該疎水性有機汚染物質の水への移動性を高めるために用いられ、必須成分がプリン化合物であることを特徴とする疎水性有機汚染物質移動促進剤。
〈2〉プリン化合物がカフェインであることを特徴とする〈1〉に記載の疎水性有機汚染物質移動促進剤。
〈3〉カフェインをその成分として含有し、水と接触することにより水中に容易にカフェインを溶出する物質を必須成分とすることを特徴とすると〈1〉または〈2〉に記載の疎水性有機汚染物質移動促進剤。
〈4〉水に容易にカフェインを溶出する物質が、お茶、コーヒー、ココア、もしくはこれらからの抽出物であることを特徴とする〈3〉に記載の疎水性有機汚染物質移動促進剤。
〈5〉疎水性有機汚染物質が多環芳香族化合物(PAHs)であることを特徴とする〈1〉〜〈4〉の何れかに記載の疎水性有機汚染物質移動促進剤。
〈6〉疎水性有機汚染物質が残留性有機汚染物質(POPs)であることを特徴とする〈1〉〜〈4〉の何れかに記載の疎水性有機汚染物質移動促進剤。
〈7〉疎水性有機汚染物質で汚染された汚染土壌に、〈1〉〜〈4〉の何れかに記載の疎水性有機汚染物質移動促進剤を存在させることを特徴とする、疎水性有機汚染物質で汚染された汚染土壌を、植栽により浄化する方法。
〈8〉疎水性有機汚染物質移動促進剤を含有する水を汚染土壌に散布することを特徴とする〈7〉に記載の植栽による汚染土壌の浄化方法。
〈9〉疎水性有機汚染物質で汚染された汚染土壌を、〈1〉〜〈4〉の何れかに記載の疎水性有機汚染物質移動促進剤の存在下で、微生物を用いて浄化することを特徴とする汚染土壌の浄化方法。
〈10〉植物の根圏に存在することを特徴とする〈9〉に記載の汚染土壌の浄化方法。
【発明の効果】
【0028】
ナフタレン、フェナントレン、ピレンなどの多環芳香属化合物(PAHs)や、ダイオキシン類、PCB(ポリ塩化ビフェニル)、DDTといった残留性有機汚染物質(POPs)などの有機汚染物質は、疎水性のため土壌等に強く吸着している。このため、植栽法によりこれらの汚染物質を土壌等から離脱・移動させることが困難とされていたが、本発明では、これらの疎水性有機汚染物質の土壌中での離脱、および水への移動性を高めることができる。
【0029】
すなわち、本発明で用いるプリン化合物の水溶液は、汚染土壌中のナフタレン、フェナントレン、ピレンなどの多環芳香属化合物(PAHs)や、ダイオキシン類、PCB(ポリ塩化ビフェニル)、DDTといった残留性有機汚染物質(POPs)などの疎水性有機汚染物質が、汚染土壌に植栽された植物の根圏に移動するのを助ける。植物が根から水を吸収するときに疎水性有機汚染物質も一緒に吸収するため、ファイトレメディエーションの促進が図れる。
【0030】
また、本発明の浄化法では、疎水性有機汚染物質で汚染された汚染土壌を、微生物を用いて浄化する際、疎水性有機汚染物質を移動させることができるので、微生物との接触確立が高まり分解性を向上させることができる。同様にして植物の根に共生する根圏微生物による分解も促進される。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明に係る、疎水性有機汚染物質で汚染された汚染土壌の植栽による浄化法で、該疎水性有機汚染物質の水への移動性を高めるために用いられる疎水性有機汚染物質移動促進剤は、必須成分がプリン化合物であることを特徴としている。
【0032】
本発明でいう汚染土壌とは、つぎに述べる疎水性有機汚染物質で汚染された土壌を意味し、疎水性有機汚染物質が単独で存在するものであっても良いし、複数の疎水性有機汚染物質で汚染されているものであっても良い。さらに、重金属などの他の汚染物質でも汚染されている、複合汚染された土壌も含まれる。
【0033】
疎水性有機汚染物質とは、ナフタレン、フェナントレン、ピレンなどの多環芳香属化合物(PAHs)や、ダイオキシン類、PCB(ポリ塩化ビフェニル)、DDTといった残留性有機汚染物質(POPs)などの他、これらに属さない農薬等の疎水性有機汚染物質も含み、疎水性の有機汚染物質全般を意味する。
【0034】
したがって、本発明で対象となる疎水性有機汚染物質には、残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約(POPs条約)で対象とされる12物質の他に多環芳香属化合物(PAHs)も含まれる他、プリン化合物によって水への溶解性が高められるものは、特に制限されることなく、どのような疎水性有機汚染物質でも対象になる。
【0035】
また、本発明の疎水性有機汚染物質移動促進剤とは、疎水性有機汚染物質で汚染された汚染土壌の植栽による浄化法で、該疎水性有機汚染物質の水への移動性を高めるために用いられるものであり、汚染土壌に強く吸着し、水層に移動し難い疎水性有機汚染物質の溶解性を高め、移動しやすくする薬剤のことをいう。
【0036】
本発明の疎水性有機汚染物質移動促進剤の必須成分である、プリン化合物とは、プリン環を骨格に持つ縮合複素環化合物のことをいう。プリンそのものは天然に存在しないが、各種の誘導体として、コーヒー豆、カカオ豆、茶葉などに含有される他、動物体にも尿酸、核酸を構成する塩基のアデニンやグアニンの形で存在する。特に生体物質の核酸やアルカロイドの塩基性物質はプリン塩基と呼ばれる。
【0037】
このようなプリン化合物としては、各種のプリン塩基、例えば、尿酸、アデニン、グアニン、イソグアニン、カフェイン、キサンチン、テオフィリン、テオブロミン、パラキサンチン、キサンチン、ヒポキサンチン、及びこれらの誘導体からなるもののいずれでもかまわないが、その中でもコーヒー豆、カカオ豆、茶葉等に大量に含まれ容易に抽出される成分が、好ましく用いられる。
【0038】
上記誘導体としては以下のような化合物が挙げられる。2-Methylhypoxanthine、2-Methyladenine、2,9-Dimethyladenine、2-Methylthioadenine、2-Methylthio-9-methyladenine、Adenosine、Yeast adenylic acid、Guanine sulphate、Guanosine、Yeast guanylic acid、3-Methylxanthine、7-Methylxanthine、9-Methylxanthine、1,3-dimethylxanthine、1,7-dimethylxanthine、3,7-dimethylxanthine、8-Chlorotheobromine、1,3,7-trimethylxanthine、8-Methoxycaffeine、8-Ethoxycaffeine、8-Chlorocaffeine、1,3-Dimethyluric acid、3,7-Dimethyluric acid、3,9-Dimethyluric acid、7,9-Dimethyluric acid、1,3,7-Trimethyluric acid、1,3,9-Trimethyluric acid、3,7,9-Trimethyluric acid、1,7,9-Trimethyl-8-thiouric acid、1,3,7,9-Tetramethyluric acid、1,3,7,9-Tetramethyl-8-thiouric acid、Caffeine methiodide、Caffeine methochloride
【0039】
上記プリン化合物のうち、特にカフェイン、1,3-dimethylxanthine、1,7-dimethylxanthine、3,7-Dimethyluric acid、1,3,7-Trimethyluric acid、1,3,7,9-Tetramethyluric acidは、それら自身の溶解度が高く、しかもPAHsの溶解性も高いので、優れた疎水性有機汚染物質移動促進剤の主要成分となりうる。
【0040】
前記したように、本発明で用いられるプリン化合物は、コーヒー豆、カカオ豆、茶葉などに大量に含まれ容易に抽出される成分の内、カフェインが好ましく用いられるが、カフェインは、コーヒー豆、カカオ豆、茶葉等から抽出されたものであっても良いし、化学的に合成されたものであっても良い。また、コーヒー豆、カカオ豆、茶葉等の抽出液を精製せず、そのまま用いても良い。さらに、プリン化合物が水で容易に抽出されるコーヒー豆、カカオ豆、茶葉等を土壌に散布するなどしてそのまま用い、雨水や散布した水に抽出されたカフェインを利用することもできる。この場合、プリン化合物が抽出されやすいようにコーヒー豆、カカオ豆、茶葉等を粉末にして用いるのがより良い。
【0041】
プリン化合物が水で容易に抽出される物質としては、コーヒー豆、カカオ豆、茶葉等が一般に挙げられるが、これらに限定されるものではなく、水で容易に抽出されるものであればいかなるものも利用することができる。また、プリン化合物が水で容易に抽出される物質の状態は特に限定されるものではなく、抽出が可能であればいかなる状態であっても良い。すなわち、コーヒー豆、カカオ豆、茶葉等として加工されたものであっても良いし、加工前のものであっても良い、さらにはすでに利用されたこれらの廃棄物であっても良い。また、コーヒー豆、カカオ豆、茶葉等は単独で用いられても良いし、適宜混合して用いることもできる。
【0042】
上記において、プリン化合物として挙げられるカフェイン、1,3-dimethylxanthine、1,7-dimethylxanthine、3,7-Dimethyluric acid、1,3,7-Trimethyluric acid、1,3,7,9-Tetramethyluric acidのうち、カフェインはコーヒー豆、カカオ豆、茶葉に大量に含まれていることは周知の事実であるが、最近1,3,7,9-Tetramethyluric acidが中国茶に含まれていることが報告されており、中国茶も本発明では好ましく用いることができる。
【0043】
本発明で用いられるプリン化合物を含有する疎水性有機汚染物質移動促進剤は、プリン化合物そのものからなるものでもよいし、プリン化合物の他にこれまでに移動促進効果が認められているシクロデキストリンや界面活性剤、DNA、さらには微生物や植物の栄養素になる物質や、重金属など他の汚染物質の移動を促進する物質などのほか、環境汚染を引き起こすものでなければいかなるものを含むものであってもよく、プリン化合物以外の疎水性有機汚染物質移動促進剤に含まれる物質については特に制限されるものではない。
【0044】
植物の栄養素になる物質としては、植物の栄養素として窒素、リン、カリがあり、これらを含む各種の無機肥料や、油かす、魚粉、骨粉、家畜糞、腐葉土等の有機肥料があげられる。
【0045】
微生物の栄養素としては、バイオレメディエーションの際、微生物の活性化を促進させるために添加される窒素やリン等の栄養塩があげられる。
【0046】
また、疎水性有機汚染物質移動促進剤中に含まれるシクロデキストリンや界面活性剤、DNA、微生物の栄養素になる物質は、単独で含まれていてもよいし、複数で含まれていてもよく、特に制限されない。
【0047】
つぎに、本発明の植栽による土壌浄化について説明する。
【0048】
本発明の植栽による浄化法は、プリン化合物を含有する疎水性有機汚染物質移動促進剤を汚染土壌に存在させ、疎水性有機汚染物質移動促進剤中に存在するプリン化合物によって土壌から水中に移動した疎水性有機汚染物質を根から吸収することによって行われる。
この場合、あらかじめ水にプリン化合物を含有する疎水性有機汚染物質移動促進剤を溶解させた水溶液を用いても良いし、始めにプリン化合物を含む疎水性有機汚染物質移動促進剤を汚染土壌に散布し、その後で水を散布してもよい。さらには、プリン化合物を含有する、コーヒー、茶葉、ココア等及び/またはこれらの廃棄物を散布して、雨水や散布する水で抽出させるなど、いかなる方法で土壌に導入してもよい。
【0049】
また、植栽に用いる植物としては、プリン化合物と相互作用した疎水性有機汚染物質を根から吸収できる植物であればいかなる植物であってもよく、特に限定されない。特に、遺伝子操作や育種等により選定されたカフェインや疎水性有機汚染物質の代謝能力が高められた植物で、かつ環境に悪影響を及ぼさない植物であると、さらに好ましい。
【0050】
ウリ科植物には疎水性有機汚染物質移動促進剤を添加しなくても土壌中の疎水性有機汚染物質を吸収する能力があることが最近報告されている(Z.D. Parrish et.al. Chemosphere, 64(4), 609-618,2006)。このようなウリ科植物には、キュウリ、メロン、ヘチマ、スイカ、トウガン、ユウガオ、ニガウリ、ニホンカボチャ、セイヨウカボチャ、フィシフォリア、ズッキーニなどがあり、これらの植物栽培時に疎水性有機汚染物質移動促進剤であるプリン化合物の添加を併用することによって、疎水性有機汚染物質のさらなる吸収の促進が期待される。
【0051】
また、本発明の植栽による汚染土壌の浄化方法において、プリン化合物を含有する疎水性有機汚染物質移動促進剤を含む水溶液を散布する場合、プリン化合物の濃度は特に限定されない。プリン化合物の種類、土壌の種類、汚染物の種類及びレベル等に応じて適宜決められればよいが、例えば溶解度22mg・mL-1 (25℃)のカフェインの場合は、10〜22000mg/L、好ましくは50〜15000mg/L、より好ましくは100〜10000mg/Lの範囲内である。プリン化合物の濃度が低すぎれば、疎水性有機汚染物質の移動効果はあまり期待できないし、濃すぎると、植物の生育に障害を来たすことがある。なお、生育阻害は、植物の種類や成長の度合いによって異なるので、プリン化合物の濃度を決める際には、あらかじめその影響を確認しておくことが望ましい。
【0052】
本発明の植栽による浄化方法のもう一つの形態は、疎水性有機汚染物質移動促進剤であるプリン化合物により土壌から水中に移動した疎水性有機汚染物質を根と共生する微生物で分解するものである。ここで用いられる植物は前記と同様に、プリン化合物と相互作用した疎水性有機汚染物質を根圏で分解できる微生物と共生できる植物であればいかなる植物であってもよく、特に限定されない。
【0053】
本発明の浄化方法で吸収分解の対象となる有機汚染物質は、前記したように、ナフタレン、フェナントレン、ピレンなどの多環芳香属化合物(PAHs)や、ダイオキシン類、PCB(ポリ塩化ビフェニル)、DDTといった残留性有機汚染物質(POPs)などの他、これらに属さない農薬等の疎水性有機汚染物質も含み、疎水性の有機汚染物質全般を意味するが、これらの疎水性有機汚染物質は単独で土壌又は水に含まれている必要はなく、二種以上の疎水性有機汚染物質が土壌に含まれていてもよい。疎水性有機汚染物質で汚染された土壌としては、例えば農薬として散布された農地、ごみ焼却場周辺の土壌、あるいはこれらの疎水性有機汚染物質が原材料等として用いられている工場等からの廃棄物の処分場周辺の土壌が想定される。
【0054】
本発明の植物による浄化方法は、前記土壌の上に植物を植栽して栽培することによって実施することができる。土壌への植栽は、その種子を播くことによって行えばよいし、浄化効果を早急に得たい場合は別の土壌である程度生長させた苗を浄化対象の土壌に移植すればよい。いずれの方法においても、植物の土壌への植栽前に土壌の耕起や肥料の施肥を必要により適宜行うことが望ましい。
【0055】
本発明の植栽による浄化方法は、浄化対象が疎水性有機汚染物質で汚染された工場排水などの水である場合に適用でき、この場合には、前記水を培地として用いて植物を水耕栽培することによって実施することができる。具体的には、容器に疎水性有機汚染物質で汚染された水を入れ、その水に適当な大きさまで生長させた植物の根の部分を浸漬させ、疎水性有機汚染物質で汚染された水を培地として植物を育てればよい。
【実施例】
【0056】
次に本発明の実施例に基づきさらに詳細に説明する。なお、以下の例においては、%は重量%を意味する。
【0057】
(実施例1)
カフェインがPAHsの水溶解性に与える効果を明らかにするため、カフェイン溶液に対するベンゾピレン、ベンゾペリレン、ピレン、アントラセン、およびフェナントレンの溶解度を測定した。すなわち1%カフェイン溶液に、各PAHの粉末を加え、1日間振とうし、平衡に達したあと、溶解せずに残ったPAHを遠心分離し除去した。得られた上澄み5mlを同体積のヘキサンで抽出し、このヘキサン層をGCMSで分析し、各PAHの濃度を求めた。その結果、ベンゾピレン、ベンゾペリレン、ピレン、アントラセン、およびフェナントレンの溶解度は、カフェインを含まない水に比べ、それぞれ7025倍、5800倍、468倍、176倍、および48倍に増加した。汚染土壌中に存在するPAHs等の疎水性有機汚染物質は、通常腐植物質等の土壌有機物に吸着し、水には溶出してこないが、カフェイン溶液における溶解度の増加は、PAHsが水に容易に移動することを示すものである。
【0058】
(実施例2)
根からの吸収を利用したPAHs汚染土壌の浄化について、ズッキーニを用いて検討した。発芽後14日間生育させた苗を、300gのフェナントレンとピレンで汚染された土壌を入れたポットに移し替えた。ズッキーニの生育は、10000ルックス以上の照度で16時間光をあて、8時間は暗所とするシークエンスで行った。汚染土壌に植え替え後、最初の一週間は毎日、水道水に溶かした液体肥料40mLを散布した。2週間後からは、水道水に溶かした液体肥料40mLに500mg/Lのカフェインを溶かしたものを4週間毎日散布して、ズッキーニを栽培した。栽培後、根と、葉および茎にわけ採取し、水で洗浄した後乾燥した。比較のためカフェインを加えない系についても同様の実験を行った。
乾燥した根と、葉および茎からアセトンでPAHsを抽出した後、ヘキサンに溶媒交換し、GC/MSで分析した。なお、葉および茎についてはカロテン様物質を除くためカラムで精製した後、分析に供した。
根部へのフェナントレンの取り込みは、カフェインがない場合は、0.1μg/gであったが、カフェインが存在すると7μg/gに増加した。ピレンの根部への吸収はカフェインがないと2μg/gであったが、カフェイン存在下では12μ/gに増加した。一方、葉および茎への吸収は、フェナントレンでカフェインがないと0.1μg/gであったが、カフェインが存在下では0.2μg/gに増加した。ピレンの葉および茎への吸収は、カフェインがないと0.15μg/gであったが、カフェインが存在下では0.5μg/gに増加した。
以上から、カフェインが存在することにより、4週間程度の栽培でも、根と、茎および葉へのPAHsの取り込み量が顕著に増加することが分かる。
【0059】
(実施例3)
カフェインがPCBの水溶解性に与える効果を明らかにするため、カフェイン溶液に対する4−クロロビフェニルの溶解度を測定した。すなわち0、1000ppm、5000ppm、10000ppmのカフェイン溶液に、4−クロロビフェニルの粉末を加え、1日間振とうし、平衡に達したあと、溶解せずに残った4−クロロビフェニルを遠心分離し除去した。得られた上澄み5mlを同体積のヘキサンで抽出し、このヘキサン層をGCMSで分析し、各PAHの濃度を求めた。その結果、0、1000ppm、5000ppm、10000ppmのカフェイン溶液に対する4−クロロビフェニルの溶解度は、それぞれ0.17ppm、0.39ppm、1.14ppm、2.94ppmであり、カフェインの存在によってPCBの溶解度がPAHsと同様に増加することが分かった。このことから、植物の根からの吸収もカフェインが存在することにより、増加することは容易に推測される。
【0060】
(実施例4)
カフェイン1375ppm含む培養液2.5mLに、フェナントレンを10.2mg/Lになるよう溶解し、反応液を調整した。この反応液にPAHs分解菌Sphingomonas sp.を接種し、25℃で培養した。比較としてカフェインを含まない培養液にも同様に菌を接種した。培養時間15分で、カフェインを含まない系ではフェナントレンの分解率は約30%であったが、カフェインが存在すると分解率は約70%に増加した。このことから根に共生する根圏微生物による分解も促進されることが容易に推測される。
【0061】
(実施例5)
カフェイン1375ppm含む培養液2.5mLに、ピレンを10.44mg/Lになるよう溶解し、反応液を調整した。この反応液にPAHs分解菌Sphingomonas sp.を接種し、25℃で培養した。比較としてカフェインを含まない培養液にも同様に菌を接種した。培養時間6時間で、カフェインを含まない系ではピレンの分解率は約40%であったが、カフェインが存在すると分解率は約70%に増加した。このことから根に共生する根圏微生物による分解も促進されることが容易に推測される。
【0062】
(実施例6)
微量のダイオキシンで汚染された農地土壌から、植物へのダイオキシン取り込みについてズッキーニで検討した。すなわち発芽後14日間生育させた苗を、300gの汚染土壌を入れたポットに移し替えた。ズッキーニの生育は、10000ルックス以上の照度で16時間光をあて、8時間は暗所とするシークエンスで行った。汚染土壌に植え替え後、最初の一週間は毎日、水道水に溶かした液体肥料40mLを散布した。2週間後からは、水道水に溶かした液体肥料40mLに500mg/Lのカフェインを溶かしたものを4週間毎日散布して、ズッキーニを栽培した。栽培後、根と、葉および茎にわけ採取し、水で洗浄した後乾燥した。比較のためカフェインを加えない系についても同様の実験を行ったが、カフェインを加えた方が、根、葉および茎のいずれも吸収量が多かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
疎水性有機汚染物質で汚染された汚染土壌の植栽による浄化法において、該疎水性有機汚染物質の水への移動性を高めるために用いられ、必須成分がプリン化合物であることを特徴とする疎水性有機汚染物質移動促進剤。
【請求項2】
プリン化合物がカフェインであることを特徴とする請求項1に記載の疎水性有機汚染物質移動促進剤。
【請求項3】
カフェインをその成分として含有し、水と接触することにより水中に容易にカフェインを溶出する物質を必須成分とすることを特徴とする請求項1または2に記載の疎水性有機汚染物質移動促進剤。
【請求項4】
水に容易にカフェインを溶出する物質が、お茶、コーヒー、ココア、もしくはこれらからの抽出物であることを特徴とする請求項3に記載の疎水性有機汚染物質移動促進剤。
【請求項5】
疎水性有機汚染物質が多環芳香族化合物(PAHs)であることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の疎水性有機汚染物質移動促進剤。
【請求項6】
疎水性有機汚染物質が残留性有機汚染物質(POPs)であることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の疎水性有機汚染物質移動促進剤。
【請求項7】
疎水性有機汚染物質で汚染された汚染土壌に、請求項1〜4の何れかに記載の疎水性有機汚染物質移動促進剤を存在させることを特徴とする、疎水性有機汚染物質で汚染された汚染土壌を、植栽により浄化する方法。
【請求項8】
疎水性有機汚染物質移動促進剤を含有する水を汚染土壌に散布することを特徴とする請求項7に記載の植栽による汚染土壌の浄化方法。
【請求項9】
疎水性有機汚染物質で汚染された汚染土壌を、請求項1〜4の何れかに記載の疎水性有機汚染物質移動促進剤の存在下で、微生物を用いて浄化することを特徴とする汚染土壌の浄化方法。
【請求項10】
植物の根圏に存在することを特徴とする請求項9に記載の汚染土壌の浄化方法。

【公開番号】特開2010−213646(P2010−213646A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−65877(P2009−65877)
【出願日】平成21年3月18日(2009.3.18)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】