説明

植物栽培用照明装置

【課題】エネルギー効率の向上、環境への負荷の低減、植物株を成長させる栽培効率の向上、植物に栽培光を照射する照射手段におけるレイアウトの自由度の確保、レイアウト変更毎に光ファイバーを成形しておく手間の低減、および植物の品質低下の回避を同時に実現する植物栽培用照明装置を提供すること。
【解決手段】導光性支線部材120は、複数の植物株P相互の間隔のそれぞれに対応して導光性支線部材120の長手方向に相互に離間して設けられているとともに栽培光L2が複数の植物株Pのそれぞれに照射されるように長手方向に各々斜めに交差する複数の光反射面121を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物栽培トレイ収容棚に配置された植物栽培トレイ上の複数の植物株に栽培光を照射してこれら植物株を成長させる植物栽培用照明装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、植物株に栽培光を照射する照明装置としては、特許文献1に開示された光伝送投光装置がある。
このような光伝送投光装置では、光を伝送する棒状体の表面全体から光を出射することにより、植物株に光を照射している。
また、特許文献2に開示された生物育成用照明装置では、ライン状に延びて固定された照射手段全体から育成対象に光を出射することにより、略均一に育成対象に光を照射している。
また、特許文献3に開示された帯状光源用導光体では、帯状の透明部材に相互に離間して設けられた反射溝によって光を反射することにより、帯状光源用導光体の外部に光を出射している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開H04−179412号公報(請求項1、図4参照。)
【特許文献2】特開H06− 70643号公報(段落[0006]、図1参照。)
【特許文献3】特開2007− 52930号公報(段落[0019]、図1参照。)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された光伝送投光装置では、光を伝送する棒状体の表面全体から光を出射するため、植物株に照射されない光が無駄になって栽培光のエネルギー効率を向上させることが困難になるとともに環境への負荷も大きくなってしまう問題点があった。
また、このような光伝送投光装置では、栽培光が供給されてから植物株に照射するまでの導光経路が固定されてしまうため、植物株が植え込まれた植物栽培トレイの植物株植え込み穴のピッチまたは植物栽培トレイの位置が変更された場合、複数の植物栽培トレイ相互の間隔が変更された場合、あるいは植物株が成長したことによって栽培光の照射範囲を変更する必要が生じた場合に、植物株に正確にかつ集中して栽培光を照射して植物株を成長させる栽培効率の向上を実現することが困難になる問題点があった。
【0005】
また、植物栽培用ラック内のスペースに引き回されて配設された光ファイバーなどの導光手段から植物株に栽培光を照射した場合、引き回しのレイアウトに合わせて光ファイバーを予め成形しておく必要があるため、複数の植物株相互の間隔に対応して光ファイバーのレイアウトを変更するレイアウトの自由度が制限されるとともに、レイアウト変更毎に光ファイバーを成形しておく手間が発生してしまうという問題点があった。
また、植物株が成長してそのサイズが大きくなると植物栽培用ラック内の限られたスペースで植物株が光ファイバーに接触するため、植物株が傷付いてその品質が低下してしまうという問題点があった。
【0006】
また、特許文献2に開示された生物育成用照明装置では、ライン状に延びて固定された照射手段全体から育成対象に光を出射するため、特許文献1に開示された光伝送投光装置と同様にエネルギー効率を向上させることが困難になるなどの問題点があった。
特許文献3に開示された帯状光源用導光体は、この導光体の長手方向に沿って複数個所のそれぞれから指向性が高い照明光を出射する一般的な照明用途として用いられることを目的としているため、後述する本願に係る発明と技術分野が相互に異なるとともに、植物株を栽培する際にエネルギー効率を向上させると同時に効率良く植物株を成長させるなどの課題を示唆する記載がない。
【0007】
そこで、本発明は、従来の問題を解決しようとするものであって、すなわち、本発明の目的は、エネルギー効率の向上、環境への負荷の低減、植物株を成長させる栽培効率の向上、植物株に栽培光を照射する照射手段におけるレイアウトの自由度の確保、レイアウト変更毎に光ファイバーを成形しておく手間の低減、および植物株の品質低下の回避を同時に実現する植物栽培用照明装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
まず、本請求項1に係る発明は、植物栽培用ラックの高さ方向に延設された導光性幹線部材と該導光性幹線部材に着脱自在に連結されているとともに導光性幹線部材によって導かれた栽培光を植物栽培用ラック内の植物栽培トレイ収容棚に配置された植物栽培トレイ上の複数の植物株のそれぞれに照射する導光性支線部材とを備えた植物栽培用照明装置であって、前記導光性支線部材が、前記複数の植物株相互の間隔のそれぞれに対応して導光性支線部材の長手方向に相互に離間して設けられているとともに前記栽培光が複数の植物株のそれぞれに照射されるように前記長手方向に各々斜めに交差する複数の光反射面を有していることにより、前述した課題を解決したものである。
【0009】
そして、本請求項2に係る発明は、請求項1に係る植物栽培用照明装置において、前記植物栽培トレイ収容棚が、前記高さ方向に相互に異なる位置に配設された複数の植物栽培トレイ収容棚段で構成され、前記導光性支線部材が、前記導光性幹線部材に各々連結されて前記植物栽培トレイ収容棚段毎に設けられているとともに該複数の植物栽培トレイ収容棚段のそれぞれの上側から前記光反射面で反射された栽培光を照射する複数の棒状体で構成されていることにより、前述した課題をさらに解決したものである。
【0010】
そして、本請求項3に係る発明は、請求項1または請求項2に係る植物栽培用照明装置において、前記導光性幹線部材に自然光を集光して栽培光として供給する集光手段が付設されていることにより、前述した課題をさらに解決したものである。
【0011】
そして、本請求項4に係る発明は、請求項1または請求項2に係る植物栽培用照明装置において、前記栽培光を供給するように点灯するとともに点灯時間を変更可能な光源手段が、前記導光性幹線部材の入光端に付設されていることにより、前述した課題をさらに解決したものである。
【0012】
そして、本請求項5に係る発明は、請求項4に係る植物栽培用照明装置において、前記光源手段が、相互に異なる波長の光を各々出射する複数の発光体から構成されていることにより、前述した課題をさらに解決したものである。
【0013】
そして、本請求項6に係る発明は、請求項1から請求項4のいずれか一つに係る植物栽培用照明装置において、前記栽培光の波長を選択する波長選択手段が付設されていることにより、前述した課題をさらに解決したものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の請求項1に係る植物栽培用照明装置は、植物栽培用ラックの高さ方向に延設された導光性幹線部材と該導光性幹線部材に着脱自在に連結されているとともに導光性幹線部材によって導かれた栽培光を植物栽培用ラック内の植物栽培トレイ収容棚に配置された植物栽培トレイ上の複数の植物株のそれぞれに照射する導光性支線部材とを備えたことにより、複数の植物株に栽培光を照射してこれら植物株を成長させることができるだけでなく、以下の特有の構成に対応した格別の効果を奏することができる。
【0015】
すなわち、本請求項1に係る植物栽培用照明装置は、導光性支線部材が、複数の植物株相互の間隔のそれぞれに対応して導光性支線部材の長手方向に相互に離間して設けられているとともに栽培光が複数の植物株のそれぞれに照射されるように長手方向に各々斜めに交差する複数の光反射面を有していることにより、栽培光が複数の光反射面で反射されて複数の植物株のそれぞれに正確にかつ集中して照射されるため、栽培光のうち植物株に照射されない無駄な光の割合を減らして栽培光のエネルギー効率を向上させると同時に環境への負荷を低減することができるとともに、植物株を成長させる栽培効率を向上させることができる。
加えて、植物栽培用ラック内に導光性支線部材を引き回してレイアウトしなくても導光性幹線部材に導光性支線部材を連結する連結位置を変更して導光性支線部材が配置されるため、導光性支線部材におけるレイアウトの自由度を確保すると同時に、複数の植物株相互のピッチに応じた間隔で配置された光反射面を有する導光性支線部材が選択され、この選択された導光性支線部材を導光性幹線部材に連結して使用することで確実に栽培光を複数の植物株のそれぞれに正確かつ集中して照射して植物株の栽培効率を向上させることができるとともにレイアウト変更毎に導光性支線部材を成形しておく手間を低減することができ、成長した植物株が導光性支線部材に接触することで生じうる植物株の品質低下を接触をさけるように導光性支線部材を付け替えることで回避することができる。
【0016】
そして、本請求項2に係る植物栽培用照明装置は、請求項1に係る植物栽培用照明装置が奏する効果に加えて、植物栽培トレイ収容棚が、高さ方向に相互に異なる位置に配設された複数の植物栽培トレイ収容棚段で構成され、導光性支線部材が、導光性幹線部材に各々連結されて植物栽培トレイ収容棚段毎に設けられているとともにこの複数の植物栽培トレイ収容棚段のそれぞれの上側から前記光反射面で反射された栽培光を照射する複数の棒状体で構成されていることにより、植物栽培トレイ収容棚が植物栽培用ラック内の高さ方向に相互に異なる位置に配設された複数の植物栽培トレイ収容棚であり、導光性支線部材が導光性幹線部材に各々連結されて複数の植物栽培トレイ収容棚毎に設けられているとともにこの複数の植物栽培トレイ収容棚段のそれぞれの上側から光反射面で反射された栽培光を照射する複数の棒状体で構成されていることにより、複数の植物栽培トレイ収容棚段のそれぞれの高さに合わせて複数の棒状体としての複数の導光性支線部材のそれぞれが導光性幹線部材に連結されて配置されるため、複数の導光性支線部材のそれぞれが植物栽培用ラック内に引き回されることなく配置されて植物栽培用ラック内のスペースを狭めることないと同時に棒状体を成形する際の手間を低減することができるとともに、植物株が棒状体としての導光性支線部材に接触することで生じる植物株の品質低下をより効果的に回避することができる。
【0017】
そして、本請求項3に係る植物栽培用照明装置は、請求項1または請求項2に係る植物栽培用照明装置が奏する効果に加えて、導光性幹線部材に自然光を集光して栽培光として供給する集光手段が付設されていることにより、電力消費を伴う光源から栽培光を取り込む場合に比べて空調を用いないで植物栽培用ラックが収容される栽培室内の温度管理がなされるため、植物栽培用ラックが配置される栽培室の空調設備を稼動する際に必要となるエネルギー消費を無くしてエネルギー効率を向上させることができるとともに環境への負荷を低減することができる。
【0018】
そして、本請求項4に係る植物栽培用照明装置は、請求項1または請求項2に係る植物栽培用照明装置が奏する効果に加えて、栽培光を供給するように点灯するとともに点灯時間を変更可能な光源手段が導光性幹線部材の入光端に付設されていることにより、植物株の成長度合いに合わせて適切な光量で栽培光が照射されるため、複数の植物株を効率良く成長させて栽培効率を向上させることができるとともに植物株の成長速度を調節して適切な時期に高品質の植物を出荷することができる。
【0019】
そして、本請求項5に係る植物栽培用照明装置は、請求項4に係る植物栽培用照明装置が奏する効果に加えて、光源手段が、相互に異なる波長の光を各々出射する複数の発光体から構成されていることにより、植物株の成長度合いに合わせて適切な波長の栽培光が植物株に照射されるため、植物株の品質低下を回避することができるとともに植物株の成長に有害な細菌などを消滅させてより一層植物の品質低下をより効果的に回避することができる。
【0020】
そして、本請求項6に係る植物栽培用照明装置は、請求項1から請求項4に係る植物栽培用照明装置が奏する効果に加えて、前記栽培光の波長を選択する波長選択手段が付設されていることにより、自然光また複数の波長の光が混在した光源光からなる栽培光から植物株の成長に応じた適切な波長の栽培光が選択されて照射されるため、植物株の品質低下をより効果的に回避することができるとともに植物株の成長に有害な細菌などを消滅させてより一層効果的に植物の品質低下を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1実施例に係る植物栽培用照明装置が配置された植物栽培用ラックの斜視図。
【図2】本発明の第1実施例に係る植物栽培用照明装置が配置された植物栽培用ラックの正面図。
【図3】本発明の第1実施例に係る植物栽培用照明装置が配置された植物栽培用ラックの一部を拡大した拡大図。
【図4】本発明の第2実施例に係る植物栽培用照明装置が配置された植物栽培用ラックの正面図。
【図5】本発明の第2実施例に係る植物栽培用照明装置が配置された植物栽培用ラックの一部を拡大した拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明は、植物栽培用ラックの高さ方向に延設された導光性幹線部材とこの導光性幹線部材に着脱自在に連結されているとともに導光性幹線部材によって導かれた栽培光を植物栽培用ラック内の植物栽培トレイ収容棚に配置された植物栽培トレイ上の複数の植物株のそれぞれに照射する導光性支線部材とを備えた植物栽培用照明装置であって、導光性支線部材が、複数の植物株相互の間隔のそれぞれに対応して導光性支線部材の長手方向に相互に離間して設けられているとともに栽培光が複数の植物株のそれぞれに照射されるように長手方向に各々斜めに交差する複数の光反射面を有していることにより、栽培光のうち植物株に照射されない無駄な光の割合を減らして栽培光のエネルギー効率を向上させると同時に環境への負荷を低減するとともに植物株を成長させる栽培効率を向上させ、さらに導光性支線部材におけるレイアウトの自由度を確保すると同時に複数の植物株相互のピッチに応じた間隔で配置された光反射面を有する導光性支線部材を選択して導光性幹線部材に連結することで確実に栽培光を複数の植物株のそれぞれに正確にかつ集中して照射するとともにレイアウト変更毎に導光性支線部材を成形しておく手間を低減し、成長した植物株が導光性支線部材に接触することで生じうる植物の品質低下を回避するものであれば、その具体的な実施の態様は、如何なるものであっても何ら構わない。
なお、本発明の植物栽培用照明装置に波長選択手段を設ける場合には、波長選択手段を導光性幹線部材に栽培光を供給する入光端、または栽培光を反射する光反射面の光出射側のいずれに設けてもよい。
また、導光性支線部材は、導光性を有していれば如何なる具体的な断面形状であってもよく、たとえば、円形断面状のもの、三角形断面あるいは四角形断面などの多角形状のものであってもよい。
また、導光性支線部材の断面形状が、円形状であってもよいし、三角形あるいは四角形などの矩形状であってもよい。
また、光反射面は、導光性支線部材に設けられて光反射する面であればよく、たとえば、導光性支線部材に形成された溝状のもの、穴状のものなどであってもよい。
【実施例】
【0023】
[第1実施例]
まず、本発明の第1実施例に係る植物栽培用照明装置100を図1乃至図3に基づいて説明する。
ここで、図1は、本発明の第1実施例に係る植物栽培用照明装置が配置された植物栽培用ラックの斜視図であり、図2は、本発明の第1実施例に係る植物栽培用照明装置が配置された植物栽培用ラックの正面図であり、図3は、本発明の第1実施例に係る植物栽培用照明装置が配置された植物栽培用ラックの一部を拡大した拡大図である。
【0024】
すなわち、本発明の第1実施例に係る植物栽培用照明装置100は、図1乃至図3に示すように、植物栽培用ラックRの高さ方向に延設された導光性幹線部材110と、導光性幹線部材110に着脱自在に連結されているとともに導光性幹線部材110によって導かれた栽培光L1を植物栽培用ラックR内の複数の植物栽培トレイ収容棚段Sに配置された植物栽培トレイT上の複数の植物株Pのそれぞれに照射する導光性支線部材120を備えたことにより、複数の植物株Pに栽培光L2を照射してこれら植物株Pを成長させるようになっている。
【0025】
ここで、前述した本第1実施例の植物栽培用照明装置100が最も特徴とする導光性支線部120の具体的な形態について、図1乃至図3により詳しく説明する。
すなわち、前述した導光性支線部材120は、複数の植物株P相互の間隔のそれぞれに対応して導光性支線部材120の長手方向に相互に離間して設けられているとともに栽培光L2が複数の植物株Pのそれぞれに照射されるように長手方向に各々斜めに交差する複数の光反射面121を有している。
【0026】
これにより、栽培光L1が複数の光反射面121で反射されて複数の植物株Pのそれぞれに正確にかつ集中して栽培光L2が照射されるため、植物栽培用照明装置100が、栽培光L1のうち植物株に照射されない無駄な光の割合を減らして栽培光L1のエネルギー効率を向上させると同時に環境への負荷を低減するようになっているとともに、植物株Pを成長させる栽培効率を向上させるようになっている。
【0027】
加えて、植物栽培用ラックR内に導光性支線部材120を引き回してレイアウトしなくても導光性幹線部材110に導光性支線部材120を連結する連結位置を変更して導光性支線部材120が配置されるため、植物栽培用照明装置100が、導光性支線部材120におけるレイアウトの自由度を確保すると同時に、複数の植物株P相互のピッチに応じた間隔で配置された光反射面121を有する導光性支線部材120を選択し、この選択された導光性支線部材120を導光性幹線部材110に連結して使用することで複数の植物株Pのそれぞれに正確にかつ集中して栽培光L2を照射するようになっているとともに、レイアウト変更毎に導光性支線部材120を成形しておく手間を低減し、成長した植物株Pが導光性支線部材120に接触することで生じうる植物株Pの品質低下を接触を避けるように導光性支線部材120を付け替えることで回避するようになっている。
【0028】
また、植物栽培トレイ収容棚段Sが植物栽培用ラックR内の高さ方向に相互に異なる位置に複数配設されて植物栽培トレイ収容棚を構成し、導光性支線部材120が導光性幹線部材110にそれぞれに連結されて複数の植物栽培トレイ収容棚段S毎に設けられているとともにこの複数の植物栽培トレイ収容棚段Sのそれぞれの上側から光反射面121で反射された栽培光L2をそれぞれ照射する複数の棒状体で構成されていることにより、複数の植物栽培トレイ収容棚段Sのそれぞれの高さに合わせて複数の導光性支線部材120のそれぞれが導光性幹線部材110に連結されて配置されるため、複数の導光性支線部材120のそれぞれが植物栽培用ラックR内に引き回されることなく配置されて植物栽培用ラックR内のスペースを狭めることがないと同時に導光性支線部材120を成形する際の手間を低減するようになっているとともに、植物栽培用照明装置100が、植物株Pが導光性支線部材120に接触することで生じる植物株Pの品質低下をより効果的に回避するようになっている。
また、植物栽培用ラックRは、複数の植物栽培トレイ収容棚段S相互の間隔を変更する変更機構、植物株Pの成長に応じてあるいは栽培の進捗に応じて植物栽培トレイTを上下に移動させる機能、および各植物栽培トレイ収容棚段Sにおける植物栽培トレイTの位置変更機能を有しているため、植物栽培トレイTなどの変更に応じて栽培光L2の照射範囲を変更する必要が生じる場合があるが、そのような場合でも、複数の植物株P相互の間隔および植物株Pのサイズに応じて複数の光反射面121相互の間隔が設定された適切な導光性支線部材120が選択されるとともに導光性幹線部材110に着脱自在に付け替えられることによって、植物栽培用照明装置100は、複数の植物株Pのそれぞれに確実にかつ集中して栽培光L2を照射して栽培光L2のエネルギー効率を向上させるとともに複数の植物株Pを効率良く成長させるようになっている。
【0029】
また、植物栽培用照明装置100に、自然光を集光して栽培光L1として導光性幹線部材110に供給する集光手段の一例である集光ミラー130が付設されていることにより、電力消費を伴う光源から栽培光L1を取り込む場合に比べて空調を用いないで植物栽培用ラックRが収容される栽培室内の温度管理がなされるため、植物栽培用照明装置100が、植物栽培用ラックRが配置される栽培室の空調設備を稼動する際に必要となるエネルギー消費を無くしてエネルギー効率を向上させるとともに環境への負荷を低減するようになっている。
【0030】
また、植物栽培用照明装置100に、栽培光L2の波長を選択する波長選択手段の一例である波長選択フィルタ140が付設されていることにより、複数の波長の光が混在した自然光からなる栽培光L1が反射されてなる栽培光L2から植物株Pの成長に応じた、または有害な細菌などを消滅させる適切な波長の栽培光L2が選択されて照射されるため、植物栽培用照明装置100が、植物株Pの品質低下をより効果的に回避するとともに植物株Pの成長に有害な細菌などを消滅させてより一層効果的に植物株Pの品質低下を回避するようになっている。
【0031】
このようにして得られた本実施例の植物栽培用照明装置100は、複数の植物株P相互の間隔のそれぞれに対応して導光性支線部材120の長手方向に相互に離間して設けられているとともに栽培光L2が複数の植物株Pのそれぞれに照射されるように長手方向に各々斜めに交差する複数の光反射面121を有していることにより、栽培光L1のうち植物株Pに照射されない無駄な光の割合を減らして栽培光L1のエネルギー効率を向上させると同時に環境への負荷を低減することができるとともに、植物株Pを成長させる栽培効率を向上させ、導光性支線部材120におけるレイアウトの自由度を確保することができると同時に、複数の植物株P相互のピッチに応じた間隔で配置された光反射面121を有する導光性支線部材120が選択され、この選択された導光性支線部材120を導光性幹線部材110に連結して使用することで確実にかつ集中して栽培光L2を複数の植物株Pのそれぞれに照射することができるとともに、レイアウト変更毎に導光性支線部材120を成形しておく手間を低減することができ、成長した植物株Pが導光性支線部材120に接触することで生じうる植物株Pの品質低下を回避することができるなど、その効果は甚大である。
【0032】
[第2実施例]
次に、本発明の第2実施例に係る植物栽培用照明装置を図4および図5に基づいて説明する。
ここで、図4は、本発明の第2実施例に係る植物栽培用照明装置が配置された植物栽培用ラックの正面図であり、図5は、本発明の第2実施例に係る植物栽培用照明装置が配置された植物栽培用ラックの一部を拡大した拡大図である。
なお、以下で説明する第2実施例に係る植物栽培用照明装置200では、前述した第1実施例の植物栽培用照明装置100と比較すると、光源手段の一例である光源ランプ250を備えている点で具体的な形態が異なっているだけであり、その余の構成については第1実施例の植物栽培用照明装置100と全く同じであるため、これらの具体的な説明を符号100番代の数字を200番台に読み替えることによって省略する。
【0033】
図4および図5に示すように、第2実施例に係る植物栽培用照明装置200は、導光性幹線部材210に栽培光L3を供給するように点灯するとともに点灯時間を変更可能な光源手段の一例である光源ランプ250が、導光性幹線部材210の入光端に付設備されている。
これにより、植物株Pの成長度合いに合わせて適切な光量で栽培光L4が照射されるため、植物栽培用照明装置200は、複数の植物株Pを効率良く成長させることができるとともに植物株Pの成長速度を調節して適切な時期に高品質の植物を出荷するようになっている。
【0034】
また、植物栽培用照明装置200が、光源ランプ250が相互に異なる波長の光を各々出射する複数の発光体で構成されていることにより、植物株Pの成長度合いに合わせて複数の発光体の点灯を切り替えて適切な波長の栽培光L3が出射されると同時にこの栽培光L3を反射してなる栽培光L4が植物株Pに照射されるため、植物栽培用照明装置200が、植物株Pの品質低下を回避するとともに植物株Pの成長に有害な細菌などを消滅させて植物の品質低下をより一層効果的に回避するようになっている。
加えて、本実施例に係る植物栽培用照明装置200では、波長選択フィルタ240が設けられていることにより、複数の波長の光が混在した反射光L4から植物株Pの成長度合いに合わせて、または植物株Pの成長に有害な細菌などを消滅させる紫外線などの適切な波長の反射光L4が選択されて植物株Pに照射されてもよく、植物株Pの品質低下をより効果的に回避するとともに植物株Pの成長に有害な細菌などを消滅させてより一層効果的に植物株Pの品質低下を回避するようになっている。
【0035】
以上説明したように、第1実施例および第2実施例に係る植物栽培用照明装置100および200は、複数の植物株P相互の間隔のそれぞれに対応して導光性支線部材120および220の長手方向に相互に離間して設けられているとともに栽培光L2およびL4が複数の植物株Pのそれぞれに照射されるように長手方向に各々斜めに交差する複数の光反射面121および221を有していることにより、栽培光L1およびL3が複数の光反射面121および221で反射されて複数の植物株Pのそれぞれに正確にかつ集中して栽培光L2およびL4が照射されるため、植物栽培用照明装置100および200が、栽培光L1およびL3のうち植物株Pに照射されない無駄な光の割合を減らして栽培光L1およびL3のエネルギー効率を向上させると同時に環境への負荷を低減することができるとともに、植物株Pを成長させる栽培効率を向上させることができるなど、その効果は甚大である。
【符号の説明】
【0036】
100、200 ・・・ 植物栽培用照明装置
110、210 ・・・ 導光性幹線部材
120、220 ・・・ 導光性支線部材
121、221 ・・・ 光反射面
130 ・・・ 集光ミラー
140、240 ・・・ 波長選択フィルタ
250 ・・・ 光源ランプ
L1、L2、L3、L4 ・・・ 栽培光
P ・・・植物株
R ・・・植物栽培用ラック
S ・・・ 植物栽培トレイ収容棚段
T ・・・ 植物栽培トレイ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物栽培用ラックの高さ方向に延設された導光性幹線部材と該導光性幹線部材に着脱自在に連結されているとともに導光性幹線部材によって導かれた栽培光を植物栽培用ラック内の植物栽培トレイ収容棚に配置された植物栽培トレイ上の複数の植物株のそれぞれに照射する導光性支線部材とを備えた植物栽培用照明装置であって、
前記導光性支線部材が、前記複数の植物株相互の間隔のそれぞれに対応して導光性支線部材の長手方向に相互に離間して設けられているとともに前記栽培光が複数の植物株のそれぞれに照射されるように前記長手方向に各々斜めに交差する複数の光反射面を有していることを特徴とする植物栽培用照明装置。
【請求項2】
前記植物栽培トレイ収容棚が、前記高さ方向に相互に異なる位置に配設された複数の植物栽培トレイ収容棚段で構成され、
前記導光性支線部材が、前記導光性幹線部材に各々連結されて前記植物栽培トレイ収容棚段毎に設けられているとともに該複数の植物栽培トレイ収容棚段のそれぞれの上側から前記光反射面で反射された栽培光を照射する複数の棒状体で構成されていることを特徴とする請求項1に記載の植物栽培用照明装置。
【請求項3】
前記導光性幹線部材に自然光を集光して栽培光として供給する集光手段が付設されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の植物栽培用照明装置。
【請求項4】
前記栽培光を供給するように点灯するとともに点灯時間を変更可能な光源手段が、前記導光性幹線部材の入光端に付設されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の植物栽培用照明装置。
【請求項5】
前記光源手段が、相互に異なる波長の光を各々出射する複数の発光体から構成されていることを特徴とする請求項4記載の植物栽培用照明装置。
【請求項6】
前記栽培光の波長を選択する波長選択手段が付設されていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一つに記載の植物栽培用照明装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−188772(P2011−188772A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−56399(P2010−56399)
【出願日】平成22年3月12日(2010.3.12)
【出願人】(000003355)株式会社椿本チエイン (861)
【Fターム(参考)】