説明

植物栽培システムおよび植物栽培方法

【課題】根ぐされなどの原因となる根の酸素欠乏状態を招くことなく、効率的且つ安定的に十分な量の二酸化炭素や水素などの気体を植物の根から吸収させることができ、それにより長期間に亘り持続的に植物の生長を著しく促進させることを可能にする植物栽培用システムを提供する。
【解決手段】 植物をその上で栽培するための無孔性親水性フィルム;植物の生育を促進する少なくとも1種の気体を水に溶解させて得られる気体溶解水であって、該無孔性親水性フィルムの下面に接触するように配置された気体溶解水;および該気体溶解水を、該無孔性親水性フィルムの下に保持するための気体溶解水保持手段を含むことを特徴とする、植物栽培用システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物栽培システムおよび植物栽培方法に関する。さらに詳細には、植物をその上で栽培するための無孔性親水性フィルム、植物の生育を促進する少なくとも1種の気体を水に溶解させて得られる気体溶解水であって、該無孔性親水性フィルムの下面に接触するように配置された気体溶解水、および該気体溶解水を該無孔性親水性フィルムの下に保持するための気体溶解水保持手段を含むことを特徴とする、植物栽培用システム、およびこのような植物栽培システムを使用した植物栽培方法に関する。本発明のシステムを使用して、二酸化炭素や水素などの植物の生育を促進する少なくとも1種の気体を溶解して得られる気体溶解水を植物の根から与えて植物を栽培すると、上記の気体を効果的且つ効率的に利用して、酸素不足による植物の生長阻害を生じることなく、植物の生育を促進することが可能となる。
【背景技術】
【0002】
植物は葉から大気中の二酸化炭素等の気体を植物体内に取り込むとともに、根から水を取り込んで光合成を行い、光合成によって植物は二酸化炭素から炭水化物を合成し、生育する。野菜などの植物の生育を促進する方法の1つとして、二酸化炭素を供給する方法が知られている。具体的には、二酸化炭素を高濃度に溶解させた炭酸水を植物に与えて植物の生育を促進する技術(特許文献1参照)、また炭酸水を植林した苗に供給することで環境ストレスの厳しい地域への植林を可能にする技術(特許文献2参照)、さらには炭酸塩または重炭酸塩の添加によって二酸化炭素溶液の過剰な酸性化を回避する技術(特許文献3参照)が開示されている。また、関連した技術としては、植物類生育用二酸化炭素溶液の製造方法および植物類生育用二酸化炭素溶液の供給装置(特許文献4、5参照)が開発されている。また、炭酸水を使用する代わりに、二酸化炭素を一定空間全体に暴露し、植物に高い濃度の二酸化炭素を与えることにより植物の生育を促進させる技術および挿し木方法(特許文献6参照)が「CO2施肥」として実用化されている。
【0003】
さらに、肥料成分を含有する培養液に植物の根を浸し、植物の栽培期間中継続的に上記培養液中に炭酸ガス濃度が500ppm以上の空気を吹き込みながら植物を生育する植物栽培技術も知られている(特許文献7参照)。この文献は、近年、注目を集めている温室内の設備を用いて植物を栽培する、いわゆる養液栽培(一般には「水耕栽培」と称される場合が多い)における炭酸ガスの利用を開示している。この文献は、植物の直下から炭酸ガスを含む気泡を供給することによって、植物の根に酸素を供給し、植物の葉に炭酸ガスを供給することを意図している。さらに、この文献においては、炭酸ガスが前記培養液を弱酸性にし、気泡の攪拌作用とあいまって、培養液中の微生物や微細な有機物の腐敗が防止される効果があると記載されている。
【0004】
しかし、上記特許文献1〜7に記載の技術には以下のような問題があった。植物の生育に必要な炭酸固定(光合成など)の律速段階を支配するのは、植物体内の水に溶けている二酸化炭素および重炭酸イオンの濃度であるため、二酸化炭素の積極的な供給は植物の光合成を増大させ、植物の生育を促進する上で有効である。しかし、水や空気中に溶解する気体の量はその気体の分圧に比例するため、大気圧中の二酸化炭素分圧を大きくすれば、それだけ酸素などの他の気体の分圧は小さくなる。その結果、水中や空気中の酸素濃度が低下して、酸欠による障害(例えば、根ぐされ)が発生する。また、二酸化炭素を高濃度に含むガス環境下で植物を生育すると、初期には成長が急激に進むが、やがて植物体内の窒素濃度の減少が起こり、光合成速度や成長速度の低下が生じることが知られている。高い濃度のCO2環境で成長を続けるためには、窒素養分をはじめリン、カリウムなどの各種栄養塩を十分に供給し、植物体内の水の酸性化を緩和する対策を施さなければならず、作用効果を経済的に見合わせて普及させるのが難しい現状である。さらに、二酸化炭素を溶解させた水や養液を利用する場合、二酸化炭素が空気中に容易に散逸してしまうため、二酸化炭素の効果的且つ効率的な利用は非常に困難である。この点について、上記特許文献7においては、継続的に上記培養液中に炭酸ガス濃度が500ppm以上の空気を吹き込み続けることにより植物の養液栽培を行っているが、このような栽培技術の実施には大がかりな設備が必要となるのみならず、多大なエネルギーが必要となり、経済性に問題があった。また、二酸化炭素を供給し続けるためには、現場で二酸化炭素を発生させる必要があるが、継続的に供給され続ける二酸化炭素の大部分は植物に利用されずに大気中に放出されることになるため、環境的な問題もあった。
【0005】
【特許文献1】特開2003-111521号公報
【特許文献2】特開2003-325063号公報
【特許文献3】特開2005-333854号公報
【特許文献4】特許2843772号公報
【特許文献5】特許2843773号公報
【特許文献6】特開2001-186814号公報
【特許文献7】特開平11-66号公報
【0006】
また、植物の生育を促進するための別の方法として、水素ガスを供給する方法も知られている。夏場等の強力な光、低温、乾燥、貧栄養などによって植物の光合成が抑制されると過剰の活性酸素が生成してしまい、葉緑体に損傷を与え破壊する。そのため過剰な活性酸素は植物の生育に悪影響を及ぼし、植物の枯死にもつながる。近年、シロイヌナズナの突然変異体を用いた解析から、葉緑体の発達に必須な2つのFeSOD遺伝子であるFSD2およびFSD3が同定され、2つのFeSOD遺伝子を強発現させた植物体は、活性酸素を発生させる薬剤の存在下で光合成の低下を抑制する機能を持つことが解析されている。そして、これらの遺伝子を強発現させることで、活性酸素を除去し、光合成の低下を抑制した植物の栽培が可能であることが示唆されている(非特許文献1)。
【0007】
しかし、この方法は遺伝子操作を行うことから、野菜や果実等の植物の栽培に応用した場合、収穫した野菜等を食用として扱えるか安全性に問題がある。また、植物の種別に応じた遺伝子操作が必要となるので、コストが高くなるという問題もある。
【0008】
【非特許文献1】明賀 史純、葉緑体の活性酸素の除去に必須な2つの酵素遺伝子を発見−植物に有害な活性酸素を消す、スーパーオキシドディスムターゼの新たな機能を解明−、[online]、平成20年12月2日、独立行政法人 理化学研究所、[平成22年3月8日検索]、インターネット(URL: http://www.riken.go.jp/r-world/research/results/2008/081202/index.html)
【0009】
また、水素酸素混成ガスを溶解させた養液を使用する水耕栽培装置も開示されている(特許文献8)。この装置においては、水耕栽培中に生じる根ぐされの防止のために酸素のみを養液に溶解して使用すると、活性酸素が発生するため、水素酸素混成ガスを養液に溶解することによって、活性酸素の発生を抑制しつつ、酸素を植物に供給する。この発明においては、水素ガスは酸素の効果的な供給を達成するために使用されているが、当然、酸素の量が少なくなると植物の根が酸素欠乏に陥るために水素ガスの濃度を十分に高められないという問題があった。さらには、この特許文献の技術においては、上記の二酸化炭素を利用する技術の場合と同様に、水中に供給された水素酸素混成ガスは空気中に容易に散逸しまうため、水素酸素混成ガスの効果的且つ効率的な利用は非常に困難であるというのが現状であった。尚、この特許文献の実施例においては、水素酸素混成ガス(SHG)発生装置という非常に特殊な装置で製造した水素酸素混成ガスを使用し、このガスを0.4m3の水に溶解させるために、ガスを1時間かけて120リットル供給と1時間供給停止とを繰り返して間欠的に供給するという非常に煩雑で且つ時間とコストがかかる作業を行っているが、商業的な規模で植物栽培を行う場合には、このような作業を伴う技術を採用することは現実的ではない。
【0010】
【特許文献8】特開2009-22211号公報
【0011】
なお、上記特許文献7および特許文献8において採用されているような養液栽培は、土耕栽培に比べて、連作障害がなく、自然条件に左右されにくく、栽培環境の調節が比較的容易である等の利点があることが知られている。しかし、上記したような二酸化炭素や水素を溶解させた水や養液を、養液栽培における培養液として使用することは不適切または実用的でないと考えられていた。具体的な理由は以下の通りである。植物の根には常に酸素を供給する必要があるが、養液栽培において植物の根は常に養液中に浸かっているため、根にとって養液が唯一の酸素供給源となる。このため、養液栽培では、根を酸欠状態にすることなく十分な量の二酸化炭素や水素を養液中に溶存させることが特に困難であった。さらに、二酸化炭素や水素を水槽中の大量の水や養液に溶解させておいても、その大部分が根から吸収されることなく、水槽中の養液の表面から大気中に速やかに散逸してしまうため、使用に際して二酸化炭素や水素を溶解させた水や養液を必要な量調達して葉に噴霧または土に灌水する場合と比較して、極めて非効率的であるという問題があった。上記特許文献7および特許文献8には、二酸化炭素や水素を溶解させた水や養液の使用が開示されてはいるが、上で説明した通り、経済性や環境などの観点から実用的な技術であるとはいえず、二酸化炭素や水素を溶解させた水や養液を培養液として利用した養液栽培については、実用に耐える技術が存在しないというのが現状であった。また、特に二酸化炭素の場合には、主に葉から吸収され光合成に活用されることが知られているため、養液栽培の養液に二酸化炭素を溶解させて根から吸収させることによって特段のメリットがあるとは認識されていなかったことも、二酸化炭素を溶解させた水や養液の養液栽培方法への応用について実用的な提案がなされていなかったことの一因であると考えられる。(上記特許文献7も、植物の葉に炭酸ガスを供給することを意図して、炭酸ガスを養液に導入している。)なお、従来の養液栽培に関しては、植物の根と養液が直接接触することから、養液の調整がデリケートであり、その管理範囲が非常に狭く、また設備投資に高額な費用が必要であるなどの問題があるが、本発明者らは、このような養液栽培の問題の克服を課題として、フィルムを使用した養液栽培について研究を重ねており、以下の植物栽培システムや栽培方法について開示している:養液と接触する無孔性親水性フィルム上で、該フィルムと植物の根を一体化させて植物を栽培する植物栽培用器具および植物栽培方法(特許文献9)、上記フィルム上部にも灌水する植物栽培用器具および植物栽培方法(特許文献10)、上記フィルムの一部を植物の根が貫通する植物栽培用器具および植物栽培方法(特許文献11)、上記フィルムが養液上を連続的に移動する植物栽培システム(特許文献12)、上記フィルムとその上部に配置される蒸発抑制部材の間に空気層を設ける植物栽培システム(特許文献13)、上記フィルムの下面側に養液を連続的に供給する手段を用いる植物栽培システム(特許文献14)を開示している。しかし、基本的に、二酸化炭素や水素を溶解させた水や養液の養液栽培への応用は、上記のような理由で経済性及び環境の観点からメリットがないと考えられており、上記特許文献9〜14に記載のようなシステムに関しても、二酸化炭素や水素を溶解させた水や養液の利用は提案されていなかった。
【特許文献9】再表2004-64499号公報
【特許文献10】特許4425244号公報
【特許文献11】特開2008-61503号公報
【特許文献12】特開2008-182909号公報
【特許文献13】特開2008-193980号公報
【特許文献14】特許4142725号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
二酸化炭素を一定空間全体に暴露し植物に高い濃度の二酸化炭素を与えたり、二酸化炭素や水素を強制的に溶解させた水や養液を植物に与えることは、植物の生育を促進する上で有効ではあるが、一方で、水中や空気中の二酸化炭素濃度または水素濃度を上げるために、植物の呼吸に必要な水中や空気中の酸素濃度が低下し、植物の生育を促進する効果が十分に発揮できないという問題があった。逆に、植物の根が酸素欠乏に陥り根ぐされを起こすことを回避するためには、植物の根と接触する水や空気中の酸素濃度を高くする必要があるが、そうすると植物に供給する養液中の二酸化炭素や水素の濃度を十分に上げることができないという問題があった。また、酸素の過剰供給には、活性酸素の発生による植物の機能障害などの問題が伴う。さらには、水や養液に溶解させた二酸化炭素や水素などの気体が容易に空気中に散逸してしまうために、気体を効果的且つ効率的に利用することが非常に困難であるという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために本発明者らは鋭意研究を行った結果、驚くべきことに、植物をその上で栽培するための無孔性親水性フィルム、二酸化炭素や水素などの植物の生育を促進する気体を水に溶解させて得られる気体溶解水であって、該無孔性親水性フィルムの下面に接触するように配置された気体溶解水、および該気体溶解水を、該無孔性親水性フィルムの下に保持するための気体溶解水保持手段を含むことを特徴とする、植物栽培用システムを使用して、上記の気体溶解水を、無孔性親水性フィルムの下面から無孔性親水性フィルムの上で栽培する植物に供給すると、根ぐされなどの原因となる根の酸素欠乏状態を招くことなく、効率的且つ安定的に十分な量の二酸化炭素や水素などの気体を植物の根から吸収させることができ、それにより長期間に亘り持続的に植物の生長を著しく促進させることが可能になることを見出し、本発明を完成した。
【発明の効果】
【0014】
本発明の植物栽培システムを使用して植物の栽培を行うと、根ぐされなどの原因となる根の酸素欠乏状態を招くことなく、効率的且つ安定的に十分な量の二酸化炭素や水素などの気体を植物の根から吸収させることができ、それにより長期間に亘り持続的に植物の生長を著しく促進させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の1つの態様によれば、
植物をその上で栽培するための無孔性親水性フィルム、
植物の生育を促進する少なくとも1種の気体を水に溶解させて得られる気体溶解水であって、該無孔性親水性フィルムの下面に接触するように配置された気体溶解水、および
該気体溶解水を、該無孔性親水性フィルムの下に保持するための気体溶解水保持手段
を含むことを特徴とする、植物栽培用システムが提供される。
【0016】
本発明の他の1つの態様によれば、
(1)植物をその上で栽培するための無孔性親水性フィルム、
植物の生育を促進する少なくとも1種の気体を水に溶解させて得られる気体溶解水であって、該無孔性親水性フィルムの下面に接触するように配置された気体溶解水、および
該気体溶解水を、該無孔性親水性フィルムの下に保持するための気体溶解水保持手段
を含むことを特徴とすることを特徴とする植物栽培用システムを提供し、
(2)該システム内の無孔性親水性フィルムの上に植物を配置し、そして
(3)該気体溶解水を、該無孔性親水性フィルムを介して該植物に接触させることによって、該無孔性親水性フィルムの上で植物を栽培する
ことを包含する植物栽培方法が提供される。
【0017】
次に、本発明の理解を容易にするために、本発明の基本的特徴および好ましい諸態様を列挙する。
【0018】
1. 植物をその上で栽培するための無孔性親水性フィルム、
植物の生育を促進する少なくとも1種の気体を水に溶解させて得られる気体溶解水であって、該無孔性親水性フィルムの下面に接触するように配置された気体溶解水、および
該気体溶解水を、該無孔性親水性フィルムの下に保持するための気体溶解水保持手段
を含むことを特徴とする、植物栽培用システム。
【0019】
2. 該気体が二酸化炭素および水素からなる群より選ばれる少なくとも1種であり、二酸化炭素を水に溶解させた場合、該気体溶解水中に溶解している二酸化炭素の量が50ppm以上であって、水素を水に溶解させた場合、該気体溶解水中に溶解している水素の量が0.002ppm以上であることを特徴とする、前項1に記載の植物栽培用システム。
3. 該気体溶解水が、さらに肥料成分を含むことを特徴とする、前項1または2かに記載の植物栽培用システム。
4. 該気体溶解水のpHが4〜8の範囲内であることを特徴とする、前項1〜3のいずれかに記載の植物栽培用システム。
5. 該無孔性親水性フィルムが、該植物栽培用システムの無孔性親水性フィルムの上で植物を35日間栽培した際に、該無孔性親水性フィルムを栽培した植物の根から剥離するための剥離強度が10g以上となるフィルムであることを特徴とする、前項1〜4のいずれかに記載の植物栽培用システム。
【0020】
6. 気体溶解水保持手段が水耕栽培用水槽であり、該無孔性親水性フィルムの下面に接触するように配置された気体溶解水が水耕栽培用水槽に収容されてなることを特徴とする、前項1〜5のいずれかに記載の植物栽培用システム。
7. 該気体溶解水保持手段が水不透過性表面を有し、その上に該無孔性親水性フィルムが敷設されてなり、無孔性親水性フィルムと気体溶解水保持手段との間に該気体溶解水を連続的または間歇的に供給する気体溶解水供給手段をさらに含むことを特徴とする、前項1〜6のいずれかに記載の植物栽培用システム。
8. 気体溶解水供給手段が、無孔性親水性フィルムと気体溶解水保持手段との間に設置された点滴灌水チューブであることを特徴とする、前項7に記載の植物栽培システム。
【0021】
9. (1)植物をその上で栽培するための無孔性親水性フィルム、
植物の生育を促進する少なくとも1種の気体を水に溶解させて得られる気体溶解水であって、該無孔性親水性フィルムの下面に接触するように配置された気体溶解水、および
該気体溶解水を、該無孔性親水性フィルムの下に保持するための気体溶解水保持手段
を含むことを特徴とすることを特徴とする植物栽培用システムを提供し、
(2)該システム内の無孔性親水性フィルムの上に植物を配置し、そして
(3)該気体溶解水を、該無孔性親水性フィルムを介して該植物に接触させることによって、該無孔性親水性フィルムの上で植物を栽培する
ことを包含する植物栽培方法。
【0022】
10. 該気体が二酸化炭素および水素からなる群より選ばれる少なくとも1種であり、二酸化炭素を水に溶解させた場合、該気体溶解水中に溶解している二酸化炭素の量が50ppm以上であって、水素を水に溶解させた場合、該気体溶解水中に溶解している水素の量が0.002ppm以上であることを特徴とする、前項9に記載の植物栽培方法。
11. 該気体溶解水として、さらに肥料成分を含む気体溶解水を使用し、それにより、該工程(3)において、該植物の根を該フィルム上で成長させて該フィルムと一体化させることを特徴とする、前項9または10に記載の植物栽培方法。
12. 該気体溶解水のpHが4〜8の範囲内であることを特徴とする、前項9〜11のいずれかに記載の植物栽培方法。
【0023】
以下、本発明について説明する。
本発明は、植物の生育を促進する少なくとも1種の気体を水に溶解させて得られる気体溶解水を使用して、植物を栽培するためのシステムである。
【0024】
本発明において、植物の生育を促進する少なくとも1種の気体とは、植物の生育を促進する何らかの作用を及ぼす酸素以外の気体であり、二酸化炭素および水素からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、何れかを単独、または混合して使用することができる。次に、二酸化炭素を水に溶解させて得られる気体溶解水、および水素ガスを水に溶解させて得られる気体溶解水について詳細に説明する。
【0025】
<二酸化炭素を水に溶解させて得られる気体溶解水>
本発明においては、二酸化炭素(炭酸ガス)を気体として使用することができる。二酸化炭素の水への溶解度は、気相の二酸化炭素分圧に依存する。大気中の二酸化炭素分圧(350ppm)においては、水1リットル当たり約0.5mgの二酸化炭素が水に溶解する。従って、本発明で使用する気体溶解水の二酸化炭素含有量は、50ppm以上でなければならない。また、5℃の水に対する1気圧の炭酸ガスの飽和溶解度は約2,800ppmであり、この値を超える量の二酸化炭素を含有する気体溶解水は、過剰な炭酸ガスが逃げ易く経済的でない。従って、本発明において使用する気体溶解水の二酸化炭素含有量は50〜2,800ppmであり、好ましくは100〜2,000ppm、より好ましくは200〜1.500ppmである。尚、水中に溶存している二酸化炭素の濃度は、市販の二酸化炭素濃度計などで確認することができる。例えば、日本国東亜ディーケーケー株式会社製のポータブル炭酸ガス濃度計CGP−1などを使用し、この濃度計の取扱説明書に記載の方法で測定することができる。
【0026】
25℃において二酸化炭素1気圧の下で、水1リットル当たり最大1,491mgの二酸化炭素を溶解させることができ、5℃においては最大2,815mgの二酸化炭素を溶解させることができる。水と接触している二酸化炭素は、極めて緩やかに溶解し、液中では炭酸として存在する。液中の炭酸は、水素イオンと重炭酸イオンとに電離して平衡状態に達している。この時の水1リットルは、10-3.91 molの水素イオンと、0.12mM/Lの重炭酸イオンを含み、そのpHは3.91となる。尚、25℃の大気中の二酸化炭素分圧(0.035気圧)の下では、水1リットル当たり最大0.52mgの二酸化炭素が溶解できるが、この時の水1リットルは、10-5.64 molの水素イオンと約2μM/Lの重炭酸イオンを含み、そのpHは5.64である。
【0027】
二酸化炭素が溶解している気体溶解水(以下、屡々、「二酸化炭素水」または「炭酸水」と称する)においては、二酸化炭素濃度が50ppmの時のpHは約4.7であるが、この炭酸水の重炭酸イオン含有量は、約0.02mM/L(20μM/L)でしかない。然るに、この炭酸水に重炭酸塩を溶解させ、重炭酸イオンの量を2.0mM/Lにまで強制的に増大させると、そのpHは一時的に約6.6まで上昇させることができる。
【0028】
一般的に、植物栽培に使用する水や養液のpHは4〜8の範囲内であることが望ましい。二酸化炭素水のpHは、アルカリ性物質を使用して重炭酸イオン量を増加させることでて調節することができる。アルカリ性物質は何れも使用可能であるが、植物に二酸化炭素を供給することを目的とする本発明では、アルカリ性物質として炭酸塩または重炭酸塩を使用する。これ以外のアルカリ性物質を炭酸水に添加すると、溶解している炭酸が解離(電離)して失われるため、炭酸塩または重炭酸塩の使用が好ましい。炭酸塩または重炭酸塩としては、アルカリ金属塩またはアンモニウム塩が適しており、好ましいアルカリ金属塩はカリウム塩またはナトリウム塩であり、カリウム塩がより好ましい。
【0029】
重炭酸塩を使用してpHを調整した炭酸水を取得する方法として、次の方法(1)と方法(2)が挙げられる。尚、本発明における二酸化炭素の溶解濃度や重炭酸イオン濃度は、特に断りがない限り、液温25℃の水溶液における二酸化炭素溶解量や重炭酸イオン濃度を意味する。
【0030】
方法(1): 水に重炭酸塩を添加していくと、そのpHは順次上昇し、重炭酸塩の添加量が1mM/Lの時、pHは8.27になり、2mM/Lの時、pHは8.57となる。この重炭酸塩水溶液を原水として、これに二酸化炭素を1気圧下での飽和濃度まで溶解させると、重炭酸塩が1mM/Lの炭酸水のpHは4.82まで低下し、重炭酸塩が2mM/Lの炭酸水のpHは5.11まで低下する。
【0031】
方法(2): 水に、二酸化炭素を1気圧下での飽和濃度まで溶解させると、そのpHは3.91(重炭酸イオン濃度0.12mM/L)となる。この炭酸水に重炭酸塩を添加していくと、そのpHは順次上昇し、添加量1mM/Lで4.82、添加量2mM/Lで5.11となる。
【0032】
上記方法(1)の場合、重炭酸塩に変えて炭酸塩を使用することもできる。しかし、重炭酸塩の添加に比較して炭酸塩の添加はpHを急激に上昇させるので、重炭酸塩の使用が好ましい。また、方法(2)の場合も、重炭酸塩の代わりに炭酸塩を使用し、これを炭酸水に添加することで、液中の重炭酸イオン量を0.12mM/L以上に増加させることができる。しかし、炭酸塩は少量の添加でpHを著しく上昇させるので、重炭酸塩の使用が好ましい。
【0033】
本発明では、上記した方法(1)と方法(2)を組み合わせて、二酸化炭素の溶解と重炭酸塩の添加を同時に進行させ、原水に二酸化炭素を溶解させながら、炭酸塩または重炭酸塩、あるいはその溶液を添加することで、二酸化炭素を50ppm以上含有し、しかも所望のpH値に調整された炭酸水を得ることもできる。いずれにしても、二酸化炭素を50ppm以上含有している炭酸水を植物に供給する時点で、当該炭酸水が重炭酸イオンを0.12〜2.0mM/L含有する状態を強制的に作り、そのpHを4〜8の範囲に調整すればよい。
【0034】
本発明において、「50ppm以上の二酸化炭素が溶解し、pHを4〜8の範囲に調整した気体溶解水」が、植物の生育および挿し穂の発根に及ぼす作用は、以下のように説明することができる。
植物の生育に必要な炭酸固定(光合成など)の律速段階を支配するのは、植物体内の水に溶けている二酸化炭素および重炭酸イオンの濃度である。植物が生育される環境の二酸化炭素分圧下において、植物体内の水にはその分圧での飽和濃度以上の二酸化炭素は溶けることができない。一方で、植物体内の水のpHに従って水に溶けた二酸化炭素は、重炭酸イオンに電離して平衡状態に達しようとする。さらには植物に広く存在しているカルボニックアンヒドラーゼ(炭酸デヒドラターゼ)の高い分子活性により、二酸化炭素は速やかに重炭酸イオンに変換されてしまう場合もある。特に、葉緑体のpHは8付近であるために、この反応は積極的に行われていると言える。
【0035】
以上のことから、植物体内の水に溶けている二酸化炭素の濃度は、二酸化炭素分圧と植物体内の水のpHとカルボニックアンヒドラーゼの働きにより決定されており、植物の生育または挿し穂の発根を実現させるのに充分な条件であるとは限らない。本発明によれば、大気中で生育される植物体内の水に溶けている二酸化炭素および重炭酸イオンの濃度を、植物が通常生育される状態のそれよりも高めることができると考えられるので、炭酸固定に関わるリブロースビスリン酸カルボキシラーゼやホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼなどの酵素反応を活性化でき、その結果、植物の生育促進や挿し穂の発根促進が達成されるものと考えられる。
【0036】
また、本発明において炭酸水を使用した場合には、炭酸水は、植物の環境ストレス耐性を向上させる作用を発揮する。この点について、以下に具体的に説明する。
第一に、炭酸水は、二酸化炭素欠乏ストレスを緩和することができる。植物は光合成反応の最終電子受容体である二酸化炭素が十分供給されないと、光合成反応は停止し、細胞はストレスを受ける。クロロフィルによって受容された過剰な光エネルギーは、炭酸固定反応で消費できず、一部は蛍光や熱として放出されるが、残りのエネルギーによって酸素分子が還元されて活性酸素が生じ、光化学系などの細胞構成成分が損傷を受ける。
【0037】
本発明によれば、大気中で生育される植物の体内の水に溶けている二酸化炭素および重炭酸イオンの濃度を、植物が通常生育される状態のそれよりも高めることができると考えられる。そうすることによって、強光・乾燥・塩分過多などの環境ストレス条件におかれたC3植物においても、無機炭素(二酸化炭素または重炭酸イオン)を能動的に生体内へ取り込み濃縮するためのC4植物や水生光合成生物が有する機構と同様に二酸化炭素欠乏ストレス状態を回避し、環境ストレスに対する耐性が高まるものと考えられる。
【0038】
また、第二には、炭酸水の使用により、高濃度の二酸化炭素により誘導される気孔閉鎖による蒸散量を抑制することができる。植物体内の二酸化炭素分圧が高まると、気孔が閉じられることは良く知られている。本発明によれば、この作用により乾燥や高塩濃度などによって引き起こされる水分損失を緩和または回避し、環境ストレスに対する耐性が高まるものと考えられる。
【0039】
本発明で使用する二酸化炭素水の製造方法に特に限定はなく、市販されている炭酸水を使用することもできる。二酸化炭素を水に溶解させて炭酸水を製造するには、従来公知の方法が何れも採用可能である。例えば、化石燃料等の燃焼ガスやガスボンベに充填された二酸化炭素を水に吹き込む方法、炭素材料製電極を使用して水を電解する方法、ドライアイスを水に接触させる方法、二酸化炭素を充満させたタンクの中に水を導入する方法、可溶性の炭酸塩または重炭酸塩を水に溶解させた後に酸を作用させる方法、微小径の多孔質膜や非多孔質ガス透過膜からなる中空糸膜などの膜モジュールを用いて、二酸化炭素を給気することにより膜の反対側にある水に溶解させる方法などを採ることができる。これらの方法の中では、所望濃度の炭酸水を必要な量だけ簡便に調製できる点で、膜モジュールを備えた植物生育用の装置(特許文献1参照)を使用する方法が好ましい。
尚、本発明の植物栽培システムにおいては、予め調製した気体溶解水を気体溶解水保持手段に収容または供給することもできるし、気体溶解水保持手段に収容した水に気体を溶解することもできる。
【0040】
pH調製のために重炭酸イオンを炭酸水中に存在させるには、可溶性の炭酸塩または重炭酸塩を炭酸水に直接添加するか、あるいは炭酸塩または重炭酸塩の水溶液を予め調製し、これを炭酸水に添加する方法が採用できる。あるいは水に炭酸塩または重炭酸塩(あるいはそれらの水溶液)を添加してから、炭酸水とする方法も挙げられる。また、水酸化ナトリウムのような強い塩基性化合物を添加した水やアンモニア水を炭酸水とするなど、何れの方法も採用することができる。
【0041】
本発明においては、最終的に二酸化炭素の濃度が50〜2,800ppmの範囲にあり、上述したようにpHが好適に調整された気体溶解水を簡便に迅速に調達できることが重要である。このためには、二酸化炭素給気装置や重炭酸塩などの塩基性化合物溶液の送液ポンプと、二酸化炭素濃度計やpH計とを連動させる装置を使用することが好ましい。
【0042】
<水素ガスを水に溶解させて得られる気体溶解水>
本発明においては、水素ガスを気体として使用することができる。水素ガスを水に溶解させて得られる気体溶解水(以下、屡々「水素水」と称する)において、溶存する水素ガスの濃度(以下、単に「水素濃度」と称す)は、0.002〜3.00ppm、より好ましくは0.0442〜1.62ppmである。本発明者らの研究によると、光合成光量子束密度を362〜420μmol/s・m2として、24時間日長でナス科の植物を栽培した場合、水素濃度が2μg/L(0.002ppm)以下の水溶液では、植物体の葉の葉緑素が減少し生理障害(クロロシス)が発生した。また、上記と同じ条件で、水素濃度が44.2μg/L(0.0442ppm)の水素水を植物に供給した場合には、植物体の葉の葉緑素がほぼ減少することはなく、クロロシスは発生しなかった。
【0043】
本発明において、水素濃度が0.002ppm以上の水素水が、植物の生育に及ぼす作用は、以下のように説明することができる。植物は葉から大気中の二酸化炭素等の気体を植物体内に取り込むとともに、根から水を取り込んで光合成を行う。光合成においては、細胞内に活性酸素が生成するが、夏場等の強力な光、低温、乾燥、貧栄養など光合成が抑制される場合、過剰の活性酸素が生成してしまう。活性酸素は非常に強い酸化力を持っており、活性酸素が過剰に生成されると葉緑体が損傷を受け破壊されてしまう。葉緑体が破壊されると光合成効率が低下し、植物の生育が阻害され、やがて枯れていく。しかし、0.002ppm以上の水素ガスが溶存する気体溶解水を植物にあたえると、水溶液中に安定な微細気泡として存在する水素ガスは、植物の根から吸収され、そのまま植物体内を巡って葉まで行き、活性酸素を除去する。活性酸素が除去されることにより、葉緑体の破壊が抑制され、植物の生育が促進されると考えられる。
【0044】
本発明において使用する気体溶解水の水素ガス濃度は、適宜調整することができる。特に強い光を植物に照射して栽培する場合、より水素濃度の高い水溶液を用いるとよい。植物に強い光を照射すると、それだけ活性酸素がより過剰に生成する。このため、より過剰な活性酸素を除去すべく、より多くの水素ガスを植物体内に取り込ませる必要がある。このため、照射する光量に応じて、上記の範囲内で適宜水素濃度を高めた水溶液を植物に供給して栽培するとよい。
【0045】
本発明で使用する水素水の製造方法に特に限定はなく、市販されている水素水を使用することもできる。水素ガスが水に溶解した水素水を製造するには、従来公知の方法が何れも採用可能である。例えば、水素ガスボンベに充填された水素ガスや、蒸留水を電気分解して発生させた水素ガスを水に溶解させる方法が挙げられる。水素ガスを水に溶解する方法としては、多数個の微細な通気孔が穿孔された散気管(ディフューザー)を水の入った容器中に配置し、該管を通して水素ガスを供給し、通気孔から微細な気泡として水に散気する方法、水を循環させるポンプ等を利用して水素ガスを巻き込む方法が挙げられる。水素水の具体的な製造方法については、例えば特開2010-51963号公報などを参照することができる。
尚、本発明の植物栽培システムにおいては、予め調製した気体溶解水を気体溶解水保持手段に収容または供給することもできるし、気体溶解水保持手段に収容した水に気体を溶解することもできる。
【0046】
本発明において水素水を使用する場合、水素濃度は、公知の方法で測定することができる。例えば、溶存水素計 (水素濃度測定器) KM2100DH(日本国共栄電子研究所製)などの市販の測定装置を使用して測定することができるが、上記特開2010-51963号公報に記載されているメチレンブルー水溶液を用いた滴定法によって定量することもできる。
【0047】
また、本発明の気体溶解水は、二酸化炭素や水素ガスなどの気体が上記の量で溶存していれば、上記の気体を、さらに「マイクロバブル」および/または「ナノバブル」として含んでいてもよい。「マイクロバブル」とは直径が50μm以下の微細な気泡を指し、「ナノバブル」とは直径が1μm以下のさらに微細な気泡を指す。気体をマイクロバブルおよび/またはナノバブルとして含む水は、マイクロバブルまたはナノバブルを含まずに気体を単純に溶解しているだけの水に比べて、より多くの気体を安定して含有することができる利点がある。マイクロバブルやナノバブルは、そのままでは無孔性親水性フィルムを透過することはできないが、徐々に縮小しながら気体を水中に溶解させることが知られており、そのため気体溶解水中の溶存気体の内在的供給源として活用できる。ナノバブルは通常、マイクロバブルが電解質イオンを含む水の中で瞬時に圧壊することで生成するが、本発明において気体溶解水が肥料成分を含む養液である場合には、ナノバブルを安定して生成させるのに好適な電解質イオンを含むので、本発明においてナノバブルを特に好適に用いることができる。マイクロバブルおよびナノバブルについては、例えば、特開2004-121962、特開2005-245817、特開2005-246294および特開2008-206448を参照することができる。また、気体をマイクロバブルおよび/またはナノバブルとして含む場合、マイクロバブルおよび/またはナノバブルの量は、100,000個/ml以上、より好ましくは15,000,000個/ml以上である。
【0048】
本発明において二酸化炭素と水素ガスを同時に使用する場合には、2種のガスを強制的に溶解した気体溶解水が、上述した二酸化炭素水および水素水に関する条件を満足することが重要である。従って、このような気体溶解水の二酸化炭素濃度は50ppm以上であり、水素濃度は0.002ppm以上でなければならない。上述したように、二酸化炭素は植物による炭酸固定を促進し、水素ガスは活性酸素の除去によって葉緑体を保護するため、二酸化炭素と水素ガスの併用によって、更なる植物の生長促進が達成される。二酸化炭素と水素ガスを併用する場合、これらの気体を水に溶解させる方法については特に制限はなく、二酸化炭素と水素ガスの混合ガスを水に溶解させる方法、二酸化炭素と水素ガスを順次水に溶解させる方法、予め調製した二酸化炭素水と水素水とを混合する方法などのいずれを用いても良い。
尚、気体溶解水には、本発明の効果を得るために必要な量の二酸化炭素または水素が溶存している限り、常温常圧下で水や養液に通常溶存している他の気体が含まれていてもかまわない。例えば、二酸化炭素ガスを水道水に強制的に溶解して得た炭酸水には、二酸化炭素以外に、常温常圧下で水道水に溶存している酸素や窒素が含まれていてもかまわない。
【0049】
本発明で使用する気体溶解水は、さらに肥料成分を含んでいてもよい。使用する肥料に特に限定はなく、従来の土耕栽培ないし養液土耕栽培、あるいは水耕栽培に使用されてきた肥料が何れも使用可能である。一般には、植物の生育にとって無機成分は必要不可欠であるが、その主要な成分として:窒素(N)、リン(P)、カリウム(K)、カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)、硫黄(S)、微量成分として:鉄(Fe)、マンガン(Mn)、ホウ素(B)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、モリブデン(Mo)が挙げられる。さらにこの他に、副成分として、珪素(Si)、塩素(Cl)、アルミニウム(Al)、ナトリウム(Na)等が挙げられる。必要に応じて、本発明の効果を実質的に阻害しない限り、その他の生理活性物質も加えることができる。さらに、グルコース(ブドウ糖)などの糖質、アミノ酸等を添加することも可能である。
【0050】
さらに本発明で使用する気体溶解水のpHは、4〜8の範囲内であることが好ましい。植物はその種類によって最適な生育を示すpHが異なるが、多くの植物では、細胞内外のpHの差によって生じる細胞内pHの受動的な変化を抑え、細胞内pHを好適な範囲に維持することが、生化学的なプロセスを進行させるために重要であり、細胞内外のpHの差が小さいことが、水素イオンの輸送に要するエネルギーの消費が少なくなるので好ましい。通常植物が生育する最適なpHは、4〜7の範囲にあるとされていることから、本発明において、気体溶解水のより好ましいpHは4〜7の範囲であり、より好ましくは4〜6.6の範囲である。
【0051】
気体溶解水が二酸化炭素水である場合には、上述したように、炭酸水に溶存する重炭酸イオン量を加減することで、二酸化炭素水のpHを任意の値に調節することができる。また、水素水のpHは通常中性であるが、含まれる肥料成分などを考慮してpHを調製することもできる。気体溶解水のpHは、市販のpH測定器などを用いて容易に確認することができる。
【0052】
<植物栽培システム>
次に、気体溶解水を使用して植物を栽培するための本発明の植物栽培システムの基本的な構成について説明する。
本発明の植物栽培システムの構成要素として、無孔性親水性フィルムは必須であるが、気体溶解水保持手段の違いによって、大きく2種に分けることができる。第1のタイプは、気体溶解水保持手段が水耕栽培用水槽であり、無孔性親水性フィルムの下面に接触するように配置された気体溶解水が水耕栽培用水槽に収容されてなることを特徴とする、植物栽培用システムである。このような構造のシステムについては、特許文献9を参照することができる。第2のタイプは、気体溶解水保持手段が水不透過性表面を有し、その上に無孔性親水性フィルムが敷設されてなり、無孔性親水性フィルムと気体溶解水保持手段との間に気体溶解水を連続的または間歇的に供給する気体溶解水供給手段をさらに含むことを特徴とする植物栽培用システムであり、気体溶解水供給手段の代表的なものが無孔性親水性フィルムと気体溶解水保持手段との間に設置された点滴灌水チューブである。即ち、この第2のタイプの栽培システムは、気体溶解水保持手段を基材層とし、その上に直接的または間接的に無孔性親水性フィルムが積層されてなる多層構造を有するシステムである。この栽培システムにおける、気体溶解水保持手段を以下、屡々「気体保持層」と称す。このような構造のシステムについては、特許文献14を参照することができる。
【0053】
図1は、第2のタイプの植物栽培システムの基本的な一態様を示す模式断面図である。気体(二酸化炭素および/または水素ガス)(2)を肥料養液に吹き込むことにより気体を水に溶解させて得られる気体溶解水(3)を、給液ポンプ(4)と供給管(9)を用いて無孔性親水性フィルム(1)の下面に接触するように供給する。図1の例においては、無孔性親水性フィルム(1)と水不透過性表面(11)の間に不織布などの吸水材(5)を設置して、この吸水材(5)に肥料成分を含む気体溶解水(3)を吸収させている。吸水材(5)に吸収された肥料成分を含む気体溶解水(3)は、無孔性親水性フィルム(1)に吸収され、植物(6)の根(7)は、無孔性親水性フィルム(1)の上面に密着し、無孔性親水性フィルム(1)に含まれる水、気体(二酸化炭素および/または水素ガス)、肥料成分を吸収する。尚、不織布などの吸水材(5)は任意に用いるものであり、これを用いることにより、肥料成分を含む気体溶解水(3)を均一に拡げて無孔性親水性フィルム(1)の下面に供給することができる。しかし、勿論、気体溶解水(3)を、吸水材(5)を使用せずに直接、無孔性親水性フィルム(1)と水不透過性表面(11)の間に供給しても良い。
【0054】
必要に応じて、無孔性親水性フィルム(1)の上に土壌などの植物栽培用支持体(8)、および/または、水蒸気を通さないか、または低透過性の蒸発抑制部材(図示しない)(例えば、後述するマルチング材)を配置することができる。無孔性親水性フィルム(1)の上に植物栽培用支持体(8)を配置すると、植物体の根を保護する効果が得られる。また、蒸発抑制部材を配置することにより無孔性親水性フィルム(1)から大気中に蒸散する水蒸気を蒸発抑制部材表面あるいは植物栽培用支持体(8)中に凝結させると、凝結した水蒸気を水として植物が利用できる。ただし、蒸発抑制部材を用いる際には、これによって植物の根を外気と遮断してしまうと植物の根を酸欠状態にしてしまう恐れがあるため、これを回避するために換気口を数カ所設けるなどの工夫をすることが望ましい。
【0055】
本発明の植物栽培システムによれば、水、気体(二酸化炭素および/または水素ガス)、肥料成分を含む気体溶解水(3)は無孔性親水性フィルム(1)を介して植物に供給される。気体溶解水(3)は、無孔性親水性フィルム(1)によって空気層と隔離されているため、気体溶解水中の気体成分が空気中に散逸することが防止され、水に溶解させた気体(二酸化炭素および/または水素ガス)が高濃度に維持される。これに対して、植物の根が水(または養液)に浸かっている従来の水耕栽培方法においては、水や養液の表面が空気層と接しているため、二酸化炭素や水素などの気体を溶解させても、容易に空気中に散逸してしまう。
【0056】
また、植物の根が水(または養液)に浸かっている従来の水耕栽培方法においては、根は水に溶存した酸素を吸収するため、栽培に使用する水の溶存酸素量を一定以上に保つ必要があった。水に溶存する気体の量は気体分圧に比例するため、大気圧下で強制的に気体を水に溶解すると、元々溶解していた酸素濃度が低下してしまい、栽培植物が酸素欠乏に陥ることがあった。また、水に溶解することができる気体の量にも制限があった。これに対して、本発明の植物栽培システムにおいては、植物の根は無孔性親水性フィルム(1)の上の空気層にあるので、酸素は空気中から吸収することができる。そして気体を強制的に溶解することに伴う水の溶存酸素量の低下による根ぐされなどの障害を気にすることなく、必要なだけ気体を水に溶解させることができるので、気体(二酸化炭素および/または水素ガス)の生育促進における効果を十分に発揮させることができる。
【0057】
さらに、必要に応じて、フィルム(1)の上部に細霧噴霧用手段(10)(例えば、バルブ)を配置し、間歇的に水、養液または農薬希釈液を噴霧することができる。このような細霧噴霧用手段(10)を配置することにより、水の間歇的噴霧による特に夏季の冷却と、養液の噴霧による環境の冷却と葉面散布による肥料成分の供給、農薬の配合された水または養液の噴霧による農薬の散布などの自動化が可能となるというメリットを得ることができる。しかし、植物体の特定の成分(たとえば、硝酸態窒素)を低減することを意図する際には、基本的には、(養分蓄積を避けるため)無孔性親水性フィルム(1)の上からは水のみを供給することが好ましい。
【0058】
フィルムと根の「一体化」を促進させるためには、該フィルム(1)の下からは養液を供給することが好ましい。 本発明者らは、無孔性親水性フィルムとして厚さ40μmのポリビニルアルコール(PVA)フィルムを使用して、フィルムの下から供給する肥料濃度が根とフィルムとの一体化現象に与える効果を調べた。具体的には、約20cm×20cmの無孔性親水性フィルム(PVA)上に土壌として、バーミキュライト、またはロックファイバーを約300ml配置し、この土壌内に、サニーレタスの幼苗(本葉1枚強)を2本植え付けた。フィルムの下から供給する養液として、ハイポネックス100倍希釈液、1000倍希釈液、および水(水道水、即ち肥料なし)を用いて、合計6種類の系を作製した。養液量は各300ml、フィルム(PVA)上の土壌の厚みは約2cmだった。実験はハウス内で行い、自然光を使用し、気温は15〜25℃、湿度は50〜90%RHの条件下で行った。栽培開始13日後、および35日後には、後述する一体化試験と同様に剥離強度を測定した。その結果を表1に示す。
【0059】
【表1】

【0060】
表1から明らかなように、フィルムの下面から水のみを供給した場合と比較して、養液を使用した方が、植物の生育のみならず、根とフィルムの接着強度が著しく向上した。これは、植物がフィルムを介して、水のみならず肥料成分をも吸収していることを示している。さらに、フィルムを介して水および肥料成分を効率良く吸収するためには、根がフィルム表面に強く密着することが必須であり、その結果として根とフィルムが一体化することになるものと考えられる。
【0061】
無孔性親水性フィルム(1)と根の「一体化」が完成する前に、該フィルム上から水分を加え過ぎると、植物はフィルム上の取り易い水分を吸収して、該フィルム下からの水分を取る必要が減じ、その結果、根が該フィルムと一体化し難くなる傾向がある。従って、根が該フィルムと一体化するまでは、該フィルム上からは、過剰の水分を加えることは好ましくない。他方、根が無孔性親水性フィルムと一体化した後であれば、適宜、該フィルム上から水分/養分を与えても良い。この時、無孔性親水性フィルム(1)の上から供給する水や養液には、植物の生育を促進する少なくとも1種の気体(二酸化炭素、水素ガス)を水に溶解させて得られる気体溶解水を用いても良い。
【0062】
<植物栽培用システムの構成>
以下、本発明の植物栽培システムにおける各部の構成について詳細に説明する。このような構成(ないしは機能)に関しては、必要に応じて、本発明者による文献(特許文献9〜14)の「発明の詳細な説明」、「実施例」等を参照することができる。
【0063】
(無孔性親水性フィルム)
本発明の植物栽培システムにおいては、植物をその上で栽培するための無孔性親水性フィルムが必須である。本発明で使用する無孔性親水性フィルムは、後述する種々の物性をすべて満足するものが好ましい。
【0064】
(一体化試験)
無孔性親水性フィルムは、栽培している「植物体の根と実質的に一体化し得る」フィルムであることが重要である。「植物体の根と実質的に一体化し得る」フィルムとは、本発明の植物栽培用システムの無孔性親水性フィルムの上で植物を35日間栽培した際に、無孔性親水性フィルムを栽培した植物の根から剥離するための剥離強度が10g以上となるフィルムである。根とフィルムの一体化を測定するための「一体化試験」は、次のようにして実施することができる。
【0065】
「ざるボウルセット」を使い、ざる上に試験すべきフィルム(200×200mm)を乗せ、フィルムの上にバーミキュライト150g(水分73%、乾燥重量40g)を載せ、サニーレタスの幼苗(本葉1枚強)を2本植え付ける。このざるを、240〜300gの養液が張られたボウル中に設置し、該フィルムを該養液と接触させ、幼苗を栽培する。栽培はハウス内で行い、自然光を使用し、気温は0〜25℃、湿度は50〜90%RHの条件下で35日間行う。次に、栽培した植物の根元で茎葉を切断し、根の密着したフィルムの茎がほぼ中心になるように、該フィルムを巾5cm(長さ:約20cm)に切断して試験片とする。
【0066】
ばね式手秤に市販のクリップを付け、上記で得た試験片の一方をクリップで固定して、ばね式手秤の示す重量(試験片の自重に対応=Aグラム)を記録する。次いで試験片の中心にある茎を手で持ち、下方に緩やかに引き下げて、根とフィルムが離れる(または切断される)際の重量(荷重=Bグラム)をばね式手秤の目盛りから読み取る。この値から初期の重量を差し引いた(B−A)グラムを巾5cmの引き剥がし荷重とし、この引き剥がし荷重を剥離強度とする。
【0067】
本発明において使用する無孔性親水性フィルムの剥離強度は、10g以上であることが好ましく、30g以上であることがさらに好ましく、100g以上であることが最も好ましい。
【0068】
(イオン透過性試験)
さらに本発明においては、無孔性親水性フィルムが「植物体の根と実質的に一体化し得る」か否かを判断するための指標の1つとして、イオン透過性のバランスが挙げられる。
本発明の植物栽培システムを使用して植物を栽培すると、植物はフィルムを通して肥料をイオンとして吸収する。従って、使用するフィルムの塩類(イオン)透過性が、植物に与えられる肥料成分の量に影響する。本発明においては、無孔性親水性フィルムを介して水と0.5質量%塩水とを対向して4日間(96時間)接触させた際に、水と塩水の栽培温度において測定した電気伝導度(EC)の差が4.5dS/m以下となるフィルムが好ましい。水と塩水の電気伝導度の差は、3.5dS/m以下であることがさらに好ましく、2.0dS/m以下であることが最も好ましい。このようなフィルムを用いた際には、根に対する好適な水あるいは肥料溶液を供給し、該フィルムと根との一体化を促進することが容易となる。
【0069】
電気伝導度(EC、イーシー)は、液中に溶けている塩類(あるいはイオン)量の指標であり、比導電率とも言う。ECとしては、断面積1cm2の電極2枚を1cmの距離に離したときの電気伝導度の値を使用し、単位はシーメンス(S)であり、S/cmで表す。しかし、養液のECは小さいので、1/1000の単位となるmS/cmを使う(国際単位系ではdS/m(dはデシ)と表示する)。
【0070】
フィルムのイオン透過性は、以下のようにして測定することができる。
市販の食塩10gを水2000mlに溶解して、0.5%塩水を作製する(EC:約9dS/m)。「ざるボウルセット」を使い、ざる上に試験すべきフィルム(サイズ:200〜260×200〜260mm)を乗せ、該フィルム上に水150gを加える。他方、ボウル側に上記の塩水150gを加え、得られた系全体を食品用ラップ(ポリ塩化ビニリデンフィルム、商品名:サランラップ、旭化成社製)で包んで、水分の蒸発を防ぐ。この状態で、常温で放置して、24時間毎に水側、塩水側のECを測定する。具体的には、電気伝導度計の測定部位(センサー部)にスポイトを用いて試料(即ち、水側または塩水側の溶液)を少量乗せ、導電率を測定する。
【0071】
(水分透過性/グルコース溶液透過性試験)
本発明においては、無孔性親水性フィルムを介した植物の根の養分(有機物)吸収を容易とする点から、無孔性親水性フィルムは、所定のグルコース透過性を示すことが好ましい。このグルコース透過性の優れたフィルムは、無孔性親水性フィルムを介して水と5%グルコース水溶液とを対向して3日間(72時間)接触させた際に、水とグルコース溶液の栽培温度において測定した濃度(Brix%)の差が4以下、さらに好ましくは3以下、より好ましくは2以下、最も好ましくは1.5以下となるフィルムである。
【0072】
フィルムのグルコース透過性は、以下のようにして測定することができる。
市販のグルコース(ブドウ糖)を用いて5%グルコース溶液を作製する。上記イオン透過性試験と同様の「ざるボウルセット」を使い、ざる上に試験すべき無孔性親水性フィルム(サイズ:200〜260×200〜260mm)を乗せ、該フィルム上に水150gを加える。他方、ボウル側に上記のグルコース溶液150gを加え、得られた系全体を食品用ラップ(ポリ塩化ビニリデンフィルム、商品名:サランラップ、旭化成社製)で包んで、水分の蒸発を防ぐ。この状態で、常温で放置して、24hrs毎に水側、グルコース溶液側の糖度(Brix%)を糖度計で測定する。
【0073】
(耐水圧)
さらに本発明においては、無孔性親水性フィルムが耐水圧として10cm以上の水不透性を有することが好ましい。このような無孔性親水性フィルムを用いた際には、根とフィルムの一体化を促進することができる。また、根に対する好適な酸素供給および無孔性親水性フィルムを介しての病原菌汚染を防止することが容易となる。
【0074】
耐水圧はJIS L1092(B法)に準じた方法によって測定することができる。本発明で使用する無孔性親水性フィルムの耐水圧は10cm以上であることが好ましく、より好ましくは20cm以上、さらに好ましくは30cm以上であり、特に好ましくは200cm以上である。
【0075】
(材質)
本発明で使用する無孔性親水性フィルムの材質に特に限定はなく、通常フィルムないし膜の形態で用いることができる公知の親水性材料から適宜選択して使用することが可能である。具体的には、ポリビニルアルコール(PVA)、セロファン、酢酸セルロース、硝酸セルロース、エチルセルロース、ポリエステル等の親水性材料が挙げられる。また、無孔性親水性フィルムの厚さも特に限定はないが、通常は、300μm以下であり、好ましくは5〜200μm、より好ましくは20〜100μmである。
【0076】
本発明で使用する無孔性親水性フィルムは、上述した物性(イオン透過性、グルコース透過性および耐水圧)を全て満足するものが好ましい。本発明者らは種々の無孔性親水性フィルムおよび比較となる多孔性疎水性フィルムの物性を上述した方法で評価した。具体的には、PVA、二軸延伸PVA(ボブロン)、親水性ポリエステル、セロファン、PH−35、超極細繊維不織布(シャレリア)の6種類についてイオン透過性を試験し、PVA、二軸延伸PVA、セロファン、浸透セロファン、PH−35の5種類についてグルコース透過性を試験し、PVA、二軸延伸PVA、セロファン、親水性ポリエステル、超極細繊維不織布の5種類について耐水性を試験した。その結果を、以下の表2〜表4に示す。
【0077】
【表2】

【0078】
表2から明らかなように、イオン透過性の大きなフィルムは、超極細繊維不織布(シャレリア)、PVA、親水性ポリエステルおよびセロファンであった。反対にイオン透過性が小さいものがボブロンであり、イオンの透過性が全く認められなかったものが微孔性ポリプロピレンフイルム(PH−35)であった。従って、イオン塩透過性の観点から、微孔性ポリプロピレンフイルム(PH−35)は不適であることがわかる。
【0079】
【表3】

【0080】
表3から明らかなように、試験した5種類のフィルムのうち、PVA、セロファンおよび浸透セロファンのグルコース透過性は良好であったが、ボブロンではグルコース透過性はほとんど認められなかった。又、PH−35では透過性は全く見られなかった。グルコース透過性という観点からは、本発明において好適に使用することのできるフィルムはPVAとセロファンであることがわかる。
【0081】
【表4】

【0082】
表4から明らかなように、フィルムの耐水圧という観点から、超極細繊維不織布のように多孔性フィルムは本発明には使用することができない。
【0083】
上記表2〜表4に示したデータからも明らかなように、イオン透過性、グルコース透過性および耐水性の全てを満足するフィルムは、PVA、セロファン、親水性ポリエステルなどの無孔性親水性フィルムである。従って、本発明においては、無孔性親水性フィルムを使用する。
【0084】
<植物栽培用支持体>
本発明の植物栽培システムにおいては、植物体の根を保護するために、無孔性親水性フィルムの上に土壌などの植物栽培用支持体を配置することができる。使用する植物栽培用支持体に特に限定はなく、通常使用される土壌ないし培地が使用可能である。このような土壌ないし培地としては、例えば、土耕栽培に用いられる土壌、および水耕栽培に用いられる培地が挙げられる。
無機系の植物栽培用支持体としては、天然の砂、れき、パミスサンドなど、加工品(高温焼成等)では、ロックウール、バーミキュライト、パーライト、セラミック、籾殻くん炭などが挙げられ、有機系の植物栽培用支持体としては、天然のピートモス、ココヤシ繊維、樹皮培地、籾殻、ニータン、ソータンなどや、合成した粒状フェノール樹脂などが挙げられ、これらは単独でも、複数種を適宜混合して使用することもできる。また、合成繊維の布あるいは不織布も植物栽培用支持体として使用可能である。
【0085】
必要最小限の肥料および微量要素を上記植物栽培用支持体に加えてもよい。本発明者らの知見によれば、植物の根が、無孔性親水性フィルムを介して接触する水/養液から水または養分を吸収可能な程度に伸びるまで、言い換えると根とフィルム1が一体化するまでは、ここで言う「必要最小限の肥料および微量要素」として、養分を無孔性親水性フィルム上の植物栽培用支持体に加えておくことが望ましい。
【0086】
<気体溶解水保持手段>
本発明の植物栽培システムは、気体溶解水を無孔性親水性フィルムの下に保持するための気体溶解水保持手段を含んでいる。本発明の植物栽培システムにおいては、気体溶解水を収容する容器状の気体溶解水保持手段、あるいは水不透過性表面を有する基材層として機能する気体溶解水保持層の何れかが使用可能である。
気体溶解水を収容する容器状の気体溶解水保持手段としては、必要な量の気体溶解水を保持することのできる容器である限り特に限定はなく、その材質としては、軽量化、易成形性および低コスト化の点からはポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン等の汎用プラスチックが好適に使用可能である。例えば、従来使用されてきた水耕栽培用水槽を使用することができる。
【0087】
気体溶解水保持層の水不透過性表面は水を通さない材質からなるものであれば特に限定はなく、合成樹脂、木材、金属あるいはセラミックなどが挙げられる。その気体溶解水保持層の形状にも特に限定はなく、フィルム状、シート状、板状、または箱状などが挙げられる。
気体溶解水供給手段は、従来から水あるいは養液の連続的あるいは間歇的な供給に使用されている手段であれば特に限定はない。本発明においては、気体溶解水を少量ずつ供給することが可能な点滴灌水チューブ(「ドリップチューブ」とも称される)の使用が好ましい。点滴灌水チューブを使用した点滴潅水によって、作物の生育に必要な水および肥料をできるだけ少量供給することができる。
【0088】
さらに、気体溶解水保持層と気体溶解水供給手段とを含む態様においては、無孔性親水性フィルムへの気体溶解水の供給を補助するために、さらに吸水性材料を無孔性親水性フィルムと水不透過性表面との間に設置することができる。吸水性材料は、基本的には水を吸収して保持する材料であれば特に限定はない。一例としては、合成樹脂から作られたスポンジや不織布、織物からなる布、植物性の繊維状、チップ状、粉末状、または、ピートモスや水苔をはじめ一般的に植物支持体として使用される材料も使用可能である。
【0089】
本発明の植物栽培システムを使用して栽培することのできる植物については特に限定はなく、農業、林業、園芸の分野で普通に生育されている植物を全て対象とすることができる。
【0090】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。
【実施例】
【0091】
実施例1
(栽培実験に使用した養液)
養液A:蒸留水に、硫酸カリウム4mM/L、硝酸アンモニウム2mM/L、リン酸二水素カリウム0.4mM/L、硝酸マグネシウム0.2mM/L、塩化カルシウム0.8mM/L、Fe(III)-EDTA0.02mM/L、ホウ酸9.7・M/L、硫酸マンガン8.3・M/L、硫酸亜鉛1.4・M/L、ヨウ化カリウム0.9・M/L、モリブデン酸二ナトリウム0.2・M/L、硫酸銅0.02・M/L、及び塩化コバルト0.02・M/Lを溶解させて得られた水溶液。

養液B:重炭酸カリウム0.5mM/Lを追加し、硫酸カリウムを4mM/Lから3.75mM/Lにに変更した以外は、上記養液Aと同様にして得られた水溶液。
【0092】
(実験方法)
栽培実験に使用したシステムの模式図を図2Aに示す。無孔性親水性フィルムとして厚さ65μmのポリビニルアルコールフィルム(日本国アイセロ化学(株)製)を用いた2つの培養装置のそれぞれの無孔性親水性フィルムの上に、粒状の活性炭を厚さ5mmほど敷き詰め、コマツナ(日本国東北種苗株式会社製「照彩小松菜」)の種子を7個等間隔に播種し、その後霧吹きで活性炭を湿らせた。培養装置下部の2個の穴へチューブ(外径6mm、内径4mm、ポリウレタン製)を接続し、培養液A(20)または培養液B(21)の入ったポリタンク(5L)内へ入れ、片方のチューブにはユニモルポンプ(18)(日本国日東工器株式会社製)を介した。ユニモルポンプ(18)で、培養液A(20)または培養液B(21)の入ったポリタンクから、培養装置の無孔性親水性フィルムとアクリル枠で囲まれた空間に培養液A(20)または培養液B(21)を充填し、培養装置下部の他方の穴からポリタンクへ戻し、培養液を循環させた。コマツナを播種した培養装置2つを密閉容器(48×64×17cm)内に設置し、湿度90%、温度25℃、光合成光量子束密度(photosynthetic photon flux density、PPFD)250μmol m-2 s-1、12時間照明下、二酸化炭素濃度は大気濃度(720ppm)に保って17日間育苗し、根を無孔性親水性フィルムに活着させた。
【0093】
播種18日後以降、二酸化炭素を溶解させずに培養液Aを循環させてそのまま培養する区(対照区)と、二酸化炭素ボンベ(19)から二酸化炭素を50ml/minの割合で培養タンクに吹き込み、二酸化炭素を溶解させた培養液B(21)を循環して培養する区(炭酸水区)を設けた。炭酸水区の培養液の二酸化炭素濃度は、日本国東亜ディーケーケー株式会社製のポータブル炭酸ガス濃度計CGP−1を使用して測定したところ、約1000ppmであった。密閉容器内の空気中の二酸化炭素を取り除くために、容器内の空気をエアーポンプ(16)で取り出し、密閉容器外のソーダライムを充填したカラム(15)に通気して二酸化炭素を取り除き、その空気を再び容器内に送り込んで循環させた。炭酸水区では、培養液中の二酸化炭素が無孔性親水性フィルムを介して直接空気中に拡散し光合成に利用されることを防止するために、培養装置をプラスチック製の袋で覆い、植物体の胚軸の部位では幅5mmの隙間を空けた。プラスチック袋の下部に穴を空けてチューブを挿入し、プラスチック袋の内部の空気をポンプで吸引し、密閉容器外のソーダライムを充填したカラムに通気して二酸化炭素を取り除き、その空気を再び容器内に送り込み循環させた。密閉容器内の空気は、炭酸区のコマツナの胚軸の下部のプラスチック製袋の隙間から吸引され、二酸化炭素を取り除いた空気を密閉容器内へ送り込むことになる。培養液中の二酸化炭素が無孔性親水性フィルムを介して直接空気中に拡散すると同時に吸引されるため、二酸化炭素の空気中への拡散をほぼ防止できる。また、密閉容器内は小型の扇風機を作動させ、送風が直接植物体へあたらないように配慮し、容器内の二酸化炭素濃度を均一にして、容器内の二酸化炭素濃度をほぼ0ppm(米国KANOMAX社製KANOMAX INDOOR GAS MONITOR MODEL2331で測定)に保った。二酸化炭素処理を開始した5日後に、植物体の草丈、地上部の生重を調査した。
【0094】
上記図2Aのシステムに用いた培養装置のより具体的な構造を図2Bに示す。以下に、この培養装置に関して説明する。厚さ8mmのアクリル板を縦5cm横23cmの長方形にカットして、外周部から1〜1.5cm内側の縦3cm横19cmの長方形を切り取ったものを枠部材A(24)とする。厚さ8mmのアクリル板を縦5cm横25cmの長方形にカットし、外周部から5mmの距離にOリング(27)を埋め込むための溝(28)を彫り、溝の内側部分の両端近くに培養液を出し入れするための穴を2箇所開けたものを底部材B(25)とする。無孔性親水性フィルム(1)を枠部材A(24)と底部材B(25)の間に挟み、外周部に2cm毎にボルト止めをして、培養液(気体溶解水(3))が漏れないように密閉した。培養液を入れたタンクからユニモルポンプ(日本国日東工器株式会社製)を使用して、培養液(3)を底部材B(25)と無孔性親水性フィルム(1)との隙間に、底部材Bに開けた1箇所の穴(22)から充填し、他方の穴(23)から排出して培養液タンクに戻すことにより、培養液(3)を培養装置内に循環させた。
【0095】
(実験結果に対する記述)
実験結果を図3及び図4に示す。
【0096】
低二酸化炭素処理開始2日後には、対照区では子葉が枯死し、本葉も部分的に退緑化し、植物体が萎れて倒伏した状態であった(図3のB)。さらに、低二酸化炭素処理5日後に生育調査を行った結果、草丈および生重とも炭酸水区が対照区を上回った(図4A、図4B)。炭酸水区では、子葉に一部退緑化や萎れが認められたが、本葉では退緑化や萎れ、根ぐされ等は認められなかった(図3のA)。
【0097】
本実験では、二酸化炭素欠乏を人工的に発生させて、光酸化障害を発生させ、培養液中に溶かした二酸化炭素が光合成に利用できるかどうかを調査した。培養液中の二酸化炭素が光合成に利用できれば、光酸化障害発生が軽減されるはずである。実験終了後、密閉容器内の複数箇所で二酸化炭素濃度を測定した結果、ほぼ0ppmであった。このことから、光照射中は二酸化炭素欠乏により、光酸化障害が発生すると考える。対照区では、二酸化炭素欠乏処理2日後から子葉が枯死し、本葉も退緑化する等の光酸化障害が発生した。炭酸水区では、子葉では若干の退緑化の光酸化障害が発生したが、本葉ではほとんど光酸化障害が発生しなかった。培養液に溶解させた二酸化炭素が無孔性親水性フィルムを透過して根から吸収され、光合成に利用されて光酸化障害がほとんど発生しなかったと考える。さらに、炭酸水区では植物体の草丈及び生重量が対照区を上回った。このことから、培養液に溶解させた二酸化炭素が無孔性親水性フィルムを透過して根から吸収し光合成に利用されて、植物体の生長が回復したと考える。また、二酸化炭素を溶解させた培養液で培養しても植物の根が酸素欠乏に陥り根ぐされを起こすことを回避できることが証明できた。
【0098】
実施例2
無孔性親水性フィルムを用いる本発明の植物栽培用システムと植物の根を養液に浸す従来の開放系水耕栽培システムにおける、炭酸水からの二酸化炭素の散逸速度の違いを評価するための実験を以下のようにして行った。
【0099】
実験は、25℃に保った培養室内において行った。養液として、実施例1で使用した養液Bに、実施例1と同様の方法で二酸化炭素を溶解させて得られた炭酸水を用いた。この炭酸水を、縦20cm、横30cm、深さ6cmの2つの容器に、それぞれ水深4cmになるように入れた。2つの容器の一方の養液の表面上に、実施例1で使用したのと同様の無孔性親水性フィルムを設置して本発明のシステムを得た(もう一方の無孔性親水性フィルムを使用しない容器が従来の開放系水耕栽培システムに相当する。)2つの容器とも、4cmのスターラーチップを用いて毎分180rpmで攪拌した。1時間後、日本国東亜ディーケーケー株式会社製のポータブル炭酸ガス濃度計CGP−1を使用し、この濃度計の取扱説明書に記載の方法で、養液中の二酸化炭素濃度を測定した。結果を表5に示す。
【0100】
【表5】

【0101】
上記表から明らかなように、従来の開放系水耕栽培システムにおいては、1時間で溶存二酸化炭素の約90%が散逸してしまうのに対して、本発明のシステムにおいては約25%の散逸に抑えられていることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明の植物栽培用システムを使用して植物の栽培を行うと、根ぐされなどの原因となる根の酸素欠乏状態を招くことなく、効率的且つ安定的に十分な量の二酸化炭素や水素などの気体を植物の根から吸収させることができ、それにより長期間に亘り持続的に植物の生長を著しく促進させることが可能となる。従って、本発明の植物栽培用システムおよびこれを用いた植物栽培方法は、農業・林業・園芸全般に対しても広く適用することができ、穀類・野菜類などの農作物、花卉類、果樹、植林・緑化用樹木などの収量増加、品質向上、挿し木による大量クローン増殖などに優れた効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】本発明の植物栽培システムの基本的な態様の一例を示す摸式断面図。
【図2A】実施例1で採用した実験システムの全体を示す概略図。
【図2B】実施例1で採用した実験システムに含まれる栽培装置の概略図。
【図3】実施例1において、低二酸化炭素処理開始から2日後のコマツナの生育状況を示す写真。Aは炭酸水区、Bは対照区。
【図4A】実施例1において、低二酸化炭素処理開始から5日後のコマツナの草丈の平均値(n=7)を示すグラフ。(エラーバーは標準偏差を示す。)
【図4B】実施例1において、低二酸化炭素処理開始から5日後のコマツナの地上部の生重量の平均値(n=7)を示すグラフ。(エラーバーは標準偏差を示す。)
【符号の説明】
【0104】
1 無孔性親水性フィルム
2 気体
3 気体溶解水
4 給液ポンプ
5 気体溶解水を吸収してなる吸水材料
6 植物
7 根
8 植物栽培用支持体(土壌)
9 気体溶解水供給管
10 細霧噴霧用手段
11 水不透過性表面
12 エアー排出
13 エアーの流れ
14 エアー吸引
15 二酸化炭素除去カラム
16 エアーポンプ
17 蛍光灯
18 ポンプ
19 二酸化炭素ボンベ
20 溶液A
21 溶液B
22 培養液入口用穴
23 培養液出口用穴
24 部材A
25 部材B
26 無孔性親水性フィルムと一体化した根
27 Oリング
28 Oリング用の溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物をその上で栽培するための無孔性親水性フィルム、
植物の生育を促進する少なくとも1種の気体を水に溶解させて得られる気体溶解水であって、該無孔性親水性フィルムの下面に接触するように配置された気体溶解水、および
該気体溶解水を、該無孔性親水性フィルムの下に保持するための気体溶解水保持手段
を含むことを特徴とする、植物栽培用システム。
【請求項2】
該気体が二酸化炭素および水素からなる群より選ばれる少なくとも1種であり、二酸化炭素を水に溶解させた場合、該気体溶解水中に溶解している二酸化炭素の量が50ppm以上であって、水素を水に溶解させた場合、該気体溶解水中に溶解している水素の量が0.002ppm以上であることを特徴とする、請求項1に記載の植物栽培用システム。
【請求項3】
該気体溶解水が、さらに肥料成分を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の植物栽培用システム。
【請求項4】
該気体溶解水のpHが4〜8の範囲内であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の植物栽培用システム。
【請求項5】
該無孔性親水性フィルムが、該植物栽培用システムの無孔性親水性フィルムの上で植物を35日間栽培した際に、該無孔性親水性フィルムを栽培した植物の根から剥離するための剥離強度が10g以上となるフィルムであることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の植物栽培用システム。
【請求項6】
気体溶解水保持手段が水耕栽培用水槽であり、該無孔性親水性フィルムの下面に接触するように配置された気体溶解水が水耕栽培用水槽に収容されてなることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の植物栽培用システム。
【請求項7】
該気体溶解水保持手段が水不透過性表面を有し、その上に該無孔性親水性フィルムが敷設されてなり、無孔性親水性フィルムと気体溶解水保持手段との間に該気体溶解水を連続的または間歇的に供給する気体溶解水供給手段をさらに含むことを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の植物栽培用システム。
【請求項8】
気体溶解水供給手段が、無孔性親水性フィルムと気体溶解水保持手段との間に設置された点滴灌水チューブであることを特徴とする、請求項7に記載の植物栽培システム。
【請求項9】
(1)植物をその上で栽培するための無孔性親水性フィルム、
植物の生育を促進する少なくとも1種の気体を水に溶解させて得られる気体溶解水であって、該無孔性親水性フィルムの下面に接触するように配置された気体溶解水、および
該気体溶解水を、該無孔性親水性フィルムの下に保持するための気体溶解水保持手段
を含むことを特徴とすることを特徴とする植物栽培用システムを提供し、
(2)該システム内の無孔性親水性フィルムの上に植物を配置し、そして
(3)該気体溶解水を、該無孔性親水性フィルムを介して該植物に接触させることによって、該無孔性親水性フィルムの上で植物を栽培する
ことを包含する植物栽培方法。
【請求項10】
該気体が二酸化炭素および水素からなる群より選ばれる少なくとも1種であり、二酸化炭素を水に溶解させた場合、該気体溶解水中に溶解している二酸化炭素の量が50ppm以上であって、水素を水に溶解させた場合、該気体溶解水中に溶解している水素の量が0.002ppm以上であることを特徴とする、請求項9に記載の植物栽培方法。
【請求項11】
該気体溶解水として、さらに肥料成分を含む気体溶解水を使用し、それにより、該工程(3)において、該植物の根を該フィルム上で成長させて該フィルムと一体化させることを特徴とする、請求項9または10に記載の植物栽培方法。
【請求項12】
該気体溶解水のpHが4〜8の範囲内であることを特徴とする、請求項9〜11のいずれかに記載の植物栽培方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【公開番号】特開2012−34649(P2012−34649A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−179326(P2010−179326)
【出願日】平成22年8月10日(2010.8.10)
【出願人】(596009814)メビオール株式会社 (23)
【出願人】(591079487)広島県 (101)
【Fターム(参考)】