説明

植物育成用箱体、および、植物育成用箱体ユニット

【課題】構造が簡単であって、従来より水やりが楽な植物育成用箱体、および、植物育成用箱体ユニットを提供する。
【解決手段】底部2と、この底部の縁から起立した側壁部3とを有し、上面が開放して内部に収納空部4を有する植物育成用箱体であって、前記側壁部と底部の内面に、合成繊維を植毛加工した植毛層5を形成し、底部は、一部を他の底部の内面よりも低く設定して低位部分を形成し、この低位部分の最下位置よりも高い位置に水抜き穴6を開設し、この水抜き穴よりも低い低位部分を水貯留部7とし、この水貯留部から水抜き穴の周囲を含む底部の植毛層と側壁部の植毛層とを一連に連続させ、水貯留部内に溜まった水を底部から側壁部の植毛層を介して側壁部の内面に供給して土に水を補給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、草花などの植物を植えるプランタやコンテナなどに使用される植物育成用箱体、および、植物育成用箱体ユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より草花などの植物は、路地植えのほか鉢植えなどにして広く鑑賞に供されてきた。そして、この様な植物を育成するための植木鉢は、陶磁器が一般的であったが、近年、プラスチック製のものも広く使用されるに至っており、複数の草花を植えられることからプランタなど箱状のものも普及している。
このような植木鉢やプランタなどは、単に土を収納する容器であり、収納した土の量によって保水量にも限界がある。このため、鉢植えの草花には、毎日水をやることが必要とされてきた。
しかしながら、毎日水やりに要する手間は少なからず面倒であり、この水やりの手間を省くために、内面に植毛して保水性をもたせた植木鉢が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第3051923号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記した植木鉢は、単に鉢の内面に長繊維の植毛を施して植木鉢自体に保水性をもたせたものであり、確かに陶磁器やプラスチックの内面に比較すれば保水性が向上したと思われる。ところが、実際には植物が吸収する水量と土の表面から蒸発する水量とを考慮すると、植木鉢の内面の植毛による保水性を付与しただけでは給水量が不足し、水やりの手間を軽減するまでに至っていない。また、保水性を高めるために、内部にスポンジなどの保水材を接着することも考えられるが、これでは製造工程が増えるし構造も複雑化するばかりか、大きさの割には収納する土の量が減ってしまい植物への栄養素補給の面からも好ましくない。
【0005】
本発明は、上記した事情に鑑みなされたものであり、その目的は、構造が簡単であって、従来より水やりが楽な植物育成用箱体、および、植物育成用箱体ユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は前記した目的を達成するために提案されたものであり、請求項1に記載のものは、底部と、この底部の縁から起立した側壁部とを有し、上面が開放して内部に収納空部を有する植物育成用箱体であって、
前記側壁部と底部の内面に、合成繊維を植毛加工した植毛層を形成し、
底部は、一部を他の底部の内面よりも低く設定して低位部分を形成し、この低位部分の最下位置よりも高い位置に水抜き穴を開設し、この水抜き穴よりも低い低位部分を水貯留部とし、この水貯留部から水抜き穴の周囲を含む底部の植毛層と側壁部の植毛層とを一連に連続させたことを特徴とする植物育成用箱体である。
【0007】
請求項2に記載のものは、前記側壁部と底部とを金属板を塑性加工することにより形成し、前記低位部分の最下位置を同一平面上に位置するように揃えたことを特徴とする請求項1に記載の植物育成用箱体である。
【0008】
請求項3に記載のものは、請求項1または2に記載の植物育成用箱体を、上下間隔を空けた状態で複数段配置するとともに、上下に位置する植物育成用箱体の間に連結部材を設けて一体化したことを特徴とする植物育成用箱体ユニットである。
【0009】
請求項4に記載のものは、前記した各植物育成用箱体を水平方向の長さを同じ長さの長尺に形成し、各植物育成用箱体の両端に位置して端部側壁部となる面を共通の縦長な板材により構成し、この縦長な板材を端部側壁部を兼ねた連結部材としたことを特徴とする請求項3に記載の植物育成用箱体ユニットである。
【0010】
請求項5に記載のものは、前記連結部材に、各植物育成用箱体の端部を止着する止着部を複数設け、これら止着部のうちから使用する止着部を選択することにより植物育成用箱体の上下位置を調整可能としたことを特徴とする請求項4に記載の植物育成用箱体ユニットである。
【0011】
請求項6に記載のものは、前記連結部材に吊り掛け具を備え、この吊り掛け具をベランダや壁面などの建築物に引っ掛けて支持可能としたことを特徴とする請求項3から請求項5のいずれかに記載の植物育成用箱体ユニットである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、側壁部と底部の内面に、合成繊維を植毛加工した植毛層を形成し、底部は、一部を他の底部の内面よりも低く設定して低位部分を形成し、この低位部分の最下位置よりも高い位置に水抜き穴を開設し、この水抜き穴よりも低い低位部分を水貯留部とし、この水貯留部から水抜き穴の周囲を含む底部の植毛層と側壁部の植毛層とを一連に連続させたので、十分な量の水をやると、その一部が側壁部の植毛層で保水されたり、あるいは水貯留部に溜まり、余分な水は、水抜き穴から外部に排水される。水貯留部に水が溜まると、この水は、水貯留部の内面の植毛層から出発して、一連の植毛層の毛細管力により、底部の植毛層から各側壁部の植毛層に伝わって進み、底部を拡散するだけでなく、起立した側壁部の内面の植毛層を上昇する。したがって、水貯留部内に水が貯留していれば、土によって水分が吸収されてその保水量が減ると、植物育成用箱体の底部と側壁部の内面全体の植毛層に水貯留部から伝わってきた水が補給される。このため、土中の水分が植物に吸い上げられたり蒸発した場合には、周囲の植毛層内に保持された水が土中に補給されることとなり、土中の水不足を防止することができ、これにより水やりの省力化を図ることができる。
【0013】
請求項2に記載の発明によれば、側壁部と底部とを金属板を塑性加工することにより形成したので、製造が容易であり、また、前記低位部分の最下位置を同一平面上に位置するように揃えたので、床面等に置いた状態での安定性が良い。
【0014】
請求項3に記載の発明によれば、請求項1または2に記載の植物育成用箱体を、上下間隔を空けた状態で複数段配置するとともに、上下に位置する植物育成用箱体の間に連結部材を設けて一体化して植物育成用箱体ユニットとしたので、専有スペースの割りに多くの草花を植えることができる。
【0015】
請求項4に記載の発明によれば、前記した各植物育成用箱体を水平方向の長さを同じ長さの長尺に形成し、各植物育成用箱体の両端に位置して端部側壁部となる面を共通の縦長な板材により構成し、この縦長な板材を端部側壁部を兼ねた連結部材としたので、構造が簡単で製造も容易であって、専有面積の割りに多くの草花を植えることができる植物育成用箱体ユニットを提供することができる。
【0016】
請求項5に記載の発明によれば、前記連結部材に、各植物育成用箱体の端部を止着する止着部を複数設け、これら止着部のうちから使用する止着部を選択することにより植物育成用箱体の上下位置を調整可能としたので、植える草花の背丈に応じた上下間隔に設定することができ、草花にとって良好な環境を整えることができる。
【0017】
請求項6に記載の発明によれば、前記連結部材に吊り掛け具を備え、この吊り掛け具をベランダや壁面などの建築物に引っ掛けて支持可能としたので、マンションなどのスペースに限定のある場所であっても簡単に設置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】(a)は植物育成用箱体の斜視図、(b)は(a)に示す植物育成用箱体の左側の端部側壁部を取り外した状態を示す一部省略斜視図である。
【図2】(a)は植物育成用箱体を3段にした植物育成用箱体ユニットの正面図、(b)は(a)に示す植物育成用箱体ユニットの一部省略拡大斜視図である。
【図3】(a)は植物育成用箱体の他の実施形態の斜視図、(b)は(a)に示す植物育成用箱体の断面図、(c)は(a)に示す植物育成用箱体の組み立て前の金属板の平面図である。
【図4】(a)は植物育成用箱体の他の実施形態の一部省略斜視図、(b)は(a)に示す植物育成用箱体の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。
図1(a)は、本発明に係る植物育成用箱体の斜視図、(b)は(a)に示す植物育成用箱体の左側の端部側壁部を取り外した状態を示す一部省略斜視図である。
【0020】
図1に示す植物育成用箱体1は、単独で庭やベランダ等に載置してプランタあるいはコンテナとして使用されるもので、長方形の底部2と、この底部2の対向する長い前後の辺の縁からそれぞれ起立した前後の側壁部3a,3bと、底部2の短尺な縁からそれぞれ起立した左右端部の側壁部3c,3dを有し、これら4つの側壁部3a,3b,3c,3dに囲まれて上面が開放して内部に収納空部4を有する箱体である。そして、前記した各側壁部3a,3b,3c,3dと底部2は、金属板の表面(箱体の内側の面)に、ナイロン66などの短い合成繊維を植毛加工した植毛層5(図1(b)中、網掛けで表示)が形成された板材が使用されている。植毛加工は、所定の厚さに圧延した鉄板の表面に、亜鉛メッキ等の表面処理を施した後に、アクリル系接着剤などの接着剤を塗布して接着剤層を形成し、この接着剤層に、静電気で起立させた状態でナイロン66の短繊維を密に植毛する加工を挙げることができるが、これに限るものではなく、植毛による保水性、導水性を備えた植毛層5を形成することができればどのような加工方法でもよい。
【0021】
底部2は、一部を他の底部2の内面よりも低く設定して低位部分を形成し、この低位部分の最下位置よりも高い位置に水抜き穴6を開設し、この水抜き穴6よりも低い低位部分を水貯留部7とし、この水貯留部7から水抜き穴6の周囲を含む底部2の植毛層5と側壁部3の植毛層5とを一連に連続させてある。具体的には、底部2の長辺の縁に沿った一部を、断面が矩形乃至台形或いはV字状の溝を低位部分として長手方向に形成し、この両側の溝の底よりも高い開口の各内側縁を平坦な面で連結し、この平坦面のほぼ中央に丸い水抜き穴6を長手方向に沿って複数個開設してある。そして、前記した平坦面とは反対側に位置する溝の開口の縁を垂直に起立させて前後の側壁部3a,3bを形成する。なお、側壁部3a,3bの上端は、内側(底面側)に折り返すこと(ヘミング折り)により丸みを持たせてある。
【0022】
この様にして植毛層5を有する鉄板を折り曲げ加工することにより底部2と前後の側壁部3a,3bを形成するとともに、底部2に水抜き穴6を打ち抜き加工により開設すると、底部2の長辺に沿って形成された2本の溝が水貯留部7となり、この水貯留部7から水抜き穴6の周囲を含む底部2の植毛層5と側壁部の植毛層5とが途中で切れることなく一連に連続している。
【0023】
また、左右端部の側壁部3c,3dは、底部2と前後の側壁部3a,3bの端側部とにより囲まれた開口(小口)を閉塞する壁であり、本実施形態では、底部2と前後の側壁部3a,3bとに使用した金属板と同じ金属板(植毛層5を予め形成した鉄板)を折り曲げ加工することにより構成されている。具体的には、前後の側壁部3a,3bの端側部の間の開口よりも僅か(鉄板の板厚分相当)だけ大きな壁面の側縁から接続片3e,3fを壁面に対して底部側に向けてほぼ直角に屈曲して形成する。この様にして形成した左右の側壁部3c,3dを前後の側壁部3a,3bに取り付けるには、両側の接続片3e,3fを側壁部3a,3bに向けて側壁部3a,3b端側部の間の開口に臨ませ、接続片3e,3fを側壁部3a,3bの端側部に重ね合わせ、この重合部をネジ、リベット、カシメ、ファスナなどの公知の止着手段により止着して固定する。そして、この側壁部3c,3dの内面と水貯留部7の端部との間の隙間にシール剤を充填して水貯留部7のシールする。この様にしてシールすると、水貯留部7内の水が底部2や側壁部3との接合部分から不用意に漏れ出すことを防止することができる。
【0024】
なお、図1に示す側壁部3c,3dは、壁面の両側にのみ接続片3e,3fを折り曲げ加工により形成したが、壁面の上縁と下縁と左右側縁の4辺から壁面に対して直角に、すなわち水平方向に屈曲辺3gを形成し、下縁から延設した屈曲辺3hを形成してもよい。この場合、絞り加工によっても成型することができる。
【0025】
この様な構成から成る植物育成用箱体1を使用する場合には、水抜き穴6に適当な大きさの石や網を載せて土砂落下防止策を施し、その後、収納空部4内に腐葉土などを混ぜた土を入れる。そして、好みの草花を植え、ジョウロなどを使用してできるだけ均一に水をやる。
なお、水貯留部7の開口上面に網やパンチングボードなどの多孔質材を設け、水貯留部7内に水が流れ込んでも土砂は流れ込み難いようにして、水貯留部7内における貯水量が土砂の流入によって減少しないように構成しても良い。
【0026】
この様にして水を土に供給すると、表面の土からその下の土へと次第に深くしみこんで土が湿る。すなわち、表面の土から次第に深くしみこんで土の粒子間に保水される。また、前後および左右端部の側壁部3a,3b,3c,3dに水が到達すると、各側壁部3の内面の植毛層5が保水力を備えているので、各側壁部3の内面が単に水でぬれるだけでなく植毛層5で保水される。
【0027】
そして、土の表面から供給され水の量が増して、上の土から順にその部分での保水能力を超えると、超えた分はすべてその下の土にしみ込むようにして順次流下し、底部2の平坦部まで流下した水は平坦部上を広がってゆく。そして、水抜き穴6に到達した水は当該水抜き穴6から外部に排水されてしまう。一方、水抜き穴6に到達せずに平坦部上を広がって流れた水は、最終的には平坦部から水貯留部7に流れ込んで貯留される。なお、水をやり過ぎた場合などにおいて、土による保水能力を超えて、さらに水貯留部7が満杯になると、その後、超過した水は水抜き穴6から外部に排出される。したがって、底部2に水貯留部7を設けても、根が腐るほどの水が底部2に溜まることは未然に防止される。
【0028】
前述したように、表面の土に水をやると、水が表面の土から次第に深くしみこんで土の粒子間に保水されるとともに、前後および左右端部の側壁部3a,3b,3c,3dの内面の植毛層5に保水されるので、その後、植物が土の中の水分を吸収したり土の表面から蒸発するなどして土中の水分が減少すると、各側壁部3の植毛層5中に保持されていた水分が土の中にしみだして土を湿らす。言い換えると、土中の水分が減少して乾燥すると、この土は植毛層5内に保持されていた水分を吸収し、水分率を高める。
【0029】
また、本発明に係る植物育成用箱体1においては、十分な水やりの際に底部2の水貯留部7に水が溜められているので、この水貯留部7内の水が、水貯留部7の内面の植毛層5から出発して、一連の植毛層5の毛細管力により、底部2の植毛層5から各側壁部3の植毛層5に伝わって進み、底部2の平坦部を水平方向に拡散するだけでなく、ほぼ垂直に起立した各側壁部3の内面を植毛層5を上昇する。したがって、水貯留部7内に水が貯留していれば、土中の水分が吸収されて保水分量が減った場合に、植物育成用箱体1の底部2と側壁部の内面全体の植毛層5に水貯留部7から伝わってきた水が補給される。このため、土中の水分が植物に吸い上げられたり蒸発した場合には、周囲の植毛層5内に保持された水が土中に補給され、これにより土中の水不足を防止することができ、このため、水やりの間隔を従来よりも長くあけても支障がなくなる。
【0030】
なお、植毛層5は、一定の密度で合成短繊維が密集しているので、毛細管力がどの部位でも同じように発揮することができる。このため、粒度が大きく異なって変動の大きな土の水浸透力に比較して、水を伝える能力は植毛層5の方が遥かに優れており、水貯留部7内の水は、当該水貯留部7内の植毛層5から一連に繋がった植毛層5を伝わって安定して各側壁部3の植毛層5に補給される。特に、腐葉土を混ぜた土の場合には、枯れた枝葉が入っているので土による水の浸透力が不安定であり、水貯留部7から水を上方に浸透させ難い。これに対して、底部2から側壁部3へ一連に繋がった植毛層5であれば、毛細管力による安定した水運搬力を期待することができる。したがって、土による水の浸透力にすべて依存することに比較すれば、一連の植毛層5による水補給機能の方が、より安定して、確実に植物への水の供給が可能となる。
【0031】
次に、植物育成用箱体1を複数段配置するとともに、上下に位置する植物育成用箱体1の間に連結部材を設けて一体化してユニット化した植物育成用箱体ユニットについて説明する。
図2に示す植物育成用箱体ユニット10は、3つの植物育成用箱体1を水平方向に同じ長さで長尺に形成し、各植物育成用箱体1の両端に位置して端部側壁部3´となる面を共通の縦長な板材により構成して該板材を端部側壁部3´を兼ねた連結部材11としたものであり、植物育成用箱体1、端部側壁部3´となる縦長な板材のいずれもが植毛層5が形成された金属板から構成されている。
【0032】
植物育成用箱体1の底部2と前後の側壁部3a,3bとは、一枚の金属板をベンダーで折り曲げ加工することにより略樋状に形成される。具体的には、前後幅のほぼ中央を最下位置として断面がほぼV字状となるように折り曲げた長方形の底部2と、この底部2の長尺な辺から上方に垂直に起立するように折り曲げた前後の側壁部3a,3bとを形成し、最下位置である中央の折り曲げ部分から底部幅方向に少し外れた傾斜底面に水抜き穴6を打ち抜き加工して開設し、前後の側壁部3a,3bの左右の端部に、止着孔12を上下に2つ開設する。本実施形態では、水抜き穴6を開設した傾斜底面の当該水抜き穴6の丸い縁のうち最も低い部分よりもさらに低い部位に形成されたV字状溝が水貯留部7となり、この水抜き穴6の周囲を含む底部2の植毛層5と側壁部の植毛層5とが一連に繋がっている。
【0033】
そして、前記した略樋状の部材を上下に連結する縦長な連結部材11は、略樋状部材の左右端部の開口(小口)よりも僅かに幅広であって、一方の表面に植毛層5を形成した上下方向長尺な金属板を折り曲げ加工することにより構成する。具体的には、板材の幅のほぼ中央部分を、略樋状部材の左右端部の開口と同じ幅の左右両側縁部分と設定し、この左右側縁部分の端部から外側の部分を、植毛層5が内側になるようにして左右側縁部分に対して略樋状部材側に90度同じ方向に折り曲げ、左右側縁部分と折り曲げた状側の部分とが断面コ字状となるように成型し、折り曲げた部分に止着孔13を複数打抜加工により開設する。これら止着孔13はすべての略樋状部材の取り付けに必要な数(3つ分)よりも多く開設してあり、植える植物の背丈を考慮して上下間隔を調整しながら所望する高さを選択して取り付けられるように構成してある。したがって、植える植物の背丈に応じて止着孔13を選択して前記略樋状部材を両縦長連結部材11の間に臨ませ、止着孔12,13同士を連通させた状態でネジ等の止着手段を止着孔12,13内に通して固定し、この操作を繰り返すと、図2(a)に示すように、両縦長連結部材11の間に、所望する上下間隔を空けた状態で複数の植物育成用箱体1を取り付けて一体化した植物育成用箱体ユニット10とすることができる。なお、段数やサイズは、前記に限らず適宜設計変更することができる。
【0034】
前記した操作により組み付けた植物育成用箱体ユニット10は、各段の箱体1内に土を入れて庭やベランダ等の床面上に載置した状態で使用することができ、また、図2(b)に示すように、縦長連結部材11の上端にフック状の吊り下げ具14を固定しておくと、この吊り下げ具14をベランダの笠木に引っ掛けて吊り下げた状態で使用することもできる。
【0035】
次に、図3に示す他の実施形態について説明する。
この植物育成用箱体1は、タレットパンチ等により所定の形状に切断した一枚の金属板を折り曲げ加工することにより上面が開口した箱体に組み立てたものである。具体的には、図3(c)に示すように、表面に植毛層5が形成された金属板において、図中左右方向に長尺な長方形の底部2を設定し、この底部2の両側の長辺縁の内側には水貯留部7となる部分7´を縁に沿ってそれぞれ帯状に設定し、底部2の長辺の縁の外側に側壁部3a,3bとなる部分を底部2の長辺の長さと同じ長さで箱体1の深さ分Hに相当する幅でそれぞれ長方形に設定し、両長方形部分の短辺に連続して折り曲げ片3´を形成し、底部2の短辺の外側に、左右の側壁部3c,3dの主要部となる部分を底部2の短辺の平坦部Lの長さと同じ長さLで箱体の平坦部までの深さに相当する幅でそれぞれ長方形に設定し、底部2の幅のほぼ中央に水抜き穴6を複数個一列に並べて開設する。
【0036】
この様な形状に切断した金属板を図3(c)に示すように、点線については山折、二点鎖線については谷折して組み立てると、図3(a),(b)に示すように、長方形を呈する底部2の長辺の縁の内側に断面略V字状乃至レ字状の溝が水貯留部7として形成され、水貯留部7から外れて水貯留部7よりも高い位置の底部2の平坦部に水抜き穴6が開口し、底部2の長辺の縁、すなわち水貯留部7の最も深い底から前後の側壁部3a,3bが垂直に起立し、底部2の短辺から左右の側壁部3c,3dの主要部が垂直に起立し、この左右の側壁部3c,3dの主要部の外面に、前後の側壁部3a,3bの端部から直角に折り曲げた折り曲げ片3´が重なって該折り曲げ片3´と前記主要部とで左右の側壁部3c,3dを構成し、これにより前後の側壁部3a,3bの開口(小口)を閉塞する。そして、前記重合部分をネジやカシメ或いは溶接などの公知止着手段により止着するとともにシール材によりシール処理すると、上面が開口して底部2の両側に溝状の水貯留部7が形成され、この水貯留部7から水抜き穴6の周囲を含む底部2の植毛層5と側壁部の植毛層5とを一連に連続した植物育成用箱体1とすることができる。
【0037】
この植物育成用箱体1においても、収納空部4内に土を入れて植物を植え、十分な量の水をやると、水貯留部7内に水が溜まって余分が水は水抜き穴6から排出される。したがって、植物の根腐れが防止された状態で、水貯留部7内に溜まった水が一連に繋がった植毛層5を介して側壁部の内面に供給され、土中の水分が減少しても植毛層5を介して水貯留部7から少しずつ補給することができ、従来の水やりの頻度よりも少ない頻度で水をやれば済む。したがって、水やりの手間を従来よりも軽減することができる。
【0038】
なお、本発明は、前記した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲において設計変更することができる。
例えば、本発明における水貯留部7は、底部2の一部を他の底部2の内面よりも低く設定して低位部分を形成することにより構成されていればどのような形状、配置でもよい。具体的には、図4に示すように、底部2の一部を絞り加工することにより溝を成型して当該溝を水貯留部7としてもよい。また、前記した各実施形態における側壁部3は単なる平面であったが、この側壁部3にビード20を成型して全体剛性を高めても良い。さらに、連結部材は、前記したものに限らず上下の植物育成用箱体を連結することができればどのような構成でもよい。例えば、柱状部材、板材でもよく、また、吊り下げ具により吊り下げる場合には鎖やロープなどでもよい。
【0039】
また、水貯留部7の形状は、前記した断面矩形、断面三角形に限定されるものではなく、断面が半円状あるいは蒲鉾形でもよい。そして、いずれの水貯留部においても、底部2に形成した低位部分の最下位置を同一平面上に位置するように揃えると、床面等に載置した際に安定性が良好である。
さらに、本発明は、家庭の観賞用草花に限らず、苗木の育成等の園芸業務に使用することもできる。
【符号の説明】
【0040】
1 植物育成用箱体
2 底部
3 側壁部
4 収納空部
5 植毛層
6 水抜き穴
7 水貯留部
10 植物育成用箱体ユニット
11 連結部材
12 略樋状部材側の止着孔
13 連結部材側の止着孔
14 吊り下げ具
20 ビード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底部と、この底部の縁から起立した側壁部とを有し、上面が開放して内部に収納空部を有する植物育成用箱体であって、
前記側壁部と底部の内面に、合成繊維を植毛加工した植毛層を形成し、
底部は、一部を他の底部の内面よりも低く設定して低位部分を形成し、この低位部分の最下位置よりも高い位置に水抜き穴を開設し、この水抜き穴よりも低い低位部分を水貯留部とし、この水貯留部から水抜き穴の周囲を含む底部の植毛層と側壁部の植毛層とを一連に連続させたことを特徴とする植物育成用箱体。
【請求項2】
前記側壁部と底部とを金属板を塑性加工することにより形成し、前記低位部分の最下位置を同一平面上に位置するように揃えたことを特徴とする請求項1に記載の植物育成用箱体。
【請求項3】
請求項1または2に記載の植物育成用箱体を、上下間隔を空けた状態で複数段配置するとともに、上下に位置する植物育成用箱体の間に連結部材を設けて一体化したことを特徴とする植物育成用箱体ユニット。
【請求項4】
前記した各植物育成用箱体を水平方向の長さを同じ長さの長尺に形成し、各植物育成用箱体の両端に位置して端部側壁部となる面を共通の縦長な板材により構成し、この縦長な板材を端部側壁部を兼ねた連結部材としたことを特徴とする請求項3に記載の植物育成用箱体ユニット。
【請求項5】
前記連結部材に、各植物育成用箱体の端部を止着する止着部を複数設け、これら止着部のうちから使用する止着部を選択することにより植物育成用箱体の上下位置を調整可能としたことを特徴とする請求項4に記載の植物育成用箱体ユニット。
【請求項6】
前記連結部材に吊り掛け具を備え、この吊り掛け具をベランダや壁面などの建築物に引っ掛けて支持可能としたことを特徴とする請求項3から請求項5のいずれかに記載の植物育成用箱体ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−130263(P2012−130263A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−283399(P2010−283399)
【出願日】平成22年12月20日(2010.12.20)
【出願人】(390027052)株式会社園田製作所 (2)
【Fターム(参考)】