説明

植物育成用の照明装置

【課題】効率的な植物の育成を可能とする照明装置を提供する。
【解決手段】植物の育成に必要な光を供給する照明装置であって、近紫外領域又は紫外領域に発光領域を有する半導体発光素子と、該半導体発光素子からの発光で励起し赤色光を蛍光する赤色蛍光体とを有し、外部に対して少なくとも該赤色蛍光体からの赤色光を出射する第一蛍光発光部と、近紫外領域又は紫外領域に発光領域を有する半導体発光素子と、該半導体発光素子からの発光で励起し青色光を蛍光する青色蛍光体とを有し、外部に対して少なくとも該青色蛍光体からの青色光を出射する第二蛍光発光部と、第一蛍光発光部が有する半導体発光素子と、第二蛍光発光部が有する半導体発光素子のそれぞれに電力を供給する電力供給部と、を備える。そして、第一蛍光発光部から出射される赤色光と第二蛍光発光部から出射される青色光が合成され、該合成光が植物に照射される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物を育成するための照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
野菜等の植物や観賞用の植物を水耕栽培において人工的な光を照射して、季節や天候に影響されること無く安定的な植物の育成を行う、いわゆる植物工場の技術が発展している。昨今の食糧自給の問題や人口増加の問題を踏まえても、安定的な食材の提供を可能とするこの植物工場の技術はその注目度を増している。ここで、植物工場における人工的な光源として、従来から高圧ナトリウムランプが使用されていたが、そのスペクトル分布では植物の育成に必要な赤色や青色の成分のバランスが好ましくない。そこで、高圧ナトリウムランプに代えて、赤色光と青色光を出射する半導体発光素子を利用し、赤色光と青色光の光強度比を8:1〜12:1とする技術が開示されている(例えば、特許文献1を参照。)。
【0003】
また、同様に半導体発光素子を光源として利用する技術であって、植物に照射する赤色光と青色光の生成に当たり、青色光には半導体発光素子からの出射光を利用し、赤色光にはその半導体発光素子からの出射光によって励起され赤色に蛍光する蛍光体からの発光を利用する技術が開示されている(例えば、特許文献2を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−178899号公報
【特許文献2】特開2002−27831号公報、特に請求項5
【特許文献3】特開2001−86860号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
植物を効率的に育成するためには、植物が有するクロロフィルの光吸収度を考慮し、赤色と青色の成分を含む光を照射することが好ましい。ここで、光源として従来から使用されている高圧ナトリウムランプでは、ランプ自体の光強度は比較的高いものの、その光スペクトルには植物育成のために必要な赤色成分と青色成分が適切に含まれているとは言いがたい。さらに、高圧ナトリウムランプでは発光とともに比較的大きな発熱も生じるため、植物への影響を低減するために、光源と植物との距離を開けざるを得ない。その結果、光源からの光の照射に無駄が生じ、その育成は必ずしも効率的とはいえない。
【0006】
また、半導体発光素子を光源として利用する場合、高圧ナトリウムランプと比べてその発熱を低減することは可能となる。しかし、半導体発光素子から出射される光は指向性が極めて強いため、半導体発光素子からの出射光を赤色光もしくは青色光として利用しても両者の合成は難しく、十分に合成された光が植物に照射されにくい。その結果、植物のクロロフィルに対して、赤色光と青色光とをムラなく届けるのが困難となり、効率的な植物の育成に支障を来たすと考えられる。
【0007】
本発明では、上記した問題に鑑み、効率的な植物の育成を可能とする照明装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明では、植物の育成に必要な赤色光と青色光のそれぞ
れの光源に近紫外領域又は紫外領域を発光領域とする半導体発光素子を利用するとともに、それぞれの半導体発光素子からの出射光によって励起され赤色と青色に蛍光する蛍光部をそれぞれに設けることとした。赤色光と青色光とを蛍光部による蛍光発光とすることで、両者の合成を良好に行い植物の育成を効率的に行えるようにするものである。
【0009】
詳細には、本発明は、植物の育成に必要な光を供給する照明装置であって、近紫外領域又は紫外領域に発光領域を有する半導体発光素子と、該半導体発光素子からの発光で励起し赤色光を蛍光する赤色蛍光体とを有し、外部に対して少なくとも該赤色蛍光体からの赤色光を出射する第一蛍光発光部と、近紫外領域又は紫外領域に発光領域を有する半導体発光素子と、該半導体発光素子からの発光で励起し青色光を蛍光する青色蛍光体とを有し、外部に対して少なくとも該青色蛍光体からの青色光を出射する第二蛍光発光部と、前記第一蛍光発光部が有する半導体発光素子と、前記第二蛍光発光部が有する半導体発光素子のそれぞれに電力を供給する電力供給部と、を備える。そして、前記第一蛍光発光部から出射される赤色光と前記第二蛍光発光部から出射される青色光が合成され、該合成光が植物に照射される。
【0010】
第一蛍光発光部から出射される光は、少なくとも赤色蛍光体によって蛍光発光された赤色光を含み、さらには該赤色蛍光体の励起光である半導体発光素子の近紫外光又は紫外光も含む場合もある。また、第二蛍光発光部から出射される光は、少なくとも青色蛍光体によって蛍光発光された青色光を含み、さらには該青色蛍光体の励起光である半導体発光素子の近紫外光又は紫外光も含む場合もある。したがって、本発明に係る照明装置においては、赤色光と青色光は半導体発光素子からの出射光のように指向性の強い光ではなく、蛍光体によって十分に散乱された光である。そのため、第一蛍光発光部から出射された赤色光と第二蛍光発光部から出射された青色光とは良好に合成しやすく、植物に照射されたときに色分離を生じ難い。したがって、植物の育成に大きく関与するそのクロロフィルに対して、育成に必要な赤色光と青色光をムラなく届けることが可能となり、その効率的な育成に大きく寄与する。
【0011】
なお、半導体発光素子による直接の出射光である近紫外光又は紫外光(以下、単に「近紫外光等」という。)も、上記赤色光と青色光程ではなくても、植物の育成にある程度寄与する光であることが知られている。しかし、近紫外光等については、第一蛍光発光部と第二蛍光発光部の両方から出射され得るため、赤色光と青色光のように合成をしなくても植物にムラなく照射することは可能であろう。
【0012】
ここで、上記照明装置において、前記電力供給部の電力供給によって、前記第二蛍光発光部から出射される青色光のエネルギーに対する前記第一蛍光発光部から出射される赤色光のエネルギーの比が可変制御されるようにしてもよい。第一蛍光発光部による赤色光と第二蛍光発光部による青色光のエネルギー比は、育成する植物の特性によって変動すると考えられる。そこで、このように当該エネルギー比が変動可能に制御されることで、様々な種類の植物の育成に好適に対応することができ、また植物の成長に従って変動する場合がある当該エネルギー比にも対応できるようになる。
【0013】
多くの植物においては、上記エネルギー比が2以上10以下の範囲に収まるので、当該エネルギー比をその範囲で制御してもよい。なお、本発明に係る照明装置では、当該エネルギー比の範囲は必ずしもこれに限られるのではなく、植物の育成に応じて適宜変更し得るものである。一般には、青色光のエネルギーよりも赤色光のエネルギーの方が植物の育成には効果的に寄与するため、当該比率は1を超える値であるのが好ましい。
【0014】
また、植物の育成には、そのクロロフィルが吸収する光のスペクトルが、赤色領域と青色領域にピークがあることはよく知られている。そこで、前記第一蛍光発光部および前記
第二蛍光発光部によって植物に照射される光のエネルギーのうち、前記半導体発光素子による近紫外光又は紫外光の領域から前記第一蛍光発光部による赤色光の領域に至る範囲の全光エネルギーに対する、前記第一蛍光発光部による赤色光のエネルギーと、前記第二蛍光発光部による青色光のエネルギーと、前記半導体発光素子による近紫外光又は紫外光のエネルギーの総和エネルギーの占める割合を、95%以上としてもよい。このようにすることで、植物の育成がより効率的となる。
【0015】
ここで、上記照明装置において、第一蛍光発光部と第二蛍光発光部のより具体的な配置について、一例を挙げる。例えば、上記照明装置において、該照明装置の出射方向に開口するパッケージであって、その開口部の一部をそれぞれに含むように該パッケージの内部が複数の分割領域部に分割されるパッケージを、更に備えるように構成する。そして、前記第一蛍光発光部は、前記パッケージ内の一の分割領域部内に設けられ、且つ前記第二蛍光発光部は、該パッケージ内の該一の分割領域とは異なる他の分割領域部内に設けられるようにしてもよい。すなわち、一つのパッケージの中に、第一蛍光発光部と第二蛍光発光部のそれぞれの領域を画定するように構成するものである。これにより、各分割領域部からの出射光がそれぞれ赤色蛍光と青色蛍光になるため、出射後、各蛍光の合成が良好に行われる。
【0016】
また、第一蛍光発光部と第二蛍光発光部の別の配置形態として、上記照明装置において上記パッケージを更に備えるように構成される場合、前記複数の分割領域部のうち一の分割領域部と他の分割領域部の二つにおいて、前記第二蛍光発光部は前記一の分割領域部内にのみ設けられ、前記第一蛍光発光部は該一の分割領域部内と該他の分割領域部内に跨って設けられるようにしてもよい。すなわち、照明装置の照射光として赤色光をより多く出射するために、一の分割領域部において赤色蛍光体と青色蛍光体とを共に配置し、他の分割領域部においては赤色蛍光体のみを配置するものである。これは、植物の育成にとって、赤色光のエネルギーの方が青色光のエネルギーよりも効果的に寄与することを考慮したものである。
【0017】
なお、第一蛍光発光部と第二蛍光発光部の配置については、上述の例に限られない。例えば、一つのパッケージに赤色光のための第一蛍光発光部を配置し、別のパッケージに青色光のための第二蛍光発光部を配置し、各色専用のパッケージを準備してもよい。そして、第一蛍光発光部と第二蛍光発光部をパッケージ単位で適宜組み合わせることで、照明装置を構成してもよい。また、その他の効率的な育成が可能である配置も採用可能である。
【発明の効果】
【0018】
本発明の照明装置によれば、植物に対して赤色光と青色光とをムラ無く照射することができるため、効率的な植物の育成を可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】植物の育成を行う生産装置の概略構成を示す図である。
【図2A】図1に示す生産装置を構成する生産ベースの上面図である。
【図2B】図1に示す照明装置を構成する照明ベースの上面図である。
【図3】植物のクロロフィルにより光の吸収度の推移を示す図である。
【図4A】図1に示す生産装置において植物に照明を行う照明装置の概略構成の斜視図である。
【図4B】図4Aに示すパッケージ内の近紫外半導体発光素子に電力を供給する配線の実装状態を示す図である。
【図5】図1Aに示す半導体発光装置の断面図である。
【図6】図1Aに示す半導体発光装置での近紫外半導体発光素子と基板との接続関係を示す図である。
【図7】図4Aに示す照明装置において使用される赤色蛍光体、青色蛍光体、チキソ材、封止材料の使用量を示す図である。
【図8A】図7に示す材料で構成された照明装置による照射光の光エネルギー図である。
【図8B】図8Aに示す光エネルギー図において、近紫外領域、青色領域、緑色領域、赤色領域の光エネルギーの比率を示す図である。
【図9】パッケージ内に設けられた分割領域部に形成される蛍光発光部の別の形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
ここで、本発明に係る植物育成用の照明装置の実施例について、明細書添付の図面に基づいて説明する。尚、当該実施例は本発明に係る照明装置の一例を示すものであり、本発明の権利範囲をそれに限定するものではない。
【実施例1】
【0021】
図1には、植物を大量に且つ効率的に生産するための生産装置40の概略的な構成が示されている。生産装置40は、育成される植物(以下、「育成植物」と言う。)の生産が行われる生産ベース42が、複数の支持ポール43によって支持されることで多段に構成されており(図1に示す状態では二段構成である。)、各段の生産ベース42上の育成植物に対して照明を行う照明ベース41が、各段に設けられている。この生産ベース42は、育成植物用の肥料が溶け込んだ肥料溶液が満たされたトレイであり、ポンプ48の圧送により、上段の生産ベース42と下段の生産ベース42との間で肥料溶液が循環される。また、生産ベース42が多段で組み立てられている生産装置40の側部は透明なアクリル板49で覆われており、さらに生産装置40の上部には、アクリル板49と生産ベース42の間にできた空間を利用して生産装置40内に通気を行うファン47が設けられている。
【0022】
ここで、生産装置40に消費される電力は、その天井部分に設けられた太陽電池44の発電によって賄われる。太陽電池44で発電された電力は、生産装置40の下部に設けられた台座46内に設置されているバッテリ45に蓄電され、ここから必要に応じて、照明ベース41、ファン47、ポンプ48に電力が供給される。なお、台座46は非透明であるため、外部からバッテリ45を視認することはできない。
【0023】
さらに、生産ベース42の詳細な構成について図2Aに基づいて説明する。図2Aは、生産ベース42の上面図である。このように生産ベース42は、六本の支持ポールによって支持され、六角形状を有する。そして、その中央部分に、育成用のポット50に植われた育成植物が七箇所に配置されている。各育成用ポット50間の距離は、育成される植物の成長程度を踏まえて決定される。そして、生産ベース42の周辺に、ファン47による風が通る通気スペースが形成されている。
【0024】
次に、このように構成される生産ベース42上の育成植物に対して照明を行う照明ベース41の詳細な構成について図2Bに基づいて説明する。図2Bは、照明ベース41の下面図である。照明ベース41も生産ベース42と同様に、六本の支持ポールによって支持され、六角形状を有する。そして、その中央部分に、生産ベース42上の各育成用ポット50に対向する部分(図2B中の点線で記された部分であって七箇所存在する)ごとに、五個の照明装置8が一つのユニットとして配置されている。したがって、図2Bに示す照明ベース41には、35個の照明装置8が使用されている。
【0025】
このように構成される生産装置40では、太陽電池44で発電された電力によって照明ベース41に設置された照明装置8が発光することで、育成植物の育成に必要な光が供給
され、また肥料も生産ベース42中に肥料溶液として供給されるため、育成植物の育成が効率的に行われる。さらに、生産装置40が、アクリル板49によって外界と遮断されるため、育成植物が外乱にさらされなくなり、その結果、使用する農薬の量を減らすことができる。このように生産装置40は、植物の育成を効率的に行い得るものであるが、さらに照明装置8による植物への照明を以下のように工夫することで、植物育成の更なる効率化を可能とする。
【0026】
ここで、植物の光合成に必要なクロロフィルの光吸収特性について、図3に示す。図3の横軸は波長であり、縦軸は光の吸収度を示す。図3には一般的な植物のクロロフィルとして、クロロフィル(Chlorophyll)aとクロロフィル(Chlorophyll)bの二種類のクロロフィルの光吸収特性が示されている。尚、バクテリアクロロフィル(Bacteriochlorophyll)
aについては、本発明では考慮しなくてよい。図3からも分かるように、紫から青にかけての青色領域と、橙から赤にかけての赤色領域において、いずれのクロロフィルにおいても光吸収のピークが現れているが、両領域の間の緑色領域では、光吸収のピークは比較的小さい。一方で、図3に、人間の可視光線のスペクトルを重ねて示すと、青色領域から緑色領域にかけて光の強度が強くなっている。このように、植物の光吸収の特性と人間の可視光線の強度特性とは、必ずしも合致しているというわけではなく、植物の育成の効率化を図ろうとするには、可視光線をそのまま照射しているだけでは不十分であることが示されている。
【0027】
そこで、本発明に係る植物育成用の照明装置8は、植物の効率的な育成を図るために図3に示すクロロフィルの光吸収特性を考慮した光照射を行う。具体的には、照明装置8は、赤色領域の光と青色領域の光を集中的に且つムラなく育成植物に照射する。これにより、植物のクロロフィルにおける光合成に対して必要不可欠な赤色領域の光と青色領域の光をともに届けることが可能となるため、植物の効率的な育成が期待できる。特に、植物への光照射時において、赤色領域の光と青色領域の光が色分離せず、良好に合成されることが、微細なクロロフィルに対して両領域の光を良好に届けることを可能とし、以て効率的な植物の育成に資するものと考えられる。
【0028】
<照明装置8の構成>
そこで、図4A、図4B、図5に上述の光照射を可能とする照明装置8の構成を示す。図4Aは、照明装置8に複数含まれるパッケージ1のうち一つのパッケージ1の概略構成の斜視図であり、図4Bは、パッケージ1に設けられた半導体発光素子3A、3Bに電力を供給する配線20A、20Bの実装状態を示す図である。また、図5は、図4Aに示す照明装置8において、上記配線20A、20Bを含む面で切断した場合の断面図である。図4Aに示すように、照明装置8はパッケージ1を含んで構成され、該パッケージ1は、基板2上に配置された環状且つ円錐台形状のリフレクタ10を有する。このリフレクタ10は後述する各分割領域部12(12A、12B)からの出力光の一部を、照明装置8の出射方向に導く機能を有するとともに、パッケージ1の本体としての機能も果たす。尚、リフレクタ10の円錐台形状の上面側は、照明装置8による光の出射方向となり、開口部13を形成している。一方で、リフレクタ10の円錐台形状の下面側は基板2が配置され、詳細は後述するが各半導体発光素子への電力供給のための配線が敷設等されている(当該配線は図4Aには図示せず)。
【0029】
そして、この環状のリフレクタ10の内部の空間を二つの領域に分割する間仕切り11が、基板2に対して垂直に設けられている。この間仕切り11によって、リフレクタ10内に2つの分割領域部12A、12Bが画定されるとともに、図4A、図4B、図5において、分割領域部12Aの開口部は、リフレクタ10の開口部13の右半分を占め、分割領域部12Bの開口部は、リフレクタ10の開口部13の左半分を占めることになる。本出願においては、分割領域部12Aの開口部を、分割開口部13Aと称し、分割領域部1
2Bの開口部を、分割開口部13Bと称する。即ち、開口部13は、間仕切り11によって分割開口部13Aと13Bに分割されたことになる。
【0030】
この分割領域部12A、12Bには、それぞれ半導体発光素子であり近紫外光を出力光とする近紫外半導体発光素子3A、3Bがそれぞれ4個ずつ設けられている。この近紫外半導体発光素子3A、3B(これらの近紫外半導体発光素子を包括的に参照する場合は近紫外半導体発光素子3と称する。)は、対となる配線20A、20B(包括的に配線20と称する場合もある。)にそれぞれ接続され、電力供給を受けることで発光を行う。尚、各分割領域部での配線20への近紫外半導体発光素子3の接続は、図4Bに示すように、配線20Aの上に4個の近紫外半導体発光素子3Aが実装され、配線20Bの上に4個の近紫外半導体発光素子3Bが実装される。そして、各分割領域における4個の半導体発光素子3は、対応する配線に対して順方向に並列接続されている。
【0031】
ここで、近紫外半導体発光素子3の基板2への実装について、図6に基づいて説明する。基板2は、近紫外半導体発光素子3を含む照明装置8を保持するための基部であり、メタルベース部材2A、メタルベース部材2A上に形成された絶縁層2D、および絶縁層2D上に形成された対配線20C、20Dを有している。近紫外半導体発光素子3は、相対する底面および上面に一対の電極であるp電極及びn電極を有しており、対配線20Cの上面に、銀ペースト5を介して近紫外半導体発光素子3の底面側の電極がダイボンディングされている。この際、近紫外半導体発光素子で発生する熱の放熱性を考慮して、接着剤であり銀ペースト5は薄く均一に塗布した。塗布後、150℃で30分間加熱し、銀ペーストを硬化させた後、近紫外半導体発光素子3の上面側の電極を、金属製のワイヤ6によって、もう一方の対配線20Dにワイヤボンディングした。ワイヤ6としては、直径25μmの金線を用いた。これらの対配線20C、20Dの対で、図4Bに示される一つ対の配線20Aあるいは20Bをなし、各分割領域部の4個の近紫外半導体発光素子3への電力供給が行われる。
【0032】
尚、近紫外半導体発光素子3と基板2の一対の対配線20C、20Dとの電気的接続は、図6に示す形態に限られず、近紫外半導体発光素子3における電極の組の配置に応じて適切な方法で行なうことができる。例えば、近紫外半導体発光素子3の片面のみに電極の組が設けられている場合は、電極が設けられている面を上に向けて近紫外半導体発光素子3を設置し、各組の電極と各対配線20C、20Dとを例えば金製のワイヤ6でそれぞれ接続することによって、対配線20C、20Dと近紫外半導体発光素子3とを電気的に接続することができる。また、近紫外半導体発光素子3がフリップチップ(フェースダウン)の場合は、近紫外半導体発光素子3の電極と対配線20C、20Dとを金バンプや半田で接合することによって電気的に接続することができる。
【0033】
<近紫外半導体発光素子について>
ここで、近紫外半導体発光素子3は、電力が供給されることにより近紫外領域(発光波長360nm〜430nmの領域)の光を発光し、後述する蛍光発光部14A、14B(包括的に蛍光発光部14と称する場合もある。)を励起するものである。中でも、GaN系化合物半導体を使用したGaN系半導体発光素子が好ましい。なぜなら、GaN系半導体発光素子は、この領域の光を発するのに、発光出力や外部量子効率が格段に大きく、後述の蛍光体と組み合わせることによって、非常に低電力で非常に明るい発光が得られるからである。GaN系半導体発光素子においては、AlxGayN発光層、GaN発光層、またはInxGayN発光層を有しているものが好ましい。GaN系半導体発光素子においては、それらの中でInxGayN発光層を有するものが、発光強度が非常に強いので、特に好ましく、InxGayN層とGaN層の多重量子井戸構造のものが、発光強度が非常に強いので、特に好ましい。
【0034】
なお、上記組成式においてx+yの値は通常0.8〜1.2の範囲の値である。GaN系半導体発光素子において、これら発光層にZnやSiをドープしたものやドーパント無しのものが発光特性を調節する上で好ましいものである。
【0035】
GaN系半導体発光素子はこれら発光層、p層、n層、電極、及び基板を基本構成要素としたものであり、発光層をn型とp型のAlxGayN層、GaN層、またはInxGayN層などでサンドイッチにしたヘテロ構造を有しているものが、発光効率が高く、好ましく、さらにヘテロ構造を量子井戸構造にしたものが、発光効率がさらに高く、より好ましい。
【0036】
また、GaN系半導体発光素子を形成するためのGaN系結晶層の成長方法としては、HVPE法、MOVPE法(MOCVD法)、MBE法などが挙げられる。厚膜を形成する場合はHVPE法が好ましいが、薄膜を形成する場合はMOVPE法(MOCVD法)やMBE法が好ましい。
【0037】
以上のように、本実施例に係る照明装置8に採用される近紫外半導体発光素子3としては、種々の半導体発光素子が採用可能である。本明細書では、その一例として、サファイア基板上に、MOVPE法(MOCVD法)により、近紫外発光素子構造を有するエピ層を形成した、GaN系半導体発光素子を採用した。このとき、発光波長ピークは405nmであった。
【0038】
そして、図6に示すように、基板2上には、この近紫外半導体発光素子3から発せられる光の一部を吸収して異なる波長の光を発する複数あるいは単独の蛍光体及び該蛍光体を封止する透光性材料を含有する蛍光発光部14が、近紫外半導体発光素子3を覆って設けられている。尚、図6ではリフレクタ10の記載は省略されているが、このような形態もパッケージ1から構成される照明装置8の一形態となり得る。近紫外半導体発光素子3から発せられた光の一部は、蛍光発光部14内の発光物質(蛍光体)に励起光として一部又は全部が吸収される。より具体的に照明装置8における蛍光発光部について図5に基づいて説明すると、分割領域部12Aにおいては、蛍光発光部14Aが近紫外半導体発光素子3Aを覆い、且つその蛍光発光部14Aは分割開口部13Aにて露出される。また、分割領域部12Bにおいては、蛍光発光部14Bが近紫外半導体発光素子3Bを覆い、且つその蛍光発光部14Bは分割開口部13Bにて露出される。したがって、各蛍光発光部からの出力光は、各分割開口部から外部に出射されることになる。
【0039】
<蛍光発光部について>
照明装置8においては、二つの分割領域部12A、12Bが設けられるため、そこで各分割領域部から赤色領域の光と青色領域の光が出射されるように、蛍光発光部14A、14Bに含まれる蛍光体が選択される。本実施例では、蛍光発光部14Aには、近紫外半導体発光素子3Aの励起により赤色光を蛍光、発光する赤色蛍光体が含まれるものとし、蛍光発光部14Bには、近紫外半導体発光素子3Bの励起により青色光を蛍光、発光する青色蛍光体が含まれるものとする。
【0040】
ここで、本発明に好適な赤色蛍光体が発する蛍光の具体的な波長の範囲を例示すると、主発光ピーク波長が通常570nm以上、好ましくは580nm以上、特に好ましくは610nm以上であり、また、通常700nm以下、好ましくは680nm以下、特に好ましくは640nm以下である。また、主発光ピークの半値幅は、通常1nm以上、好ましくは10nm以上、特に好ましくは30nm以上であり、また通常120nm以下、好ましくは110nm以下、特に好ましくは100nm以下である。
【0041】
このような赤色蛍光体の一例として、高輝度CASNが採用できる。以下に、高輝度C
ASNの一つである、Ca0.985Eu0.015AlSiNの製造について説明する。まず、金属元素の仕込み組成比がCa0.985Eu0.015AlSi1.03となるようにCa、AlN、Si及びEuFをそれぞれ秤量する。具体的には、Ca(CERAC incorporated社製)を68.61g、AlN((株)トクヤマ社製)を57.37g、Si(宇部興産(株)社製)を74.61g及びEuF3(信越化学工業(株)社製)を2.34g用いた。
【0042】
これらの赤色蛍光体原料の粉末をNグローブボックス内でミキサーを用いて均一になるまで混合し、得られた混合物を、BN坩堝に充填し、軽く荷重を加えて充填物を圧縮成形した。これを抵抗加熱式真空加圧雰囲気熱処理炉(富士電波工業製)に内に設置し、<5×10−3Pa(即ち、5×10−3Pa未満)の減圧下、室温から800℃まで昇温速度10℃/minで真空加熱した。800℃に達したところで、その温度で維持して圧力が0.5MPaとなるまで高純度窒素ガス(99.9995%)を30分間で導入した。導入後、0.5MPaを保持しながら、さらに、昇温速度5℃/minで1800℃まで昇温し、その温度で3時間保持した後、室温まで放冷した。これにより、Ca0.985Eu0.015AlSiNが得られる。
【0043】
次に、本発明に好適な青色蛍光体が発する蛍光の具体的な波長の範囲を例示すると、主発光ピーク波長が通常430nm以上、好ましくは440nm以上であり、また、通常480nm以下、好ましくは460nm以下である。また、主発光ピークの半値幅が通常1nm以上、好ましくは10nm以上、特に好ましくは30nm以上で有り、また通常100nm以下、好ましくは80nm以下、特に好ましくは70nm以下である。
【0044】
このような青色蛍光体の一例として、高輝度BAMが採用できる。以下に、高輝度BAMの製造について説明する。青色蛍光体原料として、炭酸バリウム(BaCO)、酸化ユウロピウム(Eu)、塩基性炭酸マグネシウム(Mg1モルあたりの質量93.17)、及びα−アルミナ(Al)をそれぞれ重量にして0.552g、0.211g、0.373g、2.038g秤取して使用した。
【0045】
上述の蛍光体原料を乳鉢にて30分間混合した後、アルミナ製の坩堝に充填し、大気圧下、1200℃で5時間焼成した。得られた焼成物を塊砕し、アルミナ製の坩堝に充填し、水素4体積%含有窒素ガスを流しながら弱還元雰囲気下、1450℃で5時間焼成した。得られた焼成物を塊砕し、この塊砕物対して、0.8重量%のKFを添加して混合したものをアルミナ製の坩堝に充填した。焼成時に坩堝の周囲の空間にビーズ状グラファイトを設置することで還元雰囲気下とし、大気圧下、1550℃で5時間焼成した。得られた焼成物を塊砕し、分級し、洗浄することにより、青色蛍光体を得た。このようにして得られた青色蛍光体の組成式はBa0.7Eu0.3MgAl1017であった。また、得られた青色蛍光体について元素分析を行ったところ、Euが置換し得るサイト数に対するK(カリウム)の含有量は2.0モル%であり、F(フッ素)の含有量は0.3モル%であった。
【0046】
照明装置8は、上述の近紫外半導体発光素子3、赤色蛍光体および青色蛍光体を含む蛍光発光部14を備えていればよく、そのほかの構成は特に制限されない。ここで、近紫外半導体発光素子3および蛍光発光部14は、通常、近紫外半導体発光素子3の発光によって蛍光体が励起されて発光を生じ、この発光が、外部に取り出されるように配置されることになる。このような構造を有する場合、上述の近紫外半導体発光素子3および蛍光体は、通常は透光性材料(封止材料)で封止保護される。具体的には、この封止材料は、上記蛍光発光部14に含まれることで蛍光体を分散させて発光部分を構成したり、近紫外半導体発光素子3、蛍光体および基板2間を接着したりする目的で採用される。
【0047】
そこで、本実施例では蛍光発光部14Aおよび14Bに対する封止材料として、シロキサン結合を有する無機系材料(以下、シリコーン系材料と表す。)が採用できる。シリコーン系材料としては、例えば以下に説明する製造方法で合成したシリコーン系材料を使用することができる。モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製両末端シラノールジメチルシリコーンオイルXC96−723を385g、メチルトリメトキシシランを10.28g、及び、触媒としてジルコニウムテトラアセチルアセトネート粉末を0.791gを、攪拌翼と、分留管、ジムロートコンデンサ及びリービッヒコンデンサとを取り付けた500ml三つ口コルベン中に計量し、室温にて15分触媒の粗大粒子が溶解するまで攪拌した。この後、反応液を100℃まで昇温して触媒を完全溶解し、100℃全還流下で30分間500rpmで攪拌しつつ初期加水分解を行った。
【0048】
続いて留出をリービッヒコンデンサ側に接続し、窒素をSV20で液中に吹き込み生成メタノール及び水分、副生物の低沸ケイ素成分を窒素に随伴させて留去しつつ100℃、500rpmにて1時間攪拌した。窒素をSV20で液中に吹き込みながらさらに130℃に昇温、保持しつつ5.5時間重合反応を継続し、粘度389mPa・sの反応液を得た。なお、ここで「SV」とは「Space Velocity」の略称であり、単位時間当たりの吹き込み体積量を指す。よって、SV20とは、1時間に反応液の20倍の体積の窒素を吹き込むことをいう。そして、窒素の吹き込みを停止し反応液をいったん室温まで冷却した後、ナス型フラスコに反応液を移し、ロータリーエバポレーターを用いてオイルバス上120℃、1kPaで20分間微量に残留しているメタノール及び水分、低沸ケイ素成分を留去し、粘度584mPa・sの無溶剤のシリコーン系封止材液が得られた。
【0049】
上記の近紫外半導体発光素子3A、3Bを分割領域部12A、12Bに設置し、それに対して上記のようにして得られる赤色蛍光体と封止材料を分割領域部12Aに、青色蛍光体と封止材料を分割領域部12Bに封入することで、照明装置8が製造される。このとき、各分割領域部には、各蛍光体と封止材料に加えて、それらの粘性を調整するためのチキソ材として、乾式シリカのアエロジル(登録商標)が加えられる。この際に一つのパッケージ1において使用される青色蛍光体、赤色蛍光体、チキソ材、封止材料の配合は、図7に示す通りである。すなわち、分割領域部12Aに使用される赤色蛍光体は0.35g、分割領域部12Bに使用される青色蛍光体は0.76g、そして両分割領域部に使用されるチキソ材および封止材料は、それぞれ1.04g、8.30gである。
【0050】
このように構成された照明装置8からの照射光の光エネルギー図を図8Aに示す(図8Aの横軸は波長であり、縦軸は光エネルギーである。)。このとき、近紫外半導体発光素子3Aと3Bに配線20A、20Bを介して印加された電圧のデューティ比は50:50である。ここで、発光装置8からの照射光の波長領域を、380nm〜420nmを近紫外領域(EnUV)、420nm〜510nmを青色領域(EB)、510nm〜580nmを緑色領域(EG)、580nm〜680nmを赤色領域(ER)に区分けする。図8Aに示すように、照明装置8の光エネルギーのピークは近紫外領域でも現れているが、これは近紫外半導体発光素子3A、3Bからの直接の出射光によるものであり、人間の可視領域においては、青色領域と赤色領域においてピークが現れているのが分かる。そして、図3との対比からも明確なように、照明装置8からの照射光の光エネルギーのピークは、植物の持つクロロフィルの光の吸収度のピークとほぼ合致し、青色領域(450nm近傍)と赤色領域(650nm近傍)にピークを有する。そのため、照明装置8からの照射光は、植物の効率的な育成を可能とする。
【0051】
さらに、照明装置8は、間仕切り11で分割された二つの分割領域部12A、12Bにそれぞれ、4個の近紫外半導体発光素子3を光源とする近紫外光によって励起される赤色蛍光体を含む蛍光発光部14Aと青色蛍光体を含む蛍光発光部14Bが設けられ、且つリ
フレクタ10の内部において二つの分割領域部12A、12Bが、その出力光の出射口、即ち分割開口部13A、13Bを並べて一体的に設けられている。そして、各蛍光発光部14A、14Bからの出力光である、図8Aに示す赤色領域にピークを有する赤色蛍光と青色領域にピークを有する青色蛍光とは、それぞれ分割開口部13A、13Bから外部に出射される。ここで、この分割開口部から放出される赤色蛍光と青色蛍光は、蛍光体を含む蛍光発光部14を介して得られているため、近紫外半導体発光素子3A、3Bからの出力光が充分に散乱され、配光がランバーシアン的となり出射される。そのため、照明装置8としての照射光は、赤色蛍光と青色蛍光とが均一に合成した合成光となり、赤色と青色の色分離は極めて低く抑えることができる。
【0052】
このように、赤色領域の光と青色領域の光をそれぞれ、近紫外半導体発光素子で蛍光体を励起させることによる赤色蛍光と青色蛍光で形成することによって、育成すべき植物に対して、植物の育成に必要な赤色光と青色光をムラなく照射することができる。すなわち、照明装置8は、植物のクロロフィルに対して育成に必要な赤色と青色の光を効率的に行き渡らせることを可能とするものである。
【0053】
また、図8Aに示す光エネルギー分布を有する照明装置8からの照射光において、近紫外領域、青色領域、緑色領域、赤色領域のそれぞれにおける光エネルギーの総和の比率(面積率)を換算すると、図8Bに示すとおりである。なお、図8Bに示す各領域の光エネルギー比率は、近紫外領域、青色領域、緑色領域、赤色領域の四つの領域の光エネルギーの総和を100%としたものである。このとき近紫外領域の光エネルギー比率は7.9%、青色領域の光エネルギー比率は10.1%、緑色領域の光エネルギー比率は5.4%、赤色領域の光エネルギー比率は76.6%である。その結果、四つの領域のうち、緑色領域を除く領域の光エネルギーが占める割合(以下、「育成領域割合」という。)は全体の95%となり、また、青色領域の光エネルギーに対する赤色領域の光エネルギーの割合(以下、「赤色割合」という。)は7.6となる。
【0054】
この育成領域割合は、図3に示すように植物の育成に必要な、緑色領域を除く領域(すなわち、赤色領域、青色領域、近紫外領域)の光のエネルギーが示す割合を意味する。ここで、近紫外領域が育成領域割合に含まれるのは、近紫外領域では光の吸収度はピークとはならないものの、緑色領域に比べても極めて高い吸収度を示すクロロフィルが存在するからである(図3を参照。)。照明装置8からの照射光においては、この育成領域割合が95%以上となるのが好ましい。
【0055】
また、赤色割合については、植物における光合成の特性に応じて、その適正値が変動すると考えられる。一般に、植物にとって赤色光はその光合成に有効であって、青色光は植物の気孔の開閉を調整するのに有効であることが知られている。また、青色光はその一部が光合成にも有効であることも知られている。したがって、植物の効率的な育成を考えると、光合成に供する光の割合を多く保ちながら、必要量の気孔調整のための光も供給されるのが好ましい。そこで、育成する植物の種類に合わせて、赤色割合を調整するのが好ましい。一般に、多くの植物では2〜10程度の範囲で赤色割合を調整すればよいことが経験的に知られている。
【0056】
ここで、照明装置8は、赤色蛍光を出射する分割領域部12Aと青色蛍光を出射する分割領域部12Bとを有しており、更に各分割領域部に設けられた近紫外半導体発光素子3A、3Bには、それぞれ独立した配線20A、20Bが結線されている。そのため半導体発光素子3Aと半導体発光素子3Bに対してそれぞれ独立し電圧印加を行うことができ、以て上記赤色割合を調整することが可能である。例えば、配線20A、20Bに印加される矩形状の供給電圧のデューティ比を調整することで、赤色割合は調整可能である。
【0057】
<変形例1>
上述の実施例で示した照明装置8では、分割領域部12Aには赤色蛍光体を封入し、分割領域部12Bには青色蛍光体を封入した。しかし、上記のように一般的に植物の育成にとって、赤色光のエネルギーの割合が青色光のエネルギーの割合よりも高くなるため、すなわち赤色割合は比較的高く設定されることが多いため、パッケージ1に設けられた分割領域部に封入される赤色蛍光体の割合を増やすことも好ましい。そこで、図9に示すように、分割領域部12Aにおいては、図5に示す状態と同様に赤色蛍光体が含まれるように蛍光発光部14Aが形成されるが、分割領域部12Bにおいては、赤色蛍光体と青色蛍光体の両者が含まれるように蛍光発光部15Bが形成されてもよい。すなわち、図9に示す照明装置8は、図5に示す照明装置8よりも赤色割合を高く設定できる照明装置である。
【0058】
<変形例2>
上述の実施例では、一つのパッケージ1内に二つの分割領域部を形成し、それぞれから蛍光としての赤色光と青色光を出射する構成とした。このような構成に代えて、一つのパッケージに一種類の蛍光体を封入し、赤色蛍光を照射する赤色パッケージと青色蛍光を照射する青色パッケージとを準備し、これらのパッケージを様々な形態に並べることで照明装置8を構成してもよい。このとき、赤色パッケージからの赤色蛍光と青色パッケージからの青色蛍光との合成が良好に行われるように、例えば、赤色パッケージと青色パッケージを交互に並べる等の配慮をするのが好ましい。また、一つのパッケージにおいて分割領域部を設けずに、その内部に赤色蛍光体と青色蛍光体を混ぜ合わせた状態で封入してもよい。
【0059】
<変形例3>
本発明に係る照明装置8に採用できる赤色蛍光体、青色蛍光体、封止材料のその他の材料を以下に例示する。
【0060】
赤色蛍光体としては、例えば、赤色破断面を有する破断粒子から構成され、赤色領域の発光を行なう(Mg,Ca,Sr,Ba)Si:Euで表されるユウロピウム付活アルカリ土類シリコンナイトライド系蛍光体、規則的な結晶成長形状としてほぼ球形状を有する成長粒子から構成され、赤色領域の発光を行なう(Y,La,Gd,Lu)S:Euで表されるユウロピウム付活希土類オキシカルコゲナイド系蛍光体等が挙げられる。
【0061】
さらに、Ti、Zr、Hf、Nb、Ta、W、及びMoよりなる群から選ばれる少なくも1種の元素を含有する酸窒化物および/または酸硫化物を含有する蛍光体であって、Al元素の一部または全てがGa元素で置換されたアルファサイアロン構造をもつ酸窒化物を含有する蛍光体も用いることができる。なお、これらは酸窒化物および/または酸硫化物を含有する蛍光体である。
【0062】
また、そのほか、赤色蛍光体としては、(La,Y)S:Eu等のEu付活酸硫化物蛍光体、Y(V,P)O:Eu、Y:Eu等のEu付活酸化物蛍光体、(Ba,
Sr,Ca,Mg)SiO:Eu,Mn、(Ba,Mg)SiO:Eu,Mn等の
Eu,Mn付活珪酸塩蛍光体、(Ca,Sr)S:Eu等のEu付活硫化物蛍光体、YAlO:Eu等のEu付活アルミン酸塩蛍光体、LiY(SiO):Eu、Ca(SiO):Eu、(Sr,Ba,Ca)SiO:Eu、SrBaSiO:Eu等のEu付活珪酸塩蛍光体、(Y,Gd)Al12:Ce、(Tb,Gd)Al12:Ce等のCe付活アルミン酸塩蛍光体、(Ca,Sr,Ba)Si:Eu、(Mg,Ca,Sr,Ba)SiN:Eu、(Mg,Ca,Sr,Ba)AlSiN:Eu等のEu付活窒化物蛍光体、(Mg,Ca,Sr,Ba)AlSiN:Ce等のCe付活窒化物蛍光体、(Sr,Ca,Ba,Mg)10(PO)Cl:Eu,Mn
等のEu,Mn付活ハロリン酸塩蛍光体、BaMgSi:Eu,Mn、(Ba,
Sr,Ca,Mg)(Zn,Mg)Si:Eu,Mn等のEu,Mn付活珪酸塩蛍
光体、3.5MgO・0.5MgF・GeO:Mn等のMn付活ゲルマン酸塩蛍光体、Eu付活αサイアロン等のEu付活酸窒化物蛍光体、(Gd,Y,Lu,La):Eu,Bi等のEu,Bi付活酸化物蛍光体、(Gd,Y,Lu,La)S:Eu,Bi等のEu,Bi付活酸硫化物蛍光体、(Gd,Y,Lu,La)VO:Eu,Bi等のEu,Bi付活バナジン酸塩蛍光体、SrY:Eu,Ce等のEu,Ce付活硫化物蛍光体、CaLa:Ce等のCe付活硫化物蛍光体、(Ba,Sr,Ca)MgP:Eu,Mn、(Sr,Ca,Ba,Mg,Zn):Eu,Mn等のEu,Mn付活リン酸塩蛍光体、(Y,Lu)WO:Eu,Mo等のEu,Mo付活タングステン酸塩蛍光体、(Ba,Sr,Ca)Si:Eu,Ce(但し、x、y、zは、1以上の整数)等のEu,Ce付活窒化物蛍光体、(Ca,Sr,Ba,Mg)10(
PO)(F,Cl,Br,OH):Eu,Mn等のEu,Mn付活ハロリン酸塩蛍光
体、((Y,Lu,Gd,Tb)1−xScCe)(Ca,Mg)1−r(Mg,Zn)2+rSiz−qGeqO12+δ等のCe付活珪酸塩蛍光体等を用いることも可能である。
【0063】
また、赤色蛍光体としては、β−ジケトネート、β−ジケトン、芳香族カルボン酸、または、ブレンステッド酸等のアニオンを配位子とする希土類元素イオン錯体からなる赤色有機蛍光体、ペリレン系顔料(例えば、ジベンゾ{[f,f’]−4,4’,7,7’−
テトラフェニル}ジインデノ[1,2,3−cd:1’,2’,3’−lm]ペリレン)
、アントラキノン系顔料、レーキ系顔料、アゾ系顔料、キナクリドン系顔料、アントラセン系顔料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料、フタロシアニン系顔料、トリフェニルメタン系塩基性染料、インダンスロン系顔料、インドフェノール系顔料、シアニン系顔料、ジオキサジン系顔料を用いることも可能である。
【0064】
次に青色蛍光体としては、規則的な結晶成長形状としてほぼ六角形状を有する成長粒子から構成され、青色領域の発光を行なうBaMgAl1017:Euで表されるユウロピウム付活バリウムマグネシウムアルミネート系蛍光体、規則的な結晶成長形状としてほぼ球形状を有する成長粒子から構成され、青色領域の発光を行なう(Ca,Sr,Ba)(PO)Cl:Euで表されるユウロピウム付活ハロリン酸カルシウム系蛍光体、規則的な結晶成長形状としてほぼ立方体形状を有する成長粒子から構成され、青色領域の発光を行なう(Ca,Sr,Ba)Cl:Euで表されるユウロピウム付活アルカリ土類クロロボレート系蛍光体、破断面を有する破断粒子から構成され、青緑色領域の発光を行なう(Sr,Ca,Ba)Al:Euまたは(Sr,Ca,Ba)Al1425:Euで表されるユウロピウム付活アルカリ土類アルミネート系蛍光体等が挙げられる。
【0065】
また、そのほか、青色蛍光体としては、Sr:Sn等のSn付活リン酸塩蛍光体、SrAl1425:Eu、BaMgAl1017:Eu、BaAl13:Eu等のEu付活アルミン酸塩蛍光体、SrGa:Ce、CaGa:Ce等のCe付活チオガレート蛍光体、(Ba,Sr,Ca)MgAl1017:Eu、BaMgAl1017:Eu,Tb,Sm等のEu,Tb,Sm付活アルミン酸塩蛍光体、(Ba,Sr,Ca)MgAl1017:Eu,Mn等のEu,Mn付活アルミン酸塩蛍光体、(Sr,Ca,Ba,Mg)10(PO)Cl:Eu、(Ba,Sr,Ca)(
PO)(Cl,F,Br,OH):Eu,Mn,Sb等のEu,Tb,Sm付活ハロリ
ン酸塩蛍光体、BaAlSi:Eu、(Sr,Ba)MgSi:Eu等のEu付活珪酸塩蛍光体、Sr:Eu等のEu付活リン酸塩蛍光体、ZnS:Ag、ZnS:Ag,Al等の硫化物蛍光体、YSiO:Ce等のCe付活珪酸塩蛍光体、CaWO等のタングステン酸塩蛍光体、(Ba,Sr,Ca)BPO:Eu,Mn
、(Sr,Ca)10(PO)・nB:Eu、2SrO・0.84P・0.16B:Eu等のEu,Mn付活硼酸リン酸塩蛍光体、SrSi・2SrCl:Eu等のEu付活ハロ珪酸塩蛍光体等を用いることも可能である。
【0066】
また、青色蛍光体としては、例えば、ナフタル酸イミド系、ベンゾオキサゾール系、スチリル系、クマリン系、ピラゾリン系、トリアゾール系化合物の蛍光色素、ツリウム錯体等の有機蛍光体等を用いることも可能である。
【0067】
さらに封止材料としては、通常、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂等が挙げられるが、近紫外半導体発光素子3はその出力光の波長が360nm〜430nmの近紫外領域にあるため、その出力光に対して充分な透明性と耐久性のある樹脂が封止材料として好ましい。そこで、封止材料として、具体的には、ポリ(メタ)アクリル酸メチル等の(メタ)アクリル樹脂;ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体等のスチレン樹脂;ポリカーボネート樹脂;ポリエステル樹脂;フェノキシ樹脂;ブチラール樹脂;ポリビニルアルコール;エチルセルロース、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート等のセルロース系樹脂;エポキシ樹脂;フェノール樹脂;シリコーン樹脂等が挙げられる。また、無機系材料、例えば、金属アルコキシド、セラミック前駆体ポリマー若しくは金属アルコキシドを含有する溶液をゾル−ゲル法により加水分解重合して成る溶液又はこれらの組み合わせを固化した無機系材料、例えばシロキサン結合を有する無機系材料やガラスを用いることもできる。
【0068】
これらのうち、耐熱性、耐紫外線(UV)性等の点から、珪素含有化合物であるシリコーン樹脂や金属アルコキシド、セラミック前駆体ポリマー若しくは金属アルコキシドを含有する溶液をゾル−ゲル法により加水分解重合して成る溶液またはこれらの組み合わせを固化した無機系材料、例えばシロキサン結合を有する無機系材料が好ましい。特に、以下の特徴(1)〜(3)のうち1つ以上を、好ましくは全てを有するシリコーン系材料やシリコーン樹脂(以下「本発明のシリコーン系材料」と称す場合がある。)が好ましい。
【0069】
(1)固体Si−核磁気共鳴(NMR)スペクトルにおいて、下記(i)および/または(ii)のピークを少なくとも1つ有する。
(i)ピークトップの位置がケミカルシフト−40ppm以上、0ppm以下の領域にあり、ピークの半値幅が0.3ppm以上、3.0ppm以下であるピーク。
(ii)ピークトップの位置がケミカルシフト−80ppm以上、−40ppm未満の領域にあり、ピークの半値幅が0.3ppm以上5.0ppm以下であるピーク。
(2)珪素含有率が20重量%以上である。
(3)シラノール含有率が0.01重量%以上、10重量%以下である。
【0070】
ここで、上記封止剤としてのシリコーン系材料については、上記の通り、珪素含有率が20重量%以上であるものが好ましい。従来のシリコーン系材料の基本骨格は炭素−炭素及び炭素−酸素結合を基本骨格としたエポキシ樹脂等の有機樹脂であるが、これに対し本発明のシリコーン系材料の基本骨格はガラス(ケイ酸塩ガラス)などと同じ無機質のシロキサン結合である。このシロキサン結合を有するシリコーン系材料は、(I)結合エネルギーが大きく、熱分解・光分解しにくいため、耐光性が良好である、(II)電気的に若干分極している、(III)鎖状構造の自由度は大きく、フレキシブル性に富む構造が可能で
あり、シロキサン鎖中心に自由回転可能である、(IV)酸化度が大きく、これ以上酸化されない、(V)電気絶縁性に富む等の優れた特徴を有する。
【0071】
これらの特徴から、シロキサン結合が3次元的に、しかも高架橋度で結合した骨格で形成されるシリコーン系材料は、ガラス或いは岩石などの無機質に近く、耐熱性・耐光性に富む保護皮膜となることが理解できる。特にメチル基を置換基とするシリコーン系材料は
、紫外領域に吸収を持たないため光分解が起こりにくく、耐光性に優れる。
【0072】
本発明のシリコーン系材料の珪素含有率は、上述の様に20重量%以上であるが、中でも25重量%以上が好ましく、30重量%以上がより好ましい。一方、上限としては、SiOのみからなるガラスの珪素含有率が47重量%であるという理由から、通常47重量%以下の範囲である。
【符号の説明】
【0073】
1・・・・パッケージ
2・・・・基板
3、3A、3B・・・・近紫外半導体発光素子
8・・・・照明装置
10・・・・リフレクタ
11・・・・間仕切り
12、12A、12B・・・・分割領域部
13・・・・開口部
13A、13B・・・・分割開口部
14、14A、14B・・・・蛍光発光部
20、20A、20B・・・・配線
20C、20D・・・・対配線
40・・・・生産装置
41・・・・照明ベース
42・・・・生産ベース
43・・・・支持ポール
44・・・・太陽電池
45・・・・バッテリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物の育成に必要な光を供給する照明装置であって、
近紫外領域又は紫外領域に発光領域を有する半導体発光素子と、
前記半導体発光素子からの発光で励起し赤色光を蛍光する赤色蛍光体と、
前記半導体発光素子からの発光で励起し青色光を蛍光する青色蛍光体と、
を備え、
前記赤色蛍光体により蛍光される赤色光と前記青色蛍光体により蛍光される青色光が合成され、当該合成光が植物に照射される
ことを特徴とする植物育成用の照明装置。
【請求項2】
前記照明装置の出射方向に開口部を有するパッケージを更に備え、
前記半導体発光素子は、前記パッケージ内に設けられ、
前記赤色蛍光体及び前記青色蛍光体は、混ぜ合わされた状態で前記パッケージ内に設けられる
ことを特徴とする請求項1に記載の植物育成用の照明装置。
【請求項3】
前記照明装置の出射方向にそれぞれ開口部を有する第1パッケージ及び第2パッケージを更に備え、
前記半導体発光素子及び前記赤色蛍光体は、前記第1パッケージ内に設けられ、
前記半導体発光素子及び前記青色蛍光体は、前記第2パッケージ内に設けられる
ことを特徴とする請求項1に記載の植物育成用の照明装置。
【請求項4】
前記赤色蛍光体は、前記第2パッケージ内にも更に設けられる
ことを特徴とする請求項3に記載の植物育成用の照明装置。
【請求項5】
前記第1パッケージ及び前記第2パッケージは、交互に並べられる
ことを特徴とする請求項3又は4に記載の植物育成用の照明装置。
【請求項6】
前記照明装置の出射方向に開口部を有するパッケージであって、前記開口部の一部をそれぞれ含むように、前記パッケージの内部が複数の分割領域部に分割されるパッケージを更に備え、
前記半導体発光素子及び前記赤色蛍光体は、前記パッケージ内の一の分割領域部内に設けられ、
前記半導体発光素子及び前記青色蛍光体は、前記パッケージ内の前記一の分割領域とは異なる他の分割領域部内に設けられる
ことを特徴とする請求項1に記載の植物育成用の照明装置。
【請求項7】
前記赤色蛍光体は、前記他の分割領域部内にも更に設けられる
ことを特徴とする請求項6に記載の植物育成用の照明装置。
【請求項8】
前記青色蛍光体から出射される青色光のエネルギーに対する前記赤色蛍光体から出射される赤色光のエネルギーの比は、2以上10以下である
ことを特徴とする請求項1乃至7の何れか1項に記載の植物育成用の照明装置。
【請求項9】
前記半導体発光素子、前記赤色蛍光体および前記青色蛍光体によって植物に照射される光のエネルギーのうち、前記半導体発光素子による近紫外光又は紫外光の領域から前記赤色蛍光体による赤色光の領域に至る範囲の全光エネルギーに対する、前記赤色蛍光体による赤色光のエネルギーと、前記青色蛍光体による青色光のエネルギーと、前記半導体発光素子による近紫外光又は紫外光のエネルギーの総和エネルギーの占める割合は、95%以
上である
ことを特徴とする請求項1乃至8の何れか1項に記載の植物育成用の照明装置。
【請求項10】
前記青色蛍光体の半値幅は、50nm以上であることを特徴とする請求項1乃至9の何れか1項に記載の植物育成用の照明装置。
【請求項11】
前記赤色蛍光体の半値幅は、80nm以上であることを特徴とする請求項1乃至10の何れか1項に記載の植物育成用の照明装置。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−46621(P2013−46621A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−221181(P2012−221181)
【出願日】平成24年10月3日(2012.10.3)
【分割の表示】特願2008−194174(P2008−194174)の分割
【原出願日】平成20年7月28日(2008.7.28)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】