説明

植物栽培用の照明パネル

【課題】 消費電力が少なく、しかも湿度が高い環境においても耐久性が高い、植物栽培用の照明パネルを提供する。
【解決手段】 ベース1と、そのベース1に密着した金属薄板製の基板7と、その基板7上に配列された多数の発光ダイオード8と、前記ベース1との間に空間Sをあけて配置されるカバー2と、ベース1とカバー2との間に介在され、前記空間を外部に対して気密に維持するためのシール材とを備えており、前記空間Sに乾燥空気が充填されると共に、枠材3内に乾燥剤5が収容されている植物栽培用の照明パネルA。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は植物栽培用の照明パネルに関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、野菜のハウス栽培などでは、栽培時期を調節して商品価値が高いときに出荷できるようにするため、蛍光灯などの照明を植物に当てて日照時間を延ばすことがある。また、野菜の工場栽培などでは、充分な栽培面積を確保するため、数段の棚に栽培槽を積み上げ、各栽培槽に照明を当てて栽培することが行われている。他方、発光する光の波長が比較的そろっていること、発熱量が比較的少ないことから、発光ダイオード(LED)を多数配列したパネルを植物の栽培用の照明器具として使用することも提案されている(特開平9−275779号公報など参照)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】蛍光灯などの伝統的な照明器具の場合は、消費電力が大きく、そのためその電気代が高くつくほか、発熱量が高いので冷房装置の消費電力も大きくなる。他方、発光ダイオードを用いたパネルの場合は、植物の栽培環境の湿度が高いため劣化しやすく、耐久性が劣る問題がある。本発明は、消費電力が少なく、しかも湿度が高い環境においても耐久性が高い、植物栽培用の照明パネルを提供することを技術課題としている。
【0004】本発明の植物栽培用の照明パネルは、金属製のベースと、そのベース上に配列された多数の発光ダイオードと、前記ベースとの間に空間をあけて配置される透光性のカバーと、ベースとカバーとの間に介在され、前記空間を外部に対して気密に維持するためのシール材とを備えていることを特徴としている。このような照明パネルでは、前記空間を真空状態にするのが好ましい。さらに空間に乾燥空気を充填すると共に、その空間内に乾燥剤を収容するようにしてもよい。また、窒素やアルゴンガスなどの乾燥した不活性ガスを充填するようにしてもよい。さらに不活性ガスを充填した上で、空間内に脱酸素剤および(または)乾燥剤を収容するようにしてもよい。
【0005】
【作用および発明の効果】本発明の照明パネルは、発光ダイオードを光源としているので、蛍光灯などの伝統的な光源に比して、使用電力が少なくて済む。また、発熱量が少ないため、冷房設備の使用電力が少ない。さらに植物の栽培に適した波長の光を多く含み、不適当な波長の光を少なく含む発光ダイオードを選択することにより、植物の生長を助長することができる。
【0006】また、発光ダイオードは、金属製のベースと透光性を有するカバーの間の空間に収容されており、その空間はシール材により気密にされているので、外部から湿気が浸入しない。そのため、発光ダイオードの湿気による劣化が少なく、耐久性が高い。なお空間が密封されていることから、発光に伴う熱が蓄積しがちであるが、発光ダイオードは金属ベース上に配列されているので、発光に伴う発熱はベースを通して外部に放散される。そのため、空間内の熱の蓄積が比較的少ない。
【0007】前記空間内を真空状態にした照明パネルにおいては、外部からの湿気だけでなく、最初から空間内に含まれる湿気もきわめて少ない。そのため、発光ダイオードは湿気による劣化から保護される。さらに空間内の酸素もきわめて少ないため、酸化による劣化も少ない。
【0008】前記空間内に乾燥空気を充填し、さらに空間内に乾燥剤を収容した照明パネルは、発光ダイオードを長期間、湿気による劣化から保護することができる。さらにこのものは、空気を充填ガスとして利用するので、製造が容易である。また、窒素やアルゴンガスなどの不活性ガスを充填した照明パネルでは、発光ダイオードが酸化による劣化から保護される。なお、不活性ガスを充填すると共に、空間内に脱酸素剤や乾燥剤を収容する場合は、一層酸素や湿気から発光ダイオードを保護することができ、耐久性が向上する。
【0009】
【発明の実施の形態】つぎに図面を参照しながら本発明の照明パネルの実施形態を説明する。図1は本発明の照明パネルの一実施形態を示す一部切り欠き斜視図、図2はその照明パネルの要部断面図、図3および図4はそれぞれ本発明の照明パネルの他の実施形態を示す断面図、図5は本発明の照明パネルを使用した栽培棚の一実施形態を示す斜視図である。
【0010】図1および図2に示す照明パネルAは、アルミニウムなどの熱伝導率が高い金属板からなるベース1と、そのベース1と対向するように、間隔Hだけあけて配置されたガラス板製のカバー2とを備えている。ベース1およびカバー2はそれぞれ矩形状であり、両者の間には枠材3が介在されている。枠材3はたとえば金属薄板を断面C字状に折り曲げて角パイプ状にしたものであり、内側に端部同士の合わせ目4がある。枠材3の内部空間はその合わせ目4により、枠材3で囲まれる内側の空間Sと連通している。内部枠材3の内部には、乾燥剤5が充填されている。脱酸素剤を一緒に充填してもよい。なお枠材3は合成樹脂製であってもよい。
【0011】ベース1とカバー2の大きさはとくに限定されず、一辺が10cm程度のものから5m程度のものまで種々の大きさのものを使用しうる。しかし組立や運送の容易さ、および効率のよさから、一辺50cm〜2m程度、とくに1m程度のものが好ましい。ベース1の厚さは0.3〜3mm程度のものが好ましい。カバー2の厚さは1〜5mm程度のものが好ましい。またベース1とカバー2の間隔Hは、パネルの大きさによっても異なるが、3〜20mm程度が好ましく、とくに5〜10mm程度が一層好ましい。
【0012】前記ベース1の内面側には、アルミニウム薄板製などの基板7の表面に多数の発光ダイオード8を配列した発光ユニット9が配列されている。基板7はベース1に対し、熱伝導製が高いように、ロウ付けなどで密着固定されている。基板7には多数の凹部10が形成され、各凹部10に発光ダイオード8を動かないように収容している。この凹部10の内面は、反射面としても機能する。発光ダイオード8の種類はとくに限定されないが、植物の光合成反応にもっとも利用効率が高い、ピーク波長が600nmの赤色光が好ましい。基板7には発光ダイオード8の配線がプリント配線などで直列あるいは並列の配線パターンで形成されている。ただし別個に線をつなぐなどで配線してもよい。各基板7同士の配線は、互いに接続した上で、照明パネルAのコーナー部分などから外部に出し、後述するシーラントなどで密封する。
【0013】ベース1とカバー2の間の空間Sには、乾燥空気が充填されている。枠材3の周囲には、シリコーンシーラントなどのシール材11が充填されて、ベース1とカバー2の間の空間Sを密封している。空間Sに乾燥空気を充填する方法は、たとえばベース1、乾燥剤5入りの枠材3、カバー2などを乾燥室内で組み立てるだけでよい。また、通常の空気であっても、合わせ目4を通した乾燥剤5の作用で自然に乾燥空気となる。枠材3とベース1あるいはカバー2とは、たとえば両面テープなどで仮付けしておき、シール材11を充填することにより、全体を一体化すればよい。
【0014】上記のように構成される照明パネルAは、たとえば図5に示す積層棚21の各棚22の上側に配置し、各棚22に栽培しようとする植物の栽培槽23などを配列する。それにより発光ダイオード8の光が植物に照射され、水分や栄養分の供給、温度管理などと相まって植物の生育を促し、効率的に収穫することができる。その場合、栽培槽23などが配置されている積層棚21を設置した室内は湿度が高い。しかし図2のように、発光ダイオード8はベース1とカバー2の間に密封されており、その内部は乾燥剤5で水分が吸収されるので、湿度がきわめて低い。そのため、発光ダイオード8は湿気による劣化から保護される。また発光ダイオード8は従来の蛍光灯などよりは発熱量が少ないが、ある程度は発光に伴って発熱し、照明パネルA内に熱が蓄積する。しかしベース1の熱伝導製が高いので、熱は効率的に照明パネルAの上面側から外部に放熱される。そのため発光ダイオード8は熱による劣化からも保護される。
【0015】図2の照明パネルAのベース1には、想像線25で示すように、放熱用のフィンを取り付けるようにしてもよい。このフィン25はたとえばアルミニウムなどの熱伝導性が高い金属薄板をC字状に折り曲げたものなどで製造しうる。フィン25には送風機などで空気を送るのが好ましい。
【0016】図3に示す照明パネルBでは、乾燥剤を充填した枠材に代えて、合成樹脂製の枠材26を用いている。したがってカバー2側からベース1側への熱伝導が少ない。さらにこの照明パネルBでは、ベース1の上面に冷却水などの冷媒を通すための配管27を密着配置している。代替フロンなどのフロン系の冷媒やアルコールなどの冷媒を用いてもよく、冷風を配管27内に通すようにしてもよい。また、発光ダイオード8を配置した基板7には凹部を設けず、平坦にしている。そのため、基板7からベース1への熱伝導性が一層高い。このようにカバー2からベース1への熱伝導を少なくし、発光ダイオード8の熱の放散性を高め、冷媒用の配管27を設けて強制的にベース1を冷却することにより、発光ダイオード8の温度管理を一層確実に行うことができる。それにより発光ダイオード8が低温に維持されるので、効率が高くなる。なお図5の棚22をパイプ製とし、そのパイプを利用して冷媒を配管に送ることもできる。またダクトにより冷風を送る空冷式を採用することもできる。
【0017】図4の照明パネルCでは、発光ダイオード8を直接ベース1に取り付けている。また枠材などの、ベース1とカバー2の間に介在する枠材を省略しており、単にシール材11で両者の間隔を維持するようにしている。比較的小型の照明パネルでは、このようにベースや枠材を省略することもできる。
【0018】図1〜4の実施形態では、ベース1とカバー2の間の空間Sに乾燥空気を充填しているが、それに代えて、たとえば窒素ガス、アルゴンガスなどの不活性ガスを充填してもよい。その場合は発光ダイオードの酸化による劣化が低減する。その場合、また、空間Sをたとえば0〜0.3ata 程度の真空状態にしてもよい。その場合は酸素による劣化や湿気による劣化が少なくなるほか、カバー2側からの対流による熱伝導も少なくなる。発光ダイオード8は通常のようにボンディングを含めてエポキシ樹脂などの封止材で封止してもよい。しかし空間Sに窒素ガスなどの不活性ガスを封入したり、真空状態にしている場合は、封止材は不要であり、むしろ合成樹脂の封止材がないほうが発光ダイオード8の耐久性を向上させる場合がある。
【0019】前述の照明パネルA〜Cでは、いずれも下面側にガラス板製のカバー2を採用しているが、アクリル板などの透明な合成樹脂板や、ガラスや合成樹脂板と合成樹脂フィルムの積層体などのカバーを用いることもできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の照明パネルの一実施形態を示す一部切り欠き斜視図である。
【図2】 その照明パネルの要部断面図である。
【図3】 本発明の照明パネルの他の実施形態を示す断面図である。
【図4】 本発明の照明パネルの他の実施形態を示す断面図である。
【図5】 本発明の照明パネルを使用した栽培棚の一実施形態を示す斜視図である。
【符号の説明】
A 照明パネル
1 ベース
2 カバー
3 枠材
5 乾燥剤
7 基板
8 発光ダイオード
9 発光ユニット
10 凹部
11 シール材
H 間隔
S 空間
B 照明パネル
21 積層棚
22 棚
23 栽培槽
26 枠材
27 配管

【特許請求の範囲】
【請求項1】 金属製のベースと、そのベース上に配列された多数の発光ダイオードと、前記ベースとの間に空間をあけて配置される透光性のカバーと、ベースとカバーとの間に介在され、前記空間を外部に対して気密に維持するためのシール材とを備えている植物栽培用の照明パネル。
【請求項2】 前記空間が真空状態にされている請求項1記載の照明パネル。
【請求項3】 前記空間に乾燥空気が充填されると共に、前記空間内に乾燥剤が収容されている請求項1記載の照明パネル。
【請求項4】 前記空間に乾燥した不活性ガスが充填されている請求項1記載の照明パネル。
【請求項5】 前記空間内にさらに脱酸素剤および(または)乾燥剤が収容されている請求項4記載の照明パネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2000−207933(P2000−207933A)
【公開日】平成12年7月28日(2000.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平11−3385
【出願日】平成11年1月8日(1999.1.8)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【出願人】(592102630)コスモプラント株式会社 (3)
【Fターム(参考)】