説明

植物水耕栽培装置

【課題】簡単な構造で取り扱いが容易であり、任意の間隔に調整することが可能で、栽培地の数を容易に変更でき、個々の栽培地を独立して取り扱うことができる植物水耕栽培装置を提供すること。
【解決手段】水平方向に配置される複数の栽培地110の水平方向の間隔を調整する調整機構を有する植物水耕栽培装置において、栽培地110が隣接する栽培地110と対向する面に磁極を有し、磁極間の磁力によって間隔を調整するものであること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水平方向に配置される複数の栽培地と、該栽培地の水平方向の間隔を調整する調整機構を有する植物水耕栽培装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、水平方向に植物を栽培する複数の栽培地を配置して、日照、潅水、施肥などの作業を行い、植物の成長に対応して栽培地の水平方向の間隔を調整する調整機構を有する植物水耕栽培装置が知られている。
【0003】
公知の植物水耕栽培装置500は、例えば図5、図6に示すように、植物Sを生育する複数の栽培地510が水平方向に配置されている。
各栽培地510は、折りたたみ式のフィルム520によって連結されており、植物Sの成長に応じて、折りたたみ式のフィルム520が完全にたたまれた状態から最大に伸長した状態の間で、間隔を調整するように構成されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平03−5361号公報のマイクロフィルム(第7頁乃至第10頁、図1乃至図7)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、公知の植物水耕栽培装置500は、複数の栽培地510が折りたたみ式のフィルム520によって連結されているため、完全にたたまれた状態と最大に伸長した状態でのみ等間隔となるもので、任意の間隔に調整することが困難であった。
【0006】
また、折りたたみ式のフィルム520が伸縮を繰り返すため、多くのメンテナンス作業が必須であり、複数の栽培地510が連結されているため、製造やメンテナンスの際に容易に取り扱うことができないという問題があった。
さらに、連結された複数の栽培地510の数を変更したり、個々の栽培地510を独立して取り扱うことができないという問題があった。
【0007】
本発明は、前述したような従来技術の問題を解決するものであって、すなわち、本発明の目的は、簡単な構造で取り扱いが容易であり、任意の間隔に調整することが可能で、栽培地の数を容易に変更でき、個々の栽培地を独立して取り扱うことができる植物水耕栽培装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本請求項1に係る発明は、水平方向に配置される複数の栽培地と、該栽培地の水平方向の間隔を調整する調整機構を有する植物水耕栽培装置において、前記栽培地が、隣接する栽培地と対向する面に磁極を有し、前記調整機構が、磁極間の磁力によって間隔を調整するものであることにより、前記課題を解決するものである。
【0009】
本請求項2に係る発明は、請求項1に記載された植物水耕栽培装置の構成に加えて、前記栽培地が、磁石を着脱可能なポケットを有し、前記調節機構が、前記磁石の磁極方向を変更あるいは磁力の異なる磁石に変更して前記ポケットに着脱することにより調節するものであることにより、前記課題をさらに解決するものである。
【0010】
本請求項3に係る発明は、請求項2に記載された植物水耕栽培装置の構成に加えて、前記磁石を着脱可能なポケットが、多数設けられ、前記調節機構が、前記ポケットに着脱される磁石の磁極方向を個別に変更し、複数の磁石の引力および斥力の総和として磁力を変化させるものであることにより、前記課題をさらに解決するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の植物水耕栽培装置は、水平方向に配置される複数の栽培地と、該栽培地の水平方向の間隔を調整する調整機構を有することにより、植物の成長に対応して栽培地の水平方向の間隔を調整することができるため、植物の成長開始時における栽培面積を小さくして、不要な部分への日照、潅水、施肥などの作業を行う必要をなくして省エネルギー化を図ることができるとともに、以下のような格別の効果を奏することができる。
【0012】
すなわち、本請求項1に係る発明の植物水耕栽培装置は、栽培地が隣接する栽培地と対向する面に磁極を有し、調整機構が磁極間の磁力によって間隔を調整するものであることによって、間隔の調整を行うための機械的な構造を必要としないため、簡単な構造とすることができ、取り扱いが容易であるとともに、複数の栽培地の数を容易に変更したり個々の栽培地を独立して取り扱うことができ、調整できる範囲が大きく、かつ、容易に任意の間隔に調整することができる。
【0013】
本請求項2に係る発明の植物水耕栽培装置は、請求項1に係る植物水耕栽培装置が奏する効果に加えて、栽培地が磁石を着脱可能なポケットを有し、調節機構が磁石の磁極方向を変更あるいは磁力の異なる磁石に変更してポケットに着脱することにより調節するものであることにより、さらに簡単な構造とすることができ、容易に任意の間隔に調整することができる。
【0014】
本請求項3に係る発明の植物水耕栽培装置は、請求項2に係る植物水耕栽培装置が奏する効果に加えて、磁石を着脱可能なポケットが多数設けられ、調節機構がポケットに着脱される磁石の磁極方向を個別に変更し、複数の磁石の引力および斥力の総和として磁力を変化させるものであることにより、さらに調整できる範囲が大きく、かつ、任意の間隔に容易に調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施例である植物水耕栽培装置の平面図。
【図2】本発明の一実施例である植物水耕栽培装置の断面図。
【図3】図1の植物水耕栽培装置の植物成長時の平面図。
【図4】図2の植物水耕栽培装置の植物成長時の断面図。
【図5】本発明の他の実施例である植物水耕栽培装置の平面図。
【図6】従来の植物水耕栽培装置の断面図。
【図7】従来の植物水耕栽培装置の植物成長時の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の植物水耕栽培装置は、水平方向に配置される複数の栽培地と、該栽培地の水平方向の間隔を調整する調整機構を有する植物水耕栽培装置において、前記栽培地が、隣接する栽培地と対向する面に磁極を有し、前記調整機構が、磁極間の磁力によって間隔を調整するものであり、簡単な構造で取り扱いが容易であり、任意の間隔に調整することが可能で、栽培地の数を容易に変更でき、個々の栽培地を独立して取り扱うことができるものであれば、その具体的な実施態様は如何なるものであっても何ら構わない。
【0017】
すなわち、本発明の植物水耕栽培装置は、野菜、穀物、果実、観賞用植物等のいかなる植物を栽培するものであっても良く、種、苗等のいかなる状態から生育を開始するもののでも良く、いかなる状態で生育を完了するものであっても良い。
また、本発明の植物水耕栽培装置は、ビニールハウスや建物等の屋内、屋外のいずれに設置されるものであっても良く、日照、潅水、施肥等はいかなる方法で行われるものであっても良く、特に、肥料成分を含んだ培養水に複数の栽培地を浮上させ、人工照明により栽培するものが好適である。
【実施例1】
【0018】
以下に、本発明の実施例である植物水耕栽培装置について図面に基づいて説明する。
本発明の第1実施例である植物水耕栽培装置100は、図1に示すように、植物Sを一列に栽培可能な複数の栽培地110が、培養槽130に入れられた培養水に浮上して平行に整列するように構成されている。
【0019】
栽培地110は、発泡樹脂等の軽量の材料で構成されており、隣接する栽培地110との対向面に磁石112を収納可能な複数のポケット111が設けられ、長手方向両端部には、それぞれ側方磁石113が設けられている。
なお、隣接する栽培地110の対向面が直接接触しないように、長手方向両端部の対向面側にストッパ114を設けても良い。
また、ポケット111の形状は、上部のみ開口した穴形状のものでも、対向面部が開口して磁石を保持可能な凹部形状のものでも良い。
【0020】
培養槽130は、栽培地110の長手方向それぞれ両端部に対向して側方枠131が設けられ、複数の栽培地110の並ぶ方向の前後に前枠132及び後枠135が設けられている。
それぞれの側方枠131には側方ガイド磁石133が設けられ、栽培地110の長手方向両端部に設けられた側方磁石113にとの間に斥力を発生して栽培地110の長手方向位置を規定している。
【0021】
また、前枠132及び後枠135には前後規制磁石134が、栽培地110の磁石112を収納可能な複数のポケット111と対向する位置に設けられ、栽培地110の磁石112との間に引力または斥力を発生して複数の栽培地110の並ぶ方向の端の栽培地110の位置を規定している。
【0022】
前枠132及び後枠135には栽培地110の対向面が直接接触しないように、対向面側にストッパ136を設けても良い。
磁石112、側方磁石113、側方ガイド磁石133、前後規制磁石134は、それぞれ、平面の表裏で極が異なるように構成されている(図面上、対向面側の極に応じて異なるハッチングで表わしている)。
【0023】
次に以上のように構成された本発明の第1実施例である植物水耕栽培装置100の動作について、図1乃至図4に基づいて説明する。
植物Sの生育初期段階では、図1に示すように、隣接する栽培地110でそれぞれ栽培されている植物S同士の干渉はないため、複数の栽培地110(a〜g)のそれぞれのポケット111に磁石112をすべて対向する極が引力(図面中○印で示す。)を発生する向きに収容することで、最も間隔が狭い状態に保たれている。
【0024】
複数の栽培地110(a〜g)の長手方向位置は、栽培地110の長手方向両端部に設けられた側方磁石113と側方枠131に設けられた側方ガイド磁石133との間の斥力により、一定位置に固定される。
【0025】
また、複数の栽培地110(a〜g)の前後方向の位置は、一方の端部の栽培地110aの前枠132と対向する面のそれぞれのポケット111に磁石112をすべて前枠132の前後規制磁石134と引力を発生する向きに収容することで、栽培地110aが前枠132に最接近した状態で固定される。
【0026】
このとき、例えば図2に示すように、上部に照明装置140を備えて日照を人工的に発生させる場合、複数の照明灯141、142のうち複数の栽培地110(a〜g)の上部に位置する照明灯141のみを点灯させることにより、省エネルギー化を図ることができる。
【0027】
隣接する栽培地110でそれぞれ栽培されている植物S同士が干渉するまで成長すると、図3に示すように、一つおきの栽培地110のポケット111に収容された磁石112の極性を反転させることで、複数の栽培地110(a〜g)の隣接するすべての対向面の磁石112の間で同じ大きさの斥力(図面中×印で示す。)が生じる。
【0028】
また、他方の端部の栽培地110gの後枠135と対向する面のそれぞれのポケット111に、磁石112を後枠135の前後規制磁石134と引力を発生する向きに収容することで、栽培地110gと後枠135とが最接近する状態で位置が規制され、複数の栽培地110(a〜g)は間隔を広げるとともに、すべての栽培地110(a〜g)が等間隔となる状態で固定される。
このとき、図4に示すように、複数の照明灯141、142の全てを点灯させることにより、すべての植物Sに均等に日照を与えることができる。
【0029】
なお、複数の栽培地110(a〜g)の間隔を最大に保持する際の規制構造として、後枠135を設けることに代えて、両端の栽培地110aと栽培地110gをワイヤー等で連結しても良い。
【実施例2】
【0030】
本発明の第2実施例である植物水耕栽培装置200は、図5に示すように、植物Sを一列に栽培可能な複数の栽培地210が、培養槽230に入れられた培養水に浮上して平行に整列するように構成されている。
【0031】
栽培地210は、発泡樹脂等の軽量の材料で構成されており、隣接する栽培地210との対向面に磁石212を収納可能な複数のポケット211が設けられ、長手方向両端部には、それぞれ側方磁石213が設けられている。
なお、隣接する栽培地210の対向面が直接接触しないように、長手方向両端部の対向面側にストッパ214を設けても良い。
【0032】
培養槽230は、栽培地210の長手方向それぞれ両端部に対向して側方枠231が設けられ、複数の栽培地210の並ぶ方向の前後に前枠232及び後枠235が設けられている。
それぞれの側方枠231には側方ガイド磁石233が設けられ、栽培地210の長手方向両端部に設けられた側方磁石213にとの間に斥力を発生して栽培地210の長手方向位置を規定している。
【0033】
また、前枠232及び後枠235には栽培地210の対向面が直接接触しないように、対向面側にストッパ236を設けても良い。
なお、磁石212、側方磁石213、側方ガイド磁石233は、それぞれ、平面の表裏で極が異なるように構成されている(図面上、対向面側の極に応じて異なるハッチングで表わしている)。
【0034】
栽培地210a、210b、210cのそれぞれの対向面における磁石212の磁極の向きは、図5に示すように、すべて引力が作用する側に向けられており、栽培地210d、は、手前の栽培地210cとの対向面における磁石212の磁極の向きが、8か所の内の両端4か所を引力が作用する側、それ以外の4か所を斥力が作用する側に向けられている。
栽培地210e、210fは、それぞれ手前の栽培地210d、210eとの対向面における磁石212の磁極の向きが、8か所の内の両端2か所を引力が作用する側、それ以外の6か所を斥力が作用する側に向けられている。
【0035】
そして、栽培地210g、210hは、それぞれ手前の栽培地210f、210gとの対向面における磁石212の磁極の向きが、8か所すべて斥力が作用する側に向けられている。
さらに、最も外側の栽培地210aと栽培地210hの両外側は、ストッパ236によって位置が規定されている。
【0036】
次に以上のように構成された本発明の第2実施例である植物水耕栽培装置200の動作について説明する。
植物Sは生育開始時に最初に培養槽230の外で栽培地210に播種あるいは幼苗の状態でセットされた後、初期位置の栽培地210aとして培養槽230に導入される。
【0037】
上述した、それぞれの対向面の引力および斥力の総和の差により、生育初期段階の栽培地210a、210b、210cは最近接位置、栽培地210c、210dは狭い間隔、栽培地210d、210d、210fは中間の間隔、栽培地210f、210g、210hは広い間隔にそれぞれ保持される。
【0038】
栽培地210hは植物Sの生育を終える完了位置であり、植物Sの収穫のため栽培地210hが培養槽230から外部に搬出され、同時に新たな栽培地210が初期位置に導入される。
このとき、すべての栽培地210が完了位置側に移動し、それぞれの磁石212の磁極の向きを変更することによって、複数の栽培地210の間隔が調整される。
これらの動作を、植物Sの生育速度に合わせて行うことで、連続的に植物Sの栽培と収穫を行いながら、生育によっても隣接する栽培地210(a〜h)の植物S同士が干渉しない間隔に保つことができる。
【0039】
以上説明したように、本発明によれば、植物の成長開始時における栽培面積を小さくして、不要な部分への日照、潅水、施肥などの作業を行う必要をなくして省エネルギー化を図ることができるとともに、簡単な構造で取り扱いが容易であり、複数の栽培地の数を容易に変更したり個々の栽培地を独立して取り扱うことができ、調整できる範囲が大きく、かつ、容易に任意の間隔に調整することができる植物水耕栽培装置を提供することができる。
【0040】
なお、上記実施例では、栽培地110、210の長手方向位置は、栽培地110、210の長手方向両端部に設けられた側方磁石113、213と側方枠131、231に設けられた側方ガイド磁石133、233との間の斥力により規定しているが、側方枠131、231と栽培地110、210の長手方向両端部の間隔を、隣り合う栽培地110、210の磁極位置が大きくずれない程度に狭くすることで、側方磁石113、213と側方ガイド磁石133、233を省略して直接ガイドしても良い。
【0041】
また、側方磁石113、213と側方ガイド磁石133、233を省略して直接ガイドする場合は、栽培地110、210の長手方向位置ずれを防止するため、側方枠131、231にレール等のガイド部材を設け、栽培地110、210が直接ガイド部材に係合して摺動、あるいは栽培地110、210にローラ等を設けてガイド部材を転動する等、機械的に長手方向位置を規定しても良く、さらに、ガイド部材に機械的に支持可能として
栽培地110、210を空中に位置させ、培養水を散水、噴霧等により供給するものとしても良い。
【符号の説明】
【0042】
100、200、500 ・・・植物栽培装置
110、210、510 ・・・栽培地
111、211 ・・・ポケット
112、212 ・・・磁石
113、213 ・・・側方磁石
114、214 ・・・ストッパ
520 ・・・フィルム
130、230 ・・・培養槽
131、231 ・・・側方枠
132 ・・・前枠
133、233 ・・・側方ガイド磁石
134 ・・・前後規制磁石
135、235 ・・・後枠
136、236 ・・・ストッパ
140 ・・・照明装置
141 ・・・照明灯
142 ・・・照明灯
S ・・・植物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平方向に配置される複数の栽培地と、該栽培地の水平方向の間隔を調整する調整機構を有する植物水耕栽培装置において、
前記栽培地が、隣接する栽培地と対向する面に磁極を有し、
前記調整機構が、磁極間の磁力によって間隔を調整するものであることを特徴とする植物水耕栽培装置。
【請求項2】
前記栽培地が、磁石を着脱可能なポケットを有し、
前記調節機構が、前記磁石の磁極方向を変更あるいは磁力の異なる磁石に変更して前記ポケットに着脱することにより調節するものであることを特徴とする請求項1に記載の植物水耕栽培装置。
【請求項3】
前記磁石を着脱可能なポケットが、多数設けられ、
前記調節機構が、前記ポケットに着脱される磁石の磁極方向を個別に変更し、複数の磁石の引力および斥力の総和として磁力を変化させるものであることを特徴とする請求項2に記載の植物水耕栽培装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2010−279326(P2010−279326A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−137220(P2009−137220)
【出願日】平成21年6月8日(2009.6.8)
【出願人】(000003355)株式会社椿本チエイン (861)
【Fターム(参考)】