説明

植物栽培容器とその製造方法及び植物栽培キット

【課題】従来、家庭で植物を栽培するためには植木鉢や、プランターが使用されている。初めて植物栽培をする際にはこれらの他に、種子、土・培養土、肥料などの材料や道具を揃える必要があった。その上、室内で植物栽培を行う時は、植木鉢から水が染み出しても床や机などが濡れないように植木鉢の下に水受け皿を置く必要があった。これらのことが、家庭で植物栽培を行うときの障害となっていた。
【解決手段】 本発明は上記課題を解決するため、少なくとも二つに分割でき、一方は植物栽培床22となり、他方は商品の輸送や保管時にその栽培床のカバーとして使用し、また栽培する時にはその栽培床の保持台21となり、組み合わせると一体容器として使用可能な植物栽培容器とその製造方法と、その植物栽培容器に、栽培用土、不織布、61の種子及び栽培方法を表した書類を詰め合わせた、植物栽培キットを提供することを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室外はもちろんのこと室内でも手軽に植物栽培を楽しむことの出来るようにした、栽培容器とその製造方法及び、この栽培容器を利用した植物栽培キットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、家庭で植物栽培を楽しむためには植木鉢や、プランターと称されるプラスチック製の長方形のものが使用されている。初めて植物栽培に取り組もうとすると、これら植木鉢、プランターの他に、種子、土・培養土、肥料などの材料や移植ごてなどの道具を個別に揃える必要があった。その上、室内で植物栽培を行う時は、植木鉢から水が染み出しても植木鉢を置いた床や机や棚などが濡れないように植木鉢の下に水受け皿を置く必要があった。また初心者が植物栽培をしても、根巻現象が発生して植物の成長が妨げられることがあった。これらのことが、家庭で植物栽培を行うときの障害となっていた。
【先行技術文献】
【0003】
そこで、これらの障害を取り除く試みがなされるようになり、例えば、特許文献1には、内側容器を支える外側容器の内部に複数の隆起した形状を設け、容器同士の間にすき間を確保し、植物の根の生長に重要な通気性を高めたこと、水受け用容器兼植木鉢カバーとしての容器と植物を植えつける容器を一体的に組み合わせたことを特徴とする植木鉢が提案されている。
【特許文献1】特開2004−222711
【0004】
また、実用新案文献2には、鉢体構造が、上端側において開口縁で終端する筒状の側壁と、中央部に排水孔を備えた底壁とを有し、それらによって育苗土壌収容室を形成するものであって、側壁と底壁に対し、側壁の上端近傍から底壁の中央部排水孔近傍にかけて連続してのびる複数条のスリットを設けた育苗用ポットが提案されている。
【実用新案文献2】
実開平5−43838
【発明の概要】
【0005】
本発明は、一の栽培容器を輸送または保管用と、栽培及び鑑賞用とに共用すること及びこの容器に植物栽培に必要な、種子、用土などを詰め合わせ、初心者でも手軽に植物栽培が楽しめるキットを提供することを目的とする。
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
先行発明である特許文献1は、過剰な水の散布があった場合でも、外部に水を染み出させない構造に主眼を置いた発明考案であり、実用新案文献2は育成ポット内に構成したスリットにより、植物の根曲がりを矯正することに主眼を置いた発明考案である。従って家庭で植物栽培を楽しむための「手軽さ」という課題は解決されていない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記従来の問題点を解決するため、少なくとも二つに分割でき、一方は植物栽培床となり、他方は商品の輸送や保管時にその栽培床のカバーとして使用し、また栽培が開始されたらその栽培床の保持台となり、組み合わせると一体容器として使用可能な植物栽培容器とその製造方法を提供する。またその植物栽培容器に栽培用土、不織布、種子及び栽培方法を表した書類を詰め合わせた、植物栽培キットを提供することを特徴としている。
【0008】
本発明は前記栽培床を保持台に安定して保持するために、栽培床の頂部と保持台の底部及び栽培床の底部と保持台の頂部とはそれぞれ嵌め合いの関係を成すように構成したことを特徴とする。
【0009】
本発明は前記栽培床を保持台に保持する際に、栽培床の保持角度を自由に変えられるようにしたことを特徴とする。
【0010】
本発明は栽培床の嵌め合い部分には、栽培床の保持角度を自由に変えたとき、安定的にその角度を保持台に維持するための機構を備えたことを特徴とする。
【0011】
本発明は栽培床の下部には余剰水排水口を有し、保持台上部は該余剰水の受け皿となるよう構成したことを特徴とする。
【0012】
本発明は前記栽培容器に、少なくとも栽培用土、不織布、種子及び栽培方法を表した書類を詰め合わせ、初心者でも簡単に栽培出来る植物栽培キットを提供することを特徴とする。
【0013】
本発明の栽培用土には天然植物性有機物を使用し、一般家庭の可燃ゴミとして廃棄出来るようにしたことを特徴とする。
【0014】
本発明は板状のポリプロピレン(PP)など熱可塑性の材料を主成分とした樹脂に熱をかけ軟化させ、保持台型または栽培床型に押さえつけ、樹脂と型の間の空気を吸引し真空に近い状態を作り出し型に樹脂を密着させて、保持台及び栽培床の形状を作り出す真空成形により製造する製造方法を特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の植物栽培容器とその製造方法及び植物栽培キットの第一の効果は、室外はもちろんのこと室内でも手軽に植物栽培を楽しむことの出来るようにした、栽培容器とその製造方法を提供することである。
【0016】
本発明の植物栽培容器とその製造方法及び植物栽培キットの第二の効果は、容器が輸送及び保管用と、栽培及び鑑賞用と共用出来るため、環境負荷を極めて軽くすることが出来ることである。
【0017】
本発明の植物栽培容器とその製造方法及び植物栽培キットの第三の効果は、栽培床を保持台に保持する際に、栽培床の保持角度を自由に変えられるので、植物への日光照射の調整が簡単にでき、鑑賞時には、自由に視野に合わせることが出来ることである。
【0018】
本発明の植物栽培容器とその製造方法及び植物栽培キットの第四の効果は、栽培床の下部に設けた余剰水排水口と、保持台上部に設けた余剰水の受け皿スペースにより、散水の染み出しを防止出来ることである。
【0019】
本発明の植物栽培容器とその製造方法及び植物栽培キットの第五の効果は、栽培用土に天然植物性有機物を使用したことにより、栽培植物の収穫後または枯れた時には、一般家庭の可燃ゴミとして廃棄出来ることである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の植物栽培容器の外観を示す図である。
【0021】
【図2】本発明の植物栽培容器の正面を示す図である。
【0022】
【図3】本発明の植物栽培容器の保持台を示す図である。
【0023】
【図4】本発明の植物栽培容器の栽培床を示す図である。
【0024】
【図5】本発明の植物栽培容器の保持台に栽培床を保持した一実施例を示す図である。
【0025】
【図6】本発明の植物栽培容器の栽培状態の一実施例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に本発明の実施形態を説明する。
【0027】
図1は本発明の一実例のプラスチック成形された半球形の植物栽培容器の本体を示す図である。成形方法として真空成形を採用し、樹脂には板状のポリプロピレン(PP)など熱可塑性の材料を主成分とした樹脂を使用する。具体的には、当該樹脂に熱をかけ軟化させ、それを保持台型または栽培床型に押さえつけ、樹脂と型の間の空気を吸引し真空に近い状態を作り出し型に樹脂を密着させて、厚み0.3mm〜2.0mmの保持台及び栽培床の形状を作り出す。この製法により成形した植物栽培容器11は、ほぼ中央の嵌め合い部で分割でき、上が保持台、下が栽培床となる。輸送または保管時には、この図のように一体容器として使用し、栽培時には分割して下の栽培床を上の保持台に保持する。
【実施例】
【0028】
以下に実施例により本発明を詳細に説明する。図中同じ符号は同一のものを示している。
【0029】
図2は本発明の一実施例でほぼ中央の点線部分で上下二つに分割する例で21は保持台、22は栽培床である。輸送または保管時には、保持台21、栽培床22は嵌合し使用する。栽培時には分割して栽培床22を保持台21に保持出来るように、保持台21の頂部の直径は、栽培床22の底部の直径よりも大きく構成されている。
【0030】
図3は、保持台21のやや詳細を表す図で、31は上面図、32は側面図である。側面図32の点線に示される弧は、栽培床22を保持したときに自由に角度が調整出来るように半球形とするとともに、その中央最下底部34は、栽培床22から余剰水が流れ込んだ際に、受け皿の機能を果たすようにくぼみが設けられている。33は保持台21と、栽培床22の嵌め合い部を示す。
【0031】
図4は、栽培床22のやや詳細を表す図で、41は側面図、42は保持台21と、栽培床22の嵌め合い部、43は栽培床22を保持台21に斜めに保持したときに、その角度を維持するための突起群(5個)を示す。この突起群43が保持台21の頂部の縁に当たるように構成し角度を維持する。44は底面図で、45は散水時の余剰水の排水口である。栽培床の用土が吸収しきれなかった水はこの排水口45から染み出し、保持台21の前記中央最下底部34に一時的に保水される。
【0032】
図5は、保持台21に栽培床22を保持した一実施例を示す図で、この例では栽培床22が右に傾けて保持されている。このとき右側の前記突起群43の(図では隠れている)一が、保持台21の縁に当たり、角度が維持される。このようにして、周囲360度の方向に、6段階の角度で保持台を維持出来ることが容易に理解されよう。
【0033】
図6は、植物栽培キットを用いて、植物を栽培床に栽培し、植物61が成長した状態の一実施例を示す図である。植物栽培キットは、図2の保持台21と、栽培床22を組み合わせた容器により輸送または保管されている。植物栽培キットには、図示はしないが、栽培用土、不織布、種子及び栽培方法を表した書類が詰め合わされている。栽培する場合は、先ず図2の保持台21と、栽培床22を分解し、栽培床22の底部に不織布を敷き、次に栽培用土を(少し残して)入れる。その用土の上に種子を蒔き、残った用土を種子が隠れる程度に蒔く。植物の種類にもよるが、種子の上に蒔く用土の量は種子の厚みの2〜3倍が目安である。この上に水を散布し日に当てれば発芽し植物61のように成長する。図6の例では栽培床22が右に傾けて保持されているが、例えば家族がこの植物を囲んで団欒するときや日照の調整をする時に、周囲360度の方向に6段階の角度で保持台を維持出来ることが大きな利便性を発揮する。
【0034】
以上の実施例では、球形の植物栽培容器について述べたが、外観は球形に限定されるものではなく、多角形、立方形などでも実現出来る。また以上の実施例では、上下二分割の例について述べたが、上下に複数に分割すること、または縦に複数分割する実施例も本発明の意図する内容である。更にまた以上の実施例では分割場所をほぼ上下中央としているが、この位置は中央部に拘るものではない。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明の植物栽培容器及び植物栽培キットにより栽培した野菜、ハーブ類は、そのまま家庭で調理して食することが出来るので、家族の健康の維持とコミュニケーションの活性化の一助として利用出来る。また幼児、児童にとっては日に日に成長する植物を観察することにより、自然に対する不思議さ、新鮮さを、身を持って学ぶツールとして利用出来る。また大人、老人にとっては特別な花壇を用意することなく、身近で花卉を栽培出来ることにより、心に張り合いとなごみが生じる用品として利用出来る。更に会社の受付、家庭の応接間、飲食店のテーブルなどでは、新鮮で愛らしい生きた置物としても利用出来る。更にまた、栽培用土に可燃ゴミとして取り扱える天然植物性有機物を使用していること及び栽培容器のリユース、リサイクルが可能であることから、環境負荷が低い植栽として利用することが出来る。
【符号の説明】
【0036】
11 植物栽培容器
21 保持台
22 栽培床
31 上面図
32 側面図
33 保持台
34 中央最下底部
41 側面図
42 保持台21と、栽培床22の嵌め合い部
43 角度を維持するための突起群
44 低面図
45 余剰水の排水口
61 植物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも二つに分割でき、その一は植物栽培床となり、他は前記栽培床のカバー及びまたは保持台となり、組み合わせると一体容器として使用可能な植物栽培容器。
【請求項2】
栽培床を保持台に安定して保持するために、栽培床の頂部と保持台の底部とは嵌め合いの関係を成すように構成したことを特徴とする、請求項1記載の植物栽培容器。
【請求項3】
栽培床を保持台に安定して保持するために、栽培床の底部と保持台の頂部とは嵌め合いの関係を成すように構成したことを特徴とする、請求項1記載の植物栽培容器。
【請求項4】
栽培床を保持台に保持する際に、栽培床の保持角度を自由に変えられるようにしたことを特徴とする、請求項2記載の植物栽培容器。
【請求項5】
栽培床の嵌め合い部分には、栽培床の保持角度を自由に変えたとき、安定的にその角度を保持台に維持するための機構を備えたことを特徴とする、請求項2記載の植物栽培容器。
【請求項6】
栽培床の下部には余剰水排水口を有し、保持台上部は該余剰水の受け皿となるよう構成したことを特徴とする、請求項2記載の植物栽培容器。
【請求項7】
板状の熱可塑性の樹脂に熱をかけ軟化させ、保持台型または栽培床型に押さえつけ、樹脂と型の間の空気を吸引し真空に近い状態を作り出し型に樹脂を密着させて、保持台及び栽培床の形状を作り出す真空成形により製造する、請求項1から請求項6記載の植物栽培容器の製造方法。
【請求項8】
少なくとも二つに分割でき、その一は植物栽培床となり、他は前記栽培床のカバー及びまたは保持台となり、組み合わせると一体容器として使用可能な植物栽培容器に、少なくとも栽培用土、不織布、種子及び栽培方法を表した書類を詰め合わせたことを特徴とする、植物栽培キット。
【請求項9】
栽培用土には、天然植物性有機物を使用し、可燃ゴミとして廃棄出来るようにしたことを特徴とする、請求項8記載の植物栽培キット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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