説明

植物育成マット及び該マットの製造方法

【課題】 植物の育成に適し、かつ安価に製造可能な植物育成マットを得る。
【解決手段】 厚さ約25〜60mm、一辺の長さ約300〜1000mmの連続気孔を有する多孔質セラミックス基盤2の上面には、合成樹脂から成る繊維状の起毛材4が貼り合わせ、この起毛材4中に植物の育成に必要な客土5が混入されている。客土5上に植物7の種子茎葉を蒔き発芽発根させると、根毛は起毛材4に絡み合い、セラミックス基盤2の連続気孔内に入り込み定着し、植物7が育成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば建造物の屋上、屋根の上、ルーフバルコニー、或いは壁面部を緑化するために使用する植物育成マット及び該マットの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、建造物の屋上や屋根の上に設置する植物育成マットとしては、例えば特許文献1に示す植物育成マットが知られている。この特許文献1における植物育成マットは、ブロック状の形状をしたブロック構造体上に、植物体から成る繊維同士をゴム状物質で架橋し、植物根茎の伸長に適した連続気孔を有するマットを形成している。
【0003】
また、建物の屋上等において、防水シートを介して土壌を生成し、その上に植裁する方法も用いられている。
【0004】
【特許文献1】特開平11−318204号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら上述の特許文献1においては、植物繊維とゴム状物質を温度約100℃と、圧力0.1kg/100cm2で架橋しているが、温度によっては後に至って未反応の架橋剤が溶出したり、価格も高くなる欠点がある。
【0006】
また、屋上等に直接土壌を敷き詰め植裁する方法では、現場において耐根、防水処理、土壌の搬入等の様々な処理を必要とし、工期が長く、コストも高くなってしまう。更には、一旦施工してしまうと撤去したり、植え替えをすることは極めて困難である。
【0007】
本発明の目的は、上述の課題を解消し、施工・解体がし易く、植物の育成に適し、かつ安価に製造可能な植物育成マット及び該植物育成マットの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明に係る植物育成マットの技術的特徴は、多孔質セラミックス基盤と、該多孔質セラミックス基盤上に貼り付けた繊維状の起毛材と、該起毛材中に混入し植物を育成する客土とから成ることにある。
【0009】
また、本発明に係る植物育成マットの製造方法の技術的特徴は、多孔質セラミックス基盤上に客土を積層し、該客土に植物の種子茎葉を蒔き、該植物を育成することにある。
【0010】
更に、本発明に係る植物育成マットの製造方法の技術的特徴は、多孔質セラミックス基盤上に繊維状の起毛材を貼り付け、該起毛材中に客土を混入し、該客土に植物の種子茎葉を蒔き、該植物を育成することにある。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る植物育成マット及び該マットの製造方法によれば、多孔質セラミックス基盤上に積層した客土により発根した根が、多孔質セラミックス基盤の気孔中に入り込んで定着し易い。
【0012】
本発明に係る植物育成マット及び該マットの製造方法によれば、多孔質セラミックス基盤上に合成樹脂から成る繊維状の起毛材を貼り付け、起毛材中に混入した客土により発根した根が、起毛材に絡み合い、多孔質セラミックス基盤の気孔中に入り込んで定着し易く、強風等によっても植物が飛ばされる難くなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明を図示の実施例に基づいて詳細に説明する。
図1は植物育成マット1の断面図を示しており、基板となる多孔質セラミックス基盤2は、例えば比重0.5〜0.7、厚さ約25〜60mm、一辺の長さ約300〜1000mmの矩形状の板体であり、内部に多孔質の連続気孔を持ち保水性を有する。
【0014】
この多孔質セラミックス基盤2は例えば珪藻土を原料として発泡セラミックスとして約1000℃で焼成すると、珪藻土が本来有するミクロンサイズの気孔と発泡セラミックスの有するミリサイズの気孔との組合わせにより、大きい偏平状の気孔の周りを約10〜100μmの微細なスポンジ状の気孔が取り巻いた連続貫通気孔構造を持っている。そして、焼成の仕方で上面には内部と同等の気孔が露出され、かつ底面における気孔は極端に微細化されている。
【0015】
この多孔質セラミックス基盤2は、無機材料で有機化学物質や重金属類等の溶出がなく、透水性、保水性、吸音性、断熱性、加工性、吸水湿性に優れている。特に、自重の約50%の保水量を持ち、飽和状態以上の水分は排水する性質を有する。
【0016】
また、このセラミックス基盤2の側面には、複数枚のセラミックス基盤2を並べた場合に、隣り合う植物育成マット1同士がずれないようにするための段部2a、2bが設けられている。
【0017】
また、多孔質セラミックス基盤2の下面には、防水のための合成樹脂フィルム3が貼り付けられ、上面には合成樹脂から成る繊維状の起毛材4が厚さ10mm程度に貼り付けられている。更に、この起毛材4中には、軽量な火山砂利等から成る客土5が混入されている。なお、この客土5には植物の育成に必要な微量元素のミネラルが含まれていることが好ましい。
【0018】
このように、客土5を起毛材4中に混入させることにより、客土5が飛散することはなく、また客土5の圧縮沈下等の経年変化が防止され、植物の根の成長を促す構造となる。
【0019】
そして、この客土5の上に植物7の種子茎葉を蒔き水を与えて発芽発根させると、根毛は起毛材4に絡み合うことにより定着し易く、更に多孔質セラミックス基盤2の連続気孔中に入り込むので、植物7を育成した植物育成マット1が安価に得られる。
【0020】
本実施例においては、多孔質セラミックス基盤2上に起毛材4を貼り付け、この起毛材4中に客土5を混入したが、設置条件等によっては起毛材4を省略し、多孔質セラミックス基盤2上に直接、客土5を積層することもできる。
【0021】
図2は複数枚の植物育成マット1を並べた状態の説明図を示し、セラミックス基盤2の隣接する段部2a、2b同士を重ね合ね合わせるだけで容易に並べることができると共に、植物育成マット1同士が移動しないようにすることができる。実施例においては、横断面方向の段部2a、2bを用いて説明したが、勿論、横断面方向と共に縦断面方向にも図示しない段部を設けることもできる。
【0022】
図3は既存の折板屋根上に、植物育成マット1を配置した状態の構成図を示している。折板屋根11上に専用のベース金具12を取り付けることにより、本発明の植物育成マット1を配列して固定することができる。
【0023】
また、育成する植物7は一般的な草花、芝生等でもよいが、乾燥に強いベンケイソウ科等に属する所謂セダムを用いると、乾燥にも強く、厳しい温度、少ない土壌の過酷な環境下でも育成可能である。このため、建物の屋上等で育成する際には、潅水の手間や水道代は従来の屋上庭園等の場合よりも節約できる。
【0024】
多孔質セラミックス基盤2が優れた保水性を有することもあって、セダムは通常は雨水の水分だけで育成可能であり、除草や剪定の作業も殆ど不要である。上述したように、一旦設置すると殆ど人手を必要としないので、メインテナンスの困難な高層手摺外やセキュリティの厳重な施設にも適している。
【0025】
また、建物の屋上において使用する際には、単位面積当りの重量も重要であり、多孔質セラミックス基盤2、起毛材4、少ない客土5により軽量化した本発明の植物育成マット1は大きな利点がある。
【0026】
更には、施工や撤去に際して、植物育成マット1ごとに運搬できるので、短期間で工事が完了する利点がある。また、複数枚の植物育成マット1を敷き詰めることにより、一部の植物育成マット1の植物7が枯れてしまったり、病気にかかった場合には、その部分の植物育成マット1のみを交換すればよい。そして、交換した植物育成マット1は別の場所において養生することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】植物育成マットの断面図である。
【図2】複数枚の植物育成マットを並べた状態の説明図である。
【図3】折板屋根に植物育成マットを配置した状態の構成図である。
【符号の説明】
【0028】
1 植物育成マット
2 多孔質セラミックス基盤
2a、2b 段部
3 合成樹脂フィルム
4 起毛材
5 客土
11 折板屋根
12 ベース金具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質セラミックス基盤と、該多孔質セラミックス基盤上に貼り付けた繊維状の起毛材と、該起毛材中に混入し植物を育成する客土とから成ることを特徴とする植物育成マット。
【請求項2】
前記多孔質セラミックス基盤の裏面に合成樹脂製シートを敷設したことを特徴とする請求項1に記載の植物育成マット。
【請求項3】
前記多孔質セラミックス基盤の側面に、隣り合う前記多孔質セラミックス基盤と嵌合するための段部又は溝部を設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載の植物育成マット。
【請求項4】
多孔質セラミックス基盤上に客土を積層し、該客土に植物の種子茎葉を蒔き、該植物を育成することを特徴とする植物育成マットの製造方法。
【請求項5】
多孔質セラミックス基盤上に繊維状の起毛材を貼り付け、該起毛材中に客土を混入し、該客土に植物の種子茎葉を蒔き、該植物を育成することを特徴とする植物育成マットの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−189903(P2007−189903A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−8213(P2006−8213)
【出願日】平成18年1月17日(2006.1.17)
【出願人】(000134604)株式会社ドコー (9)
【出願人】(500341584)株式会社アースエンジニアリング (4)
【Fターム(参考)】