植物系における外来核酸およびポリペプチドの産生
本発明は、幼若植物において核酸またはタンパクを生産するためのシステムおよび方法を提供する。典型的には、幼若植物は、閉鎖された、調節可能な環境において育成される。ある実施態様では、幼若植物における製薬学的活性タンパクの発現は、外因的に誘発可能なプロモーター、またはウィルスプロモーターによって調節される。ある実施態様では、この幼若植物は、摂食可能であり、生のままで食べてもよく、あるいは、好ましくは、核酸またはタンパクの最大の生物学的活性を保持するために生のまま収穫される。ある実施態様では、この幼若植物は、幼若豆植物であるか、または幼若NICOTIANA植物である。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
関連出願
本願は、2006年2月13日に出願され、「Production of Foreign Nucleic Acids and Polypeptides in Sprout System」という名称の、同時係属中の米国特許出願第11/353,905号の継続出願であり、その利益を主張する。米国特許出願第11/353,905号の全内容は、本明細書中に参考として援用される。
【0002】
本願はまた、各々2006年2月13日に出願された、同時係属中の米国仮特許出願第60/773,255号(「Bacillus Anthracis Antigens,Vaccine Compositions, and Related Methods」という名称);米国仮特許出願第60/773,374号(「HPV Antigens,Vaccine Compositions,and Related Methods」という名称);米国仮特許出願第60/773,378号(「Influenza Antigen,Vaccine Compositions,and Related Methods」という名称);米国仮特許出願第60/773,378号(「Influenza Antigen,Vaccine Compositions,and Related Methods」という名称)の利益もまた主張する。これらの出願の各々における全内容は、本明細書中に参考として援用される。
【0003】
本願はさらに、2006年6月15日に出願され、「Influenza Antigens,Vaccine Compositions,and Related Methods」という名称の、同時係属中の米国仮特許出願第60/813,955号の利益を主張する。米国仮特許出願第60/813,955号の全内容は、本明細書中に参考として援用される。
【0004】
本願はさらに、2006年9月15日に出願され、「Influenza Antibodies,Vaccine Compositions,and Related Methods」という名称の、同時係属中の米国仮特許出願第60/944,770号の利益を主張する。米国仮特許出願第60/944,770号の全内容は、本明細書中に参考として援用される。
【0005】
本願はさらに、2007年1月9日に出願され、「Launch Vector for the Production of Vaccine Antigens in Plants」という名称の、同時係属中の米国仮特許出願第60/879,450号の利益を主張する。米国仮特許出願第60/879,450号の全内容は、本明細書中に参考として援用される。
【0006】
発明の背景
薬剤のコストは異常に高く、かつ、上がり続けている。ある種の薬剤は、高コストに加えてさらに供給が制限されるため、それを必要とする患者の全てが必ずしも利用することができない。このことは、コストおよび入手困難の両方が、必要な人口に対する薬剤の配布を妨げている発展途上国では特に問題となっている。
【0007】
薬剤生産の高コストにはいくつかの要因が寄与し、消費者にとって薬剤の高値をもたらす。これは、タンパク質およびペプチド系薬剤に特に当てはまる。ある種の薬剤にとってもう一つの寄与因子は、治療的有効量の薬剤を経口的に投与することができないことである。多くの薬剤は、体の特定部位に対する注入によってのみ投与が可能である。例えば、アレルギーまたは感染症治療のための、多くの免疫化薬剤は、注入による投与を要求する。タンパク質およびペプチド薬剤、例えば、ヒトの成長ホルモンおよびインスリンは、注入によってのみ投与が可能である。多くの薬剤のコストに寄与するもう一つの因子は、病院または配布部位への輸送である。特に高温気象では、薬剤の輸送および保存は、高価な冷蔵設備を必要とする。これは、そのような設備が利用できない場合が多い、発展途上国では大きな難題である。
【0008】
これまで、製剤タンパク質およびペプチドは、多様な宿主において生産されてきた。多くの治療タンパク質は、前核細胞、例えば、ESCHERICHIA COLIおよびBACILLUS SUBTILIS、および真核細胞、例えば、酵母、真菌、昆虫細胞、動物細胞、およびトランスジェニック動物を含む異種発現システムにおいて生産されている。細菌発現システムは、操作が比較的簡単で、産物の収率も高い。しかしながら、哺乳類タンパク質は、機能的活性を獲得するために広範な翻訳後修飾を要求することが多く、これが、細菌発現システムにおける制限因子となる可能性がある。細胞培養システム、例えば、哺乳類、ヒト、および昆虫細胞培養システムは、複雑なタンパク質の生産には比較的便利である。しかしながら、長い準備期間、産物の低収率、病原体転送の可能性、および高い資本および生産コストは、重大な不安要素を表す。トランスジェニック動物は、複雑なタンパク質の無制限な供給源となる可能性がある。このシステムは残念ながら、新規の改良製品を生成し、ヒトの被検体に対する病原体転送の危険性の対処に要する期間の長さによって制限される。
【0009】
前核および真核細胞における製剤タンパク質およびペプチドの生産にたいする経済的および生化学的限界、例えば、高い生産コスト、低い収率、分泌問題、タンパク質加工における不適切な修飾、比較的大容量にスケールアップするときの困難、および汚染を含む限界のために、研究者たちは、コスト削減を期待して、タンパク質およびペプチドの大規模生産のための新規宿主として植物を調べる方向に導かれている。トランスジェニック植物におけるタンパク質の生産は、例えば、特許文献1;特許文献2;特許文献3;特許文献4;および特許文献5に記載されている。植物は、前核および真核細胞よりも育成が安価で、より大量に収穫されるが、植物細胞における外来遺伝子の発現は通常低い。さらに、植物の収穫は、通常、例えば、葉を除去する、根から茎を分離する、または根を除去することによる該植物の破壊を必要とする。このような破壊は、通常、植物の凋落および植物のアポトーシスを起動するプロセスをもたらす。アポトーシスを経過する植物は、プロテアーゼを生成し、これは、遺伝子導入によって発現されるタンパク質の精製がまだ始まらない内に、該タンパク質の分解を招く。仮令植物を直接消費するとしても、発現される薬剤化合物の活性は、収穫によって誘発される細胞内分解機序によって低下する可能性がある。
【0010】
開放圃場において育成されるトランスジェニック植物における外来タンパク質の生産に関連する、もう一つの重大な不安要素は、野生植物による交差受粉の可能性である。これは、外来タンパク質が食物連鎖の中に入ることを可能とする。トランスジェニック植物に関する農業施行を取り巻く政府規制はきわめて複雑であり、これが、新規トランスジェニック植物の農業的使用の承認を困難にする。さらに、戸外環境は、調節が不可能なので、外来遺伝子の適切な成長、発達、および発現の確保を困難とする。例えば、熱誘発性、光誘発性、ホルモン誘発性、または化学的誘発性プロモーターの誘発は、戸外環境では実際的に不可能であろう。もちろん、戸外の温度および光レベルを調節することはできない。植物の上に撒布されるホルモンまたは薬品も、風や雨によって、植物だけでなく、周辺環境の中に拡散される可能性が高い。
【0011】
タンパク質またはペプチド生産のための改良システムが求められている。植物におけるタンパク質またはポリペプチド生産のための改良システムが特に求められている。例えば、収穫時、発現タンパク質の細胞間分解を抑える、植物における製剤タンパク質生産のための調整可能な調節システムが求められている。
【特許文献1】米国特許第5,750,871号明細書
【特許文献2】米国特許第5,565,347号明細書
【特許文献3】米国特許第5,464,763号明細書
【特許文献4】米国特許第5,750,871号明細書
【特許文献5】米国特許第5,565,347号明細書
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0012】
発明の概要
本発明は、タンパク質またはポリペプチド(および/または核酸)、特に植物における製剤タンパク質またはポリペプチドを生産するためのシステムを提供する。
【0013】
一局面において、本発明は、植物におけるタンパク質またはポリペプチドの速やかな発現のためのシステムを提供する。したがって、ある実施態様では、本発明は、幼若植物においてタンパク質またはポリペプチドの発現を実現する。ある実施態様では、幼若植物(例えば、出芽実生)を、生のまま消費または収穫することが可能である。ある実施態様では、植物は、封鎖され、調整可能な環境、例えば、室内で育成される(例えば、種子から)。
【0014】
ある実施態様では、本発明にしたがって生産されるタンパク質またはポリペプチドは、ヒトの手で植物の中に導入された核酸構築体から植物細胞において発現される。ある実施態様では、本発明にしたがって生産されるタンパク質またはポリペプチドは、植物細胞において植物ウィルス特有のRNAから翻訳される。ある実施態様では、これらの特徴は、自己複製、細胞間移動、全身移動、およびこれらの組み合わせを含むか、それらから成る群から選ばれる。ある実施態様では、このRNAは、植物において、自己複製的であり、細胞間移動が可能であるが、全身移動ができない。
【0015】
ある実施態様では、本発明にしたがって生産されるタンパク質またはポリペプチドは、植物細胞において、アグロバクテリウムにおいて複製する核酸構築体から発現される。ある実施態様では、本発明は、アグロバクテリウムにおいて複製し、さらに、植物ウィルス特有の、RNA発現指令プロモーターを含む、構築体を利用する。ある実施態様では、このRNAは、対象タンパク質またはポリペプチドをコードする配列を含む。したがって、本発明のある実施態様では、対象タンパク質またはポリペプチドは、アグロバクテリウムにおいて複製し、さらに、植物ウィルスに特有の、RNA発現指令プロモーターを含むベクターを植物細胞に導入することを含むプロセスによって、植物において生産される。そのRNAは、植物において全身移動ができないが、自己複製は可能であり、さらに、対象タンパク質またはポリペプチドをコードする。
【0016】
アグロバクテリウムにおいて複製する構築体が利用される、本発明のある実施態様では、該構築体は、AGROINfILTRATION法によって植物細胞に導入される。
【0017】
本発明は、本明細書において、製剤タンパク質の生産ためのその使用を参照しながら記述されるが、本発明は、一般に、核酸またはタンパク質の特定の使用(単数または複数)に関する制限無しに、事実上、対象とする任意の核酸(DNAおよび/またはRNA)および/またはタンパク質の生産のために使用される。例えば、多様な工業プロセスまたはバイオ薬剤製造プロセス(例えば、汚染物質を分解する酵素)の内の任意のプロセスにおいて使用される酵素も生産が可能である。したがって、本発明および請求項の記載は、仮令明らかにそれと表示されなくとも、治療的用途を持つものも、持たないものも含め、対象核酸またはタンパク質のいずれにも適用されるものと考えなければならない。ある実施態様では、タンパク質は、栄養学的に重要なタンパク質ではない。本明細書においてそれと名指すことなく、どの特定のタンパク質も、本発明から排除されることはない。
【0018】
本発明のある実施態様では、その局面のいずれにおいても、対象核酸またはタンパク質は、その発現される細胞において、転写後、および/または翻訳後加工される。本発明のある実施態様では、対象タンパク質は、その発現される細胞から分泌される。例えば、タンパク質は、天然状態において、分泌シグナル配列、すなわち、該タンパク質が、分泌シグナル配列をコードする部分を含むよう修飾されるようにコードする、核酸コード領域を含んでもよい。分泌シグナル配列は従来技術で周知である。
【0019】
本発明のある実施態様では、その局面のいずれにおいても、対象タンパク質をコードする異種配列が、植物全体、および/または、特定種類の植物における発現を改善するために、天然配列に見られるものとは異なるコドンを持つように変更されてもよい。例えば、配列は、特定のある品種における発現のためにコドン最適化されてもよい。コドン最適化を実行するための方法は従来技術で既知である。
【0020】
さらに本発明は、中でも特に、本明細書に記載される発現構築体を含む植物、そのような植物を含む組成物、そのような植物から単離されるタンパク質/ポリペプチドの調製品、そのような植物から単離される、そのようなタンパク質/ポリペプチドを含む組成物、そのような単離を実行する方法、およびそのような単離タンパク質/ポリペプチド(または、それらを含む組成物)を使用する方法、例えば、植物において発現される製薬学的に活性を持つタンパク質によって哺乳動物を治療する方法を含む方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
定義
治療を必要とする被検体に対する、製薬学的活性タンパク質またはポリペプチドの「投与」は、該被検体に該製薬学的活性タンパク質を、その宿主に対し所望の有効作用を提供するのに十分なほど長時間そのタンパク質の治療効果を持続させるやり方で提供することが意図される。
【0022】
「動物」という用語は、全ての脊椎動物、生命形、ヒト類、ウシ類、ヒツジ類、ブタ類、イヌ類、ネコ類、フェレット類、げっ歯類、霊長類、魚類、鳥類、例えば、家禽類などを含む。ある実施態様では、動物は哺乳類である。ある実施態様では、動物はヒト類である。
【0023】
本発明によれば、ポリペプチドまたはタンパク質の「特徴部分」とは、アミノ酸の連続鎖、または、一緒になってタンパク質またはアミノ酸を特徴づける、アミノ酸の複数の連続鎖の集合体を含む、タンパク質またはポリペプチドである。ある実施態様では、このような連続鎖はそれぞれ、一般に、少なくとも2、5、10、15、20、またはそれ以上のアミノ酸を含む。一般に、特徴部分とは、上に指定した配列内容の外に、関連する生得(未加工)タンパク質と少なくとも一つの官能特徴を共有するものである。ある実施態様では、特徴部分は生物学的に活性を持っていてもよい。
【0024】
タンパク質またはポリペプチドの「ドメイン」とは、該用語が本明細書で用いられる場合、一般に、該タンパク質またはポリペプチド配列の残余部分と別に生産される場合でも、三次元統合体および/または構造を維持する、タンパク質またはポリペプチドのセグメントを指す。従来技術で周知のように、多くのタンパク質およびポリペプチドは、ドメイン構造を持つ。ある実施態様では、ドメインは、活性(例えば、結合、触媒性など)を有する。ある実施態様では、ドメインは免疫原性である。免疫原ドメインは、少なくとも単一エピトープの同じ大きさを持ち、通常、より大きい。ある実施態様では、免疫原性ドメインは、エピトープの適切な提示を確保するために、エピトープの外にさらに十分な配列を含む。
【0025】
「発現」とは、植物における内因性遺伝子、またはトランスジーンの転写および/または翻訳、例えば、発芽を指す。トランスジーンは、植物のゲノムDNAに組み込まれてもよいし、組み込まれなくともよい。例えば、「発現」は、細菌、プラスミド、またはウィルスの核酸中に存在する遺伝子の、該細菌、プラスミド、またはウィルス核酸が植物のゲノムDNAに組み込まれるか否かとは無関係に、転写および/または翻訳を指す。遺伝子は、細菌、プラスミド、またはウィルスに対して異種である遺伝子であってもよい。
【0026】
「発現カセット」または「発現ベクター」とは、適切な宿主細胞において、特定のヌクレオチド配列の発現を指令することが可能なDNA配列(または、RNAウィルスまたはRNAプラスミドの場合はRNA配列)を指す。例えば、発現カセットは、対象ヌクレオチド配列に動作可能的に連結されるプロモーターを含んでもよい。プロモーターは、3′調節配列などの3′配列または終結シグナルに、任意に動作可能的に連結される。発現カセットはさらに、ヌクレオチド配列の適切な翻訳に必要な配列を、もしも何らかのそのような配列が必要であるならば、通常含んでもよい。コード領域は、通常、対象タンパク質をコードするが、さらに、対象とする機能的RNA、例えば、特定遺伝子の発現を抑制する、アンチセンスRNA、すなわち非翻訳RNAをコードしてもよい。対象ヌクレオチド配列を含む発現カセットは、キメラ的であってもよい。キメラとは、該ヌクレオチド配列が、起源の異なる一つを超えるDNA配列を含み、それらが、組み換えDNA技術によって一種に融合されて、天然では起こらない、特に、それが発現される筈の植物では起こらないヌクレオチド配列をもたらす、そのような一つを超えるDNA配列を意味する。発現カセットはさらに、天然でも生ずるが、異種発現のために有用な組み換え形として得られるものであってもよい。しかしながら、通常、発現カセットは、宿主に対して異種である、すなわち、発現カセットの特定のDNA配列は、宿主細胞では天然では見られず、形質転換事象によって、該宿主細胞に、または該宿主細胞の先祖に導入されなければならない。発現カセットにおけるヌクレオチド配列の発現は、構成的プロモーター、または、宿主細胞が、何らかの特定の外部刺激に対して暴露されたときにのみ転写を開始する誘発可能プロモーターの調節下にあってもよい。植物などの多細胞生物の場合、プロモーターはさらに、特定の組織、器官、または発達段階に対して特異的であってもよい。核酸発現カセットは、通常、植物の核ゲノムの中に挿入され、植物の核ゲノムから、特定ヌクレオチド配列の発現を指令することが可能である。プラスミド発現カセットは、通常、植物のプラスミドゲノムの中に挿入され、植物のプラスミドゲノムから特定のヌクレオチド配列の発現を指令することが可能である。プラスチド発現カセットの場合、プラスチドゲノムからヌクレオチド配列を発現させるために、付加的要素、例えば、リボソーム結合部位、または、プラスチドDNAのポリアデニル化、およびその後の分解を防止する3′ステムーループ構造が必要とされる場合がある。本発明のある実施態様では、TATA要素などの最小プロモーターであるプロモーターを含み、ヌクレオチド配列の発現、特に、高レベル発現に、トランス活性化因子の存在が必要とされる発現カセットが利用される。例えば、発現カセットは、転写アクチベーターの結合のためのDNA領域を含んでもよい。このような発現カセット、およびその中のプロモーターは、「活性可能」と呼ばれる。
【0027】
「食物」または「食品」とは、ヒト、または他の動物が摂取することが可能な、液状または固体状の調製品である。これらの用語は、ヒトおよび/または他の動物に対し直接生きたまま給餌されてもよい、生の、または生きている植物(例えば、発芽実生)の調製品を含むことが好ましい。植物から得られる材料は、ヒトまたは他の動物が摂取することが可能な、食用植物全体を含むことが意図される。本用語はさらに、ヒトおよび他の動物に給餌される、栄養的担体と合わせた、任意の加工植物(例えば、発芽実生)を含んでもよい。加工工程は、食物または飼料産業において一般的に使用される工程を含んでもよい。そのような工程として、例えば、ただしこれらに限定されないが、植物の個体物質の濃縮または圧縮による、例えば、ペレットの形成、ペーストの生産、乾燥、または凍結乾燥が挙げられ、あるいは、植物を様々の程度に切断、押しつぶし、または粉砕することによる生産、あるいは、植物の液状部分の抽出によるスープ、シロップ、またはジュースの生産が挙げられる。加工工程はさらに、植物(例えば、発芽実生)の調理、例えば、蒸し上げを含むことも可能である。
【0028】
「遺伝子」とは、対象タンパク質またはポリペプチド(またはRNA)をコードする配列である。遺伝子は、関連調節配列を含んでもよい。遺伝子のコード配列は、RNAに、例えば、MRNA、RRNA、TRNA、SNRNA、センスRNA、またはアンチセンスRNAに転写されてもよい。しかしながら、当業者には理解されるように、「遺伝子」は、RNAであってもよい(例えば、ウィルスRNAベクターの遺伝子)。「調節配列」の例として、プロモーター配列、5′および3′非翻訳配列、および終止配列が挙げられる。さらに、イントロンおよびエキソンを含めてもよい。ある実施態様では、遺伝子は、コード配列であり、関連調節配列は、異種配列である。
【0029】
本明細書で用いる「異種配列」とは、異なる生得起源を持つもの、または合成起源のものを意味する。例えば、核酸が宿主細胞に導入され、該宿主細胞が、該核酸の中に存在する配列のある部分、または全てを元々含まない場合、その配列(および/または核酸)は、宿主細胞に対して異種と呼ばれる。導入される核酸は、異種プロモーター、異種コード配列、または異種終止配列を含んでもよい。それとは別に、形質転換性核酸は、完全に異種であってもよいし、あるいは、異種核酸配列と内因性核酸配列との、任意の可能な組み合わせを含んでもよい。同様に、異種性とは、同じ天然の、同起源の細胞タイプではあるが、非天然状態、例えば、異なるコピー数、または、異なる調節要素の制御下にある細胞タイプから得られ、かつ、挿入されるヌクレオチドも指す。「異種性」という用語は、植物細胞および細菌細胞を含む細胞にも、さらに、プラスミド、プラスチド、およびウィルスにも適用される。
【0030】
「宿主細胞」とは、発現のためにその中に核酸が導入される細胞である。通常、そのような導入はヒトの手を必要とする。
【0031】
「不活性発現カセット」または「不活性発現ベクター」とは、不活性の、または沈黙化される外来核酸配列であって、活性化されると対象核酸またはポリペプチドの発現を指令することが可能な核酸配列を含むDNAまたはRNA配列である。一般に、不活性発現ベクターは、対象核酸またはポリペプチドをコードする配列が、プロモーターに動作可能的に連結されないこと、例えば、プロモーターから(または別の調節要素から)、介在核酸領域によって隔てられることを除いては、前述の発現カセットの特性を有する。動作可能的連結は、組み換え事象後に起こり、それによって発現が起こる。このような発現カセットは「活性可能」であると呼ばれる。
【0032】
「誘発可能プロモーター」という用語は、プロモーター活性を直接または間接に増す特定の刺激の有無によってスイッチオンされるプロモーターを意味する。そのような刺激の、非限定的例としては、熱、光、発達調節因子、負傷、ホルモン、および薬品、例えば、小型分子が挙げられる。光誘発性プロモーターの一例としては、リブロースー5ーリン酸カルボキシラーゼプロモーターがある。化学的に誘発可能なプロモーターはさらに、受容体介在システム、例えば、他の生物体由来のもの、例えば、ステロイド依存性遺伝子発現受容体、LACリプレッサーシステム、および、国際公開第97/13864号に記載される、なおこの特許文書を引用により本明細書に含める、幼若成長ホルモンおよびその作用剤によって仲介される、ショウジョウバエ由来のUSP受容体を利用する発現システム、および、国際公開第96/27673号に記載される、なおこの特許文書も引用により本明細書に含める、複数の受容体の組み合わせを含むシステムを含む。さらに別の化学的に誘発可能なプロモーターとしては、エリシター誘発性プロモーター、セーフナー誘発性プロモーター、および、ある種のアルコールおよびケトンによって誘発が可能なALCA/ALCR遺伝子活性化システム(国際公開第93/21334号;CADDICK ET AL. (1998) NAT. BIOTECHNOL. 16:177ー180、なお、これらの内容を引用により本明細書に含める)が挙げられる。負傷誘発性プロモーターとしては、プロテイナーゼ抑制因子のプロモーター、例えば、ジャガイモ由来のプロテイナーゼ抑制因子IIプロモーター、および、負傷反応経路に関与する、他の植物由来プロモーター、例えば、ポリフェニルオキシダーゼ、LAP、およびTDのプロモーターが挙げられる。例えば、GATZ, “CHEMICAL CONTROL Of GENE EXPRESSION,” ANN. REV. PLANT PHYSIOL. PLANT MOL. BIOL. (1997) 48:89ー108を参照されたい。なお、この文献を引用によって本明細書に含める。他の誘発可能なプロモーターとして、植物由来プロモーター、例えば、全身的に獲得された耐性経路のプロモーター、例えば、PRプロモーターが挙げられる。本明細書において誘発性プロモーターが論じられる場合、本発明のある実施態様では、活性可能なプロモーターおよび発現カセットは同様に使用することが可能であることが注目される。
【0033】
「マーカー遺伝子」とは、選択可能な、またはスクリーニング可能な性質をコードする遺伝子である。
【0034】
「医用食物」は、被検体によって飲食され、かつ、該被検体に治療的作用を及ぼす組成物を含む。医用食物としては、例えば、製薬学的タンパク質またはポリペプチドが生産される植物、または、該植物から得られる植物物質が挙げられる。医用食物はそれだけを摂取してもよいし、または、医用技術において周知の製剤組成物と組み合わせて投与してもよい。医用食物はさらに、非ヒト動物のための等価的飼料を含む。
【0035】
「動作可能的に連結される」とは、核酸要素同士の連結を指す。例えば、タンパク質をコードする異種DNAに動作可能的に連結されるプロモーターは、該異種タンパク質に対応する機能的mRNAの生産を増進する。調節DNA配列は、RNA、またはタンパク質をコードするDNA配列に対し、これら二つの配列が、調節DNA配列が、コードDNA配列の発現に影響を及ぼすように配置されている場合、「動作的に連結される」、または「関連する」と言われる。
【0036】
製薬学的活性のペプチドまたはタンパク質の「経口投与」とは、主に、口を通じての投与、好ましくは、咀嚼による摂取を意味するが、それだけではなく、そのようなペプチドまたはタンパク質を、宿主の胃または消化管に供給する任意の投与法を含むことを意図する。好ましい実施態様では、経口投与は、製薬学的活性タンパク質と胃粘膜との接触をもたらす。
【0037】
「製薬学的活性核酸」とは、製薬学的活性タンパク質をコードする核酸、または、それ自体が製薬学的活性を有する核酸、例えば、製薬学的活性タンパク質について記載されるものと同様の、一つ以上の製薬学的活性を有する核酸である。例えば、核酸は、1本鎖以上のRNA干渉(RNAi)因子であってもよい。そのような因子としては、例えば、標的転写体、例えば、感染性因子の転写体、または、被検体の内因性病気関連転写体に向けられる、短鎖干渉RNA(siRNA)、または短鎖ヘアピンRNA(shRNA)、または、siRNAの前駆体、またはミクロRNA様RNAが挙げられる。
【0038】
「製薬学的活性タンパク質またはポリペプチド」は、治療的有効量において宿主に投与されると、宿主の身体状態を積極的に支援するか、または貢献する。製薬学的活性のタンパク質またはポリペプチドは、病気に対し治癒性、または寛解性を有し、病気または障害を寛解、解除、緩和、逆行、その開始の遅延、または、その一つ以上の症状の重度を軽減するために投与されてよい。製薬学的活性タンパク質またはポリペプチドは、予防特性を持っていてもよいし、病気の開始を遅らせるため、あるいは、そのような病気または病理的状態の、それが出現した場合の、重度を軽減するために使用されてもよい。「製薬学的活性のタンパク質またはポリペプチド」という用語は、タンパク質およびポリペプチド全体を含むが、さらに、製薬学的活性を持つ、その断片をも指すことが可能である。この用語はさらに、該タンパク質またはポリペプチドの製薬学的活性の類縁体、またはタンパク質またはポリペプチドの断片の類縁体を含むことが可能である。「製薬学的活性のタンパク質またはポリペプチド」という用語はさらに、協調的または共働的に活動して治療利益をもたらす、複数のタパクまたはポリペプチドを指すことも可能である。「製薬学的活性のタンパク質またはポリペプチド」という用語は、ワクチン抗原を含むタンパク質、すなわち、被検体に対するそのタンパク質の投与が、該宿主において、部分的または全体的に保護的な免疫反応を惹起する、そのようなタンパク質を特異的に含むことに注意しなければならない。本発明のある実施態様では、免疫反応は、感染因子、例えば、ウィルス、細菌性、真菌性、または原虫性病原体から被検体を保護する。ワクチン抗原の例としては、肝炎B表面抗原(HBsAg)、大腸菌熱不安定エンテロトキシン、狂犬病ウィルス糖タンパク質、およびノーウォークウィルスカプシドタンパク質が挙げられる。本発明の別の実施態様では、免疫反応は、非感染性病態または疾患から被検体を保護するか、または、病態または疾患の少なくとも一つの兆候または症状の重度を軽減する。この点における対象疾患としては、例えば、ただしこれらに限定されないが、癌、および自己免疫疾患が挙げられる。「製薬学的活性のタンパク質またはポリペプチド」という用語は、他のやり方で暴露したならば、アレルギー反応またはアナフィラキシー反応を惹起すると考えられるアレルゲンに被検体を暴露しても、該被検体を、部分的または完全に耐容させるタンパク質を含む。
【0039】
本明細書で用いる「プロモーター」とは、関連DNA配列の転写を起動するDNA配列である。プロモーター領域はさらに、遺伝子発現の調節因子として活動する要素、例えば、アクチベーター、エンハンサー、および/またはリプレッサーを含んでもよい。
【0040】
「調節要素」とは、核酸配列の発現の付与に関与する配列を指す。調節要素としては、対象ヌクレオチド配列に連結されるプロモーターなどの5′調節配列、3′調節配列、または終結シグナルなどの3′配列が挙げられる。調節要素はさらに、通常、ヌクレオチド配列の適切な翻訳に必要な配列を含む。
【0041】
「小型分子」とは、通常、1キロダルトン未満であり、生物性、有機性、または場合によっては無機性化合物(例えば、シスプラチン)である。このような小型分子の例としては、栄養素、例えば、糖類、および糖誘導体(リン酸塩誘導体を含む)、ホルモン類(例えば、植物ホルモン、ジベレリン酸またはアブシジン酸など)、および小型の合成分子が挙げられる。
【0042】
「特異的に調節可能」とは、細胞内における大規模転写の強化または抑制などの非特異的作用と違って、一つのプロモーター、または1群のプロモーターによる転写に対し優先的に影響を及ぼす、小型分子の能力を指す。
【0043】
「発芽実生」または「芽」とは、種子または根、好ましくは、新しく発芽した種子からの幼若シュートである。ある実施態様では、本発明の発芽実生は、食用の発芽実生または芽(例えば、アルファルファの芽、緑豆もやし、貝割れ大根、麦芽、辛子の芽、ほうれん草の芽、にんじんの芽、ビートの芽、玉ねぎの芽、にんにくの芽、セロリの芽、ルバーブの芽、葉物、例えば、キャベツの芽、またはレタスの芽、クレソン(WATERCRESSまたはCRESS)の芽、ハーブの芽、例えば、パセリまたはクローバーの芽、カリフラワーの芽、ブロッコリーの芽、大豆もやし、レンズ豆もやし、食用花の芽、例えば、ひまわりの芽など)である。本発明によれば、発芽実生は、双子葉段階まで発達してもよい。一般に、本発明の芽は、2日から14日齢である。
【0044】
「事実上単離された」とは、いくつかの文脈で使用されるが、通常、無関係、または汚染性成分(例えば、植物の構造的または代謝タンパク質)から分離された、タンパク質またはポリペプチドの、少なくとも部分的精製を指す。タンパク質またはポリペプチドの単離または精製法は、従来技術において周知である。
【0045】
「形質転換」とは、細胞中への核酸の導入、特に、対象生物のゲノム中への、DNA分子の安定的取り込みを指す。
【0046】
いくつかの好ましい実施態様の説明
タンパク質またはポリペプチド
本発明は、植物システムにおける任意のタンパク質またはポリペプチド(または、任意の機能的DNAまたはRNA分子)の生産に適用することが可能である。前述したように、ある実施態様では、本発明は、製剤タンパク質の生産に向けられるが、本発明は、一般に、核酸またはタンパク質の特定の使用(単数または複数)に限定されない。例えば、多様な工業的プロセスまたはバイオ医薬プロセスの内の任意の一プロセスに使用される酵素(例えば、汚染物質を分解する酵素)を生産することが可能である。したがって、本発明の説明および特許請求項は、仮令はっきりと明言されなくとも、治療用途を持つものも持たないものの含めた、対象とする任意の核酸またはタンパク質に適用されるものと考えなければならない。ある実施態様では、タンパク質は、栄養学的に重要なタンパク質ではない。いずれの特定のタンパク質も、本明細書において名指しされることなく、本発明から排除されることはない。
【0047】
通常、発現タンパク質またはポリペプチドは、天然状態で植物において発現されるものではない。仮令タンパク質またはポリペプチドが、天然状態の植物において発現されるものであっても、それは、通常、幼若植物組織では、天然状態の対応組織に存在すると考えられる濃度を超える濃度で発現される。
【0048】
二三特異的実例を挙げると、本発明は、例えば、ただしこれらに限定されないが、ホルモン類(インスリン、甲状腺ホルモン、カテコーラミン、ゴナドトロピン、刺激ホルモン、プロラクチン、オキシトシン、ドーパミン、ウシソマトスタチン、レプチンなど)、成長ホルモン類(例えば、ヒト成長ホルモン)、増殖因子類(例えば、上皮増殖因子、神経増殖因子、インスリン様増殖因子など)、増殖因子受容体、サイトカイン、および免疫系タンパク質類(例えば、インターロイキン、コロニー刺激因子(CSF)、顆粒球コロニー刺激因子(GーCSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GMーCSF)、エリスロポエチン、腫瘍壊死因子(TNF)、インターフェロン、インテグリン、アドレシン、セレクチン、ホーミング受容体、T細胞受容体、免疫グロブリン、可溶性主要組織適合性複合体抗原、免疫学的活性抗原、例えば、細菌、寄生性、またはウィルス抗原またはアレルゲン、自己抗原、抗体)、酵素類(組織プラスミノゲン活性化因子、ストレプトキナーゼ、生合成または分解性コレステロール、ステロイド合成酵素、キナーゼ、フォスフォジエステラーゼ、メチラーゼ、デーメチラーゼ、デヒドロゲナーゼ、セルラーゼ、プロテアーゼ、リパーゼ、フォスフォリパーゼ、アロマターゼ、チトクローム、アデニル酸またはグアニル酸シクラーゼ、ノイラミニダーゼなど)、受容体類(ステロイドホルモン受容体、ペプチド受容体)、結合タンパク質類(STERPOD結合タンパク質、成長ホルモンまたは増殖因子結合タンパク質など)、転写および翻訳因子、癌タンパク質または原癌タンパク質類(例えば、細胞周期タンパク質)、筋タンパク質類(ミオシン、またはトロポミオシンなど)、ミエロタンパク質、神経活性タンパク質、腫瘍増殖抑制タンパク質類(アンギオスタチンまたはエンドスタチン、これらは共に血管新生を抑制する)、抗敗血症タンパク質類(殺細菌性透過増強タンパク質)、構造タンパク質類(例えば、コラーゲン、フィブロイン、フィブリノーゲン、エラスチン、チューブリン、アクチン、およびミオシン)、血液タンパク質類(トロンビン、血清アルブミン、VII因子、VIII因子、インスリン、IX因子、X因子、組織プラスミノゲン活性化因子、タンパク質C、ウィルブランド因子、抗トロンビンIII、グルコセレブロシダーゼ、エリスロポエチン顆粒球コロニー刺激因子(GCSF)、またはVIII修飾因子、フリジンなどの抗凝固因子)などが挙げられる。
【0049】
ある特定の実施態様では、本発明は、抗原タンパク質またはポリペプチドの生産に利用される。例えば、本発明は、感染被検体の免疫システムによって認識される感染微生物のタンパク質(または、その部分)の生産に利用される。このようなタンパク質またはポリペプチドは、関連微生物による感染に対する保護のためのワクチンの開発において特に利用されてもよい。ほんの二三の特異的実例を挙げると、炭疽菌(BACILLUS ANTHRACIS;例えば、LF、PA)、コレラ(VIBRIO CHOLERA)、サイトメガロウィルス、大腸菌のエンテロトキシン生産株、口蹄疫ウィルス、B型肝炎(例えば、B型肝炎表面抗原、HBsAg)、C型肝炎(例えば、HCVコアタンパク質)、ヒト免疫不全ウィルス(例えば、Tat、Rev、Nef、GP160、GP120など)、ヒトのパピローマウィルス(例えば、E7、E6)、インフルエンザ(例えば、HA、NA)、マラリア(PLASMODIUM fALCIPARUM;例えば、PfS25、PfS28、PfS48/45、PfS230)、麻疹ウィルス、ノーウォークウィルス、ペスト(YERSINIA PESTIS;例えば、F1、LCRV)、PSEUDOMONAS AERUGINOSA、狂犬病ウィルス、呼吸器多核体ウィルス(例えば、Fタンパク質、Gタンパク質)、ライノウィルス、ロタウィルス、STAPHYLOCOCCUS AUREUS、伝染性胃腸炎ウィルス、トリパノソーマ(TRYPANOSOMA BRUCEI;例えば、アルファーチューブリン、ベーターチューブリン)、結核、SARSなどから得られる、有用な抗原タンパク質は、本発明のシステムによって生産することが可能である。
【0050】
ある特定実施態様では、本発明は、例えば、抗体(すなわち、モノクロナール抗体)などの免疫グロブリンタンパク質を含む、マルチマータンパク質複合体を生産するために利用される。ほんの二三の特異的例を挙げると、本発明のシステムにしたがって、抗PA、抗LF、抗NA、抗TNFa、および抗インターロイキン12などを生産することが可能である。さらに一般的には、病気、例えば、癌(例えば、急性骨髄性白血病(AML)、乳癌、結腸直腸癌、慢性リンパ性白血病(CLL)、非ホジキンリンパ腫、腎細胞癌、固体腫瘍)、免疫および自己免疫障害(例えば、喘息、クローン病、糖尿病、対宿主性移植片病(器官拒絶)、炎症性腸疾患、狼瘡、多発性硬化症、乾癬、乾癬性関節炎、慢性関節リューマチ、血栓症(脈管炎など)、感染症(例えば、炭疽(BACILLUS ANTHRACIS)、コレラ(VIBRIO CHOLERAE)、サイトメガロウィルス、大腸菌のエンテロトキシン生産株、口蹄疫ウィルス、B型肝炎ウィルス、C型肝炎ウィルス、ヒト免疫不全ウィルス、ヒトのパピローマウィルス、インフルエンザ、マラリア(PLASMODIUM fALCIPARUM)、麻疹ウィルス、ノーウォークウィルス、ペスト(YERSINIA PESTIS)、PSEUDOMONAS AERUGINOSA、狂犬病ウィルス、呼吸器多核体ウィルス、ライノウィルス、ロタウィルス、STAPHYLOCOCCUS AUREUS、伝染性胃腸炎ウィルス、トリパノソーマ(TRYPANOSOMA BRUCEI)、結核、SARSなどに対するモノクロナール抗体を、本発明にしたがって調製することが可能である。
【0051】
ある特定実施態様では、本発明は、HGH、自己免疫疾患用自己抗原(例えば、糖尿病のためのIAー2ic)、インフルエンザ抗原、炭疽抗原、HPV抗原、インフルエンザ抗体などを生産するために利用される(実施例参照)。
【0052】
本発明のある実施態様では、完全長異種タンパク質が生産される。すなわち、天然で見られるか、または、別の背景で調製または設計されたタンパク質の全体が幼若植物において生産される。そのようなある実施態様では、生産されるタンパク質は、他の全ての配列を含まない。別の実施態様では、タンパク質の一部のみ、通常、既知の所望の活性を有する部分(例えば、抗原タンパク質のエピトープ;酵素タンパク質の活性ドメインなど)のみが生産される。ある実施態様では、生産される部分は、そのタンパク質またはポリペプチドの特徴的部分である。ある実施態様では、生産される部分はエピトープを含む。ある実施態様では、生産される部分は、免疫原ドメインを含む。ある実施態様では、生産される部分はタンパク質ドメインを含む。
【0053】
本発明のある実施態様では、タンパク質またはポリペプチドは、他のタンパク質またはポリペプチド配列との融合体として生産される。従来技術で知られるように、融合体は、様々な理由の内のいずれのために使用することも可能である。例えば、本発明にしたがって幼若植物(例えば、発芽実生)において生産されるタンパク質またはポリペプチドは、検出および/または単離をやり易くするために、一つ以上の成分と融合させてもよい。例えば、対象タンパク質またはペプチドを、それに対し抗体、または他の特異的リガンドが利用可能であり、そのために単離または精製をやり易くするために使用が可能な、既知の抗原エピトープと融合させることも考えられる。それとは別に、またはそれに加えてさらに、対象タンパク質またはポリペプチドは、例えば、該対象タンパク質またはポリペプチドに対し所望の三次元配置を付与するために、定められた三次元構造の別のポリペプチドと融合させてもよい。さらに別の例として、対象タンパク質またはポリペプチドは、植物細胞における、その細胞内局在(または、分泌)を指令する、一つ以上の成分と融合させてもよい。特に、対象タンパク質またはポリペプチドがタンパク質抗原(例えば、サブユニットワクチンの調製に使用される)である場合、例えば、発現、安定性、および/または免疫原性を強化するために、および/または、単離または精製をやり易くするために、該タンパク質を、担体分子との融合体として生産することが好ましい場合がしばしばある。従来技術で既知の、ある例示の融合体パートナーとしては、例えば、抗体エピトープ(例えば、HISタグなど)、免疫原担体タンパク質、コレラトキシン、熱不安定エンテロトキシンなどが挙げられる(例えば、VELLA ET AL., BIOTECHNOLOGY 20:1、1992;KELLY ET AL., IMMUNOLOGY 113:163, 2004;BUTTERY ET AL., JR COLL PHUYSICIANS LOND 34:163, 2000;JACOBSON ET AL., MINERVA PEDITR, 54:295, 2002;DERTZBAUGH ET AL., INfECT IMMUNOL. 61:48, 1993;NASHAR ET AL., VACCINE 11:235, 1993;LILJEQVIST ET AL., J. IMMUNOL. METHODS 210:125, 1997;STAHL ET AL., PROC. NATL. ACAD. SCI. USA 86:6283, 1989;ULRICH ET AL., ADV. VIRUS RES. 50:141, 1998;SMITH ET AL., VIROLOGY 348:475, 2006;TURPEN ET AL., BIOTECHNOLOGY 13:53, 1995を参照されたい)。
【0054】
本発明にしたがって考慮の対象とされる、特定の一融合パートナーは、熱安定性タンパク質、例えば、CLOSTRIDIUM THERMOCELLUM由来のリケナーゼである(例えば、2003年5月22日出願の米国特許仮出願第60/472,495号、および、2004年5月24日出願の国際出願US04/016452で、2005年5月24日国際公開WO2005/026375として公刊されたものを参照されたい)。完全長リケナーゼ(約35KDa)は、シグナルペプチド、触媒ドメイン、ProーThrボックス、およびドッキングドメインから成る(図17参照)。本発明によれば、PROーTHRリッチボックスも、ドッキングドメインも、融合タンパク質においては欠失させることが可能である。さらに、元のシグナルペプチドは、植物中で動作するものによって置換することが可能である。
【0055】
このリケナーゼの触媒ドメインは、それ自身を二つの領域、Nー末端領域(N:アミノ酸32ー84)およびCー末端領域(C:アミノ酸85ー246)に分割するリープ構造を有する。これらの二つの領域は、ループ構造において切断し、円方向に配置転換し、酵素活性に影響を及ぼすことなく挿入に対しより受容的とすることが可能である。それぞれ、精製、および小胞体における保持を促進するために、配置転換担体の、これら二つの領域の接合部に多数クローニング部位(MCS)が導入され、かつ、その3′末端に配列KDELが設置された。図17は、修飾されたリケナーゼ(LICKM:GENBANKアクセス番号DQ776900)の模式図を示す。標的タンパク質またはポリペプチド配列は、NまたはC末端融合体として、および/または、MCSに対する内部的融合体として発現させること、これは複数の標的の同時発現を可能とする特性である、が可能である。
【0056】
LicKMは、大きさが小型ペプチドから、最大約100KDa以上の完全長タンパク質までの範囲に亘る分子に対する融合を可能とする。LicKMは、高温(65℃)でもその酵素活性を維持する、これは、一般に、融合体にも適用される特性である。この特性は、標的タンパク質の、簡単で、コスト有効的な回収を可能とする。なぜなら、65℃で10分間の熱処理によって、汚染性の植物タンパク質の最大50%が除去されるからである。精製の間、リケナーゼ活性を監視することによってLicKM融合タンパク質を追跡することが可能である。担体分子としてLicKMを使用することはさらに外の利点、例えば、発現強化の可能性、複数の対象ポリペプチドの取り込み(例えば、複数のワクチン決定基)を含む利点を提供する。
【0057】
植物
本発明の教示は、様々の広範な植物に適用することが可能である。一般に、導入構築体の発現を許容できる植物であれば、いずれの植物であっても、本発明にしたがって有用である。多くの実施態様では、タンパク質/ポリペプチド生産の速度を向上させるために、幼若植物を使用することが望ましい。本明細書で示すように、多くの実施態様では、発芽実生が利用される。従来技術で知られるように、大抵の芽は、保存種子から生産される、急速に成長する、食用植物である。しかしながら、当業者であれば、「発芽実生」という用語は、通常「芽」と分類される品種であるかどうかとは無関係に、本明細書では、もっと広い背景において幼若植物を指すためにこれまで使用されていることを理解するであろう。本明細書で示される発現構築体の導入および/または発現を可能とするのに十分な緑のバイオマスを所有するのに十分なほど長く生育した植物であれば(関連時間は、発現構築体の輸送および/または発現方式に応じて変動してもよいことを認識して)、いずれの植物も、本明細書では「発芽実生」と見なすことが可能である。
【0058】
本発明の、多くの実施態様において、食用植物が利用される(すなわち、そのタンパク質またはポリペプチドが投与される被検体によって食用されるー被検体にとって有毒ではないー植物)。
【0059】
ある好ましい実施態様では、本発明の植物は、BRASSICAまたはARABIDOPSIS種の植物であってもよい。形質転換を受容可能で、かつ、発芽実生として食用が可能な、いくつかの好適な植物としては、例えば、アルファルファ、緑豆、大根、小麦、辛子、ほうれん草、にんじん、ビート、玉ねぎ、にんにく、セロリ、ルバーブ、葉物、例えば、キャベツまたはレタス、クレソン(WATERCRESSまたはCRESS)、ハーブ、例えば、パセリ、ミント、またはクローバー、カリフラワー、ブロッコリー、大豆、レンズ豆、食用花、例えば、ひまわりなどが挙げられる。
【0060】
本発明の実施における適性について、多様な植物種が試験された。異なる様々の豆、およびその他の品種、例えば、小豆、アルファルファ、大麦、ブロッコリ、BILL JUMP PEA、蕎麦、キャベツ、カリフラワー、クローバー、コラードグリーン、フェヌグリーク、亜麻、ひよこ豆、グリンピース、小松菜、ケール、カムット、コールラビ、マロウファットピース、緑豆、からし菜、うずら豆、大根、レッドクローバー、大豆、SPECKLED PEA、日まわり、かぶ、YELLOW TRAPPER PEAなどを含む品種が、アグロバクテリウム構築体から発射されるウィルス構築体(本明細書に記載されるようにアグロインフィルトレーションによって導入される)(例えば、実施例5および8、図9などを参照)に基づく異種タンパク質の生産に対し対応が可能であるかどうか試験された。本発明は、ある豆品種が、このような操作に特に対応が可能であるという驚くべき結果を提供する。例えば、本発明によれば、BILL JUMP PEA、グリンピース、マロウファットピース、SPECKLED PEA、および/またはYELLOW TRAPPER PEAは、本発明のこの局面において特に有用である。したがって、ある実施態様では、本発明は、対象の、関連タンパク質またはペプチドをコードするウィルス構築体(すなわち、植物ウィルスの特徴を持つRNA)を発射するアグロバクテリウムベクターを用いる、これらの植物の内の一つ以上におけるタンパク質またはポリペプチド(例えば、抗原、抗体、および/またはその他のタンパク質)の生産を提供する。ある実施態様では、RNAは、ALMVの特徴を有する(および/または、ALMVの配列を含む)。ある実施態様では、RNAは、TMVの特徴を有する(および/または、TMVの配列を含む)。
【0061】
一局面において、本発明は、対象標的タンパク質またはポリペプチドを発現する幼若植物(例えば、発芽実生)を提供することが理解されよう。ある実施態様では、幼若植物は、トランスジェニック種子から育成される;本発明はさらに、本明細書に記載される方法のために生成および/または利用することが可能な種子を提供する。任意の対象遺伝子についてトランスジェニックな種子は、発芽することが可能であり、対象タンパク質またはポリペプチドの生産のために任意に誘発することが可能である。例えば、任意の対象遺伝子を発現することが可能な種子は、発芽することが可能であり、かつ、I)ウィルス感染、II)アグロインフィルトレーション、またはIII)ウィルスゲノムを含む細菌を通じて誘発することが可能である。任意のモノクロナール抗体の重鎖または軽鎖のトランスジーンを発現することが可能な種子は、発芽させ、完全長分子の生産のために、I)ウィルス感染、II)アグロインフィルトレーション、またはIII)ウィルスゲノムを含む細菌の接種を通じて誘発することが可能である。sIgAなどの複数成分を含む複合分子の一つ以上の成分のトランスジーンを発現することが可能な種子は、発芽させ、完全に機能的な分子の生産のために、I)ウィルス感染、II)アグロインフィルトレーション、またはIII)ウィルスゲノムを含む細菌の接種を通じて使用することが可能である。健康で、非トランスジェニック植物から得られる種子を、発芽させ、標的配列の生産のために、I)ウィルス感染、II)アグロインフィルトレーション、またはIII)ウィルスゲノムを含む細菌の接種を通じて使用することが可能である。
【0062】
ある実施態様では、幼若植物は、トランスジェニックではない種子から育成された。通常、そのような幼若植物は、対象タンパク質またはポリペプチドの直接的発現を指令するウィルス配列を抱える。ある実施態様では、この植物はさらに、ウィルス配列を「発射する」配列を任意に含むアグロバクテリウム配列を有してもよい。
【0063】
植物においてタンパク質またはポリペプチドを発現するためのシステム
本発明によれば、幼若植物(例えば、発芽実生)においてタンパク質またはポリペプチドを発現するために、異なる様々のシステムを使用することが可能である。ある実施態様では、トランスジェニック細胞系統または種子が生成され、次に、発芽され、一定時間育成され、それによって、トランスジェニック配列に含まれるタンパク質またはポリペプチドが、幼若植物組織において(例えば、発芽実生において)生産される。トランスジェニック植物細胞および/または種子の生産のための典型的技術として、AGROBACTERIUM TUMEfACIENS介在遺伝子転送、および微粒子発射法または電気穿孔が挙げられる。
【0064】
ある実施態様では、一過性発現システムが利用される。植物組織においてタンパク質またはポリペプチドの一過性発現を実現するための典型的技術は、植物ウィルスを利用する。ウィルス形質転換は、所望の産物の獲得前に実験的または世代的遅延無しに収穫することが可能な、比較的速やかで、比較的安価な胚および発芽実生の形質転換法である。一方、減弱されないウィルスは、他の植物に感染し、環境不安を引き起こす可能性がある。
【0065】
本発明は、ウィルス発現システム(例えば、速やかな発現、高レベルの生産)、およびアグロバクテリウム形質転換(例えば、調節投与)の利点を有する発現システムを提供する。特に、下記に詳述するように、本発明は、アグロバクテリウム構築体(すなわち、アグロバクテリウムにおいて複製することが可能で、したがって、アグロバクテリウム輸送によって植物細胞に輸送が可能な構築体)が植物プロモーターを含むシステムを提供する。該プロモーターは、植物に導入されると、対象タンパク質またはポリペプチドの遺伝子を担うウィルス配列(例えば、ウィルスの複製配列を含む)の発現を指令する。このシステムは、植物において、タンパク質またはポリペプチドの、調節された、高レベルの、一過性発現を可能とする。
【0066】
発現システムの異なる様々の実施態様が、そのあるものはトランスジェニック植物を生産し、別のあるものは一過性発現を実現する、下記に個別にさらに詳細に論じられる。これらの技術のいずれについても、本明細書を読む当業者であれば、幼若植物組織(例えば、発芽実生)においてタンパク質またはポリペプチドを発現するためにプロトコールをどのように調整し、最適化したらよいか理解されるであろう。
【0067】
アグロバクテリウム形質転換
アグロバクテリウムは、グラム陰性ファミリーRHIZOBIACEAEの代表的属である。この菌種は、植物腫瘍、例えば、クラウンゴールおよび毛根病の原因となる。腫瘍に特徴的な植物の脱分化組織において、オパインと呼ばれるアミノ酸誘導体が、アグロバクテリウムによって生産され、植物によって取り込まれる。オパインの発現を引き起こす細菌遺伝子は、キメラ発現カセット調節要素の好適な供給源となる。本発明にしたがって、成熟植物よりも単純により早く収穫される幼若植物(例えば、食用発芽実生を含む発芽実生)を生成するために、アグロバクテリウム形質転換システムを使用してもよい。アグロバクテリウム形質転換法は、製剤タンパク質を発現する幼若植物(例えば、発芽実生)を再生するために簡単に適用することが可能である。
【0068】
一般に、アグロバクテリウムによる植物の形質転換は、植物/細菌ベクターを担うアグロバクテリウム TUMERIfACIENSとの共時培養による組織培養において育成される植物細胞の形質転換を含む。このベクターは、製剤タンパク質をコードする遺伝子を含む。このアグロバクテリウムは、植物宿主細胞にこのベクターを転送し、次いで、抗生物質処理によって除去される。製剤タンパク質を発現する、形質転換された植物細胞を、選別し、分化させ、最終的には、完全な小植物体に再生させる(HELLENS ET AL., PLANT MOLECULAR BIOLOGY (2000) 42 (819−832); PILON−SMITHS ET AL., PLANT PHYSIOLOG. (JAN 1999) 119(1):123−132; BARfIELD AND PUA PLANT CELL REPORTS (1991) 10(6/7); 308−314); RIVA ET AL., JOURNAL Of BIOTECHNOLOGY (DEC 15, 1998) 1(3))。なお、これらそれぞれを引用により本明細書に含める。
【0069】
本発明において使用されるアグロバクテリウム発現ベクターは、発現カセットの上流および下流の同系配列と共に、植物において活動するように設計された、製剤タンパク質をコードする遺伝子(または発現カセット)を含む。この同系配列は、一般に、プラスミドまたはウィルス起源のものであって、細菌から所望の植物宿主にDNAを転送するのに必要な特徴をベクターに供給する。
【0070】
基本的細菌/植物ベクター構築体は、広範な宿主範囲の前核細胞用複製起点;前核細胞選択マーカーを提供することが好ましい。好適な前核細胞選択マーカーとしては、アンピシリンまたはテトラサイクリンなどの抗生物質に対する耐性が挙げられる。従来技術で周知の、さらに別の機能をコードする他のDNA配列も、このベクター中に存在してもよい。
【0071】
植物染色体に対する、アグロバクテリウム介在性DNAの転送には、アグロバクテリウム T−DNAが必要とされる。T−DNAの腫瘍誘発性遺伝子は、通常、アグロバクテリウム発現構築体の構築中に除去され、製剤タンパク質またはポリペプチドをコードする配列によって置換される。T−DNA境界配列は、T−DNA領域の植物ゲノムへの取り込みを起動するため、保持される。製剤タンパク質の発現が簡単に検出されない場合は、細菌/植物ベクター構築体はさらに、植物細胞が形質転換されたか否かを決定するのに好適な、選択可能なマーカー遺伝子、例えば、NPTIIカナマイシン耐性遺伝子を含む。
【0072】
同じ、または異なる細菌/植物ベクター(Tiプラスミド)の上に、Ti配列がある。Ti配列は、TーDNAの切断、転送、および植物ゲノムへの取り込みに与る、一組のタンパク質をコードする、有毒遺伝子を含む(SCHELL, SCIENCE (1987)237:1176ー1183)。植物ゲノムに対する異種配列の一体化を可能にするのに好適な、他の配列はさらに、相同組み換えのためのトランスポゾン配列などを含んでもよい。
【0073】
ある構築体は、対象タンパク質をコードする発現カセットを含む。ある任意の形質転換のために、一つ、二つ、またはそれ以上の発現カセットを使用してよい。組み換え発現カセットは、製剤タンパク質コード配列の外に、少なくとも下記の要素:プロモーター領域、植物の5′未翻訳配列、開始コドン(発現遺伝子がそれ自身の開始コドンを持つかどうかに依存する)、および、転写および翻訳終結配列を含む。本発明の発現カセットまたはキメラ遺伝子の中にさらに、転写および翻訳終結因子を含ませてもよい。この発現カセットにはさらに、タンパク質の加工および転置を適宜可能とするシグナル分泌配列を含ませてもよい。
【0074】
様々なプロモーター、シグナル配列、および転写および翻訳終結因子が、例えば、LAWTON ET AL., PLANT MOL. BIOL (1987) 9:315−324、または米国特許第5,888,789号に記載される。なお、これらを引用により本明細書に含める。さらに、抗生物質耐性用構造遺伝子が、選択因子として一般に利用される(FRALEY ET AL., PROC. NATL. ACAD. SCI., USA (1983) 80:4803−4807)。なお、これらを引用により本明細書に含める。カセットの5′および3′末端における一意の制限酵素部位は、既存のベクターへの簡単な挿入を可能とする。
【0075】
少なくとも一つのT−DNA境界配列を含む、アグロバクテリウム介在形質転換のための、他のバイナリーベクターシステムが、PCT/EP99/07414に記載される。なお、この文書を引用により本明細書に含める。アグロバクテリウム介在形質転換に関するさらに詳細が、GELVIN, S.B., “Agrobacterium−MEDIATED PLANT TRANSfORMATION: THE BIOLOGY BEHIND THE “GENE−JOCKEYING” TOOL”, MICROBIOLOGY AND MOLECULAR BIOLOGY REVIEWS, 67(1): 16−37 (2003)、およびその中の参照文献、この文献、およびその参照文献の全てを引用により本明細書に含める;LORENCE A, VERPOORTE R., GENE TRANSfER AND EXPRESSION IN PLANTS, METHODS MOL BIOL. (2004) 267: 329−50に見出される、この文献を引用により本明細書に含める。
【0076】
本発明のある実施態様では、植物の中に核酸配列を導入するために、AGROBACTERIA以外の細菌が使用される。例えば、BROOTHAERTS W, ET AL., GENE TRANSfER TO PLANTS BY DIVERSE SPECIES Of BACTERIA, NATURE (2005), 433(7026):629−633、この文献を引用により本明細書に含める。
【0077】
AGROBACTERIA(または他の細菌)によって感染された植物から、対象タンパク質またはポリペプチドをコードする異種遺伝子が導入されるように、種子を調製する。このような種子を、収穫し、乾燥し、洗浄し、所望の遺伝子産物の生存性、および存在および発現について試験する。一旦これが決定されたならば、要時に使用されるよう、種子ストックを、温度、湿度、衛生状態、および安全の適切な条件下に保存する。次いで、全体植物を、例えば、EVANS ET AL., HANDBOOK Of PLANT CELL CULTURES, VOL. 1: MACMILLAN PUBLISHING CO., NEW YORK, 1983); AND VASIL I.R. (ED.), CELL CULTURE AND SOMATIC CELL GENETICS Of PLANTS, ACAD. PRESS, ORLANDO, VOL. I, 1984, AND VOL. III, 1986,に記載されるように、培養プロトプラストから再生する。なお、これらの文献を引用により本明細書に含める。
【0078】
ある実施態様では、植物は、成熟植物には再生されない。例えば、ある実施態様では、植物は、発芽実生段階まで再生される。別の実施態様では、全体植物は、再生されて種子ストックを生産し、本発明にしたがって使用される幼若植物(例えば、発芽実生)が、この種子ストックの種子から再生される。
【0079】
プロトプラストを分離し、全体再生植物まで培養することの可能な植物は全て、本発明にしたがってAGROBACTERIAによって形質転換し、それによって、対象タンパク質またはポリペプチドをコードする転移遺伝子を含む全体植物を回収することが可能である。ほとんど全ての植物が、例えば、ただしこれらに限定されないが、食用となる芽を生産する全ての主要品種を含む植物が、培養細胞または組織から再生させることが可能であることが知られる。いくつかの好適な植物として、例えば、アルファルファ、緑豆、大根、小麦、辛子、ほうれん草、にんじん、ビート、玉ねぎ、にんにく、セロリ、ルバーブ、葉物、例えば、キャベツまたはレタス、クレソン(WATERCRESSまたはCRESS)、ハーブ、例えば、パセリ、ミント、またはクローバー、カリフラワー、ブロッコリー、大豆、レンズ豆、食用花、例えば、ひまわりなどが挙げられる。
【0080】
形質転換細胞から植物を再生するための手段は、植物の品種によってまちまちであってもよい。しかしながら、当業者であれば、一般に、異種遺伝子のコピーを含む形質転換プロトプラストの縣濁液が先ず用意されることを理解するであろう。カルス組織が形成され、シュートがカルスから誘発され、次いで根を生えさせてもよい。それとは別に、プロトプラスト縣濁液から胚形成を誘発することも可能である。これらの胚は、天然の胚として発芽し植物を形成する。種子の水分含量を35〜45%の間に増すように種子を水に浸すか、水滴を掛けると、発芽が起動される。芽生えが進行するためには、種子は、通常、温度および気流の調節条件下、水分で飽和した空気中に維持される。培養液は、一般に、各種アミノ酸、およびホルモン、例えば、オーキシンおよびサイトキニンを含む。さらに、培養液にグルタミン酸およびプロリンを加えることは、特にアルファルファなどの品種のためには、有利である。シュートおよび根は、通常、同時に発達する。効率的再生は、培養液、遺伝型、および培養体の経歴に依存する。これらの三つの変数が調節されていれば、再生は完全に再現可能、反復可能である。
【0081】
形質転換植物細胞から育成された成熟植物は自家受粉され、非分離性の、ホモ接合体トランスジェニック植物が特定される。この純系植物は、対象タンパク質またはポリペプチドをコードする転移遺伝子を含む種子を生産する。これらの種子は、発芽させ、幼若植物(例えば、発芽実生)段階まで育成して、対象タンパク質またはポリペプチドを生産することが可能である。
【0082】
関連実施態様では、トランスジェニック種子(通常、ゲノムに組み込まれた、対象タンパク質またはポリペプチドをコードする転移遺伝子を担う)は、種子製品として、収穫のために幼若植物を適切な段階まで育成するにはどうしたらよいか、および/または、本明細書に記載される投与または処方に関する案内と一緒に販売されてもよい。別の関連実施態様では、純系トランスジェニック植物から、ハイブリッド、または、所望の性質(例えば、対象タンパク質またはポリペプチドをコードする転移遺伝子)を体現する新規変種が開発される。
【0083】
直接的組み込み
さらに、本発明にしたがって植物組織に対象タンパク質またはポリペプチドをコードする発現構築体を導入するために、微粒子発射または電気穿孔による、DNA断片の、植物細胞ゲノムへの直接的組み込みを用いてもよい(例えば、KIKKERT, J.R., HUMISTON ET AL., IN VITRO CELLULAR & DEVELOPMENTAL BIOLOGY. PLANT: JOURNAL Of THE TISSUE CULTURE ASSOCIATION. (JAN/FEB 1999) 35(1):43−50; BATES, G.W. FLORIDA STATE UNIVERSITY, TALLAHASSEE, FL. MOLECULAR BIOTECHNOLOGY (OCT 1994) 2(2):135−145を参照されたい)。さらに詳細には、対象タンパク質またはポリペプチドをコードする遺伝子を含むベクターは、様々な技術によって、植物細胞の中に導入することが可能である。前述したように、ベクターは、植物細胞において使用される選択可能なマーカーを含んでいてよい。ベクターはさらに、その選択および二次宿主における継代を可能とする配列、例えば、複製起点および選択可能マーカーを含む配列を含んでもよい。通常、二次宿主として細菌および酵母が挙げられる。好ましい一実施態様では、二次宿主は大腸菌であり、複製起点は、COLE1型複製起点であり、選択可能マーカーは、アンピシリン耐性をコードする遺伝子である。このような配列は、従来技術で周知であり、市販されている(例えば、CLONTECH, PALO ALTO, CA、または STRATAGENE, LA JOLLA, CA)。
【0084】
本発明のベクターはさらに修飾されて、AGROBACTERIUM TUMEfACIENSベクターに対する相同領域、AGROBACTERIUM TUMEfACIENS由来のTーDNA境界領域、および、キメラ遺伝子、または前述の発現カセットを含む、植物形質転換中間プラスミドを形成してもよい。さらに別のベクターとして、AGROBACTERIUM TUMEfACIENSの、無防備化された植物腫瘍誘発プラスミドが挙げられる。
【0085】
本実施態様によれば、本発明のベクターの直接的形質転換は、組み換えDNAを機械的に転移するために、マイクロピペットを用いて、植物細胞の中にベクターを直接マイクロインジェクションすることを含む(例えば、CROSSWAY, MOL. GEN. GENET., 202:179−185, 1985を参照されたい、なお、この文献を引用により本明細書に含める)。遺伝物資も、ポリエチレングリコールを用いることによって植物細胞の中に転移してよい(例えば、KRENS ET AL., NATURE (1982) 296:72−74を参照されたい)。核酸セグメントの、もう一つの直接導入法は、核酸を有する微小粒子、すなわち、その基質の中または表面のいずれかに核酸を有する小ビーズまたは粒子の高速弾丸による浸透である(例えば、KLEIN ET AL., NATURE (1987) 327:70−73; KNUDSEN AND MULLER PLANTA (1991) 185:330−336を参照されたい)。さらに別の導入法は、プロトプラストと、他の実体、例えば、ミニセル;細胞、リソソーム、または、他の融合可能な脂質表面を持つ物体(例えば、FRALEY ET AL., PROC. NATL. ACAD. SCI. USA (1982) 79:1859−1863を参照されたい)との融合である。本発明のベクターはまた、電気穿孔によって植物細胞の中に導入されてもよい(例えば、FROMM ET AL. PROC. NATL. ACAD. SCI. USA (1985) 82:5824を参照されたい)。この技術によれば、植物プロトプラストは、遺伝子構築体を含むプラスミドの存在下に電気穿孔される。高電場強度の電気パルスは、生体膜を可逆的に透過可能とし、プラスミドの導入を可能とする。電気穿孔された植物のプロトプラストはその形を改め、細胞壁を分離させ、植物カルスを形成するが、カルスは、本発明の発芽実生を形成するように再生させることが可能である。当業者であれば、それから食用の発芽実生を生成するように使用可能とするためには、植物細胞を形質転換するこの方法をどのように利用したらよいかを理解されるであろう。
【0086】
ウィルス形質転換
本発明によれば、種子、胚、または発芽実生に外来タンパク質を感染し、生産するために、植物ウィルスベクターが使用される。この点で、感染は、細胞の中にウィルスゲノム、またはその一部を導入するための任意の方法、例えば、ただしこれらに限定されないが、ウィルスの天然の感染プロセス、外傷、接種などを含む方法を含む。この用語は、細胞中に、ゲノムRNA転写体、またはそのcDNAコピーを導入することを含む。ウィルスゲノムは、完全ゲノムである必要はないが、通常、複製を可能とするほど十分な配列を含む。ゲノムは、ウィルスのレプリカーゼをコードしてもよく、複製に必要なCIS−活動性核酸要素を含んでもよい。短いペプチドの外、大型の複雑なタンパク質をコードする外来遺伝子(例えば、トバモウィルスベクターによる)の高レベル発現が、例えば、MCCORMICK ET AL. (PROC. NATL. ACAD. SCI. USA (1999) 96:703−708; KUMAGAI ET AL. (GENE (2000) 245:169−174、および VERCH ET AL. (J. IMMUNOL. METHODS (1998) 220, 69−75、なお、これらの文献それぞれを引用により本明細書に含める)。このように、植物ウィルスベクターは、短いペプチドの外、大型の複雑なタンパク質を発現する能力を持つことが実証されている。
【0087】
ある実施態様では、製剤タンパク質、例えば、インスリン、GAD、および1型糖尿病関連IA−2を発現する、幼若植物(例えば、新芽)が、宿主/ウィルスシステムを利用して生成される。ウィルス感染によって生産される幼若植物は、あらかじめ安全であることが証明されている、対象タンパク質またはポリペプチドの供給源となる。例えば、芽は、動物病原体による汚染とは無縁である。例えば、タバコと違って、食用新芽のタンパク質は、少なくとも理論的には、精製することなく経口用途に使用が可能と考えられるが、これは、著明にコストを下げる。
【0088】
さらに、ウィルス/幼若植物(例えば、新芽)システムは、大規模化および工業生産のための、はるかに簡単で、より安価なルートを提供する。なぜなら、(対象タンパク質またはポリペプチドをコードする)関連遺伝子は、ウィルスに導入され、これは、数日以内に商業規模に育成することが可能であるからである。一方、トランスジェニック植物の方は、大規模施行または商業化のために十分な種子または植物原料が利用可能となるには、最大5−7年を要する可能性がある。
【0089】
本発明によれば、植物RNAウィルスは、外来タンパク質発現用のベクターとして魅力的と思わせるいくつかの利点を有する。いくつかの植物RNAウィルスについて、その分子生物学および病理学的特徴は十分に解明されており、ウィルスの生物学、遺伝学、および調節配列については相当の知識がある。大抵の植物RNAウィルスは小さなゲノムを持ち、遺伝操作を簡便にするために、感染性cDNAクローンの利用が可能である。一旦感染性ウィルス物質が、感受性を持つ宿主細胞の中に入ると、それは高レベルで複製し、全植物中に急速に拡散する(接種後1から10日)。ウィルス粒子は、感染組織から簡単に、経済的に回収することが可能である。ウィルスは、広範な宿主範囲を持つので、単一構築体を、いくつかの感受性菌種の感染のために使用することが可能である。これらの特徴は、簡単に新芽に転移させることが可能である。
【0090】
図1は、植物ウィルスを用いて外来遺伝子を発現するための、いくつかの異なる戦略を示す。外来配列は、ウィルス遺伝子の一つを所望の配列で置換することによって、ウィルスゲノムの適切な位置において外来遺伝子を挿入することによって、または、ウィルスの構造タンパク質に外来ペプチドを融合させることによって発現させることが可能である。さらに、これらの方法のいずれかを互いに組み合わせて、ウィルスの基本機能の、超越的相補的置換によって外来配列を発現させることが可能である。タバコモザイクウィルス(TMV)、アルファルファモザイクウィルス(ALMV)、およびそのキメラ体を用い、ウィルス感染植物において外来配列を発現するためのツールとしていくつかの異なる戦略が存在する。
【0091】
ALMVのゲノムは、ウィルスのBROMOVIRIDAE科の代表であり、三つのゲノムRNA(RNA1−3)、およびサブゲノム(RNA4)から成る(図2)。ゲノムRNA1および2は、それぞれ、ウィルスのレプリカーゼタンパク質P1および2をコードする。ゲノムRNA3は、細胞間移動タンパク質P3、およびコートタンパク質(CP)をコードする。このCPは、ゲノムRNA3から合成されるサブゲノムRNA4から翻訳され、感染を開始するのに必要である。実験から、CPは、複数の機能、例えば、ゲノム活性化、複製、RNAの安定性、症状形成、およびRNAのカプシド封入を含む機能に関与することが明らかにされた(例えば、BOL ET AL., VIROLOGY (1971) 46:73−85; VAN DER VOSSEN ET AL., VIROLOGY (1994) 202:891−903; YUSIBOV ET AL., VIROLOGY 208:405−407; YUSIBOV ET AL., VIROLOGY (1998) 242:1−5; BOL ET AL.,(百本の参考文献の総覧);J. GEN. VIROL. (1999)80:1089−1102; DE GRAAff, VIROLOGY (1995)208:583−589; JASPARS ET AL., ADV. VIRUS RES (1974). 19, 37−149; LOESCH−FRIES, VIROLOGY (1985)146:177−187; NEELEMAN ET AL., VIROLOGY (1991)181:687−693; NEELMAN ET AL., VIROLOGY (1993) 196:883−887; VAN DER KUYL ET AL., VIROLOGY (1991)183:731−738; VAN DER KUYL ET AL., VIROLOGY (1991)185:496−499を参照されたい)。
【0092】
ウィルス粒子のカプシド封入は、種子、胚、または幼若植物(例えば、発芽実生)の接種部位から未接種部位への長距離移動、および全身性感染にとって必須である。本発明によれば、接種は、植物発達の任意の段階で行うことが可能である。胚および新芽では、接種ウィルスの拡散はきわめて急速でなければならない。ALMVビリオンは、一意のCP(24KD)によってカプシド封入され、1型を超える粒子を形成する。粒子のサイズ(長さ30から60NM、直径18NM)および形状(球形、楕円形、または桿形)は、カプシド封入されるRNAのサイズに依存する。集合されると、ALMV CPのN末端は、ウィルス粒子の表面に配置されると考えられ、ウィルスの集合を妨げないようである(BOL ET AL., VIROLOGY (1971)6:73−85)。さらに、そのN末端に、余分の38アミノ酸ペプチドを有するAIMV CPは、インビトロで粒子を形成し、生物学的活性を保持する(YUSIBOV ET AL., J. GEN. VIROL. (1995)77:567−573)。
【0093】
ALMVは、広い宿主範囲を持ち、その範囲は、種子、胚、および新芽を含む、いくつかの、農業的に貴重な収穫植物を含む。これらの特徴が合わさって、AIMV CPは、担体分子として優れた候補とされ、発達の発芽段階において植物中で外来配列を発現するための魅力的な候補ベクターとされる。さらに、TMVなどの異種ベクターによる発現の際、ALMV CPは、ウィルスの感染性に干渉することなくTMVゲノムをカプシド封入する(YUSINOV ET AL., PROC. NATL. ACAD. SCI. USA (1997)94:5784−5788、なお、この文献を引用に本明細書に含める)。これによって、外来配列に融合したALMV CPの担体ウィルスとしてTMVを使用することが可能となる。
【0094】
トバモウィルスの原型であるTMVは、17.0KD CPによってカプシド封入される、単一鎖プラスセンスRNAから成るゲノムを持ち、このため、棒状粒子(長さが300 NM)を形成する(図2)。このCPは、TMVの唯一の構造タンパク質であり、感染宿主におけるウィルスのカプシド封入、および長距離移動に必要である(SAITO ET AL., VIROLOGY (1990)176:329−336)。183および126 KDタンパク質は、ゲノムRNAから翻訳され、ウィルスの複製に必要とされる(ISHIKAWA ET AL., NUCLEIC ACIDS RES. (1986)14:8291−8308)。30 KDタンパク質は、ウィルスの細胞間移動タンパク質である(MESHI ET AL., EMBO J. (1987)6:2557−2563)。移動およびコートタンパク質は、サブゲノムMRNAから翻訳される(HUNTER ET AL., NATURE (1976)260:759−760; BRUENING ET AL., VIROLOGY (1976)71:498−517; BEACHY ET AL., VIROLOGY (1976)73:498−507、なお、これらの文献のそれぞれを引用により本明細書に含める)。
【0095】
ALMVおよびTMVゲノムの模式図を図2に示す。ALMVのRNA1および2は、それぞれ、レプリカーゼタンパク質P1およびP2をコードする。ゲノムRNA3は、細胞間移動タンパク質P3およびウィルスコートタンパク質(CP)をコードする。CPは、ゲノムRNA3から合成されるサブゲノムRNA4から翻訳される。TMVの126 KDおよび183 KDタンパク質は、複製に必要であり;30 KDタンパク質は、ウィルスの細胞間移動タンパク質であり、17 KDタンパク質は、ウィルスのCPである。CPおよび30 KDタンパク質は、サブゲノムRNAから翻訳される。矢印は、サブゲノムプロモーターの位置を示す。
【0096】
花の形質転換
植物細胞に対象タンパク質またはポリペプチドをコードする遺伝子を導入するために利用してもよい、他の方法としては、植物の花の形質転換が挙げられる。ARABIDOPSIS THALIANAの形質転換は、該植物の花を、AGROBACTERIUM TUMEfACIENSの液に浸すことによって実現が可能である(CURTIS AND NAM, TRANSGENIC RESEARCH (AUG 2001) 10 4:363−371; QING ET AL., MOLECULAR BREEDING: NEW STRATEGIES IN PLANT IMPROVEMENT (FEB 2000) (1):67−72)。形質転換植物は、「浸透」植物によって生成される種子集団の中に形成される。花の発達中のある特定の時点で、孔が子房に発生し、それを通じて、AGROBACTERIUM TUMEfACIENSが子房の中に進入する。一旦子房の中に入ると、AGROBACTERIUM TUMEfACIENSは、増殖し、個々の胚珠を形質転換する(DESfEUX ET AL., PLANT PHYSIOLOGY (JULY 2000) 123(3):895−904)。この形質転換された胚珠は、子房内部で種子の典型的経路をたどる。
【0097】
アグロバクテリウム介在一過性発現
本明細書に示すように、本発明の多くの実施態様では、植物におけるタンパク質またはポリペプチドの速やかな(例えば、一過性の)発現のためのシステムが望ましい。特に、本発明は、植物における(特に、幼若植物、例えば、発芽実生における)このような速やかな発現を実現するための強力なシステムを提供する。このシステムは、対象タンパク質またはポリペプチドをコードするウィルス発現システムを輸送するためにアグロバクテリウム構築体を利用する。
【0098】
具体的には、本発明によれば、複製配列を含むアグロバクテリウム配列を含み、さらに、対象タンパク質またはポリペプチドをコードする遺伝子を担う、植物ウィルス配列(自己複製配列を含む)を含む、「発射ベクター」が準備される。この発射ベクターは、好ましくは、事実上システム輸送を可能とするAGROINfILTRATION法によって植物組織の中に導入される。一過性形質転換では、発射ベクターの、非組み込みT−DNAコピーは、一過性に核の中に滞在し、転写され、担持遺伝子の発現をもたらす(KAPILA ET AL., 1997)。ウィルスベクターと違って、アグロバクテリウム介在一過性発現は、対象遺伝子発現の全身的拡散をもたらすことはできない。このシステムの一利点は、2 KBよりも大型の遺伝子をクローンする能力であって、ウィルスベクターでは獲得が不可能と思われるような構築体を生成することができることである(VOINNET ET AL., 2003)。さらに、この技術を用いると、植物を、一つを超えるトランスジーンで形質転換し、そうすることによって、マルチマータンパク質(例えば、複合タンパク質から成る抗体サブユニット)を発現し、集合することが可能となることである。さらに、異なるアグロバクテリウムによる共浸潤による複数のトランスジーンの共発現の可能性が、分離浸潤、または混合培養のいずれかによって利用可能となる。
【0099】
ある実施態様では、発射ベクターは、AGROBACTERIAにおける選別(または、少なくとも検出)、さらに、浸潤組織における選別/検出を可能とする配列を含む。さらに、発射ベクターは、通常、植物の中で転写されてウィルスRNAを生成し、次いで、ウィルスタンパク質を生成する配列を含む。さらに、ウィルスタンパク質およびウィルスRNAの生産は、対象とする製薬学的活性タンパク質をコードするRNAの多数コピーの速やかな生産をもたらす。このような生産は、比較的短い期間における対象標的の急速なタンパク質生産をもたらす。したがって、タンパク質生産のための高効率システムを生成することが可能である。
【0100】
ウィルス発現ベクターを利用するAGROINfILTRATION法は、そのベクターがトランスジェニック植物を生成する価値があるものかどうかを決定するのに先立って、発現レベルを確かめるために、微量の対象タンパク質を生産するのに使用することが可能である。それとは別に、またはそれに加えてさらに、ウィルス発現ベクターを利用するAGROINfILTRATION法は、一次的生産プラットフォームとして莫大量のタンパク質を生産することが可能な植物を速やかに生成するのに有用である。したがって、この一過性発現システムは、工業規模において使用することが可能である。
【0101】
さらに提供されるものは、異なる種々のアグロバクテリウムプラスミド、バイナリープラスミド、または、それらの誘導体、例えば、PBIV、PBI1221、PGREENなどの内のいずれかであって、本発明の、上記およびその他の局面において使用が可能なものである。多数の好適なベクターが従来技術で知られており、これを、従来技術で既知の方法、または本明細書に記載される方法によって指令および/または修飾し、本明細書に記載される方法において利用さるようにすることが可能である。
【0102】
図18は、ある特定の、例示の発射ベクターpBID4の模式図を示す。このベクターは、植物への導入後、組み換えウィルスゲノムの最初の転写を起動する、カリフラワーモザイクウィルス(DNA植物ウィルス)の35Sプロモーター、および、アグロバクテリウムノパリンのシンターゼの転写ターミネーターであるNOSターミネーターを含む。このベクターはさらに、ウィルス複製(126/183K)、および細胞間移動(MP)のための遺伝子を含む、タバコモザイクウィルスゲノムの配列を含む。このベクターはさらに、対象ポリペプチドをコードする遺伝子を含む。該遺伝子は、タバコモザイクウィルスゲノム配列の中の一意のクローニング部位に挿入され、コートタンパク質・サブゲノムMRNAプロモーターの転写調節下に置かれる。この「標的遺伝子」(すなわち、対象タンパク質またはポリペプチドをコードする遺伝子)は、TMVコートタンパク質の配列を置換するので、得られるウィルスベクターは、CP含有ベクターよりも組み換えに対して受容的でない、裸の自己複製RNAであり、かつ、効果的に拡散せず、環境の中で生存することができない。左および右のボーダー配列(LBおよびRB)は、ベクターを担う組み換えアグロバクテリウムによる植物の浸潤に次いで、植物細胞の中に転移される発射ベクターの領域を区画する。このベクターを担うアグロバクテリウムを植物組織の中に導入すると(通常、AGROINfILTRATIONによるが、それとは別に、インジェクションまたは他の手段によってもよい)、LBとRBの間の配列の、複数の、単一鎖DNA(ssDNA)コピーが生成され、数分の内に放出される。次に、これらの導入配列は、ウィルス複製によって増幅される。標的遺伝子の翻訳は、短期間における大量の標的タンパク質またはポリペプチドの蓄積をもたらす。
【0103】
本発明のある実施態様では、アグロバクテリウム介在一過性発現は、植物組織KG当たり、標的タンパク質、最大約5 G以上を生産する。例えば、ある実施態様では、最大約4、3、2、1、または0.5 Gの標的タンパク質が、植物組織1 KG当たり生産される。ある実施態様では、植物組織1 KG当たり、少なくとも約20−500 MG、または約50−500の標的タンパク質が、または、約50−200、または約50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、または約200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、1000、1500、1750、2000、2500、3000 MGが生産される。
【0104】
本発明のある実施態様では、これらの発現レベルは、浸潤から、約6、5、4、3週間、または2週間以内に実現される。ある実施態様では、これらの発現レベルは、発現構築体導入から、約10、7、5、4、3、2日以内、場合によっては1日以内に実現される。したがって、導入(例えば、浸潤)から収穫までの期間は、通常、約2週間、10日未満、または1週以内である。さらに、本発明の、この実施態様のきわめて魅力的な一局面は、アミノ酸配列の選別から(「予備的」発現実験に要する時間も含めて)約8週間以内にタンパク質の生産を可能とすることである。さらに、各バッチのタンパク質は、通常、約8週、約6週、5週以内に生産することが可能である。当業者であれば、これらの数字は、使用される植物の種類に応じて幾分変動することを理解されるであろう。豆を含む、大抵の新芽は、上に示した数値内に納まる。しかしながら、NICOTIANA BENTHAMIANAは、特に浸潤前は、もっと長く育成してもよい。なぜなら、これらは、成長が比較的遅いからである(スピードがはるかに遅いことによる)。他の予想される調整も、使用される特定の植物の生物学に基づいて当業者には明らかであろう。
【0105】
本発明人らは、異なる種々の幼若植物において各種の標的タンパク質およびポリペプチドを生産するために発射ベクターシステムを使用してきた。本発明人らは、驚くべきことに、ある種の豆品種、例えば、マローファットピース、BILL JUMP PEA、YELLOW TRAPPER PEA、SPECKLED PEA、および緑豆が、本発明のこの局面の実施において特に有用であることを見出した(例えば、実施例7を参照)。
【0106】
本発明人らはさらに、各種NICOTIANA植物、特に、NICOTIANA BENTHAMIANAを含む植物が、本発明のこの局面に特に有用であることを見出した。当業者であれば、NICOTIANA植物は、一般に、「新芽」とは見なされないことを理解するであろう。にも拘わらず、本発明は、幼若なNICOTIANA植物(特に、NICOTIANA BENTHAMIANAの幼若植物)は、本発明の実施において有用であることを教唆する。一般に、本発明の本実施態様の実施では、NICOTIANA BENTHAMIANA植物は、浸潤(すなわち、発射ベクターを含むアグロバクテリウムの輸送)前に適切量のバイオマスの発達を可能とするのに十分な時間育成される。通常、この植物は、浸潤前、約3週間以上、典型的には約4週間以上、または、約5〜6週の間の期間育成されてバイオマスを蓄積する。
【0107】
本発明人らはさらに、驚くべきことに、TMVおよびALMV配列は共にこの発射ベクター構築体において有効であることが判明したが、ある実施態様では、ALMV配列が、輸送タンパク質またはポリペプチドの高レベル生産の確保に特に有効であることを見出した。
【0108】
したがって、本発明のある特定実施態様では、対象タンパク質またはポリペプチドは、対象遺伝子を担うALMV配列の生産を指令する発射ベクターに基づいて、幼若豆植物または幼若NICOTIANA植物(例えば、NICOTIANA BENTHAMIANA)において生産される。
【0109】
発現構築体
本発明において有用な発現構築体の多くの特性は、前述のように、使用される特定の発現システムに対して特異的である。しかしながら、異なる発現システム全体に適用可能ないくつかの局面を、ここでさらに詳細に論ずることにする。
【0110】
ほんの一例を示すならば、本発明の多くの実施態様では、対象タンパク質またはポリペプチド(または核酸)が誘発可能であることが望ましい。このような多くの実施態様では、対象タンパク質またはポリペプチドをコードするRNA(および/または、アンチセンスRNAの生産)は、誘発可能な(例えば、外因性に誘発が可能な)プロモーターの調節下に置かれる。外因性に誘発が可能なプロモーターは、内部刺激ではなく、外部刺激に対して反応して転写体の発現を上昇または低下させる。いくつかの環境因子が、このような外部刺激として活動することが可能である。本発明のある実施態様では、転写は、熱ショックプロモーターなどの熱誘発性プロモーターによって調節される。
【0111】
外部誘発性プロモーターは、増殖が制御調節される設定背景下では特に有用であると考えられる。例えば、熱ショックプロモーターを用いた場合、関連転写体の発現を誘発するには、単純に閉鎖的環境の温度を上昇させればよい。もちろん、熱誘発性プロモーターは、戸外温度は制御することができないので、戸外では絶対に使用できないことは自明である。プロモーターは、戸外温度があるレベルを超えて上昇した場合いつでもスイッチオンされることが考えられる。同様に、戸外温度が低下した場合はいつでもスイッチオフすることが考えられる。この温度シフトは、1日の内にも起こり、例えば、昼間はスイッチオンし、夜間はスイッチオフすることも考えられる。本明細書に記載されるような熱誘発性プロモーターは、戸外とほぼ同程度に気候変動に対して敏感な温室での使用にも実際的ではないことが考えられる。温室において遺伝学的に加工された植物を育成することはきわめて高価である。一方、本システムでは、最大量の発現が収穫ごとに実現されるよう各変数を調節することが可能である。
【0112】
本発明にしたがって利用することが可能な、他の、外部的に誘発可能なプロモーターとして、光誘発性プロモーターが挙げられる。光誘発性プロモーターは、閉鎖的調節可能環境の光が常にオンされている場合、構成的プロモーターとして維持することが可能である。それとは別に、関連転写体の発現は、単純に光をスイッチオンすることによって、発達中のある特定の時点においてスイッチオンすることが可能である。
【0113】
さらに別の実施態様では、化学的に誘発可能なプロモーターが、関連転写体の発現を誘発するために使用される。この実施態様によれば、関連転写体の発現を誘発するために、薬品を、種子、胚、または幼若植物(例えば、実生)に、単純に噴霧する、または水滴をかけるだけでよいと考えられる。水遣りおよび噴霧は、正確に調節することが可能であり、望みの、特定の種子、胚、または幼若植物(例えば、実生)に向けることが可能である。閉鎖環境は、薬品を、意図されるレシピエントから拡散させる可能性のある、風または気流を含まない。したがって、薬品は、意図するレシピエントの上に滞在することが可能である。
【0114】
増殖環境
本発明の一局面は、制御調節育成条件下での、植物におけるタンパク質またはポリペプチド(および/または核酸)の生産である。本発明によれば、幼若植物(例えば、発芽実生)におけるタンパク質またはポリペプチド生産に関連する、一つの魅力的特性は、同じ植物品種が成長体まで育成される場合に必要とされるよりも短い育成時間しか必要とされないことである。さらに、多くの場合、植物が、完全成熟サイズとなるまで育成される場合に必要とされるものよりも、小さなスペースしか使われない。一般に、制御調節環境において製剤タンパク質またはポリペプチドを発現する植物を育成することは、遺伝子加工された植物を育成するよりも、速やかに(植物は、より若い時期に収穫されるので)、かつ、より少ない努力、リスク、および調節配慮の下に薬剤製品を提供する。本発明において使用される、閉鎖、調節可能環境は、天然における植物の交差受粉のリスクを抑制、または除去する。
【0115】
本発明の多くの実施態様では、タンパク質またはポリペプチドは、閉鎖システムにおいて育成される植物において発現される。このようなシステムは、環境汚染のリスクを回避し、さらに、反復的に類似結果を実現することが可能な、調節、再現の可能な環境を提供する。さらにこのようなシステムは、望む場合に、タンパク質またはポリペプチド発現の調節的誘発を、例えば、誘発可能プロモーター、または、本明細書に記載する、他の調節可能な特性を用いることによって実行することが可能である。
【0116】
本発明のある実施態様では、植物は、閉鎖された、調節可能環境において育成される。ある実施態様では、この閉鎖された、調節可能環境は、種子を屋内で育成することが可能な収容ユニットまたは部屋である。この閉鎖された、調節可能環境の全ての環境因子は、制御されてもよい。新芽は、生育するのに光を必要とせず、かつ、照明は高価となる場合があるので、特定の一実施態様では、植物は(例えば、発芽実生段階まで)、光無しで屋内で育成される。
【0117】
本発明の閉鎖、調節可能環境において調節が可能な、その他の環境因子としては、例えば、温度、湿度、水、栄養素、気体(例えば、O2、またはCO2含量、または空気循環)、薬品(糖類および糖誘導体などの小型分子、または、ジベリリンまたはアブシジン酸などの植物ホルモンなど)などが挙げられる。
【0118】
本発明の多くの実施態様では、植物は、水耕栽培によって育成される。水耕育成システムは、いくつかの利点を提供する。例えば、水耕育成システムは、多くの場合、同じ数の植物を育成するのに土壌系システムよりも少ないスペースしか必要としない。栄養素および他の薬剤は、通常、水耕システムを貫流させることが可能であり、土壌系システムよりも制御的育成を実現するのが簡単である。水耕栽培の多くの局面は自動化してよい。さらに、水耕栽培によって育成される植物の収穫は、容易である。植物は、単にその培養液から持ち上げることだけで収穫することが可能である。収穫時に洗浄は必要とされない。濯ぎまたは洗浄無しで水耕環境から直接幼若植物(例えば、発芽実生)を収穫することができるので、収穫された物質の破壊を最小にすることができる。植物の破壊および凋落は、アポトーシスを誘発する。アポトーシスの際、いくつかのタンパク質分解酵素が活性を帯び、これが、発芽実生において発現される製剤タンパク質またはポリペプチドを分解し、該タンパク質の治療活性の低下を招く可能性がある。アポトーシス誘発性タンパク質分解は、成熟植物からのタンパク質の収率を著明に下げる可能性がある。本発明の方法を用いると、アポトーシスは、好ましいことに決して誘発されない(すなわち、アポトーシスは回避される)。なぜなら、例えば、タンパク質が植物から抽出される瞬間まで、収穫は行われないからである。
【0119】
本発明のある実施態様では、植物(例えば、発芽実生)は、発達中任意の時点で、潅水、撒水、または噴霧することが可能なトレイにおいて育成される。例えば、トレイは、発芽実生の発達時、特異的時点および正確な量において、水、栄養素、薬品などを輸送および/または除去する、一つ以上の、潅水、撒水、噴霧、および排水装置と適合されてもよい。例えば、種子は、湿潤状態を維持するために十分な水分を必要とする。過剰な水分は、トレイの貫通孔から部屋の床の排水管の中に排水される。好ましくは、排水は、環境に戻される前に、有害な薬品除去のために適宜処理される。
【0120】
トレイのもう一つの利点は、それらは、きわめて小さな空間の中に納めることが可能であることである。多くの場合、幼若植物(例えば、発芽実生)が生育するためには光は必要とされないので、種子、胚、または幼若植物(例えば、発芽実生)を含むトレイは、垂直に互いに緊密に積み重ねてもよく、これによって、特異的にこの目的のために建設される収容施設において、単位床面積当たり大量のバイオマスが供給されることになる。さらに、トレイの積層体は、この収容ユニットにおいて水平列として配置することが可能である。一旦実生が収穫に適切な段階まで生育したならば(例えば、植物、生産されるタンパク質またはポリペプチドの種類に依存して約2日から14日以上)、個々のトレイは、手動、または、コンベアベルトなどの自動手段によって加工施設に移動される。
【0121】
本発明の実施に適用が可能な育成条件および技術の、様々な局面が、当業者にはすぐに明らかであろう。例えば、誘発可能な発現システムが利用される場合、発現が誘発される時点は、収穫時までに、幼若植物における対象タンパク質またはポリペプチドの発現を最大とするように選択するのが好ましい。ある特定の生育段階で(例えば、発芽から、ある特定の日数後)胚において発現を誘発することが、収穫時における対象タンパク質またはポリペプチドの最大生産をもたらすかもしれない。例えば、発芽4日後、プロモーターから発現を誘発することの方が、3日後、または5日後にプロモーターから発現を誘発するよりも、多くのタンパク質合成を引き起こすかもしれない。当業者であれば、通例の実験によって発現の最大化を実現することが可能であることを理解するであろう。好ましい実施態様では、幼若植物、特に、発芽実生は、発芽の、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12日後に収穫される。別の実施態様では、幼若植物、特にNICOTIANA植物が、発芽後数週間育成される。
【0122】
誘発性発現システムではなく、構成的発現システムが利用される場合、幼若植物は、コード配列の導入からある一定時間後に収穫してよい。例えば、発芽実生が、発達の初期段階(例えば、胚段階)でウィルスによって形質転換された場合、該発芽実生は、形質転換後発現が最大になる時点で、例えば、形質転換後、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、または14日で収穫されてもよい。さらに、幼若植物(例えば、新芽)は、種子の発芽に依存して、形質転換後1、2、3ヶ月以上発達することも可能と考えられる。
【0123】
一般に、一旦製剤タンパク質の発現が始まると、種子、胚、または幼若植物(例えば、発芽実生)は、十分なレベルの、対象製剤タンパク質またはポリペプチドが発現されるまで育成される。ある実施態様では、十分なレベルとは、もしも収穫されたバイオマスを生で食べたとしても、患者に対し治療利益を供給すると考えられるレベルである。それとは別に、十分なレベルとは、製剤タンパク質またはポリペプチドを、そのバイオマスから濃縮または精製して、投与された場合、被検体に治療利益を与える製剤組成物として処方することが可能なレベルである。
【0124】
ある実施態様では、一旦製剤タンパク質の発現が誘発されると、育成は、発芽実生段階まで続けられ、その段階に達した時点で発芽実生は収穫される。ある特に好ましい実施態様では、発芽実生は生のまま収穫される。生の発芽実生を収穫することは、手間と破壊が最小となることを含む、いくつかの利点を有する。
【0125】
特に、本発明は、高レベルの、発現対象タンパク質またはポリペプチド(および/または核酸)を含む、幼若植物のバイオマスを順次提供する独特のシステムを提供する。直接消費されようが、製剤組成物に加工されようが、幼若植物(例えば、発芽実生)が、閉鎖された、調節可能環境で育成される場合、その植物バイオマス、および/または、そのバイオマスから得られる製剤組成物は、消費者に低コストで提供することが可能である。さらに、幼若植物の育成条件が調節可能であるという事実によって、製品の品質および純度は一定とされる。さらに、本発明の、この閉鎖された、調節可能な環境は、科学者たちが、戸外で遺伝学的に加工された農業産物を育成することから身を引くきっかけとなっている、EPAの多くの安全性規制を回避することを可能とする。
【0126】
タンパク質/ポリペプチド調製品
本発明は、幼若植物において生産されるタンパク質またはポリペプチド(および/または活性核酸)の各種調製品および処方を提供する。
【0127】
本発明のある実施態様では、タンパク質またはポリペプチドは、植物組織から単離されず、むしろ、生の幼若植物(例えば、発芽実生)の状態を保持したままで生産される。植物が食用である、ある実施態様では、発現タンパク質またはポリペプチドを含む植物組織は、消費のために直に供給される。したがって、本発明は、発現タンパク質またはポリペプチドを含む幼若植物の食用バイオマス(例えば、食用発芽実生)を提供する。
【0128】
食用幼若植物(例えば、発芽実生)が、十分なレベルの製剤タンパク質またはポリペプチドを発現し、生のまま消費される場合、ある実施態様では、発芽実生が消費されるまで、収穫は全く行われない。このようにして、製剤タンパク質が、治療を要する患者に投与される前に、製剤タンパク質の、収穫誘発性タンパク質分解による破壊が全く起こらないことが保障される。例えば、すぐに消費されてもよい幼若植物(例えば、発芽実生)を、直に患者に輸送することが可能である。それとは別に、遺伝学的に加工された種子または胚は、治療を必要とする患者に輸送され、患者によって発芽実生段階まで育成される。好ましい一実施態様では、遺伝学的に加工された発芽実生の一供給分が、患者、または患者を治療する医師に提供され、所望のある製剤タンパク質を発現する、発芽実生のストックが連続的に培養可能とされる。これは、高価な薬剤を買う余裕もなければ、輸送することもできない、発展途上国の人口集団にとっては特に貴重である。本発明の発芽実生は簡単に育成が可能であるが、その簡便さのため、本発明の発芽実生は、発展途上国の人口集団にとっては特に好ましいものになる。
【0129】
ある実施態様では、植物バイオマスは、消費または処方前に、例えば、ホモジェナイズ、破砕、乾燥、または抽出によって処理される。ある実施態様では、発現されるタンパク質またはポリペプチドは、バイオマスから単離または精製され、製剤組成物に処方される。
【0130】
例えば、生の幼若植物(例えば、新芽)は、粉砕、破砕、または混ぜ合わされて、プロテアーゼ阻害剤を含むバッファーに溶解したバイオマスのスラリーを生成する。ある実施態様では、バイオマスは、空気乾燥、噴霧乾燥、凍結、または凍結乾燥される。成熟植物の場合と同様、これらの方法の内のあるもの、例えば、空気乾燥は、製剤タンパク質またはポリペプチドの活性の損失を招くことが考えられる。しかしながら、利用される植物(例えば、発芽実生)は、きわめて小さく、通常、大きな、表面積・対・体積比を持つので、このようなことが起こることは先ず考えられない。当業者であれば、製剤タンパク質またはポリペプチドのタンパク質分解を最小にしながら、バイオマスを収穫するためにたくさんの技術が利用可能であり、本発明に適用することが可能であることを理解するであろう。
【0131】
投与および製剤組成物
本発明は、治療を必要とする宿主に投与された場合、その製剤活性を維持する、製薬学的に活性を持つタンパク質またはポリペプチドを発現する幼若植物を提供する。好ましい宿主としては、脊椎動物、好ましくは哺乳類、より好ましくはヒトが挙げられる。本発明によれば、宿主として、獣医学的被検体、例えば、ウシ類、ヒツジ類、イヌ類、ネコ類などが挙げられる。好ましい実施態様では、食用新芽は、被検体に、治療的有効量として経口的に投与される。別の好ましい実施態様では、製薬学的活性タンパク質は、本明細書に記載される、製剤として提供される。
【0132】
本発明の調剤品は、宿主に対し、広く種々な方法で、例えば、経口的、経腸的、鼻腔的、非経口的、筋肉内またな静脈内、直腸、膣内、局所的、眼球内、肺内、または、接触的塗布によって投与することが可能である。好ましい実施態様では、幼若植物(例えば、新芽)において発現される製剤タンパク質は、宿主に対し経口的に投与される。別の好ましい実施態様では、幼若植物において(例えば、新芽において)発現される製薬学的活性タンパク質は、抽出および/または精製され、製剤組成物の調製に使用される。タンパク質は、従来技術で既知の、通例の条件および技術にしたがって単離、精製される。そのようなものとして、抽出、沈殿、クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、電気泳動などの方法が挙げられる。
【0133】
本発明の組成物は、通常、一つ以上の有機か、または無機の、液体か、または固体の、製薬学的に適切な担体物質と共に、有効量の、製薬学的活性タンパク質またはポリペプチドを含む。
【0134】
本発明にしたがって生産される、製薬学的活性タンパク質は、タンパク質の生物学的活性がその剤形で破壊されない限り、錠剤、カプセル、トローチ、分散剤、縣濁剤、溶液、カプセル、クリーム、軟膏、エロゾル、散剤パケット、液体溶液、溶媒、希釈剤、表面活性剤、等張剤、増粘または乳化剤、防腐剤、固相結合剤などの剤形として使用されてもよい。
【0135】
製薬学的に受容可能な担体として使用が可能な材料の例、例えば、ただしこれらに限定されないが、糖類、例えば、ラクトース、グルコース、およびスクロース;でん粉類、例えば、コーンスターチ、およびじゃがいもでん粉;セルロースおよびその誘導体、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、および酢酸セルロース;粉末状トラガカント;モルト;ゼラチン;タルク;賦形剤、例えば、ココアバター、および座剤ワックス;油状物、例えば、ピーナツ油、綿実油;紅花油;ごま油;オリーブ油;コーン油および大豆油;グリコール類、例えば、プロピレングリコール;エステル類、例えば、オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチル;寒天;バッファー剤、例えば、水酸化マグネシウム、および水酸化アルミニウム;アルギン酸;発熱源非含有水;等張生理的食塩水;リンゲル液;エチルアルコール、およびリン酸バッファー液の外、他の、無毒な適合的潤滑剤、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、およびステアリン酸マグネシウムの外、着色剤、剥離剤、コーティング剤、甘味剤、芳香剤、香料、防腐剤、および抗酸化剤も、調剤師の判断にしたがって組成物の中に存在することが可能である(さらに、REMINGTON’S PHARMACEUTICAL SCIENCES, FIfTEENTH EDITION, E.W. MARTIN (MACK PUBLISHING CO., EASTON PA, 1975)。例えば、タンパク質は、通例の、混和造粒糖剤製造法、溶解、凍結乾燥、または類似のプロセスによって製剤組成物として提供されてもよい。
【0136】
ある実施態様では、皮下または筋肉内に注入される製剤タンパク質またはポリペプチドの吸収を遅らせることによって、該調剤品の作用を長引かせることが好ましい場合がある。これは、水溶性の劣る結晶性、または非晶性物質の縣濁液を用いることによって実現してもよい。次に、タンパク質またはポリペプチドの吸収速度は、その溶解速度に依存し、溶解速度は次にサイズおよび形状に依存すると考えられる。
【0137】
それとは別に、非経口的に投与されるタンパク質の吸収遅延は、該タンパク質を油状ベヒクルに溶解、または縣濁することによって実現される。注入可能なデポ剤形は、タンパク質のミクロカプセル封入基質を、ポリラクチドーポリグリコリドなどの生物分解性ポリマーの中に形成することによって製造される。タンパク質対ポリマー比、および使用される特定のポリマーの性質に応じて、放出速度を調節することが可能である。他の、生物分解性ポリマーの例としては、ポリ(オルトエステル)、およびポリ(アンヒドリド)が挙げられる。注入可能なデポ処方はまた、タンパク質を、生体組織と適合可能なリポソームまたは微小乳滴の中に封じ込めることによって調製される。
【0138】
経腸的に投与されるタンパク質またはポリペプチド調製品は、固体、半固体、縣濁液、または乳剤形として導入されてもよく、任意の製薬学的に受容可能な担体、例えば、水、縣濁剤、および乳化剤と混和されてもよい。本発明のタンパク質またはポリペプチドは、特に予防策として投与される場合、被検体における病気の発症を予防するため、または、すでに確立された病気を寛解または遅らせるために、ポンプによって、または持続放出剤形として投与されてもよい。
【0139】
本発明にしたがって生産されるタンパク質またはポリペプチドは、製剤組成物として経口投与されるのに特によく適合される。収穫された幼若植物(例えば、実生)は、生で投与されてもよいし、あるいは、所望のタンパク質またはポリペプチド製品、および最終製品の所望の形状に応じて、様々のやり方で、例えば、空気乾燥、凍結乾燥、抽出などによって処理されてもよい。
【0140】
ある実施態様では、前述の組成物は、経口的に単独で摂取されてもよいし、あるいは、食物または飼料または飲み物と一緒に摂取されてもよい。経口投与用組成物としては、発芽実生;幼若植物(例えば、発芽実生)の抽出物;幼若植物から精製されたタンパク質またはポリペプチドで、乾燥粉末、食品、水性または非水性溶媒、縣濁液、または乳液として提供されるものが挙げられる。
【0141】
非水性溶媒の例としては、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油、魚油、および注入可能な有機エステルがある。水性担体としては、水、水ーアルコール溶液、乳液または縣濁液、例えば、生食液、塩化ナトリウム液を含む、医用非経口緩衝ベヒクル、リンゲルデキストロース液、デキストロース・プラス・塩化ナトリウム溶液、ラクトースまたは固定油を含むリンゲル液が挙げられる。
【0142】
乾燥粉末の例としては、乾燥された、例えば、凍結乾燥、空気乾燥、または飛沫乾燥された、任意の幼若植物(例えば、発芽実生)のバイオマスが挙げられる。例えば、幼若植物は、それらを、市販の空気乾燥機において華氏120度で、バイオマスの水分含量が重量で5%未満となるまで、維持することによって空気乾燥してもよい。この乾燥植物は、その後さらに、大量の固体塊としての処理のために保存されるか、または、所望のメッシュサイズの粉末となるまで粉砕することによって処理される。それとは別に、空気乾燥に対して過敏な産物のためには、凍結乾燥を使用してもよい。産物は、それらを、真空乾燥機に設置し、真空下に、バイオマスの水分含量が重量で5%未満となるまで、維持することによって凍結乾燥してもよい。この乾燥材料は、本明細書に記載するようにさらに処理することが可能である。
【0143】
ハーブ調製品は従来技術において周知される。本発明の幼若植物を投与するために使用されるハーブ調製品は、液状および固状のハーブ調製品を含む。ハーブ調製品のいくつかの例として、チンキ、抽出物(例えば、水性抽出物、アルコール抽出物)、煎剤、乾燥調製品(例えば、空気乾燥、飛沫乾燥、凍結、または凍結乾燥)、粉末(例えば、凍結乾燥粉末)、および液体が挙げられる。ハーブ調製品は、任意の標準的送達ベヒクルに溶解させて、例えば、カプセル、錠剤、座剤、液体剤形などとして提供することが可能である。当業者であれば、本発明に適用されてもよい、ハーブ調製品の処方、送達方式には様々のものがあることを理解されるであろう。
【0144】
当業者であれば、所望の製薬学的活性タンパク質またはポリペプチドを獲得する、特に好ましい方法は、抽出によることを理解するであろう。新鮮な幼若植物(例えば、実生)を抽出し、残留バイオマスから所望のタンパク質産物を取り出し、そうすることによって該産物の濃度および純度を増してもよい。幼若植物はまた、バッファー溶液において抽出してもよい。例えば、収穫したばかりの植物を、例えば、リン酸バッファーによって緩衝させた、ある量の氷冷水に、重量にして1対1の比率で移してもよい。さらに、プロテアーゼ阻害剤を、必要に応じて加えてもよい。植物組織は、バッファー液に縣濁中に、活発に混和するか、または粉砕することによって破壊することが可能であり、ろ過または遠心によって抽出バイオマスを取り出すことが可能である。溶液に担持されるタンパク質産物はさらに、追加工程によって精製するか、または、凍結乾燥または沈殿によって乾燥粉末に変換することが可能である。
【0145】
抽出はさらに、加圧によって実行することが可能である。生の植物は、プレス機において加圧するか、または、緊密に隔てられたローラーの間を通過させながら押しつぶすことによって抽出することが可能である。潰れた植物から押し出された流体は収集され、従来技術で周知の方法にしたがって処理される。加圧による抽出は、より濃縮した形での産物の放出を可能とする。しかしながら、産物の総合収率は、産物が溶液として抽出される場合よりも低いことがある。
【0146】
この幼若植物(例えば、発芽実生)、抽出物、粉末、乾燥調製品、および精製タンパク質産物などはさらに、前述の、一つ以上の賦形剤を伴って、または無しで、封入形として提供することも可能である。錠剤、糖剤、カプセル、丸剤、および顆粒から成る固体剤形は、コーティングおよびシェル、例えば、腸性コーティング、放出調節コーティング、および、製剤処方技術において周知の、その他のコーティング付きで調製することが可能である。このような固体剤形では、活性製剤タンパク質は、少なくとも一つの不活性希釈剤、例えば、スクロース、ラクトース、またはでん粉と混和してもよい。さらに、その剤形は、通常慣行として、不活性希釈剤以外の添加物質として、例えば、錠剤形成潤滑剤およびその他の錠剤形成支援剤、例えば、ステアリン酸マグネシウム、および微結晶セルロースを含んでもよい。カプセル、錠剤、および丸剤の場合、剤形はさらに、バッファー剤を含んでもよい。剤形は、任意に、X線不透過剤を含んでもよく、さらに、小腸のある一定部分においてのみ、またはその部分に優先的に、任意に遅延的に、活性成分(単数または複数)を放出するような組成を持っていてもよい。使用が可能な埋め込み組成物の例として、ポリマー物質およびワックスが挙げられる。
【0147】
別の実施態様では、本発明の製薬学的活性タンパク質を発現する幼若植物、またはそのような幼若植物のバイオマスは、医用食品として経口的に投与される。このような食用組成物は、固体形の場合は生のまま食べることによって、液体形の場合は飲むことによって消費される。好ましい実施態様では、この植物材料は、先行する処理工程無しに直接摂取されるか、または、最小の調理的準備の後で摂取される。例えば、製薬学的活性タンパク質またはポリペプチドは、直接食べることが可能な新芽において発現される。例えば、該タンパク質は、アルファルファの芽、緑豆もやし、またはほうれん草またはレタスの葉の芽、幼若豆植物などにおいて発現される。別の実施態様では、発芽実生バイオマスは処理され、処理工程後に回収される材料が摂取される。
【0148】
本発明において使用される処理法は、食品または飼料産業において一般に使用される方法であることが好ましい。このような方法の最終産物は、発現された製薬学的活性タンパク質またはポリペプチドの相当量を含むが、好適に食べるか、飲むかすることによって摂取することが好ましい。この最終産物はさらに、他の食物または飼料形、例えば、塩、担体、風味強調剤、抗生物質などと混和され、固形、半固形、縣濁液、乳液、または液体形として消費されてもよい。別の好ましい実施態様では、このような方法は、保存工程、例えば、低温殺菌、調理、または、保存および防腐剤の添加を含む。
【0149】
本発明では、食用または飲用の植物材料を生産するために、任意の植物が使用され、処理される。食用または飲用新芽調製品における製薬学的活性タンパク質の量は、従来技術における標準法、例えば、ゲル電気泳動、ELISA、または、該タンパク質に対する特異的抗体によるウェスタンブロット分析によって試験してよい。この定量結果は、摂取されたタンパク質の量を標準化するのに使用することが可能である。例えば、新芽ジュースにおける治療的活性タンパク質の量を、例えば、異なるレベルのタンパク質を有する産物のバッチを混合することによって定量、調節し、一回の投与において飲むか、または摂取すべきジュースの量を標準化することが可能である。一方、本発明による、閉鎖された、調節可能な環境の使用は、このような標準化手順を実行する必要性を最小化するはずである。
【0150】
幼若植物において(例えば、発芽実生において)生産され、宿主によって食べられる製薬学的活性タンパク質またはポリペプチドは、消化器系によって吸収される。発芽実生、または発芽実生調製品、特に、生の新芽、または、ごく僅かしか処理されていない新芽バイオマスを摂取することの利点は、タンパク質を、植物細胞の中に封入された状態、または隔離された状態で提供することである。したがって、タンパク質は、腸または小腸に達する前、上部消化管における消化から少なくとも若干の保護を受けることが考えられ、より高い比率の活性成分が吸収に与ることが考えられる。
【0151】
本発明の製剤組成物は、治療的に、または予防的に投与することが可能である。ある好ましい実施態様では、組成物は、病気の治療、または予防のため(例えば、開始を遅らせるため)に使用されてもよい。例えば、病気に罹っているか、または、病気を発症するリスクを持つ任意の個人を治療してよい。個人は、病気の何かの症状を持つと診断されなくとも、該病気を発症するリスクを持つと見なすことが可能であることが理解されよう。例えば、個人が、ある特定の病気を発症するリスクの増大と関連すると特定される、ある特定の遺伝子マーカーを有する場合、その個人は、その病気を発症するリスクを負うと考えられる。同様に、ある個人の家族の複数の構成員が、ある特定の病気、例えば、癌と診断された場合、その個人も、その病気を発症するリスクを負うと見なしてもよい。
【0152】
経口投与用の液体剤形としては、例えば、ただしこれらに限定されないが、製薬学的に受容可能な乳剤、ミクロ乳剤、溶液、縣濁液、シロップ、およびエリキシルが挙げられる。対象タンパク質またはポリペプチドの外に、液体剤形は、従来技術で一般的に使用される不活性希釈剤、例えば、水、またはその他の溶媒、可溶化剤、および乳化剤、例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3ーブチレングリコール、ジメチルフォルムアミド、油状物(特に、綿実油、落下生油、コーン油、胚芽油、オリーブ油、ひまし油、および、ごま油)、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコール、および、ソルビタンの脂肪酸エステル、およびそれらの混合物を含んでもよい。不活性希釈剤の外、経口組成物はまた、補助剤、例えば、湿潤剤、乳化および縣濁剤、甘味剤、芳香剤、および香料を含むことが可能である。
【0153】
直腸または膣内投与用組成物は、本発明の組成物を、適切な、非刺激性賦形剤または担体、例えば、ココアバター、ポリエチレングリコール、または、周囲温では固体で、体温では液体になり、したがって、直腸または膣腔において溶融し、活性タンパク質を放出する、座剤ワックスと混合することによって調製することが可能である。
【0154】
本発明の製剤組成物の局所または経皮投与用剤形としては、軟膏、ペースト、クリーム、ローション、ゲル、散剤、溶液、スプレイ、吸入剤、またはパッチが挙げられる。活性タンパク質、またはその調製品は、必要に応じて、製薬学的に受容可能な担体、および任意の防腐剤またはバッファーと、滅菌条件下に混和される。眼科処方、点耳剤、および点眼剤も、本発明の範囲内にあるものとして考慮の対象となる。さらに、本発明は、生体に対し製薬学的活性タンパク質の調節的送達を実現するという、新たな利点を有する、経皮パッチの使用を考慮の対象とする。この剤形は、製薬学的活性タンパク質を、適切な媒体に縣濁または分散させることによって製造することが可能である。さらに、皮膚を横切る、製薬学的活性タンパク質のフラックスを増すために、吸収強化剤を使用することも可能である。この速度は、速度調節膜を設けることによって、または、製薬学的活性タンパク質をポリマー基質またはゲル中に分散させることによって調節することが可能である。
【0155】
組成物は、所望の結果を実現するのに必要な量、および時間投与される。前述のように、本発明のある実施態様では、製剤組成物の「治療有効量」は、宿主の病気を治療、減弱、または予防するのに有効な量である。したがって、本明細書で用いる「病気を治療、減弱、または予防するのに有効な量」とは、非毒性ではあるが、製剤組成物が、任意の宿主の病気を、治療、減弱、または予防するのに十分な量を指す。ほんの一例として挙げるが、「治療的有効量」は、糖尿病を治療、減弱、または予防する量であってもよい。
【0156】
正確な必要量は、被検体の種類、年齢、および一般的状態、病気の段階、特定の製剤混合物、その投与方式などに応じてまちまちである。本発明の幼若植物(例えば、発芽実生)、およびそのタンパク質調製品は、投与の簡便と、剤形の均一性のために単位剤形として処方されるのが好ましい。本明細書で用いられる「単位剤形」という表現は、治療される患者にとって適切な、物理的分離単位の、製薬学的活性タンパク質を指す。しかしながら、本発明の組成物の、1日当たりの合計使用は、担当医により、健全な医学的判断の範囲内において決定されることが好ましい。任意の特定の患者または生物体に対する、特定の治療有効用量レベルは、様々な因子に、例えば、治療される障害、および障害の重度;用いられる特定化合物の活性;用いられる特定組成物;患者の年齢、体重、一般的健康、性別、患者の食餌、患者の薬物動態、投与時間、投与ルート、および用いられる特定化合物の排泄速度;治療期間;用いられる特定化合物と併用される、またはたまたま同時服用される薬剤;および、医学の従来技術で周知の類似の因子、に依存する。
【0157】
本発明の製剤組成物は、併用治療に用いることが可能であること、すなわち、製剤組成物は、一つ以上の、他の治療剤、または医学処置と同時に、その前に、またはその後で投与することが可能である。併用処方において用いられる治療法(治療剤、または処置)の特定の組み合わせは、所望の治療剤および/または処置、および、実現すべき所望の治療作用の適合性を考慮する。さらに、用いられる治療剤は、同じ障害に対して所望の作用を実現してもよいし(例えば、本発明の化合物は、別の抗癌剤と同時に投与されてもよい)、または、それらは、別々の作用を実現してもよいことが理解される。
【0158】
キット
さらに別の実施態様では、本発明はさらに、本発明の、生の幼若植物(例えば、発芽実生)、または調製品、抽出物、または、該幼若植物によって発現される製薬学的活性タンパク質またはポリペプチドを含む製剤組成物を、本発明の製剤組成物の、一つ以上の成分で充填される容器の中に含む製剤パックまたはキットを提供する。ある実施態様では、この製剤パックまたはキットは、併用治療として使用される、承認されたさらに別の治療剤を含む。この容器(単複)と任意に関連して、製剤品の製造、使用、または販売を規制する政府当局によって処方される形式で書かれ、該当局による、ヒトへの投与のための製造、使用、または販売に対する承認を反映する注意書きが存在してもよい。
【0159】
本発明は、各種植物発現システムの内の任意のもの、もっとも好ましくは、ウィルスによる植物発現システム(すなわち、ウィルス成分を含むシステム)を用いて幼若植物(例えば、発芽実生)から得られる製剤タンパク質の精製、および、能う限りの生産の大規模化を含む。遺伝病および免疫病のための診断キットにおける各タンパク質を含むキットが提供される。好ましい一実施態様では、本発明は、患者の血清における、生物タンパク質に対する抗体の有無を試験するための、生物タンパク質の試験サンプル、および試薬を有するキットを提供する。例えば、キットは、IA−2およびGAD、および試薬を提供する。これは、患者の血清において、1型糖尿病の存在または進行を表す明瞭な表示である、これらのタンパク質に対する過剰量の抗体が存在するかどうかを試験する。
【0160】
本発明は、キットの形式で診断試薬を提供するように拡張することも可能である。非限定的なほんの一例として挙げるのであるが、糖尿病における自己免疫反応と関連するタンパク質、インスリン、GAD、およびIA−2は、これらのタンパク質に対する経口的耐性を誘発するために経口処方として提供し、投与することが可能である。それとは別に、一つ以上の治療タンパク質を、投与のために、注入可能な処方またはワクチンとして提供することも可能である。好ましい実施態様によれば、製剤用量、またはその案内が、病気と診断された個人に、例えば、糖尿病者、または、病気、例えば、1型糖尿病を発症するリスクを負う個人に対して投与されるキットとして提供される。
【0161】
等価物
下記の代表的実施例は、本発明の具体的説明を助けることを意図するもので、本発明の範囲を限定することを意図するものではなく、また限定するものと考えてもならない。実際、本発明の各種修飾、および、本明細書に図示し、記載したものの外にも、たくさんの、さらに別の実施態様が、下記の実施例、および、本明細書に引用される科学文献および特許文献を含む、本文書の全体内容から当業者には明白であろう。さらに、これらの引用文献の内容は、従来技術の状態の明示を助けるために、引用により本明細書に含められることを理解しなければならない。下記の実施例は、各種実施態様およびその等価物における本発明の実施に適応させることが可能な、重要な追加情報、例示、および案内を含む。
【実施例】
【0162】
実施例1:アグロバクテリウム形質転換によって調製されるトランスジェニック新芽における製剤タンパク質またはポリペプチドの生産
植物の種子を、アグロバクテリウムによって形質転換し、収穫し、乾燥し、洗浄し、かつ、生存性、および、所望の遺伝的物質の有無について試験する。種子ストックを、使用時まで適切な条件下に保存する。使用時、適切量の種子を、ある量の表面滅菌剤(例えば、CLOROX)を含む水に、20分から4時間浸す。種子を、増殖の維持と排水の設備を含む、平坦なトレイの上に広げる。種子を含むトレイは、閉鎖された調節可能環境において、温度、照明、アクセス、空気循環、給水、および排水調節下に、棚の上に置かれる。トレイは、種子を湿らせておくために、自動タイマー装備噴霧機により、30分から4時間間隔で、1から30分水を噴霧される。過剰な水分は、トレイの孔から、部屋の床の排水管の中に排水される。
【0163】
種子は、調節条件下に発芽、発達させられる。種子は、約2から14日間インキュベートされ、次いで収穫、処理される。このインキュベーション過程のある時点、収穫の4時間から7日前、種子は、導入または内因性DNAプロモーター配列の誘発を引き起こす環境条件に暴露される。これによって、この発芽実生の組織における、一つ以上の所望のタンパク質の合成の増大がもたらされる。約30℃から約37℃へのインキュベーション温度の一過性上昇によって、熱ショックプロモーターの誘発が引き起こされる。
【0164】
2から14日間実生をインキュベーションした後、個々のトレイをコンベヤーベルトに載せて処理施設に移動させることによって、実生を収穫する。収穫された実生は、プロテアーゼ阻害剤を含むリン酸バッファー液において抽出することによって処理する。実生は、バッファー液に縣濁中に、活発に混和、または粉砕することによって破壊し、抽出バイオマスを、遠心によって取り出す。
【0165】
実施例2:植物ウィルスによって一過性に感染させた発芽実生における製剤タンパク質またはポリペプチドの生産
所望の植物の種子は、育種販売業者との契約を通じて野生型種子として入手する。種子ストックは、使用時まで、温度、湿度、衛生状態、および安全性の適切な条件下に保存される。使用時、適切量の種子が、水に浸され、前述のように、調節条件下にトレイの上でインキュベートされる。
【0166】
2から14日間のインキュベーション後、発芽実生に対し、トランスジーンを抱えるウィルスを含む溶液が撒水され、その後、または同時に、植物葉組織の機械的挫傷をもたらす物質で処理する。この例では、葉は、磨耗性粒子を含む噴気流によって挫傷させる。ウィルスは、適切な期間;約1日から約10日、植物全体を感染させ、所望の異種タンパク質の発現を監視する。
【0167】
実生を1から10日間感染させた後、上の実施例1に記載するように、実生を収穫する。
【0168】
実施例3:NICOTIANA BENTHAMIANA植物における、ウィルスベクター(AvA4)からの糖尿病関連タンパク質およびヒトの成長ホルモンの発現
早期発症1型、または若年性糖尿病は、児童、少年、および青年を冒す病気である。すい臓内分泌システムのベータ島細胞は、高血糖の代謝シグナルに反応してインスリンを生産する。この病気の基礎的原因は、体自身の免疫系による、ベータ島細胞に対する攻撃と破壊である。
【0169】
1型糖尿病を持つ個人は、正常状態では全ての個人に見られる、少なくとも三つのタンパク質、すなわち、インスリン、グルタミン酸デカルボキシラーゼ(GAD)、およびチロシンフォスファターゼ様タンパク質IA−2に対する抗体を生産する(LESLIE ET AL., DIABETOLOGIA (1999) 42:30−14)。IA−2およびGADタンパク質に対する自己抗体は、1型糖尿病患者の、この病気の発症前、50から75%に認められる。さらに、この外見上正常なタンパク質に対する自己抗体の出現は、1型糖尿病に関連する古典的症状の発現よりも7から8年先立って起こる。
【0170】
インスリン、GAD、およびIA−2などの自己抗原は、過敏な個人において、これらのタンパク質に対し少なくともある程度の耐性を経口的に誘発し、糖尿病の発症をもたらす、島細胞に対する傷害を予防するか、または抑える点で有用である。非肥満型糖尿病マウス(NOD)は、自己免疫型の糖尿病を自発的に発症する(ZAHANG, ET AL., PROC. NATL. ACAD. SCI. USA (1991) 88:10252−10256)。ヒトのインスリンをコードする遺伝子を、コレラトキシンBサブユニット遺伝子と融合し、得られた構築体を、トランスジェニックじゃがいも植物において発現させた。これらの植物をNODマウスに給餌したところ、この動物において、すい臓の島の炎症に明確な減少と、糖尿病の進行に遅延が見られた(ARAKAWA ET AL., BIOTECHNOL. (1998) 16:934−936)。さらに、GADタンパク質が、じゃがいも植物に発現された。これらのトランスジェニックじゃがいもをNODマウスに給餌したところ、これも、40週後、糖尿病を予防するか、またはその開始を有意に遅らせた(MA ET AL., NATURE MEDICINE (1997) 3:793−796)。
【0171】
本実施例では、植物におけるGADおよびIA−2の発現および回収のための、ある、非限定的条件が記載される。GADおよびIA−2タンパク質は、HIS−タグ法によって精製される。原料およびタンパク質の生産は二段階で行われる:1)動物における一次実験のための小規模生産;および、2)臨床治験のための中等規模(グラム量)生産である。
【0172】
安定性および移動度の試験 ウィルスの安定性および移動度試験を実行するために、少量の各構築体を合成する。各構築体は、ウィルスゲノムRNAの正確な5′末端に融合された、T7またはSP6 RNAポリメラーゼプロモーター、および、3′末端に、インビトロ転写前にプラスミドを直線化するために使用される、一意の制限部位を含む。次に、T7またはSP6 RNAポリメラーゼは、ランオフ転写産物を生成し、これを用いて植物に接種する。植物は、二子葉段階で、カーボランダム粉末(320−グリット;FISHER, PITTSBURGH, PA)などの研磨剤の存在下に、接種体を葉の表面に擦りつけることによって機械的に接種される。1構築体当たり5から10個の植物に接種し、1接種当たり、各RNA転写物1−2 *Gを用いる。植物は、症状の重度、植物全体に亘るウィルスの広がり、および産物の回収について監視する。感染の10〜15日後(DPI)、感染葉サンプルから、葉サンプルを収穫し、完全長の組み換えIA−2およびGADの存在について評価する。収穫材料(10枚の葉)の一部を−80℃で凍結し、選択される構築体の、将来の生産規模拡大のための種子接種体として保持する。残余の組織はただちに処理する。
【0173】
感染の15〜20日後(dpi)、組み換えIA−2およびGADを回収する。この過程は、最適量の高純度産物(90〜95%純度)を回収できるように最適化する。期待されるサイズの産物が回収され、血清学的同一性(ウェスタンブロットおよびELISAを用いて特異的抗体で認識する)が決定されたならば、これらの構築体の安定性を、健康な植物において3回継代させて試験する。用いたサイズ範囲のタンパク質を有する組み換えタンパク質の集合、回収、または安定に関する問題点は、感染条件を変えるか、または、別の宿主植物を用いることによって、ヌクレオチド配列またはアミノ酸配列のレベルで対処する。
【0174】
中等規模生産のための種子ロットおよび手順の確立 段階1が完了したならば、組み換え構築体の、インビトロ合成転写物の少量(100ul)を準備し、10個の植物に接種するのに使用する。接種から10〜12日以内に、葉を収穫し、ウェスタンブロットによってGADまたはIA−2の有無について試験し、種子材料として−70℃で保存する。この材料(3−4)の一部を用いて、150〜200個の植物(1〜2KGの新鮮組織)に接種する。接種の15から20日後、組み換えタンパク質を回収し、機能的実験のために用いる。バッチ当たり平均60 MGの産物が期待される。
【0175】
植物への接種および産物回収 GADおよびIA−2を含む組み換えウィルスのインビトロ転写物を、T7 RNAポリメラーゼ、および生成プラスミドDNAを用いて合成する。転写物に、RNAキャップ構造類縁体 m7G(5)ppp (5)Gを用いてキャップする。接種のために、インビトロ転写産物の混合物を、標的宿主植物の葉に、その葉の表面をカーボランダムによって擦った後に塗布し、葉の表面を優しく撫でて接種体を広げ、さらに表面を擦る。植物生産によるIA−1およびGADの純度および活性を試験する。これらの植物生産抗原の抗体結合能を、これらのタンパク質の精製中、および精製後においてELISAによって試験する。
【0176】
NICOTIANA BENTHAMIANAにおけるタンパク質発現:ウィルス感染植物において完全長タンパク質を発現させるために、我々は、N. BENTHAMIANA植物において、クラゲ由来の緑色蛍光タンパク質(GFP)を発現させる機能的相補法を用いた(図4)。植物間継代の際、感染組織における、アルファルファモザイクウィルス(Av)/GFPの量は次第に減少し、第3継代後、Av/A4しか検出可能ではなかった(これは、環境の安全性の観点から利点である)。この方法を用い、我々は、1 Gの新鮮組織当たり平均100 μGのGFPを発現させることができた。このシステムの重要な成分である、アルファルファモザイクウィルスCPは、感染宿主において、無関係なウィルスのゲノムRNAをカプシド封入してこれを感染性粒子に変える能力を持つという点で独特である。アルファルファモザイクウィルスCPの、この独特の能力は、選ばれた収穫品種を特異的に標的するハイブリッドベクターを加工するために利用される。
【0177】
Av/A4およびAv/A4GFPを接種されたNICOTIANA BENTHAMIANA植物における組み換えGFPの発現を、ウェスタンブロットによって分析した(図3を参照)。本明細書に記載されるように全体的に感染された葉から得られたタンパク質抽出物を、12% SDS−ポリアクリルアミドゲルにおいて電気泳動によって分離し、ニトロセルロース膜に転送し、タンパク質特異的抗体と反応させた。アルファルファモザイクウィルスCP特異的抗体は、Av/A4、または、Av/A4およびAv/A4GFPの混合物を接種された植物において、予想されるサイズのタンパク質(24.0 KD)を認識した。GFP特異的抗体は、Av/A4およびAv/A4GFPの混合物を接種した植物から得られた抽出物においてのみタンパク質を認識した。GFP特異的抗体は、Av/A4のみを接種した植物においてはいかなるタンパク質とも反応しなかった。アルファルファモザイクウィルスCP特異的抗体も、GFP特異的抗体も、AV/GFPのみを接種した植物から得られた抽出物においてはいかなるタンパク質とも反応しなかった。これは、全体移動の欠如を示唆する。
【0178】
我々はさらに、このAV/A4ベクターシステムを用いて、ヒトの成長ホルモンを加工し、発現させた。NICOTINIANA BENTHAMIANA植物にインビトロ転写物を接種し、該植物を、HGHの生産について監視した。このタンパク質に対する特異的シグナルは、5dpi(接種後日数)ではまったく検出されなかった。ただし、11dpiで、我々は、未接種植物においてHGHのシグナルを検出することができた。図4は、125C/HGHのインビトロ転写物を感染させたN. BENTHAMIANAにおいて生産されるHGHのウェスタンブロットである。サンプルは、接種後24時間において分析した。1 μGの精製HGHを標準として負荷した。MWMは分子量マーカーである。図4の矢印は、ブロットにおいて、hGH特異的抗体によって検出されるhGHバンドを指し示す。
【0179】
実施例4:トランスジェニックBRASSICA JUNCEA植物における炭疽菌関連タンパク質およびヒト成長ホルモンの発現
炭疽菌の猛毒は、少なくとも二つの主要毒性因子による。これらの因子は、該細菌を宿主において守るのに役立つポリグルタミン酸カプセル、および、3部分循環トキシンである。炭疽菌トキシンは、pXO1と名づけられる184 KBプラスミドによってコードされ、保護抗原(PA)と名づけられる受容体結合タンパク質、および、浮腫因子および致死因子と名づけられる、二つの酵素的活性タンパク質から成る(BHATNAGAR AND BATRA, CRIT. REV. MICROBIOL. (2001) 27(3):167−200)。
【0180】
本実施例では、二つの不活性化炭疽菌トキシン成分、保護抗原(PA)および致死因子(LF)が、1 GM乾燥重量当たり、少なくとも0.1 MGの濃度でBRASSICA JUNCEAの葉の中に生産される。我々は、植物のこれらの遺伝子のコドン使用を最適化し、両トキシン分子の毒性を最小とするようにそのアミノ酸配列を変えた。我々は、BRASSICA JUNCEAにおける調節的遺伝子発現の可能なベクターの中にこの合成DNAを挿入することを目指す。PA遺伝子は、位置314および315においてフェニルアラニン残基を欠失するように変更された。LF遺伝子は、位置686または位置690においてアラニンをヒスチジンに置換した(例えば、SINGH ET AL., J. BIOL. CHEM. (1994) 269:29039−29046; KLIMPER ET AL., MOL. MICROBIOL. (1994) 13:1093−1097を参照されたい)。
【0181】
形質転換ベクター:植物形質転換には、バイナリーベクターPGREENII0229 (HELLENS ET AL., PLANT MOLECULAR BIOLOGY (APR 2000) 42(6):819−832) が用いられる(図5参照)。このプラスミドは下記の成分を含む:1)PGREENIIプラスミドバックボーンは、ESCHERICHIA COLIおよびAGROBACTERIUM TUMEfACIENSにおける複製に必要な配列を含む。2)AGROBACTERIUM TUMEfACIENS T−DNAの左側および右側境界(LBおよびRB)配列は、LBとRBの間の全ての配列が、植物ゲノムに組み込まれるのに必要である。3)カナマイシン耐性をコードするNPT遺伝子は、ESCHELICHIA COLIおよびAGROBACTERIUM TUMEfACIENSの形質転換体選別用である。4)除草剤BIALAPHOSに対する耐性をコードするNOS−BAR遺伝子(BIALAPHOSに対する耐性は、形質転換植物を選別するのに使用される)。このNOS−BARは、植物において構成的活性を有する、カリフラワーモザイクウィルス(CAMV) 35Sプロモーターから転写され、かつ、該遺伝子の転写は、CAMVターミネーターによって終結される。5)VIR遺伝子PAおよびLFの発現は、図5に示すようにCAMV 35Sプロモーターか、または、ARABIDOPSIS THALIANAの低分子量熱ショックタンパク質(MATSUHARA ET AL., THE PLANT JOURNAL: fOR CELL & MOLECULAR BIOLOG (APR 2000) 22(1):79−86)のHSP 18.2プロモーター(GENBANKアクセス番号X17295、位置AT5G59720)のいずれかによって駆動される。転写終結は、ノパリンシンターゼ遺伝子(NOS)のターミネーターによって仲介される。35SおよびHSP 18.2プロモーターは、その異なる活性のために選ばれた。35Sプロモーターは、大抵の植物組織において構成的に活性を持つ。多くの場合、35Sプロモーターは、対象タンパク質の高レベル発現を駆動する。一方、HSP 18.2プロモーターは、植物が熱ショックによって喚起されない限り、ほとんど不活性である。あるタンパク質の高レベル発現は、誘発可能プロモーターシステムの使用によってのみ実現が可能である。
【0182】
ベクターの構築および植物の形質転換 ベクターは、ESCHERICHIA COLIの実験室株DH5を用いて構築する。構築体は、制限エンドヌクレアーゼマッピングおよび配列決定によって分析する。構築体の確認後、ベクターを、AGROBACTERIUM TUMEfACIENSのGV3101株を形質転換するのに用いる。この株は、生得のTiプラスミドを欠き、バイナリーベクターのTDNAを植物に転移するのに好適である。形質転換ベクターを担うGV3101を、任意の利用可能な形質転換法を用いて花の中に導入することによって、BRASSICA JUNCEAを形質転換する。
【0183】
PAおよびLF遺伝子に導入する修飾 植物における発現のために、PAおよびLF両方のヌクレオチド配列を修飾する。天然のPAのコード配列は2295 bpで、天然のLFの配列は2430 bpである。これらの配列は下記のように修飾される:1)PAおよびLFをトキシンとして不活性とする突然変異を導入する。PHE314およびPHE315を、PAから欠失し、His690をALAに変異させる。2)コドン使用は、BRASSICA JUNCEAにおける発現のために最適化される。BRASSICA JUNCEAのコドン使用およびGC/AT比は中性であるので、PAおよびLFに導入される変化は大きくはない。PAでは4個のコドン、LFでは7個のコドンが変えられる。3)植物発現ベクターへのクローニングのために、遺伝子の5′および3′末端に一意の制限部位が加えられる。[4]翻訳開始のための共通配列が加えられる(JOSHI ET AL., PLANT MOLECULAR BIOLOGY. (DEC 1997)35(6):993−1001)。制限部位および最適化された翻訳開始部位を図5に示す。5′末端は、加えられたXBAI制限部位、および、植物遺伝子のための共通翻訳開始部位で、開始コドン、続けてALAコドンを含む部位を示す。3′末端は、加えられたSACI制限部位を示す。この修飾されたPAおよびLF遺伝子は、ENTELECHON, INC. (ROSENBURG, GERMANY)によって化学的に合成される。
【0184】
第2構築体もPAおよびLFのために生産される。この第2構築体の意図は、小胞体のPAおよびLFタンパク質を標的し、保持することによって該タンパク質の蓄積を最適化することである40。ERにおける標的および保持は、組み換えタンパク質の高レベル蓄積をもたらす可能性がある(HASELOFF, ET AL., PROCEEDINGS Of THE NATIONAL ACADEMY Of SCIENCES USA (MAR 18, 1997) 94(6):2122−2127)。このことを実現するために、アミノ末端シグナル配列、および、カルボキシ末端ER保持配列を加える。このシグナル配列は、ARABIDOPSIS THALIANAキチナーゼ遺伝子から得られた22コドンを含む(HASELOFF, ET AL.,上記)。ER保持配列は、テトラペプチドHISASPGLULEUである(GOMORD ET AL, THE PLANT JOURNAL: fOR CELL & MOLECULAR BIOLOGY. (FEB 1997) 11(2):313−325)。シグナル配列は、ENTELECHONによって製造された合成遺伝子を鋳型として用いるPCRスイッチングによって付加する(TOMME ET AL., J BACTERIOL. (1995) 177:4356−4363)。ER保持配列は、あらかじめHISASPGLULEUコード配列を組み込んだ3′プライマーを用いてPAおよびLF遺伝子をPCR増幅することによって付加する。修飾されたPAおよびLF配列は、35SおよびHSP18.2発現ベクターにクローンする。合計8個の異なる構築体が試験される。
【0185】
トランスジーンを発現する植物の選別および分析 前記形質転換構築体を担うAGROBACTERIUM TUMEfACIENS GV3101株によるBRASSICA JUNCEAの形質転換後、植物を、その正常な発達プログラムにしたがって発達させる。25日以内に、成熟種子が生産され、収穫される。この種子を、鉢の土壌に撒き、実生植物を15日間育成する。次に、各植物の葉に、BIALOPHOS (FINALE, FARNAM, INC., PHOENIX, AZ)の0.0058%(w/v)溶液を撒布する。敏感な、非トランスジェニック植物は、通常、5から7日以内に斃死する。BIALOPHOS−耐性植物は、その緑色で、健康的な外観から明白である。この予想されるトランスジェニック植物を、一連のプロトコールを用いて確認、分析する。構築体に対して特異的なオリゴヌクレオチドプライマーを用いるポリメラーゼ連鎖反応を用いて、予想されるトランスジェニック植物におけるTDNAの存在を確認する。次に、特異的DNAプローブ、PAまたはLF修飾遺伝子を用いてゲノムDNAをブロットすることによってTDNAの存在を調べる。最後に、対象タンパク質の発現を、SDS−PAGE、次いで、クーマシーブルーによる染色、または免疫ブロッティングによって調べる。タンパク質発現分析用のプロトコールは、トランスジェニック植物を生産するのに用いられる構築体によって異なる。35Sプロモーター構築体を担う植物は、このプロモーターによる発現が構成的であるため、直接分析される。HSP 18.2プロモーターを担う植物は、分析前に熱ショックを与えられる。組み換えタンパク質発現の動態は、異なるトランスジェニック動物では異なると考えられる。最終的に、誘発条件は、標準法を用い各トランスジェニック植物に対し最適化される。しかしながら、最初の分析では、BRASSICA JUNCEAにおける他の組み換えタンパク質の発現のために確立された、標準的熱ショックプロトコールを実行することも可能である。
【0186】
図6は、HSP 18.2プロモーターの調節下に、ヒトの成長ホルモン(hGH)を発現するトランスジェニックBRASSICA JUNCEAの免疫ブロットを示す。トランスジェニックBRASSCIA JUNCEAは、鉢の混合物において育成した。図6に示すように、新鮮重量が1から3グラムの葉を、植物から分離し、水で湿らせたろ紙を含むペトリ皿に置いた。このペトリ皿を被い、多湿の、37℃インキュベータ中に1.5時間置く、次に、この葉を含むペトリ皿をインキュベータから移動し、24℃の育成チェンバーにおいて、100 μMOLフォトンMー2Sー1の強度の蛍光灯の下に5時間置いた。次に、植物材料を収穫し、hGHに対するモノクロナール抗体(SIGMA CHEMICAL CO., PRODUCT #Gー8523)使用の免疫ブロッティングによって分析した。低い方のバンドが、16 KDA組み換えhGHである。このバンドは、熱ショック前には観察されない。レーン8は、ベクターのみによって形質転換されたトランスジェニック植物の結果を示す。より高い分子量のバンドは、免疫複合体を検出するために使用された西洋ワサビペルオキシダーゼ連結二次抗体による非特異的反応である。PAは、約88 KDa、LFは、93 KDaであると予想される。
【0187】
炭疽菌トキシンの発現に関する初回のスクリーニング後、さらに詳細な発現分析が行われた。発現レベルの定量のためにELISA法が使われる。植物の後続世代に対しさらに分析が行われる。後続世代においてトランスジェニック植物を選別する必要を回避するには、最終的に、TDNA構築体に関して非分離的なトランスジェニック系統を単離することが必要である。これは、一次的トランスジェニック植物を自家受粉させ、第二世代植物を成熟するまで育成し、第三世代を、BIALOPHOS耐性の分離について試験することによって達成される。非分離的な、第二世代個体が特定される。その後、非分離植物の子孫を大規模育成し、生産規模条件(例えば、1月当たり、バイオマスの乾燥重量1,600 KG)の分析のために使用する。生産規模に関し、育成および誘発条件が、実生として育成される植物用に最適化される。この点ではさらに、挿入部位、およびエリート系統のTDNAコピー数を定めること、および、MRNA発現レベルにおける発現を定めることが望ましい。
【0188】
実施例5:ウィルス配列を含むアグロバクテリウム構築体に基づく、新芽におけるGUSリポーターの発現
GUSリポーター遺伝子を含むpBI121を、AGROBACTERIUM TUMEFACIENS LBA 4404に形質転換導入した。細菌培養体を、50 μG/MLのカナマイシン、20 μMのアセトシリンゴン、および、10 MMのMES PH5.6を含むYEB培養液において一晩育成した。一晩培養体を遠心し、MMA培養液(MS塩、10 MM MES PH5.6、200 μMのアセトシリンゴン、および2%スクロース)にOD600 2.0で再縣濁し、新芽の真空浸潤のために用いた。
【0189】
各種植物の種子を、搖動プラットフォームの上で室温で24時間浸水し、濡れたろ紙を備えたプラスチック容器に移し、12時間の昼光照明下21℃で4から6日間インキュベート(植物種に依存する)した。
【0190】
真空浸潤後、新芽を、12時間の昼光照明下21℃で、さらに48から60時間インキュベートし、X−GLUC組織化学基質を用いてインシトゥでGUS活性を検出した。染色は、37℃で一晩実行し、植物サンプルは、エタノールで脱色した。
【0191】
このシステムを、広く種々の新芽を用いて試験した。図8Aおよび8B、および図9を参照されたい。
【0192】
実施例6:ウィルス配列を含むアグロバクテリウム構築体による糖尿病関連タンパク質およびヒト成長ホルモンの発現
我々は、アグロバクテリウムベクターを用いTMV系ベクター:D4−hGHまたはD4−GFPを創出した。このために、我々は先ず、pBI121において多数のクローニング部位を創出しなければならなかった。PBI121−XBA1−BAMH1−SAL1−PAC1−BSIW1−STU1−XHO1−SPE1−KPN1−SAC1−pBI121である。適切なプライマーおよびPCRを用いて、我々は、これらの部位を有するPBI121を創出した。この配列を確認した後、我々は、このプラスミドに対するTMVゲノム配列の導入に進んだ。D4−hGHおよびD4−GFPのさらに詳細な議論については、さらに、2004年2月3日出願のU.S.S.N. 10/770,600、および2003年2月3日出願米国特許仮出願第60/444,615号、上記を引用により本明細書に含める、および、U.S.S.N. 10/832,603および米国特許仮出願第60/546,339号、上記を引用により本明細書に含める、を参照されたい。親ベクターD4、およびそれから由来するベクターが、SHIVPRASAD ET AL., VIROLOGY, 255(2):312−23, 1999に記載される。
【0193】
カリフラワーモザイクウィルスの35Sプロモーターを、TMV配列に融合させた。したがって、この35Sプロモーターが、TMV配列の転写を指令する。細胞への組み込みが成功すると、ウィルス転写物が生産される。本発明のある実施態様では、ウィルス複製、および植物全体への拡散に必要な成分も生産される。これらの成分としては、例えば、レプリカーゼ、移動タンパク質、およびコートタンパク質が挙げられる。これらは、種々の実施態様において、TMVから得られてもよいし、あるいは、別のウィルス、例えば、アルファルファモザイクウィルスから得られてもよい。これらの成分は、TMV配列、プラスミド配列内でコードされてもよいし、別のウィルスベクターまたはプラスミドにおいて供給されてもよいし、あるいは、植物が、それらの成分をコードするトランスジーンを含むトランスジェニック植物であってもよい。例えば、2004年2月3日出願のUSSN 10/770,600を参照されたい。なお、この文書を引用により本明細書に含める。
【0194】
TMV配列内の、サブゲノムTMVプロモーターは、hGH配列の転写を指令する。ハンマーヘッドリボザイムが、TMV配列の3′に導入された。このリボザイムは、本発明には必要とされない、NOSターミネーター(従来技術で周知)は、リボザイム配列の3′である。
【0195】
最終ベクターは、D4−hGH、またはD4−GFPを含んでいた。次に、pBI121におけるこれらの構築体を用いて、A. TUMEfACIENSを形質転換し、植物を、形質転換されたアグロバクテリウムで浸潤した。複製ウィルスが存在するので、我々は、この植物を2週間インキュベートした。リーフディスクを、hGH生産についてウェスタンブロットによって分析した。GFP発現は、植物を長波紫外線によって照明し、写真撮影することによって監視した。図10に示す結果は、浸潤された葉全体に亘るGFP発現を示す。図11に示す、hGH指向抗体によるウェスタンブロット分析は、構築体が植物において機能していること、および、hGHが高レベルで検出可能であることを確認した。
【0196】
同様に、IA−2icを、遺伝子工学的にpBID4プラスミドに導入し、pBID4−IA−2ICを生成した。さらに、GFPを担うAMVウィルス系ベクターを生成した。得られたプラスミドを用いて、アグロバクテリウムを形質転換し、水耕的に育成したNICOTIANA BENTHAMIANAを、形質転換したアグロバクテリウムで浸潤した。簡単に言うと、NICOTIANA BENTHAMIANAの種子を、水耕条件下に、栄養素としてあらかじめ1/2強度のHOAGLAND液で濡らしたROCKWOOLスラブ(18 X 18 X 1)の上に撒いた。この水耕栽培植物を、同じ溶液に4週間維持した。次に、4週齢植物を、pBID4−IA−2ic、または、GFPを担持するAMVウィルス系ベクターを担うアグロバクテリウムの縣濁液(OD600 0.1)に浸潤した。
【0197】
細菌培養体を育成し、一晩誘発し、次に細胞を、再びMMA培養液(MS塩、10 MM MES pH5.6、20 G/Lスクロース、200 μMアセトシリンゴン)に縣濁し、OD600 0.1となるまで育成した。再縣濁培養液を、穏やかに攪拌しながら室温で2〜3時間インキュベートし、水耕栽培NICOTIANA BENTHAMIANA植物をこの細菌縣濁液の中に入れ、室温で30〜60秒真空を印加した。細菌の組織に対する効率的進入を促進するために真空を素早く解除し、浸潤植物を、1/2強度のHOAGLAND栄養液に5〜7日間維持した。それとは別に、細菌縣濁液は、針の無い10 CM2シリンジを用いて完全に拡張された葉の表皮の下に強制的に進入させた。浸潤の3〜6日後、葉を収穫し、−80℃で保存するか、または、発現分析のために使用した。図12は、IA−2icを発現する植物のウェスタンブロット分析を示す。光の下でAMV系GFP構築体を浸潤させた植物の分析は、浸潤植物の葉全体に亘ってGFPの発現を示した。
【0198】
実施例7:豆品種における、ウィルス配列を含むアグロバクテリウム構築体に基づくタンパク質(緑色蛍光タンパク質:リケナーゼ)の発現
本実施例は、ウィルス発現ベクターを担うアグロバクテリウム構築体を有する、いくつかの豆品種のAGROINfILTRATIONを記載する。
【0199】
図13は、AIMV配列を担うアグロバクテリウム構築体のために利用される総合的戦略を示す。AIMVは、分節ゲノムを有するので(前述したように)、三つの異なる構築体が使用された:レプリカーゼ1および2をコードするAIMV配列を担うもの(PMOG−R1&R2);AIMV RNA3配列を担うもの(PBI−RNA3)(発現される対象遺伝子を任意に含む、この遺伝子は、通常、RNA3の天然のAIMVコートタンパク質配列を置換する);および、AIMVコートタンパク質をコードするAIMV配列を担うもの(PBI−CP)である。当業者であれば、AIMVコートタンパク質をコードする構築体を含めることは、厳密に言えば、不要であることを理解するであろう。しかしながら、このような構築体を含めることは有用である可能性がある。なぜなら、コートタンパク質は、複製、および/またはウィルス配列(したがって、その担う対象遺伝子)の全身的拡散を促進することが可能だからである。
【0200】
AIMVコートタンパク質の発現を確保したい場合でも、三つの構築体を利用することは必須ではない。例えば、一つの別法は、AIMVコートタンパク質に対して既にトランスジェニックである植物を利用することが考えられる。その場合、コートタンパク質を別に補給する必要がないからである。それとは別に、またはそれに加えてさらに、AIMVレプリカーゼタンパク質の一方、または両方に対してトランスジェニックな植物を利用することも可能と考えられる。このような植物(任意にさらに、AIMVコートタンパク質に対してもトランスジェニックである)では、RNA3および対象遺伝子配列だけを担う単一構築体を利用して、同様の結果を実現することが可能と考えられる。
【0201】
図13に示すように、この特定の実験では、三つの異なるタンパク質、緑色蛍光タンパク質(GFP)、リケナーゼ(Lich)、および、リケナーゼー炭疽菌保護抗原融合体(Li−PA)が利用された。
【0202】
図13で向き合う特定の実験では、各アグロバクテリウム株(すなわち、各株は、三つの構築体:PMOG−R1&R2;PBI−RNA3/対象タンパク質;pBI−CPの内のいずれか一つを担う)少なくとも1リットルを育成し、ペレットとし、MMAにO.D.が1.0となるまで再縣濁した。当業者であれば、異なる植物には、異なるO.D.が望ましいことが理解されよう。豆類の場合、比較的高いO.D.、例えば、1.5の範囲のO.D.が、技術的に実現可能であれば、望ましい。
【0203】
図13で向き合う特定の実験では、アグロバクテリウム株でレプリカーゼを担うもの(PMOG−R1&R2)、コートタンパク質を担うもの(pBI−CP)、および、RNA3/標的タンパク質を担うもの(PBI−RNA3/GFP, Lich, またはLi−PA)が、1:1:2の比で、合計容量1.5 Lとなるように混和される。当業者であれば、これらの比および容量は決定的なものではないこと、利用される特定の比は、ALMVの生活環が、通常、ゲノムの他の成分よりも高レベルのRNA3を含むことを反映するように選ばれることを理解するであろう。さらに、対象遺伝子(すなわち、GFP、リケナーゼ、またはリケナーゼ保護抗原遺伝子)を担うRNAの高レベルの生産に対する欲求がある。
【0204】
図13で向き合う特定の実験では、豆の新芽は、従来技術で周知のように、水耕的に、非土壌的支持体(この場合は、チーズクロス)によって育成された。新芽は、アグロバクテリウムの混和混合物に浸され、AGROINfILTRATIONを実現するため、真空を−28 psiで90秒印加した。ある場合には、真空を1回を超えて印加した。
【0205】
図13で向き合う特定の実験では、新芽は、AGROINfILTRATION後水道水で1回濯ぎ、次に、育成スペースに戻し、水を与えた。
【0206】
図14〜16は、図13に示す戦略にしたがって実行した各種実験の結果を表す。例えば、図14に示すように、リケナーゼ生産構築体を、SPECKLED PEA (SP)、YELLOW PEA (YP)、BILL JUMP PEA (BP)新芽に対しアグロバクテリウム浸潤させた。AGROINfILTRATION前、新芽は、2日間暗黒中(発芽を可能とするため)、8日間明光中(”2(8)”の表示によって示されるように)で育成した。前述のように、この10日の後でAGROINfILTRATIONを実施し、接種後、生産タンパク質の検出前に5日間(dpi)育成した。図14において見て取れるように、リケナーゼタンパク質は、三つの全ての品種によって生産されたが、YELLOW PEAは、SPECKLED PEAよりもいく分高い生産レベルを有し、BILL JUMP PEAは、いく分低い生産レベルを有していた。このような変動は、植物におけるタンパク質の発現に関し通常の知識・技術を有する当業者の経験範囲に十分入るものである。これらの結果に徴すれば、任意の特定のタンパク質の生産のために好ましい植物品種を選択するのに、通例の実験以上のものは必要とされないであろう。一般に、これらの豆新芽システムにおいて観察される発現レベルは、NICOTIANA BENTHAMIANAにおける関連タンパク質(例えば、Lich−PA)の発現時に観察されるもの(図示せず)の約1/3であった。これらの新芽は、それらが食用となるという点で、NICOTIANA BENTHAMIANAに勝る利点を有する。なぜなら、この植物の全ての成分は、少なくとも人類に対して無害であることが知られるので、生産される製薬学的活性タンパク質(単複)の単離は、仮に必要とされるとしても、簡単化されるに違いないからである。さらに、この豆新芽は、急速に生育し、かつ安価である。一方、種子の保存は、NICOTIANA BENTHAMIANAに比べて簡単である。なぜなら、その種子は、新芽一般のものよりも、特に豆類よりもはるかに小さいからである。
【0207】
図14を参照すると見て取れるように、これらの特定の実験では、前述のAIMV生産システムの方が、類似のTMVシステム(本明細書に記載する)よりも、対象タンパク質の生産ではより好成績を挙げた。当業者であれば、TMVシステムの方が、ある特定の植物品種におけるある特定のタンパク質の生産ではより好ましく、一方、AIMVの方が、上記を含めた別の状況ではより好ましいことを理解するであろう。
【0208】
図15は、AGROINfILTRATIONの前様々な期間育成したSPECKLED PEA、およびYELLOW PEAにおけるGFPの好成績生産を示す。図15に示す特定の実験では、真空を、それぞれ90秒間3回印加した。さらに、利用した、特定の再縣濁媒体は、「完全MMA」であった。当業者であれば、別法として、最小MMA、ABなどを含む、他の種々の浸潤媒体の内のいずれのものも使用が可能であり、AGROINfILTRATION、およびしたがって、タンパク質またはポリペプチド生産の最終効率を増すか、または減らす可能性のあることを理解するであろう。
【0209】
図16は、湿潤後の様々な期間における、SPECKLED PEAの葉(L)、新芽全体(W)、根(R)、または、胚軸(H)におけるリケナーゼの発現を示す。見て取れるように、もっとも大きな発現は葉に起こる。さらに、この特定のシステムでは、発現は、浸潤のほぼ5〜7日後が最高である。利用される植物の日齢および品種の外、発現されるタンパク質(単複)に応じて若干の変動が予想される。
【0210】
他の類似の実験は、例えば、5/3′UTR構造を欠くpBI−CP構築体が、恐らくコートタンパク質(CP)の生産を増すことによって、対象タンパク質の生産を増すことを明らかにした。さらに、このシステムでは、9〜12日齢の植物が発現に最適であった。一般に、若い組織の方が、より高レベルのタンパク質を発現するが、より多くのバイオマスを有するのはより高齢の組織である。
【0211】
同様の、別の実験から、12/12明光/暗黒サイクルではなく、24時間明光に植物を暴露すると、対象タンパク質のレベルが実質的に低下するという結果が得られた。
【0212】
同様の、さらに別の実験から、AGROINfILTRATION時に豆新芽を弱い界面活性剤に暴露すると、恐らくAGROINfILTRATIONの効率および/または程度を上げることによって、対象タンパク質の生産レベルを増す可能性のあることが示された。
【0213】
実施例8:植物における、タンパク質またはポリペプチド大規模生産のためのモジュールシステム
本実施例は、ロット生産時間を、ある場合は、5週間にまで短縮する、バイオ製剤の製造を革命化する、技術土台を記載する。本実施例に記載される特定の生産システムは、対象タンパク質またはポリペプチドのコード配列を担う植物ウィルスRNAの、莫大数のコピーを、数分以内に幼若植物の中に輸送するためにアグロバクテリウムベクターを利用する。したがって、対象タンパク質またはポリペプチドの高レベルの一過性発現を、アグロバクテリウムベクターの植物への導入後1週間以内に、大量の植物バイオマスにおいて実現することが可能である。
【0214】
本実施例に記載する技術土台は、広範な、モノマーまたはマルチマータンパク質に、(中でも特に)ワクチン抗原、モノクロナール抗体、およびその他の治療剤を含むタンパク質に適用することが可能であり、かつ、様々の植物品種において実行することが可能である。植物における発現の方が、別のあるシステムよりも、適切なフォールド形成および可溶性を発揮する可能性が高く、動物病原体と無縁であるという利点を余分に持つ。この特定の実施例では、我々は、実生におけるワクチン抗原およびモノクロナール抗体の加工および生産に注目する。
【0215】
本実施例に記載されるように、対象タンパク質またはポリペプチドをコードする遺伝子は、アグロバクテリウムおよび植物RNAウィルス配列の要素を併せもつ発射ベクターにクローンされる。次に、アグロバクテリウムを用い、真空浸潤により発射ベクターの数百万コピーを植物に導入する。植物組織では、このベクター配列は、ウィルス複製を通じてさらに大量に増幅される。次に、標的タンパク質が、このウィルス転写物から、ベクター導入後1週間も経たない内に生産される。アグロバクテリウムベクターは植物細胞に組み込まれる必要の無いこと(ただし、組み込みが禁じられているわけでもない)が理解されよう。ベクターのアグロバクテリウム要素は、それからタンパク質が最終的に生産されるウィルスRNAの、速やかな全身的輸送(AGROINfILTRATIONを通じて)を単に促進するにすぎない。
【0216】
このシステムは、新鮮植物組織1 KG当たり、大量の標的タンパク質(例えば、百ミリグラム量)を生産するために使用することが可能である。さらに、すぐに入手が可能な、大量の種子(前述したように、トランスジェニックである必要はない)と同程度のきわめて大容量を実現することが可能である。
【0217】
本明細書に記載されるように、ある場合、標的タンパク質またはポリペプチドは、該タンパク質を安定化するため、および/または、下流処理をやり易くするために担体分子との融合体として生産される。このような担体は、抗原タンパク質の生産においては特に有用である。特定対象の担体としては、例えば、熱安定性タンパク質、例えば、2003年5月22日出願USSN 60/472,495、および2004年5月24日出願のPCT/US04/016452で、2005年3月24日にWO 05/026375として公刊された特許に記載されるものと同様のタンパク質が挙げられる。我々は、本実施例における、そのような一熱安定担体分子が、CLOSTRIDIUM THERMOCELLUM由来のβ−1,2−1,4−グカナーゼ(LicKM)であることを注記する。標的配列は、LicKMに対し、N末端、C末端、または内部的融合体として速やかに加工することが可能である。LicKMにおける外来遺伝子の存在は、この分子の熱安定性の損失を招くことはない。この特性は、標的タンパク質の、簡単で、コスト効率の高い回収を促進する。単純な加熱処理工程(例えば、65℃で最大10分)によって、宿主タンパク質の大部分が排除される。さらに、一つを超える標的タンパク質を、各LicKM分子に、しかも複数の挿入部位を使って同時に融合させることが可能である。
【0218】
具体的には、遺伝学的に修飾されていない植物から得た種子を、水耕条件下に発芽させ、真空浸潤前、閉鎖された屋内植物施設において、一定期間(例えば、通常、新芽に対しては最大約10日;NICOTIANA BENTHAMANIAでは時に2〜6週)維持する。この条件下では、1平方フィート当たりの植物バイオマスの収率は、土壌で育成した植物で実現されるものよりも、通常、4〜5倍高い。幼若植物(例えば、発芽実生)を用いることによって、我々は、1平方フィート当たり大量の緑色組織(例えば、約100〜1000KG)を有する、濃密な天蓋を生成することが可能である。ほんの二三の例を挙げると、我々は、通常、豆などの新芽において、平方フィート当たり約700 Gの緑色組織を有する天蓋を生成することが可能である。NICOTIANA BENTHAMANIAでは、通常、平方フィート当たり約200 Gの緑色組織を有する天蓋が生成される。当業者であれば、他の植物では、ほぼこの量の間になることを理解されるであろう。
【0219】
適合照明ユニットを取り付けた幼若植物(例えば、実生)の棚を互いに積み重ねることによって、きわめて高い容量を実現することが可能である(1000平方フィートの育成室は、2週間未満で、最大4メートルトンのバイオマスを供給する)。植物の空気性部分は全て、真空を印加し、素早く解除することによって、発射ベクターを宿すアグロバクテリウムによって浸潤される。これによって、アグロバクテリウムは、ほぼ完全に葉全体を含む、植物組織の天蓋全体の中に強制的に輸送される。次に、標的タンパク質は、数日の期間(例えば、約2から約14日、ある実施態様では、約2から10、3から7、4から6日など)で蓄積する。
【0220】
種子から収穫組織までの全過程は、通常、数週(例えば、6、5、4、3、または2週未満;多くの場合、新芽では約2週間)を要する。種子材料は非トランスジェニックであり、種子生成および保存は安価であり単純であるから、大規模化には、効果的にも、制限は無い。したがって、きわめて大量の組み換えタンパク質が、数週の内に生成される可能性がある。
【0221】
生産される標的タンパク質は、望むなら単離することが可能である。熱安定担体に融合させた標的の単離には、加熱工程が有用である可能性がある。他の精製法としては、各種分離および/またはクロマトグラフィー工程を挙げることが可能である。例えば、硫酸アンモニウム沈殿、pH依存性分離、サイズ排除クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、およびアフィニティークロマトグラフィーなどの工程を使用してもよい。
【0222】
本実施例において考慮の対象とされる全体プロセスは:1)遺伝子最適化および合成;2)発射ベクターに対するクローニング;3)植物材料とアグロバクテリア培養体の準備;4)新芽実生の真空浸潤;5)標的発現;6)組織の収穫;7)および標的回収を含む。高処理生産を可能とするために、我々は、このプロセスの多くを自動化する。具体的には、非トランスジェニック種子の播種およびアグロバクテリウム培養体の発酵から、ホモジナイゼーション、澄明化、およびホモジェナイズ植物材料の容量低下(図19参照)までの全工程が自動化される。我々は、1バッチで1.5メートルトンの植物バイオマスを生産する能力を持つモジュールを設計、建設する予定である。具体的には、我々は、図20に概念的に示される装置を建設する予定である。
【0223】
図20に示す装置設計は、全体モジュールが約5000平方フィートのスペース内に納まるように、タワー概念を使用する。中央の棚収容ユニットは、1.5メートルトンの植物バイオマスを育成するのに必要な、スペース、照明、および水補給を供給する。湿度、温度、および明度は、自動的に監視、調節される。図20に示す設計では、植物は、サイズが1′×2′のトレイで水耕的に育成される。したがって、約6000個のトレイが使用される。モジュールは、積み重ねが可能な、36個の、別々の保存ユニットによって構築される。各保存ユニットは、6×7×4個のトレイを保持する。設計の単位構成によって規模調節的生産が可能である。棚の各側に二つのロボットがあり、これが、トレイを、棚から取り出し、かつ、棚へ収める。水耕栽培に好適な材料の上で、自動播種が行われる。一旦植物が適切な成熟度に達したならば、コンベヤーが、それらを湿潤ユニットに輸送する。このユニットは、約8時間で1.5メートルトンの植物バイオマスを湿潤する能力を持つ真空チェンバーを有する。濯ぎユニットは、余分なAGROBACTERIA培養体を除去する。一旦植物が濯がれたならば、それらは、数日間標的蓄積のために中央棚収容ユニットへ戻される。その後、トレイは、収穫ユニットに運ばれ、そこで、植物は収穫され、ホモジェナイズされる。次に、このホモジェナイズ植物抽出物は、下流の処理ユニットに輸送される。
【0224】
実施例9:ウィルス配列を含むアグロバクテリウム構築体によるHPV抗原の発現
アグロバクテリウム湿潤法によって実現される、アグロバクテリウム介在一過性発現システムを利用することが可能である(TURPEN ET AL., 1993, J. VIROL. METHODS, 42:227)。N. BENTHAMIANAの健康な葉を、LICKM−E7またはLICKM−E7GGGを発現するように加工されたウィルスベクターを含む、A. RHIZOGENESによって浸潤した。
【0225】
A. RHIZOGENES A4株(ATCC 43057)、またはA. TUMEfACIENS (GV3103)を、構築体、pBI−D4−PRACS−LicKM−E7−KDEL, PBI−D4−PRACS−LICKM−E7VAC, pBI−D4−PRACS−LicKM−E7GGG−KDEL、およびpBI−D4−PRACS−LICKM−E7GGG−VACによって形質転換した。アグロバクテリウム培養体は、前述のように育成し、誘発した(KAPILA ET AL., 1997, PLANT SCI., 122:101)。2 MLのスターター培養体(新鮮コロニーから採取)を、28℃において、25 μG/MLのカナマイシン添加YEB (5 G/Lの牛肉抽出物、1 G/Lの酵母抽出物、5 G/Lのペプトン、5 G/Lのスクロース、2 MM MGSO4)にて一晩育成した。このスターター培養体を、25 μG/MLのカナマイシン、10MMの2〜4(−モルフォリノ)エタンスルフォン酸(MES) pH5.6、2 MMの新たなMGSO4、および20 μMのアセトシリンゴン添加YEB 500 MLに1:500希釈した。次に、この希釈培養体を28℃で一晩O.D.600が約1.7となるまで育成した。細胞を3,000 X Gで15分遠心し、MMA培養液(MS塩、10 MM MES pH5.6、20 G/L スクロース、200 μMアセトシリンゴン)にO.D.600が約2.4となるまで再縣濁し、室温で1時間維持し、アグロバクテリウムー浸潤のために用いた。N. BENTHAMIANAの葉に、針の無いディスポーザブルシリンジを用いてアグロバクテリウム縣濁液を注入した。浸潤された葉を、浸潤の6日後に収穫した。
【0226】
実施例10:ウィルス配列を含むアグロバクテリウム構築体による炭疽菌抗原の発現
アグロバクテリウム浸潤によって実現される、アグロバクテリウム介在一過性発現システムは、炭疽菌抗原(単複)を生産するために利用することが可能である。N. BENTHAMIANAの健康な葉を、LicKMまたはLicKM−PAD4を発現するように加工されたウィルスベクターを含む、A. RHIZOGENESによって浸潤した。使用したベクターは、pBI−D4、すなわち、アグロバクテリウムベクターpBI121にウィルス発現ベクターD4を導入した改訂版である(CHEN ET AL., 2003, MOL. BREED., 11:287)。35Sプロモーターを、ウィルス配列の5′末端に融合する。このベクター配列は、pBI121のBAMHIおよびSACIの間に配置される。ハンマーヘッドリボザイムが、このウィルス配列の3′に置かれる(TURPEN ET AL., 1993, J. VIROL. METHODS, 42:227)。これらの構築体は、タバコPR−1Aタンパク質のシグナルペプチドをコードする配列に対する、LicKM−PAD4またはLicKMをコードする配列の融合体、6X HISタグ、およびER−保持アンカー配列KDEL(配列番号10参照)を含む。
【0227】
A. RHIZOGENES A4株(ATCC 43057)を、構築体、PBI−D4−PRLicKM−PAD4K、およびpBI−D4−PRLicKMKによって形質転換した。アグロバクテリウム培養体は、前述のように育成し、誘発した(KAPILA ET AL., 1997, PLANT SCI., 122:101)。2 MLのスターター培養体(新鮮コロニーから採取)を、28℃において、25 μG/MLのカナマイシン添加YEB (5 G/Lの牛肉抽出物、1 G/Lの酵母抽出物、5 G/Lのペプトン、5 G/Lのスクロース、2 MM MGSO4)にて一晩育成した。このスターター培養体を、25 μG/MLのカナマイシン、10 MMの2〜4(−モルフォリノ)エタンスルフォン酸(MES) PH5.6、2 MMの新たなMGSO4、および20 μMのアセトシリンゴン添加YEB 500 MLに1:500希釈した。次に、この希釈培養体を28℃で一晩O.D.600が約1.7となるまで育成した。細胞を3,000 X Gで15分遠心し、MMA培養液(MS塩、10 MM MES PH5.6、20 G/L スクロース、200 μMアセトシリンゴン)にO.D.600が約2.4となるまで再縣濁し、室温で1時間維持し、アグロバクテリウムー浸潤のために用いた。N. BENTHAMIANAの葉に、針の無いディスポーザブルシリンジを用いてアグロバクテリウム縣濁液を注入した。浸潤された葉を、浸潤の6日後に収穫した。
【0228】
実施例11:ウィルス配列を含むアグロバクテリウム構築体によるインフルエンザ抗原の発現
アグロバクテリウム浸潤によって実現される、アグロバクテリウム介在一過性発現システムは、インフルエンザ抗原(単複)を生産するために利用することが可能である。(TURPEN ET AL., (1993) TRANSfECTION Of WHOLE PLANTS fROM WOUNDS INOCULATED WITH ARGOBACTERIUM TUMEfACIENS CONTAINING CDNA Of TOBACCO MOSAIC VIRUS (J. VIROL. METHODS, 42:227)。N. BENTHAMIANAの健康な葉を、LicKM−HAまたはLicKM−NAを発現するように加工されたウィルスベクターを含む、A. RHIZOGENESによって浸潤した。
【0229】
A. RHIZOGENES A4株(ATCC 43057)を、構築体、pBI−D4−PRACS−LicKM−HA−KDEL, pBI−D4−PRACS−LicKM−HA−VAC, pBI−D4−PRACS−LicKM−NA−KDEL、およびpBI−D4−PRACS−LICKM−NA−VACによって形質転換した。アグロバクテリウム培養体は、 KAPILA ET AL. (KAPILA J., DE RYCKE R., VAN MONTAGU M. AND ANGENON G. (1997) AN アグロバクテリウム−MEDIATED TRANSIENT GENE EXPRESSION SYSTEM fOR INTACT LEAVES. PLANT SCI. 122:101)に記載されるように育成し、誘発した。2 MLのスターター培養体(新鮮コロニーから採取)を、28℃において、25 μG/MLのカナマイシン添加YEB (5 G/Lの牛肉抽出物、1 G/Lの酵母抽出物、5 G/Lのペプトン、5 G/Lのスクロース、2 MM MGSO4)にて一晩育成した。このスターター培養体を、25 μG/MLのカナマイシン、10 MMの2〜4(−モルフォリノ)エタンスルフォン酸(MES) pH5.6、2 MMの新たなMGSO4、および20 μMのアセトシリンゴン添加YEB 500 MLに1:500希釈した。次に、この希釈培養体を28℃で一晩O.D.600が約1.7となるまで育成した。細胞を3,000 X Gで15分遠心し、MMA培養液(MS塩、10 MM MES pH5.6、20 G/L スクロース、200 μMアセトシリンゴン)にO.D.600 2.4となるまで再縣濁し、室温で1〜3時間維持し、アグロバクテリウム浸潤のために用いた。N. BENTHAMIANAの葉に、針の無いディスポーザブルシリンジを用いてアグロバクテリウム縣濁液を注入した。浸潤された葉を、浸潤の6日後に収穫した。植物は、リケナーゼ活性アッセイの評価および免疫ブロット分析によって、標的抗原の発現の有無に関してスクリーニングすることが可能である。
【0230】
ザイモグラム分析によって、試験されたNICOTIANA BENTAMIANAトランスジェニック根においてHAおよびNA両キメラタンパク質の発現が明らかにされた。この発現は、リケナーゼ活性と関連する。この融合タンパク質に関連する活性バンドは、リケナーゼコントロールよりも高い分子量を示し、アグロバクテリウム感染後の植物によって発現される産物の分子量と同じであった。これは、全体融合産物の存在を確認する。
【0231】
実施例12:ウィルス配列を含むアグロバクテリウム構築体によるインフルエンザ抗体の発現
その他の実施態様
当業者であれば、前記は、本発明の、いくつかの好ましい実施態様を表すものであり、本発明の精神、および、頭書の特許請求の範囲によって定められる、本発明の範囲を限定するものと考えてはならないことを理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0232】
【図1】図1は、植物ウィルス組み込みベクターを用いて外来遺伝子を発現するための、いくつかの異なる戦略を示す模式図である。
【図2】図2は、AIMVおよびTMVゲノムの模式図である。
【図3】図3は、Av/A4およびAv/GFPを接種されたNICOTINIA BENTHAMIANAにおける組み換えGFP発現のウェスタンブロット図である。
【図4】図4は、GHのインビトロ転写物に感染した、N. BENTHAMIANA植物における、ヒトの成長ホルモン(hGH)生産のウェスタンブロット図である。
【図5】図5は、BRASSICA JUNCEAにおける組み換えタンパク質発現のための形質転換ベクターの模式図である。
【図6】図6は、HSP 18.2プロモーターの調節下に、ヒトの成長ホルモンを発現するトランスジェニックBRASSICA JUNCEAの免疫ブロット図を示す。
【図7】図7は、標的遺伝子を含む各種アグロバクテリウム構築体の模式図を示す。図7A:ベクターpBIVで、標的遺伝子は、植物プロモーター(IV=任意の植物プロモーター、人工プロモーター、または、植物細胞中で機能する他のプロモーター、例えば、カリフラワーモザイクウィルスなどの植物ウィルスのプロモーター)、および、NOSターミネーターの間に組み込まれる。図7B:ベクターpBIV−GUSで、GUS遺伝子は、PBIVの中に挿入される。図7C:pBIV−ウィルスベクター+標的で、標的遺伝子を担うウィルスベクターまたはレプリコン(例えば、ウィルスゲノムまたはゲノム部分)が、PBIVに挿入される。図7D:ベクターpBIV−ウィルスベクター+GFPで、GFP、およびウィルスベクターまたはレプリコンによって担われる標的遺伝子は、PBIVに挿入される。図7Cおよび7Dに描かれるベクターは、「発射」ベクターと考えられる。なぜなら、植物細胞に導入された後、これらは、ウィルス配列の生産を「打ち上げる」からである(ウィルス配列は、少なくとも、それらが発射される特定の植物細胞の背景において自己複製的であってもよい)。
【図8】図8は、新芽の、pBIV−GUSによるAGROINfILTRATION後のGUS染色を示す。図8Aは、緑豆新芽の染色を示し、図8Bは、フェヌグリーク新芽の染色を示す。
【図9A】図9は、BRASSICA新芽の、pBIV−GUSによるAGROINfILTRATION後のGUS染色を示す。図9Aは染色結果を示す。図9Bは、対象タンパク質またはポリペプチドをコードする遺伝子を担うウィルス配列の発現を指令するプロモーターを含むアグロバクテリウム構築体を介して輸送されるタンパク質またはポリペプチドを発現する能力について試験される、様々のタイプの新芽を列挙する表である。
【図9B】図9は、BRASSICA新芽の、pBIV−GUSによるAGROINfILTRATION後のGUS染色を示す。図9Aは染色結果を示す。図9Bは、対象タンパク質またはポリペプチドをコードする遺伝子を担うウィルス配列の発現を指令するプロモーターを含むアグロバクテリウム構築体を介して輸送されるタンパク質またはポリペプチドを発現する能力について試験される、様々のタイプの新芽を列挙する表である。
【図10】図10は、pBI121/D4−GFPC3による浸潤後の時間経過で見たN. BENTHAMIANAにおけるGFP発現を示す。
【図11】図11は、hGHをコードする配列を含むウィルスベクターを含むアグロバクテリウムによる浸潤の結果生じた、植物におけるhGH発現に関するウェスタンブロット分析を示す。レーン:レーン1:ラダー;レーン2:50 NG hGH;レーン3:pBI121/D4ーhGH 6DPI、1:2希釈によって浸潤された植物サンプル;レーン4:pBI121/D4−hGH 6DPI、1:10希釈によって浸潤された植物サンプル;レーン5:pBI121/D4−hGH 6DPI、1:50希釈によって浸潤された植物サンプル;レーン6:pBI121/D4−hGH 6dpi、1:100希釈によって浸潤された植物サンプル;レーン7:健康な植物から得た植物サンプル;レーン8:pBI121−浸潤葉から得た植物サンプル;レーン9:D4−HGH感染植物 13dpiから得た植物サンプル;レーン10:D4−HGH感染クローン根系統から得たサンプル。植物サンプルについて:一リーフディスクを、LAEMMLI負荷バッファーと共に100 UL BRADLEYバッファーにおいて粉砕する。レーン当たり10 ULを負荷する。したがって、レーン3ー6では、この一次サンプルは希釈される。
【図12】図12は、水耕栽培で育成したNICOTIANA BENTHAMIANA植物におけるIA−2icタンパク質の発現を示す。レーン:1:IA−2IC標準;2.マジックマーカー;3.AGROBACTERIAを注入された土壌育成植物;4,5.浸潤4日後の水耕栽培植物;6,7.浸潤6日後の水耕栽培植物。
【図13】図13は、対象標的タンパク質を担うウィルス配列を幼若植物の中に発射するアグロバクテリウムベクターを輸送するために、本発明にしたがって利用されるAGROINfILTRATIONシステムの一実施態様を示す。
【図14】図14は、図13のシステムを用いてAGROINfILTRATIONを実施した、各種豆品種において検出されたリケナーゼの活性を示す。
【図15】図15は、図13のシステムを用いてAGROINfILTRATIONを実施した、SPECKLED PEASのGFP発現および植物の生育を示す。
【図16】図16は、図13のシステムを用いてAGROINfILTRATIONを実施した、いくつかのSPECKLED PEASの組織特異性と、最適な浸潤後日数を示す。
【図17】図17は、本発明のある実施態様にしたがって対象タンパク質またはポリペプチドとの融合に使用してもよい、リケナーゼ担体分子を示す。パネルAは、CLOSTRIDIUM THERMOCELLUMから得られたB−1、3−1、4−グルカナーゼ(リケナーゼ)の模式図を示す。パネルBは、円方向に配置転換したLicKM担体の模式図を示す。各パネルにおいて、垂直線陰影部は、触媒ドメインのN末端領域に対応し、点描ボックスは、触媒ドメインのC末端領域に対応する。
【図18】図18は、発射ベクターpBID4の模式図を示す。
【図19】図19は、標的遺伝子の最適化から、すぐに保存が可能な最終産物の精製までのプロセスに、本発明の特異的一実施態様にしたがって与る各工程の模式図である。
【図20】図20は、植物発芽から組織の収穫までの工程の自動化に有用な装備設計を示す。図示のように、モジュールは、約40フィート×約70フィートの床面積を占め、高さ約32フィートになると推定される。図示のシステムは、コンベヤーによってつながれる下記の成分:中央棚収容ユニットで、植物が工程の合間に維持されるユニット、播種ユニット、真空浸潤および濯ぎユニット、および組織収穫ユニットを含む。
【背景技術】
【0001】
関連出願
本願は、2006年2月13日に出願され、「Production of Foreign Nucleic Acids and Polypeptides in Sprout System」という名称の、同時係属中の米国特許出願第11/353,905号の継続出願であり、その利益を主張する。米国特許出願第11/353,905号の全内容は、本明細書中に参考として援用される。
【0002】
本願はまた、各々2006年2月13日に出願された、同時係属中の米国仮特許出願第60/773,255号(「Bacillus Anthracis Antigens,Vaccine Compositions, and Related Methods」という名称);米国仮特許出願第60/773,374号(「HPV Antigens,Vaccine Compositions,and Related Methods」という名称);米国仮特許出願第60/773,378号(「Influenza Antigen,Vaccine Compositions,and Related Methods」という名称);米国仮特許出願第60/773,378号(「Influenza Antigen,Vaccine Compositions,and Related Methods」という名称)の利益もまた主張する。これらの出願の各々における全内容は、本明細書中に参考として援用される。
【0003】
本願はさらに、2006年6月15日に出願され、「Influenza Antigens,Vaccine Compositions,and Related Methods」という名称の、同時係属中の米国仮特許出願第60/813,955号の利益を主張する。米国仮特許出願第60/813,955号の全内容は、本明細書中に参考として援用される。
【0004】
本願はさらに、2006年9月15日に出願され、「Influenza Antibodies,Vaccine Compositions,and Related Methods」という名称の、同時係属中の米国仮特許出願第60/944,770号の利益を主張する。米国仮特許出願第60/944,770号の全内容は、本明細書中に参考として援用される。
【0005】
本願はさらに、2007年1月9日に出願され、「Launch Vector for the Production of Vaccine Antigens in Plants」という名称の、同時係属中の米国仮特許出願第60/879,450号の利益を主張する。米国仮特許出願第60/879,450号の全内容は、本明細書中に参考として援用される。
【0006】
発明の背景
薬剤のコストは異常に高く、かつ、上がり続けている。ある種の薬剤は、高コストに加えてさらに供給が制限されるため、それを必要とする患者の全てが必ずしも利用することができない。このことは、コストおよび入手困難の両方が、必要な人口に対する薬剤の配布を妨げている発展途上国では特に問題となっている。
【0007】
薬剤生産の高コストにはいくつかの要因が寄与し、消費者にとって薬剤の高値をもたらす。これは、タンパク質およびペプチド系薬剤に特に当てはまる。ある種の薬剤にとってもう一つの寄与因子は、治療的有効量の薬剤を経口的に投与することができないことである。多くの薬剤は、体の特定部位に対する注入によってのみ投与が可能である。例えば、アレルギーまたは感染症治療のための、多くの免疫化薬剤は、注入による投与を要求する。タンパク質およびペプチド薬剤、例えば、ヒトの成長ホルモンおよびインスリンは、注入によってのみ投与が可能である。多くの薬剤のコストに寄与するもう一つの因子は、病院または配布部位への輸送である。特に高温気象では、薬剤の輸送および保存は、高価な冷蔵設備を必要とする。これは、そのような設備が利用できない場合が多い、発展途上国では大きな難題である。
【0008】
これまで、製剤タンパク質およびペプチドは、多様な宿主において生産されてきた。多くの治療タンパク質は、前核細胞、例えば、ESCHERICHIA COLIおよびBACILLUS SUBTILIS、および真核細胞、例えば、酵母、真菌、昆虫細胞、動物細胞、およびトランスジェニック動物を含む異種発現システムにおいて生産されている。細菌発現システムは、操作が比較的簡単で、産物の収率も高い。しかしながら、哺乳類タンパク質は、機能的活性を獲得するために広範な翻訳後修飾を要求することが多く、これが、細菌発現システムにおける制限因子となる可能性がある。細胞培養システム、例えば、哺乳類、ヒト、および昆虫細胞培養システムは、複雑なタンパク質の生産には比較的便利である。しかしながら、長い準備期間、産物の低収率、病原体転送の可能性、および高い資本および生産コストは、重大な不安要素を表す。トランスジェニック動物は、複雑なタンパク質の無制限な供給源となる可能性がある。このシステムは残念ながら、新規の改良製品を生成し、ヒトの被検体に対する病原体転送の危険性の対処に要する期間の長さによって制限される。
【0009】
前核および真核細胞における製剤タンパク質およびペプチドの生産にたいする経済的および生化学的限界、例えば、高い生産コスト、低い収率、分泌問題、タンパク質加工における不適切な修飾、比較的大容量にスケールアップするときの困難、および汚染を含む限界のために、研究者たちは、コスト削減を期待して、タンパク質およびペプチドの大規模生産のための新規宿主として植物を調べる方向に導かれている。トランスジェニック植物におけるタンパク質の生産は、例えば、特許文献1;特許文献2;特許文献3;特許文献4;および特許文献5に記載されている。植物は、前核および真核細胞よりも育成が安価で、より大量に収穫されるが、植物細胞における外来遺伝子の発現は通常低い。さらに、植物の収穫は、通常、例えば、葉を除去する、根から茎を分離する、または根を除去することによる該植物の破壊を必要とする。このような破壊は、通常、植物の凋落および植物のアポトーシスを起動するプロセスをもたらす。アポトーシスを経過する植物は、プロテアーゼを生成し、これは、遺伝子導入によって発現されるタンパク質の精製がまだ始まらない内に、該タンパク質の分解を招く。仮令植物を直接消費するとしても、発現される薬剤化合物の活性は、収穫によって誘発される細胞内分解機序によって低下する可能性がある。
【0010】
開放圃場において育成されるトランスジェニック植物における外来タンパク質の生産に関連する、もう一つの重大な不安要素は、野生植物による交差受粉の可能性である。これは、外来タンパク質が食物連鎖の中に入ることを可能とする。トランスジェニック植物に関する農業施行を取り巻く政府規制はきわめて複雑であり、これが、新規トランスジェニック植物の農業的使用の承認を困難にする。さらに、戸外環境は、調節が不可能なので、外来遺伝子の適切な成長、発達、および発現の確保を困難とする。例えば、熱誘発性、光誘発性、ホルモン誘発性、または化学的誘発性プロモーターの誘発は、戸外環境では実際的に不可能であろう。もちろん、戸外の温度および光レベルを調節することはできない。植物の上に撒布されるホルモンまたは薬品も、風や雨によって、植物だけでなく、周辺環境の中に拡散される可能性が高い。
【0011】
タンパク質またはペプチド生産のための改良システムが求められている。植物におけるタンパク質またはポリペプチド生産のための改良システムが特に求められている。例えば、収穫時、発現タンパク質の細胞間分解を抑える、植物における製剤タンパク質生産のための調整可能な調節システムが求められている。
【特許文献1】米国特許第5,750,871号明細書
【特許文献2】米国特許第5,565,347号明細書
【特許文献3】米国特許第5,464,763号明細書
【特許文献4】米国特許第5,750,871号明細書
【特許文献5】米国特許第5,565,347号明細書
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0012】
発明の概要
本発明は、タンパク質またはポリペプチド(および/または核酸)、特に植物における製剤タンパク質またはポリペプチドを生産するためのシステムを提供する。
【0013】
一局面において、本発明は、植物におけるタンパク質またはポリペプチドの速やかな発現のためのシステムを提供する。したがって、ある実施態様では、本発明は、幼若植物においてタンパク質またはポリペプチドの発現を実現する。ある実施態様では、幼若植物(例えば、出芽実生)を、生のまま消費または収穫することが可能である。ある実施態様では、植物は、封鎖され、調整可能な環境、例えば、室内で育成される(例えば、種子から)。
【0014】
ある実施態様では、本発明にしたがって生産されるタンパク質またはポリペプチドは、ヒトの手で植物の中に導入された核酸構築体から植物細胞において発現される。ある実施態様では、本発明にしたがって生産されるタンパク質またはポリペプチドは、植物細胞において植物ウィルス特有のRNAから翻訳される。ある実施態様では、これらの特徴は、自己複製、細胞間移動、全身移動、およびこれらの組み合わせを含むか、それらから成る群から選ばれる。ある実施態様では、このRNAは、植物において、自己複製的であり、細胞間移動が可能であるが、全身移動ができない。
【0015】
ある実施態様では、本発明にしたがって生産されるタンパク質またはポリペプチドは、植物細胞において、アグロバクテリウムにおいて複製する核酸構築体から発現される。ある実施態様では、本発明は、アグロバクテリウムにおいて複製し、さらに、植物ウィルス特有の、RNA発現指令プロモーターを含む、構築体を利用する。ある実施態様では、このRNAは、対象タンパク質またはポリペプチドをコードする配列を含む。したがって、本発明のある実施態様では、対象タンパク質またはポリペプチドは、アグロバクテリウムにおいて複製し、さらに、植物ウィルスに特有の、RNA発現指令プロモーターを含むベクターを植物細胞に導入することを含むプロセスによって、植物において生産される。そのRNAは、植物において全身移動ができないが、自己複製は可能であり、さらに、対象タンパク質またはポリペプチドをコードする。
【0016】
アグロバクテリウムにおいて複製する構築体が利用される、本発明のある実施態様では、該構築体は、AGROINfILTRATION法によって植物細胞に導入される。
【0017】
本発明は、本明細書において、製剤タンパク質の生産ためのその使用を参照しながら記述されるが、本発明は、一般に、核酸またはタンパク質の特定の使用(単数または複数)に関する制限無しに、事実上、対象とする任意の核酸(DNAおよび/またはRNA)および/またはタンパク質の生産のために使用される。例えば、多様な工業プロセスまたはバイオ薬剤製造プロセス(例えば、汚染物質を分解する酵素)の内の任意のプロセスにおいて使用される酵素も生産が可能である。したがって、本発明および請求項の記載は、仮令明らかにそれと表示されなくとも、治療的用途を持つものも、持たないものも含め、対象核酸またはタンパク質のいずれにも適用されるものと考えなければならない。ある実施態様では、タンパク質は、栄養学的に重要なタンパク質ではない。本明細書においてそれと名指すことなく、どの特定のタンパク質も、本発明から排除されることはない。
【0018】
本発明のある実施態様では、その局面のいずれにおいても、対象核酸またはタンパク質は、その発現される細胞において、転写後、および/または翻訳後加工される。本発明のある実施態様では、対象タンパク質は、その発現される細胞から分泌される。例えば、タンパク質は、天然状態において、分泌シグナル配列、すなわち、該タンパク質が、分泌シグナル配列をコードする部分を含むよう修飾されるようにコードする、核酸コード領域を含んでもよい。分泌シグナル配列は従来技術で周知である。
【0019】
本発明のある実施態様では、その局面のいずれにおいても、対象タンパク質をコードする異種配列が、植物全体、および/または、特定種類の植物における発現を改善するために、天然配列に見られるものとは異なるコドンを持つように変更されてもよい。例えば、配列は、特定のある品種における発現のためにコドン最適化されてもよい。コドン最適化を実行するための方法は従来技術で既知である。
【0020】
さらに本発明は、中でも特に、本明細書に記載される発現構築体を含む植物、そのような植物を含む組成物、そのような植物から単離されるタンパク質/ポリペプチドの調製品、そのような植物から単離される、そのようなタンパク質/ポリペプチドを含む組成物、そのような単離を実行する方法、およびそのような単離タンパク質/ポリペプチド(または、それらを含む組成物)を使用する方法、例えば、植物において発現される製薬学的に活性を持つタンパク質によって哺乳動物を治療する方法を含む方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
定義
治療を必要とする被検体に対する、製薬学的活性タンパク質またはポリペプチドの「投与」は、該被検体に該製薬学的活性タンパク質を、その宿主に対し所望の有効作用を提供するのに十分なほど長時間そのタンパク質の治療効果を持続させるやり方で提供することが意図される。
【0022】
「動物」という用語は、全ての脊椎動物、生命形、ヒト類、ウシ類、ヒツジ類、ブタ類、イヌ類、ネコ類、フェレット類、げっ歯類、霊長類、魚類、鳥類、例えば、家禽類などを含む。ある実施態様では、動物は哺乳類である。ある実施態様では、動物はヒト類である。
【0023】
本発明によれば、ポリペプチドまたはタンパク質の「特徴部分」とは、アミノ酸の連続鎖、または、一緒になってタンパク質またはアミノ酸を特徴づける、アミノ酸の複数の連続鎖の集合体を含む、タンパク質またはポリペプチドである。ある実施態様では、このような連続鎖はそれぞれ、一般に、少なくとも2、5、10、15、20、またはそれ以上のアミノ酸を含む。一般に、特徴部分とは、上に指定した配列内容の外に、関連する生得(未加工)タンパク質と少なくとも一つの官能特徴を共有するものである。ある実施態様では、特徴部分は生物学的に活性を持っていてもよい。
【0024】
タンパク質またはポリペプチドの「ドメイン」とは、該用語が本明細書で用いられる場合、一般に、該タンパク質またはポリペプチド配列の残余部分と別に生産される場合でも、三次元統合体および/または構造を維持する、タンパク質またはポリペプチドのセグメントを指す。従来技術で周知のように、多くのタンパク質およびポリペプチドは、ドメイン構造を持つ。ある実施態様では、ドメインは、活性(例えば、結合、触媒性など)を有する。ある実施態様では、ドメインは免疫原性である。免疫原ドメインは、少なくとも単一エピトープの同じ大きさを持ち、通常、より大きい。ある実施態様では、免疫原性ドメインは、エピトープの適切な提示を確保するために、エピトープの外にさらに十分な配列を含む。
【0025】
「発現」とは、植物における内因性遺伝子、またはトランスジーンの転写および/または翻訳、例えば、発芽を指す。トランスジーンは、植物のゲノムDNAに組み込まれてもよいし、組み込まれなくともよい。例えば、「発現」は、細菌、プラスミド、またはウィルスの核酸中に存在する遺伝子の、該細菌、プラスミド、またはウィルス核酸が植物のゲノムDNAに組み込まれるか否かとは無関係に、転写および/または翻訳を指す。遺伝子は、細菌、プラスミド、またはウィルスに対して異種である遺伝子であってもよい。
【0026】
「発現カセット」または「発現ベクター」とは、適切な宿主細胞において、特定のヌクレオチド配列の発現を指令することが可能なDNA配列(または、RNAウィルスまたはRNAプラスミドの場合はRNA配列)を指す。例えば、発現カセットは、対象ヌクレオチド配列に動作可能的に連結されるプロモーターを含んでもよい。プロモーターは、3′調節配列などの3′配列または終結シグナルに、任意に動作可能的に連結される。発現カセットはさらに、ヌクレオチド配列の適切な翻訳に必要な配列を、もしも何らかのそのような配列が必要であるならば、通常含んでもよい。コード領域は、通常、対象タンパク質をコードするが、さらに、対象とする機能的RNA、例えば、特定遺伝子の発現を抑制する、アンチセンスRNA、すなわち非翻訳RNAをコードしてもよい。対象ヌクレオチド配列を含む発現カセットは、キメラ的であってもよい。キメラとは、該ヌクレオチド配列が、起源の異なる一つを超えるDNA配列を含み、それらが、組み換えDNA技術によって一種に融合されて、天然では起こらない、特に、それが発現される筈の植物では起こらないヌクレオチド配列をもたらす、そのような一つを超えるDNA配列を意味する。発現カセットはさらに、天然でも生ずるが、異種発現のために有用な組み換え形として得られるものであってもよい。しかしながら、通常、発現カセットは、宿主に対して異種である、すなわち、発現カセットの特定のDNA配列は、宿主細胞では天然では見られず、形質転換事象によって、該宿主細胞に、または該宿主細胞の先祖に導入されなければならない。発現カセットにおけるヌクレオチド配列の発現は、構成的プロモーター、または、宿主細胞が、何らかの特定の外部刺激に対して暴露されたときにのみ転写を開始する誘発可能プロモーターの調節下にあってもよい。植物などの多細胞生物の場合、プロモーターはさらに、特定の組織、器官、または発達段階に対して特異的であってもよい。核酸発現カセットは、通常、植物の核ゲノムの中に挿入され、植物の核ゲノムから、特定ヌクレオチド配列の発現を指令することが可能である。プラスミド発現カセットは、通常、植物のプラスミドゲノムの中に挿入され、植物のプラスミドゲノムから特定のヌクレオチド配列の発現を指令することが可能である。プラスチド発現カセットの場合、プラスチドゲノムからヌクレオチド配列を発現させるために、付加的要素、例えば、リボソーム結合部位、または、プラスチドDNAのポリアデニル化、およびその後の分解を防止する3′ステムーループ構造が必要とされる場合がある。本発明のある実施態様では、TATA要素などの最小プロモーターであるプロモーターを含み、ヌクレオチド配列の発現、特に、高レベル発現に、トランス活性化因子の存在が必要とされる発現カセットが利用される。例えば、発現カセットは、転写アクチベーターの結合のためのDNA領域を含んでもよい。このような発現カセット、およびその中のプロモーターは、「活性可能」と呼ばれる。
【0027】
「食物」または「食品」とは、ヒト、または他の動物が摂取することが可能な、液状または固体状の調製品である。これらの用語は、ヒトおよび/または他の動物に対し直接生きたまま給餌されてもよい、生の、または生きている植物(例えば、発芽実生)の調製品を含むことが好ましい。植物から得られる材料は、ヒトまたは他の動物が摂取することが可能な、食用植物全体を含むことが意図される。本用語はさらに、ヒトおよび他の動物に給餌される、栄養的担体と合わせた、任意の加工植物(例えば、発芽実生)を含んでもよい。加工工程は、食物または飼料産業において一般的に使用される工程を含んでもよい。そのような工程として、例えば、ただしこれらに限定されないが、植物の個体物質の濃縮または圧縮による、例えば、ペレットの形成、ペーストの生産、乾燥、または凍結乾燥が挙げられ、あるいは、植物を様々の程度に切断、押しつぶし、または粉砕することによる生産、あるいは、植物の液状部分の抽出によるスープ、シロップ、またはジュースの生産が挙げられる。加工工程はさらに、植物(例えば、発芽実生)の調理、例えば、蒸し上げを含むことも可能である。
【0028】
「遺伝子」とは、対象タンパク質またはポリペプチド(またはRNA)をコードする配列である。遺伝子は、関連調節配列を含んでもよい。遺伝子のコード配列は、RNAに、例えば、MRNA、RRNA、TRNA、SNRNA、センスRNA、またはアンチセンスRNAに転写されてもよい。しかしながら、当業者には理解されるように、「遺伝子」は、RNAであってもよい(例えば、ウィルスRNAベクターの遺伝子)。「調節配列」の例として、プロモーター配列、5′および3′非翻訳配列、および終止配列が挙げられる。さらに、イントロンおよびエキソンを含めてもよい。ある実施態様では、遺伝子は、コード配列であり、関連調節配列は、異種配列である。
【0029】
本明細書で用いる「異種配列」とは、異なる生得起源を持つもの、または合成起源のものを意味する。例えば、核酸が宿主細胞に導入され、該宿主細胞が、該核酸の中に存在する配列のある部分、または全てを元々含まない場合、その配列(および/または核酸)は、宿主細胞に対して異種と呼ばれる。導入される核酸は、異種プロモーター、異種コード配列、または異種終止配列を含んでもよい。それとは別に、形質転換性核酸は、完全に異種であってもよいし、あるいは、異種核酸配列と内因性核酸配列との、任意の可能な組み合わせを含んでもよい。同様に、異種性とは、同じ天然の、同起源の細胞タイプではあるが、非天然状態、例えば、異なるコピー数、または、異なる調節要素の制御下にある細胞タイプから得られ、かつ、挿入されるヌクレオチドも指す。「異種性」という用語は、植物細胞および細菌細胞を含む細胞にも、さらに、プラスミド、プラスチド、およびウィルスにも適用される。
【0030】
「宿主細胞」とは、発現のためにその中に核酸が導入される細胞である。通常、そのような導入はヒトの手を必要とする。
【0031】
「不活性発現カセット」または「不活性発現ベクター」とは、不活性の、または沈黙化される外来核酸配列であって、活性化されると対象核酸またはポリペプチドの発現を指令することが可能な核酸配列を含むDNAまたはRNA配列である。一般に、不活性発現ベクターは、対象核酸またはポリペプチドをコードする配列が、プロモーターに動作可能的に連結されないこと、例えば、プロモーターから(または別の調節要素から)、介在核酸領域によって隔てられることを除いては、前述の発現カセットの特性を有する。動作可能的連結は、組み換え事象後に起こり、それによって発現が起こる。このような発現カセットは「活性可能」であると呼ばれる。
【0032】
「誘発可能プロモーター」という用語は、プロモーター活性を直接または間接に増す特定の刺激の有無によってスイッチオンされるプロモーターを意味する。そのような刺激の、非限定的例としては、熱、光、発達調節因子、負傷、ホルモン、および薬品、例えば、小型分子が挙げられる。光誘発性プロモーターの一例としては、リブロースー5ーリン酸カルボキシラーゼプロモーターがある。化学的に誘発可能なプロモーターはさらに、受容体介在システム、例えば、他の生物体由来のもの、例えば、ステロイド依存性遺伝子発現受容体、LACリプレッサーシステム、および、国際公開第97/13864号に記載される、なおこの特許文書を引用により本明細書に含める、幼若成長ホルモンおよびその作用剤によって仲介される、ショウジョウバエ由来のUSP受容体を利用する発現システム、および、国際公開第96/27673号に記載される、なおこの特許文書も引用により本明細書に含める、複数の受容体の組み合わせを含むシステムを含む。さらに別の化学的に誘発可能なプロモーターとしては、エリシター誘発性プロモーター、セーフナー誘発性プロモーター、および、ある種のアルコールおよびケトンによって誘発が可能なALCA/ALCR遺伝子活性化システム(国際公開第93/21334号;CADDICK ET AL. (1998) NAT. BIOTECHNOL. 16:177ー180、なお、これらの内容を引用により本明細書に含める)が挙げられる。負傷誘発性プロモーターとしては、プロテイナーゼ抑制因子のプロモーター、例えば、ジャガイモ由来のプロテイナーゼ抑制因子IIプロモーター、および、負傷反応経路に関与する、他の植物由来プロモーター、例えば、ポリフェニルオキシダーゼ、LAP、およびTDのプロモーターが挙げられる。例えば、GATZ, “CHEMICAL CONTROL Of GENE EXPRESSION,” ANN. REV. PLANT PHYSIOL. PLANT MOL. BIOL. (1997) 48:89ー108を参照されたい。なお、この文献を引用によって本明細書に含める。他の誘発可能なプロモーターとして、植物由来プロモーター、例えば、全身的に獲得された耐性経路のプロモーター、例えば、PRプロモーターが挙げられる。本明細書において誘発性プロモーターが論じられる場合、本発明のある実施態様では、活性可能なプロモーターおよび発現カセットは同様に使用することが可能であることが注目される。
【0033】
「マーカー遺伝子」とは、選択可能な、またはスクリーニング可能な性質をコードする遺伝子である。
【0034】
「医用食物」は、被検体によって飲食され、かつ、該被検体に治療的作用を及ぼす組成物を含む。医用食物としては、例えば、製薬学的タンパク質またはポリペプチドが生産される植物、または、該植物から得られる植物物質が挙げられる。医用食物はそれだけを摂取してもよいし、または、医用技術において周知の製剤組成物と組み合わせて投与してもよい。医用食物はさらに、非ヒト動物のための等価的飼料を含む。
【0035】
「動作可能的に連結される」とは、核酸要素同士の連結を指す。例えば、タンパク質をコードする異種DNAに動作可能的に連結されるプロモーターは、該異種タンパク質に対応する機能的mRNAの生産を増進する。調節DNA配列は、RNA、またはタンパク質をコードするDNA配列に対し、これら二つの配列が、調節DNA配列が、コードDNA配列の発現に影響を及ぼすように配置されている場合、「動作的に連結される」、または「関連する」と言われる。
【0036】
製薬学的活性のペプチドまたはタンパク質の「経口投与」とは、主に、口を通じての投与、好ましくは、咀嚼による摂取を意味するが、それだけではなく、そのようなペプチドまたはタンパク質を、宿主の胃または消化管に供給する任意の投与法を含むことを意図する。好ましい実施態様では、経口投与は、製薬学的活性タンパク質と胃粘膜との接触をもたらす。
【0037】
「製薬学的活性核酸」とは、製薬学的活性タンパク質をコードする核酸、または、それ自体が製薬学的活性を有する核酸、例えば、製薬学的活性タンパク質について記載されるものと同様の、一つ以上の製薬学的活性を有する核酸である。例えば、核酸は、1本鎖以上のRNA干渉(RNAi)因子であってもよい。そのような因子としては、例えば、標的転写体、例えば、感染性因子の転写体、または、被検体の内因性病気関連転写体に向けられる、短鎖干渉RNA(siRNA)、または短鎖ヘアピンRNA(shRNA)、または、siRNAの前駆体、またはミクロRNA様RNAが挙げられる。
【0038】
「製薬学的活性タンパク質またはポリペプチド」は、治療的有効量において宿主に投与されると、宿主の身体状態を積極的に支援するか、または貢献する。製薬学的活性のタンパク質またはポリペプチドは、病気に対し治癒性、または寛解性を有し、病気または障害を寛解、解除、緩和、逆行、その開始の遅延、または、その一つ以上の症状の重度を軽減するために投与されてよい。製薬学的活性タンパク質またはポリペプチドは、予防特性を持っていてもよいし、病気の開始を遅らせるため、あるいは、そのような病気または病理的状態の、それが出現した場合の、重度を軽減するために使用されてもよい。「製薬学的活性のタンパク質またはポリペプチド」という用語は、タンパク質およびポリペプチド全体を含むが、さらに、製薬学的活性を持つ、その断片をも指すことが可能である。この用語はさらに、該タンパク質またはポリペプチドの製薬学的活性の類縁体、またはタンパク質またはポリペプチドの断片の類縁体を含むことが可能である。「製薬学的活性のタンパク質またはポリペプチド」という用語はさらに、協調的または共働的に活動して治療利益をもたらす、複数のタパクまたはポリペプチドを指すことも可能である。「製薬学的活性のタンパク質またはポリペプチド」という用語は、ワクチン抗原を含むタンパク質、すなわち、被検体に対するそのタンパク質の投与が、該宿主において、部分的または全体的に保護的な免疫反応を惹起する、そのようなタンパク質を特異的に含むことに注意しなければならない。本発明のある実施態様では、免疫反応は、感染因子、例えば、ウィルス、細菌性、真菌性、または原虫性病原体から被検体を保護する。ワクチン抗原の例としては、肝炎B表面抗原(HBsAg)、大腸菌熱不安定エンテロトキシン、狂犬病ウィルス糖タンパク質、およびノーウォークウィルスカプシドタンパク質が挙げられる。本発明の別の実施態様では、免疫反応は、非感染性病態または疾患から被検体を保護するか、または、病態または疾患の少なくとも一つの兆候または症状の重度を軽減する。この点における対象疾患としては、例えば、ただしこれらに限定されないが、癌、および自己免疫疾患が挙げられる。「製薬学的活性のタンパク質またはポリペプチド」という用語は、他のやり方で暴露したならば、アレルギー反応またはアナフィラキシー反応を惹起すると考えられるアレルゲンに被検体を暴露しても、該被検体を、部分的または完全に耐容させるタンパク質を含む。
【0039】
本明細書で用いる「プロモーター」とは、関連DNA配列の転写を起動するDNA配列である。プロモーター領域はさらに、遺伝子発現の調節因子として活動する要素、例えば、アクチベーター、エンハンサー、および/またはリプレッサーを含んでもよい。
【0040】
「調節要素」とは、核酸配列の発現の付与に関与する配列を指す。調節要素としては、対象ヌクレオチド配列に連結されるプロモーターなどの5′調節配列、3′調節配列、または終結シグナルなどの3′配列が挙げられる。調節要素はさらに、通常、ヌクレオチド配列の適切な翻訳に必要な配列を含む。
【0041】
「小型分子」とは、通常、1キロダルトン未満であり、生物性、有機性、または場合によっては無機性化合物(例えば、シスプラチン)である。このような小型分子の例としては、栄養素、例えば、糖類、および糖誘導体(リン酸塩誘導体を含む)、ホルモン類(例えば、植物ホルモン、ジベレリン酸またはアブシジン酸など)、および小型の合成分子が挙げられる。
【0042】
「特異的に調節可能」とは、細胞内における大規模転写の強化または抑制などの非特異的作用と違って、一つのプロモーター、または1群のプロモーターによる転写に対し優先的に影響を及ぼす、小型分子の能力を指す。
【0043】
「発芽実生」または「芽」とは、種子または根、好ましくは、新しく発芽した種子からの幼若シュートである。ある実施態様では、本発明の発芽実生は、食用の発芽実生または芽(例えば、アルファルファの芽、緑豆もやし、貝割れ大根、麦芽、辛子の芽、ほうれん草の芽、にんじんの芽、ビートの芽、玉ねぎの芽、にんにくの芽、セロリの芽、ルバーブの芽、葉物、例えば、キャベツの芽、またはレタスの芽、クレソン(WATERCRESSまたはCRESS)の芽、ハーブの芽、例えば、パセリまたはクローバーの芽、カリフラワーの芽、ブロッコリーの芽、大豆もやし、レンズ豆もやし、食用花の芽、例えば、ひまわりの芽など)である。本発明によれば、発芽実生は、双子葉段階まで発達してもよい。一般に、本発明の芽は、2日から14日齢である。
【0044】
「事実上単離された」とは、いくつかの文脈で使用されるが、通常、無関係、または汚染性成分(例えば、植物の構造的または代謝タンパク質)から分離された、タンパク質またはポリペプチドの、少なくとも部分的精製を指す。タンパク質またはポリペプチドの単離または精製法は、従来技術において周知である。
【0045】
「形質転換」とは、細胞中への核酸の導入、特に、対象生物のゲノム中への、DNA分子の安定的取り込みを指す。
【0046】
いくつかの好ましい実施態様の説明
タンパク質またはポリペプチド
本発明は、植物システムにおける任意のタンパク質またはポリペプチド(または、任意の機能的DNAまたはRNA分子)の生産に適用することが可能である。前述したように、ある実施態様では、本発明は、製剤タンパク質の生産に向けられるが、本発明は、一般に、核酸またはタンパク質の特定の使用(単数または複数)に限定されない。例えば、多様な工業的プロセスまたはバイオ医薬プロセスの内の任意の一プロセスに使用される酵素(例えば、汚染物質を分解する酵素)を生産することが可能である。したがって、本発明の説明および特許請求項は、仮令はっきりと明言されなくとも、治療用途を持つものも持たないものの含めた、対象とする任意の核酸またはタンパク質に適用されるものと考えなければならない。ある実施態様では、タンパク質は、栄養学的に重要なタンパク質ではない。いずれの特定のタンパク質も、本明細書において名指しされることなく、本発明から排除されることはない。
【0047】
通常、発現タンパク質またはポリペプチドは、天然状態で植物において発現されるものではない。仮令タンパク質またはポリペプチドが、天然状態の植物において発現されるものであっても、それは、通常、幼若植物組織では、天然状態の対応組織に存在すると考えられる濃度を超える濃度で発現される。
【0048】
二三特異的実例を挙げると、本発明は、例えば、ただしこれらに限定されないが、ホルモン類(インスリン、甲状腺ホルモン、カテコーラミン、ゴナドトロピン、刺激ホルモン、プロラクチン、オキシトシン、ドーパミン、ウシソマトスタチン、レプチンなど)、成長ホルモン類(例えば、ヒト成長ホルモン)、増殖因子類(例えば、上皮増殖因子、神経増殖因子、インスリン様増殖因子など)、増殖因子受容体、サイトカイン、および免疫系タンパク質類(例えば、インターロイキン、コロニー刺激因子(CSF)、顆粒球コロニー刺激因子(GーCSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GMーCSF)、エリスロポエチン、腫瘍壊死因子(TNF)、インターフェロン、インテグリン、アドレシン、セレクチン、ホーミング受容体、T細胞受容体、免疫グロブリン、可溶性主要組織適合性複合体抗原、免疫学的活性抗原、例えば、細菌、寄生性、またはウィルス抗原またはアレルゲン、自己抗原、抗体)、酵素類(組織プラスミノゲン活性化因子、ストレプトキナーゼ、生合成または分解性コレステロール、ステロイド合成酵素、キナーゼ、フォスフォジエステラーゼ、メチラーゼ、デーメチラーゼ、デヒドロゲナーゼ、セルラーゼ、プロテアーゼ、リパーゼ、フォスフォリパーゼ、アロマターゼ、チトクローム、アデニル酸またはグアニル酸シクラーゼ、ノイラミニダーゼなど)、受容体類(ステロイドホルモン受容体、ペプチド受容体)、結合タンパク質類(STERPOD結合タンパク質、成長ホルモンまたは増殖因子結合タンパク質など)、転写および翻訳因子、癌タンパク質または原癌タンパク質類(例えば、細胞周期タンパク質)、筋タンパク質類(ミオシン、またはトロポミオシンなど)、ミエロタンパク質、神経活性タンパク質、腫瘍増殖抑制タンパク質類(アンギオスタチンまたはエンドスタチン、これらは共に血管新生を抑制する)、抗敗血症タンパク質類(殺細菌性透過増強タンパク質)、構造タンパク質類(例えば、コラーゲン、フィブロイン、フィブリノーゲン、エラスチン、チューブリン、アクチン、およびミオシン)、血液タンパク質類(トロンビン、血清アルブミン、VII因子、VIII因子、インスリン、IX因子、X因子、組織プラスミノゲン活性化因子、タンパク質C、ウィルブランド因子、抗トロンビンIII、グルコセレブロシダーゼ、エリスロポエチン顆粒球コロニー刺激因子(GCSF)、またはVIII修飾因子、フリジンなどの抗凝固因子)などが挙げられる。
【0049】
ある特定の実施態様では、本発明は、抗原タンパク質またはポリペプチドの生産に利用される。例えば、本発明は、感染被検体の免疫システムによって認識される感染微生物のタンパク質(または、その部分)の生産に利用される。このようなタンパク質またはポリペプチドは、関連微生物による感染に対する保護のためのワクチンの開発において特に利用されてもよい。ほんの二三の特異的実例を挙げると、炭疽菌(BACILLUS ANTHRACIS;例えば、LF、PA)、コレラ(VIBRIO CHOLERA)、サイトメガロウィルス、大腸菌のエンテロトキシン生産株、口蹄疫ウィルス、B型肝炎(例えば、B型肝炎表面抗原、HBsAg)、C型肝炎(例えば、HCVコアタンパク質)、ヒト免疫不全ウィルス(例えば、Tat、Rev、Nef、GP160、GP120など)、ヒトのパピローマウィルス(例えば、E7、E6)、インフルエンザ(例えば、HA、NA)、マラリア(PLASMODIUM fALCIPARUM;例えば、PfS25、PfS28、PfS48/45、PfS230)、麻疹ウィルス、ノーウォークウィルス、ペスト(YERSINIA PESTIS;例えば、F1、LCRV)、PSEUDOMONAS AERUGINOSA、狂犬病ウィルス、呼吸器多核体ウィルス(例えば、Fタンパク質、Gタンパク質)、ライノウィルス、ロタウィルス、STAPHYLOCOCCUS AUREUS、伝染性胃腸炎ウィルス、トリパノソーマ(TRYPANOSOMA BRUCEI;例えば、アルファーチューブリン、ベーターチューブリン)、結核、SARSなどから得られる、有用な抗原タンパク質は、本発明のシステムによって生産することが可能である。
【0050】
ある特定実施態様では、本発明は、例えば、抗体(すなわち、モノクロナール抗体)などの免疫グロブリンタンパク質を含む、マルチマータンパク質複合体を生産するために利用される。ほんの二三の特異的例を挙げると、本発明のシステムにしたがって、抗PA、抗LF、抗NA、抗TNFa、および抗インターロイキン12などを生産することが可能である。さらに一般的には、病気、例えば、癌(例えば、急性骨髄性白血病(AML)、乳癌、結腸直腸癌、慢性リンパ性白血病(CLL)、非ホジキンリンパ腫、腎細胞癌、固体腫瘍)、免疫および自己免疫障害(例えば、喘息、クローン病、糖尿病、対宿主性移植片病(器官拒絶)、炎症性腸疾患、狼瘡、多発性硬化症、乾癬、乾癬性関節炎、慢性関節リューマチ、血栓症(脈管炎など)、感染症(例えば、炭疽(BACILLUS ANTHRACIS)、コレラ(VIBRIO CHOLERAE)、サイトメガロウィルス、大腸菌のエンテロトキシン生産株、口蹄疫ウィルス、B型肝炎ウィルス、C型肝炎ウィルス、ヒト免疫不全ウィルス、ヒトのパピローマウィルス、インフルエンザ、マラリア(PLASMODIUM fALCIPARUM)、麻疹ウィルス、ノーウォークウィルス、ペスト(YERSINIA PESTIS)、PSEUDOMONAS AERUGINOSA、狂犬病ウィルス、呼吸器多核体ウィルス、ライノウィルス、ロタウィルス、STAPHYLOCOCCUS AUREUS、伝染性胃腸炎ウィルス、トリパノソーマ(TRYPANOSOMA BRUCEI)、結核、SARSなどに対するモノクロナール抗体を、本発明にしたがって調製することが可能である。
【0051】
ある特定実施態様では、本発明は、HGH、自己免疫疾患用自己抗原(例えば、糖尿病のためのIAー2ic)、インフルエンザ抗原、炭疽抗原、HPV抗原、インフルエンザ抗体などを生産するために利用される(実施例参照)。
【0052】
本発明のある実施態様では、完全長異種タンパク質が生産される。すなわち、天然で見られるか、または、別の背景で調製または設計されたタンパク質の全体が幼若植物において生産される。そのようなある実施態様では、生産されるタンパク質は、他の全ての配列を含まない。別の実施態様では、タンパク質の一部のみ、通常、既知の所望の活性を有する部分(例えば、抗原タンパク質のエピトープ;酵素タンパク質の活性ドメインなど)のみが生産される。ある実施態様では、生産される部分は、そのタンパク質またはポリペプチドの特徴的部分である。ある実施態様では、生産される部分はエピトープを含む。ある実施態様では、生産される部分は、免疫原ドメインを含む。ある実施態様では、生産される部分はタンパク質ドメインを含む。
【0053】
本発明のある実施態様では、タンパク質またはポリペプチドは、他のタンパク質またはポリペプチド配列との融合体として生産される。従来技術で知られるように、融合体は、様々な理由の内のいずれのために使用することも可能である。例えば、本発明にしたがって幼若植物(例えば、発芽実生)において生産されるタンパク質またはポリペプチドは、検出および/または単離をやり易くするために、一つ以上の成分と融合させてもよい。例えば、対象タンパク質またはペプチドを、それに対し抗体、または他の特異的リガンドが利用可能であり、そのために単離または精製をやり易くするために使用が可能な、既知の抗原エピトープと融合させることも考えられる。それとは別に、またはそれに加えてさらに、対象タンパク質またはポリペプチドは、例えば、該対象タンパク質またはポリペプチドに対し所望の三次元配置を付与するために、定められた三次元構造の別のポリペプチドと融合させてもよい。さらに別の例として、対象タンパク質またはポリペプチドは、植物細胞における、その細胞内局在(または、分泌)を指令する、一つ以上の成分と融合させてもよい。特に、対象タンパク質またはポリペプチドがタンパク質抗原(例えば、サブユニットワクチンの調製に使用される)である場合、例えば、発現、安定性、および/または免疫原性を強化するために、および/または、単離または精製をやり易くするために、該タンパク質を、担体分子との融合体として生産することが好ましい場合がしばしばある。従来技術で既知の、ある例示の融合体パートナーとしては、例えば、抗体エピトープ(例えば、HISタグなど)、免疫原担体タンパク質、コレラトキシン、熱不安定エンテロトキシンなどが挙げられる(例えば、VELLA ET AL., BIOTECHNOLOGY 20:1、1992;KELLY ET AL., IMMUNOLOGY 113:163, 2004;BUTTERY ET AL., JR COLL PHUYSICIANS LOND 34:163, 2000;JACOBSON ET AL., MINERVA PEDITR, 54:295, 2002;DERTZBAUGH ET AL., INfECT IMMUNOL. 61:48, 1993;NASHAR ET AL., VACCINE 11:235, 1993;LILJEQVIST ET AL., J. IMMUNOL. METHODS 210:125, 1997;STAHL ET AL., PROC. NATL. ACAD. SCI. USA 86:6283, 1989;ULRICH ET AL., ADV. VIRUS RES. 50:141, 1998;SMITH ET AL., VIROLOGY 348:475, 2006;TURPEN ET AL., BIOTECHNOLOGY 13:53, 1995を参照されたい)。
【0054】
本発明にしたがって考慮の対象とされる、特定の一融合パートナーは、熱安定性タンパク質、例えば、CLOSTRIDIUM THERMOCELLUM由来のリケナーゼである(例えば、2003年5月22日出願の米国特許仮出願第60/472,495号、および、2004年5月24日出願の国際出願US04/016452で、2005年5月24日国際公開WO2005/026375として公刊されたものを参照されたい)。完全長リケナーゼ(約35KDa)は、シグナルペプチド、触媒ドメイン、ProーThrボックス、およびドッキングドメインから成る(図17参照)。本発明によれば、PROーTHRリッチボックスも、ドッキングドメインも、融合タンパク質においては欠失させることが可能である。さらに、元のシグナルペプチドは、植物中で動作するものによって置換することが可能である。
【0055】
このリケナーゼの触媒ドメインは、それ自身を二つの領域、Nー末端領域(N:アミノ酸32ー84)およびCー末端領域(C:アミノ酸85ー246)に分割するリープ構造を有する。これらの二つの領域は、ループ構造において切断し、円方向に配置転換し、酵素活性に影響を及ぼすことなく挿入に対しより受容的とすることが可能である。それぞれ、精製、および小胞体における保持を促進するために、配置転換担体の、これら二つの領域の接合部に多数クローニング部位(MCS)が導入され、かつ、その3′末端に配列KDELが設置された。図17は、修飾されたリケナーゼ(LICKM:GENBANKアクセス番号DQ776900)の模式図を示す。標的タンパク質またはポリペプチド配列は、NまたはC末端融合体として、および/または、MCSに対する内部的融合体として発現させること、これは複数の標的の同時発現を可能とする特性である、が可能である。
【0056】
LicKMは、大きさが小型ペプチドから、最大約100KDa以上の完全長タンパク質までの範囲に亘る分子に対する融合を可能とする。LicKMは、高温(65℃)でもその酵素活性を維持する、これは、一般に、融合体にも適用される特性である。この特性は、標的タンパク質の、簡単で、コスト有効的な回収を可能とする。なぜなら、65℃で10分間の熱処理によって、汚染性の植物タンパク質の最大50%が除去されるからである。精製の間、リケナーゼ活性を監視することによってLicKM融合タンパク質を追跡することが可能である。担体分子としてLicKMを使用することはさらに外の利点、例えば、発現強化の可能性、複数の対象ポリペプチドの取り込み(例えば、複数のワクチン決定基)を含む利点を提供する。
【0057】
植物
本発明の教示は、様々の広範な植物に適用することが可能である。一般に、導入構築体の発現を許容できる植物であれば、いずれの植物であっても、本発明にしたがって有用である。多くの実施態様では、タンパク質/ポリペプチド生産の速度を向上させるために、幼若植物を使用することが望ましい。本明細書で示すように、多くの実施態様では、発芽実生が利用される。従来技術で知られるように、大抵の芽は、保存種子から生産される、急速に成長する、食用植物である。しかしながら、当業者であれば、「発芽実生」という用語は、通常「芽」と分類される品種であるかどうかとは無関係に、本明細書では、もっと広い背景において幼若植物を指すためにこれまで使用されていることを理解するであろう。本明細書で示される発現構築体の導入および/または発現を可能とするのに十分な緑のバイオマスを所有するのに十分なほど長く生育した植物であれば(関連時間は、発現構築体の輸送および/または発現方式に応じて変動してもよいことを認識して)、いずれの植物も、本明細書では「発芽実生」と見なすことが可能である。
【0058】
本発明の、多くの実施態様において、食用植物が利用される(すなわち、そのタンパク質またはポリペプチドが投与される被検体によって食用されるー被検体にとって有毒ではないー植物)。
【0059】
ある好ましい実施態様では、本発明の植物は、BRASSICAまたはARABIDOPSIS種の植物であってもよい。形質転換を受容可能で、かつ、発芽実生として食用が可能な、いくつかの好適な植物としては、例えば、アルファルファ、緑豆、大根、小麦、辛子、ほうれん草、にんじん、ビート、玉ねぎ、にんにく、セロリ、ルバーブ、葉物、例えば、キャベツまたはレタス、クレソン(WATERCRESSまたはCRESS)、ハーブ、例えば、パセリ、ミント、またはクローバー、カリフラワー、ブロッコリー、大豆、レンズ豆、食用花、例えば、ひまわりなどが挙げられる。
【0060】
本発明の実施における適性について、多様な植物種が試験された。異なる様々の豆、およびその他の品種、例えば、小豆、アルファルファ、大麦、ブロッコリ、BILL JUMP PEA、蕎麦、キャベツ、カリフラワー、クローバー、コラードグリーン、フェヌグリーク、亜麻、ひよこ豆、グリンピース、小松菜、ケール、カムット、コールラビ、マロウファットピース、緑豆、からし菜、うずら豆、大根、レッドクローバー、大豆、SPECKLED PEA、日まわり、かぶ、YELLOW TRAPPER PEAなどを含む品種が、アグロバクテリウム構築体から発射されるウィルス構築体(本明細書に記載されるようにアグロインフィルトレーションによって導入される)(例えば、実施例5および8、図9などを参照)に基づく異種タンパク質の生産に対し対応が可能であるかどうか試験された。本発明は、ある豆品種が、このような操作に特に対応が可能であるという驚くべき結果を提供する。例えば、本発明によれば、BILL JUMP PEA、グリンピース、マロウファットピース、SPECKLED PEA、および/またはYELLOW TRAPPER PEAは、本発明のこの局面において特に有用である。したがって、ある実施態様では、本発明は、対象の、関連タンパク質またはペプチドをコードするウィルス構築体(すなわち、植物ウィルスの特徴を持つRNA)を発射するアグロバクテリウムベクターを用いる、これらの植物の内の一つ以上におけるタンパク質またはポリペプチド(例えば、抗原、抗体、および/またはその他のタンパク質)の生産を提供する。ある実施態様では、RNAは、ALMVの特徴を有する(および/または、ALMVの配列を含む)。ある実施態様では、RNAは、TMVの特徴を有する(および/または、TMVの配列を含む)。
【0061】
一局面において、本発明は、対象標的タンパク質またはポリペプチドを発現する幼若植物(例えば、発芽実生)を提供することが理解されよう。ある実施態様では、幼若植物は、トランスジェニック種子から育成される;本発明はさらに、本明細書に記載される方法のために生成および/または利用することが可能な種子を提供する。任意の対象遺伝子についてトランスジェニックな種子は、発芽することが可能であり、対象タンパク質またはポリペプチドの生産のために任意に誘発することが可能である。例えば、任意の対象遺伝子を発現することが可能な種子は、発芽することが可能であり、かつ、I)ウィルス感染、II)アグロインフィルトレーション、またはIII)ウィルスゲノムを含む細菌を通じて誘発することが可能である。任意のモノクロナール抗体の重鎖または軽鎖のトランスジーンを発現することが可能な種子は、発芽させ、完全長分子の生産のために、I)ウィルス感染、II)アグロインフィルトレーション、またはIII)ウィルスゲノムを含む細菌の接種を通じて誘発することが可能である。sIgAなどの複数成分を含む複合分子の一つ以上の成分のトランスジーンを発現することが可能な種子は、発芽させ、完全に機能的な分子の生産のために、I)ウィルス感染、II)アグロインフィルトレーション、またはIII)ウィルスゲノムを含む細菌の接種を通じて使用することが可能である。健康で、非トランスジェニック植物から得られる種子を、発芽させ、標的配列の生産のために、I)ウィルス感染、II)アグロインフィルトレーション、またはIII)ウィルスゲノムを含む細菌の接種を通じて使用することが可能である。
【0062】
ある実施態様では、幼若植物は、トランスジェニックではない種子から育成された。通常、そのような幼若植物は、対象タンパク質またはポリペプチドの直接的発現を指令するウィルス配列を抱える。ある実施態様では、この植物はさらに、ウィルス配列を「発射する」配列を任意に含むアグロバクテリウム配列を有してもよい。
【0063】
植物においてタンパク質またはポリペプチドを発現するためのシステム
本発明によれば、幼若植物(例えば、発芽実生)においてタンパク質またはポリペプチドを発現するために、異なる様々のシステムを使用することが可能である。ある実施態様では、トランスジェニック細胞系統または種子が生成され、次に、発芽され、一定時間育成され、それによって、トランスジェニック配列に含まれるタンパク質またはポリペプチドが、幼若植物組織において(例えば、発芽実生において)生産される。トランスジェニック植物細胞および/または種子の生産のための典型的技術として、AGROBACTERIUM TUMEfACIENS介在遺伝子転送、および微粒子発射法または電気穿孔が挙げられる。
【0064】
ある実施態様では、一過性発現システムが利用される。植物組織においてタンパク質またはポリペプチドの一過性発現を実現するための典型的技術は、植物ウィルスを利用する。ウィルス形質転換は、所望の産物の獲得前に実験的または世代的遅延無しに収穫することが可能な、比較的速やかで、比較的安価な胚および発芽実生の形質転換法である。一方、減弱されないウィルスは、他の植物に感染し、環境不安を引き起こす可能性がある。
【0065】
本発明は、ウィルス発現システム(例えば、速やかな発現、高レベルの生産)、およびアグロバクテリウム形質転換(例えば、調節投与)の利点を有する発現システムを提供する。特に、下記に詳述するように、本発明は、アグロバクテリウム構築体(すなわち、アグロバクテリウムにおいて複製することが可能で、したがって、アグロバクテリウム輸送によって植物細胞に輸送が可能な構築体)が植物プロモーターを含むシステムを提供する。該プロモーターは、植物に導入されると、対象タンパク質またはポリペプチドの遺伝子を担うウィルス配列(例えば、ウィルスの複製配列を含む)の発現を指令する。このシステムは、植物において、タンパク質またはポリペプチドの、調節された、高レベルの、一過性発現を可能とする。
【0066】
発現システムの異なる様々の実施態様が、そのあるものはトランスジェニック植物を生産し、別のあるものは一過性発現を実現する、下記に個別にさらに詳細に論じられる。これらの技術のいずれについても、本明細書を読む当業者であれば、幼若植物組織(例えば、発芽実生)においてタンパク質またはポリペプチドを発現するためにプロトコールをどのように調整し、最適化したらよいか理解されるであろう。
【0067】
アグロバクテリウム形質転換
アグロバクテリウムは、グラム陰性ファミリーRHIZOBIACEAEの代表的属である。この菌種は、植物腫瘍、例えば、クラウンゴールおよび毛根病の原因となる。腫瘍に特徴的な植物の脱分化組織において、オパインと呼ばれるアミノ酸誘導体が、アグロバクテリウムによって生産され、植物によって取り込まれる。オパインの発現を引き起こす細菌遺伝子は、キメラ発現カセット調節要素の好適な供給源となる。本発明にしたがって、成熟植物よりも単純により早く収穫される幼若植物(例えば、食用発芽実生を含む発芽実生)を生成するために、アグロバクテリウム形質転換システムを使用してもよい。アグロバクテリウム形質転換法は、製剤タンパク質を発現する幼若植物(例えば、発芽実生)を再生するために簡単に適用することが可能である。
【0068】
一般に、アグロバクテリウムによる植物の形質転換は、植物/細菌ベクターを担うアグロバクテリウム TUMERIfACIENSとの共時培養による組織培養において育成される植物細胞の形質転換を含む。このベクターは、製剤タンパク質をコードする遺伝子を含む。このアグロバクテリウムは、植物宿主細胞にこのベクターを転送し、次いで、抗生物質処理によって除去される。製剤タンパク質を発現する、形質転換された植物細胞を、選別し、分化させ、最終的には、完全な小植物体に再生させる(HELLENS ET AL., PLANT MOLECULAR BIOLOGY (2000) 42 (819−832); PILON−SMITHS ET AL., PLANT PHYSIOLOG. (JAN 1999) 119(1):123−132; BARfIELD AND PUA PLANT CELL REPORTS (1991) 10(6/7); 308−314); RIVA ET AL., JOURNAL Of BIOTECHNOLOGY (DEC 15, 1998) 1(3))。なお、これらそれぞれを引用により本明細書に含める。
【0069】
本発明において使用されるアグロバクテリウム発現ベクターは、発現カセットの上流および下流の同系配列と共に、植物において活動するように設計された、製剤タンパク質をコードする遺伝子(または発現カセット)を含む。この同系配列は、一般に、プラスミドまたはウィルス起源のものであって、細菌から所望の植物宿主にDNAを転送するのに必要な特徴をベクターに供給する。
【0070】
基本的細菌/植物ベクター構築体は、広範な宿主範囲の前核細胞用複製起点;前核細胞選択マーカーを提供することが好ましい。好適な前核細胞選択マーカーとしては、アンピシリンまたはテトラサイクリンなどの抗生物質に対する耐性が挙げられる。従来技術で周知の、さらに別の機能をコードする他のDNA配列も、このベクター中に存在してもよい。
【0071】
植物染色体に対する、アグロバクテリウム介在性DNAの転送には、アグロバクテリウム T−DNAが必要とされる。T−DNAの腫瘍誘発性遺伝子は、通常、アグロバクテリウム発現構築体の構築中に除去され、製剤タンパク質またはポリペプチドをコードする配列によって置換される。T−DNA境界配列は、T−DNA領域の植物ゲノムへの取り込みを起動するため、保持される。製剤タンパク質の発現が簡単に検出されない場合は、細菌/植物ベクター構築体はさらに、植物細胞が形質転換されたか否かを決定するのに好適な、選択可能なマーカー遺伝子、例えば、NPTIIカナマイシン耐性遺伝子を含む。
【0072】
同じ、または異なる細菌/植物ベクター(Tiプラスミド)の上に、Ti配列がある。Ti配列は、TーDNAの切断、転送、および植物ゲノムへの取り込みに与る、一組のタンパク質をコードする、有毒遺伝子を含む(SCHELL, SCIENCE (1987)237:1176ー1183)。植物ゲノムに対する異種配列の一体化を可能にするのに好適な、他の配列はさらに、相同組み換えのためのトランスポゾン配列などを含んでもよい。
【0073】
ある構築体は、対象タンパク質をコードする発現カセットを含む。ある任意の形質転換のために、一つ、二つ、またはそれ以上の発現カセットを使用してよい。組み換え発現カセットは、製剤タンパク質コード配列の外に、少なくとも下記の要素:プロモーター領域、植物の5′未翻訳配列、開始コドン(発現遺伝子がそれ自身の開始コドンを持つかどうかに依存する)、および、転写および翻訳終結配列を含む。本発明の発現カセットまたはキメラ遺伝子の中にさらに、転写および翻訳終結因子を含ませてもよい。この発現カセットにはさらに、タンパク質の加工および転置を適宜可能とするシグナル分泌配列を含ませてもよい。
【0074】
様々なプロモーター、シグナル配列、および転写および翻訳終結因子が、例えば、LAWTON ET AL., PLANT MOL. BIOL (1987) 9:315−324、または米国特許第5,888,789号に記載される。なお、これらを引用により本明細書に含める。さらに、抗生物質耐性用構造遺伝子が、選択因子として一般に利用される(FRALEY ET AL., PROC. NATL. ACAD. SCI., USA (1983) 80:4803−4807)。なお、これらを引用により本明細書に含める。カセットの5′および3′末端における一意の制限酵素部位は、既存のベクターへの簡単な挿入を可能とする。
【0075】
少なくとも一つのT−DNA境界配列を含む、アグロバクテリウム介在形質転換のための、他のバイナリーベクターシステムが、PCT/EP99/07414に記載される。なお、この文書を引用により本明細書に含める。アグロバクテリウム介在形質転換に関するさらに詳細が、GELVIN, S.B., “Agrobacterium−MEDIATED PLANT TRANSfORMATION: THE BIOLOGY BEHIND THE “GENE−JOCKEYING” TOOL”, MICROBIOLOGY AND MOLECULAR BIOLOGY REVIEWS, 67(1): 16−37 (2003)、およびその中の参照文献、この文献、およびその参照文献の全てを引用により本明細書に含める;LORENCE A, VERPOORTE R., GENE TRANSfER AND EXPRESSION IN PLANTS, METHODS MOL BIOL. (2004) 267: 329−50に見出される、この文献を引用により本明細書に含める。
【0076】
本発明のある実施態様では、植物の中に核酸配列を導入するために、AGROBACTERIA以外の細菌が使用される。例えば、BROOTHAERTS W, ET AL., GENE TRANSfER TO PLANTS BY DIVERSE SPECIES Of BACTERIA, NATURE (2005), 433(7026):629−633、この文献を引用により本明細書に含める。
【0077】
AGROBACTERIA(または他の細菌)によって感染された植物から、対象タンパク質またはポリペプチドをコードする異種遺伝子が導入されるように、種子を調製する。このような種子を、収穫し、乾燥し、洗浄し、所望の遺伝子産物の生存性、および存在および発現について試験する。一旦これが決定されたならば、要時に使用されるよう、種子ストックを、温度、湿度、衛生状態、および安全の適切な条件下に保存する。次いで、全体植物を、例えば、EVANS ET AL., HANDBOOK Of PLANT CELL CULTURES, VOL. 1: MACMILLAN PUBLISHING CO., NEW YORK, 1983); AND VASIL I.R. (ED.), CELL CULTURE AND SOMATIC CELL GENETICS Of PLANTS, ACAD. PRESS, ORLANDO, VOL. I, 1984, AND VOL. III, 1986,に記載されるように、培養プロトプラストから再生する。なお、これらの文献を引用により本明細書に含める。
【0078】
ある実施態様では、植物は、成熟植物には再生されない。例えば、ある実施態様では、植物は、発芽実生段階まで再生される。別の実施態様では、全体植物は、再生されて種子ストックを生産し、本発明にしたがって使用される幼若植物(例えば、発芽実生)が、この種子ストックの種子から再生される。
【0079】
プロトプラストを分離し、全体再生植物まで培養することの可能な植物は全て、本発明にしたがってAGROBACTERIAによって形質転換し、それによって、対象タンパク質またはポリペプチドをコードする転移遺伝子を含む全体植物を回収することが可能である。ほとんど全ての植物が、例えば、ただしこれらに限定されないが、食用となる芽を生産する全ての主要品種を含む植物が、培養細胞または組織から再生させることが可能であることが知られる。いくつかの好適な植物として、例えば、アルファルファ、緑豆、大根、小麦、辛子、ほうれん草、にんじん、ビート、玉ねぎ、にんにく、セロリ、ルバーブ、葉物、例えば、キャベツまたはレタス、クレソン(WATERCRESSまたはCRESS)、ハーブ、例えば、パセリ、ミント、またはクローバー、カリフラワー、ブロッコリー、大豆、レンズ豆、食用花、例えば、ひまわりなどが挙げられる。
【0080】
形質転換細胞から植物を再生するための手段は、植物の品種によってまちまちであってもよい。しかしながら、当業者であれば、一般に、異種遺伝子のコピーを含む形質転換プロトプラストの縣濁液が先ず用意されることを理解するであろう。カルス組織が形成され、シュートがカルスから誘発され、次いで根を生えさせてもよい。それとは別に、プロトプラスト縣濁液から胚形成を誘発することも可能である。これらの胚は、天然の胚として発芽し植物を形成する。種子の水分含量を35〜45%の間に増すように種子を水に浸すか、水滴を掛けると、発芽が起動される。芽生えが進行するためには、種子は、通常、温度および気流の調節条件下、水分で飽和した空気中に維持される。培養液は、一般に、各種アミノ酸、およびホルモン、例えば、オーキシンおよびサイトキニンを含む。さらに、培養液にグルタミン酸およびプロリンを加えることは、特にアルファルファなどの品種のためには、有利である。シュートおよび根は、通常、同時に発達する。効率的再生は、培養液、遺伝型、および培養体の経歴に依存する。これらの三つの変数が調節されていれば、再生は完全に再現可能、反復可能である。
【0081】
形質転換植物細胞から育成された成熟植物は自家受粉され、非分離性の、ホモ接合体トランスジェニック植物が特定される。この純系植物は、対象タンパク質またはポリペプチドをコードする転移遺伝子を含む種子を生産する。これらの種子は、発芽させ、幼若植物(例えば、発芽実生)段階まで育成して、対象タンパク質またはポリペプチドを生産することが可能である。
【0082】
関連実施態様では、トランスジェニック種子(通常、ゲノムに組み込まれた、対象タンパク質またはポリペプチドをコードする転移遺伝子を担う)は、種子製品として、収穫のために幼若植物を適切な段階まで育成するにはどうしたらよいか、および/または、本明細書に記載される投与または処方に関する案内と一緒に販売されてもよい。別の関連実施態様では、純系トランスジェニック植物から、ハイブリッド、または、所望の性質(例えば、対象タンパク質またはポリペプチドをコードする転移遺伝子)を体現する新規変種が開発される。
【0083】
直接的組み込み
さらに、本発明にしたがって植物組織に対象タンパク質またはポリペプチドをコードする発現構築体を導入するために、微粒子発射または電気穿孔による、DNA断片の、植物細胞ゲノムへの直接的組み込みを用いてもよい(例えば、KIKKERT, J.R., HUMISTON ET AL., IN VITRO CELLULAR & DEVELOPMENTAL BIOLOGY. PLANT: JOURNAL Of THE TISSUE CULTURE ASSOCIATION. (JAN/FEB 1999) 35(1):43−50; BATES, G.W. FLORIDA STATE UNIVERSITY, TALLAHASSEE, FL. MOLECULAR BIOTECHNOLOGY (OCT 1994) 2(2):135−145を参照されたい)。さらに詳細には、対象タンパク質またはポリペプチドをコードする遺伝子を含むベクターは、様々な技術によって、植物細胞の中に導入することが可能である。前述したように、ベクターは、植物細胞において使用される選択可能なマーカーを含んでいてよい。ベクターはさらに、その選択および二次宿主における継代を可能とする配列、例えば、複製起点および選択可能マーカーを含む配列を含んでもよい。通常、二次宿主として細菌および酵母が挙げられる。好ましい一実施態様では、二次宿主は大腸菌であり、複製起点は、COLE1型複製起点であり、選択可能マーカーは、アンピシリン耐性をコードする遺伝子である。このような配列は、従来技術で周知であり、市販されている(例えば、CLONTECH, PALO ALTO, CA、または STRATAGENE, LA JOLLA, CA)。
【0084】
本発明のベクターはさらに修飾されて、AGROBACTERIUM TUMEfACIENSベクターに対する相同領域、AGROBACTERIUM TUMEfACIENS由来のTーDNA境界領域、および、キメラ遺伝子、または前述の発現カセットを含む、植物形質転換中間プラスミドを形成してもよい。さらに別のベクターとして、AGROBACTERIUM TUMEfACIENSの、無防備化された植物腫瘍誘発プラスミドが挙げられる。
【0085】
本実施態様によれば、本発明のベクターの直接的形質転換は、組み換えDNAを機械的に転移するために、マイクロピペットを用いて、植物細胞の中にベクターを直接マイクロインジェクションすることを含む(例えば、CROSSWAY, MOL. GEN. GENET., 202:179−185, 1985を参照されたい、なお、この文献を引用により本明細書に含める)。遺伝物資も、ポリエチレングリコールを用いることによって植物細胞の中に転移してよい(例えば、KRENS ET AL., NATURE (1982) 296:72−74を参照されたい)。核酸セグメントの、もう一つの直接導入法は、核酸を有する微小粒子、すなわち、その基質の中または表面のいずれかに核酸を有する小ビーズまたは粒子の高速弾丸による浸透である(例えば、KLEIN ET AL., NATURE (1987) 327:70−73; KNUDSEN AND MULLER PLANTA (1991) 185:330−336を参照されたい)。さらに別の導入法は、プロトプラストと、他の実体、例えば、ミニセル;細胞、リソソーム、または、他の融合可能な脂質表面を持つ物体(例えば、FRALEY ET AL., PROC. NATL. ACAD. SCI. USA (1982) 79:1859−1863を参照されたい)との融合である。本発明のベクターはまた、電気穿孔によって植物細胞の中に導入されてもよい(例えば、FROMM ET AL. PROC. NATL. ACAD. SCI. USA (1985) 82:5824を参照されたい)。この技術によれば、植物プロトプラストは、遺伝子構築体を含むプラスミドの存在下に電気穿孔される。高電場強度の電気パルスは、生体膜を可逆的に透過可能とし、プラスミドの導入を可能とする。電気穿孔された植物のプロトプラストはその形を改め、細胞壁を分離させ、植物カルスを形成するが、カルスは、本発明の発芽実生を形成するように再生させることが可能である。当業者であれば、それから食用の発芽実生を生成するように使用可能とするためには、植物細胞を形質転換するこの方法をどのように利用したらよいかを理解されるであろう。
【0086】
ウィルス形質転換
本発明によれば、種子、胚、または発芽実生に外来タンパク質を感染し、生産するために、植物ウィルスベクターが使用される。この点で、感染は、細胞の中にウィルスゲノム、またはその一部を導入するための任意の方法、例えば、ただしこれらに限定されないが、ウィルスの天然の感染プロセス、外傷、接種などを含む方法を含む。この用語は、細胞中に、ゲノムRNA転写体、またはそのcDNAコピーを導入することを含む。ウィルスゲノムは、完全ゲノムである必要はないが、通常、複製を可能とするほど十分な配列を含む。ゲノムは、ウィルスのレプリカーゼをコードしてもよく、複製に必要なCIS−活動性核酸要素を含んでもよい。短いペプチドの外、大型の複雑なタンパク質をコードする外来遺伝子(例えば、トバモウィルスベクターによる)の高レベル発現が、例えば、MCCORMICK ET AL. (PROC. NATL. ACAD. SCI. USA (1999) 96:703−708; KUMAGAI ET AL. (GENE (2000) 245:169−174、および VERCH ET AL. (J. IMMUNOL. METHODS (1998) 220, 69−75、なお、これらの文献それぞれを引用により本明細書に含める)。このように、植物ウィルスベクターは、短いペプチドの外、大型の複雑なタンパク質を発現する能力を持つことが実証されている。
【0087】
ある実施態様では、製剤タンパク質、例えば、インスリン、GAD、および1型糖尿病関連IA−2を発現する、幼若植物(例えば、新芽)が、宿主/ウィルスシステムを利用して生成される。ウィルス感染によって生産される幼若植物は、あらかじめ安全であることが証明されている、対象タンパク質またはポリペプチドの供給源となる。例えば、芽は、動物病原体による汚染とは無縁である。例えば、タバコと違って、食用新芽のタンパク質は、少なくとも理論的には、精製することなく経口用途に使用が可能と考えられるが、これは、著明にコストを下げる。
【0088】
さらに、ウィルス/幼若植物(例えば、新芽)システムは、大規模化および工業生産のための、はるかに簡単で、より安価なルートを提供する。なぜなら、(対象タンパク質またはポリペプチドをコードする)関連遺伝子は、ウィルスに導入され、これは、数日以内に商業規模に育成することが可能であるからである。一方、トランスジェニック植物の方は、大規模施行または商業化のために十分な種子または植物原料が利用可能となるには、最大5−7年を要する可能性がある。
【0089】
本発明によれば、植物RNAウィルスは、外来タンパク質発現用のベクターとして魅力的と思わせるいくつかの利点を有する。いくつかの植物RNAウィルスについて、その分子生物学および病理学的特徴は十分に解明されており、ウィルスの生物学、遺伝学、および調節配列については相当の知識がある。大抵の植物RNAウィルスは小さなゲノムを持ち、遺伝操作を簡便にするために、感染性cDNAクローンの利用が可能である。一旦感染性ウィルス物質が、感受性を持つ宿主細胞の中に入ると、それは高レベルで複製し、全植物中に急速に拡散する(接種後1から10日)。ウィルス粒子は、感染組織から簡単に、経済的に回収することが可能である。ウィルスは、広範な宿主範囲を持つので、単一構築体を、いくつかの感受性菌種の感染のために使用することが可能である。これらの特徴は、簡単に新芽に転移させることが可能である。
【0090】
図1は、植物ウィルスを用いて外来遺伝子を発現するための、いくつかの異なる戦略を示す。外来配列は、ウィルス遺伝子の一つを所望の配列で置換することによって、ウィルスゲノムの適切な位置において外来遺伝子を挿入することによって、または、ウィルスの構造タンパク質に外来ペプチドを融合させることによって発現させることが可能である。さらに、これらの方法のいずれかを互いに組み合わせて、ウィルスの基本機能の、超越的相補的置換によって外来配列を発現させることが可能である。タバコモザイクウィルス(TMV)、アルファルファモザイクウィルス(ALMV)、およびそのキメラ体を用い、ウィルス感染植物において外来配列を発現するためのツールとしていくつかの異なる戦略が存在する。
【0091】
ALMVのゲノムは、ウィルスのBROMOVIRIDAE科の代表であり、三つのゲノムRNA(RNA1−3)、およびサブゲノム(RNA4)から成る(図2)。ゲノムRNA1および2は、それぞれ、ウィルスのレプリカーゼタンパク質P1および2をコードする。ゲノムRNA3は、細胞間移動タンパク質P3、およびコートタンパク質(CP)をコードする。このCPは、ゲノムRNA3から合成されるサブゲノムRNA4から翻訳され、感染を開始するのに必要である。実験から、CPは、複数の機能、例えば、ゲノム活性化、複製、RNAの安定性、症状形成、およびRNAのカプシド封入を含む機能に関与することが明らかにされた(例えば、BOL ET AL., VIROLOGY (1971) 46:73−85; VAN DER VOSSEN ET AL., VIROLOGY (1994) 202:891−903; YUSIBOV ET AL., VIROLOGY 208:405−407; YUSIBOV ET AL., VIROLOGY (1998) 242:1−5; BOL ET AL.,(百本の参考文献の総覧);J. GEN. VIROL. (1999)80:1089−1102; DE GRAAff, VIROLOGY (1995)208:583−589; JASPARS ET AL., ADV. VIRUS RES (1974). 19, 37−149; LOESCH−FRIES, VIROLOGY (1985)146:177−187; NEELEMAN ET AL., VIROLOGY (1991)181:687−693; NEELMAN ET AL., VIROLOGY (1993) 196:883−887; VAN DER KUYL ET AL., VIROLOGY (1991)183:731−738; VAN DER KUYL ET AL., VIROLOGY (1991)185:496−499を参照されたい)。
【0092】
ウィルス粒子のカプシド封入は、種子、胚、または幼若植物(例えば、発芽実生)の接種部位から未接種部位への長距離移動、および全身性感染にとって必須である。本発明によれば、接種は、植物発達の任意の段階で行うことが可能である。胚および新芽では、接種ウィルスの拡散はきわめて急速でなければならない。ALMVビリオンは、一意のCP(24KD)によってカプシド封入され、1型を超える粒子を形成する。粒子のサイズ(長さ30から60NM、直径18NM)および形状(球形、楕円形、または桿形)は、カプシド封入されるRNAのサイズに依存する。集合されると、ALMV CPのN末端は、ウィルス粒子の表面に配置されると考えられ、ウィルスの集合を妨げないようである(BOL ET AL., VIROLOGY (1971)6:73−85)。さらに、そのN末端に、余分の38アミノ酸ペプチドを有するAIMV CPは、インビトロで粒子を形成し、生物学的活性を保持する(YUSIBOV ET AL., J. GEN. VIROL. (1995)77:567−573)。
【0093】
ALMVは、広い宿主範囲を持ち、その範囲は、種子、胚、および新芽を含む、いくつかの、農業的に貴重な収穫植物を含む。これらの特徴が合わさって、AIMV CPは、担体分子として優れた候補とされ、発達の発芽段階において植物中で外来配列を発現するための魅力的な候補ベクターとされる。さらに、TMVなどの異種ベクターによる発現の際、ALMV CPは、ウィルスの感染性に干渉することなくTMVゲノムをカプシド封入する(YUSINOV ET AL., PROC. NATL. ACAD. SCI. USA (1997)94:5784−5788、なお、この文献を引用に本明細書に含める)。これによって、外来配列に融合したALMV CPの担体ウィルスとしてTMVを使用することが可能となる。
【0094】
トバモウィルスの原型であるTMVは、17.0KD CPによってカプシド封入される、単一鎖プラスセンスRNAから成るゲノムを持ち、このため、棒状粒子(長さが300 NM)を形成する(図2)。このCPは、TMVの唯一の構造タンパク質であり、感染宿主におけるウィルスのカプシド封入、および長距離移動に必要である(SAITO ET AL., VIROLOGY (1990)176:329−336)。183および126 KDタンパク質は、ゲノムRNAから翻訳され、ウィルスの複製に必要とされる(ISHIKAWA ET AL., NUCLEIC ACIDS RES. (1986)14:8291−8308)。30 KDタンパク質は、ウィルスの細胞間移動タンパク質である(MESHI ET AL., EMBO J. (1987)6:2557−2563)。移動およびコートタンパク質は、サブゲノムMRNAから翻訳される(HUNTER ET AL., NATURE (1976)260:759−760; BRUENING ET AL., VIROLOGY (1976)71:498−517; BEACHY ET AL., VIROLOGY (1976)73:498−507、なお、これらの文献のそれぞれを引用により本明細書に含める)。
【0095】
ALMVおよびTMVゲノムの模式図を図2に示す。ALMVのRNA1および2は、それぞれ、レプリカーゼタンパク質P1およびP2をコードする。ゲノムRNA3は、細胞間移動タンパク質P3およびウィルスコートタンパク質(CP)をコードする。CPは、ゲノムRNA3から合成されるサブゲノムRNA4から翻訳される。TMVの126 KDおよび183 KDタンパク質は、複製に必要であり;30 KDタンパク質は、ウィルスの細胞間移動タンパク質であり、17 KDタンパク質は、ウィルスのCPである。CPおよび30 KDタンパク質は、サブゲノムRNAから翻訳される。矢印は、サブゲノムプロモーターの位置を示す。
【0096】
花の形質転換
植物細胞に対象タンパク質またはポリペプチドをコードする遺伝子を導入するために利用してもよい、他の方法としては、植物の花の形質転換が挙げられる。ARABIDOPSIS THALIANAの形質転換は、該植物の花を、AGROBACTERIUM TUMEfACIENSの液に浸すことによって実現が可能である(CURTIS AND NAM, TRANSGENIC RESEARCH (AUG 2001) 10 4:363−371; QING ET AL., MOLECULAR BREEDING: NEW STRATEGIES IN PLANT IMPROVEMENT (FEB 2000) (1):67−72)。形質転換植物は、「浸透」植物によって生成される種子集団の中に形成される。花の発達中のある特定の時点で、孔が子房に発生し、それを通じて、AGROBACTERIUM TUMEfACIENSが子房の中に進入する。一旦子房の中に入ると、AGROBACTERIUM TUMEfACIENSは、増殖し、個々の胚珠を形質転換する(DESfEUX ET AL., PLANT PHYSIOLOGY (JULY 2000) 123(3):895−904)。この形質転換された胚珠は、子房内部で種子の典型的経路をたどる。
【0097】
アグロバクテリウム介在一過性発現
本明細書に示すように、本発明の多くの実施態様では、植物におけるタンパク質またはポリペプチドの速やかな(例えば、一過性の)発現のためのシステムが望ましい。特に、本発明は、植物における(特に、幼若植物、例えば、発芽実生における)このような速やかな発現を実現するための強力なシステムを提供する。このシステムは、対象タンパク質またはポリペプチドをコードするウィルス発現システムを輸送するためにアグロバクテリウム構築体を利用する。
【0098】
具体的には、本発明によれば、複製配列を含むアグロバクテリウム配列を含み、さらに、対象タンパク質またはポリペプチドをコードする遺伝子を担う、植物ウィルス配列(自己複製配列を含む)を含む、「発射ベクター」が準備される。この発射ベクターは、好ましくは、事実上システム輸送を可能とするAGROINfILTRATION法によって植物組織の中に導入される。一過性形質転換では、発射ベクターの、非組み込みT−DNAコピーは、一過性に核の中に滞在し、転写され、担持遺伝子の発現をもたらす(KAPILA ET AL., 1997)。ウィルスベクターと違って、アグロバクテリウム介在一過性発現は、対象遺伝子発現の全身的拡散をもたらすことはできない。このシステムの一利点は、2 KBよりも大型の遺伝子をクローンする能力であって、ウィルスベクターでは獲得が不可能と思われるような構築体を生成することができることである(VOINNET ET AL., 2003)。さらに、この技術を用いると、植物を、一つを超えるトランスジーンで形質転換し、そうすることによって、マルチマータンパク質(例えば、複合タンパク質から成る抗体サブユニット)を発現し、集合することが可能となることである。さらに、異なるアグロバクテリウムによる共浸潤による複数のトランスジーンの共発現の可能性が、分離浸潤、または混合培養のいずれかによって利用可能となる。
【0099】
ある実施態様では、発射ベクターは、AGROBACTERIAにおける選別(または、少なくとも検出)、さらに、浸潤組織における選別/検出を可能とする配列を含む。さらに、発射ベクターは、通常、植物の中で転写されてウィルスRNAを生成し、次いで、ウィルスタンパク質を生成する配列を含む。さらに、ウィルスタンパク質およびウィルスRNAの生産は、対象とする製薬学的活性タンパク質をコードするRNAの多数コピーの速やかな生産をもたらす。このような生産は、比較的短い期間における対象標的の急速なタンパク質生産をもたらす。したがって、タンパク質生産のための高効率システムを生成することが可能である。
【0100】
ウィルス発現ベクターを利用するAGROINfILTRATION法は、そのベクターがトランスジェニック植物を生成する価値があるものかどうかを決定するのに先立って、発現レベルを確かめるために、微量の対象タンパク質を生産するのに使用することが可能である。それとは別に、またはそれに加えてさらに、ウィルス発現ベクターを利用するAGROINfILTRATION法は、一次的生産プラットフォームとして莫大量のタンパク質を生産することが可能な植物を速やかに生成するのに有用である。したがって、この一過性発現システムは、工業規模において使用することが可能である。
【0101】
さらに提供されるものは、異なる種々のアグロバクテリウムプラスミド、バイナリープラスミド、または、それらの誘導体、例えば、PBIV、PBI1221、PGREENなどの内のいずれかであって、本発明の、上記およびその他の局面において使用が可能なものである。多数の好適なベクターが従来技術で知られており、これを、従来技術で既知の方法、または本明細書に記載される方法によって指令および/または修飾し、本明細書に記載される方法において利用さるようにすることが可能である。
【0102】
図18は、ある特定の、例示の発射ベクターpBID4の模式図を示す。このベクターは、植物への導入後、組み換えウィルスゲノムの最初の転写を起動する、カリフラワーモザイクウィルス(DNA植物ウィルス)の35Sプロモーター、および、アグロバクテリウムノパリンのシンターゼの転写ターミネーターであるNOSターミネーターを含む。このベクターはさらに、ウィルス複製(126/183K)、および細胞間移動(MP)のための遺伝子を含む、タバコモザイクウィルスゲノムの配列を含む。このベクターはさらに、対象ポリペプチドをコードする遺伝子を含む。該遺伝子は、タバコモザイクウィルスゲノム配列の中の一意のクローニング部位に挿入され、コートタンパク質・サブゲノムMRNAプロモーターの転写調節下に置かれる。この「標的遺伝子」(すなわち、対象タンパク質またはポリペプチドをコードする遺伝子)は、TMVコートタンパク質の配列を置換するので、得られるウィルスベクターは、CP含有ベクターよりも組み換えに対して受容的でない、裸の自己複製RNAであり、かつ、効果的に拡散せず、環境の中で生存することができない。左および右のボーダー配列(LBおよびRB)は、ベクターを担う組み換えアグロバクテリウムによる植物の浸潤に次いで、植物細胞の中に転移される発射ベクターの領域を区画する。このベクターを担うアグロバクテリウムを植物組織の中に導入すると(通常、AGROINfILTRATIONによるが、それとは別に、インジェクションまたは他の手段によってもよい)、LBとRBの間の配列の、複数の、単一鎖DNA(ssDNA)コピーが生成され、数分の内に放出される。次に、これらの導入配列は、ウィルス複製によって増幅される。標的遺伝子の翻訳は、短期間における大量の標的タンパク質またはポリペプチドの蓄積をもたらす。
【0103】
本発明のある実施態様では、アグロバクテリウム介在一過性発現は、植物組織KG当たり、標的タンパク質、最大約5 G以上を生産する。例えば、ある実施態様では、最大約4、3、2、1、または0.5 Gの標的タンパク質が、植物組織1 KG当たり生産される。ある実施態様では、植物組織1 KG当たり、少なくとも約20−500 MG、または約50−500の標的タンパク質が、または、約50−200、または約50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、または約200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、1000、1500、1750、2000、2500、3000 MGが生産される。
【0104】
本発明のある実施態様では、これらの発現レベルは、浸潤から、約6、5、4、3週間、または2週間以内に実現される。ある実施態様では、これらの発現レベルは、発現構築体導入から、約10、7、5、4、3、2日以内、場合によっては1日以内に実現される。したがって、導入(例えば、浸潤)から収穫までの期間は、通常、約2週間、10日未満、または1週以内である。さらに、本発明の、この実施態様のきわめて魅力的な一局面は、アミノ酸配列の選別から(「予備的」発現実験に要する時間も含めて)約8週間以内にタンパク質の生産を可能とすることである。さらに、各バッチのタンパク質は、通常、約8週、約6週、5週以内に生産することが可能である。当業者であれば、これらの数字は、使用される植物の種類に応じて幾分変動することを理解されるであろう。豆を含む、大抵の新芽は、上に示した数値内に納まる。しかしながら、NICOTIANA BENTHAMIANAは、特に浸潤前は、もっと長く育成してもよい。なぜなら、これらは、成長が比較的遅いからである(スピードがはるかに遅いことによる)。他の予想される調整も、使用される特定の植物の生物学に基づいて当業者には明らかであろう。
【0105】
本発明人らは、異なる種々の幼若植物において各種の標的タンパク質およびポリペプチドを生産するために発射ベクターシステムを使用してきた。本発明人らは、驚くべきことに、ある種の豆品種、例えば、マローファットピース、BILL JUMP PEA、YELLOW TRAPPER PEA、SPECKLED PEA、および緑豆が、本発明のこの局面の実施において特に有用であることを見出した(例えば、実施例7を参照)。
【0106】
本発明人らはさらに、各種NICOTIANA植物、特に、NICOTIANA BENTHAMIANAを含む植物が、本発明のこの局面に特に有用であることを見出した。当業者であれば、NICOTIANA植物は、一般に、「新芽」とは見なされないことを理解するであろう。にも拘わらず、本発明は、幼若なNICOTIANA植物(特に、NICOTIANA BENTHAMIANAの幼若植物)は、本発明の実施において有用であることを教唆する。一般に、本発明の本実施態様の実施では、NICOTIANA BENTHAMIANA植物は、浸潤(すなわち、発射ベクターを含むアグロバクテリウムの輸送)前に適切量のバイオマスの発達を可能とするのに十分な時間育成される。通常、この植物は、浸潤前、約3週間以上、典型的には約4週間以上、または、約5〜6週の間の期間育成されてバイオマスを蓄積する。
【0107】
本発明人らはさらに、驚くべきことに、TMVおよびALMV配列は共にこの発射ベクター構築体において有効であることが判明したが、ある実施態様では、ALMV配列が、輸送タンパク質またはポリペプチドの高レベル生産の確保に特に有効であることを見出した。
【0108】
したがって、本発明のある特定実施態様では、対象タンパク質またはポリペプチドは、対象遺伝子を担うALMV配列の生産を指令する発射ベクターに基づいて、幼若豆植物または幼若NICOTIANA植物(例えば、NICOTIANA BENTHAMIANA)において生産される。
【0109】
発現構築体
本発明において有用な発現構築体の多くの特性は、前述のように、使用される特定の発現システムに対して特異的である。しかしながら、異なる発現システム全体に適用可能ないくつかの局面を、ここでさらに詳細に論ずることにする。
【0110】
ほんの一例を示すならば、本発明の多くの実施態様では、対象タンパク質またはポリペプチド(または核酸)が誘発可能であることが望ましい。このような多くの実施態様では、対象タンパク質またはポリペプチドをコードするRNA(および/または、アンチセンスRNAの生産)は、誘発可能な(例えば、外因性に誘発が可能な)プロモーターの調節下に置かれる。外因性に誘発が可能なプロモーターは、内部刺激ではなく、外部刺激に対して反応して転写体の発現を上昇または低下させる。いくつかの環境因子が、このような外部刺激として活動することが可能である。本発明のある実施態様では、転写は、熱ショックプロモーターなどの熱誘発性プロモーターによって調節される。
【0111】
外部誘発性プロモーターは、増殖が制御調節される設定背景下では特に有用であると考えられる。例えば、熱ショックプロモーターを用いた場合、関連転写体の発現を誘発するには、単純に閉鎖的環境の温度を上昇させればよい。もちろん、熱誘発性プロモーターは、戸外温度は制御することができないので、戸外では絶対に使用できないことは自明である。プロモーターは、戸外温度があるレベルを超えて上昇した場合いつでもスイッチオンされることが考えられる。同様に、戸外温度が低下した場合はいつでもスイッチオフすることが考えられる。この温度シフトは、1日の内にも起こり、例えば、昼間はスイッチオンし、夜間はスイッチオフすることも考えられる。本明細書に記載されるような熱誘発性プロモーターは、戸外とほぼ同程度に気候変動に対して敏感な温室での使用にも実際的ではないことが考えられる。温室において遺伝学的に加工された植物を育成することはきわめて高価である。一方、本システムでは、最大量の発現が収穫ごとに実現されるよう各変数を調節することが可能である。
【0112】
本発明にしたがって利用することが可能な、他の、外部的に誘発可能なプロモーターとして、光誘発性プロモーターが挙げられる。光誘発性プロモーターは、閉鎖的調節可能環境の光が常にオンされている場合、構成的プロモーターとして維持することが可能である。それとは別に、関連転写体の発現は、単純に光をスイッチオンすることによって、発達中のある特定の時点においてスイッチオンすることが可能である。
【0113】
さらに別の実施態様では、化学的に誘発可能なプロモーターが、関連転写体の発現を誘発するために使用される。この実施態様によれば、関連転写体の発現を誘発するために、薬品を、種子、胚、または幼若植物(例えば、実生)に、単純に噴霧する、または水滴をかけるだけでよいと考えられる。水遣りおよび噴霧は、正確に調節することが可能であり、望みの、特定の種子、胚、または幼若植物(例えば、実生)に向けることが可能である。閉鎖環境は、薬品を、意図されるレシピエントから拡散させる可能性のある、風または気流を含まない。したがって、薬品は、意図するレシピエントの上に滞在することが可能である。
【0114】
増殖環境
本発明の一局面は、制御調節育成条件下での、植物におけるタンパク質またはポリペプチド(および/または核酸)の生産である。本発明によれば、幼若植物(例えば、発芽実生)におけるタンパク質またはポリペプチド生産に関連する、一つの魅力的特性は、同じ植物品種が成長体まで育成される場合に必要とされるよりも短い育成時間しか必要とされないことである。さらに、多くの場合、植物が、完全成熟サイズとなるまで育成される場合に必要とされるものよりも、小さなスペースしか使われない。一般に、制御調節環境において製剤タンパク質またはポリペプチドを発現する植物を育成することは、遺伝子加工された植物を育成するよりも、速やかに(植物は、より若い時期に収穫されるので)、かつ、より少ない努力、リスク、および調節配慮の下に薬剤製品を提供する。本発明において使用される、閉鎖、調節可能環境は、天然における植物の交差受粉のリスクを抑制、または除去する。
【0115】
本発明の多くの実施態様では、タンパク質またはポリペプチドは、閉鎖システムにおいて育成される植物において発現される。このようなシステムは、環境汚染のリスクを回避し、さらに、反復的に類似結果を実現することが可能な、調節、再現の可能な環境を提供する。さらにこのようなシステムは、望む場合に、タンパク質またはポリペプチド発現の調節的誘発を、例えば、誘発可能プロモーター、または、本明細書に記載する、他の調節可能な特性を用いることによって実行することが可能である。
【0116】
本発明のある実施態様では、植物は、閉鎖された、調節可能環境において育成される。ある実施態様では、この閉鎖された、調節可能環境は、種子を屋内で育成することが可能な収容ユニットまたは部屋である。この閉鎖された、調節可能環境の全ての環境因子は、制御されてもよい。新芽は、生育するのに光を必要とせず、かつ、照明は高価となる場合があるので、特定の一実施態様では、植物は(例えば、発芽実生段階まで)、光無しで屋内で育成される。
【0117】
本発明の閉鎖、調節可能環境において調節が可能な、その他の環境因子としては、例えば、温度、湿度、水、栄養素、気体(例えば、O2、またはCO2含量、または空気循環)、薬品(糖類および糖誘導体などの小型分子、または、ジベリリンまたはアブシジン酸などの植物ホルモンなど)などが挙げられる。
【0118】
本発明の多くの実施態様では、植物は、水耕栽培によって育成される。水耕育成システムは、いくつかの利点を提供する。例えば、水耕育成システムは、多くの場合、同じ数の植物を育成するのに土壌系システムよりも少ないスペースしか必要としない。栄養素および他の薬剤は、通常、水耕システムを貫流させることが可能であり、土壌系システムよりも制御的育成を実現するのが簡単である。水耕栽培の多くの局面は自動化してよい。さらに、水耕栽培によって育成される植物の収穫は、容易である。植物は、単にその培養液から持ち上げることだけで収穫することが可能である。収穫時に洗浄は必要とされない。濯ぎまたは洗浄無しで水耕環境から直接幼若植物(例えば、発芽実生)を収穫することができるので、収穫された物質の破壊を最小にすることができる。植物の破壊および凋落は、アポトーシスを誘発する。アポトーシスの際、いくつかのタンパク質分解酵素が活性を帯び、これが、発芽実生において発現される製剤タンパク質またはポリペプチドを分解し、該タンパク質の治療活性の低下を招く可能性がある。アポトーシス誘発性タンパク質分解は、成熟植物からのタンパク質の収率を著明に下げる可能性がある。本発明の方法を用いると、アポトーシスは、好ましいことに決して誘発されない(すなわち、アポトーシスは回避される)。なぜなら、例えば、タンパク質が植物から抽出される瞬間まで、収穫は行われないからである。
【0119】
本発明のある実施態様では、植物(例えば、発芽実生)は、発達中任意の時点で、潅水、撒水、または噴霧することが可能なトレイにおいて育成される。例えば、トレイは、発芽実生の発達時、特異的時点および正確な量において、水、栄養素、薬品などを輸送および/または除去する、一つ以上の、潅水、撒水、噴霧、および排水装置と適合されてもよい。例えば、種子は、湿潤状態を維持するために十分な水分を必要とする。過剰な水分は、トレイの貫通孔から部屋の床の排水管の中に排水される。好ましくは、排水は、環境に戻される前に、有害な薬品除去のために適宜処理される。
【0120】
トレイのもう一つの利点は、それらは、きわめて小さな空間の中に納めることが可能であることである。多くの場合、幼若植物(例えば、発芽実生)が生育するためには光は必要とされないので、種子、胚、または幼若植物(例えば、発芽実生)を含むトレイは、垂直に互いに緊密に積み重ねてもよく、これによって、特異的にこの目的のために建設される収容施設において、単位床面積当たり大量のバイオマスが供給されることになる。さらに、トレイの積層体は、この収容ユニットにおいて水平列として配置することが可能である。一旦実生が収穫に適切な段階まで生育したならば(例えば、植物、生産されるタンパク質またはポリペプチドの種類に依存して約2日から14日以上)、個々のトレイは、手動、または、コンベアベルトなどの自動手段によって加工施設に移動される。
【0121】
本発明の実施に適用が可能な育成条件および技術の、様々な局面が、当業者にはすぐに明らかであろう。例えば、誘発可能な発現システムが利用される場合、発現が誘発される時点は、収穫時までに、幼若植物における対象タンパク質またはポリペプチドの発現を最大とするように選択するのが好ましい。ある特定の生育段階で(例えば、発芽から、ある特定の日数後)胚において発現を誘発することが、収穫時における対象タンパク質またはポリペプチドの最大生産をもたらすかもしれない。例えば、発芽4日後、プロモーターから発現を誘発することの方が、3日後、または5日後にプロモーターから発現を誘発するよりも、多くのタンパク質合成を引き起こすかもしれない。当業者であれば、通例の実験によって発現の最大化を実現することが可能であることを理解するであろう。好ましい実施態様では、幼若植物、特に、発芽実生は、発芽の、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12日後に収穫される。別の実施態様では、幼若植物、特にNICOTIANA植物が、発芽後数週間育成される。
【0122】
誘発性発現システムではなく、構成的発現システムが利用される場合、幼若植物は、コード配列の導入からある一定時間後に収穫してよい。例えば、発芽実生が、発達の初期段階(例えば、胚段階)でウィルスによって形質転換された場合、該発芽実生は、形質転換後発現が最大になる時点で、例えば、形質転換後、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、または14日で収穫されてもよい。さらに、幼若植物(例えば、新芽)は、種子の発芽に依存して、形質転換後1、2、3ヶ月以上発達することも可能と考えられる。
【0123】
一般に、一旦製剤タンパク質の発現が始まると、種子、胚、または幼若植物(例えば、発芽実生)は、十分なレベルの、対象製剤タンパク質またはポリペプチドが発現されるまで育成される。ある実施態様では、十分なレベルとは、もしも収穫されたバイオマスを生で食べたとしても、患者に対し治療利益を供給すると考えられるレベルである。それとは別に、十分なレベルとは、製剤タンパク質またはポリペプチドを、そのバイオマスから濃縮または精製して、投与された場合、被検体に治療利益を与える製剤組成物として処方することが可能なレベルである。
【0124】
ある実施態様では、一旦製剤タンパク質の発現が誘発されると、育成は、発芽実生段階まで続けられ、その段階に達した時点で発芽実生は収穫される。ある特に好ましい実施態様では、発芽実生は生のまま収穫される。生の発芽実生を収穫することは、手間と破壊が最小となることを含む、いくつかの利点を有する。
【0125】
特に、本発明は、高レベルの、発現対象タンパク質またはポリペプチド(および/または核酸)を含む、幼若植物のバイオマスを順次提供する独特のシステムを提供する。直接消費されようが、製剤組成物に加工されようが、幼若植物(例えば、発芽実生)が、閉鎖された、調節可能環境で育成される場合、その植物バイオマス、および/または、そのバイオマスから得られる製剤組成物は、消費者に低コストで提供することが可能である。さらに、幼若植物の育成条件が調節可能であるという事実によって、製品の品質および純度は一定とされる。さらに、本発明の、この閉鎖された、調節可能な環境は、科学者たちが、戸外で遺伝学的に加工された農業産物を育成することから身を引くきっかけとなっている、EPAの多くの安全性規制を回避することを可能とする。
【0126】
タンパク質/ポリペプチド調製品
本発明は、幼若植物において生産されるタンパク質またはポリペプチド(および/または活性核酸)の各種調製品および処方を提供する。
【0127】
本発明のある実施態様では、タンパク質またはポリペプチドは、植物組織から単離されず、むしろ、生の幼若植物(例えば、発芽実生)の状態を保持したままで生産される。植物が食用である、ある実施態様では、発現タンパク質またはポリペプチドを含む植物組織は、消費のために直に供給される。したがって、本発明は、発現タンパク質またはポリペプチドを含む幼若植物の食用バイオマス(例えば、食用発芽実生)を提供する。
【0128】
食用幼若植物(例えば、発芽実生)が、十分なレベルの製剤タンパク質またはポリペプチドを発現し、生のまま消費される場合、ある実施態様では、発芽実生が消費されるまで、収穫は全く行われない。このようにして、製剤タンパク質が、治療を要する患者に投与される前に、製剤タンパク質の、収穫誘発性タンパク質分解による破壊が全く起こらないことが保障される。例えば、すぐに消費されてもよい幼若植物(例えば、発芽実生)を、直に患者に輸送することが可能である。それとは別に、遺伝学的に加工された種子または胚は、治療を必要とする患者に輸送され、患者によって発芽実生段階まで育成される。好ましい一実施態様では、遺伝学的に加工された発芽実生の一供給分が、患者、または患者を治療する医師に提供され、所望のある製剤タンパク質を発現する、発芽実生のストックが連続的に培養可能とされる。これは、高価な薬剤を買う余裕もなければ、輸送することもできない、発展途上国の人口集団にとっては特に貴重である。本発明の発芽実生は簡単に育成が可能であるが、その簡便さのため、本発明の発芽実生は、発展途上国の人口集団にとっては特に好ましいものになる。
【0129】
ある実施態様では、植物バイオマスは、消費または処方前に、例えば、ホモジェナイズ、破砕、乾燥、または抽出によって処理される。ある実施態様では、発現されるタンパク質またはポリペプチドは、バイオマスから単離または精製され、製剤組成物に処方される。
【0130】
例えば、生の幼若植物(例えば、新芽)は、粉砕、破砕、または混ぜ合わされて、プロテアーゼ阻害剤を含むバッファーに溶解したバイオマスのスラリーを生成する。ある実施態様では、バイオマスは、空気乾燥、噴霧乾燥、凍結、または凍結乾燥される。成熟植物の場合と同様、これらの方法の内のあるもの、例えば、空気乾燥は、製剤タンパク質またはポリペプチドの活性の損失を招くことが考えられる。しかしながら、利用される植物(例えば、発芽実生)は、きわめて小さく、通常、大きな、表面積・対・体積比を持つので、このようなことが起こることは先ず考えられない。当業者であれば、製剤タンパク質またはポリペプチドのタンパク質分解を最小にしながら、バイオマスを収穫するためにたくさんの技術が利用可能であり、本発明に適用することが可能であることを理解するであろう。
【0131】
投与および製剤組成物
本発明は、治療を必要とする宿主に投与された場合、その製剤活性を維持する、製薬学的に活性を持つタンパク質またはポリペプチドを発現する幼若植物を提供する。好ましい宿主としては、脊椎動物、好ましくは哺乳類、より好ましくはヒトが挙げられる。本発明によれば、宿主として、獣医学的被検体、例えば、ウシ類、ヒツジ類、イヌ類、ネコ類などが挙げられる。好ましい実施態様では、食用新芽は、被検体に、治療的有効量として経口的に投与される。別の好ましい実施態様では、製薬学的活性タンパク質は、本明細書に記載される、製剤として提供される。
【0132】
本発明の調剤品は、宿主に対し、広く種々な方法で、例えば、経口的、経腸的、鼻腔的、非経口的、筋肉内またな静脈内、直腸、膣内、局所的、眼球内、肺内、または、接触的塗布によって投与することが可能である。好ましい実施態様では、幼若植物(例えば、新芽)において発現される製剤タンパク質は、宿主に対し経口的に投与される。別の好ましい実施態様では、幼若植物において(例えば、新芽において)発現される製薬学的活性タンパク質は、抽出および/または精製され、製剤組成物の調製に使用される。タンパク質は、従来技術で既知の、通例の条件および技術にしたがって単離、精製される。そのようなものとして、抽出、沈殿、クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、電気泳動などの方法が挙げられる。
【0133】
本発明の組成物は、通常、一つ以上の有機か、または無機の、液体か、または固体の、製薬学的に適切な担体物質と共に、有効量の、製薬学的活性タンパク質またはポリペプチドを含む。
【0134】
本発明にしたがって生産される、製薬学的活性タンパク質は、タンパク質の生物学的活性がその剤形で破壊されない限り、錠剤、カプセル、トローチ、分散剤、縣濁剤、溶液、カプセル、クリーム、軟膏、エロゾル、散剤パケット、液体溶液、溶媒、希釈剤、表面活性剤、等張剤、増粘または乳化剤、防腐剤、固相結合剤などの剤形として使用されてもよい。
【0135】
製薬学的に受容可能な担体として使用が可能な材料の例、例えば、ただしこれらに限定されないが、糖類、例えば、ラクトース、グルコース、およびスクロース;でん粉類、例えば、コーンスターチ、およびじゃがいもでん粉;セルロースおよびその誘導体、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、および酢酸セルロース;粉末状トラガカント;モルト;ゼラチン;タルク;賦形剤、例えば、ココアバター、および座剤ワックス;油状物、例えば、ピーナツ油、綿実油;紅花油;ごま油;オリーブ油;コーン油および大豆油;グリコール類、例えば、プロピレングリコール;エステル類、例えば、オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチル;寒天;バッファー剤、例えば、水酸化マグネシウム、および水酸化アルミニウム;アルギン酸;発熱源非含有水;等張生理的食塩水;リンゲル液;エチルアルコール、およびリン酸バッファー液の外、他の、無毒な適合的潤滑剤、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、およびステアリン酸マグネシウムの外、着色剤、剥離剤、コーティング剤、甘味剤、芳香剤、香料、防腐剤、および抗酸化剤も、調剤師の判断にしたがって組成物の中に存在することが可能である(さらに、REMINGTON’S PHARMACEUTICAL SCIENCES, FIfTEENTH EDITION, E.W. MARTIN (MACK PUBLISHING CO., EASTON PA, 1975)。例えば、タンパク質は、通例の、混和造粒糖剤製造法、溶解、凍結乾燥、または類似のプロセスによって製剤組成物として提供されてもよい。
【0136】
ある実施態様では、皮下または筋肉内に注入される製剤タンパク質またはポリペプチドの吸収を遅らせることによって、該調剤品の作用を長引かせることが好ましい場合がある。これは、水溶性の劣る結晶性、または非晶性物質の縣濁液を用いることによって実現してもよい。次に、タンパク質またはポリペプチドの吸収速度は、その溶解速度に依存し、溶解速度は次にサイズおよび形状に依存すると考えられる。
【0137】
それとは別に、非経口的に投与されるタンパク質の吸収遅延は、該タンパク質を油状ベヒクルに溶解、または縣濁することによって実現される。注入可能なデポ剤形は、タンパク質のミクロカプセル封入基質を、ポリラクチドーポリグリコリドなどの生物分解性ポリマーの中に形成することによって製造される。タンパク質対ポリマー比、および使用される特定のポリマーの性質に応じて、放出速度を調節することが可能である。他の、生物分解性ポリマーの例としては、ポリ(オルトエステル)、およびポリ(アンヒドリド)が挙げられる。注入可能なデポ処方はまた、タンパク質を、生体組織と適合可能なリポソームまたは微小乳滴の中に封じ込めることによって調製される。
【0138】
経腸的に投与されるタンパク質またはポリペプチド調製品は、固体、半固体、縣濁液、または乳剤形として導入されてもよく、任意の製薬学的に受容可能な担体、例えば、水、縣濁剤、および乳化剤と混和されてもよい。本発明のタンパク質またはポリペプチドは、特に予防策として投与される場合、被検体における病気の発症を予防するため、または、すでに確立された病気を寛解または遅らせるために、ポンプによって、または持続放出剤形として投与されてもよい。
【0139】
本発明にしたがって生産されるタンパク質またはポリペプチドは、製剤組成物として経口投与されるのに特によく適合される。収穫された幼若植物(例えば、実生)は、生で投与されてもよいし、あるいは、所望のタンパク質またはポリペプチド製品、および最終製品の所望の形状に応じて、様々のやり方で、例えば、空気乾燥、凍結乾燥、抽出などによって処理されてもよい。
【0140】
ある実施態様では、前述の組成物は、経口的に単独で摂取されてもよいし、あるいは、食物または飼料または飲み物と一緒に摂取されてもよい。経口投与用組成物としては、発芽実生;幼若植物(例えば、発芽実生)の抽出物;幼若植物から精製されたタンパク質またはポリペプチドで、乾燥粉末、食品、水性または非水性溶媒、縣濁液、または乳液として提供されるものが挙げられる。
【0141】
非水性溶媒の例としては、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油、魚油、および注入可能な有機エステルがある。水性担体としては、水、水ーアルコール溶液、乳液または縣濁液、例えば、生食液、塩化ナトリウム液を含む、医用非経口緩衝ベヒクル、リンゲルデキストロース液、デキストロース・プラス・塩化ナトリウム溶液、ラクトースまたは固定油を含むリンゲル液が挙げられる。
【0142】
乾燥粉末の例としては、乾燥された、例えば、凍結乾燥、空気乾燥、または飛沫乾燥された、任意の幼若植物(例えば、発芽実生)のバイオマスが挙げられる。例えば、幼若植物は、それらを、市販の空気乾燥機において華氏120度で、バイオマスの水分含量が重量で5%未満となるまで、維持することによって空気乾燥してもよい。この乾燥植物は、その後さらに、大量の固体塊としての処理のために保存されるか、または、所望のメッシュサイズの粉末となるまで粉砕することによって処理される。それとは別に、空気乾燥に対して過敏な産物のためには、凍結乾燥を使用してもよい。産物は、それらを、真空乾燥機に設置し、真空下に、バイオマスの水分含量が重量で5%未満となるまで、維持することによって凍結乾燥してもよい。この乾燥材料は、本明細書に記載するようにさらに処理することが可能である。
【0143】
ハーブ調製品は従来技術において周知される。本発明の幼若植物を投与するために使用されるハーブ調製品は、液状および固状のハーブ調製品を含む。ハーブ調製品のいくつかの例として、チンキ、抽出物(例えば、水性抽出物、アルコール抽出物)、煎剤、乾燥調製品(例えば、空気乾燥、飛沫乾燥、凍結、または凍結乾燥)、粉末(例えば、凍結乾燥粉末)、および液体が挙げられる。ハーブ調製品は、任意の標準的送達ベヒクルに溶解させて、例えば、カプセル、錠剤、座剤、液体剤形などとして提供することが可能である。当業者であれば、本発明に適用されてもよい、ハーブ調製品の処方、送達方式には様々のものがあることを理解されるであろう。
【0144】
当業者であれば、所望の製薬学的活性タンパク質またはポリペプチドを獲得する、特に好ましい方法は、抽出によることを理解するであろう。新鮮な幼若植物(例えば、実生)を抽出し、残留バイオマスから所望のタンパク質産物を取り出し、そうすることによって該産物の濃度および純度を増してもよい。幼若植物はまた、バッファー溶液において抽出してもよい。例えば、収穫したばかりの植物を、例えば、リン酸バッファーによって緩衝させた、ある量の氷冷水に、重量にして1対1の比率で移してもよい。さらに、プロテアーゼ阻害剤を、必要に応じて加えてもよい。植物組織は、バッファー液に縣濁中に、活発に混和するか、または粉砕することによって破壊することが可能であり、ろ過または遠心によって抽出バイオマスを取り出すことが可能である。溶液に担持されるタンパク質産物はさらに、追加工程によって精製するか、または、凍結乾燥または沈殿によって乾燥粉末に変換することが可能である。
【0145】
抽出はさらに、加圧によって実行することが可能である。生の植物は、プレス機において加圧するか、または、緊密に隔てられたローラーの間を通過させながら押しつぶすことによって抽出することが可能である。潰れた植物から押し出された流体は収集され、従来技術で周知の方法にしたがって処理される。加圧による抽出は、より濃縮した形での産物の放出を可能とする。しかしながら、産物の総合収率は、産物が溶液として抽出される場合よりも低いことがある。
【0146】
この幼若植物(例えば、発芽実生)、抽出物、粉末、乾燥調製品、および精製タンパク質産物などはさらに、前述の、一つ以上の賦形剤を伴って、または無しで、封入形として提供することも可能である。錠剤、糖剤、カプセル、丸剤、および顆粒から成る固体剤形は、コーティングおよびシェル、例えば、腸性コーティング、放出調節コーティング、および、製剤処方技術において周知の、その他のコーティング付きで調製することが可能である。このような固体剤形では、活性製剤タンパク質は、少なくとも一つの不活性希釈剤、例えば、スクロース、ラクトース、またはでん粉と混和してもよい。さらに、その剤形は、通常慣行として、不活性希釈剤以外の添加物質として、例えば、錠剤形成潤滑剤およびその他の錠剤形成支援剤、例えば、ステアリン酸マグネシウム、および微結晶セルロースを含んでもよい。カプセル、錠剤、および丸剤の場合、剤形はさらに、バッファー剤を含んでもよい。剤形は、任意に、X線不透過剤を含んでもよく、さらに、小腸のある一定部分においてのみ、またはその部分に優先的に、任意に遅延的に、活性成分(単数または複数)を放出するような組成を持っていてもよい。使用が可能な埋め込み組成物の例として、ポリマー物質およびワックスが挙げられる。
【0147】
別の実施態様では、本発明の製薬学的活性タンパク質を発現する幼若植物、またはそのような幼若植物のバイオマスは、医用食品として経口的に投与される。このような食用組成物は、固体形の場合は生のまま食べることによって、液体形の場合は飲むことによって消費される。好ましい実施態様では、この植物材料は、先行する処理工程無しに直接摂取されるか、または、最小の調理的準備の後で摂取される。例えば、製薬学的活性タンパク質またはポリペプチドは、直接食べることが可能な新芽において発現される。例えば、該タンパク質は、アルファルファの芽、緑豆もやし、またはほうれん草またはレタスの葉の芽、幼若豆植物などにおいて発現される。別の実施態様では、発芽実生バイオマスは処理され、処理工程後に回収される材料が摂取される。
【0148】
本発明において使用される処理法は、食品または飼料産業において一般に使用される方法であることが好ましい。このような方法の最終産物は、発現された製薬学的活性タンパク質またはポリペプチドの相当量を含むが、好適に食べるか、飲むかすることによって摂取することが好ましい。この最終産物はさらに、他の食物または飼料形、例えば、塩、担体、風味強調剤、抗生物質などと混和され、固形、半固形、縣濁液、乳液、または液体形として消費されてもよい。別の好ましい実施態様では、このような方法は、保存工程、例えば、低温殺菌、調理、または、保存および防腐剤の添加を含む。
【0149】
本発明では、食用または飲用の植物材料を生産するために、任意の植物が使用され、処理される。食用または飲用新芽調製品における製薬学的活性タンパク質の量は、従来技術における標準法、例えば、ゲル電気泳動、ELISA、または、該タンパク質に対する特異的抗体によるウェスタンブロット分析によって試験してよい。この定量結果は、摂取されたタンパク質の量を標準化するのに使用することが可能である。例えば、新芽ジュースにおける治療的活性タンパク質の量を、例えば、異なるレベルのタンパク質を有する産物のバッチを混合することによって定量、調節し、一回の投与において飲むか、または摂取すべきジュースの量を標準化することが可能である。一方、本発明による、閉鎖された、調節可能な環境の使用は、このような標準化手順を実行する必要性を最小化するはずである。
【0150】
幼若植物において(例えば、発芽実生において)生産され、宿主によって食べられる製薬学的活性タンパク質またはポリペプチドは、消化器系によって吸収される。発芽実生、または発芽実生調製品、特に、生の新芽、または、ごく僅かしか処理されていない新芽バイオマスを摂取することの利点は、タンパク質を、植物細胞の中に封入された状態、または隔離された状態で提供することである。したがって、タンパク質は、腸または小腸に達する前、上部消化管における消化から少なくとも若干の保護を受けることが考えられ、より高い比率の活性成分が吸収に与ることが考えられる。
【0151】
本発明の製剤組成物は、治療的に、または予防的に投与することが可能である。ある好ましい実施態様では、組成物は、病気の治療、または予防のため(例えば、開始を遅らせるため)に使用されてもよい。例えば、病気に罹っているか、または、病気を発症するリスクを持つ任意の個人を治療してよい。個人は、病気の何かの症状を持つと診断されなくとも、該病気を発症するリスクを持つと見なすことが可能であることが理解されよう。例えば、個人が、ある特定の病気を発症するリスクの増大と関連すると特定される、ある特定の遺伝子マーカーを有する場合、その個人は、その病気を発症するリスクを負うと考えられる。同様に、ある個人の家族の複数の構成員が、ある特定の病気、例えば、癌と診断された場合、その個人も、その病気を発症するリスクを負うと見なしてもよい。
【0152】
経口投与用の液体剤形としては、例えば、ただしこれらに限定されないが、製薬学的に受容可能な乳剤、ミクロ乳剤、溶液、縣濁液、シロップ、およびエリキシルが挙げられる。対象タンパク質またはポリペプチドの外に、液体剤形は、従来技術で一般的に使用される不活性希釈剤、例えば、水、またはその他の溶媒、可溶化剤、および乳化剤、例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3ーブチレングリコール、ジメチルフォルムアミド、油状物(特に、綿実油、落下生油、コーン油、胚芽油、オリーブ油、ひまし油、および、ごま油)、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコール、および、ソルビタンの脂肪酸エステル、およびそれらの混合物を含んでもよい。不活性希釈剤の外、経口組成物はまた、補助剤、例えば、湿潤剤、乳化および縣濁剤、甘味剤、芳香剤、および香料を含むことが可能である。
【0153】
直腸または膣内投与用組成物は、本発明の組成物を、適切な、非刺激性賦形剤または担体、例えば、ココアバター、ポリエチレングリコール、または、周囲温では固体で、体温では液体になり、したがって、直腸または膣腔において溶融し、活性タンパク質を放出する、座剤ワックスと混合することによって調製することが可能である。
【0154】
本発明の製剤組成物の局所または経皮投与用剤形としては、軟膏、ペースト、クリーム、ローション、ゲル、散剤、溶液、スプレイ、吸入剤、またはパッチが挙げられる。活性タンパク質、またはその調製品は、必要に応じて、製薬学的に受容可能な担体、および任意の防腐剤またはバッファーと、滅菌条件下に混和される。眼科処方、点耳剤、および点眼剤も、本発明の範囲内にあるものとして考慮の対象となる。さらに、本発明は、生体に対し製薬学的活性タンパク質の調節的送達を実現するという、新たな利点を有する、経皮パッチの使用を考慮の対象とする。この剤形は、製薬学的活性タンパク質を、適切な媒体に縣濁または分散させることによって製造することが可能である。さらに、皮膚を横切る、製薬学的活性タンパク質のフラックスを増すために、吸収強化剤を使用することも可能である。この速度は、速度調節膜を設けることによって、または、製薬学的活性タンパク質をポリマー基質またはゲル中に分散させることによって調節することが可能である。
【0155】
組成物は、所望の結果を実現するのに必要な量、および時間投与される。前述のように、本発明のある実施態様では、製剤組成物の「治療有効量」は、宿主の病気を治療、減弱、または予防するのに有効な量である。したがって、本明細書で用いる「病気を治療、減弱、または予防するのに有効な量」とは、非毒性ではあるが、製剤組成物が、任意の宿主の病気を、治療、減弱、または予防するのに十分な量を指す。ほんの一例として挙げるが、「治療的有効量」は、糖尿病を治療、減弱、または予防する量であってもよい。
【0156】
正確な必要量は、被検体の種類、年齢、および一般的状態、病気の段階、特定の製剤混合物、その投与方式などに応じてまちまちである。本発明の幼若植物(例えば、発芽実生)、およびそのタンパク質調製品は、投与の簡便と、剤形の均一性のために単位剤形として処方されるのが好ましい。本明細書で用いられる「単位剤形」という表現は、治療される患者にとって適切な、物理的分離単位の、製薬学的活性タンパク質を指す。しかしながら、本発明の組成物の、1日当たりの合計使用は、担当医により、健全な医学的判断の範囲内において決定されることが好ましい。任意の特定の患者または生物体に対する、特定の治療有効用量レベルは、様々な因子に、例えば、治療される障害、および障害の重度;用いられる特定化合物の活性;用いられる特定組成物;患者の年齢、体重、一般的健康、性別、患者の食餌、患者の薬物動態、投与時間、投与ルート、および用いられる特定化合物の排泄速度;治療期間;用いられる特定化合物と併用される、またはたまたま同時服用される薬剤;および、医学の従来技術で周知の類似の因子、に依存する。
【0157】
本発明の製剤組成物は、併用治療に用いることが可能であること、すなわち、製剤組成物は、一つ以上の、他の治療剤、または医学処置と同時に、その前に、またはその後で投与することが可能である。併用処方において用いられる治療法(治療剤、または処置)の特定の組み合わせは、所望の治療剤および/または処置、および、実現すべき所望の治療作用の適合性を考慮する。さらに、用いられる治療剤は、同じ障害に対して所望の作用を実現してもよいし(例えば、本発明の化合物は、別の抗癌剤と同時に投与されてもよい)、または、それらは、別々の作用を実現してもよいことが理解される。
【0158】
キット
さらに別の実施態様では、本発明はさらに、本発明の、生の幼若植物(例えば、発芽実生)、または調製品、抽出物、または、該幼若植物によって発現される製薬学的活性タンパク質またはポリペプチドを含む製剤組成物を、本発明の製剤組成物の、一つ以上の成分で充填される容器の中に含む製剤パックまたはキットを提供する。ある実施態様では、この製剤パックまたはキットは、併用治療として使用される、承認されたさらに別の治療剤を含む。この容器(単複)と任意に関連して、製剤品の製造、使用、または販売を規制する政府当局によって処方される形式で書かれ、該当局による、ヒトへの投与のための製造、使用、または販売に対する承認を反映する注意書きが存在してもよい。
【0159】
本発明は、各種植物発現システムの内の任意のもの、もっとも好ましくは、ウィルスによる植物発現システム(すなわち、ウィルス成分を含むシステム)を用いて幼若植物(例えば、発芽実生)から得られる製剤タンパク質の精製、および、能う限りの生産の大規模化を含む。遺伝病および免疫病のための診断キットにおける各タンパク質を含むキットが提供される。好ましい一実施態様では、本発明は、患者の血清における、生物タンパク質に対する抗体の有無を試験するための、生物タンパク質の試験サンプル、および試薬を有するキットを提供する。例えば、キットは、IA−2およびGAD、および試薬を提供する。これは、患者の血清において、1型糖尿病の存在または進行を表す明瞭な表示である、これらのタンパク質に対する過剰量の抗体が存在するかどうかを試験する。
【0160】
本発明は、キットの形式で診断試薬を提供するように拡張することも可能である。非限定的なほんの一例として挙げるのであるが、糖尿病における自己免疫反応と関連するタンパク質、インスリン、GAD、およびIA−2は、これらのタンパク質に対する経口的耐性を誘発するために経口処方として提供し、投与することが可能である。それとは別に、一つ以上の治療タンパク質を、投与のために、注入可能な処方またはワクチンとして提供することも可能である。好ましい実施態様によれば、製剤用量、またはその案内が、病気と診断された個人に、例えば、糖尿病者、または、病気、例えば、1型糖尿病を発症するリスクを負う個人に対して投与されるキットとして提供される。
【0161】
等価物
下記の代表的実施例は、本発明の具体的説明を助けることを意図するもので、本発明の範囲を限定することを意図するものではなく、また限定するものと考えてもならない。実際、本発明の各種修飾、および、本明細書に図示し、記載したものの外にも、たくさんの、さらに別の実施態様が、下記の実施例、および、本明細書に引用される科学文献および特許文献を含む、本文書の全体内容から当業者には明白であろう。さらに、これらの引用文献の内容は、従来技術の状態の明示を助けるために、引用により本明細書に含められることを理解しなければならない。下記の実施例は、各種実施態様およびその等価物における本発明の実施に適応させることが可能な、重要な追加情報、例示、および案内を含む。
【実施例】
【0162】
実施例1:アグロバクテリウム形質転換によって調製されるトランスジェニック新芽における製剤タンパク質またはポリペプチドの生産
植物の種子を、アグロバクテリウムによって形質転換し、収穫し、乾燥し、洗浄し、かつ、生存性、および、所望の遺伝的物質の有無について試験する。種子ストックを、使用時まで適切な条件下に保存する。使用時、適切量の種子を、ある量の表面滅菌剤(例えば、CLOROX)を含む水に、20分から4時間浸す。種子を、増殖の維持と排水の設備を含む、平坦なトレイの上に広げる。種子を含むトレイは、閉鎖された調節可能環境において、温度、照明、アクセス、空気循環、給水、および排水調節下に、棚の上に置かれる。トレイは、種子を湿らせておくために、自動タイマー装備噴霧機により、30分から4時間間隔で、1から30分水を噴霧される。過剰な水分は、トレイの孔から、部屋の床の排水管の中に排水される。
【0163】
種子は、調節条件下に発芽、発達させられる。種子は、約2から14日間インキュベートされ、次いで収穫、処理される。このインキュベーション過程のある時点、収穫の4時間から7日前、種子は、導入または内因性DNAプロモーター配列の誘発を引き起こす環境条件に暴露される。これによって、この発芽実生の組織における、一つ以上の所望のタンパク質の合成の増大がもたらされる。約30℃から約37℃へのインキュベーション温度の一過性上昇によって、熱ショックプロモーターの誘発が引き起こされる。
【0164】
2から14日間実生をインキュベーションした後、個々のトレイをコンベヤーベルトに載せて処理施設に移動させることによって、実生を収穫する。収穫された実生は、プロテアーゼ阻害剤を含むリン酸バッファー液において抽出することによって処理する。実生は、バッファー液に縣濁中に、活発に混和、または粉砕することによって破壊し、抽出バイオマスを、遠心によって取り出す。
【0165】
実施例2:植物ウィルスによって一過性に感染させた発芽実生における製剤タンパク質またはポリペプチドの生産
所望の植物の種子は、育種販売業者との契約を通じて野生型種子として入手する。種子ストックは、使用時まで、温度、湿度、衛生状態、および安全性の適切な条件下に保存される。使用時、適切量の種子が、水に浸され、前述のように、調節条件下にトレイの上でインキュベートされる。
【0166】
2から14日間のインキュベーション後、発芽実生に対し、トランスジーンを抱えるウィルスを含む溶液が撒水され、その後、または同時に、植物葉組織の機械的挫傷をもたらす物質で処理する。この例では、葉は、磨耗性粒子を含む噴気流によって挫傷させる。ウィルスは、適切な期間;約1日から約10日、植物全体を感染させ、所望の異種タンパク質の発現を監視する。
【0167】
実生を1から10日間感染させた後、上の実施例1に記載するように、実生を収穫する。
【0168】
実施例3:NICOTIANA BENTHAMIANA植物における、ウィルスベクター(AvA4)からの糖尿病関連タンパク質およびヒトの成長ホルモンの発現
早期発症1型、または若年性糖尿病は、児童、少年、および青年を冒す病気である。すい臓内分泌システムのベータ島細胞は、高血糖の代謝シグナルに反応してインスリンを生産する。この病気の基礎的原因は、体自身の免疫系による、ベータ島細胞に対する攻撃と破壊である。
【0169】
1型糖尿病を持つ個人は、正常状態では全ての個人に見られる、少なくとも三つのタンパク質、すなわち、インスリン、グルタミン酸デカルボキシラーゼ(GAD)、およびチロシンフォスファターゼ様タンパク質IA−2に対する抗体を生産する(LESLIE ET AL., DIABETOLOGIA (1999) 42:30−14)。IA−2およびGADタンパク質に対する自己抗体は、1型糖尿病患者の、この病気の発症前、50から75%に認められる。さらに、この外見上正常なタンパク質に対する自己抗体の出現は、1型糖尿病に関連する古典的症状の発現よりも7から8年先立って起こる。
【0170】
インスリン、GAD、およびIA−2などの自己抗原は、過敏な個人において、これらのタンパク質に対し少なくともある程度の耐性を経口的に誘発し、糖尿病の発症をもたらす、島細胞に対する傷害を予防するか、または抑える点で有用である。非肥満型糖尿病マウス(NOD)は、自己免疫型の糖尿病を自発的に発症する(ZAHANG, ET AL., PROC. NATL. ACAD. SCI. USA (1991) 88:10252−10256)。ヒトのインスリンをコードする遺伝子を、コレラトキシンBサブユニット遺伝子と融合し、得られた構築体を、トランスジェニックじゃがいも植物において発現させた。これらの植物をNODマウスに給餌したところ、この動物において、すい臓の島の炎症に明確な減少と、糖尿病の進行に遅延が見られた(ARAKAWA ET AL., BIOTECHNOL. (1998) 16:934−936)。さらに、GADタンパク質が、じゃがいも植物に発現された。これらのトランスジェニックじゃがいもをNODマウスに給餌したところ、これも、40週後、糖尿病を予防するか、またはその開始を有意に遅らせた(MA ET AL., NATURE MEDICINE (1997) 3:793−796)。
【0171】
本実施例では、植物におけるGADおよびIA−2の発現および回収のための、ある、非限定的条件が記載される。GADおよびIA−2タンパク質は、HIS−タグ法によって精製される。原料およびタンパク質の生産は二段階で行われる:1)動物における一次実験のための小規模生産;および、2)臨床治験のための中等規模(グラム量)生産である。
【0172】
安定性および移動度の試験 ウィルスの安定性および移動度試験を実行するために、少量の各構築体を合成する。各構築体は、ウィルスゲノムRNAの正確な5′末端に融合された、T7またはSP6 RNAポリメラーゼプロモーター、および、3′末端に、インビトロ転写前にプラスミドを直線化するために使用される、一意の制限部位を含む。次に、T7またはSP6 RNAポリメラーゼは、ランオフ転写産物を生成し、これを用いて植物に接種する。植物は、二子葉段階で、カーボランダム粉末(320−グリット;FISHER, PITTSBURGH, PA)などの研磨剤の存在下に、接種体を葉の表面に擦りつけることによって機械的に接種される。1構築体当たり5から10個の植物に接種し、1接種当たり、各RNA転写物1−2 *Gを用いる。植物は、症状の重度、植物全体に亘るウィルスの広がり、および産物の回収について監視する。感染の10〜15日後(DPI)、感染葉サンプルから、葉サンプルを収穫し、完全長の組み換えIA−2およびGADの存在について評価する。収穫材料(10枚の葉)の一部を−80℃で凍結し、選択される構築体の、将来の生産規模拡大のための種子接種体として保持する。残余の組織はただちに処理する。
【0173】
感染の15〜20日後(dpi)、組み換えIA−2およびGADを回収する。この過程は、最適量の高純度産物(90〜95%純度)を回収できるように最適化する。期待されるサイズの産物が回収され、血清学的同一性(ウェスタンブロットおよびELISAを用いて特異的抗体で認識する)が決定されたならば、これらの構築体の安定性を、健康な植物において3回継代させて試験する。用いたサイズ範囲のタンパク質を有する組み換えタンパク質の集合、回収、または安定に関する問題点は、感染条件を変えるか、または、別の宿主植物を用いることによって、ヌクレオチド配列またはアミノ酸配列のレベルで対処する。
【0174】
中等規模生産のための種子ロットおよび手順の確立 段階1が完了したならば、組み換え構築体の、インビトロ合成転写物の少量(100ul)を準備し、10個の植物に接種するのに使用する。接種から10〜12日以内に、葉を収穫し、ウェスタンブロットによってGADまたはIA−2の有無について試験し、種子材料として−70℃で保存する。この材料(3−4)の一部を用いて、150〜200個の植物(1〜2KGの新鮮組織)に接種する。接種の15から20日後、組み換えタンパク質を回収し、機能的実験のために用いる。バッチ当たり平均60 MGの産物が期待される。
【0175】
植物への接種および産物回収 GADおよびIA−2を含む組み換えウィルスのインビトロ転写物を、T7 RNAポリメラーゼ、および生成プラスミドDNAを用いて合成する。転写物に、RNAキャップ構造類縁体 m7G(5)ppp (5)Gを用いてキャップする。接種のために、インビトロ転写産物の混合物を、標的宿主植物の葉に、その葉の表面をカーボランダムによって擦った後に塗布し、葉の表面を優しく撫でて接種体を広げ、さらに表面を擦る。植物生産によるIA−1およびGADの純度および活性を試験する。これらの植物生産抗原の抗体結合能を、これらのタンパク質の精製中、および精製後においてELISAによって試験する。
【0176】
NICOTIANA BENTHAMIANAにおけるタンパク質発現:ウィルス感染植物において完全長タンパク質を発現させるために、我々は、N. BENTHAMIANA植物において、クラゲ由来の緑色蛍光タンパク質(GFP)を発現させる機能的相補法を用いた(図4)。植物間継代の際、感染組織における、アルファルファモザイクウィルス(Av)/GFPの量は次第に減少し、第3継代後、Av/A4しか検出可能ではなかった(これは、環境の安全性の観点から利点である)。この方法を用い、我々は、1 Gの新鮮組織当たり平均100 μGのGFPを発現させることができた。このシステムの重要な成分である、アルファルファモザイクウィルスCPは、感染宿主において、無関係なウィルスのゲノムRNAをカプシド封入してこれを感染性粒子に変える能力を持つという点で独特である。アルファルファモザイクウィルスCPの、この独特の能力は、選ばれた収穫品種を特異的に標的するハイブリッドベクターを加工するために利用される。
【0177】
Av/A4およびAv/A4GFPを接種されたNICOTIANA BENTHAMIANA植物における組み換えGFPの発現を、ウェスタンブロットによって分析した(図3を参照)。本明細書に記載されるように全体的に感染された葉から得られたタンパク質抽出物を、12% SDS−ポリアクリルアミドゲルにおいて電気泳動によって分離し、ニトロセルロース膜に転送し、タンパク質特異的抗体と反応させた。アルファルファモザイクウィルスCP特異的抗体は、Av/A4、または、Av/A4およびAv/A4GFPの混合物を接種された植物において、予想されるサイズのタンパク質(24.0 KD)を認識した。GFP特異的抗体は、Av/A4およびAv/A4GFPの混合物を接種した植物から得られた抽出物においてのみタンパク質を認識した。GFP特異的抗体は、Av/A4のみを接種した植物においてはいかなるタンパク質とも反応しなかった。アルファルファモザイクウィルスCP特異的抗体も、GFP特異的抗体も、AV/GFPのみを接種した植物から得られた抽出物においてはいかなるタンパク質とも反応しなかった。これは、全体移動の欠如を示唆する。
【0178】
我々はさらに、このAV/A4ベクターシステムを用いて、ヒトの成長ホルモンを加工し、発現させた。NICOTINIANA BENTHAMIANA植物にインビトロ転写物を接種し、該植物を、HGHの生産について監視した。このタンパク質に対する特異的シグナルは、5dpi(接種後日数)ではまったく検出されなかった。ただし、11dpiで、我々は、未接種植物においてHGHのシグナルを検出することができた。図4は、125C/HGHのインビトロ転写物を感染させたN. BENTHAMIANAにおいて生産されるHGHのウェスタンブロットである。サンプルは、接種後24時間において分析した。1 μGの精製HGHを標準として負荷した。MWMは分子量マーカーである。図4の矢印は、ブロットにおいて、hGH特異的抗体によって検出されるhGHバンドを指し示す。
【0179】
実施例4:トランスジェニックBRASSICA JUNCEA植物における炭疽菌関連タンパク質およびヒト成長ホルモンの発現
炭疽菌の猛毒は、少なくとも二つの主要毒性因子による。これらの因子は、該細菌を宿主において守るのに役立つポリグルタミン酸カプセル、および、3部分循環トキシンである。炭疽菌トキシンは、pXO1と名づけられる184 KBプラスミドによってコードされ、保護抗原(PA)と名づけられる受容体結合タンパク質、および、浮腫因子および致死因子と名づけられる、二つの酵素的活性タンパク質から成る(BHATNAGAR AND BATRA, CRIT. REV. MICROBIOL. (2001) 27(3):167−200)。
【0180】
本実施例では、二つの不活性化炭疽菌トキシン成分、保護抗原(PA)および致死因子(LF)が、1 GM乾燥重量当たり、少なくとも0.1 MGの濃度でBRASSICA JUNCEAの葉の中に生産される。我々は、植物のこれらの遺伝子のコドン使用を最適化し、両トキシン分子の毒性を最小とするようにそのアミノ酸配列を変えた。我々は、BRASSICA JUNCEAにおける調節的遺伝子発現の可能なベクターの中にこの合成DNAを挿入することを目指す。PA遺伝子は、位置314および315においてフェニルアラニン残基を欠失するように変更された。LF遺伝子は、位置686または位置690においてアラニンをヒスチジンに置換した(例えば、SINGH ET AL., J. BIOL. CHEM. (1994) 269:29039−29046; KLIMPER ET AL., MOL. MICROBIOL. (1994) 13:1093−1097を参照されたい)。
【0181】
形質転換ベクター:植物形質転換には、バイナリーベクターPGREENII0229 (HELLENS ET AL., PLANT MOLECULAR BIOLOGY (APR 2000) 42(6):819−832) が用いられる(図5参照)。このプラスミドは下記の成分を含む:1)PGREENIIプラスミドバックボーンは、ESCHERICHIA COLIおよびAGROBACTERIUM TUMEfACIENSにおける複製に必要な配列を含む。2)AGROBACTERIUM TUMEfACIENS T−DNAの左側および右側境界(LBおよびRB)配列は、LBとRBの間の全ての配列が、植物ゲノムに組み込まれるのに必要である。3)カナマイシン耐性をコードするNPT遺伝子は、ESCHELICHIA COLIおよびAGROBACTERIUM TUMEfACIENSの形質転換体選別用である。4)除草剤BIALAPHOSに対する耐性をコードするNOS−BAR遺伝子(BIALAPHOSに対する耐性は、形質転換植物を選別するのに使用される)。このNOS−BARは、植物において構成的活性を有する、カリフラワーモザイクウィルス(CAMV) 35Sプロモーターから転写され、かつ、該遺伝子の転写は、CAMVターミネーターによって終結される。5)VIR遺伝子PAおよびLFの発現は、図5に示すようにCAMV 35Sプロモーターか、または、ARABIDOPSIS THALIANAの低分子量熱ショックタンパク質(MATSUHARA ET AL., THE PLANT JOURNAL: fOR CELL & MOLECULAR BIOLOG (APR 2000) 22(1):79−86)のHSP 18.2プロモーター(GENBANKアクセス番号X17295、位置AT5G59720)のいずれかによって駆動される。転写終結は、ノパリンシンターゼ遺伝子(NOS)のターミネーターによって仲介される。35SおよびHSP 18.2プロモーターは、その異なる活性のために選ばれた。35Sプロモーターは、大抵の植物組織において構成的に活性を持つ。多くの場合、35Sプロモーターは、対象タンパク質の高レベル発現を駆動する。一方、HSP 18.2プロモーターは、植物が熱ショックによって喚起されない限り、ほとんど不活性である。あるタンパク質の高レベル発現は、誘発可能プロモーターシステムの使用によってのみ実現が可能である。
【0182】
ベクターの構築および植物の形質転換 ベクターは、ESCHERICHIA COLIの実験室株DH5を用いて構築する。構築体は、制限エンドヌクレアーゼマッピングおよび配列決定によって分析する。構築体の確認後、ベクターを、AGROBACTERIUM TUMEfACIENSのGV3101株を形質転換するのに用いる。この株は、生得のTiプラスミドを欠き、バイナリーベクターのTDNAを植物に転移するのに好適である。形質転換ベクターを担うGV3101を、任意の利用可能な形質転換法を用いて花の中に導入することによって、BRASSICA JUNCEAを形質転換する。
【0183】
PAおよびLF遺伝子に導入する修飾 植物における発現のために、PAおよびLF両方のヌクレオチド配列を修飾する。天然のPAのコード配列は2295 bpで、天然のLFの配列は2430 bpである。これらの配列は下記のように修飾される:1)PAおよびLFをトキシンとして不活性とする突然変異を導入する。PHE314およびPHE315を、PAから欠失し、His690をALAに変異させる。2)コドン使用は、BRASSICA JUNCEAにおける発現のために最適化される。BRASSICA JUNCEAのコドン使用およびGC/AT比は中性であるので、PAおよびLFに導入される変化は大きくはない。PAでは4個のコドン、LFでは7個のコドンが変えられる。3)植物発現ベクターへのクローニングのために、遺伝子の5′および3′末端に一意の制限部位が加えられる。[4]翻訳開始のための共通配列が加えられる(JOSHI ET AL., PLANT MOLECULAR BIOLOGY. (DEC 1997)35(6):993−1001)。制限部位および最適化された翻訳開始部位を図5に示す。5′末端は、加えられたXBAI制限部位、および、植物遺伝子のための共通翻訳開始部位で、開始コドン、続けてALAコドンを含む部位を示す。3′末端は、加えられたSACI制限部位を示す。この修飾されたPAおよびLF遺伝子は、ENTELECHON, INC. (ROSENBURG, GERMANY)によって化学的に合成される。
【0184】
第2構築体もPAおよびLFのために生産される。この第2構築体の意図は、小胞体のPAおよびLFタンパク質を標的し、保持することによって該タンパク質の蓄積を最適化することである40。ERにおける標的および保持は、組み換えタンパク質の高レベル蓄積をもたらす可能性がある(HASELOFF, ET AL., PROCEEDINGS Of THE NATIONAL ACADEMY Of SCIENCES USA (MAR 18, 1997) 94(6):2122−2127)。このことを実現するために、アミノ末端シグナル配列、および、カルボキシ末端ER保持配列を加える。このシグナル配列は、ARABIDOPSIS THALIANAキチナーゼ遺伝子から得られた22コドンを含む(HASELOFF, ET AL.,上記)。ER保持配列は、テトラペプチドHISASPGLULEUである(GOMORD ET AL, THE PLANT JOURNAL: fOR CELL & MOLECULAR BIOLOGY. (FEB 1997) 11(2):313−325)。シグナル配列は、ENTELECHONによって製造された合成遺伝子を鋳型として用いるPCRスイッチングによって付加する(TOMME ET AL., J BACTERIOL. (1995) 177:4356−4363)。ER保持配列は、あらかじめHISASPGLULEUコード配列を組み込んだ3′プライマーを用いてPAおよびLF遺伝子をPCR増幅することによって付加する。修飾されたPAおよびLF配列は、35SおよびHSP18.2発現ベクターにクローンする。合計8個の異なる構築体が試験される。
【0185】
トランスジーンを発現する植物の選別および分析 前記形質転換構築体を担うAGROBACTERIUM TUMEfACIENS GV3101株によるBRASSICA JUNCEAの形質転換後、植物を、その正常な発達プログラムにしたがって発達させる。25日以内に、成熟種子が生産され、収穫される。この種子を、鉢の土壌に撒き、実生植物を15日間育成する。次に、各植物の葉に、BIALOPHOS (FINALE, FARNAM, INC., PHOENIX, AZ)の0.0058%(w/v)溶液を撒布する。敏感な、非トランスジェニック植物は、通常、5から7日以内に斃死する。BIALOPHOS−耐性植物は、その緑色で、健康的な外観から明白である。この予想されるトランスジェニック植物を、一連のプロトコールを用いて確認、分析する。構築体に対して特異的なオリゴヌクレオチドプライマーを用いるポリメラーゼ連鎖反応を用いて、予想されるトランスジェニック植物におけるTDNAの存在を確認する。次に、特異的DNAプローブ、PAまたはLF修飾遺伝子を用いてゲノムDNAをブロットすることによってTDNAの存在を調べる。最後に、対象タンパク質の発現を、SDS−PAGE、次いで、クーマシーブルーによる染色、または免疫ブロッティングによって調べる。タンパク質発現分析用のプロトコールは、トランスジェニック植物を生産するのに用いられる構築体によって異なる。35Sプロモーター構築体を担う植物は、このプロモーターによる発現が構成的であるため、直接分析される。HSP 18.2プロモーターを担う植物は、分析前に熱ショックを与えられる。組み換えタンパク質発現の動態は、異なるトランスジェニック動物では異なると考えられる。最終的に、誘発条件は、標準法を用い各トランスジェニック植物に対し最適化される。しかしながら、最初の分析では、BRASSICA JUNCEAにおける他の組み換えタンパク質の発現のために確立された、標準的熱ショックプロトコールを実行することも可能である。
【0186】
図6は、HSP 18.2プロモーターの調節下に、ヒトの成長ホルモン(hGH)を発現するトランスジェニックBRASSICA JUNCEAの免疫ブロットを示す。トランスジェニックBRASSCIA JUNCEAは、鉢の混合物において育成した。図6に示すように、新鮮重量が1から3グラムの葉を、植物から分離し、水で湿らせたろ紙を含むペトリ皿に置いた。このペトリ皿を被い、多湿の、37℃インキュベータ中に1.5時間置く、次に、この葉を含むペトリ皿をインキュベータから移動し、24℃の育成チェンバーにおいて、100 μMOLフォトンMー2Sー1の強度の蛍光灯の下に5時間置いた。次に、植物材料を収穫し、hGHに対するモノクロナール抗体(SIGMA CHEMICAL CO., PRODUCT #Gー8523)使用の免疫ブロッティングによって分析した。低い方のバンドが、16 KDA組み換えhGHである。このバンドは、熱ショック前には観察されない。レーン8は、ベクターのみによって形質転換されたトランスジェニック植物の結果を示す。より高い分子量のバンドは、免疫複合体を検出するために使用された西洋ワサビペルオキシダーゼ連結二次抗体による非特異的反応である。PAは、約88 KDa、LFは、93 KDaであると予想される。
【0187】
炭疽菌トキシンの発現に関する初回のスクリーニング後、さらに詳細な発現分析が行われた。発現レベルの定量のためにELISA法が使われる。植物の後続世代に対しさらに分析が行われる。後続世代においてトランスジェニック植物を選別する必要を回避するには、最終的に、TDNA構築体に関して非分離的なトランスジェニック系統を単離することが必要である。これは、一次的トランスジェニック植物を自家受粉させ、第二世代植物を成熟するまで育成し、第三世代を、BIALOPHOS耐性の分離について試験することによって達成される。非分離的な、第二世代個体が特定される。その後、非分離植物の子孫を大規模育成し、生産規模条件(例えば、1月当たり、バイオマスの乾燥重量1,600 KG)の分析のために使用する。生産規模に関し、育成および誘発条件が、実生として育成される植物用に最適化される。この点ではさらに、挿入部位、およびエリート系統のTDNAコピー数を定めること、および、MRNA発現レベルにおける発現を定めることが望ましい。
【0188】
実施例5:ウィルス配列を含むアグロバクテリウム構築体に基づく、新芽におけるGUSリポーターの発現
GUSリポーター遺伝子を含むpBI121を、AGROBACTERIUM TUMEFACIENS LBA 4404に形質転換導入した。細菌培養体を、50 μG/MLのカナマイシン、20 μMのアセトシリンゴン、および、10 MMのMES PH5.6を含むYEB培養液において一晩育成した。一晩培養体を遠心し、MMA培養液(MS塩、10 MM MES PH5.6、200 μMのアセトシリンゴン、および2%スクロース)にOD600 2.0で再縣濁し、新芽の真空浸潤のために用いた。
【0189】
各種植物の種子を、搖動プラットフォームの上で室温で24時間浸水し、濡れたろ紙を備えたプラスチック容器に移し、12時間の昼光照明下21℃で4から6日間インキュベート(植物種に依存する)した。
【0190】
真空浸潤後、新芽を、12時間の昼光照明下21℃で、さらに48から60時間インキュベートし、X−GLUC組織化学基質を用いてインシトゥでGUS活性を検出した。染色は、37℃で一晩実行し、植物サンプルは、エタノールで脱色した。
【0191】
このシステムを、広く種々の新芽を用いて試験した。図8Aおよび8B、および図9を参照されたい。
【0192】
実施例6:ウィルス配列を含むアグロバクテリウム構築体による糖尿病関連タンパク質およびヒト成長ホルモンの発現
我々は、アグロバクテリウムベクターを用いTMV系ベクター:D4−hGHまたはD4−GFPを創出した。このために、我々は先ず、pBI121において多数のクローニング部位を創出しなければならなかった。PBI121−XBA1−BAMH1−SAL1−PAC1−BSIW1−STU1−XHO1−SPE1−KPN1−SAC1−pBI121である。適切なプライマーおよびPCRを用いて、我々は、これらの部位を有するPBI121を創出した。この配列を確認した後、我々は、このプラスミドに対するTMVゲノム配列の導入に進んだ。D4−hGHおよびD4−GFPのさらに詳細な議論については、さらに、2004年2月3日出願のU.S.S.N. 10/770,600、および2003年2月3日出願米国特許仮出願第60/444,615号、上記を引用により本明細書に含める、および、U.S.S.N. 10/832,603および米国特許仮出願第60/546,339号、上記を引用により本明細書に含める、を参照されたい。親ベクターD4、およびそれから由来するベクターが、SHIVPRASAD ET AL., VIROLOGY, 255(2):312−23, 1999に記載される。
【0193】
カリフラワーモザイクウィルスの35Sプロモーターを、TMV配列に融合させた。したがって、この35Sプロモーターが、TMV配列の転写を指令する。細胞への組み込みが成功すると、ウィルス転写物が生産される。本発明のある実施態様では、ウィルス複製、および植物全体への拡散に必要な成分も生産される。これらの成分としては、例えば、レプリカーゼ、移動タンパク質、およびコートタンパク質が挙げられる。これらは、種々の実施態様において、TMVから得られてもよいし、あるいは、別のウィルス、例えば、アルファルファモザイクウィルスから得られてもよい。これらの成分は、TMV配列、プラスミド配列内でコードされてもよいし、別のウィルスベクターまたはプラスミドにおいて供給されてもよいし、あるいは、植物が、それらの成分をコードするトランスジーンを含むトランスジェニック植物であってもよい。例えば、2004年2月3日出願のUSSN 10/770,600を参照されたい。なお、この文書を引用により本明細書に含める。
【0194】
TMV配列内の、サブゲノムTMVプロモーターは、hGH配列の転写を指令する。ハンマーヘッドリボザイムが、TMV配列の3′に導入された。このリボザイムは、本発明には必要とされない、NOSターミネーター(従来技術で周知)は、リボザイム配列の3′である。
【0195】
最終ベクターは、D4−hGH、またはD4−GFPを含んでいた。次に、pBI121におけるこれらの構築体を用いて、A. TUMEfACIENSを形質転換し、植物を、形質転換されたアグロバクテリウムで浸潤した。複製ウィルスが存在するので、我々は、この植物を2週間インキュベートした。リーフディスクを、hGH生産についてウェスタンブロットによって分析した。GFP発現は、植物を長波紫外線によって照明し、写真撮影することによって監視した。図10に示す結果は、浸潤された葉全体に亘るGFP発現を示す。図11に示す、hGH指向抗体によるウェスタンブロット分析は、構築体が植物において機能していること、および、hGHが高レベルで検出可能であることを確認した。
【0196】
同様に、IA−2icを、遺伝子工学的にpBID4プラスミドに導入し、pBID4−IA−2ICを生成した。さらに、GFPを担うAMVウィルス系ベクターを生成した。得られたプラスミドを用いて、アグロバクテリウムを形質転換し、水耕的に育成したNICOTIANA BENTHAMIANAを、形質転換したアグロバクテリウムで浸潤した。簡単に言うと、NICOTIANA BENTHAMIANAの種子を、水耕条件下に、栄養素としてあらかじめ1/2強度のHOAGLAND液で濡らしたROCKWOOLスラブ(18 X 18 X 1)の上に撒いた。この水耕栽培植物を、同じ溶液に4週間維持した。次に、4週齢植物を、pBID4−IA−2ic、または、GFPを担持するAMVウィルス系ベクターを担うアグロバクテリウムの縣濁液(OD600 0.1)に浸潤した。
【0197】
細菌培養体を育成し、一晩誘発し、次に細胞を、再びMMA培養液(MS塩、10 MM MES pH5.6、20 G/Lスクロース、200 μMアセトシリンゴン)に縣濁し、OD600 0.1となるまで育成した。再縣濁培養液を、穏やかに攪拌しながら室温で2〜3時間インキュベートし、水耕栽培NICOTIANA BENTHAMIANA植物をこの細菌縣濁液の中に入れ、室温で30〜60秒真空を印加した。細菌の組織に対する効率的進入を促進するために真空を素早く解除し、浸潤植物を、1/2強度のHOAGLAND栄養液に5〜7日間維持した。それとは別に、細菌縣濁液は、針の無い10 CM2シリンジを用いて完全に拡張された葉の表皮の下に強制的に進入させた。浸潤の3〜6日後、葉を収穫し、−80℃で保存するか、または、発現分析のために使用した。図12は、IA−2icを発現する植物のウェスタンブロット分析を示す。光の下でAMV系GFP構築体を浸潤させた植物の分析は、浸潤植物の葉全体に亘ってGFPの発現を示した。
【0198】
実施例7:豆品種における、ウィルス配列を含むアグロバクテリウム構築体に基づくタンパク質(緑色蛍光タンパク質:リケナーゼ)の発現
本実施例は、ウィルス発現ベクターを担うアグロバクテリウム構築体を有する、いくつかの豆品種のAGROINfILTRATIONを記載する。
【0199】
図13は、AIMV配列を担うアグロバクテリウム構築体のために利用される総合的戦略を示す。AIMVは、分節ゲノムを有するので(前述したように)、三つの異なる構築体が使用された:レプリカーゼ1および2をコードするAIMV配列を担うもの(PMOG−R1&R2);AIMV RNA3配列を担うもの(PBI−RNA3)(発現される対象遺伝子を任意に含む、この遺伝子は、通常、RNA3の天然のAIMVコートタンパク質配列を置換する);および、AIMVコートタンパク質をコードするAIMV配列を担うもの(PBI−CP)である。当業者であれば、AIMVコートタンパク質をコードする構築体を含めることは、厳密に言えば、不要であることを理解するであろう。しかしながら、このような構築体を含めることは有用である可能性がある。なぜなら、コートタンパク質は、複製、および/またはウィルス配列(したがって、その担う対象遺伝子)の全身的拡散を促進することが可能だからである。
【0200】
AIMVコートタンパク質の発現を確保したい場合でも、三つの構築体を利用することは必須ではない。例えば、一つの別法は、AIMVコートタンパク質に対して既にトランスジェニックである植物を利用することが考えられる。その場合、コートタンパク質を別に補給する必要がないからである。それとは別に、またはそれに加えてさらに、AIMVレプリカーゼタンパク質の一方、または両方に対してトランスジェニックな植物を利用することも可能と考えられる。このような植物(任意にさらに、AIMVコートタンパク質に対してもトランスジェニックである)では、RNA3および対象遺伝子配列だけを担う単一構築体を利用して、同様の結果を実現することが可能と考えられる。
【0201】
図13に示すように、この特定の実験では、三つの異なるタンパク質、緑色蛍光タンパク質(GFP)、リケナーゼ(Lich)、および、リケナーゼー炭疽菌保護抗原融合体(Li−PA)が利用された。
【0202】
図13で向き合う特定の実験では、各アグロバクテリウム株(すなわち、各株は、三つの構築体:PMOG−R1&R2;PBI−RNA3/対象タンパク質;pBI−CPの内のいずれか一つを担う)少なくとも1リットルを育成し、ペレットとし、MMAにO.D.が1.0となるまで再縣濁した。当業者であれば、異なる植物には、異なるO.D.が望ましいことが理解されよう。豆類の場合、比較的高いO.D.、例えば、1.5の範囲のO.D.が、技術的に実現可能であれば、望ましい。
【0203】
図13で向き合う特定の実験では、アグロバクテリウム株でレプリカーゼを担うもの(PMOG−R1&R2)、コートタンパク質を担うもの(pBI−CP)、および、RNA3/標的タンパク質を担うもの(PBI−RNA3/GFP, Lich, またはLi−PA)が、1:1:2の比で、合計容量1.5 Lとなるように混和される。当業者であれば、これらの比および容量は決定的なものではないこと、利用される特定の比は、ALMVの生活環が、通常、ゲノムの他の成分よりも高レベルのRNA3を含むことを反映するように選ばれることを理解するであろう。さらに、対象遺伝子(すなわち、GFP、リケナーゼ、またはリケナーゼ保護抗原遺伝子)を担うRNAの高レベルの生産に対する欲求がある。
【0204】
図13で向き合う特定の実験では、豆の新芽は、従来技術で周知のように、水耕的に、非土壌的支持体(この場合は、チーズクロス)によって育成された。新芽は、アグロバクテリウムの混和混合物に浸され、AGROINfILTRATIONを実現するため、真空を−28 psiで90秒印加した。ある場合には、真空を1回を超えて印加した。
【0205】
図13で向き合う特定の実験では、新芽は、AGROINfILTRATION後水道水で1回濯ぎ、次に、育成スペースに戻し、水を与えた。
【0206】
図14〜16は、図13に示す戦略にしたがって実行した各種実験の結果を表す。例えば、図14に示すように、リケナーゼ生産構築体を、SPECKLED PEA (SP)、YELLOW PEA (YP)、BILL JUMP PEA (BP)新芽に対しアグロバクテリウム浸潤させた。AGROINfILTRATION前、新芽は、2日間暗黒中(発芽を可能とするため)、8日間明光中(”2(8)”の表示によって示されるように)で育成した。前述のように、この10日の後でAGROINfILTRATIONを実施し、接種後、生産タンパク質の検出前に5日間(dpi)育成した。図14において見て取れるように、リケナーゼタンパク質は、三つの全ての品種によって生産されたが、YELLOW PEAは、SPECKLED PEAよりもいく分高い生産レベルを有し、BILL JUMP PEAは、いく分低い生産レベルを有していた。このような変動は、植物におけるタンパク質の発現に関し通常の知識・技術を有する当業者の経験範囲に十分入るものである。これらの結果に徴すれば、任意の特定のタンパク質の生産のために好ましい植物品種を選択するのに、通例の実験以上のものは必要とされないであろう。一般に、これらの豆新芽システムにおいて観察される発現レベルは、NICOTIANA BENTHAMIANAにおける関連タンパク質(例えば、Lich−PA)の発現時に観察されるもの(図示せず)の約1/3であった。これらの新芽は、それらが食用となるという点で、NICOTIANA BENTHAMIANAに勝る利点を有する。なぜなら、この植物の全ての成分は、少なくとも人類に対して無害であることが知られるので、生産される製薬学的活性タンパク質(単複)の単離は、仮に必要とされるとしても、簡単化されるに違いないからである。さらに、この豆新芽は、急速に生育し、かつ安価である。一方、種子の保存は、NICOTIANA BENTHAMIANAに比べて簡単である。なぜなら、その種子は、新芽一般のものよりも、特に豆類よりもはるかに小さいからである。
【0207】
図14を参照すると見て取れるように、これらの特定の実験では、前述のAIMV生産システムの方が、類似のTMVシステム(本明細書に記載する)よりも、対象タンパク質の生産ではより好成績を挙げた。当業者であれば、TMVシステムの方が、ある特定の植物品種におけるある特定のタンパク質の生産ではより好ましく、一方、AIMVの方が、上記を含めた別の状況ではより好ましいことを理解するであろう。
【0208】
図15は、AGROINfILTRATIONの前様々な期間育成したSPECKLED PEA、およびYELLOW PEAにおけるGFPの好成績生産を示す。図15に示す特定の実験では、真空を、それぞれ90秒間3回印加した。さらに、利用した、特定の再縣濁媒体は、「完全MMA」であった。当業者であれば、別法として、最小MMA、ABなどを含む、他の種々の浸潤媒体の内のいずれのものも使用が可能であり、AGROINfILTRATION、およびしたがって、タンパク質またはポリペプチド生産の最終効率を増すか、または減らす可能性のあることを理解するであろう。
【0209】
図16は、湿潤後の様々な期間における、SPECKLED PEAの葉(L)、新芽全体(W)、根(R)、または、胚軸(H)におけるリケナーゼの発現を示す。見て取れるように、もっとも大きな発現は葉に起こる。さらに、この特定のシステムでは、発現は、浸潤のほぼ5〜7日後が最高である。利用される植物の日齢および品種の外、発現されるタンパク質(単複)に応じて若干の変動が予想される。
【0210】
他の類似の実験は、例えば、5/3′UTR構造を欠くpBI−CP構築体が、恐らくコートタンパク質(CP)の生産を増すことによって、対象タンパク質の生産を増すことを明らかにした。さらに、このシステムでは、9〜12日齢の植物が発現に最適であった。一般に、若い組織の方が、より高レベルのタンパク質を発現するが、より多くのバイオマスを有するのはより高齢の組織である。
【0211】
同様の、別の実験から、12/12明光/暗黒サイクルではなく、24時間明光に植物を暴露すると、対象タンパク質のレベルが実質的に低下するという結果が得られた。
【0212】
同様の、さらに別の実験から、AGROINfILTRATION時に豆新芽を弱い界面活性剤に暴露すると、恐らくAGROINfILTRATIONの効率および/または程度を上げることによって、対象タンパク質の生産レベルを増す可能性のあることが示された。
【0213】
実施例8:植物における、タンパク質またはポリペプチド大規模生産のためのモジュールシステム
本実施例は、ロット生産時間を、ある場合は、5週間にまで短縮する、バイオ製剤の製造を革命化する、技術土台を記載する。本実施例に記載される特定の生産システムは、対象タンパク質またはポリペプチドのコード配列を担う植物ウィルスRNAの、莫大数のコピーを、数分以内に幼若植物の中に輸送するためにアグロバクテリウムベクターを利用する。したがって、対象タンパク質またはポリペプチドの高レベルの一過性発現を、アグロバクテリウムベクターの植物への導入後1週間以内に、大量の植物バイオマスにおいて実現することが可能である。
【0214】
本実施例に記載する技術土台は、広範な、モノマーまたはマルチマータンパク質に、(中でも特に)ワクチン抗原、モノクロナール抗体、およびその他の治療剤を含むタンパク質に適用することが可能であり、かつ、様々の植物品種において実行することが可能である。植物における発現の方が、別のあるシステムよりも、適切なフォールド形成および可溶性を発揮する可能性が高く、動物病原体と無縁であるという利点を余分に持つ。この特定の実施例では、我々は、実生におけるワクチン抗原およびモノクロナール抗体の加工および生産に注目する。
【0215】
本実施例に記載されるように、対象タンパク質またはポリペプチドをコードする遺伝子は、アグロバクテリウムおよび植物RNAウィルス配列の要素を併せもつ発射ベクターにクローンされる。次に、アグロバクテリウムを用い、真空浸潤により発射ベクターの数百万コピーを植物に導入する。植物組織では、このベクター配列は、ウィルス複製を通じてさらに大量に増幅される。次に、標的タンパク質が、このウィルス転写物から、ベクター導入後1週間も経たない内に生産される。アグロバクテリウムベクターは植物細胞に組み込まれる必要の無いこと(ただし、組み込みが禁じられているわけでもない)が理解されよう。ベクターのアグロバクテリウム要素は、それからタンパク質が最終的に生産されるウィルスRNAの、速やかな全身的輸送(AGROINfILTRATIONを通じて)を単に促進するにすぎない。
【0216】
このシステムは、新鮮植物組織1 KG当たり、大量の標的タンパク質(例えば、百ミリグラム量)を生産するために使用することが可能である。さらに、すぐに入手が可能な、大量の種子(前述したように、トランスジェニックである必要はない)と同程度のきわめて大容量を実現することが可能である。
【0217】
本明細書に記載されるように、ある場合、標的タンパク質またはポリペプチドは、該タンパク質を安定化するため、および/または、下流処理をやり易くするために担体分子との融合体として生産される。このような担体は、抗原タンパク質の生産においては特に有用である。特定対象の担体としては、例えば、熱安定性タンパク質、例えば、2003年5月22日出願USSN 60/472,495、および2004年5月24日出願のPCT/US04/016452で、2005年3月24日にWO 05/026375として公刊された特許に記載されるものと同様のタンパク質が挙げられる。我々は、本実施例における、そのような一熱安定担体分子が、CLOSTRIDIUM THERMOCELLUM由来のβ−1,2−1,4−グカナーゼ(LicKM)であることを注記する。標的配列は、LicKMに対し、N末端、C末端、または内部的融合体として速やかに加工することが可能である。LicKMにおける外来遺伝子の存在は、この分子の熱安定性の損失を招くことはない。この特性は、標的タンパク質の、簡単で、コスト効率の高い回収を促進する。単純な加熱処理工程(例えば、65℃で最大10分)によって、宿主タンパク質の大部分が排除される。さらに、一つを超える標的タンパク質を、各LicKM分子に、しかも複数の挿入部位を使って同時に融合させることが可能である。
【0218】
具体的には、遺伝学的に修飾されていない植物から得た種子を、水耕条件下に発芽させ、真空浸潤前、閉鎖された屋内植物施設において、一定期間(例えば、通常、新芽に対しては最大約10日;NICOTIANA BENTHAMANIAでは時に2〜6週)維持する。この条件下では、1平方フィート当たりの植物バイオマスの収率は、土壌で育成した植物で実現されるものよりも、通常、4〜5倍高い。幼若植物(例えば、発芽実生)を用いることによって、我々は、1平方フィート当たり大量の緑色組織(例えば、約100〜1000KG)を有する、濃密な天蓋を生成することが可能である。ほんの二三の例を挙げると、我々は、通常、豆などの新芽において、平方フィート当たり約700 Gの緑色組織を有する天蓋を生成することが可能である。NICOTIANA BENTHAMANIAでは、通常、平方フィート当たり約200 Gの緑色組織を有する天蓋が生成される。当業者であれば、他の植物では、ほぼこの量の間になることを理解されるであろう。
【0219】
適合照明ユニットを取り付けた幼若植物(例えば、実生)の棚を互いに積み重ねることによって、きわめて高い容量を実現することが可能である(1000平方フィートの育成室は、2週間未満で、最大4メートルトンのバイオマスを供給する)。植物の空気性部分は全て、真空を印加し、素早く解除することによって、発射ベクターを宿すアグロバクテリウムによって浸潤される。これによって、アグロバクテリウムは、ほぼ完全に葉全体を含む、植物組織の天蓋全体の中に強制的に輸送される。次に、標的タンパク質は、数日の期間(例えば、約2から約14日、ある実施態様では、約2から10、3から7、4から6日など)で蓄積する。
【0220】
種子から収穫組織までの全過程は、通常、数週(例えば、6、5、4、3、または2週未満;多くの場合、新芽では約2週間)を要する。種子材料は非トランスジェニックであり、種子生成および保存は安価であり単純であるから、大規模化には、効果的にも、制限は無い。したがって、きわめて大量の組み換えタンパク質が、数週の内に生成される可能性がある。
【0221】
生産される標的タンパク質は、望むなら単離することが可能である。熱安定担体に融合させた標的の単離には、加熱工程が有用である可能性がある。他の精製法としては、各種分離および/またはクロマトグラフィー工程を挙げることが可能である。例えば、硫酸アンモニウム沈殿、pH依存性分離、サイズ排除クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、およびアフィニティークロマトグラフィーなどの工程を使用してもよい。
【0222】
本実施例において考慮の対象とされる全体プロセスは:1)遺伝子最適化および合成;2)発射ベクターに対するクローニング;3)植物材料とアグロバクテリア培養体の準備;4)新芽実生の真空浸潤;5)標的発現;6)組織の収穫;7)および標的回収を含む。高処理生産を可能とするために、我々は、このプロセスの多くを自動化する。具体的には、非トランスジェニック種子の播種およびアグロバクテリウム培養体の発酵から、ホモジナイゼーション、澄明化、およびホモジェナイズ植物材料の容量低下(図19参照)までの全工程が自動化される。我々は、1バッチで1.5メートルトンの植物バイオマスを生産する能力を持つモジュールを設計、建設する予定である。具体的には、我々は、図20に概念的に示される装置を建設する予定である。
【0223】
図20に示す装置設計は、全体モジュールが約5000平方フィートのスペース内に納まるように、タワー概念を使用する。中央の棚収容ユニットは、1.5メートルトンの植物バイオマスを育成するのに必要な、スペース、照明、および水補給を供給する。湿度、温度、および明度は、自動的に監視、調節される。図20に示す設計では、植物は、サイズが1′×2′のトレイで水耕的に育成される。したがって、約6000個のトレイが使用される。モジュールは、積み重ねが可能な、36個の、別々の保存ユニットによって構築される。各保存ユニットは、6×7×4個のトレイを保持する。設計の単位構成によって規模調節的生産が可能である。棚の各側に二つのロボットがあり、これが、トレイを、棚から取り出し、かつ、棚へ収める。水耕栽培に好適な材料の上で、自動播種が行われる。一旦植物が適切な成熟度に達したならば、コンベヤーが、それらを湿潤ユニットに輸送する。このユニットは、約8時間で1.5メートルトンの植物バイオマスを湿潤する能力を持つ真空チェンバーを有する。濯ぎユニットは、余分なAGROBACTERIA培養体を除去する。一旦植物が濯がれたならば、それらは、数日間標的蓄積のために中央棚収容ユニットへ戻される。その後、トレイは、収穫ユニットに運ばれ、そこで、植物は収穫され、ホモジェナイズされる。次に、このホモジェナイズ植物抽出物は、下流の処理ユニットに輸送される。
【0224】
実施例9:ウィルス配列を含むアグロバクテリウム構築体によるHPV抗原の発現
アグロバクテリウム湿潤法によって実現される、アグロバクテリウム介在一過性発現システムを利用することが可能である(TURPEN ET AL., 1993, J. VIROL. METHODS, 42:227)。N. BENTHAMIANAの健康な葉を、LICKM−E7またはLICKM−E7GGGを発現するように加工されたウィルスベクターを含む、A. RHIZOGENESによって浸潤した。
【0225】
A. RHIZOGENES A4株(ATCC 43057)、またはA. TUMEfACIENS (GV3103)を、構築体、pBI−D4−PRACS−LicKM−E7−KDEL, PBI−D4−PRACS−LICKM−E7VAC, pBI−D4−PRACS−LicKM−E7GGG−KDEL、およびpBI−D4−PRACS−LICKM−E7GGG−VACによって形質転換した。アグロバクテリウム培養体は、前述のように育成し、誘発した(KAPILA ET AL., 1997, PLANT SCI., 122:101)。2 MLのスターター培養体(新鮮コロニーから採取)を、28℃において、25 μG/MLのカナマイシン添加YEB (5 G/Lの牛肉抽出物、1 G/Lの酵母抽出物、5 G/Lのペプトン、5 G/Lのスクロース、2 MM MGSO4)にて一晩育成した。このスターター培養体を、25 μG/MLのカナマイシン、10MMの2〜4(−モルフォリノ)エタンスルフォン酸(MES) pH5.6、2 MMの新たなMGSO4、および20 μMのアセトシリンゴン添加YEB 500 MLに1:500希釈した。次に、この希釈培養体を28℃で一晩O.D.600が約1.7となるまで育成した。細胞を3,000 X Gで15分遠心し、MMA培養液(MS塩、10 MM MES pH5.6、20 G/L スクロース、200 μMアセトシリンゴン)にO.D.600が約2.4となるまで再縣濁し、室温で1時間維持し、アグロバクテリウムー浸潤のために用いた。N. BENTHAMIANAの葉に、針の無いディスポーザブルシリンジを用いてアグロバクテリウム縣濁液を注入した。浸潤された葉を、浸潤の6日後に収穫した。
【0226】
実施例10:ウィルス配列を含むアグロバクテリウム構築体による炭疽菌抗原の発現
アグロバクテリウム浸潤によって実現される、アグロバクテリウム介在一過性発現システムは、炭疽菌抗原(単複)を生産するために利用することが可能である。N. BENTHAMIANAの健康な葉を、LicKMまたはLicKM−PAD4を発現するように加工されたウィルスベクターを含む、A. RHIZOGENESによって浸潤した。使用したベクターは、pBI−D4、すなわち、アグロバクテリウムベクターpBI121にウィルス発現ベクターD4を導入した改訂版である(CHEN ET AL., 2003, MOL. BREED., 11:287)。35Sプロモーターを、ウィルス配列の5′末端に融合する。このベクター配列は、pBI121のBAMHIおよびSACIの間に配置される。ハンマーヘッドリボザイムが、このウィルス配列の3′に置かれる(TURPEN ET AL., 1993, J. VIROL. METHODS, 42:227)。これらの構築体は、タバコPR−1Aタンパク質のシグナルペプチドをコードする配列に対する、LicKM−PAD4またはLicKMをコードする配列の融合体、6X HISタグ、およびER−保持アンカー配列KDEL(配列番号10参照)を含む。
【0227】
A. RHIZOGENES A4株(ATCC 43057)を、構築体、PBI−D4−PRLicKM−PAD4K、およびpBI−D4−PRLicKMKによって形質転換した。アグロバクテリウム培養体は、前述のように育成し、誘発した(KAPILA ET AL., 1997, PLANT SCI., 122:101)。2 MLのスターター培養体(新鮮コロニーから採取)を、28℃において、25 μG/MLのカナマイシン添加YEB (5 G/Lの牛肉抽出物、1 G/Lの酵母抽出物、5 G/Lのペプトン、5 G/Lのスクロース、2 MM MGSO4)にて一晩育成した。このスターター培養体を、25 μG/MLのカナマイシン、10 MMの2〜4(−モルフォリノ)エタンスルフォン酸(MES) PH5.6、2 MMの新たなMGSO4、および20 μMのアセトシリンゴン添加YEB 500 MLに1:500希釈した。次に、この希釈培養体を28℃で一晩O.D.600が約1.7となるまで育成した。細胞を3,000 X Gで15分遠心し、MMA培養液(MS塩、10 MM MES PH5.6、20 G/L スクロース、200 μMアセトシリンゴン)にO.D.600が約2.4となるまで再縣濁し、室温で1時間維持し、アグロバクテリウムー浸潤のために用いた。N. BENTHAMIANAの葉に、針の無いディスポーザブルシリンジを用いてアグロバクテリウム縣濁液を注入した。浸潤された葉を、浸潤の6日後に収穫した。
【0228】
実施例11:ウィルス配列を含むアグロバクテリウム構築体によるインフルエンザ抗原の発現
アグロバクテリウム浸潤によって実現される、アグロバクテリウム介在一過性発現システムは、インフルエンザ抗原(単複)を生産するために利用することが可能である。(TURPEN ET AL., (1993) TRANSfECTION Of WHOLE PLANTS fROM WOUNDS INOCULATED WITH ARGOBACTERIUM TUMEfACIENS CONTAINING CDNA Of TOBACCO MOSAIC VIRUS (J. VIROL. METHODS, 42:227)。N. BENTHAMIANAの健康な葉を、LicKM−HAまたはLicKM−NAを発現するように加工されたウィルスベクターを含む、A. RHIZOGENESによって浸潤した。
【0229】
A. RHIZOGENES A4株(ATCC 43057)を、構築体、pBI−D4−PRACS−LicKM−HA−KDEL, pBI−D4−PRACS−LicKM−HA−VAC, pBI−D4−PRACS−LicKM−NA−KDEL、およびpBI−D4−PRACS−LICKM−NA−VACによって形質転換した。アグロバクテリウム培養体は、 KAPILA ET AL. (KAPILA J., DE RYCKE R., VAN MONTAGU M. AND ANGENON G. (1997) AN アグロバクテリウム−MEDIATED TRANSIENT GENE EXPRESSION SYSTEM fOR INTACT LEAVES. PLANT SCI. 122:101)に記載されるように育成し、誘発した。2 MLのスターター培養体(新鮮コロニーから採取)を、28℃において、25 μG/MLのカナマイシン添加YEB (5 G/Lの牛肉抽出物、1 G/Lの酵母抽出物、5 G/Lのペプトン、5 G/Lのスクロース、2 MM MGSO4)にて一晩育成した。このスターター培養体を、25 μG/MLのカナマイシン、10 MMの2〜4(−モルフォリノ)エタンスルフォン酸(MES) pH5.6、2 MMの新たなMGSO4、および20 μMのアセトシリンゴン添加YEB 500 MLに1:500希釈した。次に、この希釈培養体を28℃で一晩O.D.600が約1.7となるまで育成した。細胞を3,000 X Gで15分遠心し、MMA培養液(MS塩、10 MM MES pH5.6、20 G/L スクロース、200 μMアセトシリンゴン)にO.D.600 2.4となるまで再縣濁し、室温で1〜3時間維持し、アグロバクテリウム浸潤のために用いた。N. BENTHAMIANAの葉に、針の無いディスポーザブルシリンジを用いてアグロバクテリウム縣濁液を注入した。浸潤された葉を、浸潤の6日後に収穫した。植物は、リケナーゼ活性アッセイの評価および免疫ブロット分析によって、標的抗原の発現の有無に関してスクリーニングすることが可能である。
【0230】
ザイモグラム分析によって、試験されたNICOTIANA BENTAMIANAトランスジェニック根においてHAおよびNA両キメラタンパク質の発現が明らかにされた。この発現は、リケナーゼ活性と関連する。この融合タンパク質に関連する活性バンドは、リケナーゼコントロールよりも高い分子量を示し、アグロバクテリウム感染後の植物によって発現される産物の分子量と同じであった。これは、全体融合産物の存在を確認する。
【0231】
実施例12:ウィルス配列を含むアグロバクテリウム構築体によるインフルエンザ抗体の発現
その他の実施態様
当業者であれば、前記は、本発明の、いくつかの好ましい実施態様を表すものであり、本発明の精神、および、頭書の特許請求の範囲によって定められる、本発明の範囲を限定するものと考えてはならないことを理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0232】
【図1】図1は、植物ウィルス組み込みベクターを用いて外来遺伝子を発現するための、いくつかの異なる戦略を示す模式図である。
【図2】図2は、AIMVおよびTMVゲノムの模式図である。
【図3】図3は、Av/A4およびAv/GFPを接種されたNICOTINIA BENTHAMIANAにおける組み換えGFP発現のウェスタンブロット図である。
【図4】図4は、GHのインビトロ転写物に感染した、N. BENTHAMIANA植物における、ヒトの成長ホルモン(hGH)生産のウェスタンブロット図である。
【図5】図5は、BRASSICA JUNCEAにおける組み換えタンパク質発現のための形質転換ベクターの模式図である。
【図6】図6は、HSP 18.2プロモーターの調節下に、ヒトの成長ホルモンを発現するトランスジェニックBRASSICA JUNCEAの免疫ブロット図を示す。
【図7】図7は、標的遺伝子を含む各種アグロバクテリウム構築体の模式図を示す。図7A:ベクターpBIVで、標的遺伝子は、植物プロモーター(IV=任意の植物プロモーター、人工プロモーター、または、植物細胞中で機能する他のプロモーター、例えば、カリフラワーモザイクウィルスなどの植物ウィルスのプロモーター)、および、NOSターミネーターの間に組み込まれる。図7B:ベクターpBIV−GUSで、GUS遺伝子は、PBIVの中に挿入される。図7C:pBIV−ウィルスベクター+標的で、標的遺伝子を担うウィルスベクターまたはレプリコン(例えば、ウィルスゲノムまたはゲノム部分)が、PBIVに挿入される。図7D:ベクターpBIV−ウィルスベクター+GFPで、GFP、およびウィルスベクターまたはレプリコンによって担われる標的遺伝子は、PBIVに挿入される。図7Cおよび7Dに描かれるベクターは、「発射」ベクターと考えられる。なぜなら、植物細胞に導入された後、これらは、ウィルス配列の生産を「打ち上げる」からである(ウィルス配列は、少なくとも、それらが発射される特定の植物細胞の背景において自己複製的であってもよい)。
【図8】図8は、新芽の、pBIV−GUSによるAGROINfILTRATION後のGUS染色を示す。図8Aは、緑豆新芽の染色を示し、図8Bは、フェヌグリーク新芽の染色を示す。
【図9A】図9は、BRASSICA新芽の、pBIV−GUSによるAGROINfILTRATION後のGUS染色を示す。図9Aは染色結果を示す。図9Bは、対象タンパク質またはポリペプチドをコードする遺伝子を担うウィルス配列の発現を指令するプロモーターを含むアグロバクテリウム構築体を介して輸送されるタンパク質またはポリペプチドを発現する能力について試験される、様々のタイプの新芽を列挙する表である。
【図9B】図9は、BRASSICA新芽の、pBIV−GUSによるAGROINfILTRATION後のGUS染色を示す。図9Aは染色結果を示す。図9Bは、対象タンパク質またはポリペプチドをコードする遺伝子を担うウィルス配列の発現を指令するプロモーターを含むアグロバクテリウム構築体を介して輸送されるタンパク質またはポリペプチドを発現する能力について試験される、様々のタイプの新芽を列挙する表である。
【図10】図10は、pBI121/D4−GFPC3による浸潤後の時間経過で見たN. BENTHAMIANAにおけるGFP発現を示す。
【図11】図11は、hGHをコードする配列を含むウィルスベクターを含むアグロバクテリウムによる浸潤の結果生じた、植物におけるhGH発現に関するウェスタンブロット分析を示す。レーン:レーン1:ラダー;レーン2:50 NG hGH;レーン3:pBI121/D4ーhGH 6DPI、1:2希釈によって浸潤された植物サンプル;レーン4:pBI121/D4−hGH 6DPI、1:10希釈によって浸潤された植物サンプル;レーン5:pBI121/D4−hGH 6DPI、1:50希釈によって浸潤された植物サンプル;レーン6:pBI121/D4−hGH 6dpi、1:100希釈によって浸潤された植物サンプル;レーン7:健康な植物から得た植物サンプル;レーン8:pBI121−浸潤葉から得た植物サンプル;レーン9:D4−HGH感染植物 13dpiから得た植物サンプル;レーン10:D4−HGH感染クローン根系統から得たサンプル。植物サンプルについて:一リーフディスクを、LAEMMLI負荷バッファーと共に100 UL BRADLEYバッファーにおいて粉砕する。レーン当たり10 ULを負荷する。したがって、レーン3ー6では、この一次サンプルは希釈される。
【図12】図12は、水耕栽培で育成したNICOTIANA BENTHAMIANA植物におけるIA−2icタンパク質の発現を示す。レーン:1:IA−2IC標準;2.マジックマーカー;3.AGROBACTERIAを注入された土壌育成植物;4,5.浸潤4日後の水耕栽培植物;6,7.浸潤6日後の水耕栽培植物。
【図13】図13は、対象標的タンパク質を担うウィルス配列を幼若植物の中に発射するアグロバクテリウムベクターを輸送するために、本発明にしたがって利用されるAGROINfILTRATIONシステムの一実施態様を示す。
【図14】図14は、図13のシステムを用いてAGROINfILTRATIONを実施した、各種豆品種において検出されたリケナーゼの活性を示す。
【図15】図15は、図13のシステムを用いてAGROINfILTRATIONを実施した、SPECKLED PEASのGFP発現および植物の生育を示す。
【図16】図16は、図13のシステムを用いてAGROINfILTRATIONを実施した、いくつかのSPECKLED PEASの組織特異性と、最適な浸潤後日数を示す。
【図17】図17は、本発明のある実施態様にしたがって対象タンパク質またはポリペプチドとの融合に使用してもよい、リケナーゼ担体分子を示す。パネルAは、CLOSTRIDIUM THERMOCELLUMから得られたB−1、3−1、4−グルカナーゼ(リケナーゼ)の模式図を示す。パネルBは、円方向に配置転換したLicKM担体の模式図を示す。各パネルにおいて、垂直線陰影部は、触媒ドメインのN末端領域に対応し、点描ボックスは、触媒ドメインのC末端領域に対応する。
【図18】図18は、発射ベクターpBID4の模式図を示す。
【図19】図19は、標的遺伝子の最適化から、すぐに保存が可能な最終産物の精製までのプロセスに、本発明の特異的一実施態様にしたがって与る各工程の模式図である。
【図20】図20は、植物発芽から組織の収穫までの工程の自動化に有用な装備設計を示す。図示のように、モジュールは、約40フィート×約70フィートの床面積を占め、高さ約32フィートになると推定される。図示のシステムは、コンベヤーによってつながれる下記の成分:中央棚収容ユニットで、植物が工程の合間に維持されるユニット、播種ユニット、真空浸潤および濯ぎユニット、および組織収穫ユニットを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
幼若植物において製薬学的活性タンパク質またはポリペプチドを生産する方法であって:
対象タンパク質またはポリペプチドをコードするコード配列を担う、ウィルス配列の転写を調節するプロモーターを含むアグロバクテリウム構築体を幼若豆植物に注入する工程;
前記注入された幼若豆植物を、前記プロモーターによる転写を可能とするのに十分な条件および時間においてインキュベートし、それによって、対象タンパク質またはポリペプチドをコードするコード配列を含むウィルス転写体を生産する工程;
前記注入された幼若豆植物を、前記タンパク質またはポリペプチドの生産を可能とするのに十分な条件および時間においてインキュベートする工程、
を含む、前記方法。
【請求項2】
前記アグロバクテリウム構築体が、タバコモザイクウィルス、アルファルファモザイクウィルス、カリフラワーモザイクウィルスのウィルス配列、または前記の任意の組み合わせを含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記アグロバクテリウム構築体が、タバコモザイクウィルスのウィルス配列を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記アグロバクテリウム構築体が、アルファルファモザイクウィルスのウィルス配列を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記アグロバクテリウム構築体が、カリフラワーモザイクウィルスのウィルス配列を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ウィルス配列が、カリフラワーモザイクウィルスの35Sプロモーターの調節下にあることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
カリフラワーモザイクウィルスの前記35Sプロモーターが、前記幼若豆植物に注入された後、組み換えウィルスゲノムの最初の転写を駆動することを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
ウィルス配列の転写を調節するプロモーターが、構成的プロモーターであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
ウィルス配列の転写を調節するプロモーターが、誘発可能なプロモーターであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記誘発可能なプロモーターが、熱ショックプロモーターであることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記誘発可能なプロモーターが、光誘発性プロモーターであることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記誘発可能なプロモーターが、化学的誘発性プロモーターであることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記アグロバクテリウム構築体が、転写ターミネーターを含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記転写ターミネーターが、アグロバクテリウムノパリンシンターゼの転写ターミネーターであることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記アグロバクテリウム構築体が、ウィルス複製のための、一つ以上の遺伝子を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記アグロバクテリウム構築体が、細胞間移動のための、一つ以上の遺伝子を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記対象タンパク質またはポリペプチドが、ウィルスのMRNAプロモーターの転写調節下にあることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記ウィルスのmRNAプロモーターが、コートタンパク質のサブゲノムmRNAプロモーターであることを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記アグロバクテリウム構築体が、左および右境界配列を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記左および右境界配列が、前記アグロバクテリウム構築体が前記幼若豆植物に注入された後、幼若豆細胞に転移される前記アグロバクテリウム構築体の領域を区画することを特徴とする、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記幼若豆植物が、複数の構築体を注入されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記幼若豆植物が、マロウファットピース、BILL JUMP PEA、YELLOW TRAPPER PEA、SPECKLED PEA、およびグリンピースから成る群から選ばれることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記対象タンパク質またはポリペプチドがインスリンであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
前記対象タンパク質またはポリペプチドが、グルタミン酸デカルボキシラーゼであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記対象タンパク質またはポリペプチドが、チロシン−フォスファターゼ様タンパク質IA−2であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
前記対象タンパク質またはポリペプチドが、緑色蛍光タンパク質であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項27】
前記対象タンパク質またはポリペプチドが、ヒト成長ホルモンであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項28】
前記対象タンパク質またはポリペプチドが、炭疽菌トキシンの一つ以上の成分であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項29】
炭疽菌トキシンの前記成分が、保護的抗原であることを特徴とする、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記保護的抗原をトキシンとして不活性にする突然変異が導入されることを特徴とする、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
炭疽トキシンの前記成分が致死因子であることを特徴とする、請求項28に記載の方法。
【請求項32】
前記致死因子をトキシンとして不活性にする突然変異が導入されることを特徴とする、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記対象タンパク質またはポリペプチドが、リケナーゼ配列を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項34】
前記注入された幼若豆植物が、水耕栽培条件下にインキュベートされることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項35】
植物組織1KG当たり、少なくとも5グラムの前記タンパク質またはポリペプチドが生産されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項36】
植物組織1KG当たり、少なくとも約1グラムの前記タンパク質またはポリペプチドが生産されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項37】
植物組織1KG当たり、少なくとも約0.5グラムの前記タンパク質またはポリペプチドが生産されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項38】
植物組織1KG当たり、少なくとも20〜500MGの前記タンパク質またはポリペプチドが生産されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項39】
前記タンパク質またはポリペプチドの生産を可能とするのに十分な前記時間が、前記アグロバクテリウム構築体の注入から少なくとも約6週であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項40】
前記タンパク質またはポリペプチドの生産を可能とするのに十分な前記時間が、前記アグロバクテリウム構築体の注入から少なくとも約3週であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項41】
前記タンパク質またはポリペプチドの生産を可能とするのに十分な前記時間が、前記アグロバクテリウム構築体の注入から少なくとも約2週であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項41】
前記タンパク質またはポリペプチドの生産を可能とするのに十分な前記時間が、前記アグロバクテリウム構築体の注入から少なくとも約1週であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項42】
前記タンパク質またはポリペプチドの生産を可能とするのに十分な前記時間が、前記アグロバクテリウム構築体の注入から少なくとも約3日であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項43】
前記タンパク質またはポリペプチドの生産を可能とするのに十分な前記時間が、前記アグロバクテリウム構築体の注入から少なくとも約1日であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項44】
前記幼若植物が幼若豆植物であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項45】
NICOTIANA植物において製薬学的活性タンパク質またはポリペプチドを生産する方法であって:
対象タンパク質またはポリペプチドをコードするコード配列を担う、ウィルス配列の転写を調節するプロモーターを含むアグロバクテリウム構築体を、幼若NICOTIANA植物に注入する工程;
前記注入された幼若NICOTIANA植物を、前記プロモーターによる転写を可能とするのに十分な条件および時間においてインキュベートし、それによって、対象タンパク質またはポリペプチドをコードするコード配列を含むウィルス転写体を生産する工程;
前記注入された幼若NICOTIANA植物を、前記タンパク質またはポリペプチドの生産を可能とするのに十分な条件および時間においてインキュベートする工程、
を含む、前記方法。
【請求項1】
幼若植物において製薬学的活性タンパク質またはポリペプチドを生産する方法であって:
対象タンパク質またはポリペプチドをコードするコード配列を担う、ウィルス配列の転写を調節するプロモーターを含むアグロバクテリウム構築体を幼若豆植物に注入する工程;
前記注入された幼若豆植物を、前記プロモーターによる転写を可能とするのに十分な条件および時間においてインキュベートし、それによって、対象タンパク質またはポリペプチドをコードするコード配列を含むウィルス転写体を生産する工程;
前記注入された幼若豆植物を、前記タンパク質またはポリペプチドの生産を可能とするのに十分な条件および時間においてインキュベートする工程、
を含む、前記方法。
【請求項2】
前記アグロバクテリウム構築体が、タバコモザイクウィルス、アルファルファモザイクウィルス、カリフラワーモザイクウィルスのウィルス配列、または前記の任意の組み合わせを含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記アグロバクテリウム構築体が、タバコモザイクウィルスのウィルス配列を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記アグロバクテリウム構築体が、アルファルファモザイクウィルスのウィルス配列を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記アグロバクテリウム構築体が、カリフラワーモザイクウィルスのウィルス配列を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ウィルス配列が、カリフラワーモザイクウィルスの35Sプロモーターの調節下にあることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
カリフラワーモザイクウィルスの前記35Sプロモーターが、前記幼若豆植物に注入された後、組み換えウィルスゲノムの最初の転写を駆動することを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
ウィルス配列の転写を調節するプロモーターが、構成的プロモーターであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
ウィルス配列の転写を調節するプロモーターが、誘発可能なプロモーターであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記誘発可能なプロモーターが、熱ショックプロモーターであることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記誘発可能なプロモーターが、光誘発性プロモーターであることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記誘発可能なプロモーターが、化学的誘発性プロモーターであることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記アグロバクテリウム構築体が、転写ターミネーターを含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記転写ターミネーターが、アグロバクテリウムノパリンシンターゼの転写ターミネーターであることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記アグロバクテリウム構築体が、ウィルス複製のための、一つ以上の遺伝子を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記アグロバクテリウム構築体が、細胞間移動のための、一つ以上の遺伝子を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記対象タンパク質またはポリペプチドが、ウィルスのMRNAプロモーターの転写調節下にあることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記ウィルスのmRNAプロモーターが、コートタンパク質のサブゲノムmRNAプロモーターであることを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記アグロバクテリウム構築体が、左および右境界配列を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記左および右境界配列が、前記アグロバクテリウム構築体が前記幼若豆植物に注入された後、幼若豆細胞に転移される前記アグロバクテリウム構築体の領域を区画することを特徴とする、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記幼若豆植物が、複数の構築体を注入されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記幼若豆植物が、マロウファットピース、BILL JUMP PEA、YELLOW TRAPPER PEA、SPECKLED PEA、およびグリンピースから成る群から選ばれることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記対象タンパク質またはポリペプチドがインスリンであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
前記対象タンパク質またはポリペプチドが、グルタミン酸デカルボキシラーゼであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記対象タンパク質またはポリペプチドが、チロシン−フォスファターゼ様タンパク質IA−2であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
前記対象タンパク質またはポリペプチドが、緑色蛍光タンパク質であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項27】
前記対象タンパク質またはポリペプチドが、ヒト成長ホルモンであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項28】
前記対象タンパク質またはポリペプチドが、炭疽菌トキシンの一つ以上の成分であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項29】
炭疽菌トキシンの前記成分が、保護的抗原であることを特徴とする、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記保護的抗原をトキシンとして不活性にする突然変異が導入されることを特徴とする、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
炭疽トキシンの前記成分が致死因子であることを特徴とする、請求項28に記載の方法。
【請求項32】
前記致死因子をトキシンとして不活性にする突然変異が導入されることを特徴とする、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記対象タンパク質またはポリペプチドが、リケナーゼ配列を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項34】
前記注入された幼若豆植物が、水耕栽培条件下にインキュベートされることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項35】
植物組織1KG当たり、少なくとも5グラムの前記タンパク質またはポリペプチドが生産されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項36】
植物組織1KG当たり、少なくとも約1グラムの前記タンパク質またはポリペプチドが生産されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項37】
植物組織1KG当たり、少なくとも約0.5グラムの前記タンパク質またはポリペプチドが生産されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項38】
植物組織1KG当たり、少なくとも20〜500MGの前記タンパク質またはポリペプチドが生産されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項39】
前記タンパク質またはポリペプチドの生産を可能とするのに十分な前記時間が、前記アグロバクテリウム構築体の注入から少なくとも約6週であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項40】
前記タンパク質またはポリペプチドの生産を可能とするのに十分な前記時間が、前記アグロバクテリウム構築体の注入から少なくとも約3週であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項41】
前記タンパク質またはポリペプチドの生産を可能とするのに十分な前記時間が、前記アグロバクテリウム構築体の注入から少なくとも約2週であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項41】
前記タンパク質またはポリペプチドの生産を可能とするのに十分な前記時間が、前記アグロバクテリウム構築体の注入から少なくとも約1週であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項42】
前記タンパク質またはポリペプチドの生産を可能とするのに十分な前記時間が、前記アグロバクテリウム構築体の注入から少なくとも約3日であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項43】
前記タンパク質またはポリペプチドの生産を可能とするのに十分な前記時間が、前記アグロバクテリウム構築体の注入から少なくとも約1日であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項44】
前記幼若植物が幼若豆植物であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項45】
NICOTIANA植物において製薬学的活性タンパク質またはポリペプチドを生産する方法であって:
対象タンパク質またはポリペプチドをコードするコード配列を担う、ウィルス配列の転写を調節するプロモーターを含むアグロバクテリウム構築体を、幼若NICOTIANA植物に注入する工程;
前記注入された幼若NICOTIANA植物を、前記プロモーターによる転写を可能とするのに十分な条件および時間においてインキュベートし、それによって、対象タンパク質またはポリペプチドをコードするコード配列を含むウィルス転写体を生産する工程;
前記注入された幼若NICOTIANA植物を、前記タンパク質またはポリペプチドの生産を可能とするのに十分な条件および時間においてインキュベートする工程、
を含む、前記方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公表番号】特表2009−528025(P2009−528025A)
【公表日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−554439(P2008−554439)
【出願日】平成19年2月13日(2007.2.13)
【国際出願番号】PCT/US2007/003942
【国際公開番号】WO2007/095304
【国際公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【出願人】(508033591)フラウンホーファー ユーエスエー, インコーポレイテッド (5)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年2月13日(2007.2.13)
【国際出願番号】PCT/US2007/003942
【国際公開番号】WO2007/095304
【国際公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【出願人】(508033591)フラウンホーファー ユーエスエー, インコーポレイテッド (5)
【Fターム(参考)】
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