説明

植物栽培装置及び栽培方法

【課題】養水の殺菌に要するエネルギーを低減し、効率良く植物を栽培できるようにする。
【解決手段】植物栽培装置は、植物を養液栽培するための栽培槽(101)と、栽培槽(101)に養水を循環供給する養水供給部(102)とを備えている。養水供給部(102)は、養水殺菌部(103)を有し、養水殺菌部(103)は、殺菌槽(103B)、殺菌槽(103B)内において水中ストリーマ放電を発生させる放電ユニット(103A)、放電ユニット(103A)に直流電圧を供給する直流電源(103C)及び殺菌槽(103B)内の養水を加温する加温ユニット(103D)を有している。放電ユニット(103A)は、放電電極(131)と、放電電極(131)を収容し、開口を有する絶縁容器(133)と、開口と対向する位置に配置された対向電極(135)とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物栽培装置及び栽培方法に関し、特に養水の殺菌に水中ストリーマ放電を用いる植物栽培装置及び栽培方法に関する。
【背景技術】
【0002】
固形培地や水中に根系を形成させ、液肥と希釈水とを所定比率で混合した培養液(養水)により生育に必要な栄養成分を与えて、土壌を用いることなく作物などの植物を栽培する養液栽培が注目を集めている。養液栽培では、植物の生育環境を制御しているため、生産物の品質を一定に保つことができる。また、土壌を用いないため連作障害を生じさせることなく連作することが可能となる。しかし、養液栽培において一旦病害が発生すると、均一な環境であるため短時間のうちに急速に拡大し栽培植物が全滅するおそれがある。このため、病害の発生防止が非常に重要である。
【0003】
養液栽培において病害を予防する方法として、養水を加熱殺菌することが検討されている(例えば、特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−211769号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記従来の養水を加熱殺菌する養液栽培方法は、加熱のために膨大なエネルギーを必要とするという問題を有している。また、一般的な加熱殺菌では養水を80℃以上の高温にする必要があり、殺菌後の養水を十分に冷却しなければならない。養水の冷却には電力を必要としたり、複雑な機構を必要としたりする。
【0006】
本発明は、前記の問題を解決し、養水の殺菌に要するエネルギーを低減し、エネルギー効率が高い植物栽培装置及び栽培方法を実現できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の目的を達成するため、例示の植物栽培装置は、養水供給部に水中ストリーマ放電を発生させる放電ユニットと養水を加温する加温ユニットとを有する養水殺菌部が設けられている。
【0008】
本発明に係る植物栽培装置は、植物を養液栽培するための栽培槽(101)と、栽培槽(101)に養水を循環供給する養水供給部(102)とを備え、養水供給部(102)は、養水殺菌部(103)を有し、養水殺菌部(103)は、殺菌槽(103B)、殺菌槽(103B)内において水中ストリーマ放電を発生させる放電ユニット(103A)、放電ユニット(103A)に直流電圧を供給する直流電源(103C)及び殺菌槽(103B)内の養水を加温する加温ユニット(103D)を有し、放電ユニット(103A)は、放電電極(131)と、放電電極(131)を収容し、開口を有する絶縁容器(133)と、開口と対向する位置に配置された対向電極(135)とを有している。
【0009】
本発明の植物栽培装置は、養水殺菌部(103)が殺菌槽(103B)内において水中ストリーマ放電を発生させる放電ユニット(103A)を有している。水中ストリーマ放電を発生させることにより、過酸化水素を容易に供給することができる。過酸化水素(H)は、殺菌作用を有するだけでなくオゾン等と比べて植物にとって安全で且つ廃棄が容易である等の利点を有している。また、養水を加温する加温ユニット(103D)を有しており、過酸化水素を含む養水を加温することにより殺菌の効率をさらに向上させることができる。加熱により養水を殺菌する場合と比べ養水の温度を高くする必要がないため、養水の殺菌に要するエネルギーを低減できる。また、養水の温度を低く抑えることができるため、殺菌後の養水を冷却するために要するエネルギーも節約できる。
【0010】
本発明の植物栽培装置において、加温ユニット(103D)は、太陽熱温水パネルを用いても、空調機の廃熱を用いてもよい。このような構成とすることにより、植物栽培装置のエネルギー効率をさらに向上させることができる。
【0011】
本発明の植物栽培装置において、養水殺菌部(103)は、ヒーターを用いた補助加温ユニット(103E)を有していてもよい。
【0012】
本発明に係る植物栽培装置において、養水供給部(102)は、養水殺菌部(103)と栽培槽(101)との間の経路に設けられた養水冷却部(104)を有していてもよい。
【0013】
本発明に係る植物栽培方法は、養水中において水中ストリーマ放電を発生させることにより、養水中に過酸化水素を供給すると共に、過酸化水素を供給した養水を加温することにより、養水を殺菌するステップと、植物を養液栽培する栽培槽に殺菌した養水を供給するステップとを有し、水中ストリーマ放電は、放電電極(131)と、放電電極(131)を収容し、開口を有する絶縁容器(133)と、開口と対向する位置に配置された対向電極(135)とを有する放電ユニット(103A)を用い、放電電極(131)と対向電極(135)との間に直流電圧を印加することにより発生させる。
【0014】
本発明の植物栽培方法において、過酸化水素水を供給した養水の加温は、太陽熱又は空調機の廃熱により行えばよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る植物栽培装置及び栽培方法によれば、養水の殺菌に要するエネルギーを低減し、効率良く植物を栽培できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】一実施形態に係る植物栽培装置を示す図である。
【図2】加温ユニットの一例を示す図である。
【図3】加温ユニットの一例を示す図である。
【図4】一実施形態に係る植物栽培装置の変形例を示す図である。
【図5】養水殺菌部を拡大して示す断面図である。
【図6】放電ユニットの絶縁容器を示す斜視図である。
【図7】放電ユニットへの電圧の印加により気泡が発生した状態を示す断面図である。
【図8】放電ユニットの第1変形例を示す断面図である。
【図9】放電ユニットの第1変形例における絶縁容器を示す斜視図である。
【図10】放電ユニットの第2変形例を示す断面図である。
【図11】放電ユニットの第2変形例において電圧の印加により気泡が発生した状態を示す断面図である。
【図12】放電ユニットの第3変形例における絶縁容器の蓋体を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1に示すように、本実施形態に係る植物栽培装置は、植物を養液栽培するための栽培槽101と、栽培槽101に養水を循環供給する養水供給部102とを備えている。養水供給部102は、養水を殺菌する養水殺菌部103を有している。栽培槽101には、養水殺菌部103により殺菌された養水が養水冷却部104を介して供給される。
【0018】
栽培槽101は、植物を栽培するための栽培槽である。植物の栽培方法は、培地等を用いる固形培地栽培であってもロックウール等からなるマットを用いる水耕栽培であってもよい。また、土壌を用いる養液土耕等であってもよい。
【0019】
養水殺菌部103は、殺菌槽103Bと、殺菌槽103Bの内部に配置され、殺菌槽103B内の養水中において水中ストリーマ放電を発生させる放電ユニット103Aと、放電ユニット103Aに直流電圧を供給する直流電源103Cと、殺菌槽103B内の養水を加温する加温ユニット103Dとを有している。
【0020】
殺菌槽103Bは、養水を貯水し且つ殺菌するための容器であり、空気中の雑菌及びゴミ等が侵入しにくい容器とすることが好ましい。放電ユニット103Aにより養水中において水中ストリーマ放電を発生させることにより、過酸化水素(H)が発生し、養水中に供給される。通常、養水を殺菌するためには、養水を80℃以上に加熱する必要がある。しかし、養水中にHが含まれている場合には、40℃〜50℃程度に加温すれば十分な殺菌効果が得られる。従って、加温ユニット103Dに容量が大きいヒーター等を用いる必要がない。例えば、図2に示すように太陽熱温水パネル181を用い、養水を太陽熱により加温すればよい。また、太陽熱温水パネル181により生成された温水を熱源として養水を加温してもよい。太陽熱等の自然エネルギーを用いることにより、環境に配慮した植物栽培装置とすることができる。また、図3に示すように空調機182等の廃熱を熱源として用いて養水を加温してもよい。植物を養液栽培する場合には、栽培温度を一定とするために、栽培を行う栽培室内に空調機等を設けることが行われる。この場合には、栽培室内の室温調整をする空調機の廃熱を用いればよい。また、太陽熱温水パネルによる加温及び空調機の廃熱による加温の両方を用いる構成としてもよい。
【0021】
自然エネルギー又は空調機の廃熱等を用いる場合には、季節によって熱源の容量が不足することも考えられる。この場合には、図4に示すようにヒーター等を用いた補助加温ユニット103Eを併用してもよい。
【0022】
本実施形態においては、養水の加温温度は40℃〜50℃程度で十分である。このため、養水殺菌部103から栽培槽101に養水を供給する際に、大がかりな冷却機構を設ける必要がなく、空冷式又は水冷式の簡易な熱交換機からなる養水冷却部104を設ければ十分である。条件によっては配管による自然冷却だけで十分である。一方、供給する養水の温度を一定に管理するために、養水冷却部104を正確な温度制御ができる構成としてもよい。
【0023】
以下に、本実施形態の放電ユニット103Aについてさらに詳細に説明する。図5は、養水殺菌部103の一部を拡大して示している。図5において加温ユニット103Dの記載は省略している。図5に示すように放電ユニット103Aは、放電電極131と、放電電極131を収容する絶縁容器133と、絶縁容器133を挟んで放電電極131と対向する位置に配置された対向電極135とを有している。放電電極131は偏平な板状であり、絶縁容器133の底部142に配置されている。放電電極131はステンレス又は銅等の導電性の金属材料とすればよい。絶縁容器133は、容器本体133Aと蓋体133Bとを有している。蓋体133Bは開口133aを有している。開口133aは直径が0.02mm〜0.5mm程度である。対向電極135は、偏平な板状であり、複数の貫通孔135aを有している。対向電極135は、開口133aを挟んで放電電極131と対向するように、絶縁容器133と間隔をおいて配置されている。また、放電電極131と対向電極135とは、略平行となるように配置されていることが好ましい。対向電極135は、ステンレス又は真鍮等の導電性の金属材料とすればよい。対向電極135は、金属板に貫通孔が形成されたパンチングメタル形状だけでなく、ワイヤー等により形成されたメッシュ形状であってもよい。
【0024】
放電電極131と対向電極135との間に直流電源103Cから直流電圧を印加することにより、放電電極131から対向電極135に向かってストリーマ放電が発生する。直流電源103Cは、放電電極131と対向電極135との間に瞬間的な高電圧を繰り返し印加するパルス電源ではなく、放電電極131と対向電極135との間に常に数キロボルトの直流電圧を印加する。直流電源105を用いてストリーマ放電を発生させるため、パルス電源等を用いる場合に比べて、電源部を簡素化することができ、コスト及びサイズを低減することができる。また、直流電源105を用いることによりパルス電源等を用いてストリーマ放電を発生させる場合と比べて、衝撃波及び騒音の発生を低減できるという利点も得られる。直流電源103Cの正極は放電電極131と接続され、負極は接地されている。また、直流電源103Cは、放電電極131と対向電極135との間の放電電力を一定に制御する定電力制御部(図示せず)を有している。
【0025】
放電電極131を収容する絶縁容器133は、例えばセラミックス等の絶縁材料により形成されている。絶縁容器133は、一面(上面)が開放された容器本体133Aと、容器本体133Aの開放部を閉塞する板状の蓋体133Bとを有している。容器本体133Aは、角型筒状の側壁部141と、側壁部141の底面を閉塞する底部142とを有している。放電電極131は、底部142の上に配置されている。側壁部141の高さは、放電電極131の厚さよりも厚く、放電電極131と蓋体133Bとの間には、空間Sが形成されている。空間Sには、養水を満たすことができる。
【0026】
図5及び図6に示すように、蓋体133Bは、開口133aを有している。開口133aにより、放電電極131と対向電極135との間に電界が形成される。開口133aの内径は、0.02mm以上且つ0.5mm以下であることが好ましい。放電電極131が絶縁容器133の内部に収容され、対向電極135が絶縁容器133の外部に配置され、放電電極131と対向電極135との間に開口133aが形成されている。このため、放電電極131と対向電極135との間を流れる電流は、開口133aに狭窄され、放電電極131と対向電極135との間の電流経路における電流密度を上昇させることができる。また、開口133aにおいて、電流密度が上昇することにより、ジュール熱が発生し、絶縁容器133内の養水を気化させ気泡を発生させることができる。このように、絶縁容器133は、電流狭窄部及び気相形成部として機能する。
【0027】
以下に、放電ユニット103Aの動作を説明する。放電ユニット103Aに直流電圧が供給されていない場合には、図5に示すように絶縁容器133の内部の空間Sが養水で満たされた状態となっている。放電電極131と対向電極135との間に所定の直流電圧(例えば1kV)を印加すると、放電電極131と対向電極135との間に電界が形成される。放電電極131は、絶縁容器133に覆われているため、放電電極131から対向電極135への電流は、開口133aに狭窄され、開口133aにおける電流密度が高くなる。
【0028】
直流電源105から放電ユニット103Aへ電圧を供給すると、放電電極131と対向電極135との間に流れる電流によって、養水の温度が上昇する。特に、開口133aの部分において電流密度が高くなるため、発生するジュール熱も大きくなる。このため、開口133aの近傍において、気泡Bの発生が盛んになり、図7に示すように気泡Bが開口133aのほぼ全域を覆う状態となる。これにより、放電電極131と対向電極135との間には、気泡Bと養水とが介在した状態となり、気泡Bは放電電極131と対向電極135との間の養水を介した導通を阻止する抵抗となる。従って、放電電極131と対向電極135との間の漏れ電流が抑制され、放電電極131と対向電極135との間に、所望の電位差が保たれるようになる。その結果、気泡B内において絶縁破壊に伴うストリーマ放電が発生する。
【0029】
ストリーマ放電の発生に伴い、Hが発生し、殺菌槽103B中の養水がHを含む状態となる。発生したHは、ストリーマ放電に伴う熱によって殺菌槽103B内を対流する。また、放電ユニット103Aにおいて発生する気泡Bの動きによっても水の対流が発生する。これにより、殺菌槽103B内におけるHの拡散が促進される。Hにより養水が殺菌されるが、Hが含まれた養水を加温ユニット103Dにより40℃〜50℃程度に加温することにより、殺菌槽103B内の養水をさらに効果的に殺菌できる。
【0030】
なお、開口133aは図8及び図9に示すように複数形成されていてもよい。図9においては、開口133aが正方格子状に配置されている例を示しているが、長方格子状、三角格子状又は六方格子状等に配置されていてもよい。また、規則的に配置されていなくてもよい。但し、各開口133aを流れる電流を均一にするためには、開口133aが等間隔に配置されていることが好ましい。また、放電電極131は全ての開口133aに跨るように配置されていることが好ましい。
【0031】
また、図10に示すように放電電極131、絶縁容器133及び対向電極135が一体に形成されたフランジユニット状の放電ユニット103Aを用いてもよい。フランジユニット状の放電ユニット103Aは、殺菌槽103Bの外側から内部に向かって挿入して固定すればよい。
【0032】
放電ユニット103Aは、大略の外形が円筒状に形成された絶縁容器133を有している。絶縁容器133は、容器本体133Aと蓋体133Bとを有している。容器本体133Aは、ガラス又は樹脂等の絶縁材料からなる。容器本体133Aは、円筒状の基部151と、基部151から殺菌槽103B側に突出した筒状壁部152と、筒状壁部152の外縁部からさらに殺菌槽103B側に突出する環状凸部153と、環状凸部153からさらに栽培槽101側に突出した先端筒部154とを有している。基部151の軸心部には、円柱状の挿入口151aが軸方向に貫通形成されている。筒状壁部152の内側には、挿入口151aと同軸となり、且つ挿入口151aよりも径が大きい円柱状の空間Sが形成されている。蓋体133Bは、略円板状に形成されて環状凸部153の内側に嵌合している。蓋体133Bは、セラミックス材料等からなる。蓋体133Bの軸心には、円形状の開口133aが形成されている。
【0033】
放電電極131は、軸直角断面が円形状となる縦長の棒状の電極である。放電電極131は、基部151の挿入口151aに嵌合している。これにより、放電電極131は、絶縁容器133の内部に収容されている。放電電極131における殺菌槽103Bとは反対側の端部は、殺菌槽103Bの外部に露出した状態となる。このため、殺菌槽103Bの外部に配置される直流電源103Cと、放電電極131とを電気配線によって容易に接続することができる。
【0034】
放電電極131における殺菌槽103B側の端部131aは、絶縁容器133の内部の空間Sに臨んでいる。なお、図10に示す例では、放電電極131の端部131aが、挿入口151aの開口面よりも殺菌槽103B側に突出しているが、端部131aの先端面が挿入口151aの開口面と略面一となった構成としてもよい。また、端部131aが挿入口151aの開口面よりも陥没した構成としてもよい。放電電極131の端部131aと蓋体133Bとの間には、所定の間隔が確保されている。
【0035】
対向電極135は、円筒状の電極本体161と、電極本体161から径方向外方へ突出する鍔部162とを有している。電極本体161は、絶縁容器133の容器本体133Aに外嵌している。鍔部162は、殺菌槽103Bの壁部に固定されて放電ユニット103Aを保持する固定部として機能する。電極本体161の殺菌槽103B側に突出した部分が水中に位置するように、放電ユニット103Aは殺菌槽103Bに固定されている。
【0036】
対向電極135は、電極本体161よりも径が小さい内側筒部163と、内側筒部163と電極本体161との間に亘って形成される連接部164とを有している。内側筒部163及び連接部164は、水中に水没した状態となっている。内側筒部163は、その内部に円柱空間167を有している。内側筒部163の軸方向の一端は、蓋体133Bと当接しており、蓋体133Bを保持する保持部として機能する。内側筒部163、連接部164及び電極本体161により形成された空間を先端筒部154が埋めるように形成されている。内側筒部163の軸方向の他端の側には、円柱空間167を覆うようにメッシュ状の漏電防止材168が設けられている。この漏電防止材168は、対向電極135と接触しており、実質的に接地されている。これにより、漏電防止材168は、殺菌槽103Bの内部の空間において、円柱空間167の内側から外側への漏電を防止している。
【0037】
対向電極135は、電極本体161の一部が殺菌槽103Bの外部に露出された状態となる。このため、直流電源103Cと対向電極135とを電気配線によって容易に接続することができる。
【0038】
放電ユニット103Aに直流電圧が供給されていない場合には、図10に示すように絶縁容器133の内部の空間Sが養水で満たされた状態となっている。放電電極131と対向電極135との間に所定の直流電圧(例えば1kV)を印加すると、空間Sの内部及び開口133aの内部において、ジュール熱により気泡が発生する。
【0039】
放電ユニット103Aへの電圧の供給をさらに続けると、図11に示すように開口133aに形成される気泡Bが安定し、気泡Bが開口133aのほぼ全体を覆う状態となる。これにより、円柱空間167内の養水と、放電電極131との間に気泡Bによる抵抗が付与される。従って、放電電極131と対向電極135との間の電位差が保たれ、気泡Bによりストリーマ放電が発生する。ストリーマ放電により、Hが発生し、殺菌槽103B中の養水にはHが含まれた状態となる。Hを含む養水を加温ユニット103Dにより40℃〜50℃程度に加温することにより、殺菌槽103B内の養水が殺菌される。
【0040】
なお、図12に示すように開口133aを複数形成してもよい。図12に示す例では、蓋体133Bの軸心を中心とする仮想ピッチ円上に、5つの開口133aが等間隔で配置されている。蓋体133Bに複数の開口133aを形成することにより、それぞれの開口133aの近傍においてストリーマ放電を生じされることができる。
【0041】
直流電源103Cに、ストリーマ放電の放電電力を一定に制御する定電力制御部設ける例を示したが、定電力制御部に代えて、ストリーマ放電時の放電電流を一定に制御する定電流制御部を設けてもよい。定電流制御を行うことにより、養水の導電率によらず放電が安定するため、スパークの発生も未然に回避できる。
【0042】
また、放電電極131に直流電源103Cの正極を接続し、対向電極135に直流電源103Cの負極を接続する例を示したが、放電電極131に正極を接続し対向電極135に正極を接続し、いわゆるマイナス放電を行うようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明に係る植物栽培装置及び栽培方法は、養水の殺菌に要するエネルギーを低減し、植物栽培におけるエネルギー効率を向上でき、植物栽培装置及び栽培方法等として有用である。
【符号の説明】
【0044】
101 栽培槽
102 養水供給部
103 養水殺菌部
103A 放電ユニット
103B 殺菌槽
103C 直流電源
103D 加温ユニット
103E 補助加温ユニット
104 養水冷却部
105 直流電源
131 放電電極
131a 端部
133 絶縁容器
133A 容器本体
133B 蓋体
133a 開口
135 対向電極
135a 貫通孔
141 側壁部
142 底部
151 基部
151a 挿入口
152 筒状壁部
153 環状凸部
154 先端筒部
161 電極本体
162 鍔部
163 内側筒部
164 連接部
167 円柱空間
168 漏電防止材
181 太陽熱温水パネル
182 空調機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物を養液栽培するための栽培槽(101)と、
前記栽培槽(101)に養水を循環供給する養水供給部(102)とを備え、
前記養水供給部(102)は、養水殺菌部(103)を有し、
前記養水殺菌部(103)は、殺菌槽(103B)、該殺菌槽(103B)内において水中ストリーマ放電を発生させる放電ユニット(103A)、該放電ユニット(103A)に直流電圧を供給する直流電源(103C)及び殺菌槽(103B)内の養水を加温する加温ユニット(103D)を有し、
前記放電ユニット(103A)は、放電電極(131)と、該放電電極(131)を収容し、開口を有する絶縁容器(133)と、前記開口と対向する位置に配置された対向電極(135)とを有していることを特徴とする植物栽培装置。
【請求項2】
前記加温ユニット(103D)は、太陽熱温水パネルを用いることを特徴とする請求項1に記載の植物栽培装置。
【請求項3】
前記加温ユニット(103D)は、空調機の廃熱を用いることを特徴とする請求項1又は2に記載の植物栽培装置。
【請求項4】
前記養水殺菌部(103)は、ヒーターを用いた補助加温ユニット(103E)を有していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の植物栽培装置。
【請求項5】
前記養水供給部(102)は、前記養水殺菌部(103)と前記栽培槽(101)との間の経路に設けられた養水冷却部(104)を有していることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の植物栽培装置。
【請求項6】
養水中において水中ストリーマ放電を発生させることにより、前記養水中に過酸化水素を供給すると共に、前記過酸化水素を供給した養水を加温することにより、前記養水を殺菌するステップと、
殺菌した前記養水を植物を養液栽培する栽培槽に供給するステップとを有し、
前記水中ストリーマ放電は、放電電極(131)と、該放電電極(131)を収容し、開口を有する絶縁容器(133)と、前記開口と対向する位置に配置された対向電極(135)とを有する放電ユニット(103A)を用い、前記放電電極(131)と前記対向電極(135)との間に直流電圧を印加することにより発生させることを特徴とする植物栽培方法。
【請求項7】
前記過酸化水素水を供給した養水の加温は、太陽熱又は空調機の廃熱により行うことを特徴とする請求項6に記載の植物栽培方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−70715(P2012−70715A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−220127(P2010−220127)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】