説明

植物材料の質を決定するための光合成系の量子効率のイメージ作製方法及び装置並びに植物材料を計測、分類、及びソートするための方法及び装置

本発明は、存在するクロロフィルが励起されるように電磁気照射ビームにより植物材料をスキャンすることにより、植物材料のクロロフィル光合成イメージを作製し、そしてイメージング検出器を用いてクロロフィル蛍光を計測することにより、植物材料の品質を測定する方法に関する。速いスキャンと遅いスキャンを用いて得られた蛍光イメージから、当該植物材料の光合成系の量子効率のイメージが計算される。本発明は、さらに、クロロフィル蛍光イメージの計測用装置、並びに植物材料のソーティング及び分類のための方法及び装置にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物材料、例えば、植物全体、葉材料、果実、ベリー、花、花器官、根、種子、球根、藻類、コケ、及び植物塊茎の質を、クロロフィル蛍光イメージを作製することにより、決定する方法に、特に、特徴的なクロロフィル蛍光イメージが計測されたクロロフィル蛍光イメージから計算される方法に、そしてさらに特に、前記特徴的蛍光イメージが前記植物材料の光合成系の光合成活動の量子効率に関する情報を含む方法に、関する。本発明は、前記クロロフィル蛍光イメージを計測し、かつ、当該クロロフィル蛍光イメージから当該植物材料の光合成系の光合成活性の量子効率のイメージを計算する装置にも関する。本発明は、前記クロロフィル蛍光イメージ、及び当該クロロフィル蛍光イメージから計算された植物材料の光合成系の光合成活動の量子効率のイメージに基づき、植物材料をソートし、かつ、分類するための装置にも関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術
植物材料の光合成活動の量子効率を計測する一般的な方法は、“Detection of rapid induction kinetics with a new type of high frequency modulated chlorophyll fluorometer”Photosynthesis Research (1986) 9 : 261-272中に記載されたU. Schreiberのパルス増幅変調(PAM)蛍光計を用いて光合成活性を計測することである。この方法においては、光合成活動の量子効率が測定される。このためには、まず、蛍光収率(FO)が、暗所又は低い光強度の周囲光中で、計測される。次いで、最大蛍光収率(Fm)が、飽和光パルスにおいて、測定される。上記2つの計測シグナルから、Q=(Fm−FO)/Fmに従って、光合成系の効率を計算することができる。上記計測方法は、一つの葉の小さな表面の光合成系の効率、いわゆるスポット計測を測定し、そしてそれゆえ、イメージングではない。
【0003】
イメージングである知られた計測方法は、上記PAM蛍光計と同一原理に従って働く。知られた計測方法は、“Qnantitative mapping of leaf photosynthesis using chlorophyll fluorescence imaging”Australian Journal of plant physiology (1995) 22 : 277-284中に記載された、B. Genty and S. Meyerの中の1つである。この方法においては、植物材料、例えば、葉の表面は、ランプからの電磁気照射により、短いパルスで照射され、そして蛍光が、カメラ・システムを用いて上記パルスの間に計測される。この第1の計測は、暗所又は低い光強度で実施され、そしてFO計測をもたらす。その後の計測は、飽和光パルスで実施され、そしてFm計測をもたらす。これらの計測から、光合成系の効率のイメージが計算されうる。この方法の欠点は、例えば、50×50cm2の大きな表面が飽和光パルスにより照射されることができないということである。現在の光源は、このような表面を十分な光の強度で照射するためには十分に輝るくない。
【発明の開示】
【0004】
本発明の要約
本発明の1の目的は、イメージングのやり方でクロロフィル蛍光を計測する方法を提供し、そして得られたクロロフィル蛍光イメージから植物材料の光合成活動の量子効率を測定することであり、ここで、知られた計測方法の小さな計測表面の欠点が克服される。
【0005】
それゆえ、本発明は、植物材料のクロロフィル蛍光イメージを測定することにより当該植物材料の質を決定する方法であって、ここで、当該植物材料は、存在するクロロフィルの少なくとも一部がその照射の少なくとも一部により励起されるような1以上の波長を含む電磁気照射ビームを照射され、上記電磁気照射ビームは、上記植物材料の小部分のみが照射されるような形状をもち、そして、当該ビームは、上記植物材料の大部分が計測されるように当該植物材料にわたり移動され、ここで、上記クロロフィル遷移に関係する上記植物材料から生成した蛍光発光が、クロロフィル蛍光イメージを取得するためのイメージング検出器により計測される、前記方法を提供する。
【0006】
所定の順番で、
一定の時間期間にわたり、クロロフィル蛍光イメージFfastを取得するために前記電磁気ビームを用いて前記植物材料上で、数回、速いスキャンを実行し、そして
一定の時間期間にわたり、クロロフィル蛍光イメージFslowを取得するために前記電磁気ビームを用いて前記植物材料上で、遅いスキャンを実行し、そしてその後、
植物材料の光合成系の効率に関する尺度である特徴的なクロロフィル蛍光イメージを、上記クロロフィル蛍光イメージFfast及びFslowから計算する、前記方法が好ましい。
【0007】
好ましくは、前記特徴的蛍光イメージは、前記植物材料の光合成系の光合成活動の量子効率に関する情報を含み、かつ、当該イメージが、以下の式:
IQP=(Fslow−Ffast)/Fslow
により計算される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の詳細な説明
本発明は、存在するクロロフィルに高く特異的である分光スペクトル計測、及び光合成系の機能に基づく。光合成系の機能は、植物の適正な機能、及び植物の質にとって、ひじょうに重要である。光は、クロロフィル分子により捕獲される。植物が、良い質を有し、そしてストレスを受けていない場合には、クロロフィル分子の捕獲されたエネルギーは、化学エネルギーへの変換のための光合成系に、素速く受け渡される。クロロフィルは、蛍光を示す特性を有する。生合成系により十分に速く上記エネルギーが受け渡されるとき、低レベルの蛍光をもたらす。上記生合成系が十分に速く上記エネルギーを処理しきれないとき、蛍光は強度が高くなるであろう。クロロフィルにより吸収される電磁気照射をもつ飽和光源をスイッチ・オンする間、上記光合成系が上記エネルギーを速く処理することができるとき、最大レベルの照射蛍光までの上記光源のスイッチ・オンからの経過時間は、上記光合成系が上記エネルギーを速く処理することができない場合よりも、より長くなる。この特性を、今般、光合成活性の量子効率を測定するために使用する。本発明に係る方法は、イメージングのやり方で、植物全体の光合成の量子効率を計測することを可能ならしめる。
【0009】
本発明に係る方法においては、植物材料は、存在するクロロフィルの少なくとも一部が、例えば、200〜750nmの波長をもつ電磁気照射、例えば、約670nmの波長をもつレーザー光で励起されるような波長を有する電磁気照射により照射される。蛍光は、600〜800nmの、例えば、約730nmのカメラを用いて、イメージング検出器を用いて計測される。電磁気照射のビームは、可動ミラー、例えば、検流計上に載せられ、かつ、コンピュータにより制御される回転ミラーにより、植物材料上でスキャンされる発散レーザー・ビームを生成するレーザーを用いて得られる。植物材料は、今般、約10秒間、約1Hz〜約10kHzの、例えば、50Hzの周波数をもつレーザー線で、まず、スキャンされることができる。この10秒間の間に、イメージング検出器を用いて、蛍光が計測される。このイメージは、Ffast計測と呼ばれ、これはコンピュータに伝達される。その後、同じ10秒の経過時間の間、約0.01〜約1Hzの、例えば、0.1Hzの周波数を用いて、遅いスキャンを行うことができる。この10秒の間、蛍光は、再び、イメージング検出器を用いて計測される。このイメージは、Fslow計測と呼ばれ、そしてそれは、同じく、コンピュータに伝達される。これら2つのイメージから、光合成活性の量子効率(光合成のイメージング量子効率(Imaging Quantum efficiency of Photosynthesis : IQP))を、以下のように計算することができる:
IQP=(Fslow−Ffast)/Fslow (1)
【0010】
コンピュータは、植物材料の各画像素子(image pixel)について、式(1)に従って計算を実行する。これは、植物材料の光合成系の量子効率の強度分布として、特徴的なクロロフィル蛍光イメージをもたらす。上記計測の間に、上記速いスキャンの経過時間が上記遅いスキャンの経過時間と同一でない場合、上記計算は、それゆえ、校正されなければならない。
【0011】
植物材料を照射するためには、植物材料の全体にわたり電磁気照射によりスキャンする間に、当該植物材料の小部分が照射され、そして上記ミラーを動かすことによるスキャンにおいて、植物材料の大部分又は植物材料全体が一定継続時間の間に照射されるような、細い線の形状又は他の形状にある電磁気照射で当該植物材料を照射するレーザー、ランプ又はLEDランプを使用することができる。上記電磁気照射がミラーにより反射され、そして植物材料上にスキャンされるようなミラーとして、可動又は回転ミラーを使用することができる。電気的に制御される検流計、スプリング・スチール上の可動ミラー、多角形ミラー又は他の知られた構造を、当該ミラーを動かすために使用することができる。植物材料から発生する蛍光は、いずれかの好適なイメージング検出器、例えば、ビデオ・カメラ、CCD−カメラ、ライン・スキャン・カメラ又は多数の光ダイオード又は光電子増培管を用いて、計測されうる。
【0012】
植物材料上でスキャンされる、電磁気照射の強度及び振幅及び波長、又は表面単位当りの電磁気照射力は、好ましくは、遅いスキャンの間に光合成系が飽和されるように、選択される。遅いスキャンと速いスキャンに関係する周波数は、式(1)に従う光合成活性の量子効率について計算される値が、シュライバー(Schreiber's)のPAM−蛍光計の計測と、一定の限界内で、一致するように、選択される。遅いスキャンを行うために要する時間は、速い及び遅いスキャンを計測するための経過時間として、取得されうる。
【0013】
本発明は、高感度、完全に非破壊的、かつ、イメージングである。これらは、それを用いて、IQP計測に基づき植物材料が選択され又は分類されうるところのソーティング装置又は分類装置を当業者が製造しうるような本発明の特徴である。IQP計測は、植物材料の質に対して直接的な関係を有するので、質のソーティング又は分類が、可能となる。
【0014】
それゆえ、本発明は、個々の成分から成る植物材料を、各々が異なる質をもつ数個のフラクションに分離又は分類するための方法であって、特徴的なイメージ・パラメーターが、本発明に従って植物材料の質を測定するための方法又は装置を用いて各成分について測定され、そして同一の所定レンジ内に特徴的なイメージ・パラメーターをもつ成分の複数のフラクションが収集される、前記方法にも関する。
【0015】
本発明は、上記方法を用いる植物材料の分離用装置であって、当該植物材料の提供部分、照射部分、光合成活性の量子効率のイメージ蛍光を取得するため当該植物材料から発生する蛍光を計測するための部分、並びに計測されたイメージに基づき作動する分離部分を含む前記装置にも関する。
【0016】
本発明は、上記方法を用いる植物材料の分類用装置であって、当該植物材料を局在化するための可動構造、例えば、可動台部又はロボット・アーム、照射部分、光合成活性の量子効率の蛍光イメージを取得するため当該植物材料から発生する蛍光を計測するための部分、並びに計測されたイメージに基づき作動する分類部分を含む前記装置にも関する。
【0017】
ソート又は分類される材料は、植物全体、切花、葉材料、果実、ベリー、野菜、花、花器官、根、組織培養物、種子、球根、藻類、コケ、及び植物塊茎、等から成りうる。上記植物材料が分離又は分類されるところのフラクションは、各々、個々の植物全体、切花、葉材料、果実、ベリー、野菜、花、花器官、根、組織培養物、種子、球根、藻類、コケ、及び植物塊茎等から成りうる。
【0018】
本発明は、細かな区別をする目的のために、例えば、ストレス耐性について苗木(Seedling)を初期選択する、除草剤の計画的投与、及び温室栽培における品質管理のために使用しうる。本発明に係る方法は、栽培者における苗木における植物の質のスクリーニングにおいて使用しうる。苗木のトレーをテストしうる。低品質の苗木を除外し、そして良い苗木と交換しうる。本発明に係る方法は、当該トレーを、感染圧又は抗生ストレス因子に供し、そしてシグナル増強オンラインに登録することにより、ストレス感受性について苗木を選択するためにも使用しうる。この点で、生物学的農業による苗木の質について行われる特定の要求は興味をそそる。病気に因る植物材料の損傷は、蛍光の局所的増加としてクロロフィル蛍光イメージにおける極めて初期の段階において検出されうる。これは、光合成活性の量子効率の局所的低下としてIQPイメージ中に検出される。オークションにおいて、植物は品質について検査される。オークションにおいて又は栽培の間でさえ供給される鉢植植物の品質及び花の花生品質を測定するための、迅速、非破壊的及び客観的な方法は、経済学的にかなり重要である。花の品質は、齢、栽培及び行われるかもしれない収獲後処理に依存し、これはIQPイメージに影響を及ぼす。本発明に係る方法は、機能分析及び形質同定のための機能ゲノミックス研究のためのモデル作物(Arabidopsis及びイネ)のハイ・スループット、スクリーニングにおいても使用しうる。
本新規発明の他の重要な用途は、野菜や果実の鮮度、並びに例えば病気の形態における損傷の存在の測定もある。損傷は、その植物材料の健康な部分よりもIQPイメージにおける低いIQP値を示す。
【0019】
一般に、上記イメージ・ソーティング又は分類において、いかなるIQP値が生じうるかは、試験から確立しなければならない。数段階の損傷の試験において、その損傷のイメージにおけるIQP値を計測し、そして数個のクラスに分ける。その後、栽培又は保存の間に、どのクラスが、高い品質をもたらすかが確立される。この試験において見られる域値は、選定されるIQPの値として使用される。
【0020】
クロロフィル蛍光イメージを計測し、そして光合成活性の量子効率のイメージを計算するための装置の好ましい態様を図1に示す。これは、当該装置が有しうる1つの簡単な形態である。200〜750nm、そして好ましくは670nmの波長をもつレーザー(1)は、植物材料(4)の方向に、ミラー(2)により反射される発散レーザー・ビームを作り出す。このミラーは、検流計の上に載せられ、そして当該ミラーは回転することができるようになっている。この検流計は、上記レーザーにより生成されるレーザー線(3)が植物材料上にスキャンされることができるように、コンピュータ(6)により制御される。このレーザー線は、クロロフィル分子を励起するように作用する。クロロフィル分子の少なくとも一部は、電気的に励起された状態となる。蛍光を放射することにより上記クロロフィル分子の少なくとも一部は、基底状態に戻る。蛍光は、600〜800nmの、例えば、約730nmの光だけを伝達するために好適な光学フィルターを提供されたカメラを用いて、計測される。この方法は、今般、例えば、50Hzの周波数を用いて、そして10秒間、上記対象上にレーザー線を速く、最初にスキャニングすることから成る。この10秒の間に、蛍光は、上記カメラにより計測され、そして計測後に上記コンピュータにより読まれる。このイメージをFfast計測と呼ぶ。その後、同じく、10秒の間、例えば、0.1Hzの周波数を用いて、遅いスキャンを行う。この10秒の間に、蛍光は、上記カメラにより計測され、そして計測後に上記コンピュータにより読まれる。このイメージをFslow計測と呼ぶ。これら2つのイメージから、光合成系の量子効率(IQP)が、各画像素子について式(1)に従って計算される。
【0021】
光合成系の量子効率のイメージを取得するために、遅いスキャンを、最初に行うこともできることを当業者は認めるであろう。
【0022】
本発明に係る植物材料のソーティング装置は、植物材料を計測部に供給するためのコンベアー・ベルトを含むことができ、ここで、本発明に係る上述の蛍光計測が実施され、その後、植物材料は、分離部にさらに輸送され、ここで、そのIQPイメージが所定の限界内にない植物材料のフラクションは、それ自体知られたやり方で、例えば、空気流により、上記コンベアー・ベルトから除去される。上記空気流は、電気回路、例えば、計測部の信号を処理するマイクロプロセッサーにより制御される弁により調節されうる。植物材料は、各種クラスの品質に分離されることができ、ここで、各クラスの品質について、植物材料のIQPイメージは所定の限界内にある。かかる限界は、例えば、所望の品質又は特性をもつ植物材料のサンプルのIQPイメージを測定することにより、確立されうる。当業者は、分離される植物材料が、コンベアー・ベルト以外の方法で上記計測部と上記分離部に輸送されることもできること、そして主要流、例えば、空気流、液体流又は機械弁から上記各種フラクションをソートするためにさまざまな方法を利用しうることを、理解するであろう。植物材料は、例えば、液体中に存在してもよい。液体中でのソーティングは、例えば、ひじょうにデリケートな植物材料、例えば、リンゴ、ベリー、その他の柔らかい果実の損傷リスクを最小化するために、行われることができる。
【0023】
本発明に従って、例えば、温室又は圃場内で植物材料をソーティングし又は分類するための装置が植物の通過後に実行され、そしてそれらのIQPイメージを計測し、そしてその後に、品質に基づきそれらを分類し、そしてデータベース内にこれを保存し、又はより劣る品質の植物材料を除去する装置を含みうることにも留意すべきである。データベースの目的は、ロット全体の品質について眼識を得、そして一定のクラスの品質内にある植物の地位を迅速に取得することができるようにすることである。上述の上記計測のための好ましい態様は、植物材料における逸脱を計測する、例えば、病気を早期に検出するために、ロボット・アーム又は既知の装置、例えば、運び台(carriage)により、植物材料上で動かされることもできる。例えば、植物における病気の検出が確立されうる。なぜなら、試験において、損傷に因り、その損傷点での蛍光シグナルが局所的により高く、又はIQP値がその周囲の植物材料におけるものよりもより低いことが示されているからである。試験においては、いかなる量の殺菌剤が、病気と闘うために損傷点に適用されるべきかも確立されている。本発明は、今般、病気を局所的に検出し、そして局所的に防除することを可能にし、そしてノズルを使用することにより自動化されたやり方で当該損傷に殺菌剤を、高投与量で、投与することを可能にする。使用する方法の利点は、植物に予防のために殺菌剤をスプレーする必要がないように、殺菌剤の量が低下するということである。
【0024】
温室気候の制御を、上記方法により得られる情報と組合せることにより、植物の栽培をコントロールするために上記装置を使用しうることにも注目すべきである。本発明の利点は、植物全体がイメージングされ、そしてそれ故、光合成活動の量子効率のための良好な尺度が計算されることであり、これは、葉の小部分のみを計測するPAM蛍光計と対照をなす。
【0025】
本発明は、植物又は果実のためのソーティング装置内で使用されうる。いずれのソーティング装置並びに自動的に駆動されるかどうかに拘らず運び台又はロボット内に組み込まれることができる。
【実施例】
【0026】
実施例1
本実施例は、クロロフィル蛍光イメージ、及び光合成活動の量子効率のイメージに対する除草剤処理の効果について説明する。蛍光イメージは、図1に従う上述の好ましい態様を用いて計測された。
【0027】
図2Aは、イヌホオズキ(black night shade)植物の速いスキャンのクロロフィル蛍光イメージの結果を示し、当該植物は48時間前に、多数の葉の各々に、3μl滴の除草剤溶液が適用されていた。除草剤活性は、当該葉の局所的なより明るい色調(shade)内のイメージ内に見られる。図2Bは、同一植物の遅いスキャンの結果を示す。光合成活動の量子効率のイメージは、上記イメージ2Aと2Bから式(1)に従って、各画像素子についてコンピュータにより計算される。上記葉のイメージ内の暗い領域は、ほとんど光合成活動がない。ピクセルは、0〜0.3の間の値をもつ。当該植物の健康な部分は、もちろん、光合成活動の量子効率の正常な値を示す。ピクセルは、0.7〜0.85の値をもつ。それらは、明るい領域により認識されうる。試験から、光合成活動の量子効率についていかなる域値において、葉が死ぬかが知られる。光合成活動の量子効率の一定の域値を超えても、その植物部分は未だ健康である。一定の域値を下廻ると、植物は死ぬ。この試験から、当該域値は約0.5であるようであった。本発明の利点は、今般、植物全体が計測され、そしてそれゆえ、植物全体の光合成活動の総量子効率について適正に判断することができるということである。これは植物の多数のスポットにおいて、スポット計測が実施されるか又は植物の小部分のみがイメージングされるような今日まで知られている方法とは対照をなす。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1は、クロロフィル蛍光イメージを作製し、そして植物材料の光合成活動の量子効率を測定するための装置の概略を示す。
【図2】図2は、イヌホオズキ(black night shade)に関する図1に従う装置を用いて得られた3つのクロロフィル蛍光イメージを示す。パネルAは、多数の速いスキャンの結果を示し;パネルBは、1つの遅いスキャンの結果を示し;パネルCは、パネルAとパネルBのイメージから計算された、光合成活動の量子効率の結果を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物材料のクロロフィル蛍光イメージを測定することにより当該植物材料の質を決定する方法であって、ここで、当該植物材料は、存在するクロロフィルの少なくとも一部がその照射の少なくとも一部により励起されるような1以上の波長を含む電磁気照射ビームを照射され、上記電磁気照射ビームは、上記植物材料の小部分のみが照射されるような形状をもち、そして、当該ビームは、上記植物材料の大部分が計測されるように当該植物材料にわたり移動され、ここで、上記クロロフィル遷移に関係する上記植物材料から生成した蛍光発光が、クロロフィル蛍光イメージを取得するためのイメージング検出器により計測される、前記方法。
【請求項2】
所定の順番で、
一定の時間期間にわたり、クロロフィル蛍光イメージFfastを取得するために前記電磁気ビームを用いて前記植物材料上で、数回、速いスキャンを実行し、そして
一定の時間期間にわたり、クロロフィル蛍光イメージFslowを取得するために前記電磁気ビームを用いて前記植物材料上で、遅いスキャンを実行し、そしてその後、
植物材料の光合成系の効率に関する尺度である特徴的なクロロフィル蛍光イメージを、上記クロロフィル蛍光イメージFfast及びFslowから計算する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記特徴的蛍光イメージが、前記植物材料の光合成系の光合成活動の量子効率に関する情報を含み、かつ、当該イメージが、以下の式:
IQP=(Fslow−Ffast)/Fslow
により計算される、先の請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項4】
前記ビームが薄線の形状をもつ、先の請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記ビームが、前記植物材料の表面全体が照射されるように当該植物材料上を移動される、先の請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記植物材料を照射するために使用される電磁気照射が、200〜750nmの波長をもつ、先の請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記植物材料を照射するために使用される電磁気照射が、ランプ、LEDランプのレーザーにより生成される、先の請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記植物材料から生じる蛍光発光が、600〜800nmの間で計測される、先の請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記植物材料から生じる蛍光発光が、ビデオ・カメラ、CCD−カメラ、ライン・スキャン・カメラ又は多数の光ダイオード又は光電子増倍管から成る電子カメラを用いて計測される、先の請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記植物材料中に存在するクロロフィルの少なくとも一部が励起されるような1以上の波長を含む電磁気照射ビームを当該植物材料に照射する第1手段、高スキャン頻度で前記植物材料に対して前記電磁気照射ビームをスキャニングするための第1手段、前記速いスキャンに関係するクロロフィル蛍光イメージ(Ffast)を取得するために前記植物材料から生じる蛍光発光を計測するための第1手段、前記植物材料中に存在するクロロフィルの少なくとも一部が励起されるような1以上の波長を含む電磁気照射ビームを当該植物材料に照射する第2手段、低スキャン頻度で前記植物材料に対して前記電磁気照射ビームをスキャニングするための第2手段、前記遅いスキャンに関係するクロロフィル蛍光イメージ(Fslow)を取得するために前記植物材料から生じる蛍光発光を計測するための第2手段、並びに当該クロロフィル蛍光イメージを処理するための手段を含む、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法を使用して植物材料の質を測定するための装置。
【請求項11】
前記植物材料を照射するための第1手段と第2手段が、同一レーザーから成り、ここで、前記レーザー線は、前記植物材料に対して、それぞれ、高頻度と低頻度で、スキャンされ、前記クロロフィル蛍光イメージを計測するための第1手段と第2手段は、コンピュータに接続されたカメラから成り、そして前記蛍光イメージを処理するための手段は、前記速いスキャンと遅いスキャンのクロロフィル蛍光イメージを処理するためのソフトウェアを具備するコンピュータから成る、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
各々異なる質をもつ数個のフラクションに、個々の成分から成る植物材料を分離する方法であって、特徴的パラメーターが、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法又は請求項10若しくは11に記載の装置を用いて、各成分について、決定され、そして同一の予め決定された範囲内に上記特徴的パラメーターをもつ成分のフラクションが、集められる、前記方法。
【請求項13】
前記植物材料が、植物、切花、葉材料、果実、ベリー、野菜、花、花の器官、根、組織培養物、種子、球根、藻類、コケ、及び植物塊茎から成る、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記個々の成分が、別個の植物、切花、葉材料、果実、ベリー、野菜、花、花の器官、根、組織培養物、種子、球根、藻類、コケ、及び植物塊茎から成る、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記植物材料の供給部分、電磁気照射での前記植物材料の照射のための部分、蛍光シグナルを取得するための前記植物材料から生じる蛍光発光の計測のための部分、及び当該計測されたシグナルに基づいて働く分離部分を含む、請求項12〜14のいずれか1項に記載の方法を使用する植物材料を分離するための装置。
【請求項16】
各々異なる質をもつ数個のフラクションに個々の成分から成る植物材料を分類する方法であって、特徴的なパラメーターが、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法又は請求項10若しくは11に記載の装置を用いて、各成分について、決定され、そして同一の予め決定された範囲内に特徴的なパラメーターをもつ成分のフラクションが、集められる、前記方法。
【請求項17】
前記植物材料が、植物、切花、葉材料、果実、ベリー、野菜、花、花の器官、根、組織培養物、種子、球根、藻類、コケ、及び植物塊茎から成る、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記個々の成分の各々が、個々の植物、切花、葉材料、果実、ベリー、野菜、花、花の器官、根、組織培養物、種子、球根、藻類、コケ、及び植物塊茎から成る、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記植物材料を位置決めするための移動構造体、電磁気照射を前記植物材料に照射するための部分、蛍光シグナルを取得するために前記植物材料から生じる蛍光発光を計測するための部分、及び当該計測されたシグナルに基づき働く分類部分を含む、請求項16〜18のいずれか1項に記載の方法を使用する植物材料を分類するための装置。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2006−504956(P2006−504956A)
【公表日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−548164(P2004−548164)
【出願日】平成15年10月31日(2003.10.31)
【国際出願番号】PCT/NL2003/000750
【国際公開番号】WO2004/040274
【国際公開日】平成16年5月13日(2004.5.13)
【出願人】(502041347)プラント リサーチ インターナショナル ベスローテン フェンノートシャップ (3)
【Fターム(参考)】