説明

植物栽培庫

【課題】円筒容器で形成した植物を栽培するための栽培庫に関し、地中に埋設され、人が作業する空間と栽培棚を設ける空間とを無駄な空間を生じることなく適切に配置することが可能な、設置及び維持管理コストにも優れた栽培庫を得る。
【解決手段】中に人が入って立った姿勢で作業をすることが可能な程度の直径を備えた横置き円筒形の容器を地下に埋設して当該容器内で植物を栽培する。地中に埋設した横置き円筒形の容器1と、その両円弧側壁部分の内側に設けられた植物栽培スペース22と、当該円筒容器の頂部に設けられたハッチ14とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、植物を栽培するための、人が入ることができる大きさを備えた容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
植物の栽培は、屋外で行われるのが通常であるが、天候に影響されないで植物を栽培できるようにするためのビニールハウスが広く用いられている。更に、発光ダイオードなどの低電力消費の光源の普及に伴い、建物内で人口光源を用いて植物を栽培するいわゆる植物工場が注目されるようになっている。植物工場は、外気温の影響を受けないで生育に最適な環境を維持するため、一般的には冷暖房が必要であり、冷暖房に必要なエネルギーコストを節減するため、建物の屋根や壁を断熱構造にすることも重要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
食料の自給率向上や世界的には食料不足の現状、砂漠化の進行、低エネルギー社会の推進などが要望されており、これらの要望に鑑みれば、環境の影響を受けず、低廉で低コストの植物栽培空間を形成することが望まれる。この発明は、このような観点から、設置費用が比較的安価で、外気温や天候に影響されることなく最適な環境で植物を育成することができ、エネルギーコストが低く、耐久性にも優れ、比較的小規模の、例えば育苗空間などに特に好適に利用可能な、植物栽培空間を提供するための技術手段を得ることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この発明は、従来、ガソリンなどの液体を貯蔵するために地下に埋設して用いられている横置き円筒形の容器内で植物を育成することにより、上記課題を解決しようとするものである。この発明の容器は、中に人が入って立った姿勢で作業をすることが可能な程度の直径を備えた横置き円筒形の植物栽培空間を地下に形成することができるものである。
【0005】
すなわち、この出願の請求項1の発明に係る植物栽培庫は、地下に埋設した横置き円筒形の容器1と、その両円弧側壁部分の内側に設けられた栽培棚27と、この栽培棚の各段の天井部分に設けた光源28と、円筒容器1の頂部に設けられたハッチ14とを備え、ハッチ14を地上に開口して円筒容器1の本体部分が地下に埋設されていることを特徴とするものである。円筒容器1は、ハッチ14の開口部を残して全体を地下に埋設するのが好ましいが、その頂部13が地表に現れるように半没状態で埋設しても良い。
【0006】
ハッチ14の開口には、人の出入りの際に開放可能な蓋14aを設ける。この蓋は、換気のために開度調整ができるようにするか、容器内と地表との間を連通するための吸排気ファンを設けた換気筒16、17をハッチとは別に設ける。
【0007】
円筒容器1の周壁及び鏡板は、鉄板の外側にFRPの吹付層を設けた構造とするのが強度及び耐腐食性の点で好適であるが、FRPを強度部材とした構造とすることも可能である。もちろんこの周壁や鏡板は、内外面に塗装層を設けたり、断熱層や地震等により継目に亀裂が入ったときの漏水を防止する漏水防止層を設けた多層構造とすることができる。
【0008】
両円筒壁の内側に栽培棚27を設けることにより、容器本体の中央に当該円筒の長手方向の作業スペースが形成される。このように形成される作業スペースは、出入のための梯子24を設けるのに都合がよく、また両側の栽培棚27が円弧壁面の内側に設けられるため、下方や上方の栽培棚の奥行きが小さく、中間高さの栽培棚の奥行きが深くなり、立ち姿勢又はしゃがんだ姿勢での人の手が届く範囲との関係で、人間工学的に優れた、育苗箱などの出し入れ時の作業性が良い栽培棚を、内部空間を無駄にすることなく形成することができる。
【0009】
地中は、地上の空間に比べて温度変化が小さく、それ自体断熱性に優れているため、植物の栽培空間として好適であり、小容量の冷暖房装置で容器内の植物に最適な環境を維持できる。
【0010】
この発明の植物栽培庫は、畑地や建物の敷地を掘削し、その底面に基礎を設けて工場生産した栽培庫を吊り下ろして設置し、周囲に土を埋め戻すことにより設置する。
【発明の効果】
【0011】
円筒形の容器1は、1枚の板を曲げて胴を形成することができるので、継目が少なくて済み、漏水の防止に有利であるばかりでなく、周方向の圧縮力で土圧に抵抗することができるので、六面体形状の容器に比べて製作が容易かつ軽量にできる。
【0012】
そして、植物栽培庫を横置き円筒形とすることにより、上記効果に加えて、育苗箱などの取り出し時の作業性がよく、かつ内部空間の利用効率に優れている。地中の恒温性及び断熱性を有利に利用することができ、冷暖房に要するエネルギーコストの低減ができると共に、植物の栽培に最適な環境を維持することも容易である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】植物栽培庫の断面側面図
【図2】同断面正面図
【図3】基礎の例を示す正面図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、この発明の実施形態を説明する。図1はこの発明の植物栽培庫の断面側面図、図2は同断面正面図、図3は基礎の一例を示す正面図である。図において、1は栽培庫を形成している円筒容器、3は栽培庫の基礎、4は地表面である。
【0015】
円筒容器1は筒状の胴11の両端を鏡板12で閉鎖した横置き円筒状で、その頂部13の一部に平面矩形の出入口となるハッチ14が設けられている。ハッチ14は周壁15を備え、その上縁15aは、地表面4の上方に位置している。
【0016】
両側の鏡板12の上部には、給気筒16と排気ファン(図示せず)を備えた排気筒17とが接続されている。給気筒16及び排気筒17は、先端開口を下向きにして地上に開口している。この先端開口には、虫などの侵入を防ぐフィルタ(図示せず)が装着されている。
【0017】
胴11、鏡板12及びハッチの周壁15は、内側から鋼板、下塗り塗装層、断熱材層、プラスチックシート層、FRP層及び仕上塗装層からなる多層構造である。FRP層は、ガラス繊維を混入した不飽和ポリエステル樹脂を吹きつけて形成した層で、強度部材となっている鋼板の腐食、特に電食を防止するための層となっている。その下層のプラスチックシートは、FRPを吹付けたときに断熱材層の気泡が埋まって断熱性能が低下するのを防止するために設けたものである。
【0018】
円筒容器1の内部は、胴の中央部に長手方向の作業スペース21が設けられ、その両側の円弧側壁の内側部分及び作業スペース21の両端部が栽培スペース22となっている。作業スペース21には、廊下状に底板23が設けられ、ハッチ14の周壁に上端を着脱自在ないし揺動自在に係止した梯子24が懸架されている。栽培スペース22には、棚枠25が設けられ、この棚枠に棚板26を架け渡すことによって栽培棚27が形成されている。
【0019】
各栽培棚27の天井面には、光合成の光源となる発光ダイオード28が配置されている。発光ダイオードは、発光色の異なるものを混在させて配置してあり、それぞれの発光色毎に当該発光色のダイオード群を点滅するスイッチ(図示せず)が設けられており、栽培する植物の種類や生育の各時期に最適な波長の光を照射できるようにしてある。
【0020】
図3は、円筒容器1を支持するために地中に設けた基礎を示した図である。基礎3は、砕石31を敷いた基盤の上面を円筒容器1の底部周面に対応する円弧面に現場で成形し、その上に敷きモルタル32を敷いて円筒容器1を支持する構造である。
【0021】
植物栽培庫は、植物栽培庫を設置するために地表に掘削した孔の底面に砕石31を敷き、その上面を成形して敷きモルタル32を敷き、その上に円筒容器1を吊り下ろし、孔と円筒容器1との隙間に土を埋め戻すことにより設置される。
【符号の説明】
【0022】
1 円筒容器
14 ハッチ
21 作業スペース
22 栽培スペース
27 栽培棚
28 光源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地下に埋設した横置き円筒形の容器(1)と、その両円弧側壁部分の内側に設けられた栽培棚(27)と、この栽培棚の各段の天井部分に設けた光源(28)と、円筒容器(1)の頂部に設けられたハッチ(14)とを備え、ハッチ(14)を地上に開口して円筒容器(1)の本体部分が地下に埋設されていることを特徴とする、植物栽培庫。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2011−4639(P2011−4639A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−150133(P2009−150133)
【出願日】平成21年6月24日(2009.6.24)
【出願人】(593140956)玉田工業株式会社 (11)
【Fターム(参考)】