説明

植物用結束シート

【課題】十分な接着力を有し、耐久性に優れ、作業効率が良好で、生分解などの環境に優しい、植物用結束テープ、及びその植物用結束テープを用いた植物の支柱等への固定化方法を提供する。
【解決手段】植物を支柱に固定するシート1であって、該シート1の少なくとも片面に、熱接着樹脂2が塗布又は積層されていることを特徴とする植物用結束シート1、及び該植物用結束シート1を用いて、植物と支柱とを巻き込んだ後、熱接着樹脂2塗布面同士を重ねて、熱板を押し付けて熱接着し、植物を支柱に固定することを特徴とする植物の固定化方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物のつるや茎等を支柱等に固定する植物用結束シートに関するものであり、詳しくは、ブドウ、キウイ等の果樹のつるや、キュウリ、トマト、ナスなどの野菜類の茎を支柱等に結束するための、熱接着性を有する植物用結束シート、及び該シートを用いて植物を支柱に固定化する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
果樹農家や、キュウリ、トマト、ナス等を生産する野菜農家等においては、毎年新しく発生する果樹のつるを、風や自重により枝が折れたり傷つくことを防ぐため、枝止め作業として棚のポールや支柱、ワイヤー等に随時結束して固定する必要があった。また、キュウリ、トマト、ナス等の野菜類も、茎の成長にしたがって、随時その茎を支柱等に結束して固定する必要があった。
一般的に使用されたビニールテープや、金属製のステップルにおいて、その処分は、収穫後廃棄されるキュウリ、ナス、トマト等の枯れ茎や、つる果樹の剪定等により出る枝葉とともに、焼却処分あるいは堆肥化されることが多く、環境への問題が懸念されている。
また、従来、結束テープとしては、例えば特許文献1に開示の如く、粘着材を塗布した結束用粘着テープが使用されていた。しかしながら、接着力が弱く、野ざらし状態での接着耐久性に問題があり、また機械化が難しいという問題もあった。また、接着力を高めるために、粘着材の塗布量を多くしなければならず、コスト、取り扱い性、廃物の環境への影響が懸念されている。
さらに、結束テープとして、ホッチキスなどの金属製の固定具を用いる方法も存在するが、廃物の環境への影響が懸念されている。
従って、結束テープとして、十分な接着力、耐久性、環境への影響などをクリアーした結束テープの提供が強く望まれている。
【0003】
【特許文献1】特公昭62−045273号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、十分な接着力を有し、耐久性に優れ、作業効率が良好で、生分解などの環境に優しい、植物用結束テープ、即ちシート、及びその植物用結束シートを用いた植物の支柱等への固定化方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記課題を解決する為に鋭意検討した結果、セルロース繊維を特定量含有し、熱接着性を付与した結束シートを用いることで、十分な接着力を有し、耐久性に優れ、作業効率が良好で、生分解などの環境に優しい、植物用結束シート、及びその植物用結束シートを用いた植物の支柱等への固定化方法を提供することを見出し本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は以下の通りのものである。
(1)植物を支柱に固定するシートであって、該シートの少なくとも片面に、熱接着樹脂が塗布または積層されていることを特徴とする植物用結束シート。
(2)前記シートがセルロース繊維を50wt%以上含有することを特徴とする上記(1)に記載の植物用結束シート。
(3)前記熱接着性樹脂が粒子状であり、3〜20g/m塗布されていることを特徴とする上記(1)または(2)に記載の植物用結束シート。
(4)前記シートが、紙又はセルロース繊維不織布であり、破断強度が3N/50mm以
上であることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載の植物用結束シート。
(5)上記(1)〜(4)のいずれかに記載の植物用結束シートを用いて、植物と支柱とを巻き込んだ後、熱接着樹脂塗布面同士を重ねて、熱板を押し付けて熱接着し、植物を支柱に固定することを特徴とする植物の固定化方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、セルロース繊維を特定量含有し、熱接着性を付与したシートを植物用結束イーとを用いることで、十分な接着力を有し、耐久性に優れ、作業効率が良好で、生分解などの環境に優しい、植物用結束シート、及びその植物用結束シートを用いた植物の支柱等への固定化方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明は、植物のつるや茎等と、支柱等を固定するシートからなる結束シートに関するものであり、ブドウ、キウイ等の果樹のつるや、キュウリ、トマト、ナス等野菜類の茎を支柱等に結束するための、熱接着性を有する植物用結束シート、及びその植物用結束シートを用いた植物の支柱等への固定化方法に関するものである。
本発明のシートは、セルロース繊維を50wt%以上含有することが好ましく、より好ましくは70wt%以上、特に好ましくは100wt%のものである。セルロース繊維が、この範囲で含有されていると、生分解性、吸水性に優れるものとなる。
セルロース繊維としては、天然セルロース繊維、パルプ、再生セルロース繊維、精製セルロース繊維などが挙げられる。吸水性、柔軟性の点から再生セルロース繊維、精製セルロース繊維が好ましい。
【0008】
本発明のシートは、好ましくは、紙又はセルロース繊維不織布であり、破断強度が3N/50mm以上であるものが好ましい。
セルロース繊維不織布とは、パルプ、綿、キュプラ、ビスコースレーヨン、ポリノジックレーヨン等の再生セルロース系繊維、ライオセル(LYOCELL;例えば繊維学会誌(繊維と工業)Vol.48,No.11(1992)P.584〜P.591に記載されているコートルズ社の商品名テンセルが相当する。)等から選択される一種又は二種以上の繊維からなる不織布であり、スパンレース、スパンボンド法等の公知の製法によって製造された不織布をいう。
【0009】
セルロース繊維不織布シートの均一性、取り扱い性、生分解、強度の観点から、再生セルロース長繊維不織布が好ましく、旭化成せんい社製ベンリーゼ(商品名)が挙げられる。
セルロース繊維不織布シートの目付としては、10〜60g/mであり、好ましくは15〜50g/mの範囲がよく、この範囲であると、適度な強度と、熱接着性樹脂の保持性が良好であり好ましい。
不織布シートを構成する繊維の繊維径は、1〜30μmが好ましく、より好ましくは、3〜15μmの範囲であり、この範囲であると、柔軟であり、取り扱い性に優れ、適度な強度と、熱接着性樹脂の保持性が良好である。
本発明のシートは、その少なくとも片面に熱接着樹脂を塗布または積層したものであり、シートの両面に塗布したものでもよい。
【0010】
熱接着樹脂の塗布方法としては、特に限定されるものでなく、各種公知の方法が利用でき、樹脂を溶融させたものをグラビアロールで転写する方法や、溶融された樹脂をフィルム状に押し出し、固化する前にシートに接着させる押し出しラミネーション方法、樹脂を溶融させ、ノズルから繊維状に吹き付け接着させる方法、あるいは粒子状の接着樹脂を散布した後、熱プレスする方法等によりヒートシール性を付与することができる。
積層方法としては、本発明に用いられるシートと熱接着性樹脂フィルムや熱接着性不織
布を熱圧着や接着剤等で積層する方法等によりヒートシール性が付与できる。
但し、生分解性の観点から、全面に熱接着剤を付与するより、散在させる方が良く、繊維状や粒子状の樹脂を付与することが好ましい。
また熱接着性の保持の観点から、両面ヒートシール性を有するシートでも良いが熱圧着時に熱面に融着物がつく恐れがあり、片面であることが好ましい。
熱接着樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレンのポリオレフィン系樹脂、ナイロン6などのポリアミド系樹脂、エチレンビニルアルコール系樹脂が挙げられるが、低融点のポリオレフィン系樹脂が好ましく用いられる。
【0011】
例えば、粒子状の接着樹脂を散布、熱圧着することでヒートシール性を付与する場合においては、散布される粒子状接着樹脂の粒子径は、シートの目付に応じて選定すればよく、例えば、セルロース系不織布の目付が低い場合は、接着樹脂が脱落しにくい大きな粒子径のものを用いればよく、粒子径としては100μm〜5000μmの範囲が好ましい。
粒子状接着樹脂の篩分において、20〜100メッシュの篩でパスする粒子サイズが好ましい。
熱接着樹脂を散布した後は、熱プレスして、樹脂のシートへの固定化をすることが好ましい。このときの熱プレスは、一対の熱ロール間等で行えばよく、加熱温度は使用する接着樹脂の種類、加熱加圧方法により異なるが、100〜200℃が好ましく、より好ましくは、100〜150℃の範囲である。
熱接着樹脂の付着量は、必要とするヒートシール性に応じて適宜選定すればよいが、3〜20g/m、好ましくは5〜15g/m程度がよく、これ未満ではヒートシール性が不十分であったり、これを越えると、シートの生分解性等を阻害する懸念がある。
【0012】
本発明の植物用結束シートをテープとして用いてこれをヒートシール法で接着する場合、熱接着樹脂面が互いに接触するように重ね、熱接着樹脂の溶融温度より高い温度と圧力および圧着時間により接着させることができる。つまり温度としては、熱接着樹脂の溶融温度乃至200℃の範囲が好ましい。
本発明の結束シートからなるテープの接着強度としては、テープ幅の影響が大きいが、JIS−Z−0218;180度剥離試験法による試験で1N以上であることが好ましく、通常使用されるテープ幅は1〜5cm程度であり、そのため本発明のテープの引張強度は、JIS−L−1096;812定速伸張法(試料幅5cm)で3N/50mm以上であることが好ましい。
【0013】
このようにして、ヒートシール法で接着されたテープは、水分や屋外曝露による強度低下が少なく、粘着法やステープル止めのように水に濡れた際の急激な強度低下は生じない。
例えば、植物のつるを支柱に本発明の結束テープで巻き込むように固定し、熱接着樹脂を内面同士に重ね、外側から熱板で押し付けることで、接着し、つるや茎を固定する。
本発明に使用する熱板は、セラミックヒーターやニクロム線内蔵のようなものが挙げられる。また、圧着時のみに加熱されるインパルス方式の熱板が消費電力、作業時にやけどしにくい点などから特に好ましい。
また、実開昭61−178851号公報、実開平07−099382号公報に開示されているテープを結束したい箇所に巻きつける装置と本発明のヒートシール接着を組み合わせることも可能である。
本発明において、ヒートシール部あるいは装置は、屋外で使うことから、ハンディータイプが好ましく、乾電池や蓄電池などで作業できるものが好ましい。
【実施例】
【0014】
以下に本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
また実施例中の処理物の評価は、下記のようにして行った。
(1)厚み
JIS−L−1096準拠の厚み試験にて荷重を1.96kPaとして測定した(単位はμm)。
(2)目付
0.05m以上の面積の不織布を105℃で一定重量になるまで乾燥後、20℃、65%RHの恒温室に16時間以上放置して後その重量を測定し、不織布(m)当たりの重量(g)を求めた(単位はg/m)。
【0015】
(3)引張強力
サンプルの幅を50mmとして、JIS−L−1096;8.12定速伸張法における引張強力を測定した(単位はN/50mm)。
(4)結束強度
試料片を2cm幅、長さ10cmに切り取り、熱接着面を重ね、温度150度、圧力3kPa、時間1秒、2cm(試料幅方向)×3mm(試料長さ方向)の面積で接着を実施した。
接着強度として、JIS−Z−0218;180度剥離試験法による試験により測定した(単位はN)。
【0016】
(5)耐久性評価
試験片を2cm幅、長さ10cmに切り取り、ワッカ状になるように端面を接着する。ヒートシール接着の条件は、熱接着面を重ね、温度150度、圧力3kPa、時間1秒
2cm(試料幅方向)×3mm(試料長さ方向)の面積で接着する。
次に、図1に示す如くになるようにワッカの上部と下部に針金(直径5mm,丸断面)を取り付け、上部の針金は台に固定し、下部の針金に錘(100g)を取り付けた。
各試験片を約20℃程度の雰囲気下に放置し、1日に一度霧吹きで水が滴る程度、試験片に水付けを実施する。10日後重りを保持している個数を確認した(各試験片のn数は5個とする。)。
(6)生分解の評価
恒温室(20±2℃、60±5%RH)内でOECD301C(被験物質濃度100mg/l、汚泥濃度30mg/l)の土壌を用いた土壌埋設試験を実施した。試料(5cm各)を凡そ1cm程度の深さに埋め、1ヵ月(30日)後の状況を確認し下記の評価基準で評価した。
○:土中から試料片(1cm各以上)の採取が不可能。
△:原型(5cm各)はあるが、破れや穴があいている状態。
×:原型はあり、破れや穴も生じていない状態。
[実施例1]
キュプラ長繊維不織布(旭化成せんい社製ベンリーゼ)(厚み0.13mm、20g/m目付)の片面に、60メッシュパスのパウダー状のポリエチレン樹脂(融点110℃)を10g/m散布し、一対のフラットロールで、150℃の温度で熱プレスした。
得られた不織布の引張り強度は5N/50mmであった。このシートを5cm幅のテープとし、トマトの苗木を支柱に固定するために、当該テープの樹脂接着面を内側にしてトマトの茎と支柱とを巻き込み、重ねて熱接着し、トマトの苗木を支柱に固定化してところ、優れた接着性を得た。十分な接着力を有し、耐久性に優れ、作業効率が良好で、生分解などの環境に優しいテープであった。
耐久性試験においても、5個のサンプルとも破けはなく、保持率は100%であった。
また生分解性は、30日後には土中から取り出すことができず、原型をとどめていない状態で評価は○であった。
【0017】
[実施例2]
実施例1で用いたキュプラ長繊維不織布の片面に、60メッシュパスのパウダー状のポリエチレン樹脂(融点130℃)を5g/m散布して、熱風乾燥機を通して固着させ、さらに他面も同様にして接着樹脂を5g/m散布し、樹脂固着させた。
得られた不織布の引張り強度は7N/50mmであった。このシートを3cm幅のテープとし、トマトの苗木を支柱に固定するために、当該テープの樹脂接着面を内側にしてトマトの茎と支柱とを巻き込み、重ねて熱接着し、トマトの苗木を支柱に固定化したところ、優れた接着性を得た。十分な接着力を有し、耐久性に優れ、作業効率が良好で、生分解などの環境に優しいテープであった。
耐久性試験においても、5個のサンプルとも破けはなく、保持率は100%であった。
また生分解性は、30日後には土中から取り出すことはできたが、自重で破けてしまうほど強度はなく、原型をとどめていない状態で評価は○であった。
[比較例1]
市販のクラフト紙(大明商事製、目付け70g/m、厚み0.1mm、引張強度10N/50mm)を3cm幅のテープ状にカットし、ホッチキス針(マックス社製、No.10−1M)でシールを実施した。
耐久性試験において、5個のサンプルともホッチキス部分で破けが生じており、保持率は20%であった。
また生分解性は、原型をとどめており、手で持ち上げられる状態で、3箇所に亀裂が入っている状態で評価は△であった。
[比較例2]
市販のポリエチレン袋(日本サニパック製、低密度ポリエチレン、厚み0.05mm、引張強度22N/cm)から3cm幅にテープ状にカットし、ホッチキス(マックス社製、 No.10−1M)でシールを実施した。
耐久性試験において、5個のサンプルともホッチキス部分で破けが生じており、保持率は60%であった(ただし、保持した試料も大きく伸びており、固定が困難な状態であった。)。
また生分解性は、原型をとどめており、手で持ち上げられる状態で、亀裂もない状態で評価は×であった。
【産業上の利用可能性】
【0018】
本発明は、セルロース繊維を特定量含有し、熱接着性を付与した植物用結束シートであり、十分な接着力を有し、耐久性に優れ、作業効率が良好で、生分解などの環境に優しく、ブドウ、キウイ等の果樹のつるや、キュウリ、トマト、ナス等野菜類の茎を支柱等に結束するのに適した植物用結束シートである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の耐久性評価に用いる測定装置の概略図である。
【符号の説明】
【0020】
1 結束テープ基材
2 熱可塑性樹脂
3 ヒートシール部
4 針金

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物を支柱に固定するシートであって、該シートの少なくとも片面に、熱接着樹脂が塗布又は積層されていることを特徴とする植物用結束シート。
【請求項2】
前記シートがセルロース繊維を50wt%以上含有することを特徴とする請求項1に記載の植物用結束シート。
【請求項3】
前記熱接着性樹脂が粒子状であり、3〜20g/m塗布されていることを特徴とする請求項1または2に記載の植物用結束シート。
【請求項4】
前記シートが、紙又はセルロース繊維不織布であり、引張強度が3N/50mm以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の植物用結束シート。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の植物用結束シートを用いて、植物と支柱とを巻き込んだ後、熱接着樹脂塗布面同士を重ねて、熱板を押し付けて熱接着し、植物を支柱に固定することを特徴とする植物の固定化方法。

【図1】
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【公開番号】特開2009−189288(P2009−189288A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−32699(P2008−32699)
【出願日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【出願人】(303046303)旭化成せんい株式会社 (548)
【Fターム(参考)】